(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-24
(45)【発行日】2026-03-04
(54)【発明の名称】断熱容器および断熱容器用外装紙
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20260225BHJP
【FI】
B65D81/38 E
(21)【出願番号】P 2021160259
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】片岡 貴世
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 亮介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-160179(JP,A)
【文献】特開2000-085852(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006025612(DE,A1)
【文献】特開2005-139582(JP,A)
【文献】特開昭61-006400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体と,上記容器本体の胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の紙製の外装スリーブとを備え,
上記外装スリーブが,植物繊維および
ポリエチレン多分岐繊維の合成紙から構成され,上記合成紙において上記植物繊維と上記
ポリエチレン多分岐繊維が絡み合わされて膠着されており,
上記植物繊維の重量比が50%を超えかつ85%以下であり,残部が
ポリエチレン多分岐繊維である,
断熱容器。
【請求項2】
筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体と,上記容器本体の胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の紙製の外装スリーブとを備え,
上記外装スリーブが,植物繊維および
ポリエチレン多分岐繊維の合成紙から構成され,上記合成紙において上記植物繊維と上記
ポリエチレン多分岐繊維が絡み合わされて膠着されており,
50%を超える重量比の植物繊維を含みかつ給水率が50%以下である,
断熱容器。
【請求項3】
筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体の上記胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の外装スリーブを形成する外装紙であって,
植物繊維および
ポリエチレン多分岐繊維の合成紙から構成され,上記合成紙において上記植物繊維と上記
ポリエチレン多分岐繊維が絡み合わされて膠着されており,
上記植物繊維の重量比が50%を超えかつ85%以下であり,残部が
ポリエチレン多分岐繊維である,
断熱容器用外装紙。
【請求項4】
筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体の上記胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の外装スリーブを形成する外装紙であって,
植物繊維および
ポリエチレン多分岐繊維の合成紙から構成され,上記合成紙において上記植物繊維と上記
ポリエチレン多分岐繊維が絡み合わされて膠着されており,
50%を超える重量比の植物繊維を含みかつ給水率が50%以下である,
断熱容器用外装紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は断熱容器および断熱容器用外装紙に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱容器は,一般に,胴部および底部を有する容器本体と,この容器本体の外側に装着される筒状の外装スリーブとから構成され,容器本体の胴部と外装スリーブとの間に空隙を設け,この空隙により断熱性を持たせている。近年では,焼却時の二酸化炭素の排出量を削減するためにプラスチック製に代えて紙製の断熱容器が主流になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
紙製容器は水に濡れるとしみや破れが発生しやすい。流通形態が冷凍の場合には結露が生じやすく,結露が生じた場合も同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は,紙製の断熱容器に耐水性を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による断熱容器は,筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体と,上記容器本体の胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の紙製の外装スリーブとを備え,上記外装スリーブが,植物繊維および熱可塑性樹脂繊維を絡み合わせて膠着させた合成紙から構成され,上記植物繊維の重量比が50%を超えかつ85%以下であり,残部が熱可塑性樹脂繊維であることを特徴とする。
【0007】
この発明による断熱容器は次のようにも規定することができる。この発明による断熱容器は,筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体と,上記容器本体の胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の紙製の外装スリーブとを備え,上記外装スリーブが,植物繊維および熱可塑性樹脂繊維を絡み合わせて膠着させた合成紙から構成され,50%を超える重量比の植物繊維を含みかつ給水率が50%以下であることを特徴とする。
【0008】
植物繊維は木材等を原料するもので,針葉樹クラフトパルプ,広葉樹クラフトパルプ,その他の天然パルプを使用することができる。
【0009】
熱可塑性樹脂繊維は,たとえばポリエチレンから製造されるポリオレフィン多分岐繊維であり,一例として三井化学株式会社からSWPの商品名で市販されているものを用いることができる。
【0010】
給水率は,外装スリーブの小片を水に浸漬することで給水量(g)を計測し,給水量を浸漬前の紙片重量によって除算して 100を乗算した値である。吸水率が大きければ大きいほど水を吸収しやすく,小さければ小さいほど水を吸収にしにくい,すなわち耐水性を有することを意味する。
【0011】
この発明による断熱容器を構成する外装スリーブは50%を超える重量比の植物繊維を含むので「紙」に分類される。
【0012】
外装スリーブが被せられる容器本体も紙製である。容器本体は,外装スリーブと同じ合成紙から構成してもよいし,別の板紙から構成してもよい。たとえば,容器本体には,植物繊維から構成される板紙の内面および/または外面に合成樹脂の保護膜を被覆したものを用いてもよい。容器本体も紙製であり50%を超える重量比の植物繊維を含む。
【0013】
この発明によると,断熱容器を構成する紙製の外装スリーブに耐水性が付与されているので,水に濡れてもシミ,破れが発生にしにくい。水に強い断熱容器が提供される。
【0014】
この発明は,上述した断熱容器に用いられる外装スリーブを形成する外装紙も提供する。この発明による外装紙は,筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体の上記胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の外装スリーブを形成する外装紙であって,植物繊維および熱可塑性樹脂繊維を絡み合わせて膠着させた合成紙から構成され,上記植物繊維の重量比が50%を超えかつ85%以下であり,残部が熱可塑性樹脂繊維であることを特徴とする。
【0015】
この発明による外装紙は次のように規定することもできる。すなわち,この発明による外装紙は,筒状の胴部および上記胴部の下面を閉鎖する底部を備える紙製の容器本体の上記胴部の外側との間に断熱空間を形成するように上記胴部に被せられかつ固定される,下端周縁部に内向きカール部を有する筒状の外装スリーブを形成する外装紙であって,植物繊維および熱可塑性樹脂繊維を絡み合わせて膠着させた合成紙から構成され,50%を超える重量比の植物繊維を含みかつ給水率が50%以下である。
【0016】
水に濡れてもシミ,破れが発生にしにくい外装スリーブに好適な外装紙が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
【0019】
断熱容器1は,容器本体を構成する胴部12および底部13と,外装スリーブ14とを備えている。
【0020】
胴部12は上部の径が大きく,下にいくほど径の小さくなる円錐台状の筒状のもので,開口する上面から内容物が収納される。胴部12の上端周縁部は外側に向けて巻かれ,いわゆる外向きカール部12Aが形成されている。底部13は円形で,その周縁部が下方に屈曲されている(屈曲部13A)。底部13は胴部12の下面開口内にぴったりと嵌り,胴部12の下端部が内側に折り返され(折り返し部12B),この折り返し部12Bが底部13の屈曲部13Aを挟んでいる。底部13の屈曲部13Aの内外両面と,これを挟む胴部12の下端部の内面とは接着または溶着され,胴部12の下端開口は底部13によってしっかりと塞がれる。
【0021】
外装スリーブ14が容器本体の胴部12の外側に装着される。外装スリーブ14は,弧状に形成された外装紙の側部同士を接着して筒状としたものである。弧状に形成された外装紙の側部同士を接着して筒状にすると,胴部12と同様に,上部の径が大きく,下にいくほど径が小さくなる円錐台状になる。外装スリーブ14の下端周縁部が内側に巻かれることで,外装スリーブ14の下端周縁部に内向きカール部14Aが形成される。
【0022】
外装スリーブ14の高さは胴部12の高さよりもやや低い。外装スリーブ14内に,底部13を有する胴部12を上から入れる(嵌入する)。外装スリーブ14の上端部が胴部12の外向きカール部12Aと胴部12との間のすき間に入り込み,外装スリーブ14の下端周縁部の内向きカール部14Aが,胴部12の糸じり部分の外面に接触する。外装スリーブ14の上端部および内向きカール部14Aの一方または両方を胴部12に接着して,外装スリーブ14を胴部12にしっかりと固定してもよい。
【0023】
外装スリーブ14の下端周縁部に内向きカール部14Aが形成されているので,外装スリーブ14と容器本体の胴部12の間には隙間が形成され,この隙間が胴部12の外面と外装スリーブ14の内面との間の断熱空間Dとなる。容器本体内に注がれた熱湯等の熱が直接に手に伝わらず,持ちやすい。
【0024】
容器本体(胴部12および底部13)は紙製であり,必要に応じてその内面および/または外面に保護膜(樹脂膜,樹脂フィルム等)が被覆される。保護膜の具体例としては,たとえばポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリエステル,エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは熱シールによる貼り合わせにも用いることができる。
【0025】
他方,外装スリーブ14は,紙(植物繊維)(典型的にはパルプ繊維)を主成分(重量比50%超)とし,これにポリオレフィン多分岐繊維,たとえばポリエチレン(PE)繊維が混合された合成材料から作られる。ポリエチレン繊維は熱を加えると軟化する熱可塑性樹脂繊維の一つであり耐水性を持つ(吸水率がゼロに近い)。
【0026】
図2~
図4は外装スリーブ14の拡大写真である。
図2はポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比が15:85のものを,
図3はポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比が30:70のものを,
図4はポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比が49:51のものを,それぞれ示している。
【0027】
拡大写真から分かるように,外装スリーブ14は,紙にポリエチレンを積層したもの(紙の内面/外面にポリエチレンを被覆したもの)ではなく,紙を構成する植物繊維(
図2~
図4の例ではパルプ繊維)と,熱可塑性樹脂繊維(
図2~
図4の例ではポリエチレン繊維)とを絡み合わせて膠着させた合成紙から構成される。
【0028】
【0029】
給水量測定試験では,パルプ繊維のみを含む5cm角の紙片(コートボール紙)(比較例1),ポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比を15:85にした5cm角の合成紙片(実施例1),ポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比を30:70とした5cm角の合成紙片(実施例2),およびポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比を49:51とした5cm角の合成紙片(実施例3)を用意し,これらの重量(浸漬前)およびこれらを水に3分間浸漬した後(浸漬後)の重量をそれぞれ測定した。
図5において給水量(g)には浸漬後の重量から浸漬前の重量を減算した値が示されている。吸水量(g/m
2)には単位面積当たりの給水量(給水量(g)を5cm角の紙片の面積(0.0025m
2)によって除算した値)が示されている。給水率(%)は給水量(g)を浸漬前の紙片の重量(g)によって除算して100を乗算した値である。
【0030】
ポリエチレン繊維を含まないコートボール紙は多くの水を吸収する(比較例1)。これに対し,ポリエチレン繊維を含む合成紙の吸収量および吸水率はコートボール紙に比べて格段に少なくなっている(実施例1~3)。
【0031】
パルプ繊維とポリエチレン繊維をほぼ半量ずつにすると(実施例3),ほとんど吸水されない程度にまで給水量は少なくなった(測定限界以下。
図5において「N/A」と記載)。ポリエチレン繊維とパルプ繊維の重量比が49:51の外装スリーブはパルプ繊維が大半を占めるので「紙」に分類することができるものであり,かつ耐水性に優れている。
【0032】
ポリエチレン繊維の重量比が小さすぎると,吸水量がコートボール紙に近づくことになり,水に濡れたときにしみや破れが発生しやすくなる。ポリエチレン繊維を15%程度混合すると(実施例1),吸水率は50%となりコートボール紙に比べて耐水性が大幅に向上し,水に濡れてもしみは発生しにくく,破れにくくもなる。ポリエチレン繊維が15%未満になると,時間が経過するにしたがって水に浸漬させた紙片にコシがなくなり,水が染み込みやすくしみも発生しやすくなった。ポリエチレン繊維の重量比は15%以上(すなわちパルプ繊維の重量比は85%以下)とするのが適当である。
【符号の説明】
【0033】
1 断熱容器
12 胴部
13 底部
14 外装スリーブ
14A 内向きカール部
D 断熱空間