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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-09
(45)【発行日】2026-02-18
(54)【発明の名称】車両の自動ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20260210BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20260210BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20260210BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20260210BHJP
【FI】
B60T7/12 C
B60W30/09
B60T8/171 Z
G01S15/931
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022175641
(22)【出願日】2022-11-01
(65)【公開番号】P2024066214
(43)【公開日】2024-05-15
【審査請求日】2025-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中世古 悠
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202180(JP,A)
【文献】特開2017-30552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60W 30/09
B60T 8/171
G01S 15/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の進行方向に存在する障害物に対して超音波を照射可能に構成された超音波センサと、
前記超音波センサにより検出された前記超音波の反射強度に基づき、車両の制動力を自動的に生じさせる自動ブレーキ手段と、備え、
前記自動ブレーキ手段は、
前記反射強度が所定の第1閾値よりも高い場合に、前記制動力の生成に関わるブレーキ液圧を上昇させ、または、前記ブレーキ液圧の調整に関わるポンプモータを作動させる事前昇圧手段と、
前記反射強度が前記第1閾値よりも大きい所定の第2閾値よりも高い場合に、前記制動力を実際に生じさせるブレーキ作動手段と、を備える、車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項2】
車速を検出する車速センサをさらに備え、
前記自動ブレーキ手段は、前記車速センサにより検出された車速が所定の第1速度以上である場合にのみ、前記事前昇圧手段により前記ブレーキ液圧を上昇させまたは前記ポンプモータを作動させる、請求項1に記載の車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記第1閾値は、車速が高いか、または、前記障害物までの距離が短いほど小さな閾値に設定される、請求項1に記載の車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項4】
車速を検出する車速センサをさらに備え、
前記自動ブレーキ手段は、前記車速センサにより検出された車速が所定の第2速度以下の場合にのみ、前記ブレーキ作動手段により前記制動力を生じさせる、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記事前昇圧手段は、前記超音波センサにより前記第1閾値よりも高い反射強度の超音波を所定の第1回数に亘って受信した場合に、前記ブレーキ液圧を上昇させまたは前記ポンプモータを作動させ、
前記ブレーキ作動手段は、前記超音波センサにより前記第2閾値よりも高い反射強度の超音波を、前記第1回数よりも多い所定の第2回数に亘って受信した場合に、前記制動力を生じさせる、請求項1に記載の車両の自動ブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記第1回数は、車両の前記障害物への到達までの時間が短いほど少ない回数に設定され、前記到達までの時間が所定の時間よりも長い場合に、前記第2回数と等しい回数に設定される、請求項5に記載の車両の自動ブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外界検知に超音波センサを用いた車両の自動ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動ブレーキ制御装置として、カメラとミリ波レーダとを用いたものが知られている。カメラとミリ波レーダとの組み合わせにより、車両の外界検知に関して優れた検知性能を発揮することが期待される。
【0003】
特許文献1には、カメラとレーダセンサとを備え、これら二種のセンサにより得られる物標情報をもとに、自車両に対する先行車両の存在および自車両から先行車両までの車間距離等を検出する車両の運転支援システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-172210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カメラとミリ波レーダとの組み合わせでは、状況によっては充分な検知性能が得られない実状がある。例えば、駐車場等、検知対象物である障害物が自車両から比較的近い距離にありかつその障害物の自車両に対する相対的な移動速度が低い状況である。
【0006】
そこで、駐車場等における事故を防止することを目的として、自動ブレーキ制御装置のセンサに、近距離かつ低速度の状況での外界検知に優れた超音波センサを用いることが提案されている。
【0007】
ここで、コントローラが障害物の存在を認識し、障害物に対する衝突の可能性があるとして自動ブレーキの作動を指示してから、自動ブレーキによる制動力が実際に生じるまでには、ポンプモータ等の各種アクチュエータが指示に応答し、ブレーキ液圧が制動力の生成に必要な圧力に達するまでの昇圧遅れによる空走期間が存在する。
【0008】
この空走期間においては制動力が実質的に得られず、加えて、超音波センサによる検知範囲は数m程度の短い距離に限られるため、超音波センサを用いた自動ブレーキ制御装置を適用可能な車速が制限される。
【0009】
このような実状のもと、外界検知に超音波センサを用いながら、より高い車速にあっても自動ブレーキを適切に作動させ、または、車速によらずより適切なタイミングで自動ブレーキを作動可能とすることが求められている。
【0010】
そこで、本発明は、超音波センサを用いた自動ブレーキ制御装置において、より高い車速にあっても自動ブレーキを適切に作動させ、または、車速によらずより適切なタイミングで自動ブレーキを作動可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため、本発明の一形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置は、車両に搭載され、当該車両の進行方向に存在する障害物に対して超音波を照射可能に構成された超音波センサと、前記超音波センサにより検出された前記超音波の反射強度に基づき、車両の制動力を自動的に生じさせる自動ブレーキ手段と、備え、前記自動ブレーキ手段は、前記反射強度が所定の第1閾値よりも高い場合に、前記制動力の生成に関わるブレーキ液圧を上昇させ、または、前記ブレーキ液圧の調整に関わるポンプモータを作動させる事前昇圧手段と、前記反射強度が前記第1閾値よりも大きい所定の第2閾値よりも高い場合に、前記制動力を実際に生じさせるブレーキ作動手段と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制動力を実際に生じさせるまでに、ブレーキ液圧を事前に上昇させるか、ポンプモータを作動させてブレーキ液圧の上昇に備えさせておくことが可能である。これにより、制動力が実際に生じるまでの空走期間を短縮し、もって、より高い車速にあっても自動ブレーキを適切に作動させ、または、車速によらずより適切なタイミングで自動ブレーキを作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置を備えた車両の制御装置の構成を示す概略図である。
図2】同上実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置の液圧制御ユニットの構成を示す模式図である。
図3】同上実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置により実行される自動ブレーキ制御の全体的な流れを示すフローチャートである。
図4】同上自動ブレーキ制御における高速時自動ブレーキ制御(S104)の内容を示すフローチャートである。
図5】同上自動ブレーキ制御における低速時自動ブレーキ制御(S105)の内容を示すフローチャートである。
図6】自車両から障害物までの距離Dに対する超音波の反射強度Iの変化および第1閾値Iths1、第2閾値Iths2の設定を示す説明図である。
図7】自車両から障害物までの距離Dに対する判定受信回数Np、Nsの設定を示す説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置による場合の制御要求、ブレーキ液圧Poilおよび車両の減速度DCLの変化を示す説明図である。
図9】比較例である車両の自動ブレーキ制御装置による場合の制御要求、ブレーキ液圧Poilおよび車両の減速度DCLの変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の制御装置1の構成を示す概略図である。
【0016】
車両の制御装置1は、車両自体の加速、減速および操舵、つまり、車両の挙動全体を制御するものである。本実施形態において、車両は、図示しない内燃エンジン(以下、単に「エンジン」という)を走行用の駆動源とする。車両は、電動モータを駆動源とする電気自動車であってもよいし、エンジンと電動モータとを駆動源とするハイブリッド自動車であってもよい。
【0017】
車両の制御装置1は、本実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置2を含み、車両の自動ブレーキ制御装置2は、車両(障害物との区別のため、以下「自車両」という場合がある)の進行方向に障害物の存在を検知した場合に、この障害物との衝突の可能性の有無を判定する。そして、衝突の可能性があると判定した場合に、運転者によるブレーキペダルの操作によらず、車両の制動力を自動的に生じさせる制御(以下「自動ブレーキ制御」という)を実施する。車両の進行方向は、前進方向であってもよいし、後退方向であってもよい。
【0018】
ここで、本実施形態に係る自動ブレーキ制御の概要について説明する。自動ブレーキ制御装置2(本実施形態では、後に述べるブレーキコントローラ201)は、超音波センサ211からの出力情報をもとに、超音波センサ211から発せられた超音波の反射波の信号強度、つまり、超音波の反射強度を監視し、反射強度から自車両の進行方向における障害物の存在を検知すると、反射強度に基づく同様の検知結果が複数回(例えば、3回)に亘って得られたことを条件として、障害物の存在を検知したとする検知結果を確定させる。さらに、自動ブレーキ制御装置2は、超音波センサ211の出力情報から検知された障害物の属性を判定し、衝突を回避すべき障害物であるか否かを識別する。衝突を回避すべき障害物には、自車両の進行方向に存在する他車両、つまり、先行車両のほか、歩行者や道路上の設置物も含まれる。そして、障害物が衝突を回避すべきものである場合に、障害物の動きからその移動軌跡を予測するとともに、自車両が障害物に衝突するまでの予測時間である衝突予測時間を算出する。衝突予測時間は、自車両から障害物までの距離および自車両の車速をもとに算出可能である。この計算に障害物の予測移動軌跡を反映させることで、障害物までの実質的な距離を算出し、衝突予測時間の算出精度の向上を図ることができる。衝突予測時間が所定の時間未満である場合に、自車両が障害物と衝突する可能性が高いと判断し、障害物との衝突を回避するため、自動ブレーキを作動させる。ここで、本実施形態では、上記検知結果の確定に際し、反射強度と複数の閾値(Iths1、Iths2)との比較による複次的な判断を実施する(図4図5)。
【0019】
車両の制御装置1は、エンジンコントローラ101と、ブレーキコントローラ201と、を備え、車両の自動ブレーキ制御装置2は、ブレーキコントローラ201および液圧制御ユニット202のほか、自動ブレーキ制御に関わる各種センサおよびアクチュエータを備える。
【0020】
エンジンコントローラ101は、エンジンの動作を制御する。エンジンコントローラ101の制御対象には、燃料インジェクタ121が含まれ、エンジンコントローラ101は、エンジン制御に関わる各種センサ出力情報を読み込むとともに、これらの情報をもとに所定の演算を実施し、演算の結果であるアクチュエータ操作量を所定のエンジン制御デバイスに出力する。例えば、エンジンコントローラ101は、エンジンに対する燃料供給量を算出し、燃料供給量に応じた燃料インジェクタ操作量を、燃料インジェクタ121に出力する。燃料インジェクタ121は、燃料インジェクタ操作量に応じて作動し、燃料供給量に応じた量の燃料を、エンジンに供給する。
【0021】
エンジンコントローラ101は、演算の基礎とするセンサ出力情報として、アクセルセンサ111により検出されるアクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度」という)APO、エアフローメータ112により検出されるエンジンの吸入空気量Qair等を入力する。
【0022】
ブレーキコントローラ201は、ブレーキ装置の動作、特に自動ブレーキ制御に関わる動作を制御する。ブレーキコントローラ201の制御対象には、摩擦力を生じさせて車両の運動エネルギを熱として消散させるブレーキエレメント221のほか、液圧回路におけるブレーキオイルの流通およびブレーキオイルの圧力(以下「ブレーキ液圧」という)の調整に関わる各種アクチュエータが含まれ、ブレーキコントローラ201は、自動ブレーキ制御に関わる各種センサ出力情報を読み込むとともに、これらの情報をもとに所定の演算を実施し、演算の結果であるアクチュエータ操作量をブレーキエレメント221その他のアクチュエータに出力する。
【0023】
本実施形態において、ブレーキオイルの流通に関わるアクチュエータは、例えば、液圧回路に備わる液圧制御弁であり、ブレーキ液圧の調整に関わるアクチュエータは、例えば、ブレーキオイルを昇圧させるオイルポンプの駆動源である電動モータ(以下「ポンプモータ」という)である。液圧制御弁およびポンプモータは、ブレーキコントローラ201により出力されるアクチュエータ操作量に応じて作動し、ブレーキ液圧を制動力の生成に必要な圧力に上昇させるとともに、液圧回路におけるブレーキオイルの流れを切り替え、昇圧後のブレーキオイルをブレーキエレメント221に供給する。車両に働く制動力は、ブレーキ液圧が上昇するほど増大し、ブレーキ液圧が低下するほど減少する。
【0024】
ブレーキコントローラ201は、演算の基礎とするセンサ出力情報として、超音波センサ211からの出力情報を入力するほか、ブレーキセンサ212により検出されるブレーキペダルの踏込量(以下「ブレーキ踏力」という)BPF、車輪速センサ213により検出される車両の車輪速WSP、加速度センサ214により検出される車両の加速度ACC、液圧センサ215により検出されるブレーキ液圧Poil等を入力する。ブレーキ液圧Poilは、液圧回路におけるブレーキオイルの圧力であり、具体的には、オイルポンプの吐出側の液圧ラインにおける圧力である。
【0025】
ここで、超音波センサ211は、前方監視用の外界センサとして、超音波を車両の前方に向けて照射可能に、例えば、車体のフロントバンパ部分に設置されてもよいし、後方監視用の外界センサとして、超音波を車両の後方に向けて照射可能に、例えば、車体のリアバンパ部分に設置されてもよい。超音波センサ211がフロントバンパ部分に取り付けられた場合は、車両の前方近くにおける障害物の存在を検知することが可能であり、リアバンパ部分に取り付けられた場合は、車両の後方近くにおける障害物の存在を検知することが可能である。超音波センサ211をフロントバンパ部分とリアバンパ部分との双方に取り付け、前方監視および後方監視の双方に用いることも可能であることは、勿論である。超音波センサ211により検知可能な距離は、例えば、車両から3m以内の範囲である。
【0026】
ブレーキコントローラ201は、超音波センサ211からの出力情報をもとに、車両の前方または後方近くに存在する障害物の有無を判定するとともに、車両(自車両)から障害物までの距離を検出することが可能である。さらに、超音波センサ211によれば、検出された障害物の属性を判定することも可能である。障害物の属性とは、例えば、物であるか、人であるかであり、物には先行車両または路上設置物等が含まれ、人には歩行者等が含まれる。ブレーキコントローラ201は、障害物の存在を検知し、その障害物との衝突の可能性があると判定した場合に、ブレーキエレメント221にブレーキオイルを供給し、車両の制動力を生じさせる。
【0027】
車輪速WSPは、車輪(本実施形態では、従動輪)の回転速度であり、車両の走行速度、つまり、車速VSPに相関する運転状態パラメータである。車輪速センサ213からの出力情報は、ブレーキコントローラ201に送信されるとともに、エンジンコントローラ101にも送信される。車輪速センサ213は、本実施形態に係る「車速センサ」を構成する。
【0028】
以上に加え、ブレーキコントローラ201は、マンマシンインターフェース(MHI)として機能するメータ機器203と接続され、運転者に対し、自動ブレーキ制御の作動状況に関する情報を提供する。運転者に対する情報の提供は、視覚的なものであってもよいし、聴覚的なものであってもよい。
【0029】
エンジンコントローラ101およびブレーキコントローラ201は、いずれも電子制御ユニットとして構成され、例えば、中央演算ユニットのほか、各種メモリおよび入出力インターフェースを備える。エンジンコントローラ101とブレーキコントローラ201とは、互いに通信可能に接続され、一方のコントローラに入力されるセンサ出力情報、例えば、ブレーキコントローラ201に入力される車両の加速度ACCは、双方のコントローラ101、201の間で、例えば、バス通信により共有可能である。
【0030】
図2は、本実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置2の液圧制御ユニット202の構成を示す模式図である。
【0031】
本実施形態において、液圧制御ユニット202は、液圧回路を備えるとともに、液圧回路に介装された各種アクチュエータを備える。液圧回路は、ブレーキマスターシリンダ(以下「マスターシリンダ」という)21と、ブレーキエレメント221(221a、221b)と、オイルリザーバRと、を流体的に繋いでおり、液圧回路に介装されるアクチュエータとして、液圧回路におけるブレーキオイルの流通に関わる液圧制御弁(以下、単に「バルブ」という)241~246と、ブレーキ液圧Poilの調整に関わるポンプモータMと、が備わる。
【0032】
ここで、ブレーキコントローラ201、液圧制御ユニット202およびブレーキエレメント221(221a、221b)は、本実施形態に係る「自動ブレーキ手段」を構成し、ブレーキコントローラ201は、本実施形態に係る「事前昇圧手段」および「ブレーキ作動手段」を構成する。
【0033】
マスターシリンダ21は、ブレーキブースタ22を介してブレーキペダル23と連結され、ブレーキブースタ22は、運転者がブレーキペダル23を踏み込んだ際に、マスターシリンダ22内部の圧力を増大させる倍力装置として機能する。
【0034】
ブレーキエレメント221a、221bは、例えば、パッド部材を備えたブレーキキャリパであり、ブレーキオイルの供給を受けることにより作動して、パッド部材をブレーキディスク222a、222bに押し当て、パッド部材とブレーキディスク222a、222bとの摩擦により車両に制動力を生じさせる。
【0035】
本実施形態において、ブレーキディスク222a、222bは、左前輪、右後輪のそれぞれの車軸に対し、これらの車輪とともに回転するように取り付けられている。図2に示すのと同様に構成される液圧回路およびアクチュエータが、図示しない右前輪、左後輪に対しても設けられ、これらの車輪の車軸にブレーキディスクが取り付けられ、ブレーキディスクをパッド部材により挟み込むように、ブレーキエレメント221であるブレーキキャリパが設置されている。
【0036】
図2に示す液圧回路において、マスターシリンダ21とオイルリザーバRとは、第1液圧ライン231を介して接続され、第1液圧ライン231には、オイルポンプPが介装され、オイルポンプPを駆動可能に、ポンプモータMが設置されている。第1液圧ライン231において、オイルポンプPの吐出側には、第1液圧ライン231におけるブレーキオイルの流通および遮断を切換可能な第1バルブ241が介装されるとともに、第1バルブ241を迂回するように第1バイパスラインが設けられ、第1バイパスラインには、マスターシリンダ21からブレーキエレメント221a、221bへ向かうブレーキオイルの流れを許容し、その反対方向の流れを阻害するチェックバルブ251が介装されている。第1液圧ライン231のうち、マスターシリンダ21と第1バルブ241との間の部分と、オイルポンプPとオイルリザーバRとの間の部分と、を繋ぐ第2液圧ライン232が設けられ、第2液圧ライン232には、第2液圧ライン232におけるブレーキオイルの流通および遮断を切換可能な第2バルブ242が介装されている。液圧センサ215は、第1および第2液圧ライン231、232のうち、マスターシリンダ21と第1、第2バルブ241、242との間の部分に接続され、これらの部分におけるブレーキ液圧Poilを検出する。
【0037】
さらに、第1液圧ライン231のうち、オイルポンプPと第1バルブ241との間の部分から分岐する第3液圧ライン233、第4液圧ライン234が設けられ、第3液圧ライン233は、左前輪のブレーキエレメント221aに対してブレーキオイルを供給可能に接続され、第4液圧ライン234は、右後輪のブレーキエレメント221bに対してブレーキオイルを供給可能に接続されている。第3液圧ライン233には、第3液圧ライン233におけるブレーキオイルの流通および遮断を切換可能な第3バルブ243が介装されるとともに、第3バルブ243を迂回するように第2バイパスラインが設けられ、第2バイパスラインには、第1液圧ライン231からの分岐部p1からブレーキエレメント221aへ向かうブレーキオイルの流れを阻害し、その反対方向の流れを許容するチェックバルブ252が介装されている。第4液圧ライン234には、第4液圧ライン234におけるブレーキオイルの流通および遮断を切換可能な第4バルブ244が介装されるとともに、第4バルブ244を迂回するように第3バイパスラインが設けられ、第3バイパスラインには、分岐点p1からブレーキエレメント221bへ向かうブレーキオイルの流れを阻害し、その反対方向の流れを許容するチェックバルブ253が介装されている。
【0038】
以上に加え、第3液圧ライン233から分岐して、オイルリザーバRに接続する第1戻りライン235が設けられるとともに、第4液圧ライン234から分岐して、オイルリザーバRに接続する第2戻りライン236が設けられ、第1戻りライン235には、第1戻りライン235におけるブレーキオイルの流通および遮断を切換可能な第5バルブ245が介装され、第2戻りライン236には、第2戻りライン236におけるブレーキオイルの流通および遮断を切換可能な第6バルブ246が介装されている。
【0039】
本実施形態では、車両の前方近くに存在する障害物との衝突の可能性がある場合に、自動ブレーキ制御を実施して、運転者のブレーキ操作によらず、車両の制動力を自動的に生じさせる。ここで、制動力を実際に生じさせる前に、ポンプモータMを作動させ、ブレーキ液圧Poilを事前に上昇させる制御を実施する。
【0040】
ブレーキ液圧Poilを上昇させる場合は、ポンプモータMを作動させるとともに、第2バルブ242を開弁させて、流通状態に設定する一方、他のバルブ、つまり、第1、第3、第4、第5および第6バルブ241、243、244、245、246を閉弁させて、遮断状態に設定する。これにより、第1液圧ライン231のうち、オイルポンプPと第1バルブ241との間の部分、さらに、第3および第4液圧ライン233、234のうち、分岐部p1から第3、第4バルブ243、244に至る部分のブレーキオイルの圧力が上昇する。
【0041】
制動力を生じさせる場合は、ポンプモータMの回転速度を上昇させて、オイルポンプPの吐出流量を増大させるとともに、第3および第4バルブ243、244を開弁させて、流通状態に設定し、昇圧後のブレーキオイルをブレーキエレメント221a、221bに供給する。これにより、ブレーキエレメント221a、221bが油圧作動し、パッド部材がブレーキディスク222a、222bに押し付けられて、制動力が生成される。制動力の生成を終え、車両が停車した後、ポンプモータMを停止させるとともに、第1バルブ241を閉弁させて、遮断状態に設定することで、オイルポンプPからブレーキエレメント221a、221bに至る液圧ラインにおけるブレーキ液圧Poilを昇圧後の圧力に維持し、制動力を保持する。
【0042】
自動ブレーキ制御を終了し、自動ブレーキを解除する場合は、第1バルブ241を開弁させて、流通状態に設定する。
【0043】
図3は、本実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置2により実行される自動ブレーキ制御の全体的な流れを示すフローチャートである。自動ブレーキ制御は、車両が所定の速度VSP2以下の低い速度での走行中であることを条件に、ブレーキコントローラ201により、所定の時間毎に繰り返し実行される。車速VSP2は、例えば、時速10km前後の速度であり、本実施形態に係る「第2速度」に相当する。
【0044】
S101では、各種センサ出力情報を読み込む。
【0045】
S102では、超音波センサ211からの出力情報をもとに、車両の進行方向、例えば、車両の前方に障害物(以下「前方障害物」という)が存在するか否かを判定する。前方障害物が存在する場合は、S103へ進み、存在しない場合は、今回のルーチンにおける制御を終了する。本実施形態において、S102に示す処理による判定は、前方障害物からの反射波の検知による暫定的なものである。
【0046】
S103では、車速VSPが所定の車速VSP1以上であるか否かを判定する。車速VSPが所定の速度VSP1以上である場合は、S104へ進み、所定の速度VSP1未満である場合は、S105へ進む。車速VSP1は、本実施形態に係る「第1速度」に相当し、先に述べた車速VSP2よりも低く、例えば、時速5km程度の極低い速度である。
【0047】
S104では、図4のフローチャートに示す手順に従って高速時自動ブレーキ制御を実施する。
【0048】
S105では、図5のフローチャートに示す手順に従って低速時自動ブレーキ制御を実施する。
【0049】
S106では、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれたか否かを判定する。ブレーキペダルが踏み込まれた場合は、通常のブレーキ制御に移行すべく、S108へ進み、踏み込まれていない場合は、S107へ進む。
【0050】
S107では、自動ブレーキ制御による制動力の生成後、所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過した場合は、S108へ進み、経過していない場合は、S106へ戻り、S106およびS107に示す処理を繰り返す。ここで、所定の時間とは、例えば、自動ブレーキ制御による制動力の生成後、車両が停止してからの経過時間であり、例えば、2~3秒程度である。つまり、本実施形態では、自動ブレーキ制御により車両が停車した後、所定の時間が経過するまでは、自動ブレーキ制御を継続して、制動力を保持する。そして、所定の時間が経過する前であっても運転者によりブレーキペダルが踏み込まれた場合は、自動ブレーキ制御を終了し、通常のブレーキ制御に移行する。
【0051】
S108では、自動ブレーキ制御を終了して、自動ブレーキを解除する。
【0052】
図4は、図3に示すフローチャートのS104で実行される処理(高速時自動ブレーキ制御)の内容を示すフローチャートである。
【0053】
S201では、超音波の反射強度Iに関する閾値Iths1と、障害物検知の一次的な判断に関する判定受信回数Npと、を読み込む。
【0054】
図6は、車両から障害物までの距離Dに対する超音波の反射強度Iの変化および閾値Iths1、Iths2の設定を示す説明図である。閾値Iths1は、本実施形態に係る「第1閾値」に相当し、閾値Iths2は、本実施形態に係る「第2閾値」に相当する。閾値Iths1、Iths2は、距離Dに対する関数として設定され、ブレーキコントローラ201に記憶されている。図6は、閾値Iths1を二点鎖線により、閾値Iths2を点線により夫々示す。
【0055】
距離Dは、超音波センサ211からの出力情報をもとに、計算により検出することが可能である。図6に示すように、閾値Iths1は、距離Dが短いほど、換言すれば、車両が障害物に近付くほど小さな閾値に設定される。
【0056】
本実施形態において、距離Dは、車両が障害物に衝突するまでの予測時間(以下「衝突予測時間」という)の指標として採用される。そこで、距離Dに代えるか、距離Dに加えて車速VSPを採用し、車速VSPが高いほど、つまり、衝突予測時間が短いほど閾値Iths1を減少させるように設定してもよい。
【0057】
図7は、車両から障害物までの距離Dに対する判定受信回数Np、Nsの設定を示す説明図である。判定受信回数Npは、本実施形態に係る「第1回数」に相当し、判定受信回数Nsは、本実施形態に係る「第2回数」に相当する。判定受信回数Np、Nsは、距離Dに対する関数として設定され、ブレーキコントローラ201に記憶されている。図7は、判定受信回数Npを点線により、判定受信回数Nsを実線により夫々示す。
【0058】
図7に示すように、判定受信回数Npは、超音波センサ211により障害物を検知可能な距離D全体に亘って判定受信回数Ns以下の回数として設定され、距離Dが短いほど、換言すれば、車両が障害物に近付くほど少ない回数に設定される。
【0059】
ここで、距離Dは、衝突予測時間の指標として採用され、判定受信回数Npは、閾値Iths1、Iths2と同様に、距離Dに代えるか、距離Dに加えて車速VSPを採用し、車速VSPが高いほど、つまり、衝突予測時間が短いほど減少させるように設定してもよい。
【0060】
S202では、超音波の反射強度I、換言すれば、前方障害物からの反射波の信号強度が閾値Iths1以上であるか否かを判定する。反射強度Iが閾値Iths1以上である場合は、S203へ進み、閾値Iths1未満である場合は、S202に示す処理を繰り返す。
【0061】
S203では、閾値Iths1以上の反射強度Iを有する超音波の受信回数Naを1だけ増大させる。
【0062】
S204では、受信回数Naが判定受信回数Npに達したか否かを判定する。受信回数Naが判定受信回数Npに達した場合は、S205へ進み、達していない場合は、S202へ戻り、S202からS204に示す処理を繰り返す。
【0063】
S205では、ポンプモータMを作動させる。本実施形態では、先に述べたように、ポンプモータMの作動に併せ、第2バルブ242を開弁させる。ここで、ポンプモータMを作動させることにより、ブレーキ液圧Poilを制動力の生成に必要な圧力にまで増大させてもよいし、3bar程度の僅かな圧力だけ上昇させてもよいし、ブレーキ液圧Poilの実質的な上昇を伴わず、ポンプモータMを空回りの状態で作動させてもよい。
【0064】
S206では、超音波の反射強度Iに関する閾値Iths2と、障害物検知の二次的な判断に関する判定受信回数Nsと、を読み込む。
【0065】
本実施形態において、閾値Iths2は、図6に示すように、距離Dが短いほど、換言すれば、車両が障害物に近付くほど小さな閾値に設定され、等しい距離Dのもとで比較した場合に、閾値Iths2は、閾値Iths1よりも大きい。
【0066】
本実施形態において、判定受信回数Nsは、図7に示すように、距離Dに対して一定の回数に設定され、距離Dが所定の距離D22よりも長い場合に、判定受信回数Nsは、判定受信回数Npと等しい。
【0067】
S207では、超音波の反射強度Iが閾値Iths2以上であるか否かを判定する。反射強度Iが閾値Iths2以上である場合は、S208へ進み、閾値Iths2未満である場合は、S207に示す処理を繰り返す。
【0068】
S208では、閾値Iths2以上の反射強度Iを有する超音波の受信回数Nbを1だけ増大させる。
【0069】
S209では、受信回数Nbが判定受信回数Nsに達したか否かを判定する。受信回数Nbが判定受信回数Nsに達した場合は、S210へ進み、達していない場合は、S207へ戻り、S207からS209に示す処理を繰り返す。本実施形態では、S209における肯定的判定をもって障害物検知に関する判断、つまり、前方障害物が存在するとの判断を確定する。
【0070】
S210では、S102に示す処理により検知され、S209に示す処理により確定された判断に関わる前方障害物に対する衝突の可能性があるか否かを判定する。具体的には、超音波センサ211からの出力情報をもとに、前方障害物の属性を特定する。前方障害物が衝突を回避すべき対象である場合に、前方障害物の移動軌跡を予測し、車両から前方障害物までの距離Dおよび車速VSPに基づき、前方障害物に対する衝突予測時間を算出する。そして、衝突予測時間が所定の時間に満たない場合に、衝突の可能性があると判定する。前方障害物に対する衝突の可能性がある場合は、S211へ進み、それ以外の場合は、衝突の可能性がないとして、高速時自動ブレーキ制御を終了し、図3に示すフローチャートに戻る。
【0071】
S211では、前方障害物に対する衝突を回避するか、衝突した場合の被害を軽減すべく、自動ブレーキ制御による制動力を実際に生じさせる。
【0072】
図5は、図3に示すフローチャートのS105で実行される処理(低速時自動ブレーキ制御)の内容を示すフローチャートである。
【0073】
本実施形態において、図5のフローチャートのS301からS306に示す処理は、図4のフローチャートのS206からS211に示す処理と同様の内容である。低速時自動ブレーキ制御における制動力の生成について簡単に説明すると、閾値Iths2および判定受信回数Nsを読み込んだ後(S301)、反射強度Iと閾値Iths2とを比較し、反射強度Iが閾値Iths2以上である場合は(S302)、閾値Iths2以上の反射強度Iを有する超音波の受信回数Nbを1だけ増大させる(S303)。そして、受信回数Nbが判定受信回数Nsに達した場合は(S304)、前方障害物に対する衝突の可能性の有無を判定し、衝突の可能性がある場合に(S305)、自動ブレーキ制御による制動力を実際に生じさせる(S306)。
【0074】
本実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置2は、以上の構成を有する。以下に、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0075】
第1に、超音波センサ211から発せられる超音波の反射波を受信し、超音波の反射強度I、換言すれば、反射波の信号強度が所定の第1閾値Iths1以上である場合、例えば、反射強度Iが実質的な0値から上昇して、第1閾値Iths1に達した場合に、ポンプモータMを作動させて、液圧制御ユニット202の液圧回路におけるブレーキ液圧Poilを上昇させ、さらに、超音波の反射強度Iが所定の第2閾値Iths2以上である場合、例えば、反射強度Iが第1閾値Iths1に達してからさらに上昇して、第2閾値Iths2に達した場合に、ブレーキエレメント221(221a、221b)に昇圧後のブレーキオイルを供給して、制動力を実際に生じさせることで、反射強度Iが第2閾値Iths2に達して、制動力を実際に生じさせるまでに、ブレーキ液圧Poilを事前に上昇させるか、ブレーキ液圧Poilの実質的な上昇はなくとも、制動力を生じさせるための準備を事前に進めておくことが可能である。
【0076】
これにより、車両の進行方向に存在する障害物、例えば、先行車両等の前方障害物に対する衝突の可能性があるとして、制動力の生成を指示した後(図4に示すS211)、制動力が実際に生じるまでの車両の空走期間を短縮するかまたは実質的になくすことが可能となる。
【0077】
よって、超音波センサ211を用いた車両の自動ブレーキ制御装置2において、より高い車速(または障害物との相対速度)にあっても自動ブレーキを適切に作動させ、または、車速VSPによらず、空走期間の影響を緩和したより適切なタイミングで自動ブレーキを作動させることができる。
【0078】
図8は、本実施形態に係る車両の自動ブレーキ制御装置2による場合の制御要求(事前昇圧作動、自動ブレーキ作動)、ブレーキ液圧Poilおよび車両の減速度DCLの変化を示す説明図である。
【0079】
図9は、比較例である車両の自動ブレーキ制御装置による場合の制御要求(自動ブレーキ作動)、ブレーキ液圧Poilおよび車両の減速度DCLの変化を示す説明図である。比較例では、事前昇圧を実施せず、障害物に対する衝突の可能性があることの検知をもってブレーキ液圧Poilを上昇させ、ブレーキ液圧Poilの上昇を待ってブレーキエレメント221(221a、221b)にブレーキオイルを供給する。
【0080】
図9に示すように、比較例では、障害物に対する衝突の可能性があるとして、時刻t1に自動ブレーキの作動要求を発生した後、ポンプモータが作動してブレーキ液圧Poilが上昇し、ブレーキキャリパ等のブレーキエレメントにブレーキオイルを供給することにより、制動力が実際に生じる時刻t11までに、時刻t1から時刻t11までのタイムラグに応じた空走期間が発生する。超音波センサによる障害物の検知範囲は、数m程度と短く、この空走期間による影響が大きい。つまり、空走期間の存在によらず、車両を減速させ、障害物との衝突を回避するか、衝突時の被害を軽減するには、車両が停車しているか、徐行程度の低い速度での走行状態にあることが必要となり、自動ブレーキの介入速度が制限される。
【0081】
これに対し、本実施形態によれば、図8に示すように、自動ブレーキの作動要求を発生する時刻t1よりも前の時刻t0において、超音波の反射強度Iが閾値Iths1に達したことをもってポンプモータMを作動させ、ブレーキ液圧Poilを事前に上昇させる。ポンプモータMの作動開始からブレーキ液圧Poilの上昇までには一定程度のタイムラグが存在するが、自動ブレーキの作動要求を発生する時刻t1までにはブレーキ液圧Poilの所定の上昇を完了し、作動要求の発生後(時刻t1)、ブレーキ液圧Poilを速やかに上昇させ、空走期間を短縮しまたはこれを生じさせずに制動力を実際に働かせ、車両を減速させることが可能である。
【0082】
第2に、車速VSPを検知し、車速VSPが所定の第1速度VSP1以上の場合にのみ、ブレーキ液圧Poilを上昇させることで、車速VSPが比較的低く、空走期間の影響が本来的に小さい場合にまでブレーキ液圧Poilを予め上昇させることによる弊害を抑制することが可能となる。
【0083】
例えば、空走期間があったとしても制動力の生成が間に合う状況において、ポンプモータMの作動に伴う騒音により、車両の乗員(運転者、同乗者)に不快感が及ぶ事態を回避することができる。
【0084】
第3に、閾値Iths1を車速VSPまたは車両から障害物までの距離Dに応じて変更可能とし、車速VSPが高いかまたは距離Dが短いほど小さな閾値に設定することで、障害物との衝突までの時間が短いほど閾値Iths1を減少させ、事前昇圧に関して誤った作動を抑制しながら、ブレーキ液圧Poilをできるだけ早いタイミングで上昇させて、ブレーキ液圧Poilの上昇に要する時間を確保し、自動ブレーキを適切に作動させることが可能となる。
【0085】
第4に、超音波センサ211により閾値Iths1よりも高い反射強度Iの超音波を所定の回数Npに亘って受信した場合に、ブレーキ液圧Poilを上昇させ、さらに、閾値Iths2よりも高い反射強度Iの超音波を、回数Npよりも多い所定の回数Nsに亘って受信した場合に、制動力を実際に生じさせることで、制動力の生成に関わる判断における冗長性を維持し、ブレーキ液圧Poilをより早いタイミングで上昇させることを可能としながら、反射強度Iの誤検出または閾値Iths2との比較における誤判断により、制動力を誤って生じさせる事態を確実に回避することが可能となる。
【0086】
第5に、回数Npを車両が障害物へ到達するまでの時間に応じて変更可能とし、到達までの時間が短いほど、例えば、車速VSPが高いかまたは車両から障害物までの距離Dが短いほど少ない回数に設定することで、反射強度Iの誤検出または閾値Iths1との比較における誤判断により、ポンプモータMを誤って作動させ、ブレーキ液圧Poilを不要に上昇させる事態を抑制しながら、ブレーキ液圧Poilをできるだけ早いタイミングで、つまり、障害物へ到達するまでの時間が比較的残されている時点で上昇させることが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1…車両の制御装置、2…車両の自動ブレーキ制御装置、21…ブレーキマスターシリンダ、22…ブレーキブースタ、23…ブレーキペダル、101…エンジンコントローラ、111…アクセルセンサ、112…エアフローメータ、121…燃料インジェクタ、201…ブレーキコントローラ、202…液圧制御ユニット、203…インターフェース装置(メータ機器)、211…超音波センサ、212…ブレーキセンサ、213…車輪速センサ、214…加速度センサ、215…液圧センサ、221、221a、221b…ブレーキエレメント(ブレーキキャリパ)、222a、222b…ブレーキディスク、231~236…液圧ライン、241~246…液圧制御弁、251~253…チェックバルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9