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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-20
(45)【発行日】2026-01-28
(54)【発明の名称】太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 10/166 20250101AFI20260121BHJP
   H10F 77/14 20250101ALI20260121BHJP
   H10F 71/00 20250101ALI20260121BHJP
【FI】
H10F10/166
H10F77/14 100
H10F71/00 160
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022573009
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047232
(87)【国際公開番号】W WO2022145283
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2024-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020219144
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021012129
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 紳平
(72)【発明者】
【氏名】口山 崇
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/138976(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/120735(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1895842(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第111091765(CN,A)
【文献】特開2002-016274(JP,A)
【文献】特開2012-164919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 10/00-19/90
H10F 71/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成され、厚み方向に貫通する複数の透光開口を有する半導体基板と、
前記半導体基板の一方の主面側に積層される第1半導体層と、
前記半導体基板の他方の主面側に積層される第2半導体層と、
前記第1半導体層に積層される第1電極と、
前記第2半導体層に積層される第2電極と、
を備え、
前記透光開口の内周面は、前記第1半導体層の側に位置する第1周面部と、前記第2半導体層の側に位置し、前記第1周面部と表面性状が異なる第2周面部と、を有し、
前記第1周面部において、前記半導体基板は前記第1半導体層によって被覆され、
前記第2周面部において、前記半導体基板は露出する、太陽電池セル。
【請求項2】
板状に形成され、厚み方向に貫通する複数の透光開口を有する半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面側に積層される第1半導体層と、前記半導体基板の他方の主面側に積層される第2半導体層と、前記第1半導体層に積層される第1電極と、前記第2半導体層に積層される第2電極と、を備え、前記透光開口の内周面は、前記第1半導体層の側に位置する第1周面部と、前記第2半導体層の側に位置し、前記第1周面部と表面性状が異なる第2周面部と、を有し、前記第1周面部において、前記半導体基板は前記第1半導体層によって被覆され、前記第2周面部において、前記半導体基板は露出する、太陽電池セルを製造する方法であって、
半導体基板にレーザ光を照射することによって前記透光開口の外径に対応する環状溝を形成する工程と、
前記環状溝を形成する工程の後に、前記半導体基板に前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記第1電極及び前記第2電極の成膜を行う工程と、
前記半導体基板に成膜を行う工程の後に、前記環状溝の底部のエッチング又は割断により前記半導体基板の前記環状溝の内側の領域を分離することによって、前記半導体基板に前記透光開口を形成する工程と、
を備える、太陽電池セル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として、太陽電池の利用が広がっている。一般的な太陽電池は、光を遮断するために、窓等には設置することが控えられる。そこで、光を透過する開口を形成したシースルー型の太陽電池も検討されている。例として、特許文献1には、光の入射によりキャリアを生成するn型半導体の基材にp型半導体の膜を積層することによりキャリアを回収するpn接合を形成した半導体基板に複数の開口を形成し、半導体基板の受光面に開口を避けるようフィンガー電極を配設した太陽電池が開示されている。特許文献1は、比較的安価に半導体基板に開口を形成する方法として、フッ化物を含有する電解液を用いたエッチングを行うことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-299672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池セルの半導体基板にエッチングによって開口を形成すると、開口の内周面においてキャリアの再結合が生じるため、光電変換効率が低下し得る。特に、開口率を大きくしようとすると、開口の内周面におけるキャリアの再結合が顕著となるため、光電変換効率の低下が大きくなる。また、光を透過するための開口を避けてフィンガー電極を配設すると、フィンガー電極の延在方向と平行に並ぶ開口の間に、フィンガー電極までの距離が比較的大きい領域が形成される。フィンガー電極までの距離が大きくなると、光によって励起されたキャリアがフィンガー電極に回収される前に再結合して消滅してしまうことで、光電変換効率が低くなるという不都合が生じる。そこで、本発明は、光電変換効率が高いシースルー型の太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る太陽電池セルは、板状に形成され、厚み方向に貫通する複数の透光開口を有する半導体基板と、前記半導体基板の一方の主面側に積層される第1半導体層と、前記半導体基板の他方の主面側に積層される第2半導体層と、前記第1半導体層に積層される第1電極と、前記第2半導体層に積層される第2電極と、を備え、前記透光開口の内周面は、前記第1半導体層の側に位置する第1周面部と、前記第2半導体層の側に位置し、前記第1周面部と表面性状が異なる第2周面部と、を有する。
【0006】
上述の太陽電池セルでは、前記第1周面部において、前記半導体基板は前記第1半導体層によって被覆され、前記第2周面部において、前記半導体基板は露出してもよい。
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池セル製造方法は、半導体基板にレーザ光を照射することによって環状溝を形成する工程と、前記環状溝の底部のエッチング又は割断により前記半導体基板の前記環状溝の内側の領域を分離することによって、前記半導体基板に開口を形成する工程と、備える。
【0008】
上述の太陽電池セル製造方法は、前記環状溝を形成する工程と前記開口を形成する工程との間に、前記半導体基板に成膜を行う工程をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の別の態様に係る太陽電池セルは、半導体基板及び前記半導体基板に積層される半導体層を有し、且つ表裏に貫通する複数の透光開口を有する光電変換体と、前記光電変換体の表面に積層される表面電極と、前記光電変換体の裏面に積層される裏面電極と、を備え、前記表面電極は、前記複数の透光開口を個別に取り囲む複数の囲繞部を有する。
【0010】
上述の太陽電池セルにおいて、前記囲繞部は多角形状であってもよい。
【0011】
上述の太陽電池セルにおいて、囲繞部の各辺の長さは一定であってもよい。
【0012】
上述の太陽電池セルにおいて、前記囲繞部の各辺と前記透光開口との距離の最小値は最大値の50%以上であってもよい。
【0013】
上述の太陽電池セルにおいて、前記囲繞部の各辺と前記透光開口との距離は前記透光開口の直径の20%以上150%以下であってもよい。
【0014】
上述の太陽電池セルにおいて、前記表面電極は、それぞれ平行且つ等間隔に配置される複数の電極線からなり、互いに交差するよう角度が異なる3組の電極線群を有してもよい。
【0015】
上述の太陽電池セルにおいて、前記囲繞部は、頂点で互いに接する六角形状であり、間に前記透光開口を含まない三角形状のスペースを画定してもよい。
【0016】
上述の太陽電池セルにおいて、前記複数の囲繞部の内側の面積は前記複数の囲繞部の外側の面積の2倍以上5倍以下であってもよい。
【0017】
上述の太陽電池セルにおいて、前記裏面電極は、前記複数の透光開口を個別に取り囲む複数の囲繞部を有してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光電変換効率が高いシースルー型の太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池セルの部分平面図である。
図2図1の太陽電池セルのX-X線部分断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る太陽電池セル製造方法の手順を示すフローチャートである。
図4図3の太陽電池セル製造方法の一工程を説明する部分断面図である。
図5図3の太陽電池セル製造方法の図4の次の工程を説明する部分断面図である。
図6図3の太陽電池セル製造方法の図5の次の工程を説明する部分断面図である。
図7図3の太陽電池セル製造方法の図6の次の工程を説明する部分断面図である。
図8図3の太陽電池セル製造方法の図7の次の工程を説明する部分断面図である。
図9図3の太陽電池セル製造方法の図8の次の工程を説明する部分断面図である。
図10図9の工程を説明する部分平面図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る太陽電池セルの模式平面図である。
図12図11の太陽電池セルのY-Y線模式断面図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る太陽電池セルの模式平面図である。
図14】本発明の第4実施形態に係る太陽電池セルの模式平面図である。
図15】本発明の第5実施形態に係る太陽電池セルの模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、簡略化のために、部材の図示、符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の形状及び寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池セル1の部分平面図である。図2は、太陽電池セルの分断面図である。太陽電池セル1は、板状に形成される半導体基板10と、半導体基板10の一方の主面側(受光面側)に積層される第1半導体層20と、半導体基板10の他方の主面側に積層される第2半導体層30と、半導体基板10と第1半導体層20の間に介在する第1パッシベーション層40と、半導体基板10と第2半導体層30の間に介在する第2パッシベーション層50と、第1半導体層20に積層される第1電極60と、第2半導体層30に積層される第2電極70と、を備える。
【0022】
半導体基板10は、入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板10は、受光面に光の入射率を向上するために、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有してもよい。
【0023】
半導体基板10は、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成することができる。また、半導体基板10は、ガリウムヒ素(GaAs)等の他の半導体材料から形成されてもよい。半導体基板10は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板とすることができる。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板10の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0024】
半導体基板10は、厚み方向に貫通する複数の透光開口11を有する。透光開口11は、太陽電池セル1の裏面側(受光面と反対側)に光を透過して採光することを可能にする。透光開口11の平面視での形状としては、典型的には円形とされるが、楕円形状、多角形状等、任意の形状とされてもよい。
【0025】
透光開口11は、均等に採光するために、半導体基板10の略全体に分散して形成されることが好ましいが、半導体基板10の強度を確保するために、例えば半導体基板10の周縁部、半導体基板10を横断する帯状領域等に設けられないようにしてもよい。透光開口11は、より均等に採光するとともに、美観を向上できるよう、規則的に配置されることが好ましい。
【0026】
半導体基板10における透光開口11の面積率、つまり半導体基板10の開口率としては、例えば3%以上50%以下、好ましくは5%以上30%以下とすることができる。これにより、十分な光が太陽電池セル1を透過することができ、且つ比較的大きい電力を得ることができる。
【0027】
透光開口11の平均径(円相当径)としては、例えば1mm以上10mm以下好ましくは2mm以上8mm以下とすることができる。これにより、太陽電池セル1の光電変換効率を大きくしながら、十分な採光が可能となる。
【0028】
透光開口11の内周面は、第1半導体層20の側に位置する第1周面部12と、第2半導体層30の側に位置し、第1周面部12と表面性状が異なる第2周面部13と、を有する。なお、「表面性状」とは、微細な凹凸形状、表面の層構造、半導体基板10の材料の酸化等の変成状態等を含む。
【0029】
本実施形態において、透光開口11の第1周面部12は、例えばレーザ加工面であり、半導体基板10の内周面に酸化物等を有し得る。また、第1周面部12では、半導体基板10が第1パッシベーション層40及び第1半導体層20によって被覆されている。一方、第2周面部13では、半導体基板10が露出している。
【0030】
第1周面部12は、第1パッシベーション層40及び第1半導体層20によって半導体基板10が被覆されているため、半導体基板10の内部に生じたキャリアの再結合を抑制することにより太陽電池セル1の光電変換効率を向上する。また、透光開口11は、半導体基板10を露出する第2周面部13を有するため、第1半導体層20と第2半導体層30とを確実に絶縁することができる。つまり、透光開口11の内周面がキャリアの再結合を抑制する第1周面部12と、短絡を防止する第2周面部13とを有することによって、太陽電池セル1は、高い光電変換効率を有する。
【0031】
透光開口11の内周面における第1周面部12の面積率の下限としては、50%が好ましく、60%がより好ましい。一方、透光開口11の内周面における第1周面部12の面積率の上限としては、95%が好ましく、90%がより好ましい。透光開口11の内周面における第1周面部12の面積率を前記下限以上とすることによって、キャリアの再結合抑制効果を大きくできる。また、透光開口11の内周面における第1周面部12の面積率を前記上限以下とすることによって、確実に短絡を防止するために特段の加工精度が要求されない。
【0032】
第1半導体層20及び第2半導体層30は、半導体基板10の内部から、互いに極性が異なるキャリアを誘引することにより、異なる極性の電荷を収集する。具体的には、半導体基板10がn型である場合、第1半導体層20はp型半導体から形成され、第2半導体層30はn型半導体から形成され得る。
【0033】
第1半導体層20及び第2半導体層30は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。
【0034】
第1半導体層20は、透光開口11の内周面に延在し、第1周面部12において、半導体基板10の内周面を覆う。
【0035】
第1パッシベーション層40及び第2パッシベーション層50は、半導体基板10の内部で生成したキャリアの半導体基板10の表面での再結合を抑制することにより、太陽電池セル1の光電変換効率を向上する。第1パッシベーション層40及び第2パッシベーション層50は、アモルファスシリコンから形成される真性半導体層とすることができる。
【0036】
第1パッシベーション層40は、透光開口11の内周面に延在し、第1周面部12において、半導体基板10の内周面を覆う。
【0037】
第1電極60及び第2電極70は、第1半導体層20及び第2半導体層30が引き寄せたキャリアを電荷として取り出す。第1電極60及び第2電極70は、導電性を有する材料から形成され、電気抵抗が小さい金属を主体とすることが好ましい。具体例として、第1電極60及び第2電極70は、金属、銀ペースト等から形成することができる。
【0038】
受光面側の第1電極60は、半導体基板10に光が入射できるよう面積を小さくするために、複数の線状に形成されることが好ましい。また、第1電極60は、キャリアの移動距離が大きくなる領域を小さくするために、第1電極60は網状に形成されてもよい。一方、第2電極70は、第1電極60と同じ形状に形成されてもよいが、第2電極70までのキャリアの移動距離及び第2電極70の中での電気抵抗を小さくするために、透光開口11以外の領域の略全面に設けられ得る。
【0039】
以上のように、太陽電池セル1は、透光開口11の内周面がキャリアの再結合を抑制する第1周面部12と短絡を防止する第2周面部13と、を有することによって、高い光電変換効率を実現できる。
【0040】
太陽電池セル1は、本発明に係る太陽電池セル製造方法の一実施形態によって製造することができる。本実施形態の太陽電池セル製造方法は、図3に示すように、環状溝形成工程(ステップS1)と、パッシベーション層成膜工程(ステップS2)と、第1半導体層成膜工程(ステップS3)と、第2半導体層成膜工程(ステップS4)と、第1電極形成工程(ステップS5)と、第2電極形成工程(ステップS6)と、透光開口形成工程(ステップS7)と、を備える。
【0041】
ステップS1の環状溝形成工程では、半導体基板10の一方の面にレーザ光を照射することにより、図4に示すように、透光開口11の外径に対応する環状溝Gを形成する。最終的に、環状溝Gの外側の内周面が第1周面部12となる。このため、環状溝Gの平面形状は、透光開口11の外形に対応する無端ループ状であり、円形に限られない。環状溝Gの深さは、第1周面部12の高さ対応して定められる。環状溝Gの内面には、パッシベーション層成膜工程及び第1半導体層成膜工程において成膜が行われる。このため、環状溝Gの幅は、環状溝Gの奥部まで成膜ガスを供給できるような幅とされる。
【0042】
ステップS2のパッシベーション層成膜工程では、図5に示すように、半導体基板10の両面及び環状溝Gの内面に、第1パッシベーション層40及び第2パッシベーション層50を形成する材料を積層する。第1パッシベーション層40及び第2パッシベーション層50は、例えばCVD、PVD等の成膜技術によって形成することができる。このパッシベーション層成膜工程は、半導体基板10の片面ずつ、2回に分けて行ってもよい。
【0043】
ステップS3の第1半導体層成膜工程では、図6に示すように、半導体基板10の受光側の主面及び環状溝Gの内面の第1パッシベーション層40の表面に、第1半導体層20を形成する材料を積層する。第1半導体層20も、第1パッシベーション層40及び第2パッシベーション層50と同様に、例えばCVD、PVD等の成膜技術によって形成することができる。
【0044】
ステップS4の第2半導体層成膜工程では、図7に示すように、半導体基板10の受光面と反対側の主面の第2パッシベーション層50の表面に、第2半導体層30を形成する材料を積層する。第2半導体層30も、例えばCVD、PVD等の成膜技術によって形成することができる。
【0045】
ステップS5の第1電極形成工程では、図8に示すように、例えば導電性ペーストの印刷及び焼成、金属層の積層及びレジストパターン用いた金属層のエッチング等の方法により、第1電極60を形成する。
【0046】
ステップS6の第2電極形成工程では、図9に示すように、例えば導電性ペーストの印刷及び焼成、金属層の積層及びレジストパターン用いた金属層のエッチング等の方法により、第2電極70を形成する。第2電極形成工程における焼成又はエッチングは、第1電極形成工程における焼成又はエッチングと同時に行ってもよい。
【0047】
このように、環状溝Gを形成した半導体基板10に成膜を行うことによって、図9及び10に示すように、太陽電池セル1の透光開口11となるべき部分(環状溝G及びその内側)にも、半導体基板10、第1半導体層20、第2半導体層30、第1パッシベーション層40及び第2パッシベーション層50が存在する中間製品が得られる。
【0048】
ステップS7の透光開口形成工程では、環状溝Gの底部のエッチング又は割断により、半導体基板10の環状溝Gの内側の領域を分離することによって、透光開口11を形成する。これにより、図1に示す太陽電池セル1が得られる。
【0049】
環状溝Gの底部をエッチングする場合、第1半導体層20の全面を覆うレジストパターンと、第2半導体層30の透光開口11を形成する領域の少なくとも環状溝Gに対応する部分を開口するレジストパターンとを形成することで、環状溝Gの内側の領域を分離できる。
【0050】
環状溝Gの底部を割断する場合、環状溝Gの内側に対応する部分に突起を有する治具を圧接することで、環状溝Gの内側の領域を分離できる。
【0051】
このように、環状溝形成工程と透光開口形成工程との2段階に分けて透光開口11を形成することによって、透光開口11が表面性状の異なる第1周面部12と第2周面部13とを有するものとなる。特に、環状溝形成工程と透光開口形成工程との間に半導体基板10に成膜を行う工程を備えることによって、キャリアの再結合を抑制する第1周面部12と短絡を防止する第2周面部13とを確実に形成できるため、高い光電変換効率を有する太陽電池セル1が比較的容易に製造される。
【0052】
<第2実施形態>
図11は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池セル101の模式平面図である。図12は、太陽電池セル101の模式断面図である。太陽電池セル101は、板状の光電変換体110と、光電変換体110の表面に積層される表面電極120と、光電変換体110の裏面に積層される裏面電極130と、を備える。なお、本明細書において、太陽電池セル101の使用状態において、光が入射する側の面を表面、その反対側を裏面という。
【0053】
光電変換体110は、半導体基板111と、半導体基板111の表面に積層される第1半導体層112と、半導体基板111の裏面に積層される第2半導体層113とを有する。光電変換体110は、図示しないが、例えばパッシベーション層、反射防止層等のさらなる構成を有してもよい。また、光電変換体110は、表裏に貫通する複数の透光開口114を有する。
【0054】
半導体基板111は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板111は、表面に光の入射率を向上するために、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有してもよい。
【0055】
半導体基板111は、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成することができる。また、ガリウムヒ素(GaAs)等の他の半導体材料から形成されてもよい。半導体基板111は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板とすることができる。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板111の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0056】
第1半導体層112及び第2半導体層113は、半導体基板111の内部から、互いに極性が異なるキャリアを誘引することにより、異なる極性の電荷を収集する。具体的には、半導体基板111がn型である場合、第1半導体層112はp型半導体から形成され、第2半導体層113はn型半導体から形成され得る。
【0057】
第1半導体層112及び第2半導体層113は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。第1半導体層112及び第2半導体層113は、例えばCVD、PVD等の成膜技術によって、半導体基板111にそれぞれ積層され得る。
【0058】
透光開口114は、太陽電池セル101の裏面側に光を透過して採光することを可能にする。透光開口114は、例えばレーザ加工、エッチング加工等、任意の方法で形成することができる。透光開口114の平面視での形状つまり断面形状としては、典型的には円形とされるが、楕円形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。
【0059】
透光開口114は、光電変換体110の略全体に分散して形成されることが好ましいが、例えば光電変換体110の周縁部、光電変換体110を横断する帯状領域等に透光開口114を設けないようにすることで、光電変換体110の強度と確保してもよい。透光開口114は、均等に採光するとともに、美観を向上できるよう、規則的に配置されることが好ましい。図示する例では、1つの透光開口114に周方向に等間隔且つ等距離に6つの透光開口114が隣接するよう、複数の透光開口114が六方配置されているが、透光開口114は例えば透光開口114が縦横に並んだ正方配置に形成されてもよい。
【0060】
光電変換体110における透光開口114の面積率、つまり光電変換体110の開口率としては、例えば3%以上50%以下、好ましくは5%以上30%以下とすることができる。これにより、十分な光が太陽電池セル101を透過することができ、且つ比較的大きい電力を得ることができる。
【0061】
透光開口114の平均径(円相当径)としては、例えば1mm以上10mm以下好ましくは2mm以上8mm以下とすることができる。これにより、太陽電池セル101の透光開口114以外の領域における光電変換効率を大きくしながら、十分な採光が可能となる。
【0062】
表面電極120は、第1半導体層112が引き寄せたキャリアを電荷として取り出す。表面電極120は、導電性を有する材料から形成され、電気抵抗が小さい金属から形成されることが好ましい。具体的には、表面電極120は、光電変換体110に積層した金属層のエッチング、光電変換体110への銀ペーストのような導電性ペーストの印刷及び焼成等の方法で形成することができる。また、表面電極120は、多層構造を有してもよい。
【0063】
表面電極120は、光電変換体110に光が入射できるよう、面積を小さくすることが好ましいが、光電変換体110の中でのキャリアの移動距離を小さくして光電変換効率を向上するために、光電変換体110の全体に設けることが好ましい。このため、表面電極120は、光電変換体110の表面全域に網状に形成されることが好ましい。
【0064】
表面電極120は、複数の透光開口114を個別に取り囲む複数の囲繞部121(二鎖線で取り囲んだ六角形状の部分)を有する。表面電極120において、複数の囲繞部121は、互いに接続される。このため、表面電極120は、複数の囲繞部121を接続する接続部を有してもよく、囲繞部121同士が図示するように例えば角部で接するよう形成されてもよく、隣接する囲繞部121がその一部を共有してもよい。
【0065】
表面電極120は、透光開口114を個別に取り囲み、互いに接続される複数の囲繞部121を有するため、透光開口114よって分断されないので、光電変換体110の全体から電荷を収集することができる。
【0066】
囲繞部121は、面積を小さくしつつ電気抵抗を小さくするために略一定の幅を有する電極線122から形成されることが好ましい。
【0067】
囲繞部121は、表面電極120のパターンを簡素化しつつ効率よく配置できるよう多角形状であることが好ましい。また、表面電極120を流れる電流を均等化するために、囲繞部121の各辺の長さが一定であること、つまり囲繞部121が全ての辺の長さが等しい多角形状であることがより好ましい。特に透光開口114が円形である場合、囲繞部121を正多角形状に形成することによって、キャリアの移動距離のバラツキを効果的に抑制すると共に、表面電極120を流れる電流が偏ることを防止できる。
【0068】
囲繞部121の各辺は、透光開口114からの距離(最短距離)が略等しくなるよう配置されることが好ましい。具体的には、囲繞部121の各辺の透光開口114からの距離の最小値が最大値の50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。これにより、キャリアの移動距離が局所的に大きくなることを防止できる。囲繞部121の重心を透光開口114の重心と略一致させることによって、囲繞部121の各辺の透光開口114からの距離を均等化できる。
【0069】
本実施形態の表面電極120は、それぞれ平行且つ等間隔に配置される複数の電極線122からなり、互いに交差するよう角度が異なる3組の電極線群123,124,125を有する。このように、3組の電極線群123,124,125によって表面電極120を構成することで、表面電極120のパターンを簡素化できる。また、直線的に延びる複数の電極線122によって表面電極120を構成することで、実効的な電路の長さを比較的短くすることができる。このような電極線122の幅を小さくすることによって光電変換体110に光が入射する面積を大きくできる。
【0070】
特に、本実施形態では、電極線群123,124,125の角度を60°毎に異ならせ、3組の電極線群123,124,125が一点で交差しないように均等に交差位置をずらすことで、正六角形状の囲繞部121を形成する。つまり、本実施形態の表面電極120において、囲繞部121は、頂点で互いに接する正六角形状であり、複数の囲繞部121の間に透光開口114を含まない三角形状の残余スペースを画定する。このような構成を有する表面電極120は、キャリアの移動距離が大きくなる領域を形成しないので、光電変換体110の有効面積(透光開口114を除外した面積)当たりの光電変換効率を向上することができる。
【0071】
複数の囲繞部121の内側の合計面積としては、複数の囲繞部の外側の残余スペースの合計面積の2.0倍以上5.0倍以下が好ましく、2.5倍以上4.0倍以下がより好ましい。これにより、キャリアの最大移動距離を容易に小さくできるので、太陽電池セル101の光電変換効率を容易に向上することができる。
【0072】
囲繞部121の各辺と透光開口114の距離としては、透光開口114の直径の20%以上150%以下が好ましく、30%以上125%以下がより好ましい。これにより、太陽電池セル101の光電変換効率を向上しつつ、採光性を確保できる。
【0073】
平面視における表面電極120の面積としては、半導体基板111の透光開口114を除く面積の1%以上50%以下が好ましく、2%以上40%以下がより好ましい。これにより、キャリアを効率よく回収しつつ、半導体基板111の光電変換に寄与する面積を十分に確保できる。
【0074】
裏面電極130は、第2半導体層113が引き寄せたキャリアを電荷として取り出す。裏面電極130は、表面電極120と同様の材料により形成できる。裏面電極130は、表面電極120と同様に、複数の透光開口114を個別に取り囲む複数の囲繞部を有する網状に形成されてもよいが、透光開口114を除いて光を透過させる必要がないので、光電変換体110の裏面全体に積層されてもよい。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る太陽電池セル101は、複数の透光開口114を有することで裏面に採光できるシースルー型の太陽電池セルである。加えて、太陽電池セル101は、表面電極120が透光開口114を個別に取り囲む複数の囲繞部121を有するため、キャリアの移動距離が大きい領域を有しないので、光電変換効率が高い。
【0076】
<第3実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態に係る太陽電池セル101Aの模式平面図である。なお、以降の実施形態について、先に説明した実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略することがある。
【0077】
太陽電池セル101Aは、表裏に貫通する複数の透光開口114を有する板状の光電変換体110と、光電変換体110の表面に積層される表面電極120Aと、光電変換体110の裏面に積層される不図示の裏面電極と、を備える。
【0078】
表面電極120Aは、複数の透光開口114を個別に取り囲む複数の正六角形状の囲繞部121Aを有する。囲繞部121Aは、各辺を隣接する囲繞部121Aと共有する。このような構成とすることによって、特に透光開口114の面積率を大きくする場合にも、表面電極120Aを適切に配置できる。
【0079】
表面電極120Aは、複数の透光開口114を個別に取り囲む複数の正六角形状の囲繞部121Aを有する。囲繞部121Aは、各辺を隣接する囲繞部121Aと共有する。このような構成とすることによって、特に透光開口114の面積率を大きくする場合にも、表面電極120Aを適切に配置できる。
【0080】
<第4実施形態>
図14は、本発明の第3実施形態に係る太陽電池セル101Bの模式平面図である。太陽電池セル101Bは、表裏に貫通する平面視で楕円形状の複数の透光開口114Bを有する板状の光電変換体110Bと、光電変換体110Bの表面に積層される表面電極120Bと、光電変換体110Bの裏面に積層される不図示の裏面電極と、を備える。
【0081】
表面電極120Bは、複数の透光開口114Bを個別に取り囲む複数の菱形状の囲繞部121Bを有する。囲繞部121Bは、各辺を隣接する囲繞部121Bと共有する。このように、平面視で楕円形状の透光開口114Bを取り囲む囲繞部121Bを菱形状に形成することによって、キャリアの最大移動距離を小さくできる。
【0082】
<第5実施形態>
図15は、本発明の第4実施形態に係る太陽電池セル101Cの模式平面図である。太陽電池セル101Cは、表裏に貫通する平面視で三角形状の複数の透光開口114Cを有する板状の光電変換体110Cと、光電変換体110Cの表面に積層される表面電極120Cと、光電変換体110Cの裏面に積層される不図示の裏面電極と、を備える。
【0083】
表面電極120Bは、複数の透光開口114Cを個別に取り囲む複数の三角形状の囲繞部121Cを有する。複数の囲繞部121Cは各頂点で互いに接続され、複数の囲繞部121の間に透光開口114Cを含まない三角形状の残余スペースが画定される。
【0084】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。本発明に係る太陽電池セルは、例えば反射防止膜等、さらなる構成要素を備えてもよい。具体例として、第1電極と第1半導体層の間、及び第2電極と第2半導体層の間を接続するさらなる導電層等を設けてもよい。また、本発明に係る太陽電池セルにおいて、パッシベーション層は省略されてもよい。
【0085】
本発明に係る太陽電池セルにおいて、透光開口の第1周面部と第2周面部とは、加工工程の違いに起因する表面性状の違いを有するだけであってもよい。このため、透光開口の内周面おいて、半導体基板は、全体的に露出してもよい。
【0086】
また、本発明に係る太陽電池セルにおいて、少なくとも第1周面部の半導体基板はパッシベーション層のみで被覆されてもよい。この場合、パッシベーション層は、絶縁性を有するシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等から形成されてもよい。
【0087】
上述の実施形態では、第1周面部が受光面側に位置するものとしたが、発明に係る太陽電池セルでは、第2周面部が受光面側に位置してもよい。
【0088】
本発明に係る太陽電池セル製造方法において、第1半導体層及び第2半導体層を形成した後に環状溝を形成してもよい。この場合、第1半導体層の全面にレジスト材料を積層した状態でレーザ光を照射して環状溝を形成することで、同時にレジスト材料のパターニングを行うことができる。さらに、環状溝の形成後又は透光開口形成後にパッシベーション層を形成し、例えば導電性ペーストの印刷及び焼成によりパッシベーション層を貫通する電極を形成してもよい。
【0089】
また、複数の太陽電池セルを一列に並べて接続する場合、他の太陽電池セルに隣接する外縁に沿う電極線の幅を大きくすることにより、この電極線を他の電極線から電荷を集めて外部に出力するためのバスバーとして使用できるようにしてもよい。また、表面電極は、別途設けられるバスバーを有してもよく、1つの電極線群がバスバーに垂直に接続するよう配置され、この電極線群の電極線の太さが他の電極線より大きくてもよい。これにより、表面電極が光電変換体から電荷を収集した点からバスバーまでの電気抵抗を低減して、太陽電池セル全体の光電変換効率を向上できる。
【符号の説明】
【0090】
1 太陽電池セル
10 半導体基板
11 透光開口
12 第1周面部
13 第2周面部
20 第1半導体層
30 第2半導体層
40 第1パッシベーション層
50 第2パッシベーション層
60 第1電極
70 第2電極
101,101A,101B,101C 太陽電池セル
110,110B,110C 光電変換体
111 半導体基板
112 第1半導体層
113 第2半導体層
114,14B 透光開口
120,120A,120B,120C 表面電極
121,121A,121B,120C 囲繞部
122 電極線
123,124,125 電極線群
130 裏面電極
G 環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15