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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-09
(45)【発行日】2026-02-18
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/48 20071001AFI20260210BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20260210BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20260210BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20260210BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20260210BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20260210BHJP
   F16H 3/091 20060101ALI20260210BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20260210BHJP
【FI】
B60K6/48
B60K6/387 ZHV
B60K6/547
B60W10/02 900
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F16H3/091
B60L50/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022067002
(22)【出願日】2022-04-14
(65)【公開番号】P2023157229
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2025-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 将嘉
(72)【発明者】
【氏名】花田 圭
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0162272(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02368739(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0260985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/48
B60K 6/387
B60K 6/547
B60W 10/02
B60W 10/06
B60W 10/08
F16H 3/091
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
ドライバーによって操作されるクラッチと、
前記クラッチを介して前記エンジンから動力が伝達される手動変速機と、
前記手動変速機から動力が伝達される駆動輪と、を備え、
前記手動変速機が、前記エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸の回転を変速して前記カウンタ軸に伝達する複数のギヤ対と、を有するハイブリッド車両であって、
前記カウンタ軸と前記駆動輪との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータが連結され、
前記複数のギヤ対のうちの特定のギヤ対の一方のギヤに、前記入力軸から前記カウンタ軸への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが設けられており、
前記ワンウェイクラッチは、前記複数のギヤ対のうち最も減速比が小さい前進用変速段を形成する前記特定のギヤ対の一方のギヤに設けられていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
エンジンと、
ドライバーによって操作されるクラッチと、
前記クラッチを介して前記エンジンから動力が伝達される手動変速機と、
前記手動変速機から動力が伝達される駆動輪と、を備え、
前記手動変速機が、前記エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸の回転を変速して前記カウンタ軸に伝達する複数のギヤ対と、を有するハイブリッド車両であって、
前記カウンタ軸と前記駆動輪との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータが連結され、
前記複数のギヤ対のうちの特定のギヤ対の一方のギヤに、前記入力軸から前記カウンタ軸への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが設けられており、
前記エンジンの動力および前記モータジェネレータの動力により走行するHEVモードと、前記モータジェネレータの動力により走行するEVモードとを切替える制御部を備え、
前記制御部は、前記HEVモードにおいて、前記ワンウェイクラッチが設けられた前記特定のギヤ対へのシフト操作が行われたことを含む所定のEVモード移行条件が成立した場合、前記エンジンを停止して前記EVモードへの切換えを行うことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
エンジンと、
ドライバーによって操作されるクラッチと、
前記クラッチを介して前記エンジンから動力が伝達される手動変速機と、
前記手動変速機から動力が伝達される駆動輪と、を備え、
前記手動変速機が、前記エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸の回転を変速して前記カウンタ軸に伝達する複数のギヤ対と、を有するハイブリッド車両であって、
前記カウンタ軸と前記駆動輪との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータが連結され、
前記複数のギヤ対のうちの特定のギヤ対の一方のギヤに、前記入力軸から前記カウンタ軸への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが設けられており、
前記エンジンの動力および前記モータジェネレータの動力により走行するHEVモードと、前記モータジェネレータの動力により走行するEVモードとを切替える制御部を備え、
前記制御部は、前記HEVモードにおいて、前記ワンウェイクラッチが設けられた前記特定のギヤ対へのシフト操作が行われたことを含む所定のEVモード移行条件が、前記ワンウェイクラッチが設けられた前記特定のギヤ対へのシフト操作が行われると成立する場合、前記ワンウェイクラッチが設けられた前記ギヤ対へのシフト操作が行われると前記EVモードに移行可能であることをドライバーに報知することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
エンジンと、
ドライバーによって操作されるクラッチと、
前記クラッチを介して前記エンジンから動力が伝達される手動変速機と、
前記手動変速機から動力が伝達される駆動輪と、を備え、
前記手動変速機が、前記エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸の回転を変速して前記カウンタ軸に伝達する複数のギヤ対と、を有するハイブリッド車両であって、
前記カウンタ軸と前記駆動輪との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータが連結され、
前記複数のギヤ対のうちの特定のギヤ対の一方のギヤに、前記入力軸から前記カウンタ軸への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが設けられており、
前記エンジンの動力および前記モータジェネレータの動力により走行するHEVモードと、前記モータジェネレータの動力により走行するEVモードとを切替える制御部を備え、
前記制御部は、前記EVモードにおいて、前記クラッチが操作された場合、前記エンジンを始動して前記HEVモードへの切換えを行うことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
前記ワンウェイクラッチは、前記複数のギヤ対のうち最も減速比が小さい前進用変速段を形成する前記特定のギヤ対の一方のギヤに設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記ワンウェイクラッチは、前記特定のギヤ対の一方のギヤであって前記入力軸に設けられたギヤに設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両として、特許文献1に記載されるものが知られている。特許文献1に記載のハイブリッド車両は、クラッチを介してエンジンに連結された手動変速機と、手動変速機の出力軸に設けられた電動機と、クラッチペダルが踏み込み操作されていないときでもクラッチの締結解除状態が自動で得られるようにするクラッチ解放手段とを備えている。このクラッチ解放手段は、オイルリザーバ、オイルポンプ、調圧弁、リニアソレノイドバルブ等を有する油圧装置から構成されており、クラッチスプリングによって締結状態にされているクラッチに対して油圧を作用させることにより、クラッチを締結解除状態にするようになっている。
【0003】
特許文献1に記載のハイブリッド車両によれば、電動機によるモータ走行時において、少なくとも手動変速機が非ニュートラル状態のときはクラッチ解放手段によりクラッチを締結解除状態にすることにより、モータ走行時のエンジンの引きずりを防止でき、電動機の稼働を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-292314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド車両にあっては、EV走行(モータ走行)時のエンジンの引きずりを防止するために、複数の部品を有する油圧装置からなるクラッチ解放手段を備えているため、構造が複雑化し、製造コストが高価になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、ドライバーによって操作されるクラッチを介してエンジンと手動変速機とが連結されたハイブリッド車両において、構造を複雑化することなくEV走行時のエンジンの引きずりを防止できるハイブリッド車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジンと、ドライバーによって操作されるクラッチと、前記クラッチを介して前記エンジンから動力が伝達される手動変速機と、前記手動変速機から動力が伝達される駆動輪と、を備え、前記手動変速機が、前記エンジンの動力が入力される入力軸と、前記入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、前記入力軸の回転を変速して前記カウンタ軸に伝達する複数のギヤ対と、を有するハイブリッド車両であって、前記カウンタ軸と前記駆動輪との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータが連結され、前記複数のギヤ対のうちの特定のギヤ対の一方のギヤに、前記入力軸から前記カウンタ軸への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが設けられており、前記ワンウェイクラッチは、前記複数のギヤ対のうち最も減速比が小さい前進用変速段を形成する前記特定のギヤ対の一方のギヤに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、ドライバーによって操作されるクラッチを介してエンジンと手動変速機とが連結されたハイブリッド車両において、構造を複雑化することなくEV走行時に停止しているエンジンの引きずりを防止できるハイブリッド車両を提供することができ、さらには、エンジンによる走行と電動機による走行を容易に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の走行モード切換え動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両は、エンジンと、ドライバーによって操作されるクラッチと、クラッチを介してエンジンから動力が伝達される手動変速機と、手動変速機から動力が伝達される駆動輪と、を備え、手動変速機が、エンジンの動力が入力される入力軸と、入力軸に平行に配置されたカウンタ軸と、入力軸の回転を変速してカウンタ軸に伝達する複数のギヤ対と、を有するハイブリッド車両であって、カウンタ軸と駆動輪との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータが連結され、複数のギヤ対のうちの特定のギヤ対の一方のギヤに、入力軸からカウンタ軸への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが設けられていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両は、ドライバーによって操作されるクラッチを介してエンジンと手動変速機とが連結されたハイブリッド車両において、構造を複雑化することなくEV走行時のエンジンの引きずりを防止でき、エンジンによる走行と電動機による走行を容易に切り替えることができる。
【実施例
【0011】
以下、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両を示す図である。
【0013】
まず、構成を説明する。図1において、ハイブリッド車両1は、エンジン2(図中、ENGと記す)と、ドライバーによって操作されるクラッチ3と、クラッチ3を介してエンジン2から動力が伝達される手動変速機10と、手動変速機10から動力が伝達される駆動輪7と、を備えている。また、ハイブリッド車両1は、走行用の動力を発生するモータジェネレータ8(図中、MGと記す)を備えている。
【0014】
エンジン2は、ガソリンまたはディーゼル燃料を用いて走行用の動力(エンジントルク)を発生する内燃機関である。クラッチ3は、エンジン2のクランク軸2Aと手動変速機10の入力軸11との間に設けられており、手動変速機10に伝えられるエンジン2の動力は全てこのクラッチ3を介して伝達されている。クラッチ3は、クランク軸2Aと入力軸11との間で動力伝達がされる締結状態と、動力伝達がされない開放状態(締結解除状態)とに切換えられる。クラッチ3は、連結機構9Bを介してクラッチペダル9に機械的に連結されており、クラッチペダル9の動きに連動して締結状態と開放状態とが切換えられる。つまり、クラッチ3は、ドライバーによるクラッチペダル9の踏み込み操作(クラッチ操作)によってのみ開放状態にされる。
【0015】
手動変速機10は、手動により1速段から5速段の前進用変速段と後進用変速段との何れかに変速操作される平行軸歯車式の変速機である。
【0016】
手動変速機10は、エンジン2の動力が入力される入力軸11と、入力軸11に平行に配置されたカウンタ軸12と、入力軸11の回転を変速してカウンタ軸12に伝達する複数のギヤ対10A~10Fと、を有する。入力軸11は、クラッチ3を介してエンジン2に連結されている。
【0017】
入力軸11には、1速段用の入力ギヤ11A、2速段用の入力ギヤ11B、3速段用の入力ギヤ11C、4速段用の入力ギヤ11D、5速段用の入力ギヤ11Eおよび後進段用の入力ギヤ11Fが設けられている。
【0018】
入力ギヤ11A、11Bは、入力軸11に固定されており、入力軸11と一体で回転する。入力ギヤ11C、11D、11E、11Fは、図示しないニードルベアリングを介して入力軸11に相対回転自在に支持されている。
【0019】
カウンタ軸12には、1速段用のカウンタギヤ12A、2速段用のカウンタギヤ12B、3速段用のカウンタギヤ12C、4速段用のカウンタギヤ12D、5速段用のカウンタギヤ12E、後進段用のカウンタギヤ12Fおよび前進用のファイナルドライブギヤ12Gが設けられている。
【0020】
カウンタギヤ12A、12B、12C、12D、12Eは、同一の変速段を構成する入力ギヤ11A、11B、11C、11D、11Eに常時噛み合っている。例えば、4速段用のカウンタギヤ12Dは4速段用の入力ギヤ11Dに常時噛み合っている。後進段用のカウンタギヤ12Fは、後進段用の入力ギヤ11Fに常時噛み合っているアイドラギヤ13に常時噛み合っている。
【0021】
入力ギヤ11Aおよびカウンタギヤ12Aは、1速段用のギヤ対10Aを構成し、入力ギヤ11Bおよびカウンタギヤ12Bは、2速段用のギヤ対10Bを構成している。入力ギヤ11Cおよびカウンタギヤ12Cは、3速段用のギヤ対10Cを構成し、入力ギヤ11Dおよびカウンタギヤ12Dは、4速段用のギヤ対10Dを構成している。入力ギヤ11Eおよびカウンタギヤ12Eは、5速段用のギヤ対10Eを構成し、入力ギヤ11Fおよびカウンタギヤ12Fは、後進段用のギヤ対10Fを構成している。
【0022】
カウンタギヤ12A、12Bは、図示しないニードルベアリングを介してカウンタ軸12に相対回転自在に支持されている。カウンタギヤ12C、12D、12E、12Fおよびファイナルドライブギヤ12Gは、カウンタ軸12に固定されており、カウンタ軸12と一体で回転する。
【0023】
本実施例において、5速段は、最も減速比が小さい前進用変速段であり、トップギヤとも呼ばれる最高速段である。5速段を形成するギヤ対10Eは、複数のギヤ対10A~10Fのうちの特定のギヤ対である。5速段を形成するギヤ対10Eの一方のギヤであって入力軸11に設けられている入力ギヤ11Eには、ワンウェイクラッチ18が設けられている。
【0024】
ワンウェイクラッチ18は、入力ギヤ11Eの外周部(歯部)と内周部(入力軸11との連結部)との間に設けられている。詳しくは、入力ギヤ11Eを、カウンタギヤ12Eに常時噛み合っている外周部側と、後述する同期装置16にて入力軸11に連結される内周部側とに分割し、これらの間にワンウェイクラッチ18を設けるようにしている。
【0025】
ワンウェイクラッチ18は、入力ギヤ11Eの内周部の回転速度が入力ギヤ11Eの外周部の回転速度以上になろうとしたときは、入力ギヤ11Eの外周部を入力ギヤ11Eの内周部と一体回転させ、逆に、入力ギヤ11Eの外周部の回転速度が入力ギヤ11Eの内周部の回転速度以上になることは許容する。つまり、入力軸11の回転速度が入力ギヤ11Eの歯部の回転速度よりも小さいときは、入力ギヤ11Eの歯部を入力軸11に対して相対回転(空転)させる。したがって、ワンウェイクラッチ18は、入力軸11からカウンタ軸12へはカウンタ軸12の回転速度を高める方向に動力を伝達し、カウンタ軸12から入力軸11へは入力軸11の回転速度を低下させる方向に動力を伝達する。なお、ここで言う回転速度の大小は、車両の前進時に回転する方向を正とする回転速度の事である。
【0026】
カウンタ軸12におけるカウンタギヤ12Aとカウンタギヤ12Bの間には、1速段と2速段との切替え用の同期装置14が設けられている。入力軸11における入力ギヤ11Cと入力ギヤ11Dの間には、3速段と4速段との切換え用の同期装置15が設けられている。入力軸11における入力ギヤ11Eと入力ギヤ11Fの間には、5速段と後進段との切換え用の同期装置16が設けられている。手動変速機10の同期装置14、15、16には、図示しない連結機構を介してシフトレバー17が機械的に連結されている。
【0027】
1速段へのシフト操作が行われると、同期装置14は、1速段のカウンタギヤ12Aをカウンタ軸12に連結する。これにより、カウンタギヤ12Aがカウンタ軸12と一体で回転し、エンジン2の動力が入力軸11から入力ギヤ11Aおよびカウンタギヤ12Aを介してカウンタ軸12に伝達される。
【0028】
2速段へのシフト操作が行われると、同期装置14は、2速段用のカウンタギヤ12Bをカウンタ軸12に連結する。これにより、カウンタギヤ12Bがカウンタ軸12と一体で回転し、エンジン2の動力が入力軸11から入力ギヤ11Bおよびカウンタギヤ12Bを介してカウンタ軸12に伝達される。
【0029】
3速段へのシフト操作が行われると、同期装置15は、入力ギヤ11Cを入力軸11に連結する。これにより、入力ギヤ11Cが入力軸11と一体で回転し、エンジン2の動力が入力軸11から入力ギヤ11Cおよびカウンタギヤ12Cを介してカウンタ軸12に伝達される。
【0030】
4速段へのシフト操作が行われると、同期装置15は、入力ギヤ11Dを入力軸11に連結する。これにより、入力ギヤ11Dが入力軸11と一体で回転し、エンジン2の動力が入力軸11から入力ギヤ11Dおよびカウンタギヤ12Dを介してカウンタ軸12に伝達される。
【0031】
5速段へのシフト操作が行われると、同期装置16は、入力ギヤ11Eの内周部を入力軸11に連結する。これにより、入力ギヤ11Eの内周部が入力軸11と一体で回転し、エンジン2の動力が入力軸11から入力ギヤ11Eの内周部に伝達される。そして、ワンウェイクラッチ18が入力ギヤ11Eの外周部を入力ギヤ11Eの内周部と一体回転させ、ワンウェイクラッチ18がエンジン2の正の駆動力をカウンタギヤ12Eを介してカウンタ軸12に伝達する。なお、走行時において、5速段(最高速段)以外の変速段では、入力ギヤ11Eの外周部は入力軸11よりも低速で回転しており、ワンウェイクラッチ18は入力ギヤ11Eの内周部を入力ギヤ11Eの外周部と同じ回転速度以上にならないように働くため、5速段へのシフト操作は、クラッチディスクが高い回転速度の場合であっても支障なく入力軸11と入力ギヤ11Eの内周部とを同期し接続させることができる。また、クラッチディスクが低い回転速度の場合での5速段へのシフト操作であれば、ワンウェイクラッチ18の働きで入力ギヤ11Eの外周部と切り離されている入力ギヤ11Eの内周部を入力軸11に接続するだけであり、より支障なく同期させることができる。
【0032】
後進段へのシフト操作が行われると、同期装置16は、入力ギヤ11Fを入力軸11に連結する。これにより、エンジン2の動力が入力軸11から入力ギヤ11F、アイドラギヤ13およびカウンタギヤ12Fを介してカウンタ軸12に伝達される。
【0033】
ハイブリッド車両1は、ディファレンシャル装置5を備えており、ディファレンシャル装置5のリングギヤ5Aは、手動変速機10のファイナルドライブギヤ12Gと噛み合っている。ディファレンシャル装置5は、手動変速機10から出力された動力を、ドライブシャフト6を介して左右の駆動輪7に差動回転可能に伝達する。
【0034】
ハイブリッド車両1はモータジェネレータ8(図中、MGと記す)を備えており、このモータジェネレータ8は、図示しないバッテリの電力を用いて走行用の動力(モータトルク)を発生する。
【0035】
モータジェネレータ8の出力軸8Aには出力ギヤ8Bが固定されており、出力ギヤ8Bは、ディファレンシャル装置5のリングギヤ5Aと噛み合っている。したがって、モータジェネレータ8は、カウンタ軸12と駆動輪7との間の動力伝達経路に動力を入出力可能に常時連結されている。つまり、モータジェネレータ8が発生する動力は、入力軸11を介さずにディファレンシャル装置5およびドライブシャフト6を介して駆動輪7に伝達される。逆に、駆動輪7からの動力は、ドライブシャフト6およびディファレンシャル装置5を介してモータジェネレータ8に伝達される。
【0036】
モータジェネレータ8は、ハイブリッド車両1の減速時に駆動輪7から伝達された運動エネルギーによって回生発電することもできる。したがって、モータジェネレータ8は、電動機と発電機の両方の機能を有する回転電機である。
【0037】
このように、モータジェネレータ8は、カウンタ軸12と駆動輪7との間の動力伝達経路に動力を入出力可能に常時連結されている。なお、モータジェネレータ8は、カウンタ軸12と駆動輪7との間の動力伝達経路に設けられていればよく、例えば、モータジェネレータ8の出力ギヤ8Bをカウンタ軸12のファイナルドライブギヤ12Gに噛み合うようにするなど、モータジェネレータ8によってカウンタ軸12を回転させるようにしてもよい。
【0038】
ハイブリッド車両1は、制御部20を備えている。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを機能させるためのプログラムが格納されている。
【0039】
制御部20の入力ポートには、トップギヤ検出センサ17Aが接続されている。トップギヤ検出センサ17Aは、シフトレバー17に設けられており、シフトレバー17がトップギヤとしての5速段にあることを検出して検出信号を制御部20に出力する。
【0040】
制御部20の入力ポートには、クラッチセンサ9Aが接続されている。クラッチセンサ9Aは、クラッチペダル9に設けられており、クラッチ操作(クラッチペダル9の踏み込み)を検出して検出信号を制御部20に出力する。制御部20の出力ポートには、図示しないスピーカーまたは表示画面からなる報知部21が接続されている。
【0041】
制御部20は、ハイブリッド車両1の走行モードを切り替えるようになっている。ハイブリッド車両1の走行モードとしては、EVモードとHEVモードとがある。
【0042】
EVモードは、エンジン2の運転を停止してモータジェネレータ8の動力によりハイブリッド車両1を走行させる走行モードである。EVモード時は、制御部20は、モータジェネレータ8の動力によりドライバ要求トルクが満たされるように、モータジェネレータ8を制御する。
【0043】
HEVモードは、エンジン2を運転して、エンジン2の動力とモータジェネレータ8の動力とによりハイブリッド車両1を走行させる走行モードである。HEVモード時は、制御部20は、エンジン2の動力とモータジェネレータ8の動力とによりドライバ要求トルクが満たされるように、エンジン2およびモータジェネレータ8を制御する。
【0044】
制御部20は、HEVモード時に、所定のEVモード移行条件が成立した場合、EVモードへの切換えを行う。EVモード移行条件は、以下の(1)、(2)、(3)の3つの条件からなり、これら3つの条件を全て満たす場合に成立する。
(1)モータジェネレータ8に電力を供給する図示しないバッテリの充電状態(SOC:State Of Charge)が規定値以上であること。
(2)図示しないアクセルペダルの踏み込み量に基づくドライバ要求トルクを、モータジェネレータ8が発生するモータトルクにより達成することができること。
(3)手動変速機10の変速段がトップギヤとしての5速段に操作されており、かつ、クラッチペダル9が踏み込まれていないこと。
【0045】
制御部20は、EVモード時に、EVモード移行条件が成立しなくなった場合、すなわち、上記の(1)、(2)、(3)の3つの条件の少なくとも1つが満たされなくなった場合、エンジン2を始動してHEVモードへの切換えを行う。
【0046】
制御部20は、HEVモードにおいて、ワンウェイクラッチ18が設けられた5速段を構成するギヤ対10Eへのシフト操作が行われたことを含む所定のEVモード移行条件が成立した場合、エンジン2の運転を停止してEVモードへの切換えを行う。
【0047】
また、制御部20は、ワンウェイクラッチ18が設けられた5速段を構成するギヤ対10Eへのシフト操作が行われるとEVモード移行条件が全て成立する場合、ワンウェイクラッチ18が設けられた5速段を構成するギヤ対10Eへのシフト操作が行われるとEVモードに移行可能であることを報知部21によってドライバーに報知する。以後、この報知が行われるときの車両の状態を「EVモード移行条件が仮成立している」と記述する。
【0048】
つまり、制御部20は、EVモード移行条件に含まれる上記の(1)、(2)、(3)のうち、(1)、(2)が満たされているが(3)が満たされていない状態のとき(上記の(3)が満たされれば成立する状態のとき)、EVモード移行条件が仮成立していると判断し、(3)を満たせばEVモードに移行可能であることをドライバーに報知する。
【0049】
また、制御部20は、EVモードにおいて、クラッチ3が操作された場合、エンジン2を始動してHEVモードへの切換えを行う。例えば、EVモードにおいて、ドライバーが5速段から4速段への切換えのためにクラッチ3を踏み込んだ場合、制御部20は、クラッチ3が操作されたタイミングで予めエンジン2の始動を開始し、4速段への切換えとクラッチ3の操作が終了するタイミングまでにエンジン2の始動が完了しておくようになっている。なお、バッテリの充電状態が規定値未満になった場合や、アクセルペダルが規定値以上に踏み込まれた場合も同様に、制御部20はエンジン2の始動を行ってHEVモードに移行する。
【0050】
図2を参照して制御部20による走行モード切換え動作について説明する。この走行モード切換え動作は、所定間隔で繰り返し実行される。
【0051】
図2に示すように、制御部20は、HEVモードでハイブリッド車両1を走行させ(ステップS1)、次いで、EVモード移行条件が仮成立したか否かを判定する(ステップS2)。EVモード移行条件は、EVモード移行条件を構成する3つの条件のうち、上記の(1)、(2)が満たされているが、(3)が満たされていない場合に仮成立する。
【0052】
つまり、バッテリの充電状態が規定値以上であり、ドライバ要求トルクがモータトルクにより満たすことができるが、手動変速機10の変速段が5速段に操作されていない場合、EVモード移行条件が仮成立する。
【0053】
制御部20は、ステップS2でEVモード移行条件が仮成立していない場合、ステップS1に戻る。
【0054】
制御部20は、ステップS2でEVモード移行条件が仮成立したと判定した場合、EVモードに移行可能であることを報知部21によってドライバーに報知する(ステップS3)。
【0055】
次いで、制御部20は、EVモード移行条件が成立したか否かを判定する(ステップS4)。
【0056】
制御部20は、ステップS4でEVモード移行条件が成立していない場合、ステップS1に戻る。
【0057】
ここで、ドライバーが手動変速機10の変速段を最高速段に操作して、かつ、クラッチペダル9の踏み込みを解除すると、(3)の条件が満たされて、EVモード移行条件が成立する。制御部20は、ステップS4でEVモード移行条件が成立したと判定した場合、エンジン2の運転を停止し、EVモードへの切換えを行う(ステップS5)。このように、制御部20は、EVモード移行条件が成立した場合に自動的に走行モードをEVモードに切換えるようになっている。また、このとき、ワンウェイクラッチ18の働きで入力ギヤ11Eの外周部に対して入力ギヤ11Eの内周部が相対回転することにより、クラッチ3の操作を必要とせず、エンジン2を停止させることができる。
【0058】
制御部20は、ステップS5でEVモードへの切換えを行った後は、エンジン始動条件が成立したか否かを判定する(ステップS6)。ここでは、制御部20は、EVモード移行条件が成立しなくなった場合にエンジン始動条件が成立したと判定する。制御部20は、ステップS6でエンジン始動条件が成立していない場合は、ステップS5に戻りEVモードを継続する。
【0059】
制御部20は、ステップS6でエンジン始動条件が成立したと判定した場合、エンジン2を始動してHEVモードへの切換えを行い(ステップS7)、今回の動作を終了する。ステップS7におけるエンジン2の始動は、エンジン2に燃料を供給するとともに、エンジン2に設けられた図示しないスタータを駆動してクランク軸2Aを回転させることにより行われる。
【0060】
このように構成されたハイブリッド車両1は、変速段が1速段から4速段または後進段の何れかの場合は、制御部20により走行モードがHEVモードにされ、エンジン2の動力とモータジェネレータ8の動力とにより走行する。また、ハイブリッド車両1は、変速段が5速段の場合は、制御部20により走行モードがEVモードにされ、モータジェネレータ8の動力により走行する。
【0061】
ハイブリッド車両1におけるエンジンブレーキとしては、HEVモード時にはエンジン2による実際のエンジンブレーキまたはモータジェネレータ8の回生発電によるブレーキの少なくとも一方を用いることができ、EVモード時にはモータジェネレータ8の回生発電によるブレーキを用いることができる。
【0062】
なお、手動変速機10の前進用の変速段は、1速段から5速段の5速に限らず、6速等であってもよい。また、ワンウェイクラッチ18は、トップギヤとしての5速段だけでなく他の変速段にも設けてもよい。例えば、例えば、ワンウェイクラッチ18を、1速段、2速段、3速段のギヤ対10A、10B、10Cの一方のギヤに設けてもよい。このようにすることで、モータジェネレータ4の動力によりハイブリッド車両1を発進させることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施例のハイブリッド車両1によれば、カウンタ軸12と駆動輪7との間の動力伝達経路にその駆動力を伝達可能にモータジェネレータ8が連結され、複数のギヤ対10A~10Fのうちの特定のギヤ対10Eの一方のギヤである入力ギヤ11Eに、入力軸11からカウンタ軸12への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチ18が設けられている。
【0064】
これにより、手動変速機10が特定のギヤ対10Eに対応する5速段にあるときにエンジン2の運転を停止してEV走行を行う場合に、ワンウェイクラッチ18が空転することによりカウンタ軸12から入力軸11への動力伝達を遮断することができ、エンジン2の引きずりを防止できる。エンジン2の引きずりとは、EV走行時に、停止状態のエンジン2のクランク軸2Aが手動変速機10を介してモータジェネレータ等の回転によって回されることである。ここで、仮に、EV走行時のエンジン2の引きずりを防止するために、クラッチアクチュエータ等によりクラッチ3を開放させるようにする場合、油圧装置等からなるクラッチアクチュエータと、クラッチペダル9の踏み込み量(クラッチストローク)を検出するクラッチストロークセンサと、現在の変速段を検出するシフトポジションセンサと、クラッチペダル9の踏み込み時の反力を擬似的に作り出すクラッチペダルロードエミュレータと、を手動変速機10に追加する必要があり、構造が複雑化してしまう。一方、本実施例によれば、クラッチ3を開放させるためのクラッチアクチュエータ等を不要にすることができ、構造の複雑化を防止できる。
【0065】
この結果、手動操作されるクラッチ3を介してエンジン2と手動変速機10とが連結されたハイブリッド車両1において、構造を複雑化することなくEV走行時のエンジン2の引きずりを防止できる。
【0066】
また、本実施例のハイブリッド車両1によれば、ワンウェイクラッチ18は、複数のギヤ対10A~10Fのうち最も減速比が小さい前進用変速段である5速段を形成するギヤ対10Eの一方のギヤである入力ギヤ11Eに設けられている。
【0067】
これにより、トップギヤ検出センサ17Aを、シフトレバー17がトップギヤとしての5速段にあることを検出可能な簡単で安価な1つのスイッチ等から構成することができるので、製造コストを低減することができる。また、低負荷状態における一定車速での巡航時のようにエンジン2が低効率で運転されることを抑制でき、低負荷状態においてエンジン2よりも効率に優れるモータジェネレータ4によって走行できるので、燃費を向上させることができる。また、長時間の巡航に用いられるトップギヤとしての5速段において、エンジン2を停止したEV走行を行うことができるので、エンジン音の発生しない静かな巡航を行うことができる。
【0068】
また、本実施例のハイブリッド車両1によれば、ワンウェイクラッチ18は、ギヤ対10Eの一方のギヤであって入力軸11に設けられた入力ギヤ11Eに設けられている。
【0069】
これにより、ギヤ対10Eを構成する入力ギヤ11Eおよびカウンタギヤ12Eのうち、入力ギヤ11Eは、直径が大きいためにワンウェイクラッチ18を追加するスペースの確保が容易なので、入力ギヤ11Eを大型化してギヤ対10Eの減速比や入力軸11とカウンタ軸12の軸間距離を変更することなく、十分なトルク容量を持つワンウェイクラッチ18を配置できる。また、HEV走行への切換えのために、クラッチ3が締結している状態でスタータを作動させてエンジン2を始動する際は、直径および慣性重量の大きな入力ギヤ11Eの外周部を入力軸11と共に回さなくていいことから、カウンタ軸12を回すことが無くなるので、エンジン2を円滑に始動させることができる。
【0070】
また、本実施例のハイブリッド車両1によれば、エンジン2の動力およびモータジェネレータ8の動力により走行するHEVモードと、モータジェネレータ8の動力により走行するEVモードとを切替える制御部20を備え、制御部20は、HEVモードにおいて、ワンウェイクラッチ18が設けられた5速段を構成するギヤ対10Eへのシフト操作が行われたことを含む所定のEVモード移行条件が成立した場合、エンジン2を停止してEVモードへの切換えを行う。
【0071】
これにより、ドライバーによるEVモードへの切換え操作を不要にでき、EVモード移行条件の成立により自動でEVモードへの切換えを行うことができる。
【0072】
また、本実施例のハイブリッド車両1によれば、制御部20は、ワンウェイクラッチ18が設けられた5速段を構成するギヤ対10Eへのシフト操作が行われるとEVモード移行条件が成立する場合、ワンウェイクラッチ18が設けられた5速段を構成するギヤ対10Eへのシフト操作が行われるとEVモードに移行可能であることを報知部21によってドライバーに報知する。
【0073】
これにより、例えば、5速段へのシフト操作が行われればEVモード移行条件が成立する場合に、ドライバーに5速段へのシフト操作を行ってEVモードに移行することを促すことができる。
【0074】
また、本実施例のハイブリッド車両1によれば、制御部20は、EVモードにおいて、クラッチ3が操作された場合、エンジン2を始動してHEVモードへの切換えを行う。
【0075】
これにより、ドライバーが5速段から他の変速段へのシフト操作を行う際に、シフト操作に伴うクラッチ操作が行われたタイミングでエンジン2を始動することができるので、シフト操作およびクラッチ操作が終了するまでにHEVモードへの移行を完了させることができる。
【0076】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0077】
1...ハイブリッド車両、2...エンジン、3...クラッチ、7...駆動輪、8...モータジェネレータ、10...手動変速機、10A~10F...ギヤ対、11...入力軸、12...カウンタ軸、18...ワンウェイクラッチ、20...制御部
図1
図2