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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-09
(45)【発行日】2026-02-18
(54)【発明の名称】後輪懸架装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/20 20060101AFI20260210BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20260210BHJP
【FI】
B62K25/20
B62M7/02 J
B62M7/02 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021200966
(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公開番号】P2023086441
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】今野 岳
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-018476(JP,A)
【文献】特開2005-329846(JP,A)
【文献】特開平11-078471(JP,A)
【文献】特開2017-197335(JP,A)
【文献】特開2003-291878(JP,A)
【文献】特開2006-044640(JP,A)
【文献】特開平09-142358(JP,A)
【文献】特開2009-227118(JP,A)
【文献】特開2019-100411(JP,A)
【文献】米国特許第04724920(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/00-27/16
B62M 1/00-29/02
F16F 9/00- 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに対して揺動可能に支持されたスイングアームを備え、当該スイングアームに後輪が回転可能に支持された後輪懸架装置であって、
前記スイングアームの揺動に伴って伸縮するリアクッションと、
前記リアクッションの下端部に連結されたクッションレバーと、
前記クッションレバーと前記スイングアームを連結したクッションロッドと、
前記クッションロッドを伸縮させる作動流体を貯留したアキュームレータと、を備え、
前記クッションロッドの伸縮に伴う前記スイングアームの変位によって車高調整され、
前記スイングアームの揺動軸よりも下方に前記アキュームレータが位置付けられ
エンジンから前記アキュームレータの側方を通ってマフラ配管が後方に延び、
車両側面視にて、前記アキュームレータが前記マフラ配管に重なることを特徴とする後輪懸架装置。
【請求項2】
車両前後方向にて、前記アキュームレータが前記リアクッションの下端部よりも前記スイングアームの揺動軸に近づけられていることを特徴とする請求項1に記載の後輪懸架装置。
【請求項3】
前記アキュームレータが前記車体フレームよりも下方に位置付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の後輪懸架装置。
【請求項4】
前記マフラ配管は、前記アキュームレータの前方で屈曲して、車両前後方向に延びる車両中心線よりも左右方向一方側を通って後方に延びており、
前記アキュームレータが前記車両中心線よりも左右方向他方側に位置付けられていることを特徴とする請求項1に記載の後輪懸架装置。
【請求項5】
車体フレームのピボットフレームに対して揺動可能に支持されたスイングアームを備え、当該スイングアームに後輪が回転可能に支持された後輪懸架装置であって、
前記スイングアームの揺動に伴って伸縮するリアクッションと、
前記リアクッションの下端部に連結されたクッションレバーと、
前記クッションレバーと前記スイングアームを連結したクッションロッドと、
前記クッションロッドを伸縮させる作動流体を貯留したアキュームレータと、を備え、
前記クッションレバーは前記ピボットフレームの下部に連結されて揺動時の支点として機能し、前記ピボットフレームの下部よりも下方で前記クッションレバーに前記クッションロッドが連結され、
前記クッションロッドの伸縮に伴う前記スイングアームの変位によって車高調整され、
前記スイングアームの揺動軸よりも下方で前記クッションレバー及び前記クッションロッドの側方に前記アキュームレータが位置付けられ
車両側面視にて、前記アキュームレータが前記クッションレバー及び/又は前記クッションロッドに重なり、前記ピボットフレームの下方に位置することを特徴とする後輪懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両にはスイングアーム式の後輪懸架装置(リアサスペンション)が採用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の後輪懸架装置では、車体フレームにスイングアームが揺動可能に支持されており、スイングアームの後端に後輪が回転可能に支持されている。スイングアームにはリンク機構を介してリアクッションが連結されており、リアクッションによって路面の凹凸が吸収されている。近年、このような鞍乗型車両の後輪懸架装置には、ライドハイトアジャスタ等と呼ばれる車高調整装置が追加装備される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-104266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車高調整装置の部品は鞍乗型車両の配置スペースの制約から車両上方に配置されることが多いが、車両の安定性を考慮すると車両の重心が上がらないように車体下方に配置されることが望ましい。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、車高調整装置の部品が追加されても車両の低重心化を図ることができる後輪懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の後輪懸架装置は、車体フレームに対して揺動可能に支持されたスイングアームを備え、当該スイングアームに後輪が回転可能に支持された後輪懸架装置であって、前記スイングアームの揺動に伴って伸縮するリアクッションと、前記リアクッションの下端部に連結されたクッションレバーと、前記クッションレバーと前記スイングアームを連結したクッションロッドと、前記クッションロッドを伸縮させる作動流体を貯留したアキュームレータと、を備え、前記クッションロッドの伸縮に伴う前記スイングアームの変位によって車高調整され、前記スイングアームの揺動軸よりも下方に前記アキュームレータが位置付けられ、エンジンから前記アキュームレータの側方を通ってマフラ配管が後方に延び、車両側面視にて、前記アキュームレータが前記マフラ配管に重なることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の後輪懸架装置によれば、アキュームレータの作動流体によってクッションロッドが伸縮することで車高調整される。スタート時やコーナの立ち上がり等では車両後部の車高が下がることで、重心の低い姿勢で安定した加速が可能になる。また、アキュームレータが車両下部に位置することで、アキュームレータ等の車高調整装置の部品が車両に追加されても車両の重心を低く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の後輪懸架装置の左側面図である。
図3】本実施例の後輪懸架装置の下面図である。
図4図3の後輪懸架装置をA-A線に沿って切断した断面図である。
図5】本実施例の車高調整装置の模式図である。
図6】本実施例の車高調整装置付近の側面図である。
図7図6の車高調整装置をB-B線に沿って切断した断面図である。
図8図6の車高調整装置をC-C線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の後輪懸架装置では、車体フレームに対して揺動可能にスイングアームが支持され、スイングアームには後輪が回転可能に支持されている。スイングアームの揺動に伴ってリアクッションが伸縮されて路面の凹凸が吸収される。リアクッションの下端部にはクッションレバーが連結され、クッションレバーとスイングアームがクッションロッドによって連結されている。クッションロッドは作動流体によって伸縮され、アキュームレータに作動流体が貯留されている。アキュームレータの作動流体によってクッションロッドが伸縮し、クッションロッドの伸縮に伴うスイングアームの変位によって車高調整される。スタート時やコーナの立ち上がり等では車両後部の車高が下がることで、重心の低い姿勢で安定した加速が可能になる。スイングアームの揺動軸よりも下方にアキュームレータが位置付けられ、アキュームレータ等の車高調整用の構造が車両に追加されても車両の重心を低く維持することができる。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。なお、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、パイプ・板金によって形成される車体フレーム10に、エンジン15や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10のヘッドパイプ11からメインフレーム14が左右に分岐して後方に延びている。メインフレーム14の前側部分はエンジン15の上方に位置するタンクレール12になっており、タンクレール12によって燃料タンク(不図示)が下方から支持されている。メインフレーム14の後側部分はエンジン15の後方に位置するピボットフレーム13になっており、ピボットフレーム13にはスイングアーム31が揺動可能に支持されている。
【0012】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク19が操舵可能に支持されている。フロントフォーク19の下部には前輪21が回転可能に支持されており、前輪21の上部はフロントフェンダ22に覆われている。スイングアーム31はピボットフレーム13から後方に向かって延びている。スイングアーム31の後端には後輪25が回転可能に支持され、後輪25の前方はリアフェンダ26に覆われている。後輪25にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン15が連結されており、変速機構を介してエンジン15からの動力が後輪25に伝達されている。
【0013】
また、鞍乗型車両1の後輪懸架装置30には、ウイリー限界を上げて加速を向上させることを目的として、車高調整によって車両の重心を下げる車高調整装置50(図2参照)が付加されている。車高調整装置50には、車高調整用のオイル(作動流体)を貯留するアキュームレータ51(図2参照)が設けられている。アキュームレータ51はシートカウル内や車体フレーム10の側方に配置されることが多いが、アキュームレータ51のような重量物が車両上方に配置されると重心を十分に下げることができない。そこで、本実施例の後輪懸架装置30では、スイングアーム31の揺動軸32の下方にアキュームレータ51の配置スペースが確保されている。
【0014】
図2から図5を参照して、鞍乗型車両の後輪懸架装置について説明する。図2は本実施例の後輪懸架装置の左側面図である。図3は本実施例の後輪懸架装置の下面図である。図4図3の後輪懸架装置をA-A線に沿って切断した断面図である。図5は本実施例の車高調整装置の模式図である。なお、図2では説明の便宜上、車体フレーム及びスイングアームを二点鎖線で示している。また、図5(A)はリンクロッドの伸長状態、図5(B)はリンクロッドの収縮状態をそれぞれ示している。
【0015】
図2に示すように、エンジン15及びピボットフレーム13にはスイングアーム式の後輪懸架装置30が取り付けられている。ピボットフレーム13の高さ方向の中間位置には揺動軸32を介して両持ち式のスイングアーム31が揺動可能に支持されている。スイングアーム31は、リアクッション33、クッションレバー34、クッションロッド35を介してエンジン15及びピボットフレーム13に連結されている。スイングアーム31の揺動に伴ってリアクッション33が伸縮することで、路面の凹凸が吸収されて振動が抑えられると共に路面と後輪25の接地性が高められている。
【0016】
エンジン15及びピボットフレーム13の上部にはリアクッション33の上端部が支持されており、リアクッション33の下端部には側面視略三角形状のクッションレバー34の後頂部が連結されている。ピボットフレーム13の下部にはクッションレバー34の前頂部が連結されており、クッションレバー34の下頂部(図4参照)は伸縮式のクッションロッド35を介してスイングアーム31の下部に連結されている。スイングアーム31の揺動に伴ってクッションレバー34が前頂部を支点にして揺動され、スイングアーム31からリアクッション33に路面からの衝撃等が伝えられている。
【0017】
エンジン15の下部には懸架ブラケット81を介してアキュームレータブラケット82が取り付けられている。アキュームレータブラケット82にはアキュームレータ51が支持されており、アキュームレータ51にはクッションロッド35を伸縮させるオイルが貯留されている。アキュームレータ51にはプランジャスイッチ52が設けられ、プランジャスイッチ52には連結ホース53を介してクッションロッド35が連結されている。プランジャスイッチ52によって連結ホース53内のオイルの移動が制御される。プランジャスイッチ52には操作ケーブル54を介して操作部(不図示)が連結されている。
【0018】
後輪懸架装置30では、油圧によってクッションロッド35が伸縮され、クッションロッド35の伸縮に応じてスイングアーム31が変位することで鞍乗型車両1の車高が調整される。このように、後輪懸架装置30の下部には、クッションロッド35、アキュームレータ51、プランジャスイッチ52、連結ホース53、操作ケーブル54を含む車高調整装置50が設けられている。このとき、重量部品であるアキュームレータ51が車体フレーム10の下方に位置付けられて鞍乗型車両1の低重心化が図られている。なお、車高調整装置50の詳細構成については後述する。
【0019】
図2及び図3に示すように、エンジン15の前面からアキュームレータ51の側方(本実施例では右側方)を通ってマフラ配管90が後方に延びている。アキュームレータ51の前方ではマフラ配管90が左右4つの分岐管91a-91dに分かれている。アキュームレータ51の側方では左2つの分岐管91a、91bが下側配管92eにまとめられ、右2つの分岐管91c、91dが上側配管92fにまとめられている。アキュームレータ51の後方では下側配管92e及び上側配管92fが1本の集合管93にまとめられ、集合管93が後輪25付近のマフラ(不図示)に接続されている。
【0020】
車体フレーム10の下方では、マフラ配管90の下側配管92e及び上側配管92fは右側(左右方向一方側)に寄せられ、車高調整装置50は左側(左右方向他方側)に寄せられている。車高調整装置50の前方及び右側方がアキュームレータブラケット82によってカバーされており、車高調整装置50とマフラ配管90の間がアキュームレータブラケット82によって仕切られている。マフラ配管90の隣に車高調整装置50が設けられても、マフラ配管90の熱気から車高調整装置50の各部品が保護されている。なお、アキュームレータブラケット82の詳細構成については後述する。
【0021】
図4に示すように、リアクッション33のショックアブソーバ41は、上側のシリンダ42と下側のピストンロッド43(ピストンは不図示)に分かれている。ショックアブソーバ41のシリンダ42はエンジン15に支持されており、ショックアブソーバ41のピストンロッド43はクッションレバー34に連結されている。ショックアブソーバ41のシリンダ42とピストンロッド43はコイルスプリング44によって弾性的に連結されている。リアクッション33は、コイルスプリング44によって路面からの衝撃を吸収して、ショックアブソーバ41によってコイルスプリング44の振幅を減衰させている。
【0022】
リアクッション33はスイングアーム31の前側の開口に入り込んでおり、リアクッション33がスイングアーム31の揺動軸32に近づけられている。揺動軸32の下方にはクッションレバー34が位置付けられており、クッションレバー34によってピボットフレーム13、リアクッション33、スイングアーム31が連結されている。クッションレバー34の下部は断面視U字状に形成されており(図8参照)、このU字状の下部にクッションロッド35が収容されている。クッションレバー34及びクッションロッド35によってスイングアーム31とリアクッション33を連結するリンク機構が形成されている。
【0023】
図4及び図5(A)に示すように、車高調整装置50のクッションロッド35は、筒状に形成されたシリンダ61と、シリンダ61から突出したロッド本体62とを有している。シリンダ61にはレバー側連結部63が形成されており、レバー側連結部63を介してシリンダ61がクッションレバー34に連結されている。ロッド本体62の前端にはシリンダ61で摺動するピストン64が形成され、ピストン64によってシリンダ61内が大気室65とオイル室66に分かれている。ロッド本体62の後端にはアーム側連結部67が設けられており、アーム側連結部67を介してロッド本体62がスイングアーム31に連結されている。
【0024】
クッションロッド35のシリンダ61のオイル室66は連結ホース53及びプランジャスイッチ52を通じてアキュームレータ51の高圧オイル室72に連通している。アキュームレータ51は筒状に形成されており、ピストン71によってアキュームレータ51内が高圧オイル室72と高圧ガス室73に分かれている。プランジャスイッチ52には、アキュームレータ51とクッションロッド35の間のオイルの移動を制御する制御弁75が設けられている。制御弁75には操作ケーブル54が連結されており、操作ケーブル54が操作されることでクッションロッド35からアキュームレータ51へのオイルの移動が許容される。
【0025】
クッションロッド35とアキュームレータ51の間でオイルが移動することで、クッションロッド35の長さが変化する。クッションロッド35からアキュームレータ51にオイルが移動すると、クッションロッド35のオイル室66が狭まってクッションロッド35が長くなる。アキュームレータ51からクッションロッド35にオイルが移動すると、クッションロッド35のオイル室66が広がってクッションロッド35が短くなる。クッションロッド35が長くなるとスイングアーム31が上方に動いて車両後部の車高が低くなり、クッションロッド35が短くなるとスイングアーム31が下方に動いて車両後部の車高が元に戻される。
【0026】
より詳細には、図5(A)に示すように、車両と乗員の重量の反力によってスイングアーム31には上向きの力が作用している。このとき、クッションロッド35には引張力が作用しており、クッションロッド35のピストン64によってシリンダ61内のオイルが圧縮されている。乗員によって操作ケーブル54が操作されると、操作ケーブル54に連結されたプランジャスイッチ52の制御弁75が開かれる。クッションロッド35のシリンダ61からオイルが押し出されて、連結ホース53を通じてアキュームレータ51の高圧オイル室72にオイルが移動する。
【0027】
クッションロッド35のピストン64がオイル室66を狭める方向に移動して、ピストン64と一体のロッド本体62がシリンダ61から突き出されてクッションロッド35が長くなる。クッションロッド35が長くなることで、初期状態よりもスイングアーム31が上方に傾けられる。これにより、車両後部の車高が下がって、重心の低い姿勢で安定した加速が可能になる。特に、スタート時やコーナの立ち上がり等で車高が下がることで、ウイリー限界が上げられて加速が向上されている。また、車高を下げる際にエンジン15等からのエネルギーが使用されることがない。
【0028】
図5(B)に示すように、操作ケーブル54の非操作時にはプランジャスイッチ52の制御弁75が閉じられて一方弁に切り替わる。一方弁によってクッションロッド35からアキュームレータ51へのオイルの移動が規制されてクッションロッド35が長くなることがない。ただし、一方弁を通じてアキュームレータ51からクッションロッド35へのオイルの移動は許容されてるため、クッションロッド35が短くなることは規制されていない。このように、プランジャスイッチ52の制御弁75が閉じられることで、クッションロッド35の収縮だけが許容されている。
【0029】
車両のブレーキング中に車両前部に荷重が移動して車両後部の荷重が減少すると、スイングアーム31及び後輪25の重量、リアクッション33の反発力によってスイングアーム31に下向きの力が作用する。このとき、クッションロッド35には圧縮力が作用し、クッションロッド35のピストン64によってシリンダ61のオイル室66が拡張される。制御弁75が閉じられているが、一方弁を通じてクッションロッド35側へのオイルの移動は許容されている。クッションロッド35のシリンダ61にオイルが引き込まれて、連結ホース53を通じてアキュームレータ51の高圧オイル室72からオイルが移動する。
【0030】
クッションロッド35のピストン64がオイル室66を広げる方向に移動して、ピストン64と一体のロッド本体62がシリンダ61に入り込んでクッションロッド35が短くなる。クッションロッド35が短くなることで、スイングアーム31が下方に傾けられて初期状態に戻されて車両後部が元の車高まで上げられる。また、直線走行時に生じる車体荷重の僅かな変化であっても、アキュームレータ51からクッションロッド35にオイルが少しずつ移動して車両後部の車高が徐々に戻される。また、車高を戻す際にもエンジン15等からのエネルギーが使用されることがない。
【0031】
図6から図8を参照して、アキュームレータのレイアウト及びアキュームレータブラケットについて説明する。図6は本実施例の車高調整装置付近の側面図である。図7図6の車高調整装置をB-B線に沿って切断した断面図である。図8図6の車高調整装置をC-C線に沿って切断した断面図である。なお、図8では説明の便宜上、スイングアームを二点鎖線で示している。
【0032】
図6に示すように、車両上下方向にて、アキュームレータ51がピボットフレーム(車体フレーム)13よりも下方に位置付けられて車両の重心が低く維持されている。車両前後方向にて、アキュームレータ51がリアクッション33の下端部(図4参照)よりもスイングアーム31の揺動軸32に近づけられて車両の重心が車両前後方向の中央に近づけられている。このとき、アキュームレータ51がスイングアーム31の揺動中心付近に近づけられることで、スイングアーム31の揺動範囲からアキュームレータ51が外れて、スイングアーム31とアキュームレータ51の干渉が抑えられている。
【0033】
図6及び図7に示すように、アキュームレータ51がクッションレバー34及びクッションロッド35の側方に位置付けられ、車両側面視にてアキュームレータ51がクッションレバー34及びクッションロッド35に重なっている。これにより、車高調整装置50の部品が集約して配置され、アキュームレータ51とクッションロッド35を繋ぐ連結ホース53が短縮されて整備性が向上される。また、車両側面視にて、アキュームレータ51がピボットフレーム13の真下に位置し、ピボットフレーム13の下方を通るマフラ配管90に重なっている。マフラ配管90にアキュームレータ51が並ぶことで低重心化が図られている。
【0034】
また、マフラ配管90はアキュームレータ51の前方で屈曲して、車両中心線Lよりも右側を通って後方に延びており、アキュームレータ51は車両中心線Lよりも左側に位置付けられている。より詳細には、クッションレバー34及びクッションロッド35は、車両前後方向に延びる車両中心線Lよりも一方側(左側)に10[mm]オフセットされ、さらにクッションレバー34及びクッションロッド35よりも左側にアキュームレータ51が配置されている。マフラ配管90が車両中心線Lよりも右側に寄せられることで、車両中心線Lよりも左側にアキュームレータ51の配置スペースが確保される。
【0035】
図7及び図8に示すように、車高調整装置50とマフラ配管90の間がアキュームレータブラケット82によって仕切られている。アキュームレータブラケット82は懸架ブラケット81を介してエンジン15(図6参照)のクランクケース16に固定されている。アキュームレータブラケット82は、車高調整装置50の前方から覆う前壁部83と、車高調整装置50の右側方(一側方)から覆う側壁部84と、によって上面視略L字板状に形成されている。なお、アキュームレータブラケット82は、熱反射率が高いアルミニウム合金又は熱伝導率が低いステンレス等によって形成されることが好ましい。
【0036】
アキュームレータブラケット82の前壁部83の後面左端側には、アキュームレータ51を保持するC字筒状のアキュームレータホルダ85が固定されている。アキュームレータホルダ85の前端にはフランジ86が形成されており、このフランジ86がアキュームレータブラケット82の前壁部83にネジ止めされて、前壁部83にアキュームレータホルダ85が片持ち支持されている。アキュームレータホルダ85の筒状部87の内側にアキュームレータ51が挿し込まれて、筒状部87の外側から締結バンド88が締め付けられてアキュームレータホルダ85にアキュームレータ51が保持されている。
【0037】
車高調整装置50の前方ではマフラ配管90が右側に屈曲しており、アキュームレータブラケット82の前壁部83の前方にマフラ配管90の屈曲部94が位置付けられている。アキュームレータブラケット82の前壁部83は上下左右に板状に広がっており、前壁部83によってアキュームレータ51、クッションレバー34、クッションロッド35等の各部品とマフラ配管90の屈曲部94の間が仕切られている。アキュームレータブラケット82の前壁部83によって走行風が遮られて、マフラ配管90の屈曲部94から走行風と共に後方に流れる熱気からアキュームレータ51、クッションレバー34、クッションロッド35等の各部品が保護される。
【0038】
車高調整装置50の右側方ではマフラ配管90の屈曲部94から後方に下流部95(下側配管92e、上側配管92f)が延びており、アキュームレータブラケット82の側壁部84の右側方にマフラ配管90の下流部95が位置付けられている。アキュームレータブラケット82の側壁部84は上下前後に板状に広がっており、側壁部84によってアキュームレータ51、クッションレバー34、クッションロッド35等の各部品とマフラ配管90の下流部95の間が仕切られている。アキュームレータブラケット82の側壁部84によってマフラ配管90の下流部95の熱気が遮られてアキュームレータ51、クッションレバー34、クッションロッド35等の各部品が保護される。
【0039】
このように、クッションレバー34の前方でマフラ配管90を右側方に屈曲させることで、クッションレバー34の左側方にアキュームレータ51の配置スペースが確保されている。マフラ配管90とアキュームレータ51がクッションレバー34を挟んで左右に並ぶことで車両の低重心化が図られている。また、アキュームレータブラケット82によってアキュームレータ51が前方及び右側方から覆われることで、マフラ配管90の熱からアキュームレータ51が保護されている。よって、マフラ配管90からの熱の影響を抑えつつ車両の低重心化が図られている。
【0040】
以上、本実施例によれば、アキュームレータ51のオイルによってクッションロッド35が伸縮することで車高調整される。スタート時やコーナの立ち上がり等では車両後部の車高が下がることで、重心の低い姿勢で安定した加速が可能になる。また、アキュームレータ51が車両下部に位置することで、アキュームレータ51等の車高調整装置50の部品が車両に追加されても車両の重心を低く維持することができる。
【0041】
なお、本実施例では、アキュームレータがピボットフレームよりも下方に位置付けられているが、アキュームレータはスイングアームの揺動軸よりも下方に位置付けられていればよい。アキュームレータが追加されても、アキュームレータがスイングアームの揺動軸よりも下方に位置付けられれば、車両の重心を低く維持することができる。
【0042】
また、本実施例では、オイルによってクッションロッドを伸縮させているが、オイル以外の作動流体によってクッションロッドを伸縮させてもよい。なお、作動流体には、液体に限らず、気体が用いられてもよい。
【0043】
また、本実施例では、アキュームレータブラケットがエンジンに固定されたが、アキュームレータブラケットが車体フレームに固定されてもよい。
【0044】
また、本実施例では、リアクッションの上端部がエンジン及び車体フレームに支持されたが、リアクッションの上端部はエンジン又は車体フレームに支持されていればよい。
【0045】
また、本実施例では、クッションレバーが車体フレームに支持されたが、クッションロッドがエンジンに支持されてもよい。
【0046】
また、本実施例では、車両側面視にて、アキュームレータがクッションレバー及びクッションロッドに重なっているが、アキュームレータがクッションレバー又はクッションロッドに重なっていればよい。
【0047】
また、本実施例では、マフラ配管の下流部が車両中心線よりも右側に位置し、アキュームレータが車両中心線よりも左側に位置したが、マフラ配管の下流部が車両中心線よりも左側に位置し、アキュームレータが車両中心線よりも右側に位置してもよい。
【0048】
また、本実施例では、アキュームレータ、クッションレバー、クッションロッドとマフラ配管の間がアキュームレータブラケットに仕切られているが、少なくともアキュームレータとマフラ配管の間が仕切られていればよい。
【0049】
また、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0050】
以上の通り、本実施例の後輪懸架装置(30)は、車体フレーム(10)に対して揺動可能に支持されたスイングアーム(31)を備え、当該スイングアームに後輪(25)が回転可能に支持された後輪懸架装置であって、スイングアームの揺動に伴って伸縮するリアクッション(33)と、リアクッションの下端部に連結されたクッションレバー(34)と、クッションレバーとスイングアームを連結したクッションロッド(35)と、クッションロッドを伸縮させる作動流体を貯留したアキュームレータ(51)と、を備え、クッションロッドの伸縮に伴うスイングアームの変位によって車高調整され、スイングアームの揺動軸(32)よりも下方にアキュームレータが位置付けられる。この構成によれば、アキュームレータの作動流体によってクッションロッドが伸縮することで車高調整される。スタート時やコーナの立ち上がり等では車両後部の車高が下がることで、重心の低い姿勢で安定した加速が可能になる。また、アキュームレータが車両下部に位置することで、アキュームレータ等の車高調整装置の部品が車両に追加されても車両の重心を低く維持することができる。
【0051】
本実施例の鞍乗型車両の後輪懸架装置において、車両前後方向にて、アキュームレータがリアクッションの下端部よりもスイングアームの揺動軸に近づけられている。この構成によれば、アキュームレータがスイングアームの揺動軸に近づけられることで、車両の重心が車両前後方向の中央に近づけられて車両の安定性が向上する。
【0052】
本実施例の鞍乗型車両の後輪懸架装置において、アキュームレータが車体フレームよりも下方に位置付けられている。この構成によれば、車両の重心をより低く維持することができる。
【0053】
本実施例の鞍乗型車両の後輪懸架装置において、アキュームレータがクッションレバー及びクッションロッドの側方に位置付けられ、車両側面視にて、アキュームレータがクッションレバー及び/又はクッションロッドに重なる。この構成によれば、車高調整装置の部品が集約して配置され、配管が短縮されて整備性が向上される。
【0054】
本実施例の鞍乗型車両の後輪懸架装置において、エンジンからアキュームレータの側方を通ってマフラ配管(90)が後方に延び、車両側面視にて、アキュームレータがマフラ配管に重なる。この構成によれば、マフラ配管にアキュームレータが並んで配置されることで、車両の重心をより低く維持することができる。
【0055】
本実施例の鞍乗型車両の後輪懸架装置において、マフラ配管は、アキュームレータの前方で屈曲して、車両前後方向に延びる車両中心線よりも左右方向一方側を通って後方に延びており、アキュームレータが車両中心線よりも左右方向他方側に位置付けられている。この構成によれば、マフラ配管の屈曲部よりも下流側が車両中心線よりも左右方向一方側に寄せられることで、車両中心線よりも左右方向他方側にアキュームレータの配置スペースを確保することができる。
【0056】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0057】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0058】
1 :鞍乗型車両
10:車体フレーム
15:エンジン
25:後輪
30:後輪懸架装置
31:スイングアーム
32:揺動軸
33:リアクッション
34:クッションレバー
35:クッションロッド
51:アキュームレータ
90:マフラ配管
L :車両中心線
図1
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