(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-17
(45)【発行日】2026-02-26
(54)【発明の名称】粒子選別機構
(51)【国際特許分類】
B07C 5/34 20060101AFI20260218BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20260218BHJP
B07B 13/18 20060101ALI20260218BHJP
C01B 32/25 20170101ALI20260218BHJP
G01N 15/1429 20240101ALI20260218BHJP
G01N 15/1434 20240101ALI20260218BHJP
【FI】
B07C5/34
B01J19/12 H
B07B13/18
C01B32/25
G01N15/1429 200
G01N15/1434
(21)【出願番号】P 2023520862
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2022011228
(87)【国際公開番号】W WO2022239450
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2025-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2021080858
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石原 一
(72)【発明者】
【氏名】和田 拓道
(72)【発明者】
【氏名】笹木 敬司
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有都
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-242080(JP,A)
【文献】特開2020-034501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380120(US,A1)
【文献】○和田 拓道、久宗 穂高、藤原 英樹、笹木 敬司、石原 一,制限された運動次元での光圧によるナノ粒子輸送及び力学的運動を利用した光学応答計測の理論,2018年 第79回 応用物理学会秋季学術講演会[講演予稿集] Extended Abstracts of The 79th JSAP,日本,公益社団法人応用物理学会,2018年09月05日,ISBN 978-4-86348-679-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/34
B01J 19/12
C01B 32/25
G01N 15/1434
G01N 15/1429
B07B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の吸収準位を持つ吸収体を含む複数の第1ナノ粒子と、前記所定の吸収準位を持つ吸収体を含まない複数の第2ナノ粒子とが存在し、第1入力部及び第2入力部を有する流路と、
前記第1入力部から前記第2入力部に向かう方向に、前記所定の吸収準位を持つ吸収体に吸収される第1光を出力する第1光源モジュールと、
前記第2入力部から前記第1入力部に向かう方向に、前記所定の吸収準位を持つ吸収体に吸収されず、且つ、前記第2ナノ粒子において散乱又は吸収される第2光を出力する第2光源モジュールと、を備える粒子選別機構。
【請求項2】
前記第1光源モジュール及び前記第2光源モジュールの光出力を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記第1入力部から前記第2入力部に向かう方向に前記第1ナノ粒子が輸送され、前記第2入力部から前記第1入力部に向かう方向に前記第2ナノ粒子が輸送されるよう、前記第1光及び前記第2光の強度及び周波数が調整されるように、前記第1光源モジュール及び前記第2光源モジュールを制御する、請求項1記載の粒子選別機構。
【請求項3】
前記流路は、
前記第1入力部から第1合流点まで第1方向に延在する第1部分と、
前記第1合流点から前記第2入力部まで前記第1方向に交差する第2方向に延在する第2部分と、
前記第2入力部から第2合流点まで、前記第1方向であって前記第1方向において前記第1入力部に近づく方向に延在する第3部分と、
前記第2合流点から前記第1部分に含まれる第3合流点まで延在する第4部分と、
前記第1合流点に設けられ、前記第1部分からの前記第1光を前記第2部分に向けて反射すると共に、前記第2部分からの前記第2光を前記第1部分に向けて反射する第1ミラーと、
前記第2入力部に設けられ、前記第2部分からの前記第1光を前記第3部分に向けて反射する第2ミラーと、
前記第2合流点に設けられ、前記第3部分からの前記第1光を前記第4部分に向けて反射する第3ミラーと、を有する、請求項1又は2記載の粒子選別機構。
【請求項4】
前記第1ナノ粒子は、前記吸収体であるNVセンターを含むナノダイヤであり、
前記第2ナノ粒子は、前記吸収体であるNVセンターを含まないナノダイヤである、請求項1~3のいずれか一項記載の粒子選別機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、粒子選別機構に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子を選別する方法として、例えば特許文献1に記載された遠心分離法や、クロマトグラフィー等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、選別対象の2種類の微粒子については、例えば表面の化学的・物理的性質、あるいは質量・体積等が互いに異ならない(選別できる程度の違いが無い)場合がある。この場合、上述したような遠心分離法やクロマトグラフィーによっては、2種類の微粒子を適切に選別することができない。例えば、NV(Nitrogen-Vacancy)センターを含むナノダイヤと、NVセンターを含まないナノダイヤとを選別したい場合において、これら2種類のナノダイヤについては表面の化学的・物理的性質が互いに異ならないため、上述したような遠心分離法やクロマトグラフィーによっては、これら2種類のナノダイヤを適切に選別することが困難である。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、表面の科学的・物理的性質が互いに異ならない2種類の粒子について適切に選別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る粒子選別機構は、所定の吸収準位を持つ吸収体を含む複数の第1ナノ粒子と、所定の吸収準位を持つ吸収体を含まない複数の第2ナノ粒子とが存在し、第1入力部及び第2入力部を有する流路と、第1入力部から第2入力部に向かう方向に、所定の吸収準位を持つ吸収体に吸収される第1光を出力する第1光源モジュールと、第2入力部から第1入力部に向かう方向に、所定の吸収準位を持つ吸収体に吸収されず、且つ、第2ナノ粒子において散乱又は吸収される第2光を出力する第2光源モジュールと、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る粒子選別機構によれば、所定の吸収準位を持つ吸収体を含む複数の第1ナノ粒子については、当該吸収体に吸収される第1光によって、第1入力部から第2入力部に向かう方向に輸送されやすくなる。一方で、所定の吸収準位を持つ吸収体を含まない複数の第2ナノ粒子については、第2ナノ粒子において散乱又は吸収される第2光によって、第2入力部から第1入力部に向かう方向に輸送されやすくなる。これにより、上記吸収体を含む第1ナノ粒子及び上記吸収体を含まない第2ナノ粒子の輸送後の位置が分かれやすくなり、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を適切に選別することができる。このような選別方法は、表面の科学的・物理的性質が互いに異ならない2種類の粒子についても実施可能である。このため、本発明の一態様に係る粒子選別機構によれば、表面の科学的・物理的性質が互いに異ならない2種類の粒子について適切に選別することができる。
【0008】
上記粒子選別機構は、第1光源モジュール及び第2光源モジュールの光出力を制御する制御部を更に備え、制御部は、第1入力部から第2入力部に向かう方向に第1ナノ粒子が輸送され、第2入力部から第1入力部に向かう方向に第2ナノ粒子が輸送されるよう、第1光及び第2光の強度及び周波数が調整されるように、第1光源モジュール及び第2光源モジュールを制御してもよい。このように各光の強度及び周波数が調整されることによって、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子をより確実に選別することができる。
【0009】
流路は、第1入力部から第1合流点まで第1方向に延在する第1部分と、第1合流点から第2入力部まで第1方向に交差する第2方向に延在する第2部分と、第2入力部から第2合流点まで、第1方向であって第1方向において第1入力部に近づく方向に延在する第3部分と、第2合流点から第1部分に含まれる第3合流点まで延在する第4部分と、第1合流点に設けられ、第1部分からの第1光を第2部分に向けて反射すると共に、第2部分からの第2光を第1部分に向けて反射する第1ミラーと、第2入力部に設けられ、第2部分からの第1光を第3部分に向けて反射する第2ミラーと、第2合流点に設けられ、第3部分からの第1光を第4部分に向けて反射する第3ミラーと、を有していてもよい。
【0010】
このような構造では、第3合流点から第1合流点まで延びる第1部分の流路、第1合流点から第2入力部まで延びる第2部分の流路、第2入力部から第2合流点まで延びる第3部分の流路、及び、第2合流点から第3合流点まで延びる第4部分の流路によって、環構造が形成されている。そして、第1部分及び第2部分においては互いに反対方向に第1光及び第2光が通過し、第3部分及び第4部分では第1光のみが通過する。そのため、第3部分及び第4部分である、第2入力部から第2合流点を経て第3合流点に至る流路においては、第1光のみによって第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子が輸送されることとなる。そして、第3合流点(第1部分に含まれる点)に至った第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子に対しては、互いに反対方向に進む第1光及び第2光の光圧が作用することとなる。ここで、第1ナノ粒子については、所定の吸収準位を持つ吸収体によって第1光が吸収され第2光が吸収されないので、第1光が支配的になり、第1光によって、上述した環構造の流路(第3合流点から、第1合流点、第2入力部、及び第2合流点を経て、第3合流点に戻る流路)内において繰り返し輸送される。一方で、第2ナノ粒子については、上記吸収体を含まないため、第1光が吸収されず、第1ナノ粒子と比較すると第1光が支配的にならないので、第3合流点から第1入力部に向かう方向に輸送される粒子と、環構造の流路内で輸送される粒子とが、両方存在することとなる。しかしながら、環構造の流路内で輸送された第2ナノ粒子は、再度第3合流点に至ると、再度、第3合流点から第1入力部に向かう方向に輸送される粒子と、環構造の流路内で輸送される粒子とに分かれるため、このような処理が繰り返されることによって、十分な時間が経過すると、ほとんどの第2ナノ粒子が第1入力部に向かう方向に輸送されることとなる。このように、環構造によって長時間・長距離の輸送が実現されることにより、第1ナノ粒子については環構造の流路内において繰り返し輸送し、第2ナノ粒子については環構造外の流路に輸送することができるため、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子の存在領域を分け、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を適切に選別することができる。また、環構造の流路(循環部分)に第1ナノ粒子が濃縮されるため、第1ナノ粒子を容易に回収することができる。
【0011】
第1ナノ粒子は、吸収体であるNVセンターを含むナノダイヤであり、第2ナノ粒子は、吸収体であるNVセンターを含まないナノダイヤであってもよい。本発明の一態様に係る粒子選別機構によってNVセンターを含むナノダイヤとNVセンターを含まないナノダイヤとが選別されることにより、量子情報技術における素子、及び、バイオ応用を含む高感度センシング材料として価値が高いNVセンターを含むナノダイヤを適切に回収することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、表面の科学的・物理的性質が互いに異ならない2種類の粒子について適切に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る粒子選別機構を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の粒子選別機構による粒子選別を説明する図である。
【
図3】
図3は、共鳴光及び非共鳴光の調整について説明する図である。
【
図4】
図4は、環構造による粒子濃縮について説明する図である。
【
図5】
図5(a)は環構造が無い場合における、初期位置よりも共鳴光による輸送方向側に存在する共鳴粒子及び非共鳴粒子の個数の時間変化を示す図であり、
図5(b)は環構造が無い場合における、200000ステップ(2000[s]相当)における共鳴粒子及び非共鳴粒子の存在位置を示す図である。
【
図6】
図6(a)は環構造の一辺d=125μmの場合における、初期位置よりも共鳴光による輸送方向側に存在する共鳴粒子及び非共鳴粒子の個数の時間変化を示す図であり、
図6(b)は環構造の一辺d=125μmの場合における、200000ステップにおける共鳴粒子及び非共鳴粒子の存在位置を示す図である。
【
図7】
図7(a)は環構造の一辺d=62.5μmの場合における、初期位置よりも共鳴光による輸送方向側に存在する共鳴粒子及び非共鳴粒子の個数の時間変化を示す図であり、
図7(b)は環構造の一辺d=62.5μmの場合における、200000ステップにおける共鳴粒子及び非共鳴粒子の存在位置を示す図である。
【
図8】
図8(a)は環構造の一辺d=25μmの場合における、初期位置よりも共鳴光による輸送方向側に存在する共鳴粒子及び非共鳴粒子の個数の時間変化を示す図であり、
図8(b)は環構造の一辺d=25μmの場合における、200000ステップにおける共鳴粒子及び非共鳴粒子の存在位置を示す図である。
【
図9】
図9は、粒子選別機構の濃縮機構としての有用性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る粒子選別機構1を模式的に示す図である。本実施形態に係る粒子選別機構1は、マイクロ流路と2種類のレーザとを用いて、2種類のナノ粒子を選別し、一方のナノ粒子を濃縮・回収する装置である。ここでの2種類のナノ粒子とは、例えば、表面の科学的性質及び物理的性質(質量等)が互いに共通である(異ならない)ナノ粒子である。本実施形態において、一方のナノ粒子は所定の吸収準位を持つ吸収体を含む第1ナノ粒子であり、他方の粒子は上述した所定の吸収準位を持つ吸収体を含まない第2ナノ粒子である。より具体的には、本実施形態の第1ナノ粒子は所定の吸収準位を持つ吸収体であるNVセンターを含むナノダイヤであり、第2ナノ粒子は上述した所定の吸収準位を持つ吸収体であるNVセンターを含まないナノダイヤである。
【0016】
NVセンターを含むナノダイヤは、量子情報技術における素子、及び、バイオ応用を含む高感度センシング材料として価値が高いが、生産されたナノダイヤ全体に占める比率が極めて低く、NVセンターを含むナノダイヤのみを好適に回収することが難しい。このため、生産されたナノダイヤからNVセンターを含むナノダイヤを選別し、濃縮・回収することが求められている。NVセンターを含むナノダイヤとNVセンターを含まないナノダイヤとは、表面の科学的・物理的性質が互いに共通である(異ならない)ため、一般的な遠心分離法や、クロマトグラフィー等によっては選別することが困難である。そこで、本実施形態に係る粒子選別機構1では、マイクロ流路と2種類のレーザとを用いて、第1ナノ粒子であるNVセンターを含むナノダイヤと、第2ナノ粒子であるNVセンターを含まないナノダイヤとを、それぞれ異なる領域に輸送して選別し、NVセンターを含むナノダイヤを濃縮・回収する。より具体的には、第1ナノ粒子の電子遷移に共鳴する光を第1ナノ粒子に照射し、第1ナノ粒子の輻射力を増強することにより、第1ナノ粒子を第2ナノ粒子と異なる領域に輸送する。以下では、NVセンターを含むナノダイヤを共鳴粒子、NVセンターを含まないナノダイヤを非共鳴粒子と記載する場合がある。
【0017】
図1に示されるように、粒子選別機構1は、還流装置100と、レーザ2(第1光源モジュール),3(第2光源モジュール)と、制御部200と、を備えている。還流装置100は、流路4と、反射鏡61(第1ミラー)と、ハーフミラー62(第2ミラー)と、反射鏡63(第3ミラー)と、を有している。
【0018】
流路4は、複数の共鳴粒子(例えば、NVセンターを含むナノダイヤ)と、複数の非共鳴粒子(例えば、NVセンターを含まないナノダイヤ)とが存在し、第1入力部51及び第2入力部53を有する流路である。第1入力部51は、レーザ2から照射される光の入力部分である(詳細は後述)。第2入力部53は、レーザ3から照射される光の入力部分である(詳細は後述)。流路4は、第1部分10と、第2部分20と、第3部分30と、第4部分40と、を有する。
【0019】
第1部分10は、第1入力部51から第1合流点52まで第1方向(
図1における左から右に延びる方向)に延在する部分である。第2部分20は、第1合流点52から第2入力部53まで第1方向に交差する第2方向(
図1における下から上に延びる方向)に延在する部分である。第3部分30は、第2入力部53から第2合流点54まで、第1方向であって第1方向において第1入力部51に近づく方向(
図1における右から左に延びる方向)に延在する部分である。第4部分40は、第2合流点54から第1部分10に含まれる第3合流点55まで延在する部分である。このように、流路4には、第3合流点55から、第1合流点52、第2入力部53、及び第2合流点54を経て、第3合流点55に戻る環構造の部分が形成されている。環構造の各辺は、例えば数μm~数百μm程度とされてもよい。環構造の各辺とは、第1部分10における第3合流点55から第1合流点52までの部分、第2部分20、第3部分30、及び第4部分40である。環構造の各辺は、全て同じ長さとされてもよいし、互いに対向する各辺同士のみが同じ長さとされてもよいし、互いに異なる長さとされてもよい。
【0020】
反射鏡61は、第1合流点52に設けられ、第1部分10からの第1光(後述する、レーザ2からの共鳴光)を第2部分20に向けて反射すると共に、第2部分20からの第2光(後述する、レーザ3からの非共鳴光)を第1部分10に向けて反射するミラーである。ハーフミラー62は、第2入力部53に設けられ、第2部分20からの第1光(後述する、レーザ2からの共鳴光)を第3部分30に向けて反射するミラーである。ハーフミラー62は、後述する、レーザ3からの非共鳴光を、第2部分20方向に透過する。反射鏡63は、第2合流点54に設けられ、第3部分30からの第1光(後述する、レーザ2からの共鳴光)を第4部分40に向けて反射する。
【0021】
レーザ2は、第1入力部51から第2入力部53に向かう方向(詳細には、第1入力部51から第1合流点52に向かう方向)に、所定の吸収準位を持つ吸収体であるNVセンターに吸収される共鳴光(第1光)を出力する。レーザ3は、第2入力部53から第1入力部51に向かう方向(詳細には、第2入力部53から第1合流点52に向かう方向)に、NVセンターに吸収されず、且つ、少なくともNVセンターを含まない第2ナノ粒子である非共鳴粒子において散乱又は吸収される非共鳴光(第2光)を出力する。
【0022】
図2は、
図1の粒子選別機構1による粒子選別を説明する図である。
図2に示されるように、レーザ2から出力された共鳴光L1は、第1入力部51から入力されて第1部分10を通過し、反射鏡61にて反射されて第2部分20を通過し、更にハーフミラー62にて反射されて第3部分30を通過し、更に反射鏡63にて反射されて第4部分40を通過して、第3合流点55に至る。また、レーザ3から出力された非共鳴光L2は、第2入力部53から入力されて第2部分20を通過し、反射鏡61にて反射されて第1部分10を通過し、第1入力部51に至る。
【0023】
共鳴光L1は、共鳴粒子N1のNVセンターに吸収される光である。よって、共鳴粒子N1は、共鳴光L1によって、共鳴光L1の方向に輸送されやすくなっている。また、非共鳴光L2は、非共鳴粒子において散乱又は吸収される光である。よって、非共鳴粒子N2は、非共鳴光L2によって、非共鳴光L2の方向に輸送されやすくなっている。そして、第1部分10及び第2部分20においては、互いに反対方向に共鳴光L1及び非共鳴光L2が通過しているため、このような共鳴光L1及び非共鳴光L2の方向の違いを利用して、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2を互いに異なる方向に輸送して選別することができる。
【0024】
ここで、共鳴粒子N1に対しては、共鳴光L1だけでなく非共鳴光L2が照射される。非共鳴光L2は、共鳴粒子N1において散乱する可能性があり、当該散乱によって共鳴粒子N1を非共鳴光L2の方向に輸送してしまう可能性がある。また、非共鳴粒子N2に対しては、非共鳴光L2だけでなく共鳴光L1が照射される。共鳴光L1は、非共鳴粒子N2において吸収されないものの、非共鳴粒子N2において散乱する可能性があり、当該散乱によって非共鳴粒子N2を共鳴光L1の方向に輸送してしまう可能性がある。すなわち、例えば第1部分10において、共鳴粒子N1に対しては吸収に係る共鳴光L1に加えて反対方向の非共鳴光L2が照射され、非共鳴粒子N2に対しては非共鳴光L2に加えて反対方向の共鳴光L1が照射されるため、共鳴光L1及び非共鳴光L2を何ら制御しない場合には、上述した所望の輸送及び選別を実現することができないおそれがある。また、共鳴光L1及び非共鳴光L2によって粒子を輸送する場合においては、これらの光によって輸送される距離を、粒子のランダムな運動(分散)であるブラウン運動による移動距離よりも十分に大きくする必要がある。すなわち、共鳴光L1及び非共鳴光L2は、粒子の輸送がブラウン運動によるものと区別可能となるように制御される必要がある。制御部200は、このような共鳴光L1及び非共鳴光L2の制御を行う構成である。
【0025】
制御部200は、レーザ2及びレーザ3の光出力を制御する。制御部200は、第1入力部51から第2入力部53に向かう方向に共鳴粒子N1が輸送され、第2入力部53から第1入力部51に向かう方向に非共鳴粒子N2が輸送されるよう、共鳴光L1及び非共鳴光L2の強度及び周波数が調整されるように、レーザ2及びレーザ3を制御する。
【0026】
制御部200は、ブラウン運動による粒子の分散距離よりも共鳴光L1及び非共鳴光L2による粒子の輸送距離が十分に大きくなるよう、共鳴光L1及び非共鳴光L2の強度及び周波数が調整されるように、レーザ2及びレーザ3を制御する。光による粒子の輸送距離X
hは以下の(1)式で示される。また、ブラウン運動による分散距離X
dは以下の(2)式で示される。以下の(1)式及び(2)式におけるηは粘性係数、k
Bはボルツマン定数(1.38×10
-23)、rは粒子径、Tは温度、Fは光によって粒子に加わる輻射力、tは時間である。一例として、粘性係数ηは0.89×10
-3[Pa・s]、粒子径rは20.0[nm]、温度Tは300[K]である。
【数1】
【数2】
【0027】
輸送距離X
hが分散距離X
dよりも十分に大きくなるための条件式は、例えば以下の(3)式で示される。
【数3】
制御部200は、上記(3)式が満たされるよう、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2の輻射力Fがそれぞれ設定されるように、共鳴光L1及び非共鳴光L2の強度及び周波数を調整する。
【0028】
制御部200は、さらに、共鳴粒子N1が共鳴光L1の方向に輸送され、非共鳴粒子N2が非共鳴光L2の方向に輸送されるよう、共鳴光L1及び非共鳴光L2の強度及び周波数が調整されるように、レーザ2及びレーザ3を制御する。制御部200は、まず、共鳴粒子N1を共鳴光L1の方向に輸送可能(ブラウン運動を考慮しても輸送可能)となるよう、
図3に示されるように、例えば、共鳴光L1のエネルギーを2.33eV、周波数を5.63×10
14Hz、強度を2.5MW/cm
2に調整するとする。この場合、例えば吸収体であるNVセンターAbを10個含んだ共鳴粒子N1においては、NVセンターAbの吸収による輻射力(例えばF=6.2×10
-2[fN])に対して、共鳴粒子N1の母体における散乱による輻射力(例えばF=6.4×10
-1[fN])が大きくなる。制御部200は、共鳴粒子N1において、母体に対する共鳴光L1の散乱による輻射力がキャンセルされるように、共鳴光L1と反対方向に進む非共鳴光L2の散乱による輻射力を設定する。これにより、共鳴粒子N1は、NVセンターAbの吸収による輻射力が支配的となり、共鳴光L1の方向に輸送される。そして、制御部200は、共鳴粒子N1の母体に対する共鳴光L1の散乱による輻射力がキャンセルされると共に、ブラウン運動及び共鳴光L1の影響を考慮した場合においても非共鳴粒子N2が非共鳴光L2の方向に輸送可能となるよう、
図3に示されるように、例えば、非共鳴光L2のエネルギーを1.16eV、周波数を2.81×10
14Hz、強度を41MW/cm
2に調整する。以上のように、制御部200は、ブラウン運動を考慮した上で、相反する方向に照射される共鳴光L1及び非共鳴光L2の強度及び周波数を調整して、共鳴粒子N1を共鳴光L1の方向に輸送すると共に、非共鳴粒子N2を非共鳴光L2の方向に輸送する。なお、上述した共鳴光L1及び非共鳴光L2の条件は一例であり、共鳴振動数(周波数)については対象粒子ごとに制限されるが、強度及び波長の組み合わせ等については自由に選択することができる。
【0029】
ここで、上述したように、共鳴粒子N1におけるNVセンターの吸収による輻射力は、共鳴粒子N1の母体における散乱による輻射力と比較して圧倒的に小さい。このような小さい輻射力によって共鳴粒子N1を共鳴光L1の方向に輸送するためには、長時間・長距離の輸送が必要となる。すなわち、時間経過により分散していく粒子全体に光を照射して移動距離の差(共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2の移動距離の差)を抽出するためには、長大な流路が必要となる。また、選別された共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2をそれぞれ回収するためには、選別後のこれらの存在領域が明確に分離されている必要がある。このような要求に対して、上述したように、環構造を有する還流装置100が採用されることにより、環構造によって長時間の繰り返し輸送を可能にすると共に、環構造に共鳴粒子N1を濃縮して共鳴粒子N1の回収を可能にしている。そして、このような共鳴粒子N1の選別及び回収は、共鳴粒子N1の輻射力が小さくても実現可能である。
【0030】
いま、
図2に示される第3合流点55が各粒子の初期位置であるとする。各共鳴粒子N1については、共鳴光L1によるNVセンターの吸収による輻射力によって、共鳴光L1の方向に輸送される。このため、各共鳴粒子N1は、第3合流点55を初期位置として、環構造を繰り返し循環するように輸送される。一方で、各非共鳴粒子N2については、互いに反対方向に進む共鳴光L1及び非共鳴光L2の拡散(非共鳴光L2については拡散又は吸収)の影響を受け、例えば、共鳴光L1の方向又は非共鳴光L2の方向(
図2の第3合流点55から左右方向)に分散して輸送される。
【0031】
図4は、環構造による粒子濃縮について説明する図である。いま、非共鳴粒子N2については、初期位置である第3合流点55から等率で左右方向に分散するとする。この場合、
図4(a)に示されるように、複数の共鳴粒子N1及び複数の非共鳴粒子N2が初期位置である第3合流点55に放たれると、
図4(b)に示されるように、各共鳴粒子N1については共鳴光L1によって環構造内に輸送される。一方で、
図4(b)に示されるように、各非共鳴粒子N2については、環構造内と環構造外に半分ずつ分散して輸送される。そして、環構造内の共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2のみが、
図4(c)に示されるように、環構造内を循環し、再度、第3合流点に戻り、各共鳴粒子N1が環構造内へ輸送され、各非共鳴粒子N2が環構造内と環構造外に半分ずつ分散して輸送される。このように、環構造内での循環が繰り返されることにより、共鳴粒子N1については数が変わることなく全数、環構造内を循環するのに対して、非共鳴粒子N2については循環する度に徐々に環構造内を循環する数が減少していく。このため、粒子が循環する時間を十分に確保することにより、環構造の内外に共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2の存在する場所を分け、環構造内の共鳴粒子N1を容易に回収することができる。
【0032】
次に、環構造による粒子濃縮の効果について、
図5~
図8を参照して説明する。
図5~
図8は、それぞれ、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子を各10000個ずつ初期位置から輸送する場合の時間経過に応じた結果を示している。
図5~
図8において、(a)は初期位置よりも共鳴光L1による輸送方向側に存在する共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2の個数の時間変化を示す図であり、(b)は200000ステップ(2000[S])経過時における共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2の存在位置を示す図である。(a)では横軸がステップ、縦軸が粒子の個数を示している。(b)では横軸が初期位置を0とした左右の位置(0.5μmで規格化した距離)、縦軸が粒子の個数を示している。(b)の横軸「+」側は、共鳴光L1による輸送方向側である。なお、非共鳴粒子N2は、初期位置から等率で左右方向に分散するとする。
【0033】
図5は、環構造が無い場合の結果を示している。
図5(a)に示されるように、環構造が無い場合、共鳴粒子N1については時間経過に応じて共鳴光L1による輸送方向側に輸送される数が増加しているが、非共鳴粒子N2については等率で左右方向に分散し、時間が経過しても共鳴光L1による輸送方向側に輸送される数の増減が小さい。
図5(b)に示されるように、200000ステップ(2000[S])が経過し十分に時間が経過した状態においても、非共鳴粒子N2については左右に等率で分散しており、共鳴粒子N1と非共鳴粒子N2との存在位置が重複しやすくなっている。この場合、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2のそれぞれを適切に選別することができず、共鳴粒子N1を容易に回収することが困難となる。
【0034】
図6は、環構造が存在し、環構造の一辺d=125μmの場合の結果を示している。なお、環構造が存在する構成とは、上述した粒子選別機構1の還流装置100の構成である(以下同様)。
図6(a)に示されるように、環構造が存在することによって、環構造を循環する度に徐々に非共鳴粒子N2が環構造外に排出されていくので、時間の経過と共に、共鳴光L1による輸送方向側(すなわち環構造側)に存在する非共鳴粒子N2の数が減少していく。このため、
図6(b)に示されるように、200000ステップ(2000[S])が経過し十分に時間が経過した状態においては、非共鳴粒子N2については環構造外側(
図6(b)の横軸「-」側)に多く存在しており、共鳴粒子N1と非共鳴粒子N2との存在位置が重複しにくくなっている。これにより、
図5の例と比較すると、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2のそれぞれを適切に選別することができ、共鳴粒子N1を容易に回収することができる。
【0035】
図7は、環構造が存在し、環構造の一辺d=62.5μmの場合の結果を示している。一辺dが短くなることによって、粒子の循環サイクルが早くなり、初期位置である第3合流点55から環構造外に非共鳴粒子N2が排出される機会が増加する。このため、
図7(a)に示されるように、環構造の一辺d=125μmである
図6の例と比較して、時間の経過に応じた、環構造側に存在する非共鳴粒子N2の減少度合いが大きくなる。このため、
図7(b)に示されるように、200000ステップ(2000[S])が経過し十分に時間が経過した状態においては、非共鳴粒子N2については環構造外側(
図7(b)の横軸「-」側)に多く存在しており、共鳴粒子N1と非共鳴粒子N2との存在位置がより重複しにくくなっている。これにより、
図6の例と比較すると、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2のそれぞれをより適切に選別することができ、共鳴粒子N1をより容易に回収することができる。
【0036】
図8は、環構造が存在し、環構造の一辺d=25μmの場合の結果を示している。
図8(a)に示されるように、一辺dが更に短くされているため、環構造の一辺d=62.5μmである
図7の例と比較して、時間の経過に応じた、環構造側に存在する非共鳴粒子N2の減少度合いがより大きくなっており、200000ステップ(2000[S])経過時には環構造における非共鳴粒子N2の濃度が非共鳴粒子N2全体の1/10程度に減少している。このため、
図8(b)に示されるように、200000ステップ(2000[S])が経過し十分に時間が経過した状態においては、非共鳴粒子N2については環構造外側(
図8(b)の横軸「-」側)に多く存在しており、共鳴粒子N1と非共鳴粒子N2との存在位置がより重複しにくくなっている。これにより、
図7の例と比較すると、共鳴粒子N1及び非共鳴粒子N2のそれぞれをより適切に選別することができ、共鳴粒子N1をより容易に回収することができる。
【0037】
図9は、粒子選別機構1の濃縮機構としての有用性を説明する図である。
図9において、横軸は時間を示しており、縦軸は流路4の環構造における粒子の個数を示している。いま、環構造を有する粒子選別機構1において、初期位置である第3合流点55に、10個の共鳴粒子N1と、100000個の非共鳴粒子N2とが放たれ、レーザ2から共鳴光L1が、レーザ3から非共鳴光L2が照射されたとする。この場合、
図9に示されるように、20000[S]経過時においては、共鳴粒子N1については初期時と変わらない10個が環構造に存在するのに対して、非共鳴粒子N2については2872個のみが環構造に存在している。このような環構造を利用した選別を実施する前においては、粒子の全体に占める共鳴粒子N1の割合は、10/100010≒0.01%であったのに対して、環構造を利用した選別を実施した後(例えば200000[S]経過時)においては、環構造内における共鳴粒子N1の割合は、10/2837≒0.35%にまで増えている。このように、環構造を有する粒子選別機構1によって約5時間程度の粒子循環を行うことにより、環構造における共鳴粒子N1の濃度を35倍程度に向上させることができた。
【0038】
次に、本実施形態に係る粒子選別機構1の作用効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係る粒子選別機構1は、所定の吸収準位を持つ吸収体を含む複数の第1ナノ粒子と、所定の吸収準位を持つ吸収体を含まない複数の第2ナノ粒子とが存在し、第1入力部51及び第2入力部53を有する流路4と、第1入力部51から第2入力部53に向かう方向に、所定の吸収準位を持つ吸収体に吸収される第1光を出力するレーザ2と、第2入力部53から第1入力部51に向かう方向に、所定の吸収準位を持つ吸収体に吸収されず、且つ、第2ナノ粒子において散乱又は吸収される第2光を出力するレーザ3と、を備える。
【0040】
本実施形態に係る粒子選別機構1によれば、所定の吸収準位を持つ吸収体を含む複数の第1ナノ粒子については、当該吸収体に吸収される第1光によって、第1入力部51から第2入力部53に向かう方向に輸送されやすくなる。一方で、所定の吸収準位を持つ吸収体を含まない複数の第2ナノ粒子については、第2ナノ粒子において散乱又は吸収される第2光によって、第2入力部53から第1入力部51に向かう方向に輸送されやすくなる。これにより、上記吸収体を含む第1ナノ粒子及び上記吸収体を含まない第2ナノ粒子の輸送後の位置が分かれやすくなり、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を適切に選別することができる。このような選別方法は、表面の科学的・物理的性質が互いに異ならない2種類の粒子についても実施可能である。このため、本実施形態に係る粒子選別機構1によれば、表面の科学的・物理的性質が互いに異ならない2種類の粒子について適切に選別することができる。
【0041】
上記粒子選別機構1は、レーザ2及びレーザ3の光出力を制御する制御部200を更に備え、制御部200は、第1入力部51から第2入力部53に向かう方向に第1ナノ粒子が輸送され、第2入力部53から第1入力部51に向かう方向に第2ナノ粒子が輸送されるよう、第1光及び第2光の強度及び周波数が調整されるように、レーザ2及びレーザ3を制御してもよい。このように各光の強度及び周波数が調整されることによって、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子をより確実に選別することができる。
【0042】
流路4は、第1入力部51から第1合流点52まで第1方向に延在する第1部分10と、第1合流点52から第2入力部53まで第1方向に交差する第2方向に延在する第2部分20と、第2入力部53から第2合流点54まで、第1方向であって第1方向において第1入力部51に近づく方向に延在する第3部分30と、第2合流点54から第1部分10に含まれる第3合流点55まで延在する第4部分40と、第1合流点52に設けられ、第1部分10からの第1光を第2部分20に向けて反射すると共に、第2部分20からの第2光を第1部分10に向けて反射する反射鏡61と、第2入力部53に設けられ、第2部分20からの第1光を第3部分30に向けて反射するハーフミラー62と、第2合流点54に設けられ、第3部分30からの第1光を第4部分40に向けて反射する反射鏡63と、を有していてもよい。
【0043】
このような構造では、第3合流点55から第1合流点52まで延びる第1部分10の流路、第1合流点52から第2入力部53まで延びる第2部分20の流路、第2入力部53から第2合流点54まで延びる第3部分30の流路、及び、第2合流点54から第3合流点55まで延びる第4部分40の流路によって、環構造が形成されている。そして、第1部分10及び第2部分20においては互いに反対方向に第1光及び第2光が通過し、第3部分30及び第4部分40では第1光のみが通過する。そのため、第3部分30及び第4部分40である、第2入力部53から第2合流点54を経て第3合流点55に至る流路においては、第1光のみによって第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子が輸送されることとなる。そして、第3合流点55(第1部分10に含まれる点)に至った第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子に対しては、互いに反対方向に進む第1光及び第2光の光圧が作用することとなる。ここで、第1ナノ粒子については、所定の吸収準位を持つ吸収体によって第1光が吸収され第2光が吸収されないので、第1光が支配的になり、第1光によって、上述した環構造の流路(第3合流点55から、第1合流点52、第2入力部53、及び第2合流点54を経て、第3合流点55に戻る流路)内において繰り返し輸送される。一方で、第2ナノ粒子については、上記吸収体を含まないため、第1光が吸収されず、第1ナノ粒子と比較すると第1光が支配的にならないので、第3合流点55から第1入力部51に向かう方向に輸送される粒子と、環構造の流路内で輸送される粒子とが、両方存在することとなる。しかしながら、環構造の流路内で輸送された第2ナノ粒子は、再度第3合流点55に至ると、再度、第3合流点55から第1入力部51に向かう方向に輸送される粒子と、環構造の流路内で輸送される粒子とに分かれるため、このような処理が繰り返されることによって、十分な時間が経過すると、ほとんどの第2ナノ粒子が第1入力部に向かう方向に輸送されることとなる。すなわち、非共鳴粒子を環構造外に効率的に排除することができる。このように、環構造によって長時間・長距離の輸送が実現されることにより、第1ナノ粒子については環構造の流路内において繰り返し輸送し、第2ナノ粒子については環構造外の流路に輸送することができるため、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子の存在領域を分け、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を適切に選別することができる。また、環構造の流路(循環部分)に第1ナノ粒子が濃縮されるため、第1ナノ粒子を容易に回収することができる。
【0044】
第1ナノ粒子は、吸収体であるNVセンターを含むナノダイヤであり、第2ナノ粒子は、吸収体であるNVセンターを含まないナノダイヤであってもよい。本実施形態に係る粒子選別機構1によってNVセンターを含むナノダイヤとNVセンターを含まないナノダイヤとが選別されることにより、量子情報技術における素子、及び、バイオ応用を含む高感度センシング材料として価値が高いNVセンターを含むナノダイヤを適切に回収することができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1ナノ粒子を「NVセンターを含むナノダイヤ」、第2ナノ粒子を「NVセンターを含まないナノダイヤ」として説明したが、これに限定されない。例えば、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子は、サイズ違いの量子ドットであってもよい。この場合、共鳴光の強度は例えば1kW/cm2程度とされ、周波数は対応する量子ドットに依存する値とされてもよい。また、第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子は、カーボンナノチューブであってもよい。この場合、共鳴光の強度は例えば1MWcm2程度とされ、周波数は例えば約2.4×1014Hzとされてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…粒子選別機構、2…レーザ(第1光源モジュール)、3…レーザ(第2光源モジュール)、4…流路、10…第1部分、20…第2部分、30…第3部分、40…第4部分、51…第1入力部、52…第1合流点、53…第2入力部、54…第2合流点、55…第3合流点、61…反射鏡(第1ミラー)、62…ハーフミラー(第2ミラー)、63…反射鏡(第3ミラー)、200…制御部、L1…共鳴光(第1光)、L2…非共鳴光(第2光)、N1…共鳴粒子(第1ナノ粒子)、N2…非共鳴粒子(第2ナノ粒子)。