(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-20
(45)【発行日】2026-03-03
(54)【発明の名称】チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/24 20060101AFI20260224BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20260224BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20260224BHJP
【FI】
F16L11/24
F16L11/04
A61M25/00 500
A61M25/00 612
(21)【出願番号】P 2022534135
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025225
(87)【国際公開番号】W WO2022004893
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2020115022
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】田邉 豪
(72)【発明者】
【氏名】山田 直也
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0310326(US,A1)
【文献】特表平09-501759(JP,A)
【文献】特開平07-001630(JP,A)
【文献】特開2012-136020(JP,A)
【文献】特開2019-130880(JP,A)
【文献】特開2007-125694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
F16L 11/24
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層を少なくとも1つ以上有するチュー
ブであって、
該チューブのDSCの昇温過程において、380℃±10℃の範囲に吸熱ピークを有し、
前記PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層全体の平均厚みは100μm以下
であり、
前記層の少なくとも1つ以上の層において、
前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの巻回数が一定ではない
部分を含むことを特徴とするチューブ。
【請求項2】
前記層は、少なくとも1つ以上の層が螺旋状に右巻きで巻回され、少なくとも1つ以上の層が螺旋状に左巻きで巻回されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記PTFEフィルムの厚みが、2μm以上25μm以下であることを特徴とする請求
項1または2に記載のチューブ。
【請求項4】
JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる、引張強さが100N/
mm2以上であることを特徴とする請求項1乃至3
のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項5】
前記層の少なくとも1つ以上の層において、
前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数が最大と最小にて少なくとも0.1回/10mm以上異なっていることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項6】
前記層の少なくとも1つ以上の層において、前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数が最大と最小にて少なくとも10%以上異なっていることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項7】
前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数が最大となる部分の長手方
向の引張弾性率は、前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数が最小と
なる部分の長手方向の引張弾性率より小さいことを特徴とする請求項5または6に記載の
チューブ。
【請求項8】
前記チューブは、一端と他端とを有し、さらに、前記一端と前記他端との間にある中間点を有し、前記一端と前記中間点におけるチューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数は等しく、前記他端のチューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数はこれらより大きいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項9】
前記チューブの前記一端側の長手方向の引張弾性率は、前記他端側の長手方向の引張弾
性率より大きいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項10】
前記チューブの前記他端側は、前記一端側より柔軟性が高いことを特徴とする請求項1
乃至9のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項11】
前記チューブの前記一端側の外径は、前記他端側の外径より大きいことを特徴とする請
求項1乃至10のいずれか一項に記載のチューブ。
【請求項12】
前記チューブの前記一端と前記中間点における外径は等しく、前記他端の外径はこれら
より小さいことを特徴とする請求項11に記載のチューブ。
【請求項13】
前記チューブの前記一端側の前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回
数は、前記他端側の前記チューブの長手方向における長さ10mm当りの卷回数より小さ
いことを特徴とする請求項11または12に記載のチューブ。
【請求項14】
前記チューブは、前記チューブ長手方向における長さ10mm当りの卷回数を変化させ
る範囲に応じて、前記チューブの可撓性が変化することを特徴とする請求項1乃至13の
いずれか一項に記載のチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と言う。)を使用したチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途や耐薬品性が要求される流体の輸送管など、管状体の内層にフッ素樹脂のライニングを設けた製品がある。とくに耐薬品性、クリーン性、非粘着性、低摩擦性などが必要とされる用途に管状体が使用される場合には、ライニングの材質としてPTFEが好適である。たとえば、カテーテル内面の滑り性を向上させる目的で、カテーテルの最内層にPTFEライナーチューブを配置したものなどが知られている。
【0003】
血管内手術などに用いられるカテーテルは、経皮的に体内に挿入して血管を経由し、病変箇所までカテーテル先端を到達させる必要があり、血管内を直進する直進性や術者の操作を伝達する操作伝達性、患者の負担を軽減するために柔軟性などが要求される。すべての要求を満たすために、カテーテルは異なる特性を有する層を積層して構成されており、その中でも最内層のPTFEライナーチューブは、薄肉でありながら、高い引張強さと伸張性、耐クラック性、耐圧、耐座屈性などの機械的強度に優れることが求められる。
【0004】
PTFEライナーチューブの製造方法の一つに、金属線などの芯線上にPTFE分散液をディップコートし、乾燥、焼結した後に芯線を引き抜いて成形する方法がある(例えば特許文献1参照)。また、PTFEパウダーと助剤と呼ばれる有機溶剤を混合したペーストを芯線上に押出成形し、乾燥、焼結した後に芯線を引き抜いて成形する方法がある(例えば特許文献2参照)。特許文献1や特許文献2の方法で成形したPTFEライナーチューブは機械的強度が低く、このライナーチューブをカテーテルの最内層に使用した場合に、カテーテル内表面と挿通物(治療具など)との摩擦によって、PTFEライナーの裂けや裂断などの損傷、ライナーチューブが伸びて内径が減少し挿通物が噛み込む、などのトラブルが生じる可能性がある。
【0005】
また、PTFEライナーチューブの他の製造方法として、PTFEパウダーと助剤を混合したペーストをチューブ状に押出成形した後に、成形したライナーチューブを長手方向に延伸して薄肉化しチューブの引張強さを向上させる方法がある(特許文献3参照)。この方法で成形したPTFEライナーチューブは、高い引張強さが得られるが伸張性に乏しく、柔軟性に劣るという問題があった。柔軟性に劣るチューブは、曲げ半径を小さくするときに強い操作力が必要となり、また、硬いために座屈しやすく、座屈によるチューブの閉塞や挿通物の噛み込みなどのトラブルが生じる原因となる。特許文献4には、高い引張強さと伸張性を有する薄肉のPTFEチューブが開示されているが、より高い性能が要求される用途においては、そのチューブの柔軟性は十分とは言えなかった。
【0006】
さらに、カテーテルの先端部の屈曲性を向上させるために、テーパー形状としたカテーテルがある。テーパー形状としたカテーテルに使用するPTFEライナーチューブは、テーパー形状となった芯線の上にチューブを延伸して縮径させながら被覆して用いられる。チューブをテーパー形状にすることで、その形状部分の屈曲性を向上させようとするものだが、PTFEチューブは延伸してしまっていることで柔軟性が減少し期待されるだけの効果が十分に得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000‐316977号公報
【文献】特開2013‐176583号公報
【文献】特開2004‐340364公報
【文献】特許第6244490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の問題に鑑み、本発明は、PTFEを使用した薄肉のチューブにおいて、高い引張強さを保ちながら、柔軟性が調整されたチューブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題は、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層を少なくとも1つ以上有
するチューブであって、該チューブのDSCの昇温過程において、380℃±10℃の範囲に吸熱ピークを有し、前記層の少なくとも1つ以上の層において、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が一定ではない部分を含むチューブによって解決することができる。
【0010】
また、上記PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層が2つ以上の層からなる場合、少なくとも1つ以上の層が螺旋状に右巻きで巻回され、且つ少なくとも1つ以上の層が螺旋状に左巻きで巻回されていることが好ましい。
【0011】
また、上記層は、平均厚みが3μm以上75μm以下であることがより好ましい。
【0012】
また、上記チューブは、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験で得られる、引張強さが100N/mm2以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の課題は、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層を少なくとも1つ以上有するチューブであって、該チューブのDSCの昇温過程において、380℃±10℃の範囲に吸熱ピークを有し、該層の少なくとも1つ以上の層において、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が最大と最小にて少なくとも0.1回/10mm以上異なっているチューブにより解決することができる。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成とすることで、チューブ全体において高い引張強さを保ちながら、チューブ長手方向において柔軟性を調節することが可能であり、可撓性に優れたチューブとすることができる。本発明のチューブは、チューブを薄肉で構成することが可能であり、柔軟性と細径化を必要とされる管状体のライナーチューブなどとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2は、本発明のチューブの一例を表す図である。
【
図3】
図3は、本発明のチューブのPTFE層の構造を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、本発明のチューブのPTFEフィルムの巻回構造を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明のチューブに関するパラメーターを説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明のチューブのフィルムの巻回数の数え方を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明のチューブのフィルムの巻回数を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、フィルムを螺旋状に巻回して作成される従来のチューブを表す図である。従来のチューブは、チューブ全長に亘って一定の巻回数でフィルムを巻回して形成されている。本発明のチューブは、フィルムの巻回数が長手方向において一定ではない部分を含むことが好ましい。以下、本発明の好適な実施形態のチューブについて説明する。
図2は、本発明のチューブの一例を表す図である。
図2aと
図2bのチューブは、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層を少なくとも1つ以上有するチューブである。
図2の例では、チューブの少なくとも最外層はPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成されており、左側のフィルム巻回数が右側のフィルム巻回数よりも多くなっている。これにより、チューブ全体の引張強さが保たれながら左側の柔軟性が向上されたチューブとなっている。本発明のチューブは、この層以外に、さらにPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層、PTFEのシームレスフィルムで形成される層、PTFEフィルムをシガレット巻きして形成した層、またはPTFE以外の樹脂で形成される層などを設けてもよい。また、
図2は、チューブ左側の外径が右側の外径よりも細い形状のチューブの例となっているが、これに限ったものではなく外径が一定のものでもよい。
【0017】
図3は、本発明のPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層を少なくとも1つ以上有するチューブについて、PTFEフィルムを巻回した構造を説明する模式図である。
図3aの例では、芯線2の外周上に、第1層としてフィルム111aが螺旋状に巻回されており、それより外側に第2層としてフィルム121aが螺旋状に隙間を空けて巻回されている。
図3bの例では、芯線2の外周上に、第1層として円筒状のPTFEフィルム111bが配置されており、それより外側に、第2層としてフィルム121bが螺旋状に巻回されている。
図3の例では、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層は1層または2層で構成しているが、本発明のチューブは、この層が3層以上の層から構成されていてもよい。また、本発明のチューブは、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層の内側または外側に、PTFEまたはPTFE以外の樹脂の層を積層したものであってもよい。
【0018】
本発明のチューブのPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層は、その平均厚みが薄いことが好ましい。本発明のチューブのPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層全体の平均厚みは100μm以下であることが好ましく、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される1つの層の平均厚みは3μm以上75μm以下であることが好ましい。その1つの層の平均厚みは5μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
図4は、本発明のチューブのPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層の構造を説明する図である。本発明においては、“PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層を1つ以上有する”とは、1枚のPTFEフィルムが螺旋状に巻回されて形成される層を1つ以上有することを表す。本発明において1枚のフィルムとは、複数枚のフィルムを積層して同じ角度で巻回しているものも含む。例えば
図4の例は、芯線2の外周上に、第1層210がPTFEフィルム211を螺旋状に巻回して形成されている。それより外側に、第2層220がPTFEフィルム221を螺旋状に巻回して形成されている。PTFEフィルム211は、1枚のPTFE製のフィルム211aと1枚の熱可塑性フッ素樹脂製のフィルム211bとが積層されて構成されている。第2層220のPTFEフィルム221は、1枚のPTFE製のフィルム221aから構成されている。
【0020】
本発明のチューブは、フィルムを螺旋状に巻回して形成される層が2つ以上ある場合には、少なくとも1つの層は右巻きで巻回され、且つ少なくとも1つの層は左巻きで巻回されていることがより好ましい。
図4の例ではフィルムを螺旋状に巻回して形成される層が2層ある。第1層210のフィルム211は左巻き(S巻き)、第2層220のフィルム221は右巻き(Z巻き)で巻回されている。このような構造により、チューブの機械的強度を調整しやすくすることができる。
【0021】
本発明のチューブは、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層のうち少なくとも1つ以上の層において、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が一定ではないことが好ましい。1本のチューブの中でチューブ長手方向における長さ10mm当りの巻回数を変化させるには、例えば、芯線の周囲にフィルムを巻回する工程において、芯線を一定速度で送り出しながらフィルムを巻回する速度を変化させることでも実現できる。このとき、テーパー形状とした芯線を用いると、フィルムの巻回数を変化させる調整がしやすくなる。
【0022】
本発明のチューブに使用するPTFEフィルムを構成するPTFE製のフィルムは、高密度のPTFEから構成されていることが好ましい。高密度のPTFEを含むことは、高い気密性と機械的強度を得るのに有利である。高密度のPTFEから構成されるフィルムは、例えば、以下のように作成することができる。PTFE樹脂のファインパウダーと、助剤(ソルベントナフサやホワイトオイル等の潤滑剤)とを混合し、圧縮してできた予備成形品を押出機に投入してフィルム状に成形し、それを乾燥させる。乾燥させると、フィルム状に成形した成形物中の助剤が揮発して、フィルム中に細孔を有する未焼成PTFE製のフィルムが得られる。未焼成のPTFE製のフィルムを融点以上の温度に加熱して焼成すると、フィルム中の細孔が消滅し、高密度のPTFE製のフィルムとなる。このとき、加圧ロールを通してさらにフィルムを圧縮することもできる。また、上述の未焼成のPTFE製のフィルムを融点以下の温度で加熱しながら一軸または二軸方向に延伸し、多孔質構造のPTFEフィルムを作成したあとで、加圧して高密度のPTFE製のフィルムとすることもできる。本発明のチューブに使用するPTFEフィルムには、延伸して多孔質構造とした後で加圧して高密度化したPTFE製のフィルムを用いることが好ましい。加圧して高密度化したフィルムは、焼成して用いてもよい。作成したフィルムは、一般に、適当な幅にスリットして使用する。また、上述の多孔質構造のPTFE製のフィルムを、例えば、芯線の外周上に螺旋状に巻回したあとに、リング状のダイスを通過させて加圧し、多孔質構造から高密度のPTFEに変えることもできる。
【0023】
本発明のチューブに使用するPTFEフィルムには、必要に応じてフィラーまたはその他の樹脂が含まれていても良い。フィラーとして、例えば、カーボン、アルミナなどの金属酸化物及び樹脂フィラーが挙げられ、その他の樹脂として、例えば、熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。これらは、1種類または複数種類を合わせて使用することが出来る。
【0024】
本発明のチューブに使用するPTFEフィルムは、上述のようにPTFE製のフィルムと熱可塑性フッ素樹脂製のフィルムとを積層して構成してもよい。熱可塑性フッ素樹脂製のフィルムの材料として使用するフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のような、PTFEの結晶融点よりも融点が低い樹脂が好ましい。PTFE製のフィルムと熱可塑性フッ素樹脂製のフィルムとを積層してPTFEフィルムとする場合、そのそれぞれの樹脂製のフィルムの厚さ(の合計)の比率は、(PTFE樹脂/熱可塑性フッ素樹脂)=10/1~1/1の範囲が好ましい。
【0025】
本発明のチューブに使用するPTFEフィルムは、厚みが2μm以上25μm以下であることが好ましく、3μm以上25μm以下であることがより好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。フィルムの厚みが薄いほど、フィルムを螺旋状に巻回したときにフィルムの巻目の段差が小さく、チューブの表面への影響が小さくなるなどチューブの特性に有利となるが、フィルムの厚みが薄くなりすぎるとフィルムを巻回するときに、フィルムのしわや破れが発生しやすくなる虞がある。
【0026】
本発明のチューブに使用するPTFEフィルムの幅は、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層の内径とその層の厚さ、PTFEフィルムの巻回数などに応じて決めることができる。
図5は、本発明のチューブに使用するPTFEフィルムの幅を決めるときに考慮するパラメーターを説明した図である。PTFEフィルムを巻回する芯線2の外径(PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層の内径)をD、PTFEフィルム311の巻き角度をα、芯線2の外周をPTFEフィルム311が1周巻回されたときに進む距離をp、巻回されたPTFEフィルム311同士の重なり量をbとしたとき、フィルム311の幅Wは、下式で求められる。ここで、フィルムの巻き角度αは、芯線2の中心軸Aと、PTFEフィルム311の長手方向に沿った中心線Bとに挟まれた角度であり、0度より大きく90度より小さい角度とする。
p=πD/tanα
W=(p+b)sinα
【0027】
本発明のチューブは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において380℃±10℃の範囲に吸熱ピークを有していることが好ましい。PTFEの成形品についてDSCを行うと、その結晶構造の違いにより低温側と高温側の2つの吸熱ピークが観察されることがある。一般に、380℃付近に現れる高温側の吸熱ピークは、PTFEの伸びきり鎖結晶由来の吸熱ピークであるとされている。本発明のチューブに使用するPTFEフィルムは、先述のように一軸または二軸方向に延伸して多孔質構造フィルムとした後に、加圧して高密度のPTFE製のフィルムとしたものを含むことが好ましく、380℃±10℃の範囲の吸熱ピークは、PTFEを延伸することでも観測されるようになる。
【0028】
本発明のチューブのPTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層は、チューブの長手方向における長さ10mm当りの巻回数が、0.3~10回/10mmであることが好ましく、0.5~8回/10mmであることがより好ましい。フィルムを螺旋状に巻回して形成されるすべての層においてフィルムの巻回数はそろえる必要はなく、各層を異なる巻回数で構成してよい。
【0029】
また、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成される層の少なくとも1つ以上の層において、チューブの長手方向における長さ10mm当りの巻回数は、最大と最小で少なくとも0.1回/10mm以上異なっていることが好ましく、0.5回/10mm以上異なっていることがより好ましく、1.0回/10mm以上異なっていることがさらに好ましい。このとき、チューブの長手方向におけるフィルムの10mm当りの巻回数の変化率((((フィルムの10mm当りの巻回数の最大値)-(フィルムの10mm当りの巻回数の最小値))/(フィルムの10mm当りの巻回数の最小値))×100)(%)は、10%~800%の範囲であることが好ましく、50%~700%の範囲であることがより好ましい。各層においてフィルムの巻回数の最大と最小の差または変化率が異なるように構成してもよく、各層においてチューブ長手方向における巻回数を変化させる範囲または位置が異なるように構成してもよい。チューブ長手方向でフィルムの巻回数を変化させることにより、チューブ長手方向で柔軟性が調節できる。また、本発明のチューブは、チューブ全体において引張強さが維持されている。例えば
図2に示した実施形態では、チューブ右側は高い引張強さを有しており、チューブ左側はその引張強さを保ちながらチューブの柔軟性が向上している。
【0030】
本発明のチューブの製造方法について以下の実施例でより詳細に説明する。以下の実施例は、発明を例示するものであって、本発明の内容をこれによって限定する意図ではない。
【実施例】
【0031】
実施例1
<チューブの作成>
外径が1.0mmの芯線を準備した。芯線の左側の端部の外径は0.5mmであり、外径1.0mmの部分から左側の端部へ向けて、0.72度の角度で外径が変化していることを確認した。第1層目のPTFEフィルムとして、厚さ7μmのPTFE製のフィルムを準備した。また、第2層目のPTFEフィルムとして、厚さ6μmのPTFE製のフィルムと厚さ8μmのPFA製のフィルムを積層したものを準備した。
準備した芯線を一定速度で送り出し、芯線の外径1.0mmの部分の外周上に、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が0.85回/10mmになるように1層目のPTFEフィルムを螺旋状に巻回した。外径1.0mmの部分から左側の端部にかけて芯線の外径が変化する部分では、PTFEフィルムを巻回する速度を変化させて、左側の端部の長手方向における長さ10mm当りの巻回数が3.50回/10mmになるようにPTFEフィルムを巻回した。
1層目が形成された芯線の上に、2層目を積層した。具体的には、芯線の外径が1.0mmの部分では、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が0.80回/10mmになるように2層目のPTFEフィルムを螺旋状に巻回し、また、外径1.0mmの部分から左側の端部にかけて芯線の外径が変化する部分では、PTFEフィルムを巻回する速度を変化させて、左側の端部の長手方向における長さ10mm当りの巻回数が3.25回/10mmになるように2層目のPTFEフィルムを螺旋状に巻回した。
1層目と2層目のPTFEフィルムが積層された芯線を、380℃に加熱したオーブンの中を通過させて焼成し、空冷した。その後、芯線のみを延伸して外径を縮小させて、積層して焼成したPTFEフィルムから芯線を抜き取り、チューブとした。
作成したチューブの長手方向における長さ10mm当りの巻回数は、最大と最小にて、1層目で2.65/10mm、2層目で2.45回/10mm異なっていた。
<示差走査熱量測定(DSC)>
上記で作成したチューブサンプルについて、NETZSCH JAPAN製 DSC3200SAを用いて、DSCを行った。チューブを5mg切り取り、カバー付きアルミニウム製のサンプルパンに封入して、室温から400℃まで、昇温速度10℃/minで昇温させて測定を行った。
実施例1で作成したチューブのDSC曲線から、378.3℃に吸熱ピークが現れることを確認した。
<PTFEフィルムの巻回数>
図6は、本発明のチューブについて、PTFEフィルムの巻回数の数え方を説明する図である。
図6は、PTFEフィルムを螺旋状に巻回して形成された層を、横から見たときの模式図である。“長手方向における長さ10mm当りの巻回数”とは、チューブの中心軸A上での長さ10mmの区間において、PTFEフィルムが何回、巻回されているかを表している。
図6において、Xの位置の巻回数を数える場合、チューブの中心軸A上で、Xを中心に約10mmの範囲の巻回数を数える。テープのラップ目を使って数えると容易なため、例えば10mmの範囲(x1とx2の間)を超えて一番近いラップ目y1とy2の間の巻回数を数えて、10mm当たりの巻回数に換算する。y1とy2の間の巻回数は5回であり、y1とy2の間隔は12mmである。このとき、長手方向における長さ10mm当りの巻回数は、
(5回/12mm)×10mm=4.17回/10mm
となる。
図7aは、実施例1のチューブの芯線の外径1.0mmの部分の第1層を表している。上述のように計算すると、PTFEフィルムの長手方向における長さ10mm当りの巻回数は0.85回/10mmである。また、
図7bは、実施例1のチューブの左側の端部の第1層を表している。上述のように計算すると、PTFEフィルムの長手方向における長さ10mm当りの巻回数は3.50回/10mmである。実施例1で作成したチューブは、芯線の外径1.0mmの部分と左側の端部でPTFEフィルムの巻回数が変化しており、チューブ左側の端部の柔軟性が向上している。
<引張試験>
島津製作所製 オートグラフAGS‐1kNX型を用い、23℃±2℃の環境下において、JIS K7127‐1999に準拠した引張試験を行った。引張試験のサンプルにはチューブをそのまま使用し、試験速度50mm/min、チャック間距離20mmとし、チャック間をサンプル標線間(すなわち、標線間距離20mm)として測定した。
実施例1で作成したチューブについて、チューブ左側の端部から35mmの範囲をチューブの左側の端部の引張試験のサンプルとし、チューブの右側の端部から35mmの範囲をチューブの右側の端部の引張試験のサンプルとした。両方のサンプルは、サンプル標線間の中心付近の長手方向における長さ10mm当たりの巻回数を、先述の方法で確認してから引張試験を行った。また、サンプル標線間の中心付近のチューブ外径と肉厚を測定してチューブ断面積を求め、それを引張試験サンプルの断面積とした。引張試験のサンプルは、チューブ全体のうち、可能な範囲で巻回数が最大と最小の部分を含むように選択することが好ましい。
引張試験のサンプルの両端を標線まで引張試験機のチャックに挟み込んで固定し、引張試験を行った。
実施例1チューブの右側の端部の引張強さは247.6N/mm
2であり、長手方向における長さ10mm当たりの巻回数を変化させた左側の端部の引張強さは331.1N/mm
2、であり、100N/mm
2以上でチューブ全体の引張強さが保たれていることが確認できた。
また、得られた測定値から、チューブの歪みが2.5%~5.0%まで変位したときの引張応力の変化量を確認した。チューブ左側の端部の歪み2.5%のときの応力σ
2.5は、42.8N/mm
2、歪み5.0%のときの応力σ
5.0は、69.8N/mm
2であり、引張応力の変化率Eは E=応力変化量/変位量=(σ
5.0-σ
2.5/0.025)=27.0/0.025=1080N/mm
2 であった。実施例1のチューブの右側の端部の引張試験サンプルの歪み2.5%のときの応力σ
2.5は、39.7N/mm
2、歪み5.0%のときの応力σ
5.0は、89.4N/mm
2であり、引張応力の変化率Eは E=応力変化量/変位量=(σ
5.0-σ
2.5/0.025)=49.7/0.025=1988N/mm
2 であった。この引張応力の変化率はチューブの引張弾性率を相対的に評価するときの指標となる。実施例1のチューブでは、長手方向における長さ10mm当たりの巻回数を変化させることなどにより、チューブ長手方向において引張弾性率が2倍近く変化していることが確認された。
【0032】
実施例2
<チューブの作成>
外径が1.0mmの芯線を準備した。芯線の左側の端部の外径は0.75mmであり、外径1.0mmの部分から左側の端部へ向けて、0.36度の角度で外径が変化していることを確認した。第1層目のPTFEフィルムとして、厚さ7μmのPTFE樹脂フィルムを準備した。また、2層目のPTFEフィルムとして、厚さ6μmのPTFE樹脂フィルムを準備した。
準備した芯線を一定速度で送り出し、芯線の外径1.0mmの部分の外周上に、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が0.84回/10mmになるように1層目のPTFEフィルムを螺旋状に巻回した。外径1.0mmの部分から左側の端部にかけて芯線の外径が変化する部分では、PTFEフィルムを巻回する速度を変化させて、左側の端部の長手方向における長さ10mm当りの巻回数が1.95回/10mmになるようにPTFEフィルムを巻回した。
1層目が形成された芯線の上に、2層目を積層した。具体的には、芯線の外径が1.0mmの部分では、長手方向における長さ10mm当りの巻回数が0.85回/10mmになるように2層目のPTFEフィルムを螺旋状に巻回して積層し、また、外径1.0mmの部分から左側の端部にかけて芯線の外径が変化する部分では、PTFEフィルムを巻回する速度を変化させて、左側の端部の長手方向における長さ10mm当りの巻回数が1.88回/10mmになるように2層目のPTFEフィルムを螺旋状に巻回した。
1層目と2層目のPTFEフィルムが積層された芯線を、380℃に加熱したオーブンの中を通過させて焼成し、空冷した。その後、芯線のみを延伸して外径を縮小させて、積層して焼成したPTFEフィルムから芯線を抜き取り、チューブとした。
作成したチューブの長手方向における長さ10mm当りの巻回数は、最大と最小にて、1層目で1.11/10mm、2層目で1.03回/10mm異なっていた。
実施例1と同様に、作成したチューブについてDSCを行った。DSC曲線から、379.7℃に吸熱ピークが現れることを確認した。
また、実施例1と同様に、作成したチューブについて引張試験を行った。
実施例2チューブの右側の端部の引張強さは248.4N/mm2であり、長手方向における長さ10mm当たりの巻回数を変化させた左側の端部の引張強さは343.2N/mm2、であり、チューブ全体の引張強さが維持されていることが確認できた。また、チューブ左側の端部の歪み2.5%のときの応力σ2.5は、44.8N/mm2、歪み5.0%のときの応力σ5.0は、86.9N/mm2であり、引張応力の変化率Eは E=応力変化量/変位量=(σ5.0-σ2.5/0.025)=42.1/0.025=1684N/mm2 であった。実施例1のチューブの右側の端部の引張試験サンプルの歪み2.5%のときの応力σ2.5は、50.5N/mm2、歪み5.0%のときの応力σ5.0は、100.4N/mm2であり、引張応力の変化率Eは E=応力変化量/変位量=(σ5.0-σ2.5/0.025)=49.9/0.025=1996N/mm2 であった。実施例2のチューブ長手方向において、チューブの引張弾性率が変化していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のチューブは、薄肉で、チューブ全体で高い引張強さを保ちながら、チューブ長手方向において柔軟性を調節することが可能であり、柔軟性と細径化を必要とされる管状体のライナーチューブなどとして好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 本発明のチューブ、 111a,121a フィルム、 2 芯材