(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-22
(45)【発行日】2026-01-30
(54)【発明の名称】カルシウム系炭酸化合物、組成物、成形板、無機質成形体、及び、カルシウム系炭酸化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20260123BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20260123BHJP
【FI】
C01F11/18 B
B28B3/02 Z
(21)【出願番号】P 2025119186
(22)【出願日】2025-07-15
【審査請求日】2025-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2025065088
(32)【優先日】2025-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 悠斗
【審査官】福田 浩生
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-160322(JP,A)
【文献】特開昭51-129424(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第119192878(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101003383(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/02
C01F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D
2が、1μm以上10μm以下の凝集粒子であり、
酸可溶性シリカの含有量が、0.1質量%以上
3質量%以下であり、
炭酸カルシウムを70質量%以上含み、
沈降容積が、50mL以下であるカルシウム系炭酸化合物。
【請求項2】
前記カルシウム系炭酸化合物の結晶構造が、カルサイト型、アラゴナイト型、及び、バテライト型からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
【請求項3】
前記凝集粒子が、1次粒子の凝集物であり、
前記1次粒子のSEM画像による平均長径D
1が、0.1μm以上5μm以下である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
【請求項4】
前記1次粒子のSEM画像による平均長径D
1、及び、前記凝集粒子のレーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D
2とした際の(D
1/D
2)が、0.01以上0.7以下である、請求項
3に記載のカルシウム系炭酸化合物。
【請求項5】
水に10質量%濃度で分散した際の粘度(10%粘度)が、20cP以下である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
【請求項6】
前記1次粒子のSEM画像による平均長径D
1の前記1次粒子のSEM画像による平均短径D
3に対するアスペクト比(D
1/D
3)が、1.5以上6以下である、請求項
3に記載のカルシウム系炭酸化合物。
【請求項7】
吸油量が、40mL/100g以上100mL/100g以下である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のあるカルシウム系炭酸化合物を含む、組成物。
【請求項9】
更に、樹脂、及び、ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
P漏斗流下時間が15秒以下である、請求項
8に記載の組成物。
【請求項11】
無機質成形体用である、請求項
8に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のカルシウム系炭酸化合物を含む、無機質成形体。
【請求項13】
請求項
8に記載の組成物の成形体をプレスして得られる成形板の面変化率が、120%以下である成形板。
【請求項14】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のカルシウム系炭酸化合物の製造方法であって、
CaO含有組成物を準備する準備工程、
酸可溶性シリカを含む珪素含有化合物、及び、前記CaO含有組成物を混合し、スラリーを調製する前処理工程、並びに、
前記CaO含有組成物と二酸化炭素とを接触させる炭酸化工程を含む、カルシウム系炭酸化合物の製造方法。
【請求項15】
前記準備工程として、篩別工程を含む、請求項
14記載のカルシウム系炭酸化合物の製造方法。
【請求項16】
前記準備工程として、粉砕工程を含む、請求項
14記載のカルシウム系炭酸化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム系炭酸化合物、組成物、成形板、無機質成形体、及び、カルシウム系炭酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の問題など、環境意識への関心の高まり、大気中への二酸化炭素の放出量の削減が求められており、焼却炉、製鉄所、セメント工場などの産業設備において発生する廃棄物や二酸化炭素などの排ガス、廃熱等の副生成物や副生成エネルギーを再利用する試みがなされつつある。
【0003】
例えば、コンクリート廃材は、その廃棄量が膨大であることから、天然資源の節約、環境保護、資源の有効利用の観点から、その再利用が求められている。
【0004】
前記コンクリート廃材は、カルシウムを含有する廃棄物であり、前記廃棄物を二酸化炭素により炭酸化して炭酸カルシウムを製造する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、炭酸カルシウムを用いて得られる無機質成形体は、住宅等の外壁材、屋根下地材、軒天井材等に広く用いられ、無機質成形体に要求される重要な性能の一つである強度を高める技術として、針状の炭酸カルシウムを配合する技術が提案されている(特許文献2照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-69860号公報
【文献】特許第6898926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記技術によっても得られる無機質成形体の強度が低下する場合があり、無機質成形体の製造工程において、原料の混合物の流動性が低下したり、混合物中での炭酸カルシウムの分散性が低下するなど、製造工程全般における作業性が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、製造工程における作業性に優れたカルシウム系炭酸化合物、組成物、無機質成形体、成形板、及び、カルシウム系炭酸化合物の製造方法を提供することを目的とする。なお、前記作業性とは、ろ過性、押出性、洗浄性、成形性などを含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2が、1μm以上10μm以下の凝集粒子であり、酸可溶性シリカの含有量が、0.1質量%以上であり、沈降容積が、50mL以下であるカルシウム系炭酸化合物に関する。
【0011】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、前記カルシウム系炭酸化合物が、炭酸カルシウムを70質量%以上含むことが好ましい。
【0012】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、前記カルシウム系炭酸化合物の結晶構造が、カルサイト型、アラゴナイト型、及び、バテライト型からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、前記凝集粒子が、1次粒子の凝集物であり、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1が、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1、及び、前記凝集粒子のレーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2とした際の(D1/D2)が、0.01以上0.7以下であることが好ましい。
【0015】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、水に10質量%濃度で分散した際の粘度(10%粘度)が、20cP以下であることが好ましい。
【0016】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1の前記1次粒子のSEM画像による平均短径D3に対するアスペクト比(D1/D3)が、1.5以上6以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、吸油量が、40mL/100g以上100mL/100g以下であることが好ましい。
【0018】
本発明は、前記カルシウム系炭酸化合物を含む、組成物に関する。
【0019】
本発明の組成物は、更に、樹脂を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の組成物は、P漏斗流下時間が15秒以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、無機質成形体用であることが好ましい。
【0022】
本発明は、前記カルシウム系炭酸化合物を含む、無機質成形体に関する。
【0023】
本発明は、前記組成物の成形体をプレスして得られる成形板の面変化率が、120%以下である成形板に関する。
【0024】
本発明は、前記カルシウム系炭酸化合物の製造方法であって、CaO含有組成物を準備する準備工程、酸可溶性シリカを含む珪素含有化合物、及び、CaO含有組成物を混合し、スラリーを調製する前処理工程、並びに、前記CaO含有組成物と二酸化炭素とを接触させる炭酸化工程を含む、カルシウム系炭酸化合物の製造方法に関する。
【0025】
本発明のカルシウム系炭酸化合物の製造方法は、前記準備工程として、篩別工程を含むことが好ましい。
【0026】
本発明のカルシウム系炭酸化合物の製造方法は、前記準備工程として、粉砕工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製造工程における作業性に優れたカルシウム系炭酸化合物、組成物、成形板、無機質成形体、及び、カルシウム系炭酸化合物の製造方法を提供することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例1のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
【
図2】本発明の実施例2のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
【
図3】本発明の実施例3のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
【
図4】本発明の比較例1のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
【
図5】本発明の比較例2のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
【
図6】本発明の比較例3のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
【
図7】加熱試験器を模式的に示す一部透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係るカルシウム系炭酸化合物、組成物、成形板、及び、無機質成形体、更に、カルシウム系炭酸化合物の製造方法について、以下に説明する。本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0030】
<カルシウム系炭酸化合物>
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2が、1μm以上10μm以下の凝集粒子である。前記レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2が前記範囲内の凝集粒子であると、前記カルシウム系炭酸化合物を樹脂やセメントなどと混合した際に分散性が高く、作業性に優れ、好ましい。加えて、前記カルシウム系炭酸化合物の分散性に優れるため、得られる無機質成形体の構造が均一となり、強度をより向上させることができる。
【0031】
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2は、1μm以上10μm以下の凝集粒子であり、好ましく1.2μm以上8μm以下、より好ましくは1.5μm以上9μm以下、更に好ましくは2μm以上6μm以下である。
【0032】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、酸可溶性シリカの含有量が、0.1質量%以上である。前記酸可溶性シリカは結晶成長調整剤として機能するため、前記酸可溶性シリカの含有量が前記範囲内であると、前記カルシウム系炭酸化合物が凝集粒子を形成し、前記レーザー回折法による2次粒子(凝集粒子)の平均粒子径D2を前記範囲内に調整することが可能となり、作業性に優れ、好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記酸可溶性シリカの含有量は、0.1質量%以上であり、好ましく0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
なお、前記酸可溶性シリカの含有量が前記範囲を下回ると、所望の平均粒子径を有する2次粒子(凝集粒子)を得られにくくなり、前記カルシウム系炭酸化合物を建築材料に配合(使用)した際に、ろ過性が低下し、前記建築材料の抄造性に劣る恐れがある。
【0033】
本発明のカルシウム系炭酸化合物は、沈降容積が、50mL以下である。前記沈降容積が前記範囲内であると、凝集粒子を形成した前記カルシウム系炭酸化合物のろ過性に優れ、つまり、得られる凝集粒子の平均粒子径が低く抑えられ、前記カルシウム系炭酸化合物の分散性に優れるため、得られる無機質成形体の構造が均一となり、強度をより向上させることができる。
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記沈降容積は、50mL以下であり、好ましく48mL以下、より好ましくは46mL以下、更に好ましくは44mL以下である。
【0034】
前記カルシウム系炭酸化合物は、炭酸カルシウムを70質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記炭酸カルシウムが前記範囲内であることにより、得られる無機質成形体の強度や耐火性を向上させることができ、好ましい。
【0035】
前記カルシウム系炭酸化合物の結晶構造が、カルサイト型、アラゴナイト型、及び、バテライト型からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルサイト型であることがより好ましい。
【0036】
前記カルシウム系炭酸化合物は、前記凝集粒子が、1次粒子の凝集物であり、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1が、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上4μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物が、凝集粒子であり、1次粒子の凝集物であることにより、前記カルシウム系炭酸化合物を建築材料に配合(使用)した際に、ろ過性に優れ、前記建築材料が抄造性に優れ、好ましい。
また、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1が前記範囲内であることにより、1次粒子が均一となり、好ましい。
【0037】
前記カルシウム系炭酸化合物は、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1、及び、前記凝集粒子のレーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2とした際の(D1/D2)が、0.01以上0.7以下であることが好ましく、0.05以上0.6以下であることがより好ましく、0.1以上0.5以下であることが更に好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記(D1/D2)が前記範囲内であることにより、2次粒子が均一となり、好ましい。
【0038】
前記カルシウム系炭酸化合物は、水に10質量%濃度で分散した際の粘度(10%粘度)が、20cP以下であることが好ましく、18cP以下がより好ましく、16cP以下が更に好ましく、前記カルシウム系炭酸化合物において、前記10%粘度が前記範囲内であることにより、流動性に優れ、前記カルシウム系炭酸化合物を樹脂やセメントなどと混合した際に分散性が高く、作業性に優れ、好ましい。加えて、前記カルシウム系炭酸化合物の分散性に優れるため、得られる無機質成形体の構造が均一となり、強度をより向上させることができ、好ましい。
【0039】
前記カルシウム系炭酸化合物は、前記1次粒子のSEM画像による平均長径D1の前記1次粒子のSEM画像による平均短径D3に対するアスペクト比(D1/D3)が、1.5以上6以下であることが好ましく、1.6以上5.5以下であることがより好ましく、1.7以上5以下であることが更に好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記アスペクト比(D1/D3)が前記範囲内であることにより、前記カルシウム系炭酸化合物の分散液は、上述した前記範囲の10%粘度を好適に有することができる。
【0040】
前記カルシウム系炭酸化合物は、吸油量が、40mL/100g以上100mL/100g以下であることが好ましく、45mL/100g以上95mL/100g以下であることがより好ましく、50mL/100g以上90mL/100g以下であることが更に好ましい。
【0041】
前記カルシウム系炭酸化合物は、BET比表面積が、2m2/g以上20m2/g以下であることが好ましく、3m2/g以上18m2/g以下であることがより好ましく、5m2/g以上16m2/g以下であることが更に好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物において、前記BET比表面積が前記範囲内であることにより、凝集粒子を形成した前記カルシウム系炭酸化合物の10%粘度が低く抑えられていることになり、前記カルシウム系炭酸化合物の分散性に優れ、その結果、加熱時の加熱面の収縮及び裏面温度の上昇をそれぞれより高いレベルで抑制することができ、好ましい。
【0042】
<カルシウム系炭酸化合物の製造方法>
前記カルシウム系炭酸化合物の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。
例えば、前記カルシウム系炭酸化合物の製造方法として、前記カルシウム系炭酸化合物製造用のCaO含有組成物を準備する準備工程、及び、前記CaO含有組成物と二酸化炭素とを接触させてカルシウム系炭酸化合物を形成する炭酸化工程を含むことにより、前記CaO含有組成物の炭酸化物であるカルシウム系炭酸化合物中の二酸化炭素(CO2)の固定化率の向上を図ることができる。
また、前記CaO含有組成物の炭酸化物を用いることで、廃棄物の減量や有効利用、二酸化炭素の低減に貢献することができる。
【0043】
(カルシウム系炭酸化合物製造用のCaO含有組成物)
前記CaO含有組成物としては、酸可溶性シリカを含有するCaO含有原料を含むことが好ましい。このような原料を使用することにより、カルシウム系炭酸化合物の凝集粒子の形成に寄与することができる。
前記CaO含有原料としては、特に限定されないが、例えば、石灰滓、製紙スラッジの焼却灰、鶏糞の焼却灰、セメントスラッジ、セメントスラッジの焼却灰などが挙げられる。前記石灰滓は、CaO含有の廃棄物であり、前記石灰滓の利用は、資源の有効利用、天然資源の節約、環境保護につながり、有用である。
【0044】
また、前記CaOの含有原料としては、前記石灰滓などに加えて、例えば、製紙スラッジの焼却灰、鶏糞の焼却灰、セメントスラッジ、セメントスラッジの焼却灰、及び、それらの水和物の少なくともいずれかの1種に由来するものを使用することができる。前記CaO含有原料として種々使用できるが、中でも廃棄物を使用することが、経済性や廃棄物の減量等の観点から好ましい。
【0045】
(粉砕工程)
前記カルシウム系炭酸化合物の製造方法は、前記準備工程として、前記CaO含有原料を粉砕する粉砕工程を含むことが好ましい。
前記粉砕工程によって、遊離CaO粒子(あるいは遊離(CaO)m(H2O)n粒子)を粉砕することで、微細化することができ、粉砕前のCaO含有原料と比較して、表面積が大きく、二酸化炭素との反応活性が高いCaO含有組成物を調製することができる。
なお、前記CaO含有原料は、前記準備工程として、前記粉砕工程に加えて、前記CaO含有原料を篩にかけ、篩通過分を回収する篩別工程を経た篩別品でも、篩別工程を経ていない未篩別品のいずれでもよい。
【0046】
粉砕方法は、特に限定されず、公知の粉砕機を用いる方法を採用することができる。粉砕機としては、例えば、ローラーミル;ジェットミル;ハンマーミル、カッターミル、ピンミル等の高速回転粉砕機;回転ミル、振動ミル、遊星ミル等の容器駆動型ミル;アトライター、ビーズミル、ボールミル、ロッドミル等の媒体撹拌ミル等が挙げられる。
【0047】
粉砕時間は、目的とするCaO含有組成物における遊離CaOの含有率や粒径等を考慮して適宜設定することができる。前記粉砕時間としては、10秒以上168時間以下が好ましく、10分以上72時間以下がより好ましく、30分以上24時間以下がさらに好ましい。
【0048】
粉砕機として、ボールミル、ポットミル等の回転ミルを用いる場合、回転数としては10rpm以上300rpm以下が好ましく、50rpm以上200rpm以下がより好ましく、60rpm以上150rpm以下がさらに好ましい。
【0049】
前記粉砕工程は、乾式又は湿式のいずれで行ってもよい。前記粉砕工程を湿式で行う場合の分散媒としては、通常、水が用いられる。前記CaO含有原料を水に分散させる際の濃度は、粉砕効率等を考慮して適宜設定することができる。水1LあたりのCaO含有原料の配合量は、10g以上1000g以下が好ましく、80g以上500g以下がより好ましく、120g以上400g以下がさらに好ましい。
【0050】
前記粉砕工程を湿式で行った場合、懸濁液のまま次工程である炭酸化工程に供してもよく、乾燥させてから供してもよい。
【0051】
以上のように、前記準備工程として、前記粉砕工程を行うことにより、二酸化炭素との反応活性が高いCaO含有組成物を好適に調製することができる。
【0052】
(前処理工程)
また、前記カルシウム系炭酸化合物の製造方法は、前記準備工程として、得られる前記カルシウム系炭酸化合物の酸可溶性シリカの含有量を所望の範囲に調製するため、前記CaO含有組成物と共に、珪素含有化合物(酸可溶性シリカを含む)を含有した混合物のスラリーを調製する前処理工程を含むことができる。前記スラリーは炭酸化工程を経ることにより、前記カルシウム系炭酸化合物を得ることができる。
前記珪素含有化合物を使用することにより、前記カルシウム系炭酸化合物の酸可溶性シリカの含有量を所望の範囲に調製することができ、前記カルシウム系炭酸化合物が、前記レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D2を所望の範囲とする凝集粒子を得ることができ、好ましい。特に、前記CaO含有組成物が酸可溶性シリカを含有しない、もしくは、前記CaO含有組成物中の酸可溶性シリカの含有割合が低い場合に、有用である。
【0053】
前記珪素含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、フュームドシリカ、シリカゾル、ケイ酸ソーダなどを挙げることができる。
【0054】
前記珪素含有化合物の酸可溶性シリカの含有割合としては、特に限定されないが、例えば、1~5質量%程度であれば、前記珪素含有化合物の配合量を適宜調製することで、酸可溶性シリカの含有量を所望の範囲に調製したカルシウム系炭酸化合物を得ることができる。
【0055】
(炭酸化工程)
炭酸化工程では、前記準備工程からCaO含有組成物と二酸化炭素(以下、「炭酸ガス」ともいう。)とを接触させてカルシウム系炭酸化合物を形成する。
炭酸化法としては、特に限定されないものの、代表的には、CaO含有組成物を水に分散させた分散液中に炭酸ガスを吹き込み炭酸化させる炭酸ガス法が好ましい。
【0056】
前記分散液中のCaO含有組成物の固形分濃度としては、炭酸化効率を考慮して適宜設定すればよいものの、10g/L以上500g/L以下が好ましく、20g/L以上400g/L以下がより好ましく、30g/L以上350g/L以下がさらに好ましい。
【0057】
前記粉砕工程を乾式で行った場合は、得られたCaO含有組成物を前記濃度範囲となるように水に分散させればよい。
前記粉砕工程を湿式で行った場合、得られたCaO含有組成物の懸濁液の濃度が前記濃度範囲となるように水を添加又は除去して用いればよい。
【0058】
前記炭酸化工程における二酸化炭素としては、燃焼機関より排出された二酸化炭素であることが好ましい。
前記炭酸ガス法にて使用する炭酸ガスとしては、カルシウム系炭酸化合物製造プラント等に近接して設置されている石灰焼成炉の煙道排ガス、ボイラー、ごみ焼却炉等の燃焼機関より排出された炭酸ガスを含む排ガスを利用することができる。これにより、産業プロセスにおいて二次的に発生する二酸化炭素を再利用することができ、産業プロセス全体での二酸化炭素の排出量削減に貢献することができる。
【0059】
前記炭酸化工程における二酸化炭素の濃度としては、炭酸化効率の観点から、1体積%以上100体積%以下であることが好ましく、1体積%以上50体積%以下であってもよく、3体積%以上40体積%以下であってもよく、5体積%以上30体積%以下であってもよい。
【0060】
前記炭酸化工程における温度(前記分散液の温度)としては、炭酸化効率の観点から、5℃以上95℃以下であることが好ましく、15℃以上85℃以下であることがより好ましく、25℃以上75℃以下であることがさらに好ましい。
【0061】
前記炭酸ガスの流量としては、炭酸化効率および生産能力の観点から、仕込んだ原料CaO分で10kg当たり、10L/min以上200L/min以下が好ましく、20L/min以上180L/min以下がより好ましく、30L/min以上150L/min以下がさらに好ましい。
【0062】
前記炭酸化工程においては、炭酸ガスの吹き込みと併せて、撹拌を行うことが好ましい。撹拌翼による撹拌を行う場合、回転速度としては、100rpm以上600rpm以下が好ましく、150rpm以上550rpm以下がより好ましく、200rpm以上500rpm以下がさらに好ましい。
【0063】
前記炭酸化の反応時間は、CaO含有組成物の濃度や炭酸ガスの濃度、流量等を考慮し、炭酸化反応が十分進行するように適宜設定すればよい。前記炭酸化の反応時間は、限定されないものの、0.5時間以上20時間以下が好ましく、1時間以上18時間以下が好ましく、2時間以上15時間以下がさらに好ましい。
【0064】
前記炭酸ガス法のほか、アルカリ(NaOH、アミン等)とCO2とを反応させてNa2CO3やアミン炭酸塩を一旦製造し、これとCaOとを反応させてCaCO3を生成させる溶液法も好適である。
【0065】
以上の工程を経ることにより、前記CaO含有組成物の炭酸化物として得られるカルシウム系炭酸化合物を製造することができる。得られたカルシウム系炭酸化合物をろ取し、乾燥して粉末状としてもよく、ろ取及び乾燥を経ることなく、スラリー状やケーキ状のままカルシウム系炭酸化合物源として用いてもよい。
【0066】
<カルシウム系炭酸化合物を含む組成物>
本発明は、前記カルシウム系炭酸化合物を含む、組成物に関する。前記カルシウム系炭酸化合物を含む組成物としては、例えば、前記カルシウム系炭酸化合物に加えて、セメント、紙、ゴム、及び、塗料などを含む組成物を挙げることができ、中でも、使用量の点から、セメント等を含むことが好ましい。
【0067】
本発明の組成物は、更に、樹脂、及び、ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、前記樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを挙げることができ、中でも、汎用性の点から、熱可塑性樹脂等を用いることが好ましい。前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができ、中でも、汎用性の点からクロロプレンゴムを用いることが好ましい。
【0068】
本発明の組成物は、P漏斗流下時間が15秒以下であることが好ましく、10秒以下がより好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物含む組成物において、前記P漏斗流下時間が前記範囲内であることにより、前記組成物は流動性に優れ、その結果、流下時間が短くなり、作業性に優れ、好ましい。
【0069】
本発明の組成物は、無機質成形体用であることが好ましい。前記カルシウム系炭酸化合物は、硬化に寄与するシリカ(酸可溶性シリカ)を含んでいるため、前記無機質成形体などの用途に用いることができ、有用である。
【0070】
<カルシウム系炭酸化合物の用途>
前記カルシウム系炭酸化合物の用途は特に限定されないが、例えば、建築材料に代表される無機質成形体用の高機能化材、樹脂用の充填剤等として好適である。以下、カルシウム系炭酸化合物を無機質成形体に用いる態様について説明する。
【0071】
<無機質成形体>
本発明は、前記カルシウム系炭酸化合物を含む、無機質成形体に関する。前記カルシウム系炭酸化合物を含む無機質成形体は、酸可溶性シリカを含むカルシウム系炭酸化合物を使用するため、硬化に寄与することができ、また、分散性に優れた前記カルシウム系炭酸化合物を用いることで、得られる無機質成形体の構造が均一となり、強度をより向上したものとなり、有用である。
【0072】
前記無機質成形体としては、特に限定されず、代表的には、建築材料用の成形板やコンクリート建造物(コンクリート成形体)等が挙げられる。以下、適用し得る組成等を用途に応じて詳述する。
【0073】
前記無機質成形体は、大部分が水硬性材料や珪酸質材料等の無機物質で構成されている成形体であり、耐火性、軽量、高強度、作業性等の特性を有することから、住宅等の外壁材、屋根下地材、軒天井材等に広く用いられている。また、強度や耐火性が求められる建造物の基礎部分や壁、柱、床等にも広く用いられている。このように裾野の広い無機質成形体に特定のカルシウム系炭酸化合物を用いることで、産業プロセス全体での環境負荷低減を図ることができる。
【0074】
(建築材料用の成形板)
前記成形板は、好ましくは、水硬性材料、珪酸質材料、補強繊維材料、カルシウム系炭酸化合物を含む。
【0075】
(水硬性材料)
前記水硬性材料としては、セメント質材料、石膏、石灰、スラグ等が挙げられる。セメント質材料としては、一般的に使用されるセメント、例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱セメント、フライアッシュセメント、高炉スラグセメント及びアルミナセメントが挙げられる。石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。スラグとしては、高炉スラグ、転炉スラグ等が挙げられる。これらの水硬性材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
前記水硬性材料の含有率は、成形板を構成する材料の全量を基準として、5質量%以上45質量%以下が好ましく、8質量%以上42質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。前記水硬性材料の含有率を前記範囲内とすることで、成形板の曲げ強度や剥離強さ等の物性を向上させることができるとともに、成形板の高嵩比重化を抑制して施工時の作業性等を高めることができる。
【0077】
(珪酸質材料)
前記珪酸質材料としては、例えば、珪砂、珪石粉、シリカヒューム、フライアッシュ、珪藻土、層状ケイ酸塩(例えば、マイカ、タルク、カオリン、ベントナイト)、パーライト、ワラストナイト、軽量骨材(例えばフライアッシュバルーン、パーライト、シラスバルーン、ガラス発泡体等)等のSiO2を多く含む材料が挙げられる。これらの珪酸質材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。タルクやマイカ、ワラストナイトは後述の補強繊維材料としても用いることができる。
【0078】
前記珪酸質材料の含有率は、成形板を構成する材料の全量を基準として、10質量%以上55質量%以下が好ましく、12質量%以上50質量%以下がより好ましく、15質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。珪酸質材料の含有率が前記範囲にあれば、成形板の曲げ強さ、嵩比重、吸水率、寸法安定性等を目的の範囲に設定することが可能となる。なお、珪酸質材料として、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン等の単位容積質量が0.5g/cm3以下の軽量骨材を配合する場合、嵩比重が軽くなりすぎ、曲げ強さや剥離強さ等の強度が弱くなることを防ぐため、成形板を構成する材料の全量を基準として、軽量骨材の含有率が20質量%以下となるよう、他の珪酸質材料を併用することが好ましい。
【0079】
(補強繊維材料)
前記補強繊維材料としては、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、これらをフィブリル化したパルプ、古紙を解繊したパルプ等のパルプ類、ビニロン繊維、アクリロニトリル繊維、ポリプロピレン繊維等の有機補強繊維材料、ロックウール、ガラス繊維等の無機補強繊維材料を使用することができる。これらの補強繊維材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0080】
前記成形板の強度の向上、靭性の付与のため、補強繊維材料の含有率は、成形板を構成する材料の全量を基準として、2質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上26質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上22質量%以下であることがさらに好ましい。補強繊維材料の含有率を前記範囲内とすることで、十分な補強効果を発揮しつつ、成形板表面に繊維が突出することを抑制して平滑性を向上させることができる。平均繊維長が1mm以上50mm以下の無機補強繊維材料を補強繊維材料として配合する場合は、成形板の平滑性を良好にするために、成形板を構成する材料の全量を基準として、その含有率が10質量%以下となるように他の補強繊維材料を併用することが好ましい。
【0081】
(カルシウム系炭酸化合物)
前記カルシウム系炭酸化合物としては、上述のカルシウム系炭酸化合物を好適に採用することができる。
【0082】
前記カルシウム系炭酸化合物の含有量は、成形板を構成する材料の全量を基準として、5質量%以上60質量%以下が好ましく、8質量%以上55質量%以下がより好ましく、12質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。低熱伝導性のカルシウム系炭酸化合物を前記範囲の含有量で配合することにより、成形板の強度や耐火性を向上させることができる。
【0083】
(任意成分)
前記成形板には、前記材料の他に、様々な機能を付与するために、樹脂中空体、木片、木粉、樹脂粉末、消泡剤、凝集剤、撥水剤、増粘剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、分散剤等の材料を、目的に応じて種々配合することが可能である。また、前記成形板を加工する際に発生する端材等を粉砕したリサイクル材を適宜添加して使用することも可能である。
【0084】
(成形板の製造方法)
本実施形態に係る成形板の製造方法については、特に限定はされず、一般的に用いられている抄造法、押出成形法、フローオン成形法、流し込み成形法、プレス(圧縮)成形等を用いることができる。成形板は、これらの方法で成形したグリーンシートをプレス脱水またはエンボス等による柄付け加工した後、常温養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等で養生して得ることが可能である。さらに、乾燥を行い、必要に応じて、形状加工や塗装を行ってもよい。
【0085】
前記成形板のかさ密度は、0.7g/cm3以上2.0g/cm3以下であることが好ましく、0.8g/cm3以上1.8g/cm3以下であることがより好ましく、0.9g/cm3以上1.6g/cm3以下であることがさらに好ましい。
【0086】
本発明の成形板は、前記組成物の成形体をプレスして得られる成形板の面変化率が、120%以下であることが好ましく、118%以下がより好ましく、116%以下が更に好ましい。
前記成形板の面変化率が、前記範囲内であることにより、得られる無機質成形体の成形性が一定となり、抄造性に優れ、好ましい。
なお、前記組成物の成形体は、抄造法などにより得ることができ、これを複数枚積層して成形板を製造し、この成形板をプレスすることで、面変化率を測定することができる。
【0087】
(成形板の用途)
前記成形板の用途は、特に限定されず、建築壁材、床材、屋根材、各種ボード、外部装飾部材、建具等の内外装仕上げ材、シール材、断熱材、吸音材、防水用材等の性能維持材として好適に用いることができる。成形板は、セメント質材料を含むセメント系成形板であることが好ましく、けい酸カルシウム成形体がより好ましい。
【0088】
(コンクリート建造物)
前記コンクリート建造物は、水硬性組成物の硬化体で構成されている。水硬性組成物は、カルシウム系炭酸化合物に加えて、高炉スラグ、膨張材、消石灰、生石灰、フライアッシュおよびポルトランドセメントのうちの少なくとも1種類を含む粉体からなる。カルシウム系炭酸化合物としては、上述のカルシウム系炭酸化合物を好適に採用することができる。
【0089】
前記水硬性組成物に加えて、砂や砂利等の骨材、コンクリート用化学混和剤等の薬剤、金属や高分子材料による繊維材料などを配合して水硬性組成物混合材料としてもよい。
【0090】
前記水硬性組成物の硬化体は、前記水硬性組成物に水を混練して得たペーストを硬化させたものである。また、水硬性組成物混合材料の硬化体は、上記水硬性組成物混合材料に水を混練して得た混練物(フレッシュモルタルやフレッシュコンクリートに相当)を硬化させたものであり、モルタルやコンクリートに相当するものである。
【0091】
前記カルシウム系炭酸化合物の前記粉体中の割合(セメントに対するカルシウム系炭酸化合物の割合)は、好ましくは1質量%以上60質量%以上、より好ましくは3質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0092】
前記高炉スラグには、JIS(日本工業規格)R5211「高炉セメント」で使用される高炉スラグ微粉末またはJIS A6206「コンクリート用高炉スラグ」に適合する高炉スラグ微粉末を使用するのが望ましい。
また、前記高炉スラグとしては、比表面積が、好ましくは2000cm2/g以上10000cm2/g以下、より好ましくは3500cm2/g以上7000cm2/g以下のものを使用する。
【0093】
前記膨張材には、例えば、JIS A6202「コンクリート用膨張材」に規定される膨張材を使用すればよい。膨張材は、水硬性組成物全体に対して2~9質量%割合で添加するのが望ましい。
【0094】
前記消石灰には、例えば、JIS R9001「工業用石灰」に規定されるものを使用すればよい。また、生石灰は水と接触すると消石灰になるため、例えば、JIS R9001「工業用石灰」に規定される生石灰を消石灰の代わりに使用することができる。なお、この場合には、生石灰が消石灰に変化する際に必要な水の量を補正しておくとよい。フライアッシュには、例えばJIS A6201「コンクリート用フライアッシュ」に適合するものを使用すればよい。
【0095】
前記ポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメントを使用するが、ポルトランドセメントには、この他、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等、JIS R5210「ポルトランドセメント」において規定されるもの、およびJIS R5214「エコセメント」も使用可能である。
【0096】
前記水硬性組成物中にポルトランドセメントを含む場合には、カルシウム系炭酸化合物以外の粉体中のポルトランドセメントの割合を70質量%以下とし、30質量%以下とすることが好ましい。
【0097】
また、ポルトランドセメントと、高炉スラグまたはフライアッシュを用いる場合には、当該成分を予め混合してある、例えばJIS R5211「高炉セメント」、または、例えばJIS R5213「フライアッシュセメント」をそれぞれ単独で、あるいは混合して用いてもよい。
【0098】
前記特徴を有するカルシウム系炭酸化合物を用いているため、水硬性組成物や水硬性組成物混合材料は、良好な流動性を示すとともに、そのコンクリート硬化体は優れた圧縮強度を発揮することができる。
【0099】
前記コンクリート建造物の密度は、0.7g/cm3以上であることが好ましく、0.8g/cm3以上であることがより好ましく、0.9g/cm3以上であることがさらに好ましい。これにより、前記コンクリート建造物の強度が向上となる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、物性等の測定と評価は、次のようにして行なった。
【0101】
<カルシウム系炭酸化合物の製造>
[実施例1]
邪魔板付き8L容量SUS容器内に水6Lを張った後、CaO含有組成物(石灰滓、神島化学工業株式会社社製)1.0kgを撹拌下に容器内に投入した。その後40℃まで昇温し、その温度下でタービン翼を備えた攪拌機を用いて回転速度300rpmで攪拌した。LNG(液化天然ガス)を燃料とする水蒸気製造用ボイラーの排気出口に排ガス取り出し用配管を繋げ、試験用ブロアーを用いて排気ガスを引き込んだ。CO
2濃度測定器(新コスモス電機株式会社製XP-3140)で測定したところ、排ガス中のCO
2濃度は10体積%を示した。前述した8L容量SUS容器内に試験用ブロアーを用いて速度3.3L/minで排ガスを導入して10時間反応させた。次いで、ろ過し、ろ別した湿潤物を110℃で12時間乾燥し、粉砕することで、カルシウム系炭酸化合物1の試料粉末を得た(
図1参照)。なお、CaO含有組成物の分析用としては、110℃で12時間乾燥したものを用いた。
【0102】
[実施例2]
邪魔板付き8L容量SUS容器内に水6Lを張った後、CaO含有組成物(消石灰、土佐石灰株式会社社製、工業用消石灰1号、特選消石灰)1.0kgを撹拌下に容器内に投入した。さらに3号ケイ酸ソーダ(JIS K1408)を3.0質量%添加し、撹拌を続ける。その後40℃まで昇温し、その温度下でタービン翼を備えた攪拌機を用いて回転速度300rpmで攪拌した。LNGを燃料とする水蒸気製造用ボイラーの排気出口に排ガス取り出し用配管を繋げ、試験用ブロアーを用いて排気ガスを引き込んだ。CO
2濃度測定器(新コスモス電機株式会社製XP-3140)で測定したところ、排ガス中のCO
2濃度は10体積%を示した。前述した8L容量SUS容器内に試験用ブロアーを用いて速度3.3L/minで排ガスを導入して10時間反応させた。次いで、ろ過し、ろ別した湿潤物を110℃で12時間乾燥し、粉砕することで、カルシウム系炭酸化合物2の試料粉末を得た(
図2参照)。なお、CaO含有組成物の分析用としては、110℃で12時間乾燥したものを用いた。
【0103】
[実施例3]
邪魔板付き8L容量SUS容器内に水6Lを張った後、CaO含有組成物(消石灰、土佐石灰株式会社社製、工業用消石灰1号、特選消石灰)1.0kgを撹拌下に容器内に投入した。さらにシリカゾル(商品名スノーテックスO、日産化学(株))を5.0質量%添加し、撹拌を続ける。その後40℃まで昇温し、その温度下でタービン翼を備えた攪拌機を用いて回転速度300rpmで攪拌した。LNGを燃料とする水蒸気製造用ボイラーの排気出口に排ガス取り出し用配管を繋げ、試験用ブロアーを用いて排気ガスを引き込んだ。CO
2濃度測定器(新コスモス電機株式会社製XP-3140)で測定したところ、排ガス中のCO
2濃度は10体積%を示した。前述した8L容量SUS容器内に試験用ブロアーを用いて速度3.3L/minで排ガスを導入して10時間反応させた。次いで、ろ過し、ろ別した湿潤物を110℃で12時間乾燥し、粉砕することで、カルシウム系炭酸化合物3の試料粉末を得た(
図3参照)。なお、CaO含有組成物の分析用としては、110℃で12時間乾燥したものを用いた。
【0104】
[比較例1]
邪魔板付き8L容量SUS容器内に水6Lを張った後、CaO含有組成物(消石灰、土佐石灰株式会社製、工業用消石灰1号、特選消石灰)1.0kgを撹拌下に容器内に投入した。その後40℃まで昇温し、その温度下でタービン翼を備えた攪拌機を用いて回転速度300rpmで攪拌した。LNGを燃料とする水蒸気製造用ボイラーの排気出口に排ガス取り出し用配管を繋げ、試験用ブロアーを用いて排気ガスを引き込んだ。CO
2濃度測定器(新コスモス電機株式会社製XP-3140)で測定したところ、排ガス中のCO
2濃度は10体積%を示した。前述した8L容量SUS容器内に試験用ブロアーを用いて速度3.3L/minで排ガスを導入して10時間反応させた。次いで、ろ過し、ろ別した湿潤物を110℃で12時間乾燥し、粉砕することで、カルシウム系炭酸化合物4の試料粉末を得た(
図4参照)。なお、CaO含有組成物の分析用としては、110℃で12時間乾燥したものを用いた。
【0105】
[比較例2]
CaO含有組成物(消石灰、土佐石灰株式会社製、工業用消石灰1号、特選消石灰)をCaO換算で232g、アラゴナイトの種結晶粉末を21g、および、リン酸水素二ナトリウム・12水和物を17g準備し、それぞれ水6Lを予め張った邪魔板付き8L容量SUS容器内に撹拌下に投入して原料の混合スラリーを調製した。その後70℃まで昇温し、その温度下でタービン翼を備えた攪拌機を用いて回転速度300rpmで攪拌した。LNGを燃料とする水蒸気製造用ボイラーの排気出口に排ガス取り出し用配管を繋げ、試験用ブロアーを用いて排気ガスを引き込みながら、CO
2濃度測定器(新コスモス電機株式会社製XP-3140)で測定したところ、CO
2濃度は10体積%を示した。前述した8L容量SUS容器内に試験用ブロアーを用いて速度3.3L/minで排ガス導入して7時間反応させた。その後、ろ過し、ろ別した湿潤物を110℃で12時間乾燥、粉砕し、カルシウム系炭酸化合物5の試料粉末を得た(
図5参照)。
【0106】
[比較例3]
炭酸ナトリウムの試薬(和光純薬製:純度99.8%)8510gを、水100Lを予め張った邪魔板付き220L容量SUS容器内に撹拌下に投入して炭酸ナトリウムを調製した。一方、神島化学工業株式会社内で排出される海水から水酸化マグネシウムを除去した後の海水1000L(Ca
2+含有量:0.25g/dL)を2000L容量のポリエチレン製容器内に入れ、25℃の撹拌下に前述の炭酸ナトリウム水溶液100Lを一気に添加後、約30分間の撹拌を継続することで反応させたその後、ろ過し、固形分に対して約5倍の水で洗浄し、110℃で12時間乾燥、粉砕し、カルシウム系炭酸化合物6の試料粉末を得た(
図6参照)。
【0107】
<評価>
実施例等で得られたカルシウム系炭酸化合物、前記カルシウム系炭酸化合物を用いて得られるセメントミルク、セメント成形体、成形板(積層板)、無機質成形体の評価・分析を行い、評価結果を表1に示す。
【0108】
[BET比表面積]
8連式プリヒートユニット(MOUNTECH社製)を用いて窒素ガス雰囲気下、約130℃、約30分間で前処理したカルシウム系炭酸化合物の試料粉末を、BET比表面積測定装置としてMacsorb HM Model-1208(MOUNTECH社製)を用いて、窒素ガス吸着法で、BET比表面積(m2/g)を測定した。
【0109】
[レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径(D2)]
エタノール50mLを100mL容量のビーカーに採り、ここにカルシウム系炭酸化合物の試料粉末約0.2gを投入し、3分間の超音波処理(トミー精工社製 UD-201)を施して分散液を調製した。この分散液をレーザー回折法-粒度分布計(日機装株式会社製 Microtrac HRA Model 9320-X100)を用いて、体積基準のD50値を2次粒子(凝集粒子)の平均粒子径(μm)として、測定した。
【0110】
[結晶構造]
所定の試料台にカルシウム系炭酸化合物の試料粉末をスパチュラのヘラで圧粉固着させた後、XRD装置(リガク株式会社製MiniFlex600-C)を用いて測定を行い、結晶物質としての同定解析を行った。なお、測定角度2θにおいて、約29°に現れるピークはカルサイトの主ピークであり、約46°に現れるピークはアラゴナイトの主ピークである。
【0111】
[平均長径(D1)、平均短径(D3)、及び、アスペクト比(D1/D3)]
アルミ試料台上に両面テープを貼り付け、その上からカルシウム系炭酸化合物の試料粉末をスパチュラのヘラでなぞるように塗布した。白金蒸着を行った後、試料粉末の粒子像を走査電子顕微鏡(FESEM:日立製作所株式会社製S-4700)を用いて1万倍の写真を撮った。得られたSEM写真について、画像解析ソフト(Image J)を用いて、写真中の粒子20個を無作為に選択し、1次粒子の長径、短径及びアスペクト比(長径の短径に対する比)の平均値をそれぞれ求めた。
【0112】
[走査電子顕微鏡観察]
アルミ試料台上に両面テープを貼り付け、その上からカルシウム系炭酸化合物の試料粉末をスパチュラのヘラでなぞるように塗布した。白金蒸着を行った後、試料粉末の粒子像を走査電子顕微鏡(FE-SEM:日立製作所株式会社製S-4700)を用いて、10000倍のSEM写真を撮影した。なお、得られたカルシウム系炭酸化合物1~6については、それぞれ
図1~
図6に示すSEM写真を撮影し、それらの形状を判断した。
【0113】
[酸可溶性シリカの含有量]
<ICP-AES法>
カルシウム系炭酸化合物の試料粉末0.2gを量り取り、水で湿らせ、分注器で塩酸(濃塩酸と水とを1:1の体積比で混合した液)10mLを加えて、加熱、溶解した。この混合液をろ過した後、ろ液を冷却後、250mLメスフラスコに移し、250mL同量まで水を加えてメスアップした。ここから20mLを50mLメスフラスコに分取し、50mL同量まで水を加えて測定用検体液とした。
一方、前記した250mLメスアップした水溶液から20mLを50mLメスフラスコに分取し、ケイ素原子(Si)の標準液を任意に追加添加して濃度の異なる検量線用標準液を調製した。
なお、ケイ素原子の標準液は、1000ppm原子吸光用標準液(市販)を用いた。
ケイ素原子を追加添加した濃度の異なる検量線用標準液と測定用検体液とを誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)装置(日立ハイテクサイエンス社製、「SPECTROBLUE FMS36型」)のオートサンプラーにセットし、下記の条件でケイ素原子(Si)の量(ppm)を測定し、前記ケイ素原子の量から酸化物換算して、酸可溶性シリカ(s-SiO2)の含有量(質量%)を算出した。
(測定条件)
高周波出力:1.4kW
キャリアガス(加湿)流量:0.9L/min
プラズマガス流量:13.0L/min
液性:水溶液
積分回数:3回
試料順序:試料毎
測定方法:標準添加法
検量線の重み付け:なし
測定波長:
ケイ素原子:251.612nm
【0114】
[カルシウム系炭酸化合物中のCaCO
3の含有率]
カルシウム系炭酸化合物中のCaCO
3の含有率(質量%)は下記式より求めた。
前記カルシウム系炭酸化合物中のCaCO
3の含有率は、原料由来のCaCO
3と新たにCO
2を固定化したCaCO
3との合計の含有率を示す。
【数1】
(式中、dは、カルシウム系炭酸化合物中のCO
2含有率(質量%)である。)
なお、前記カルシウム系炭酸化合物中のCaCO
3の含有率としては、環境側面の観点から高いほどよいが、70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。また、前記カルシウム系炭酸化合物を配合した無機質成形体の強度維持の観点から、前記カルシウム系炭酸化合物中のCaCO
3の含有率としては、96質量%未満でもよく、94質量%未満であってもよく、92質量%未満であってもよい。
【0115】
[吸油量]
カルシウム系炭酸化合物の試料粉末2.00gを採取して時計皿上に置き、ビュレットに入れたフタル酸ジオクチル(DOP)を1滴ずつ落としながら、へらで練り上げる。凝集固化した試料に1滴の注加により、急に軟化現象を生じたときに中止し、最終固化までに用いた油の量(mL)を求め、次式によって試料100g当たりの吸油量(mL/100g)を算出する。
【数2】
(式中、Aは吸油量(mL/100g)、Vは固化までに用いた油の量(mL)、Sは試料量(g)である。)
【0116】
[10%粘度]
カルシウム系炭酸化合物の試料粉末を水に分散させ、10質量%スラリーを得た。そして、得られたスラリーの粘度(20℃)を、BII型粘度計(東機産業株式会社製)を用い、水に10質量%濃度で分散した際の粘度(10%粘度)を測定(cP)した。
【0117】
[沈降容積]
カルシウム系炭酸化合物の試料粉末を水に分散させ、5質量%スラリーを得た。そして、得られたスラリーを100mLメスシリンダーに100mL移し、ゴム栓をしたのち、100回手動で振とうさせる。30分間静置させ、スラリーの沈降容積(mL)を測定した。
【0118】
[P漏斗流下時間]
(セメントミルクの作製)
セメント(トクヤマ社製、「普通ポルトランドセメント(N)」)2kgを水1600mLに20秒程度で投入し、カルシウム系炭酸化合物の試料粉末を200g入れ、投入開始から3分間撹拌機(ヤマト科学株式会社製、「ラボスターラ(LR500B)」)で混合した。撹拌を停止し3分間静置した後、人手で攪拌棒(アズワン株式会社製、「攪拌棒(POM製)φ10×300mm」)により10回かき混ぜてセメントミルクを作製した。
(P漏斗流下時間試験方法)
「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」(JSCE-F521-1999)に準拠して、P漏斗流下時間を測定した。P漏斗の排出口を指で押さえ、P漏斗の標線まで前記調製した各セメントミルクを注ぎ(1750ml)、タイムウォッチで指を離すと同時に測定を始め、P漏斗からセメントミルクが排出されるまでの時間(P漏斗流下時間)(秒)を測定した
【0119】
[圧縮強度]
(セメント成形体の製造)
円柱状のポリエチレン袋(直径約50mm×長さ約550mm×厚さ約0.05mm)の標線まで前記調製したセメントミルクを400mL注ぎ込んだ。空気を可能な限り注入して封をした後、22℃に設定した降温機内に吊り下げた。降温機内に吊り下げたまま28日間放置し、内容物を硬化させることでセメント成形体を計3個製造した。得られたセメント成形体は円柱状であり、直径約5cm、長さ約20cmであった。
【0120】
(圧縮強度試験)
JIS A1108:2018(コンクリートの圧縮試験方法)に準拠して、得られたセメント成形体の圧縮強度(N/mm2)を測定した。
前記圧縮強度としては、好ましくは24N/mm2以上、より好ましくは25N/mm2以上、更に好ましくは26N/mm2以上である。
【0121】
[面変化率]
(成形板(積層板)の製造)
以下の手順に沿って、抄造法により、成形板(積層板)を製造した。
まず、成形板の原料として、セメント27質量部、珪砂23質量部、パルプ5質量部、ワラストナイト10質量部、及び、それぞれ得られたカルシウム系化合物35質量部をポリ容器に投入して、攪拌混合し原料スラリーを得た。
続いて、フェルトを敷いたろ過器に、原料スラリーを分割して投入し、真空ポンプにて吸引ろ過を行い、成形板(積層板、長辺28mm×短辺24mm×厚さ18mm)を作製した。
【0122】
(面変化率の測定)
得られた成形板をろ過器から取り出し、ノギスを用いて長辺長さ(L
1)・短辺長さ(l
1)を測定する。その後脱水プレスを行い、再度を長辺長さ(L
2)・短辺長さ(l
2)測定し、下記式に基づいて面変化率(%)を算出した。
【数3】
【0123】
[加熱試験]
(無機質成形板(無機質成形体)の製造)
上記成形板(積層板)の製造方法により得られた成形板(積層板)をろ過器から取り出し、脱水プレスを行った。プレス後の厚さは13mmであった。オートクレーブ養生(養生圧力(ゲージ圧):9kgf/cm2、養生時間:12時間)後、プレス体を乾燥機(105℃)で24hr乾燥させた。両面をサンダーにて研磨し厚さを12mmに調整し、無機質成形板(無機質成形体)を得た。
【0124】
(加熱面収縮と裏面温度上昇の測定)
加熱試験を次の装置及び手順で行った。
図7は、加熱試験器を模式的に示す一部透視図である。
図7に示すように、熱源として電熱器を使用して900℃前後で安定させることができるように、試験体と熱源との間を耐火材で組み上げ、熱電対で試験体(無機質成形板)の裏面の温度が測定できるようにした。具体的には、熱源設備として電熱器(1.2kwヒーター)をが測定できるようにした。具体的には、熱源設備として電熱器(1.2kwヒーター)を使用し、K熱電対及び温度調節器を接続した。また、各熱電対はデータロガーに接続した。試験体の加熱面側と熱源との距離は約70mmとなるように固定した。試験手順は次のとおりであった。
(1)捨て板を設置し、902℃まで予備加熱を行った後、加熱を一旦した。
(2)加熱面側が200℃以下になってから試験体に挿し換えた。
(3)試験体の裏面(図中、上面)中央に熱電対をのせ、けい酸カルシウム板(約30mm×70mm)及び錘を乗せて固定した。
(4)加熱を開始し、所定時間(45分)放置し、表面側・裏面側の温度をデータロガーで記録する。この間、電熱器の温度設定は加熱面側で902℃とし、900℃を下限として温調器で管理した。また、データロガーの温度測定間隔は10秒毎とし、この間隔でデータを記録した。
(5)試験終了後、試験体を取り出し、以下の項目を測定した(試験前にも各項目を測定しておいた)。
・寸法:裏面及び加熱面の縦横の長さをノギスで測定した。試験前後での加熱面の面積(mm
2)を算出し、下記式に基づいて加熱面収縮(%)を求めた。
前記加熱面収縮(%)としては、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。
前記試験前後での前記裏面温度上昇としては、好ましくは460℃以下、より好ましくは455℃以下、更に好ましくは450℃以下である。
【数4】
(式中、S
0は試験前の加熱面の面積であり、S
1は試験後の加熱面の面積である。)
【0125】
【0126】
上記表1の評価結果より、全ての実施例において、酸可溶性シリカの含有量が、所定の範囲であり、所定の範囲の平均粒子径を有する凝集粒子が得られ沈降容積も所定の範囲のカルシウム系炭酸化合物であり、これを用いたセメントミルクでは、P漏斗流下時間の増加を招来することがなく、良好な流動性を有し、作業性に優れることが確認できた。また、セメント成形体の圧縮強度は高く維持され、成形板(積層板)の面変化率も小さく抑えられ、抄造性に優れ、得られる無機質成形板についても、加熱面収縮、及び、裏面温度上昇が抑えられることが確認できた。
【0127】
一方、比較例1及び2は、得られたカルシウム系炭酸化合物の酸可溶性シリカの含有量が低く、比較例3は、カルシウム系炭酸化合物ではなく、炭酸ナトリウムを使用し、酸可溶性シリカの含有量が低いため、実施例と比較して、凝集粒子を形成できず、全ての特性を同時に満足できるものではないことが確認された。
【要約】
【課題】製造工程における作業性に優れたカルシウム系炭酸化合物、組成物、成形板、無機質成形体、及び、カルシウム系炭酸化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】レーザー回折法による2次粒子の平均粒子径D
2が、1μm以上10μm以下の凝集粒子であり、酸可溶性シリカの含有量が、0.1質量%以上であり、沈降容積が、50mL以下であるカルシウム系炭酸化合物。
【選択図】
図1