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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-03
(45)【発行日】2026-02-12
(54)【発明の名称】車両用熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/02 20060101AFI20260204BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20260204BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20260204BHJP
   F25B 11/02 20060101ALI20260204BHJP
【FI】
F25B27/02 F
F25B1/00 101J
F25B1/00 399Y
B60H1/22 651A
F25B11/02 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022005581
(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公開番号】P2023104539
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2024-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(73)【特許権者】
【識別番号】524017168
【氏名又は名称】アンペア エス.ア.エス.
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健介
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321389(JP,A)
【文献】特開平06-099725(JP,A)
【文献】特開2013-076514(JP,A)
【文献】特開2006-266238(JP,A)
【文献】特開2009-274513(JP,A)
【文献】特開2008-209085(JP,A)
【文献】特開2009-202794(JP,A)
【文献】特開2011-084102(JP,A)
【文献】特開平10-075550(JP,A)
【文献】特開2021-000985(JP,A)
【文献】特開昭59-060164(JP,A)
【文献】特開2012-201360(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0106131(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0241679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00ー49/04
B60H 1/00ー1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発熱体を冷却する第1冷媒を循環させる第1冷却回路と、第2発熱体を冷却する第2冷媒を循環させる第2冷却回路と、第3発熱体を冷却する第3冷媒を循環させる第3冷却回路と、前記第3冷却回路と前記第1冷却回路との間で熱交換を行う第1熱交換器と、前記第3冷却回路と前記第2冷却回路との間で熱交換を行う第2熱交換器とを備え、
前記第3冷却回路が、前記第3冷媒を圧縮する圧縮器と、前記第3冷媒を膨張させる膨張器と、前記第3冷媒の循環経路を切り換える経路切換機構と、前記第3冷媒のエネルギ-を変換する冷媒駆動体と、前記経路切換機構を制御する主制御器とを備え
前記主制御器は、排熱回収モード時の運転時に前記第3冷媒が前記第1熱交換器を通過し、前記第3冷媒が前記第2熱交換器を通過するように前記経路切換機構を制御することを特徴とする車両用熱管理システム。
【請求項2】
前記冷媒駆動体が、前記第3冷却回路において気化した前記第3冷媒の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンであることを特徴とする請求項1に記載の車両用熱管理システム。
【請求項3】
前記タービンが、前記第3発熱体の動力軸に連結してあることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱管理システム。
【請求項4】
前記タービンが、前記第1発熱体の動力軸に連結してあることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱管理システム。
【請求項5】
前記タービンが、前記第2発熱体の動力軸に連結してあることを特徴とする請求項2に記載の車両用熱管理システム。
【請求項6】
前記冷媒駆動体が、前記第3冷却回路の前記第3冷媒を昇圧させる昇圧用ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の車両用熱管理システム。
【請求項7】
前記昇圧用ポンプが、前記第3発熱体と前記圧縮器との間に配置してあることを特徴とする請求項6に記載の車両用熱管理システム。
【請求項8】
前記昇圧用ポンプの回転軸が、前記圧縮器の回転軸に連結してあることを特徴とする請求項7に記載の車両用熱管理システム。
【請求項9】
前記昇圧用ポンプの回転軸と前記圧縮器の回転軸の間にクラッチ機構を有することを特徴とする請求項8に記載の車両用熱管理システム。
【請求項10】
前記第1熱交換器が、前記第3冷却回路における前記第3発熱体と前記圧縮器との間に配置してあり、
前記第2熱交換器が、前記第3冷却回路における前記圧縮器と前記膨張器との間に配置してあることを特徴とする請求項1に記載の車両用熱管理システム。
【請求項11】
前記第3冷却回路における前記圧縮器の吐出口側に、前記第3冷却回路と前記第1冷却回路との間で熱交換を行う第3熱交換器を備えたことを特徴とする請求項10に記載の車両用熱管理システム。
【請求項12】
前記第3冷却回路が、前記経路切換機構として、
前記第1熱交換器をバイパスする第1バイパス流路、及び前記第1バイパス流路を開閉する第1切換弁と、
前記第2熱交換器をバイパスする第2バイパス流路、及び前記第2バイパス流路を開閉する第2切換弁と、
前記第3熱交換器をバイパスする第バイパス流路、及び前記第3バイパス流路を開閉する第3切換弁とを備えていることを特徴とする請求項11に記載の車両用熱管理システム。
【請求項13】
前記第1冷却回路が、前記第1冷媒の熱放熱を行う第1ラジエータを備えると共に、前記第1ラジエータと前記第1熱交換器との間に、前記第1発熱体をバイパスする第4バイパス流路、及び第4バイパス流路を開閉する第4切換弁を備え、
前記第2冷却回路が、前記第2冷媒の熱放熱を行う第2ラジエータを備えると共に、前記第2ラジエータをバイパスする第5バイパス流路、及び第5バイパス流路を開閉する第5切換弁を備えていることを特徴とする請求項11又は12に記載の車両用熱管理システム。
【請求項14】
前記経路切換機構が、前記第3冷却回路において前記第3発熱体と前記圧縮器との間で前記タービンをバイパスする第6バイパス流路、及び前記第6バイパス流路を開閉する第6切換弁を備えていることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の車両用熱管理システム。
【請求項15】
前記経路切換機構が、前記第3冷却回路において前記膨張器をバイパスする第7バイパス流路、及び前記第7バイパス流路を開閉する第7切換弁を備えていることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の車両用熱管理システム。
【請求項16】
前記昇圧用ポンプをバイパスする第8バイパス流路、及び前記第8バイパス流路を開閉する第8切換弁を備えたことを特徴とする請求項6~9のいずれか1項に記載の車両用熱管理システム。
【請求項17】
前記冷媒駆動体が、前記第3冷却回路において気化した前記第3冷媒の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンであって、前記主制御器が、前記第3冷却回路の冷却モードにおいて、前記第1バイパス流路と、前記第2バイパス流路及び前記第3バイパス流路のいずれか一方とを開放するように前記第1切換弁、前記第2切換弁、及び前記第3切換弁を制御することを特徴とする請求項12に記載の車両用熱管理システム。
【請求項18】
前記冷媒駆動体が、前記第3冷却回路において気化した前記第3冷媒の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンであって、前記主制御器が、前記第3冷却回路の排熱回収モードにおいて、前記第3バイパス流路を開放するように前記第3切換弁を制御することを特徴とする請求項12に記載の車両用熱管理システム。
【請求項19】
前記冷媒駆動体が、前記第3発熱体と前記圧縮器との間に配置した昇圧用ポンプであって、前記主制御器が、前記第3冷却回路の冷却モードにおいて、前記第1バイパス流路及び前記第2バイパス流路のうちの少なくとも第1バイパス流路を開放するように前記第1切換弁及び前記第2切換弁を制御することを特徴とする請求項12に記載の車両用熱管理システム。
【請求項20】
前記冷媒駆動体が、前記第3発熱体と前記圧縮器との間に配置した昇圧用ポンプであって、前記主制御器が、前記第3冷却回路の排熱回収モードにおいて、前記第3バイパス流路を開放するように前記第3切換弁を制御し、冷媒を前記第3発熱体、前記第2熱交換器、前記圧縮器の順に循環させることを特徴とする請求項12に記載の車両用熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の各種車両に搭載する車両用熱管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、車両用熱管理システムとしては、蒸気圧縮式冷凍機の名称で、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載のシステムは、モータ及びエンジンを夫々冷却する2つの冷却システムを有し、これらの冷却システム間で熱交換を行うものである。上記のシステムは、不凍液冷媒をポンプで循環させる構造を有するモータ及びエンジンの冷却回路において、モータ及びエンジンの排熱を熱交換器により隣接するバッテリー冷却回路に輸送する。バッテリー冷却回路は、ヒートポンプによる冷凍サイクルを有し、圧力が上昇したヒートポンプ内の冷媒をエジェクタのノズルから噴射し、冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を等エントロピ的に減圧し且つ膨張させる。
【0003】
そして、上記のシステムは、エジェクタのノズルから噴射する高速度の冷媒流の巻き込み作用により、蒸発した気相冷媒を吸引しながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒を昇圧させると共に、冷凍サイクルの冷媒圧力を上昇させ、これを膨張弁で減圧することにより、蒸発器で外気を低温化してバッテリー冷却回路に供給する。これにより、上記のシステムは、バッテリー冷却回路を冷却して、モータ及びエンジンの排熱回収したエネルギーをヒートポンプの圧力エネルギーに利用して電費の向上を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-177588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来したような従来のシステムでは、ヒートポンプによる冷凍サイクルを有する冷却システムを用いるものであったため、冷却が不要な状態では、ヒートポンプによる排熱回収の効果が得られないという問題点があった。また、従来のシステムでは、排熱回収ランキンサイクルや、ヒートポンプ冷凍サイクル用として、モータ及びエンジン用のラジエータとは別に空気の放熱部を設ける必要があった。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、複数の発熱体を冷却する車両用冷却システムであって、冷凍サイクルを有するヒートポンプを用いて高い冷却性能を得る機能、及び排熱回収による高い電費性能の機能を、空気への放熱部のサイズを大型化せずに両立させることができる車両用熱管理システムすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる車両用熱管理システムは、第1発熱体を冷却する第1冷媒を循環させる第1冷却回路と、第2発熱体を冷却する第2冷媒を循環させる第2冷却回路と、第3発熱体を冷却する第3冷媒を循環させる第3冷却回路と、第3冷却回路と第1冷却回路との間で熱交換を行う第1熱交換器と、第3冷却回路と第2冷却回路との間で熱交換を行う第2熱交換器とを備えている。第3冷却回路は、冷媒を圧縮する圧縮器と、冷媒を膨張させる膨張器と、冷媒の循環経路を切り換える経路切換機構と、第3冷却回路の第3冷媒のエネルギーを変換する冷媒駆動体と、経路切換機構を制御する主制御器とを備えいる。そして、車両用熱管理システムは、主制御器が、排熱回収モード時の運転時に第3冷媒が第1熱交換器を通過し、第3冷媒が第2熱交換器を通過するように経路切換機構を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係わる車両用熱交換システムは、上記構成を採用したことにより、複数の発熱体を冷却する車両用冷却システムにおいて、冷凍サイクルを有するヒートポンプを用いて高い冷却性能を得る機能、及び排熱回収による高い電費性能の機能を両立させることができ、しかも、空気への放熱部のサイズを大型化せずに上記の冷却性能と電費性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の車両用熱管理システムの第1実施形態を示す回路図である。
図2図1に示すシステムの冷却モード時の運転を示す回路図である。
図3図1に示すシステムの他の冷却モード時の運転を示す回路図である。
図4図1に示すシステムの排熱回収モード時の運転を示す回路図である。
図5】本発明の車両用熱管理システムの第2実施形態を示す回路図である。
図6】本発明の車両用熱管理システムの第3実施形態を示す回路図である。
図7】本発明の車両用熱管理システムの第4実施形態を示す回路図である。
図8】本発明の車両用熱管理システムの第5実施形態を示す回路図である。
図9図8に示すシステムの冷却モード時の運転を示す回路図である。
図10図8に示すシステムの他の冷却モード時の運転を示す回路図である。
図11図8に示すシステムの排熱回収モード時の運転を示す回路図である。
図12】本発明の車両用熱管理システムの第6実施形態を示す回路図である。
図13】本発明の車両用熱管理システムの第7実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈第1実施形態〉
図1に示す車両用熱管理システムは、第1発熱体1を冷却する冷媒を循環させる第1冷却回路4と、第2発熱体5を冷却する冷媒を循環させる第2冷却回路8と、第3発熱体9を冷却する冷媒を循環させる第3冷却回路12とを備えている。また、車両用熱管理システムは、第3冷却回路12と第1冷却回路4との間で熱交換を行う第1熱交換器13と、第3冷却回路と第2冷却回路との間で熱交換を行う第2熱交換器とを備えている。
【0011】
さらに、第3冷却回路12は、冷媒を圧縮する圧縮器11と、冷媒を膨張させる膨張器10とで冷凍サイクルを構成すると共に、冷媒の循環経路を切り換える経路切換機構を備えている。そして、車両用熱管理システムは、第3冷却回路12の冷媒を循環駆動する冷媒駆動体と、経路切換機構を制御する主制御器50とを備えている。
【0012】
一例として、第1発熱体1はモータ、第2発熱体5はエンジン、第3発熱体9は発電機である。この場合、第1冷却回路4及び第2冷却回路8で循環する冷媒は水である。第3冷却回路12で循環する冷媒は、ヒートポンプ冷媒であって、圧縮器11により高圧高温になり、膨張器10により低圧低温になる。また、この実施形態の冷媒駆動体は、第3冷却回路12において気化した冷媒の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン16であり、第3発熱体(発電機)9の動力軸に連結してある。
【0013】
図示例の車両用熱管理システムは、第3冷却回路12において、圧縮器11の吐出口側に、第1冷却回路2との間で熱交換を行う第3熱交換器15を備えている。第3冷却回路12は、第1熱交換器13をバイパスする第1バイパス流路17、及び第1バイパス流路17を開閉する第1切換弁18を備えている。また、第3冷却回路12は、第2熱交換器14をバイパスする第2バイパス流路21、及び第2バイパス流路21を開閉する第2切換弁22を備えている。
【0014】
さらに、第3冷却回路12は、第3熱交換器15をバイパスする第3バイパス流路19、及び第3バイパス流路19を開閉する第3切換弁20を備えている。先述の経路切換機構は、これらのバイパス流路17,21,19及び切換弁18,22,20で構成され、主制御器50で各切換弁18,22,20を制御する。
【0015】
第1冷却回路4は、冷媒を駆動する第1ポンプ2と、冷媒の熱放熱を行う第1ラジエータ3を備えると共に、第1ラジエータ3と第1熱交換器13との間に、第1発熱体1をバイパスする第4バイパス流路25、及び第4バイパス流路25を開閉する第4切換弁26を備えている。
【0016】
第2冷却回路8は、冷媒を駆動する第2ポンプ6と、冷媒の熱放熱を行う第2ラジエータ7を備えると共に、第2ラジエータ7をバイパスする第5バイパス流路23、及び第5バイパス流路23を開閉する第5切換弁24を備えている。経路切換機構は、これらのバイパス流路25,23及び切換弁26,24を含むことができ、主制御器50により切換弁26,24を制御することができる。
【0017】
上記構成を備えた車両用熱管理システムにおいて、第1冷却回路4は、第1ポンプ2により冷媒を循環させ、冷媒で第1発熱体1の熱を吸収して、第1ラジエータ3で空気へ放熱する。第2冷却回路8は、第2ポンプ6により冷媒を循環させ、冷媒で第2発熱体5の熱を吸収して、第2ラジエータ7で空気へ放熱する。
【0018】
第3冷却回路12は、圧縮器11で冷媒を圧縮して高圧高温にすると共に、膨張弁10で冷媒を膨張させて低圧低温にし、第3発熱体9には低圧低温の冷媒を供給することで、低温且つ相変化を伴う沸騰冷却により第3発熱体9を冷却する。これにより、第3冷却回路12は、第3発熱体9の発熱密度が高くても、高温化を防止して、連続定格出力を増やすことができる。
【0019】
図2は、図1に示す車両用熱管理システムにおいて、冷却モード時の運転を示す図であり、とくに、第3冷却回路12のヒートポンプにより、第3発熱体9の熱を第1発熱体用ラジエータ3から空気へ放熱する運転状態を示している。
【0020】
上記の冷却モード時には、主制御器50において、第1切換弁18により第1バイパス流路17を開放して、第1熱交換器13をバイパスすると共に、第2切換弁22により第2バイパス流路21を開放して、第2熱交換器14をバイパスするように制御する。
【0021】
このとき、車両用熱管理システムは、第1冷却回路4の冷媒温度よりも第3冷却回路12の冷媒温度が高くなると、第3熱交換器15の矢印で示すように、第3冷却回路12の冷媒から第1冷却回路4の冷媒へ熱が移動する。そして、第1冷却回路4の冷媒温度が最高温度に達するまで、第3冷却回路12のヒートポンプにより、第3発熱体9の熱を第1冷却回路4の第1ラジエータ3から空気へ放熱する。
【0022】
このようにして、車両用熱管理システムは、1発熱体1よりも第2発熱体5の発熱量が多い又は発熱密度が高い場合、第1冷却回路4よりも第2冷却回路8の方が温度が高くなるので、第1冷却回路4の冷媒温度が最高温度に達するまでは、より低温での熱輸送をして第3冷却回路12のヒートポンプの効率を高く維持する。
【0023】
図3は、図1に示す車両用熱管理システムにおいて、他の冷却モード時の運転を示す図であり、とくに、第3冷却回路12のヒートポンプにより、第3発熱体9の熱を第2発熱体用ラジエータ7から空気へ放熱する運転状態を示している。
【0024】
上記の冷却モード時には、主制御器50において、第1切換弁18により第1バイパス流路17を開放して、第1熱交換器13をバイパスすると共に、第3切換弁20により第3バイパス流路19を開放して、第3熱交換器15をバイパスするように制御する。
【0025】
このとき、車両用熱管理システムは、第2冷却回路8の冷媒温度よりも第3冷却回路12の冷媒温度が高くなると、第2熱交換器14の矢印で示すように、第3冷却回路12の冷媒から第2冷却回路8の冷媒へ熱が移動する。そして、第2冷却回路8の冷媒温度が最高温度に達するまで、第3冷却回路12のヒートポンプにより、第3発熱体9の熱を第2冷却回路8の第1ラジエータ7から空気へ放熱する。
【0026】
ここで、第1発熱体1により第1冷却回路4の冷媒温度が最高温度に到達するような場合、図2に示す運転ができないため、第1ラジエータ3の放熱能力を大幅に高める必要がある。また、第1発熱体1の耐熱温度が第2発熱体5の耐熱温度よりも低い場合にも、第1ラジエータ3を大きくする必要がある。
【0027】
そこで、上記の車両用熱管理システムは、第1発熱体1により第1冷却回路4の冷媒温度が最高温度に到達するような場合、図3に示す運転をすることで、第2発熱体5の第2冷却回路8と空気との温度差Tを確保することができ、第2ラジエータ7のサイズを大きくする必要がないので、限られたラジエータサイズを使用しつつ、最大連続定格出力を増やすことができる。
【0028】
図4は、図1に示す車両用熱管理システムにおいて、排熱回収モード時の運転を示す図である。この場合には、主制御器50において、第3切換弁20により第3バイパス流路19を開放するように制御する。
【0029】
このとき、車両用熱管理システムは、ランキンサイクルのポンプの役割を圧縮器11が担い、ボイラーの役割を第2熱交換器14が担い、復水器の役割を第1熱交換器13が担うこととなる。これにより、車両用熱管理システムは、第2発熱体(エンジン)5の熱量をタービン16により回転エネルギーに変換すると共に、このタービン16と機械的に結合した第3発熱体(発電機)9によって回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0030】
すなわち、車両用熱管理システムは、第3冷却回路12において、圧縮器11により液体の冷媒が第2熱交換器14を通過し、その際、第2冷却回路8の冷媒温度よりも第3冷却回路12の冷媒温度が高いと、第2熱交換器14の矢印で示すように、第2冷却回路8の冷媒から第3冷却回路12の冷媒へ熱が移動し、第3冷却回路12の冷媒は沸騰して高温高圧の気体となる。
【0031】
そして、車両用熱管理システムは、気化した高温高圧の冷媒がタービン16を通過して減圧され、低温低圧の気体となる。この際、第3冷却回路12では、気体のエンタルピーが減少して、気体のエネルギーをタービン16の回転エネルギーに変換し、第3発熱体9により電気エネルギーとして回生される。
【0032】
また、第3冷却回路12では、低温低圧の気体となった冷媒が第1熱交換器13を通過し、この際、回路中の冷媒温度よりも第1冷却回路4の冷媒温度の方が低いと、第1熱交換器13の矢印で示すように熱が移動し、回路中の冷媒が凝縮されて液体となる。液体となった冷媒は、圧縮器11により第2熱交換器14を通過することで、排熱回収のランキンサイクルを連続して行うことができる。
【0033】
さらに、第1冷却回路において、第4切換弁26により第4バイパス流路25を開放して、第1発熱体1をバイパスすることで冷媒温度を低くし、また、第2冷却回路8において、第5切換弁24により第5バイパス流路23を開放して、第2ラジエータ7をバイパスすることで、冷媒温度を高くできる。この機能は、ランキンサイクルのボイラーと復水器との温度差が大きくなることに相当し、排熱回収の効率が高くなる。
【0034】
上記実施形態の車両用熱管理システムは、複数の発熱体1~3を冷却する車両用冷却システムにおいて、冷凍サイクルを有するヒートポンプを用いて高い冷却性能を得る機能、及び排熱回収による高い電費性能の機能を両立させることができ、しかも、空気への放熱部のサイズを大型化せずに上記の冷却性能と電費性能を両立させることができる。
【0035】
また、上記の車両用熱管理システムは、冷媒駆動体として、気化した冷媒の圧力エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン16を採用し、このタービン16を第3発熱体(発電機)9に連結したことにより、この運動エネルギーを利用して排熱回収のランキンサイクル運転をすることで、電費の向上を実現することができる。
【0036】
さらに、上記の車両用熱管理システムは、タービン16を第3発熱体9の動力軸に連結しているので、排熱回収モード時において、追加の発電モータが不要であり、しかも、第3冷却回路12の冷媒用配管経路を短くすることが可能であるから、システム構造の簡素化を実現することができる。
【0037】
さらに、上記の車両用熱管理システムは、第1熱交換器13及び第2熱交換器14に加えて、第3熱交換器15を採用し、経路切換機構として、夫々の熱交換器13,14、15に対して、バイパス流路17,14,19及び切換弁18,22,20を配置すると共に、主制御器50で経路を選択的に切り換える制御を行うことにより、第3冷却回路12の冷却モードや排熱回収モードに対応することができ、各発熱体1,5,9の冷却を効率的に行うことができる。
【0038】
さらに、上記の車両用熱管理システムは、第1冷却回路4に第4バイパス流路25及び第4切換弁26を配置すると共に、第2冷却回路8に第4バイパス流離23及び第4切換弁20を配置したことにより、とくに、排熱回収モードにおいて第4バイパス流路25及び第5バイパス流路23を開放する制御を行うことで、排熱回収効率をより一層高めることができる。
【0039】
図5図13は、本発明に係わる車両用熱管理システムの第2~第7の実施形態を説明する図である。以下の各実施形態では、第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0040】
〈第2実施形態〉
図5に示す車両用熱管理システムは、第1実施形態と同等の基本構成を備えると共に、第3冷却回路12における経路切換機構が、第3発熱体9と圧縮器11との間で、冷媒駆動体としてのタービン16をバイパスする第6バイパス流路27、及び第6バイパス流路27を開閉する第6切換弁28を備えている。また、上記の経路切換機構が、膨張器10をバイパスする第7バイパス流路29、及び第7バイパス流路29を開閉する第7切換弁30を備えている。
【0041】
上記の車両用熱管理システムは、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができると共に、冷却モード時に、第3冷却回路12の冷媒を第6バイパス流路27に通して、タービン16をバイパスすることで、循環経路内の圧力損失を低減することができる。また、上記の車両用熱管理システムは、排熱回収モード時に、第3冷却回路12の冷媒を第7バイパス流路29に通して、膨張弁10をバイパスすることで、循環経路内の圧力損失を低減することができる。
【0042】
〈第3実施形態〉
図6に示す車両用熱管理システムは、第1実施形態と同等の基本構成を備えると共に、冷媒駆動体としてのタービン16が、第1発熱体(モータ)1の動力軸に連結してある構成としている。
【0043】
上記の車両用熱管理システムは、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができると共に、とくに、排熱回収モード時に、排熱回収した電気エネルギーを第1発熱体1で使用する場合に比べると、第1発熱体1の動力軸に機械的に接続されたタービン16により、排熱回収の熱エネルギーを回転エネルギーに変換する。つまり、上記の車両用熱管理システムでは、電力変換を介さないことにより、排熱回収効率を高めることができる。
【0044】
〈第4実施形態〉
図7に示す車両用熱管理システムは、第1実施形態と同等の基本構成を備えると共に、冷媒駆動体としてのタービン16が、第2発熱体(エンジン)5の動力軸に連結してある構成としている。
【0045】
上記の車両用熱管理システムは、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができると共に、とくに、排熱回収モード時に、第2発熱体(エンジン)5の発熱量が多く、且つ発熱密度が高い場合、第2熱交換器14とタービン16との間の配管が第2発熱体5から距離が遠いほど空気への熱漏れが増えるので、第2発熱体5に極力近い位置にタービン16を配置することにより、空気への熱漏れを少なくして排熱回収効率を高めることができる。
【0046】
〈第5実施形態〉
図8に示す車両用熱管理システムは、第1実施形態と同等の基本構成を備えると共に、冷媒駆動体が、第3冷却回路12の冷媒を昇圧させる昇圧用ポンプ36であり、昇圧用ポンプ36が、第3発熱体9と圧縮器11との間に配置してある。
【0047】
上記の車両用熱管理システムは、第3冷却回路12において、昇圧用ポンプ36により冷媒を循環させ、圧縮器11で冷媒を高温高圧にすると共に、膨張器10で冷媒を低温低圧にして第3発熱体9に供給し、同第3発熱体9を冷却する。これにより、上記の車両用熱管理システムは、低温且つ相変化を伴う沸騰冷却により、第3発熱体9の発熱密度が高い場合でも高温化を防止して、連続定格出力を増やすことができる。
【0048】
上記の車両用熱管理システムは、第3冷却回路12の冷却モード時、とくに、第3冷却回路12の冷媒温度よりも第1冷却回路4の冷媒温度が低い場合の冷却モード時には、図9に示すように、第1切換弁18により第1バイパス流路17を開放して、第1熱交換器13をバイパスし、第2切換弁22により第2バイパス流路21を開放して、第2熱交換器14をバイパスする。これにより、車両用熱管理システムは、第3熱交換器15の矢印で示すように、第3冷却回路12の冷媒の熱を第1冷却回路4の冷媒で吸収し、第1ラジエータ3で空気に放熱する。
【0049】
また、上記の車両用熱管理システムは、第3冷却回路12の他の冷却モード時、とくに、第3冷却回路12の冷媒温度よりも第2冷却回路8の冷媒温度が低い場合の冷却モード時には、図10に示すように、第1切換弁18により第1バイパス流路17を開放して、第1熱交換器13をバイパスする。これにより、車両用熱管理システムは、23熱交換器14の矢印で示すように、第3冷却回路12の冷媒の熱を第2冷却回路8の冷媒で吸収し、第2ラジエータ7で空気に放熱する。
【0050】
さらに、上記の車両用熱管理システムは、第3冷却回路12の排熱回収モード時には、図11に示すように、第3切換弁20により第3バイパス流路19を開放して、第3熱交換器15をバイパスする。また、第1冷却回路4においては、第4切換弁26により第4バイパス流路25を開放して、第1発熱体1をバイパスし、さらに、第2冷却回路8においては、第5切換弁24により第5バイパス流路23を開放して、第2ラジエータ7をバイパスする。
【0051】
このとき、冷媒駆動体にタービン16を採用した第1実施形態では、図4に示すように、第3発熱体9、タービン16、第1熱交換器13、圧縮器11、第3バイパス流路19、第2熱交換器14、及び膨張器10の順で冷媒が循環する。これに対して、冷媒駆動体に昇圧用ポンプ36を採用した本実施形態では、図11に示すように、第3発熱体9、膨張器10、第2熱交換器14、第3バイパス流路19、圧縮器11、第1熱交換器13、及び昇圧用ポンプ36の順、すなわち逆向きに循環する。
【0052】
つまり、本実施形態の車両用熱管理システムは、排熱回収モード時には、ランキンサイクルのタービンの役割を圧縮器11が担い、ボイラーの役割を第2熱交換器14が担い、ポンプの役割を昇圧用ポンプ36が担い、復水器の役割を第1熱交換器13が担うこととなり、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0053】
上記の車両用熱管理システムは、第2発熱体5の熱量を圧縮器11によって回転エネルギーに変換し、圧縮器11のモータによって回生制御をすることで電気エネルギーに変換する。また、上記の車両用熱管理システムは、昇圧用ポンプ36により、第3冷却回路12の液体冷媒を第2熱交換器14に通過させ、その際、第2冷却回路8の冷媒温度よりも第3冷却回路12の冷媒温度が高いと、第2冷却回路8の冷媒から第3冷却回路12の液体冷媒へ熱を移動させ、液体冷媒を沸騰させて高温高圧の気体冷媒にする。
【0054】
そして、上記の車両用熱管理システムは、高温高圧の気体冷媒を圧縮器11の吐出口から吸入口の方向に通過させることで、減圧して低温低圧の気体にする。このとき、気体のエンタルピーが減少し、気体のエネルギーが圧縮器11の回転エネルギーに変換され、圧縮器11の駆動用モータにより電気エネルギーとして回生される。
【0055】
また、低温低圧になった第3冷却回路12の気体冷媒は、第1熱交換器13を通過し、その際、第1冷却回路4の冷媒温度の方が低いと、凝縮して液体冷媒となる。この液体冷媒は、昇圧用ポンプ36により第2熱交換器14を通過することで、排熱回収のランキンサイクルを連続して行うことができる。
【0056】
さらに、第2冷却回路8においては、冷媒が第2ラジエータをバイパスすることで、冷媒温度を高く維持し、第1冷却回路4においては、冷媒が第1発熱体1をバイパスすることで、冷媒温度を低く維持するので、ランキンサイクルのボイラーと復水器の温度差を大きくすることに相当し、排熱回収効率を高めることができる。
【0057】
〈第6実施形態〉
図12に示す車両用熱管理システムは、第1実施形態と同等の基本構成を備えると共に、経路切換機構が、第3冷却回路12において膨張器10をバイパスする第7バイパス流路29、及び第7バイパス流路29を開閉する第7切換弁30を備えている。さらに、上記の車両用熱管理システムは、昇圧用ポンプ36をバイパスする第8バイパス流路32、及び第8バイパス流路32を開閉する第8切換弁33を備えている。
【0058】
上記の車両用熱管理システムは、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができると共に、冷却モード時において、昇圧用ポンプ36をバイパスすることで、循環経路内の圧力損失を低減することができ、また、排熱回収モード時において、膨張弁10をバイパスすることで、循環経路内の圧力損失を低減することができる。
【0059】
〈第7実施形態〉
図13に示す車両用熱管理システムは、第1実施形態と同等の基本構成を備えると共に、昇圧用ポンプ36の回転軸が、圧縮器11の回転軸に連結してあり、昇圧用ポンプ36の回転軸と圧縮器11の回転軸の間にクラッチ機構31を有する構造である。
【0060】
上記の車両用熱管理システムは、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができると共に、排熱回収モード時において、圧縮器11の回転軸に連結した昇圧用ポンプ36を駆動する。起動時には、圧縮器11用のモータにより昇圧用ポンプ36を回転させて液体冷媒を送り、ランキンサイクルが稼働すると、圧縮器11用のモータを回生制御し、発電をすると同時に、圧縮器11の回転軸を通じて昇圧用ポンプ36を回転させて、液体冷媒を送り続ける。
【0061】
これにより、上記の車両用熱管理システムは、排熱回収した電気エネルギーを使って昇圧用ポンプ36を動かす場合よりも、排熱を回転エネルギーに使うことにより高効率で運転することができる。また、昇圧用ポンプ36専用のモータが不要になるので、システムの簡素化が実現できる。さらに、上記の車両用熱管理システムは、クラッチ機構31で圧縮器11の回転軸から昇圧用ポンプ36を分離することにより、冷却モード時における圧縮器11の駆動による昇圧用ポンプ36の連れ回りを防ぐことができ、連れ回りによる損失を低減し得る。
【0062】
なお、本発明に係わる車両用熱管理システムは、その構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、発熱体は、モータ、エンジン、及び発電機のほか、インバータ、バッテリー、及び蓄熱材などであっても良いし、1つの冷却回路内に複数配置することもできる。また、熱交換器は、1つの冷却回路内に複数配置することができる。さらに、複数の発熱体は、夫々の発熱量や発熱密度の大小関係が限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 第1発熱体
3 第1ラジエータ
4 第1冷却回路
5 第2発熱体
7 第2ラジエータ
8 第2冷却回路
9 第3発熱体
10 膨張器
11 圧縮器
12 第3冷却回路
13 第1熱交換器
14 第2熱交換器
15 第3熱交換器
16 タービン(冷媒駆動体)
17 第1バイパス流路(経路切換機構)
18 第1切換弁(経路切換機構)
19 第3バイパス流路(経路切換機構)
20 第3切換弁(経路切換機構)
21 第2バイパス流路(経路切換機構)
22 第2切換弁(経路切換機構)
23 第5バイパス流路(経路切換機構)
24 第5切換弁(経路切換機構)
25 第4バイパス流路(経路切換機構)
26 第4切換弁(経路切換機構)
27 第6バイパス流路 (経路切換機構)
28 第6切換弁
29 第7バイパス流路(経路切換機構)
30 第7切換弁(経路切換機構)
31 クラッチ機構
32 第8バイパス流路(経路切換機構)
33 第8切換弁(経路切換機構)
36 昇圧用ポンプ(冷媒駆動体)
50 主制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13