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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-01-30
(45)【発行日】2026-02-09
(54)【発明の名称】水性ニス組成物、積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/106 20140101AFI20260202BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20260202BHJP
   C09D 11/023 20140101ALI20260202BHJP
【FI】
C09D11/106
B32B27/30
C09D11/023
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025187287
(22)【出願日】2025-11-06
【審査請求日】2025-11-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 暁史
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-31386(JP,A)
【文献】特開平10-204367(JP,A)
【文献】特開平8-120205(JP,A)
【文献】特表平6-510080(JP,A)
【文献】特開2005-255879(JP,A)
【文献】国際公開第2024/058091(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00- 13/00
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)と、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)と、水性媒体(C)と、を含有する、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用の水性ニス組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価が60mgKOH/g以下であり、平均粒子径が0.038~0.300μmであり、
前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価が60mgKOH/g以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価と、前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価の差が、下記式(1)又は(2)を満たし、
前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の固形分換算での含有量が、前記水性ニス組成物の総固形分に対して1.6~15.0質量%であり、
前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)/前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)で表される固形分換算での質量比が0.020~0.180である、水性ニス組成物。
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価≧変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価の場合:
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価-変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価≦52 ・・・(1)
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価<変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の場合:
変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価-(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価≦30 ・・・(2)
【請求項2】
前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の最低造膜温度が50℃以下である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
【請求項3】
炭化水素ワックス(D)をさらに含有し、
前記炭化水素ワックス(D)の針入度が12以下であり、平均粒子径が6μm以下である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
【請求項4】
増粘剤(E)をさらに含有し、
前記増粘剤(E)がポリウレタン会合型増粘剤である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
【請求項5】
硬化剤(F)をさらに含有し、
前記硬化剤(F)がアジリジン系硬化剤である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
【請求項6】
プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面上に、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性ニス組成物を用いて形成されたニス層と、を備える、積層体。
【請求項7】
前記プラスチックフィルムと前記ニス層との間に、絵柄層をさらに備える、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体を備える、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ニス組成物、積層体及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や日用品等の包装に用いられるプラスチックフィルム等の軟包装材料には、情報の表示、意匠性、機能性等の目的で、インキやニスを用い、グラビア印刷やフレキソ印刷による印刷が施されている。軟包装用のインキ及びニスは、従来、有機溶剤を使用した油性タイプが主流であったが、近年では環境問題等の観点から、水性タイプの要望が強くなっている。
【0003】
軟包装材料の用途の1つに、プラスチック製容器、金属製容器、紙製容器等の容器に装着される包装ラベルがある。包装ラベルとしては、例えば、容器に巻き付け、接着剤で留めることで装着されるロールラベルや、熱をかけて容器の形状に適した形に収縮させることで装着されるシュリンクラベル等が挙げられる。
前記包装ラベルの代表的な構成としては、プラスチックフィルムの内側、すなわち容器側に、絵柄層となるインキ層が積層され、前記インキ層の面上に、容器との接触等からインキ層を保護するためのニス層が積層された構成が挙げられる。また、かかる構成において、プラスチックフィルムの外側、すなわち容器とは反対側に、人の手等の外部接触等からプラスチックフィルムを保護するためのニス層がさらに積層された構成も代表的な例として挙げられる。さらに近年では、プラスチックフィルムを外部接触等から保護する目的のみならず意匠性の向上のために、外側のニス層をマットインキ層としたものも知られている。ニス層、インキ層、マットインキ層はそれぞれ、ニス、インキ、マットインキを用いて印刷により形成された塗膜である。以下、これらを総称して印刷塗膜又は印刷層ともいう。
【0004】
水性タイプのニスを使用した包装ラベルに用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ナイロンフィルム(NYフィルム)、ポリスチレンフィルム(PSフィルム)などが挙げられる。近年、他と比較し酸素透過度が高いこと、透湿度が低いこと、比重が小さいこと、柔軟性があること、低コストであることなど、様々な理由からポリプロピレンフィルム(PPフィルム)等のポリオレフィンフィルム(POフィルム)が用いられることも増えてきている。しかし、POフィルムは他のフィルムと比較して濡れ張力が低いこと、溶解度パラメーターが低いことなどから、水性タイプのニスを使用した際のPOフィルムとニス層との密着性不良が課題となっている。
【0005】
ところで、包装ラベルが使用される環境下及び容器に収容される内容物には酸性のものも多く存在することから、印刷塗膜が酸性物質に晒される場面も多く存在する。また、印刷機に備えられているゴムロールとの摩擦によって印刷塗膜の脱落が発生するなど、厳しい条件下での摩擦にも耐えられることが求められている。加えて、印刷後に印刷物を巻き取った際の、印刷塗膜と接触する反対面に印刷塗膜が転移することによる、外観不良や加工不良を起こさないことも求められている。
そのため、包装ラベルの印刷塗膜には、耐酸性、耐ブロッキング性、耐摩擦性等の塗膜物性が求められる。特に、グラビア印刷又はフレキソ印刷の場合は、インクジェット印刷に比べて一度に印刷する印刷距離が長いことから、印刷物の巻取り量も多くなり、印刷物に圧がかかりやすく、印刷塗膜と接触する反対面に印刷塗膜が転移しやすいため、優れた耐ブロッキング性が求められる。
【0006】
また、水性タイプのニスは塗膜物性を向上させるため、コアに親水性の低い樹脂を有するコアシェル型の樹脂を使用することが多く、使用環境や、保存環境によって水性タイプのニス中でコアシェル構造の崩壊による増粘及びゲル化が発生する問題がある。そのため、水性タイプのニスには、保存安定性に優れることが求められている。
【0007】
従来、ポリプロピレンフィルムに対する密着性を向上させるため、水性タイプのニス中に、ポリプロピレンフィルムと溶解度パラメーターが近く、親和性のある変性ポリプロピレン樹脂エマルジョンを含有させる検討がなされている。
例えば、特許文献1には、水性ポリウレタンと、変性ポリプロピレン系樹脂エマルジョンと、水性アクリル樹脂を含有する水性バインダーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-226758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された水性バインダーは、ラミネート用を想定されたものである。ラミネートによって保護される印刷塗膜は、それ自体の塗膜物性を求められることは少なく、耐酸性やゴムとの耐摩擦性などを満足するものではない。また、保存安定性についても十分ではなく、POフィルムに対する密着性、耐ブロッキング性についても改善の余地がある。
【0010】
本発明は、ポリオレフィンフィルムに対する密着性、耐酸性、耐ブロッキング性に優れ、かつゴムとの摩擦にも耐えうる耐摩擦性を有する塗膜を形成でき、保存安定性にも優れるグラビア印刷用又はフレキソ印刷用の水性ニス組成物、これを用いた積層体及び包装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] (メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)と、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)と、水性媒体(C)と、を含有する、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用の水性ニス組成物であって、
前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価が60mgKOH/g以下であり、平均粒子径が0.038~0.300μmであり、
前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価が60mgKOH/g以下であり、
前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価と、前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価の差が、下記式(1)又は(2)を満たし、
前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の固形分換算での含有量が、前記水性ニス組成物の総固形分に対して1.6~15.0質量%であり、
前記変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)/前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)で表される固形分換算での質量比が0.020~0.180である、水性ニス組成物。
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価≧変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価の場合:
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価-変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価≦52 ・・・(1)
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価<変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の場合:
変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価-(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価≦30 ・・・(2)
[2] 前記(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の最低造膜温度が50℃以下である、前記[1]に記載の水性ニス組成物。
[3] 炭化水素ワックス(D)をさらに含有し、
前記炭化水素ワックス(D)の針入度が12以下であり、平均粒子径が6μm以下である、前記[1]又は[2]に記載の水性ニス組成物。
[4] 増粘剤(E)をさらに含有し、
前記増粘剤(E)がポリウレタン会合型増粘剤である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水性ニス組成物。
[5] 硬化剤(F)をさらに含有し、
前記硬化剤(F)がアジリジン系硬化剤である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の水性ニス組成物。
[6] プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面上に、前記[1]~[5]のいずれかに記載の水性ニス組成物を用いて形成されたニス層と、を備える、積層体。
[7] 前記プラスチックフィルムと前記ニス層との間に、絵柄層をさらに備える、前記[6]に記載の積層体。
[8] 前記[6]又は[7]に記載の積層体を備える、包装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリオレフィンフィルムに対する密着性、耐酸性、耐ブロッキング性に優れ、かつゴムとの摩擦にも耐えうる耐摩擦性を有する塗膜を形成でき、保存安定性にも優れるグラビア印刷用又はフレキソ印刷用の水性ニス組成物、これを用いた積層体及び包装材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の積層体の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
本発明において、水性ニス組成物における「水性」とは、媒体として水を含むことを意味する。水性ニス組成物の媒体中の水の割合は、媒体の総質量に対し、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、また、100質量%であってもよい。
「塗膜」とは、水性ニス組成物により形成される塗膜のことである。特に、乾燥前の塗膜を「塗工膜」ともいい、乾燥後の塗膜を「ニス層」ともいう。塗工膜は、本発明の水性ニス組成物の塗工対象面(例えば、プラスチックフィルム等)上に、本発明の水性ニス組成物を塗工して得られる。ニス層は、塗工膜を乾燥させ、塗工膜中の媒体等の揮発成分を除去して得られる。
「媒体」とは、水、有機溶剤等の揮発する成分を意味する。具体的には以下の固形分以外の成分(揮発分)を意味する。
水性ニス組成物の「固形分」は、水性ニス組成物に含まれる成分のうち、媒体を除いた成分(不揮発分)を指し、最終的にニス層を形成することになる成分である。媒体以外の成分が常温で液体であっても、その成分は媒体には含めず、固形分に含める。固形分は、JIS K 5601-1-2:2008に準拠して測定される。
水性ニス組成物の「総固形分」は、水性ニス組成物に含まれる固形分の総質量(合計量)を意味する。
水性ニス組成物中の媒体以外の成分の含有量は、すべて固形分換算である。
「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、「単量体に基づく構成単位」を、単に「単量体単位」ともいうこともある。例えば、「プロピレンに基づく構成単位」を「プロピレン単位」ともいう。
「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の総称である。
「水性バインダー樹脂」とは、「水溶性バインダー樹脂」及び「水分散性バインダー樹脂」の総称である。水分散性バインダー樹脂としては、エマルジョン型及びディスパージョン型が例示される。なお、水性バインダー樹脂の媒体は、水性ニス組成物の媒体に含まれるものとする。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。例えばA~BはA以上B以下と同義である。
本明細書に開示の数値範囲の下限値及び上限値は任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)及び変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の重量平均分子量はそれぞれ、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)のガラス転移温度は、JIS K 7121:2012に準拠し、以下のようにして測定される。すなわち、示差走査熱量計を用い、(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)10mgを-100℃から160℃まで、20℃/分の条件で昇温させて得られる曲線(DSC曲線)におけるベースラインと吸熱カーブの接線との交点からガラス転移温度を求める。
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)及び変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価はそれぞれ、試料の不揮発分1g当たりのカルボキシ基等の酸基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、JIS K 5601-2-1:1999に準拠して測定される。
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)及び変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の平均粒子径はそれぞれ、動的光散乱法により体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される体積基準の累積頻度50%の粒子径(メジアン径:D50)である。
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の最低造膜温度は、JIS K 6828-2:2003に準拠して測定される。
炭化水素ワックス(D)の平均粒子径は、コールターカウンター法により個数基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される個数基準の累積頻度50%の粒子径(メジアン径:D50)である。コールターカウンター法とは、媒体中に分散している粒子を細孔に通過させることにより、粒子が通過する際の電気信号の変化から、粒子の粒子径及び粒子径分布を電気的に測定する方法である。
炭化水素ワックス(D)の針入度は、JIS K 2235:2022に準拠して求められる。測定温度は25℃とする。
【0016】
[水性ニス組成物]
本実施形態の水性ニス組成物は、(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)と、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)と、水性媒体(C)と、を含有する。
水性ニス組成物は、炭化水素ワックス(D)をさらに含有してもよい。
水性ニス組成物は、増粘剤(E)をさらに含有してもよい。
水性ニス組成物は、硬化剤(F)をさらに含有してもよい。
水性ニス組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)、水性媒体(C)、炭化水素ワックス(D)、増粘剤(E)及び硬化剤(F)以外の他の成分(以下、「他の任意成分」ともいう。)をさらに含有してもよい。
【0017】
<(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)>
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)(以下、「樹脂(A)」ともいう。)は、エマルジョン型の(メタ)アクリル樹脂であり、水分散性バインダー樹脂、具体的には水分散性(メタ)アクリル樹脂の一種である。
樹脂(A)は、典型的にはコア-シェル構造を有する。コア-シェル構造のコア部は、疎水性(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。コア-シェル構造のシェル部は、親水性(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。コア部とシェル部は、架橋剤により結合されていてもよい。
【0018】
コア部の疎水性(メタ)アクリル樹脂は、典型的には(メタ)アクリレート単量体に基づく構成単位を含む樹脂である。かかる樹脂としては、例えば(メタ)アクリレート系単量体の単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレート系単量体の共重合体、(メタ)アクリレート系単量体と(メタ)アクリレート系単量体以外の単量体との共重合体が挙げられる。(メタ)アクリレート単量体としては、カルボキシル基を有さないものが好ましい。
【0019】
シェル部の親水性(メタ)アクリル樹脂は、典型的にはカルボキシル基含有単量体に基づく構成単位を含む樹脂である。かかる樹脂としては、例えばカルボキシル基含有単量体の単独重合体、2種以上のカルボキシル基含有単量体の共重合体、カルボキシル基含有単量体とカルボキシル基含有単量体以外の単量体との共重合体が挙げられる。カルボキシル基含有単量体以外の単量体としては、カルボキシル基を有さないものであればよく、(メタ)アクリレート単量体でも(メタ)アクリレート系単量体以外の単量体でもよい。
【0020】
(メタ)アクリレート系単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリレート系単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0021】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸(無水マレイン酸)、フマル酸、イタコン酸(無水イタコン酸)が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0022】
(メタ)アクリレート系単量体及びカルボキシル基含有単量体以外の単量体としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の不飽和カルボン酸エステルが挙げられる。
これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
樹脂(A)は自己架橋型であってもよい。
樹脂(A)が自己架橋型である場合、樹脂(A)は、典型的には、反応性官能基含有単量体に基づく構成単位を含む。反応性官能基含有単量体に基づく構成単位は、コア部に含まれてもよく、シェル部に含まれてもよく、それらの両方に含まれてもよい。
反応性官能基含有単量体としては、アルコキシシリル基含有単量体、ヒドラジン基含有単量体、エポキシ基含有単量体、メチロール基含有単量体、アルコキシメチル基含有単量体、アジピン酸ジヒドラジド、ジアセトンアクリルアミド、アセト酢酸ビニル、アセト酢酸アリル、及びアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテルが挙げられる。アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、及び2,3-ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応性官能基含有単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
樹脂(A)において、コア部とシェル部の質量比(コア部:シェル部)は、20:80~80:20が好ましく、25:75~75:25がより好ましく、30:70~70:30がさらに好ましい。コア部とシェル部の質量比が上記範囲内であると、水性ニス組成物の保存安定性、成膜性、塗膜の基材に対する密着性、耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐水摩擦性がより優れる。上記範囲よりもコア部が多く、シェル部が少なくなると、水性ニス組成物の保存安定性、成膜性、塗膜の基材に対する密着性がやや低下する。上記範囲よりもコア部が少なく、シェル部が多くなると、塗膜の耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐水摩擦性がやや低下する。
【0025】
樹脂(A)の酸価(以下、「(A)の酸価」ともいう。)は、60mgKOH/g以下であり、55mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましく、また、0mgKOH/g以上であってもよく、1mgKOH/g以上であってもよく、5mgKOH/g以上であってもよく、10mgKOH/g以上であってもよく、20mgKOH/g以上であってもよく、25mgKOH/g以上であってもよい。上記上限値及び上記下限値は適宜組み合わせることができる。(A)の酸価が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性、耐酸性、耐水摩擦性、保存安定性が低下する。
【0026】
樹脂(A)の平均粒子径は、0.038~0.300μmであり、0.039~0.250μmが好ましく、0.040~0.200μmがより好ましい。樹脂(A)の平均粒子径が上記下限値未満であると、塗膜の基材に対する密着性、耐酸性、耐ブロッキング性、耐水摩擦性が低下する。樹脂(A)の平均粒子径が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性、耐摩擦性(特に、ゴムに対する耐摩擦性(以下、「耐ゴム摩擦性」ともいう。))、造膜性、分散安定性が低下する。
【0027】
樹脂(A)のガラス転移温度は、-10~90℃が好ましく、-5~70℃がより好ましく、0~60℃がさらに好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が上記下限値未満であると、塗膜の耐水摩擦性、耐ブロッキング性がやや低下する。樹脂(A)のガラス転移温度が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性、耐摩擦性(特に、耐ゴム摩擦性)がやや低下する。
【0028】
樹脂(A)の最低造膜温度は、70℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、10℃以下が特に好ましい。樹脂(A)の最低造膜温度が上記上限値を超過すると、水性ニス組成物の成膜性、塗膜の基材に対する密着性、耐酸性、耐摩擦性、耐水摩擦性がやや低下する。
【0029】
樹脂(A)の重量平均分子量は、30000~1000000が好ましく、50000~900000がより好ましく、100000~800000がさらに好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量が上記下限値未満であると、塗膜の耐摩擦性(特に、布に対する耐摩擦性(以下、「耐布摩擦性」ともいう。)や耐ゴム摩擦性)、耐水摩擦性、耐ブロッキング性がやや低下する。樹脂(A)の重量平均分子量が上記上限値を超過すると、水性ニス組成物の保存安定性がやや低下する。
【0030】
樹脂(A)としては、公知の製造方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
樹脂(A)の製造において、単量体の重合方法としては特に限定されないが、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられ、特にラジカル重合としては、塊状重合(バルク重合)、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。中でも乳化重合が好ましい。乳化重合とは、重合に用いる単量体を水媒体中で、乳化剤と重合開始剤の存在下で重合する方法である。樹脂(A)は、コア部とシェル部をそれぞれ製造した後に複合化して製造してもよく、多段階の乳化重合により製造してもよい。重合様式は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0031】
樹脂(A)の市販品としては、例えば、CHEMIPAZ株式会社製の商品名「ハイロス-X」シリーズ;BASFジャパン株式会社製の商品名「ジョンクリル」シリーズ;Covestro社製の商品名「ネオクリル」シリーズ等が挙げられる。
樹脂(A)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0032】
<変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)>
変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)(以下、「樹脂(B)」ともいう。)は、エマルジョン型の変性ポリプロピレン樹脂であり、典型的には、ポリプロピレン樹脂に変性処理を行い、官能基を導入した後、乳化剤の使用あるいは自己乳化、コアシェル構造の形成によって、水中でエマルジョンとして安定化させた樹脂である。
樹脂(B)は、水分散性バインダー樹脂、具体的には水分散性変性ポリプロピレン樹脂の一種である。
樹脂(B)は、典型的にはプロピレン単位と、変性基を有する単量体単位とを含む樹脂である。樹脂(B)は、プロピレン単位以外のオレフィン(以下、「他のオレフィン」ともいう。)単位を含んでいてもよい。
【0033】
他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、ノルボルネン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
他のオレフィンは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
他のオレフィン単位の含有量は、プロピレン単位と他のオレフィン単位の含有量の合計を100質量%としたときに、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
本明細書において、「実質的に含まない」とは、意図的に配合していないことを意味する。
【0035】
変性基としては特に限定されないが、水性ニス組成物の保存安定性、塗膜の基材に対する密着性(特に、ポリプロピレンフィルム(以下、「PPフィルム」ともいう。)等のポリオレフィンフィルム(以下、「POフィルム」ともいう。)に対する密着性)の観点から、酸変性基が好ましい。すなわち、変性基を有する単量体としては、酸変性基を有する単量体が好ましく、樹脂(B)としては、酸変性ポリプロピレン樹脂エマルジョンが好ましい。
酸変性基としては、例えば、カルボキシ基、酸無水物基、スルホン酸基等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基、酸無水物基が好ましい。
【0036】
酸変性基を有する単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、共重合の際の反応性の観点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
不飽和カルボン酸は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0037】
変性基を有する単量体単位の含有量は、プロピレン単位と他のオレフィン単位の含有量の合計100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1.5~7質量部がさらに好ましい。変性基を有する単量体単位の含有量が上記下限値未満であると、変性ポリプロピレン樹脂のエマルジョン化が困難になる。加えて、塗膜の基材に対する密着性(特に、PPフィルムに対する密着性)がやや低下する。変性基を有する単量体単位の含有量が上記上限値を超過すると、塗膜の耐ブロッキング性がやや低下する。
【0038】
樹脂(B)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じてプロピレン単位、他のオレフィン単位、及び変性基を有する単量体単位以外の単量体(以下、「他の単量体」ともいう。)単位をさらに含んでいてもよい。
他の単量体としては、エチレンと共重合可能であれば特に限定されない。
【0039】
樹脂(B)の酸価は(以下、「(B)の酸価」ともいう。)、60mgKOH/g以下であり、55mgKOH/g以下が好ましく、40mgKOH/g以下がより好ましく、また、0mgKOH/g以上であってもよく、5mgKOH/g以上であってもよく、10mgKOH/g以上であってもよく、15mgKOH/g以上であってもよい。上記上限値及び上記下限値は適宜組み合わせることができる。(B)の酸価が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性(特に、PPフィルムに対する密着性)、耐酸性、耐水摩擦性が低下する。
【0040】
(A)の酸価と(B)の酸価の差は、下記式(1)又は(2)を満たす。
(A)の酸価≧(B)の酸価の場合:
(A)の酸価-(B)の酸価≦52 ・・・(1)
(A)の酸価<(B)の酸価の場合:
(B)の酸価-(A)の酸価≦30 ・・・(2)
【0041】
(A)の酸価-(B)の酸価(以下、「酸価の差(A-B)」ともいう。)は、52以下であり、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下がさらに好ましく、35以下がよりさらに好ましく、30以下が特に好ましく、25以下が最も好ましく、また、0以上であってもよく、1以上であってもよく、3以上であってもよく、5以上であってもよく、10以上であってもよい。上記上限値及び上記下限値は適宜組み合わせることができる。酸価の差(A-B)が上記上限値を超過すると、水性ニス組成物中での樹脂(A)及び樹脂(B)エマルジョンの安定化状態が崩れやすく、ゲル化や増粘が起こりやすくなり、水性ニス組成物の保存安定性が低下する。加えて、塗膜の基材に対する密着性、耐水摩擦性が低下する。
【0042】
(B)の酸価-(A)の酸価(以下、「酸価の差(B-A)」ともいう。)は、30以下であり、28以下が好ましく、25以下がより好ましく、23以下がさらに好ましく、20以下がよりさらに好ましく、また、0超であってもよく、1以上であってもよく、3以上であってもよく、5以上であってもよく、10以上であってもよい。上記上限値及び上記下限値は適宜組み合わせることができる。酸価の差(B-A)が上記上限値を超過すると、水性ニス組成物中での樹脂(A)及び樹脂(B)のエマルジョンの安定化状態が崩れやすく、ゲル化や増粘が起こりやすくなり、水性ニス組成物の保存安定性が低下する。加えて、塗膜の基材に対する密着性、耐ブロッキング性、耐水摩擦性が低下する。
【0043】
樹脂(B)の平均粒子径は、0.001~0.250μmが好ましく、0.001~0.150μmがより好ましく、0.001~0.100μmがさらに好ましい。樹脂(B)の平均粒子径が上記下限値未満であると、塗膜の耐ブロッキング性がやや低下する。樹脂(B)の平均粒子径が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性(特に、PPフィルムに対する密着性)、造膜性、分散安定性がやや低下する。
【0044】
樹脂(B)としては、公知の製造方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
樹脂(B)は、例えば、ポリプロピレン樹脂に変性処理を行い、官能基を導入した後、乳化剤の使用あるいは自己乳化することで得られる。
変性ポリプロピレン樹脂を変性処理する方法としては特に限定されないが、例えば、プロピレンと、不飽和カルボン酸等の変性基を有する単量体と、必要に応じて他のオレフィン及び他の単量体から選ばれる1つ以上とを共重合する方法;未変性のポリプロピレン樹脂に、不飽和カルボン酸等の変性基を有する単量体を導入する方法等が挙げられる。
【0045】
未変性のポリプロピレン樹脂は、プロピレンを単独重合して得られる重合体、又は、プロピレンと、他のオレフィン及び他の単量体から選ばれる1つ以上とを共重合して得られる共重合体である。
未変性のポリプロピレン樹脂に、不飽和カルボン酸等の変性基を有する単量体を導入する方法としては特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤の存在下、未変性のポリプロピレン樹脂と変性基を有する単量体とを、未変性のポリプロピレン樹脂の融点以上に溶融して反応させる方法;ラジカル発生剤の存在下、未変性のポリプロピレン樹脂に変性基を有する単量体をグラフト共重合する方法等が挙げられる。
【0046】
樹脂(B)の市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の商品名「アプトロック」シリーズ;日本製紙株式会社製の商品名「アウローレン」シリーズ;東洋紡エムシー株式会社製の商品名「ハードレン」シリーズ;CHEMIPAZ株式会社製の商品名「ZE-1224」等が挙げられる。
樹脂(B)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
<水性媒体(C)>
水性媒体(C)としては、水;水と有機溶剤との混合溶剤等が挙げられる。
有機溶剤としては、水に可溶であれば特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。有機溶剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
水性媒体(C)は、有機溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0048】
<炭化水素ワックス(D)>
塗膜の耐水摩擦性、耐摩擦性、耐ブロッキング性をより向上させる目的で、水性ニス組成物に、炭化水素ワックス(D)をさらに含有させることができる。
炭化水素ワックス(D)としては、水性ワックスが好ましい。
水性ワックスとは、ワックスを水に分散してエマルジョン又はディスパージョンにしたものである。水に分散させる炭化水素ワックスは、従来公知のワックスであってよく、例えば、ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、変性パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックスが好ましく、ポリオレフィンワックスがより好ましい。
炭化水素ワックス(D)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンワックスが好ましい。ポリエチレンワックスとしては、高密度重合ポリエチレン、低密度重合ポリエチレン、酸化ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、及び特殊モノマー変性ポリエチレン等が挙げられる。
フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、一酸化炭素と水素を原料とし、フィッシャー・トロプシュ法により製造されたワックスであり、ほぼ飽和の、分枝を有しない直鎖の分子構造を有する。
【0050】
炭化水素ワックス(D)の平均粒子径は、10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、4μm以下がよりさらに好ましく、また、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、1.5μm以上であってもよい。炭化水素ワックス(D)の平均粒子径が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性、耐摩擦性、耐水摩擦性、印刷適性がやや低下する。
炭化水素ワックス(D)が水性ワックスである場合、水性ワックス中の分散粒子の平均粒子径を、水性ニス組成物中の炭化水素ワックス(D)の平均粒子径とみなすことができる。
【0051】
炭化水素ワックス(D)の針入度(硬度)は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下がよりさらに好ましく、3以下が特に好ましい。炭化水素ワックス(D)の針入度が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性、耐水摩擦性、耐摩擦性がやや低下する。
【0052】
<増粘剤(E)>
水性ニス組成物の粘度を高める目的、及び水性ニス組成物の安定性を向上させる目的で、水性ニス組成物に増粘剤(E)をさらに含有させることができる。
増粘剤(E)としては、例えばポリウレタン系増粘剤、ポリアクリル系増粘剤、ポリアミド系増粘剤、セルロース系増粘剤、ベントナイト等の粘土鉱物等が挙げられる。中でも、水性ニス組成物の保存安定性の向上効果に優れる点で、ポリウレタン系増粘剤が好ましく、その中でも特に、会合型のポリウレタン系増粘剤(以下、「ポリウレタン会合型増粘剤」ともいう。)がより好ましい。
【0053】
会合型の増粘剤は、分子中に疎水基と親水基とを有する高分子である。増粘剤の疎水基が分子間での相互作用によって、増粘剤同士又は樹脂等の疎水性物質と会合することによって、網目構造を構築し、水性ニス組成物の粘性をより高める。また、樹脂(A)や樹脂(B)のエマルジョン表面の親水基と、増粘剤の親水基とが会合することでも、水性ニス組成物の粘性をより高める。
会合型の増粘剤の疎水基としては、例えば、アルキル基、フェニル基等が挙げられる。
会合型の増粘剤の親水基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミド基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0054】
ポリウレタン会合型増粘剤としては、例えば、ウレタン変性ポリエーテル、ポリエーテルポリオール系ウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0055】
ポリウレタン系増粘剤の市販品としては、例えば、サンノプコ株式会社製の商品名「SNシックナー」シリーズ等が挙げられる。
増粘剤(E)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
<硬化剤(F)>
硬化剤(F)としては、例えば、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、エポキシ系硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、塗膜の耐水摩擦性の観点から、アジリジン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤が好ましく、アジリジン系硬化剤がより好ましい。
硬化剤(F)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
アジリジン系硬化剤は、1分子中に2個以上のアジリジン基を含有する化合物である。アジリジン基と樹脂(A)中のカルボキシル基とが反応し、樹脂(A)の架橋反応(硬化反応)が進行する。
アジリジン系硬化剤1分子中に含まれるアジリジン基の数(官能基数)は、樹脂(A)との架橋反応が起こった際に、網目構造を取り、より物性の向上が見込める点から、3以上が好ましく、添加した際の安定性の観点から、4以下が好ましい。
【0058】
アジリジン系硬化剤としては、例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0059】
アジリジン系硬化剤の市販品としては、例えば、株式会社日本触媒製の商品名「ケミタイト」シリーズ;Stahl社製の商品名「Picassian」シリーズ等が挙げられる。
アジリジン系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0060】
<他の任意成分>
他の任意成分としては、公知の添加剤を用いることができる。添加剤の例としては、樹脂(A)及び樹脂(B)以外のバインダー樹脂(以下、「他のバインダー樹脂」ともいう。)、消泡剤、界面活性剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面張力調整剤、レオロジー調整剤、光安定剤、滑剤、分散剤、安定剤、pH調整剤、フィラー、防カビ剤、帯電防止剤、金属微粒子、磁性粉等が挙げられる。
他の任意成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0061】
他のバインダー樹脂としては、樹脂(A)及び樹脂(B)以外の水性バインダー樹脂(以下、「他の水性バインダー樹脂」ともいう。)が好ましい。
他の水性バインダー樹脂としては特に限定されないが、例えば、水溶性(メタ)アクリル樹脂、ディスパージョン型(メタ)アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリオレフィン樹脂、水性ポリエステル樹脂が挙げられる。水性ポリウレタン樹脂、水性ポリオレフィン樹脂、水性ポリエステル樹脂はそれぞれ、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、ディスパージョンタイプのいずれであってもよい。
他のバインダー樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
なお、視認性を考慮すると、水性ニス組成物は顔料等の着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
本明細書において、「実質的に含まない」とは、意図的に配合していないことを意味する。
【0063】
<各成分の含有量>
樹脂(A)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して、24~38質量%が好ましく、26~36質量%がより好ましく、28~34質量%がさらに好ましい。
樹脂(A)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総固形分に対して、76~90質量%が好ましく、78~88質量%がより好ましく、80~86質量%がさらに好ましい。
樹脂(A)の含有量が上記下限値未満であると、塗膜の耐ブロッキング性、耐摩擦性(特に、耐ゴム摩擦性)、耐水摩擦性がやや低下する。樹脂(A)の含有量が上記上限値を超過すると、塗膜の基材に対する密着性、耐酸性、印刷適性がやや低下する。
【0064】
樹脂(B)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して、0.5~6.0質量%が好ましく、1.0~4.0質量%がより好ましく、1.5~3.5質量%がさらに好ましい。
樹脂(B)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総固形分に対して、1.6~15.0質量%であり、2.5~10.0質量%が好ましく、4.0~8.0質量%がより好ましい。
樹脂(B)の含有量が上記下限値未満であると、塗膜の基材に対する密着性(特に、PPフィルムに対する密着性)、耐酸性、印刷適性が低下する。樹脂(B)の含有量が上記上限値を超過すると、塗膜の耐ブロッキング性、耐摩擦性(特に、耐ゴム摩擦性)、耐水摩擦性が低下する。
【0065】
樹脂(B)/樹脂(A)で表される固形分換算での質量比(以下、「B/A比」ともいう。)は、0.020~0.180であり、0.030~0.150が好ましく、0.050~0.110がより好ましい。B/A比が上記下限値未満であると、塗膜の基材に対する密着性(特に、PPフィルムに対する密着性)、耐酸性が低下する。B/A比が上記上限値を超過すると、塗膜の耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐水摩擦性が低下する。
【0066】
水性媒体(C)の含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して、45~85質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましく、55~75質量%がさらに好ましい。水性媒体(C)の含有量が上記下限値未満であると、水性ニス組成物の流動性、印刷適性がやや低下する。水性媒体(C)の含有量が上記上限値を超過すると、塗膜の耐ブロッキング性、乾燥性がやや低下する。
【0067】
水性ニス組成物が炭化水素ワックス(D)を含有する場合、炭化水素ワックス(D)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して、0.1~3.0質量%が好ましく、0.2~2.0質量%がより好ましく、0.3~1.0質量%がさらに好ましい。
水性ニス組成物が炭化水素ワックス(D)を含有する場合、炭化水素ワックス(D)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総固形分に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、0.5~3.0質量%がより好ましく、1.0~2.0質量%がさらに好ましい。
炭化水素ワックス(D)の含有量が上記下限値未満であると、炭化水素ワックス(D)による耐ブロッキング性、耐摩擦性、耐水摩擦性の向上効果が十分にしない。炭化水素ワックス(D)の含有量が上記上限値を超過すると、印刷適性がやや低下する。
【0068】
水性ニス組成物が増粘剤(E)を含有する場合、増粘剤(E)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して、0.01~1.00質量%が好ましく、0.05~0.50質量%がより好ましく、0.10~0.30質量%がさらに好ましい。
水性ニス組成物が増粘剤(E)を含有する場合、増粘剤(E)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総固形分に対して、0.01~3.00質量%が好ましく、0.10~1.00質量%がより好ましく、0.30~0.80質量%がさらに好ましい。
増粘剤(E)の含有量が上記下限値未満であると、増粘剤(E)による水性ニス組成物の粘度の向上効果及び保存安定性の向上効果が十分に発現しない。増粘剤(E)の含有量が上記上限値を超過すると、水性ニス組成物の印刷適性、及び塗膜の耐摩擦性、耐水摩擦性がやや低下する。
【0069】
水性ニス組成物が硬化剤(F)を含有する場合、硬化剤(F)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して、0.1~5.0質量%が好ましく、0.5~4.0質量%がより好ましく、1.0~3.0質量%がさらに好ましい。
水性ニス組成物が硬化剤(F)を含有する場合、硬化剤(F)の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総固形分に対して、1.0~10.0質量%が好ましく、2.0~9.0質量%がより好ましく、3.0~8.0質量%がさらに好ましい。
硬化剤(F)の含有量が上記下限値未満であると、塗膜の耐酸性、耐摩擦性、耐水摩擦性がやや低下する。硬化剤(F)の含有量が上記上限値を超過すると、塗膜の耐摩擦性、耐水摩擦性がやや低下する。
【0070】
他の任意成分の固形分換算での含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、例えば水性ニス組成物の総質量に対して0~20質量%が好ましく、0~15質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましい。
水性ニス組成物が他の任意成分を含有する場合、他の任意成分の固形分換算での含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.50質量%以上がさらに好ましい。他の任意成分の含有量が上記下限値未満であると、他の任意成分による効果が十分に発現しない。
【0071】
<製造方法>
本実施形態の水性ニス組成物は、例えば、樹脂(A)、樹脂(B)、必要に応じてさらなる水性媒体(C)、必要に応じて炭化水素ワックス(D)、必要に応じて増粘剤(E)、必要に応じて硬化剤(F)、必要に応じて他の任意成分を混合することで得られる。
各成分の混合方法としては特に限定されず、種々の方法により各成分を混合することができる。例えば、樹脂(A)、樹脂(B)、必要に応じて炭化水素ワックス(D)、必要に応じて増粘剤(E)、必要に応じて硬化剤(F)、必要に応じて他の任意成分を、水性媒体(C)に溶解又は分散させる方法が挙げられる。特に、硬化剤(F)は水性ニス組成物を使用する直前に配合することが好ましい。
【0072】
各成分を水性媒体(C)に溶解又は分散させる方法としては特に制限されず、公知の分散機を用いて行うことができる。分散機としては、例えばペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、ダイノミル、ロールミル、超音波ミル、高圧衝突分散機などが挙げられる。このとき、1種の分散機を使用して1回又は複数回分散処理してもよいし、2種以上の分散機を併用して複数回分散処理してもよい。
【0073】
<作用効果>
以上説明した本実施形態の水性ニス組成物によれば、上述した樹脂(A)、樹脂(B)及び水性媒体(C)を含有し、樹脂(B)の固形分換算での含有量が1.0~15.0質量%であることによって基材に対する密着性(特に、PPフィルムに対する密着性)、耐酸性、耐ブロッキング性、耐摩擦性(特に、耐ゴム摩擦性)に優れる塗膜を形成できる。
【0074】
樹脂(B)の代わりに変性ポリエチレン樹脂エマルジョン(以下、「樹脂(B’)」ともいう。)を用いる場合、樹脂(B)と同等の密着性の効果を発現させるためには、水性ニス組成物中の樹脂(B’)の固形分換算での含有量を増やす(具体的には、15.0質量%よりも多くする)必要がある。
しかし、樹脂(B’)の含有量が増えると、塗膜の耐ブロッキング性及び耐摩擦性や、耐水摩擦性が低下してしまう。
樹脂(B)であれば、含有量を増やすことなく(具体的には15.0質量%以下でも)十分な密着性を塗膜に付与できる。よって、基材に対する密着性と、耐ブロッキング性、耐摩擦性及び耐水摩擦性とのバランスが良好である。
【0075】
加えて、本実施形態の水性ニス組成物によれば、(A)の酸価と(B)の酸価の差が前記式(1)又は(2)を満たすので、保存安定性にも優れる。
【0076】
<用途>
本実施形態の水性ニス組成物は、プラスチックフィルム等の任意の基材の表面(基材の表面に任意の層が形成されている場合は、この任意の層の表面)に印刷する際のニスとして好適である。その中でも、グラビア印刷又はフレキソ印刷により基材の表面又は前記任意の層の表面に印刷する際のニスとして好適である。すなわち、本実施形態の水性ニス組成物は、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用として特に好適である。
なお、本実施形態の水性ニス組成物は、そのままニスとして用いてもよいし、水等で希釈した希釈液をニスとして用いてもよい。
本実施形態の水性ニス組成物は、任意の基材に印刷されてニス層を形成する。以下、水性ニス組成物を用いて形成されたニス層を印刷層ともいう。
【0077】
[積層体]
図1に、本発明の一実施形態に係る積層体の一例を示す。なお、図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
図1の積層体10は、基材であるプラスチックフィルム11と、プラスチックフィルム11の一方の面上に設けられたニス層12とを備える印刷物である。
【0078】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルム11を構成する樹脂としては、例えばポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、乳白ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリスチレン(PS)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリアミド(NY)等のプラスチックフィルム(基材フィルム)が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。すなわち、プラスチックフィルム11としては、ポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルムがより好ましい。
これらのプラスチックフィルム11は1種を単独で用いてもよく2種以上を貼り合わせて使用してもよい。
【0079】
プラスチックフィルム11は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。すなわち、プラスチックフィルム11は、単層フィルムであってもよいし、積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルム11が積層フィルムである場合、同じ種類のフィルムを2枚以上積層した構成であってもよいし、異なる種類のフィルムを2枚以上積層した構成であってもよい。
プラスチックフィルム11が積層フィルムである場合、少なくともニス層12と接する層がポリオレフィンフィルムであることが好ましく、ポリプロピレンフィルムあることがより好ましい。
【0080】
プラスチックフィルム11は、コロナ処理が施されていなくてもよいし、コロナ処理が施されていてもよい。
プラスチックフィルム11の厚さ(2種以上を貼り合わせて使用する場合は貼り合わせ後の厚さ)は特に限定されず、例えば、10~50μmであってもよい。
【0081】
<ニス層>
図示例の積層体10において、ニス層12は、プラスチックフィルム11の一方の面上に設けられている。
ニス層12は、上述した本発明の水性ニス組成物を用いて形成された層である。
ニス層12は、プラスチックフィルム11を保護する保護層である。
ニス層12は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
ニス層12の厚さは特に限定されず、例えば、0.1~1μmであってもよい。なお、ニス層が粒子(例えば炭化水素ワックス(D)の粒子)を含み、粒子の一部がニス層の表面上に突出している場合、ニス層の厚さは、粒子が突出していない部分の厚さとする。
【0082】
<積層体の製造方法>
本実施形態の積層体10の製造方法は、プラスチックフィルム11の一方の面上に、本発明の水性ニス組成物を用いてニス層12を形成する工程を含む。
本発明の積層体10の製造方法では、例えばプラスチックフィルム11の一方の面上に、本発明の水性ニス組成物を塗工して塗工膜を形成して積層体前駆体とし、次いで、塗工膜を乾燥させてニス層12を形成する。
なお、本発明の水性ニス組成物をプラスチックフィルム11の一方の面上に塗工し、得られた塗工膜を乾燥させてニス層12を形成した後、さらに本発明の水性ニス組成物を塗工(重ね塗り)し、得られた塗工膜を乾燥させる工程を1回以上行い、積層構造のニス層を形成してもよい。本発明の水性ニス組成物を重ね塗りする場合、各水性ニス組成物の組成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
ニス層12の形成方法は、公知の印刷方法であってよい。例えば、プラスチックフィルム11の一方の面上に本発明の水性ニス組成物を塗工し、乾燥することでニス層12が形成される。
塗工方法は、公知の塗工方法であってよく、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ハケ塗り、グラビアコーター法、ダイコーター法、バーコーター法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法及びカーテンコート法等が挙げられる。これらの中でも、品質及び生産性に優れる点からグラビア印刷法、フレキソ印刷法が好ましい。その中でも特に、高速印刷適性に優れる点から、フレキソ印刷法がより好ましい。
【0084】
塗工膜の乾燥方法としては、プラスチックフィルム11の一方の面上に塗工された水性ニス組成物に含まれる水性媒体(C)を除去できれば特に制限されず、公知の乾燥方法を用いることができる。例えば、自然乾燥であってもよいし、減圧乾燥、加圧乾燥、加熱乾燥、風乾等の強制乾燥であってもよい。
加熱により乾燥する場合、乾燥温度は、60~100℃が好ましい。
【0085】
<作用効果>
以上説明した本実施形態の積層体は、プラスチックフィルムの一方の面上に、上述した本発明の水性ニス組成物を用いて形成されたニス層が設けられており、耐酸性、耐ブロッキング性、耐摩擦性(特に、耐ゴム摩擦性)に優れる。また、ニス層は、プラスチックフィルムに対する密着性に優れる。
【0086】
<用途>
本実施形態の積層体は、包装材、特に包装ラベルとして好適である。
包装ラベルは、プラスチック製容器、金属製容器、紙製容器等の容器に装着される。包装ラベルとしては、例えば、容器に巻き付け、接着剤で留めることで装着されるロールラベルや、熱をかけて容器の形状に適した形に収縮させることで装着されるシュリンクラベル等が挙げられる。
積層体が包装ラベルに用いられる場合、典型的には積層体のニス層側が包装ラベルの内側、すなわち容器側となるが、積層体のニス層側を包装ラベルの外側、すなわち視認側としてもよい。積層体のニス層側を包装ラベルの内側とすれば、ニス層によって容器の接触等からプラスチックフィルム及び後述の絵柄層を保護できる。積層体のニス層側を包装ラベルの外側とすれば、ニス層によって人の手等の外部接触からプラスチックフィルムを保護できる。
【0087】
<他の実施形態>
積層体は、上述した実施形態に限定されない。
例えば図2に示すように、積層体10は、プラスチックフィルム11とニス層12との間に絵柄層13さらに備えていてもよい。すなわち、積層体10は、プラスチックフィルム11の一方の面上に、絵柄層13及びニス層12がこの順に形成されていてもよい。
絵柄層13は、典型的にはインキを用いて形成される印刷層である。インキは公知のインキであってよい。インキは典型的には顔料を含有する。絵柄層13の形成方法は、ニス層12の形成方法と同様、公知の印刷方法であってよい。
積層体10が絵柄層13を備える場合、プラスチックフィルム11の一方の面上にインキを塗工し、乾燥させて絵柄層13を形成した後に、この絵柄層13上に本発明の水性ニス組成物を用いてニス層12を形成する。絵柄層13を形成する際は、インキを重ね塗りして、積層構造の絵柄層13を形成してもよい。
【0088】
図2に示す絵柄層13はプラスチックフィルム11の一方の面の全体に設けられているが、絵柄層13は典型的にはプラスチックフィルム11の一方の面上の一部に設けられる。すなわち、典型的にはプラスチックフィルム11の一方の面は、一部が絵柄層13から露出しており、この露出した面とニス層12とが直接、接触するため、プラスチックフィルム11とニス層12は十分に密着する。
なお、積層体10が絵柄層13を備える場合、積層体10のニス層12側を積層体10の裏側、すなわち積層体10を包装ラベルとして用いる際の包装ラベルの内側とする。絵柄層13は、ニス層12によって容器の接触等から保護される。
【0089】
また、例えば図2に示すように、積層体10は、プラスチックフィルム11の他方の面上に、他の層14をさらに備えていてもよい。
他の層14は、人の手等の外部接触からプラスチックフィルム11を保護する保護層である。
他の層14としては、例えばニス層、マットインキ層が挙げられる。特に、他の層14がマットインキ層であれば、積層体10にマット調の意匠性を付与できる。
プラスチックフィルム11の他方の面上におけるニス層は、本発明の水性ニス組成物を用いて形成されるものでもよく、公知のニスを用いて形成されるものでもよい。
マットインキ層は、典型的にはマットインキを用いて形成される印刷層である。マットインキは公知のマットインキであってよい。マットインキは典型的にはマット化剤を含有する。
他の層14の形成方法は、ニス層12の形成方法と同様、公知の印刷方法であってよい。
なお、積層体10が他の層14を備える場合、積層体10の他の層14側を積層体10の表側、すなわち積層体10を包装ラベルとして用いる際の包装ラベルの外側とする。
図2に示す積層体10は、プラスチックフィルム11及びニス層12に加えて、絵柄層13及び他の層14を備えるものであるが、積層体10は、プラスチックフィルム11及びニス層12に加えて、絵柄層13又は他の層14のいずれかを備えるものであってもよい。
【0090】
[包装材]
本実施形態の包装材は、上述した本発明の積層体を備える。
包装材の具体的な態様としては、例えば、飲料、惣菜や弁当などの食品、化粧品等の日用品等の包装容器に装着されるプラスチックラベル等の各種包装ラベルとして用いることができる。その中でも特に、飲食料用ラベルとして好適である。
【実施例
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[使用原料]
<(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)>
(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)又はその比較品として、以下に示す化合物を用いた。
・A-1:CHEMIPAZ株式会社製、商品名「ハイロス-X 430F」、不揮発分:41.5質量%、酸価:33mgKOH/g、平均粒子径:0.040μm、最低造膜温度:5℃未満、ガラス転移温度:21℃。
・A-2:BASFジャパン株式会社製、商品名「Joncryl PDX-7511」、不揮発分:45質量%、酸価:54mgKOH/g、平均粒子径:0.090μm、最低造膜温度:5℃未満、ガラス転移温度:9℃。
・A-3:BASFジャパン株式会社製、商品名「Joncryl PDX-7440」、不揮発分:48.5質量%、酸価:1mgKOH/g、平均粒子径:0.250μm、最低造膜温度:50℃、ガラス転移温度:40℃。
・A-4:BASFジャパン株式会社製、商品名「Joncryl PDX-7780」、不揮発分:48質量%、酸価:46mgKOH/g、平均粒子径:0.100μm、最低造膜温度:50℃超え。
・A-5:CHEMIPAZ株式会社製、商品名「ハイロス-X TE-1336」、不揮発分:39質量%、酸価:64mgKOH/g、平均粒子径:0.150μm、最低造膜温度:5℃未満。樹脂(A)の比較品。
・A-6:CHEMIPAZ株式会社製、商品名「ハイロス-X RE-218」、不揮発分:40質量%、酸価:49mgKOH/g、平均粒子径:0.035μm、最低造膜温度:5℃未満、ガラス転移温度:0℃。樹脂(A)の比較品。
・A-7:CHEMIPAZ株式会社製、商品名「ハイロス-X TE-1124」、不揮発分:60質量%、酸価:25mgKOH/g、平均粒子径:0.330μm、最低造膜温度:5℃未満。樹脂(A)の比較品。
【0093】
<変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)>
変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)又はその代替品として、以下に示す化合物を用いた。
・B-1:三菱ケミカル株式会社製、商品名「アプトロック BW-5550」、不揮発分:30質量%、酸価:18mgKOH/g。
・B-2:日本製紙株式会社製、商品名「アウローレン S-4891」、不揮発分:30質量%、酸価:0mgKOH/g。
・B-3:日本製紙株式会社製、商品名「アウローレン Sシリーズ」、不揮発分:25質量%、酸価:26mgKOH/g。
・B-4:東洋紡エムシー株式会社製、商品名「ハードレン NA-3002」、不揮発分:30質量%、酸価:33mgKOH/g。
・B-5:CHEMIPAZ株式会社製、商品名「ZE-1224」、不揮発分:30質量%、酸価:50mgKOH/g。
・B-6:住友精化株式会社製、商品名「ザイクセンAC」、不揮発分:30質量%、酸価:62.2mgKOH/g。樹脂(B)の比較品。
【0094】
<水性媒体(C)>
水性媒体(C)として、以下に示す媒体を用いた。
・C-1:水道水。
【0095】
<炭化水素ワックス(D)>
炭化水素ワックス(D)として、以下に示す化合物を用いた。
・D-1:ポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、商品名「ケミパール W-500」、不揮発分:40質量%、針入度:10、平均粒子径:2.5μm)。
・D-2:ポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、商品名「ケミパール W-410」、不揮発分:40質量%、針入度:3、平均粒子径:9.5μm)。
・D-3:ポリエチレンワックス、不揮発分:100質量%、針入度:13、平均粒子径:2.2μm。
【0096】
<増粘剤(E)>
増粘剤(E)として、以下に示す化合物を用いた。
・E-1:ポリウレタン会合型増粘剤(サンノプコ株式会社製、商品名「SNシックナー612」、不揮発分:40質量%)。
・E-2:ポリアクリル系増粘剤(BASFジャパン株式会社製、商品名「Rheovis AS1130」、不揮発分:30質量%)。
【0097】
<硬化剤(F)>
硬化剤(F)として、以下に示す化合物を用いた。
・F-1:アジリジン系硬化剤(株式会社日本触媒製、商品名「ケミタイト PZ-33」、不揮発分:99質量%)。
・F-2:エポキシ系硬化剤(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「デナコール EX-612」、不揮発分:99質量%)。
【0098】
<他の任意成分>
他の任意成分として、以下に示す化合物を用いた。
・界面活性剤:Evonik社製、商品名「TEGO WET 240」、不揮発分:100質量%。
・消泡剤:BYK社製、商品名「BYK-018」、不揮発分:97質量%。
【0099】
[評価方法]
<密着性の評価>
積層体のニス層の表面に、セロハンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けた後、このセロハンテープを速やかに剥がし、プラスチックフィルム(OPPフィルム)上に残ったニス層の状態を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがってニス層のポリオレフィンフィルムに対する密着性を評価した。3~5を合格とする。
5:ニス層が全く剥離していない。
4:セロハンテープの貼付面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が0%超え、10%以下である。
3:セロハンテープの貼付面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が10%超え、30%以下である。
2:セロハンテープの貼付面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が30%超え、50%以下である。
1:セロハンテープの貼付面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が50%超えである。
【0100】
<耐酸性の評価>
積層体を濃度1質量%の塩酸水溶液へ浸漬させ、40℃で24時間静置した後、塩酸水溶液から積層体を取り出して水滴を拭き取った。その後、積層体のニス層の表面を、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、製品名「AB-301」)を用いて、白布(金巾3号)で、200gfの荷重をかけた状態で10往復擦る摩擦試験を行った。摩擦試験後のニス層の外観を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがってニス層の耐酸性を評価した。3~5を合格とする。
5:ニス層が全く剥離していない。
4:ニス層の総面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が0%超え、10%以下である。
3:ニス層の総面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が10%超え、30%以下である。
2:ニス層の総面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が30%超え、50%以下である。
1:ニス層の総面積に対して、剥離したニス層の面積の割合が50%超えである。
【0101】
<保存安定性の評価>
水性ニス組成物について、ザーンカップ#4を用いて25℃における粘度を測定した。その後、水性ニス組成物を40℃で1週間静置した後、同様にザーンカップ#4を用いて25℃における粘度を測定し、以下に示す評価基準にしたがって水性ニス組成物の保存安定性を評価した。3~5を合格とする。なお、水性ニス組成物が硬化剤(F)を含有する場合は、硬化剤(F)を配合する直前の水性ニス組成物を用いて保存安定性を評価した。
5:静置後の粘度上昇が、静置前から比べて5秒以下である。
4:静置後の粘度上昇が、静置前から比べて5秒超え、10秒以下である。
3:静置後の粘度上昇が、静置前から比べて10秒超え、15秒以下である。
2:静置後の粘度上昇が、静置前から比べて15秒超え、30秒以下である。
1:静置後の粘度上昇が、静置前から比べて30秒超えである。あるいはゲル化が確認された。
【0102】
<耐ブロッキング性の評価>
積層体前駆体を2枚用意した。
一方の積層体前駆体の塗工膜側の表面(印刷面)と、他方の積層体前駆体のプラスチックフィルム(OPPフィルム)側の表面(非印刷面)とが接するように2枚の積層体前駆体を重ね合わせて、5kg/cmの荷重をかけ、温度40℃、湿度50%の恒温機内で24時間保管した。その後、2枚の積層体前駆体同士を剥離し、以下に示す評価基準にしたがって塗工膜の耐ブロッキング性を評価した。3~5を合格とする。なお、下記の「ニス取られ」とは、剥離時に一方の積層体前駆体の塗工膜が対向面(本評価では他方の積層体前駆体の非印刷面)に付着したまま、一方の積層体前駆体の塗工膜がプラスチックフィルムから剥がれることを意味する。
5:非印刷面へのニス取られが無い。
4:非印刷面へのニス取られが、塗工膜の荷重をかけた箇所の総面積に対して、0%超え、10%以下である。
3:非印刷面へのニス取られが、塗工膜の荷重をかけた箇所の総面積に対して、10%超え、30%以下である。
2:非印刷面へのニス取られが、塗工膜の荷重をかけた箇所の総面積に対して、30%超え、50%以下である。
1:非印刷面へのニス取られが、塗工膜の荷重をかけた箇所の総面積に対して、50%超えである。
【0103】
<耐水摩擦性の評価>
積層体のニス層の表面を、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、製品名「AB-301」)を用いて、水で湿らせた白布(金巾3号)で、200gfの荷重をかけた状態で200往復擦る摩擦試験を行った。摩擦試験後のニス層の外観を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがってニス層の耐水摩擦性を評価した。3~5を合格とする。
5:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して0%である。
4:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して0%超え、5%以下である。
3:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して5%超え、10%以下である。
2:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して10%超え、30%以下である。
1:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して30%超えである。
【0104】
<耐摩擦性の評価:耐布摩擦性の評価>
積層体のニス層の表面を、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、製品名「AB-301」)を用いて、白布(金巾3号)で、200gfの荷重をかけた状態で200往復擦る摩擦試験を行った。摩擦試験後のニス層の外観を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがってニス層の布に対する耐摩擦性を評価した。3~5を合格とする。
5:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して0%である。
4:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して0%超え、5%以下である。
3:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して5%超え、10%以下である。
2:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して10%超え、30%以下である。
1:白布(金巾3号)へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して30%超えである。
【0105】
<耐摩擦性の評価:耐ゴム摩擦性の評価>
積層体のニス層の表面を、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、製品名「AB-301」)を用いて、ゴム(クロロプレンゴム、厚さ:1mm)で、200gfの荷重をかけた状態で200往復擦る摩擦試験を行った。摩擦試験後のニス層の外観を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがってニス層の耐ゴム摩擦性を評価した。3~5を合格とする。
5:ゴム側へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して0%である。
4:ゴム側へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して0%超え、5%以下である。
3:ゴム側へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して5%超え、10%以下である。
2:ゴム側へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して10%超え、30%以下である。
1:ゴム側へ移行したニス層の面積の割合が、ニス層の摩擦した箇所の総面積に対して30%超えである。
【0106】
[実施例1~17、比較例1~10]
<水性ニス組成物の調製>
表1~5に示す組成にしたがって、(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)、水性媒体(C)、炭化水素ワックス(D)、増粘剤(E)及び他の任意成分を混合した後、得られた混合物をペイントシェーカーで練肉した。硬化剤(F)をさらに加えてペイントシェーカーで練肉し、水性ニス組成物を得た。なお、硬化剤(F)は次の<積層体の作製>において印刷用のニスを調製する直前に添加した。
【0107】
<積層体の作製>
プラスチックフィルムとして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム、フタムラ化学株式会社製、商品名「FOR」、厚さ:30μm)の片面をコロナ放電処理したものを用いた。コロナ放電処理には、コロナ放電表面処理装置(ウエッジ株式会社製、製品名「CTW-0212」)を使用した。
調製した水性ニス組成物を、ザーンカップ#4を用いて測定される、25℃における粘度が15秒となるように、水を用いて希釈を行い、印刷用のニスを調製した。
セルボリューム6ccのアニロックスロールを搭載したフレキソハンドプルーファーをアプリケーターとして用い、乾燥後の塗工量が1.0g/mとなるように、フレキソ印刷法でプラスチックフィルムのコロナ放電処理面に、調製した印刷用のニスを塗工し、プラスチックフィルム上に塗工膜が形成された積層体前駆体を得た。次いで、積層体前駆体を20℃で24時間乾燥させて、プラスチックフィルム上に厚さ0.5μmのニス層が形成された積層体(印刷物)を得た。
水性ニス組成物を用いて保存安定性を評価し、積層体前駆体(乾燥前)を用いて耐ブロッキング性評価し、積層体(乾燥後)を用いて密着性、耐酸性、耐水摩擦性及び耐摩擦性を評価した。これらの結果を表1~5に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
表1~5中の水性媒体(C)以外の各成分の配合量は、固形分換算での量である。
表1~5中の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0質量%)を意味する。
表1~5中の「残分」は、水性ニス組成物に含まれる全配合成分の合計の配合量(質量%)が100質量%となるように調整して添加した水(C-1)の量である。
表1~5中の「(A)の酸価-(B)の酸価」は、(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価-変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価である。「(B)の酸価-(A)の酸価」は、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の酸価-(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)の酸価である。
表1~5中の「(B)の含有量」は、水性ニス組成物の総固形分に対する変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の固形分換算での含有量であり、小数点第3位を四捨五入している。
表1~5中の「B/A比」は、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)/(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)で表される固形分換算での質量比であり、小数点第4位を四捨五入している。
【0114】
表1~3の結果から明らかなように、各実施例で得られた水性ニス組成物は、保存安定性に優れていた。また、これらの水性ニス組成物より形成される塗膜は、ポリオレフィンフィルムに対する密着性、耐ブロッキング性、耐酸性、耐布摩擦性、耐ゴム摩擦性及び耐水摩擦性に優れていた。
【0115】
一方、表4、5の結果から明らかなように、酸価が64mgKOH/gである(メタ)アクリル樹脂エマルジョンを用いた比較例1で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐酸性及び耐水摩擦性に劣っていた。
酸価が62.2mgKOH/gである変性ポリプロピレン樹脂エマルジョンを用いた比較例2で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐酸性及び耐水摩擦性に劣っていた。
平均粒子径が0.035μmである(メタ)アクリル樹脂エマルジョンを用いた比較例3で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐ブロッキング性に劣っていた。
平均粒子径が0.330μmである(メタ)アクリル樹脂エマルジョンを用いた比較例4で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐ゴム摩擦性に劣っていた。
(A)の酸価-(B)の酸価が54.0である比較例5で得られた水性ニス組成物、及び(B)の酸価-(A)の酸価が32.0である比較例6で得られた水性ニス組成物は、保存安定性に劣っていた。
変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の含有量が1.43質量%である比較例7で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐酸性に劣っていた。
変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)の含有量が15.85質量%である比較例8で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐ブロッキング性、耐水摩擦性及び耐ゴム摩擦性に劣っていた。
B/A比が0.014である比較例9で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐酸性に劣っていた。
B/A比が0.185である比較例10で得られた水性ニス組成物より形成される塗膜は、耐ブロッキング性、耐水摩擦性、耐布摩擦性及び耐ゴム摩擦性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の水性ニス組成物は、ポリオレフィンフィルムに対する密着性、耐酸性、耐ブロッキング性に優れ、かつゴムとの摩擦にも耐えうる耐摩擦性を有する塗膜を形成でき、保存安定性にも優れ、包装材、特に包装ラベル用のニスとして有用である。
【符号の説明】
【0117】
10 積層体
11 プラスチックフィルム
12 ニス層
13 絵柄層
14 他の層
【要約】
【課題】ポリオレフィンフィルムに対する密着性、耐酸性、耐ブロッキング性に優れ、かつゴムとの摩擦にも耐えうる耐摩擦性を有する塗膜を形成でき、保存安定性にも優れるグラビア印刷用又はフレキソ印刷用の水性ニス組成物、これを用いた積層体及び包装材の提供。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂エマルジョン(A)と、変性ポリプロピレン樹脂エマルジョン(B)と、水性媒体(C)と、を含有する、グラビア印刷用又はフレキソ印刷用の水性ニス組成物であって、(A)の酸価が60mgKOH/g以下であり、平均粒子径が0.038~0.300μmであり、(B)の酸価が60mgKOH/g以下であり、(A)の酸価と(B)の酸価の差が特定の関係式を満たし、(B)の固形分換算での含有量が1.6~15.0質量%であり、(B)/(A)で表される固形分換算での質量比が0.020~0.180である、水性ニス組成物。
【選択図】なし
図1
図2