(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-20
(45)【発行日】2026-01-28
(54)【発明の名称】有用物質を製造する微生物、および製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20260121BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20260121BHJP
C12N 15/61 20060101ALN20260121BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20260121BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20260121BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20260121BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20260121BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20260121BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20260121BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P21/02 C
C12N15/61
C12N15/52 Z
C12N15/60
C12N15/53
C12N15/57
C12N15/54
C12N15/55
(21)【出願番号】P 2022570053
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046463
(87)【国際公開番号】W WO2022131323
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020209478
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 新吾
(72)【発明者】
【氏名】田岡 直明
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 吉博
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩
(72)【発明者】
【氏名】川井 隆太郎
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/126784(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140349(WO,A1)
【文献】Journal of Bacteriology,2005年,Vol.187, No.17,PP.5861-5867
【文献】Metabolic Engineering,2024年,Vol.84,p.180-190
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[1]及び[2]の遺伝子を欠損し、且つ[3]又は[4]の遺伝子の発現が強化された微生物株:
[1]γ-グルタミルトランスフェラーゼ(EC:3.4.19.13)をコードする遺伝子;
[2]ホスホグリセリン酸ムターゼ(EC:5.4.2.11又はEC:5.4.1.12)をコードする遺伝子;
[3]グルタミン酸-システインリガーゼ(EC:6.3.2.2)をコードする遺伝子、及び/又は、グルタチオン合成酵素(EC:6.3.2.3)をコードする遺伝子;
[4]二機能性グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子。
【請求項2】
[5]~[12]のうちいずれか1つ以上の遺伝子改変を含む、請求項1記載の微生物株:
[5]トリプトファナーゼ(EC:4.1.99.1)をコードする遺伝子の欠損;
[6]トリペプチドペプチダーゼ(EC:3.4.11.4)をコードする遺伝子の欠損;
[7]グルタチオンレダクターゼ(EC:1.8.1.7)をコードする遺伝子の欠損;
[8]グルタチオン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[9]プトレシン排出に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現の強化;
[10]プトレシン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[11]プトレシン合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[12]セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.30)をコードする遺伝子の発現の強化。
【請求項3】
細菌の形質転換体である、請求項1又は2に記載の微生物株。
【請求項4】
腸内細菌の形質転換体である、請求項3に記載の微生物株。
【請求項5】
グラム陰性細菌の形質転換体である、請求項3に記載の微生物株。
【請求項6】
大腸菌の形質転換体である、請求項3に記載の微生物株。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の微生物株を培養することを含む、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一以上の実施形態は新規微生物株に関する。
【0002】
本発明の別の一以上の実施形態は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルタチオンは、L-システイン、L-グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸から成るペプチドで、人体だけでなく、他の動物や植物、微生物など多くの生体内に存在し、活性酸素の消去作用、解毒作用、アミノ酸代謝など、生体にとって重要な化合物である。
【0004】
グルタチオンは生体内で、L-システイン残基のチオール基が還元されたSHの形態である還元型のグルタチオン(以下「GSH」と称することがある)と、L-システイン残基のチオール基が酸化されグルタチオン2分子間でジスルフィド結合を形成した形態である酸化型グルタチオン(以下「GSSG」と称することがある)のいずれかの形態で存在する。
【0005】
グルタチオンの製造方法としては、酵母を用いて発酵により製造する方法(特許文献1)や、微生物を用いてγ-グルタミルシステイン合成酵素やグルタチオン合成酵素を生産し、L-グルタミン酸、L-システイン、グリシンを酵素的に連結することにより製造する方法(特許文献2、3)などが知られている。
【0006】
また特許文献4には、グルタチオン輸送活性を有する蛋白質の活性、およびグルタチオンまたはγ-グルタミルシステインの生合成に関わる蛋白質の活性が親株より高い微生物を培地に培養し、該培地中にグルタチオンまたはγ-グルタミルシステインを生成、蓄積させ、培養物中からグルタチオンまたはγ-グルタミルシステインを採取するグルタチオンまたはγ-グルタミルシステインの製造法が記載されている。特許文献4の実施例4では、大腸菌由来のグルタミン酸システインリガーゼ遺伝子であるgshA遺伝子およびグルタチオン合成酵素遺伝子であるgshBを過剰発現させた大腸菌株を培養したところ培地中のグルタチオン濃度は160mg/Lであったことが記載されている。
【0007】
非特許文献1では、恒常型プロモーターの制御下に配置された二機能性グルタチオン合成酵素gshF遺伝子を含む発現ベクターにより形質転換された大腸菌を、グルタチオンの構成アミノ酸であるL-システイン、L-グルタミン酸およびグリシンが添加された培地中で培養して、グルタチオンを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開WO2016/140349
【文献】特開昭60-27396号公報
【文献】特開昭60-27397号公報
【文献】国際公開WO2008/126784
【非特許文献】
【0009】
【文献】Journal of Biotechnology(2018),https://doi.org/10.1016/j.jbiotec.2018.11.001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一以上の実施形態は、細菌等の微生物の発酵によるグルタチオン又はその関連物質、具体的には、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性を向上することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ホスホグリセリン酸ムターゼをコードする遺伝子を欠損した微生物株において、グルタチオンの生産性が顕著に向上することを見出し、本発明の下記の実施形態を完成させた。
[I]
[1]及び[2]の遺伝子を欠損し、且つ[3]又は[4]の遺伝子の発現が強化された微生物株:
[1]γ-グルタミルトランスフェラーゼ(EC:3.4.19.13)をコードする遺伝子;
[2]ホスホグリセリン酸ムターゼ(EC:5.4.2.11又はEC:5.4.1.12)をコードする遺伝子;
[3]グルタミン酸-システインリガーゼ(EC:6.3.2.2)をコードする遺伝子、及び/又は、グルタチオン合成酵素(EC:6.3.2.3)をコードする遺伝子;
[4]二機能性グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子。
[II]
[5]~[12]のうちいずれか1つ以上の遺伝子改変を含む、[I]に記載の微生物株:
[5]トリプトファナーゼ(EC:4.1.99.1)をコードする遺伝子の欠損;
[6]トリペプチドペプチダーゼ(EC:3.4.11.4)をコードする遺伝子の欠損;
[7]グルタチオンレダクターゼ(EC:1.8.1.7)をコードする遺伝子の欠損;
[8]グルタチオン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[9]プトレシン排出に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現の強化;
[10]プトレシン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[11]プトレシン合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[12]セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.30)をコードする遺伝子の発現の強化。
[III]
細菌の形質転換体である、[I]又は[II]に記載の微生物株。
[IV]
腸内細菌の形質転換体である、[III]に記載の微生物株。
[V]
グラム陰性細菌の形質転換体である、[III]に記載の微生物株。
[VI]
大腸菌の形質転換体である、[III]に記載の微生物株。
[VII]
[I]~[VI]のいずれかに記載の微生物株を培養することを含む、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの製造方法。
【0012】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2020-209478号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの発酵による生産性が高い。
本発明の一以上の実施形態に係る製造方法は、前記目的物質を効率的に生産することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<宿主微生物>
本発明の一以上の実施形態に係る、所定の遺伝子改変を有する微生物株の、宿主(親株)となる微生物株は、好ましくは原核微生物であり、より好ましくは細菌である。前記細菌は腸内細菌であってもよい。前記細菌は、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌等のグラム陰性細菌であってもよいし、バシルス(Bacillus)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌等のグラム陽性細菌であってもよいが、好ましくはグラム陰性細菌であり、より好ましくはエシェリヒア(Escherichia)属細菌であり、特に好ましくは大腸菌(Escherichia coli)である、
【0015】
宿主として用いる前記大腸菌は、特に限定されないが、好ましくはK12株又はK12株から派生した大腸菌株が好ましい。K12株から派生した大腸菌株としてはDH10B、BW25113、DH5α、MG1655、JM109、W3110が例示できる。
【0016】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株は、宿主株において所定の遺伝子を欠損させ、且つ、所定の遺伝子を保持させた形質転換体であることができる。
【0017】
<1.γ-グルタミルトランスフェラーゼ>
γ-グルタミルトランスフェラーゼ(EC:3.4.19.13)は、グルタチオン等のγ-グルタミルペプチドを加水分解する酵素である。
【0018】
「γ-グルタミルトランスフェラーゼ(EC:3.4.19.13)をコードする遺伝子」とは、γ-グルタミルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。γ-グルタミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0019】
γ-グルタミルトランスフェラーゼの具体例としては、
(1A)配列番号22に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(1B)配列番号22に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号22に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド;
(1C)配列番号22に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド;又は
(1D)(1A)~(1C)のいずれかのポリペプチドの、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性を有する断片
であることができる。
【0020】
前記(1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。「保存的アミノ酸置換」とは、電荷、側鎖、極性、芳香族性等の性質の類似するアミノ酸間の置換をいう。性質の類似するアミノ酸は、例えば、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン)、無極性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン)、分枝鎖アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン)等に分類することができる。以下、本明細書では「保存的アミノ酸置換」という用語はこの意味で用いる。
【0021】
前記(1C)において「配列同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号22に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。配列同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる(Karlin,S.et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877;Altschul,S.F.et al., 1990, J. Mol. Biol., 215: 403-410;Pearson,W.R.et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448)。以下、本明細書ではアミノ酸配列の「配列同一性」は、同様の意味で用いる。
【0022】
前記(1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは550以上のポリペプチドであることができる。
【0023】
大腸菌に由来する、γ-グルタミルトランスフェラーゼの配列番号22に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号21に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号21の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号21の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号21の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0024】
すなわち、γ-グルタミルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(1E)配列番号21に示す塩基配列;
(1F)配列番号21に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号21に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(1G)配列番号21に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(1H)(1E)~(1G)のいずれかの塩基配列の、γ-グルタミルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(1I)(1E)~(1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(1J)(1A)~(1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(1K)(1E)~(1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0025】
前記(1G)において「配列同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号21に示す塩基配列の全塩基数に対する同一塩基の割合(%)をいう。配列同一性は、BLASTやFASTAによる塩基配列の検索システムを用いて算出することができる(Karlin,S.et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877;Altschul,S.F.et al., 1990, J. Mol. Biol., 215: 403-410;Pearson,W.R.et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448)。以下、本明細書では塩基配列の「配列同一性」は、同様の意味で用いる。
【0026】
前記(1F)及び(1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0027】
<2.ホスホグリセリン酸ムターゼ>
ホスホグリセリン酸ムターゼ(EC:5.4.2.11又はEC:5.4.1.12)は、3-ホスホグリセリン酸(3PG)を異性化して2-ホスホグリセリン酸(2PG)を生成する反応を触媒する酵素である。ホスホグリセリン酸ムターゼは、EC:5.4.2.11が付与された2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ(gpmA又はgpmB)と、EC:5.4.1.12が付与された2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ(gpmI)を包含する。
【0028】
「ホスホグリセリン酸ムターゼ(EC:5.4.2.11又はEC:5.4.1.12)をコードする遺伝子」とは、ホスホグリセリン酸ムターゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。ホスホグリセリン酸ムターゼをコードする遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0029】
2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼの具体例としては、
(2-1A)配列番号20に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2-1B)配列番号20に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号20に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチド;
(2-1C)配列番号20に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチド;又は
(2-1D)(2-1A)~(2-1C)のいずれかのポリペプチドの、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有する断片
であることができる。
(2-1A)~(2-1D)のいずれかのポリペプチドは、GpmAの一例である。
【0030】
前記(2-1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0031】
前記(2-1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは230以上のポリペプチドであることができる。
【0032】
大腸菌に由来する、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼの配列番号20に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号19に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号19の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号19の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号19の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0033】
すなわち、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(2-1E)配列番号19に示す塩基配列;
(2-1F)配列番号19に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号19に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(2-1G)配列番号19に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(2-1H)(2-1E)~(2-1G)のいずれかの塩基配列の、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(2-1I)(2-1E)~(2-1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(2-1J)(2-1A)~(2-1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(2-1K)(2-1E)~(2-1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
(2-1E)~(2-1K)のいずれかの塩基配列が、gpmA遺伝子の塩基配列の一例である。
【0034】
前記(2-1F)及び(2-1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0035】
2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼの別の具体例としては、
(2-2A)配列番号78に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2-2B)配列番号78に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号78に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチド;
(2-2C)配列番号78に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチド;又は
(2-2D)(2-2A)~(2-2C)のいずれかのポリペプチドの、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有する断片
であることができる。
(2-2A)~(2-2D)のいずれかのポリペプチドは、GpmBの一例である。
【0036】
前記(2-2B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0037】
前記(2-2D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは150以上、より好ましくは200以上のポリペプチドであることができる。
【0038】
大腸菌に由来する、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼの配列番号78に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号77に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号77の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号77の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号77の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0039】
すなわち、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の別の具体例としては、
(2-2E)配列番号77に示す塩基配列;
(2-2F)配列番号77に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号77に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(2-2G)配列番号77に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(2-2H)(2-2E)~(2-2G)のいずれかの塩基配列の、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(2-2I)(2-2E)~(2-2H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(2-2J)(2-2A)~(2-2D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(2-2K)(2-2E)~(2-2J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
(2-2E)~(2-2K)のいずれかの塩基配列が、gpmB遺伝子の塩基配列の一例である。
【0040】
前記(2-2F)及び(2-2I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0041】
2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼの具体例としては、
(2-3A)配列番号80に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2-3B)配列番号80に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号78に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチド;
(2-3C)配列番号80に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチド;又は
(2-3D)(2-3A)~(2-3C)のいずれかのポリペプチドの、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有する断片
であることができる。
(2-3A)~(2-3D)のいずれかのポリペプチドは、GpmIの一例である。
【0042】
前記(2-3B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0043】
前記(2-3D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上のポリペプチドであることができる。
【0044】
大腸菌に由来する、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼの配列番号80に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号79に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号79の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号79の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号79の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0045】
すなわち、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(2-3E)配列番号79に示す塩基配列;
(2-3F)配列番号79に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号79に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(2-3G)配列番号79に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(2-3H)(2-3E)~(2-3G)のいずれかの塩基配列の、2,3-ホスホグリセリン酸非依存性ホスホグリセリン酸ムターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(2-3I)(2-3E)~(2-3H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(2-3J)(2-3A)~(2-3D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(2-3K)(2-3E)~(2-3J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
(2-3E)~(2-3K)のいずれかの塩基配列が、gpmI遺伝子の塩基配列の一例である。
【0046】
前記(2-3F)及び(2-3I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0047】
ホスホグリセリン酸ムターゼとしては、特に、2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼが好ましく、GpmAが特に好ましい。2,3-ホスホグリセリン酸依存性ホスホグリセリン酸ムターゼとしては特に前記(2-1A)~(2-1D)のいずれか1つのポリペプチドが好ましく、その塩基配列は限定されないが、前記(2-1A)~(2-1D)のいずれか1つの塩基配列が例示できる。
【0048】
<3-1.グルタミン酸-システインリガーゼ>
グルタミン酸-システインリガーゼ(EC:6.3.2.2)は、ATPの存在下でL-システインを基質として認識し、L-グルタミン酸と結合させることでγ-グルタミルシステインを生成する反応を触媒する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本明細書において、当該活性を、グルタミン酸-システインリガーゼ活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのγ-グルタミルシステインを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。
【0049】
(測定条件)
10mM ATP、15mM L-グルタミン酸、15mM L-システイン、10mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のγ-グルタミルシステインを定量する。
【0050】
上記高速液体クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。この条件では、還元型グルタチオン(GSH)、γ-グルタミルシステイン(γ-GC)、ビス-γ-グルタミルシスチン(酸化型γ-GC)、酸化型グルタチオン(GSSG)の順で溶出する。
[HPLC条件]
カラム:ODS-HG-3(4.6mmφ×150mm、野村化学社製);
溶離液:リン酸2水素カリウム12.2g及びヘプタンスルホン酸ナトリウム3.6gを蒸留水1.8Lで溶解した後、該溶液をリン酸でpH2.8に調整し、メタノール186mlを追加して溶解した液;
流速:1.0ml/分;
カラム温度:40℃;
測定波長:210nm
【0051】
グルタミン酸-システインリガーゼとしてはタンパク質1mgあたりのグルタミン酸-システインリガーゼ活性(比活性)が0.5U以上のものを使用することが好ましい。
【0052】
「グルタミン酸-システインリガーゼ(EC:6.3.2.2)をコードする遺伝子」とは、グルタミン酸-システインリガーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。グルタミン酸-システインリガーゼの発現を強化した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0053】
グルタミン酸-システインリガーゼの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来のグルタミン酸-システインリガーゼが好ましく、特に大腸菌(Escherichia coli)等の腸内細菌や、コリネ型細菌等の細菌、酵母等の真核微生物等に由来するグルタミン酸-システインリガーゼが好ましい。
【0054】
大腸菌由来のグルタミン酸-システインリガーゼの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号73及び配列番号74に示す。
【0055】
グルタミン酸-システインリガーゼとしてはまた、配列番号74に示すアミノ酸配列からなるグルタミン酸-システインリガーゼに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有する他のポリペプチドも使用できる。グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号74に示すアミノ酸配列からなるグルタミン酸-システインリガーゼを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。
【0056】
グルタミン酸-システインリガーゼの具体例としては、
(3-1A)配列番号74に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3-1B)配列番号74に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号74に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有するポリペプチド;
(3-1C)配列番号74に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有するポリペプチド;又は
(3-1D)(3-1A)~(3-1C)のいずれかのポリペプチドの、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有する断片
であることができる。
【0057】
前記(3-1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは450以上、より好ましくは500以上のポリペプチドであることができる。
【0058】
前記(3-1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0059】
「グルタミン酸-システインリガーゼをコードする遺伝子」とは、グルタミン酸-システインリガーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。
【0060】
大腸菌に由来する、グルタミン酸-システインリガーゼの配列番号74に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号73に示す。グルタミン酸-システインリガーゼのアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列は、宿主に合わせてコドン最適化したものであってもよい。
【0061】
すなわち、グルタミン酸-システインリガーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(3-1E)配列番号73に示す塩基配列;
(3-1F)配列番号73に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号73に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(3-1G)配列番号73に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(3-1H)(3-1E)~(3-1G)のいずれかの塩基配列の、グルタミン酸-システインリガーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(3-1I)(3-1E)~(3-1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(3-1J)(3-1A)~(3-1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(3-1K)(3-1E)~(3-1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0062】
前記(3-1F)及び(3-1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0063】
<3-2.グルタチオン合成酵素>
グルタチオン合成酵素(EC:6.3.2.3)は、ATPの存在下でγ-グルタミルシステインを基質として認識し、グリシンと結合させることでグルタチオンを生成する反応を触媒する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。明細書において、当該活性をグルタチオン合成酵素活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのグルタチオンを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。
【0064】
(測定条件)
10mM ATP、15mM γ-グルタミルシステイン、15mM グリシン、10mM 硫酸マグネシウムを含有する50mM トリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のグルタチオンを定量する。
【0065】
高速液体クロマトグラフィーの条件は、グルタミン酸-システインリガーゼの活性測定法に関して上述したのと同じ条件を用いる。
【0066】
グルタチオン合成酵素としてはタンパク質1mgあたりのグルタチオン合成酵素活性(比活性)が0.5U以上のものを使用することが好ましい。
【0067】
「グルタチオン合成酵素(EC:6.3.2.3)をコードする遺伝子」とは、グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。グルタチオン合成酵素の発現を強化した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0068】
グルタチオン合成酵素は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来のグルタチオン合成酵素が好ましく、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等の腸内細菌や、コリネ型細菌等の細菌、酵母等の真核微生物、ヒドロゲノフィルス科(Hydrogenophilales)に属する微生物等に由来するグルタチオン合成酵素が好ましい。
【0069】
ヒドロゲノフィルス科(Hydrogenophilales)に属する微生物に由来するグルタチオン合成酵素は、好ましくは、チオバチルス(Thiobacillus)属に属する微生物に由来するグルタチオン合成酵素であり、より好ましくはチオバチルス・デニトリフィキャンス(Thiobacillus denitrificans)に属する微生物に由来するグルタチオン合成酵素である。特に、チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株に由来するグルタチオン合成酵素が好ましい。
【0070】
(大腸菌由来のグルタチオン合成酵素又はその変異体の好ましい実施形態)
大腸菌由来のグルタチオン合成酵素の塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号75及び配列番号76に示す。
【0071】
グルタチオン合成酵素としてはまた、配列番号76に示すアミノ酸配列からなるグルタチオン合成酵素に限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、グルタチオン合成酵素活性を有する他のポリペプチドも使用できる。グルタチオン合成酵素活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号76に示すアミノ酸配列からなるグルタチオン合成酵素を用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。
【0072】
大腸菌由来のグルタチオン合成酵素又はその変異体の具体例としては、
(3-2A)配列番号76に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3-2B)配列番号76に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号76に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;
(3-2C)配列番号76に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;又は
(3-2D)(3-2A)~(3-2C)のいずれかのポリペプチドの、グルタチオン合成酵素活性を有する断片
であることができる。
【0073】
前記(3-2D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0074】
前記(3-2B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0075】
「グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子」とは、グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。
【0076】
大腸菌に由来する、グルタチオン合成酵素の配列番号76に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号75に示す。グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列は、宿主に合わせてコドン最適化したものであってもよい。
【0077】
すなわち、大腸菌由来のグルタチオン合成酵素又はその変異体のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(3-2E)配列番号75に示す塩基配列;
(3-2F)配列番号75に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号75に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(3-2G)配列番号75に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(3-2H)(3-2E)~(3-2G)のいずれかの塩基配列の、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(3-2I)(3-2E)~(3-2H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(3-2J)(3-2A)~(3-2D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(3-2K)(3-2E)~(3-2J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0078】
前記(3-2F)及び(3-2I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0079】
(チオバチルス・デニトリフィキャンス由来のグルタチオン合成酵素又はその変異体の好ましい実施形態)
グルタチオン合成酵素の別の好適な具体例は、チオバチルス・デニトリフィキャンス(Thiobacillus denitrificans)ATCC25259株に由来する野生型グルタチオン合成酵素又はその活性変異体である。チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株の野生型グルタチオン合成酵素の塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号67及び配列番号68に示す。前記野生型グルタチオン合成酵素の活性変異体は、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号68に示すアミノ酸配列からなる野生型グルタチオン合成酵素を用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。
【0080】
チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株のグルタチオン合成酵素又はその変異体の具体例としては、
(3-3A)配列番号68に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3-3B)配列番号68に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号68に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;
(3-3C)配列番号68に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;又は
(3-3D)(3-3A)~(3-3C)のいずれかのポリペプチドの、グルタチオン合成酵素活性を有する断片
であることができる。
【0081】
前記(3-3D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0082】
前記(3-3B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0083】
チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株のグルタチオン合成酵素の配列番号68に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号67に示す。グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列は、宿主に合わせてコドン最適化したものであってもよい。
【0084】
すなわち、チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株のグルタチオン合成酵素又はその変異体のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(3-3E)配列番号67に示す塩基配列;
(3-3F)配列番号67に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号67に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(3-3G)配列番号67に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(3-3H)(3-3E)~(3-3G)のいずれかの塩基配列の、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(3-3I)(3-3E)~(3-3H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(3-3J)(3-3A)~(3-3D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(3-3K)(3-3E)~(3-3J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0085】
前記(3-3F)及び(3-3I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0086】
(チオバチルス・デニトリフィキャンス由来のグルタチオン合成酵素の活性変異体の好ましい実施形態)
グルタチオン合成酵素の別の好ましい例は、配列番号68に示すアミノ酸配列を含むチオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株の野生型グルタチオン合成酵素の活性変異体であり、国際公開WO2018/084165に記載されているポリペプチドが特に好ましい。
【0087】
前記活性変異体は、具体的には、
(3-4A)配列番号68に示すアミノ酸配列のうち次の群:
13、17、20、23、39、70、78、101、113、125、126、136、138、149、152、154、155、197、200、215、226、227、230、239、241、246、249、254、260、262、263、270、278、299、305、307及び310番目から選択される1つもしくは複数のアミノ酸が置換されているアミノ酸配列3-4Aからなるポリペプチド;
(3-4B)前記アミノ酸配列3-4Aにおいて、前記アミノ酸部位以外のアミノ酸のうち1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、前記アミノ酸配列3-4AのN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;
(3-4C)前記アミノ酸配列3-4Aに対して、前記アミノ酸部位が一致し、前記アミノ酸部位以外の部分において80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;又は
(3-4D)(3-4A)~(3-4C)のいずれかのポリペプチドの、グルタチオン合成酵素活性を有する断片
であることができる。
【0088】
前記(3-4D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは150以上、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上のポリペプチドを用いることができる。
【0089】
前記(3-4B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0090】
前記アミノ酸配列3-4Aは、より好ましくは、配列番号68に示すアミノ酸配列において、次の群:
13番目がセリン、17番目がグルタミン酸、20番目がスレオニン、23番目がロイシン、39番目がスレオニン、70番目がセリン、78番目がロイシン、101番目がアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、113番目がヒスチジン、125番目がバリン、126番目がアスパラギン、136番目がスレオニン、138番目がアラニン、149番目がグルタミン、152番目がグルタミン、154番目がアスパラギン、155番目がロイシン、197番目がグルタミン、200番目がセリン、215番目がアスパラギン酸、226番目がアルギニン、227番目がセリン、230番目がプロリン、239番目がセリン、241番目がヒスチジン、246番目がアルギニン、249番目がグルタミン酸、254番目がアスパラギン酸、260番目がアラニン、システイン、グリシン、グルタミン、スレオニン、262番目がシステイン、263番目がアルギニン、270番目がイソロイシン、278番目がグリシン、アラニン、299番目がアラニン、305番目がグリシン、307番目がバリンおよび310番目がスレオニンに置換、
から選択される1つもしくは複数のアミノ酸置換が導入されているアミノ酸配列である。
【0091】
前記アミノ酸配列3-4Aは、特に好ましくは、配列番号68に示すアミノ酸配列のうち下記の(1)~(35):
(1)13番目がセリン、
(2)17番目がグルタミン酸、113番目がヒスチジン、230番目がプロリン、
(3)20番目がスレオニン、215番目がアスパラギン酸、
(4)20番目がスレオニン、241番目がヒスチジン、
(5)23番目がロイシン、126番目がアスパラギン、
(6)39番目がスレオニン、260番目がアラニン、
(7)70番目がセリン、260番目がアラニン、
(8)78番目がロイシン、278番目がアラニン、
(9)101番目がアスパラギン、
(10)101番目がグルタミン、
(11)101番目がセリン、
(12)101番目がセリン、260番目がアラニン、
(13)101番目がスレオニン、
(14)125番目がバリン、249番目がグルタミン酸、
(15)125番目がバリン、152番目がグルタミン、
(16)136番目がスレオニン、
(17)138番目がアラニン、149番目がグルタミン、241番目がヒスチジン、263番目がグルタミン、
(18)154番目がアスパラギン、246番目がアルギニン、
(19)155番目がロイシン、239番目がセリン、
(20)197番目がグルタミン、
(21)200番目がセリン、260番目がアラニン、
(22)226番目がアルギニン、260番目がアラニン、
(23)227番目がセリン、260番目がアラニン、
(24)254番目がアスパラギン酸、260番目がアラニン、
(25)260番目がアラニン、
(26)260番目がアラニン、278番目がグリシン、307番目がバリン、
(27)260番目がアラニン、299番目がアラニン、
(28)260番目がアラニン、305番目がグリシン、
(29)260番目がアラニン、310番目がスレオニン、
(30)260番目がシステイン、
(31)260番目がグリシン、
(32)260番目がグルタミン、
(33)260番目がスレオニン、
(34)262番目がシステイン、
(35)270番目がイソロイシン、
のいずれかで示されるアミノ酸置換が導入されたアミノ酸配列である。
【0092】
前記(3-4A)~(3-4D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列を、「グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子」として利用することができる。
【0093】
チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株のグルタチオン合成酵素の配列番号68に示すアミノ酸配列において、第260位のバリンがアラニンに置換された活性変異体のアミノ酸配列(配列番号70)をコードする塩基配列の一例を配列番号69に示す。チオバチルス・デニトリフィキャンスATCC25259株のグルタチオン合成酵素の活性変異体のアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列は、宿主に合わせてコドン最適化したものであってもよい。例えば配列番号70のアミノ酸配列をコードする、大腸菌での発現にコドン最適化した塩基配列を配列番号69に示す。
【0094】
<4.二機能性グルタチオン合成酵素>
二機能性グルタチオン合成酵素は、ATP存在下でL-システインを基質として認識し、L-グルタミン酸と結合させることでγ-グルタミルシステインを生成する反応を触媒する活性及びATP存在下でγ-グルタミルシステインを基質として認識し、グリシンと結合させることでグルタチオンを生成する反応を触媒する活性を併せ持つ酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。本明細書において、当該活性を、二機能性グルタチオン合成酵素活性という。当該活性の1Uは、30℃で1分間に1μmolのグルタチオンを生成する活性を意味し、以下の測定条件で測定したものである。
【0095】
(測定条件)
10mM ATP、15mM L-グルタミン酸、15mM L-システイン、15mMグリシン、10mM 硫酸マグネシウムを含有する50mMトリス塩酸塩緩衝液(pH8.0)に酵素液を添加して30℃で保温することで反応を行い、6N 塩酸を添加することで反応を停止させる。高速液体クロマトグラフィーを用いて反応液中のグルタチオンを定量する。
【0096】
高速液体クロマトグラフィーの条件は、グルタミン酸-システインリガーゼの活性測定法に関して上述したのと同じ条件を用いる。
【0097】
二機能性グルタチオン合成酵素としてはタンパク質1mgあたりの二機能性グルタチオン合成酵素活性(比活性)が0.5U以上のものを使用することが好ましい。
【0098】
「二機能性グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子」とは、二機能性グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。二機能性グルタチオン合成酵素の発現を強化した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0099】
二機能性グルタチオン合成酵素の起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来の二機能性グルタチオン合成酵素が好ましい。特に細菌由来二機能性グルタチオン合成酵素が好ましく、具体的には、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌;ラクトバシルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)等のラクトバシルス(Lactobacillus)属細菌;デスルフォタレア・サイクロフィラ(Desulfotalea psychrophila)等のデスルフォタレア(Desulfotalea)属細菌;クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)等のクロストリジウム(Clostridium)属細菌;リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、リステリア・モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)等のリステリア(Listeria)属細菌;エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス(Enterococcus)属細菌;パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)等のパスツレラ(Pasteurella)属細菌;マンハイミア・スクシニシプロデュセンス(Mannheimia succiniciprodecens)等のマンハイミア(Mannheimia)属細菌;及び、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)等のヘモフィルス(Haemophilus)属細菌からなる群から選択される少なくとも1種に由来する二機能性グルタチオン合成酵素が好ましい。
【0100】
ストレプトコッカス・アガラクチエ由来の二機能性グルタチオン合成酵素の塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号71及び配列番号72に示す。なお配列番号71の塩基配列は、配列番号72に示すアミノ酸配列からなるストレプトコッカス・アガラクチエ由来二機能性グルタチオン合成酵素をコードする塩基配列であって、大腸菌でのコドン使用頻度に適合させた塩基配列である。
【0101】
二機能性グルタチオン合成酵素としてはまた、配列番号72に示すアミノ酸配列からなる二機能性グルタチオン合成酵素に限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有する他のポリペプチドも使用できる。二機能性グルタチオン合成酵素活性を有する他のポリペプチドは、好ましくは、上記の活性測定条件において、配列番号72に示すアミノ酸配列からなる二機能性グルタチオン合成酵素を用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の活性を示すポリペプチドである。
【0102】
二機能性グルタチオン合成酵素の具体例としては、
(4A)配列番号72に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(4B)配列番号72に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号72に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;
(4C)配列番号72に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチド;又は
(4D)(4A)~(4C)のいずれかのポリペプチドの、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有する断片
であることができる。
【0103】
前記(4D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは600以上、より好ましくは700以上、より好ましくは730以上のポリペプチドを用いることができる。
【0104】
前記(4B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0105】
「二機能性グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子」とは、二機能性グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。
【0106】
二機能性グルタチオン合成酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(4E)配列番号71に示す塩基配列;
(4F)配列番号71に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号71に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(4G)配列番号71に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(4H)(4E)~(4G)のいずれかの塩基配列の、二機能性グルタチオン合成酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(4I)(4E)~(4H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(4J)(4A)~(4D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(4K)(4E)~(4J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0107】
前記(4F)及び(4I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0108】
<5.トリプトファナーゼ>
トリプトファナーゼ(EC:4.1.99.1)はシステインを分解する活性を有する酵素タンパク質である。
微生物におけるトリプトファナーゼとしてTnaAが例示できる。TnaAのアミノ酸配列をコードする遺伝子が、tnaAである。
「トリプトファナーゼ(EC:4.1.99.1)をコードする遺伝子」とは、トリプトファナーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。トリプトファナーゼをコードする遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0109】
TnaAタンパク質の具体例としては、
(5A)配列番号36に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(5B)配列番号36に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号36に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、トリプトファナーゼ活性を有するポリペプチド;
(5C)配列番号36に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、トリプトファナーゼ活性を有するポリペプチド;又は
(5D)(5A)~(5C)のいずれかのポリペプチドの、トリプトファナーゼ活性を有する断片
であることができる。
【0110】
前記(5D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは450以上であることができる。
【0111】
前記(5B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0112】
「tnaA遺伝子」とは、TnaAのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれる。
【0113】
大腸菌に由来する、TnaAの配列番号36に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号35に示す。ただし野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号35の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号35の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号35の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0114】
すなわち、TnaAのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはtnaA遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(5E)配列番号35に示す塩基配列;
(5F)配列番号35に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号35に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、トリプトファナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(5G)配列番号35に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、トリプトファナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(5H)(5E)~(5G)のいずれかの塩基配列の、トリプトファナーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(5I)(5E)~(5H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(5J)(5A)~(5D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(5K)(5E)~(5J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0115】
前記(5F)及び(5I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0116】
<6.トリペプチドペプチダーゼ>
トリペプチドペプチダーゼ(EC:3.4.11.4)は、トリペプチドからN末端アミノ酸残基を遊離させる反応を触媒する酵素である。
【0117】
「トリペプチドペプチダーゼ(EC:3.4.11.4)をコードする遺伝子」とは、トリペプチドペプチダーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。トリペプチドペプチダーゼをコードする遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0118】
トリペプチドペプチダーゼの具体例としては、
(6A)配列番号24に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(6B)配列番号24に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号24に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、トリペプチドペプチダーゼ活性を有するポリペプチド;
(6C)配列番号24に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、トリペプチドペプチダーゼ活性を有するポリペプチド;又は
(6D)(6A)~(6C)のいずれかのポリペプチドの、トリペプチドペプチダーゼ活性を有する断片
であることができる。
【0119】
前記(6D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは350以上のポリペプチドであることができる。
【0120】
前記(6B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0121】
大腸菌に由来する、トリペプチドペプチダーゼの配列番号24に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号23に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号23の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号23の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号23の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0122】
すなわち、トリペプチドペプチダーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(6E)配列番号23に示す塩基配列;
(6F)配列番号23に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号23に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、トリペプチドペプチダーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(6G)配列番号23に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、トリペプチドペプチダーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(6H)(6E)~(6G)のいずれかの塩基配列の、トリペプチドペプチダーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(6I)(6E)~(6H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(6J)(6A)~(6D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(6K)(6E)~(6J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0123】
前記(6F)及び(6I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0124】
<7.グルタチオンレダクターゼ>
グルタチオンレダクターゼ(EC:1.8.1.7)は、NADPHの存在下で酸化型グルタチオン(グルタチオンジスルフィド)を還元して還元型グルタチオンを生成する反応を触媒する酵素である。
【0125】
「グルタチオンレダクターゼ(EC:1.8.1.7)をコードする遺伝子」とは、グルタチオンレダクターゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。グルタチオンレダクターゼをコードする遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0126】
グルタチオンレダクターゼの具体例としては、
(7A)配列番号26に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(7B)配列番号26に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号26に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、グルタチオンレダクターゼ活性を有するポリペプチド;
(7C)配列番号26に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、グルタチオンレダクターゼ活性を有するポリペプチド;又は
(7D)(7A)~(7C)のいずれかのポリペプチドの、グルタチオンレダクターゼ活性を有する断片
であることができる。
【0127】
前記(7D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上のポリペプチドであることができる。
【0128】
前記(7B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0129】
大腸菌に由来する、グルタチオンレダクターゼの配列番号26に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号25に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号25の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号25の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号25の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0130】
すなわち、グルタチオンレダクターゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(7E)配列番号25に示す塩基配列;
(7F)配列番号25に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号25に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、グルタチオンレダクターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(7G)配列番号25に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、グルタチオンレダクターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(7H)(7E)~(7G)のいずれかの塩基配列の、グルタチオンレダクターゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(7I)(7E)~(7H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(7J)(7A)~(7D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(7K)(7E)~(7J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0131】
前記(7F)及び(7I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0132】
<8.グルタチオン取込みに関与するタンパク質>
グルタチオン取込みに関与するタンパク質は、細胞外に存在するグルタチオンを細胞内に取り込む機能を有するタンパク質である。
【0133】
微生物におけるグルタチオン取込みに関与するタンパク質として、YliA(グルタチオン輸送システムATP結合タンパク質)、YliB(グルタチオン輸送システム基質結合タンパク質)、YliC(グルタチオン輸送システムパーミアーゼタンパク質)、及び、YliD(グルタチオン輸送システムパーミアーゼタンパク質)から選択される1以上が例示できる。YliA、YliB、YliC及びYliDのアミノ酸配列をコードする遺伝子が、それぞれyliA、yliB、yliC及びyliDである。yliA、yliB、yliC及びyliDは、微生物のゲノムDNA上でオペロンを形成しており、yliAの上流に位置するプロモーターにより発現が制御される。YliA、YliB、YliC及びYliDタンパク質を総称して「YliABCD」、yliA、yliB、yliC及びyliD遺伝子を総称して「yliABCD」と表す場合がある。
【0134】
「グルタチオン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子」は、グルタチオン取込みに関与するタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。当該遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0135】
後述する本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、好ましくは、yliA、yliB、yliC及びyliDから選択される1以上の遺伝子が欠損しており、より好ましくはyliA、yliB、yliC及びyliD遺伝子が欠損している。
【0136】
YliAタンパク質(グルタチオン輸送システムATP結合タンパク質)の具体例としては、
(8-1A)配列番号28に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(8-1B)配列番号28に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号28に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、YliAとしての活性を有するポリペプチド;
(8-1C)配列番号28に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、YliAとしての活性を有するポリペプチド;又は
(8-1D)(8-1A)~(8-1C)のいずれかのポリペプチドの、YliAとしての活性を有する断片
であることができる。
【0137】
前記(8-1B)~(8-1D)、及び、後述する(8-1F)~(8-1H)において、「YliAとしての活性を有する」とは、配列番号28に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、グルタチオン輸送システムATP結合活性、を有することを指す。
【0138】
前記(8-1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは600以上のポリペプチドであることができる。
【0139】
前記(8-1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0140】
「yliA遺伝子」とは、YliAのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれる。
【0141】
大腸菌に由来する、YliAの配列番号28に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号27に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号27の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号27の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号27の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0142】
すなわち、YliAのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはyliA遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(8-1E)配列番号27に示す塩基配列;
(8-1F)配列番号27に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号27に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、YliAとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-1G)配列番号27に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、YliAとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-1H)(8-1E)~(8-1G)のいずれかの塩基配列の、YliAとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(8-1I)(8-1E)~(8-1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(8-1J)(8-1A)~(8-1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(8-1K)(8-1E)~(8-1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0143】
前記(8-1F)及び(8-1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0144】
YliBタンパク質(グルタチオン輸送システム基質結合タンパク質)の具体例としては、
(8-2A)配列番号30に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(8-2B)配列番号30に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号30に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、YliBとしての活性を有するポリペプチド;
(8-2C)配列番号30に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、YliBとしての活性を有するポリペプチド;又は
(8-2D)(8-2A)~(8-2C)のいずれかのポリペプチドの、YliBとしての活性を有する断片
であることができる。
【0145】
前記(8-2B)~(8-2D)、及び、後述する(8-2F)~(8-2H)において、「YliBとしての活性を有する」とは、配列番号30に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、グルタチオン輸送システム基質結合活性、を有することを指す。
【0146】
前記(8-2D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上のポリペプチドであることができる。
【0147】
前記(8-2B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0148】
「yliB遺伝子」とは、YliBのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれる。
【0149】
大腸菌に由来する、YliBの配列番号30に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号29に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号29の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号29の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号29の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0150】
すなわち、YliBのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはyliB遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(8-2E)配列番号29に示す塩基配列;
(8-2F)配列番号29に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号29に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、YliBとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-2G)配列番号29に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、YliBとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-2H)(8-2E)~(8-2G)のいずれかの塩基配列の、YliBとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(8-2I)(8-2E)~(8-2H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(8-2J)(8-2A)~(8-2D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(8-2K)(8-2E)~(8-2J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0151】
前記(8-2F)及び(8-2I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0152】
YliCタンパク質(グルタチオン輸送システムパーミアーゼタンパク質)の具体例としては、
(8-3A)配列番号32に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(8-3B)配列番号32に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号32に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、YliCとしての活性を有するポリペプチド;
(8-3C)配列番号32に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、YliCとしての活性を有するポリペプチド;又は
(8-3D)(8-3A)~(8-3C)のいずれかのポリペプチドの、YliCとしての活性を有する断片
であることができる。
【0153】
前記(8-3B)~(8-3D)、及び、後述する(8-3F)~(8-3H)において、「YliCとしての活性を有する」とは、配列番号32に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、グルタチオン輸送システムパーミアーゼ活性、を有することを指す。
【0154】
前記(8-3D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0155】
前記(8-3B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0156】
「yliC遺伝子」とは、YliCのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれる。
【0157】
大腸菌に由来する、YliCの配列番号32に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号31に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号31の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号31の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号31の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0158】
すなわち、YliCのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはyliC遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(8-3E)配列番号31に示す塩基配列;
(8-3F)配列番号31に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号31に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、YliCとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-3G)配列番号31に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、YliCとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-3H)(8-3E)~(8-3G)のいずれかの塩基配列の、YliCとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(8-3I)(8-3E)~(8-3H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(8-3J)(8-3A)~(8-3D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(8-3K)(8-3E)~(8-3J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0159】
前記(8-3F)及び(8-3I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0160】
YliDタンパク質(グルタチオン輸送システムパーミアーゼタンパク質)の具体例としては、
(8-4A)配列番号34に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(8-4B)配列番号34に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号34に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、YliDとしての活性を有するポリペプチド;
(8-4C)配列番号34に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、YliDとしての活性を有するポリペプチド;又は
(8-4D)(8-4A)~(8-4C)のいずれかのポリペプチドの、YliDとしての活性を有する断片
であることができる。
【0161】
前記(8-4B)~(8-4D)、及び、後述する(8-4F)~(8-4H)において、「YliDとしての活性を有する」とは、配列番号34に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、グルタチオン輸送システムパーミアーゼ活性、を有することを指す。
【0162】
前記(8-4D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0163】
前記(8-4B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0164】
「yliD遺伝子」とは、YliDのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれる。
【0165】
大腸菌に由来する、YliDの配列番号34に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号33に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号33の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号33の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号33の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0166】
すなわち、YliDのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはyliD遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(8-4E)配列番号33に示す塩基配列;
(8-4F)配列番号33に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号33に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、YliDとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-4G)配列番号33に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、YliDとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(8-4H)(8-4E)~(8-4G)のいずれかの塩基配列の、YliDとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(8-4I)(8-4E)~(8-4H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(8-4J)(8-4A)~(8-4D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(8-4K)(8-4E)~(8-4J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0167】
前記(8-4F)及び(8-4I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0168】
<9.プトレシン排出に関与するタンパク質>
プトレシンは下記の構造を有する化合物であり、微生物細胞において生合成される。
【化1】
【0169】
プトレシンは微生物細胞においてタンパク質合成及び細胞増殖を促進する作用を有することが知られている。しかしながら、微生物細胞中でのプトレシン濃度と、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性との関係は従来検討されていない。
【0170】
「プトレシン排出に関与するタンパク質をコードする遺伝子」とは、プトレシン排出に関与するタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。プトレシン排出に関与するタンパク質をコードする遺伝子のうち1以上の発現が強化された微生物株は、野生型微生物株と比較して、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が高い。この遺伝子改変は、細胞内のプトレシン濃度を低減させると推定される。
【0171】
プトレシン排出に関与するタンパク質は、細胞内に存在するプトレシンを細胞外に排出する機能を有するタンパク質である。
【0172】
微生物におけるプトレシン排出に関与するタンパク質として、カチオン性ペプチド輸送システム基質結合タンパク質、カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼタンパク質、及び、カチオン性ペプチド輸送システムATP結合タンパク質から選択される1以上のタンパク質が挙げられる。これらに限らずプトレシン排出に関与するタンパク質であれば、それをコードする遺伝子のうち1以上の発現を強化することで、微生物株によるγ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性を高めることができる。
【0173】
カチオン性ペプチド輸送システム基質結合タンパク質としてはSapAが例示できる。SapAは大腸菌に由来するタンパク質である。カチオン性ペプチド輸送システム基質結合タンパク質は、SapAとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、カチオン性ペプチド輸送システム基質結合活性を有し、プトレシン排出に関与するタンパク質であればよい。
【0174】
カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼタンパク質としてはSapB及びSapCが例示できる。SapB及びSapCは大腸菌に由来するタンパク質である。カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼタンパク質は、SapB又はSapCとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼ活性を有し、プトレシン排出に関与するタンパク質であればよい。
【0175】
カチオン性ペプチド輸送システムATP結合タンパク質としてはSapD及びSapFが例示できる。SapD及びSapFは大腸菌に由来するタンパク質である。カチオン性ペプチド輸送システムATP結合タンパク質は、SapD又はSapFとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、カチオン性ペプチド輸送システムATP結合活性を有し、プトレシン排出に関与するタンパク質であればよい。
【0176】
微生物におけるプトレシン排出に関与するタンパク質は好ましくはSapA、SapB、SapC、SapD及びSapFから選択される1以上である。SapA、SapB、SapC、SapD及びSapFのアミノ酸配列をコードする遺伝子が、それぞれsapA、sapB、sapC、sapD及びsapFである。sapA、sapB、sapC、sapD及びsapFは、微生物のゲノムDNA上でオペロンを形成しており、sapAの上流に位置するプロモーターにより発現が制御される。SapA、SapB、SapC、SapD及びSapFタンパク質を総称して「SapABCDF」、sapA、sapB、sapC、sapD及びsapF遺伝子を総称して「sapABCDF」と表す場合がある。
【0177】
「プトレシン排出に関与するタンパク質をコードする遺伝子」は、プトレシン排出に関与するタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0178】
後述する本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、好ましくは、sapA、sapB、sapC、sapD及びsapFから選択される1以上の遺伝子の発現が強化されており、より好ましくは、sapA、sapB、sapC、sapD及びsapFの全部の遺伝子の発現が強化されている。
【0179】
SapAタンパク質(カチオン性ペプチド輸送システム基質結合タンパク質)の具体例としては、
(9-1A)配列番号38に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(9-1B)配列番号38に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号38に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、SapAとしての活性を有するポリペプチド;
(9-1C)配列番号38に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、SapAとしての活性を有するポリペプチド;又は
(9-1D)(9-1A)~(9-1C)のいずれかのポリペプチドの、SapAとしての活性を有する断片
であることができる。
【0180】
前記(9-1B)~(9-1D)、及び、後述する(9-1F)~(9-1H)において、「SapAとしての活性を有する」とは、配列番号38に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、カチオン性ペプチド輸送システム基質結合活性、を有することを指す。
【0181】
前記(9-1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上のポリペプチドであることができる。
【0182】
前記(9-1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0183】
「sapA遺伝子」とは、SapAのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0184】
大腸菌に由来する、SapAの配列番号38に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号37に示す。ただし微生物株のゲノムDNAでは、配列番号37の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号37の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号37の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0185】
すなわち、SapAのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはsapA遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(9-1E)配列番号37に示す塩基配列;
(9-1F)配列番号37に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号37に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、SapAとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-1G)配列番号37に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、SapAとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-1H)(9-1E)~(9-1G)のいずれかの塩基配列の、SapAとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(9-1I)(9-1E)~(9-1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(9-1J)(9-1A)~(9-1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(9-1K)(9-1E)~(9-1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0186】
前記(9-1F)及び(9-1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0187】
SapBタンパク質(カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼタンパク質)の具体例としては、
(9-2A)配列番号40に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(9-2B)配列番号40に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号40に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、SapBとしての活性を有するポリペプチド;
(9-2C)配列番号40に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、SapBとしての活性を有するポリペプチド;又は
(9-2D)(9-2A)~(9-2C)のいずれかのポリペプチドの、SapBとしての活性を有する断片
であることができる。
【0188】
前記(9-2B)~(9-2D)、及び、後述する(9-2F)~(9-2H)において、「SapBとしての活性を有する」とは、配列番号40に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼ活性、を有することを指す。
【0189】
前記(9-2D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0190】
前記(9-2B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0191】
「sapB遺伝子」とは、SapBのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0192】
大腸菌に由来する、SapBの配列番号40に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号39に示す。ただし微生物株のゲノムDNAでは、配列番号39の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号39の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号39の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0193】
すなわち、SapBのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはsapB遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(9-2E)配列番号39に示す塩基配列;
(9-2F)配列番号39に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号39に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、SapBとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-2G)配列番号39に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、SapBとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-2H)(9-2E)~(9-2G)のいずれかの塩基配列の、SapBとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(9-2I)(9-2E)~(9-2H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(9-2J)(9-2A)~(9-2D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(9-2K)(9-2E)~(9-2J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0194】
前記(9-2F)及び(9-2I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0195】
SapCタンパク質(カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼタンパク質)の具体例としては、
(9-3A)配列番号42に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(9-3B)配列番号42に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号42に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、SapCとしての活性を有するポリペプチド;
(9-3C)配列番号42に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、SapCとしての活性を有するポリペプチド;又は
(9-3D)(9-3A)~(9-3C)のいずれかのポリペプチドの、SapCとしての活性を有する断片
であることができる。
【0196】
前記(9-3B)~(9-3D)、及び、後述する(9-3F)~(9-3H)において、「SapCとしての活性を有する」とは、配列番号42に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、カチオン性ペプチド輸送システムパーミアーゼ活性、を有することを指す。
【0197】
前記(9-3D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上のポリペプチドであることができる。
【0198】
前記(9-3B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0199】
「sapC遺伝子」とは、SapCのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0200】
大腸菌に由来する、SapCの配列番号42に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号41に示す。ただし微生物株のゲノムDNAでは、配列番号41の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号41の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号41の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0201】
すなわち、SapCのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはsapC遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(9-3E)配列番号41に示す塩基配列;
(9-3F)配列番号41に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号41に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、SapCとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-3G)配列番号41に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、SapCとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-3H)(9-3E)~(9-3G)のいずれかの塩基配列の、SapCとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(9-3I)(9-3E)~(9-3H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(9-3J)(9-3A)~(9-3D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(9-3K)(9-3E)~(9-3J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0202】
前記(9-3F)及び(9-3I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0203】
SapDタンパク質(カチオン性ペプチド輸送システムATP結合タンパク質)の具体例としては、
(9-4A)配列番号44に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(9-4B)配列番号44に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号44に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、SapDとしての活性を有するポリペプチド;
(9-4C)配列番号44に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、SapDとしての活性を有するポリペプチド;又は
(9-4D)(9-4A)~(9-4C)のいずれかのポリペプチドの、SapDとしての活性を有する断片
であることができる。
【0204】
前記(9-4B)~(9-4D)、及び、後述する(9-4F)~(9-4H)において、「SapDとしての活性を有する」とは、配列番号44に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、カチオン性ペプチド輸送システムATP結合活性、を有することを指す。
【0205】
前記(9-4D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0206】
前記(9-4B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0207】
「sapD遺伝子」とは、SapDのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0208】
大腸菌に由来する、SapDの配列番号44に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号43に示す。ただし微生物株のゲノムDNAでは、配列番号43の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号43の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号43の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0209】
すなわち、SapDのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはsapD遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(9-4E)配列番号43に示す塩基配列;
(9-4F)配列番号43に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号43に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、SapDとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-4G)配列番号43に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、SapDとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-4H)(9-4E)~(9-4G)のいずれかの塩基配列の、SapDとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(9-4I)(9-4E)~(9-4H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(9-4J)(9-4A)~(9-4D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(9-4K)(9-4E)~(9-4J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0210】
前記(9-4F)及び(9-4I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0211】
SapFタンパク質(カチオン性ペプチド輸送システムATP結合タンパク質)の具体例としては、
(9-5A)配列番号46に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(9-5B)配列番号46に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号46に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、SapFとしての活性を有するポリペプチド;
(9-5C)配列番号46に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、SapFとしての活性を有するポリペプチド;又は
(9-5D)(9-5A)~(9-5C)のいずれかのポリペプチドの、SapFとしての活性を有する断片
であることができる。
【0212】
前記(9-5B)~(9-5D)、及び、後述する(9-5F)~(9-5H)において、「SapFとしての活性を有する」とは、配列番号46に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、カチオン性ペプチド輸送システムATP結合活性、を有することを指す。
【0213】
前記(9-5D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上のポリペプチドであることができる。
【0214】
前記(9-5B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0215】
「sapF遺伝子」とは、SapFのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0216】
大腸菌に由来する、SapFの配列番号46に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号45に示す。ただし微生物株のゲノムDNAでは、配列番号45の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号45の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号45の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0217】
すなわち、SapFのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはsapF遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(9-5E)配列番号45に示す塩基配列;
(9-5F)配列番号45に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号45に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、SapFとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-5G)配列番号45に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、SapFとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(9-5H)(9-5E)~(9-5G)のいずれかの塩基配列の、SapFとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(9-5I)(9-5E)~(9-5H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(9-5J)(9-5A)~(9-5D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(9-5K)(9-5E)~(9-5J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0218】
前記(9-5F)及び(9-5I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0219】
<10.プトレシン取込みに関与するタンパク質>
プトレシン取込みに関与するタンパク質は、細胞外に存在するプトレシンを細胞内に取り込む機能を有するタンパク質である。
【0220】
「プトレシン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子」とは、プトレシン取込みに関与するタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。当該遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0221】
微生物におけるプトレシン取込みに関与するタンパク質として、プトレシン輸送システム基質結合タンパク質、プトレシン輸送システムATP結合タンパク質、プトレシン輸送システムパーミアーゼタンパク質、プトレシンインポーター、及び、プトレシンオルニチンアンチポーターから選択される1以上のタンパク質が挙げられる。これらに限らずプトレシン取込みに関与するタンパク質であれば、それをコードする遺伝子のうち1以上を欠損することで、微生物株によるγ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性を高めることができる。
【0222】
プトレシン輸送システム基質結合タンパク質としてはPotFが例示できる。PotFは大腸菌に由来するタンパク質である。プトレシン輸送システム基質結合タンパク質は、PotFとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、プトレシン輸送システム基質結合活性を有し、プトレシン取込みに関与するタンパク質であればよい。
【0223】
プトレシン輸送システムATP結合タンパク質としてはPotGが例示できる。PotGは大腸菌に由来するタンパク質である。プトレシン輸送システムATP結合タンパク質は、PotGとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、プトレシン輸送システムATP結合活性を有し、プトレシン取込みに関与するタンパク質であればよい。
【0224】
プトレシン輸送システムパーミアーゼタンパク質としてはPotH及びPotIが例示できる。PotH及びPotIは大腸菌に由来するタンパク質である。プトレシン輸送システムパーミアーゼタンパク質は、PotH又はPotIとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、プトレシン輸送システムパーミアーゼ活性を有し、プトレシン取込みに関与するタンパク質であればよい。
【0225】
プトレシンインポーターとしてはPuuPが例示できる。PuuPは大腸菌に由来するタンパク質である。プトレシンインポーターは、PuuPとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、プトレシンインポーター活性を有し、プトレシン取込みに関与するタンパク質であればよい。
【0226】
プトレシンオルニチンアンチポーターとしてはPotEが例示できる。PotEは大腸菌に由来するタンパク質である。プトレシンオルニチンアンチポーターは、PotEとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、プトレシンオルニチンアンチポーター活性を有し、プトレシン取込みに関与するタンパク質であればよい。
【0227】
微生物におけるプトレシン取込みに関与するタンパク質は好ましくはPotF、PotG、PotH、PotI、PuuP及びPotEから選択される1以上である。PotF、PotG、PotH、PotI、PuuP及びPotEのアミノ酸配列をコードする遺伝子が、それぞれpotF、potG、potH、potI、puuP及びpotEである。このうち、potF、potG、potH及びpotIは、微生物のゲノムDNA上でオペロンを形成しており、potFの上流に位置するプロモーターにより発現が制御される。PotF、PotG、PotH及びPotIタンパク質を総称して「PotFGHI」、potF、potG、potH及びpotI遺伝子を総称して「potFGHI」と表す場合がある。
【0228】
「プトレシン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子」は、プトレシン取込みに関与するタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0229】
後述する本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、好ましくは、プトレシン輸送システム基質結合タンパク質、プトレシン輸送システムATP結合タンパク質、及び、プトレシン輸送システムパーミアーゼタンパク質から選択される1以上をコードする遺伝子が欠損しており、より好ましくはこれらの全ての遺伝子が欠損している。
【0230】
後述する本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、好ましくは、プトレシンインポーターをコードする遺伝子が欠損している。
【0231】
後述する本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、好ましくは、プトレシンオルニチンアンチポーターをコードする遺伝子が欠損している。
【0232】
後述する本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、好ましくは、potF、potG、potH、potI、puuP及びpotEから選択される1以上の遺伝子が欠損しており、より好ましくは、potF、potG、potH、potI及びpuuP遺伝子が欠損している、或いは、puuP遺伝子が欠損している、或いは、potE遺伝子が欠損している。
【0233】
PotFタンパク質(プトレシン輸送システム基質結合タンパク質)の具体例としては、
(10-1A)配列番号54に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(10-1B)配列番号54に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号54に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、PotFとしての活性を有するポリペプチド;
(10-1C)配列番号54に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、PotFとしての活性を有するポリペプチド;又は
(10-1D)(10-1A)~(10-1C)のいずれかのポリペプチドの、PotFとしての活性を有する断片
であることができる。
【0234】
前記(10-1B)~(10-1D)、及び、後述する(10-1F)~(10-1H)において、「PotFとしての活性を有する」とは、配列番号54に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、プトレシン輸送システム基質結合活性、を有することを指す。
【0235】
前記(10-1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは350以上のポリペプチドであることができる。
【0236】
前記(10-1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0237】
「potF遺伝子」とは、PotFのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0238】
大腸菌に由来する、PotFの配列番号54に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号53に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号53の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号53の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号53の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0239】
すなわち、PotFのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはpotF遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(10-1E)配列番号53に示す塩基配列;
(10-1F)配列番号53に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号53に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、PotFとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-1G)配列番号53に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、PotFとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-1H)(10-1E)~(10-1G)のいずれかの塩基配列の、PotFとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(10-1I)(10-1E)~(10-1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(10-1J)(10-1A)~(10-1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(10-1K)(10-1E)~(10-1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0240】
前記(10-1F)及び(10-1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0241】
PotGタンパク質(プトレシン輸送システムATP結合タンパク質)の具体例としては、
(10-2A)配列番号56に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(10-2B)配列番号56に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号56に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、PotGとしての活性を有するポリペプチド;
(10-2C)配列番号56に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、PotGとしての活性を有するポリペプチド;又は
(10-2D)(10-2A)~(10-2C)のいずれかのポリペプチドの、PotGとしての活性を有する断片
であることができる。
【0242】
前記(10-2B)~(10-2D)、及び、後述する(10-2F)~(10-2H)において、「PotGとしての活性を有する」とは、配列番号56に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、プトレシン輸送システムATP結合活性、を有することを指す。
【0243】
前記(10-2D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは350以上のポリペプチドであることができる。
【0244】
前記(10-2B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0245】
「potG遺伝子」とは、PotGのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0246】
大腸菌に由来する、PotGの配列番号56に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号55に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号55の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号55の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号55の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0247】
すなわち、PotGのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはpotG遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(10-2E)配列番号55に示す塩基配列;
(10-2F)配列番号55に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号55に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、PotGとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-2G)配列番号55に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、PotGとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-2H)(10-2E)~(10-2G)のいずれかの塩基配列の、PotGとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(10-2I)(10-2E)~(10-2H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(10-2J)(10-2A)~(10-2D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(10-2K)(10-2E)~(10-2J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0248】
前記(10-2F)及び(10-2I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0249】
PotHタンパク質(プトレシン輸送システムパーミアーゼタンパク質)の具体例としては、
(10-3A)配列番号58に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(10-3B)配列番号58に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号58に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、PotHとしての活性を有するポリペプチド;
(10-3C)配列番号58に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、PotHとしての活性を有するポリペプチド;又は
(10-3D)(10-3A)~(10-3C)のいずれかのポリペプチドの、PotHとしての活性を有する断片
であることができる。
【0250】
前記(10-3B)~(10-3D)、及び、後述する(10-3F)~(10-3H)において、「PotHとしての活性を有する」とは、配列番号58に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、プトレシン輸送システムパーミアーゼ活性、を有することを指す。
【0251】
前記(10-3D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0252】
前記(10-3B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0253】
「potH遺伝子」とは、PotHのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0254】
大腸菌に由来する、PotHの配列番号58に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号57に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号57の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号57の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号57の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0255】
すなわち、PotHのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはpotH遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(10-3E)配列番号57に示す塩基配列;
(10-3F)配列番号57に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号57に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、PotHとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-3G)配列番号57に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、PotHとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-3H)(10-3E)~(10-3G)のいずれかの塩基配列の、PotHとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(10-3I)(10-3E)~(10-3H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(10-3J)(10-3A)~(10-3D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(10-3K)(10-3E)~(10-3J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0256】
前記(10-3F)及び(10-3I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0257】
PotIタンパク質(プトレシン輸送システムパーミアーゼタンパク質)の具体例としては、
(10-4A)配列番号60に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(10-4B)配列番号60に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号60に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、PotIとしての活性を有するポリペプチド;
(10-4C)配列番号60に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、PotIとしての活性を有するポリペプチド;又は
(10-4D)(10-4A)~(10-4C)のいずれかのポリペプチドの、PotIとしての活性を有する断片
であることができる。
【0258】
前記(10-4B)~(10-4D)、及び、後述する(10-4F)~(10-4H)において、「PotIとしての活性を有する」とは、配列番号60に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、プトレシン輸送システムパーミアーゼ活性、を有することを指す。
【0259】
前記(10-4D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは150以上、より好ましくは200以上、より好ましくは250以上のポリペプチドであることができる。
【0260】
前記(10-4B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0261】
「potI遺伝子」とは、PotIのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0262】
大腸菌に由来する、PotIの配列番号60に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号59に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号59の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号59の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号59の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0263】
すなわち、PotIのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはpotI遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(10-4E)配列番号59に示す塩基配列;
(10-4F)配列番号59に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号59に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、PotIとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-4G)配列番号59に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、PotIとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-4H)(10-4E)~(10-4G)のいずれかの塩基配列の、PotIとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(10-4I)(10-4E)~(10-4H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(10-4J)(10-4A)~(10-4D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(10-4K)(10-4E)~(10-4J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0264】
前記(10-4F)及び(10-4I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0265】
PuuPタンパク質(プトレシンインポーター)の具体例としては、
(10-5A)配列番号62に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(10-5B)配列番号62に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号62に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、PuuPとしての活性を有するポリペプチド;
(10-5C)配列番号62に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、PuuPとしての活性を有するポリペプチド;又は
(10-5D)(10-5A)~(10-5C)のいずれかのポリペプチドの、PuuPとしての活性を有する断片
であることができる。
【0266】
前記(10-5B)~(10-5D)、及び、後述する(10-5F)~(10-5H)において、「PuuPとしての活性を有する」とは、配列番号62に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、プトレシンインポーター活性、を有することを指す。
【0267】
前記(10-5D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは450以上のポリペプチドであることができる。
【0268】
前記(10-5B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0269】
「puuP遺伝子」とは、PuuPのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0270】
大腸菌に由来する、PuuPの配列番号62に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号61に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号61の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号61の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号61の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0271】
すなわち、PuuPのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはpuuP遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(10-5E)配列番号61に示す塩基配列;
(10-5F)配列番号61に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号61に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、PuuPとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-5G)配列番号61に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、PuuPとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-5H)(10-5E)~(10-5G)のいずれかの塩基配列の、PuuPとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(10-5I)(10-5E)~(10-5H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(10-5J)(10-5A)~(10-5D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(10-5K)(10-5E)~(10-5J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0272】
前記(10-5F)及び(10-5I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0273】
PotEタンパク質(プトレシンオルニチンアンチポーター)の具体例としては、
(10-6A)配列番号64に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(10-6B)配列番号64に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号64に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、PotEとしての活性を有するポリペプチド;
(10-6C)配列番号64に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、PotEとしての活性を有するポリペプチド;又は
(10-6D)(10-6A)~(10-6C)のいずれかのポリペプチドの、PotEとしての活性を有する断片
であることができる。
【0274】
前記(10-6B)~(10-6D)、及び、後述する(10-6F)~(10-6H)において、「PotEとしての活性を有する」とは、配列番号64に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの機能、特に、プトレシンオルニチンアンチポーター活性、を有することを指す。
【0275】
前記(10-6D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは420以上のポリペプチドであることができる。
【0276】
前記(10-6B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0277】
「potE遺伝子」とは、PotEのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0278】
大腸菌に由来する、PotEの配列番号64に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号63に示す。ただし当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号63の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号63の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号63の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0279】
すなわち、PotEのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはpotE遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(10-6E)配列番号63に示す塩基配列;
(10-6F)配列番号63に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号63に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、PotEとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-6G)配列番号63に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、PotEとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(10-6H)(10-6E)~(10-6G)のいずれかの塩基配列の、PotEとしての活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(10-6I)(10-6E)~(10-6H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(10-6J)(10-6A)~(10-6D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(10-6K)(10-6E)~(10-6J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0280】
前記(10-6F)及び(10-6I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0281】
<11.プトレシン合成に関与するタンパク質>
微生物株の細胞内でプトレシンは生合成され、複数の酵素タンパク質が関与することが知られている。
「プトレシン合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子」とは、プトレシン合成に関与するタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。当該遺伝子を欠損した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
微生物において、プトレシン合成に関与するタンパク質として、EC:4.1.1.19の酵素タンパク質(アルギニンデカルボキシラーゼ)、EC:3.5.3.11の酵素タンパク質(アグマチナーゼ)、及び、EC:4.1.1.17の酵素タンパク質(オルニチンデカルボキシラーゼ)が知られている。これらに限らずプトレシン合成に関与するタンパク質であれば、それをコードする遺伝子のうち1以上を欠損することで、微生物株によるγ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性を高めることができる。
【0282】
EC:4.1.1.19(アルギニンデカルボキシラーゼ)の酵素タンパク質の具体例としては、SpeAが挙げられる。SpeAは大腸菌に由来するタンパク質である。EC:4.1.1.19の酵素タンパク質は、SpeAとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有し、プトレシン合成に関与するタンパク質であればよい。
【0283】
EC:3.5.3.11の酵素タンパク質(アグマチナーゼ)の具体例としてはSpeBが挙げられる。SpeBは大腸菌に由来するタンパク質である。EC:3.5.3.11の酵素タンパク質は、SpeBとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有し、プトレシン合成に関与するタンパク質であればよい。
【0284】
EC:4.1.1.17の酵素タンパク質(オルニチンデカルボキシラーゼ)としてはSpeCが挙げられる。SpeCは大腸菌に由来するタンパク質である。EC:4.1.1.17の酵素タンパク質は、SpeCとアミノ酸配列又は立体構造が類似しているものには限定されず、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有し、プトレシン合成に関与するタンパク質であればよい。
【0285】
EC:4.1.1.19の酵素タンパク質及びEC:3.5.3.11はアルギニンからプトレシンを合成する経路の反応を触媒する酵素タンパク質である。EC:4.1.1.17の酵素タンパク質はオルニチンからプトレシンを合成する経路の反応を触媒する酵素タンパク質である。SpeA、SpeB及びSpeCのアミノ酸配列をコードする遺伝子が、それぞれ、speA、speB及びspeCである。
【0286】
SpeAタンパク質の具体例としては、
(11-1A)配列番号48に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(11-1B)配列番号48に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号48に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有するポリペプチド;
(11-1C)配列番号48に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有するポリペプチド;又は
(11-1D)(11-1A)~(11-1C)のいずれかのポリペプチドの、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有する断片
であることができる。
【0287】
前記(11-1B)~(11-1D)、及び、後述する(11-1F)~(11-1H)において、「EC:4.1.1.19で規定される酵素活性」とは、アルギニンデカルボキシラーゼ活性であり、例えば、配列番号48に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドが触媒する反応を触媒する活性を指す。
【0288】
前記(11-1D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは600以上のポリペプチドであることができる。
【0289】
前記(11-1B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0290】
「speA遺伝子」とは、SpeAのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0291】
大腸菌に由来する、SpeAの配列番号48に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号47に示す。ただし野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号47の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号47の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号47の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0292】
すなわち、SpeAのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはspeA遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(11-1E)配列番号47に示す塩基配列;
(11-1F)配列番号47に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号47に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(11-1G)配列番号47に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(11-1H)(11-1E)~(11-1G)のいずれかの塩基配列の、EC:4.1.1.19で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(11-1I)(11-1E)~(11-1H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(11-1J)(11-1A)~(11-1D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(11-1K)(11-1E)~(11-1J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0293】
前記(11-1F)及び(11-1I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0294】
SpeBタンパク質の具体例としては、
(11-2A)配列番号50に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(11-2B)配列番号50に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号50に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有するポリペプチド;
(11-2C)配列番号50に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有するポリペプチド;又は
(11-2D)(11-2A)~(11-2C)のいずれかのポリペプチドの、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有する断片
であることができる。
【0295】
前記(11-2B)~(11-2D)、及び、後述する(11-2F)~(11-2H)において、「EC:3.5.3.11で規定される酵素活性」とは、アグマチナーゼ活性であり、例えば、配列番号50に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドが触媒する反応を触媒する活性を指す。
【0296】
前記(11-2D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上、より好ましくは300以上のポリペプチドであることができる。
【0297】
前記(11-2B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0298】
「speB遺伝子」とは、SpeBのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0299】
大腸菌に由来する、SpeBの配列番号50に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号49に示す。ただし野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号49の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号49の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号49の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0300】
すなわち、SpeBのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはspeB遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(11-2E)配列番号49に示す塩基配列;
(11-2F)配列番号49に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号49に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(11-2G)配列番号49に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(11-2H)(11-2E)~(11-2G)のいずれかの塩基配列の、EC:3.5.3.11で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(11-2I)(11-2E)~(11-2H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(11-2J)(11-2A)~(11-2D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(11-2K)(11-2E)~(11-2J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0301】
前記(11-2F)及び(11-2I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0302】
SpeCタンパク質の具体例としては、
(11-3A)配列番号52に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(11-3B)配列番号52に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号52に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有するポリペプチド;
(11-3C)配列番号52に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有するポリペプチド;又は
(11-3D)(11-3A)~(11-3C)のいずれかのポリペプチドの、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有する断片
であることができる。
【0303】
前記(11-3B)~(11-3D)、及び、後述する(11-3F)~(11-3H)において、「EC:4.1.1.17で規定される酵素活性」とは、オルニチンデカルボキシラーゼ活性であり、例えば、配列番号52に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドが触媒する反応を触媒する活性を指す。
【0304】
前記(11-3D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より好ましくは500以上、より好ましくは600以上、より好ましくは700以上のポリペプチドであることができる。
【0305】
前記(11-3B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0306】
「speC遺伝子」とは、SpeCのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。
【0307】
大腸菌に由来する、SpeCの配列番号52に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号51に示す。ただし野生型の微生物株のゲノムDNAでは、配列番号51の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号51の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号51の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0308】
すなわち、SpeCのアミノ酸配列をコードする遺伝子或いはspeC遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(11-3E)配列番号51に示す塩基配列;
(11-3F)配列番号51に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号51に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(11-3G)配列番号51に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(11-3H)(11-3E)~(11-3G)のいずれかの塩基配列の、EC:4.1.1.17で規定される酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(11-3I)(11-3E)~(11-3H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(11-3J)(11-3A)~(11-3D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(11-3K)(11-3E)~(11-3J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0309】
前記(11-3F)及び(11-3I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0310】
<12.セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ>
セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.30)は、L-セリンをCoA依存的にアセチル化してO-アセチルシステインを生成する反応を触媒する酵素であり、当該活性を有する限りその起源、構造等は特に限定されない。
【0311】
セリン-O-アセチルトランスフェラーゼの起源は特に限定されず微生物、動物、植物等に由来するものを用いることができる。微生物由来のセリン-O-アセチルトランスフェラーゼが好ましく、特に大腸菌(Escherichia coli)等の腸内細菌や、コリネ型細菌等の細菌、酵母等の真核微生物等に由来するセリン-O-アセチルトランスフェラーゼが好ましい。
【0312】
「セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.30)をコードする遺伝子」とは、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。セリン-O-アセチルトランスフェラーゼの発現を強化した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0313】
大腸菌由来のセリン-O-アセチルトランスフェラーゼの塩基配列、及び該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列の具体例を、それぞれ配列番号65及び配列番号66に示す。
【0314】
セリン-O-アセチルトランスフェラーゼとしてはまた、配列番号66に示すアミノ酸配列からなるセリン-O-アセチルトランスフェラーゼに限らず、その活性変異体や他種オルソログ等の、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有する他のポリペプチドも使用できる。セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有する他のポリペプチドは、配列番号66に示すアミノ酸配列からなるセリン-O-アセチルトランスフェラーゼを用いた場合の10%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の、L-セリンをCoA依存的にアセチル化してO-アセチルシステインを生成する反応を触媒する活性を示すポリペプチドである。
【0315】
セリン-O-アセチルトランスフェラーゼの具体例としては、
(12A)配列番号66に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(12B)配列番号66に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号66に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド;
(12C)配列番号66に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド;又は
(12D)(12A)~(12C)のいずれかのポリペプチドの、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有する断片
であることができる。
【0316】
前記(12D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは200以上、より好ましくは250以上のポリペプチドであることができる。
【0317】
前記(12B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0318】
「セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.30)をコードする遺伝子」とは、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指す。
【0319】
大腸菌に由来する、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼの配列番号66に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号65に示す。セリン-O-アセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸の塩基配列は、宿主に合わせてコドン最適化したものであってもよい。微生物株のゲノムDNAでは、配列番号65の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号65の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号65の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0320】
すなわち、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(12E)配列番号65に示す塩基配列;
(12F)配列番号65に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号65に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(12G)配列番号65に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(12H)(12E)~(12G)のいずれかの塩基配列の、セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(12I)(12E)~(12H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(12J)(12A)~(12D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(12K)(12E)~(12J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0321】
前記(12F)及び(12I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0322】
<13.エノラーゼ>
エノラーゼ(ホスホピルビン酸ヒドラターゼ)(EC:4.2.1.11)は、2-ホスホグリセリン酸(2PG)をホスホエノールピルビン酸に変換する反応を触媒する酵素である。エノラーゼが触媒する反応は、解糖系における、ホスホグリセリン酸ムターゼが触媒する3PGから2PGを生成する反応の下流の反応である。
【0323】
「エノラーゼ(ホスホピルビン酸ヒドラターゼ)(EC:4.2.1.11)をコードする遺伝子」とは、エノラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸(好ましくはDNA)を指し、当該遺伝子を欠損又は弱化させる前の野生型の微生物株の染色体上のゲノムDNAに含まれ得る。エノラーゼをコードする遺伝子を欠損又は弱化した微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産性が野生型微生物株と比較して高い。
【0324】
エノラーゼの具体例としては、
(13A)配列番号82に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(13B)配列番号82に示すアミノ酸配列において、1~複数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(特に好ましくは、配列番号82に示すアミノ酸配列のN末端及びC末端の一方又は両方において合計で1~複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド)であって、エノラーゼ活性を有するポリペプチド;
(13C)配列番号82に示すアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、エノラーゼ活性を有するポリペプチド;又は
(13D)(13A)~(13C)のいずれかのポリペプチドの、エノラーゼ活性を有する断片
であることができる。
【0325】
前記(13B)において「複数個」とは、例えば、2~20個、2~15個、2~10個、2~7個、2~5個、2~4個又は2~3個をいう。また、アミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換が望ましい。
【0326】
前記(13D)において断片としては、アミノ酸数が好ましくは300以上、より好ましくは400以上のポリペプチドであることができる。
【0327】
大腸菌に由来する、エノラーゼの配列番号82に示すアミノ酸配列をコードするDNAの一例を配列番号81に示す。ただし野生型の微生物のゲノムDNAでは、配列番号81の塩基配列がそのまま存在するとは限らず、配列番号81の塩基配列の変異配列として存在していてもよいし、配列番号81の塩基配列又はその変異配列がエキソン配列であり、途中に1以上のイントロン配列が介在していてもよい。
【0328】
すなわち、エノラーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列の具体例としては、
(13E)配列番号81に示す塩基配列;
(13F)配列番号81に示す塩基配列において、1~複数個の塩基が付加、欠失、又は置換された塩基配列(特に好ましくは、配列番号81に示す塩基配列の5’末端及び3’末端の一方又は両方において合計で1~複数個の塩基が置換、欠失及び/又は付加、好ましくは欠失及び/又は付加した塩基配列)であって、エノラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(13G)配列番号81に示す塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を有する塩基配列であって、エノラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(13H)(13E)~(13G)のいずれかの塩基配列の、エノラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする部分塩基配列;
(13I)(13E)~(13H)のいずれかの塩基配列において、1から複数個のサイレント変異(コードするアミノ酸残基を変化しない塩基置換)が導入された塩基配列;
(13J)(13A)~(13D)のいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;又は、
(13K)(13E)~(13J)のいずれかの塩基配列をエキソン配列とし、途中に1以上のイントロン配列が介在している塩基配列
が挙げられる。
【0329】
前記(13F)及び(13I)において「複数個」とは、例えば、2~60個、2~45個、2~30個、2~21個、2~15個、2~6個又は2~3個をいう。
【0330】
<本発明に係る微生物株>
本発明の一以上の実施形態は、
[1]及び[2]の遺伝子を欠損し、且つ[3]又は[4]の遺伝子の発現が強化された微生物株:
[1]γ-グルタミルトランスフェラーゼ(EC:3.4.19.13)をコードする遺伝子;
[2]ホスホグリセリン酸ムターゼ(EC:5.4.2.11又はEC:5.4.1.12)をコードする遺伝子;
[3]グルタミン酸-システインリガーゼ(EC:6.3.2.2)をコードする遺伝子、及び/又は、グルタチオン合成酵素(EC:6.3.2.3)をコードする遺伝子;
[4]二機能性グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子
に関する。
【0331】
前記微生物株は、発酵によりγ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンを生産する能力が高い。
【0332】
前記微生物株は、好ましくは、発酵によりγ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンを生産する能力が、所定の遺伝子改変を導入する前の宿主株(野生株、或いは、親株)が前記物質を生産する能力よりも高い。
【0333】
前記微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン及び/又はγ-グルタミルシスチンの生産に用いる場合、前記[3]及び[4]の遺伝子改変のうち前記[3]の遺伝子改変を有していることが好ましい。この場合、前記[3]の遺伝子改変は、グルタミン酸-システインリガーゼをコードする遺伝子の発現の強化であることが好ましい。
【0334】
前記微生物は、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの生産に用いる場合、前記[3]及び[4]の遺伝子改変のどちらを有していてもよく、両方を有していてもよい。この場合、前記[3]の遺伝子改変は、グルタミン酸-システインリガーゼをコードする遺伝子及びグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子の一方のみの発現の強化であってもよいが、両方の発現の強化であることがより好ましい。
【0335】
前記微生物株は、より好ましくは、更に、以下の[5]~[12]のうちいずれか1つ以上の遺伝子改変を含む。
[5]トリプトファナーゼ(EC:4.1.99.1)をコードする遺伝子の欠損;
[6]トリペプチドペプチダーゼ(EC:3.4.11.4)をコードする遺伝子の欠損;
[7]グルタチオンレダクターゼ(EC:1.8.1.7)をコードする遺伝子の欠損;
[8]グルタチオン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[9]プトレシン排出に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現の強化;
[10]プトレシン取込みに関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[11]プトレシン合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子の欠損;
[12]セリン-O-アセチルトランスフェラーゼ(EC:2.3.1.30)をコードする遺伝子の発現の強化。
【0336】
前記[5]~[12]のうちいずれか1つ以上の遺伝子改変を有する微生物株は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンを宿主株と比較して過剰に生産することができるため、前記[1]及び[2]の遺伝子の欠損、及び、前記[3]又は[4]の遺伝子の発現の強化を含む遺伝子改変と組み合わされることにより前記物質を特に効率よく生産することができる。
【0337】
前記微生物株のより好ましい実施形態では、前記[5]~[12]のうち、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、より好ましくは6以上の遺伝子改変を有する。前記微生物株のより好ましい実施形態では、前記[9]~[11]のうち1以上の遺伝子改変を有し、更に好ましくは、前記[5]、[6]、[7]、[8]、[12]のうち、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、より好ましくは全ての遺伝子改変を有し、且つ、前記[9]~[11]のうち1以上(特に好ましくは少なくとも[11])の遺伝子改変を有する。
【0338】
前記微生物株は、より好ましくは、更に、以下の[13]の遺伝子改変を含む。
[13]エノラーゼ(ホスホピルビン酸ヒドラターゼ)(EC:4.2.1.11)をコードする遺伝子の弱化。
【0339】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株の宿主となる微生物は既述の通りである。
【0340】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株において欠損又は発現の強化の対象となる各遺伝子の好ましい例は既述の通りである。
【0341】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株における所定の遺伝子の発現の強化について説明する。
【0342】
前記[3]、[4]、[9]及び[12]に規定する発現の強化の対象となる1以上の遺伝子を「発現強化遺伝子」と称する場合がある。以下の説明は発現強化対象遺伝子のそれぞれに独立して適用できる。前記発現強化遺伝子の発現が強化された微生物株とは、該微生物株の宿主株(野生株、或いは、親株)が元来前記発現強化遺伝子を発現する場合に、前記発現強化遺伝子の発現量が宿主株と比較して増加していることと、宿主株が元来前記発現強化遺伝子を発現しない場合に、前記発現強化遺伝子を発現する能力が宿主株に付与されていることの両方を包含する。
【0343】
前記発現強化遺伝子の発現量の増加は、微生物の細胞のゲノムDNA上において前記発現強化遺伝子の発現を制御するプロモーターをより強力な発現プロモーターに置換することや、微生物の細胞内での、前記発現強化遺伝子のコピー数を増加させることにより達成することができる。
【0344】
微生物の細胞のゲノムDNA上において前記発現強化遺伝子のプロモーターをより強力な発現プロモーターに置換する場合、発現プロモーターの好ましい具体例としては、ompFプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、ompAプロモーター、cysKプロモーター及びlppプロモーターが挙げられる。ompFプロモーターとSD配列とが連結された塩基配列の例を配列番号7に示す。tacプロモーターとSD配列とが連結された塩基配列の例を配列番号14に示す。trcプロモーターとSD配列とが連結された塩基配列の例を配列番号15に示す。ompAプロモーターとSD配列とが連結された塩基配列の例を配列番号16に示す。cysKプロモーターとSD配列とが連結された塩基配列の例を配列番号17に示す。lppプロモーターとSD配列とが連結された塩基配列の例を配列番号18に示す。
【0345】
発現プロモーターとして誘導性プロモーターを用いてもよい。また、上記の発現プロモーターをオペレーター配列と機能的に連結して誘導性プロモーターとしてもよい。
【0346】
誘導性プロモーターとしては、イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性プロモーター、光の照射下で遺伝子発現を誘導する光誘導性プロモーター、araBADプロモーター(アラビノース誘導性)、rhaBADプロモーター(ラムノース誘導性)、tetプロモーター(薬剤誘導性)、penPプロモーター(薬剤誘導性)、cspAプロモーター(低温に応答する温度誘導性プロモーター)、オペレーター配列としてtetO又はlacOオペレーターを含むプロモーター等が例示でき、IPTG誘導性プロモーター、araBADプロモーター、rhaBADプロモーター、tetプロモーター、penPプロモーター、cspAプロモーター、或いは、オペレーター配列としてtetO又はlacOオペレーターを含むプロモーターが好ましい。
【0347】
IPTG誘導性プロモーターの具体例としては、lacUV5プロモーター、lacプロモーター、lacT5プロモーター、lacT7プロモーターや、オペレーター配列と機能的に連結されてIPTG誘導性としたT5プロモーター、T7プロモーター、tacプロモーター等が例示できる。誘導性プロモーターとしてはIPTG誘導性プロモーターが特に好ましく、IPTG誘導性プロモーターのなかでも特に、T5プロモーター、T7プロモーター、lacT5プロモーター、lacT7プロモーター又はtacプロモーターが好ましい。
【0348】
プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターを高活性型に改変したプロモーターを用いることもできる。例えば、プロモーター領域内の-35、-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開WO00/18935号)。高活性型プロモーターの例としては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文 (Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995)) 等に記載されている
【0349】
前記発現強化遺伝子の発現を強化するために、微生物株の細胞内での、前記発現強化遺伝子のコピー数を増加させることは、
(A)前記発現強化遺伝子を含む発現ベクターを、微生物株の細胞内に導入すること、或いは、
(B)前記発現強化遺伝子を、微生物株の細胞のゲノムDNAに導入すること
により達成することができる。
【0350】
前記(A)の態様で用いる発現ベクターとしては、前記発現強化遺伝子を含むプラスミドベクター等が使用できる。発現ベクターは、微生物細胞内において自律複製可能であることが好ましい。発現ベクターは、所定のタンパク質をコードするDNAと、該DNAを転写できる位置に機能的に連結されたプロモーターとを含有することが好ましい。前記発現ベクターは、微生物株の細胞内において、前記発現強化遺伝子を発現することが可能なように構成することができる。発現ベクターは、好ましくは、微生物細胞中で自律複製可能であり、且つ、プロモーター、リボソーム結合配列、前記発現強化遺伝子の塩基配列、及び転写終結配列により構成された塩基配列を含む組換えDNAである。
【0351】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株は、好ましくは、前記発現強化遺伝子をコードする塩基配列を含む発現ベクターを保持する。
【0352】
好適なプラスミドベクターとしてはpQEK1、pCA24N(DNA RESEARCH,12,191-299(2005))、pACYC177、pACYC184((株)ニッポンジーンから入手可能)、pQE30、pQE60、pQE70、pQE80及びpQE9(Qiagenから入手可能);pTipQC1(Qiagenまたは北海道システムサイエンスから入手可能)、pTipRT2(北海道システムサイエンスから入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A及びpNH46A(Stratageneから入手可能);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540及びpRIT5(Addgeneから入手可能);pRSF(MERCKから入手可能);並びに、pAC((株)ニッポンジーンから入手可能)、pUCN18(pUC18((株)タカラバイオから入手可能)を改変して作製可能)、pSTV28((株)タカラバイオから入手可能)、pUCNT(国際公開第94/03613号公報)等が例示できる。
【0353】
前記発現ベクターは、好ましくは、前記発現強化遺伝子の転写を制御するプロモーターを含み、より好ましくは誘導性プロモーターを含む。プロモーターの好ましい例は既述の通りである。
【0354】
前記発現強化遺伝子を含む発現ベクターを微生物株の細胞内に導入する場合、細胞内の前記発現ベクターのコピー数が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上、より好ましくは15以上、より好ましくは20以上であることが好ましい。
【0355】
微生物株の細胞において前記発現強化遺伝子のうち2以上の発現量を増加させる場合、1つの発現ベクター内に、2以上の遺伝子が含まれてもよく、この場合、1つの発現プロモーターの制御下に、2以上の遺伝子が配置されていてもよいし、2以上の遺伝子の各々がそれぞれ異なる発現プロモーターの制御下に配置されていてもよい。また、2以上の遺伝子が、それぞれ別の発現ベクター内に含まれてもよい。
【0356】
前記(B)の態様により、前記発現強化遺伝子を、微生物株の細胞のゲノムDNAに導入する場合、相同組換えを利用することができる。前記発現強化遺伝子は、好ましくは、プロモーター、リボソーム結合配列、前記発現強化遺伝子の塩基配列、及び転写終結配列を含むDNAとしてゲノムDNAに導入される。前記発現強化遺伝子の塩基配列を含む前記DNAは、微生物株の細胞内において、前記発現強化遺伝子が前記プロモーターの制御下で発現可能なように構成することができる。
【0357】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株において、前記発現強化遺伝子の発現の強化(発現量の増加)の程度は特に限定されない。前記発現強化遺伝子の発現量は、細胞から抽出した前記発現強化遺伝子に対応するmRNAの量として表すことができる。このmRNAに基づく発現量は、適当な内部標準タンパク質をコードするmRNAの量に対する相対値として表すことが好ましい。
【0358】
続いて、本発明の一以上の実施形態に係る微生物株における所定の遺伝子の欠損について説明する。
【0359】
前記[1]、[2]、[5]、[6]、[7]、[8]、[10]及び[11]において欠損の対象となる遺伝子を「欠損対象遺伝子」と称する場合がある。前記欠損対象遺伝子の「欠損」とは、前記欠損対象遺伝子がコードするタンパク質の活性が宿主株と比較して低下していることを意味し、活性が完全に消失している場合を含む。以下の説明は欠損対象遺伝子のそれぞれに独立して適用できる。本発明の一以上の実施形態に係る微生物株は、前記欠損対象遺伝子の機能が失われている状態、または、当該機能が減少している状態にある微生物株であり、具体的には、前記欠損対象遺伝子の転写産物であるmRNAや翻訳産物であるタンパク質の発現量が低下している状態や、前記欠損対象遺伝子の転写産物であるmRNAや翻訳産物であるタンパク質が、mRNAまたはタンパク質として正常に機能しない状態にある微生物株が挙げられる。
【0360】
前記欠損対象遺伝子の欠損は、例えば、宿主株の遺伝子を人為的に改変することにより達成できる。そのような改変は、例えば、突然変異処理、遺伝子組換え技術、RNAiを用いた遺伝子発現抑制処理、遺伝子編集等により達成できる。
【0361】
突然変異処理としては、紫外線照射、または、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等の通常変異処理に用いられている変異剤による処理が挙げられる。
【0362】
遺伝子組換え技術としては、公知の技術(例えば、FEMS Microbiology Letters 165 (1998) 335-340、JOURNAL OF BACTERIOLOGY, Dec. 1995, p7171-7177、Curr Genet 1986; 10(8):573-578、WO98/14600等)を利用できる。
【0363】
前記[1]、[2]、[5]、[6]、[7]、[8]、[10]及び[11]に記載の所定のタンパク質をコードする遺伝子とは、各タンパク質のアミノ酸配列のコード領域だけでなく、その発現調節配列(プロモーター配列等)、エキソン配列、イントロン配列等を区別することなく示す。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。
【0364】
前記欠損対象遺伝子の欠損は、より好ましくは、微生物株のゲノムDNAにおける前記欠損対象遺伝子の欠損である。前記欠損対象遺伝子の欠損としては、発現調節配列の一部または全部の欠損であってもよいし、前記各タンパク質のアミノ酸配列のコード領域の一部または全部の欠損であってもよい。ここで「欠損」とは、欠失または損傷を意味し、好ましくは欠失である。
【0365】
宿主株のゲノムDNAにおいて、前記欠損対象遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。前記欠損対象遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列のコード領域の一部または全部を欠失させる場合、タンパク質の活性の低下が達成できる限り、N末端領域、内部領域、C末端領域等のいずれの領域のコード領域を欠失させてもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。好ましい実施形態では、ゲノムDNAにおいて、前記欠損対象遺伝子のうちアミノ酸配列のコード領域および/または発現調節配列の少なくとも一部、例えば、コード領域および/または発現調節配列の全体の塩基数に対して好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは100%の塩基数からなる領域、が欠失した微生物株である。特に好ましくは、ゲノムDNAにおいて、前記欠損対象遺伝子のうち少なくとも開始コドンから終止コドンまでの領域が欠失した微生物株である。
【0366】
また、タンパク質の活性が低下するような、前記欠損対象遺伝子の欠損の他の例としては、ゲノムDNA上の前記欠損対象遺伝子のアミノ酸配列コード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1~2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等の、前記欠損対象遺伝子の損傷が例示できる。
【0367】
また、タンパク質の活性が低下するような、前記欠損対象遺伝子の欠損は、例えば、ゲノムDNA上の前記欠損対象遺伝子の発現調節配列またはアミノ酸配列コード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は、遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。他の配列としては、コードされるタンパク質の機能を低下または消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、マーカー遺伝子やグルタチオン等の目的物質の生産に有用な遺伝子が挙げられる。
【0368】
ゲノムDNA上の前記欠損対象遺伝子を上記のように欠損させることは、例えば、前記欠損対象遺伝子を、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した不活性遺伝子を作製し、該不活性遺伝子を含む組換えDNAで宿主株を形質転換して、不活性遺伝子とゲノムDNA上の遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、ゲノムDNA上の前記欠損対象遺伝子を不活性遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。また、前記組換えDNAは、制限酵素で切断する等により直鎖状にしておくと、ゲノムDNAに組換えDNAが組み込まれた株を効率よく取得することができる。不活性遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下または消失する。
【0369】
また、例えば、任意の配列を含む線状DNAであって、当該任意の配列の両端にゲノムDNA上の置換対象部位(典型的には、前記欠損対象遺伝子の一部または全部)の上流の配列および下流の配列を備える線状DNA、或いは、ゲノムDNA上の前記置換対象部位の上流の配列および下流の配列を直結した線状DNAで微生物を形質転換して、宿主株のゲノムDNAの置換対象部位の上流および下流でそれぞれ相同組換えを起こさせることにより、1ステップで置換対象部位を前記線状DNAの配列に置換することができる。前記任意の配列には、例えば、マーカー遺伝子配列を含んでもよい。マーカー遺伝子は、その後、必要により除去してもよい。マーカー遺伝子を除去する場合には、マーカー遺伝子を効率的に除去できるよう、相同組換え用の配列をマーカー遺伝子の両端に付加しておいてもよい。
【0370】
微生物株において前記欠損対象遺伝子が欠損していることの確認は、前記欠損対象遺伝子がコードするタンパク質の活性の低下により確認することができる。前記タンパク質の活性が低下したことの確認は、前記タンパク質の活性を測定することによって行うことができる。
【0371】
前記欠損対象遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を宿主株と比較することによって行うことができる。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。mRNAの量は、宿主株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下しているのが好ましい。
【0372】
前記欠損対象遺伝子がコードするタンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことができる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、前記欠損対象遺伝子がコードするタンパク質の量は、宿主株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下しているのが好ましい。
【0373】
前記[13]において遺伝子の「発現の弱化」とは、エノラーゼ活性を有するものの、宿主株と比較してエノラーゼ活性が低下していることを意味する。本発明の一以上の実施形態に係る微生物株は、エノラーゼ遺伝子の機能が減少している状態にある微生物株であり、具体的には、エノラーゼ遺伝子の転写産物であるmRNAや翻訳産物であるタンパク質の発現量が低下している状態や、エノラーゼ遺伝子の転写産物であるmRNAや翻訳産物であるタンパク質が、活性の低下したエノラーゼをコードするmRNA又は活性の低下したエノラーゼである微生物株が挙げられる。
【0374】
エノラーゼ遺伝子の弱化は、例えば、宿主株の遺伝子を人為的に改変することにより達成できる。そのような改変は、例えば、突然変異処理、遺伝子組換え技術、RNAiを用いた遺伝子発現抑制処理、遺伝子編集等により達成できる。
【0375】
前記[13]においてエノラーゼをコードする遺伝子とは、各タンパク質のアミノ酸配列のコード領域だけでなく、その発現調節配列(プロモーター配列等)、エキソン配列、イントロン配列等を区別することなく示す。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。
【0376】
タンパク質の活性が低下するような、エノラーゼ遺伝子の弱化の例としては、ゲノムDNA上のエノラーゼ遺伝子のアミノ酸配列コード領域に、活性の低下したエノラーゼのアミノ酸配列をコードするような変異の導入が例示できる。
【0377】
ゲノムDNA上のエノラーゼ遺伝子を上記のように欠損させることは、例えば、エノラーゼ遺伝子を、活性の低下したエノラーゼをコードするように改変した弱化エノラーゼ遺伝子を作製し、該弱化エノラーゼ遺伝子を含む組換えDNAで宿主株を形質転換して、弱化エノラーゼ遺伝子とゲノムDNA上のエノラーゼ遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、ゲノムDNA上のエノラーゼ遺伝子を弱化エノラーゼ遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。また、前記組換えDNAは、制限酵素で切断する等により直鎖状にしておくと、ゲノムDNAに組換えDNAが組み込まれた株を効率よく取得することができる。
【0378】
微生物株においてエノラーゼ遺伝子が弱化していることの確認は、エノラーゼ活性の低下により確認することができる。
【0379】
エノラーゼ遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を宿主株と比較することによって行うことができる。mRNAの量を評価する方法は既述の通りである。mRNAの量は、宿主株と比較して、例えば90%以下又は60%以下に低下しているのが好ましい。
【0380】
エノラーゼ遺伝子がコードするタンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことができる。本発明の一以上の実施形態に係る微生物株では、エノラーゼ遺伝子がコードするタンパク質の量は、宿主株と比較して、例えば90%以下又は60%以下に低下しているのが好ましい。
【0381】
<γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの製造方法>
本発明の更なる一以上の実施形態は、
前記の本発明の一以上の実施形態に係る微生物株を培養することを含む、
γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの製造方法に関する。
【0382】
この方法によれば、低コストでγ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンを製造することが可能である。この方法によれば、前記目的物質(γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオン)の生産性が高い。この方法のある態様では、前記目的物質の、培地に供給した糖原料に対する収率が高い(高対糖収率)。また別のある態様では、前記目的物質を、培地中に高濃度で分泌することができる。
【0383】
この方法が、還元型グルタチオン及び/又は酸化型グルタチオンの製造方法である場合、使用する微生物株は、[1]及び[2]の遺伝子を欠損し、且つ[3]又は[4]の遺伝子の発現が強化されており、[3]は、グルタミン酸-システインリガーゼをコードする遺伝子及びグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子の両方であることが好ましい。
【0384】
この方法が、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、及び/又は、γ-グルタミルシスチンの製造方法である場合、使用する微生物株は、[1]及び[2]の遺伝子を欠損し、且つ[3]又は[4]の遺伝子の発現が強化されており、[3]は、グルタミン酸-システインリガーゼをコードする遺伝子であることが好ましい。
【0385】
本発明の一以上の実施形態に係る微生物株の培養は適当な培地中で行うことができる。培地は、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンなどの、前記微生物株の増殖、及び、目的物質の生合成に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。好ましくはM9培地を用いる。
【0386】
炭素源としては、使用する微生物の資化できる炭素源であればいずれでもよく、グルコース、フラクトースのような糖質、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などをあげることができる。
【0387】
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アミン等の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物のような天然窒素源などを挙げることができる。
無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カリウムなどを挙げることができる。
【0388】
ビタミンとしては、ビオチンやチアミンなどを挙げることができる。さらに必要に応じて本発明の一以上の実施形態に係る微生物株が生育に要求する物質(例えばアミノ酸要求性の微生物株であれば要求アミノ酸)を添加することができる。
【0389】
前記培地には硫黄源及びグリシンの少なくとも一方、好ましくは両方、を添加することが好ましい。グリシンの培地への添加濃度としては、例えば10mM~2000mMが挙げられる。硫黄源の培地への添加濃度としては、例えば10mM~2000mMが挙げられる。
【0390】
硫黄源としては、硫酸、チオ硫酸、亜硫酸、次亜硫酸又は硫化物或いはその塩等の無機硫黄化合物の1種又は複数種を添加することができる。硫酸、チオ硫酸、亜硫酸、次亜硫酸又は硫化物は、フリー体であってもよく、塩であってもよく、それらの任意の混合物であってもよい。塩としては、特に制限されず、ナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0391】
グリシンはフリー体であってもよく、塩であってもよく、それらの任意の混合物であってもよい。塩としては、特に制限されず、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。
【0392】
硫黄源及び/又はグリシンは培養開始時又は培養の途中に培地に添加することができる。硫黄源及び/又はグリシンは一度に培地に添加してもよいし、連続的或いは間欠的に培地に添加してもよい。
【0393】
硫黄源及び/又はグリシンは、培養の全期間において培地に含有されていてもよく、培養の一部の期間においてのみ培地に含有されていてもよい。例えば、硫黄源およびグリシンの添加量は、目的物質を生産蓄積させる段階の全期間において前記の範囲である必要はなく、培養途中に含有量が前記の範囲となるよう硫黄源及び/又はグリシンを培地に含有させ、培養時間の経過に伴い硫黄源及び/又はグリシン含有量が減少してもよい。また、硫黄源及び/又はグリシンを連続的或いは間欠的に追加添加してもよい。なお、硫黄源及び/又はグリシン以外の培地成分についても、培養期間中に濃度が変動してもよく、追加添加されてもよい。
【0394】
培養は、好ましくは振とう培養や通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は20~50℃、好ましくは20~42℃、より好ましくは28~38℃である。培養時のpHは5~9、好ましくは6~7.5である。培養時間は、3時間~5日間、好ましくは5時間~3日間である。
【0395】
培養物(培地及び/又は微生物株)中に蓄積した目的物質は、通常の精製方法によって採取することができる。例えば、培養終了後、培養物又は培養物の破砕物から、カラムクロマトグラフィー、濃縮、結晶分別等の精製処理によって目的物質を採取することができる。培養物又は培養物の破砕物から、必要に応じて、遠心分離等の固液分離手段により菌体や固形物を除いた後に精製処理を行ってもよい。
【実施例】
【0396】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0397】
以下で説明する遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))の記載を参照して実施することができる。また、遺伝子操作に使用する酵素、クローニング宿主等は、市場の供給者から購入し、その説明に従い使用することができる。なお、前記酵素としては、遺伝子操作に使用できるものであれば特に限定されない。
【0398】
(培養液中のグルタチオン濃度の分析)
培養液中のグルタチオン濃度は、高速液体クロマトグラフ(HPLC、島津製作所)を用いて測定した。
HPLCの分析条件は以下の通り。
カラム:Develosil ODS-HG-3 4.6mm x 250mm(野村化学)
移動相:リン酸二水素カリウム30.5g、ヘプタンスルホン酸ナトリウム18gを蒸留水4.5Lに溶解後、リン酸でpH3に調整。メタノール250mLを添加後、再度リン酸でpH3に調整。
流速:1mL/min
検出:UV検出器 λ=210nm
カラム温度:40℃
注入量:10μL
培養液に含まれるグルタチオン濃度を分析する際は、遠心分離によって菌体を除去した後、上清をシリンジフィルター(アドバンテック、φ=0.2μm)を通すことによって培養上清を得た。得られた培養上清を、蒸留水で10倍に希釈してHPLCに供した。
【0399】
(製造例1)BW25113 Δggt株の作製
まず、ggt(γ-グルタミルシステイントランスフェラーゼ)遺伝子(配列番号21)を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのggt遺伝子の上流配列と下流配列を有するDNA断片(配列番号1)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、温度感受性プラスミドpTH18cs1(GenBank accession number AB019610)〔Hashimoto-Gotoh,T.,Gene,241,185-191(2000)〕をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2(東洋紡)にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-ggt-UDを得た。
【0400】
次に、pTH18cs1-ggt-UDを用いて、BW25113 Δggt株を作製した。pTH18cs1-ggt-UDをエレクトロポレーション法により大腸菌BW25113株に導入し、クロラムフェニコール10μg/mLを含有するLB寒天プレートに塗布して30℃で培養し、形質転換体を得た。取得した形質転換体をクロラムフェニコール10μg/mLを含有するLB液体培地にて30℃で一晩振盪培養し、培養液をクロラムフェニコール10μg/mLを含有するLB寒天プレートに塗布して42℃で培養し、形質転換体を得た。取得した形質転換体を42℃でLB液体培地にて一晩培養した後、LB寒天プレートに塗布してコロニーを取得した。取得したコロニーを、LB寒天プレートと、クロラムフェニコール10μg/mLを含有するLB寒天プレートにそれぞれレプリカし、クロラムフェニコール感受性を示す形質転換体を選抜した。選抜した形質転換体から、PCRおよびDNAシーケンサーによる解析により、染色体上のggt遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt株と命名した。
【0401】
BW25113 Δggt株は、大腸菌BW25113株を宿主とし、染色体上のggt遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株である。
【0402】
(製造例2)BW25113 Δggt ΔpepT株の作製
まず、pepT(トリペプチドペプチダーゼ)遺伝子(配列番号23)を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのpepT遺伝子の上流配列と下流配列を有するDNA断片(配列番号2)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-pepT-UDを得た。
【0403】
次に、製造例1で作製したBW25113 Δggt株を親株とし、pTH18cs1-pepT-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のpepT遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt ΔpepT株と命名した。
【0404】
BW25113 Δggt ΔpepT株は、大腸菌BW25113株を宿主とし、染色体上のggt遺伝子およびpepT遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株である。
【0405】
(製造例3)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor株の作製
まず、gor(グルタチオンレダクターゼ)遺伝子を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのgor遺伝子の上流配列と下流配列を有するDNA断片(配列番号3)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-gor-UDを得た。
【0406】
次に、製造例2で作製したBW25113 Δggt ΔpepT株を親株とし、pTH18cs1-gor-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のgor遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor株と命名した。
【0407】
(製造例4)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD株の作製
まず、yliA(グルタチオン輸送システムATP結合タンパク質)遺伝子(配列番号27)、yliB(グルタチオン輸送システム基質結合タンパク質)遺伝子(配列番号29)、yliC(グルタチオン輸送システムパーミアーゼタンパク質)遺伝子(配列番号31)、yliD(グルタチオン輸送システムパーミアーゼタンパク質)遺伝子(配列番号33)からなるオペロンを形成している染色体上のyliABCD遺伝子を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのyliA遺伝子の上流配列とyliD遺伝子の下流配列を有するDNA断片(配列番号4)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-yliABCD-UDを得た。
【0408】
次に、製造例3で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor株を親株とし、pTH18cs1-yliABCD-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のyliABCD遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD株と命名した。
【0409】
(製造例5)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA株の作製
まず、tnaA(トリプトファナーゼ)遺伝子(配列番号35)を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのtnaA遺伝子の上流配列と下流配列を有するDNA断片(配列番号5)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-tnaA-UDを得た。
【0410】
次に、製造例4で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD株を親株とし、pTH18cs1-tnaA-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のtnaA遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA株と命名した。
【0411】
(製造例6)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC株の作製
まず、speC遺伝子(配列番号51)を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのspeC遺伝子の上流配列と下流配列を有するDNA断片(配列番号6)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-speC-UDを得た。
【0412】
次に、製造例5で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA株を親株とし、pTH18cs1-speC-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のspeC遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC株と命名した。
【0413】
(製造例7)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE株の作製
まず、染色体上のcysE遺伝子(配列番号65)の上流にompFプロモーターおよびSD配列(配列番号7)を挿入してcysE遺伝子の発現を強化するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体上でのcysE遺伝子の上流配列、ompFプロモーターおよびSD配列、cysE遺伝子の開始コドンから500bpの配列を有するDNA断片(配列番号8)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-PompF-cysE-UDを得た。
【0414】
次に、製造例6で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC株を親株とし、pTH18cs1-PompF-cysE-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のcysE遺伝子の上流にompFプロモーターおよびSD配列を挿入した菌株1株を単離した。この菌株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE株と命名した。
【0415】
(製造例8)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA株の作製
まず、gpmA(ホスホグリセリン酸ムターゼA)遺伝子(配列番号19)を破壊するためのプラスミドベクターを作製した。合成オリゴDNAを用いたPCRにより、染色体でのgpmA遺伝子の上流配列と下流配列を有するDNA断片(配列番号9)を得た。取得した断片をXbaIとHindIIIで消化し、pTH18cs1をXbaIとHindIIIで消化して得られる断片と、Ligation high Ver.2にて連結し、プラスミドベクターpTH18cs1-gpmA-UDを得た。
【0416】
次に、製造例7で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE株を親株とし、pTH18cs1-gpmA-UDを用いて製造例1と同様の方法で染色体上のgpmA遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA株と命名した。
【0417】
(製造例9)pQEK1-PT5-ABTd*-termの作製
まず、大腸菌に遺伝子導入するためのベクターを構築するため、pQE-80L(QIAGEN)をベースに、薬剤耐性マーカーをテトラサイクリン耐性遺伝子に変更し、配列番号10に示すpQEK1ベクターを構築した。さらに、pQEK1のHindIIIローカスにラムダファージ由来のターミネーター配列を挿入し、配列番号11に示すpQEK1-termベクターを構築した。
【0418】
次に、合成オリゴDNAを用いたPCRにより、T5プロモーター、大腸菌由来gshA遺伝子(配列番号73)、Thiobacilus denitrificans由来gshB遺伝子(V260A変異保有)(配列番号69)からなるDNA断片(配列番号12)を得た。取得した断片を、pQEK1-termをSpeIおよびHindIIIで消化して得られる断片と、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(New England Biolabs)を用いて連結し、配列番号13に示すpQEK1-PT5-ABTd*-termを得た。
【0419】
(製造例10)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE/pQEK1-PT5-ABTd*-term株の作製
製造例7で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE株に、製造例9で作製したpQEK1-PT5-ABTd*-termをエレクトロポレーション法を用いて導入し、テトラサイクリン20μg/mLを含有するLB寒天プレートに塗布して形質転換体を選抜した。選抜した形質転換体から、PCRによる解析によりpQEK1-PT5-ABTd*-termが導入された菌株1株を単離した。この菌株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE/pQEK1-PT5-ABTd*-term株と命名した。
【0420】
(製造例11)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA/pQEK1-PT5-ABTd*-term株の作製
製造例8で作製したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA株に、製造例9で作製したpQEK1-PT5-ABTd*-termをエレクトロポレーション法を用いて導入し、テトラサイクリン20μg/mLを含有するLB寒天プレートに塗布して形質転換体を選抜した。選抜した形質転換体から、PCRによる解析によりpQEK1-PT5-ABTd*-termが導入された菌株1株を単離した。この菌株をBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA/pQEK1-PT5-ABTd*-term株と命名した。
【0421】
(実施例1)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA/pQEK1-PT5-ABTd*-term株によるグルタチオンの発酵生産
製造例11で取得したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE ΔgpmA/pQEK1-PT5-ABTd*-term株を以下の条件で培養し、GSH及びGSSGを生産した。5mL LB培地(20μg/mLテトラサイクリンを含む)に植菌し、300rpm、30℃で8時間振盪培養した。この培養液1mLを、20μg/mLテトラサイクリンを添加したM9培地(6g/Lリン酸水素二ナトリウム、3g/Lリン酸二水素カリウム、0.5g/L塩化ナトリウム、1g/L塩化アンモニウム、1mM硫酸マグネシウム、0.001%チアミン-塩酸、0.1mM塩化カルシウム、2%グルコース)100mLに植菌し、培養装置(エイブル社製Bio Jr.8)を用いて34℃、pH6.5、撹拌1000rpm、通気100mL/minで18時間培養した。18時間培養後の培養液の20mLを、20μg/mLテトラサイクリンを添加したM9培地2Lに植菌し、培養装置(丸菱バイオエンジ社製Bioneer-Neo)を用いて34℃、pH6.7、撹拌600rpm、通気4L/minで培養した。培養中、50%(w/v)グルコース溶液を随時添加し、系中グルコース濃度が15g/Lを下回らないように調整した。6時間培養後に0.1mMイソプロピル-β-チオガラクトピラノシドを添加し、同時に終濃度100mMとなるようにグリシンおよび硫酸ナトリウムを添加した。培養48時間目に培養液を適量サンプリングし、遠心分離により菌体と上清を分離した。上清を蒸留水で適当に希釈し、HPLC分析にてGSH及びGSSGを定量した。定量結果を表1に示した。
【0422】
(比較例1)BW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE/pQEK1-PT5-ABTd*-term株よるグルタチオンの発酵生産
製造例10で取得したBW25113 Δggt ΔpepT Δgor ΔyliABCD ΔtnaA ΔspeC PompF-cysE/pQEK1-PT5-ABTd*-term株を実施例1と同様の条件で培養し、GSH及びGSSGを生産した。結果を表1に示した。
【0423】
【0424】
<考察>
表1の実施例1と比較例1の結果を比べると、gpmA遺伝子の欠損により、グルタチオン生産性(GSH+GSSG)が大きく増加することが分かる。このことから、グルタチオン発酵生産において、ホスホグリセリン酸ムターゼをコードする遺伝子の欠損が有効であることが分かる。
【0425】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表】