(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-19
(45)【発行日】2026-03-02
(54)【発明の名称】保守管理支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20260220BHJP
【FI】
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2022015282
(22)【出願日】2022-02-03
【審査請求日】2024-07-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水上 貴彰
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 智昭
(72)【発明者】
【氏名】河野 敏明
(72)【発明者】
【氏名】横張 孝志
【審査官】石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147064(JP,A)
【文献】特許第5454671(JP,B2)
【文献】特開2017-010232(JP,A)
【文献】特開2005-182465(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185596(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の稼動機器の故障情報が入力される故障情報入力部と、故障部品と故障事象発生回数が関係づけられたデータが格納された部品データベースと、前記故障情報と前記故障部品が関係づけられた故障知識データが格納された故障知識データベースと、前記故障知識データベースを用いて前記故障部品を推定する故障部品推定部(A)と、前記部品データベースを用いて前記故障部品の前記故障事象発生回数を抽出する故障部品選択部(A)と、推定された前記故障部品を表示する推定故障部品表示部(A)と、前記故障知識データを更新するデータベース更新部とを備え、
前記故障部品推定部(A)は、前記故障情報入力部から入力された前記故障情報に基づいて、前記故障知識データベースから前記故障情報に関連する複数の前記故障部品を推定し、
前記故障部品選択部(A)は、前記部品データベースから、前記故障部品推定部(A)で推定された複数の前記故障部品に対応した前記故障事象発生回数を抽出し、
前記推定故障部品表示部(A)は、前記故障部品選択部(A)で抽出された前記故障事象発生回数を用いて、前記故障事象発生回数の多い順番に推定された前記故障部品を表示する
ことを特徴とする保守管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守管理支援システムに係り、特に稼動している機器類の保守管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場で製造された製品毎に製造年月日や製造番号を印字するインクジェットプリンタ、事務所の情報機器で作成された文書を印刷するプリンタ、文書を複写する複写機等の工場や事務所で稼動している産業機器類(以下、稼動機器と表記する)においては、異常や故障(以下、代表して「故障」と表記する)が生じた際に、故障を生じた部品(以下、故障部品と表記する)の修理や交換といった保守管理が必要である。
【0003】
この保守管理は、故障データを基にサービス員が、稼動機器の設置場所に赴いて故障部品の修理や交換を行っている。ところで、このサービス員による保守管理において、保守管理作業における熟練サービス員の減少や、新たなサービス員の技術力不足といった理由で、故障部品を特定するときの推定間違いや、交換が不要な部品の無駄な払い出し、交換などが往々にして行われることがある。
【0004】
これによって、顧客の問い合わせに対応する時間の増加、交換部品の費用や交換部品の無駄な交換作業の増加、保守管理における出動回数の増加、一人当たりのサービス員が担当する稼動機器数の減少、保守管理作業の効率低下といった種々の課題を引き起こしている。
【0005】
このような課題に対して、例えば特開2004-265159号公報(特許文献1)においては、空調機のような設備機器の運転情報などを収集しておき、故障が発生した際にこの故障原因を探索する診断機能や、設備機器が出力する警報や故障情報に基づいて故障発生個所を予測する予測機能に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、稼動機器の故障の診断精度を高めて故障発生個所の予測精度を向上するためには、稼動機器の多くの稼動データ(運転データ)を詳細に取得することが必要である。しかしながら、通信速度やデータ保存ストレージの容量などの制限により、稼動機器の多くの稼動データを取得することが難しいのが実情である。このため、故障発生個所の予測精度が十分に得られないという新たな課題を生じている。このため、故障部品の特定にも支障をきたすことになる。
【0008】
本発明の目的は、稼動機器の多くの稼動データを取得することが難しい場合においても、故障個所の予測精度を高めて故障部品の特定が正確に行える保守管理支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、故障情報が入力される故障情報入力部と、交換部品と故障事象発生回数が関係づけられたデータを格納する部品データベースと、故障情報と交換部品が関係づけられた故障知識データを格納する故障知識データベースと、前記故障知識データに基づいて故障部品を推定する故障部品推定部と、推定された故障部品を表示する推定故障部品表示部を備える保守管理支援システムであって、故障部品推定部は、故障情報入力部から入力された故障情報に基づいて、故障知識データから故障情報に関連する複数の故障部品を推定し、更に、部品データベースから、推定された故障部品に対応した交換部品を抽出し、抽出された交換部品の故障事象発生回数の多い順番に推定故障部品表示部に表示することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、稼動機器の多くの稼動データを取得することが難しい場合においても、故障個所の予測精度を高めて故障部品の特定が正確に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態になる保守管理支援システムの構成を示す構成図である。
【
図2】故障知識データベースに記憶されている故障知識データを示す説明図である。
【
図3】故障部品を推定して表示する第1の例の処理フローを説明するフローチャートである。
【
図4】故障部品を推定して表示する第2の例の処理フローを説明するフローチャートである。
【
図5】イベント分析におけるクラスタリングを説明する説明図である。
【
図6】故障知識データを更新する第1の例の処理フローを説明するフローチャートである。
【
図7】故障知識データを更新する第2の例の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0013】
図1は、監視対象である稼動機器の故障個所の探索や故障部品の特定を支援する保守管理支援システムの構成を示している。
【0014】
図1において、保守管理支援システム10は、稼動機器11から得られるセンサデータ、動作シーケンスデータ、警報データ等を含む各種データが保存される監視診断データベース12と、稼動機器11の故障データなどが保存される故障知識データベース13と、保守管理の作業結果データなどが保存される保守管理結果データベース14と、稼動機器の部品データや新たに交換された交換部品データ(例えば、払い出し数)などが保存される部品データベース15を備えている。これらのデータベースはそれぞれ情報交換されるように接続されている。
【0015】
また、保守管理システム10は、サービス員等によって顧客データ、稼動機器の故障データ、稼動機器の稼動データ等を入力する故障情報入力部19を備えている。ここで、故障データは、主に後述する第1故障部品推定部(A)で故障部品を特定するために利用され、稼動データは、主に後述する第2故障部品推定部(B)で故障部品を特定するために利用される。
【0016】
また、保守管理システム10は、故障情報入力部19で入力された故障データと各データベース12~15のデータから故障部品を推定する第1故障部品推定部(A)16と、第1故障部品推定(A)16の推定結果を表示する第1推定故障部品表示部(A)20と、第1故障部品推定部(A)16の推定結果から故障部品を選択する第1故障部品選択部(A)21を備えている。
【0017】
また、保守管理システム10は、故障情報入力部19で入力された稼動データと各データベース12~15のデータから故障部品を推定する第2故障部品推定部(B)17と、第2故障部品推定部(B)17の推定結果を表示する第2推定故障部品表示部(B)22と、第2故障部品推定部(B)17の推定結果から故障部品を選択する第2故障部品選択部(B)23を備えている。
【0018】
更に、保守管理システム10は、保守作業の結果データの詳細を入力する保守作業結果入力部24と、顧客に提出する作業報告などを出力する保守作業報告出力部25と、各データベース13~15に保存されているデータを更新するデータベース更新部18とを備えている。また、各データベース12~15と、各機能構成部16~25は相互に情報交換が可能なように互いに接続されている。
【0019】
各データベース12~15は、HDD(Hard Disk Drive)、またはRAM(Radom Access Memory)等の記録手段を用いて実現できる。また、それぞれの第1故障部品推定部(A)16、第2故障部品推定部(B)17、データベース更新部18は、ROM(Read Only Memory)、またはRAMに記録されたプログラムによって動作されるCPU(Central Processing Unit)等の演算手段を用いて実現できる。
【0020】
故障情報入力部19、第1推定故障部品表示部(A)20、第1故障部品選択部(A)21、第2推定故障部品表示部(B)22、第2故障部品選択部(B)23、保守作業結果入力部24、保守作業報告出力部25は、タッチパネル、ディスプレイとキーボードの組み合わせ機器(例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等)、プリンタ等の入出力デバイスによってそれぞれ実現されるが、これ限られるものではない。
【0021】
次に、夫々の構成部品の機能について説明する。尚、本発明は特定の稼動機器に限定されるものではないが、以下ではインクジェットプリンタを一例として説明を進める。
【0022】
監視診断データベース12には、監視対象である稼動機器11、ここでは、インクジェットプリンタから、インタネット回線等のネットワークを経由して、故障データや稼動データがアップロードされる。インタネット回線の接続速度、監視診断データベース12の記憶容量には限りがあるので、ここで常時アップロードされる故障データや稼動データは、インタネット回線の接続速度や監視診断データベース12の容量の制限を満足するデータである。なお、稼働データには、稼働機器の動作シーケンス、センサ計測値、アラート、エラーなどの稼働機器によって保存されるデータが含まれる。
【0023】
故障知識データベース13には、インクジェットプリンタの構造、インクジェットプリンタを構成する主要部品と機能故障の関連性、機能故障と故障影響の関連性、機能故障と故障モードの関連性、機能故障とイベント分析結果の関連性が、故障知識データ30(
図2参照)として記録されている。また、故障知識データ30は、インクジェットプリンタ11の全体の故障知識とその関連性が含まれている必要はなく、対象知識の構造または機能部位毎の故障知識が保存されている場合もありうる。また、インクジェットプリンタ11の全体の構造展開データも記録されている。
【0024】
図2は、故障知識データ30の例を示している。ここでは、インクジェットプリンタを例に示しており、特に、インク循環部の主要部品の一部を示している。故障知識データ30には、部分知識ID31と、主要部品32と、機能故障33と、故障影響34と、故障モード35と、イベント分析結果36に関するデータが、各行毎に関連付けて記載されている。
【0025】
部分知識ID31は、名前付けを意味しており、これに対応して各行に関連データが配置してある。主要部品32は、部品IDと部品名称が対で関係付けられている。機能故障33は、機能故障の故障IDと、機能故障を生じた時の物理的な状態が対で関係付けられている。そして、上述したように機能故障33を基に、各データが関係付けられている。
【0026】
故障影響34は、故障IDと、故障に対応して生じる影響が対で関係付けられている。尚、安全面での影響、運用面での影響の度合いを関連付けることもできる。故障モード35は、故障モードIDと、故障が生じた時の原因に対応する故障モードが対で関係付けられている。
【0027】
イベント分析結果は、稼動データのログに対応するものであり、例えば、過去に生じた機能故障33において、稼働データに記録されたイベントの発生回数に応じた重み付け値などが記録されている。イベントとは、稼働データとして保存された動作シーケンス、センサ計測値、アラート、エラーなどの最小単位である。尚、このイベント分析結果(例えば重み付け値)は、その都度更新されていくものである。ここで、イベント分析結果は、インクジェットプリンタの作動毎、或いは単位時間毎の故障イベント発生回数を算出し、この発生回数の多い特徴イベントを抽出して発生回数に応じた重み付け値を付与してデータベース化している。
【0028】
故障知識データ30には、上述したデータ全体が一度に作成される必要はなく、インクジェットプリンタのサービス員や設計者等の専門知識を有する有識者に作成されたり、或いはバージョンアップによるデータ追加等により部分的に作成されたりすることもある。その作成に伴う知識データの状況を部分知識ID31として記録している。
【0029】
また、故障知識データベース13には、
図2の主要部品32のように稼動機器11の構造展開を示すデータも記録されている。ここでは、インクジェットプリンタを例に構造展開を示しているが、ここでは、インク循環部の主要部品32の一部が示されている。
【0030】
図2の故障知識データ30の各行(
図2においては、NO.1~14で示している)は、主要部品32、機能故障33、故障影響34、故障モード35、イベント分析結果36の組み合わせを示しており、これらは故障知識の最小単位として扱われる。
【0031】
故障知識データベース13では、故障知識データ30に記録された各データ間の関連性により、故障影響34が、どの主要部品32の機能故障33の要因になって引き起こされるのかを、各データID間の関連性として記述している。
【0032】
次に、保守管理支援システム10を使用して故障部品の推定を行う方法について、
図3、及び
図4を用いて説明する。
図3は、第1故障部品推定部(A)16を用いて故障部品の推定を行う例であり、
図4は、第2故障部品推定部(B)17を用いて故障部品の推定を行う例である。
【0033】
図3において、先ずサービス員は、顧客から聞き取り(ヒアリング)を行って故障情報を入手する。この故障情報は、故障によって生じた実際の現象のような大まかな故障情報と見ることができる。尚、故障情報は1つだけではなく、複数の異なった故障情報をも含むものである。
【0034】
そして、故障情報の聞き取りに基づいて、サービス員によって故障情報入力部9から「ステップS10」で顧客情報と故障情報(例えば、
図2にあるように「印字ができない」、「印字が不安定」、「インクが漏洩する」といった故障情報)が入力される。これらの故障情報が入力されると、第1故障部品推定部(A)16では故障知識データベース13のデータを使って、故障部品を推定する。
【0035】
具体的には、「ステップS11」において、故障知識データベース13の故障知識データ30(
図2参照)を利用して、「ステップS10」で入力された、例えば「印字できない」という故障情報を基にして、「印字ができない」という故障が発生している可能性が高いと推定される複数個の故障影響34を選択する。もちろん「印字が不安定」、「インクが漏洩する」という故障情報においても同様である。
【0036】
故障影響34が選択されると、次に「ステップS12」において、故障知識データ30の機能故障33の中から、「印字ができない」という故障が発生している可能性が高いと推定される複数個の機能故障33を選択する。この時、「ステップS10」で機能故障33が入力されていれば、入力された機能故障を選択する。
【0037】
機能故障33が選択されると、次に「ステップS13」において、この複数個の機能故障33と関連性の高い複数個の主要部品32を、故障部品の候補として絞り込むことができる。このように、入力された大まかな故障情報から、この故障情報に関連する複数個の故障部品を推定することが可能となる。このように、これまでのステップによって、故障が生じている可能性がある複数の主要部品32を故障部品として抽出することができる。
【0038】
次に、「ステップS14」において、部品データベース15に格納されている故障発生回数が紐付けられた主要部品32から、絞り込まれた複数の故障部品に対応する主要部品32を、第1故障部品選択部部(A)によって選択し、第1推定故障部品表示部(A)20で、選択された複数の故障部品が、故障発生回数の多い順番で表示される。
【0039】
つまり、部品データベース15には、インクジェットプリンタを構成する主要部品のリストが格納されており、夫々の主要部品には払い出し数が紐付けられている。払い出し数は、故障によって交換される交換部品の数であるので、故障発生回数と見做すことができる。このように、本明細書では、故障発生回数と見做せる事象(例えば、払い出し数や故障頻度等)を含めて、故障事象発生回数として定義している。
【0040】
このため、部品データベース15からステップS13で抽出された故障部品に対応した主要部品32を選択すると、払い出し数(故障発生回数と見做せる)が紐付けられているので、これらを払い出し数が多い順番に表示することが可能となる。
【0041】
「ステップS15」においても、同様に保守結果データベース14に格納されている払い出し数が紐付けられた主要部品から、絞り込まれた複数の故障部品に対応する主要部品を選択して、第1推定故障部品表示部(A)20で、読み出された複数の故障部品が、故障発生数の多い順番で表示される。
【0042】
ここで、「ステップS14」における表示と「ステップS15」における表示は、第1推定故障部品表示部(A)20の表示画面を2分割して表示しても良いし、故障情報入力部19からの切り換え入力によって切り換え表示しても良いものである。
【0043】
このような方法によって、サービス員は、故障発生回数が多い順番に表示された故障部品から、複数個の適切な交換部品を特定して出動できるので、故障個所の予測精度を高めて故障部品の特定が正確に行えるようになる。
【0044】
次に、第2故障部品推定部(B)17によるイベント分析結果を利用して故障部品を絞り込む例について説明する。
【0045】
図4において、先ずサービス員は、顧客から聞き取り(ヒアリング)を行って故障情報を入手する。尚、故障情報は1つだけではなく、複数の異なった故障情報をも含むものである。
【0046】
そして、故障情報の聞き取りに基づいて、サービス員によって故障情報入力部9から「ステップS20」で顧客情報と故障情報(例えば、「印字ができない」、「印字が不安定」、「インクが漏洩する」といった故障情報)が入力される。
【0047】
次に、「ステップS21」において、故障知識データベース13の故障知識データ30を利用して、「ステップS20」で入力された、例えば「印字できない」という故障情報を基にして、「印字ができない」という故障が発生している可能性が高いと推定される複数個の故障影響34を選択する。もちろん「印字が不安定」、「インクが漏洩する」という故障情報においても同様である。
【0048】
次に「ステップS22」において、故障知識データ30の機能故障33の中から、「印字ができない」という故障が発生している可能性が高いと推定される複数個の機能故障33を選択する。この時、「ステップS10」で機能故障33が入力されていれば、入力された機能故障を選択する。
【0049】
機能故障33が選択されると、次に「ステップS23」において、インクジェットプリンタの稼動ログデータ等を入力してイベント分析を行う。イベント分析は、稼動ログデータから、稼動機器の作動毎、或いは単位時間毎の故障イベント発生回数を算出し、故障イベント発生回数の多い特徴イベントを抽出して故障イベント発生回数に応じた前記重み付け値を付与している。この付与された重み付け値は、故障知識データベース30のイベント分析結果を参照値として比較され、今回のイベント分析の重み付け値と近い(偏差が小さい)ほど、その主要部品に故障が発生している可能性が高いと推定される。したがって、この参照値と今回の重み付け値が近い(偏差が小さい)ほど故障が発生していると見做せる。
【0050】
イベント分析が完了すると、次に「ステップS24」においては、故障知識データベース13の故障知識データ30に格納されているイベント分析結果36と、今回のイベント分析結果36のマッチングを行い、双方の重み付け値の偏差が小さい複数個のイベント分析結果36を選択する。
【0051】
次に、「ステップS25」において、「ステップS21」で求められた故障影響34、及び「ステップS22」で求められた機能故障32の一方、或いは両方と、ステップ24で求められたイベント分析結果36のアンド条件から、複数の故障部品を絞り込む。これによって、故障部品の推定精度を高めることができる。
【0052】
複数の故障部品が絞り込まれると、次に「ステップS26」においては、絞り込まれた故障部品について、イベント分析結果36のマッチング結果である重み付け値の偏差が小さい順に並べて、第2推定故障部品表示部(B)22で表示される。
【0053】
更に、
図3の「ステップS14」と同様に、「ステップS27」で部品データベース15に格納されている故障発生数が紐付けられた主要部品から、絞り込まれた複数の故障部品に対応する主要部品を選択し、第2推定故障部品表示部(B)22で、選択された複数の故障部品が、故障発生数の多い順番で表示される。
【0054】
同様に、「ステップS28」において、保守結果データベース14に格納されている故障発生数が紐付けられた主要部品から、絞り込まれた複数の故障部品に対応する主要部品を選択し、第2推定故障部品表示部(B)22で、選択された複数の故障部品が、故障発生数の多い順番で表示される。
【0055】
尚、「ステップS21」や「ステップS22」を省略して、「ステップS23」のイベント分析から故障部品を特定することも可能である。
【0056】
「ステップS26」における表示、「ステップS27」における表示、及び「ステップS28」における表示は、第2推定故障部品表示部(B)の表示画面を3分割して表示しても良いし、故障情報入力部19からの切り換え入力によって切り換え表示しても良いものである。
【0057】
ここで、「ステップS23」におけるイベント分析は、クラスタリングを行ってイベント分析が可能である。今、保守管理支援システム10が稼動することにより、故障知識データ30に記録された、主要部品32、機能故障33、故障影響34が同じ故障において、イベント分析の結果、複数のイベント分析結果36が得られるようになることがある。このため、同じ故障においてもイベント分析結果36の要素Event 1~Event nの重み付け値が異なる場合がある。
【0058】
そこで、
図5に示すように、主要部品32、機能故障33、故障影響34が同じ複数の故障において、イベント要素Even 1~Event n、または、いくつかのイベント要素Eventをグループ化したクラスタCLを形成して、クラスリングした故障情報CL-1~CL-nとする。第2故障部品推定部(B)17のイベント分析で得られたイベント分析結果36を、このクラスタリングした故障情報CLと比較して、イベント分析結果との関連性の高い主要部品32を絞り込むことで、より精度の高い故障部品の推定を行うことができる。
【0059】
図3、及び
図4に示した手法で、故障が推定された複数の故障部品が判明するとサービス員は、この情報を基に以下の作業を実行する。
【0060】
サービス員は、第1推定故障部品表示部(A)20、または、第2推定故障部品表示部(B)22に表示されている故障部品から、いくつかの故障部品を選択して払い出しを受けることで顧客サイトに出動する。
【0061】
また、稼働データが取得できない場合においても、サービス員は第1推定故障部品表示部(A)20に表示された故障部品から、いくつかの故障部品を選択して払出しを受けて顧客サイトに出動する。サービス員は顧客サイトにおいて稼働機器から稼働データを取り出して、保守管理支援システム10に入力することで第2故障部品推定部(B)を動作させることができる。これにより、第2推定故障部品表示部(B)22に表示されている故障部品を確認して、払い出しを受けた故障部品の中からより適切な故障部品を選択することができる。
【0062】
また、顧客サイトでは推定故障部品表示部(A)10、或いは推定故障部品表示部(B)12に表示される故障部品の順で、実機であるインクジェットプリンタの部品を調査することで、故障している部品を効率よく発見することができ、保守管理作業時間を短縮することができる。
【0063】
そして、保守管理作業が終了した後に、サービス員は保守管理作業の詳細や使用部品を、保守作業結果入力部24を利用して入力することで、保守作業報告書が自動作成されて、保守作業報告出力部25で出力される。これにより、サービス員は自分の事務所に戻って保守作業報告書を作成する必要がなくなり、業務の効率化が図れることになる。
【0064】
ここで、サービス員によって故障知識データ30を更新する第1の例を
図6に基づいて説明する。
【0065】
保守管理支援システム10が稼動されることにより、故障知識データ30に記録された主要部品32の同じ故障において、機能故障33、または、故障影響34が故障知識データ30に存在しない場合がある。この場合は、データ更新部18によって新たに故障知識データ30にこれらを追加して更新することが重要である。
【0066】
そこで、データ更新部18を利用して
図6にあるように、「ステップS30」で故障情報の入力をする。この時に、機能故障33や故障影響34に入力された故障情報がない場合は、「ステップS31」及び/又は「ステップS32」を実行する。
【0067】
故障影響34に該当する故障がないときは、「ステップS31」において、故障知識データベース13から故障影響34を抜き出して、予め設定されてる「その他」の項目を選択する。同様に、機能故障33に該当する故障がないときは、「ステップS32」において、故障知識データベース13から機能故障33を抜き出して、予め設定されてる「その他」の項目を選択する。
【0068】
故障影響33、機能故障34の「その他」が選択されると、「ステップS33」においては、この時の故障影響33、及び機能故障34に対応した、機能故障データ、故障影響データ、故障モードデータ、イベント分析結果データを抽出する。更に抽出された各データが、「ステップS34」において、新規の故障番号を付されて(
図2においては、No.15として)、故障知識データ30に追加されて更新される。
【0069】
次に、サービス員によって故障知識データ30を更新する第2の例を
図7に基づいて説明する。
【0070】
保守管理作業が終了した後に、サービス員は保守管理作業の詳細や交換部品を保守作業結果入力部14に入力する。この時、保守管理支援システム10が故障部品として提示した主要部品32と、サービス員が入力した主要部品32が異なる場合がある。この場合は、データ更新部18によって新たに故障知識データ30にこれらを追加して更新することが必要である。
【0071】
そこで、データ更新部18を利用して
図7にあるように、「ステップS40」で保守管理作業結果の作業結果情報の入力をする。次に「ステップS41」において、使用した(交換した)主要部品が、推定された主要部品と同じであればエンドに抜けて処理を終了する。一方、主要部品が推定された主要部品と異なっていれば「ステップS42」を実行する。
【0072】
次に「ステップS42」において、入力した機能故障33が故障知識データ30の機能故障33と同じであればエンドに抜けて処理を終了する。一方、機能故障33が故障知識データ30の機能故障33と異なっていれば「ステップS43」を実行する。
【0073】
次に「ステップS43」において、入力した故障影響34が故障知識データ30の故障影響34と同じであればエンドに抜けて処理を終了する。一方、故障影響34が故障知識データ30の故障影響34と異なっていれば「ステップS44」、及び/又は「ステップS45」を実行する。
【0074】
「ステップS41」~「ステップS43」で「Yes」と判断されて入力された故障影響34に該当する故障影響34が故障知識データ30ないときは、「ステップS44」において、故障知識データベース13から故障影響34を抜き出して、予め設定されてる「その他」の項目を選択する。同様に、入力された機能故障33に該当する機能故障33が故障知識データ30ないときは、「ステップS45」において、故障知識データベース13から機能故障33を抜き出して、予め設定されてる「その他」の項目を選択する。
【0075】
故障影響33、機能故障34の「その他」が選択されると、「ステップS46」においては、この時の故障影響33、及び機能故障34に対応した、機能故障データ、故障影響データ、故障モードデータ、イベント分析結果データを抽出する。更に抽出された各データが、「ステップS47」において、新規の故障番号を付されて(
図2においては、No.15として)、故障知識データ30に追加されて更新される。
【0076】
以上述べた通り、本発明は、故障情報が入力される故障情報入力部と、交換部品と故障事象発生回数が関係づけられたデータを格納する部品データベースと、故障情報と交換部品が関係づけられた故障知識データを格納する故障知識データベースと、前記故障知識データに基づいて故障部品を推定する故障部品推定部と、推定された故障部品を表示する推定故障部品表示部を備える保守管理支援システムであって、故障部品推定部は、故障情報入力部から入力された故障情報に基づいて、故障知識データから故障情報に関連する複数の故障部品を推定し、更に、部品データベースから、推定された故障部品に対応した交換部品を抽出し、抽出された交換部品の故障事象発生回数の多い順番に推定故障部品表示部に表示することを特徴とするものである。
【0077】
これによれば、稼動機器の多くの稼動データを取得することが難しい場合においても、故障個所の予測精度を高めて故障部品の特定が正確に行えるようになる。
【0078】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…保全管理支援システム、11…監視対象機器、12…監視診断データベース、13…故障知識データベース、14…保守結果データベース、15…部品データベース、16…第1故障部品推定部(A)、17…第2故障部品推定部(B)、18…データベース更新部、19…故障情報入力部、20…第1推定故障部品表示部(A)、21…第1故障部品選択部(A)、22…第2推定故障部品表示部(B)、23…第2故障部品選択部(B)、24…保守作業結果入力部、25…保守作業報告出力部、30…故障知識データ、31…部分知識ID、32…主要部品、33…機能故障、34…故障影響、35…故障モード、36、イベント分析結果。