(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-26
(45)【発行日】2026-02-03
(54)【発明の名称】積層シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20260127BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20260127BHJP
【FI】
B32B7/025
H05K9/00 M
(21)【出願番号】P 2020564960
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2020042010
(87)【国際公開番号】W WO2021100566
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2019207630
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松居 久登
(72)【発明者】
【氏名】遠山 秀旦
(72)【発明者】
【氏名】合田 亘
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203825(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/087883(WO,A1)
【文献】特開昭62-081450(JP,A)
【文献】特開2012-099665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H05K9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の異なる2つの層、便宜的に導電性が低い方の層をA層といい、高い方の層をB層という、が最表層に前記A層が配置されるように交互に合計で5層以上積層された交互積層ユニットを含む積層シートであって、前記A層が、熱可塑性樹脂単独で
なり、前記B層が、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として導電性材料である
ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150[mL/100g]以上、800[mL/100g]以下のカーボンブラックがマトリクス樹脂中に分散された状態または熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として導電性材料である
ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150[mL/100g]以上、800[mL/100g]以下のカーボンブラック及び有機カーボン系材料以外の導電性材料や磁性材料等の他の材料が
マトリクス樹脂中に分散された状態
(但し、導電性材料の含有量としては積層シート全体の重量に対して1重量%以上15重量%未満である)でなり、
前記ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150[mL/100g]以上、800[mL/100g]以下のカーボンブラックは積層シート全体の重量に対して1重量%以上15重量%未満含まれ、かつ、前記積層シートについて、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットされる周波数-反射減衰量曲線を求めたとき、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップにおける反射減衰量(反射減衰量RL)が5.0dB以上であり、A層とB層の単位厚みあたりの界面数が2面/100μm以上であり、前記ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークが、1~100GHzの周波数帯域に存在し、前記ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップにおける反射減衰量をRL[dB]、当該ピークトップに対応する周波数をf[GHz]、積層シートの厚みをt[mm]とした場合、RL/(t×f)が0.2以上15以下であり、かつ、B層の表面抵抗値が7.0×10
4[Ω/□]未満である積層シート。
【請求項2】
前記積層シートの少なくとも一方の最表面の表面抵抗値が1.0×10
5[Ω/□]以上である請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記B層の層厚みの平均値をtB[mm]、標準偏差をtBσ[mm]とした際の、変動係数tBσ/tBが0.3以下である請求項
1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記B層の複素誘電率の実数部εh’ [F/m]と虚数部εh’’[F/m]が、下記(A)式もしくは(B)式を満足することを特徴とする、請求項
1~3のいずれかに記載の積層シート。
(A) εh’’≧1、かつ、0.17εh’+2.3≦εh’’≦0.27εh’+3.3
(B) 5≧εh’’≧1、かつ、0.02εh’+1≦εh’’≦0.07εh’+1.9
【請求項5】
前記最もピークトップの電磁波減衰量が大きい反射減衰ピークの半値幅fΔ[GHz]と、前記最もピークトップの電磁波減衰量が大きい反射減衰ピークのピークトップの電磁波減衰量(最大減衰量)RL[dB]との比RL/fΔが、5.0以上である請求項1~
4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
請求項1~
5に記載の積層シートと、反射板とを有する電磁波シールド体。
【請求項7】
電子機器、通信機器、および、交通機関において用いられる機器のいずれかに該当する電磁波関連装置であって、請求項1~
5のいずれかに記載の積層シートおよび請求項
6に記載の電磁波シールド体の少なくとも一方を有することを特徴とする電磁波関連装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性に優れる積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術の進歩に伴い、携帯電話や無線通信などでは主に数百MHz~数GHz帯域のメートル波が使用され、4G・5Gなどのモバイル通信、無線LAN(Wi-fi)通信などでは数GHz~数十GHz帯域のセンチ波が主に使用され、自動車衝突防止レーダーなどでは数十GHz~数百GHz帯域のミリ波が主に使用されている。このように、種々の周波数帯域の電磁波が大気中を飛び交っている。電磁波の周波数帯域は、情報の容量や伝達する距離・用途に合わせて適した周波数帯域が選択されるが、近い周波数帯域の電磁波が様々な装置・用途で使用されるため、装置の誤作動や通信障害、情報漏洩が懸念されている。また、電磁波に敏感な人体への影響も指摘されている。こうした懸念や指摘に応えるため、電磁波を遮蔽する電磁波シールド材料のニーズが高まっている。特に、近年では、高速・大容量通信を実現するために、GHz周波数帯域の電磁波を利用する通信技術開発が加速しており、当該周波数帯域の電磁波を遮蔽できる電磁波シールド材料が求められている。
【0003】
電磁波は、電界と磁界の2成分から構成される波として空間を伝播する。電磁波を遮蔽する電磁波シールド材料は、材料表面・内部で電磁波を反射、あるいは、材料内部で電磁波を吸収、して電磁波の持つエネルギーを損失・減衰させる材料を指し、反射と吸収を組合せることでより効果を高めることができる。例えば、材料の表面での反射による導電反射技術は、空気界面と電磁波シールド材料界面の電気抵抗値(比誘電率をもとに算出されるインピーダンス)が異なることで効果を高めることができ、一般的に金属(銅)など非常に抵抗値が低い材料を基材の表面に塗布、積層することで広範囲の周波数帯域にわたり電磁波シールド性が得られる。(特許文献1)一方、材料内部での吸収による電磁波吸収技術は、材料の内部に導電性材料および/または磁性材料を含有させ、内部に進入した電磁波を誘導電流に変換することで電磁波のもつエネルギーを損失させるものであり、カーボン材料やフェライト等の金属材料をゴムなどの誘電体ポリマーに含有させることで吸収性能を発現している。(特許文献2~4)また、インピーダンスの異なる層を重ね合わせることで、電磁波シールド材の表裏で反射した電磁波同士を干渉・打消して損失させることもできる。(特許文献5)
特に、吸収による電磁波シールド性は、誘電性(絶縁性)を示す基材と内部に含有する導電性材料の組合せ、基材厚み、また、導電性材料の処方(材料の種類、組合せ方、含有量)などで特性が変化するものであるが、導電性材料の基材内での配列状態も重要な要素であり、導電性を向上するために一定方向に導電性材料を配列させて横並びに重ね合わさる態様をとることで、シールド材料全体の効果を高めることができるマクスウェル-ワグナー効果と呼ばれる知見もある。(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-502285号公報
【文献】特開2003-158395号公報
【文献】特開2017-118073号公報
【文献】特開2019-057730号公報
【文献】特開2019-102665号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Z.M.Dang,Prog.Matter.Sci.,2012,57,660-723
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような導電反射技術を利用した電磁波材料シールド材料に関して、金属スパッタリングや真空蒸着、最表層へ導電性材料および/または磁性材料を含有するペースト材料をコーティングする技術が用いられるが、剥落による電子機器・通信機器の短絡が生じたり、耐久性の観点で課題が生じる場合がある。一方、特許文献2~5に記載されているような磁性吸収や誘電吸収を利用した電磁波シールド材料に関して、基材に導電性材料を含有させた既存技術では、電磁波減衰量の絶対値を高める(電磁波シールド性を高める)ためには、基材を厚くしたり、導電性材料の含有量を高める必要があった。すなわち、用いる材料が決まれば、基材の単位体積あたりに含まれる導電性材料の量と基材の厚みとの積に比例して電磁波遮蔽性が求まる(かかる関係性を「体積則」と称する)ものである。しかしながら、基材の厚みを厚くする場合、電磁波シールド材のコシが強くなるため、ケーブルへの巻き付けや複雑な凹凸形状を有する筐体に沿ってシールド材を組み合わせるなど成形性が求められる用途への適用は困難となる。
【0007】
一方、シールド材の成形性や生産効率を考慮すると、熱可塑性樹脂を用いたプレス加工品よりも熱可塑性樹脂を用いた溶融押出による連続シート化が好ましいが、導電性材料を高濃度に含有させてシートを成形する場合、押出時における樹脂組成物の増粘効果(チキソトロピー性)が強くなり、シート状に押出成形する際に吐出むらが起こり均一な厚みのシート化が困難となったり、シートが脆くなり割れやすくなる、などの問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成からなる。すなわち、
導電性の異なる2つの層、便宜的に導電性が低い方の層をA層といい、高い方の層をB層という、が最表層に前記A層が配置されるように交互に合計で5層以上積層された交互積層ユニットを含む積層シートであって、前記A層が、熱可塑性樹脂単独でなり、前記B層が、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として導電性材料であるジブチルフタレート(DBP)吸油量が150[mL/100g]以上、800[mL/100g]以下のカーボンブラックがマトリクス樹脂中に分散された状態または熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として導電性材料であるジブチルフタレート(DBP)吸油量が150[mL/100g]以上、800[mL/100g]以下のカーボンブラック及び有機カーボン系材料以外の導電性材料や磁性材料等の他の材料がマトリクス樹脂中に分散された状態(但し、導電性材料の含有量としては積層シート全体の重量に対して1重量%以上15重量%未満である)でなり、前記ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150[mL/100g]以上、800[mL/100g]以下のカーボンブラックは積層シート全体の重量に対して1重量%以上15重量%未満含まれ、かつ、前記積層シートについて、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットされる周波数-反射減衰量曲線を求めたとき、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップにおける反射減衰量(反射減衰量RL)が5.0dB以上であり、A層とB層の単位厚みあたりの界面数が2面/100μm以上であり、前記ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークが、1~100GHzの周波数帯域に存在し、前記ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップにおける反射減衰量をRL[dB]、当該ピークトップに対応する周波数をf[GHz]、積層シートの厚みをt[mm]とした場合、RL/(t×f)が0.2以上15以下であり、かつ、B層の表面抵抗値が7.0×104[Ω/□]未満である積層シート、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層シートは、高い電磁波シールド性を示す。そのため、電磁波シールド材料として好適に用いることができる。より好ましい態様としては、導電性の高い層と導電性の低い層を交互積層した積層構成とすることにより、特定の周波数帯域に対して急峻で高い電磁波シールド性を有する。また、導電性材料の含有量が少なく、また薄膜であっても、従来技術と比較しても同等レベルの電磁波シールド性を得ることができる。そのため、適用製品への成形追従性、シートの安定生産向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様である積層シートの周波数-反射減衰量曲線において、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの半値幅、ピークトップにおける反射減衰量を説明する模式図である。
【
図2】
図1とは別の態様の積層シートの周波数-反射減衰量曲線において、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの半値幅、ピークトップにおける反射減衰量を説明する模式図である。
【
図3】
図1、2とは別の態様の積層シートの周波数-反射減衰量曲線において、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの半値幅、ピークトップにおける反射減衰量を説明する模式図である。
【
図4】
図1~3とは別の態様の積層シートの周波数-反射減衰量曲線において、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの半値幅、ピークトップにおける反射減衰量を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層シートについて詳細に説明する。
【0012】
本発明の積層シートは、導電性の異なるA層とB層とが交互に合計で5層以上積層された交互積層ユニットを含む積層シートであって、前記積層シートについて、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットされる周波数-反射減衰量曲線を求めたとき、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップにおける反射減衰量(反射減衰量RL)が5dB以上であることが必要である。なお、周波数-反射減衰量曲線は、後述する測定方法によって求められる。
【0013】
本発明の積層シートは、導電性の異なるA層とB層という異なる層を含んでなる。A層、B層を構成する材料は、透明/不透明、可撓性/剛性、平坦/非平坦、有機(高分子)材料/無機(金属)材料など特に限定されないが、可撓性を示す有機高分子材料からなる基材であることが、加工性を考慮すると好ましい。特に熱可塑性樹脂を主成分とすることが望ましい。ここで、主成分とするとは、層が、熱可塑性樹脂単独でなるか、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂として導電性材料や磁性材料等の他の材料が樹脂中に分散された状態でなっていることをいう。
【0014】
また、本発明の積層シートには、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いたハードコート、などを用いることもできる。
【0015】
本発明の積層シートにおけるA層とB層は、導電性が異なる層であることが必要である。なお、便宜的に、また、後述する好ましい積層シートの態様を考慮し、導電性が低い方の層をA層といい、高い方の層をB層という。A層とB層の導電性が異なるとは、A層、B層の各層の層方向(シートの平面方向)への導電性/絶縁性の指標である表面抵抗値が異なっていることを表す。具体的に、A層とB層の導電性が異なるとは、A層とB層の表面抵抗値のうち、高い方の表面抵抗値をα[Ω/□]、低い方の表面抵抗値をβ[Ω/□]とした際に、α/βが1.1以上であることを表す。好ましくはα/βが102以上、より好ましくは105以上、さらに好ましくは109以上である。導電性/絶縁性の指標である表面抵抗値が1.0×105[Ω/□]未満であると電磁波シールド性を良好に発現するため、A層は表面抵抗値が1.0×105[Ω/□]以上、B層は表面抵抗値が1.0×105[Ω/□]未満であり、かつ、前記の表面抵抗値の比を示すことがより好ましい。A層とB層の導電性を異なる層とする方法は特に限られるものではない。A層とB層の導電性を異ならせる材料設計として、A層とB層はマトリクス中に導電性材料を含有せしめた組成物によって構成することが簡便であるが、マトリクスの材料として比誘電率の異なる材料を用いることで導電性を異なるようにしてもよく、含有させる導電性材料の種類および/または含有量を異なるようにすることで導電性が異なるようにしてもよい。詳細は後述するが、特定の周波数帯域において高い電磁波減衰量を得るためには、比誘電率の数値を特定の数値範囲に制御することが重要であり、そのとき電磁波減衰量を保ちながら目的とする周波数帯域へ反射減衰ピークの周波数を調整するためには、A層とB層の導電性を細かく調整することができる構成が好ましく、A層とB層の比誘電率を異ならせるために、A層および/またはB層に導電性材料および/または磁性材料を含有させる態様が最も好ましい。ここで述べるところの比誘電率とは、真空での誘電率(電気定数)を基準とした際の、誘電率の大きさを表す無次元量のことである。以下、比誘電率のことを単に誘電率と記載する。
【0016】
なお、表面抵抗値は、試料物の表面において求められる試料物の抵抗値を意味する。A層とB層とが積層された界面を剥がして界面を露出させて求めても良いが、各層をスライスして試料物の表面を出し、測定することが簡便に求めることができ、かつ再現性良く求めることができる。
【0017】
本発明の積層シートにおいて、ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークの減衰量が高い数値を示すためには、交互積層ユニットを構成するA層、B層のうち高い誘電率を示す層の設計が重要である。通常、従来の単膜シートの技術では、樹脂の中に含有させる、誘電率を上げるための導電性材料および/または磁性材料を高濃度に含有させる、もしくは、シート厚みを厚くすることで達成する場合が多い。しかし、本発明の積層シートであれば、片側の層の誘電率を高く、もう一方の層の誘電率を低くし、誘電率の差を設けることにより、誘電率が高い層と誘電率が低い層の層界面で発生する誘電分極(双極子モーメントの発生)の効果が加わることで、同じ重量濃度の導電性材料および/または磁性材料を含む単膜シートと比較して、体積則以上の誘電率向上の効果を得ることが出来る。この誘電率向上に寄与する誘電分極を強く起こすためには、交互に配されるA層とB層の誘電率の差、をいかに大きくするかが重要な設計ポイントの一つとなる。誘電率の差を異ならせる方法は上述の通り、A層、B層に用いる樹脂の種類、A層および/またはB層に含有させる導電性材料および/または磁性材料の含有量の差が挙げられるが、好ましい態様としては、A層またはB層のうち、片側の層にのみ導電性材料を含み、もう片側の樹脂は導電性材料を含まない樹脂単体で構成されている態様である。さらに好ましい態様は、導電性材料を含まない層が誘電率の低い樹脂で構成されており、導電性材料を含む層が樹脂として高誘電率を示す樹脂で構成されつつ、さらに導電性材料を高濃度に含有する態様である。また、後述するとおり、層の数を増やすことは誘電分極を起こす界面の数を増やすこととなるので好ましく、また、層の厚みを小さくすることは、単位厚みあたりの界面数を多くすることができるので好ましい。すなわち、交互積層ユニットの単位厚みあたりのA層とB層の界面数としては、2面/100μm以上とすることが好ましく、また、5面/100μm以上とすることがより好ましく、10面/100μm以上とすることがさらに好ましく、積層体の製造が安定してなし得る限り上限としては特に制限はないが、150面/100μm以下とすることが生産性の点で一般的である。またこのとき、A層とB層の表面抵抗値の比(A層/B層)を1×1010以上、好ましく1×1012とすることが良い。
【0018】
本発明に好ましく用いることができる可撓性を示す有機高分子材料としては、熱可塑性樹脂であることが、特にシートの加工性や製膜性の観点から良好となるため好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリイソブチレン,ポリイソプレン、ポリブタジエン,ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン,ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリノルボルネン、ポリシクロペンテンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などに代表されるポリアミド系樹脂、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アクリルメタクリレートコポリマー、エチレン/ノルボルネンコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー,プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーなどに代表されるビニルモノマーのコポリマー系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド,ポリアクリロニトリルなどに代表されるアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド、ポリアクリレングリコールに代表されるポリエーテル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースに代表されるセルロースエステル系樹脂、ポリ乳酸,ポリブチルサクシネートなどに代表される生分解性ポリマー、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリシロキサン、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は1種類単独で利用しても、2種類以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして利用してもよい。ブレンドやアロイを実施することで、1種類の熱可塑性樹脂からは得られない耐熱性、粘度特性、層間界面での密着性などを得ることができる。
【0019】
前述のとおり、本発明の積層シートでは、導電性の異なる層を交互に積層した交互積層ユニットを含む積層シートとすることで、導電性の異なるA層とB層の界面において誘電分極を引き起こし、より電磁波シールド性を高める効果を得ることができるため、各層を構成する熱可塑性樹脂の誘電率は重要な要素となる。そのため、A層を構成する樹脂と、B層を構成する樹脂は誘電率が異なっていることが好ましい。具体的には、誘電率が低い樹脂としては、誘電率として3.0以下を示す樹脂を選定することが好ましく、汎用性や加工性、積層性などを考慮すると、ポリオレフィン系樹脂(誘電率:2.0~2.3)、ポリエステル系樹脂(誘電率:2.8~3.0)、ポリカーボネート(誘電率:2.9~3.0)、ポリスチレン(誘電率:2.4~2.6)、などの熱可塑性樹脂から選択されることが好ましい。これらの樹脂は、特に、導電性材料を含有しない層に用いられることがより好ましい。
【0020】
一方で、導電性材料を含有する層に好ましく用いることができる熱可塑性樹脂として、誘電率が高いことが好ましく、アクリル樹脂(誘電率:3.0~4.5)、ナイロン樹脂(誘電率:3.5~5.0)、セルロース系樹脂(誘電率:6.7~8.0)、ビニルモノマーのコポリマー系樹脂(誘電率:3.0~8.0)、フッ素樹脂(誘電率:4.0~8.0)、ポリフェニレンサルファイド(誘電率:3.5~4.0)、などから選択することが好ましい。
【0021】
また、A層とB層の誘電率を異ならせる方法は、樹脂として誘電率が異なる材料を用いることでも達成できるが、A層とB層を構成する樹脂は同じもので、導電性を付与する導電性材料を添加することで誘電率の差を設けることでも達成可能である。本発明の積層シートは、前記および後述するとおり、導電性の異なるA層とB層を交互に積層し、A層とB層の誘電率差を設けることで、層界面で発生する誘電分極により、電磁波遮蔽性能を高めることができることに特徴があり、誘電分極の効果を高めるためには、A層およびB層の誘電率差が大きいほど効果的である一方で、反射減衰量を高めるためには、誘電率が高い方の層(B層)が後述の特定の誘電率の範囲内に設計されていることが好ましく、目的の誘電率に合わせるように材料設計しやすい構成であることが好ましい。この誘電率の細かい調整は層を構成する樹脂よりも、添加する導電性材料の含有量で調整することが簡便であることから、これらを満足する好ましい積層シートの態様は、誘電率が低い方の層(A層)が導電性材料を含有しない層で構成されており、誘電率が高い方の層(B層)が導電性材料を含有する層で構成されていることが好ましい。さらに好ましくは、A層を構成する樹脂が上記誘電率3.0以下を示す樹脂で構成されており、B層を構成する樹脂が上記誘電率3.0以上を示す樹脂で構成され導電性材料を含有している態様である。
【0022】
本発明の積層シートは、A層およびB層が交互に5層以上積層された交互積層ユニットを含むことが必要である。交互に積層するとは、A層を最表層に有する構成の場合は、A(BA)n、もしくは、A(BA)nB(nは2以上の整数)の規則的な配列に従って積層された状態を指す。例えば、A層/B層/A層/B層/A層の構成、若しくはB層/A層/B層/A層/B層の構成を有する積層シートは、A層とB層以外の層の有無にかかわらず全て、A層とB層とが交互に合計で5層以上積層された交互積層ユニットを含む構成に該当する。本発明の積層シートはA層とB層とが積層された交互積層ユニットを有する限り、最表層がA層、B層、A層とB層以外の層のいずれであってもよく、両側の最表層が同じ層であっても互いに異なる層であってもよい。また、積層シートに含まれる交互積層ユニットの個数は1つであっても複数であってもよく、複数である場合のそれぞれの交互積層ユニットは、同一の構成であっても異なる構成の交互積層ユニットであっても良い。複数の交互積層ユニットを用いる場合は複数の波長域に対応した電磁波遮蔽を実現することが容易である。すなわち、複数個の交互積層ユニットを重ね合わせて使用する場合、異なる周波数帯域にピークトップを有する交互積層ユニット同士を重ね合わせて使用し、所望の複数の周波数帯域を同時にシールドすることが容易である。
【0023】
ゴムなどエラストマー樹脂を交互に積層する手法としては、例えば、異なる組成で構成された2種類のエラストマー樹脂を圧延プレスすることでシートを作製し、異なるシートを交互に重ね合わせて熱圧着することで、積層シートを得る方法を挙げることができる。
【0024】
一方で、熱可塑性樹脂を交互に積層する手法としては、例えば、各層に対応した熱可塑性樹脂、および、適宜添加剤を分配/分散混合してマスターペレットを各々調製し、該マスターペレットを2台以上の押出機を用いて異なる流路からそれぞれ送り出し、公知の積層装置であるマルチマニフォールドタイプのフィードブロックやスタティックミキサーなどを用いて積層する方法を挙げることができる。特に、本発明の積層シートは、後述のとおり、層厚みの分散が小さく厚みが揃っていることが、特定の周波数に対して高い電磁波減衰性能を示すために好ましいことから、高精度な積層を実現するために、微細スリットを有するフィードブロックを用いて積層シートを形成することが好ましい。また、スリットタイプのフィードブロックを用いることで、樹脂の層流に従って導電性材料および/または磁性材料が配向・分散し、積層シートの高誘電率化を実現しやすくなる。スリットタイプのフィードブロックを用いて積層体を形成する場合、各層の厚みおよびその分布は、スリットの長さや幅を変化させて圧力のバランスを整えることで達成可能となる。なおここで、スリットの長さとは、スリット板内でA層とB層を交互に流すための流路を形成する櫛歯部の長さのことである。
【0025】
後者の熱可塑性樹脂を用いた積層シートを作製する場合、異なる2種類の熱可塑性樹脂(該熱可塑性樹脂を便宜的にそれぞれ、樹脂A、樹脂Bと称する)の溶融粘度が同レベルであることが好ましく、溶融粘度が大きく異なる場合、積層界面での樹脂の積層乱れ(フローマーク)が発生し、均一なシートを作製できない場合がある。これにより、各層の層厚み、それに伴う各層の導電性が不均一となり、積層シートの位置により電磁波シールド性がばらつく場合がある。均一な積層シートを溶融押出で成形するためには、樹脂Aまたは樹脂Bのうち、一定温度(樹脂Aまたは樹脂Bのうち、融点が高い方の樹脂の融点+10℃)・一定せん断速度(100sec-1)における溶融粘度の高い方の樹脂の溶融粘度をX[poise]、溶融粘度の低い方の樹脂の溶融粘度をY[poise]とした場合、これらの比(X/Y)は、1.0≦X/Y≦5.0であることが好ましく、より好ましくは、1.0≦X/Y≦2.0である。また、熱可塑性樹脂にフィラーとして導電性材料を含有させた場合、高濃度にフィラーを含有することによりせん断速度に依存した溶融粘度変化(チキソトロピー性)が発生し、樹脂の積層工程においてフローマークがより強く発生しやすくなる。また、熱可塑性樹脂単独でも、オレフィン樹脂など、種類によっては樹脂の溶融粘度のせん断依存が生じるため、積層時にフローマークが発生しやすく、チキソトロピー性が発生しやすい樹脂とフィラーを組み合わせるとよりフローマークが強く発生する。そのため、熱可塑性樹脂としては、チキソトロピーを発生しにくい樹脂を使用することが好ましく、具体的には、導電性材料の混練性などを考慮すると、オレフィン系の共重合樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂などから選択することが好ましい。もしくは、高い導電性を示す方の層において導電性材料が添加されることによる溶融粘度のせん断依存性に合わせて、導電性材料を含まない導電性の低い方の層に、導電性材料とは異なる粒子を添加する、オレフィンなどの非ニュートニアン性を示す樹脂材料を用いる、などの方法で、溶融粘度のせん断依存性が類似した特性のものとする方法も、積層シートのフローマークを抑制するためには有効である。
【0026】
本発明の積層シートの積層数は、5層以上であることが必要である。上記の規則的な配列のいずれにおいても、誘電分極が生じる界面を多く得るために、低い誘電率の層に囲まれた高い誘電率の層が2層以上含まれるためには、5層以上の構成であることが必要である。従来の単膜あるいは低積層数品では導電性材料を高い濃度で添加することやシートの厚みを厚くしないと目的とする電磁波遮蔽性が達成できなかったのに対し、5層以上で交互に積層することで、導電性の異なる層界面における誘電分極による効果を得やすくなる。すなわち、誘電分極によってシート内部(特に層界面付近の領域)に電流が通りやすくなり、導電性材料の抵抗によって電磁波が有するエネルギーは損失を受け、高いシールド性を有する電磁波シールド材料を得ることができる。さらに、一定の厚みの積層シートにおいて層数を増やすことは、積層シートの1層あたりの層厚みが薄くなり、導電性材料および/または磁性材料が面に平行な方向に分散・配列しやすくなるため、積層シートの導電性・誘電率が高まりやすく、単層品では導電性材料および/または磁性材料を高濃度に含有させなければ達成することができなかった導電性・誘電率を、低濃度で同等の効果を得ることができる。積層シート内に含まれる交互積層ユニットにおけるA層とB層の積層数の合計は、好ましくは11層以上であり、より好ましくは31層以上、さらに好ましくは101層以上である。積層数が多い方が、上記の効果に加え、同じ厚みの積層シートの場合、層数を増やすことで、層内の導電性材料の充填密度が高まることで導電性材料間の距離が狭まり、添加した導電性材料間の電子移動効率も上がるため、電磁波吸収材料としての効果が高まることから好ましい。また、層数が多く、一層の厚みが薄いほど単位厚みあたりに含まれる層数が増加するため、誘電分極の効果が高まり、ひいては積層シートの誘電率を高めることができる。積層シートの層数は特に上限を設けないが、微細スリットを有するフィードブロックを使用する場合、層数が増えることで装置が大型化することによる製造コスト増加が生じる。さらに、フィラーの分散状態や形状、サイズによっては、積層数が増えて1層1層の厚みが薄くなった場合に、粒子添加によるチキソトロピー性が発生しやすくなり、樹脂流が乱れて層厚みが大きくばらつくことで本来の高遮蔽かつ急峻な電磁波シールド性が損なわれる場合もある。以上から、積層数の上限としては、現実的には2000層以下である。
【0027】
本発明の積層シートは、上記の導電性の異なるA層とB層が交互に5層以上積層した交互積層ユニット以外に、電磁波反射層や電磁波吸収層など異なる作用による層を設ける形で含んでいても良い。
【0028】
本発明の積層シートは、導電性材料および/または磁性材料を含有する電磁波吸収シートであることが好ましいが、広い周波数帯域をシールドする電磁波反射層を組み合わせて、広く電磁波をシールドする中で特定の周波数のみをより強くシールドできる積層シートとすることもでき、積層シート最表面に、表面での電磁波の反射をより低くするための低誘電率を示す新たな層を設け、電磁波吸収の効果をより高めた積層シートとすることもできる。後者の場合、積層シート最表面に位置する層の誘電率は4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下である。また、表面反射を抑制する層として、空気層のインピーダンスと同じインピーダンスを示す抵抗層を設けることも好ましい。空気のインピーダンスは377Ωであり、本抵抗値を満たす公知の抵抗層として、ITOなどが挙げられる。
【0029】
本発明の積層シートは、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットされる周波数-反射減衰量曲線を求めたとき、ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量が5.0dB以上であることが必要である。反射減衰量とは、積層シートに電磁波を入射させ、電磁波を入射させる面の側に検出器をおき、また電磁波を入射させる側の面とは反対側の面に前記電磁波を入射側に全反射させる材料をおき、積層シートから戻ってくる電磁波の強度を測定し、入射電磁波の強度と前記検出器で検出した電磁波の強度から、式(1)で表される反射減衰量Γと、入射した電磁波の強度に対する戻ってきた電磁波の強度の割合(T[%])の関係式に基づき求められ、反射減衰量Γは単位デシベル(dB)で表現される。なお、反射減衰量の測定やピークトップの特定は後述の「反射減衰量測定」に記載の方法によって求められる。但し、同じ結果が得られるのであれば異なる装置系や手順・方法を用いることは構わない。例示的に簡潔に記載すると、同軸導波管法や自由空間法を利用し、背面にアルミニウムなどで作製された金属反射板を組み合わせた積層シートに対して電磁波を照射し、積層シートから戻ってきた電磁波の強度を計測して算出する。周波数を掃引して各周波数における反射減衰量を測定し、縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットされる周波数-反射減衰量曲線において、複数のピークが得られることがあるが、その中でも最もピーク強度(減衰量)が大きい反射減衰ピークの減衰量に着目する。ここでいうところのピークトップとは、反射減衰スペクトルの接線の傾きを考えた際に、正から負、あるいは、負から正に符号(傾き)が反転する位置、すなわちX軸に平行な直線が接する点、を指す。反射減衰ピークにおける反射減衰量は、
図1、2に示すようにピークトップがひとつである場合は、当該ピークにベースラインを引き、ピークトップを示す周波数における、ピークトップの反射減衰量とベースラインとの反射減衰量の差で表すこととし、以後、反射減衰量ピークのピークトップにおける反射減衰量は、反射減衰量RL[dB]と表現する。また、
図3のようにベースラインの減衰量が高いピークであっても、特異的なピークトップを有する場合には、当該ピークトップのベースラインとピークトップの減衰量の差を読み取る。一方で、ショルダーピークを含む複数のピークトップを有する
図4のようなスペクトルが得られた場合には、複数のピークトップのうち最もピーク高いピークトップの周波数に対して、ピークトップに相当する減衰量と、複数のピークトップを含むピーク全体のベースラインとの減衰量の差で表すこととする。
【0030】
【0031】
このようにして示される反射減衰ピークの反射減衰量RLは、5.0dB以上の数値を示すことが必要である。反射減衰量RLが5.0dB未満であるとは、ベースラインの反射減衰量が0dBである場合、式(1)に従う場合、反射減衰量Γと同義であるため、電磁波の透過率が30%より高いことを意味する。そのため、反射減衰ピークの反射減衰量RLは、5.0dB未満の積層シートは電磁波シールド性が十分備わっているとは言えない。本発明の積層シートにおける反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークにおける反射減衰量RLは、15.0dB以上であることが好ましく、より好ましくは20.0dB以上、さらに好ましくは30.0dB以上である。反射減衰量が最大を示すピークトップの反射減衰量RLが30.0dB程度を示す場合、ピーク前後の周波数帯域の電磁波シールド性と比較して、入射した電磁波が99.9%シールドされていることを指し、非常に高い電磁波シールド性を有していると言える。上限は特に限られるものでは無いが、100dB以下であることが好ましい。なお、ピークトップにおける反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの反射減衰量RLが5.0dBを超える周波数帯域の幅は、急峻かつ高い電磁波シールド性を示しつつも、可能な限り広い周波数帯域にわたっていると、積層シートの厚みむらによる周波数帯域の変動を低減できるため好ましい。具体的には、ピークトップにおける反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの反射減衰量RLが5.0dBを超える周波数帯域の幅は1.0GHz帯域以上にわたることが好ましく、より好ましくは3.0GHz帯域以上、さらに好ましくは5.0GHz帯域以上である。上限としては20.0GHz帯域以下であることが好ましい。ピークトップにおける反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの反射減衰量RLが、5.0dB以上の高い数値を示すためには、積層シートの構成の観点では、積層数が多いこと、層厚みの厚みむらが小さいこと、シート全体の厚みを厚くすること、添加剤の観点では、導電性材料および/またはが高い導電性/磁性を示すこと、これらの含有濃度を増やすこと、などで達成することができる。
【0032】
本発明の積層シートは、反射減衰ピークトップにおける反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの反射減衰量RLをRL[dB]、当該反射減衰量を示す周波数をf[GHz]、積層シートの全体厚みをt[mm]とした場合、RL/(t×f)が0.2以上15以下であることが好ましい。従来技術に対し、本発明の積層シートは、誘電率の低い層と誘電率の高い層を交互に積層する態様とすることで、従来の単膜あるいは低積層数のシートに比べて、シート厚みを薄くし、成形性を付与できることに一つの特徴がある。この特徴は、いずれの周波数帯域を標的としたシートに対しても適用されるものである。ただし、厚みと周波数の大きさはトレードオフの関係を示すため、同じ誘電率を示す積層シートの構成では、周波数帯域を高周波側にシフトする際に、理論上の厚みは薄くなる傾向がある。このことから、本発明の積層シートの体積則を超える薄膜の効果を、反射減衰量RLと厚みtの関係(例えば、RL/tなど)のみで語ることはできず、周波数fと積層シート厚みtと反射減衰ピークの反射減衰量RLとの、3要素の前述の関係が、従来技術よりも優れることが重要となる。RL/(t×f)は、より好ましくは0.45以上12以下、最も好ましくは0.75以上10以下である。RL/(t×f)が0.2より低い場合は、反射減衰量RLが低く、電磁波シールド用途として用いられるほどの十分な電磁波シールド性能が得られていないこと、もしくは、電磁波シールド性はあるものの、厚みが厚く、体積則を超える十分な性能を示していない場合がある。RL/(t×f)が15より高い場合は、反射減衰量としては高くても、厚みが薄すぎるために、導電性材料および/または磁性材料の高濃度添加による積層シートの積層精度・製膜性が悪化する場合がある。RL/(t×f)が好ましい範囲を満足するためには、積層シートの積層数が多く誘電分極を多く生じる状態であること、層厚みムラが少ないこと、導電性材料および/またはが高い導電性/磁性を示すこと、さらに、導電性材料を複数種利用し誘電率を自由設計できる構成で、高い誘電率を示す層の誘電率の実数部および虚数部が後述の誘電率関係を満足すること、の要素が組み合わさることでより効果が高まる。各要素の好ましい条件は、本明細書中において説明したとおりである。
【0033】
本発明の積層シートの反射減衰ピークのうち反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークは、1~100GHzの周波数帯域に存在することが好ましい。本発明の積層シートを、従来の導電反射技術や磁性吸収技術で標的とすることが困難である高周波用途の電磁波シールド用途に用いる場合は、GHz周波数帯域に最大の減衰ピークを有することが好ましい。そのためには、積層シートに含有する材料として、後述する導電性材料あるいは、誘電体材料を利用し、誘電吸収タイプの積層シートを形成することが最も好ましい。一般的に、数GHz未満の周波数帯域に当たる近傍界をシールドするためには、誘電性を示す基材中に銀、銅に代表される金属やフェライトをはじめとする金属酸化物などの磁性材料を含有させたシートが用いられるが、GHz帯域の高周波数帯域を狙う場合、磁性材料特有のSnoek限界と呼ばれる、特定の周波数より高い周波数帯域の磁性損失が得られなくなる特性のため、通常は磁性材料を高濃度に含有してカバーする必要がある。ε酸化鉄などの特殊な材料を用いる従来技術もあるが、材料が高価なものである上、高濃度に添加することも求められるため、導電性材料を用いる場合よりもコスト・製膜性の観点で劣る場合がある。溶融押出により積層シートを作製する場合には、フィラーを高濃度に含有させることにより発生するチキソトロピー性が不可避であるうえ、添加した磁性材料による押出機金属部の欠損などが生じる場合がある。そのため、フィラーを低濃度に含有させて溶融押出工程で積層シートを作製する場合、上記GHz周波数帯域に電磁波シールド性を得るためには、導電性材料もしくは導電性/磁性複合材料を含有させることで電磁波吸収により高周波数帯域の電磁波シールド性を得ることが好ましい。磁性材料を併用して数GHzの周波数帯域をターゲットとする場合には、高透磁率であることによる電磁波のエネルギーの損失が可能となる、アスペクト比の高い金属材料を用いることが好ましい。アスペクト比の高い材料を積層シートに添加することで、従来の単層の膜では困難な材料の面方向への配列を実現でき、GHz周波数帯域であってもシールド性を示す材料とすることができる。アスペクト比は、材料の厚み方向の長さと平面方向の長軸の長さの比で表現できるが、前者をt1、後者をt2とした場合、t1/t2を0.001以上0.95以下とすることが好ましく、0.01以上0.1以下とすることがより好ましい。アスペクト比を0.001より小さくすると、磁性材料が薄くなりすぎるため、コンパウンドや製膜過程で材料が変形・破損し、磁性材料の効果が得られなくなる場合がある。
【0034】
本発明の積層シートは、少なくとも一方の最表面の表面抵抗値[Ω/□]が1.0×105以上であることが好ましい。積層シートを電磁波吸収シートとして使用する際、電磁波を効率よく積層シート内に伝播させて、積層シート内で電磁波が有するエネルギーを損失させるために、空気層と積層シート最表層との界面での電磁波の反射を抑制する態様が好ましい。電磁波が垂直入射した場合の、異なる誘電率(ε)および透磁率(μ)を有する2つの領域X,Yの界面での電磁波の反射率Rは式(2)のように表される。空気層と積層シート最表面との界面反射に着目する場合、空気層、積層シートの最表層の誘電率(ε)ならびに透磁率(μ)の比の差に特に影響されるが、空気層の誘電率(ε)ならびに透磁率(μ)は1であるため、電磁波反射を抑制するには、積層シート最表層の誘電率εならびに透磁率μの比を1に近くすることが有効である。具体的には、導電性および透磁率が空気層と近い値となるように樹脂を低誘電率/低透磁率の材料とし、導電性材料も磁性材料も含まない形態とすることが好ましい。絶縁性/導電性の指標として、誘電率/透磁率を用いることは、本発明の積層シートの場合、各層ごとに測定することは困難であることから、個々の層の絶縁性/導電性を表現するためには概ね相関関係を示す表面抵抗値を用いることが好ましく、本発明では、JIS規格に準拠し、三菱化学(株)製の高抵抗率計および低抵抗率計を用いて測定した数値で表現する。電磁波の表面反射を引き起こしにくい導電性の指標である表面抵抗値[Ω/□]としては、1.0×105[Ω/□]以上を示すことが好ましく、より好ましくは1.0×109[Ω/□]以上、さらに好ましくは1.0×1013[Ω/□]以上である。最表面の表面抵抗値を上記の範囲とする方法は特に限られるものでは無いが、最表面を有する層に含有する導電性/磁性材料や導電性ポリマー成分を少なくする、あるいは、含まないようにする方法が挙げられる。表面抵抗値が1.0×105[Ω/□]以上を示す層は、実装時に電磁波が入射する側の層に位置すればよく、少なくとも片面に配していればよいが、両側の最表面に位置していることがより好ましい。表面抵抗値が1.0×105[Ω/□]以上を示すためには、表層に位置する層に含有される導電性材料および/または磁性材料の添加濃度が少ない、あるいは、樹脂として導電性を示すポリマーもしくは添加剤を含まないように設計することで達成できる。
【0035】
【0036】
なお、μXおよびεXは、それぞれ領域Xの誘電率と透磁率を表し、μYおよびεYは、それぞれ領域Yの誘電率と透磁率を表す。
【0037】
本発明の積層シートは、A層またはB層に導電性材料を含有してなることが好ましい。導電性材料は、1種類のみ含有しても良く、複数種の導電性材料を併用してもよい。
【0038】
導電性材料は、1次粒子のサイズが小さく溶融押出に好適な有機カーボン系から適宜選択することができる。無論、導電性材料として有機カーボン系材料に限らなくてもよく、また、後述の有機カーボン系以外の無機成分を主体とする電磁波遮蔽材料や誘電体材料と併用して用いることもできる。無機成分を主体とする電磁波遮蔽材料や誘電体材料のみを用いて押出機を利用した積層シート製膜を行うと、導電性/磁性による電磁波遮蔽性能を得るために電磁波遮蔽材料を高濃度で添加する必要があり、装置と導電性材料の金属同士の摩擦などにより材料粉砕、装置の欠損などの問題が生じる場合がある。そのため、導電性材料のうち少なくとも1種は炭素を主成分とする有機カーボン系材料を含むことが好ましい。炭素を主成分とするとは、導電性材料を構成する全元素において、炭素のモル比が50モル%以上、好ましく80モル%以上、更に好ましく90モル%以上、特に好ましく95モル%以上を占めることをいう。
【0039】
有機カーボン系の導電性材料としては、たとえば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック,ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック(球状カーボン)、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、カップ積み上げ型ナノチューブなどの円筒状カーボンであるカーボンナノチューブ、黒鉛,グラファイト,グラフェンなどの扁平状カーボン、その他、球状グラファイト、円筒状グラファイト、カーボンマイクロコイル、フラーレン、炭素繊維(長繊維、短繊維)などを使用できる。中でも、積層構造による面方向への粒子配列の効果を利用し、導電性材料が含有した層の導電性を向上するためには、一次構造(線状のストラクチャー)が発達しやすい導電性のカーボンブラックを使用することが好ましい。また、積層構成を乱すことなく、層方向への導電性パスをより強く形成するために、任意な方向へストラクチャーが発達するカーボンブラックに加えて、構造が均一でアスペクト比の高いカーボンナノチューブや扁平状カーボンなどを併用してなることが好ましい。特に、材料のサイズ、厚みはナノレベルに制御された材料が好ましく、カーボンブラック、カーボンナノチューブやグラフェン、グラファイトなどを用いてなることがより好ましい。
【0040】
これは、マクスウェル-ワグナー効果として知られる、アスペクト比の高い導電性材料(形成される高次構造を含む)を当該材料の長軸方向が積層シートの表面に略平行である方向に配列させて、樹脂基材(特には、誘電率が低い樹脂として先に例示した、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ビニルモノマーのコポリマー系樹脂といった熱可塑性樹脂基材)中に含ませ、当該導電性材料が含まれた樹脂基材による層の中で、導電性材料間で樹脂基材が挟まれる態様とすることで、導電性材料の層と樹脂基材の層との界面でのミクロな誘電分極を多く形成し、電磁波シールド性を高める効果を得るためである。具体的には、誘電性を示す樹脂基材に含まれる導電性材料を積層工程による層流や延伸工程を介して、シート平面方向に略平行に揃えてこれらの分極を平行板コンデンサーのように並列し向かい合った態様とする。これにより、電磁波を照射して電界を加えた際に、多くの電荷が誘電体である基材と導電性材料界面で蓄積されやすくなり、積層シート内の導電性が高めることができる。その結果、電磁波が入射した際に導電性材料による抵抗を受けて、電磁波エネルギーが熱エネルギーへと変換されやすくなり、結果として、電磁波吸収によるシールド性を高めることができる。積層工程や延伸工程などを経ることで、このような態様を達成するための導電性材料として、先に述べた材料のうち、アスペクト比の高い材料である円筒形材料や扁平状材料、カーボンナノチューブ、DBP吸油量の高いカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0041】
本発明に好適に用いられるカーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸油量[mL/100g]が150以上であるカーボンブラックが挙げられる。DBP吸油量[mL/100g]は、カーボンブラックのストラクチャーの発達度を示す指標である。この数値が大きい材料は、カーボンブラック粒子同士が直鎖上に繋がりやすく、それによりストラクチャー間に空隙が多く存在することを意味するため、より少量の含有量でも導電パスが形成され、導電性を付与することができるため好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量[mL/100g]は、より好ましくは250以上、さらに好ましくは350以上である。カーボンブラックのストラクチャーが発達し導電パスが形成されると、電磁波の照射を受けて電界が生じた際に、誘電体である基材と導電性材料との界面で電荷が蓄積され、電磁波抵抗体である導電性材料による電磁波エネルギーの熱エネルギーへの変換が行われることで、電磁波吸収による高いシールド性が発揮される。DBP吸油量の上限は特に限定されるものではないが、導電性材料を構成する高分子材料中に分散した際にストラクチャーが破壊される場合がある点を考慮すると、800[mL/100g]以下であることが好ましい。なお、DBP吸油量はASTM D 2414-79に準じて測定することができる。このような導電性の球状カーボンとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどとして市販されているものを使用することができる。
【0042】
本発明の積層シートに使用できる前記導電性材料と異なる無機成分を主体とする電磁波遮蔽材料として、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、亜鉛、錫などの金属単体、および、これらの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属酸化窒化物、金属水酸化物、金属酸化ホウ化物、金属カルボニル、有機金属錯体などを使用することができる。特に、好ましい成分として、透明な導電性金属酸化物として知られる、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ステンレス材料や有機金属錯体として、カルボニル鉄、ヘキサシアノ鉄、アミノ鉄なども使用することができる。これら無機金属系の磁性材料も、前記カーボン材料の思想と同じく、展延した扁平状の材料を使用することが、本発明の積層シートにおいてより電磁波シールド性を高めることができることから好ましい。
【0043】
さらに、本発明の積層シートに用いる添加剤として、電荷を蓄積する能力に優れる誘電体材料を添加することもできる。誘電体材料は、照射された電磁波に対して抵抗を与え直接的に電磁波が有するエネルギーを損失させる効果を有する材料ではない。しかし、後述のとおり、特定の周波数帯域の電磁波を遮蔽するためには、積層シートの相対的に高い誘電率を示す層の誘電率の実数項εh’および虚数項εh’’を特定の範囲に制御することが好ましく、このとき、誘電率の実数項εh’および虚数項εh’’が添加濃度に合わせて共に数値変動する傾向がある導電性材料だけではなく、誘電率の実数項εh’を選択的に向上することができる誘電体材料を用いることで、より高度に複素誘電率の数値を制御できることから好ましい。ここで利用できる誘電体材料としては、ペロブスカイト構造やルチル型構造を有する、酸化マグネシウムや酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化チタン、酸化鉄(フェライト)、ビスマスフェライト、等が挙げられるが、酸化チタン、フェライト、チタン酸バリウムなどが汎用的で高誘電率を示すことから好ましい。
【0044】
本発明の積層シートに用いる電磁波抑制材料は、前記有機カーボン系の導電性材料、無機成分を主体とする電磁波遮蔽材料、誘電体材料のうち2種類以上の材料を併用して用いていることが好ましい。これは、後述する高誘電率を示す層の誘電率を、高い電磁波減衰量を示す好ましい範囲へと制御する際に、単独の材料で含有濃度を変更するのみでは、誘電率の実数項と虚数項の関係は誘電率平面において線形的な挙動しか示さず、特定の範囲に制御することが困難となる。そこで、前記と異なる誘電率の実数項と虚数項の線形関係を示す材料を併用して用いることで、誘電率平面上で2次元的に誘電率の実数項および虚数項を制御できるようになることから、より減衰量の高い積層シートへと設計することが容易となる。このとき、導電性材料同士で異なる材料を併用しても良く、導電性材料に加えて無機成分を主体とする電磁波遮蔽材料あるいは誘電体材料を併用してもよい。特に、複素誘電率が高い、酸化鉄、チタン酸バリウム、酸化チタン、カルボニル鉄などは、複素誘電率の虚数部の数値を上げることなく実数部を高くすることができ、炭素材料と併用することで誘電率をよりドラスティックに調整できることから、第2の材料として好ましく使用することが出来る。
【0045】
これら電磁波遮蔽材料の含有量は、電磁波遮蔽性能と積層シート自体の強度を両立する観点から、積層シートを構成する全成分を100質量%としたとき、1重量%以上15重量%未満含まれていることが好ましい。一般に、高い導電性を得る場合には導電性材料の含有量は多くする必要があるが、導電性材料の含有量が多いと高導電性が得られる一方で、製膜性・加工性が著しく損なわれ、シート自体が脆弱化する場合がある。反対に、導電性材料の含有量が少なすぎると電磁波シールド性の効果が十分に得られないことがあることから、導電性材料の含有量としては1重量%以上15重量%未満含有してなることが好ましい。より好ましくは、1.5重量%以上10重量%未満であり、さらに好ましくは2重量%以上5重量%未満である。なお、積層シートが複数種の電磁波抑制材料を含む場合における電磁波抑制材料の含有量は、全ての電磁波抑制材料を合算して算出するものとする。
【0046】
本発明の積層シートに含有する導電性材料は、先述の通り、A層、B層のどちらか1層のみに含有されていてもよく、A層とB層の両方に含有されていても良いが、A層もしくはB層のうち、双方ともに導電性材料が含有されて導電性が高い層となる場合、積層シートの各層の界面における誘電分極の効果が十分に得られず、積層シート全体として単膜の電磁波シールド材料と類似の効果を示すこととなり、所望の周波数のみの急峻な電磁波シールド性を得ることができない場合がある。また、表層に位置する層の導電性・誘電率が上がるため、電磁波の表面反射が発生し、積層シート全体として導電性材料を同濃度含み、B層により多くの導電性材料を含有させた積層シートと比較すると、導電性材料による電磁波吸収の効果が低減する場合がある。そのため、A(BA)nの繰り返しユニットを有する積層シートとした場合、表層にあたるA層に含有する導電性材料の量は、表層にあたらないB層に含有する導電性材料の量よりも少ないことが好ましい。より具体的には、A層に含有される導電性材料の総含有量の和が積層シート全体の重量に対して1重量%以下であり、B層に含まれる導電性材料の含有量の和が積層シート全体の重量に対して1重量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、A層とB層の導電性材料の含有量の差が大きく、特に、A層には導電性材料を含まず、B層のみに導電性材料を含む態様である。
【0047】
本発明の積層シート内には、前記導電性材料/磁性材料/誘電体材料以外にも、必要に応じて、分散剤、表面改質剤、滑剤、架橋剤、加硫促進剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、光吸収剤(紫外線吸収剤、色素、熱線吸収剤など)、流動改質剤(可塑剤、増粘剤)、アンチブロッキング剤などが、積層シート本来の特性が損なわれない範囲で含有されていても良い。なお、積層シート本来の特性が損なわれない限り、これらの成分はA層、B層、A層およびB層以外の層のいずれに含有されていてもよい。
【0048】
本発明の積層シートは、前記A層を少なくとも一方の表層に有することが好ましい。導電性の低いA層を表層に設けることで、誘電率の高いB層による反射の効果を抑制し、積層シートに照射した電磁波を効率よく積層シート内に透過させることができ、電磁波吸収シートとしての積層シートの効果を十分発揮させることができる。A層を表層片側にのみに配するか、両側に配するかは積層シートを電磁波吸収材料として使用する際の実用性を鑑みて適宜選択することができる。
【0049】
本発明の積層シートの電磁波シールド性および周波数帯域は、式(3)、式(4)に示すインピーダンスZin、および、それにより算出される反射減衰量Γで求めることができる。また、式からわかる通り、ZinならびにΓは、シート全体の誘電率、透磁率および厚みに依存する。そのため、薄膜で高い電磁波遮蔽性能を達成するためには誘電率の実数部ε’と透磁率の実数部μ’の積が高い数値を示す必要がある。なお、式(3)及び式(4)において、Z0は大気の特性インピーダンス、dは積層シートの厚み、λは波長、μは積層シート全体の透磁率、εは積層シート全体の誘電率をそれぞれ示し、Z0の値は377Ωである。
【0050】
【0051】
【0052】
積層シート全体の誘電率、透磁率は、誘電分極を起こすために交互に配されるA層とB層の誘電率の設計に影響を与える。具体的には、A層とB層の誘電率の差が十分大きく、かつ、相対的に高い誘電率を示す層の誘電率の実数部εh’と虚数部εh’’を制御することが電磁波シールド性の調整に極めて有効となる。特定のシート厚みで特定の周波数帯域に対して高い電磁波シールド性を示す領域は、式(3)および式(4)をベースに算出することができる。さらに、積層シートが高い電磁波シールド性を示すためには、A層とB層のうち、相対的に誘電率が高い層の誘電率の実数部εh’と虚数部εh’’が、(A)式もしくは(B)式の関係式を満足することが好ましい。
(A) εh’’≧1、かつ、0.17εh’+2.3≦εh’’≦0.27εh’+3.3
(B) 5≧εh’’≧1、かつ、0.02εh’+1≦εh’’≦0.07εh’+1.9
相対的に誘電率が高い層の誘電率の実数部εh’と虚数部εh’’をこの範囲に制御することで、シート厚みが薄い場合でも、特定の周波数において高い電磁波シールド性を実現することが可能となる。
【0053】
本発明の積層シートの誘電率の実数部ε’、後述の虚数部ε’’ならびに、透磁率の実数部μ’は、実施例の「誘電率測定」の項記載の方法により測定することができる。なお、各層の誘電率の実数部、虚数部(εh’、εh’’)は、上記方法及び実施例の「各層の誘電率の算出」に記載の方法により測定することができる。簡潔に述べると、測定したい周波数に合わせて導波管若しくはレンズアンテナの治具を用い、電磁波発生装置から発せられる電磁波が導波管内もしくはレンズアンテナ間に設置した試料に入射した際の電磁波の反射・伝送特性を、既知のSパラメータ法に則って算出することで得られる。なお、測定装置や計算ソフトは測定や計算が可能なものであれば特に制限されず、例えば実施例に記載の装置やこれらの装置に付随の計算ソフト等を用いることができる。この場合、誘電率の実数項ε’、虚数項ε’’、は、計算ソフトによって自動的に計算される値を読み取ることで求めることができる。
【0054】
相対的に誘電率が高い層の誘電率の実数部εh’と虚数部εh’’を、上記(A)式もしくは上記(B)式の関係式を満足するように制御する方法は、例えば、導電性材料としてDBP吸油量が後述の範囲を示すカーボンブラックを用いたり、誘電体材料としてチタン酸バリウムや酸化フェライト、酸化チタンを用いたり、磁性材料としてカルボニル鉄を用いたり、アスペクト比の高い導電性材料である黒鉛やグラフェン等を利用して、誘電率を向上させることが挙げられる。特に(A)式を満足するためには、誘電率の実数部εh’と虚数部εh’’を共に高めることが求められるため、カーボンブラックを用いることが好ましく、(B)式を満足するためには、誘電率の虚数部εh’’は低いことが求められるため、チタン酸バリウムやフェライト、酸化チタンなどの誘電体材料、また、黒鉛やグラフェンなどのアスペクト比の高い導電性材料を少なくとも1種類、単独あるいは併用して用いることで達成できる。さらに、後述の延伸方法を用いて、1層あたりの層厚みを薄くしたり、スリットを有するフィードブロックを介して多層積層シートの層数を増やし、導電性材料および/または磁性材料をシートの面方向に分散・配向する態様とすることでも達成できる。
【0055】
本発明の積層シートは、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの半値幅をfΔ[GHz]、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量RL[dB]との比RL/fΔが、5.0以上であることが好ましい。RL/fΔは、反射減衰ピークの急峻さを示す指標であり、RL/fΔをかかる範囲とすることで、電子機器や通信機器などに実装した際に所望の電磁波領域だけをシールドする材料とすることができる。RL/fΔは、A層および/またはB層の層厚みのむらを小さくしたり、樹脂の組合せ、導電性材料として高いDBP吸油量や高アスペクト比の材料の使用、積層数増加などにより、導電性の高い層と導電性の低い層の誘電率差を大きくすることで高めることができ、これらの比RL/fΔは、より好ましくは10.0以上、さらに好ましくは20.0以上である。最大となる反射減衰ピークにおけるRL/fΔが5より低い場合、従来品のように、広い周波数帯域に対して電磁波シールドする材料を意味し、特定の周波数の電磁波のみ減衰したい場合において、望ましくない周波数帯域での電磁波シールドを招く場合がある。最大となる反射減衰ピークのRL/fΔの上限値は特に制限されないが、急峻さが非常に高い場合、わずかな積層シート厚み変化や導電性材料の濃度変化により、ピークトップ位置が敏感にシフトする場合があり、所望の電磁波シールド性が得られなくなる可能性がある。そのため最大となる反射減衰ピークにおけるRL/fΔは、200未満を示していることが好ましい。半値幅は、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークの周波数にも依存するが、小さい方が特定の周波数のみをカットできる本発明の積層シートとして好ましく、具体的に、半値幅fΔ[GHz]は10.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0056】
なお、本発明の積層シートにおいて、ピークトップの反射減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップの周波数は、導電性を示す層の誘電率/透磁率によって決定されるため、導電性材料の種類や含有量のみならず、交互に積層する導電性の異なるA層、B層の厚みにより制御することができる。電子機器、通信機器、交通機関は、その用途によって減衰させたい周波数、減衰させたくない周波数は異なるところ、本発明の積層シートは、電磁波遮蔽をすべき周波数を容易に制御できるため、電子機器、通信機器、交通機関に好適に用いることができる。
【0057】
本発明の積層シートは、B層の層厚みの平均値をtB[mm],標準偏差をtBσ[mm]とした際の、変動係数tBσ/tBが0.3以下であることが好ましい。前述の通り、A層が表層に位置する構成であり、表面抵抗値がB層より高い層である場合、導電性を示すB層が電磁波吸収による電磁波シールドを担う主たる層となるが、これらの層の厚みが各層間でばらついている場合、各層ごとに誘電率が異なることで、シールド性が得られる電磁波の周波数にばらつきを生じる。導電性を示すB層の厚みを変動係数tBσ/tBが上述の範囲となるように揃えると、誘電率が一定の値を示す層が重なり合うため、電磁波シールド性に急峻性を出すことができ、高い電磁波減衰量で周波数選択性が得られるため好ましい。層厚みのバラツキを示す変動係数tBσ/tBは0.2以下であることが好ましく、より好ましくは0.1以下である。熱可塑性樹脂から構成される積層シートの場合は、ミキサーを使用して積層数を増やすのではなく、スリットタイプのフィードブロックを用いることで変動係数を低くすることができる。変動係数tBσ/tBの下限には特に制限はないが、積層シートの生産性に照らせば、0.01以上とすることが実用的である。
【0058】
また、本発明の積層シートのA層は、層厚みに関する制限はないものの、B層内に含まれる導電性材料の存在する距離よりも薄い層となる場合、誘電性を示すA層と導電性を示すB層の間でのマクロな誘電分極の効果が得られず、電磁波損失が低下する場合がある。そのため、A層の平均厚みをtA[mm]とした場合、tA≧tBと設計することが、確実に隣接するB層間を十分隔てることができるため、好ましい。
【0059】
本発明の好ましい態様として、前述の積層シートと反射板を有する電磁波シールド体を挙げることができる。反射板は、電磁波を反射する機能を有した板状の材料であって、積層シートの電磁波入射面と反対面に組み合わせることで、電磁波を積層シート内に往復させる形となるため、電磁波吸収効率を高めることができる。一方で、反射板を前面に配置する場合、ある程度の電磁波を反射板表面で反射させ、透過した一部の電磁波を積層シート内で急峻にシールドする態様も可能である。本発明の積層シートの電磁波吸収特性を十分生かすためには、前者の構成であることがより好ましい。
【0060】
反射板は、電磁波を反射することができるものであれば、構成材料は特に限定されない。構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、金などの金属、ステンレスなどの合金、カーボン膜などが挙げられる。当該反射板は、金属または合金を含有してなるもの、もしくは、カーボンを含有してなるものであれば、形状や厚みは限定されない。形状は、適用する材料に合わせるべきであるが、平面、曲面、半球などの板状とすることができる。
【0061】
反射板の例としては、金属,合金,カーボンを含むプレート反射板、高分子フィルム,シート,板などの表面に金属,合金,カーボンからなる膜が形成された積層タイプの反射板、高分子フィルム,シート,板などの内部に金属,合金,カーボンを分散させた複合型の反射板、高分子フィルム,シート,板などの内部に金属,合金からなる網状体を含む複合型反射板などが挙げられる。また、本発明においては、各用途における支持体、筐体などが金属,合金,カーボンなどを含んでいる場合、そのまま反射板として利用することもできる。
【0062】
本発明の好ましい態様として、4G/5G通信、無線LAN、衝突防止(ITS)レーダー、などで利用される電磁波による虚像防止、コンピュータ、携帯電話、無線機、医療機器、車両バンパーなどの筐体の内部に備わる電子機器からの不要な電磁波の輻射低減、隣接する機器からの輻射による装置誤作動の防止などの目的で、前述の積層シート、または、前述の電磁波シールド体を有する電子機器、通信機器を挙げることができる。その他、GHz帯域の周波数を利用する電子機器もしくは通信機器であれば、上記に限らず本発明の積層シートを搭載して使用することができる。
【0063】
さらに、本発明の好ましい態様として、前述の積層シート、または前述の電磁波シールド体を有する車両や航空機、船舶などの移動手段、ビル、トンネルやガードレール、高速道路、橋梁、鉄塔などの構造物の壁面、電信、電話などの通信施設などの交通機関を挙げることが出来る。本発明の積層シートを適用する方法としては、接着剤などを介して直接、もしくは他のシート、シールド板、パネルなどを介して、床、天井、壁、柱などの構造物に貼り付けるなどの方法を用いることができる。その他、外部からの電磁波ジャミング・ノイズによる影響を防ぐためのシールドルームの壁材や窓材としても用いることもできる。
【0064】
次に、本発明の積層シートの交互積層ユニットの好ましい製造方法を以下に説明する。もちろん、本発明は以下に説明する例に限定して解釈されるものではない。
【0065】
ゴムや熱可塑性エラストマーなどを基材のベースポリマーとして利用する場合の交互積層ユニットの製造方法の一例を下記する。ベースポリマーに、導電性材料を所定量配合し、ニーダーやバンバリーミキサー、ミルミキサー、ロールミル、ジェットミル、ボールミルなどの公知の装置で混錬し含有させることで、導電性材料含有ポリマーを作製する。ベースポリマー単体、もしくは、作製した導電性材料含有ポリマーを、それぞれバッチプレスによる圧延や溶融押出により、所望の厚みのシートへ成形する。その後、作製したA層に対応するシート、ならびに、B層に対応するシートを、重ね合わせ、プレスまたはラミネートすることで、所望の積層された交互積層ユニットを得る。融着温度は、使用する樹脂にも依るが、150℃~400℃の温度範囲が好ましく、250~380℃がより好ましい。
【0066】
本発明において好ましく用いられる可撓性を示す熱可塑性樹脂を使用する場合の交互積層ユニットの製造方法の一例を下記する。ペレットの状態で準備された熱可塑性樹脂ならびに所定量の導電性材料は、二軸押出機を用いての混錬ののち、ガット状で押出され、水槽内で冷却されたのち、チップカッターでカットされることで導電性材料含有のマスターペレットが形成される。このとき、導電性材料は樹脂と共にドライブレンドしたうえでホッパーより計量フィードしてもよく、押出機の任意の位置からサイドフィーダを用いて溶融した樹脂中にサイドフィードしても良い。使用する導電性材料の比重や形状にあわせて適宜選択することができる。
【0067】
A層ならびにB層を構成するそれぞれの熱可塑性樹脂は、熱風中あるいは真空下で乾燥した後、別々の押出機に供される。押出機において融点以上に加熱溶融された各樹脂は、ギヤポンプなどで均一の押出量で吐出され、フィルターなどで介して異物や変性した樹脂などが除去される。これらの樹脂は所望の積層数へと積層できる多層積層装置を介して、ダイにて目的の形状に成形されたのち、シート状に吐出される。ダイから吐出されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押出され、冷却固化されることでキャストシートが得られる。この際、キャストシート自体は導電性を示すことから、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出しキャスティングドラムなどの冷却体に密着させ急冷固化させる方法、もしくは、ニップロールにて冷却体に密着させて急冷固化させる方法が好ましい。
【0068】
多層積層装置としては、前述のとおり、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の多層積層構造を効率よく得るためには、微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物発生量が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となる。また、フィードブロックで積層体を形成した後、スタティックミキサーを介して積層数が倍増するように重ね合わせて積層数を増やす方法も好適に利用できる。この場合、重ね合わせた各積層体の層厚みは全く同じものとなるため、積層厚みを揃えることが好ましい本発明の思想に適する。
【0069】
得られたキャストシートは、必要に応じて、つづいて長手方向および幅方向に二軸延伸することができる。延伸は、逐次に二軸延伸しても良いし、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0070】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、シートに長手方向の分子配向を与えるための延伸を指し、通常は、ロールの周速差により施され、1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~15倍が好ましく、1.5~4倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては交互積層ユニットを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃の範囲内に設定することが好ましい。
【0071】
このようにして得られた長手方向に延伸された交互積層ユニットに対して、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、上部に積層する膜との密着性を向上するためのプライマー層を形成することができる。インラインコーティングの工程において、プライマー層は片面に塗布してもよく、両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布しても良い。
【0072】
幅方向の延伸とは、シートに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に引き延ばす。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、1.1~15倍が好ましく、1.5~6倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては交互積層ユニットを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。こうして二軸延伸された交互積層ユニットは、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、低配向角およびシートの熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷する際に、長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
【0073】
つづいて、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストシートに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティングの工程において、易接着層は交互積層ユニットの片面に塗布してもよく、交互積層ユニットの両面に同時あるいは片面ずつ順に塗布しても良い。
【0074】
次に、キャストシートを、同時二軸テンターへ導き、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として2~50倍が好ましく、特に4~20倍の面積倍率が好ましく用いられる。延伸速度は同じ速度でもよく、異なる速度で長手方向と幅方向に延伸してもよい。また、延伸温度としては交互積層ユニットを構成する樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
【0075】
こうして同時二軸延伸された交互積層ユニットは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷する際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
【0076】
作製した交互積層ユニットは、所望の電磁波シールド性を得るために、同じ交互積層ユニット同士、または、異なる厚み、組成を有する交互積層ユニット同士を接着シート、粘着シート、両面テープなどを介して貼り合せることもできる。
【0077】
さらに、交互積層ユニットの最表面には、電磁波透過性を高める、または、電磁波反射を起こすなどの目的で、誘電率の異なる層を積層することができる。この時、適した導電性/磁性を示す材料を含有させたコーティング層を塗布しても良く、粘着シートなどを介して異なる樹脂層/メッシュ層などを積層してもよく、フィルム金属被覆技術として使用される、スパッタリング(平面または回転マグネトロンスパッタリングなど)、蒸発(電子ビーム蒸発など)、化学蒸着、有機金属化学蒸着、プラズマ強化/支援/活性化化学蒸着、イオンスパッタリング等で樹脂/金属層を積層することもできる。
【0078】
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。各特性は、以下の手法により測定した。
【0079】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0080】
(1)層厚み、積層数、積層構造
積層シートの層構成は、積層シートを構成する各層の層厚みに合わせて、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、微分干渉顕微鏡観察あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。前者において、より具体的には、積層シートを構成する各層の厚みが1μm以上である場合には、Leica社製の微分干渉顕微鏡“DMLBHC”を用いて、倍率1000倍(接眼レンズ10倍、対物レンズ100倍)の条件で積層シートの断面を観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。測長は、粒径解析ソフト“Macview”(マウンテック社製)を用い、層厚みの測定はコントラスト差が明瞭に判別できる層界面間の垂直距離を計測した。ランダムに5カ所のデータを計測し、各層の厚みの平均値を実測データとして用いた。粒子長径は、画像内で確認される粒子が形成する高次構造の最も長い距離を計100点計測し、平均したデータを用いた。後者の透過型電子顕微鏡(TEM)観察については、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件で積層シートの断面を観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込まれるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率にて観察を実施し、層厚み、積層数、積層構造を特定した。また、得られた画像のうち、特定の断面におけるB層の各層の厚みを読みとり、層厚みの平均値ならびに標準偏差を算出した。異なる5か所の断面におけるB層の層厚みの平均値ならびに標準偏差を算出し、5か所の計算値の平均を、平均値tB[mm]、標準偏差tBσ[mm]として採用した。
【0081】
(2)反射減衰量測定
測定周波数帯域に併せて、下記のとおり測定ユニットを変更して測定を実施した。また、得られた結果を基に縦軸を反射減衰量、横軸を周波数としてプロットされる周波数-反射減衰量曲線を求めた。
【0082】
(2-1)1GHz~40GHzの周波数帯域
アジレント・テクノロジー(株)製のベクトルネットワークアナライザ(E8361A)を用い、積層シートの反射減衰量を計測した。0.5GHz~18GHzの周波数帯域は外径φ7mm、内径φ3.04mmのドーナツ状である同軸導波管を、18~26.5GHzの周波数帯域は4.32mm×10.67mmの長方形である矩形導波管を、26.5~40GHzの周波数帯域は内部形状が3.56mm×7.11mmの長方形である矩形導波管を、それぞれ用いて測定した。測定時の周波数の刻み幅は、各周波数帯域において200個の周波数での測定が可能であるように設定して測定した。試料である積層シートの背面には、3mmのアルミニウム金属板を設置し、積層シートによる電磁波吸収がない状態では入射した電磁波が全反射する状態とした。入射した電磁波に対して反射した電磁波の強度比を表すS11のSパラメータ値を用いて反射減衰ピークを解析した。
【0083】
(2-2)40~110GHzの周波数帯域
150mm角の積層シートに対し、背面にアルミニウム金属板を貼り合せ、測定サンプルを作製した。キーコム社製のレンズアンテナ方式斜入射タイプの電磁波吸収体(電磁波吸収材料)・反射減衰量測定装置LAF-26.5Bを用いて、JIS R 1679に準拠し、斜入射15°で電磁波を照射し、33~50GHz(WR-22)、50~75GHz(WR-15)、75~110GHz(WR-10)の各周波数帯域に対して反射減衰量を測定した。なお、当該測定方法では33~40GHzの周波数帯域の値も得ることができるが、33GHz以上40GHz未満の周波数帯域における反射減衰量は、(2-1)における測定データを用いた。
【0084】
(3)誘電率測定
積層シートに対し、測定周波数ごとに、下記のとおり測定ユニット・測定方法を変更して解析した。
【0085】
(3-1)1GHz~40GHz周波数帯域
アジレント・テクノロジー(株)製のベクトルネットワークアナライザ(E8361A)を用いた。0.5GHz~18GHzの周波数帯域は外径φ7mm、内径φ3.04mmのドーナツ状である同軸導波管を、18~26.5GHzの周波数帯域は4.32mm×10.67mmの長方形である矩形導波管を、26.5~40GHzの周波数帯域は内部形状が3.56mm×7.11mmの長方形である矩形導波管を、それぞれ用いた。積層シートサンプルを、打ち抜き加工し、前記各導波管の内部に垂直に挿入して測定した。測定時の周波数の刻み幅は、各周波数帯域において200個の周波数での測定が可能であるように設定した。複素誘電率は、装置付属の解析ソフトN1500A-001を用いて解析した。
【0086】
(3-2)40~110GHz周波数帯域
150mm角の積層シートを用いた。キーコム社製の周波数変化法を利用したレンズアンテナ方式の比誘電率・減衰量測定装置LAF-26.5Aを用いて、33~50GHz(WR-22)、50~75GHz(WR-15)、75~110GHz(WR-10)の各周波数帯域に対して複素誘電率を測定した。なお、当該測定方法では33~40GHzの値も測定されるが、33GHz以上40GHz未満の周波数帯域における複素誘電率は、(3-1)における測定データを用いた。
【0087】
(4)表面抵抗値測定
(4-1)高抵抗値測定
抵抗値の高い領域(1.0×106~1.0×1013[Ω/□])に対しては、三菱化学(株)製の高抵抗率計Hiresta-UP(MCP-HT450)を用いて計測した。10cm四方にカットした積層シートの表面に対し、URSプローブ(MCP-HTP14)を押し当てて、JIS K 6911(1995)に準拠して抵抗値を測定した。測定位置を変化させながら試料数5で測定し、得られた5個の測定値の算術平均値を用いた。
【0088】
また、内層の表面抵抗値を計測する際は、透過型電子顕微鏡で確認した最表層の厚さ分、研磨装置で表面を研磨した後、プローブを押し当てて計測した。
【0089】
(4-2)低抵抗値測定
抵抗値の低い領域(1.0×106~1.0×10-1[Ω/□])に対しては、三菱化学(株)製の低抵抗率計Loresta-EP(MCP-T360)を用いて計測した。10cm四方にカットした積層シートの表面に対し、ASPプローブ(MCP-TP03P)を押し当てて、JIS K 7194に準拠して抵抗値を計測した。測定位置を変化させながら試料数5で測定し、得られた5個の測定値の算術平均値を用いた。
【0090】
(5)DBP吸油量
積層シートを基材の樹脂が溶解できる溶媒に溶解し、抽出・分離したカーボン系導電性粒子に対し、Brabender社製のアブソープトメータC型を利用し、ASTM D2414-79に準拠して計測した。ミキサー内に投入したカーボン系導電性粒子を回転数125[min-1]で混錬しながら、DBPを4[mL/min]の滴下速度で滴下し、得られた粘度カーブを基に解析されたDBP吸油量を読み取った。
【0091】
(6)各層の誘電率の算出
積層シートの構成を等価電気回路に置き換えた場合のインピーダンスを、A層およびB層の誘電率、透磁率、層厚みの値を代入することで算出できるマクロソフトを作成し、用いた。得られたインピーダンスZinを無反射条件式と反射減衰量を基にした式(4)に代入することで、反射減衰量Γを算出する計算を、一定の周波数帯域にわたって連続的に計算するマクロを作成した。そして、(2)項に記載の手法で測定した反射減衰スペクトルと一致するように、各層の誘電率および透磁率を設定し、最も反射減衰スペクトルが近似するときの誘電率・透磁率を読み取り、各層の誘電率・透磁率を決定した。なお、誘電率の算出が困難のときは、実施例の相対的に高い誘電率を示す層と同一組成で、単層シートを作製し、前記したベクトルネットワークアナライザーを用いた周波数変化法により、透過減衰量の最小値を示す周波数を特定する。この最小値は、シート厚みを透過する実行波長の1/2の整数倍であることから、誘電率を求めた。キーコム社周波数変化法による自由空間測定の誘電率測定システム(Model No. DPS10)の付属ソフト(SFW05)でも同値を確かめることができる。
【実施例】
【0092】
(参考例1)
三井化学(株)製のエチレン-プロピレン-ターポリマーゴム100重量部を用いてプレス成型し、厚さ0.5mm、200mm角のシートAを作製した。一方、三井化学社製のエチレン-プロピレン-ターポリマーゴム90重量部に対し、一次粒子径が40nm、DBP吸油量360のカーボンブラック(球状カーボン)導電性材料を10重量部配合し、2本ロールミルを用いて混錬し、導電性材料を含有したゴムを調製した後、当該導電性材料含有ゴムをプレスし、厚さ0.5mm、200mm角のシートBを作製した。これらのゴム成形シートを、シートA,シートB,シートA,シートB,シートAの順に、5層重なるように250℃で熱圧着させることで、5層に積層された厚さ2.5mmの積層シートを得た。この積層シートを用いて反射減衰量測定を行ったところ、ピークトップの周波数を30GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークトップの反射減衰量が12dBであり、その半値幅は2GHzであった。
【0093】
(比較例1)
三井化学(株)製のエチレン-プロピレン-ターポリマーゴム96重量部に対し、参考例1で使用した一次粒子径が39.5nm、DBP吸油量360の球状カーボン導電性材料を4重量部配合し、2本ロールミルを用いて混錬し、導電性材料含有ゴムを調製した後、導電性材料含有ゴムをプレスし、厚さ2.5mm、200mm角のシート状に成型することで単膜シートを作製した。
【0094】
反射減衰量測定を行ったところ、参考例1と比べて、ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップの周波数帯域は参考例1と同じであったが、反射減衰ピークトップの反射減衰量が7dB、その半値幅が5GHzと帯域が広く、弱い反射減衰ピークであった。
【0095】
(参考例2)
メルトフローレイト30を示すホモ・ポリプロピレン樹脂90重量部に対し、参考例1で使用した球状カーボン系導電性材料を10重量部配合し、当該導電性材料がサイドフィードで供給される二軸押出機を用いて混錬を行い、導電性マスターペレットを作製した。
【0096】
A層側に用いる樹脂として、メルトフローレイト30を示すホモ・ポリプロピレン樹脂を、B層側に用いる樹脂として、前記導電性マスターペレットを用いた。準備したポリプロピレン樹脂および導電性マスターペレットをそれぞれ、二軸押出機へ投入し、各々の二軸押出機では270℃で溶融混練した。各々の二軸押出機における混錬条件は、吐出量に対するスクリュー回転数を0.7とした。次いで、押し出された樹脂を9個のマルチマニフォールドタイプのフィードブロックにて合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に9層積層された厚さ1mmの交互積層ユニットとした。得られた交互積層ユニットは、A層が計5層、導電性材料を含むB層が計4層となるように構成されており、厚さ方向に交互に積層されていることを透過型電子顕微鏡観察により確認した。また、層厚みは厚さ方向の中央に近いほど厚みが大きくなっており、各層の厚みのばらつきが大きいものであった。
【0097】
作製した交互積層ユニットを、厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、粘着層含めて合計19層の積層シートとした。反射減衰量測定を行ったところ、ピークトップの周波数を26GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークトップの反射減衰量が16dB、半値幅が2GHzであった。
【0098】
(比較例2)
参考例2で用いたメルトフローレイト30を示すホモ・ポリプロピレン樹脂95重量部に対し、参考例2で用いた球状カーボン導電性材料を5重量部含有させ、導電性マスターペレットを作製し、本導電性マスターペレットをA層およびB層の樹脂として各々を参考例2で用いた二軸押出機へ投入し、参考例2と同様の条件でA層とB層との交互積層ユニットを作製し、A層とB層とが同じ材料で構成された厚み1mmの疑似単膜シート(表では、A層のみからなると表記)を作製した。反射減衰量測定を行ったところ、ピークトップの周波数を65GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークトップの反射減衰量が11dBであり、半値幅が10GHzであった。
【0099】
(比較例3)
比較例2で作製した疑似単膜シート(表では、A層のみからなると表記)を厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、疑似単膜シート2層、粘着層1層の合計3層の積層シートとした。反射減衰量測定を行ったところ、ピークトップの周波数を36GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークトップの反射減衰量が13dBであり、半値幅が5GHzであった。
【0100】
(実施例3)
参考例2において、フィードブロックとして、31個のスリットを有するフィードブロックを用い、積層比1.0の厚さ方向に交互に31層積層した以外は、参考例2と同様にして厚み1mmの交互積層ユニットを得た。得られた交互積層ユニットは、A層が16層、導電性材料を含むB層が15層となるように厚さ方向に交互に積層されていることを、透過型電子顕微鏡により確認した。また、積層厚みは、参考例2のマルチマニフォールドタイプのフィードブロックを使用した場合と比べて、B層の層厚みの変動係数が少なくなっていたが、樹脂のチキソトロピー性の影響により、やや積層乱れのある交互積層ユニットとなった。
【0101】
作製した交互積層ユニットを、厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、粘着層も含めて合計63層の積層シートを得た。反射減衰量測定を行ったところ、層数が増えた効果で、ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量が20dBであり、半値幅が2.1GHzであった。
【0102】
(実施例4)
実施例3において、31層のスリットを有するフィードブロックで合流した後、厚み方向へ積層数を倍増するスタティックミキサーを1段介して積層数を61層に層数を増やした以外は、実施例3と同様にして厚み1mmの交互積層ユニットを得た。得られた交互積層ユニットは、A層が31層、B層が30層の厚さ方向に交互に積層されたユニットを形成していることを、透過型電子顕微鏡により確認した。31層の積層体同士が合流する部分は、A層の厚みが2倍に厚くなっていた。B層の積層厚みの変動係数は、実施例3と同程度であったが、実施例3よりも積層乱れの強い交互積層ユニットとなった。
【0103】
作製した交互積層ユニットを、厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、粘着層も含めて合計123層の積層シートを得た。反射減衰量測定を行ったところ、実施例3よりもピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量が24dBと高くなった。
【0104】
(実施例5)
B層を構成する樹脂として、融点254℃、固有粘度IVが0.63を示すポリエチレンテレフタレート樹脂90重量部に対し、参考例1で使用したカーボン系導電性材料を10重量部配合し、当該導電性材料がサイドフィードで供給される二軸押出機を用いて混錬し、導電性マスターペレットを作製した。A層を構成する樹脂として、融点254℃、固有粘度IV0.8を有するポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、B層を構成する樹脂として、前記導電性マスターペレットを用いた。準備した樹脂をそれぞれ、二軸押出機へ投入し、各々の二軸押出機では280℃で溶融混練した。次いで押出された樹脂を31個のスリットを有するフィードブロックにて合流、スタティックミキサーを1段介して、積層比1.0の厚さ方向に交互に61層積層された厚さ1mmの交互積層ユニットとした。実施例4と比較して、チキソトロピー性を示しにくい樹脂を用いたことで、積層乱れのほとんどない交互積層ユニットを得た。
【0105】
作製した交互積層ユニットを、厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、粘着層も含めて合計123層の積層シートを得た。反射減衰量測定を行ったところ、ピークトップの周波数を27GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、また、実施例4より急峻なピークトップが確認できた。
【0106】
(参考例7)
実施例5において、融点254℃、固有粘度IVが0.8を示すポリエチレンテレフタレート樹脂99重量部に対し、実施例1で使用した球状カーボン導電性材料を1重量部配合した導電性マスターペレットをA層の樹脂として用い、融点254℃、粘度IVが0.63を示すポリエチレンテレフタレート樹脂91重量部に対し、球状カーボン導電性材料を9重量部配合した導電性マスターペレットをB層の樹脂として使用した以外は、実施例5と同様にして合計123層の積層シートを得た。反射減衰量測定を行ったところ、A層の導電性がそれほど高くないため、ピークトップの周波数を26GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークは比較的急峻であった。
【0107】
(参考例8)
実施例5において、融点254℃、固有粘度IVが0.8を示すポリエチレンテレフタレート樹脂90重量部に対し、導電性材料として一次粒子径が8nm、DBP吸油量が95mL/100gを示す球状カーボン導電性材料を10重量部配合した導電性マスターペレットをA層の樹脂として用い、融点254℃、粘度IVが0.63を示すポリエチレンテレフタレート樹脂95重量部に対し、実施例1で使用した球状カーボン導電性材料を5重量部配合した導電性マスターペレットをB層の樹脂として使用した以外は、実施例5と同様にして合計123層の積層シートを得た。反射減衰量測定を行ったところ、ピークトップの周波数を25GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークは急峻性の小さいピークであった。
【0108】
(参考例3)
実施例5において、導電性材料の含有量を5重量部とした以外は、実施例5と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。含有量が少ないことで導電性が低下し、最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰ピークの周波数帯域も高周波数帯域へシフトしたが、積層構造により急峻なシールド性が得られていた。該積層シートは、ピークトップの周波数を55GHzとする最もピークトップの減衰量が大きい反射減衰ピークを有し、その反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量は18dBであった。
【0109】
(実施例9)
実施例5において、導電性材料として一次粒子径が35nm、DBP吸油量が500mL/100gを示すカーボン系導電性材料を用い、導電性材料の配合量を5重量部とした以外は、実施例5と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。よりストラクチャーを形成する導電性材料へ変更したことで、導電性が向上した一方で、チキソトロピー性が強く、積層厚みの乱れが大きくなった。該積層シートは、ピークトップの周波数を11GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有しり、その反射減衰ピークの反射減衰量が25dBと減衰量の高いピークを示した。
【0110】
(実施例10)
実施例9において、導電性材料の配合量を3.6重量部とした以外は、実施例9と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。導電性材料の配合量を少なくしたことで、チキソトロピー化は発生しなくなり、積層乱れが発生せず、層厚みのより揃った積層シートを得た。得られた反射減衰ピークは、表2に示す通りであった。
【0111】
(実施例11)
実施例5において、導電性材料として一次粒子径が44nm、DBP吸油量が220mL/100gを示すカーボン系導電性材料を用い、導電性材料の配合量を15重量部とした以外は、実施例5と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。ストラクチャーを形成しにくい導電性材料であり、高濃度含有させることで導電性が向上したが、粒子濃度増加によるチキソトロピー性が強く、積層乱れの見られる積層シートであった。該積層シートは、ピークトップの周波数を38GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、その反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量は23dBであり、RL/fΔの高い急峻なピークを有する積層シートであった。
【0112】
(比較例4)
実施例5において、導電性材料として一次粒子径が8nm、DBP吸油量が95mL/100gを示す球状カーボン導電性材料を用い、導電性材料の配合量を15重量部とした以外は、実施例5と同様にして計123層の積層シートを得た。含有した導電性材料は漆黒性を出すためのカーボン材料であり、層内の導電性は殆ど得られなかった。また、反射減衰量を測定したところピークトップの周波数を48GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、そのピークトップの反射減衰量は4.5dB、半値幅は15GHzと、反射減衰量が小さく、また全く電磁波の減衰に急峻性を示さない材料であった。
【0113】
(参考例4)
実施例5において、導電性材料として実施例5で使用したカーボン系導電性材料5重量部、さらに、平均粒径5μmのグラフェン粉末材料2重量部を配合し、これら導電性材料をサイドフィードした二軸押出機混錬を介して、導電性マスターペレットを作製した。B層の樹脂として前記マスターペレットを用いた以外は、実施例5と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。扁平状のグラフェン粉末を含有させたことで、該積層シートは、グラフェン粉末が含有された層においてシート面に平行な方向への導電性が格段に向上し、ピークトップの周波数を8GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、その反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量は36dBであり、RL/fΔの大きい急峻な反射減衰ピークを有する積層シートであった。
【0114】
(実施例13)
実施例5において、導電性材料として実施例5で使用したカーボン系導電性材料5重量部、さらに、平均粒径5μmのグラフェン粉末材料2重量部を配合し、これら導電性材料をサイドフィードした二軸押出機混錬を介して、導電性マスターペレットを作製した。B層の樹脂として前記マスターペレットを用いた以外は、実施例5と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。扁平状のグラフェン粉末を含有させたことで、該積層シートは、グラフェン粉末が含有された層においてシート面に平行な方向への導電性が格段に向上し、ピークトップの周波数を8GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、その反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量は36dBであり、RL/fΔの大きい急峻な反射減衰ピークを有する積層シートであった。
【0115】
(実施例14)
導電性材料として実施例5で使用したカーボン系導電性材料5重量部、さらに、平均径1.5nm、平均長500nmのカーボンナノチューブ材料3重量部を配合し、これら導電性材料をサイドフィードした二軸押出機混錬を介して、導電性マスターペレットを作製した。B層の樹脂として前記マスターペレットを用いた以外は、実施例5と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。アスペクト比の高いカーボンナノチューブ材料を用いたことで、該積層シートは、カーボンナノチューブが含有された層においてシート面に平行な方向への導電性が向上しており、ピークトップの周波数を6GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、その反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量は26dBであり、RL/fΔの大きい急峻な反射減衰ピークを有する積層シートを得た。
【0116】
(実施例15)
実施例13において、作製した交互積層ユニットを長手方向に90℃にて1.4倍、幅方向に100℃にて1.5倍延伸し、厚み500μmの積層シートを得た。透過型電子顕微鏡観察により、グラフェン粉末が実施例13と比べてシート面に平行な方向により配列している好ましい傾向を得た。得られた積層シートを、粘着剤を介して4枚貼り合せることで、目的の積層シートとした。透過型電子顕微鏡観察により、球状カーボン及びグラフェン粉末がいずれもシート面に平行な方向により配列している好ましい傾向を得た。誘電分極をより引き起こしやすい設計となっており、実施例13と比較して減衰量・急峻性共に高いシートとなった。
【0117】
(実施例16)
実施例13において、積層装置として、スリット長さ・幅により圧損を調整したスリット数101個のフィードブロックを用い、各層厚みの変動係数が0.18となるようにした以外は、実施例13と同様にして交互積層ユニットを作製した。得られた積層シートを、粘着剤を介して2枚貼り合せることで、目的の積層シートとした。ピークトップの周波数を23GHzとするピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークを有し、その反射減衰ピークのピークトップの反射減衰量は30dB、RL/fΔの大きい急峻な反射減衰ピークを有する積層シートを得ることができた。
【0118】
(実施例17)
実施例13において、積層装置として、スリット長さ・幅により圧損を調整したスリット数201個のフィードブロックを用いた以外は、実施例13と同様にして交互積層ユニットを作製した。作製した交互積層ユニットを、厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、粘着層も含めて合計403層の積層シートを得た。各層厚みを透過型電子顕微鏡で観察したところ、各層厚みの変動係数が0.12となっていることを確認できた。積層シートとして、表2に記載の特性を示す積層シートであった。
【0119】
(実施例18)
実施例13において、積層装置として、スリット長さ・幅により圧損を調整したスリット数501個のフィードブロックを用いた以外は、実施例13と同様に交互積層ユニットを作製した。作製した交互積層ユニットを、厚さ25μmの粘着シートを介して2枚貼り合せることで、粘着層も含めて合計1003層の積層シートを得た。各層厚みを透過型電子顕微鏡で観察したところ、各層厚みの変動係数が0.08となっていることを確認できた。積層シートとして、表2に記載の特性を示す積層シートが得られた。
【0120】
(参考例5)
導電性材料として、実施例13で使用した平均粒径5μmのグラフェン粉末材料10重量部を配合し、これら導電性材料をサイドフィードした二軸押出機混錬を介して、導電性マスターペレットを作製した。B層の樹脂として前記マスターペレットを用いた以外は、実施例13と同様の樹脂、製造方法を用いて計123層の積層シートを得た。グラフェンの高導電性のため、800MHzにおいて急峻なピークトップが見られ、高い反射減衰量を示した。
【0121】
(参考例6)
融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂95重量部に対し、一次粒径が40nm、DBP吸油量が400mL/100gを示すカーボン系導電性材料を5重量部配合し、当該導電性材料がサイドフィードで供給される二軸押出機を用いて混錬を行い、導電性マスターペレットを作製した。
【0122】
A層側に用いる樹脂として、融点254℃で固有粘度IV0.8を示すポリエチレンテレフタレート樹脂を、B層側に用いる樹脂として、前記導電性マスターペレットを用いた。準備したポリエチレンテレフタレート樹脂、導電性樹脂をそれぞれ、二軸押出機へ投入し、各々の二軸押出機では270℃で溶融混練した。各々の二軸押出機における混錬条件は、吐出量に対するスクリュー回転数を0.7とした。次いで、押し出された樹脂を11個のマルチマニフォールドタイプのフィードブロックにて合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に11層積層された溶融シートをダイから吐出した。吐出した溶融シートをキャストドラム上で冷却固化し、ドラム回転速度を調整することで、厚さ1mmの積層シートを得た。得られた積層シートは、A層が計6層、導電性材料を含むB層が計5層となるように構成されており、厚さ方向に交互に積層されていることを顕微鏡観察により確認した。積層シートの電磁波減衰性能は、表4に示す通りであった。
【0123】
(比較例5)
融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂97.5重量部に対し、一次粒径が40nm、DBP吸油量が400mL/100gを示す導電性の球状カーボン粒子を2.5重量部配合し、当該導電性材料がサイドフィードで供給される二軸押出機を用いて混錬を行い、導電性マスターペレットを作製した。本マスターペレットをダイから吐出してシート状とし、キャストドラム上で冷却固化、ドラム回転速度を調整することで、厚さ1mmの単膜シートを作製した。得られた単膜シートの性能は表3に示すとおりであり、体積則を超えるほどの格別な電磁波シールド性が得られていなかった。
【0124】
(比較例6)
比較例5において、ドラム回転速度を上げて厚さ0.5mmの単膜シートを得た。本単膜シートを厚さ0.05mmのアクリル系の粘着シートを介して2枚貼り合せることで、導電性粒子を含む層を最表層に有する3層の積層シートを得た(表では、A層のみからなると表記)。得られた単膜シートの性能は表3に示すとおりであり、3層積層品では、体積則を超えるほどの十分な電磁波シールド性が得られていなかった。
【0125】
(実施例21)
参考例6において、51個のスリットを有するフィードブロックにて2種類の樹脂を合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に51層積層された溶融シートをダイから吐出した。それ以外は、参考例6と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。得られた積層シートは、A層が計26層、導電性材料を含むB層が計25層となるように構成されており、厚さ方向に交互に積層されていることを顕微鏡観察により確認した。表4に示す通り、積層数を増やし、スリットタイプのフィードブロックを用いたことで、反射減衰ピークにおける反射減衰量が向上する結果を得た。
【0126】
(実施例22)
参考例6において、101個のスリットを有するフィードブロックにて2種類の樹脂を合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に101層積層された溶融シートをダイから吐出した。それ以外は、参考例6と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。得られた積層シートは、A層が計51層、導電性材料を含むB層が計50層となるように構成されており、厚さ方向に交互に積層されていることを顕微鏡観察により確認した。表4に示す通り、さらに積層数を増やしたことで、反射減衰ピークにおける反射減衰量がより向上する結果を得た。
【0127】
(実施例23)
実施例22において、ドラム回転速度を上げて厚さ0.33mmの交互積層ユニットを得た。本交互積層ユニットを厚さ0.05mmのアクリル系の粘着シートを介して3枚貼り合せることで、厚さ約1.0mmの計305層の積層シートを得た。得られた積層シートの性能は表4に示すとおりであり、積層数を増やしたことによる効果が得られた。
【0128】
(実施例24)
参考例6において、301個のスリットを有するフィードブロックにて2種類の樹脂を合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に301層積層された溶融シートをダイから吐出した。それ以外は、参考例6と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。得られた積層シートは、A層が計151層、導電性材料を含むB層が計150層となるように構成されており、厚さ方向に交互に積層されていることを顕微鏡観察により確認した。実施例23と比較して、層数が多いスリットタイプのフィードブロックを用いたことで、層厚みむらが少なくなり、より急峻な電磁波シールド性を示す積層シートが得られた。
【0129】
(実施例25)
実施例22において、ドラム回転速度を上げて厚さ0.5mmの積層シートを得た。薄膜化したことで、表4に記載の通り、実施例22の積層シートに較べて、反射減衰量の大きさを保ったまま、ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークの周波数帯域が高周波シフトした積層シートが得られた。
【0130】
(実施例26)
融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂90重量部に対し、実施例11で用いた、一次粒子径が44nm、DBP吸油量が220mL/100gを示すカーボン系導電性材料を10重量部配合し、該導電性材料がサイドフィードで供給される二軸押出機を用いて混錬を行い、導電性マスターペレットを作製した。
【0131】
A層側に用いる樹脂として、融点254℃で粘度IV0.8を示すポリエチレンテレフタレート樹脂を、B層側に用いる樹脂として、前記導電性マスターペレットを用い、実施例22と同じ101個のスリットを有するフィードブロックにて2種類の樹脂を合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に101層積層された溶融シートをダイから吐出した。吐出した溶融シートをキャストドラム上で冷却固化し、ドラム回転速度を調整することで、厚さ1mmの積層シートを得た。導電性の低い材料を高濃度添加し、表4に記載の通り、高周波帯域で良好な電磁波カット性を示す積層シートが得られた。
【0132】
(実施例27)
実施例26において、導電性マスターペレットの誘電率調整剤として、誘電体材料であるチタン酸バリウムを用いた。具体的には、融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂80重量部に対し、一次粒子径が44nm、DBP吸油量が220mL/100gを示すカーボン系導電性材料を10重量部、堺化学工業(株)の平均粒径0.5μmのチタン酸バリウムを20重量配合し、導電性マスターペレットとした。それ以外は、実施例26と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。表4に示す通り、誘電率を調整したことで、より電磁波シールド性に優れた積層シートを得ることができた。
【0133】
(実施例28)
融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂95重量部に対し、実施例9で用いた、一次粒子径が35nm、DBP吸油量が500mL/100gを示すカーボン系導電性材料を5重量部配合し、該導電性材料がサイドフィードで供給される二軸押出機を用いて混錬を行い、導電性マスターペレットを作製した。
【0134】
A層側に用いる樹脂として、融点254℃で粘度IV0.8を示すポリエチレンテレフタレート樹脂を、B層側に用いる樹脂として、前記導電性マスターペレットを用い、実施例22と同じ101個のスリットを有するフィードブロックにて2種類の樹脂を合流させて、積層比1.0の厚さ方向に交互に101層積層された溶融シートをダイから吐出した。吐出した溶融シートをキャストドラム上で冷却固化し、ドラム回転速度を調整することで、厚さ1mmの積層シートを得た。表5に示す通り、誘電率の虚数部が高い材料であったが、高い電磁波シールド性を示す積層シートを得ることができた。
【0135】
(実施例29)
実施例28において、導電性マスターペレットの誘電率調整剤として、誘電体材料であるチタン酸バリウムを用いた。具体的には、融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂85重量部に対し、一次粒子径が35nm、DBP吸油量が500mL/100gを示すカーボン系導電性材料を5重量部、堺化学工業(株)の平均粒径0.5μmのチタン酸バリウムを20重量配合し、導電性マスターペレットとした。それ以外は、実施例28と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。表5に示す通り、誘電率を調整したことで、非常に電磁波シールド性に優れた積層シートを得ることができた。
【0136】
(実施例30)
実施例28において、導電性マスターペレットの誘電率調整剤として、異なるカーボン系導電性材料として実施例13で用いた平均粒径5μmのグラフェン粉末材料を用いた。具体的には、融点210℃のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂95重量部に対し、一次粒子径が35nm、DBP吸油量が500mL/100gを示すカーボン系導電性材料を2重量部、前記平均粒径5μmのグラフェン粉末材料を3重量部配合し、導電性マスターペレットとした。それ以外は、実施例28と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。表5に示す通り、誘電率を調整したことで、実施例28に比べて優れた電磁波シールド性を示す積層シートを得ることができた。
【0137】
(実施例31)
実施例22において、A層側に用いる樹脂として、融点222℃を示す6-ナイロン樹脂を、用いた以外は、実施例22と同様にして厚さ1mmの積層シートを得た。A層を構成する原料に誘電率が高い樹脂を用いたことで、表5に示す通り、反射減衰量が幾分低下した。A層とB層の誘電率のバランスが実施例22ほどではなかったと考えられる。
【0138】
(参考例9)
実施例22において、A層側に用いる樹脂として、融点254℃で粘度IV0.65を示すポリエチレンテレフタレート樹脂に対し、実施例9で用いた一次粒子径が35nm、DBP吸油量が500mL/100gを示すカーボン系導電性材料を2重量部配合した導電性マスターペレットを用いた以外は、実施例22と同様にして、厚さ1mmの積層シートを得た。表5に示す通り、実施例31と同様に減衰量が低下したほか、ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークの周波数帯域が高周波側へ変化する結果を得た。
【0139】
(実施例33)
実施例22において、得られた溶融シートをキャストドラムで冷却固化したのち、85℃の温度に調整されたロール群を用いて、ロールの周速差によりシートの搬送方向に2倍延伸し、厚さ0.5mmの延伸積層シートを得た。延伸過程を経たことで、B層に添加したカーボン系導電性材料が面方向に分散・配向した効果で、誘電率が向上し、表5に示した性質の積層シートを得た。
【0140】
(実施例34)
実施例22において、得られた溶融シートをキャストドラムで冷却固化したのち、85℃の温度に調整されたロール群を用いて、ロールの周速差によりシートの搬送方向に3倍延伸したのち急冷した。その後、連続して、搬送方向に延伸したシートをテンターに導き、シートの両端をクリップで把持しながら搬送して、120℃に制御された部屋の中で3.3倍に幅方向へ延伸することで、厚み0.166mmの交互積層ユニットを得た。得られた交互積層ユニットを、厚さ0.025mmのアクリル系の粘着シートを介して3枚貼り合せることで、計305層の厚さ約0.5mm積層シートを得た。得られた積層シートの性質は表5に記載した通りであり、体積則を超越した優れた電磁波シールド性を有する積層シートを得ることができた。
【0141】
(実施例35)
実施例30において得られた溶融シートを、実施例34に記載の延伸過程を経ることで、厚さ0.166mmの交互積層シートを得た。得られた交互積層ユニットを、厚さ0.025mmのアクリル系の粘着シートを介して3枚貼り合せることで、計305層の厚さ約0.5mm積層シートを得た。扁平カーボンの面内への分散配列の効果で、実施例34と同様に体積則の概念を超えた優れた電磁波シールド性を有する積層シートを得ることができた。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の積層シートは、導電性の高い層と導電性の低い層を交互積層したユニットを含むことで、従来の単膜あるいは低積層数のシートでは達成困難であった、導電性材料の低濃度含有、薄膜でありながら、高電磁波減衰量を達成することができるものである。好ましい態様として、特定の周波数の電磁波のみを急峻に強くシールドすることができるため、類似した周波数帯域の電磁波を使用する装置への誤作動防止や、高周波数の電磁波による大容量情報通信での情報漏洩などを防ぐことができる。具体的には、GHz周波数帯域の電磁波を使用する通信技術を用いる電子機器、通信機器、あるいはそれらを搭載した移動手段として用いる車両、あるいは、交通制御用のあらゆるインフラを含む交通機関へ好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1:反射減衰ピーク
2:ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークにおけるピークトップの反射減衰量(反射減衰量RL)
3:ピークトップの減衰量が最も大きい反射減衰ピークの半値幅