(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-03
(45)【発行日】2026-02-12
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
H10P 34/00 20260101AFI20260204BHJP
H01J 61/54 20060101ALI20260204BHJP
H01J 61/90 20060101ALI20260204BHJP
H10P 30/28 20260101ALI20260204BHJP
【FI】
H10P34/00 T
H01J61/54 H
H01J61/90
H10P30/28 J
H10P34/00 J
(21)【出願番号】P 2021146838
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】戸部 龍太
(72)【発明者】
【氏名】北澤 貴宏
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177496(JP,A)
【文献】特開2017-079119(JP,A)
【文献】特開2010-192663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10P 34/00
H01J 61/54
H01J 61/90
H10P 30/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
蓄積した電荷を前記フラッシュランプに放出するコンデンサと、
前記フラッシュランプおよび前記コンデンサと直列に接続された複数のコイルと、
前記複数のコイルの全てについて1対1で並列接続された複数のスイッチと、
前記複数のスイッチの開閉を制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、フラッシュ光の照射時間と前記複数のスイッチの開閉との相関関係を示すテーブルから前記フラッシュランプに要求されている照射時間に対応する前記複数のスイッチの開閉態様を抽出して前記複数のスイッチを開閉することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記基板に光を照射する複数のフラッシュランプを備え、
前記複数のフラッシュランプのそれぞれについてのインダクタンスが異なるように前記複数のスイッチを開閉することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項
2記載の熱処理装置において、
前記複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを規定するディレイ回路をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
特許文献1には、所定の予備加熱温度にまで昇温した半導体ウェハーにフラッシュランプからフラッシュ光を照射することによって半導体ウェハーの表面温度を目標とする処理温度にまで昇温することが開示されている。フラッシュ光照射に先立って半導体ウェハーを予備加熱温度にまで昇温しておくのは、フラッシュ光照射のみでは半導体ウェハーの表面を目標温度にまで昇温することが困難なためである。
【0006】
また、特許文献1には、フラッシュランプの放電回路にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を組み込み、そのIGBTがフラッシュランプに流れる電流の波形を制御することによって、フラッシュランプからのフラッシュ光照射時間を適宜に調整することが開示されている。IGBTによってフラッシュ光照射時間を調整することにより、様々なプロセスのニーズに対応することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、半導体デバイスの微細化および材料の変化にともなって、より低熱履歴なアニール処理が求められている。低熱履歴なアニール処理とは、少ない総熱量で半導体ウェハーの表面を目標温度にまで昇温できる熱処理である。低熱履歴なアニール処理を実現するためには、従来よりも低い予備加熱温度に昇温された半導体ウェハーに対してより短い照射時間(1ミリ秒未満)のフラッシュ光を照射して600℃以上の高いジャンプ温度を得ることが必要となる。ジャンプ温度とは、フラッシュ光照射に起因した実質の昇温温度であり、目標温度と予備加熱温度との差分に相当する。より短い照射時間のフラッシュ光照射にて高いジャンプ温度を得るためには、フラッシュランプの放電回路に瞬間的に非常に大きな電流を流す必要がある。例えば、照射時間0.1ミリ秒のフラッシュ光照射でジャンプ温度を600℃以上とするためには、フラッシュランプの放電回路に最大で5000A程度の大電流を流す必要がある。従って、フラッシュランプの放電回路を構成する回路素子には、5000Aを超える定格電流を有するものを選定しなければならない。
【0009】
しかしながら、現在使用可能とされているIGBTの定格電流の上限は1500A程度であり、5000Aを超えるような大電流に耐えられるIGBTは存在しない。よって、照射時間0.1ミリ秒のフラッシュ光照射を実現するためのフラッシュランプの放電回路にはIGBTを組み込むことができない。その結果、フラッシュランプに流れる電流の波形はコンデンサおよびコイル等によって規定される固定波となり、フラッシュ光の照射時間を調整することは不可能となる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大電流に対応しつつもフラッシュ光の照射時間を調整することが可能な熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、蓄積した電荷を前記フラッシュランプに放出するコンデンサと、前記フラッシュランプおよび前記コンデンサと直列に接続された複数のコイルと、前記複数のコイルの全てについて1対1で並列接続された複数のスイッチと、前記複数のスイッチの開閉を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、フラッシュ光の照射時間と前記複数のスイッチの開閉との相関関係を示すテーブルから前記フラッシュランプに要求されている照射時間に対応する前記複数のスイッチの開閉態様を抽出して前記複数のスイッチを開閉することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記基板に光を照射する複数のフラッシュランプを備え、前記複数のフラッシュランプのそれぞれについてのインダクタンスが異なるように前記複数のスイッチを開閉することを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを規定するディレイ回路をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項3の発明によれば、フラッシュランプおよびコンデンサと直列に接続された複数のコイルと、それら複数のコイルの全てについて1対1で並列接続された複数のスイッチと、を備えるため、IGBTを用いることなく放電回路のインダクタンスを変化させることができ、大電流に対応しつつもフラッシュ光の照射時間を調整することができる。また、フラッシュランプに要求されている照射時間に応じて制御部が複数のスイッチを開閉するため、所望の照射時間が指定されれば自動的に複数のスイッチの開閉が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】フラッシュランプの放電回路を示す図である。
【
図9】フラッシュランプに流れる電流の波形を示す図である。
【
図10】フラッシュ光の照射時間とスイッチの開閉との相関関係を示すテーブルの一例を示す図である。
【
図11】フラッシュランプの放電回路の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0021】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0022】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0023】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0024】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0025】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0026】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。よって、放射温度計20はサセプタ74の斜め下方に設けられることとなる。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0027】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる。
【0028】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0029】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0030】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0031】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0032】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0033】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0034】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0035】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0036】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0037】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0038】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0039】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0040】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0041】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0042】
図8は、フラッシュランプFLの放電回路を示す図である。
図8に示すような放電回路は、30本のフラッシュランプFLのそれぞれについて設けられている。同図に示すように、コンデンサ93、第1コイル94a、第2コイル94b、第3コイル94cおよびフラッシュランプFLが直列に接続されている。なお、第1コイル94a、第2コイル94bおよび第3コイル94cを区別する必要の無い場合にはこれらを総称してコイル94とする。
【0043】
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。トリガー電極91は、ディレイ回路98を介してトリガー回路97に接続されている。トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3の制御下にてディレイ回路98によって規定される。
【0044】
コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。コンデンサ93は、蓄積した電荷をフラッシュランプFLに放出する。フラッシュランプFLのガラス管92に封入されたキセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサ93に電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、ガラス管92の両端に配設された陽極と陰極との間に放電が発生し、それによってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によってフラッシュランプFLからフラッシュ光が放出される。
【0045】
フラッシュランプFLおよびコンデンサ93には、3つのコイル94、すなわち第1コイル94a、第2コイル94bおよび第3コイル94cが直列に接続されている。コイル94は、インダクタとして機能することにより、フラッシュランプFLの放電時に放電回路に生じる急激な電流変化を滑らかにし、フラッシュランプFLに流れる電流の波形を調整してフラッシュ光の照射時間を長くする。第1コイル94a、第2コイル94bおよび第3コイル94cは互いにインダクタンスが異なる。例えば、第1コイル94aのインダクタンスは25μHであり、第2コイル94bのインダクタンスは50μHであり、第3コイル94cのインダクタンスは100μHである。
【0046】
本実施形態においては、3つのコイル94のそれぞれにスイッチが並列接続される。
図8に示すように、第1コイル94aには第1スイッチ99aが並列に接続され、第2コイル94bには第2スイッチ99bが並列に接続され、第3コイル94cには第3スイッチ99cが並列に接続される。第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cの開閉は制御部3によって制御される。なお、第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cを区別する必要の無い場合にはこれらを総称してスイッチ99とする。
【0047】
スイッチ99が閉じているときには、対応するコイル94はインダクタとしての機能を喪失する。逆に、スイッチ99が開いているときには、対応するコイル94はインダクタとして機能する。
【0048】
3つのスイッチ99の開閉パターンによって放電回路のインダクタンスを可変とすることができる。第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cの全てが閉じているときにはインダクタとして機能するコイル94が存在しなくなり、放電回路のインダクタンスは最小となる。但し、不可避的に生じる寄生インダクタンスがあるため、3つのスイッチ99の全てが閉じている場合であっても放電回路のインダクタンスは完全に0μHにはならない。一方、第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cの全てが開いているときには3つのコイル94の全てがインダクタとして機能し、放電回路のインダクタンスは最大となる。
【0049】
図9は、フラッシュランプFLに流れる電流の波形を示す図である。同図中に実線で示すのは、3つのスイッチ99の全てが閉じている場合にフラッシュランプFLに流れる電流の波形であり、点線で示すのは、3つのスイッチ99の全てが開いている場合にフラッシュランプFLに流れる電流の波形である。3つのスイッチ99の全てが閉じている場合には、放電回路中にインダクタとして機能するコイル94が存在しなくなり、放電回路のインダクタンスが極めて小さくなってフラッシュランプFLに流れる電流は急激に上昇してから急激に減少する。その結果、
図9の実線にて示すように、フラッシュランプFLに流れる電流の波形はピーキーなものとなり、フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒程度となる。もっとも、受動素子として機能するコイル94が存在しなくても放電回路には寄生インダクタンスおよび配線抵抗が存在するため、それらによってフラッシュランプFLに流れる電流の波形は規定される。
【0050】
一方、3つのスイッチ99の全てが開いている場合には、3つのコイル94の全てがインダクタとして機能し、放電回路のインダクタンスが大きくなってフラッシュランプFLに流れる電流は比較的緩やかに上昇してから緩やかに減少する。その結果、
図9の点線にて示すように、フラッシュランプFLに流れる電流の波形は3つのスイッチ99の全てが閉じている場合に比較してブロードなものとなる。
【0051】
第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cのうちのいずれかが閉じて残りが開いている場合には、フラッシュランプFLに流れる電流の波形は
図9の実線と点線との間のものとなる。3つのスイッチ99の開閉状況に応じて定まる放電回路のインダクタンスが大きくなるほど、フラッシュランプFLに流れる電流の波形は緩やかなものとなる(点線の波形に近くなる)。なお、
図8に示すような放電回路は30本のフラッシュランプFLのそれぞれに設けられているため、30本のフラッシュランプFLのそれぞれについて個別に電流波形およびフラッシュ光照射時間を調整することができる。
【0052】
図1に戻り、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0053】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0054】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0055】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0056】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0057】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0058】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0059】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、制御部3は、第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cの開閉を個別に制御することによって、フラッシュランプFLに流れる電流波形およびフラッシュ光の照射時間を調整する。
【0060】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0061】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。処理対象となる半導体ウェハーWは、前工程としてのイオン注入によって不純物が注入されたシリコン(Si)の半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるアニール処理により実行される。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0062】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0063】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0064】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0065】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0066】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0067】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定される。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。本実施形態における予備加熱温度T1は200℃以上400℃以下であり、この温度は従来の典型的な予備加熱温度(700℃~800℃)よりも低い。
【0068】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0069】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0070】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0071】
半導体ウェハーWに対するフラッシュ光照射を行うのに先立って、フラッシュ光の照射時間と3つのスイッチ99の開閉との相関関係を示すテーブルが予め作成されている。
図10は、フラッシュ光の照射時間と3つのスイッチ99の開閉との相関関係を示すテーブルの一例を示す図である。目標とするフラッシュ光の照射時間と第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cのそれぞれの開閉とが相互に関連付けられてテーブルに登録されている。具体的には、3つのスイッチ99の開閉態様によって放電回路のインダクタンスが定まり、そのインダクタンスに基づいたシミュレーションによりフラッシュ光の照射時間を求める。そして、3つのスイッチ99の開閉態様と求めた照射時間とを相互に関連付けて登録することにより
図10のようなテーブルが作成される。作成されたテーブルは制御部3の記憶部(メモリまたは磁気ディスク等)に格納される。
【0072】
熱処理装置1の作業者は、制御部3のユーザーインターフェイス(例えば、タッチパネル等)から希望するフラッシュ光の照射時間を指定する。本実施形態では例えば、熱処理装置1の作業者は希望するフラッシュ光の照射時間として0.1ミリ秒を指定する。制御部3は、指定されたフラッシュ光の照射時間に対応する3つのスイッチ99の開閉態様を
図10のテーブルから抽出する。例えば、フラッシュ光の照射時間として0.1ミリ秒が指定されている場合には、
図10のテーブルから第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cの全てが”閉”という態様が決定される。なお、作業者がフラッシュ光の照射時間を指定するのに代えて、処理レシピ(半導体ウェハーWの処理手順および処理条件を定義したもの)に記述されたフラッシュ光の照射時間に基づいて制御部3が
図10のテーブルから3つのスイッチ99の開閉態様を決定するようにしても良い。要するに、フラッシュランプFLに要求されているフラッシュ光の照射時間に応じて制御部3が複数のスイッチ99の開閉を決定するようにすれば良い。
【0073】
コンデンサ93に電荷が蓄積され、かつ、制御部3によって決定された3つのスイッチ99の開閉態様に従って第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cが個別に開閉された状態でトリガー回路97からトリガー電極91に高電圧が印加されてフラッシュランプFLが発光する。フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光はサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面に照射されてフラッシュ加熱が実行される。本実施形態においては、第1スイッチ99a、第2スイッチ99bおよび第3スイッチ99cの全てが閉じられた状態でフラッシュランプFLが発光する。このため、放電回路のインダクタンスは極めて小さくなってフラッシュランプFLに流れる電流の波形はピーキーなものとなり(
図9の実線)、フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒程度となる。コンデンサ93に蓄積された電荷が0.1ミリ秒という極めて短い時間でフラッシュランプFLで放電されると、放電回路には5000A程度の大電流が流れる。
図8に示すように、本実施形態の放電回路にはIGBTが組み込まれていないため、5000A程度の大電流を流すことも可能である。
【0074】
0.1ミリ秒の間に5000A程度の大電流が流れることにより、フラッシュランプFLからは極めて強度の強いフラッシュ光が照射されることとなる。その結果、半導体ウェハーWの表面は予備加熱温度T1から目標温度T2にまで瞬間的に昇温される。目標温度T2は800℃以上1200℃以下である。すなわち、3つのスイッチ99を全て閉じて照射時間が0.1ミリ秒のフラッシュ光照射を行うことにより、フラッシュ加熱によるジャンプ温度(予備加熱温度T1から目標温度T2までの昇温温度)を600℃以上とすることができる。半導体ウェハーWの表面が瞬間的に目標温度T2にまで昇温されることによって、当該表面に注入されていた不純物が活性化される。そして、半導体ウェハーWの表面温度は目標温度T2に到達した後に急速に降温する。半導体ウェハーWの表面は瞬間的に目標温度T2に昇温されて直ちに急速に降温するため、注入された不純物の拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。
【0075】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1からも急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0076】
本実施形態においては、フラッシュランプFLの放電回路にIGBTを組み込むのに代えて3つのコイル94を直列に接続するとともに、それら3つのコイル94の全てについて1対1で並列接続された3つのスイッチ99を設けている。3つのスイッチ99を開閉して3つのコイル94を適宜にインダクタとして機能させることにより、IGBTが無くてもフラッシュランプFLに流れる電流の波形を変化させてフラッシュ光の照射時間を調整することができる。また、IGBTを用いていないため、フラッシュランプFLの放電回路に大電流を流すこともできる。すなわち、本実施形態のようにすれば、大電流に対応しつつもフラッシュ光の照射時間を調整することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態においては、
図10に示す如きテーブルを用いて、フラッシュランプFLに要求されているフラッシュ光の照射時間に応じて制御部3が3つのスイッチ99を開閉している。このため、熱処理装置1の作業者は、3つのスイッチ99の開閉を逐一設定する必要はなく、希望するフラッシュ光の照射時間を指定するだけで自動的に3つのスイッチ99が開閉されることとなる。
【0078】
特に、本実施形態においては、3つのスイッチ99を全て閉じることによって放電回路のインダクタンスを可能な限り小さくして照射時間が0.1ミリ秒のフラッシュ光照射を実行することができる。照射時間が0.1ミリ秒で強度の強いフラッシュ光を照射することにより短時間で高いジャンプ温度を得ることができるため、予備加熱温度T1を低くすることができる。その結果、半導体ウェハーWの表面温度が目標温度T2に到達するのに必要な総熱量を少なくすることができ、低熱履歴な熱処理を実現して活性化した不純物の不活性化を防止することができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、放電回路に3つのコイル94を設けていたが、これに限定されるものではなく、放電回路に接続するコイル94の個数は2つであっても良いし4つ以上であっても良い。要するに、フラッシュランプFLの放電回路に複数のコイル94を直列に接続するとともに、それら複数のコイル94の全てについて1対1で並列接続された複数のスイッチ99を設ける形態であれば良い。放電回路に接続されるコイル94の個数が多くなるほど、インダクタンスのバリエーションが豊富になり、フラッシュランプFLに流れる電流の波形およびフラッシュ光の照射時間をきめ細かく調整することができるものの放電回路が大型化することとなる。
【0080】
また、
図8に示すような放電回路は30本のフラッシュランプFLのそれぞれに設けられている。よって、3つのスイッチ99の開閉の組み合わせは30本のフラッシュランプFLの全てについて同一である必要はなく、フラッシュランプFL毎に異なっていても良い。すなわち、30本のフラッシュランプFLのそれぞれについてのインダクタンスが異なるように各放電回路における3つのスイッチ99を開閉するようにしても良い。これにより、30本のフラッシュランプFLのそれぞれについての電流波形およびフラッシュ光照射時間を異なるものとすることができる。或いは、30本のフラッシュランプFLを幾つかのランプ群に区分けし、ランプ群毎にインダクタンスが異なるように3つのスイッチ99を開閉するようにしても良い。このようにすれば、例えば、半導体ウェハーWの中央部に対向するランプ群のインダクタンスを小さくするとともに周縁部に対向するランプ群のインダクタンスを大きくすることにより、当該中央に照射されるフラッシュ光の照射時間を短くして周縁部に照射されるフラッシュ光の照射時間を比較的長くすることができる。
【0081】
また、トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングはディレイ回路98によって規定される(
図8)。すなわち、ディレイ回路98は、30本のフラッシュランプFLのそれぞれの発光タイミングを規定する。これにより、30本のフラッシュランプFLのそれぞれについての発光タイミングを異なるものとすることができる。30本のフラッシュランプFLのそれぞれに流れる電流の波形に加えて発光タイミングを適宜に調整することにより、フラッシュ光照射のパターンのバリエーションを豊富なものとすることができる。
【0082】
また、
図11に示すように、フラッシュランプFLの放電回路に複数のコンデンサ93を並列に接続するとともに、それら複数のコンデンサ93の全てについて1対1で直列接続された複数のスイッチ99を設けるようにしても良い。
図11において、上記実施形態と同じ要素については同一の符号を付している。
図11に示す放電回路において、スイッチ99が閉じているときには、対応するコンデンサ93は蓄電器として機能する。逆に、スイッチ99が開いているときには、対応するコンデンサ93は放電回路において蓄電器として機能しない。複数のスイッチ99を適宜に開閉することにより、放電回路のキャパシタンスを可変とすることができる。その結果、同じ充電電圧であったとしても、フラッシュランプFLに流れる電流の波形および強度が変化し、フラッシュ光の強度および半値幅を変化させることができる。
【0083】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0084】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【0085】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【符号の説明】
【0086】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
20 放射温度計
65 熱処理空間
74 サセプタ
93 コンデンサ
94 コイル
98 ディレイ回路
99 スイッチ
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー