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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-26
(45)【発行日】2026-03-06
(54)【発明の名称】落下性能が改善されたガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20260227BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20260227BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20260227BHJP
【FI】
C03C21/00 101
G09F9/00 302
G09F9/00 313
H05K5/02 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020565350
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2019034273
(87)【国際公開番号】W WO2019231967
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-25
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】62/678,560
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】レッツィ,ピーター ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジエン
(72)【発明者】
【氏名】ルセフ,ロスチラフ ヴァチェフ
【合議体】
【審判長】深草 祐一
【審判官】増山 淳子
【審判官】宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537862号公報(JP,A)
【文献】特表2015-520097号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
を含み、
IC ×DOC/t×√STE≧7.0×1011Pa2.51.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、tはメートルで表される前記ガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーであって、
5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、ガラス系物品。
【請求項2】
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
を含み、
IC ×DOC×√STE≧5.6×10Pa2.52.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、tはメートルで表される前記ガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーであって、
5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、ガラス系物品。
【請求項3】
ガラス系物品において、
全ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
を含み、
IC ×DOC×H/E×√STE≧4.1×10Pa2.52.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、Hは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーであって、
5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、ガラス系物品。
【請求項4】
75μm≦DOC≦300μmである、請求項1から3いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項5】
0.1t≦DOC≦0.4tである、請求項1から4いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項6】
95MPa以上の最大中央張力CTを有する、請求項1から5いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項7】
tがmmで表される、120/√tMPa以下の最大中央張力CTを有する、請求項1から6いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項8】
前記ガラス系物品が1.0mm以下の厚さtを有する、請求項1から7いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項9】
前記圧縮応力層が、100MPa以上から1300MPa以下の圧縮応力CSを有する、請求項1から8いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項10】
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、
0.75MPa√m以上から1.5MPa√m以下のKIC
6.0GPa以上から8.0GPa以下の硬度H、および
80GPa以上から120GPa以下のヤング率E、
の内の少なくとも1つを有する、請求項1から9いずれか1項記載のガラス系物品。
【請求項11】
方法において、
ガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層と中央領域に貯蔵歪みエネルギーSTEとを有する該ガラス系物品を形成する工程、
を有してなり、
IC ×DOC/t×√STE≧7.0×1011Pa2.51.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記ガラス系物品の前記圧縮深さであり、tはメートルで表される前記ガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーであって、
前記イオン交換が、ガラス系基板を、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムを含み400℃以上500℃以下の温度である溶融塩浴と接触させる工程を含み、該接触させる工程が、4時間以上から48時間以下までに亘り、該イオン交換が前記ガラス系物品のDOCとSTEを形成し、該ガラス系基板が、非晶質微細構造を示し、かつ、前記ガラス系基板の合計100モル%を基準として、
52.0モル%以上から69.0モル%以下のSiOと、
13.0モル%以上から24.5モル%以下のAlと、
0モル%以上から8.0モル%以下のBと、
8.0モル%から18.0モル%以下のLiOと、
0モル%以上から17.0モル%以下のMgOと、
0モル%以上 から4.0モル%以下のCaOと、
0モル%以上から2.5モル%以下のLaと、
0モル%以上から2.0モル%以下のYと、
0モル%以上から2.0モル%以下のTiOと、および
0モル%以上から2.5モル%以下のZrOとを含み、
5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、方法。
【請求項12】
方法において、
ガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品の表面から圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層と中央領域に貯蔵歪みエネルギーSTEとを有する該ガラス系物品を形成する工程、
を有してなり、
IC ×DOC×H/E×√STE≧4.1×10Pa2.52.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記ガラス系物品の前記圧縮深さであり、Hは、前記ガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、前記ガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーであって、
前記イオン交換が、ガラス系基板を、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムを含み400℃以上500℃以下の温度である溶融塩浴と接触させる工程を含み、該接触させる工程が4時間以上から48時間以下までに亘り、該イオン交換が前記ガラス系物品のDOCとSTEを形成し、該ガラス系基板が、非晶質微細構造を示し、かつ、前記ガラス系基板の合計100モル%を基準として、
52.0モル%以上から69.0モル%以下のSiOと、
13.0モル%以上から24.5モル%以下のAlと、
0モル%以上から8.0モル%以下のBと、
8.0モル%から18.0モル%以下のLiOと、
0モル%以上から17.0モル%以下のMgOと、
0モル%以上 から4.0モル%以下のCaOと、
0モル%以上から2.5モル%以下のLaと、
0モル%以上から2.0モル%以下のYと、
0モル%以上から2.0モル%以下のTiOと、および
0モル%以上から2.5モル%以下のZrOとを含み、
5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、方法。
【請求項13】
家庭用電気製品において、
前面、背面および側面を有する筐体と、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびディスプレイを含み、該ディスプレイは前記筐体の前面またはそれに隣接して設けられている、電気部品と、
前記ディスプレイ上に配置されたカバーガラスと、
を備え、
前記筐体の一部または前記カバーガラスの一部の少なくとも一方は、請求項1から10いずれか1項記載のガラス系物品から作られている、家庭用電気製品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2018年5月31日に出願された米国仮特許出願第62/678560号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、広く、電子機器用のカバーガラスとして使用するのに適したガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレット、携帯型メディアプレーヤー、パーソナルコンピュータ、およびカメラなどの携帯型機器の持ち運べる性質のために、これらの機器は、地面などの硬質表面への偶発的な落下を特に被りやすい。これらの機器には通常、カバーガラスが組み込まれており、これは、硬質表面と衝突した際に損傷を受けることがある。これらの機器の多くにおいて、カバーガラスは、ディスプレイ用カバーとしての機能を果たし、タッチ機能性を備えることがあり、よって、そのような機器の使用は、カバーガラスが損傷を受けたときに、悪影響を受ける。
【0004】
関連する携帯型機器が硬質表面に落とされたときの、カバーガラスの主な破損様式が2つある。その様式の一方は屈曲破損であり、これは、機器が、硬質表面との衝突からの動荷重に曝されたときのガラスの曲げにより生じる。他方の様式は鋭い接触破損であり、これは、ガラス表面への損傷の導入により生じる。ガラスが、アスファルト、花崗岩などの粗い硬質表面と衝突すると、ガラス表面に鋭い圧痕が生じ得る。これらの圧痕は、ガラス表面の破損部位となり、そこから、亀裂が生じ、伝搬することがある。
【0005】
ガラスは、イオン交換技術によって屈曲破損に対してより耐性にすることができ、この技術は、ガラス表面に圧縮応力を導入することを含む。しかしながら、イオン交換されたガラスは、それでも、鋭い接触からのガラス中の局部圧痕により生じる高い応力濃度のために、動的な鋭い接触に対して弱い。
【0006】
ガラス製造者および携帯型機器の製造業者は、鋭い接触破損に対する携帯型機器の耐性を改善する努力を継続的に行ってきた。解決策は、カバーガラス上のコーティングから、機器が硬質表面に落下したときに、カバーガラスが硬質表面に直接衝突するのを防ぐベゼルまでに及ぶ。しかしながら、美的要件および機能的要件の制約のために、カバーガラスが硬質表面に衝突するのを完全に防ぐことは非常に難しい。
【0007】
携帯型機器をできるだけ薄くすることも望ましい。したがって、強度に加え、携帯型機器におけるカバーガラスとして使用すべきガラスをできるだけ薄くすることも望ましい。それゆえ、カバーガラスの強度を増加させることに加え、薄いガラスシートなどの薄いガラス物品を製造できる過程によってガラスを成形できるようにする機械的特徴をそのガラスが有することも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、イオン交換などによって強化でき、ガラスを薄いガラス物品として成形できるようにする機械的性質を有するガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
態様(1)によれば、ガラス系物品が提供される。そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含む。そのガラス系物品は、KIC ×DOC/t×√STE≧7.0×1011Pa2.51.5により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、tはメートルで表されるガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである。
【0010】
態様(2)によれば、KIC ×DOC/t×√STE≧8.0×1011Pa2.51.5である、態様(1)のガラス系物品が提供される。
【0011】
態様(3)によれば、KIC ×DOC/t×√STE≧9.0×1011Pa2.51.5である、態様(1)または(2)のガラス系物品が提供される。
【0012】
態様(4)によれば、KIC ×DOC/t×√STE≧9.5×1011Pa2.51.5である、態様(1)から(3)のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0013】
態様(5)によれば、KIC ×DOC/t×√STE≧1.0×1012Pa2.51.5である、態様(1)から(4)のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0014】
態様(6)によれば、ガラス系物品が提供される。そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含む。そのガラス系物品は、KIC ×DOC×√STE≧5.6×10Pa2.52.5により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、tはメートルで表されるガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである。
【0015】
態様(7)によれば、KIC ×DOC×√STE≧6.0×10Pa2.52.5である、態様(6)のガラス系物品が提供される。
【0016】
態様(8)によれば、KIC ×DOC×√STE≧7.0×10Pa2.52.5である、態様(6)または(7)のガラス系物品が提供される。
【0017】
態様(9)によれば、KIC ×DOC×√STE≧8.0×10Pa2.52.5である、態様(6)から(8)のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0018】
態様(10)によれば、ガラス系物品が提供される。そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含む。そのガラス系物品は、KIC ×DOC×H/E×√STE≧4.1×10Pa2.52.5により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、Hは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである。
【0019】
態様(11)によれば、KIC ×DOC×H/E×√STE≧4.5×10Pa2.52.5である、態様(10)のガラス系物品が提供される。
【0020】
態様(12)によれば、KIC ×DOC×H/E×√STE≧5.0×10Pa2.52.5である、態様(10)または(11)のガラス系物品が提供される。
【0021】
態様(13)によれば、KIC ×DOC×H/E×√STE≧5.5×10Pa2.52.5である、態様(10)から(12)のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0022】
態様(14)によれば、DOC≧75μmである、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0023】
態様(15)によれば、DOC≦300μmである、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0024】
態様(16)によれば、DOC≦0.4tである、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0025】
態様(17)によれば、DOC≧0.1tである、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0026】
態様(18)によれば、95MPa以上の最大中央張力CTを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0027】
態様(19)によれば、tがmmで表される、120/√tMPa以下の最大中央張力CTを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0028】
態様(20)によれば、ガラス系物品が1.0mm以下の厚さtを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0029】
態様(21)によれば、ガラス系物品が0.3mm以上の厚さtを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0030】
態様(22)によれば、STE≧20Pa・mである、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0031】
態様(23)によれば、5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、態様(1)から(21)のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0032】
態様(24)によれば、圧縮応力層が、100MPa以上の圧縮応力CSを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0033】
態様(25)によれば、圧縮応力層が、400MPa以上の圧縮応力CSを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0034】
態様(26)によれば、圧縮応力層が、1300MPa以下の圧縮応力CSを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0035】
態様(27)によれば、ガラス系物品がガラスセラミックから作られている、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0036】
態様(28)によれば、ガラス系物品が、SiO、Al、B、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含む、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0037】
態様(29)によれば、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、0.75MPa√m以上のKICを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0038】
態様(30)によれば、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、1.5MPa√m以下のKICを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0039】
態様(31)によれば、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、6.0GPa以上の硬度Hを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0040】
態様(32)によれば、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、8.0GPa以下の硬度Hを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0041】
態様(33)によれば、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、80GPa以上のヤング率Eを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0042】
態様(34)によれば、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、120GPa以下のヤング率Eを有する、先の態様のいずれかのガラス系物品が提供される。
【0043】
態様(35)によれば、方法が提供される。その方法は、ガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有するガラス系物品を形成する工程を有してなる。そのガラス系物品は、KIC ×DOC/t×√STE≧7.0×1011Pa2.51.5により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、tはメートルで表されるガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである。
【0044】
態様(36)によれば、方法が提供される。その方法は、ガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有するガラス系物品を形成する工程を有してなる。そのガラス系物品は、KIC ×DOC×H/E×√STE≧4.1×10Pa2.52.5により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、Hは、ガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、ガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである。
【0045】
態様(37)によれば、そのガラス系基板がガラスセラミックから作られている、態様(35)または(36)の方法が提供される。
【0046】
態様(38)によれば、イオン交換する工程が、ガラス系基板を溶融塩浴と接触させる工程を含む、態様(35)から(37)のいずれかの方法が提供される。
【0047】
態様(39)によれば、溶融塩浴が、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む、態様(38)の方法が提供される。
【0048】
態様(40)によれば、接触させる工程が、4時間以上から48時間までに亘る、態様(38)または(39)の方法が提供される。
【0049】
態様(41)によれば、接触させる工程中、溶融塩浴が、400℃以上から500℃以下の温度である、態様(38)から(40)のいずれかの方法が提供される。
【0050】
態様(42)によれば、態様(35)から(41)のいずれかの方法により製造されたガラス系物品が提供される。
【0051】
態様(43)によれば、家庭用電気製品が提供される。その家庭用電気製品は、前面、背面および側面を有する筐体と;その筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびディスプレイを含み、そのディスプレイは筐体の前面またはそれに隣接して設けられている、電気部品と;ディスプレイ上に配置されたカバーガラスとを備え、筐体の一部またはカバーガラスの一部の少なくとも一方は、態様(1)から(34)または(42)のいずれかのガラス系物品から作られている。
【0052】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0053】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する目的であることが理解されよう。添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示しており、説明と共に、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】破壊靭性KICを決定するために使用される試料およびその断面の概略図
図2】ここに開示され、記載された実施の形態による、その表面に圧縮応力層を有するガラス系物品の断面図
図3A】ここに開示されたガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示の電子機器の平面図
図3B図3Aの例示の電子機器の斜視図
図4】様々な比較例および実施の形態に関する式(I)の値の関数としての落下性能のプロット
図5】様々な比較例および実施の形態に関する式(II)の値の関数としての落下性能のプロット
【発明を実施するための形態】
【0055】
ここで、様々な実施の形態によるガラス系物品を詳しく参照する。ここに用いられているように、「ガラス系」とは、ガラスまたはガラスセラミック組成物などのガラスを含む物品を示す。一般に、「ガラス系基板」は、イオン交換前の物品を指し、「ガラス系物品」はイオン交換済み物品を指す。
【0056】
そのガラス系物品は、改善された落下性能を示す。そのガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含む。そのガラス系物品は、ガラス組成物およびガラス系物品の圧縮プロファイル特徴により影響を受ける様々な性質に基づく所望の落下性能と相関する式の最小値を示す。
【0057】
いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品は、以下の式(I):
【0058】
【数1】
【0059】
により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、tはメートルで表されるガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵引張エネルギーである。そのガラス系物品の厚さに対する式(I)の依存性により、異なる厚さに亘るガラス系物品の性能の比較が可能になる。実施の形態において、そのガラス系物品は、9.0×1011Pa2.51.5以上、9.5×1011Pa2.51.5以上、1.0×1012Pa2.51.5以上、あるいはそれより大きいなど、8.0×1011Pa2.51.5以上の式(I)の値を示すことがある。
【0060】
いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品は、以下の式(IA):
【0061】
【数1A】
【0062】
により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵引張エネルギーである。実施の形態において、そのガラス系物品は、6.5×10Pa2.52.5以上、7.5×10Pa2.52.5以上、8.0×10Pa2.52.5以上、あるいはそれより大きいなど、6.0×10Pa2.52.5以上の式(IA)の値を示すことがある。
【0063】
いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品は、以下の式(II):
【0064】
【数2】
【0065】
により特徴付けられ、式中、KICは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される圧縮深さであり、Hは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表されるガラス系物品の貯蔵引張歪みエネルギーである。実施の形態において、そのガラス系物品は、5.0×10Pa2.52.5以上、5.5×10Pa2.52.5以上、あるいはそれより大きいなど、4.5×10Pa2.52.5以上の式(IIの)値を示すことがある。
【0066】
式(I)、(IA)、および(II)のいずれかまたは両方を満たすガラス系物品は、そのガラス系物品を電子機器に使用するのに特に適したものとする品質である、改善された落下性能を示す。このようにして、電子機器に使用するためのガラス系物品を選択する場合、ガラス組成に起因する性質およびガラス系物品の応力プロファイルに起因する性質の特定の組合せの効果が全体として考えられるであろう。KICは、亀裂を伝搬させるのに必要なエネルギーを示すものとして式に含まれ、ガラス系物品の破損は、少なくとも一部は、引張領域への亀裂の伝搬に依存する。落下性能は、KICの二乗に比例する。DOCは、亀裂が引張領域に到達するのに伝搬しなければならない深さを示すものとして式に含まれ、DOCが深いほど、引張領域に到達する前により大きい亀裂伝搬深さを必要とすることによって、より大きい破損耐性を提供する。STEは、イオン交換による強化の程度を示すものとして式に含まれ、これは、ガラス系物品の破損耐性を増加させることがある。STEの平方根は、STEの平方根とガラス系物品の破砕性限界との間の関係のために組み込まれている。
【0067】
式(I)、(IA)、および(II)において、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板を称する性質は、一般に、ガラス系物品を形成するためにイオン交換されたガラス系基板の組成および相集合に依存する。実際に、ガラス系物品の中心での組成および相集合は、当該技術分野に公知の技術により測定されるであろうし、測定された組成および相集合を有する、製造されたガラス系基板のKIC、H、およびE値が測定されるであろう。それに加え、ガラス系物品の中心は、イオン交換過程により影響を受けないか、または最小にしか影響を受けず、よって、ガラス系物品の中心での組成および相集合は、ガラス系基板の組成と実質的に同じまたは同じである。この理由のために、ガラス系物品の中心での組成および相集合を有するガラス系基板のKIC、H、およびE値は、イオン交換処理前のガラス系基板のこれらの性質を測定することによって、決定されるであろう。
【0068】
ここで、そのガラス系物品の性質を論じる。これらの性質は、ガラス系組成物の成分の量またはガラス系物品の応力プロファイルを変えることによって、達成することができる。
【0069】
実施の形態によるガラス系物品を形成するために使用される組成物は、高い破壊靭性(KIC)を有する。先の式(I)および(II)により示されるように、破壊靭性は、ガラス系物品の落下性能に強く影響する。いくつかの実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、0.76MPa・m0.5以上、0.77MPa・m0.5以上、0.78MPa・m0.5以上、0.79MPa・m0.5以上、0.80MPa・m0.5以上、0.81MPa・m0.5以上、0.82MPa・m0.5以上、0.83MPa・m0.5以上、0.84MPa・m0.5以上、0.86MPa・m0.5以上、0.87MPa・m0.5以上、0.88MPa・m0.5以上、0.89MPa・m0.5以上、0.90MPa・m0.5以上、0.91MPa・m0.5以上、0.92MPa・m0.5以上、0.93MPa・m0.5以上、0.94MPa・m0.5以上、0.95MPa・m0.5以上、0.96MPa・m0.5以上、0.97MPa・m0.5以上、0.98MPa・m0.5以上、0.99MPa・m0.5以上、1.00MPa・m0.5以上、1.01MPa・m0.5以上、1.02MPa・m0.5以上、1.03MPa・m0.5以上、1.04MPa・m0.5以上、1.05MPa・m0.5以上、1.06MPa・m0.5以上、1.07MPa・m0.5以上、1.08MPa・m0.5以上、1.09MPa・m0.5以上、1.10MPa・m0.5以上、1.11MPa・m0.5以上、1.12MPa・m0.5以上、1.13MPa・m0.5以上、1.14MPa・m0.5以上、1.15MPa・m0.5以上、1.16MPa・m0.5以上、1.17MPa・m0.5以上、1.18MPa・m0.5以上、1.19MPa・m0.5以上、1.20MPa・m0.5以上、1.21MPa・m0.5以上、1.22MPa・m0.5以上、1.23MPa・m0.5以上、1.24MPa・m0.5以上、1.25MPa・m0.5以上、1.26MPa・m0.5以上、1.27MPa・m0.5以上、1.28MPa・m0.5以上、1.29MPa・m0.5以上、1.30MPa・m0.5以上、1.31MPa・m0.5以上、1.32MPa・m0.5以上、1.33MPa・m0.5以上、または1.34MPa・m0.5以上など、0.75MPa・m0.5以上のKIC値を示す。実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、0.76MPa・m0.5以上から1.33MPa・m0.5以下、0.77MPa・m0.5以上から1.32MPa・m0.5以下、0.78MPa・m0.5以上から1.31MPa・m0.5以下、0.79MPa・m0.5以上から1.30MPa・m0.5以下、0.80MPa・m0.5以上から1.29MPa・m0.5以下、0.81MPa・m0.5以上から1.28MPa・m0.5以下、0.82MPa・m0.5以上から1.27MPa・m0.5以下、0.83MPa・m0.5以上から1.26MPa・m0.5以下、0.84MPa・m0.5以上から1.25MPa・m0.5以下、0.85MPa・m0.5以上から1.24MPa・m0.5以下、0.86MPa・m0.5以上から1.23MPa・m0.5以下、0.87MPa・m0.5以上から1.22MPa・m0.5以下、0.88MPa・m0.5以上から1.21MPa・m0.5以下、0.89MPa・m0.5以上から1.20MPa・m0.5以下、0.90MPa・m0.5以上から1.19MPa・m0.5以下、0.91MPa・m0.5以上から1.18MPa・m0.5以下、0.92MPa・m0.5以上から1.17MPa・m0.5以下、0.93MPa・m0.5以上から1.16MPa・m0.5以下、0.94MPa・m0.5以上から1.15MPa・m0.5以下、0.95MPa・m0.5以上から1.14MPa・m0.5以下、0.96MPa・m0.5以上から1.13MPa・m0.5以下、0.97MPa・m0.5以上から1.12MPa・m0.5以下、0.98MPa・m0.5以上から1.11MPa・m0.5以下、0.99MPa・m0.5以上から1.10MPa・m0.5以下、1.00MPa・m0.5以上から1.09MPa・m0.5以下、1.01MPa・m0.5以上から1.08MPa・m0.5以下、1.02MPa・m0.5以上から1.07MPa・m0.5以下、1.03MPa・m0.5以上から1.06MPa・m0.5以下、1.04MPa・m0.5以上から1.05MPa・m0.5以下など、0.75MPa・m0.5以上から1.34MPa・m0.5以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲のKIC値を示す。いくつかの実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、0.90MPa・m0.5以上のKIC値を示す。いくつかの実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、1.5MPa・m0.5以下のKIC値を示す。
【0070】
ここに用いられているように、KIC破壊靭性は、二重片持ち梁(DCB)法により測定される。KIC値は、ガラス系物品を形成するためにイオン交換される前のガラス系基板について測定した。DCB試験片の形状が図1に示されており、重要なパラメータは、亀裂長さa、印加荷重P、断面寸法wと2h、および亀裂誘導溝の厚さbである。試料を、幅2h=1.25cmおよびw=0.3mmから1mmに及ぶ厚さの長方形に切断し、試料の全長は5cmから10cmと様々であるが、これは重要な寸法ではない。ダイヤモンドドリルで両端に孔を開けて、試料を試料ホルダおよび荷重に取り付ける手段を提供した。亀裂「誘導溝」は、ダイヤモンド刃を備えたウエハーダイシングソーを使用して、平らな両面に試料の長さを切り込み、刃の厚さに相当する180μmの高さで、プレートの全厚の約半分(図1の寸法b)の材料の「ウェブ」を残した。ダイシングソーの高精度の寸法公差により、試料間のばらつきを最小にすることができる。このダイシングソーを、a=15mmの初期亀裂を切るためにも使用した。この最終操作の結果として、亀裂先端の近くに非常に薄い材料の楔を形成し(刃の曲率のために)、試料内の亀裂発生をより容易にできた。試料の底部の孔にある鋼線で、金属製試料ホルダ内に試料を取り付けた。低荷重条件下で試料を水平に維持するために、試料を反対の端部で支持した。上部の孔に、ロードセル(FUTEK、LSB200)と直列のバネを引っ掛け、次いで、ロープと高精度スライドを使用して、引き伸ばして、徐々に荷重を印加した。デジタルカメラおよびコンピュータに取り付けられた5μmの解像度を有する顕微鏡を使用して、亀裂をモニタした。以下の式(III):
【0071】
【数3】
【0072】
を使用して、印加した応力強度Kを計算した。各試料について、ウェブの先端に亀裂を最初に発生させ、次いで、寸法比a/hが1.5より大きくなるまで(このことは、応力強度を正確に計算するために、資金(III)に必要である)、開始亀裂を注意深く、未臨界成長させた。この時点で、5μmの解像度を有する遊動顕微鏡を使用して、亀裂の長さaを測定し、記録した。次に、トルエンを一滴、亀裂の溝に入れ、毛管力によって、溝の全長に沿って運び、破壊靭性に達するまで、動かないように亀裂をピン止めした。次に、試料が破壊されるまで、荷重を増加させ、破壊荷重および試料寸法から臨界応力強度KICを計算した。Kは、測定方法のために、KICと等しい。
【0073】
このガラス系物品を形成するために使用されるガラス組成物のヤング率(E)は、式(I)および(II)により示されるように、ガラス系物品の落下性能と逆相関を有する。実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、76GPa以上から115GPa以下、77GPa以上から113GPa以下、78GPa以上から112GPa以下、79GPa以上から111GPa以下、80GPa以上から110GPa以下、81GPa以上から109GPa以下、82GPa以上から108GPa以下、83GPa以上から107GPa以下、84GPa以上から106GPa以下、85GPa以上から105GPa以下、86GPa以上から104GPa以下、87GPa以上から103GPa以下、88GPa以上から102GPa以下、89GPa以上から101GPa以下、90GPa以上から100GPa以下、91GPa以上から99GPa以下、92GPa以上から98GPa以下、93GPa以上から97GPa以下、94GPa以上から96GPa以下、または95GPaと等しいなど、75GPa以上から120GPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲のヤング率(E)を示す。実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、80GPa以上から120GPa以下のヤング率(E)を示す。この開示において列挙されたヤング率値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術により測定されるような値を称する。
【0074】
このガラス系物品を形成するために使用されるガラス組成物の硬度(H)は、式(I)および(II)により示されるように、ガラス系物品の落下性能と正相関を有する。実施の形態において、このガラス系物品を形成するために使用される組成物は、6.1GPa以上から7.9GPa以下、6.2GPa以上から7.8GPa以下、6.3GPa以上から7.7GPa以下、6.4GPa以上から7.6GPa以下、6.5GPa以上から7.5GPa以下、6.6GPa以上から7.4GPa以下、6.7GPa以上から7.3GPa以下、6.8GPa以上から7.2GPa以下、6.9GPa以上から7.1GPa以下、または7.0GPaと等しいなど、6.0GPa以上から8.0GPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の硬度(H)を示す。この開示において列挙された硬度は、ビッカース硬度試験により測定されるような値を称する。ビッカース硬度試験は、200グラムの荷重での15秒間のビッカース圧子の先端による押し込みを含んだ。
【0075】
このガラス系物品は、どのような適切な厚さを有してもよい。このガラス系物品の厚さ(t)は、式(I)により示されるように、ガラス系物品の落下性能と逆相関を有する。実施の形態において、このガラス系物品は、0.3mm以上から1.0mm以下、0.4mm以上から0.9mm以下、0.5mm以上から0.8mm以下、0.6mm以上から0.7mm以下など、0.2mm以上から2.0mm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の厚さ(t)を有することがある。
【0076】
先に述べたように、ガラス系物品は、イオン交換などによって強化され、以下に限られないが、ディスプレイ用カバーまたは電子機器の筐体のための物品などの用途のために損傷抵抗性であるガラスを製造する。図2を参照すると、ガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力下にある第1の領域(例えば、図2の第1と第2の圧縮層120、122)、およびDOCからガラス系物品の中央または内部領域まで延在する引張応力または中央張力(CT)下にある第2の領域(例えば、図2の中央領域130)を有する。ここに用いられているように、DOCは、ガラス系物品内の応力が圧縮から引張に変化する深さを称する。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に交差し、それゆえ、ゼロの応力値を示す。
【0077】
当該技術分野に通常使用される慣習にしたがって、圧縮または圧縮応力は負の(<0)応力と表され、張力または引張応力は正の(>0)応力と表される。しかしながら、本明細書を通じて、CSは、正のまたは絶対値として表される-すなわち、ここに挙げられるように、CS=|CS|。圧縮応力(CS)は、ガラス系物品の表面で、またはその近くで最大値を有し、CSは、ある関数にしたがって、表面からの距離dにより変化する。再び図2を参照すると、第1のセグメント120は第1の表面110から深さdまで延在し、第2のセグメント122は第2の表面112から深さdまで延在する。これらのセグメントは、共に、ガラス系物品100の圧縮またはCSを規定する。圧縮応力(表面CSを含む)は、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000などの市販の計器を使用して、表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM基準C770-16に記載されている、手順C(ガラスディスク法)にしたがって測定される。
【0078】
いくつかの実施の形態において、ガラス系物品のCSは、325MPa以上から1250MPa以下、350MPa以上から1200MPa以下、375MPa以上から1150MPa以下、400MPa以上から1100MPa以下、425MPa以上から1050MPa以下、450MPa以上から1000MPa以下、475MPa以上から975MPa以下、500MPa以上から950MPa以下、525MPa以上から925MPa以下、550MPa以上から900MPa以下、575MPa以上から875MPa以下、600MPa以上から850MPa以下、625MPa以上から825MPa以下、650MPa以上から800MPa以下、675MPa以上から775MPa以下、または700MPa以上から750MPa以下など、300MPa以上から1300MPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲である。いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品のCSは100MPa以上である。
【0079】
1つ以上の実施の形態において、NaおよびKイオンがガラス系物品中に交換され、このNaイオンはKイオンよりもガラス系物品中のより深い深さまで拡散する。Kイオンの侵入深さ(「カリウムDOL」)は、イオン交換過程の結果としてのカリウムの侵入深さを表すので、DOCとは区別される。カリウムDOLは、典型的に、ここに記載された物品に関して、DOCより小さい。カリウムDOLは、CS測定に関して先に記載されたように、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する、有限会社折原製作所(日本国)により製造されている市販のFSM-6000表面応力計などの表面応力計を使用して測定される。第1と第2の圧縮層120、122の各々のカリウムDOLは、6μm以上から25μm以下、7μm以上から20μm以下、8μm以上から15μm以下、または9μm以上から10μm以下など、5μm以上から30μm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲である。他の実施の形態において、第1と第2の圧縮層120、122の各々のカリウムDOLは、10μm以上から30μm以下、15μm以上から30μm以下、20μm以上から30μm以下、または25μm以上から30μm以下など、6μm以上から30μm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲である。さらに他の実施の形態において、第1と第2の圧縮層120、122の各々のカリウムDOLは、5μm以上から20μm以下、5μm以上から15μm以下、または5μm以上から10μm以下など、5μm以上から25μm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲である。
【0080】
両方の主面(図1の110、112)の圧縮応力は、ガラスの中央領域(130)内の貯蔵張力により釣り合わされる。最大中央張力(CT)およびDOC値は、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)を使用して測定される。応力プロファイルを測定するために、屈折近視野(RNF)法またはSCALPが使用されることがある。応力プロファイルを測定するためにRNF法が使用される場合、SCALPにより与えられる最大CT値がRNF法に使用される。詳しくは、RNFにより測定された応力プロファイルは、SCALP測定により与えられる最大CT値に対して力平衡され、較正される。このRNF法は、ここに全てが引用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する米国特許第8854623号明細書に記載されている。このRNF法は、基準ブロックに隣接してガラス物品を配置する工程、1Hzと50Hzの間の速度で直交偏光の間で切り換えられる偏光切替光線を生成する工程、その偏光切替光線の出力量を測定する工程、および偏光切替基準信号を生成する工程を含み、直交偏光の各々の出力の測定量は互いの50%以内にある。この方法は、偏光切替光線を、ガラス試料中の異なる深さについて、ガラス試料および基準ブロックに透過させ、次いで、リレー光学系を使用して、透過した偏光切替光線を信号光検出器に中継する工程をさらに含み、その信号光検出器は偏光切替検出器信号を生成する。この方法は、検出器信号を基準信号で割って、正規化検出器信号を形成する工程、およびその正規化検出器信号からガラス試料のプロファイル特徴を決定する工程も含む。
【0081】
実施の形態において、そのガラス系物品は、100MPa以上、105MPa以上、110MPa以上、110MPa以上、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、または150MPa以上、あるいはそれより大きいなど、95MPa以上の最大CTを有することがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品は、190MPa以下、180MPa以下、170MPa以下、160MPa以下、150MPa以下、140MPa以下、130MPa以下、120MPa以下、110MPa以下、または100MPa以下など、200MPa以下の最大CTを有することがある。実施の形態において、先の範囲のいずれを、いずれか他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。しかしながら、他の実施の形態において、そのガラス系物品は、100MPa以上から190MPa以下、110MPa以上から180MPa以下、120MPa以上から170MPa以下、130MPa以上から160MPa以下、または140MPa以上から150MPa以下など、95MPa以上から200MPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の最大CTを有することがある。
【0082】
最大中央張力(CT)も、ガラス系物品の厚さに関して記載されることがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、110/√(t)MPa以下、110/√(t)MPa以下、100/√(t)MPa以下、90/√(t)MPa以下、80/√(t)MPa以下、70/√(t)MPa以下、60/√(t)MPa以下、50/√(t)MPa以下、40/√(t)MPa以下、30/√(t)MPa以下、20/√(t)MPa以下、10/√(t)MPa以下、あるいはそれより小さいなど、tがmmで表される、120/√(t)MPa以下の最大CTを有することがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、110/√(t)MPa以下、110/√(t)MPa以下、100/√(t)MPa以下、90/√(t)MPa以下、80/√(t)MPa以下、70/√(t)MPa以下、60/√(t)MPa以下、50/√(t)MPa以下、40/√(t)MPa以下、30/√(t)MPa以下、20/√(t)MPa以下、10/√(t)MPa以下、あるいはそれより小さいなど、tがmmで表される、120/√(t)MPa以下の最大CTを有することがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、20/√(t)MPa以上、30/√(t)MPa以上、40/√(t)MPa以上、50/√(t)MPa以上、60/√(t)MPa以上、70/√(t)MPa以上、80/√(t)MPa以上、90/√(t)MPa以上、100/√(t)MPa以上、110/√(t)MPa以上、あるいはそれより大きいなど、tがmmで表される、10/√(t)MPa以上の最大CTを有することがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、20/√(t)MPa以上から110/√(t)MPa以下、30/√(t)MPa以上から100/√(t)MPa以下、40/√(t)MPa以上から90/√(t)MPa以下、50/√(t)MPa以上から80/√(t)MPa以下、60/√(t)MPa以上から70/√(t)MPa以下など、tがmmで表される、10/√(t)MPa以上から120/√(t)MPa以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の最大CTを有することがある。
【0083】
そのガラス系物品は、どのような適切な圧縮深さ(DOC)を有してもよい。実施の形態において、DOCは、85μm以上から290μm以下、95μm以上から280μm以下、100μm以上から270μm以下、110μm以上から260μm以下、120μm以上から250μm以下、130μm以上から240μm以下、140μm以上から230μm以下、150μm以上から220μm以下、160μm以上から210μm以下、170μm以上から200μm以下、180μm以上から190μm以下など、75μm以上から300μm以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲である。
【0084】
DOCは、いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品の厚さ(t)の一部としてここでは与えられる。実施の形態において、そのガラス系物品は、0.18t以上から0.38t以下、または0.19t以上から0.36t以下、0.20t以上から0.34t以下、0.18t以上から0.32t以下、0.19t以上から0.30t以下、0.20t以上から0.29t以下、0.21t以上から0.28t以下、0.22t以上から0.27t以下、0.23t以上から0.26t以下、または0.24t以上から0.25t以下など、0.15t以上から0.40t以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の圧縮深さ(DOC)を有することがある。
【0085】
ここに記載されたガラス系物品は、どのような適切な量の貯蔵引張エネルギー(STE)を示してもよい。実施の形態において、そのガラス系物品は、6Pa・m以上、7Pa・m以上、8Pa・m以上、9Pa・m以上、10Pa・m以上、11Pa・m以上、12Pa・m以上、13Pa・m以上、14Pa・m以上、15Pa・m以上、16Pa・m以上、17Pa・m以上、18Pa・m以上、19Pa・m以上、20Pa・m以上、21Pa・m以上、22Pa・m以上、23Pa・m以上、24Pa・m以上、25Pa・m以上、26Pa・m以上、27Pa・m以上、28Pa・m以上、29Pa・m以上、あるいはそれより大きいなど、5Pa・m以上のSTEを有することがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、29Pa・m以下、28Pa・m以下、27Pa・m以下、26Pa・m以下、25Pa・m以下、24Pa・m以下、23Pa・m以下、22Pa・m以下、21Pa・m以下、20Pa・m以下、19Pa・m以下、18Pa・m以下、17Pa・m以下、16Pa・m以下、15Pa・m以下、14Pa・m以下、13Pa・m以下、12Pa・m以下、11Pa・m以下、10Pa・m以下、9Pa・m以下、8Pa・m以下、7Pa・m以下、6Pa・m以下、5Pa・m以下、あるいはそれより小さいなど、30Pa・m以下のSTEを有することがある。実施の形態において、そのガラス系物品は、6Pa・m以上から29Pa・m以下、7Pa・m以上から28Pa・m以下、8Pa・m以上から27Pa・m以下、8Pa・m以上から26Pa・m以下、9Pa・m以上から25Pa・m以下、10Pa・m以上から24Pa・m以下、11Pa・m以上から23Pa・m以下、12Pa・m以上から23Pa・m以下、13Pa・m以上から22Pa・m以下、14Pa・m以上から21Pa・m以下、15Pa・m以上から20Pa・m以下、16Pa・m以上から19Pa・m以下、17Pa・m以上から18Pa・m以下など、5Pa・m以上から30Pa・m以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲のSTEを有することがある。
【0086】
ここに用いられているように、ガラス系物品の貯蔵引張エネルギー(STE)は、以下の式(IV):
【0087】
【数4】
【0088】
を使用して計算され、式中、νはポアソン比であり、Eはヤング率であり、σ(z)は厚さ方向の位置(z)の関数としての応力であり、積分は引張領域のみに亘り行われる。式(IV)は、1997年9月13~15日に開催されたThe Fifth International Conference on Architectural and Automotive GlassのGLASS PROCESSING DAYSでSuresh T.GulatiによるFrangibility of Tempered Soda-Lime Glass Sheetに数式番号4として記載されている。本開示に挙げられたポアソン比の値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術により測定された値を称する。
【0089】
そのガラス系物品は、ガラス系基板をイオン交換溶液に暴露して、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有するガラス系物品を形成することによって、形成されることがある。イオン交換過程は、式(I)、(IA)、および(II)のいずれかを満たすガラス系物品を製造するのに十分な条件下で行われることがある。実施の形態において、そのイオン交換溶液は、溶融硝酸塩であることがある。いくつかの実施の形態において、そのイオン交換溶液は、溶融KNO、溶融NaNO、またはその組合せであることがある。特定の実施の形態において、そのイオン交換溶液は、約90%未満の溶融KNO、約80%未満の溶融KNO、約70%未満の溶融KNO、約60%未満の溶融KNO、または約50%未満の溶融KNOなど、約95%未満の溶融KNOを含むことがある。特定の実施の形態において、そのイオン交換溶液は、少なくとも約10%の溶融NaNO、少なくとも約20%の溶融NaNO、少なくとも約30%の溶融NaNO、または少なくとも約40%の溶融NaNOなど、少なくとも約5%の溶融NaNOを含むことがある。他の実施の形態において、そのイオン交換溶液は、約95%の溶融KNOおよび約5%の溶融NaNO、約94%の溶融KNOおよび約6%の溶融NaNO、約93%の溶融KNOおよび約7%の溶融NaNO、約80%の溶融KNOおよび約20%の溶融NaNO、約75%の溶融KNOおよび約25%の溶融NaNO、約70%の溶融KNOおよび約30%の溶融NaNO、約65%の溶融KNOおよび約35%の溶融NaNO、または約60%の溶融KNOおよび約40%の溶融NaNO、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲を含むことがある。実施の形態において、例えば、ナトリウムまたはカリウムの亜硝酸塩、リン酸塩、または硫酸塩など、他のナトリウムとカリウムの塩がイオン交換溶液に使用されることがある。いくつかの実施の形態において、そのイオン交換溶液は、LiNOなどのリチウム塩を含むことがある。
【0090】
そのガラス系基板は、ガラス系基板をイオン交換溶液の浴中に浸漬することにより、ガラス系基板にイオン交換溶液を吹き付けることにより、またはガラス系基板にイオン交換溶液を他のやり方で物理的に施すことにより、イオン交換溶液に暴露されることがある。ガラス系基板の暴露の際に、イオン交換溶液は、実施の形態によれば、350℃以上から490℃以下、360℃以上から480℃以下、370℃以上から470℃以下、380℃以上から460℃以下、390℃以上から450℃以下、400℃以上から440℃以下、410℃以上から430℃以下、420℃と等しいなど、340℃以上から500℃以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の温度であることがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、4時間以上から44時間以下、8時間以上から40時間以下、12時間以上から36時間以下、16時間以上から32時間以下、20時間以上から28時間以下、24時間と等しいなど、2時間以上から48時間以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の期間に亘りイオン交換溶液に暴露されることがある。
【0091】
イオン交換過程は、例えば、ここに全てが引用される、米国特許出願公開第2016/0102011号明細書に開示されているような、改善された圧縮応力プロファイルを与えるイオン交換浴の組成、イオン交換の温度や時間等の処理条件下でイオン交換溶液中で行われることがある。いくつかの実施の形態において、イオン交換過程は、ここに全てが引用される、米国特許出願公開第2016/0102014号明細書に記載された応力プロファイルのような、放物線応力プロファイルをガラス物品中に形成するように選択されることがある。

【0092】
イオン交換過程が行われた後、ガラス系物品の表面での組成が、イオン交換過程を経る前のガラス系基板の組成と異なることを理解すべきである。これは、例えば、それぞれ、NaまたはKなどのより大きいアルカリ金属イオンにより交換された、例えば、LiまたはNaなどの、形成されたままのガラス中のアルカリ金属イオンの一種から生じる。しかしながら、ガラス系物品の深さの中心またはその近くでのガラス組成および相集合は、実施の形態において、それでも、ガラス系基板の組成を有するであろう。
【0093】
ガラス系物品を形成するためにイオン交換されるガラス系基板は、アルカリアルミノケイ酸塩組成など、どのような適切な組成を有してもよい。実施の形態において、そのガラス系基板は、SiO、Al、B、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含む。この少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物は、ガラス系基板のイオン交換を促進する。例えば、そのガラス系基板は、ガラス系物品を形成するためのNaおよびKイオンのガラス系基板中への交換を促進するLiOおよび/またはNaOを含むことがある。先に述べたように、そのガラス系基板の組成は、ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しいことがある。
【0094】
ここに記載されたガラス系基板の実施の形態において、構成成分(例えば、SiO、Al、LiOなど)の濃度は、特に明記のない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられている。実施の形態によるガラス系基板の成分が、下記に個別に述べられている。ある成分の様々に列挙された範囲のどれも、どの他の成分の様々に列挙された範囲のどれと個別に組み合わされてもよいことを理解すべきである。
【0095】
ここに開示されたガラス系基板の実施の形態において、SiOは、最大成分であり、それゆえ、SiOは、そのガラス組成物から形成されるガラス網状構造の主成分である。純粋なSiOは、比較的低いCTEを有し、アルカリを含まない。しかしながら、純粋なSiOは高い融点を有する。したがって、ガラス系基板中のSiOの濃度が高すぎる場合、SiOのより高い濃度によりガラスを溶融する難点が増す(このことは、転じて、ガラスの成形性に悪影響を与える)ので、ガラス組成物の成形性が損なわれることがある。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、50.0モル%以上から69.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でSiOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、52.0モル%以上から67.0モル%以下、53.0モル%以上から66.0モル%以下、54.0モル%以上から65.0モル%以下、55.0モル%以上から64.0モル%以下、56.0モル%以上から63.0モル%以下、57.0モル%以上から62.0モル%以下、58.0モル%以上から61.0モル%以下、または60.0モル%以上から61.0モル%以下など、51.0モル%以上から68.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のSiOを含む。
【0096】
実施の形態のガラス系基板は、Alをさらに含むことがある。Alは、SiOのように、ガラス網状構造形成材として働くことがある。Alは、ガラス組成物から形成されたガラス溶融物中の四面体配位のために、ガラス組成物の粘度を増加させることがあり、Alの量が多すぎる場合、ガラス組成物の成形性を低下させる。しかしながら、Alの濃度が、ガラス系基板中のSiOの濃度およびアルカリ酸化物の濃度に対して釣り合わされる場合、Alは、ガラス溶融物の液相温度を低下させ、それによって、液相粘度を高め、フュージョン成形過程などの特定の成形過程とのガラス組成物の適合性を改善することができる。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、12.5モル%以上から25.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度でAlを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、13.5モル%以上から24.0モル%以下、14.0モル%以上から23.5モル%以下、14.5モル%以上から23.0モル%以下、15.0モル%以上から22.5モル%以下、15.5モル%以上から22.0モル%以下、16.0モル%以上から21.5モル%以下、16.5モル%以上から21.0モル%以下、17.0モル%以上から20.5モル%以下、17.5モル%以上から20.0モル%以下18.0モル%以上から19.5モル%以下、または18.5モル%以上から19.0モル%以下など、13.0モル%以上から24.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でAlを含む。
【0097】
SiOおよびAlのように、Bは、網状構造形成材としてガラス系基板に添加され、それによって、ガラス組成物の溶融性および成形性を低下させることがある。それゆえ、Bは、これらの性質を過剰に低下させない量で添加されるであろう。実施の形態において、そのガラス系基板は、0モル%以上から8.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でBを含むことがある。実施の形態において、そのガラス系基板は、1.0モル%以上から7.0モル%以下、1.5モル%以上から6.5モル%以下、2.0モル%以上から6.0モル%以下、2.5モル%以上から5.5モル%以下、3.0モル%以上から5.0モル%以下、または3.5モル%以上から4.5モル%以下など、0.5モル%以上から7.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でBを含む。
【0098】
ガラス系基板中にLiOを含ませると、イオン交換過程をより良く制御でき、ガラスの軟化点をさらに低下させ、それによって、ガラスの製造可能性が増す。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、8.0モル%から18.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でLiOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、9.0モル%以上から17.0モル%以下、9.5モル%以上から16.5モル%以下、10.0モル%以上から16.0モル%以下、10.5モル%以上から15.5モル%以下、11.0モル%以上から15.0モル%以下、11.5モル%以上から14.5モル%以下、12.0モル%以上から14.0モル%以下、または12.5モル%以上から13.5モル%以下など、8.5モル%以上から17.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量のLiOを含む。
【0099】
実施の形態によれば、そのガラス系基板は、NaOなど、LiO以外のアルカリ金属酸化物も含むことがある。NaOは、ガラス組成物のイオン交換官能性に役立ち、そのガラス組成物の成形性も改善し、それによって、その製造可能性を改善する。しかしながら、ガラス系基板にあまりに多くのNaOが添加されると、CTEが低すぎることがあり、融点が高すぎることがある。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、0.5モル%以上から8.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でNaOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、1.5モル%以上から7.0モル%以下、2.0モル%以上から6.5モル%以下、2.5モル%以上から6.0モル%以下、3.0モル%以上から5.5モル%以下、3.5モル%以上から5.0モル%以下、または4.0モル%以上から4.5モル%以下など、1.0モル%以上から7.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でNaOを含む。
【0100】
NaOのように、KOも、イオン交換を促進し、圧縮応力層のDOCを増加させる。しかしながら、KOを添加すると、CTEが低くなりすぎることがあり、融点が高すぎることがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、KOを含み得る。実施の形態において、そのガラス組成物はカリウムを実質的に含まない。ここに用いられているように、「実質的に含まない」という用語は、成分が、0.01モル%未満など、汚染物質として非常に少量だけ最終的なガラス中に存在するかもしれないが、その成分がバッチ材料の成分として添加されないことを意味する。他の実施の形態において、KOは、1モル%未満の量でガラス系基板中に存在することがある。
【0101】
MgOはガラスの粘度を低下させ、これにより、ガラスの成形性および製造可能性が向上する。ガラス系基板中にMgOを含ませると、ガラス組成物の歪み点およびヤング率も改善され、ガラスのイオン交換可能性も改善されることがある。しかしながら、ガラス組成物に多すぎるMgOが添加されると、そのガラス組成物の密度およびCTEが望ましくなく増加してしまう。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、0モル%超から17.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度でMgOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、1.0モル%以上から16.5モル%以下、1.5モル%以上から16.0モル%以下、2.0モル%以上から15.5モル%以下、2.5モル%以上から15.0モル%以下、3.0モル%以上から14.5モル%以下、3.5モル%以上から14.0モル%以下、4.0モル%以上から13.5モル%以下、4.5モル%以上から13.0モル%以下、5.0モル%以上から12.5モル%以下、5.5モル%以上から12.0モル%以下、6.0モル%以上から11.5モル%以下、6.5モル%以上から11.0モル%以下、7.0モル%以上から10.5モル%以下、7.5モル%以上から10.0モル%以下、8.0モル%以上から9.5モル%以下、または8.5モル%以上から9.0モル%以下など、0.5モル%以上から17.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でMgOを含む。
【0102】
CaOはガラスの粘度を低下させ、これにより、成形性、歪み点およびヤング率が向上し、イオン交換可能性が改善されることがある。しかしながら、ガラス系基板に多すぎるCaOが添加されると、そのガラス組成物の密度およびCTEが増加してしまう。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、0モル%超から4.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度でCaOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、1.0モル%以上から3.0モル%以下、または1.5モル%以上から2.5モル%以下など、0.5モル%以上から3.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でCaOを含む。
【0103】
Laは、ガラスの靭性を増加させ、ガラスのヤング率および硬度も増加させる。しかしながら、ガラス組成物に多すぎるLaが添加されると、そのガラスは失透しやすくなり、そのガラスの製造可能性が低下してしまう。実施の形態において、そのガラス系基板は、一般に、0モル%以上から2.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度でLaを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、1.0モル%以上から1.5モル%以下など、0.5モル%以上から2.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でLaを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、Laを含まないまたは実質的に含まない。
【0104】
も、ガラスの靭性を増加させ、ガラスのヤング率および硬度を増加させる。しかしながら、ガラス組成物に多すぎるYが添加されると、そのガラスは失透しやすくなり、そのガラスの製造可能性が低下してしまう。実施の形態において、そのガラス系基板は、0モル%以上から2.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度などでYを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、0.5モル%以上から1.5モル%以下の量でYを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、Yを含まないまたは実質的に含まない。

【0105】
TiOも、ガラスの増加した靭性に寄与すると同時に、ガラスを軟化させる。しかしながら、ガラス組成物に多すぎるTiOが添加されると、そのガラスは失透しやすくなり、望ましくない着色を示す。実施の形態において、そのガラス系基板は、0モル%以上から2.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度などでTiOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、0.5モル%以上から1.5モル%以下の量でTiOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、TiOを含まないまたは実質的に含まない。
【0106】
ZrOは、ガラスの靭性に寄与する。しかしながら、ガラス組成物に多すぎるZrOが添加されると、少なくとも一部には、ガラス中のZrOの低溶解度のために、ガラス中に望ましくないジルコニア含有物が形成されることがある。実施の形態において、そのガラス系基板は、0モル%以上から2.5モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の濃度などでZrOを含む。実施の形態において、そのガラス系基板は、1.0モル%以上から1.5モル%以下など、0.5モル%以上から2.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でZrOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、ZrOを含まないまたは実質的に含まない。
【0107】
SrOは、ここに開示されたガラス組成物の液相温度を低下させる。実施の形態において、そのガラス系基板は、0.2モル%以上から0.8モル%以下、または0.4モル%以上から0.6モル%以下など、0モル%以上から1.0モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でSrOを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、SrOを実質的に含まないまたは含まないことがある。
【0108】
実施の形態において、そのガラス系基板は、必要に応じて、1種類以上の清澄剤を含むことがある。いくつかの実施の形態において、その清澄剤は、例えば、SnOを含むことがある。そのような実施の形態において、SnOは、0モル%以上から0.1モル%以下など、0.2モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でガラス系基板中に存在することがある。他の実施の形態において、SnOは、0モル%以上から0.2モル%以下、または0.1モル%以上から0.2モル%以下など、0.2モル%以下、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲の量でガラス系基板中に存在することがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基板は、SnOを実質的に含まないまたは含まないことがある。
【0109】
実施の形態において、そのガラス系基板は、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を実質的に含まないことがある。他の実施の形態において、そのガラス系基板は、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を含まないことがある。
【0110】
1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたガラス物品は、非晶質微細構造を示すことがあり、結晶または晶子を実質的に含まないことがある。言い換えると、そのガラス物品は、いくつかの実施の形態において、ガラスセラミック材料を除く。
【0111】
そのガラス系基板は、ガラスセラミックを含むことがある。そのガラスセラミックは、相集合により特徴付けられ、その相集合は、非晶相および少なくとも1つの結晶相を含む。そのガラスセラミックの結晶相は、ケイ酸リチウム、ベータ・スポジュメン、またはスピネル結晶構造など、どの適切な結晶構造を含んでもよい。そのガラスセラミックを含有するガラス系基板は、前駆体ガラスのセラミック化など、どの適切な方法により形成されてもよい。
【0112】
そのガラス系基板は、どの適切な方法により成形されてもよい。実施の形態において、そのガラス系基板は、スロット成形法、フロート成形法、圧延成形法、およびフュージョン成形法を含む過程によって成形することができる。ガラス系基板を成形するための延伸過程が、欠陥が少ない薄いガラス物品を成形できるので、望ましい。
【0113】
そのガラス系基板は、それが成形される様式によって特徴付けられることがある。例えば、そのガラス系基板は、フロート成形可能(すなわち、フロート法により成形される)、ダウンドロー可能、および特に、フュージョン成形可能またはスロットドロー可能(すなわち、フュージョンドロー法またはスロットドロー法などのダウンドロー法により成形される)と特徴付けられることがある。
【0114】
ここに記載されたガラス系物品のいくつかの実施の形態は、ダウンドロー法により成形されることがある。ダウンドロー法により、比較的無垢な表面を備えた均一な厚さを有するガラス系基板が生成される。ガラス系基板および結果として得られるガラス系物品の平均曲げ強度は、表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小な無垢な表面は、より高い初期強度を有する。それに加え、ダウンドローされたガラス系基板は、費用のかかる研削および研磨を必要とせずに最終用途に使用できる、非常に平らで滑らかな表面を有する。
【0115】
そのガラス系基板のいくつかの実施の形態は、フュージョン成形可能(すなわち、フュージョンドロー法を使用して成形可能)と記載されることがある。このフュージョン法では、溶融ガラス原材料を受け容れるための通路を有する延伸槽が使用される。その通路は、通路の両側で通路の長さに沿って上部で開いた堰を有する。通路が溶融材料で満たされたときに、溶融ガラスは堰から溢れ出る。溶融ガラスは、重力のために、2つの流れるガラスフイルムとして、延伸槽の外面を下方に流れる。延伸槽のこれらの外面は、延伸槽の下のエッジで接合するように、下方かつ内側に延在する。その2つの流れるガラスフイルムは、このエッジで結合して、融合し、1つの流れるガラス物品を形成する。このフュージョンドロー法は、通路を越えて流れる2つのガラスフイルムは互いに融合するので、結果として得られたるガラス系基板の外面のいずれも、装置のどの部分とも接触しないという利点を提示する。それゆえ、フュージョンドローされたガラス系基板の表面特性は、そのような接触の影響を受けない。
【0116】
ここに記載されたガラス基板のいくつかの実施の形態は、スロットドロー法により成形されることがある。このスロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法において、溶融原材料ガラスが延伸槽に供給される。この延伸槽の底部は、開いたスロットを有し、このスロットは、スロットの長さに亘り延在するノズルを有する。この溶融ガラスは、ノズル/スロットを通って流れ、連続したガラス系基板として下方に徐冷領域中に延伸される。
【0117】
ここに開示されたガラス系物品は、ディスプレイを備えた物品(またはディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電子機器)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐磨耗性またはその組合せを必要とする任意の物品などの別の物品に組み込まれることがある。ここに開示されたガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示の物品が、図3Aおよび3Bに示されている。詳しくは、図3Aおよび3Bは、前面204、背面206、および側面208を有する筐体202;その筐体の少なくとも部分的に内側にまたは完全に中にあり、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイ210を含む電気部品(図示せず);およびそのディスプレイを覆うように筐体の前面にまたはその上にあるカバー基板212を備えた家庭用電子機器200を示している。カバー基板212および/または筐体は、ここに開示されたガラス系物品のいずれかを含むことがある。
【実施例
【0118】
実施の形態が、以下の実施例によりさらに明白になるであろう。これらの実施例は、先に記載された実施の形態を限定するものではないことが理解されよう。
【0119】
下記の表Iの組成を有するガラス系物品を調製した。その成分の濃度が、モル%で与えられている。実施例1をセラミック化して、ガラスセラミックを形成した。そのガラス系基板の厚さは0.8mmであった。
【0120】
【表1】
【0121】
次に、このガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品を製造した。そのガラス系基板およびガラス系物品の性質が、下記の表2に与えられている。ヤング率(E)、硬度(H)、および破壊靭性(KIC)は、ガラス系物品を形成するためにイオン交換される前のガラス系基板について測定された。落下性能を測定するために、ガラス系物品をスマートフォンを模倣したパックに取り付け、30グリットの研磨紙上に落下させた。その落下性能は、ガラス系物品が破損する前のcmで表された最大落下高さに関して報告されている。
【0122】
【表2】
【0123】
落下性能と式(I)の値との間の関係が、図4に示されている。落下性能と式(II)の値との間の関係が、図5に示されている。図4および5に示されるように、式(I)および(II)を満たすガラス系物品は、改善された落下性能を示す。図4および5に示されるように、式(I)および(II)を満たす実施例1~3の全ては、式(I)および(II)を満たさなかった比較例A~Dよりも良好な落下性能を示した。
【0124】
本明細書に開示された全ての範囲は、範囲が開示された前または後に明白に述べられていようとなかろうと、広く開示された範囲により包含される任意と全ての範囲および部分的範囲を含む。
【0125】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るという前提で、包含することが意図されている。
【0126】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0127】
実施形態1
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
を含み、
IC ×DOC/t×√STE≧7.0×1011Pa2.51.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、tはメートルで表される前記ガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである、ガラス系物品。
【0128】
実施形態2
IC ×DOC/t×√STE≧8.0×1011Pa2.51.5
である、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0129】
実施形態3
IC ×DOC/t×√STE≧9.0×1011Pa2.51.5
である、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0130】
実施形態4
IC ×DOC/t×√STE≧9.5×1011Pa2.51.5
である、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0131】
実施形態5
IC ×DOC/t×√STE≧1.0×1012Pa2.51.5
である、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0132】
実施形態6
ガラス系物品において、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
を含み、
IC ×DOC×√STE≧5.6×10Pa2.52.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、tはメートルで表される前記ガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである、ガラス系物品。
【0133】
実施形態7
IC ×DOC×√STE≧6.0×10Pa2.52.5
である、実施形態6に記載のガラス系物品。
【0134】
実施形態8
IC ×DOC×√STE≧7.0×10Pa2.52.5
である、実施形態6に記載のガラス系物品。
【0135】
実施形態9
IC ×DOC×√STE≧8.0×10Pa2.52.5
である、実施形態6に記載のガラス系物品。
【0136】
実施形態10
ガラス系物品において、
全ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層、
を含み、
IC ×DOC×H/E×√STE≧4.1×10Pa2.52.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、Hは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである、ガラス系物品。
【0137】
実施形態11
IC ×DOC×H/E×√STE≧4.5×10Pa2.52.5
である、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0138】
実施形態12
IC ×DOC×H/E×√STE≧5.0×10Pa2.52.5
である、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0139】
実施形態13
IC ×DOC×H/E×√STE≧5.5×10Pa2.52.5
である、実施形態10に記載のガラス系物品。
【0140】
実施形態14
DOC≧75μmである、実施形態1から13のいずれかに記載のガラス系物品。
【0141】
実施形態15
DOC≦300μmである、実施形態1から14のいずれかに記載のガラス系物品。
【0142】
実施形態16
DOC≦0.4tである、実施形態1から15のいずれかに記載のガラス系物品。
【0143】
実施形態17
DOC≧0.1tである、実施形態1から16のいずれかに記載のガラス系物品。
【0144】
実施形態18
95MPa以上の最大中央張力CTを有する、実施形態1から17のいずれかに記載のガラス系物品。
【0145】
実施形態19
tがmmで表される、120/√tMPa以下の最大中央張力CTを有する、実施形態1から18のいずれかに記載のガラス系物品。
【0146】
実施形態20
前記ガラス系物品が1.0mm以下の厚さtを有する、実施形態1から19のいずれかに記載のガラス系物品。
【0147】
実施形態21
前記ガラス系物品が0.3mm以上の厚さtを有する、実施形態1から20のいずれかに記載のガラス系物品。
【0148】
実施形態22
STE≧20Pa・mである、実施形態1から21のいずれかに記載のガラス系物品。
【0149】
実施形態23
5Pa・m≦STE≦10Pa・mである、実施形態1から21のいずれかに記載のガラス系物品。
【0150】
実施形態24
前記圧縮応力層が、100MPa以上の圧縮応力CSを有する、実施形態1から23のいずれかに記載のガラス系物品。
【0151】
実施形態25
前記圧縮応力層が、400MPa以上の圧縮応力CSを有する、実施形態1から24のいずれかに記載のガラス系物品。
【0152】
実施形態26
前記圧縮応力層が、1300MPa以下の圧縮応力CSを有する、実施形態1から25のいずれかに記載のガラス系物品。
【0153】
実施形態27
前記ガラス系物品がガラスセラミックから作られている、実施形態1から26のいずれかに記載のガラス系物品。
【0154】
実施形態28
前記ガラス系物品が、SiO、Al、B、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含む、実施形態1から27のいずれかに記載のガラス系物品。
【0155】
実施形態29
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、0.75MPa√m以上のKICを有する、実施形態1から28のいずれかに記載のガラス系物品。
【0156】
実施形態30
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、1.5MPa√m以下のKICを有する、実施形態1から29のいずれかに記載のガラス系物品。
【0157】
実施形態31
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、6.0GPa以上の硬度Hを有する、実施形態1から30のいずれかに記載のガラス系物品。
【0158】
実施形態32
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、8.0GPa以下の硬度Hを有する、実施形態1から31のいずれかに記載のガラス系物品。
【0159】
実施形態33
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、80GPa以上のヤング率Eを有する、実施形態1から32のいずれかに記載のガラス系物品。
【0160】
実施形態34
前記ガラス系物品の中心での組成および相集合と等しい組成および相集合を有するガラス系基板が、120GPa以下のヤング率Eを有する、実施形態1から33のいずれかに記載のガラス系物品。
【0161】
実施形態35
方法において、
ガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有する該ガラス系物品を形成する工程、
を有してなり、
IC ×DOC/t×√STE≧7.0×1011Pa2.51.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、tはメートルで表される前記ガラス系物品の厚さであり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである、方法。
【0162】
実施形態36
方法において、
ガラス系基板をイオン交換して、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を有する該ガラス系物品を形成する工程、
を有してなり、
IC ×DOC×H/E×√STE≧4.1×10Pa2.52.5であり、
式中、KICは、前記ガラス系基板のPa・m0.5で表される破壊靭性であり、DOCはメートルで表される前記圧縮深さであり、Hは、前記ガラス系基板のパスカルで表される硬度であり、Eは、前記ガラス系基板のパスカルで表されるヤング率であり、STEは、Pa・mで表される前記ガラス系物品の貯蔵歪みエネルギーである、方法。
【0163】
実施形態37
前記ガラス系基板がガラスセラミックから作られている、実施形態35または36に記載の方法。
【0164】
実施形態38
前記イオン交換する工程が、前記ガラス系基板を溶融塩浴と接触させる工程を含む、実施形態35から37のいずれかに記載の方法。
【0165】
実施形態39
前記溶融塩浴が、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムの少なくとも一方を含む、実施形態38に記載の方法。
【0166】
実施形態40
前記接触させる工程が、4時間以上から48時間までに亘る、実施形態38または39に記載の方法。
【0167】
実施形態41
前記接触させる工程中、前記溶融塩浴が、400℃以上から500℃以下の温度である、実施形態38から40のいずれかに記載の方法。
【0168】
実施形態42
実施形態35から41のいずれかに記載の方法により製造されたガラス系物品。
【0169】
実施形態43
家庭用電気製品において、
前面、背面および側面を有する筐体と、
前記筐体内に少なくとも部分的に設けられた電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびディスプレイを含み、該ディスプレイは前記筐体の前面またはそれに隣接して設けられている、電気部品と、
前記ディスプレイ上に配置されたカバーガラスと、
を備え、
前記筐体の一部または前記カバーガラスの一部の少なくとも一方は、実施形態1から34または42のいずれかに記載のガラス系物品から作られている、家庭用電気製品。
【符号の説明】
【0170】
100 ガラス系物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1のセグメント
122 第2のセグメント
130 中央領域
200 家庭用電子機器
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバー基板
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5