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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-10
(45)【発行日】2026-02-19
(54)【発明の名称】表面処理組成物、およびウェハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10P 70/00 20260101AFI20260212BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20260212BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C09K3/18 104
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023502380
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022006900
(87)【国際公開番号】W WO2022181530
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021029887
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】照井 貴陽
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雄三
(72)【発明者】
【氏名】公文 創一
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118347(JP,A)
【文献】国際公開第2019/193967(WO,A1)
【文献】特開2018-182112(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002346(WO,A1)
【文献】特開2020-038333(JP,A)
【文献】特開2013-138178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸パターンを有するウェハの前記表面に蒸気として供給され、前記表面に撥水性保護膜を形成するために用いられる、シリル化剤および溶媒を含む表面処理組成物であって、
前記シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、
前記溶媒が、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1または2以上を含み、
前記溶媒の総量100質量%中、前記グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量が50質量%以上であり、
1気圧における前記溶媒の沸点と前記シリル化剤の沸点との沸点差(溶媒の沸点-シリル化剤の沸点)が20℃以上である、
表面処理組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理組成物であって、
前記シリル化剤の含有量が、当該表面処理組成物100質量%中、0.3質量%以上30質量%以下である、表面処理組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面処理組成物であって、
前記グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量が、当該表面処理組成物100質量%中、50質量%以上である、表面処理組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
前記トリアルキルシリルアミンが、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、およびN-(トリメチルシリル)-ターシャリーブチルアミンからなる群から選ばれる一又は二以上を含む、表面処理組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
下記の手順で測定される、表面処理後のシリコンウェハ表面の水接触角が70°以上である、表面処理組成物。
(手順)
表面に熱酸化膜層を有するシリコンウェハを1質量%のフッ酸水溶液に25℃で10分浸漬し、純水に25℃で1分、2-プロパノール(iPA)に25℃で1分浸漬し、洗浄する。
洗浄後の前記シリコンウェハを、iPAを液盛りした状態で水平に配置し、当該表面処理組成物の蒸気をシリコンウェハに供給する。
続いて、前記シリコンウェハの前記表面において、前記蒸気を液体に状態変化させて、前記表面に保持されていたiPAを前記液体に置換する。
続いて、前記シリコンウェハをiPAに25℃で1分浸漬する。
その後、前記シリコンウェハにエアーを吹き付けて、前記表面のiPAを除去する。
以上の工程により得られたシリコンウェハ表面上に対して、純水約2μlを用いて、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、上記の水接触角を測定する。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
フッ素系溶剤を含まない、表面処理組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
非環状炭酸エステルを含まない、表面処理組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
触媒を含まない、表面処理組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
光散乱式液中粒子検出器を用いて測定される、0.2μmより大きい粒子の数が、当該表面処理組成物1mL当たり1.0×10個以下である、表面処理組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の表面処理組成物であって、
誘導結合プラズマ質量分析法を用いて測定される、Na、Mg、Ca、Mn、Fe、Cu、Li、Al、Cr、Ni、ZnおよびAgの合計含有量が、当該表面処理組成物中、100質量ppb以下である、表面処理組成物。
【請求項11】
表面に凹凸パターンを有するウェハを準備する工程と、
前記ウェハの前記表面に洗浄液を供給して洗浄する工程と、
前記洗浄液を保持した前記表面に表面処理組成物の蒸気を供給し、前記表面において、前記蒸気を液体に状態変化させ、前記洗浄液を前記液体で置換し、前記表面の少なくとも一部に撥水性保護膜を形成する工程と、を含む、ウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物が、
シリル化剤および溶媒を含み、
前記シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、
前記溶媒が、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1または2以上を含み、
前記溶媒の総量100質量%中、前記グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量が50質量%以上であり、
前記表面処理組成物において、1気圧における前記溶媒の沸点と前記シリル化剤の沸点との沸点差(溶媒の沸点-シリル化剤の沸点)が20℃以上である、
ウェハの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物において、前記シリル化剤の含有量が、前記表面処理組成物100質量%中、0.3質量%以上30質量%以下である、ウェハの製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物において、前記グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量が、前記表面処理組成物100質量%中、50質量%以上である、ウェハの製造方法。
【請求項14】
請求項1113のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物において、前記トリアルキルシリルアミンが、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、およびN-(トリメチルシリル)-ターシャリーブチルアミンからなる群から選ばれる一又は二以上を含む、ウェハの製造方法。
【請求項15】
請求項1114のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物がフッ素系溶剤を含まない、ウェハの製造方法。
【請求項16】
請求項1115のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物が非環状炭酸エステルを含まない、ウェハの製造方法。
【請求項17】
請求項1116のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物が触媒を含まない、ウェハの製造方法。
【請求項18】
請求項1117のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物において、光散乱式液中粒子検出器を用いて測定される、0.2μmより大きい粒子の数が、当該表面処理組成物1mL当たり1.0×10個以下である、ウェハの製造方法。
【請求項19】
請求項1118のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物において、誘導結合プラズマ質量分析法を用いて測定される、Na、Mg、Ca、Mn、Fe、Cu、Li、Al、Cr、Ni、ZnおよびAgの合計含有量が、前記表面処理組成物中、100質量ppb以下である、ウェハの製造方法。
【請求項20】
請求項1119のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記ウェハの前記表面にIPAが保持された状態で、前記表面処理組成物の蒸気を供給する、ウェハの製造方法。
【請求項21】
請求項1120のいずれか一項に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物を、原料中の水分の総量が、原料の総量に対して2000質量ppm以下の原料を用いて調製する工程を含む、ウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物、およびウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークやデジタル家電用の半導体デバイスにおいて、さらなる高性能・高機能化や低消費電力化が要求されている。そのため、回路パターンの微細化が進行しており、微細化が進行するに伴って、回路パターンのパターン倒れが問題となっている。半導体デバイス製造においては、パーティクルや金属不純物の除去を目的とした洗浄工程が多用されており、その結果、半導体製造工程全体の3~4割にまで洗浄工程が占めている。この洗浄工程において、半導体デバイスの微細化に伴うパターンのアスペクト比が高くなると、洗浄またはリンス後、気液界面がパターンを通過する時にパターンが倒れる現象がパターン倒れである。パターン倒れの発生を防止するためにパターンの設計を変更せざるを得なかったり、また生産時の歩留まりの低下に繋がったりするため、洗浄工程におけるパターン倒れを防止する方法が望まれている。
【0003】
パターン倒れを防止する方法として、パターン表面に撥水性保護膜を形成することが有効であることが知られている。この撥水化はパターン表面を乾燥させずに行う必要があるため、洗浄液等を保持した状態のパターン表面に、当該パターン表面を撥水化することができる撥水性保護膜形成用薬液を供給して、洗浄液等から上記薬液へ置換することにより撥水性保護膜を形成する。
【0004】
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、シリル化剤、炭酸ジエチルおよび炭酸プロピレンを溶媒として含む表面処理組成物が記載されている(特許文献1の実施例5など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/193967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の表面処理組成物において、表面改質能および保管安定性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はさらに検討したところ、シリル化剤としてトリアルキルシリルアミン、および溶媒としてグリコールエーテルアセテート及び/又はグリコールアセテートを使用し、これらの合計含有量を所定量以上とすることにより、表面処理組成物における表面改質能および保存安定性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、
表面に凹凸パターンを有するウェハの前記表面に蒸気として供給され、前記表面に撥水性保護膜を形成するために用いられる、シリル化剤および溶媒を含む表面処理組成物であって、
前記シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、
前記溶媒が、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1または2以上を含み、
前記溶媒の総量100質量%中、前記グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量が50質量%以上である、
表面処理組成物が提供される。
【0009】
また本発明によれば、
表面に凹凸パターンを有するウェハを準備する工程と、
前記ウェハの前記表面に洗浄液を供給して洗浄する工程と、
前記洗浄液を保持した前記表面に表面処理組成物の蒸気を供給し、前記表面において、前記蒸気を液体に状態変化させ、前記洗浄液を前記液体で置換し、前記表面の少なくとも一部に撥水性保護膜を形成する工程と、を含む、ウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物が、
シリル化剤および溶媒を含み、
前記シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、
前記溶媒が、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1または2以上を含み、
前記溶媒の総量100質量%中、前記グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量が50質量%以上である、
ウェハの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面改質能および保管安定性に優れた表面処理組成物、およびそれを用いたウェハの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】表面が微細な凹凸パターンを有するウェハの斜視模式図である。
図2図1中のa-a'断面の一部を示す断面模式図である。
図3】液体を保持した凹部に組成物の蒸気を供する状態の断面模式図である。
図4】撥水性保護膜が形成されたウェハの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0013】
本実施形態の表面処理組成物の概要を説明する。
【0014】
本実施形態の表面処理組成物は、表面に凹凸パターンを有するウェハの表面に蒸気として供給され、表面に撥水性保護膜を形成するために用いられるものである。
この表面処理組成物は、シリル化剤および溶媒を含み、シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、溶媒が、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1または2以上を含み、溶媒の総量100質量%中、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートの合計含有量が50質量%以上となるように構成される。
【0015】
本実施形態の表面処理組成物を用いて、表面に凹凸パターンを有するウェハの製造に適用することにより、凹凸パターンのパターン倒れを抑制することが可能である。
【0016】
ここで、半導体ウェハの製造を一例に挙げて説明する。
半導体ウェハの製造プロセスにおいて、成膜、リソグラフィやエッチングなどを経て基板(ウェハ)表面に微細な凹凸パターンが形成され、その後、ウェハ表面を清浄なものとするために、水や有機溶媒を用いた洗浄工程などの湿式処理が行われ、湿式処理によってウェハに付着した洗浄液やリンス液などの液体を除去するために乾燥工程も行われる。
かかる乾燥工程中には、微細な凹凸パターンを有するウェハにおいて、凹凸パターンの変形や倒れが起こりやすいことが知られている。
表面処理組成物の蒸気を用いて凹凸パターンに撥水性保護膜を形成し、ウェハ表面が撥水性を発揮するように表面改質することによって、上記乾燥工程中における凹凸パターンの変形や倒れを抑制することが可能になる。これにより、製造安定性に優れたウェハ製造方法を実現できる。
【0017】
本発明者の知見によれば、シリル化剤としてトリアルキルシリルアミン、および溶媒としてグリコールエーテルアセテート及び/又はグリコールアセテートを併用した上で、グリコールエーテルアセテート及び前記グリコールアセテートの合計含有量を、溶媒の総量100質量%中50質量%以上とすることにより、表面改質能および保存安定性を向上できることが判明した。
【0018】
詳細なメカニズムは定かではないが、シリル化剤のトリアルキルシリルアミンと反応し難い溶媒であるグリコールエーテルアセテート及び/又はグリコールアセテートを溶媒の主成分として用いることにより、液体中での反応を抑制し、保管安定性を向上できるとともに、気体(蒸気)中での反応も抑制されるため、表面改質能の低下を抑制できると考えられる。
また、沸点が高い(揮発性が低い)溶媒が優先的に、ウェハ表面に凝集し、洗浄液との置換が進むため、シリル化剤が洗浄液と反応して消費されることを抑制できるので、表面改質能の低下を抑制できると考えられる。
【0019】
以下、本実施形態の表面処理組成物の構成について詳述する。
【0020】
(シリル化剤)
表面処理組成物は、シリル化剤として、トリアルキルシリルアミンを一または二以上含む。
【0021】
トリアルキルシリルアミンは、Si原子に、アルキル基が3個、アミノ基が1個結合した構造を少なくとも有するシラン化合物である。
【0022】
アルキル基は、炭素数が1~10の炭化水素基、及び、水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換された炭素数が1~10の炭化水素基から選択される基である。
【0023】
アミノ基は、第一級アミンまたは第二級アミンから水素を除去した1価の基が挙げられるが、例えば、-NH、ジアルキルアミノ基(-N(CH、-N(C等)、t-ブチルアミノ基、アリルアミノ基、-NHSi(CH、-NH-C(=O)-Si(CH、-NHC(=O)CH、-NHC(=O)CF、-N(CH)C(=O)CH、-N(CH)C(=O)CF、-NHC(=O)-OSi(CH、-NHC(=O)-NH-Si(CH(例えば、N,N'-ビス(トリメチルシリル)尿素等)、窒素を含む環を有する基(ただし、環を構成する窒素原子が前述したSi原子と結合する)等を用いてもよい。上記の窒素を含む環としては、例えば、ピペリジン環、イミダゾール環(例えば、N-トリメチルシリルイミダゾール等)、トリアゾール環(例えば、N-トリメチルシリルトリアゾール等)、テトラゾール環、オキサゾリジノン環、モルホリン環、その他の窒素含有複素環等が挙げられる。
【0024】
トリアルキルシリルアミンの具体例として、例えば、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、N-(トリメチルシリル)-ターシャリーブチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルピペリジン、及びN-(トリメチルシリル)-イミダゾール等のトリメチルシリルアミン、上記トリメチルシリルアミンのトリメチルシリル基がエチルジメチルシリル基である化合物、プロピルジメチルシリル基である化合物、ブチルジメチルシリル基である化合物、ヘキシルジメチルシリル基である化合物、オクチルジメチルシリル基である化合物、及び、デシルジメチルシリル基である化合物等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、蒸気化した際のシリル化剤の失活しにくさ(蒸気安定性)の観点から、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、N-(トリメチルシリル)-ターシャリーブチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、上記トリメチルシリルアミンのトリメチルシリル基がエチルジメチルシリル基である化合物、プロピルジメチルシリル基である化合物、ブチルジメチルシリル基である化合物、ヘキシルジメチルシリル基である化合物、オクチルジメチルシリル基である化合物、及び、デシルジメチルシリル基である化合物が好ましい。また、シリル化反応性の観点から、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、およびN-(トリメチルシリル)-ターシャリーブチルアミンが好ましい。
【0025】
シリル化剤の含有量の下限は、表面処理組成物100質量%中、例えば、0.3質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。これにより、表面改質能を向上できる。
一方、シリル化剤の含有量の上限は、当該表面処理組成物100質量%中、例えば、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。これにより、保存安定性を向上できる。
【0026】
トリアルキルシリルアミンの含有量の下限は、シリル化剤100質量%中、例えば、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。これにより、表面改質能および保存安定性を向上できる。
一方、トリアルキルシリルアミンの含有量の上限は、シリル化剤100質量%中、特に限定されないが、100質量%以下、複数のシリル化剤を併用する場合、98質量%以下でもよい。
【0027】
(溶媒)
表面処理組成物は、溶媒として、グリコールエーテルアセテート及び/又はグリコールアセテートを一または二以上含む。なお、二以上含む場合のグリコールエーテルアセテート及び/又はグリコールアセテートの溶媒中の含有量は、溶媒に含まれるグリコールエーテルアセテート、グリコールアセテートの合計量とする。
【0028】
グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートの具体例として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、グリコールアセテートよりもグリコールエーテルアセテートの方が沸点が低いことから蒸気化しやすいため好ましく、さらに保存安定性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0029】
溶媒の総量100質量%中、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒の合計含有量は、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。これにより、保存安定性を向上できる。
一方、溶媒の総量100質量%中、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートから選ばれる溶媒の合計含有量は、100質量%以下、複数の溶媒を併用する場合、98質量%以下であってもよい。また、溶媒の実質的に100質量%が、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。「実質的に100質量%」とは、溶媒として意図的に混合された他の溶媒がないことを指すものとする。
【0030】
グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートの合計含有量の下限は、表面処理組成物100質量%中、例えば、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。これにより、保存安定性を向上できる。
一方、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテート実質的に合計含有量の上限は、表面処理組成物100質量%中、例えば、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下である。これにより、表面改質能や他の特性とのバランスを図ることができる。
【0031】
(表面処理組成物)
また本実施形態の一例として、トリアルキルシリルアミンと、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つまたは2つ以上の合計含有量は、表面処理組成物100質量%中、例えば、60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。これにより、表面改質能および保存安定性を向上できる。
また、表面処理組成物の他の一例は、シリル化剤と、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つまたは2以上のみからなるものとしてもよく、好ましくは、トリアルキルシリルアミンとグリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1つまたは2以上のみからなるもの、であってもよい。
【0032】
また、表面処理組成物は、1気圧における溶媒の沸点とシリル化剤の沸点との沸点差(溶媒の沸点-シリル化剤の沸点)が、例えば、20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは55℃以上である。これにより、沸点が高い溶媒が優先的にウェハ表面に凝集し、洗浄液との置換が進むため、シリル化剤が洗浄液との接触により失活することを抑制し、表面改質能が低下するのを抑制できる。また、溶媒の沸点は蒸気化の際にシリル化剤が熱分解しない程度であればよく、上記の沸点差も特に限定されるものではない。上記の沸点差は、例えば、200℃以下としてもよく、好ましくは150℃以下としてもよい。
複数種を含む溶媒およびシリル化剤の沸点は、溶媒およびシリル化剤に含まれる成分のうち、最も含有率(質量%)が多い成分の沸点を採用する(ただし、最も含有率が多い成分が2種以上存在した場合には、温度が最も高い方の沸点を採用する)。
【0033】
表面処理組成物は、水の含有量が少ないことが好ましく、実質的に水を含まないことが特に好ましい。
【0034】
本実施形態の表面処理組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。この他の成分としては、例えば、トリアルキルシリルアミン以外の他のシリル化剤、グリコールエーテルアセテート及びグリコールアセテート以外の他の溶媒、界面活性剤、およびBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)などの酸化防止剤等が挙げられる。
【0035】
上記表面処理組成物は、フッ素系溶剤を含まないか、表面処理組成物100質量%中、2質量%以下の含有量でフッ素系溶剤を含むように構成されてもよい。フッ素系溶剤を実質的に含まない溶媒とすることにより、表面処理組成物の蒸気のウェハ表面における面内方向での凝集性を向上させることができる。上記のフッ素系溶剤としては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン等が挙げられる。
【0036】
上記表面処理組成物は、非環状炭酸エステルを含まないか、表面処理組成物100質量%中、2質量%以下の含有量で非環状炭酸エステルを含むように構成されてもよい。非環状炭酸エステルを実質的に含まない溶媒とすることにより、保存安定性を向上できる。
【0037】
上記表面処理組成物は、触媒を含まないか、表面処理組成物100質量%中、2質量%以下の含有量で触媒を含むように構成されてもよい。触媒とは、ウェハ表面と前述したトリアルキルシリルアミンとの反応を促進するものである。
触媒としては、トリメチルシリルトリフルオロアセテート、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、ジメチルシリルトリフルオロアセテート、ジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、ブチルジメチルシリルトリフルオロアセテート、ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、ヘキシルジメチルシリルトリフルオロアセテート、ヘキシルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、オクチルジメチルシリルトリフルオロアセテート、オクチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、デシルジメチルシリルトリフルオロアセテート、デシルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、スルホン酸、該スルホン酸の無水物、該スルホン酸の塩、スルホン酸誘導体、スルホン酸エステル、スルホンイミド、スルホンイミド誘導体、スルホンメチド、スルホンメチド誘導体、酸イミド化物、含窒素複素環化合物、およびシリル化複素環化合物が挙げられる。
触媒を実質的に含まない表面処理組成物とすることにより、保存安定性を向上できる。
【0038】
本実施形態の表面処理組成物は、上述の各成分を混合することで得られる。
得られた混合液は、必要に応じて、吸着剤やフィルターなどを用いて、精製されてもよい。また、各成分を予め蒸留で精製、吸着剤やフィルターなどを用いて精製してもよい。
【0039】
表面処理組成物は、下記の手順で測定される、表面処理後のシリコンウェハ表面の水接触角が、例えば70°以上となるように構成される。これにより、良好な表面改質能とすることができる。
(手順)
表面に熱酸化膜層を有するシリコンウェハを1質量%のフッ化水素酸に25℃で10分浸漬し、純水に25℃で1分、2-プロパノール(iPA)に25℃で1分浸漬し、洗浄する。
洗浄後のシリコンウェハを、iPAを液盛りした状態で水平に配置し、表面処理組成物の蒸気をシリコンウェハに供給する。
続いて、シリコンウェハの表面において、前記蒸気を液体に状態変化させて、表面に保持されていたiPAを液体に置換する。
続いて、シリコンウェハをiPAに25℃で1分浸漬する。
その後、シリコンウェハにエアーを吹き付けて、表面のiPAを除去する。
以上の工程により得られたシリコンウェハ表面上に対して、純水約2μlを用いて、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、上記の水接触角を測定する。
【0040】
表面処理組成物は、光散乱式液中粒子検出器を用いて測定される、0.2μmより大きい粒子の数が、当該表面処理組成物1mL当たり、例えば、1.0×10個以下、好ましくは1.0×10個以下、より好ましくは1.0×10個以下となるように構成される。これにより、蒸気処理装置内や表面処理組成物を蒸気化する気化室、その他送液部等が汚染されて、デバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下が生じる恐れを抑制できる。
一方、上記0.2μmより大きい粒子の数は少ないほど好ましいが上記の含有量範囲内であれば該組成物1mL当たり1個以上あってもよい。
表面処理組成物中の液相でのパーティクル測定は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して測定するものであり、パーティクルの粒径とは、PSL(ポリスチレン製ラテックス)標準粒子基準の光散乱相当径を意味する。
パーティクルとは、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子や、組成物の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、無機固形物などの粒子などであり、最終的に組成物中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
【0041】
表面処理組成物は、誘導結合プラズマ質量分析法を用いて測定される、Na、Mg、Ca、Mn、Fe、Cu、Li、Al、Cr、Ni、ZnおよびAgの合計含有量が、当該表面処理組成物中、例えば、100質量ppb以下、好ましくは10質量ppb以下、より好ましくは1質量ppb以下となるように構成される。これにより、蒸気処理装置内が汚染されて、デバイスの歩留まり低下及び信頼性の低下が生じる恐れを抑制できる。
一方、上記の合計含有量が上記の範囲内であれば、該組成物の総量に対して、各元素につき、0.0001質量ppb以上であってもよい。
【0042】
以下、表面処理組成物を用いたウェハの製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態のウェハの製造方法は、表面に凹凸パターンを有するウェハを準備する工程と、ウェハの表面に洗浄液を供給して洗浄する工程と、洗浄液を保持した表面に、上記の表面処理組成物の蒸気を供給し、表面において、前記蒸気を液体に状態変化させ、前記洗浄液を当該液体で置換し、表面の少なくとも一部に撥水性保護膜を形成する工程と、を含む。
上記の工程の他、プレリンス(第一リンス)工程、ポストリンス(第二リンス)工程、乾燥工程、および撥水性保護膜の除去工程等を一または二以上行ってもよい。
本実施形態のウェハの製造方法に用いる表面処理組成物には、上述で説明した表面処理組成物と同様のものを用いることができる。
【0044】
図1~4は、表面処理組成物を用いたウェハの製造工程の一例を示す。
図1は、表面が微細な凹凸パターン2を有する面とされたウェハ1の斜視模式図である。図2は、図1中のa-a'断面の一部を示すウェハ1の断面模式図である。図3は、液体8を保持した凹部4に組成物の蒸気9を供する工程を示す図である。図4は、組成物により撥水性保護膜11が形成された凹部4を液体10で洗浄する工程を示す図である。
【0045】
まず、表面に凹凸パターンを有するウェハ1を準備する。
【0046】
ウェハ1の準備工程において、ウェハ表面に凹凸パターン2を形成する方法の一例である以下の方法を用いてもよい。
まず、ウェハ表面にレジストを塗布したのち、レジストマスクを介してレジストに露光し、露光されたレジスト、または、露光されなかったレジストを除去することによって所望の凹凸パターンを有するレジストを作製する。また、レジストにパターンを有するモールドを押し当てることでも、凹凸パターンを有するレジストを得ることができる。次に、ウェハをエッチングする。このとき、レジストパターンの凹の部分に対応する基板表面が選択的にエッチングされる。最後に、レジストを剥離すると、表面に凹凸パターン2を有するウェハ1が得られる。
【0047】
凹凸パターン2が形成されたウェハ、及び凹凸パターン2の材質については特に限定されない。
ウェハ1の材質としては、シリコンウェハ、シリコンカーバイドウェハ、シリコン原子を含む複数の成分から構成されたウェハ、サファイアウェハ、各種化合物半導体ウェハなど各種のウェハを用いることができる。
【0048】
凹凸パターン2の材質としては、Si、Ti、Ge、W、並びにRu、これらを1種以上含む、酸化物、窒化物、窒素酸化物、炭化窒化物、及び炭化酸化物からなる群から選ばれる一又は二以上を含んでもよい。例えば、凹凸パターン2の材質として、酸化ケイ素、窒化ケイ素、多結晶シリコン、単結晶シリコン、シリコンゲルマニウムなどのシリコン系材料、窒化チタン、タングステン、ルテニウム、窒化タンタル、スズなどのメタル系材料、及びそれぞれを組み合わせた材料、レジスト(フォトレジスト)材料などを用いることができる。
【0049】
凹凸パターン2は、例えば、表面の垂直方向に沿って配置された一または二以上の構造体、及び/又は、垂直方向と直交する水平方向に沿って配置された一または二以上の構造体を有する三次元構造で構成されてもよい。このような三次元構造の一例としては、ロジックデバイスやメモリーデバイスの少なくとも一部を構成してもよく、例えば、FinFET、ナノワイヤーFET、ナノシートFET、または他のマルチゲート型のFET、三次元メモリーセル等が挙げられる。
【0050】
図2は、凹凸パターン2の一例を示す断面図である。
本実施形態において、凹凸パターン2のパターン寸法は、表面の面内方向における少なくとも一つの幅方向の寸法、及び/又は、表面に対して垂直方向における少なくとも一つの高さ方向の寸法と定義できる。
凹凸パターン2のパターンにおける(基板厚み方向の)断面構造において、その幅及び高さの少なくとも一以上のパターン寸法、又は凹凸パターン2のパターンにおける三次元構造(XYZの3次元座標)において、その幅(X軸方向の長さ)、高さ(Y軸方向の長さ)、及び奥行き(Z軸方向の長さ)の少なくとも一以上のパターン寸法が、例えば、30nm以下でもよく、20nm以下でもよく、10nm以下でもよい。これはパターン同士の間隔であってもよい。このような微細な凹凸パターン2を有するウェハ1を用いた場合においても、本実施形態の表面処理組成物を適用できる。
【0051】
このような表面処理組成物は、例えば、パターン寸法が30nm以下、好ましくは20nm以下である凹凸パターン2を有するウェハ1を表面処理するために用いるものとして好適である。
【0052】
凸部3のアスペクト比は、例えば、3以上でも、5以上でも、10以上でもよい。脆弱な構造の凸部3を有する凹凸パターン2においてもパターン倒れを抑制できる。
一方、凸部3のアスペクト比は、特に限定されないが、100以下でもよい。
凸部3のアスペクト比は、凸部の高さ6を凸部の幅7で除した値で表される。
【0053】
また、凹部の幅5は、例えば、70nm以下、好ましくは45nm以下でもよい。
凹部の幅5は、図2の断面視において、隣接する凸部3と凸部3との間隔で示される。
【0054】
続いて、ウェハ1の表面を洗浄液で洗浄する。
洗浄工程では、ウェハ1の表面を、洗浄液の一つである水性洗浄溶液と接触させてもよい。
水性洗浄溶液としては、例えば、水、アルコール、水酸化アンモニウム水溶液、テトラメチルアンモニウム水溶液、フッ酸水溶液、塩酸水溶液、過酸化水素水溶液、硫酸水溶液、及び有機溶媒等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
洗浄工程は、表面処理工程の前や第一リンス工程の前に、1回又は2回以上行ってよい。複数の洗浄工程の間、洗浄工程と表面処理工程との間に、他の工程が含まれてもよい。
【0056】
続いて、必要に応じて、ウェハ1の表面を第一のリンス溶液と接触させてもよい(第一リンス工程)。
【0057】
第一のリンス溶液としては、水性洗浄溶液と異なる洗浄液を用いることができ、例えば、水や有機溶媒、それらの混合物、あるいは、それらに酸、アルカリ、界面活性剤、酸化剤のうち少なくとも1種が混合されたもの等が挙げられる。
第一のリンス溶液に用いられる有機溶媒として、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、ハロゲン元素含有溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、窒素元素含有溶媒等が挙げられる。この中でも、有機溶媒として、メタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノール(イソプロパノール)等の炭素数3以下のアルコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0058】
また、第一のリンス溶液として、複数種を用いても良い。例えば、酸水溶液あるいはアルカリ水溶液を含む溶液、有機溶媒、の順でリンスを行うことができる。また、さらに水性洗浄溶液を追加し、酸水溶液あるいはアルカリ水溶液を含む溶液、水性洗浄溶液、有機溶媒、の順で行ってもよい。
【0059】
第一リンス工程は、洗浄工程の後や表面処理工程の前に、1回又は2回以上行ってよい。複数の第一リンス工程の間、第一リンス工程と表面処理工程との間に、他の工程が含まれてもよい。
【0060】
洗浄液の供給方法は、公知の手段を用いることができるが、例えば、ウェハをほぼ水平に保持して回転させながら回転中心付近に洗浄液を供給してウェハを1枚ずつ洗浄するスピン洗浄装置を用いる洗浄方法に代表される枚葉方式や、洗浄槽内で複数枚のウェハを浸漬し洗浄する洗浄装置を用いるバッチ方式が挙げられる。
これにより、ウェハ1の凹凸パターン2の少なくとも凹部4に洗浄液を保持させることができる。
【0061】
続いて、凹凸パターン2の少なくとも凹部4に洗浄液(液体8)を保持した状態で、本実施形態の表面処理組成物の蒸気9を凹凸パターン表面に供給し、ウェハ表面にて蒸気9を液体10に状態変化させ、少なくとも凹部4に保持された液体8を液体10に置換して保持することにより、ウェハ表面の少なくとも一部、例えば、凹部4の表面に撥水性保護膜(保護膜11)を形成する。
【0062】
表面処理組成物の蒸気9が供給されるとき、ウェハ表面に保持される洗浄液(液体8)は、上記の水性洗浄溶液でも、第一のリンス溶液でもよく、製造安定性の観点から、第一のリンス溶液が好ましく、この中でも、2-プロパノール(IPA)が含まれてもよい。すなわち、ウェハの製造方法の一態様としては、ウェハの表面にIPAが保持された状態で、表面処理組成物の蒸気9を供給してもよい。
【0063】
また、ウェハの製造方法は、表面処理組成物を、原料中の水分の総量が、原料の総量に対して、例えば、2000質量ppm以下、好ましくは500質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、さらに好ましくは50質量ppm以下の原料を用いて調製する工程を含んでもよい。これにより、表面処理組成物における表面改質能の低下を抑制できる。
【0064】
表面処理組成物の蒸気9を供給する方法としては、例えば、チャンバ内に、凹凸パターン2の少なくとも凹部4に液体8を保持したウェハ1を配置し、別途、表面処理組成物を蒸発させて得た蒸気を、配管やノズルを介して凹凸パターン表面に供給する方法等が挙げられる。蒸気の供給に際して窒素ガスや乾燥空気などのキャリアガスを用いてもよい。
【0065】
ただし、表面処理組成物を蒸気化する方法は、上記の方法に特に限定されない。
例えば、所定量の液体状態の表面処理組成物を気化室に導入して、表面処理組成物が全量蒸発するのに十分な加熱を行い、全量蒸発した後に蒸気9を、上記凹凸パターン表面に供給するべく、配管やノズルへ送り出す、バッチ式の蒸気化方法が挙げられる。
【0066】
また、例えば、予め熱せられた小規模な気化部(例えば、配管の一部に加熱手段を設ける等)に表面処理組成物の液滴を滴下し、滴下の都度その全量の表面処理組成物が蒸発するようにして、該蒸気9を、上記凹凸パターン表面に供給するべく、配管やノズルへ送り出す、連続式の蒸気化方法が挙げられる。
【0067】
なお、蒸気化の温度は、保護膜形成成分である上記シリル化剤の熱分解が引き起こされる恐れがない温度に抑えることが好ましい。
好ましい蒸気処理の条件としては、窒素ガスを導入し、上述のように得た蒸気と該窒素ガスの混合気体の組成が一定となってから上記凹凸パターン表面に該混合気体を供給することが挙げられる。
処理中の基板付近の雰囲気温度すなわち蒸気の温度は、凹部4に保持されていた液体8の沸点よりも低いことが好ましい。これを満たすと、凹部に保持された液体8を表面処理組成物で置換する前に液体8が揮発してしまうことを防ぐことができるため、凹凸パターン2のパターン倒れを抑制しやすくなる。
【0068】
図3は、液体8を保持した凹部4に蒸気9を供する状態の模式図を示す。図4は、表面処理組成物により撥水性保護膜11が形成された凹部4の状態の模式図を示す。図3図4の模式図のウェハ1は、図1のa-a'断面の一部を示すものである。
【0069】
図3、4に示すように、供給された蒸気9が、凹部4にて液体10に状態変化し、凹部4に保持されていた液体8を液体10が置換し、凹部4に液体10が保持される。また、上記の状態変化を促進したり安定化させる目的で、ウェハ1や凹部4の温度を低くしたり、一定にする等の温度調整をしてもよい。
【0070】
ウェハ表面では、液体10のシリル化剤が、ウェハ表面と反応し、上述の撥水性の官能基を有する部位がウェハ表面に固定されることによって、撥水性保護膜(保護膜11)が形成される。
【0071】
保護膜11は、必ずしも連続的に形成されていなくてもよく、また、必ずしも均一に形成されていなくてもよいが、より優れた撥水性を付与できるため、連続的に、また、均一に形成されていることがより好ましい。
【0072】
第一のリンス溶液や水性洗浄溶液等のウェハ表面に保持された液体8を、表面処理組成物の蒸気9を液化した液体10によって置換することにより、ウェハ1の表面における凹凸パターン2の表面が乾燥状態となる前に、表面改質処理、すなわち、保護膜11の形成を行うことが可能となる。これにより、凹凸パターン2のパターン倒れを抑制できる。
【0073】
必要に応じて、ウェハ表面に保持された液体10に対して、加温処理、減圧処理、乾燥処理等の公知の手段を適用して、保護膜11の形成を促進させてもよい。
【0074】
続いて、必要に応じて、保護膜11が形成されたウェハ表面を、第二のリンス溶液と接触させてもよい(第二リンス工程)。
第二のリンス溶液としては、第一のリンス溶液に例示したものを用いることができる。
【0075】
また、第二のリンス溶液として、複数種を用いても良い。例えば、水、イソプロパノール等の有機溶媒を、この順で接触させてリンスを行うことができる。
【0076】
第二リンス工程は、表面処理工程の後に、1回又は2回以上行ってよい。複数の第二リンス工程の間、第二リンス工程と表面処理工程との間に、他の工程が含まれてもよい。
【0077】
続いて、保護膜11の形成の後、必要に応じて、ウェハ1の表面を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。
乾燥工程により、ウェハ1の表面上に存在する液体を除去できる。
液体には、液体10、第二のリンス溶液、または、これらの混合液が含まれてもよい。
乾燥手段としては、例えば、スピン乾燥法、IPA(2-プロパノール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥、減圧乾燥などの公知の手段を用いてもよい。
【0078】
乾燥工程は、1回又は2回以上行ってもよく、例えば、表面処理工程の後や第二リンス工程の後に行ってもよい。なお、乾燥工程と第二リンス工程は交互に繰り返してもよい。
【0079】
続いて、ウェハ1の表面上の保護膜11を除去してもよい(除去工程)。
除去手段としては、加熱、UV照射、オゾン暴露、プラズマ照射、コロナ放電等が挙げられる。また、超臨界流体等の濃縮流体(酸、塩基、酸化剤を含んでもよい)による処理、その他気相の除去剤を用いて除去を行うような処理を行ってもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの処理は、大気圧下又は減圧下で行ってもよい。
【0080】
以上により、本実施形態の表面処理組成物を用いたウェハ1(半導体基板)が得られる。
【0081】
図3に示す製造方法は、ウェハパターンを対象とするものであるが、本発明はこれに限定されない。本実施形態の基板の製造方法は、レジストパターンを対象として、その洗浄・乾燥工程において本発明の表面処理組成物を用いることでレジストパターンの倒れを抑制することも可能である。
【0082】
上記の供給工程は、洗浄工程の後に実施する製造方法を説明したが、これに限定されず、凹凸パターン2に対して実施される様々な処理の後に実施してもよい。
基板の製造方法は、上記の工程以外にも、公知の処理を一または二以上組み合わせて用いてもよい。例えば、上記の除去工程の後に、プラズマ処理などの表面処理を行ってもよい。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 表面に凹凸パターンを有するウェハの前記表面に蒸気として供給され、前記表面に撥水性保護膜を形成するために用いられる、シリル化剤および溶媒を含む表面処理組成物であって、
前記シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、
前記溶媒が、前記溶媒の総量100質量%中、50質量%以上のグリコールエーテルアセテートを含む、
表面処理組成物。
2. 1.に記載の表面処理組成物であって、
前記シリル化剤の含有量が、当該表面処理組成物100質量%中、0.3質量%以上30質量%以下である、表面処理組成物。
3. 1.または2.に記載の表面処理組成物であって、
前記グリコールエーテルアセテートの含有量が、当該表面処理組成物100質量%中、50質量%以上である、表面処理組成物。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
1気圧における前記溶媒の沸点と前記シリル化剤の沸点との沸点差(溶媒の沸点-シリル化剤の沸点)が20℃以上である、表面処理組成物。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
前記トリアルキルシリルアミンが、トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、およびN-(トリメチルシリル)-ターシャリーブチルアミンからなる群から選ばれる一又は二以上を含む、表面処理組成物。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
下記の手順で測定される、表面処理後のシリコンウェハ表面の水接触角が70°以上である、表面処理組成物。
(手順)
表面に熱酸化膜層を有するシリコンウェハを1質量%のフッ酸水溶液に25℃で10分浸漬し、純水に25℃で1分、2-プロパノール(iPA)に25℃で1分浸漬し、洗浄する。
洗浄後の前記シリコンウェハを、iPAを液盛りした状態で水平に配置し、当該表面処理組成物の蒸気をシリコンウェハに供給する。
続いて、前記シリコンウェハの前記表面において、前記蒸気を液体に状態変化させて、前記表面に保持されていたiPAを前記液体に置換する。
続いて、前記シリコンウェハをiPAに25℃で1分浸漬する。
その後、前記シリコンウェハにエアーを吹き付けて、前記表面のiPAを除去する。
以上の工程により得られたシリコンウェハ表面上に対して、純水約2μlを用いて、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、上記の水接触角を測定する。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
前記溶媒が、フッ素系溶剤を含まない、表面処理組成物。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
前記溶媒が、非環状炭酸エステルを含まない、表面処理組成物。
9. 1.~8.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
触媒を含まない、表面処理組成物。
10. 1.~9.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
光散乱式液中粒子検出器を用いて測定される、0.2μmより大きい粒子の数が、当該表面処理組成物1mL当たり1.0×10個以下である、表面処理組成物。
11. 1.~10.のいずれか一つに記載の表面処理組成物であって、
誘導結合プラズマ質量分析法を用いて測定される、Na、Mg、Ca、Mn、Fe、Cu、Li、Al、Cr、Ni、ZnおよびAgの合計含有量が、当該表面処理組成物中、100質量ppb以下である、表面処理組成物。
12. 表面に凹凸パターンを有するウェハを準備する工程と、
前記ウェハの前記表面に洗浄液を供給して洗浄する工程と、
前記洗浄液を保持した前記表面に表面処理組成物の蒸気を供給し、前記表面において、前記蒸気を液体に状態変化させ、前記洗浄液を前記液体で置換し、前記表面の少なくとも一部に撥水性保護膜を形成する工程と、を含む、ウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物が、シリル化剤および溶媒を含み、
前記シリル化剤が、トリアルキルシリルアミンを含み、
前記溶媒が、前記溶媒の総量100質量%中、50質量%以上のグリコールエーテルアセテートを含む、
ウェハの製造方法。
13. 12.に記載のウェハの製造方法であって、
前記ウェハの前記表面にIPAが保持された状態で、前記表面処理組成物の蒸気を供給する、ウェハの製造方法。
14. 12.または13.に記載のウェハの製造方法であって、
前記表面処理組成物を、原料中の水分の総量が、原料の総量に対して2000質量ppm以下の原料を用いて調製する工程を含む、ウェハの製造方法。
【実施例
【0084】
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0085】
[実施例1]
(表面処理組成物の調製)
シリル化剤としてトリメチルシリルジメチルアミン〔(CHSi-N(CH〕(以降「TMSDMA」と略称する);5g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以降「PGMEA」と略称する);95gを混合し、表面処理組成物(以降「組成物」と略称する)を得た。
調製された直後の組成物は、下記(A)および(B)に記載した要領で評価し、結果を表1に示した。
【0086】
〔評価方法〕
(A)組成物の保管安定性評価
組成物の原料を混合後、45℃で静置した後の組成物の外観を目視観察し、1週間後に不溶物の析出や沈殿の生成がないものを『◎』、1日の静置後には不溶物の析出や沈殿の生成がないが1週間後に不溶物の析出や沈殿の生成があるものを『○』、4時間の静置後には不溶物の析出や沈殿の生成がないが1日の静置後に不溶物の析出あるいは沈殿の生成があるものを『△』とした。また、組成物の原料を混合後、45℃で静置し、4時間以内に不溶物の析出あるいは沈殿の生成があるものを『×』とした。
【0087】
また、組成物をガスクロマトグラフィーにより分析し、保管中のシリル化剤の濃度の変化を確認した。分析は、ガスクロマトグラフィー装置(株式会社島津製作所製GC-2010Plus)にキャピラリーカラムTC-1(ジーエルサイエンス株式会社製)を取り付けたものを用いた。
測定は、調合直後の試料と、調合して45℃で1日間保管した後の試料について行った。それぞれの組成物について、調合直後の対照用試料のクロマトグラフィーチャートにおけるシリル化剤の面積%と、保管後のクロマトグラフィーチャートにおけるシリル化剤の面積%との比から、対照用試料における初期濃度を100%としたときの、シリル化剤の濃度の減少率(%)を算出した。
【0088】
(B)組成物の表面改質能評価(ウェハ表面に形成された撥水性保護膜の接触角評価)
ウェハの表面を凹凸パターンを有する面とすること、凹凸パターンの少なくとも凹部に保持された洗浄液を他の洗浄液で置換することは、他の文献等にて種々の検討がなされ、既に確立された技術である。本発明では、組成物の蒸気でウェハを表面処理した際の撥水性付与効果について、評価を行った。
【0089】
ただし、表面に凹凸パターンを有するウェハの場合、該凹凸パターン表面に形成された上記保護膜11(撥水性保護膜)自体の接触角を正確に評価できない。
【0090】
水滴の接触角の評価は、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」にもあるように、サンプル(基材)表面に数μlの水滴を滴下し、水滴と基材表面のなす角度の測定によりなされる。しかし、パターンを有するウェハの場合、水滴の接触角が非常に大きくなる。これは、Wenzel効果やCassie効果が生じるからで、接触角が基材の表面形状(ラフネス)に影響され、見かけ上の水滴の接触角が増大するためである。
【0091】
そこで、本実施例では、上記組成物の蒸気を表面が平滑なウェハに供して、ウェハ表面に保護膜を形成して、該保護膜を表面に凹凸パターンが形成されたウェハの表面に形成された保護膜とみなし、下記の手順で評価を行った。なお、本実施例では、表面が平滑なウェハとして、表面が平滑なシリコンウェハ上にSiO層を有する、熱酸化膜付きシリコンウェハを用いた。
【0092】
(1)シリコンウェハの洗浄
平滑な熱酸化膜付きシリコンウェハ(表面に厚さ1μmの熱酸化膜層を有するSiウェハ)を1質量%のフッ酸水溶液に25℃で10分浸漬し、純水に25℃で1分浸漬し、続いて、2-プロパノール(以降「iPA」と呼称する)に25℃で1分浸漬した。
【0093】
(2)シリコンウェハ表面への蒸気による表面処理
上記洗浄後にシリコンウェハを、iPAを液盛りした状態で蒸気処理室に水平に配置し、上記にて調製した溶液状態の組成物を、下記の蒸気供給条件にて、蒸気化し該蒸気を蒸気処理室に供給した。
そして、50℃以下のウェハ表面にて供給した蒸気を液体に状態変化させて、ウェハ表面に保持されていたiPAを該液体に置換した。
【0094】
上記組成物の蒸気供給条件:145℃に加熱された蒸気化室に、窒素ガスを2dm/分の流量で流しながら、0.01g/秒の滴下速度で上記調製した溶液状態の組成物を滴下したところ、滴下全量が蒸気化した。該蒸気を即座に窒素ガスフローで蒸気処理室に供給した。当該処理を60秒間行った。
【0095】
(3)シリコンウェハの洗浄
その後、シリコンウェハを蒸気処理室から取り出し、iPAに25℃で1分浸漬した。最後に、シリコンウェハをiPAから取出し、エアーを吹き付けて、表面のiPAを除去した。
以上により、表面に保護膜が形成されたシリコンウェハを得た。
【0096】
(4)保護膜の水接触角測定
保護膜が形成されたウェハ表面上に純水約2μlを置き、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、水滴とウェハ表面とのなす角(水接触角)を接触角計(協和界面科学製:CA-X型)で測定した。また、当該保護膜が形成されたウェハは合計3サンプル作成し、各サンプルについて水接触角を測定した。表1には、3サンプルにおける水接触角の最大値と最小値との差を、水接触角のバラツキとして記載した。
なお、上記(2)を行わず、(1)および(3)の処理を施して得られた、表面に保護膜が形成されていないシリコンウェハの表面における水接触角は、10°未満であった。
【0097】
【表1】
【0098】
[実施例2]
シリル化剤としてTMSDMA;7g、溶媒としてPGMEA;93gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
【0099】
[実施例3]
シリル化剤としてTMSDMA;9g、溶媒としてPGMEA;91gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
【0100】
[実施例4]
シリル化剤としてTMSDMA;11g、溶媒としてPGMEA;89gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
【0101】
[実施例5]
シリル化剤としてTMSDMA;13g、溶媒としてPGMEA;87gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
【0102】
[実施例6]
シリル化剤としてTMSDMA;3g、溶媒としてPGMEA;97gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
[実施例7]
シリル化剤としてプロピルジメチルシリルジメチルアミン〔(CHCHCH)(CHSi-N(CH〕(以降「PDMSDMA」と略称する);11g、溶媒としてPGMEA;89gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
[実施例8]
シリル化剤としてブチルジメチルシリルジメチルアミン〔(CHCHCHCH)(CHSi-N(CH〕(以降「BDMSDMA」と略称する);11g、溶媒としてPGMEA;89gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
【0103】
[比較例1]
シリル化剤としてTMSDMA;5g、溶媒として炭酸プロピレン;45gと炭酸ジエチル;50gを混合し、組成物を得た他は、実施例1と同様に組成物を調製して各種評価を行い、結果を表1に示した。
【0104】
実施例1~8の表面処理組成物は、水接触角が70°以上であり良好な撥水性を有していた。また、調製直後の組成物を用いて、上記(4)の水接触角測定を複数繰り返し行った結果、測定値のバラツキが抑制される結果を示した。このような実施例1~8の表面処理組成物は、ウェハ製造プロセスにおいて実用上問題なく使用できた。一方で比較例1は、水接触角が70°以上であるものの、実施例1~8よりもバラツキが大きくなる傾向を示した。すなわち、実施例1~8は、良好な撥水性と水接触角のバラツキ抑制とが両立されたという点で、比較例1よりも良好な表面改質能を示した。
また、実施例1~8の表面処理組成物は、上記(A)組成物の保管安定性評価を行った結果、比較例1と比べて、組成物における析出発生が抑制され、組成物中におけるシリル化剤の濃度変動が小さい結果を示した。なお、実施例1~8の表面処理組成物は、調製直後から1ヶ月後まで、シリル化剤濃度が殆ど変動しない結果を示し、一方、比較例1の表面処理組成物は、調製直後から6時間後、4日後に測定したところ、シリル化剤濃度が経時的に低下する結果を示した。以上より、実施例1~8の表面処理組成物は、比較例1と比べて、保管安定性に優れる結果を示した。
【0105】
この出願は、2021年2月26日に出願された日本出願特願2021-029887号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0106】
1 ウェハ
2 凹凸パターン
3 凸部
4 凹部
5 凹部の幅
6 凸部の高さ
7 凸部の幅
8 液体
9 蒸気
10 液体
11 保護膜
図1
図2
図3
図4