(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-27
(45)【発行日】2026-02-04
(54)【発明の名称】転写シート及び前記転写シートを用いた部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20260128BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20260128BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20260128BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B32B7/06
B44C1/17 E
(21)【出願番号】P 2020166158
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-27
【審判番号】
【審判請求日】2024-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 沙織
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】高松 大
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/72450(WO,A1)
【文献】特開2005-97351(JP,A)
【文献】特開2011-42041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/18
B32B 7/06
B44C 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルム上に転写層を有し、
前記転写層は、剥離フィルム側から、表面保護層、プライマー層及び接着層をこの順に有し、
前記表面保護層が紫外線吸収剤を含み、
前記表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、
前記紫外線吸収剤の全量に対する、融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上である、転写シート。
【請求項2】
前記接着層が着色剤を含む、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記接着層と前記プライマー層との間に、更に装飾層を有する、請求項1又は2に記載の転写シート。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤の全量に対する、前記融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が55質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の転写シート。
【請求項5】
前記融点90℃以上の紫外線吸収剤の融点が、90℃以上200℃以下である、請求項1~4のいずれかに記載の転写シート。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤が、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤である、請求項1~5のいずれかに記載の転写シート。
【請求項7】
前記表面保護層が、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1~6のいずれかに記載の転写シート。
【請求項8】
前記表面保護層の厚みが、1.5μm以上30μm以下である、請求項1~7のいずれかに記載の転写シート。
【請求項9】
下記(1)及び(2)の工程を順に有する、部材の製造方法。
(1)請求項1~
8のいずれかに記載の転写シートの転写層側の面と被着体とを密着させる工程。
(2)密着させた前記転写シート及び被着体から、前記転写シートの剥離フィルムを剥離する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シート及び前記転写シートを用いた部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用電化製品、自動車内装品、及び雑貨品等の分野において、転写法により物品の表面を装飾したり、表面保護層を形成したりする場合がある。
転写法は、基材上に、剥離層、表面保護層、図柄層、接着剤層などからなる転写層を形成した転写シートを、被転写物である物品に密着させた後、基材を剥離して、被転写物表面に転写層のみを転写して装飾を行う方法である。
【0003】
物品の表面に装飾を施す転写シートとして、特許文献1では、剥離層に剥離可能に取り付けられた意匠転写層とを含む意匠転写シートが提案されている。
また、成形品の傷つき防止等を目的として、物品の表面に保護層を形成するような転写シートとして、特許文献2では、保護層を有する転写層を熱変形が容易な基材上に形成した保護層転写シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-120643号公報
【文献】特開2005-297460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の転写シートを屋外等で使用する場合、太陽光からの紫外線等の影響により、物品に付与した絵柄等が退色しやすく、付与した意匠を長期間にわたって維持することが困難であった。
また、特許文献1及び2の転写シートにおいては、太陽光からの紫外線等の影響により、保護層等が劣化しやすく、特に屋外で使用した場合に、保護層等の機能を長期間維持することが困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、屋外等での長期間の使用に際して物品の耐候性を良好にする表面保護層を有する転写シート、及び屋外等での長期間の使用に際して優れた耐候性を有する部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]剥離フィルム上に転写層を有し、前記転写層は、剥離フィルム側から、表面保護層、プライマー層及び接着層をこの順に有し、前記表面保護層が紫外線吸収剤を含み、前記表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、前記紫外線吸収剤の全量に対する、融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上である、転写シート。
[2]前記接着層が着色剤を含む、[1]に記載の転写シート。
[3]前記接着層と前記プライマー層との間に、更に装飾層を有する、[1]又は[2]に記載の転写シート。
[4]下記(1)及び(2)の工程を順に有する、部材の製造方法。
(1)[1]~[3]のいずれかに記載の転写シートの転写層側の面と被着体とを密着させる工程。
(2)密着させた前記転写シート及び被着体から、前記転写シートの剥離フィルムを剥離する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋外等での長期間の使用に際して物品の耐候性を良好にする表面保護層を有する転写シート、及び屋外等での長期間の使用に際して優れた耐候性を有する部材の製造方法を提供することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の転写シート別の実施形態を示す断面図である。
【
図3】実施例及び比較例において用いた紫外線吸収剤の融点測定の外観を示す写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[転写シート]
本発明の転写シートは、剥離フィルム上に転写層を有し、前記転写層は、剥離フィルム側から、表面保護層、プライマー層及び接着層をこの順に有し、前記表面保護層が紫外線吸収剤を含み、前記表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、前記紫外線吸収剤の全量に対する、融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であることを特徴としている。
本発明の転写シートの転写層の表面保護層が、融点90℃以上の紫外線吸収剤を上記の含有量で有することによって、本発明の転写シートを用いた部材を過酷な環境下、とりわけ過酷な温度条件下において使用しても、紫外線吸収剤のブリードアウト(bleed out)が抑制され、優れた耐候性が得られる。
【0011】
苛酷な温度条件下において紫外線吸収剤のブリードアウトが発生しやすいことについて、そのブリードアウトの発生機構は定かではないが、紫外線吸収剤が転写シートの転写層の温度上昇により液状化し、表面保護層から漏れ出すことで発生するのではないかと推測される。紫外線吸収剤が液状化すると、表面保護層からブリードアウトしやすくなり、ブリードアウトの発生が進行することで、転写シートの転写層が保持する紫外線吸収剤の量が減少し、耐候性が低下するものと考えられる。更に、液状化した紫外線吸収剤が表面保護層内に留まったとしても、転写シートの転写層が使用される温度条件が紫外線吸収剤の融点を下回ると、一度液状化して近接の紫外線吸収剤同士が凝集した状態で固まるため、表面保護層において塊状で存在することとなり、前記表面保護層における紫外線吸収剤の良好な分散状態が失われ、耐候性が低下することとなる。
【0012】
屋外で使用される部材が使用中に晒される温度条件は、一日の中で上昇と降下を繰り返す。このため、(1)紫外線吸収剤が液状化する、(2)液状化した紫外線吸収剤がブリードアウトする、(3)ブリードアウトした紫外線吸収剤の一部が凝集する、(4)凝集した紫外線吸収剤が凝固することにより塊状で存在する、というサイクルを繰り返すこととなる。更に、紫外線吸収剤がブリードアウトする結果、転写シートの転写層の表面保護層内部から転写シートの転写層の表面保護層の最表面に出てきた紫外線吸収剤は、雨に洗い流されて転写シートの転写層から徐々に消失し、かかる消失した紫外線吸収剤の分だけ耐候性は低下し、転写シートの転写層の劣化の進行が益々促進されることとなる、と考えられる。本発明の転写シートは、このような使用環境下に用いられる部材おいても、紫外線吸収剤のブリードアウトをより抑制し、優れた耐候性を部材に付与できる。
【0013】
図1は、本発明の転写シートの一実施形態を示す断面図である。
図1の転写シート10は、剥離フィルム1上に転写層11を有する。転写層11は剥離フィルム1に接する側から順に、表面保護層2、プライマー層3及び接着層4を有している。
【0014】
図2は、本発明の転写シート別の実施形態を示す断面図である。
図2の転写シート10は、剥離フィルム1上に転写層11を有する。転写層11は剥離フィルム1に接する側から順に、表面保護層2、プライマー層3、装飾層5及び接着層4を有している。
【0015】
なお、
図1及び2には図示されていないが、転写シート10は、必要に応じ、接着層4の剥離フィルム1とは反対側の面上に、さらに第2剥離フィルムを有してもよい。
また、
図1及び2には図示されていないが、転写層11は必要に応じ、更にその他の機能層を有してもよい。
【0016】
[剥離フィルム]
剥離フィルムは、転写シートを構成する層において、転写層と剥離可能に積層された層である。離型フィルムは、樹脂シート等の被着体に転写層を転写した後に、転写層から剥離される。
【0017】
剥離フィルムは、転写シートの転写工程での加工性を向上させるために、転写層と剥離可能に積層でき、かつ耐熱性を有するプラスチックフィルムが好ましい。
剥離フィルムとして用いるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6又はナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられ、この中ではポリエステル樹脂を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂の中でもポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。
【0018】
剥離フィルムの厚みは特に限定されないが、転写シートの取り扱い性を向上させるために、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
[転写層]
本発明の転写層は、被着体に転写される層であり、被着体の表面に所定の機能を付与する役割を有する。
本発明の転写シートの転写層は、剥離フィルム側から、少なくとも表面保護層、プライマー層及び接着層をこの順に有する。また、転写シートの転写層は、部材に意匠性を付与するために、さらに、装飾層を有することが好ましい。
【0020】
また、転写層は、さらにその他の機能層を有してもよい。その他の機能層としては、防眩層、防汚層、応力緩和層、帯電防止層、ガスバリア層、防曇層及び透明導電層等が挙げられる。
【0021】
(表面保護層)
本発明の転写シートは、転写層に表面保護層を有する。本発明における表面保護層は、本発明の転写シートの転写層に、例えば耐候性に代表される耐久性を付与させるために形成される層である。その他、表面保護層に要求される耐久性としては、泥等の各種物質に対する耐汚染性、耐擦傷性等が挙げられる。
【0022】
本発明における表面保護層は、表面保護層を形成する樹脂100質量部に対し、紫外線吸収剤を1質量部以上10質量部以下の含有量で含有することを要する。紫外線吸収剤の含有量が1質量部未満であると、紫外線吸収剤としての性能が十分に得られず、転写シートの転写層に耐候性を付与できない。また、紫外線吸収剤の含有量が10質量部を超えると、ブリードアウトが生じやすくなり、また表面保護層の強度が低下する場合があることから、転写シートの転写層に長時間の耐候性を付与できない。表面保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量の下限値としては、表面保護層を形成する樹脂100質量部に対し、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上さらに好ましい。また、上限値としては、表面保護層を形成する樹脂100質量部に対し、6質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、4質量部以下がよりさらに好ましい。
【0023】
本発明の表面保護層に含まれる紫外線吸収剤は、表面保護層に含まれる紫外線吸収剤全量に対して、下記に示すような融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が、45質量%以上であることを要する。融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%未満であると、屋外等温度変化の大きい環境下での使用において、表面保護層より紫外線吸収剤がブリードアウトしやすくなるため、転写シートの転写層に長時間の耐候性を付与できない。
表面保護層に含まれる紫外線吸収剤全量に対する、90℃以上の紫外線吸収剤の割合は、55質量%以上がより好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、80質量%がよりさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0024】
表面保護層に用いられる紫外線吸収剤としては、融点90℃以上の紫外線吸収剤であれば特に制限なく用いることが可能であり、有機物系、無機物系のいずれかの紫外線吸収剤を使用できる。紫外線吸収剤は、表面保護層の透明性、表面保護層への分散性、及び転写シートの加工適性を向上させるため、有機物系の紫外線吸収剤を用いる方が好ましい。
【0025】
有機物系の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられ、中でもヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0026】
無機物系の紫外線吸収剤としては、例えば、平均粒径を380nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下とした二酸化チタン、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0027】
表面保護層に用いられる紫外線吸収剤は、本明細書に例示された紫外線吸収剤を、単独で用いることができ、又は複数種組み合わせて用いることができる。
【0028】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、ヒドロキシフェニルトリアジン構造を有する紫外線吸収剤である。ヒドロキシフェニルトリアジン構造は、その立体障害によって、表面保護層よりブリードアウトして抜け難いという分子構造上の特性を有しており、また90℃以上という融点を有することで液状化によるブリードアウトが生じにくく、表面保護層中における分散状態が良好なまま存在するため、優れた耐候性が得られる。
本発明では、融点90℃以上のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いることで、本発明の転写シートを用いた部材の使用中に生じ得る、液状化によるブリードアウトの発生を抑制し、優れた耐候性を保持できる。
【0029】
表面保護層に用いられる紫外線吸収剤の融点としては、液状化によるブリードアウトの発生をより抑制し、耐候性を向上させるために、95℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、105℃以上がさらに好ましい。上限としては特に制限はないが、表面保護層の加工性を向上させるために、200℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
本明細書において、紫外線吸収剤の融点は「液状化がはじまる温度」であり、具体的には、紫外線吸収剤をガラス製の容器内にいれて、オーブン内に静置し、オーブンを1時間所定の温度とした際に液状化がはじまった温度を、前記融点とした。
【0030】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、より具体的には以下の一般式(1)で示されるものが好ましく挙げられる。
【0031】
【0032】
一般式(1)中、R11は2価の有機基又は単結合であり、R12は1価の有機基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-O-R17で示されるオルガニルオキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して水素原子又は1価の有機基であり、Xは酸素原子又は単結合であり、n11及びn12は各々独立して1以上5以下の整数である。また、R13及びR14が複数ある場合、同じでも異なっていてもよい。
【0033】
R11の2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が好ましく挙げられ、転写シートの転写層の耐候性を向上させるために、アルキレン基がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
【0034】
R12の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が好ましく挙げられ、アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。アルキル基、アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。
【0035】
R13及びR14の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。
【0036】
R13及びR14の1価の有機基のアルキル基の炭素数としては、20以下が好ましく、12以下が更に好ましく、4以下がより更に好ましく、特に2以下が好ましい。すなわち、R13及びR14の1価のアルキル基としては、特にメチル基、エチル基が好ましい。また、入手容易性を考慮すると、メチル基であることが好ましい。
【0037】
R13及びR14のアリール基の炭素数としては、好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。また、アリールアルキル基の炭素数としては、好ましくは7以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
【0038】
R15、R16及びR17の1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R15、R16及びR17がアルキル基、アルケニル基の場合の炭素数としては、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。
【0039】
上記のR11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1以上4以下のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0040】
また、n11及びn12は各々独立して1以上5以下の整数であり、好ましくは1以上3以下の整数、より好ましくは1以上2以下の整数である。n11及びn12が2以上の整数である場合、複数のR13及びR14は同じでもよく、異なっていてもよく、入手容易性の理由から、同じであることが好ましい。
【0041】
融点が90℃以上である、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、代表的には、以下の化学式(2)で示されるもの、すなわち上記一般式(1)において、R11がエチレン基、R12が-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基(R16が3-ヘプチル基)、R13及びR14が水素原子であるものが好ましく例示される。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブLA-46」、融点:106℃)として入手可能である。
【0042】
【0043】
融点が90℃以上である、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、代表的には、以下の化学式(3)で示されるもの、すなわち上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がイソオクチル基、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1であるものが好ましく例示される。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(BASF社製、商品名「Tinuvin1600」、融点:120℃)として入手可能である。
【0044】
【0045】
上記化学式(3)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を用いることで、長時間の耐候性を転写シートの転写層に付与しやすい理由としては、その構造内にエステル結合等、屋外での使用に際して、分解や分子構造の変異の起点になりやすい構造を分子内に含んでいないためであると考えられる。分子内にエステル結合等の構造を有さないため、分解や分子構造の変異が起こり難く、ブリードアウトを抑制しやすくなり、長時間の耐候性を付与しやすくできる。さらに、上記の特徴によって、表面保護層における、上記化学式(3)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が少量であっても、転写シートの転写層に良好な耐候性を付与できる。
【0046】
融点が90℃以上である、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、代表的には、以下の化学式(4)で示されるもの、すなわち上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がヘキシル基、R13及びR14が水素原子であるものも好ましく例示される。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(BASF社製、商品名「Tinuvin1577」、融点:148℃)として入手可能である。
【0047】
【0048】
本発明において、表面保護層に用いられ得る紫外線吸収剤としては、上記の融点90℃以上の紫外線吸収剤とともに、それ以外の紫外線吸収剤、すなわち融点が90℃未満の紫外線吸収剤を用いることも可能である。この場合、従来汎用されてきた紫外線吸収剤を特に制限なく用いることが可能であり、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤の中から適宜選択して用いることができる。またこの場合、それ以外の紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、融点90℃以上の紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤を併用する場合は、前記紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤として融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましく、中でも、融点90℃以上のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤と、融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤とを併用することが好ましい。なお、融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いる場合、前記紫外線吸収剤の融点は55℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。
【0049】
一般に、現実に実用化されている融点90℃以上のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のみでは、各種転写シートの転写層の構成材料(表面保護層、プライマー層、接着層等)を劣化させる紫外線の波長域全域を十分に吸収し切れ無いことが多い。そのため、融点90℃以上のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤とは紫外線吸収波長域が相補的となる紫外線吸収剤を併用することが好ましいが、そのような紫外線吸収波長域が相補的な紫外線吸収剤として、紫外線吸収能力、低ブリードアウト性、価格、無色透明性等の諸性能を総合すると、融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好適な候補となる。上記のような融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として、以下の化学式(5)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物が挙げられる。この紫外線吸収剤は、特に、ポリプロピレン、プロピレンを単量体の主成分とするプロピレン系共重合体の劣化に寄与する紫外線波長域を効果的に吸収し得るものであり、例えば被着体にポリプロピレン又はプロピレン系共重合体を含むような部材に良好な耐候性を付与できる。このヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、市販品(BASF社製、商品名「Tinuvin479」、融点:70℃)として入手可能である。
【0050】
【0051】
表面保護層に含まれる紫外線吸収剤全量に対して、上記のような融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は55質量%未満であることが好ましく、45質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の含有量が55質量%未満であることで、屋外等温度変化の大きい環境下での使用において、表面保護層より紫外線吸収剤がブリードアウトすることを抑止しやすくなるため、転写シートの転写層に長時間の耐候性を付与しやすくできる。
一方、融点90℃以上のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の諸性能、例えば、紫外線吸収波長域の補完による効果を付与するために、融点90℃未満のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の含有量の下限値は、表面保護層に含まれる紫外線吸収剤全量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
【0052】
本発明の表面保護層は、耐擦傷性を向上させるために、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。表面保護層を構成する全樹脂成分に対して、硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0053】
硬化性樹脂組成物の硬化物としては、熱硬化性樹脂組成物の硬化物又は電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。この中でも表面樹脂層の耐擦傷性及び転写シートの加工性を向上させるために、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いることが好ましい。
【0054】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。また、熱硬化性樹脂組成物は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加したものであってもよい。これらの中でも、アクリル樹脂が好ましく、アクリル樹脂にイソシアネート硬化剤を添加したものがより好ましい。
【0055】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電子線硬化性樹脂組成物及び紫外線硬化性樹脂組成物が代表的なものとして挙げられ、これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少ない、着色がしにくいなどの理由から、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。また、表面保護層が紫外線吸収剤を含有するため、電子線硬化性樹脂組成物の方が硬化物層の架橋密度を高くしやすく、耐擦傷性及び耐汚染性を良好にしやすい点でも好ましい。
【0056】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して使用できる。
【0057】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ前記官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
転写シートの加工特性と表面保護層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ前記官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0059】
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。転写シートの加工特性並びに表面保護層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、及びアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる1種以上が好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる1種以上がより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがさらに好ましい。
【0060】
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、転写シートの加工特性並びに表面保護層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、2以上8以下のものが好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がよりさらに好ましい。
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、転写シートの加工特性並びに表面保護層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、2,500以上7,500以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましく、3,500以上6,000以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0061】
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用できる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、光重合開始剤及び光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0063】
表面保護層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じてその他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、有機粒子及び無機粒子等を用いることが好ましい。
【0064】
表面保護層の厚みは、転写シートの加工特性並びに表面保護層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、1.5μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。
【0065】
(プライマー層)
本発明の転写シートは、転写層にプライマー層を有する。プライマー層は、前述の表面保護層と、後述する接着層との間に形成される。プライマー層が表面保護層と接着層との間に形成されることにより、転写層に含有される層と層との間の密着性を向上でき、転写層の耐候性及び耐久性を向上できる。
【0066】
プライマー層は、転写シートの加工性及び転写層に含有される層と層との間の密着性を向上させるために、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
【0067】
プライマー層に含まれる硬化性樹脂組成物の物硬化物としては、前述の表面保護層で例示した硬化性樹脂組成物の硬化物を使用できる。その中でも、転写層に含有される層と層との間の密着性を向上させるために、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、これらの中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はウレタンアクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物がより好ましく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はウレタンアクリル樹脂をイソシアネート硬化剤で架橋硬化した、熱硬化性樹脂組成物の硬化物がさらに好ましい。
【0068】
プライマー層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じてその他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、有機粒子及び無機粒子等を用いることが好ましい。また、紫外線吸収剤としては、前述の表面保護層で提示した紫外線吸収剤を、好適に使用できる。
【0069】
プライマー層の厚みは、転写シートの加工性及び転写層に含有される層と層との間の密着性を向上させるために、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上6μm以下がさらに好ましい。
【0070】
(接着層)
接着層は、転写シートの転写層を構成する層において、被着体と接する層であり、例えば被着体との密着性を向上させるために形成される。
【0071】
接着層としては、感圧接着層、硬化系の接着層及び感熱接着層のいずれかであってもよく、この中でも、転写シートの加工性及び転写シートの転写層と被着体との密着性を向上させるために、感熱接着層であることが好ましい。
【0072】
接着層が感圧接着層の場合、接着層に粘着剤を含むことが好ましい。
粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して使用できる。
【0073】
接着層が硬化系の接着層の場合、接着層に熱硬化性接着剤を含むことが好ましい。
熱硬化型接着剤としては、熱によって化学反応が生じて架橋する性質を有する組成物を含むものが好ましく、例えば、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエ-テルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等を例示できる。なお、2液硬化型ウレタン系接着剤を構成するウレタン系樹脂は、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンである。
【0074】
接着層が感熱接着層の場合、接着層に熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。この中でも、転写シートを用いた部材を形成時の加工性及び転写シートの転写層と被着体との密着性を向上させるために、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0075】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10,000以上200,000以下が好ましく、50,000以上150、000以下が好ましく、80,000以上120,000以下がより好ましい。前記熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量が前記の範囲内であると、コーティング適性が良好になり、接着層を良好な状態で形成しやすくなる。さらに、本発明の転写シートを用いて部材を製造する際、接着層と被着体との密着性を向上しやすくなり、部材の耐久性を向上しやすくできる。
【0076】
接着層の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましく、2μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上7μm以下がさらに好ましい。接着層の厚みが上記範囲内であると、部材を形成時、接着層と被着体との密着性を良好にしやすくできる。
【0077】
本発明の転写シートは、接着層に着色剤を含むことが好ましい。
接着層が着色剤を含むことにより、接着層単体、あるいは接着層と後述する装飾層との組み合わせにより、転写シートの転写層に意匠性を付与できる。
【0078】
着色剤としては、特に制限は無く、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片等の真珠光沢(パール)顔料;等が挙げられる。
【0079】
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、20質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
着色剤の含有量が5質量部以上であることにより、転写シートの転写層に、意匠性を付与しやすくできる。また、着色剤の含有量が90質量部以下であることにより、着色剤を添加したことによる接着層と被着体との密着性の低下を抑制しやすくでき、部材を形成した際、より耐久性のある転写層を形成しやすくできる。
【0080】
(装飾層)
本発明の転写シートは、意匠性を向上させるために、転写シートの転写層の任意の箇所に装飾層を有することが好ましい。
装飾層を形成する箇所は、装飾層の耐候性を向上させるために、接着層とプライマー層との間、又はプライマー層と表面保護層との間に位置することが好ましく、転写層の耐久性をより向上させるために、接着層とプライマー層との間がより好ましい。
【0081】
装飾層は転写シートの全面に形成しても良いし、一部のみに形成してもよい。
【0082】
装飾層としては、インキをベタ塗りしてなる着色層;インキを模様として印刷してなる絵柄層;金属薄膜;等が挙げられる。
装飾層により表現する絵柄(模様)としては、木材板表面の年輪及び導管溝等の木目模様;大理石、花崗岩等の石板表面の石目模様;布帛表面の布目模様;皮革表面の皮シボ模様;目地溝を含むタイル貼り模様;目地溝を含む煉瓦積模様;砂目模様;梨地模様;互いに平行な方向に伸びる凹條部及び凸條部を複数配列させてなる模様(いわゆる「万線状凹凸模様」又は「光線彫模様」);幾何学模様、文字、図形、水玉及び花柄等の抽象柄模様;等が挙げられる。
【0083】
着色層及び絵柄層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
着色層及び絵柄層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を使用できる。
【0084】
着色剤としては、特に制限は無く、前述の接着層で例示した着色剤を好適に使用できる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
【0085】
着色層及び絵柄層は、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
着色層及び絵柄層の厚みは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着体の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させるために、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下がさらに好ましい。
【0086】
金属薄膜としては、金、銀、銅、錫、鉄、ニッケル、クロム、コバルト等の金属元素単体の薄膜;前記金属元素の2種以上を含む合金の薄膜;等が挙げられる。合金としては、例えば、真鍮、青銅、ステンレス鋼等が挙げられる。
金属薄膜の膜厚は、0.1μm以上1μm以下程度とできる。
【0087】
上述した表面保護層、プライマー層、接着層及び装飾層は、例えば、各層を形成する組成物を含む塗布液を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成できる。
【0088】
[第2剥離フィルム]
本発明の転写シートは、接着層の剥離フィルムとは反対側の面上に、さらに第2剥離フィルムを有してもよい。特に接着層が感圧接着層の場合、本発明の転写シートが第2剥離フィルムを有することにより、転写シートを作製時にロール状に巻き取った際にブロッキングを防ぎやすくしたり、転写シートが不用意に他の物体に貼りつくことを防ぎやすくしたりできる。
【0089】
剥離フィルムと転写層との剥離強度をP1、第2剥離フィルムと接着層との間の剥離強度をP2と定義した際に、P2<P1であることが好ましい。P2<P1であることにより、剥離フィルムよりも先に第2剥離フィルムを剥離しやすくできる。
なお、本明細書において、剥離強度は、JIS Z 0237:2009の180度剥離試験に準拠して測定できる。
【0090】
第2剥離フィルムは、接着層と剥離可能であれば特に制限されることなく、プラスチックフィルムが好適に用いられる。
第2剥離フィルムとして用いるプラスチックフィルムとしては、上述の剥離フィルムで例示したものと同様のものを使用できる。例示したプラスチックフィルムの中でも、転写シートの取り扱い性を向上させるために、ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂の中でもポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。
【0091】
第2剥離フィルムは、接着層と接する表面が、剥離剤等で剥離処理されていることが好ましい。剥離剤としては、フッ素系離型剤及びシリコーン系離型剤等の公知の離型剤を使用できる。第2剥離フィルムが離型剤等で剥離処理されていることにより、剥離強度P1と剥離強度P2の関係をP2<P1にしやすくできる。
【0092】
第2剥離フィルムの厚みは特に限定されないが、転写シートの取り扱い性を向上させるために、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0093】
[転写シートの製造方法]
本発明の転写シートの製造方法は、表面保護層形成工程、プライマー層形成工程及び接着層形成工程を少なくとも有する。
【0094】
(表面保護層形成工程)
表面保護層形成工程は、剥離フィルム上に表面保護層を形成する工程である。表面保護層の形成方法としては、表面保護層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥させ、電子線等の電離放射線を照射し硬化することによって形成できる。
【0095】
(プライマー層形成工程)
プライマー層形成工程は、表面保護層形成工程で形成した表面保護層上にプライマー層を形成する工程である。プライマー層の形成方法としては、プライマー層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。
【0096】
(接着層形成工程)
接着層形成工程は、プライマー層形成工程で形成したプライマー層上に接着層を形成する工程である。接着層の形成方法としては、接着層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。
【0097】
(装飾層形成工程)
本発明の転写シートの製造方法は、必要に応じ、更に装飾層形成工程を有することが好ましい。装飾層成形工程は、転写シートの転写層を形成する層上に装飾層を形成する工程である。
【0098】
装飾層形成工程は、プライマー層成形工程と接着層形成工程との間、又は表面保護層とプライマー層形成工程との間に実施されることが好ましく、プライマー層成形工程と接着層形成工程との間に実施されることがより好ましい。
上記工程の間に装飾層形成工程が実施されることにより、転写シートの転写層を構成する層と層との間に、装飾層を形成できるため、装飾層の耐候性を向上させやすくできる。
【0099】
装飾層の形成方法としては、装飾層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。
【0100】
[部材の製造方法]
本発明の転写シートを用い、転写シートの転写層を被着体に転写することによって、本発明の転写シート用いた部材を製造できる。
【0101】
被着体については、特に限定されることなく、樹脂、紙、不織布又は織布、木材、金属、非金属無機材料等を途に応じて適宜選択できる。
また、樹脂を被着体として用いる場合には、転写シートの転写層と被着体との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法及びや凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施すことができる。また、鋼板に用いられる金属としては、鉄、アルミニウム、銅などの金属材料が挙げられ、これらは溶融亜鉛めっき処理及び電気亜鉛めっき処理等の表面処理が施されていてもよい。
被着体の形状は特に限定されることなく、シート形状等の平板状のものであってもよく、また、曲面板、多角柱等の三次元形状の有するものであってもよい。
【0102】
本発明の部材の製造方法は、少なくとも下記(1)及び(2)の工程を順に有する。
(1)上述した本発明の転写シートの転写層側の面と被着体とを密着させる工程。
(2)密着させた前記転写シート及び被着体から、前記転写シートの剥離フィルムを剥離する工程。
【0103】
上記(1)の工程の一実施例としては、例えば、下記(a1)及び(a2)の工程を順に有する、ラミネート法による方法が挙げられる。
(a1)平板上の被着体上に、上述の転写シートの転写層側の面を接し、重ね合わせる工程。
(a2)転写シートの剥離フィルム側から加熱及び加圧し、前記平板上の被着体と前記転写シートの転写層とを密着させる工程。
【0104】
工程(a1)及び(a2)は、ロール転写装置等により加熱及び加圧を併用したラミネート法により実施できる。
【0105】
工程(a2)において、ロール転写装置のラミロール温度は、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。ラミロール温度を180℃以下とすることによって、転写シートの転写層が必要以上に軟化することを防ぎやすくなり、転写層を良好な状態で被着体に転写できる。また、工程(a2)におけるロール転写装置のラミロール温度の下限値は、転写シートの転写層と被着体とが密着されれば特に制限はされないが、通常は100℃以上であり、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0106】
また、上記(1)の他の実施例としては、例えば、下記(z1)~(z4)の工程を順に要する、インモールド成形による方法が挙げられる。
(z1)上述の転写シートの転写層側をインモールド成形用金型の内側に向けて配置する工程。
(z2)前記インモールド成形用金型内に樹脂を射出注入する工程。
(z3)前記転写シートと、前記樹脂とを一体化させて、前記転写シートの転写層と前記樹脂とを密着させ、樹脂成形体を形成する工程。
(z4)前記樹脂成形体を前記インモールド成形用金型から取り出す工程。
【0107】
また、上述した転写シートの接着層が硬化系の接着層の場合、上記(2)の工程の後、接着層の硬化を進行させるために、下記(3)の工程を有することが好ましい。
(3)一定の温度下で所定時間エージングを行う工程。
【0108】
エージングの温度条件は、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることが好ましい。70℃以下にすることで、接着層等の硬化反応が緩やかに進み、硬化反応に伴う急激な収縮を防ぐことができる。また、エージングの温度条件の下限値は、接着層等の構成により異なるが、接着層内に含まれる熱硬化性樹脂組成物等の硬化反応を促進させるために、通常は40℃以上である。
また、エージングの時間は、接着層等の構成、又はエージングの温度条件により異なるが、通常は12時間以上であり、24時間以上が好ましく、48時間以上がより好ましく、72時間以上がさらに好ましい。
【0109】
また、上述した転写シートが、接着層の剥離フィルム側とは反対側の面に第2剥離フィルムを有する場合、上記(1)の工程の前に、下記(0)の工程を有することが好ましい。
(0)上述の転写シートから、第2剥離フィルムを剥離し、接着層を露出させる工程。
【0110】
[部材]
上述の部材の製造方法により、本発明の転写シートを用いた部材を得ることができる。
本発明の転写シートを用いた部材は、被着体上に、少なくとも接着層、プライマー層及び表面保護層をこの順で有し、前記表面保護層が紫外線吸収剤を含み、前記表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、前記紫外線吸収剤の全量に対する、融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であることを特徴としている。
なお、本発明の転写シート用いた部材を成形時、転写シートが装飾層を有する場合、前記部材はさらに装飾層を有することができる。
【0111】
本発明の転写シートを用いた部材は、前記表面保護層に、紫外線吸収剤を含み、前記表面保護層を形成する樹脂100質量部に対する前記紫外線吸収剤の含有量が1質量部以上10質量部以下であり、前記紫外線吸収剤の全量に対する、融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が45質量%以上であるため、長期間の耐候性を有することができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を、実施例及び比較例を挙げ具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0113】
1.測定及び評価
1-1.紫外線吸収剤の融点測定
実施例及び比較例で用いた紫外線吸収剤の融点について、紫外線吸収剤をガラス製の容器内にいれて、オーブン内に静置し、オーブンを1時間所定の温度とした際に液状化がはじまれば、前記所定の温度を、前記紫外線吸収剤を融点とした。本実施例及び比較例で用いた紫外線吸収剤のLA-46(紫外線吸収剤1)、Tinuvin1600(紫外線吸収剤2)、及びTinuvin479(紫外線吸収剤3)をそれぞれ70℃のオーブンに投入した際の外観の写真画像を
図3に示す。Tinuvin479は液状化していることが分かるが、このような状態になりはじめた温度を液状化しはじめた温度とし、これを融点とした。融点測定の結果は、表1にまとめた。
【0114】
1-2.外観の耐候性の評価
実施例及び比較例で得られた部材に対して、メタルハライドランプ(MWOM)による促進耐候試験(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、前記サイクルを繰り返し行う試験)を1500時間実施した。促進耐性試験の後、部材の外観を目視で確認し、外観について、下記基準にて評価した。評価結果は表1にまとめた。促進耐候試験の試験装置、照射条件、及び結露条件は以下の通りである。
<外観の評価基準>
A:外観の変化は確認されなかった。
B:軽微な色調の変化等の外観変化が確認された。
C:著しい色調の変化等の外観変化が確認された。
【0115】
<試験装置>
ダイプラ・ウィンテス社製、商品名「ダイプラ・メタルウェザー」
<照射条件>
照度:65mW/cm2、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
<結露条件>
照度:0mW/cm2、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
【0116】
1-3.層間密着の耐候性の評価
実施例及び比較例で得られた部材に対して、メタルハライドランプ(MWOM)による促進耐候試験を、上記1-1.と同様の条件下で500時間実施した。促進耐候試験後の部材の表面保護層側の面に、粘着テープ(ニチバン株式会社製、製品名「セロテープ(登録商標)」)を、部材の端部から5cm程はみ出るようにし、2.5cm×2.5cmの面積で貼り付けた。その後、貼り付けた粘着テープのはみ出た部分をつまみ、部材の表面に対し45°の方向に粘着テープを剥がすことで、剥離試験を行った。剥離試験の結果より、下記の基準により、層間密着を評価した。評価結果は表1にまとめた。
<層間密着の評価基準>
A:転写シートの層間で、剥離は確認されなかった。
B:転写シートの層間の一部で、軽微な剥離が確認された。
C:転写シートの層間で、著しい剥離が確認された。
【0117】
1-4.ブリードアウト耐性の評価
実施例及び比較例で得られた部材を、温度40℃、湿度90%RHの環境に1週間放置した。放置後の部材の外観を、表面保護層側から目視で観察し、下記の基準でブリードアウト耐性を評価した。評価結果は表1にまとめた。
<ブリードアウト耐性の評価基準>
A:外観の変化が確認されなかった。
B:白化、艶変化及びシート成分の析出等による、軽微な外観変化が確認された。
C:著しい白化、艶変化及びシート成分の析出等による、顕著な外観変化が確認された。
【0118】
2.転写シート及び部材の作製
(実施例1)
厚み26μmの未処理のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル製、商品名「ダイアホイル E130」)からなる剥離フィルムの一方の面上に、下記処方の電離放射線硬化性樹脂組成物1を塗工量5g/m2で塗布し、未硬化樹脂層を形成した。次いで、電子線(加圧電圧:175keV、5Mrad(50kGy))を照射して上記未硬化樹脂層を硬化させ、厚さ5μmの表面保護層を形成した。
<電離放射線硬化性樹脂組成物1>
・3官能ウレタンアクリレートオリゴマー 100質量部
(荒川化学工業株式会社社製、商品名「ビームセット 550B」、重量平均分子量:5000)
・紫外線吸収剤1(ヒドロフェニルトリアジン系紫外線吸収剤) : 2質量部
(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブLA-46」、融点:106℃、上記化学式(2)で示される化合物)
・紫外線吸収剤2(ヒドロフェニルトリアジン系紫外線吸収剤) : 2質量部
(BASF社製、商品面「Tinuvin1600」、融点:120℃、上記化学式(3)で示される化合物)
【0119】
次いで、上記表面保護層上に、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体(重量平均分子量:50,000)を乾燥後の塗工量で2.5g/m2塗布した後、乾燥させ、厚さ2.5μmのプライマー層を形成した。
【0120】
次いで、上記プライマー上に、アクリル樹脂(PMMA、重量平均分子量:96,000)を乾燥後の塗工量で5g/m2塗布した後、乾燥させ、厚さ5μmのヒートシール性を有する接着層を形成した。接着層を形成後、常温にて24時間エージングすることで、実施例1の転写シートを得た。
【0121】
上記で得られた実施例1の転写シートの接着層と、被着体であるポリカーボネート板(厚さ:2mm、AGC社製、商品名「カーボポリッシュ」)の一方の面とを対向させ、積層させた。その後、転写シート側より、ラミネーター(アコ・ブランズ・ジャパン社製、商品名「デスクトップロールラミネーターB316A3」)を用い、ラミロール温度160℃、搬送速度0.5m/minの条件で熱しながら加圧し、転写シートの転写層と被着体を密着させた。
次いで、密着させた転写シートと被着体から、剥離フィルムを剥離し、実施例1の部材を得た。
【0122】
(実施例2~4)
表面保護層中の紫外線吸収剤の種類及び配合量を、表1に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして実施例2~4の転写シート及び部材を得た。
【0123】
(比較例1~3)
表面保護層中の紫外線吸収剤の種類及び配合量を、表1に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして比較例1~3の転写シート及び部材を得た。
【0124】
【0125】
表1中の紫外線吸収剤1~3は、それぞれ以下の通りである。
・紫外線吸収剤1(ヒドロフェニルトリアジン系紫外線吸収剤):
株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブLA-46」、融点:106℃
(上記化学式(2)で示される化合物)
・紫外線吸収剤2(ヒドロフェニルトリアジン系紫外線吸収剤):
BASF社製、商品面「Tinuvin1600」、融点:120℃
(上記化学式(3)で示される化合物)
・紫外線吸収剤3(ヒドロフェニルトリアジン系紫外線吸収剤):
BASF社製、商品名「Tinuvin479」、融点:70℃
(上記化学式(5)で示される化合物)
【0126】
表1の結果から、本発明の特徴を有する、実施例1~4は、メタルハライドランプ(MWOM)による促進試験を500~1500時間実施するという、きわめて厳しい条件であっても、優れた耐候性を有することから、屋外での長時間での使用に際しても、優れた耐候性を有することが確認された。
一方、表面保護層で使用される紫外線吸収剤の全量に対する融点90℃以上の紫外線吸収剤の含有量が少ない比較例1及び2は、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(UVA3:Tinuvin479)を用いても、耐候性の点で優れているとはいえないものとなった。また、表面保護層中の紫外線吸収剤の含有量が多すぎる比較例3は、融点90℃以上の紫外線吸収剤を使用しても、表面保護層中に保持できる紫外線吸収剤量が多いことにより保護層の架橋密度が十分に得られず十分な耐久性が確保できないため、また、ブリードアウトが発生して外観の劣化が引き起こされ、これが劣化の起点と成りうるため、耐候性の点で優れているとはいえないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の転写シートは、優れた耐候性を有するため、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外壁、屋根、軒天井、柵、門扉等の外装用部材、窓枠、玄関ドア等の各種扉、手すり、幅木、廻り縁、窓枠、扉枠、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装用部材又は外装用部材として好適に用いられる。また、本発明の転写シートを用いた部材は、上記の各種部材、中でも直射日光に晒される環境で用いられる部材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0128】
1 剥離フィルム
2 表面保護層
3 プライマー層
4 接着層
5 装飾層
10 転写シート
11 転写層