(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-20
(45)【発行日】2026-01-28
(54)【発明の名称】延伸フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/02 20060101AFI20260121BHJP
B29C 55/04 20060101ALI20260121BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20260121BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20260121BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20260121BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20260121BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20260121BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20260121BHJP
【FI】
B29C55/02
B29C55/04
B29C55/14
B29C48/08
B29C48/88
C08J5/18 CFD
B29K67:00
B29L7:00
(21)【出願番号】P 2021186514
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上仮屋 直也
(72)【発明者】
【氏名】北山 史延
(72)【発明者】
【氏名】松宮 俊文
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-055084(JP,A)
【文献】特開2000-198913(JP,A)
【文献】特開2016-056304(JP,A)
【文献】特開平10-110047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00 - 55/80
B29C 48/00 - 48/96
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムを製造する方法であって、下記工程(i)~(iii-a)を
含み、
前記延伸フィルムに含まれる、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂以外の樹脂の含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して0~100重量部であり、
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、製造方法。
(i) 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルム原料を溶融し、キャストロール上に押出してフィルム状に成形する工程
(ii) 工程(i)で成形されたフィルムの温度が0~50℃の範囲内にある条件下で、該フィルムを前記キャストロールから剥離する工程
(iii-a) 工程(ii)で得られたフィルムの温度が10~65℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをMD方向に延伸する工程
【請求項2】
さらに、下記工程(iii-b)を含む、請求項1に記載の製造方法。
(iii-b) 工程(iii-a)で得られたフィルムの温度が10~70℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをTD方向に延伸する工程
【請求項3】
さらに、下記工程(iv)を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
(iv) 工程(iii-a)又は(iii-b)で得られたフィルムの温度が、工程(iii-a)又は(iii-b)時のフィルムの温度より10℃以上高い温度であって、かつ60℃以上になるように、該フィルムを加熱する工程
【請求項4】
工程(i)で成形されたフィルムの温度が、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂のガラス転移温度+10℃を超える温度である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(iii-a)及び/又は(iii-b)における延伸倍率が、2~8倍である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(i)から最終工程までを、フィルムを連続的に搬送しつつ実施する、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(iii-a)におけるMD方向の延伸は、前記フィルムを搬送する複数のロール間でロールの回転速度に差をつけることで実施する、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(iii-a)におけるMD方向の延伸は、工程(iii-a)で得られたフィルムの温度が10~45℃の範囲内にある条件下で実施する、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧州を中心に生ゴミの分別回収やコンポスト処理が進められており、生ゴミと共にコンポスト処理できるプラスチック製品が望まれている。
【0003】
一方で、廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされ、特に海洋投棄や河川などを経由して海に流入したプラスチックが、地球規模で多量に海洋を漂流していることが判ってきた。この様なプラスチックは長期間にわたって形状を保つため、海洋生物を拘束、捕獲する、いわゆるゴーストフィッシングや、海洋生物が摂取した場合は消化器内に留まり摂食障害を引き起こすなど、生態系への影響が指摘されている。
【0004】
更には、プラスチックが紫外線などで崩壊・微粒化したマイクロプラスチックが、海水中の有害な化合物を吸着し、これを海生生物が摂取することで有害物が食物連鎖に取り込まれる問題も指摘されている。
【0005】
この様なプラスチックによる海洋汚染に対し、生分解性プラスチックの使用が期待されるが、国連環境計画が2015年に取り纏めた報告書では、ポリ乳酸などのコンポストで生分解可能なプラスチックは、温度が低い実海洋中では短期間での分解が期待できないために、海洋汚染の対策にはなりえないと指摘されている。
【0006】
この様な中、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記課題を解決する素材として注目されている。
【0007】
ところで、薄くて高強度のフィルムを製造する技術として、フィルムを延伸する方法が知られている。例えばポリプロピレン等の汎用樹脂から延伸フィルムを製造するには、溶融樹脂をキャストロールで冷却固化させて原反を形成した後、該原反を延伸可能な温度まで予熱してから延伸することで、延伸フィルムを連続的に生産性良く、製造することができる。
【0008】
しかし、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂はその特性上、延伸が困難な材料であることが知られている。
特許文献1では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルムの延伸を実現するために、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂を溶融してフィルム状に成形し、一定時間をかけて結晶化させた後、二本のロールに挟み込んでロール圧延することにより一次延伸し、さらに前記圧延時の温度より高い温度で二次延伸することにより、延伸フィルムを製造する方法が記載されている。
【0009】
特許文献2では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を原料とする溶融フィルムを、該樹脂のガラス転移温度+10℃以下に急冷、固化して非晶質のフィルムを作製した後、該非晶質フィルムを、前記ガラス転移温度+20℃以下の温度(具体的には3℃)で冷延伸し、更に、25~160℃の温度(具体的には100℃で2時間)で緊張熱処理することで、延伸フィルムを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-168159号公報
【文献】特開2003-311824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された方法によると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする延伸フィルムを製造でき、高延伸倍率を達成できるものの、延伸を行う前に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を結晶化させるアニール工程を実施することが必須となる。このアニール工程には12時間といった長時間を要することが記載されており、フィルムを連続的なプロセスで製造することができず、生産性に劣るという問題がある。
更に、特許文献1に記載された方法では、高い延伸倍率を達成するために、ロール圧延による一次延伸と、高温での二次延伸という二段階の延伸工程が必要であり、生産プロセスが煩雑になるという問題もある。
【0012】
また、特許文献2に記載された方法によっても、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主成分とする延伸フィルムにおいて高延伸倍率を達成できる。しかし、該文献でも、延伸フィルムを連続的なプロセスで製造することは記載も示唆もされておらず、生産性についてまったく考慮されていない。延伸後の緊張熱処理についても2時間といった長時間を要することが記載されている。
【0013】
一方、ポリプロピレン等の汎用樹脂から延伸フィルムを連続的に製造する技術をそのままポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に転用すると、延伸が困難となり、延伸倍率を高めることができなかった。
【0014】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムを、高い延伸倍率にて、連続的なプロセスで生産性良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、溶融樹脂をキャストロールで冷却固化させてから延伸する技術において、キャストロールからフィルムを剥離する工程及び剥離したフィルムを延伸する工程でのフィルム温度をそれぞれ特定範囲に収まるように制御することで、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムを、連続的なプロセスで生産性良く製造でき、しかも、高い延伸倍率を実現可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムを製造する方法であって、下記工程(i)~(iii-a)を含む、製造方法。
(i) 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルム原料を溶融し、キャストロール上に押出してフィルム状に成形する工程
(ii) 工程(i)で成形されたフィルムの温度が0~50℃の範囲内にある条件下で、該フィルムを前記キャストロールから剥離する工程
(iii-a) 工程(ii)で得られたフィルムの温度が10~65℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをMD方向に延伸する工程
前記製造方法は、さらに、下記工程(iii-b)を含むことができる。
(iii-b) 工程(iii-a)で得られたフィルムの温度が10~70℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをTD方向に延伸する工程
前記製造方法は、さらに、下記工程(iv)を含むことができる。
(iv) 工程(iii-a)又は(iii-b)で得られたフィルムの温度が、工程(iii-a)又は(iii-b)時のフィルムの温度より10℃以上高い温度であって、かつ60℃以上になるように、該フィルムを加熱する工程
好ましくは、工程(i)で成形されたフィルムの温度が、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂のガラス転移温度+10℃を超える温度である。
好ましくは、工程(iii-a)及び/又は(iii-b)における延伸倍率が、2~8倍である。
好ましくは、工程(i)から最終工程までを、フィルムを連続的に搬送しつつ実施する。
好ましくは、工程(iii-a)におけるMD方向の延伸は、前記フィルムを搬送する複数のロール間でロールの回転速度に差をつけることで実施する。
好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムを、高い延伸倍率にて、連続的なプロセスで生産性良く製造する方法を提供することができる。
本発明によると、MD方向に延伸された一軸延伸フィルム、又は、MD方向とTD方法それぞれに延伸された二軸延伸フィルムを製造することができ、それぞれの方向で、高い延伸倍率を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一態様に係る、フィルム原料の押出からフィルム成形及びフィルム延伸を実施してフィルムを巻き取るまでの製造ラインの一例を示す概念図。(A)は上面図であり、(B)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む延伸フィルムの製造方法に関する。
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、微生物から生産され得る脂肪族ポリエステル樹脂であって、3-ヒドロキシブチレートを繰り返し単位とするポリエステル樹脂である。当該ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、単独重合体と1種または2種以上の共重合体の混合物、又は、2種以上の共重合体の混合物であってもよい。
【0021】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。
【0022】
更には、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、ヤング率、耐熱性などの物性を変化させることができ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、また、工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。特に、180℃以上の加熱下で熱分解しやすい特性を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)は融点を低くすることができ、低温での成形加工が可能となる観点からも好ましい。
【0023】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーPHBH」(登録商標)などが挙げられる。
【0024】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)は、3-ヒドロキシブチレート成分と3-ヒドロキシバリレート成分の比率によって融点、ヤング率などが変化するが、両成分が共結晶化するため結晶化度は50%以上と高く、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)に比べれば柔軟ではあるが、脆性の改良は不充分である。
【0025】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を含む場合、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位および他のヒドロキシアルカノエート単位の平均含有比率は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/他のヒドロキシアルカノエート=99/1~80/20(モル%/モル%)が好ましく、97/3~85/15(モル%/モル%)がより好ましい。
【0026】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位の平均含有比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法により求めることができる。平均含有比率とは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を構成する全モノマー単位に占める各モノマー単位のモル比を意味し、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が2種以上のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物である場合、混合物全体に含まれる各モノマー単位のモル比を意味する。
【0027】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、構成モノマーの種類及び/又は構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも2種のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物であってもよい。この場合、少なくとも1種の高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と、少なくとも1種の低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0028】
一般に、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は生産性に優れるが機械強度が乏しい性質を有し、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は生産性に劣るが優れた機械特性を有する。両樹脂を併用すると、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が微細な樹脂結晶粒子を形成し、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、該樹脂結晶粒子同士を架橋するタイ分子を形成すると推測される。これらの樹脂を組み合わせて使用することで、延伸フィルムの強度及び生産性が改善され得る。
【0029】
前記高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に含まれる3-ヒドロキシブチレート単位の含有割合は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位の平均含有割合よりも高いことが好ましい。
高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を含む場合、該高結晶性の樹脂における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、1~5モル%が好ましく、2~4モル%がより好ましい。
【0030】
前記高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0031】
また、前記低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に含まれる3-ヒドロキシブチレート単位の含有割合は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物を構成する全モノマー単位に占める3-ヒドロキシブチレート単位の平均含有割合よりも低いことが好ましい。
低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を含む場合、該低結晶性の樹脂における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、24~99モル%が好ましく、24~50モル%がより好ましく、24~35モル%がさらに好ましく、24~30モル%が特に好ましい。
【0032】
前記低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0033】
高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を併用する場合、両樹脂の合計量に対する各樹脂の使用割合は特に限定されないが、前者が10重量%以上60重量%以下で、後者が40重量%以上90重量%以下であることが好ましく、前者が25重量%以上45重量%以下で、後者が55重量%以上75重量%以下であることがより好ましい。
【0034】
一実施形態によると、前記高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と、前記低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に加えて、さらに、結晶性が両樹脂の中間にある中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0035】
中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が3-ヒドロキシブチレート単位と他のヒドロキシアルカノエート単位を含む場合、該中結晶性の樹脂における他のヒドロキシアルカノエート単位の含有割合は、6モル%以上24モル%未満であることが好ましく、6モル%以上22モル%以下がより好ましく、6モル%以上20モル%以下がさらに好ましく、6モル%以上18モル%以下が好ましい。
【0036】
前記中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましい。
【0037】
前記中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂をさらに併用する場合、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂、及び、中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の合計に対する中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の割合は、1重量%以上99重量%以下が好ましく、5重量%以上90重量%以下がより好ましく、8重量%以上85重量%以下がさらに好ましい。
【0038】
2種以上のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂のブレンド物を得る方法は特に限定されず、微生物産生によりブレンド物を得る方法であってよいし、化学合成によりブレンド物を得る方法であってもよい。また、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて2種以上の樹脂を溶融混練してブレンド物を得てもよいし、2種以上の樹脂を溶媒に溶解して混合・乾燥してブレンド物を得ても良い。
【0039】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~200万が好ましく、25万~150万がより好ましく、30万~100万が更に好ましい。
【0040】
また、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が2種以上のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の混合物である場合、該混合物を構成する各ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されない。しかし、前述した高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とを併用する場合、高結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~100万が好ましく、22万~80万がより好ましく、25万~60万が更に好ましい。一方、低結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、25万~230万がより好ましく、30万~200万が更に好ましい。また、前述した中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂をさらに使用する場合、中結晶性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、延伸フィルムの強度と生産性を両立する観点から、20万~250万が好ましく、25万~230万がより好ましく、30万~200万が更に好ましい。
【0041】
なお、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算により測定することができる。該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0042】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。例えば、3-ヒドロキシブチレートと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32,FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また前記以外にも、生産したいポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に合わせて、各種ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0043】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、未変性の樹脂であってもよいし、未変性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を、過酸化物等の、樹脂と反応する原料(以下、「変性用原料」という)を用いて変性させた樹脂であってもよい。
変性させた樹脂をフィルム原料として用いる場合は、予め樹脂と変性用原料を反応させた原料をフィルムに成形してもよいし、樹脂に変性用原料を混合し、フィルム成形時に反応させてもよい。また、樹脂と変性用原料を反応させる際には、樹脂の全部を変性用原料と反応させてもよいし、樹脂の一部を変性用原料と反応させて変性樹脂を得た後、残りの未変性の樹脂を前記変性樹脂に添加してもよい。
【0044】
前記変性用原料としては、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と反応できる化合物であれば、特に限定されないが、取り扱い性や前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂との反応を制御しやすい点で、有機過酸化物を好ましく用いることができる。
【0045】
前記有機過酸化物としては、例えば、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パ-オキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシ,3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン、2,2-ジ-t-ブチルパーオキシブタン等が挙げられる。中でも、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートが好ましい。更にこれら有機過酸化物を2種類以上組み合わせたものも使用可能である。
【0046】
前記有機過酸化物は、固体状や液体状など様々な形態で用いられ、希釈剤等によって希釈された液体状のものであってもよい。中でも、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と容易に混合し得る形態の有機過酸化物(特に、室温(25℃)で液体状の有機過酸化物)は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に、より均一に分散することができ、樹脂組成物中での局所的な変性反応を抑制しやすいため好ましい。
【0047】
(他の樹脂)
前記フィルム原料又は前記延伸フィルムには、発明の効果を損なわない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0048】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、30重量部以下がさらに好ましく、10重量部以下がより更に好ましく、5重量部以下が特に好ましい。他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部以上であって良い。
【0049】
前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、発明の効果を阻害しない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と共に使用可能な添加剤を含んでもよい。そのような添加剤としては顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、充填材、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
以下、結晶核剤、滑剤、充填材、及び可塑剤について、さらに詳しく説明する。
【0050】
(結晶核剤)
前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、結晶核剤も含んでもよい。結晶核剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ガラクチトール、マンニトール等の多価アルコール;オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化を促進する効果が特に優れている点で、ペンタエリスリトールが好ましい。結晶核剤は、1種を使用してよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
結晶核剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の総量100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、0.5~3重量部がより好ましく、0.7~1.5重量部がさらに好ましい。
【0051】
(滑剤)
前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、滑剤も含んでもよい。滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂への滑剤効果が特に優れている点で、ベヘン酸アミド又はエルカ酸アミドが好ましい。滑剤は、1種を使用してもよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
滑剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の総量100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.05~3重量部がより好ましく、0.1~1.5重量部がさらに好ましい。
【0052】
(充填材)
前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、充填材を含有してもよい。充填材を含むことで、より高強度の延伸フィルムとすることができる。前記充填材としては、無機充填材と有機充填材いずれでもあってよく、両者を併用してもよい。無機充填材としては特に限定されないが、例えば、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、燐酸塩、酸化物、水酸化物、窒化物、カーボンブラック等が挙げられる。無機充填材は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
前記充填材の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して1~100重量部であることが好ましく、3~80重量部であることがより好ましく、5~70重量部であることが更に好ましく、10~60重量部であることがより更に好ましい。しかし、前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、充填材を含有しなくともよい。
【0054】
(可塑剤)
前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、可塑剤を含んでもよい。可塑剤としては、例えば、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物、二塩基酸エステル系化合物等が挙げられる。中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂への可塑化効果が特に優れている点で、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、二塩基酸エステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート等が挙げられる。クエン酸エステル系化合物としては、例えば、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。セバシン酸エステル系化合物としては、例えば、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。二塩基酸エステル系化合物としては、例えば、ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート等が挙げられる。可塑剤は、1種を使用してもよいし、2種以上使用してもよく、目的に応じて、使用比率を適宜調整することができる。
可塑剤の使用量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の総量100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、2~15重量部がより好ましく、3~10重量部がさらに好ましい。しかし、前記フィルム原料又は前記延伸フィルムは、可塑剤を含有しなくともよい。
【0055】
次に、本実施形態に係る延伸フィルムの製造方法について説明する。
本実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、少なくとも、以下の工程を含む。
(i) 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルム原料を溶融し、キャストロール上に押出してフィルム状に成形する工程
(ii) 工程(i)で成形されたフィルムの温度が0~50℃の範囲内にある条件下で、該フィルムを前記キャストロールから剥離する工程
(iii-a) 工程(ii)で得られたフィルムの温度が10~65℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをMD方向に延伸する工程
工程(i)、(ii)及び(iii-a)により、MD方向に延伸された一軸延伸フィルムを得ることができる。
【0056】
前記MD方向は、機械方向、流れ方向、又は長尺方向とも呼ばれる。後述するTD方向は、MD方向に対して垂直の方向であり、垂直方向、又は幅方向とも呼ばれる。
【0057】
前記工程(iii-a)の後、以下の工程(iv)を実施することが好ましい。
(iv) 工程(iii-a)で得られたフィルムの温度が、工程(iii-a)時のフィルムの温度より10℃以上高い温度であって、かつ60℃以上になるように、該フィルムを加熱する工程
工程(i)、(ii)、(iii-a)、及び(iv)により、MD方向に延伸され、且つMD方向で高強度の一軸延伸フィルムを得ることができる。
【0058】
また、前記工程(iii-a)の後、以下の工程(iii-b)を実施することもできる。
(iii-b) 工程(iii-a)で得られたフィルムの温度が10~70℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをTD方向に延伸する工程
工程(i)、(ii)、(iii-a)、及び(iii-b)により、MD方向とTD方向それぞれに延伸された二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0059】
前記工程(iii-b)の後、以下の工程(iv)を実施することが好ましい。
(iv) 工程(iii-b)で得られたフィルムの温度が、工程(iii-b)時のフィルムの温度より10℃以上高い温度であって、かつ60℃以上になるように、該フィルムを加熱する工程
工程(i)、(ii)、(iii-a)、(iii-b)及び(iv)により、MD方向とTD方向それぞれに延伸され、且つMD方向とTD方向それぞれで高強度の二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0060】
以下、各工程について説明する。
(工程(i))
工程(i)では、まず、前記フィルム原料を溶融する。溶融の方法は特に限定されないが、溶融したフィルム原料をTダイから押出すこと、即ち押出成形法により実施することが好ましい。押出成形法によると、厚みが均一なフィルムを容易に製造することができる。押出成形では、一軸押出機、二軸押出機などを適宜使用することができる。
【0061】
フィルム原料を溶融させる際の条件は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が溶融する条件であればよいが、溶融したフィルム原料の温度を、例えば140~210℃程度とすればよい。
【0062】
次いで、溶融したフィルム原料を、キャストロール上に押出すことにより、フィルム状に成形する。フィルム原料の溶融物は、キャストロールに接触して、キャストロールの表面に沿って移動しつつ、冷却される。これにより、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の一部を結晶化させる。
【0063】
当該工程は、1本又は複数本のキャストロール上に溶融物を押し出す工程であってもよいし、または、キャストロールにタッチロールを対向させて、キャストロール上に押し出された溶融物をタッチロールで挟み込む工程であってもよい。尚、当該工程は、フィルムに圧力をかけてロール圧延を実施する工程ではない。
また、溶融物をキャストロールへ安定的に接触させるために、エアナイフやエアチャンバーを用いてもよい。キャストロールとの接触面の反対側も効率的に冷却するために、キャストロールを水槽内に設置したり、エアチャンバーを用いてもよい。
【0064】
キャストロールの設定温度は、後述する工程(ii)におけるフィルム温度を制御するために、50℃以下であることが好ましい。より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
【0065】
しかし、キャストロールの設定温度が低くなりすぎると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の固化が十分に進行せず、キャストロールに粘着してしまい剥離しにくくなる傾向がある。そのため、キャストロールの設定温度の下限は0℃以上であることが好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、12℃以上がより更に好ましく、15℃以上が特に好ましい。また、キャストロールの設定温度の下限は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂のガラス転移温度(Tg)+10℃を超える温度であってもよく、Tg+12℃以上の温度であってもよく、Tg+14℃以上の温度であってもよい。
【0066】
(工程(ii))
工程(ii)では、工程(i)で成形されたフィルムの温度が0~50℃の範囲内にある条件下で、該フィルムを前記キャストロールから剥離する。キャストロールを回転させつつ、フィルムを次の延伸工程に向けて搬送することで、フィルムをキャストロールから剥離することができる。
【0067】
工程(ii)におけるフィルム温度は、50℃以下となるように制御する。これにより、次の工程(iii-a)でも、フィルムの結晶化度を比較的低く制御することが可能となり、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルムを、高倍率で延伸することが可能となる。前記フィルム温度は、好ましくは45℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。
【0068】
また、キャストロールからのフィルム剥離が容易となるよう、工程(ii)におけるフィルム温度の下限は、0℃以上である。5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、12℃以上がさらに好ましく、15℃以上が特に好ましい。また、工程(ii)におけるフィルム温度の下限は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂のガラス転移温度(Tg)+10℃を超える温度であってもよく、Tg+12℃以上の温度であってもよく、Tg+14℃以上の温度であってもよい。
【0069】
工程(ii)でのフィルム温度は、主に、工程(i)で溶融したフィルム原料の温度と、上述したキャストロールの設定温度に依存して決定される。その他、キャストルール周囲の雰囲気の温度や、キャストロールとフィルムとの接触時間なども影響する。当業者はこれらのパラメータを考慮してフィルム温度を容易に制御することができる。
【0070】
(工程(iii-a))
工程(iii-a)では、工程(ii)で得られたフィルムの温度が10~65℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをMD方向に延伸する。工程(iii-a)は、工程(ii)から連続的に、1つの製造ライン内で実施することが好ましい。
この工程(iii-a)では、フィルムをMD方向に引き延ばすことで延伸することが好ましい。本願において、フィルムをMD方向に引き延ばすとは、フィルムをMD方向に引っ張ることを指し、2本のロールでフィルムを挟み込むロール圧延など、フィルムの厚み方向に圧力を加えて延伸するものとは区別される。
【0071】
MD方向での引き延ばしは、特に限定されないが、例えば、ロール縦延伸機を用いて、フィルムを搬送する複数のロール間で、ロールの回転速度に差を付けることによって実施することができる。MD方向の延伸倍率はこの延伸前のロールの回転速度と延伸後のロールの回転速度の比で決定することができる。
【0072】
従来、ポリプロピレン等の汎用樹脂から延伸フィルムを製造する際には、溶融樹脂を冷却固化させた後、例えば145℃等の高温に予熱してフィルムの結晶化度を高めてから延伸を行うのが一般的である。一方、本実施形態では、フィルムの結晶化度を比較的低い範囲に制御するため65℃以下の温度で延伸を行う点で、ポリプロピレン等の汎用樹脂からの延伸フィルムの製造とは明確に異なる。
【0073】
工程(iii-a)におけるフィルム温度は、65℃以下となるように制御する。これにより、該工程中でのポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化の進行を抑制して、フィルム中に非晶領域が比較的多く含まれることになり、非晶領域中で結晶分子を配向させることができ、高い延伸倍率を実現することができる。更に、次に工程(iii-b)を実施する場合には、当該工程(iii-b)でも、フィルムの結晶化度を比較的低く制御することが可能になり、TD方向においても高倍率での延伸が可能となる。この工程でフィルム温度が65℃を超えると、フィルムが脆くなり、延伸によってフィルムが破断する可能性が高まり、高い延伸倍率の実現が困難となる。前記フィルム温度は、好ましくは55℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。
【0074】
また、延伸工程で用いるロール等の器具からのフィルム剥離が容易となるよう、工程(iii-a)におけるフィルム温度の下限は、10℃以上である。好ましくは15℃以上である。
【0075】
また、工程(iii-a)におけるフィルム温度は、工程(ii)におけるフィルム温度以上の温度であることが好ましい。
【0076】
工程(iii-a)におけるフィルム温度は、主に、前工程(ii)におけるフィルム温度と、本工程(iii-a)での温度条件や、要する時間等に依存して決定される。当業者はこれらのパラメータを考慮してフィルム温度を容易に制御することができる。
【0077】
工程(iii-a)でフィルム温度を制御する手段としては特に限定されないが、例えば、所定の温度に調節した気流をフィルムにあてる方式、ロールを所定の温度に設定することでフィルム温度を制御する方式、IRヒーターなど補助加熱手段を用いてフィルムを加熱して所定の温度にフィルム温度を制御する方式、所定の温度に温調したオーブンにフィルムを通過させる方式等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、複数組み合わせてもよい。
【0078】
工程(iii-a)での延伸倍率は特に限定されないが、2倍以上であることが好ましい。より好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3倍以上である。本実施形態によると、工程(ii)及び(iii-a)でフィルム温度を制御することによって、このように高い延伸倍率を実現することができる。延伸倍率の上限は特に限定されず、適宜決定すればよいが、例えば、8倍以下であって良い。
【0079】
(工程(iii-b))
工程(iii-b)では、工程(iii-a)で得られた延伸フィルムの温度が10~70℃の範囲内にある条件下で、該フィルムをTD方向に延伸する。工程(iii-b)は、工程(iii-a)から連続的に、1つの製造ライン内で実施することが好ましい。
この工程(iii-b)では、フィルムをTD方向に引き延ばすことで延伸することが好ましい。上記と同様であるが、フィルムをTD方向に引き延ばすとは、フィルムをTD方向に引っ張ることを指し、2本のロールでフィルムを挟み込むロール圧延など、フィルムの厚み方向に圧力を加えて延伸するものとは区別される。
【0080】
TD方向での引き延ばしは、特に限定されないが、例えば、クリップ式テンター等の横延伸機を用いてフィルムの幅方向両端をクランプしてTD方向に引っ張ることで実施することができる。TD方向の延伸倍率はこの延伸前にクランプしたフィルムの幅と延伸後のクランプしたフィルムの幅の比で決定することができる。
【0081】
工程(iii-b)におけるフィルム温度は、70℃以下となるように制御する。これにより、該工程中でのポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化の進行を抑制して、フィルム中に非晶領域が比較的多く含まれることになり、非晶領域中で結晶分子を配向させることができ、高い延伸倍率を実現することができる。この工程でフィルム温度が70℃を超えると、フィルムが脆くなり、延伸によってフィルムが破断する可能性が高まり、高い延伸倍率の実現が困難となる。前記フィルム温度は、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下であり、特に好ましくは35℃以下である。
【0082】
また、延伸工程で用いるロール等の器具からのフィルム剥離が容易となるよう、工程(iii-b)におけるフィルム温度の下限は、10℃以上である。好ましくは15℃以上であり、より好ましくは20℃以上である。
【0083】
また、工程(iii-b)におけるフィルム温度は、工程(iii-a)におけるフィルム温度以上の値であることが好ましい。
【0084】
工程(iii-b)におけるフィルム温度は、主に、前工程(iii-a)におけるフィルム温度と、本工程(iii-b)での温度条件や、要する時間に依存して決定される。当業者はこれらのパラメータを考慮してフィルム温度を容易に制御することができる。
【0085】
工程(iii-b)でフィルム温度を制御する手段としては特に限定されないが、工程(iii-a)において上述した方式を適宜採用することができる。これらを単独で使用してもよいし、複数組み合わせてもよい。
【0086】
工程(iii-b)での延伸倍率は特に限定されないが、2倍以上であることが好ましい。より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上である。本実施形態によると、工程(ii)、(iii-a)、及び(iii-b)でフィルム温度を制御することによって、このように高い延伸倍率を実現することができる。延伸倍率の上限は特に限定されず、適宜決定すればよいが、例えば、8倍以下であって良い。
【0087】
(工程(iv))
工程(iv)では、工程(iii-a)で得られたフィルム又は工程(iii-b)で得られたフィルムの温度が、工程(iii-a)又は(iii-b)時のフィルムの温度より10℃以上高い温度であって、かつ60℃以上になるように、該フィルムを加熱する。工程(iv)は、工程(iii-a)又は(iii-b)から連続的に、1つの製造ライン内で実施することが好ましい。
【0088】
この工程を実施することで、工程(iii-a)又は工程(iii-b)において比較的低く制御されていたフィルムの結晶化度を高めることができ、結果、延伸フィルムの強度を高めることができる。また、延伸フィルムの物性を安定化させることもできる。
【0089】
前工程で抑制されていたフィルムの結晶化度をこの工程で高める観点から、この工程におけるフィルム温度は、工程(iii-a)又は(iii-b)でのフィルム温度より10℃以上高い温度である。20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましく、40℃以上高いことがさらに好ましく、50℃以上高いことが特に好ましい。
【0090】
加えて、この工程でポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化を十分に促進する観点から、この工程におけるフィルム温度は、60℃以上である。好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。上限は、樹脂の溶融温度以下であればよく、150℃以下であることが好ましく、145℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。
【0091】
工程(iv)でフィルム温度を制御する手段としては特に限定されず、工程(iii-a)において上述した方式を適宜採用することができる。上述した方式を単独で使用してもよいし、複数組み合わせてもよい。
【0092】
この工程(iv)は、延伸した方向でフィルムに張力をかけながら実施することが好ましい。これによってフィルムの熱収縮を回避することができる。即ち、工程(iii-a)の次に工程(iv)を実施する場合には、MD方向でフィルムに張力をかけながら実施することが好ましい。工程(iii-b)の次に工程(iv)を実施する場合には、MD方向とTD方向それぞれでフィルムに張力をかけながら実施することが好ましい。MD方向に張力をかける場合には、例えば、フィルムを搬送する複数のロールの回転速度をそれぞれ制御すればよい。TD方向に張力をかける場合には、例えば、横延伸機でフィルムの幅方向両端をクランプしてTD方向に引っ張りつつ工程(iv)を実施すればよい。
但し、工程(iv)は実質的にフィルムの延伸を行うものではない。「実質的にフィルムの延伸を行わない」とは、工程(iv)でフィルムを延伸する意図の操作を行わないことを意味する。
【0093】
本実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、フィルム原料の溶融押出から、延伸フィルムの形成までを連続的なプロセスで実施することができる。ここで、連続的なプロセスとは、フィルム状に成形した後、特許文献1に記載のように長時間を要する結晶化工程(具体的には、氷水に入れて急冷した後、40℃で12時間アニールを行う工程)を実施せずに、延伸工程を実施することを指す。
【0094】
本実施形態に係る延伸フィルムの製造方法は、前記工程(i)から最終工程までを、フィルムを連続的に搬送しつつ、実施することが好ましい。これにより、工業的に簡易なプロセスにて、生産性良く延伸フィルムを製造することが可能となる。この態様は、製造された延伸フィルムを巻取りロールで巻き取りつつ実施すればよい。尚、前記最終工程とは、工程(iii-a)までを実施する場合は工程(iii-a)を指し、工程(iii-b)までを実施する場合は工程(iii-b)を指し、工程(iv)までを実施する場合は工程(iv)を指す。
【0095】
フィルムを連続的に搬送する場合、その搬送速度は特に限定されないが、フィルムの生産性の観点から、延伸開始前の段階で5m/分以上であることが好ましい。また、生産の安定性の観点からは、同じく延伸開始前の段階で50m/分以下であることが好ましい。
【0096】
図1に、工程(i)から工程(iv)までを、フィルムを連続的に搬送しつつ実施する際の製造ラインの一例を示す。図中の右向きの矢印は、フィルムの搬送方向を示す。
まず、押出機11内で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルム原料を溶融させる。押出機の先端に接続したTダイから、溶融したフィルム原料21を、キャストロール12上に押出して、当該ロールの表面上で、フィルム状に成形する(工程(i))。
【0097】
溶融したフィルム原料は、キャストロール12の表面に沿って移動しつつ、冷却される。この際に、フィルム原料に含まれる樹脂の一部が結晶化する。固化したフィルム22は、フィルムの搬送経路に従って、キャストロール12から剥離される(工程(ii))。
【0098】
その後、フィルム22は、フィルムの搬送方向の前方と後方それぞれに配置された延伸ロール13,13’に導かれる。後方のロール13’は、前方のロール13よりも回転速度が大きくなるように設定されている。この速度差によってフィルム22はMD方向に引っ張られることで、MD方向に延伸される(工程(iii-a))。この時、熱媒を用いてロール13の温度を所定値に設定することでMD延伸中のフィルム温度を制御する。
【0099】
MD方向に延伸されたフィルム22は、クリップ式テンターである横延伸機14の中に導かれる。ここでは、フィルムの幅方向両端がクランプされ、TD方向に引っ張られることで、TD方向に延伸される(工程(iii-b)。この時、横延伸機内で、所定温度に調節した気流をフィルムにあてることで、TD延伸中のフィルム温度を制御する。
【0100】
TD方向での所期の延伸倍率を達成した後、フィルムの幅方向両端がクランプされた状態で、横延伸機14内の内部温度が引き上げられる。これによりフィルムが加熱されて、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化を進行させる(工程(iv))。
【0101】
この後、フィルム22は、巻取りロール15によって巻き取られる。これにより、MD方向とTD方向それぞれに延伸された二軸延伸フィルムを得ることができる。以上のプロセスでは、フィルム原料の押出からフィルム成形及びフィルム延伸を実施してフィルムを巻き取るまでを、フィルムを連続的に搬送しながら実施している。
【0102】
製造される延伸フィルムの厚みは、特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、該フィルムの均一な肉厚、外観、強度、軽量性等の観点から、10~200μmであることが好ましく、15~150μmがより好ましく、20~100μmがさらに好ましい。
【0103】
前記延伸フィルムには、他の層を積層してもよい。当該他の層としては、樹脂層、無機物層、金属層、金属酸化物層、印刷層が挙げられる。これら他の層は、ラミネート層であってもよいし、コーティング層であってもよいし、蒸着層であってもよい。
【0104】
前記延伸フィルムは、薄くても高強度のため、包装用フィルム、ヒートシール性フィルム、ツイストフィルム等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0105】
以下に実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0106】
実施例及び比較例においては、以下の原料を使用した。
(ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂)
A-1:P3HB3HH(平均含有比率3HB/3HH=94/6(モル%/モル%)、重量平均分子量は60万g/mol、ガラス転移温度は6℃)国際公開第2019/142845号の実施例1に記載の方法に準じて製造した。
【0107】
(フィルムの厚みの評価)
フィルムのTD方向に沿って10cmおきに10箇所で、ノギスを用いて厚みを測定し、10箇所の厚みの算術平均値を算出してフィルムの厚みとした。
【0108】
(ガラス転移温度の測定法)
各樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K-7121に準じて示差走査熱量測定により決定した。
具体的には、まず、測定対象の樹脂約5mgを精秤し、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、SSC5200)にて10℃/分の昇温速度で-20℃から200℃まで昇温を実施し、DSC曲線を得た。次いで、得られたDSC曲線において、ベースラインがガラス転移により階段状に変化している部分において変化前後のベースラインを延長し、この2本の直線から縦軸方向に等距離にある中心線を引き、この中心線とガラス転移による階段状変化部分の曲線が交わる点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0109】
(結晶化度の測定法)
キャストロールから剥離した直後のフィルム、MD延伸直後のフィルム、TD延伸直後のフィルム、及び、熱処理直後のフィルムについてそれぞれ結晶化度を測定した。
測定対象のフィルムを速やかに2cm角の大きさにカットし、200~500μmの厚みになるように積層させ、ガラスホルダー上に固定した。
このガラスホルダーを、XRD装置(Rigaku製のRint2500)内の特性X線Cu-Kα光源横のサンプルクリップに固定し、0.02~0.5°/minのスキャンスピードで、5~40°の範囲についてXRD測定を実施した。
この測定から得られた波形について、両端部をゼロ補正した波形の面積(積分強度)を、Ia+Ic(非晶に由来するハローの面積+結晶に由来するピークの面積)と定義した。ここから、(散乱ピーク強度の対称性が維持されるように)非晶部に由来するハローを控除して得られた波形の面積をIcで定義した。結晶化度は式:Ia/(Ia+Ic)×100によって算出した。
【0110】
[ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂ペレットP-1の製造]
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂A-1 100重量部に対して、滑剤としてベヘン酸アミド(日本精化社製:BNT-22H)0.5重量部、結晶核剤としてペンタエリスリトール0.5重量部をドライブレンドした。得られた樹脂材料を、シリンダー温度及びダイ温度を150℃に設定したφ26mmの同方向二軸押出機に投入して押出し、45℃の湯を満たした水槽に通してストランドを固化し、ペレタイザーで裁断することにより、樹脂ペレットP-1を得た。該樹脂ペレットP-1のガラス転移温度は6℃であった。
【0111】
<実施例1>
幅350mmのTダイを接続したφ40mmの単軸押出機のシリンダー温度及びダイ温度をそれぞれ165℃に設定した。
当該単軸押出機に前記樹脂ペレットP-1を投入し、溶融させて、温度165℃の溶融樹脂を、Tダイにて、フィルム状に押出した。フィルム状の溶融樹脂を、20℃に設定したキャストロール上に押出して成形し、フィルム温度20℃まで冷却後、該フィルムをキャストロールから剥離した。
剥離したフィルムを引き取りロールにて引き取り、連続的に、ロール縦延伸機にて、延伸時のフィルム温度20℃で、縦(MD)方向に延伸倍率が6倍になるように延伸した。この時のフィルム温度は、ロール縦延伸機中のロール温度を同温度(20℃)に調節することで制御した。
続けて、連続的に、クリップ式テンター横延伸機にて、延伸時のフィルム温度25℃で、横(TD)方向に延伸倍率が6倍になるように延伸した。この時のフィルム温度は、横延伸機内で、同温度(25℃)の気流をフィルムにあてることで制御した。
更に続けて、クリップ式テンター横延伸機内で、フィルム温度が90℃となるように熱処理を行った。この時のフィルム温度も、同温度(90℃)の気流をフィルムにあてることで制御した。
以上において、キャストロールから剥離した時のフィルムの結晶化度は35%、MD延伸後のフィルムの結晶化度は49%、TD延伸後のフィルムの結晶化度は52%、熱処理後のフィルムの結晶化度は72%であった。
熱処理を行った後のフィルムの幅方向端部をスリットすることで、幅1000mm、厚み20μmの二軸延伸フィルムを得た。以上のプロセスはフィルムを連続的に搬送しつつ実施した。
得られたフィルムのMD方向の破断強度は63MPa、TD方向の破断強度は122MPaであった。
【0112】
<実施例2>
キャストロールで冷却したフィルム温度、MD延伸時のフィルム温度、及びTD延伸時のフィルム温度をそれぞれ30℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
この実施例において、キャストロールから剥離した時のフィルムの結晶化度は42%、MD延伸後のフィルムの結晶化度は47%、TD延伸後のフィルムの結晶化度は59%、熱処理後のフィルムの結晶化度は67%であった。
得られたフィルムのMD方向の破断強度は60MPa、TD方向の破断強度は116MPaであった。
【0113】
<比較例1>
実施例1においてキャストロールで冷却したフィルム温度を55℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムの製造を試みた。
しかし、MD延伸時にフィルムの破断が発生し、延伸フィルムを製造することができなかった。
この比較例において、キャストロールから剥離した時のフィルムの結晶化度は55%であった。
【0114】
<比較例2>
実施例1においてMD延伸時のフィルム温度を68℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムの製造を試みた。
しかし、MD延伸時にフィルムの破断が発生し、延伸フィルムを製造することができなかった。
この比較例において、キャストロールから剥離した時のフィルムの結晶化度は35%、MD延伸後のフィルムの結晶化度は60%であった。
【符号の説明】
【0115】
11 押出機
12 キャストロール
13,13’ 延伸ロール
14 横延伸機
15 巻取りロール
21 溶融したフィルム原料
22 フィルム