(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-22
(45)【発行日】2026-01-30
(54)【発明の名称】アルカリ金属含有酸化物、正極活物質、電極及び電池
(51)【国際特許分類】
C01G 45/00 20250101AFI20260123BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20260123BHJP
C01G 53/00 20250101ALI20260123BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20260123BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20260123BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20260123BHJP
【FI】
C01G45/00
C01B25/45 M
C01G53/00
H01M4/505
H01M4/525
H01M6/16
(21)【出願番号】P 2022177539
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2023-05-19
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2022088008
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100182914
【氏名又は名称】佐々木 善紀
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】山林 奨
(72)【発明者】
【氏名】陰山 洋
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】阿川 寛樹
【審判官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-77491(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188772号(WO,A1)
【文献】特表2016-526759(JP,A)
【文献】特開2003-331824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C01G,H01M
DB名 JDream III
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピネル型構造を有し、下記一般式(1)で表される組成を有するアルカリ金属含有酸化物であって、
前記アルカリ金属含有酸化物について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θで43.9~44.4°の範囲内に半値幅が2θで1.32~3.21°であるピークが観測される、アルカリ金属含有酸化物。
A
xM’
aM’’
bO
4・・・(1)
(式(1)中、1.2≦x≦2.0、1.0≦a≦1.8、0.1≦b≦0.5、1.1≦a+b<2.0であり、
AはLiであり、
M’はCr、Mn、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、
M’’はP、及びVからなる群から選択される少なくとも一種である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、M’’がVを含む、請求項
1に記載のアルカリ金属含有酸化物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアルカリ金属含有酸化物を含む、電極。
【請求項4】
正極としての請求項
3に記載の電極と、リチウムを含有する負極とを備える、電池。
【請求項5】
アモルファス相を有する、請求項1又は2に記載のアルカリ金属含有酸化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属含有酸化物、正極活物質、電極及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属イオンが正極及び負極の間を移動することにより、充電及び放電を行う二次電池が知られている。そのような二次電池の中では、リチウムイオン二次電池が代表的であり、携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化され、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車用電源や分散型電力貯蔵用電源等の大型電源として使用可能であることから、その需要は増大しつつある。
【0003】
上記の二次電池の正極として、スピネル型の結晶構造を有するアルカリ金属含有酸化物が知られている。そのようなアルカリ金属含有酸化物は、例えば、LiMn2O4のように、一つの単位格子中に32個の酸化物イオンが存在し、8個の四面体サイトをアルカリ金属イオンが占有し、16個の八面体サイトを遷移金属イオンが占有している。また、酸素4当たりのアルカリ金属元素の組成比が1よりも多く、且つ酸素4当たりの遷移金属元素の組成比が2よりも少ないという、アルカリ金属が過剰な組成を有するアルカリ金属含有酸化物も知られている(特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-122299号公報
【文献】特表2000-500280号公報
【文献】特開2000-063123号公報
【文献】中国特許出願公開第102163716号明細書
【文献】中国特許出願公開第103594700号明細書
【文献】特表2014-525667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、スピネル型のアルカリ金属含有酸化物は、充放電容量について、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたものであって、充放電容量に優れるアルカリ金属含有酸化物、及びそのようなアルカリ金属酸化物を含む電極及び電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアルカリ金属含有酸化物は、スピネル型構造を有し、下記一般式(1)で表される組成を有し、アルカリ金属含有酸化物について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θで40~45°の範囲内に半値幅が2θで0.5~5°であるピークが観測されるものである。
AxM’aM’’bZcO4-eXd・・・(1)
(式(1)中、1.1<x≦2.8、0.8≦a≦1.9、0.05<b≦0.6、1.0≦a+b<2.0、0≦c<0.2、0≦d<1.0、0≦e<1.0であり、
Aはアルカリ金属元素であり、
M’はTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、
M’’はSi、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Zは、酸素、M’及びM’’以外の周期表第2族~第16族の元素であり、
Xは、ハロゲン元素である。)
【0008】
上記アルカリ金属含有酸化物は、当該アルカリ金属含有酸化物を含む電極、リチウム金属の対極、及び当該電極及び対極の間に配置されたリチウム塩を含有する電解液を備える電気化学セルを作製し、Li/Li+基準で電池を4.8Vまで充電し、その後1.5Vまで放電を行った場合に、一般式(1)におけるxが2.2~2.8の範囲となるものであってよい。
【0009】
上記一般式(1)において、AがLiを含んでいてよい。
【0010】
上記一般式(1)において、M’’がVを含んでいてよい。
【0011】
上記一般式(1)において、1.1<x≦2.0であってよい。
【0012】
本発明の電極は、上記アルカリ金属含有酸化物を含む。
【0013】
本発明の非水二次電池は、正極としての上記電極と、リチウムを含有する負極とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたものであって、充放電容量及びクーロン効率に優れるアルカリ金属含有酸化物、及びそのようなアルカリ金属酸化物を含む電極及び電池を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1~4のリチウム含有酸化物のX線回折チャートである。
【
図2】
図2は、実施例5~8のリチウム含有酸化物のX線回折チャートである。
【
図3】
図3は、実施例9及び10、並びに比較例1~3のリチウム含有酸化物のX線回折チャートである。
【
図4】
図4は、比較例1並びに実施例1、及び3~6の初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図5】
図5は、比較例1並びに実施例2、7及び8の初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例1並びに実施例9及び10の初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例1~3の初回充放電曲線を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例4及び比較例2の初回充放電曲線について、横軸として正極活物質であるアルカリ金属含有酸化物の組成における酸素の量を4とした際のリチウムの組成比x(つまり、組成式Li
xMn
1.4V
0.3O
4におけるx)をとり、縦軸として電池電圧として取ったグラフである。
【
図9】
図9は、実施例5の試料の電子線回折像を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例5の試料の透過型顕微鏡による暗視野観察像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、スピネル型構造を有し、下記一般式(1)で表される組成を有し、アルカリ金属酸化物について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θで40~45°の範囲内に半値幅が2θで0.5~5°であるピークが観測されるものである。
AxM’aM’’bZcO4-eXd・・・(1)
(式(1)中、1.1<x≦2.8、0.8≦a≦1.9、0.05<b≦0.6、1.0≦a+b<2.0、0≦c<0.2、0≦d<1.0、0≦e<1.0であり、
Aはアルカリ金属元素であり、
M’はTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、
M’’はSi、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Zは、酸素、M’及びM’’以外の周期表第2族~第16族の元素であり、
Xは、ハロゲン元素である。)
【0017】
Aはアルカリ金属元素であれば特に制限はないが、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種以上を含んでいてよく、Li、Na、及びKからなる群から選択される少なくとも1種以上を含んでいてよく、Li及びNaの少なくとも一方を含んでいてよく、Liを含んでいてよい。
【0018】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物に含まれるアルカリ金属の全量うち、1種のアルカリ金属の含有量が90モル%以上であってよく、95モル%以上であってよく、98モル%以上であってよく、99モル%以上であってよく、99.9モル%以上であってよく、実質的に1種のアルカリ金属のみを含んでいてもよい(すなわち、当該1種のアルカリ金属以外のアルカリ金属の含有量が実質的に0モル%である。)。当該1種のアルカリ金属は、Li、Na、又はKであってよく、Li又はびNaであってよく、Liであってよい。アルカリ金属含有酸化物が主としてLiを含む場合(例えば、アルカリ金属含有酸化物に含まれるアルカリ金属の全量うち、1種のアルカリ金属の含有量が80モル%以上である場合等)、X線回折チャートにおいて、2θで43~45°の範囲内に半値幅が、2θで0.5~5°であるピークが観測される傾向にある。
【0019】
式(1)において、xは、1.1より大きく2以下であってよく、1.13~2.75であってよく、1.15~2.7であってよく、1.2~2.6であってよく、1.25~2.5であってよい。また、xは、1.13~2.1であってよく、1.15~2.0であってよく、1.2~1.95であってよく、1.25~1.9であってよい。
【0020】
M’はTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含んでいてよく、Cr、Mn及びNiの少なくとも1種を含んでいてよく、Mn及びNiの少なくとも1種を含んでいてよく、Mnを含んでいてよい。
【0021】
M’’はSi、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含んでいてよく、P及びVの少なくとも一方を含んでいてよく、Vを含んでいてよい。
【0022】
aは、0.9~1.9であってよく、1.0~1.85であってよい。bは、0.06~0.58であってよく、0.08~0.55であってよく、0.1~0.5であってよい。
【0023】
a+bは、1.2~1.95であってよく、1.5~1.93であってよい。
【0024】
Zは、酸素、M’及びM’’以外の周期表第2族~第16族の元素であり、例えば、Al、Mg、Ca、Zr、Nb、Mo、Ru、W、Sn等が挙げられる。
【0025】
cは、0.1以下であってよく、0.05以下であってよく、0.01以下であってよく、実質的に0であってもよい。
【0026】
Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含んでいてよく、F及びClの少なくとも一方を含んでいてよく、Fを含んでいてよい。
【0027】
dは、0.8以下であってよく、0.6以下であってよく、0.4以下であってよく、0.2以下であってよく、0.05以下であってよく、0.01以下であってよい。dは、0.001以上であってく、0であってもよい。また、dは、0.001~0.8であってよく、0.001~0.6であってよく、0.001~0.2であってよい。eは、0.8以下であってよく、0.6以下であってよく、0.4以下であってよく、0.2以下であってよく、0.05以下であってよく、0.01以下であってよく、0であってもよい。。eは、0.001以上であってよい。また、eは、0.001~0.8であってよく、0.001~0.6であってよく、0.001~0.2であってよい。
【0028】
上記40~45°の範囲内に観測されるX線回折ピークの半値幅は、0.7~4.5°であってよく、0.9~4.0°であってよく、1.0~3.8°であってよく、1.28~3.5°であってよい。
【0029】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、上述のX線回折チャートにおいて2θで63~66°の範囲内に半値幅が2θで0.5~8°であるピークが観測されてもよい。当該ピークの半値幅は、1.0~7.5°であってもよい。
【0030】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、結晶相を有すると共に、アモルファス相を有していてもよい。結晶相は、アモルファス相内に分散されていてよい。アモルファス相が存在することで材料内でのリチウムイオンの拡散が改善する傾向にある。本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、円相当径で1~30nmの平均粒子径を有する結晶相(結晶子)を有していてもよい。結晶相(結晶子)の平均粒子径は、円相当径で、1~20nmであってよく、1~15nmであってよい。ここで、アモルファス相は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって、確認することができる。
【0031】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、Liを8~15質量%、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類である元素M’を32~57質量%、Si、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種である元素M’’を3~30質量%含み、25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、スピネル構造に帰属されるピークパターンが観測されると共に、2θで40~45°の範囲内に半値幅が、0.5~5°であるピークが観測されるものであってもよい。リチウム含有酸化物は、酸素、M’及びM’’以外の周期表第2族~第16族の元素Zを含んでいてもよい。元素Zとして具体的には、上記一般式(1)のZとして例示したものが挙げられる。Zの含有量は、アルカリ金属含有酸化物の総量に対して20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、1質量%以下であってよく、実質的に0質量%であってよい。また、アルカリ金属含有酸化物は、ハロゲン元素を含んでいてもよく、ハロゲン元素としては、上記一般式(1)のXとして例示したものが挙げられる。ハロゲン元素の含有量は、アルカリ金属含有酸化物の総量に対して20質量%以下であってよく、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、1質量%以下であってよく、実質的に0質量%であってよい。当該アルカリ金属含有酸化物は、単相であっても含層であってもよく、X線回折試験を行った際にスピネル構造に帰属されるピーク以外のピークが観測されてもよい。アルカリ金属含有酸化物は、結晶相(結晶子)を有すると共に、アモルファス相を有していてもよい。
【0032】
上記アルカリ金属含有酸化物を製造する方法としては特に制限されないが、Li及びM’を含むスピネル型酸化物と、M’’を含むリチウム塩とをボールミルでメカノケミカル的に混合する方法が挙げられる。スピネル型酸化物としては、LiMnTiO4、LiCrMnO4、LiMn2O4、LiFeMnO4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCu0.5Mn1.5O4が挙げられる。リチウム塩としては、Li3VO4、Li4SiO4、Li2SiO3、Li3P0.5V0.5O4、Li2GeO4、Li2SO4等が挙げられる。また、原料として、Li2O等の酸化アルカリ金属、V2O5、GeO2、SiO2等のM’又はM’’の酸化物も原料として使用できる。原料としては上記に限定されず、Li、M’及びM’’の少なくとも一つと酸素とを含む化合物を目的の組成となるように配合すればよい。ボールミルの条件としては特に限定されず、回転数は100~700rpmであってよく、混合時間は、0.5~72時間であってよく、10~60時間であってよい。また、混合時間は20~72時間であってもよく、30~60時間であってよい。また、一般式(1)におけるXを導入する場合、Xのアルカリ金属塩等を原料として用いることもできる。
【0033】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、電池(リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池等)の材料に使用することができる。すなわち、本実施形態の電池は、上記リチウム含有酸化物を含む。電池は、一次電池であっても二次電池であってもよい。また、電池は、非水二次電池であってよい。電池において、上記リチウム含有酸化物は、電極に含まれていてよい。
【0034】
本実施形態の電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置された電解質とを有する。
【0035】
本実施形態の正極は、集電体と、当該集電体上に担持された正極合剤とを含む。正極合剤は、集電体上で正極合材層を形成していてもよい。
【0036】
正極合剤は、上記リチウム含有酸化物を含み、必要に応じて導電材(導電助剤)、バインダー等を含んでいてよい。つまり、上記リチウム酸化物は、正極活物質に含まれていてよい。
【0037】
導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの炭素材料などが挙げられる。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下では「PVDF」としても言及する)、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ならびにポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどを用いることができる。
【0038】
集電体に正極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、電極合剤について有機溶媒等を用いてペースト化し、集電体上に塗工し、乾燥後プレスするなどして固着する方法等が挙げられる。ペースト化する場合、例えば、上記正極活物質、導電材、バインダー及び有機溶媒からなるスラリーを作製する。有機溶媒としては、N,N-ジメチルアミノプロピリアミン、ジエチルトリアミン等のアミン系;エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のエーテル系;メチルエチルケトン等のケトン系;酢酸メチル等のエステル系;ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。電極合剤を集電体へ塗工する方法としては、例えばスリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。
【0039】
電池の負極としては特に限定されず、負極活物質を含み、且つ必要に応じて導電助剤、結合剤等を含むものであってよい。例えば、リチウムイオン電池の負極活物質としては、Li、Si、P、Sn、Si-Mn、Si-Co、Si-Ni、In、Auなどの元素の単体及びこれらの元素を含む合金又は複合体、グラファイト等の炭素材料、当該炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などを挙げることができる。ナトリウムイオン電池の負極の場合、リチウムイオン電池の負極材料として挙げた物質のLiをNaに置き換えた物質を負極材料として使用することができる。
【0040】
電池の電解質としては、特に限定されず、アルカリ金属塩を有機溶媒に溶解させた電解液を用いることができる。また、電解質は、固体電解質であってもよい。アルカリ金属塩としては、ヨウ化物塩、テトラフルオロボレート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩等が挙げられる。
【0041】
電解液に含まれる有機溶媒としては、特に限定されないが、非水性溶媒、例えば、エチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートエステル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、またはエチルメチルカーボネート(EMC)などの直鎖カーボネートエステル、又はスルトン等が挙げられる。溶媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、アルカリ金属イオンの吸蔵能に優れる。そのため、本実施形態のアルカリ金属含有酸化物は、当該アルカリ金属含有酸化物を含む電極、リチウム金属の対極、及び当該電極及び対極の間に配置されたリチウム塩を含有する電解液を備える電気化学セルを作製し、Li/Li+基準で電池を4.8Vまで充電(初回充電)し、その後1.5Vまで放電を行った場合に、一般式(1)におけるxが2.2~2.8の範囲となるものであってよい。初回充放電後のxは、2.25~2.7であってよく、2.3~2.6であってよく、2.35~2.55であってよい。
【0043】
本実施形態の正極活物質は、アルカリ金属元素、元素M’及び元素M’’を含有する複合酸化物を含み、アルカリ金属元素を8~27質量%、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類である元素M’を26~57質量%、Si、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種である元素M’’を2~30質量%含み、当該正極活物質について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、複合酸化物由来のスピネル構造に帰属されるピークパターンが観測されると共に、2θで40~45°の範囲内に半値幅が、0.5~5°であるピークが観測されるものであってもよい。正極活物質に含まれる複合酸化物は、上述のアルカリ金属含有酸化物を含有していてよい。正極活物質は、複合酸化物の結晶相(結晶子)とアモルファス相とを有していてもよい。
【0044】
本発明は、以下の例示的実施形態を含む。
実施形態1
スピネル型構造を有し、下記一般式(1)で表される組成を有するアルカリ金属含有酸化物であって、
前記アルカリ金属含有酸化物について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θで40~45°の範囲内に半値幅が、2θで0.5~5°であるピークが観測される、アルカリ金属含有酸化物。
AxM’aM’’bZcO4-eXd・・・(1)
(式(1)中、1.1<x≦2.8、0.8≦a<1.9、0.05<b≦0.6、1.0≦a+b<2.0、0≦c<0.2、0≦d<1.0、0≦e<1.0であり、
Aはアルカリ金属元素であり、
M’はTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、
M’’はSi、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Zは、酸素、M’及びM’’以外の周期表第2族~第16族の元素であり、
Xは、ハロゲン元素である。)
実施形態2
前記アルカリ金属含有酸化物は、前記アルカリ金属含有酸化物を含む電極、リチウム金属の対極、及び当該電極及び対極の間に配置されたリチウム塩を含有する電解液を備える電気化学セルを作製し、Li/Li+基準で前記電気化学セルを4.8Vまで充電し、その後1.5Vまで放電を行った場合に、前記一般式(1)におけるxが2.2~2.8の範囲となるものである、実施形態1のアルカリ金属含有酸化物。
実施形態3
前記一般式(1)において、AがLiを含む、実施形態1又は2のアルカリ金属含有酸化物。
実施形態4
前記一般式(1)において、M’’がVを含む、実施形態1~3のいずれか一つのアルカリ金属含有酸化物。
実施形態5
前記一般式(1)において、1.1<x≦2.0である、実施形態1~4のいずれか一つのアルカリ金属含有酸化物。
実施形態6
アモルファス相を有する、実施形態1~5のいずれか一つのアルカリ金属含有酸化物。
実施形態7
実施形態1~6のいずれか一つのアルカリ金属含有酸化物を含む、電極。
実施形態8
正極としての実施形態7に記載の電極と、リチウムを含有する負極とを備える、電池。
実施形態9
アルカリ金属元素、元素M’及び元素M’’を含有する複合酸化物を含む正極活物質であって、
アルカリ金属元素を8~15質量%、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類である元素M’を32~57質量%、Si、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種である元素M’’を3~30質量%含み、当該正極活物質について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、前記複合酸化物由来のスピネル構造に帰属されるピークパターンが観測されると共に、2θで40~45°の範囲内に半値幅が、0.5~5°であるピークが観測される、正極活物質。
実施形態10
アモルファス相を有する、実施形態9の正極活物質。
実施形態11
スピネル型構造を有する結晶相と、アモルファス相とを有し、下記一般式(1)で表される組成を有するアルカリ金属含有酸化物であって、
前記アルカリ金属含有酸化物について25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θで40~45°の範囲内に半値幅が2θで0.5~5°であるピークが観測される、アルカリ金属含有酸化物。
AxM’aM’’bZcO4-eXd・・・(1)
(式(1)中、1.1<x≦2.8、0.8≦a<1.9、0.05<b≦0.6、1.0≦a+b<2.0、0≦c<0.2、0≦d<1.0、0≦e<1.0であり、
Aはアルカリ金属元素であり、
M’はTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuからなる群から選択される少なくとも1種類の元素であり、
M’’はSi、P、S、Ge及びVからなる群から選択される少なくとも一種であり、
Zは、酸素、M’及びM’’以外の周期表第2族~第16族の元素であり、
Xは、ハロゲン元素である。)
【実施例】
【0045】
(実施例1)
原料であるLiMn2O4粉末とLi3VO4粉末とを以下のとおり製造した。
まず、炭酸リチウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化マンガン(IV)(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを、1:4のモル比で混合し、空気中、800℃で、18時間焼成してLiMn2O4の粉末を得た。また、炭酸リチウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化バナジウム(V)(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを、3:1のモル比で混合し、空気中、650℃で12時間焼成することによってLi3VO4の粉末を得た。
【0046】
得られたLiMn2O4粉末とLi3VO4粉末とを0.9:0.1のモル比で混合し、4mm径のジルコニアボールと上記混合粉を65:1の質量比となるようにジルコニア製ボールミル容器に導入した。ボールミル容器を遊星ボールミル装置(Retsch社製、PM200)に導入し、500rpmの回転数で48時間、ボールミルを行うことでリチウム含有酸化物を得た。
【0047】
(実施例2~6、及び比較例3)
表1に示すとおり、原料であるLiMn2O4粉末とLi3VO4粉末との配合量、及び/又は混合時間を変更したこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有酸化物を製造した。
【0048】
(実施例7)
原料として、LiNi0.5Mn1.5O4粉末とLi3VO4粉末とを0.8:0.2のモル比で用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有酸化物を製造した。
なお、LiNi0.5Mn1.5O4粉末は炭酸リチウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化ニッケル(II)(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化マンガン(IV)(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを1:1:3のモル比となるように秤量し、エタノールと8mm径のジルコニアボールとともに湿式のボールミルで混合し、ろ過、乾燥後の混合粉を大気中、600℃で15時間焼成することによって得た。
【0049】
(実施例8)
原料として、LiMn2O4粉末とLi3V0.5P0.5O4粉末とを0.8:0.2のモル比で用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有酸化物を製造した。
なお、Li3V0.5P0.5O4粉末は、炭酸リチウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)とリン酸水素二アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化バナジウム(V)(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを6:2:1のモル比で混合し、大気中、800℃で10時間焼成することによって得た。
【0050】
(実施例9、10)
原料として、LiCrMnO4粉末とLi3VO4粉末とを表1に示したモル比で用いたこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有酸化物を製造した。
なお、LiCrMnO4は炭酸リチウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化クロム(III)(富士フイルム和光純薬株式会社製)と酸化マンガン(III)(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを1:1:1のモル比で混合し、空気中、800℃で6時間焼成し、さらに空気中、900℃で12時間焼成することによって得た。
【0051】
(比較例1)
LiMn2O4粉末のみにボールミルを行ったこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有酸化物を製造した。
【0052】
(比較例2)
実施例1で製造した原料のLiMn2O4粉末をそのまま使用した。
【0053】
<X線回折>
実施例及び比較例の各リチウム含有酸化物に粉末X線回折測定装置(株式会社Rigaku製、Ultima IV)を用いて粉末X線回折測定を行った。測定は室温(25℃)において行った。上記リチウム含有酸化物をガラスプレートのくぼみに充填し、空気及び湿気を避けるためにベリリウム窓がついた気密試料台内に試料を載せたガラスプレートを密閉し、大気非暴露で測定を行った。CuKα線源を用い40kV、40mAの出力にて、回折角2θ=10°~90°の範囲を0.02°ステップ、2°/分の速度にて行った。40~45°(2θ)観測されたピークのピーク位置と半値幅を表1及び2に示す。
図1は、実施例1~4のリチウム含有酸化物のX線回折チャートである。
図2は、実施例5~8のリチウム含有酸化物のX線回折チャートである。
図3は、実施例9及び10、並びに比較例1~3のリチウム含有酸化物のX線回折チャートである。
図1~3からわかるように、実施例1~10のリチウム含有酸化物は、比較例2と同様の回折パターンを示した。
【0054】
【0055】
【0056】
<充放電試験>
(1)正極の作製
実施例1~10、並びに比較例1及び3のリチウム含有酸化物(正極活物質)、導電材としてアセチレンブラック(商品名:HS-100、デンカ株式会社製)及びバインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE、品番:6-J、三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社)を、正極活物質:導電材:バインダー=70:20:10(質量比)の組成となるようにそれぞれ秤量した。まず、正極活物質と導電材をメノウ乳鉢で十分に混合し、バインダーを加え更に混合した。混合物7mgを秤量し、乳鉢上で円形に引き延ばした。引き延ばした混合物を集電体である厚さ110μmのアルミメッシュ(100メッシュ、株式会社ニラコ製)に圧着し、正極活物質を含む正極を得た。
比較例2については、リチウム含有酸化物(正極活物質)とアセチレンブラック(商品名:HS-100、デンカ株式会社製)、及びバインダーとしてPVDFのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(KFポリマー、品番:L#1120、クレハ社製)を正極活物質:アセチレンブラック:PVDFが85:10:5(質量比)の組成となる割合で加えて混錬することにより、ペースト状の正極合材を調製した。正極合材の調製時には、NMPを添加することでペーストの粘度を調整した。得られた正極合材を集電体となる厚さ40μmのAl箔に塗布して60℃で1時間大気乾燥した後、150℃で8時間真空乾燥を行い、直径14.5mmの円形に打ち抜くことによって正極を得た。
【0057】
(2)Liハーフセルの作製及び評価
上記正極と、セパレータとしてポリエチレン製多孔質フィルム(厚み16μm)、非水電解液として1MのLiPF6溶液(溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを30:35:35の体積比で含む混合溶媒)、及び対極として金属リチウムを用いてコイン型電池CR2032タイプを組み立てた。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。作製したコイン型電池を用いて、25℃、実施例1~8及び比較例1~3では1.5~4.8Vの電圧の範囲、実施例9と実施例10では1.5~4.5Vの電圧範囲で以下の条件により充放電試験を行った。初回の放電エネルギー密度及びエネルギー効率の測定結果を表3に示す。
充放電条件:30mA/g、カットオフ条件6mA/gで定電流定電圧充電(CC―CV)充電を行った。
放電条件:30mA/gで定電流(CC)放電を行った。
【0058】
【0059】
図4は、比較例1並びに実施例1、及び3~6の初回充放電曲線を示すグラフである。
図5は、比較例1並びに実施例2、7及び8の初回充放電曲線を示すグラフである。
図6は、比較例1並びに実施例9及び10の初回充放電曲線を示すグラフである。
図7は、比較例1~3の初回充放電曲線を示すグラフである。
図4~7において、横軸は正極活物質の容量を示し、縦軸は電池電圧を示す。
図8は、実施例4及び比較例2の初回充放電曲線について、横軸として正極活物質であるアルカリ金属含有酸化物の組成における酸素の量を4とした際のリチウムの組成比x(つまり、組成式Li
xMn
1.4V
0.3O
4におけるx)をとり、縦軸として電池電圧として取ったグラフである。
図8におけるAは、充電開始前の状態を示し、この時に正極に含まれるリチウム含有酸化物の組成はLi
1.6Mn
1.4V
0.3O
4である。その後、上記充放電試験を行い、
図8のB(放電完了時)に到達した際のリチウム含有酸化物の組成は、電流値からリチウムイオンの移動量を計算すると、Li
2.45Mn
1.4V
0.3O
4であり、リチウムイオン吸蔵能に優れることがわかる。
【0060】
<透過型電子顕微鏡による観察>
以下の測定条件で、実施した。
装置:分析電子顕微鏡 ARM200F 日本電子株式会社製
測定条件: 加速電圧 200kV
試料調整:実施例5のリチウム含有酸化物に対して不活性雰囲気下で乾式分散法により試料調製を行った。
図9に、実施例5の試料の電子線回折像を示す。図中のBFで表される円は、明視野像(図示せず)の観察位置である。
図9における1、2及び3の円は、対物絞りの挿入位置(開口)を示す。
図9では、複数の輝点がリング状に配列していることが観測されると共に、ハローが観測されることから結晶相及びアモルファス相が存在していることがわかる。
図10は、実施例5の試料の透過型顕微鏡による暗視野観察像を示す図である。
図10における(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、
図9における1、2及び3の位置に対物絞りを挿入して測定した暗視野観察像に対応する。
図10における白い粒状の構造は結晶相を示し、サンプル中に2~8nm径のナノ結晶が分散していることがわかる。