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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-28
(45)【発行日】2026-02-05
(54)【発明の名称】一成分型硬化性樹脂組成物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20260129BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20260129BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20260129BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20260129BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20260129BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20260129BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20260129BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20260129BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
B32B27/38
C08G59/40
C08L51/04
C08L75/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J163/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022565415
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043253
(87)【国際公開番号】W WO2022114073
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2024-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020197247
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021109918
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏彦
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152775(JP,A)
【文献】国際公開第2021/106962(WO,A1)
【文献】特開2016-199673(JP,A)
【文献】特開2005-344046(JP,A)
【文献】特開2005-036095(JP,A)
【文献】特開2001-040069(JP,A)
【文献】特開2001-214040(JP,A)
【文献】特表2013-503249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08G59/00- 59/72
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)100重量部、
コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)1~100重量部、
1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)[但し、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物が、さらにアミノ基を有する化合物である場合は、前記化合物(C)に該当しない]、及び
ジシアンジアミド(D)、を含有し、
前記化合物(C)は、少なくとも1個のフェノール性水酸基のオルト位に、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される1個又は2個の置換基を有し、
前記化合物(C)が有するフェノール性水酸基のモル数/ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数の比は、前記化合物(C)が1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する時には0.01以上0.39以下であり、前記化合物(C)が1分子中に2個または3個のフェノール性水酸基を有する時には0.01以上1.5以下である、一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)100重量部、
コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)1~100重量部、
1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)[但し、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物が、さらにアミノ基を有する化合物である場合は、前記化合物(C)に該当しない]
ジシアンジアミド(D)、及び
1分子中に4個以上のフェノール性水酸基を有する化合物(E)を含有し、
前記化合物(C)が有するフェノール性水酸基のモル数/ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数の比は、前記化合物(C)が1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する時には0.01以上0.39以下であり、前記化合物(C)が1分子中に2個または3個のフェノール性水酸基を有する時には0.01以上1.5以下であり、
前記化合物(E)の総重量/前記化合物(C)の総重量の比が1未満である、一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(C)は、少なくとも1個のフェノール性水酸基のオルト位に、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される1個又は2個の置換基を有する、請求項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(C)は、1分子中に1個又は2個のフェノール性水酸基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(C)は、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する、請求項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(C)は、1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する、請求項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記化合物(C)は、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される1個~4個の置換基を芳香環上に有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記化合物(C)の分子量が90以上500以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ジシアンジアミド(D)のモル量/前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基のモル量の比が、0.10以上0.30以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、硬化促進剤(F)0.1~10重量部をさらに含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(B)成分として、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、及びオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上のコア層を有する、請求項11に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記ジエン系ゴムが、ブタジエンゴム、および/または、ブタジエン-スチレンゴムである、請求項12に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、及び(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上のモノマー成分を、コア層にグラフト重合してなるシェル層を有する、請求項11~13のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、シェル層にエポキシ基を有する、請求項11~14のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、エポキシ基を有するモノマー成分を、コア層にグラフト重合してなるシェル層を有する、請求項15に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、シェル層にエポキシ基を有し、前記シェル層の総量に対する、前記シェル層が有する前記エポキシ基の含有量が0.1~2.0mmol/gである、請求項15又は16に記載の一成分型硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物が硬化した硬化物。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか1項に記載の一成分型硬化性樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項20】
前記接着剤が構造用接着剤である、請求項19に記載の接着剤。
【請求項21】
2枚の基材と、該2枚の基材を接合する、請求項19又は20に記載の接着剤が硬化した接着層とを含む、積層体。
【請求項22】
請求項18に記載の硬化物の製造方法であって、
前記エポキシ樹脂(A)、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)、前記化合物(C)、及び前記ジシアンジアミド(D)を混合して混合物を得る工程、並びに
前記混合物を加熱して前記硬化物を得る工程、を含む、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂を含む一成分型硬化性樹脂組成物、及び、それを含む接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その硬化物が寸法安定性、機械的強度、電気的絶縁特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の多くの点で優れているため、土木建築材料、電気電子材料、接着剤等に幅広く使用されている。しかし、エポキシ樹脂の硬化物は破壊靭性が小さく、非常に脆性的な性質を示すという問題がある。
【0003】
一方、ジシアンジアミドは、加熱することによりシアナミドを生成し、これによって硬化剤としての活性を発現する潜在性硬化剤として機能し得る。そのため、エポキシ樹脂にジシアンジアミドを配合することで一成分型の硬化性組成物を構成できることが知られている。
【0004】
特許文献1では、エポキシ樹脂、硬化剤としてジシアンジアミド、及び、特定の熱可塑性樹脂からなる特定粒子径の微粒子を含有することにより、高い剥離接着力を発現する接着剤組成物が記載されている。この文献では、比較例でコアシェル粒子が使用されている。
【0005】
特許文献2では、3官能以上の液状エポキシを含むエポキシ化合物に対して、フィラーと、コアシェル強靭化剤と、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤を配合した一液型エポキシ接着剤が記載されている。
【0006】
特許文献3では、エポキシ樹脂と、ジシアンジアミド等のアミノ系硬化剤と、特定構造のフェノール系硬化剤とを含有し、アミノ系硬化剤とフェノール系硬化剤の比率を特定範囲としたエポキシ樹脂組成物、及び、これを用いて形成されるプリプレグが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-36095号公報
【文献】特開2019-11445号公報
【文献】特開2001-40069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に記載されているようなエポキシ樹脂にジシアンジアミドを配合した一成分型の硬化性組成物は、耐衝撃剥離接着性が十分ではなく改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、エポキシ樹脂とジシアンジアミドを配合し、かつ、優れた耐衝撃剥離接着性を示す硬化物を与える一成分型硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂(A)に、コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)と、特定のフェノール化合物(C)と、ジシアンジアミド(D)を、特定の比率で配合することで、優れた耐衝撃剥離接着性を示す硬化物を与える一成分型硬化性樹脂組成物が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)100重量部、
コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)1~100重量部、
1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)[但し、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物が、さらにアミノ基を有する化合物である場合は、前記化合物(C)に該当しない]、及び
ジシアンジアミド(D)、を含有し、
前記化合物(C)が有するフェノール性水酸基のモル数/ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数の比は、前記化合物(C)が1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する時には0.01以上0.39以下であり、前記化合物(C)が1分子中に2個または3個のフェノール性水酸基を有する時には0.01以上1.5以下である、一成分型硬化性樹脂組成物に関する。
好ましくは、前記化合物(C)は、1分子中に1個又は2個のフェノール性水酸基を有する。
好ましくは、前記化合物(C)は、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される1個~4個の置換基を芳香環上に有する。
好ましくは、前記化合物(C)は、少なくとも1個のフェノール性水酸基のオルト位に、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される1個又は2個の置換基を有する。
好ましくは、前記(B)成分として、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子を含有する。
好ましくは、前記化合物(C)の分子量が90以上500以下である。
好ましくは、1分子中に4個以上のフェノール性水酸基を有する化合物(E)をさらに含有し、前記化合物(E)の総重量/前記化合物(C)の総重量の比が1未満である。
好ましくは、前記ジシアンジアミド(D)のモル量/前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基のモル量の比が、0.10以上0.30以下である。
好ましくは、前記一成分型硬化性樹脂組成物が、前記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、硬化促進剤(F)0.1~10重量部をさらに含有する。
好ましくは、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、及びオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上のコア層を有する。
好ましくは、前記ジエン系ゴムが、ブタジエンゴム、および/または、ブタジエン-スチレンゴムである。
好ましくは、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、及び(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上のモノマー成分を、コア層にグラフト重合してなるシェル層を有する。
好ましくは、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、シェル層にエポキシ基を有する。
好ましくは、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、エポキシ基を有するモノマー成分を、コア層にグラフト重合してなるシェル層を有する。
好ましくは、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子が、シェル層にエポキシ基を有し、前記シェル層の総量に対する、前記シェル層が有する前記エポキシ基の含有量が0.1~2.0mmol/gである。
また本発明は、前記一成分型硬化性樹脂組成物が硬化した硬化物にも関する。
さらに本発明は、前記一成分型硬化性樹脂組成物を含む接着剤にも関する。好ましくは、前記接着剤が構造用接着剤である。
更にまた本発明は、2枚の基材と、該2枚の基材を接合する、前記接着剤が硬化した接着層とを含む、積層体にも関する。
また、本発明は、前記硬化物の製造方法であって、前記エポキシ樹脂(A)、前記コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)、前記化合物(C)、及び前記ジシアンジアミド(D)を混合して混合物を得る工程、並びに前記混合物を加熱して前記硬化物を得る工程、を含む、硬化物の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エポキシ樹脂とジシアンジアミドを配合し、かつ、優れた耐衝撃剥離接着性を示す硬化物を与える一成分型硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態は、少なくとも、エポキシ樹脂(A)、コアシェル構造を有するポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)、及びジシアンジアミド(D)、を含有する一成分型硬化性樹脂組成物である。
【0015】
<エポキシ樹脂(A)>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂として、エポキシ樹脂(A)を含有する。エポキシ樹脂としては、各種のエポキシ樹脂を使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(又はF)型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンジオキシド、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリコールジグリシジルエーテル、脂肪族多塩基酸のジグリシジルエステル、グリセリンのような二価以上の多価脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、キレート変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物、含アミノグリシジルエーテル樹脂や、上記のエポキシ樹脂にビスフェノールA(又はF)類または多塩基酸類等を付加反応させて得られるエポキシ化合物などが例示されるが、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらエポキシ樹脂は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0016】
前記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとしては、より具体的には、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。前記グリコールジグリシジルエーテルとしては、より具体的には、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。前記脂肪族多塩基酸のジグリシジルエステルとしては、より具体的には、ダイマー酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、マレイン酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。前記二価以上の多価脂肪族アルコールのグリシジルエーテルとしては、より具体的には、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ひまし油変性ポリグリシジルエーテル、プロポキシ化グリセリントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂に多塩基酸類等を付加反応させて得られるエポキシ化合物としては、例えば、国際公開第2010-098950号に記載されているような、トール油脂肪酸の二量体(ダイマー酸)とビスフェノールA型エポキシ樹脂との付加反応物が挙げられる。
【0017】
前記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、前記グリコールジグリシジルエーテル、前記脂肪族多塩基酸のジグリシジルエステル、前記二価以上の多価脂肪族アルコールのグリシジルエーテルは、比較的低い粘度を有するエポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等の他のエポキシ樹脂と併用すると、反応性希釈剤として機能し、組成物の粘度と硬化物物性のバランスを改良することができる。これら反応性希釈剤として機能するエポキシ樹脂の含有量は、(A)成分中の0.5~20重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましく、2~5重量%が更に好ましい。
【0018】
前記キレート変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とキレート官能基を含有する化合物(キレート配位子)との反応生成物であり、これを添加した一成分型硬化性樹脂組成物を車両用接着剤として用いた場合、油状物質で汚染された金属基材表面への接着性を改善できる。キレート官能基は、金属イオンへ配位可能な配位座を分子内に複数有する化合物の官能基であり、例えば、リン含有酸基(例えば、-PO(OH))、カルボン酸基(-COH)、硫黄含有酸基(例えば、-SOH)、アミノ基及び水酸基(特に、芳香環において互いに隣接した水酸基)などが挙げられる。キレート配位子としては、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテル、などが挙げられる。市販されているキレート変性エポキシ樹脂としては、ADEKA製アデカレジンEP-49-10Nなどが挙げられる。(A)成分中のキレート変性エポキシ樹脂の使用量は、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~3重量%である。
【0019】
前記ゴム変性エポキシ樹脂は、ゴムとエポキシ基含有化合物とを反応させて得た、1分子当り平均して、エポキシ基を1.1個以上、好ましくは2個以上有する反応生成物である。ゴムとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム、ポリプロピレンオキシドやポリエチレンオキシドやポリテトラメチレンオキシド等のポリオキシアルキレン、などのゴム系重合体を挙げることができる。該ゴム系重合体は、アミノ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシル基等の反応性基を末端に有するものが好ましい。これらのゴム系重合体とエポキシ樹脂とを公知の方法により適宜の配合比にて反応させた生成物がゴム変性エポキシ樹脂である。これらの中でも、アクリロニトリル-ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂や、ポリオキシアルキレン変性エポキシ樹脂が、得られる一成分型硬化性樹脂組成物の接着性や耐衝撃剥離接着性の観点から好ましく、アクリロニトリル-ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂がより好ましい。なお、アクリロニトリル-ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂は、例えば、カルボキシル基末端NBR(CTBN)とビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応により得られる。
【0020】
前記アクリロニトリル-ブタジエンゴム中のアクリロニトリル単量体成分の含有量は、得られる一成分型硬化性樹脂組成物の接着性や耐衝撃剥離接着性の観点から、5~40重量%が好ましく、10~35重量%がより好ましく、15~30重量%が更に好ましい。得られる一成分型硬化性樹脂組成物の作業性の観点から、20~30重量%が特に好ましい。
【0021】
また、例えば、アミノ基末端ポリオキシアルキレンとエポキシ樹脂との付加反応生成物(以下、「付加物」とも呼ぶ。)もまた、ゴム変性エポキシ樹脂に含まれる。前記付加物の製造は、例えば、米国特許第5084532号や米国特許第6015865号等に記載されているように、公知の方法で簡易に製造することができる。付加物を製造する際に使用される前記エポキシ樹脂は、例えば、前述した(A)成分の具体例が挙げられるが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。付加物を製造する際に使用される、市販されている前記アミノ基末端ポリオキシアルキレンは、例えば、Huntsman社製のJeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、Jeffamine T-5000などが挙げられる。
【0022】
前記ゴム中の1分子当たりの平均のエポキシド反応性末端基の数は、1.5~2.5個が好ましく、1.8~2.2個がより好ましい。ゴムの数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量にて、1000~10000が好ましく、2000~8000がより好ましく、3000~6000が特に好ましい。
【0023】
ゴム変性エポキシ樹脂の製法について特に制限は無く、例えば、多量のエポキシ基含有化合物中でゴムとエポキシ基含有化合物とを反応させて製造することができる。具体的には、ゴム中の1当量のエポキシ反応性末端基当たり、2当量以上のエポキシ基含有化合物を反応させて製造することが好ましい。得られる生成物が、ゴムとエポキシ基含有化合物との付加体と、遊離のエポキシ基含有化合物との混合物となるのに十分な量のエポキシ基含有化合物を反応させることがより好ましい。例えば、フェニルジメチル尿素やトリフェニルホスフィンなどの触媒の存在下で、100~250℃の温度に加熱することにより、ゴム変性エポキシ樹脂は製造される。ゴム変性エポキシ樹脂を製造する際に使用されるエポキシ基含有化合物は特に制限は無いが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、ゴム変性エポキシ樹脂の製造時に過剰量のエポキシ基含有化合物が使用された場合には、反応後に残存する未反応のエポキシ基含有化合物は、本願明細書でいうゴム変性エポキシ樹脂には含まれないものとする。
【0024】
ゴム変性エポキシ樹脂では、ビスフェノール成分と予備反応させることでエポキシ樹脂を改質することができる。改質に使用するビスフェノール成分は、ゴム変性エポキシ樹脂中のゴム成分100重量部に対し、3~35重量部が好ましく、5~25重量部がより好ましい。改質されたゴム変性エポキシ樹脂を含有する一成分型硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、高温曝露後の接着耐久性に優れ、また、低温時の耐衝撃性にも優れる。
【0025】
ゴム変性エポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限は無いが、-25℃以下が好ましく、-35℃以下がより好ましく、-40℃以下が更に好ましく、-50℃以下が特に好ましい。
【0026】
ゴム変性エポキシ樹脂の数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量にて、1500~40000が好ましく、3000~30000がより好ましく、4000~20000が特に好ましい。分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比)は、1~4が好ましく、1.2~3がより好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。
【0027】
ゴム変性エポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(A)成分中のゴム変性エポキシ樹脂の使用量は、1~50重量%が好ましく、2~40重量%がより好ましく、5~30重量%が更に好ましく、10~20重量%が特に好ましい。
【0028】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂は、イソシアネート基との反応性を有する基とエポキシ基とを含有する化合物と、イソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーを反応させて得た、1分子当り平均して、エポキシ基を1.1個以上、好ましくは2個以上有する反応生成物である。例えば、ヒドロキシ基含有エポキシ化合物とウレタンプレポリマーを反応させることにより、ウレタン変性エポキシ樹脂が得られる。
【0029】
ウレタン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量にて、1500~40000が好ましく、3000~30000がより好ましく、4000~20000が特に好ましい。分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比)は、1~4が好ましく、1.2~3がより好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。
【0030】
ウレタン変性エポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(A)成分中のウレタン変性エポキシ樹脂の使用量は、1~50重量%が好ましく、2~40重量%がより好ましく、5~30重量%が更に好ましく、10~20重量%が特に好ましい。
【0031】
これらのエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、硬化性が高く、硬化後の可撓性に富み、コアシェルポリマー粒子(B)の配合による耐衝撃剥離性向上効果に優れるなどの点から好ましい。特に、エポキシ基を一分子中に2個有する化合物が好ましい。
【0032】
前記のエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂は、得られる硬化物の弾性率が高く、耐熱性および接着性に優れ、比較的安価であるため好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0033】
また、各種のエポキシ樹脂の中でも、エポキシ当量が220未満のエポキシ樹脂は、得られる硬化物の弾性率および耐熱性が高いため好ましく、エポキシ当量は90以上210未満がより好ましく、150以上200未満が更に好ましい。
【0034】
特に、エポキシ当量が220未満のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂は、常温で液体であり、得られる一成分型硬化性樹脂組成物の取扱い性が良いため好ましい。
【0035】
エポキシ当量が220以上5000未満のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂を、(A)成分中に、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下の範囲で添加すると、得られる硬化物が耐衝撃性に優れるため好ましい。
【0036】
<コアシェルポリマー粒子および/またはブロックドウレタン(B)>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、(B)成分として、コアシェル構造を有するポリマー粒子、および/または、ブロックドウレタンを含有する。(B)成分による靱性改良効果によって、得られる硬化物は耐衝撃剥離接着性に優れる。(A)成分及び(D)成分に対して、(B)成分と、次に説明する(C)成分とを併用することにより、相乗的な効果によって、一成分型硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性を大きく改善することができる。(B)成分としては、コアシェル構造を有するポリマー粒子のみを含有してもよいし、ブロックドウレタンのみを含有してもよい。また、双方を含有してもよい。(B)成分として、少なくとも、コアシェル構造を有するポリマー粒子を含有することが好ましい。以下では、コアシェル構造を有するポリマー粒子を、コアシェルポリマー粒子ともいう。
【0037】
<コアシェルポリマー粒子>
コアシェルポリマー粒子(B)は、シェル層にエポキシ基を有しないものであってもよいが、シェル層にエポキシ基を有するものが好ましい。この時、コアシェルポリマー粒子(B)のシェル層の総量に対する、前記シェル層が有するエポキシ基の含有量は、得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性の観点から、0.1mmol/g以上2.0mmol/g以下であることが好ましく、0.3mmol/g以上1.5mmol/g以下であることがより好ましい。これにより、コアシェルポリマー粒子(B)の凝集が抑制され、コアシェルポリマー粒子(B)が硬化物中に一次粒子の状態で分散することができ、その結果、硬化物の耐衝撃剥離接着性が改善され得ると推測される。
【0038】
コアシェルポリマー粒子(B)の粒子径は特に限定されないが、工業的生産性を考慮すると、体積平均粒子径(Mv)は10~2000nmが好ましく、30~600nmがより好ましく、50~400nmが更に好ましく、100~300nmが特に好ましい。なお、ポリマー粒子の体積平均粒子径(Mv)は、ポリマー粒子のラテックスについて、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0039】
コアシェルポリマー粒子(B)は、一成分型硬化性樹脂組成物中において、その粒子径の個数分布において、前記体積平均粒子径の0.5倍以上、1倍以下の半値幅を有することが、得られる一成分型硬化性樹脂組成物が低粘度で取扱い易いため好ましい。
【0040】
上述の特定の粒子径分布を容易に実現する観点から、コアシェルポリマー粒子(B)の粒子径の個数分布において、極大値が2個以上存在することが好ましく、製造時の手間やコストの観点から、極大値が2~3個存在することがより好ましく、極大値が2個存在することが更に好ましい。特に、体積平均粒子径が10nm以上150nm未満のコアシェルポリマー粒子10~90重量%と、体積平均粒子径が150nm以上2000nm以下のコアシェルポリマー粒子90~10重量%を含むことが好ましい。
【0041】
コアシェルポリマー粒子(B)は一成分型硬化性樹脂組成物中で1次粒子の状態で分散していることが好ましい。本願明細書における「コアシェルポリマー粒子が1次粒子の状態で分散している」(以下、一次分散とも呼ぶ。)とは、コアシェルポリマー粒子同士が実質的に独立して(接触なく)分散していることを意味し、その分散状態は、例えば、一成分型硬化性樹脂組成物の一部をメチルエチルケトンのような溶剤に溶解し、これをレーザー光散乱による粒子径測定装置等により、その粒子径を測定することにより確認できる。
【0042】
前記粒子径測定による体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)の値は、特に制限されないが、3以下であることが好ましく、2.5以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1.5以下が特に好ましい。体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)が3以下であれば、コアシェルポリマー粒子(B)が良好に分散していると考えられ、得られる硬化物の耐衝撃性や接着性などの物性が良好になる。
【0043】
なお、体積平均粒子径(Mv)/個数平均粒子径(Mn)は、マイクロトラックUPA(日機装株式会社製)を用いて測定し、MvをMnで除することによって求めることができる。
【0044】
また、コアシェルポリマー粒子の「安定な分散」とは、コアシェルポリマー粒子が、連続層中で凝集したり、分離したり、沈殿したりすることなく、定常的に通常の条件下にて、長期間に渡って、分散している状態を意味する。また、コアシェルポリマー粒子の連続層中での分布も実質的に変化せず、また、これらの組成物を危険がない範囲で加熱することで粘度を下げて攪拌したりしても、「安定な分散」を保持できることが好ましい。
コアシェルポリマー粒子(B)は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0045】
コアシェルポリマー粒子(B)の構造は特に限定されないが、2層以上を有することが好ましい。また、コア層を被覆する中間層と、この中間層をさらに被覆するシェル層とから構成される3層以上の構造を有することも可能である。
【0046】
以下、コアシェルポリマー粒子(B)の各層について具体的に説明する。
≪コア層≫
コア層は、一成分型硬化性樹脂組成物の硬化物の靱性を高めるために、ゴムとしての性質を有する弾性コア層であることが好ましい。ゴムとしての性質を有するためには、弾性コア層は、ゲル含量が60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。なお、本明細書でいうゲル含量とは、凝固、乾燥により得られたクラム0.5gをトルエン100gに浸漬し、23℃で24時間静置した後に不溶分と可溶分を分別したときの、不溶分と可溶分の合計量に対する不溶分の比率を意味する。
【0047】
コア層は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、及びオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性の改善効果が高い点、及び、エポキシ樹脂(A)との親和性が低いために(A)成分によるコア層の膨潤に起因する経時での粘度上昇が起こりにくい点から、コア層は、ジエン系ゴムを含むことが好ましい。
【0048】
(ジエン系ゴム)
前記ジエン系ゴムを構成する共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエン系単量体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記共役ジエン系単量体の含有量は、コア層の50~100重量%の範囲であることが好ましく、70~100重量%の範囲であることがより好ましく、90~100重量%の範囲であることが更に好ましい。共役ジエン系単量体の含有量が50重量%以上であると、得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性がより良好になり得る。
【0050】
共役ジエン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーなどが挙げられる。これらのビニル系単量体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましくはスチレンである。
【0051】
前記共役ジエン系単量体と共重合可能なビニル系単量体の含有量は、コア層の0~50重量%の範囲であることが好ましく、0~30重量%の範囲であることがより好ましく、0~10重量%の範囲であることが更に好ましい。共役ジエン系単量体と共重合可能なビニル系単量体の含有量が50重量%以下であると、得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性がより良好になり得る。
【0052】
耐衝撃剥離接着性の改良効果が高い点、および、エポキシ樹脂(A)との親和性が低いためにコア層の膨潤に起因する経時での粘度上昇が起こり難い点から、ジエン系ゴムは、1,3-ブタジエンを用いるブタジエンゴム、および/または、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合体であるブタジエン-スチレンゴムであることが好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。また、ブタジエン-スチレンゴムは、屈折率の調整により得られる硬化物の透明性を高めることができる点で好ましい。
【0053】
((メタ)アクリレート系ゴム)
前記(メタ)アクリレート系ゴムは、(メタ)アクリレート系モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーを50~100重量%、及び、(メタ)アクリレート系モノマーと共重合可能な他のビニル系モノマーを0~50重量%含有するモノマー混合物を重合して得られるゴム弾性体であることが好ましい。
【0054】
前記(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、(i)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;(ii)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート類;(iii)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(iv)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;(v)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;(vi)アリル(メタ)アクリレート、およびアリルアルキル(メタ)アクリレートなどのアリルアルキル(メタ)アクリレート類;(vii)モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系モノマーは、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0055】
(メタ)アクリレート系モノマーと共重合可能な他のビニル系モノマーとしては、例えば、(i)スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;(ii)アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;(iii)アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;(iv)塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;(v)酢酸ビニル;(vi)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;(vii)ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーなどが挙げられる。これらのビニル系モノマーは、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。屈折率を容易に大きくすることができる点から、特に好ましくはスチレンである。
【0056】
(オルガノシロキサン系ゴム)
前記オルガノシロキサン系ゴムとしては、例えば、(i)ジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ、ジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシなどの、アルキル又はアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系ポリマー;(ii)側鎖のアルキルの一部が水素原子に置換されたオルガノハイドロジェンシリルオキシなどの、アルキル又はアリール1置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系ポリマーなどが挙げられる。これらのポリシロキサン系ポリマーは、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、及びジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシが硬化物に耐熱性を付与することができることから好ましく、ジメチルシリルオキシが容易に入手できることから最も好ましい。コア層がオルガノシロキサン系ゴムから形成される態様において、ポリシロキサン系ポリマー部位は、硬化物の耐熱性を損なわないために、オルガノシロキサン系ゴム全体を100重量%として80重量%以上(より好ましくは90重量%以上)含有していることが好ましい。
【0057】
コア層のガラス転移温度(以下、単に「Tg」と称する場合がある)は、得られる硬化物の靱性を高めるために、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下が更に好ましく、-60℃以下であることが特に好ましい。
【0058】
また、コア層の体積平均粒子径は0.03~2μmが好ましいが、0.05~1μmがさらに好ましい。この範囲内であると、安定的に製造することができ、また、硬化物の耐熱性や耐衝撃性が良好なものとなり得る。なお体積平均粒子径は、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0059】
コア層の割合は、コアシェルポリマー粒子全体を100重量%として40~97重量%が好ましく、60~95重量%がより好ましく、70~93重量%が更に好ましく、80~90重量%が特に好ましい。コア層の割合が40重量%以上であると、得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性がより良好になり得る。コア層の割合が97重量%以下であると、コアシェルポリマー粒子が凝集し難く、一成分型硬化性樹脂組成物がより低粘度となり、作業性がより良好になり得る。
【0060】
コア層は単層構造であることが多いが、ゴム弾性を有する層からなる多層構造であってもよい。また、コア層が多層構造の場合は、各層のポリマー組成は、前記開示の範囲内で各々相違していてもよい。
【0061】
≪中間層≫
コア層とシェル層の間に、必要により、中間層を形成させてもよい。特に、中間層として、以下のゴム表面架橋層を形成させてもよい。得られる硬化物の靱性改良効果および耐衝撃剥離接着性改良効果の点からは、中間層を含有しないこと、特に、以下のゴム表面架橋層を含有しないことが好ましい。
【0062】
中間層が存在する場合、コア層100重量部に対する中間層の割合は、0.1~30重量部が好ましく、0.2~20重量部がより好ましく、0.5~10重量部がさらに好ましく、1~5重量部が特に好ましい。
【0063】
前記ゴム表面架橋層は、一分子内にラジカル重合性二重結合を2個以上有する多官能性モノマー30~100重量%、及びその他のビニルモノマー0~70重量%からなるゴム表面架橋層成分を重合してなる中間層ポリマーからなり、一成分型硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる効果、コアシェルポリマー粒子(B)の(A)成分への分散性を向上させる効果を有する。また、コア層の架橋密度を上げたりシェル層のグラフト効率を高める効果も有する。
【0064】
前記多官能性モノマーの具体例としては、ブタジエンなどの共役ジエン系モノマーは含まれず、アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類;アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が例示されるが、好ましくはアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートである。本願明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0065】
≪シェル層≫
コアシェルポリマー粒子の最も外側に存在するシェル層は、シェル層形成用モノマーを重合したものであるが、コアシェルポリマー粒子(B)と(A)成分との相溶性を向上させ、一成分型硬化性樹脂組成物、又はその硬化物中においてコアシェルポリマー粒子(B)が一次粒子の状態で分散することを可能にする役割を担うシェルポリマーからなる。
【0066】
このようなシェルポリマーは、好ましくは前記コア層及び/又は中間層にグラフトしている。なお、以下、「コア層にグラフトしている」という場合、このコア層に中間層が形成されている時には、中間層にグラフトしている態様も含むものとする。より正確には、シェル層の形成に用いるモノマー成分が、コア層を形成するコアポリマー(中間層を形成した場合には、コアポリマーには、中間層を形成する中間層ポリマーも含まれる。以下、同じ)にグラフト重合して、実質的にシェルポリマーとコアポリマーとが化学結合していることが好ましい(中間層を形成した場合には、シェルポリマーと中間層ポリマーとが化学結合していることも好ましい)。即ち、好ましくは、シェルポリマーは、コアポリマーの存在下に前記シェル層形成用モノマーをグラフト重合させることで形成され、このようにすることで、コアポリマーにグラフト重合されており、コアポリマーの一部又は全体を覆っている。この重合操作は、水性のポリマーラテックス状態で調製されたコアポリマーのラテックスに対して、シェルポリマー層形成用モノマーを加えて重合させることで実施できる。
【0067】
シェル層形成用モノマーとしては、コアシェルポリマー粒子(B)の一成分型硬化性樹脂組成物中での相溶性及び分散性の点から、例えば、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、又は(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。特に、シェル層形成用モノマーは、メチルメタクレリートを含むことが好ましい。これらシェル層形成用モノマーは、単独で用いてもよく、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0068】
芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、及び(メタ)アクリレートモノマーの合計量は、シェル層形成用モノマー100重量%中に、10~99.5重量%であることが好ましく、50~99重量%がより好ましく、65~98重量%が更に好ましく、67~90重量%が特に好ましく、67~85重量%が最も好ましい。
【0069】
メチルメタクレリートの含有量は、シェル層形成用モノマー100重量%中に、5~100重量%であることが好ましく、20~99重量%がより好ましく、30~97重量%が更に好ましく、70~95重量%が特に好ましい。
【0070】
硬化物や一成分型硬化性樹脂組成物中でコアシェルポリマー粒子(B)が凝集せずに良好な分散状態を維持するために、(A)成分と化学結合させる観点から、シェル層形成用モノマーとして、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、及びシアン酸エステル基からなる群から選ばれる1種以上を含有する反応性基含有モノマーを含有することが好ましく、特に、エポキシ基を有するモノマーが好ましい。
【0071】
エポキシ基を有するモノマーは、耐衝撃剥離接着性や貯蔵安定性の観点から、シェル層形成用モノマー100重量%中に、0~90重量%含まれていることが好ましく、1~50重量%がより好ましく、2~35重量%が更に好ましく、3~20重量%が特に好ましい。
【0072】
エポキシ基を有するモノマーは、シェル層の形成に使用することが好ましく、シェル層のみに使用することがより好ましい。
【0073】
また、シェル層形成用モノマーとして、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する多官能性モノマーを使用すると、一成分型硬化性樹脂組成物中においてコアシェルポリマー粒子の膨潤を防止し、また、一成分型硬化性樹脂組成物の粘度が低く取扱い性がよくなる傾向があるため好ましい。一方、得られる硬化物の靱性改良効果および耐衝撃剥離接着性改良効果の点からは、シェル層形成用モノマーとして、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する多官能性モノマーを使用しないことが好ましい。
【0074】
多官能性モノマーは、シェル層形成用モノマー100重量%中に、例えば、0~20重量%含まれていてもよく、1~20重量%含まれていることが好ましく、より好ましくは、5~15重量%である。
【0075】
前記芳香族ビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンゼン類が挙げられる。
【0076】
前記ビニルシアンモノマーの具体例としては、アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等が挙げられる。
【0077】
前記(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0078】
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ直鎖アルキル(メタ)アクリレート(特に、ヒドロキシ直鎖C1-6アルキル(メタ)アクリレート);カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート;α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等のヒドロキシ分岐アルキル(メタ)アクリレート、二価カルボン酸(フタル酸等)と二価アルコール(プロピレングリコール等)とから得られるポリエステルジオール(特に飽和ポリエステルジオール)のモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0079】
前記エポキシ基を有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0080】
前記ラジカル重合性二重結合を2個以上有する多官能性モノマーの具体例としては、上述の多官能性モノマーと同じモノマーが例示されるが、好ましくはアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートである。
【0081】
本実施形態では、例えば、芳香族ビニルモノマー(特にスチレン)0~50重量%(好ましくは1~50重量%、より好ましくは2~48重量%)、ビニルシアンモノマー(特にアクリロニトリル)0~50重量%(好ましくは0~30重量%、より好ましくは10~25重量%)、(メタ)アクリレートモノマー(特にメチルメタクリレート)0~100重量%(好ましくは5~100重量%、より好ましくは70~95重量%)、エポキシ基を有するモノマー(特にグリシジルメタクリレート)1~50重量%(好ましくは2~35重量%、より好ましくは3~20重量%)を組み合わせたシェル層形成用モノマー(合計100重量%)のポリマーであるシェル層とすることが好ましい。これにより、所望の靱性改良効果と機械特性をバランス良く実現することができる。
【0082】
これらのモノマー成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シェル層は、上記モノマー成分の他に、他のモノマー成分を含んで形成されてもよい。
【0083】
シェル層のグラフト率は、70%以上(より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)であることが好ましい。グラフト率が70%以上であると、一成分型硬化性樹脂組成物がより低粘度となり得る。
【0084】
前記グラフト率の算出方法は次に記載の通りである。先ず、コアシェルポリマー粒子を含有する水性ラテックスを凝固・脱水し、最後に乾燥してコアシェルポリマー粒子のパウダーを得る。次いで、コアシェルポリマー粒子のパウダー2gをメチルエチルケトン(MEK)100gに23℃で24時間浸漬した後にMEK可溶分をMEK不溶分と分離し、さらにMEK可溶分からメタノール不溶分を分離する。そして、MEK不溶分とメタノール不溶分との合計量に対するMEK不溶分の比率を求めることによってグラフト率を算出する。
【0085】
≪コアシェルポリマー粒子の製造方法≫
(コア層の製造方法)
コアシェルポリマー粒子(B)を構成するコア層の形成は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などによって製造することができ、例えば国際公開第2005/028546号に記載の方法を用いることができる。
【0086】
(シェル層および中間層の形成方法)
中間層は、中間層形成用モノマーを公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。コア層を構成するゴム弾性体をエマルジョンとして得た場合には、中間層形成用モノマーの重合は乳化重合法により行うことが好ましい。
【0087】
シェル層は、シェル層形成用モノマーを、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。コア層、または、コア層を中間層で被覆して構成されるポリマー粒子前駆体をエマルジョンとして得た場合には、シェル層形成用モノマーの重合は乳化重合法により行うことが好ましく、例えば、国際公開第2005/028546号に記載の方法に従って製造することができる。
【0088】
乳化重合において用いることができる乳化剤(分散剤)としては、ジオクチルスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸などに代表されるアルキルまたはアリールスルホン酸、アルキルまたはアリールエーテルスルホン酸、ドデシル硫酸に代表されるアルキルまたはアリール硫酸、アルキルまたはアリールエーテル硫酸、アルキルまたはアリール置換燐酸、アルキルまたはアリールエーテル置換燐酸、ドデシルザルコシン酸に代表されるN-アルキルまたはアリールザルコシン酸、オレイン酸やステアリン酸などに代表されるアルキルまたはアリールカルボン酸、アルキルまたはアリールエーテルカルボン酸などの各種の酸類、これら酸類のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などのアニオン性乳化剤(分散剤);アルキルまたはアリール置換ポリエチレングリコールなどの非イオン性乳化剤(分散剤);ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などの分散剤が挙げられる。これらの乳化剤(分散剤)は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ポリマー粒子の水性ラテックスの分散安定性に支障を来さない限り、乳化剤(分散剤)の使用量は少なくすることが好ましい。また、乳化剤(分散剤)は、その水溶性が高いほど好ましい。水溶性が高いと、乳化剤(分散剤)の水洗除去が容易になり、最終的に得られる硬化物への悪影響を容易に防止できる。
【0090】
乳化重合法を採用する場合には、公知の開始剤、すなわち2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどを熱分解型開始剤として用いることができる。
【0091】
また、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物といった過酸化物と、必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用したレドックス型開始剤を使用することもできる。
【0092】
レドックス型開始剤系を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。中でもクメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物をレドックス型開始剤として用いることが好ましい。前記開始剤の使用量、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤・遷移金属塩・キレート剤などの使用量は公知の範囲で用いることができる。またラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマーを重合するに際しては公知の連鎖移動剤を公知の範囲で用いることができる。追加的に界面活性剤を用いることができるが、これも公知の範囲である。
【0093】
重合に際しての重合温度、圧力、脱酸素などの条件は、公知の範囲のものが適用できる。また、中間層形成用モノマーの重合は1段で行なっても2段以上で行なっても良い。例えば、弾性コア層を構成するゴム弾性体のエマルジョンに中間層形成用モノマーを一度に添加する方法、連続追加する方法の他、あらかじめ中間層形成用モノマーが仕込まれた反応器に弾性コア層を構成するゴム弾性体のエマルジョンを加えてから重合を実施する方法などを採用することができる。
【0094】
(B)成分としてコアシェルポリマー粒子を用いる場合、得られる一成分型硬化性樹脂組成物の取扱いやすさと、得られる硬化物の靭性改良効果のバランスから、コアシェルポリマー粒子の含有量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、1~100重量部であることが好ましく、2~80重量部がより好ましく、3~60重量部がさらに好ましく、4~50重量部がより更に好ましく、5~40重量部が特に好ましい。
【0095】
<ブロックドウレタン>
(B)成分の一態様であるブロックドウレタンは、エラストマー型であって、ウレタン基および/または尿素基を含有し、かつ、末端にイソシアネート基を有する化合物の当該末端イソシアネート基の全部または一部が活性水素基を有する種々のブロック剤でキャップされた化合物である。特に、当該末端イソシアネート基の全部がブロック剤でキャップされた化合物が好ましい。このような化合物は、例えば、末端に活性水素含有基を有する有機重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、主鎖中にウレタン基および/または尿素基を有し末端にイソシアネート基を有する重合体(ウレタンプレポリマー)とした後、あるいは同時に、該イソシアネート基の全部または一部に、活性水素基を有するブロック剤でキャップすることにより得られる。
【0096】
前記ブロックドウレタンは、例えば、下記一般式(1):
A-(NR-C(=O)-X) (1)
(式中、a個のRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基である。aはキャップされたイソシアネート基の1分子当たりの平均数を表し、1.1個以上が好ましく、1.5~8個がより好ましく、1.7~6個が更に好ましく、2~4個が特に好ましい。Xは、前記ブロック剤から活性水素原子を除いた残基である。Aは、前記ウレタンプレポリマーから末端イソシアネート基を除いた残基である。)で表される。
【0097】
ブロックドウレタンの数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量にて、2000~40000が好ましく、3000~30000がより好ましく、4000~20000が特に好ましい。分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比)は、1~4が好ましく、1.2~3がより好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。
【0098】
(末端に活性水素含有基を有する有機重合体)
末端に活性水素含有基を有する有機重合体を構成する主鎖骨格としては、ポリエーテル系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリジエン系重合体、飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィン)、ポリチオエーテル系重合体などが挙げられる。
【0099】
(活性水素含有基)
末端に活性水素含有基を有する有機重合体を構成する活性水素含有基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、チオール基が挙げられる。これらの中でも、入手性の点から、水酸基、アミノ基、イミノ基が好ましく、更に得られるブロックドウレタンの取扱い易さ(粘度)の点から、水酸基がより好ましい。
【0100】
末端に活性水素含有基を有する有機重合体としては、末端に水酸基を有するポリエーテル系重合体(ポリエーテルポリオール)、末端にアミノ基および/またはイミノ基を有するポリエーテル系重合体(ポリエーテルアミン)、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有するジエン系重合体(ポリジエンポリオール)、末端に水酸基を有する飽和炭化水素系重合体(ポリオレフィンポリオール)、ポリチオール化合物、ポリアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミン、および、ポリアクリルポリオールは、(A)成分との相溶性に優れ、有機重合体のガラス転移温度が比較的低く、得られる硬化物が低温での耐衝撃性に優れることから好ましい。特に、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルアミンは、得られる有機重合体の粘度が低く作業性が良好であるためにより好ましく、ポリエーテルポリオールは特に好ましい。
【0101】
ブロックドウレタンの前駆体である前記ウレタンプレポリマーを調製する際に使用する、末端に活性水素含有基を有する有機重合体は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0102】
末端に活性水素含有基を有する有機重合体の数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量にて、800~7000が好ましく、1500~5000がより好ましく、2000~4000が特に好ましい。
【0103】
(ポリエーテル系重合体)
前記ポリエーテル系重合体は、本質的に一般式(2):
-R-O- (2)
(式中、Rは、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(2)におけるRは、炭素原子数1から14の、さらには2から4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例としては、
-CHO-、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CHCH(C)O-、-CHC(CHO-、-CHCHCHCHO-
等が挙げられる。ポリエーテル系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、プロピレンオキシドの繰り返し単位を50重量%以上有するポリプロピレングリコールを主成分とする重合体から成るものは、T字剥離接着強さの観点で好ましい。また、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコール(PTMG)は、動的割裂抵抗力の観点で、好ましい。
【0104】
(ポリエーテルポリオール、ポリエーテルアミン)
前記ポリエーテルポリオールは、末端に水酸基を有するポリエーテル系重合体であり、前記ポリエーテルアミンは、末端にアミノ基またはイミノ基を有するポリエーテル系重合体である。
【0105】
(ポリアクリルポリオール)
前記ポリアクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体を骨格とし、かつ、分子内に水酸基を有するポリオールを挙げることができる。特に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを共重合して得られるポリアクリルポリオールが好ましい。
【0106】
(ポリエステルポリオール)
前記ポリエステルポリオールとしては、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、フタル酸等の多塩基酸およびその酸無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールとを、エステル化触媒の存在下、150~270℃の温度範囲で重縮合させて得られる重合体が挙げられる。また、ε-カプロラクトン、バレロラクトン等の開環重合物やポリカーボネートジオールやヒマシ油等の活性水素を2個以上有する活性水素化合物等も挙げられる。
【0107】
(ポリジエンポリオール)
前記ポリジエンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリクロロプレンポリオールなどを挙げることができ、特に、ポリブタジエンポリオールが好ましい。
【0108】
(ポリオレフィンポリオール)
前記ポリオレフィンポリオールとしては、ポリイソブチレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールなどを挙げることができる。
【0109】
(ポリイソシアネート化合物)
前記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートなどを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性の点から、脂肪族系ポリイソシアネートが好ましく、更に入手性の点から、イソフォロンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。
【0110】
(ブロック剤)
前記ブロック剤は、例えば、第一級アミン系ブロック剤、第二級アミン系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、ラクタム系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、アミド系ブロック剤、イミド系ブロック剤、複素環式芳香族化合物系ブロック剤、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート系ブロック剤、フェノール系ブロック剤が挙げられる。これらの中でも、オキシム系ブロック剤、ラクタム系ブロック剤、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート系ブロック剤、フェノール系ブロック剤が好ましく、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート系ブロック剤、フェノール系ブロック剤がより好ましく、フェノール系ブロック剤が更に好ましい。
【0111】
(第一級アミン系ブロック剤)
前記第一級アミン系ブロック剤としては、ブチルアミン、イソプロピルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等が挙げられる。前記第二級アミン系ブロック剤としては、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、モルホリン、ピペリジン、等が挙げられる。前記オキシム系ブロック剤としては、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等が挙げられる。前記ラクタム系ブロック剤としては、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-ブチロラクタム等が挙げられる。前記活性メチレン系ブロック剤としては、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が挙げられる。前記アルコール系ブロック剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。前記メルカプタン系ブロック剤としては、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、デシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等が挙げられる。前記アミド系ブロック剤としては、酢酸アミド、ベンズアミド等が挙げられる。前記イミド系ブロック剤としては、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。前記複素環式芳香族化合物系ブロック剤としては、イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール類、ピロール、2-メチルピロール、3-メチルピロール等のピロール類、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン等のピリジン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等のジアザビシクロアルケン類、が挙げられる。
【0112】
(ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート系ブロック剤)
前記ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート系ブロック剤は、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートである。ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート系ブロック剤の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0113】
(フェノール系ブロック剤)
前記フェノール系ブロック剤は、少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基、即ち、芳香環の炭素原子に直接結合したヒドロキシル基を含有する。フェノール性化合物は2個以上のフェノール性ヒドロキシル基を有していてもよいが、好ましくはフェノール性ヒドロキシル基を一つだけ含有する。フェノール性化合物は、他の置換基を含有していてもよいが、これら置換基は好ましくはキャッピング反応の条件下でイソシアネート基と反応しないものであり、アルケニル基、アリル基が好ましい。他の置換基としては、直鎖状、分岐鎖状またはシクロアルキル等のアルキル基;芳香族基(例えば、フェニル、アルキル置換フェニル、アルケニル置換フェニル等);アリール置換アルキル基;フェノール置換アルキル基が挙げられる。フェノール系ブロック剤の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール、エチルフェノール、アリルフェノール(特にo-アリルフェノール)、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビフェノールおよび2,2’-ジアリル-ビスフェノールA、等が挙げられる。
【0114】
前記ブロック剤は、それが結合する末端がもはや反応性基を有しないような態様で、ウレタンプレポリマーのポリマー鎖の末端に結合していることが好ましい。
前記ブロック剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0115】
前記ブロックドウレタンは、架橋剤の残基、鎖延長剤の残基、または、その両方を含有していてもよい。
【0116】
(架橋剤)
前記架橋剤の分子量は750以下が好ましく、より好ましくは50~500であり、かつ、1分子当たり少なくとも3個のヒドロキシル基、アミノ基および/またはイミノ基を有するポリオールまたはポリアミン化合物である。架橋剤はブロックドウレタンに分岐を付与し、ブロックドウレタンの官能価(即ち、キャップされたイソシアネート基の1分子当たりの数)を増加させるのに有用である。
【0117】
(鎖延長剤)
前記鎖延長剤の分子量は750以下が好ましく、より好ましくは50~500であり、かつ、1分子当たり2個のヒドロキシル基、アミノ基および/またはイミノ基を有するポリオールまたはポリアミン化合物である。鎖延長剤は、官能価を増加させずにブロックドウレタンの分子量を上げるのに有用である。
【0118】
前記架橋剤や鎖延長剤の具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、スクロース、ソルビトール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジンが挙げられる。また、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビフェノール、2,2’-ジアリル-ビスフェノールA等の、2個以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物も挙げられる。
【0119】
(B)成分としてブロックドウレタンを用いる場合、得られる硬化物の耐熱性と、得られる硬化物の靭性改良効果のバランスから、ブロックドウレタンの含有量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、1~100重量部が好ましく、2~80重量部がより好ましく、3~60重量部がさらに好ましく、4~50重量部がより更に好ましく、5~40重量部が特に好ましい。
【0120】
(B)成分としては、コアシェルポリマー粒子とブロックドウレタンを併用してもよい。その際には、得られる一成分型硬化性樹脂組成物の取扱いやすさと、得られる硬化物の耐熱性と、得られる硬化物の靭性改良効果のバランスから、コアシェルポリマー粒子とブロックドウレタンの合計含有量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、1~100重量部が好ましく、2~80重量部がより好ましく、3~60重量部がさらに好ましく、4~55重量部がより更に好ましく、5~50重量部が特に好ましい。また、併用する際には、コアシェルポリマー粒子/ブロックドウレタンの比率(重量基準)は0.1~10であることが好ましく、0.2~5であることがさらに好ましく、0.3~3であることが特に好ましい。
【0121】
<1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)>
1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)は、エポキシ樹脂(A)の架橋密度を制御することにより、硬化物の耐衝撃剥離接着性を改善する成分である。当該化合物を、以下ではフェノール化合物(C)ともいう。
【0122】
ジシアンジアミドを硬化剤とするエポキシ樹脂の硬化過程は、以下の様に推定されている(加門隆ら、高分子論文集,Vol.34,No.7,537-543を参照)。エポキシ樹脂(A)とジシアンジアミド(D)を含む組成物を加熱すると、まず、ジシアンジアミド(D)から生成したシアナミドがエポキシ樹脂(A)と反応して、水酸基とシアノ基を有する直鎖状の重合体が形成される。次いで、該直鎖状重合体間で水酸基とシアノ基が反応することで三次元架橋構造を形成し、これによって組成物が硬化する。
【0123】
この時、フェノール化合物(C)が存在すると、フェノール化合物(C)のフェノール性水酸基が一部のシアノ基と反応することで、直鎖状重合体の水酸基とシアノ基間の反応の一部を阻害して三次元架橋構造の架橋密度を低下させる。これにより、硬化物中の架橋点間分子量が高まるため、硬化物は塑性変形がし易くなり、耐衝撃剥離接着性が改善するものと推測される。一方、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)を使用せずに、1分子中に4個以上のフェノール性水酸基を有する化合物を使用すると、逆に架橋密度が高まり、硬化物は脆くなり耐衝撃剥離接着性が低下してしまう。
【0124】
フェノール化合物(C)は、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物であればよく、芳香環上にフェノール性水酸基以外の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。フェノール性水酸基以外の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基や、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等が挙げられる。炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば1~20であり、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。なかでも、良好な性状の硬化物を与えることから、アルキル基が好ましく、t-ブチル基又はメチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0125】
フェノール化合物(C)のうち、1個のフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノール、4-メチルフェノール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、4-エチルフェノール、2-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-メチル-6-tert-ブチルフェノール、3-メチル-6-tert-ブチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、4-メチル-2-tert-ブチルフェノール、4-シクロヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール、4-ヨードフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル等が挙げられる。
2個のフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、レゾルシノール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ヒドロキノン、2,5-ジクロロヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,2’-ジアリルビスフェノールA、2,2’-メチレンビスフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,5-ジメチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸)][エチレンビス(オキシエチレン)]、2,2’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]チオビスエチレン、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]1,6-ヘキサンジイル等が挙げられる。
3個のフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ピロガロール、ヒドロキシキノール、フロログルシノール、4,4’,4’’-エチリジントリスフェノール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン等が挙げられる。
フェノール化合物(C)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
フェノール化合物(C)は、耐衝撃剥離接着性の改善と、一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性を両立する観点から、1分子中に1個又は2個のフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。
【0127】
フェノール化合物(C)は、耐衝撃剥離接着性と、硬化物の耐熱性の双方を改善する観点から、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物がより好ましい。当該2個のフェノール性水酸基を有する化合物を使用すると、1個のフェノール性水酸基を有する化合物を使用した場合と比較して、硬化物のガラス転移点の低下が抑制され、耐衝撃剥離接着性がより良好となり得る。
【0128】
フェノール化合物(C)は、一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性と硬化物の耐湿熱性の観点から、1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。
【0129】
フェノール化合物(C)は、無置換のフェノール化合物であってよいが、置換基を有するフェノール化合物であることが好ましい。置換基の立体障害によって一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性と硬化物の耐湿熱性が改善され得るためである。フェノール化合物(C)の芳香環上に置換基が存在することによって、その立体障害によってフェノール性水酸基の反応性が抑制され、一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性を良好なものとすることができる。また、フェノール化合物(C)の芳香環上に置換基が存在することによって、その立体障害によって、水分子による加水分解を抑制でき、結果、硬化物の耐湿熱性を改善することができる。具体的には、前記フェノール化合物(C)は、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される置換基を芳香環上に有することが好ましい。置換基の立体障害による保存安定性改善の観点から、該置換基は、第一級アルキル基、第二級アルキル基、第三級アルキル基またはハロゲンがより好ましく、第三級アルキル基が特に好ましい。該置換基の個数としては、フェノール化合物(C)1分子に対して、1個~4個であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。
【0130】
また、該置換基は、少なくとも1個のフェノール性水酸基のオルト位に結合していることがより好ましい。フェノール性水酸基のオルト位に置換基が存在することによって、その立体障害によってフェノール性水酸基の反応性がより効果的に抑制され、一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性をより良好なものとすることができる。また、フェノール性水酸基のオルト位に置換基が存在することによって、その立体障害によって、水分子による加水分解をより効果的に抑制でき、結果、硬化物の耐湿熱性をより改善することができる。
上述した一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性と硬化物の耐湿熱性の観点から、フェノール化合物(C)は、各フェノール性水酸基のオルト位に1個又は2個の置換基を有することがより好ましく、各フェノール性水酸基のオルト位に2個の置換基を有することが更に好ましい。各フェノール性水酸基のオルト位に2個の置換基を有する場合、メチル基、第一級アルキル基、第二級アルキル基およびハロゲンからなる群より選択される基と、第三級アルキル基とを有することが好ましく、メチル基と、tert-ブチル基とを有することが特に好ましい。このようなフェノール化合物(C)の具体例としては、2-メチル-6-tert-ブチルフェノール、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸)][エチレンビス(オキシエチレン)]等が挙げられる。
【0131】
また、各フェノール性水酸基のオルト位に2個の置換基を有する場合、フェノール化合物(C)は、各フェノール性水酸基の全てのオルト位に第三級アルキル基を有する化合物、所謂ヒンダードフェノールであってもよい。このようなフェノール化合物は、フェノール水酸基の両隣りに嵩高い第三級アルキル基が存在しているため、その立体障害によって、一成分型硬化性樹脂組成物の保存安定性を更に改善することができる。
【0132】
当該各フェノール性水酸基の全てのオルト位に第三級アルキル基を有する化合物としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,2’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-4,4‘-ジヒドロキシビフェニル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]チオビスエチレン、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]1,6-ヘキサンジイル、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン等が挙げられる。但し、フェノール化合物(C)は、各フェノール性水酸基の全てのオルト位に第三級アルキル基を有する化合物に該当しないフェノール化合物であってもよい。
【0133】
しかし、1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物であっても、フェノール性水酸基に加えてアミノ基を有する化合物は、一成分型硬化性樹脂組成物として必要な保存安定性を阻害するため、本願におけるフェノール化合物(C)に該当しない。フェノール性水酸基に加えてアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0134】
但し、本実施形態に係る一成分型硬化性樹脂組成物は、フェノール化合物(C)に加えて、該組成物の保存安定性を阻害しない程度の量で、フェノール性水酸基とアミノ基を有する化合物をさらに含有するものであってもよい。前記組成物の保存安定性を阻害しない程度の量とは、例えば、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して0.1重量部以下であり、0.05重量部以下が好ましく、0.01重量部以下がより好ましい。しかし、本実施形態に係る一成分型硬化性樹脂組成物は、フェノール性水酸基とアミノ基を有する化合物を含有しないことが好ましい。
【0135】
フェノール化合物(C)は、フェノール樹脂ではなく、低分子のフェノール化合物であることが好ましい。低分子のフェノール化合物の分子量は、90以上500以下であることが好ましい。
【0136】
フェノール化合物(C)の配合量は、該化合物の配合による耐衝撃剥離接着性の改善効果を得るために、以下の条件を満足するものである。フェノール化合物(C)が1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物である場合、フェノール化合物(C)が有するフェノール性水酸基のモル数/ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数の比が、0.01以上0.39以下である。0.01未満では架橋密度低下による耐衝撃剥離接着性の改善効果が十分ではない場合があり、0.39よりも大きいと架橋密度が低下し過ぎて得られる硬化物の強度が低下して耐衝撃剥離接着性の改善効果が十分ではない場合がある。この時、0.05以上0.35以下が好ましく、0.08以上0.30以下がより好ましく、0.10以上0.25以下がさらに好ましい。
【0137】
また、フェノール化合物(C)が1分子中に2個または3個のフェノール性水酸基を有する化合物である場合、フェノール化合物(C)が有するフェノール性水酸基のモル数/ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数の比が、0.01以上1.5以下である。0.01未満では架橋密度低下による耐衝撃剥離接着性の改善効果が十分ではない場合があり、1.5よりも大きいと架橋密度が低下し過ぎて得られる硬化物の強度が低下して耐衝撃剥離接着性の改善効果が十分ではない場合がある。この時、0.20以上1.4以下が好ましく、0.30以上1.3以下がより好ましく、0.60以上1.0以下がさらに好ましい。ジシアンジアミドは加熱によって分解され、ジシアンジアミド1分子からシアナミド(CN基を有する化合物)2分子が生成する。前記「ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数」とは、ジシアンジアミドの全量がシアナミドに変換されたと仮定して算出した、前記シアナミドが有するCN基の理論上のモル数である。
【0138】
<ジシアンジアミド(D)>
ジシアンジアミド(D)は、加熱することによりシアナミドを生成し、これによってエポキシ樹脂(A)を架橋させることが可能になるため、加熱によって活性を発現する潜在性の硬化剤として機能し得る。ジシアンジアミド(D)を配合することで、一成分型の硬化性樹脂組成物を構成することが可能になる。
【0139】
ジシアンジアミド(D)の配合量は、所望の物性に応じて適宜設定することができるが、耐衝撃剥離接着性を改善する観点から、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、2~20重量部が好ましく、3~18重量部がより好ましく、4~16重量部がさらに好ましく、5~14重量部がより更に好ましく、6~12重量部が特に好ましい。
【0140】
更に、耐衝撃剥離接着性を改善する観点に加えて、硬化物の吸水性を抑制する観点から、ジシアンジアミド(D)のモル量/エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基のモル量の比が、0.10以上0.30以下であることが好ましく、0.12以上0.28以下がより好ましく、0.15以上0.26以下がさらに好ましい。
【0141】
<1分子中に4個以上のフェノール性水酸基を有する化合物(E)>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、(A)~(D)成分に加えて、1分子中に4個以上のフェノール性水酸基を有する化合物(E)をさらに配合してもよい。該化合物としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂や、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0142】
化合物(E)の配合量は当業者が適宜設定することができるが、耐衝撃剥離接着性の観点から、化合物(E)の総重量/フェノール化合物(C)の総重量の比が1未満であることが好ましく、0.5未満がより好ましく、0.1未満がさらに好ましい。化合物(E)は配合しなくてもよい。
【0143】
<硬化促進剤(F)>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤(F)を含有することができる。(F)成分は、エポキシ樹脂(A)とジシアンジアミド(D)による硬化反応を加速することができる。
【0144】
(F)成分としては、例えば、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(商品名:Monuron)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(商品名:Phenuron)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(商品名:Diuron)、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素(商品名:Chlortoluron)、1,1-ジメチルフェニルウレア(商品名:Dyhard)などの尿素類;6-カプロラクタム等が挙げられる。(F)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(F)成分は封入されていてもよく、あるいは、加熱した場合にのみ活性となる潜在的なものでもよい。
【0145】
(F)成分を配合する場合、(F)成分の配合量は、硬化性の向上効果と保存安定性の観点から、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましく、0.5~3重量部が更に好ましく、0.8~2重量部が特に好ましい。
【0146】
<強化剤>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、靭性、耐衝撃性、せん断接着性、及び、剥離接着性などの性能を更に向上させる目的で、強化剤として、エポキシ未変性ゴム系重合体を、必要に応じて含有してもよい。強化剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0147】
<エポキシ未変性ゴム系重合体>
ゴム系重合体をエポキシ樹脂と反応させない未変性のまま、本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物中に、必要に応じて含有してもよい。
前記ゴム系重合体としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム、ポリプロピレンオキシドやポリエチレンオキシドやポリテトラメチレンオキシド等のポリオキシアルキレン、などのゴム系重合体を挙げることができる。該ゴム系重合体は、アミノ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシル基等の反応性基を末端に有するものが好ましい。これらの中でも、NBRや、ポリオキシアルキレンが、得られる一成分型硬化性樹脂組成物の接着性や耐衝撃剥離接着性の観点から好ましく、NBRがより好ましく、カルボキシル基末端NBR(CTBN)が特に好ましい。
【0148】
前記ゴム系重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に制限は無いが、-25℃以下が好ましく、-35℃以下がより好ましく、-40℃以下が更に好ましく、-50℃以下が特に好ましい。
【0149】
前記ゴム系重合体の数平均分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算分子量にて、1500~40000が好ましく、3000~30000がより好ましく、4000~20000が特に好ましい。分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比)は、1~4が好ましく、1.2~3がより好ましく、1.5~2.5が特に好ましい。
【0150】
ゴム系重合体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ゴム系重合体の量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、1~30重量部が好ましく、2~20重量部がより好ましく、5~10重量部が特に好ましい。1重量部以上で、靱性、耐衝撃性、接着性などの改善効果が良好であり、50重量部以下であると、得られる硬化物の弾性率が高くなる。
【0151】
<無機充填材>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含有することができる。無機充填材としては、例えばケイ酸および/またはケイ酸塩を使用することができ、その具体例としては、乾式シリカ、湿式シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイト、タルク、などが挙げられる。
【0152】
前記乾式シリカはヒュームドシリカとも呼ばれ、表面無処理の親水性ヒュームドシリカと、親水性ヒュームドシリカのシラノール基部分にシランやシロキサンで化学的に処理することによって製造した疎水性ヒュームドシリカが挙げられるが、(A)成分への分散性の点から、疎水性ヒュームドシリカが好ましい。
【0153】
その他の無機充填材としては、ドロマイトおよびカーボンブラックの如き補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華等が挙げられる。
【0154】
無機充填材は、表面処理剤により表面処理していることが好ましい。表面処理により無機充填材の組成物への分散性が向上し、その結果、得られる硬化物の各種物性が向上する。
【0155】
無機充填材は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
無機充填材の使用量は、(A)成分100重量部に対して、1~100重量部が好ましく、2~70重量部がより好ましく、5~40重量部が更に好ましく、7~20重量部が特に好ましい。
【0156】
<酸化カルシウム>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、酸化カルシウムを含有することができる。
【0157】
酸化カルシウムは、一成分型硬化性樹脂組成物中の水分との反応により水分を除去し、水分の存在により引き起こされる種々の物性上の問題を解決する。例えば、水分除去による気泡防止剤として機能し、接着強度の低下を抑制する。
【0158】
酸化カルシウムは、表面処理剤により表面処理することが可能である。表面処理により酸化カルシウムの組成物への分散性が向上する。その結果、表面処理を施していない酸化カルシウムを使用した場合と比較して、得られる硬化物の接着強度などの物性が向上する。特に、T字剥離接着性、耐衝撃剥離接着性が顕著に改善される。前記表面処理剤は、特に制限はないが、脂肪酸が好ましい。
【0159】
酸化カルシウムの使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましく、0.5~3重量部が更に好ましく、1~2重量部が特に好ましい。0.1重量部以上で水分除去効果が良好であり、10重量部以下であると、得られる硬化物の強度が高くなる。
酸化カルシウムは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0160】
<ラジカル硬化性樹脂>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、分子内に2個以上の二重結合を有するラジカル硬化性樹脂を、必要に応じて含有することができる。また、必要により、分子内に少なくとも1個の二重結合を有する分子量300未満の低分子化合物を添加することができる。前記低分子化合物は、前記ラジカル硬化性樹脂との併用により、粘度や硬化物物性や硬化速度を調整する機能を有し、ラジカル硬化性樹脂の所謂反応性希釈剤として機能するものである。更に、本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物には、ラジカル重合開始剤を添加することができる。ここで、ラジカル重合開始剤は、温度を上げる(好ましくは、約50℃~約150℃)と活性化される潜在的なタイプであることが好ましい。
【0161】
前記ラジカル硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂やポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル化(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく併用してもよい。前記ラジカル硬化性樹脂の具体例としては、国際公開第2014-115778号に記載の化合物が挙げられる。また、前記低分子化合物や前記ラジカル重合開始剤の具体例としては、国際公開第2014-115778号に記載の化合物が挙げられる。
【0162】
国際公開第2010-019539号に記載のように、ラジカル重合開始剤がエポキシ樹脂の硬化温度と異なる温度で活性化すれば、前記ラジカル硬化性樹脂の選択的な重合によって一成分型硬化性樹脂組成物の部分硬化が可能となる。この部分硬化により、塗布後に組成物の粘度を上昇させ、洗い落とされにくさ(wash-off resistance)を向上させることができる。なお、車両などの製造ラインにおける水洗シャワー工程では、未硬化状態の接着剤組成物が、水洗シャワー工程中に、シャワー水圧により、組成物が一部溶解したり、飛散したり、変形して、塗布部の鋼板の耐食性に悪影響を与えたり、鋼板の剛性が低下する場合があり、前記「洗い落とされにくさ」とは、この課題に対する抵抗力を意味するものである。また、この部分硬化により、組成物の硬化完了までの間、基材同士を仮止め(仮接着)する機能を与えることができる。この場合、フリーラジカル開始剤は、80℃~130℃に加熱することで活性化されることが好ましく、100℃~120℃がより好ましい。
【0163】
<モノエポキシド>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、モノエポキシドを含有することができる。モノエポキシドは反応性希釈剤として機能しうる。モノエポキシドの具体例としては、例えばブチルグリシジルエーテルなどの脂肪族グリシジルエーテル、あるいは例えばフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルなどの芳香族グリシジルエーテル、例えば2-エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの炭素数8~10のアルキル基とグリシジル基とからなるエーテル、例えばp-tertブチルフェニルグリシジルエーテルなどの炭素数2~8のアルキル基で置換され得る炭素数6~12のフェニル基とグリシジル基とからなるエーテル、例えばドデシルグリシジルエーテルなどの炭素数12~14のアルキル基とグリシジル基とからなるエーテル;例えばグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルマレエートなどの脂肪族グリシジルエステル;バーサチック酸グリシジルエステル、ネオデカン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステルなどの炭素数8~12の脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル;p-t-ブチル安息香酸グリシジルエステルなどが挙げられる。
【0164】
モノエポキシドを使用する場合、その使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましく、1~5重量部が特に好ましい。0.1重量部以上で低粘度化効果が良好であり、20重量部以下であると、接着性等の物性が良好となる。
【0165】
<光重合開始剤>
また、本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を光硬化する場合には、光重合開始剤を添加してもよい。かかる光重合開始剤としては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルボレートなどのアニオンとの芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩などのオニウム塩や、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセン塩などの光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)などが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0166】
<その他の配合成分>
本実施形態では、必要に応じて、その他の配合成分を使用することができる。その他の配合成分としては、アゾタイプ化学的発泡剤や熱膨張性マイクロバルーンなどの膨張剤、アラミド系パルプなどの繊維パルプ、顔料や染料等の着色剤、体質顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定化剤(ゲル化防止剤)、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、低収縮剤、有機質充填剤、熱可塑性樹脂、乾燥剤、分散剤等が挙げられる。
【0167】
<一成分型硬化性樹脂組成物の製法>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物が、硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(A)と、(B)成分としてコアシェルポリマーを含有する態様の場合、該組成物は、コアシェルポリマー粒子(B)が1次粒子の状態で分散した組成物であることが好ましい。
【0168】
このような、コアシェルポリマー粒子(B)を1次粒子の状態で分散させた組成物を得る方法は、種々の方法が利用できるが、例えば水性ラテックス状態で得られたコアシェルポリマー粒子を(A)成分と接触させた後、水等の不要な成分を除去する方法、コアシェルポリマー粒子を一旦有機溶剤に抽出後に(A)成分と混合してから有機溶剤を除去する方法等が挙げられるが、国際公開第2005/028546号に記載の方法を利用することが好ましい。その具体的な製造方法は、順に、コアシェルポリマー粒子(B)を含有する水性ラテックス(詳細には、乳化重合によってコアシェルポリマー粒子を製造した後の反応混合物)を、20℃における水に対する溶解度が5重量%以上40重量%以下の有機溶媒と混合した後、さらに過剰の水と混合して、ポリマー粒子を凝集させる第1工程と、凝集したコアシェルポリマー粒子(B)を液相から分離・回収した後、再度有機溶媒と混合して、コアシェルポリマー粒子(B)の有機溶媒溶液を得る第2工程と、有機溶媒溶液をさらに(A)成分と混合した後、前記有機溶媒を留去する第3工程とを含んで調製されることが好ましい。
【0169】
(A)成分は、23℃で液状であると、前記第3工程が容易となるため好ましい。「23℃で液状」とは、軟化点が23℃以下であることを意味し、23℃で流動性を示すものである。
【0170】
上記の工程を経て得た、(A)成分にコアシェルポリマー粒子(B)が1次粒子の状態で分散した組成物に対し、追加の(A)成分、(C)成分、(D)成分、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、コアシェルポリマー粒子(B)が1次粒子の状態で分散した本態様に係る一成分型硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0171】
一方、塩析等の方法により凝固させた後に乾燥させて得た、粉体状のコアシェルポリマー粒子(B)は、3本ペイントロールやロールミル、ニーダー等の高い機械的せん断力を有する分散機を用いて、(A)成分中に再分散することが可能である。この際、(A)成分と(B)成分は、高温で機械的せん断力を与えることで、効率良く、(B)成分の分散を可能にする。分散させる際の温度は、50~200℃が好ましく、70~170℃がより好ましく、80~150℃が更に好ましく、90~120℃が特に好ましい。
【0172】
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性が良好であるため、すべての配合成分を予め配合した後密封保存し、塗布後加熱や光照射により硬化する一液型の組成物として使用される。
【0173】
<硬化物>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を硬化させることで硬化物を得ることができる。一成分型硬化性樹脂組成物が(B)成分としてコアシェルポリマー粒子を含む場合、当該硬化物中には、コアシェルポリマー粒子(B)が均一に分散している。好適な態様によれば、一成分型硬化性樹脂組成物は、粘度が低く、硬化物を作業性よく得ることができる。
【0174】
前記硬化物は、(A)成分~(D)成分、及び、必要に応じて他の成分を混合し、得られた混合物を、後述する硬化温度で加熱することによって製造できる。(A)成分~(D)成分、及び、必要に応じて他の成分を混合するとは、上記のように予め(A)成分にコアシェルポリマー粒子(B)が1次粒子の状態で分散した組成物を作製し、当該組成物に対し、追加の(A)成分、(C)成分、(D)成分、及び、必要に応じてその他の成分を混合する態様も含む。各成分を混合して前記硬化物を製造するにあたっては、エポキシ樹脂(A)とフェノール化合物(C)を予備的に反応させてエポキシ樹脂(A)を高分子量化する工程を実施する必要はない。
【0175】
<塗布方法>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、任意の方法によって基材に塗布可能である。好適な実施形態によると、室温程度の低温で塗布可能であり、必要に応じて加温して塗布することも可能である。本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れるために、加温して塗布する工法に特に有用である。
【0176】
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、塗布ロボットを使用してビード状またはモノフィラメント状またはスワール(swirl)状に基材上へ押出したり、コーキングガン等の機械的な塗布方法や他の手動塗布手段を用いることもできる。また、ジェットスプレー法またはストリーミング法を用いて組成物を基材へ塗布することもできる。本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を、一方または両方の基材へ塗布し、接合しようとする2枚の基材間に組成物が配置されるよう基材同士を接触させ、その状態で組成物を硬化させることにより、2枚の基材を接合する。なお、一成分型硬化性樹脂組成物の粘度は、特に限定は無く、押出しビード法では、45℃で150~600Pa・s程度が好ましく、渦巻き(swirl)塗布法では、45℃で100Pa・s程度が好ましく、高速度流動装置を用いた高体積塗布法では、45℃で20~400Pa・s程度が好ましい。
【0177】
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を車両用接着剤として使用する場合、前記「洗い落とされにくさ」を向上させるには、組成物のチクソ性を高くすることが有効である。一般に、チクソ性は、ヒュームドシリカやアミドワックス等のチクソ性付与剤により向上させるが、主成分である熱硬化性樹脂成分の粘度が低いほど、この改善効果が高く作業性の良い組成物となる傾向がある。本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、低粘度になり易いためにチクソ性を高め易く好ましい。高チクソ性な組成物は、加温により塗布可能な粘度に調整可能である。
【0178】
また、前記「洗い落とされにくさ」を向上させるためには、国際公開第2005-118734号に記載のように、組成物の塗布温度付近に結晶融点を有する高分子化合物を一成分型硬化性樹脂組成物に配合することが好ましい。該組成物は、塗布温度では粘度は低く(塗布し易く)、水洗シャワー工程での温度では高粘度となって「洗い落とされにくさ」が向上する。塗布温度付近に結晶融点を有する前記高分子化合物としては、結晶性または半結晶性ポリエステルポリオールなどの各種のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0179】
<接着剤>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を接着剤として使用して、様々な基材同士を接着させる場合、例えば、木材、金属、プラスチック、ガラス等の基材を接合することができる。自動車部品を接合することが好ましく、自動車フレーム同士の接合または自動車フレームと他の自動車部品との接合がより好ましい。基材としては、冷間圧延鋼や溶融亜鉛メッキ鋼などの鋼材、アルミニウムや被覆アルミニウムなどのアルミニウム材、汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、CFRPやGFRP等の複合材料、等の各種のプラスチック系基板が挙げられる。
【0180】
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、接着性に優れる。そのため、アルミニウム基材を含む複数の部材の間に、本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を挟んで張り合わせた後に、前記一成分型硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られる前記部材を接合させてなる積層体は、高い接着強度を示すため好ましい。
【0181】
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、靭性に優れるため、線膨張係数の異なる異種基材間の接合に適している。
【0182】
また、本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、航空宇宙用の構成材、特に、外装金属構成材の接合にも使用できる。
【0183】
<硬化温度>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物の硬化温度は、特に限定はないが、50℃~250℃が好ましく、80℃~220℃がより好ましく、100℃~200℃が更に好ましく、130℃~180℃が特に好ましい。
【0184】
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物を自動車用接着剤として使用する場合、該接着剤を自動車部材へ施工した後、次いでコーティングを塗布し、該コーティングを焼付け・硬化するのと同時に接着剤を硬化させるのが工程短縮・簡便化の観点から好ましい。
【0185】
<用途>
本実施形態の一成分型硬化性樹脂組成物は、車両や航空機向けの構造用接着剤、風力発電用構造接着剤などの接着剤、塗料、ガラス繊維との積層用材料、およびプリント配線基板用材料、ソルダーレジスト、層間絶縁膜、ビルドアップ材料、FPC用接着剤、半導体・LED等電子部品用封止材等の電気絶縁材料、ダイボンド材料、アンダーフィル、ACF、ACP、NCF、NCP等の半導体実装材料、液晶パネル、OLED照明、OLEDディスプレイ等の表示機器・照明機器用封止材の用途に好ましく用いられる。特に、車両用構造接着剤として有用である。
【実施例
【0186】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0187】
(体積平均粒子径の測定)
製造例に記載されたポリブタジエンゴムラテックス中のポリブタジエンゴム粒子、及び、コアシェルポリマーラテックス中のコアシェルポリマー粒子について、以下の方法により、それぞれの平均粒子径を測定した。水性ラテックスに分散している粒子の体積平均粒子径(Mv)は、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を用いて測定した。脱イオン水で希釈したものを測定試料として用いた。測定は、水の屈折率、およびそれぞれのポリマー粒子の屈折率を入力し、計測時間600秒、Signal Levelが0.6~0.8の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。
【0188】
1.コア層の形成
製造例1;ポリブタジエンゴムラテックス(R-2)の調製
耐圧重合機中に、水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩(FE)0.001重量部、及び、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.55重量部を投入し、撹拌しつつ十分に窒素置換を行なって酸素を除いた後、ブタジエン(Bd)100重量部を系中に投入し、45℃に昇温した。パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.03重量部、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.10重量部を投入し重合を開始した。重合開始から3、5、7時間目それぞれに、PHP0.025重量部を投入した。また、重合開始4、6、8時間目それぞれに、EDTA0.0006重量部、及びFE0.003重量部を投入した。重合15時間目に減圧下残存モノマーを脱揮除去して重合を終了し、ポリブタジエンゴムを主成分とするポリブタジエンゴムラテックス(R-1)を得た。得られたラテックスに含まれるポリブタジエンゴム粒子の体積平均粒子径は0.08μmであった。
【0189】
耐圧重合機中に、ポリブタジエンゴムラテックス(R-1)を21重量部(ポリブタジエンゴム7重量部を含む)、脱イオン水185重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、及びFE0.001重量部を投入し、撹拌しつつ十分に窒素置換を行なって酸素を除いた後、Bd93重量部を系中に投入し、45℃に昇温した。PHP0.02重量部、続いてSFS0.10重量部を投入し重合を開始した。重合開始から24時間目まで3時間おきに、それぞれ、PHP0.025重量部、及びEDTA0.0006重量部、及びFE0.003重量部を投入した。重合30時間目に減圧下残存モノマーを脱揮除去して重合を終了し、ポリブタジエンゴムを主成分とするポリブタジエンゴムラテックス(R-2)を得た。得られたラテックスに含まれるポリブタジエンゴム粒子の体積平均粒子径は0.20μmであった。
【0190】
2.コアシェルポリマーラテックスの調製(シェル層の形成)
製造例2-1;コアシェルポリマーラテックス(L-1)の調製
温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、及びモノマーの添加装置を有するガラス反応器に、製造例1で調製したポリブタジエンゴムラテックス(R-2)262重量部(ポリブタジエンゴム粒子87重量部を含む)、及び、脱イオン水57重量部を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。EDTA0.004重量部、FE0.001重量部、及びSFS0.2重量部を加えた後、シェルモノマー(メチルメタクリレート(MMA)12重量部、グリシジルメタクリレート(GMA)1重量部)、及び、クメンヒドロパーオキサイド(CHP)0.04重量部の混合物を120分間かけて連続的に添加した。添加終了後、CHP0.04重量部を添加し、さらに2時間撹拌を続けて重合を完結させ、コアシェルポリマー粒子を含む水性ラテックス(L-1)を得た。モノマー成分の重合転化率は99%以上であった。水性ラテックス(L-1)に含まれるコアシェルポリマー粒子の体積平均粒子径は0.21μmであった。該コアシェルポリマー粒子のシェル層の総量に対するエポキシ基の含有量は0.5mmol/gである。
【0191】
製造例2-2;コアシェルポリマーラテックス(L-2)の調製
シェルモノマーをMMA1重量部、スチレン(ST)6重量部、アクリロニトリル(AN)2重量部、GMA4重量部に変えた以外は製造例2-1と同様にし、コアシェルポリマー粒子を含む水性ラテックス(L-2)を得た。モノマー成分の転化率は99%以上であった。水性ラテックス(L-2)に含まれるコアシェルポリマー粒子の体積平均粒子径は0.21μmであった。該コアシェルポリマー粒子のシェル層の総量に対するエポキシ基の含有量は2.2mmol/gである。
【0192】
製造例2-3;コアシェルポリマーラテックス(L-3)の調製
シェルモノマーをMMA3重量部、ST6重量部、AN2重量部、GMA2重量部に変えた以外は製造例2-1と同様にし、コアシェルポリマー粒子を含む水性ラテックス(L-3)を得た。モノマー成分の転化率は99%以上であった。水性ラテックス(L-3)に含まれるコアシェルポリマー粒子の体積平均粒子径は0.21μmであった。該コアシェルポリマー粒子のシェル層の総量に対するエポキシ基の含有量は1.1mmol/gである。
【0193】
製造例2-4;コアシェルポリマーラテックス(L-4)の調製
シェルモノマーをMMA4重量部、ST6重量部、AN2重量部、GMA1重量部に変えた以外は製造例2-1と同様にし、コアシェルポリマー粒子を含む水性ラテックス(L-4)を得た。モノマー成分の転化率は99%以上であった。水性ラテックス(L-4)に含まれるコアシェルポリマー粒子の体積平均粒子径は0.21μmであった。該コアシェルポリマー粒子のシェル層の総量に対するエポキシ基の含有量は0.5mmol/gである。
【0194】
製造例2-5;コアシェルポリマーラテックス(L-5)の調製
シェルモノマーをMMA5重量部、ST6重量部、AN2重量部に変えた以外は製造例2-1と同様にし、コアシェルポリマー粒子を含む水性ラテックス(L-5)を得た。モノマー成分の転化率は99%以上であった。水性ラテックス(L-5)に含まれるコアシェルポリマー粒子の体積平均粒子径は0.21μmであった。該コアシェルポリマー粒子のシェル層の総量に対するエポキシ基の含有量は0mmol/gである。
【0195】
3.硬化性樹脂中にコアシェルポリマー粒子(B)が分散した分散物(M)の調製
製造例3-1;分散物(M-1)の調製
25℃の1L混合槽にメチルエチルケトン(MEK)132gを導入し、撹拌しながら、製造例2-1で得たコアシェルポリマーラテックス(L-1)を132g(コアシェルポリマー粒子40g相当)投入した。均一に混合後、水200gを80g/分の供給速度で投入した。供給終了後、速やかに撹拌を停止したところ、浮上性の凝集体および有機溶媒を一部含む水相からなるスラリー液を得た。次に、一部の水相を含む凝集体を残し、水相360gを槽下部の払い出し口より排出させた。得られた凝集体にMEK90gを追加して均一に混合し、コアシェルポリマー粒子(B)を均一に分散した分散体を得た。この分散体に、(A)成分であるエポキシ樹脂(三菱化学社製、JER828:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)60gを混合した。この混合物から、回転式の蒸発装置で、MEKを除去した。このようにして、エポキシ樹脂(A)にコアシェルポリマー粒子(B)が分散した分散物(M-1)を得た。
【0196】
製造例3-2;分散物(M-2)の調製
製造例3-1において、コアシェルポリマーラテックスとして(L-1)の代わりに、製造例2-2で得た(L-2)を用いたこと以外は製造例3-1と同様にして、エポキシ樹脂(A)にコアシェルポリマー粒子(B)が分散した分散物(M-2)を得た。
【0197】
製造例3-3;分散物(M-3)の調製
製造例3-1において、コアシェルポリマーラテックスとして(L-1)の代わりに、製造例2-3で得た(L-3)を用いたこと以外は製造例3-1と同様にして、エポキシ樹脂(A)にコアシェルポリマー粒子(B)が分散した分散物(M-3)を得た。
【0198】
製造例3-4;分散物(M-4)の調製
製造例3-1において、コアシェルポリマーラテックスとして(L-1)の代わりに、製造例2-4で得た(L-4)を用いたこと以外は製造例3-1と同様にして、エポキシ樹脂(A)にコアシェルポリマー粒子(B)が分散した分散物(M-4)を得た。
【0199】
製造例3-5;分散物(M-5)の調製
製造例3-1において、コアシェルポリマーラテックスとして(L-1)の代わりに、製造例2-5で得た(L-5)を用いたこと以外は製造例3-1と同様にして、エポキシ樹脂(A)にコアシェルポリマー粒子(B)が分散した分散物(M-5)を得た。
【0200】
(実施例1~60、比較例1~24)
表1~表9に示す処方にしたがって各成分をそれぞれ計量し、よく混合して一成分型硬化性樹脂組成物を得た。
表1~表9の各組成物について、以下の方法で、動的割裂抵抗力(耐衝撃剥離接着性)とその湿熱試験後保持率、吸水率、T字剥離接着強さとその湿熱試験後保持率、及び、粘度上昇率(貯蔵安定性)、の各評価を行った。
【0201】
<動的割裂抵抗力(耐衝撃剥離接着性)とその湿熱試験後保持率>
各組成物を2枚のSPCC鋼板に塗布し、接着層厚み0.25mmとなるように重ね合せ、表1~表5の各組成物では170℃×30分の条件で硬化させ、表6~表9の各組成物では150℃×30分の条件で硬化させて積層体を得た。この積層体を用いて、ISO 11343に従って、23℃で動的割裂抵抗力(耐衝撃剥離接着性)を測定した。結果を表1~表9に示す。
表8の各組成物については、動的割裂抵抗力を、70℃/95%RHの環境下に前記積層体を21日間放置する湿熱試験の後においても測定し、保持率(=湿熱試験後の強度/湿熱試験前の強度)を計算した。結果を表8に示す。
【0202】
<吸水率>
表1の各組成物を、脱泡して、厚み3mmのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注ぎ込み、熱風オーブン中170℃で1時間硬化させ、厚み3mmの硬化板を得た。この硬化板を、3mm×5mm×50mmの寸法に切削して直方体の硬化物を得た。この直方体の硬化物の重量を、70℃/95%RHの環境下に前記硬化物を7日間放置する湿熱試験の前後で測定し、下記式で吸水率(%)を計算した。結果を表1に示す。
吸水率(%)=(湿熱試験後の重量/湿熱試験前の重量-1)×100
【0203】
<T字剥離接着強さとその湿熱試験後保持率>
表2、表4~表6、表8、表9の各組成物を、幅25mm×長さ200mm×厚み0.5mmの2枚のSPCC鋼板に塗布し、接着層厚み0.25mmとなるように重ね合せ、表2と表4~表5の各組成物では170℃×30分の条件で硬化させ、表6と表8~表9の各組成物では150℃×30分の条件で硬化させて積層体を得た。
測定温度を23℃、テストスピードを254mm/minとした測定条件で、単位をN/25mmとしたT字剥離接着強さを測定した。結果を表2、表4~表6、表8、表9に示す。
表6と表9の各組成物については、T字剥離接着強さを、70℃/95%RHの環境下に前記積層体を21日間放置する湿熱試験の後においても測定し、保持率(=湿熱試験後の強度/湿熱試験前の強度)を計算した。結果を表6と表9に示す。
【0204】
<粘度上昇率(貯蔵安定性)>
表2の実施例17~21と比較例8の各組成物、表7の実施例50~53と比較例20の各組成物、及び、表9の実施例57~60と比較例24の各組成物の50℃での粘度を、レオメーターを使用して、せん断速度5s-1で測定した。この各組成物を40℃で14日間貯蔵し、貯蔵後の粘度を貯蔵前と同様に、50℃、せん断速度5s-1で測定した。粘度上昇率(=貯蔵後の粘度/貯蔵前の粘度)を算出した結果を表2と表7と表9に示す。
【0205】
なお、表1~表9中の各種配合剤は、以下に示すものを使用した。また、表10では、各化合物(C)、及び、比較用化合物の構造式、分子量、及び融点を示した。
<エポキシ樹脂(A)>
A-1:JER828(三菱化学製、常温で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184~194)
A-2:HyPox RA 1340(CVC Thermoset Specialties製、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ当量:350)
A-3:EPU-73B(ADEKA製、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ当量:245)
<エポキシ樹脂(A)中にポリマー粒子(B)が分散した分散物(M)>
M-1~5:前記製造例3-1~5で得られた分散物
<ブロックドウレタン(B)>
B-1:アデカレジンQR-9466(ADEKA製、ブロックドウレタン、ブロックNCO当量1400g/eq)
<ゴム系重合体>
カルボキシル基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体:CTBN 1300x8(CVC Thermoset Specialties製)
カルボキシル基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体:CTBN 1300x13(CVC Thermoset Specialties製)
<1分子中に1~3個のフェノール性水酸基を有する化合物(C)>
4-tert-ブチルフェノール(東京化成製)
ビスフェノールA(東京化成製)
ビスフェノールM(東京化成製)
フェノール(富士フィルム和光純薬工業製)
4-メトキシフェノール(富士フィルム和光純薬工業製)
2,6-キシレノール(富士フィルム和光純薬工業製)
レゾルシノール(富士フィルム和光純薬工業製)
カテコール(富士フィルム和光純薬工業製)
4-tert-ブチルカテコール(富士フィルム和光純薬工業製)
ヒドロキノン(東京化成製)
メチルヒドロキノン(富士フィルム和光純薬工業製)
tert-ブチルヒドロキノン(東京化成製)
2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン(東京化成製)
2,2’-ジアリルビスフェノールA(小西化学工業製)
ピロガロール(関東化学製)
3-メチル-6-tert-ブチルフェノール(東京化成製)
2-メチル-6-tert-ブチルフェノール(東京化成製)
ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸)][エチレンビス(オキシエチレン)](BASFジャパン製、製品名:Irganox 245)
6-tert-ブチル-2,4-キシレノール(東京化成製)
2,3,6-トリメチルフェノール(東京化成製)
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(東京化成製)
<(C)成分に該当しないフェノール化合物>
2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(東京化成製)
PHENOLITE TD-2090(DIC製、ノボラック型フェノール樹脂)
<非フェノール化合物>
アニソール(関東化学製)
<ジシアンジアミド(D)>
Dyhard 100S(AlzChem製)
<硬化促進剤(F)>
Dyhard UR200(AlzChem製、1,1-ジメチル-3-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア)
Dyhard UR300(AlzChem製、1,1-ジメチル-3-フェニルウレア)
<ヒュームドシリカ>
CAB-O-SIL TS-720(CABOT製、ポリジメチルシロキサンで表面処理されたヒュームドシリカ)
<炭酸カルシウム>
無処理重質炭酸カルシウム:ホワイトンSB(白石カルシウム製、平均粒子径:1.8μm)
膠質炭酸カルシウム:Vigot-10(白石工業製、平均粒子径:0.17μm)
<カーボンブラック>
MONARCH 280(Cabot製)
<酸化カルシウム>
CML#31(近江化学工業製)
【0206】
【表1】
【0207】
表1から、(A)成分~(D)成分を含有する実施例1~9の一成分型硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の耐衝撃剥離接着性が良好であることが分かる。
一方、比較例1、6~7の組成物は、フェノール化合物(C)を含有しておらず、(C)成分以外の組成が同一である実施例1、8、又は9と比較して、耐衝撃剥離接着性が低い。
比較例2~4の組成物は、化合物(C)が有するフェノール性水酸基のモル数/ジシアンジアミド(D)から生成するCN基のモル数の比が大きいもの、即ち化合物(C)の配合量が相対的に大きいものであり、耐衝撃剥離接着性が極めて低い。
比較例5の組成物は、フェノール化合物(C)の代わりに、フェノール性水酸基を有しない芳香族化合物であるアニソールを配合したものであり、実施例1~9と比較して、耐衝撃剥離接着性が低い。
【0208】
【表2(1)】
【0209】
【表2(2)】
【0210】
表2から、フェノール化合物(C)を含有する実施例10~22の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例8と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。
一方、(C)成分の定義に合致しないフェノール化合物を含有する比較例9~10のうち、比較例10は、耐衝撃剥離接着性に関しては比較例8以下の値であり、T字剥離接着強さに関しては比較例8と同等の値であった。また、比較例9は、一成分型硬化性樹脂組成物を調製した後、わずか1時間以内にゲル化したため、評価サンプルを作製することができなかった。これより、アミノ基を有するフェノール化合物は、組成物の安定性を低下させ、一成分型硬化性樹脂組成物として示すべき保存安定性を害することが分かる。
更には、実施例17~21のうち、実施例19~21、特に実施例21は、40℃で14日間の貯蔵による粘度上昇率の値が低く、一成分型硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が比較的良好であることが分かる。これは、フェノール化合物(C)が芳香環上に置換基を有すること、更には、該置換基の個数に起因すると推測される。
【0211】
【表3】
【0212】
表3から、フェノール化合物(C)を含有する実施例23~28の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例12と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好であることが分かる。一方、(B)成分を含有していない比較例11は、耐衝撃剥離接着性が極めて低い。以上より、耐衝撃剥離接着性の改善効果は、(B)成分と(C)成分の併用によって達成される相乗的な作用であることが分かる。
【0213】
【表4】
【0214】
表4から、フェノール化合物(C)を含有する実施例29は、フェノール化合物(C)を含有しておらず(C)成分以外の組成が同一である比較例13と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。同様に、実施例30は比較例14と比較して、実施例31は比較例15と比較して、実施例33は比較例16と比較して、実施例34は比較例17と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。
また、実施例32は、ゴム系重合体を配合することにより、ゴム系重合体以外の組成が同一である実施例29と比較してT字剥離接着強さが向上していることが分かる。
【0215】
【表5】
【0216】
表5から、フェノール化合物(C)を含有する実施例35~39の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例18と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。
【0217】
【表6】
【0218】
表6から、フェノール化合物(C)を含有する実施例40~49の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例19と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。
更には、実施例40~49のうち、実施例41、46、47、及び49は、T字剥離接着強さの湿熱試験後保持率が大きく、得られる硬化物が耐湿熱性に優れていることが分かる。このことより、フェノール化合物(C)は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有することが耐湿熱性改善の観点から好ましいことが分かる。
【0219】
【表7】
【0220】
表7から、フェノール化合物(C)を含有する実施例50~53の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例20と比較して、耐衝撃剥離接着性が高いことが分かる。
更に、実施例50~53の一成分型硬化性樹脂組成物は、40℃で14日間の貯蔵による粘度上昇率の値が低く、貯蔵安定性が比較的良好であることが分かる。これは、使用したフェノール化合物(C)が各フェノール性水酸基のオルト位に、第三級アルキル基を1個有することに起因すると推測される。
実施例50~53の中でも、実施例51と53の一成分型硬化性樹脂組成物は粘度上昇率の値が特に低く、貯蔵安定性に優れていることが分かる。これは、使用したフェノール化合物(C)の各フェノール性水酸基のオルト位に、メチル基と第三級アルキル基とを有することに起因すると推測される。
【0221】
【表8】
【0222】
表8から、フェノール化合物(C)を含有する実施例54~56の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例21~23と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。
更には、実施例54~56は、比較例21~23と比較して、耐衝撃剥離接着性の湿熱試験後保持率が大きく、得られる硬化物が耐湿熱性に優れていることが分かる。これは、使用したフェノール化合物(C)の各フェノール性水酸基のオルト位に、メチル基と第三級アルキル基とを有することに起因すると推測される。
【0223】
【表9】
【0224】
表9から、フェノール化合物(C)を含有する実施例57~60の一成分型硬化性樹脂組成物は、(C)成分を含有していない比較例24と比較して、耐衝撃剥離接着性が良好で、また、T字剥離接着強さも高いことが分かる。
更には、実施例57~60は、比較例24と比較してT字剥離接着強さの湿熱試験後保持率が大きく、特に実施例59は良好で、得られる硬化物が耐湿熱性に優れていることが分かる。このことより、フェノール化合物(C)は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有することが耐湿熱性改善の観点から好ましく、フェノール性水酸基のオルト位にメチル基と第三級アルキル基とを有することが特に好ましいことが分かる。
一方、実施例57~60の一成分型硬化性樹脂組成物は、40℃で14日間の貯蔵による粘度上昇率の値が低く、貯蔵安定性が比較的良好で、実施例59~60はより良好で、実施例60は特に優れることが分かる。これは、各フェノール性水酸基のオルト位の置換基の個数およびその置換基の嵩高さに起因すると推測される。
【0225】
【表10(1)】
【0226】
【表10(2)】