IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7825348フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物
<>
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図1
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図2A
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図2B
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図3
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図4
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図5
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図6A
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図6B
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図7A
  • -フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-26
(45)【発行日】2026-03-06
(54)【発明の名称】フュージョン成形及び蒸気強化処理が可能な白金適合性のあるガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/097 20060101AFI20260227BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20260227BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20260227BHJP
【FI】
C03C3/097
C03B17/06
C03C21/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022568594
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021031524
(87)【国際公開番号】W WO2021231267
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2024-05-09
(31)【優先権主張番号】63/023,518
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジンシー
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0277085(US,A1)
【文献】国際公開第2016/104454(WO,A1)
【文献】特表2019-502639(JP,A)
【文献】特表2013-544227(JP,A)
【文献】国際公開第2019/099814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/097
C03B 17/06
C03C 21/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系物品であって、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層と、
前記ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、
前記組成は、
SiOと、
Alと、
Oと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4以下のRO/Alと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のP
2.0モル%以上5.0モル%以下のLi Oと、を含み、
前記圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、
前記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から前記層深さに向かって減少し、
前記層深さが5μmを上回っている、ガラス系物品。
【請求項2】
前記組成が、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alを有している、請求項1に記載のガラス系物品。
【請求項3】
前記ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、請求項1又は2に記載のガラス系物品。
【請求項4】
前記ガラス系物品が相分離を示さず、
前記ガラス系物品がヘイズのない外観を有している、請求項1又は2に記載のガラス系物品。
【請求項5】
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、請求項1又は2に記載のガラス系物品。
【請求項6】
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、
55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、
10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、
0モル%以上10.0モル%以下のBと、
6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、
を含む、請求項1又は2に記載のガラス系物品。
【請求項7】
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、請求項6に記載のガラス系物品。
【請求項8】
前面、背面及び側面を有する筐体と、
前記筐体の内部に少なくとも一部が収容される電気部品であって、コントローラ、メモリ、及び前記筐体の前記前面またはその隣接部に設けられるディスプレイを少なくとも含む電気部品と、
ディスプレイを覆うように配置されるカバー基板と、
を備える消費者向け電子機器製品であって、
前記筐体及び前記カバー基板の少なくとも一方が、その少なくとも一部に、請求項1~のいずれか1項に記載の前記ガラス系物品を備えている、消費者向け電子機器製品。
【請求項9】
ガラス系基板を、0.1MPa以上の圧力と、0.05MPa以上の水分分圧と、85℃超の温度を有する処理環境に曝露することにより、ガラス系物品を形成するステップを含む方法であって、
前記ガラス系基板は、
SiOと、
Alと、
Oと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4以下のRO/Alと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、
2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含み、
前記ガラス系物品は、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、25MPa以上の圧縮応力を有する圧縮応力層と、
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層であって、該水素含有層の水素濃度が最大水素濃度から前記層深さに向かって減少する、水素含有層と、を有しており、
前記層深さが5μmを上回っている、方法。
【請求項10】
前記処理環境が飽和蒸気環境であり、
前記処理環境が1MPa以上の圧力を有しており、
前記処理環境が150℃以上の温度を有している、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラス系基板をフュージョン成形プロセスにより製造するステップをさらに含む、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年5月12日を出願日とする米国仮特許出願第63/023518号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮出願のすべての開示内容は、本明細書の依拠するところとし、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、蒸気処理で強化したガラス系物品、ガラス系物品の形成のために用いるガラス組成物、及びガラス系物品を強化するための蒸気処理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(例えば、腕時計型やフィットネストラッカなど)などの携帯電子デバイスの小型化・複雑化が進んでいる。また、これを受け、そのような携帯電子デバイスの外面の少なくとも1つにおいて従来から使用されている材料の複雑化も進んでいる。例えば、消費者のニーズに合わせて携帯電子デバイスの小型化・薄型化が進むにつれて、携帯電子デバイスに使用されるディスプレイカバーや筐体も小型・薄型化され、その結果、これらの部品の形成に使用される材料に対する性能要件も高くなってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、携帯電子デバイスに使用する材料として、耐損傷性などの性能が高く、しかも低コストかつ容易に製造可能な材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様(1)において、ガラス系物品が提供される。ガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、ガラス系物品の表面から層深さまで延在する水素含有層と、ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、ガラス系物品の中心部の組成は、SiOと、Alと、KOと、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4以下のRO/Alと、3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含む。圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から層深さに向かって減少し、層深さが5μmを上回っている。
【0006】
態様(2)において、融合線をさらに有している、態様(1)に記載のガラス系物品が提供される。
【0007】
態様(3)において、ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、態様(1)又は(2)に記載のガラス系物品が提供される。
【0008】
態様(4)において、ガラス系物品が実質的には相分離を示さない、態様(1)又は(2)に記載のガラス系物品が提供される。
【0009】
態様(5)において、ガラス系物品の中心部の組成が、Bをさらに含む、態様(1)~(4)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0010】
態様(6)において、ガラス系物品の中心部の組成が、NaOをさらに含む、態様(1)~(5)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0011】
態様(7)において、ガラス系物品の中心部の組成が、SnOをさらに含む、態様(1)~(6)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0012】
態様(8)において、ガラス系物品の中心部の組成が、0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、態様(1)~(7)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0013】
態様(9)において、ガラス系物品の中心部の組成が、55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、0モル%以上10.0モル%以下のBと、6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、を含む、態様(1)~(8)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0014】
態様(10)において、ガラス系物品の中心部の組成が、4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、態様(1)~(9)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0015】
態様(11)において、ガラス系物品の中心部の組成が、0モル%超3.0モル%以下のBを含む、態様(1)~(10)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0016】
態様(12)において、ガラス系物品の中心部の組成と同一の組成を有するガラスのジルコン分解粘度が35kP以下である、態様(1)~(11)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0017】
態様(13)において、ガラス系物品の中心部の組成と同一の組成を有するガラスの液相粘度が100kP以上である、態様(1)~(12)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0018】
態様(14)において、ガラス系物品が実質的にヘイズのない外観を有している、態様(1)~(13)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0019】
態様(15)において、圧縮深さが5μmを上回っている、態様(1)~(14)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0020】
態様(16)において、圧縮応力層が、200MPa以上の圧縮応力を有している、態様(1)~(15)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0021】
態様(17)において、組成が、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alを有している、態様(1)~(16)のいずれか1つに記載のガラス系物品が提供される。
【0022】
態様(18)において、消費者向け電子機器製品が提供される。消費者向け電子機器製品は、前面、背面及び側面を有する筐体と、筐体の内部に少なくとも一部が収容される電気部品であって、コントローラ、メモリ、及び筐体の前面またはその隣接部に設けられるディスプレイを少なくとも含む電気部品と、ディスプレイを覆うように配置されるカバー基板と、を備える。そして、筐体及びカバー基板の少なくとも一方が、その少なくとも一部に、態様(1)~(17)のいずれか1つに記載のガラス系物品を備えている。
【0023】
態様(19)において、ガラス系物品が提供される。ガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、ガラス系物品の表面から層深さまで延在する水素含有層と、ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、組成は、SiOと、Alと、KOと、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alと、3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含む。圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から層深さに向かって減少し、層深さが5μmを上回っている。
【0024】
態様(20)において、ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、態様(19)に記載のガラス系物品が提供される。
【0025】
態様(21)において、ガラス系物品が実質的には相分離を示さない、態様(19)又は(20)に記載のガラス系物品が提供される。
【0026】
態様(22)において、ガラス系物品が提供される。ガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、ガラス系物品の表面から層深さまで延在する水素含有層と、ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、組成は、SiOと、Alと、KOと、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alと、3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、を含む。圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から層深さに向かって減少し、層深さが5μmを上回っている。
【0027】
態様(23)において、ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、態様(22)に記載のガラス系物品が提供される。
【0028】
態様(24)において、ガラス系物品が実質的には相分離を示さない、態様(22)又は(23)に記載のガラス系物品が提供される。
【0029】
態様(25)において、方法が提供される。本方法は、ガラス系基板を、0.1MPa以上の圧力と、0.05MPa以上の水分分圧と、85℃超の温度を有する処理環境に曝露することにより、ガラス系物品を形成するステップを含む。ガラス系基板は、SiOと、Alと、KOと、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4以下のRO/Alと、3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含む。ガラス系物品は、ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、25MPa以上の圧縮応力を有する圧縮応力層と、ガラス系物品の表面から層深さまで延在する水素含有層であって、該水素含有層の水素濃度が最大水素濃度から層深さに向かって減少する、水素含有層と、を有しており、層深さが5μmを上回っている。
【0030】
態様(26)において、処理環境が飽和蒸気環境である、態様(25)に記載の方法が提供される。
【0031】
態様(27)において、処理環境が1MPa以上の圧力を有している、態様(25)又は(26)に記載の方法が提供される。
【0032】
態様(28)において、処理環境が150℃以上の温度を有している、態様(25)~(27)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0033】
態様(29)において、ガラス系基板をフュージョン成形プロセスにより製造するステップをさらに含む、態様(25)~(28)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0034】
態様(30)において、ガラス系基板に対して、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理を行わない、態様(25)~(29)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0035】
態様(31)において、ガラス系基板が、Bをさらに含む、態様(25)~(30)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0036】
態様(32)において、ガラス系基板が、NaOをさらに含む、態様(25)~(31)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0037】
態様(33)において、ガラス系基板が、SnOをさらに含む、態様(25)~(32)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0038】
態様(34)において、ガラス系基板が、0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、態様(25)~(33)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0039】
態様(35)において、ガラス系基板が、55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、0モル%以上10.0モル%以下のBと、6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、を含む、態様(25)~(34)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0040】
態様(36)において、ガラス系基板が、4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、態様(25)~(35)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0041】
態様(37)において、ガラス系基板が、0モル%超3.0モル%以下のBを含む、態様(25)~(36)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0042】
態様(38)において、ガラス系基板が融合線を有している、態様(25)~(37)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0043】
態様(39)において、ガラス系基板が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、態様(25)~(38)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0044】
態様(40)において、ガラス系基板のジルコン分解粘度が35kP以下である、態様(25)~(39)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0045】
態様(41)において、ガラス系基板の液相粘度が100kP以上である、態様(25)~(40)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0046】
態様(42)において、ガラス系物品が実質的にヘイズのない外観を有している、態様(25)~(41)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0047】
態様(43)において、圧縮深さが5μmを上回っている、態様(25)~(42)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0048】
態様(44)において、圧縮応力層が、200MPa以上の圧縮応力を有している、態様(25)~(43)のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0049】
態様(45)において、ガラスが提供される。本ガラスは、55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、0モル%以上10.0モル%以下のBと、6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alと、を含む。
【0050】
態様(46)において、0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、態様(45)に記載のガラスが提供される。
【0051】
態様(47)において、4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、態様(45)又は(46)に記載のガラスが提供される。
【0052】
態様(48)において、Bをさらに含む、態様(45)~(47)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0053】
態様(49)において、0モル%超3モル%以下のBをさらに含む、態様(45)~(48)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0054】
態様(50)において、NaOをさらに含む、態様(45)~(49)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0055】
態様(51)において、0モル%以上11モル%以下のNaOをさらに含む、態様(45)~(50)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0056】
態様(52)において、SnOをさらに含む、態様(45)~(51)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0057】
態様(53)において、ジルコン分解粘度が35kP以下である、態様(45)~(52)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0058】
態様(54)において、液相粘度が100kP以上である、態様(45)~(53)のいずれか1つに記載のガラスが提供される。
【0059】
上記及び上記以外の態様、利点、及び顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】一実施形態に係るガラス系物品の代表的断面を示す図
図2A】本明細書に開示のガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示的な電子デバイスを示す平面図
図2B図2Aに示す例示的な電子デバイスの斜視図
図3】水の飽和条件を圧力と温度の関数で示すプロット図
図4】ガラス1ポンド(約0.45kg)当たりの玉鎖状白金欠陥の数をリン含有量の関数として示すプロット図
図5】ガラス中の玉鎖状白金欠陥を示す顕微鏡画像
図6A】本開示の一実施形態に係るガラス組成物と比較ガラス組成物についての、拡散散乱透過率対波長プロット図
図6B】本開示の一実施形態に係るガラス組成物と比較ガラス組成物についての、散乱比対波長プロット図
図7A】相分離の所見がある比較ガラス組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像
図7B】相分離の所見がある比較ガラス組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の説明において、図面に示す複数の図全体において同様の又は対応する部分については、同様の参照符号で示す。また、特に断りのない限り、「上(top)」、「下(bottom)」、「外(outward)」、「内(inward)」などの用語は便宜的なものであり、限定するための用語として解釈すべきものではないことも理解される。特に断りのない限り、値の範囲を記載する場合、当該範囲は、その上下限をいずれも含むと共に、その間の任意の部分範囲も含むものとする。また、特に断りのない限り、本明細書において、不定冠詞「a」、「an」及びこれに対応する定冠詞「the」は、「少なくとも1つ(at least one)」又は「1つ以上(one or more)」を意味する。また、本明細書及び図面に開示する種々の特徴は、ありとあらゆる組み合わせで使用することができることも理解される。
【0062】
本明細書において、「ガラス系(glass-based)」という用語は広義で用いており、(結晶相と残留非晶質ガラス相とを含む)ガラスセラミックなどの、全体又は一部がガラスでできたあらゆる物体を含むものとする。特に断りのない限り、本明細書に記載のガラスの組成は、いずれもモルパーセント(モル%)で表し、その成分は酸化物基準で示す。また、特に断りのない限り、温度はすべて摂氏(℃)で表す。
【0063】
本明細書において、「実質的に(substantially)」および「約(about)」という用語を用いる場合、あらゆる定量的比較、値、測定値などの表現において生じる得るそれらに特有の不確実性の程度を表す場合があることに留意されたい。また、本明細書では、ある定量的表現が、対象となる主題の基本的な機能を変化させることのない範囲で、記載した基準値から変動できる程度を表すためにも、「実質的に」及び「約」という用語を使用している。例えば、「KOを実質的に含まない」ガラスとは、KOがガラスに積極的には添加又はバッチ処理されていないが、不純物としてごく少量、例えば約0.01モル%未満の量で存在し得るガラスのことである。また、本明細書において、ある値を用語「約(about)」で修飾している場合、厳密な当該値そのものも開示している。例えば、「約10モル%を上回る」という用語によって、「10モル%以上」も開示していることになる。
【0064】
次に、種々の実施形態について詳細に説明する。添付の例及び図面は、これら種々の実施形態の例を示すものである。
【0065】
本明細書に開示のガラス系物品は、ガラス系基板を蒸気処理することにより、物品の表面から圧縮深さ(depth of compression:DOC)まで延在する圧縮応力層を生成することにより形成される。ガラス系基板の組成は、ガラス系基板をフュージョン成形することができ、かつ、成形プロセス時に白金欠陥が発生することがないように、ガラス系基板がフュージョン成形可能かつ白金適合性を有するように選択される。さらに、ガラス系基板の組成及び処理方法は、ガラス系物品の表面にヘイズが生成されることがないように選択される。圧縮応力層が有する応力は最大応力から圧縮深さに向かって減少する。いくつかの実施形態では、最大圧縮応力の位置をガラス系物品の表面とすることができる。本明細書において、圧縮深さ(DOC)とは、ガラス系物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを意味している。つまり、ガラス系物品は、最大中心張力(central tension:CT)を有する引張応力領域も有しており、これによりガラス系物品内の力を均衡させている。
【0066】
また、ガラス系物品は、物品の表面から層深さまで延在する水素含有層をさらに有している。水素含有層が有する水素濃度は、ガラス系物品の最大水素濃度から層深さに向かって減少する。いくつかの実施形態では、最大水素濃度の位置を、ガラス系物品の表面とすることができる。
【0067】
ガラス系物品は、水蒸気を含有する環境にガラス系基板を曝露することにより形成することができ、これにより水素種がガラス系基板に浸透し、水素含有層及び/又は圧縮応力層を有するガラス系物品を形成することが可能となる。本明細書において、「水素種(hydrogen species)」という用語は、水分子、ヒドロキシル、水素イオン、及びヒドロニウムを含む用語である。ガラス系基板の組成は、ガラス内への水素種の相互拡散を促進するように選択される。本明細書において、「ガラス系基板(glass-based substrate)」という用語は、水素含有層及び/又は圧縮応力層を有するガラス系物品を形成するために水蒸気含有環境に曝露する前の前駆体を指す。同様に、「ガラス系物品(glass-based article)」という用語は、水素含有層及び/又は圧縮応力層を有する、曝露後の物品を指す。
【0068】
本明細書に開示のガラス系物品では、従来のイオン交換や、熱焼戻し、積層加工処理を行わずに、圧縮応力層を作ることができる。イオン交換プロセスの場合、使用済み溶融塩浴の形で多量の廃棄物が発生し、その処理にコストがかかるということや、一部のガラス組成にしか適用できないということがある。熱焼戻しに関しては、薄板を熱焼戻しすると、焼き入れ(quenching)プロセスでの隙間(air gap)が小さいため、擦り傷がつきやすく、性能や歩留まりが低下するため、実際の熱焼戻し処理では厚いガラス試料が必要であるということがあった。さらに、薄いガラス板を熱焼戻し処理する場合、表面から縁までの全域で圧縮応力を均一にすることが難しいということもある。また、積層加工プロセスでは、大判の板を使用可能なサイズに切断する際に、引張応力領域が露出してしまうという問題があった。
【0069】
一方、水蒸気処理でガラス系物品を形成する場合、溶融塩を使用しないため、イオン交換処理に比べて廃棄物やコストの削減が可能となる。また、水蒸気処理は、熱焼戻しには適さない薄い(<2mm)厚さのガラスの強化も可能である。さらに、水蒸気処理は部品レベルで行うことができるため、積層加工プロセスで問題となっていた引張応力領域の露出を回避することもできる。つまり、本明細書に開示のガラス系物品は、高い圧縮応力と深い圧縮深さを有しながら、板厚を抑え低コストで製造することができる。
【0070】
図1に、いくつかの実施形態に係るガラス系物品100の代表的な断面を示す。ガラス系物品100は、第1の表面110と第2の表面112との間に延びる厚さtを有している。第1の圧縮応力層120は、第1の表面110から第1の圧縮深さまで延在している。第1の圧縮深さは、第1の表面110からガラス系物品100の内部に向かって測定される深さdを有している。第2の圧縮応力層122は、第2の表面112から第2の圧縮深さまで延在している。第2の圧縮深さは、第2の表面112からガラス系物品100の内部に向かって測定される深さdを有している。第1の圧縮深さと第2の圧縮深さの間には、引張応力領域130が存在している。複数の実施形態において、第1の圧縮深さdは、第2の圧縮深さdと実質同等又は同等とすることができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品の圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有することができ、例えば、30MPa以上、40MPa以上、50MPa以上、60MPa以上、70MPa以上、80MPa以上、90MPa以上、100MPa以上、110MPa以上、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、145MPa以上、150MPa以上、160MPa以上、170MPa以上、180MPa以上、190MPa以上、200MPa以上、210MPa以上、220MPa以上、230MPa以上、240MPa以上、250MPa以上、260MPa以上、270MPa以上、280MPa以上、290MPa以上、300MPa以上、310MPa以上、320MPa以上、330MPa以上、340MPa以上、350MPa以上、360MPa以上、370MPa以上、380MPa以上、390MPa以上、400MPa以上、410MPa以上、420MPa以上、又は420MPa超の圧縮応力を有することができる。いくつかの実施形態では、圧縮応力層は、25MPa以上450MPa以下の圧縮応力を有することができ、例えば、30MPa以上440MPa以下、40MPa以上430MPa以下、50MPa以上420MPa以下、60MPa以上410MPa以下、70MPa以上400MPa以下、80MPa以上390MPa以下、90MPa以上380MPa以下、100MPa以上370MPa以下、110MPa以上360MPa以下、120MPa以上350MPa以下、130MPa以上340MPa以下、140MPa以上330MPa以下、150MPa以上320MPa以下、160MPa以上310MPa以下、170MPa以上300MPa以下、180MPa以上290MPa以下、190MPa以上280MPa以下、200MPa以上270MPa以下、210MPa以上260MPa以下、220MPa以上250MPa以下、220MPa以上240MPa以下、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成される任意の部分範囲の圧縮応力を有することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、圧縮応力層の圧縮深さは5μm以上とすることができ、例えば、7μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、又は30μm超とすることができる。いくつかの実施形態では、圧縮応力層の圧縮深さは5μm以上100μm以下とすることができ、例えば、7μm以上90μm以下、10μm以上80μm以下、15μm以上70μm以下、20μm以上60μm以下、25μm以上50μm以下、30μm以上40μm以下、30μm以上35μm以下、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成可能な任意の部分範囲の圧縮深さとすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、深い圧縮深さと高い圧縮応力を有することができる。例えば、ガラス系物品は、本明細書に記載の複数の圧縮深さのうちのいずれかと複数の圧縮応力のうちのいずれかの組み合わせを有することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品の厚さをtとすると、ガラス系物品は、0.05t以上の圧縮深さを有することができ、例えば、0.06t以上、0.07t以上、0.08t以上、0.09t以上、0.10t以上、0.11t以上、0.12t以上、0.13t以上、0.14t以上、0.15t以上、0.16t以上、0.17t以上、0.18t以上、0.19t以上、又は0.19t超の圧縮深さを有してよい。いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、0.05t以上0.20t以下の圧縮深さを有することができ、例えば、0.06t以上0.19t以下、0.07t以上0.18t以下、0.08t以上0.17t以下、0.09t以上0.16t以下、0.10t以上0.15t以下、0.11t以上0.14t以下、0.12t以上0.13t以下、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成される任意の部分範囲の圧縮深さを有してよい。
【0075】
圧縮応力(表面圧縮応力を含む)は、有限会社折原製作所(日本)製のFSM-6000などの市販の機器を用いて、表面応力計(FSM)で測定される。表面応力を測定するためには、ガラスの複屈折に関係している応力光学係数(stress optical coefficient:SOC)の正確な測定が必要である。一方、応力光学係数は、ASTM規格C770-16「ガラスの応力光学係数測定の標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」に記載される手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。なお、本記載のすべての内容は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。圧縮深さは表面応力計で測定される。最大中心張力(CT)値はいずれも、当分技術分野において公知の散乱光偏光器(scattered light polariscope:SCALP)技術を使用して測定される。
【0076】
ガラス系物品の水素含有層は、5μm超の層深さ(depth of layer:DOL)を有することができる。いくつかの実施形態では、層深さを10μm以上とすることができ、例えば、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、75μm以上、80μm以上、85μm以上、90μm以上、95μm以上、又は95μm超の層深さとすることができる。いくつかの実施形態では、層深さを5μm超100μm以下とすることができ、例えば、10μm以上95μm以下、15μm以上90μm以下、20μm以上85μm以下、25μm以上80μm以下、30μm以上75μm以下、35μm以上70μm以下、40μm以上65μm以下、45μm以上60μm以下、50μm以上55μm以下、又はこれら範囲のいずれかの端点によって形成される任意の部分範囲の層深さとすることができる。この水素層深さは、上述の表面応力計技術で測定した圧縮深さ以上である。一般に、ガラス系物品が示す層深さは、周囲環境への曝露によって生成することのできる層深さよりも大きくなる。
【0077】
ガラス系物品の水素含有層は、ガラス系物品の厚さをtとすると、0.005t超の層深さ(DOL)を有することができる。いくつかの実施形態では、層深さを0.010t以上とすることができ、例えば、0.015t以上、0.020t以上、0.025t以上、0.030t以上、0.035t以上、0.040t以上、0.045t以上、0.050t以上、0.055t以上、0.060t以上、0.065t以上、0.070t以上、0.075t以上、0.080t以上、0.085t以上、0.090t以上、0.095t以上、0.10t以上、0.15t以上、以上0.20t、又は0.20t超の層深さとすることができる。いくつかの実施形態では、層深さを0.005t超0.205t以下とすることができ、例えば、0.010t以上0.200t以下、0.015t以上0.195t以下、0.020t以上0.190t以下、0.025t以上0.185t以下、0.030t以上0.180t以下、0.035t以上0.175t以下、0.040t以上0.170t以下、0.045t以上0.165t以下、0.050t以上0.160t以下、0.055t以上0.155t以下、0.060t以上0.150t以下、0.065t以上0.145t以下、0.070t以上0.140t以下、0.075t以上0.135t以下、0.080t以上0.130t以下、0.085t以上0.125t以下、0.090t以上0.120t以下、0.095t以上0.115t以下、0.100t以上0.110t以下、又はこれら範囲のいずれかの端点によって形成される任意の部分範囲の層深さとすることができる。
【0078】
層深さと水素濃度は、当技術分野において公知の二次イオン質量分析(secondary ion mass spectrometry:SIMS)技術で測定される。SIMS技術は、ある深さにおける水素濃度を測定することはできるが、ガラス系物品に存在する水素種を区別することはできない。このため、SIMS法で測定した水素濃度は、すべての水素種が関係する濃度となる。本明細書において、層深さ(DOL)は、ガラス系物品の中心部の水素濃度と等しい水素濃度が初めて現れるガラス系物品の表面下の深さを指す。この定義は、処理前のガラス系基板中の水素濃度を考慮して、処理プロセスで加入した水素の深さが層深さとなるように定めたものである。ただし実務上は、ガラス系物品の中心部の水素濃度は、水素濃度が実質的に一定となるガラス系物品の表面からの深さ位置での水素濃度で近似的に求めることができる。これは、当該深さ位置とガラス系物品の中心部とで水素濃度は変化しないと考えられるためである。この近似により、ガラス系物品の水素濃度を全深さで測定しなくても、層深さを求めることが可能となる。そして、水蒸気処理によってガラス系物品に圧縮応力層が形成されると、水素含有層が生成されたことがわかる。
【0079】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、ガラス系物品の水素含有層は、ガラス系基板の組成に含まれる水素イオン種の相互拡散によって得られると考えられる。H、HO、及び/又はHなどの水素含有種をガラス系基板に拡散させることにより、ガラス系物品を形成することができる。水はシラノール基を形成してガラス系基板に浸透し、ネットワーク構造を破壊してガラスの体積を膨張させることがある。そして、このような体積膨張によって、ガラス系物品に圧縮応力層を生成することができる。圧縮応力層の圧縮応力と圧縮深さは、ガラス系物品の形成に使用するガラス系基板の組成や水蒸気処理条件(例えば、温度、圧力、水分含有量や処理時間など)によって変化し得る。水蒸気処理により製造したガラス系物品は、ナトリウムとカリウムとのイオン交換強化プロセスにより生成される応力プロファイルと同様の応力プロファイルを有することができる。
【0080】
また、圧縮応力層を有するガラス系物品は、水蒸気処理プロセス前のガラス系基板と比べて、質量の増加も見られる。このガラス系物品の質量増加は、水蒸気処理によって水素含有層が形成されたことを示している。そして、この質量の増加量に直接関係しているのが、水蒸気処理プロセスによってガラス系物品に加入した水素種の量である。
【0081】
本明細書に開示のガラス系物品は、別の物品に組み込むことができる。そのような別の物品としては、例えば、ディスプレイを有する物品(又は、ディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット端末、コンピュータ、ナビゲーションシステム、ウェアラブルデバイス(例えば、腕時計型)などの家電機器)や、建築用物品、運輸用物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化物品などの、一定の透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、又はそれらの組み合わせを必要とする任意の物品が挙げられる。図2A及び図2Bに、本明細書に開示のガラス系物品のいずれかを組み込んだ例示的な物品を示す。具体的には、図2A及び図2Bは消費者向け電子デバイス200を示している。消費者向け電子デバイス200は、前面204、背面206及び側面208を有する筐体202と、筐体の内部に少なくとも一部又は全体が収容され、かつコントローラ、メモリ、及び筐体の前面またはその隣接部に設けられるディスプレイ210を少なくとも含む電気部品(図示せず)と、ディスプレイを覆うように筐体の前面に設けられる又は前面を覆うカバープレート212と、を備えている。いくつかの実施形態では、カバープレート212及び筐体202の少なくとも一方が、その少なくとも一部に、本明細書に開示のガラス系物品のいずれかを備えることができる。
【0082】
ガラス系物品は、任意の適切な組成を有するガラス系基板から形成することができる。ガラス系基板の組成は、水素含有種の拡散を促進して水素含有層と圧縮応力層とを有するガラス系物品を効率よく形成できることと、ガラス系物品をフュージョン成形できることと、製造プロセス時に白金欠陥が発生することがないことと、水蒸気処理プロセスによりヘイズが発生することがないこととが達成されるように、特に選択することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、SiOと、Alと、Pと、KOと、そして任意選択的にLiOとを含む組成を有することができる。いくつかの実施形態では、水素種は、ガラス系物品の中心部までは拡散しない。換言すれば、ガラス系物品の中心部は、水蒸気処理の影響を最も受けにくい部分である。このため、ガラス系物品の中心部は、含水環境での処理を行う前のガラス系基板の組成と実質同一又は同一の組成を有することができる。ガラス系物品の中心部の組成とは、ガラス系物品の厚さをtとした場合に、ガラス系物品の各表面から少なくとも0.5tの距離にある任意の点で測定した組成を指す。ガラス系物品の中心部の組成は、マイクロプローブ分析などの任意の適切なプロセスにより測定することができ、ガラス系物品の形成に使用するガラス系基板の組成で近似的に求めることもできる。
【0083】
ガラス系基板は、任意の適切な量のSiOを含むことができる。SiOは最も多く含まれる成分であり、よって、ガラス組成物から形成されるガラスネットワークの主成分もSiOである。ガラス組成物に占めるSiOの濃度が高すぎると、ガラス組成物の成形性が低下する場合がある。これは、SiO濃度が高いほどガラスが溶融しにくくなり、ひいてはガラスの成形性に悪影響を及ぼすためである。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、55.0モル%以上65.0モル%以下の量のSiOを含むことができ、例えば、55.5モル%以上64.5モル%以下、56.0モル%以上64.0モル%以下、56.5モル%以上63.5モル%以下、57.0モル%以上63.0モル%以下、57.5モル%以上62.5モル%以下、58.0モル%以上62.0モル%以下、58.5モル%以上61.5モル%以下、59.0モル%以上61.0モル%以下、59.5モル%以上60.5モル%以下、60.0モル%以上65.0モル%以下、又はこれら範囲のいずれかの端点によって形成される任意の部分範囲の量のSiOを含むことができる。
【0084】
ガラス系基板は、任意の適切な量のAlを含むことができる。SiOと同様、Alもガラスネットワーク形成物質として機能することができる。Alは、ガラス組成物から形成されるガラス融液中で四面体配位するため、Alの量が多すぎるとガラス組成物の粘度が上昇し、ガラス組成物の成形性を低下させる恐れがある。しかし、Alの濃度が、ガラス組成物中のSiO濃度及びアルカリ酸化物濃度に対してバランスしている場合、Alによってガラス融液の液相温度が下がるため、液相粘度が上昇し、フュージョン成形プロセスなどの特定の成形プロセスとのガラス組成物の適合性を向上させることができる。ガラス系基板にAlを含めることにより、相分離が妨げられ、ガラス中の非架橋酸素(non-bridging oxygen:NBO)の数が減少する。さらに、Alはイオン交換の効果も向上させることができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、10.0モル%以上15.0モル%以下の量のAlを含むことができ、例えば、10.5モル%以上14.5モル%以下、11.0モル%以上14.0モル%以下、11.5モル%以上13.5モル%以下、12.0モル%以上13.0モル%以下、12.5モル%以上13.0モル%以下、又はこれら範囲のいずれかの端点によって形成される任意の部分範囲の量のAlを含むことができる。
【0085】
ガラス系基板は、所望の水素拡散性を得るのに十分な任意の量のPを含むことができる。ガラス系基板にリンを含めることにより、相互拡散の高速化が促進される。したがって、リンを含有するガラス系基板を用いることにより、水素含有層を有するガラス系物品を効率的に形成することができる。また、Pを含めることにより、比較的短い処理時間で深い層深さ(例えば、約10μm超)のガラス系物品を製造することができる。しかし、Pの量が6.0モル%を上回っている場合、商用ガラス製造に一般的に使用されている、白金を含有するガラス形成装置(例えば、溶融装置や清澄装置)への接触によって白金欠陥が形成されやすいガラスとなってしまう。換言すれば、Pを6.0モル%より多く含むガラスは白金適合性を持たない。一方、Pの量が3.5モル%未満の場合、ガラスは、拡散性や、液相温度、ジルコン適合性が所望のものとならない。ジルコン適合性は、フュージョン成形設備のジルコンアイソパイプなどの、一般的なガラス成形装置を使用する際に重要である。複数の実施形態において、ガラス系基板は、3.5モル%以上6.0モル%以下の量のPを含むことができ、例えば、3.5モル%以上5.5モル%以下、3.6モル%以上5.9モル%以下、3.7モル%以上5.8モル%以下、3.8モル%以上5.7モル%以下、3.9モル%以上5.6モル%以下、4.0モル%以上5.5モル%以下、4.1モル%以上5.4モル%以下、4.2モル%以上5.3モル%以下、又はこれら範囲のいずれかの端点によって形成される任意の部分範囲の量のPを含むことができる。
【0086】
ガラス系基板は、任意の適切な量のLiOを含むことができる。ガラス系基板の他の実施形態では、意図的なLiO添加を行わない。ガラス系基板にLiOを含めることにより、蒸気強化によってヘイズが発生してしまうことに対するガラス系物品の耐性を向上させることができる。ガラス系基板中のLiO含有量は、ガラス系基板の200P温度の低下に直接相関しており、よって、LiOを含めることによりガラスの溶融性が向上する。また、ガラス系基板中のLiO含有量は、ガラス系基板の熱膨張係数とも直接相関している。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、2.0モル%以上5.0モル%以下の量のLiOを含むことができ、例えば、2.1モル%以上4.9モル%以下、2.2モル%以上4.8モル%以下、2.3モル%以上4.7モル%以下、2.4モル%以上4.6モル%以下、2.5モル%以上4.5モル%以下、2.6モル%以上4.4モル%以下、2.7モル%以上4.3モル%以下、2.8モル%以上4.2モル%以下、2.9モル%以上4.1モル%以下、3.0モル%以上4.0モル%以下、3.1モル%以上3.9モル%以下、3.2モル%以上3.8モル%以下、3.3モル%以上3.7モル%以下、3.4モル%以上3.6モル%以下、3.0モル%以上3.5モル%以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲の量のLiOを含むことができる。
【0087】
ガラス系基板は、任意の適切な量のKOを含むことができる。ガラス系基板にKOを含めることにより、他のアルカリ金属酸化物に比べてガラス系物品の蒸気強化率が大きく向上する。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、6.0モル%以上15.0モル%以下の量のKOを含むことができ、例えば、6.5モル%以上14.5モル%以下、7.0モル%以上14.0モル%以下、7.5モル%以上13.5モル%以下、8.0モル%以上13.0モル%以下、8.5モル%以上12.5モル%以下、9.0モル%以上12.0モル%以下、9.5モル%以上11.5モル%以下、10.0モル%以上11.0モル%以下、10.5モル%以上11.0モル%以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲の量のKOを含むことができる。
【0088】
ガラス系基板は、任意の適切な量のNaOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、0モル%以上11.0モル%以下の量のNaOを含むことができ、例えば、0.5モル%以上10.5モル%以下、1.0モル%以上9.0モル%以下、1.5モル%以上8.5モル%以下、2.0モル%以上8.0モル%以下、2.5モル%以上7.5モル%以下、3.0モル%以上7.0モル%以下、3.5モル%以上6.5モル%以下、4.0モル%以上6.0モル%以下、4.5モル%以上5.5モル%以下、4.0モル%以上5.0モル%以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲の量のNaOを含むことができる。複数の実施形態において、ガラス系基板は、NaOを実質含まないか、又はNaOを含まないものとすることができる。
【0089】
ガラス系基板は、Bをさらに含むこともできる。ガラス系基板にBを含めることにより、ガラス系基板の耐損傷性を向上させ、ひいてはガラス系基板から形成されるガラス系物品の耐損傷性を向上させることができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、0モル%以上10.0モル%以下の量のBを含むことができ、例えば、0.5モル%以上9.5モル%以下、1.0モル%以上9.0モル%以下、1.5モル%以上8.5モル%以下、2.0モル%以上8.0モル%以下、2.5モル%以上7.5モル%以下、3.0モル%以上7.0モル%以下、3.5モル%以上6.5モル%以下、4.0モル%以上6.0モル%以下、4.5モル%以上5.5モル%以下、4.0モル%以上5.0モル%以下、0.0モル%以上3.0モル%以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲の量のBを含むことができる。複数の実施形態において、ガラス系基板は、Bを実質含まないか、又はBを含まないものとすることができる。
【0090】
ガラス系基板は、清澄剤をさらに含むこともできる。いくつかの実施形態では、清澄剤はスズを含むことができる。複数の実施形態において、ガラス系基板は、0モル%以上0.5モル%以下の量のSnOを含むことができ、例えば、0モル%超0.1モル%以下、又はこれらの範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲の量のSnOを含むことができる。複数の実施形態において、ガラス系基板は、SnOを実質含まないか、又はSnOを含まないものとすることができる。
【0091】
ガラス系基板は、アルカリ金属酸化物などの一価の金属酸化物の総量をROとすると、RO/Alモル比を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板のRO/Alモル比を1.4以下とすることができ、例えば、1.3以下、1.2以下、1.1以下、又は1.1未満とすることができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板のRO/Alモル比を1.0以上1.4以下とすることができ、例えば、1.1以上1.4以下、1.2以上1.3以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲のモル比とすることができる。ガラス系基板のRO/Alモル比を1.4以下に維持することで、ガラス系基板内に第2のガラス相が形成されてしまう、一般に相分離と呼ばれる望ましくない現象を回避することができる。
【0092】
ガラス系基板は、アルカリ金属酸化物などの一価の金属酸化物の総量をROとすると、(RO+P)/Alモル比を特徴とすることもできる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板の(RO+P)/Alモル比を1.4超1.9未満とすることができ、例えば、1.41~1.89、1.425~1.875、1.45~1.85、及びこれらの値の間のすべての値及び部分範囲のモル比とすることができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板の(RO+P)/Alモル比を、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、及び1.4~1.9のすべての値とすることができる。ガラス系基板の(RO+P)/Alモル比を1.4~1.9に維持することで、相分離を回避することができる。
【0093】
ガラス系基板は、アルカリ修飾物質(alkali modifier)の平均電界強度を特徴とすることもできる。ガラス系基板の電界強度は、下式により算出される:
Z/(r+r
式中、Zはアルカリ修飾物質の電荷(定数1に固定)、rはアルカリイオンのイオン半径(オングストローム)、rは酸素のイオン半径(オングストローム)である。これにより求められる電界強度は、Liが0.23、Naが0.19、Kが0.13となる。ガラス系基板におけるアルカリ修飾物質の平均電界強度は、全アルカリ含有量を基準とする加重平均として求められる。複数の実施形態において、ガラス系基板におけるアルカリ修飾物質の平均電界強度は、0.18以下であり、例えば、0.17以下、0.16以下、0.15以下、又は0.15未満である。ガラス系基板中のアルカリ修飾物質の平均電界強度が0.18以下の場合、ガラス系基板は相分離しにくく、特にRO含有量がAl含有量より多い場合に相分離しにくい。複数の実施形態において、ガラス系基板におけるアルカリ修飾物質の平均電界強度は、0.14以上0.18以下であり、例えば、0.15以上0.17以下、0.16以上0.18以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲にある。
【0094】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、LiO及びPを含むか、あるいはPを含むがLiOを含まない構成をとり、相分離を示さない。本明細書において、「相分離(phase separation)」、「相分離ガラス(phase-separated glass)」などは、第2のガラス相が形成されたガラス系基板を指す。なお、「相分離ガラス」は、分光光度計による光学測定やSEM分析により特定することができる。前者については、厚さ1mmのガラス基板又はガラス系基板を試料とした場合に、波長300nmにおける拡散透過率及び/又は散乱比(すなわち、拡散透過率%/透過率%×100)が0.2%を上回る任意のガラス基板又はガラス系基板が、「相分離ガラス」とされる。後者については、ガラス系基板の断面を約100kxの倍率でSEM分析することにより相分離を特定することができる。ガラス系基板が相分離を起こすと、ガラス系基板の外観が乳白色となったり、青みを帯びたりしてしまう場合があるため、ガラス系基板に相分離が生じるのは望ましいものではない。よって、ガラス系基板の組成は、相分離を起こさないように特に選択することができる。例えば、RO/Alモル比及びアルカリ修飾物質の平均電界強度が本明細書に記載の範囲内となるようにガラス系基板の組成を選択することにより、相分離を防止することができる。
【0095】
複数の実施形態において、ガラス系基板は白金適合性を有している。この適合性により、白金含有装置を用いてガラス系基板の溶融、清澄、成形処理を行った場合に、ガラス系基板に玉鎖状の白金欠陥が発生するのを回避することができる。本明細書において、「玉鎖状白金欠陥(globular chain platinum defect)」とは、反射光による光学顕微鏡法や走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線(scanning electron microscopy energy-dispersive x-ray:SEM-EDX)分析によって測定した場合にガラス系基板に観察される、100μmを超える大きさの玉鎖状の白金を指す。さらに、この玉鎖状の白金は通常、「玉状(globular)」に見える部分が2つ以上繋がった内包異物として観察される。これらの玉状部分は、十分な間隔を空けて配置されている場合もあれば、複数の面で繋がってぴったりと巻き付いている場合もある。さらに、本明細書では、「玉鎖状白金欠陥」の数を、ガラス系基板の光学顕微鏡検査やSEM-EDX検査により測定し、検査対象のガラスの総質量で正規化することにより、1ポンド(約0.45kg)当たりの欠陥数の値として生成している。玉鎖状白金の大きさは、その最大寸法により定義する。いくつかの実施形態によれば、玉鎖状欠陥は、白金と、ロジウム、スズ及び鉄のうちの1つ以上とを含み得る。複数の実施形態において、ガラス系基板が含む玉鎖状白金欠陥は、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満であり、例えば、ガラス系基板は、玉鎖状白金欠陥を実質的含まない、又は玉鎖状白金欠陥を含まない。
【0096】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、50GPa以上のヤング率を有することができる。複数の実施形態において、ガラス系基板は、51GPa以上のヤング率を有することができ、例えば、52GPa以上、53GPa以上、54GPa以上、55GPa以上、56GPa以上、57GPa以上、58GPa以上、59GPa以上、60GPa以上、61GPa以上、62GPa以上、63GPa以上、64GPa以上、65GPa以上、又は65GPa超のヤング率を有することができる。複数の実施形態において、ガラス系基板は、50GPa以上70GPa以下の範囲のヤング率を有することができ、例えば、51GPa以上69GPa以下、52GPa以上68GPa以下、53GPa以上67GPa以下、54GPa以上66GPa以下、55GPa以上65GPa以下、56GPa以上64GPa以下、57GPa以上63GPa以下、58GPa以上62GPa以下、59GPa以上61GPa以下、59GPa以上60GPa以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲のヤング率を有することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、1725℃以下の200P温度を有することができ、例えば、1720℃以下、1715℃以下、1710℃以下、1705℃以下、1700℃以下、1695℃以下、1690℃以下、1685℃以下、1680℃以下、1675℃以下、1670℃以下、1665℃以下、1660℃以下、1655℃以下、1650℃以下、1645℃以下、1640℃以下、1635℃以下、1630℃以下、1625℃以下、1620℃以下、1615℃以下、1610℃以下、1605℃以下、1600℃以下、又は1600℃未満の200P温度を有することができる。200P温度が低いと、ガラス系基板の組成物の溶融性ひいては製造性が向上する。
【0098】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、10kP以上の液相粘度を有することができ、例えば100kP以上、1000kP以上、又は1000kP超の液相粘度を有することができる。ガラス系基板中のLiO含有量が高くなると、ガラス系基板組成物の液相粘度が低下する。ガラス系基板の液相粘度を約10kP超に維持することにより、ガラス系基板の製造をフュージョン成形プラットフォームなどの様々な製造プラットフォームで行うことが可能となる。なお、フュージョン成形との適合性を確保するため、ガラス系基板の液相粘度を100kP以上とすることが特に好ましい。液相粘度が低すぎると、ガラス系基板の製造性が損なわれる。
【0099】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、35kP以下のジルコン分解(zircon breakdown)粘度を有することができ、例えば、30kP以下、25kP以下、20kP以下、19kP以下、18kP以下、17kP以下、16kP以下、15kP以下、14kP以下、13kP以下、12kP以下、11kP以下、10kP以下、9kP以下、8kP以下、7kP以下、6kP以下、5kP以下、4kP以下、3kP以下、2kP以下、1kP以下、又は1kP未満のジルコン分解粘度を有することができる。ジルコン分解粘度は、ジルコン分解温度におけるガラスの粘度である。ジルコン分解粘度を35kP以下の範囲に維持することにより、ジルコンアイソパイプなどのようなジルコンを含有する要素を用いるフュージョン成形プロセスに適合性のある組成物とすることができる。
【0100】
ガラス系基板は、任意の適切な形状を有することができる。いくつかの実施形態では、2.0mm以下の厚さを有することができ、例えば、1.9mm以下、1.8mm以下、1.7mm以下、1.6mm以下、1.5mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.2mm以下、1.1mm以下、1mm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、又は300μm未満の厚さを有することができる。複数の実施形態において、300μm以上2mm以下の厚さを有することができ、例えば、400μm以上1.9mm以下、500μm以上1.8mm以下、600μm以上1.7mm以下、700μm以上1.6mm以下、800μm以上1.5mm以下、900μm以上1.4mm以下、1mm以上1.3mm以下、1.1mm以上1.2mm以下、又はこれら範囲の端点から形成されるありとあらゆる部分範囲の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、板状又はシート状の形状を有することができる。いくつかの他の実施形態では、ガラス系基板は、2.5次元形状又は3次元形状を有することができる。本明細書において、「2.5次元形状(2.5D shape)」は、少なくとも1つの主面の少なくとも一部が非平面であり、第2の主面が実質的に平面であるシート状の物品を指す。本明細書において、「3次元形状(3D shape)」は、互いに反対側の主面として、少なくとも一部が非平面である第1の主面と第2の主面とを有する物品を指す。ガラス系物品は、元となるガラス系基板と実質的に同様又は同一の寸法及び形状を有することができる。
【0101】
ガラス系基板は、スロット成形、フロート成形、圧延プロセス、フュージョン成形プロセスなどの任意の適切な方法で成形することができる。本発明のガラス系基板、及び該ガラス系基板から製造されるガラス系物品は、その成形方法を特徴とすることができる。例えば、ガラス系基板を、フロート成形可能な(すなわち、フロートプロセスにより成形を行う)ものや、ダウンドロー可能、特に、フュージョン成形可能又はスロットドロー可能な(すなわち、フュージョンドロープロセスやスロットドロープロセスなどのダウンドロープロセスにより成形を行う)ものとして特徴付けることができる。
【0102】
本明細書に記載のガラス系基板のいくつかの実施形態は、ダウンドロープロセスにより成形することができる。ダウンドロープロセスで製造したガラス系基板は、均一な厚さと比較的清浄な表面を有している。ガラス系基板の平均曲げ強度は、表面欠陥の量と大きさによって決まるため、接触を最小限に抑えた清浄な表面の方が初期強度が高くなる。また、ダウンドローで製造したガラス系基板は、非常に平坦かつ平滑な表面を有しているため、コストをかけて研削や研磨を行うことなく最終用途に供することができる。
【0103】
ガラス系基板のいくつかの実施形態を、フュージョン成形可能(すなわち、フュージョンドロープロセスで成形可能)と記載することもできる。フュージョンドロープロセスでは、溶融したガラス原料を受ける流路を有する延伸槽が使用される。流路の両側には、上部が開口した堰が流路の長さ方向に沿って設けられる。流路が溶融材料で満杯になると、溶融ガラスが堰を越えて溢れ出る。そして重力により、溶融ガラスは2枚のガラス膜流となって延伸槽の外面を流れ落ちる。これらの延伸槽の外面は下方にかつ内側に向かって延び、延伸槽下側の縁端で外面同士が合わさっている。2枚のガラス膜流はこの縁端で合流し、融合して1枚のガラス物品流となる。そして、このガラス膜の融合によりガラス系基板内に融合線が形成されるため、フュージョン成形ガラス系基板は、製造履歴を別途確認しなくてもこの融合線から、フュージョン成形されたものであることを識別することができる。フュージョンドロー法は、流路から越流する2枚のガラス膜を融合させる方法であるため、得られるガラス物品の外面が装置のどの部分にも接触しないという利点がある。したがって、フュージョンドローにより製造したガラス物品の表面特性は、このような接触の影響を受けることがない。
【0104】
本明細書に記載のガラス系基板の組成は、フュージョン成形プロセスと適合するように特に選択される。この適合性は、ガラス系基板組成物の液相粘度とジルコン分解粘度とに依存する。複数の実施形態において、ガラス系基板は、100kP以上の液相粘度と35kP以下のジルコン分解粘度とを有している。
【0105】
本明細書に記載のガラス系基板のいくつかの実施形態は、スロットドロープロセスにより成形することができる。スロットドロープロセスは、フュージョンドロー法とは全く異なるプロセスである。スロットドロープロセスでは、溶融した原料ガラスを延伸槽に供給する。延伸槽は、底部にノズルを有する開口部を備えており、ノズルは開口部の全長に延在している。溶融ガラスはスロット(ノズル)を通過して流れ、下方向に延伸されてガラス系基板の連続体となり、アニール領域に送られる。
【0106】
ガラス系物品は、ガラス系基板を任意の適切な条件下で水蒸気に曝露することにより製造することができる。曝露は、相対湿度が制御された炉などの任意の適切な装置で行うことができる。また、高圧で曝露を行ってもよく、例えば、相対湿度と圧力とが制御された炉やオートクレーブで高圧曝露を行うことができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、周囲圧力より高い圧力の水蒸気含有環境にガラス系基板を曝露することにより製造することができる。曝露環境は、0.1MPaを上回る圧力を有するとともに、0.05MPa以上、例えば0.075MPa以上の水分分圧を有することができる。特に温度が上昇した場合に、曝露環境の圧力を高くすることにより、曝露環境中の水蒸気濃度を高くすることができる。炉やオートクレーブの内部などのように容積が一定である場合には、温度が上昇すると、ガラス系基板に拡散させてガラス系物品の形成に供することのできる水分量が低減する。したがって、水蒸気処理環境の温度が上がると、ガラス系基板への水素種の拡散速度は上昇するかもしれないが、圧力が一定のままであれば、高温での全水蒸気濃度の低下と応力緩和により、圧縮応力が低下してしまう。よって、曝露環境の温度が上昇して、例えば大気圧飽和条件を上回るような高温になったときに、飽和条件に達するまで圧力を上げれば、曝露環境の水蒸気濃度は大きく上昇する。
【0108】
大気圧(0.1MPa)での水蒸気飽和条件は99.61℃である。炉やオートクレーブの内部などのように容積が一定である場合には、温度が上昇すると、ガラス系基板に拡散させてガラス系物品の形成に供することのできる水分量が低減する。したがって、水蒸気処理環境の温度が上がると、ガラス系基板への水素種の拡散速度は上昇するかもしれないが、処理効果が低下してしまう恐れがある。
【0109】
よって、温度が上昇して、例えば大気圧飽和条件を上回るような高温になったときに、飽和条件に達するまで曝露環境の圧力を上げれば、曝露環境の水蒸気濃度は大きく上昇する。図3に、水蒸気の飽和条件を圧力と温度の関数で示す。図3に示すように、曲線より上側の領域は、水蒸気が凝結して液化する、望ましくない領域である。したがって、本明細書で用いる水蒸気処理条件は、好ましくは図3の曲線上の位置又は曲線より下側の位置とすることができ、さらに好ましくは、水蒸気含有量を最大化するために曲線上の位置又は曲線のすぐ下側の位置とすることができる。上記の理由から、ガラス系基板の水蒸気処理は、圧力を上げて行うことができる。
【0110】
高温高圧の条件下で製造したガラス系物品は、ヘイズのある外観となることが分かっている。ヘイズのある外観は、ガラス系物品に加入する水素種の濃度と相関しており、ガラス系物品中の水素種の濃度は、温度や圧力が高い条件になるほど高くなる。水分処理プロセス時に起こるヘイズの発生は、本明細書に記載のリチウム含有組成物を採用することによって、又は、処理条件を選択してガラス系物品に加入する水素種の量を管理することによって対処することができる。例えば、高温では、処理圧力を飽和圧力未満として、ガラス系物品における水素種の濃度を低下させることができる。水素種の濃度は、ガラス系物品に拡散させる水素種の総量を減少させることによって低下させることができ、水蒸気処理時の質量増加が抑えられていること、又は同一の質量増加量に対して層深さが大きくなっていることによって、水素種の濃度低下が起きたことを確かめることができる。ヘイズ緩和策は、組成や処理条件を組み合わせて行うことができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のリチウム含有ガラス系基板は、85℃以上の温度の飽和蒸気環境において水蒸気処理に曝露することができる。リチウムを含有するガラス系基板は、ヘイズを発生させることなく、温度や圧力の高い、より広い処理条件範囲(process window)で処理することができるため、処理時間の短縮と強化プロセスの効率向上が可能となる。上述のヘイズ緩和策を講じながら製造したガラス系物品は、実質的にヘイズのない外観又はヘイズのない外観を有している。
【0112】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、0.1MPa以上の圧力の環境に曝露することができ、例えば、0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上、0.5MPa以上、0.6MPa以上、0.7MPa以上、0.8MPa以上、0.9MPa以上、1.0MPa以上、1.1MPa以上、1.2MPa以上、1.3MPa以上、1.4MPa以上、1.5MPa以上、1.6MPa以上、1.7MPa以上、1.8MPa以上、1.9MPa以上、2.0MPa以上、2.1MPa以上、2.2MPa以上、2.3MPa以上、2.4MPa以上、2.5MPa以上、2.6MPa以上、2.7MPa以上、2.8MPa以上、2.9MPa以上、3.0MPa以上、3.1MPa以上、3.2MPa以上、3.3MPa以上、3.4MPa以上、3.5MPa以上、3.6MPa以上、3.7MPa以上、3.8MPa以上、3.9MPa以上、4.0MPa以上、4.1MPa以上、4.2MPa以上、4.3MPa以上、4.4MPa以上、4.5MPa以上、4.6MPa以上、4.7MPa以上、4.8MPa以上、4.9MPa以上、5.0MPa以上、5.1MPa以上、5.2MPa以上、5.3MPa以上、5.4MPa以上、5.5MPa以上、5.6MPa以上、5.7MPa以上、5.8MPa以上、5.9MPa以上、6.0MPa以上、又は6.0MPa超の圧力の環境に曝露することができる。複数の実施形態において、ガラス系基板を、0.1MPa以上25MPa以下の圧力の環境に曝露することができ、例えば、0.2MPa以上24MPa以下、0.3MPa以上23MPa以下、0.4MPa以上22MPa以下、0.5MPa以上21MPa以下、0.6MPa以上20MPa以下、0.7MPa以上19MPa以下、0.8MPa以上18MPa以下、0.9MPa以上17MPa以下、1.0MPa以上16MPa以下、1.1MPa以上15MPa以下、1.2MPa以上14MPa以下、1.3MPa以上13MPa以下、1.4MPa以上12MPa以下、1.5MPa以上11MPa以下、1.6MPa以上10MPa以下、1.7MPa以上9MPa以下、1.8MPa以上8MPa以下、1.9MPa以上7MPa以下、1.9MPa以上6.9MPa以下、2.0MPa以上6.8MPa以下、2.1MPa以上6.7MPa以下、2.2MPa以上6.6MPa以下、2.3MPa以上6.5MPa以下、2.4MPa以上6.4MPa以下、2.5MPa以上6.3MPa以下、2.6MPa以上6.2MPa以下、2.7MPa以上6.1MPa以下、2.8MPa以上6.0MPa以下、2.9MPa以上5.9MPa以下、3.0MPa以上5.8MPa以下、3.1MPa以上5.7MPa以下、3.2MPa以上5.6MPa以下、3.3MPa以上5.5MPa以下、3.4MPa以上5.4MPa以下、3.5MPa以上5.3MPa以下、3.6MPa以上5.2MPa以下、3.7MPa以上5.1MPa以下、3.8MPa以上5.0MPa以下、3.9MPa以上4.9MPa以下、4.0MPa以上4.8MPa以下、4.1MPa以上4.7MPa以下、4.2MPa以上4.6MPa以下、4.3MPa以上4.5MPa以下、4.4MPa、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成される任意の及びすべての部分範囲内の圧力の環境に曝露することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、0.1MPaなどの周囲圧力の環境に曝露することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、0.05MPa以上の水分分圧を有する環境に曝露することができ、例えば、0.075MPa以上、0.1MPa以上、0.2MPa以上、0.3MPa以上、0.4MPa以上、0.5MPa以上、0.6MPa以上、0.7MPa以上、0.8MPa以上、0.9MPa以上、1.0MPa以上、1.1MPa以上、1.2MPa以上、1.3MPa以上、1.4MPa以上、1.5MPa以上、1.6MPa以上、1.7MPa以上、1.8MPa以上、1.9MPa以上、2.0MPa以上、2.1MPa以上、2.2MPa以上、2.3MPa以上、2.4MPa以上、2.5MPa以上、2.6MPa以上、2.7MPa以上、2.8MPa以上、2.9MPa以上、3.0MPa以上、3.1MPa以上、3.2MPa以上、3.3MPa以上、3.4MPa以上、3.5MPa以上、3.6MPa以上、3.7MPa以上、3.8MPa以上、3.9MPa以上、4.0MPa以上、4.1MPa以上、4.2MPa以上、4.3MPa以上、4.4MPa以上、4.5MPa以上、4.6MPa以上、4.7MPa以上、4.8MPa以上、4.9MPa以上、5.0MPa以上、5.1MPa以上、5.2MPa以上、5.3MPa以上、5.4MPa以上、5.5MPa以上、5.6MPa以上、5.7MPa以上、5.8MPa以上、5.9MPa以上、6.0MPa以上、7.0MPa以上、8.0MPa以上、9.0MPa以上、10.0MPa以上、11.0MPa以上、12.0MPa以上、13.0MPa以上、14.0MPa以上、15.0MPa以上、16.0MPa以上、17.0MPa以上、18.0MPa以上、19.0MPa以上、20.0MPa以上、21.0MPa以上、22.0MPa以上、又は22.0MPa超の水分分圧を有する環境に曝露することができる。複数の実施形態において、ガラス系基板を、0.05MPa以上22MPa以下の水分分圧を有する環境に曝露することができ、例えば、0.075MPa以上22MPa以下、0.1MPa以上21MPa以下、0.2MPa以上20MPa以下、0.3MPa以上19MPa以下、0.4MPa以上18MPa以下、0.5MPa以上17MPa以下、0.6MPa以上16MPa以下、0.7MPa以上15MPa以下、0.8MPa以上14MPa以下、0.9MPa以上13MPa以下、1.0MPa以上12MPa以下、1.1MPa以上11MPa以下、1.2MPa以上10MPa以下、1.3MPa以上9MPa以下、1.4MPa以上8MPa以下、1.5MPa以上7MPa以下、1.6MPa以上6.9MPa以下、1.7MPa以上6.8MPa以下、1.8MPa以上6.7MPa以下、1.9MPa以上6.6MPa以下、2.0MPa以上6.5MPa以下、2.1MPa以上6.4MPa以下、2.2MPa以上6.3MPa以下、2.3MPa以上6.2MPa以下、2.4MPa以上6.1MPa以下、2.5MPa以上6.0MPa以下、2.6MPa以上5.9MPa以下、2.7MPa以上5.8MPa以下、2.8MPa以上5.7MPa以下、2.9MPa以上5.6MPa以下、3.0MPa以上5.5MPa以下、3.1MPa以上5.4MPa以下、3.2MPa以上5.3MPa以下、3.3MPa以上5.2MPa以下、3.4MPa以上5.1MPa以下、3.5MPa以上5.0MPa以下、3.6MPa以上4.9MPa以下、3.7MPa以上4.8MPa以下、3.8MPa以上4.7MPa以下、3.9MPa以上4.6MPa以下、4.0MPa以上4.5MPa以下、4.1MPa以上4.4MPa以下、4.2MPa以上4.3MPa以下、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成される任意の及びすべての部分範囲内の水分分圧を有する環境に曝露することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、10%以上の相対湿度を有する環境に曝露することができ、例えば、25%以上、50%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は99%超の相対湿度を有する環境に曝露することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、100%の相対湿度を有する環境に曝露することができる。いくつかの実施形態では、曝露環境を飽和蒸気環境とすることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、85℃以上の温度を有する環境に曝露することができ、例えば、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、220℃以上、230℃以上、240℃以上、250℃以上、260℃以上、270℃以上、280℃以上、290℃以上、300℃以上、310℃以上、320℃以上、330℃以上、340℃以上、350℃以上、360℃以上、370℃以上、380℃以上、390℃以上、400℃以上、又は400℃超の温度を有する環境に曝露することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、85℃以上400℃以下の温度を有する環境に曝露することができ、例えば、100℃以上390℃以下、110℃以上380℃以下、115℃以上370℃以下、120℃以上360℃以下、125℃以上350℃以下、130℃以上340℃以下、135℃以上330℃以下、140℃以上320℃以下、145℃以上310℃以下、150℃以上300℃以下、155℃以上295℃以下、160℃以上290℃以下、165℃以上285℃以下、170℃以上280℃以下、175℃以上275℃以下、180℃以上270℃以下、185℃以上265℃以下、190℃以上260℃以下、195℃以上255℃以下、200℃以上250℃以下、205℃以上245℃以下、210℃以上240℃以下、215℃以上235℃以下、220℃以上230℃以下、220℃以上225℃以下、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成される任意の及びすべての部分範囲内の温度を有する環境に曝露することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板が所望の程度の水素含有種の拡散を起こして所望の圧縮応力層を生成するのに十分な時間にわたり、ガラス系基板を水蒸気含有環境に曝露することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、2時間以上にわたって水蒸気含有環境に曝露することができ、例えば、4時間以上、6時間以上、8時間以上、10時間以上、12時間以上、14時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、22時間以上、24時間以上、30時間以上、36時間以上、42時間以上、48時間以上、54時間以上、60時間以上、66時間以上、72時間以上、78時間以上、84時間以上、90時間以上、96時間以上、102時間以上、108時間以上、114時間以上、120時間以上、126時間以上、132時間以上、138時間以上、144時間以上、150時間以上、156時間以上、162時間以上、168時間以上、又は168時間超にわたって水蒸気含有環境に曝露することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基板は、2時間以上10日以下の期間にわたって水蒸気含有環境に曝露することができ、例えば、4時間以上9日以下、6時間以上8日以下、8時間以上168時間以下、10時間以上162時間以下、12時間以上156時間以下、14時間以上150時間以下、16時間以上144時間以下、18時間以上138時間以下、20時間以上132時間以下、22時間以上126時間以下、24時間以上120時間以下、30時間以上114時間以下、36時間以上108時間以下、42時間以上102時間以下、48時間以上96時間以下、54時間以上90時間以下、60時間以上84時間以下、66時間以上78時間以下、72時間、又はこれら範囲のいずれかの端点から形成される任意の及びすべての部分範囲内の期間にわたって水蒸気含有環境に曝露することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ガラス系基板を、複数の水蒸気含有環境に曝露することができる。複数の実施形態において、ガラス系基板を第1の環境に曝露して、第1のガラス系物品を形成することができる。第1のガラス系物品は、第1のガラス系物品の表面から第1の圧縮深さまで延在する第1の圧縮応力層を有している。そして次に、第1のガラス系物品を第2の環境に曝露して、第2のガラス系物品を形成することができる。第2のガラス系物品は、第2のガラス系物品の表面から第2の圧縮深さまで延在する第2の圧縮応力層を有している。第1の環境は、第1の水分分圧と第1の温度とを有しており、ガラス系基板の第1の環境への曝露は、第1の期間にわたって行う。第2の環境は、第2の水分分圧と第2の温度とを有しており、第1のガラス系物品の第2の環境への曝露は、第2の期間にわたって行う。
【0118】
第1の水分分圧及び第2の水分分圧は、任意の適切な分圧とすることができ、例えば、0.05MPa以上又は0.075MPa以上とすることができる。第1の水分分圧及び第2の水分分圧は、本明細書において処理方法で採用する水分分圧に関して開示した値のうちのいずれかの値をとることができる。また、複数の実施形態において、第1の環境及び第2の環境は、独立に、10%以上の相対湿度を有することができ、例えば、25%以上、50%以上、75%以上、80%以上、90%以上、95%以上の相対湿度、又は100%に等しい相対湿度を有することができる。いくつかの実施形態では、第1の環境及び第2の環境の少なくとも一方が、100%の相対湿度を有する。複数の実施形態において、第1の環境及び第2の環境を、独立に、飽和蒸気環境とすることができる。
【0119】
第1の圧縮応力層は、第1の最大圧縮応力を有し、第2の圧縮応力層は、第2の最大圧縮応力を有している。複数の実施形態において、第1の最大圧縮応力は、第2の最大圧縮応力よりも小さい。第2の最大圧縮応力は、多段階イオン交換又は混合浴イオン交換技術により形成されるタイプの圧縮応力の「急上昇(spike)」に匹敵し得るものである。第1の最大圧縮応力及び第2の最大圧縮応力は、本明細書においてガラス系物品の圧縮応力に関して開示した値のうちのいずれかの値をとることができる。複数の実施形態において、第2の最大圧縮応力は、50MPa以上とすることができる。
【0120】
第1の圧縮深さは、第2の圧縮深さ以下とすることができる。いくつかの実施形態では、第1の圧縮深さは、第2の圧縮深さよりも小さい。第1の圧縮深さ及び第2の圧縮深さは、本明細書において圧縮深さに関して開示した値のうちのいずれかの値をとることができる。複数の実施形態において、第2の圧縮深さは5μmを上回る。
【0121】
第1の温度は、第2の温度以上とすることができる。複数の実施形態において、第1の温度は、第2の温度よりも高い。第1の温度及び第2の温度は、処理方法に関連して開示した温度のうちのいずれかの温度とすることができる。
【0122】
第1の期間は、第2の期間以下とすることができる。複数の実施形態において、第1の期間は、第2の期間よりも短い。第1の期間及び第2の期間は、高圧処理方法に関連して開示した期間のうちのいずれかの期間とすることができる。
【0123】
複数の実施形態において、水蒸気含有環境への多重曝露のうちいずれか又はすべての曝露を高圧で行うことができる。例えば、第1の環境と第2の環境の少なくとも一方が、0.1MPaを上回る圧力を有することができる。第1の環境及び第2の環境は、処理方法に関連して開示した圧力のうちのいずれかの圧力を有することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、多重水蒸気環境曝露法において、3つ以上の曝露環境を用いることができる。複数の実施形態において、第2のガラス系物品を、第3の環境に曝露して、第3のガラス系物品を形成することができる。第3の環境は、第3の水分分圧と第3の温度とを有しており、第2のガラス系物品の第3の環境への曝露は、第3の期間にわたって行う。第3のガラス系物品は、第3のガラス系物品の表面から第3の圧縮深さまで延在し、第3の最大圧縮応力を有する第3の圧縮応力層を有している。第3の水分分圧は、0.05MPa以上又は0.075MPa以上とすることができる。第3の環境及び第3のガラス系物品の任意の特性の値は、高圧処理方法に関連して開示した対応する特性の値から選択することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、第1の期間の終了後かつ第2の環境への曝露の前に、第1のガラス系物品を周囲温度まで冷却したり、又は他の方法で第1のガラス系物品を第1の環境から取り出したりすることができる。いくつかの実施形態では、第1の期間の終了後、第1のガラス系物品を周囲温度まで冷却したり、水蒸気含有環境から取り出したりすることなく、第1のガラス系物品を第1の環境内に残したまま第1の環境条件を第2の環境条件に変更することもできる。
【0126】
本明細書に開示のガラス系物品の製造方法では、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理を行う必要がない。複数の実施形態において、ガラス系物品は、アルカリイオン源とのイオン交換を含まない方法により製造される。換言すれば、いくつかの実施形態では、ガラス系基板及びガラス系物品に対して、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理を行わない。
【0127】
曝露条件を変更して、ガラス系基板に所望の量の水素含有種を拡散させるのに要する時間を短縮することもできる。例えば、温度や相対湿度を高くして、ガラス系基板内への水素含有種の拡散度と層深さが所望の拡散度や層深さになるまでに要する時間を短縮することができる。
【0128】
本明細書に開示の方法及びガラス系基板組成物により、実質的にヘイズのない又はヘイズのない外観を有するガラス系物品を製造することができる。
【0129】
例示的な実施形態
本明細書に記載のガラス系物品の形成に特に適したガラス組成物から、ガラス系基板を形成した。そのガラス組成物を以下の表1に示す(実施例A~V)。ガラス組成物の密度は、ASTM規格C693-93(2013)の浮力法を用いて測定した。歪点及びアニール点は、ASTM規格C598-93(2013)のビーム曲げ粘度法を用いて測定した。ヤング率の値は、ASTM規格E2001-13「金属及び非金属部品の欠陥を検出するための共振超音波スペクトロスコピー法標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts)」に記載の汎用型の共振超音波スペクトロスコピー法により測定した値を示している。応力光学係数(SOC)は、ASTM規格C770-16「ガラスの応力光学係数測定の標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」に記載の手順C(ガラスディスク法)に従って測定した。屈折率は、589.3nmの波長で測定した。液相温度は、ASTM規格C829-81(2015)「勾配炉法によるガラスの液相温度測定の標準実施法(Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method)」に従って測定した。液相粘度は、測定した液相温度(T)から、下記式により求めた:
log10η=A+B/(T-T
式中、ここで、ηは粘度であり、A、B、Tは、高温粘度(high-temperature viscosity:HTV)測定からフィッティングにより求めた。高温粘度は、ASTM規格C965-96(2012)「軟化点より高い温度でのガラスの粘度測定の標準実施法(Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point)」に従って回転粘度計で測定した。ジルコン分解温度は、耐火性のジルコン片をガラス屑で囲んだPt/Rhボート内に入れ、液相温度と同様に測定した。72時間の試験時間後、試験スラブを偏光顕微鏡、反射光顕微鏡、走査電子顕微鏡で観察して二次ジルコニアを検出し、ジルコニアを生成した温度を特定した。ジルコン分解粘度は、上述の液相粘度と同様に、測定したジルコン分解温度から求めた。
【0130】
【表1-1】
【0131】
【表1-2】
【0132】
【表1-3】
【0133】
表1に示す組成を有する試料(実施例A~T)を水蒸気含有環境に曝露し、圧縮応力層を有するガラス物品を形成した。試料の蒸気処理への曝露は、圧力1.6MPa、温度200℃で16時間にわたり行った。曝露環境は飽和状態であった。これにより得た最大圧縮応力と圧縮深さを表面応力計(FSM)で測定した結果を表2に示す。なお、応力光学係数(SOC)や屈折率(RI)を取得できない場合には、それらのデフォルト値である応力光学係数3.0nm/mm/MPaや屈折率1.5を使用して測定を行った。処理後の物品の水素含有層の深さは、測定した圧縮深さ(DOC)以上であった。
【0134】
【表2】
【0135】
表1に示す組成を有する試料(実施例G~T)を水蒸気含有環境に曝露し、圧縮応力層を有するガラス物品を形成した。試料の蒸気処理への曝露は、圧力2.6MPa、温度225℃で16時間にわたり行った。曝露環境は飽和状態であった。これにより得た最大圧縮応力と圧縮深さを表面応力計(FSM)で測定した結果を表3に示す。なお、応力光学係数(SOC)や屈折率(RI)を取得できない場合には、それらのデフォルト値である応力光学係数3.0nm/mm/MPaや屈折率1.5を使用して測定を行った。処理後の物品の水素含有層の深さは、測定した圧縮深さ(DOC)以上であった。
【0136】
【表3】
【0137】
表1に示す組成を有する試料(実施例D~T)を水蒸気含有環境に曝露し、圧縮応力層を有するガラス物品を形成した。試料の蒸気処理への曝露は、圧力0.76MPa、温度175℃で96時間にわたり行った。これにより得た最大圧縮応力と圧縮深さを表面応力計(FSM)で測定した結果を表4に示す。なお、応力光学係数(SOC)や屈折率(RI)を取得できない場合には、それらのデフォルト値である応力光学係数3.0nm/mm/MPaや屈折率1.5を使用して測定を行った。処理後の物品の水素含有層の深さは、測定した圧縮深さ(DOC)以上であった。
【0138】
【表4】
【0139】
表1に示す組成を有する試料(実施例A~T)を水蒸気含有環境に曝露し、圧縮応力層を有するガラス物品を形成した。試料の蒸気処理への曝露は、圧力0.1MPa、温度300℃で16時間にわたり行った。これにより得た最大圧縮応力と圧縮深さを表面応力計(FSM)で測定した結果を表5に示す。なお、応力光学係数(SOC)や屈折率(RI)を取得できない場合には、それらのデフォルト値である応力光学係数3.0nm/mm/MPaや屈折率1.5を使用して測定を行った。処理後の物品の水素含有層の深さは、測定した圧縮深さ(DOC)以上であった。
【0140】
【表5】
【0141】
表6に示す組成で比較例を調製した(比較例1~5)。比較例の製造はガラス溶融装置で行い、ガラス融液の組成を徐々に変化させながら、所望の組成となるように製造した。比較例4を除くすべての比較例の組成物において、有意量の玉鎖状白金欠陥が見られた。また、比較例4は、含まれるリンが不十分であったため所望の水素種拡散性が得られず、またやはりリン含有量不足のため、フュージョン成形粘度ではジルコン装置との適合性に欠けると認められた。また、これらの比較ガラス組成物は、いずれもRO/Al比が1.4を上回っており、比較例4を除いて、(RO+P)/Al比が1.9を上回っていることを確認した。
【0142】
【表6】
【0143】
図4に、測定した玉鎖状白金欠陥(1ポンド(約0.45kg)当たり)の数をリン(P)含有量の関数として示す。図4に示すように、P含有量が約6モル%を超えるガラスには、問題の玉鎖状白金欠陥が含まれている。なお、玉鎖状白金欠陥の測定は、幅12cm、長さ50cm、厚さ0.4cm、質量約1.25ポンド(0.57kg)のガラス片で行った。そして、観察で得た欠陥数を検査対象のガラスの質量で正規化し、表に示す1ポンド(約0.45kg)当たりの玉鎖状白金欠陥の数を求めた。図5に、10xの倍率で検出した玉鎖状白金欠陥を示す。
【0144】
さらに、表7に示す組成で追加の比較例を調製した(比較例6A~6F)。比較例の製造はガラス溶融装置で行い、ガラス融液の組成を徐々に変化させながら、所望の組成となるように製造した。これらの比較例の組成物は、いずれも相当量の相分離を有していた。また、これらの比較ガラス組成物は、いずれもRO/Al比が1.4を上回っており、(RO+P)/Al比が1.9を上回っていることを確認した。
【0145】
【表7】
【0146】
図6Aは、表1の本発明のガラス組成物(実施例V)と比較ガラス組成物(比較例6A~6F)についての、拡散散乱透過率(%)対波長(すなわち、300nm~850nm)プロット図である。図6Bは、上記と同じガラス組成物についての散乱比(%)対波長プロット図である。図6A及び図6Bに示す測定は、厚さ1mmの試料を用いて、積分球又は標準軸検出器を備えた紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計により行った。図6A及び図6Bには、300nm~850nmの光波長を使用したデータを示しているが、380~780nmや400~700nmといったより一般的な可視波長域でもデータの分析を行った。さらに、図6Aに示す拡散散乱透過率(%)のデータは、分光光度計で生成したものである。図6Bに示す散乱比(%)については、図6Aに示す拡散透過率をTdiffuse、試料の全透過率をTtotalとした場合に、(Tdiffuse(%)/Ttotal(%))×100で与えられる値である。図6A及び図6Bに示すデータに関して、相分離を示す比較ガラス組成物(比較例6A~6F)は、300nmにおける散乱比と拡散透過率がともに0.2%を大きく上回っており、一方、本発明のガラス組成物(実施例V)は、300nmにおける散乱比と拡散透過率が0.2%を下回っていることが分かる。よって、散乱比や拡散透過率の測定値を用いて、本開示のガラス組成物における相分離の程度を定量化することができる。理論に束縛されるものではないが、1mmとは異なる厚みを有する試料では、相分離の閾値も0.2%から変化すると考えられる。
【0147】
ここで図7A及び図7Bを参照すると、図7A及び図7Bは、相分離の所見がある2つの比較ガラス組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示しており、図7Aが比較例6Bの画像、図7Bが比較例6Cの画像を示す(上記表7も参照されたい)。これらの画像は、上記の比較試料を断面切断し、その断面に導電性炭素被膜を蒸着した後、Zeiss Gemini SEM 450を用いて2kV、最大100kxの倍率で撮像したものである。これらのSEM画像から明らかなように、上記の比較ガラス組成物では、約10~40nmの範囲の二次相が見られる。
【0148】
以上、典型的な実施形態を説明の目的で記載したが、上述の説明は、本開示又は添付の特許請求の範囲を限定するものと見なすべきではない。したがって、当業者であれば、本開示又は添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、様々な変形例、修正例、及び代替例を想到するものと考えられる。
【0149】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0150】
実施形態1
ガラス系物品であって、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層と、
前記ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、
前記組成は、
SiOと、
Alと、
Oと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4以下のRO/Alと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、
2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含み、
前記圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、
前記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から前記層深さに向かって減少し、
前記層深さが5μmを上回っている、ガラス系物品。
【0151】
実施形態2
融合線をさらに有している、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0152】
実施形態3
前記ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、実施形態1又は2に記載のガラス系物品。
【0153】
実施形態4
前記ガラス系物品が実質的には相分離を示さない、実施形態1又は2に記載のガラス系物品。
【0154】
実施形態5
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、Bをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0155】
実施形態6
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、NaOをさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0156】
実施形態7
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、SnOをさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0157】
実施形態8
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、実施形態1~7のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0158】
実施形態9
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、
55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、
10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、
0モル%以上10.0モル%以下のBと、
6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、
を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0159】
実施形態10
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、実施形態1~9のいずれかに記載のガラス系物品。
【0160】
実施形態11
前記ガラス系物品の中心部の前記組成が、0モル%超3.0モル%以下のBを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0161】
実施形態12
前記ガラス系物品の中心部の前記組成と同一の組成を有するガラスのジルコン分解粘度が35kP以下である、実施形態1~11のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0162】
実施形態13
前記ガラス系物品の中心部の前記組成と同一の組成を有するガラスの液相粘度が100kP以上である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0163】
実施形態14
前記ガラス系物品が実質的にヘイズのない外観を有している、実施形態1~13のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0164】
実施形態15
前記圧縮深さが5μmを上回っている、実施形態1~14のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0165】
実施形態16
前記圧縮応力層が、200MPa以上の圧縮応力を有している、実施形態1~15のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0166】
実施形態17
前記組成が、一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alを有している、実施形態1~16のいずれか1つに記載のガラス系物品。
【0167】
実施形態18
前面、背面及び側面を有する筐体と、
前記筐体の内部に少なくとも一部が収容される電気部品であって、コントローラ、メモリ、及び前記筐体の前記前面またはその隣接部に設けられるディスプレイを少なくとも含む電気部品と、
ディスプレイを覆うように配置されるカバー基板と、
を備える消費者向け電子機器製品であって、
前記筐体及び前記カバー基板の少なくとも一方が、その少なくとも一部に、実施形態1~17のいずれか1つに記載の前記ガラス系物品を備えている、消費者向け電子機器製品。
【0168】
実施形態19
ガラス系物品であって、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層と、
前記ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、
前記組成は、
SiOと、
Alと、
Oと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、
2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含み、
前記圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、
前記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から前記層深さに向かって減少し、
前記層深さが5μmを上回っている、ガラス系物品。
【0169】
実施形態20
前記ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、実施形態19に記載のガラス系物品。
【0170】
実施形態21
前記ガラス系物品が実質的には相分離を示さない、実施形態19又は20に記載のガラス系物品。
【0171】
実施形態22
ガラス系物品であって、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層と、
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層と、
前記ガラス系物品の中心部の組成と、を有しており、
前記組成は、
SiOと、
Alと、
Oと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、を含み、
前記圧縮応力層は、25MPa以上の圧縮応力を有し、
前記水素含有層の水素濃度は、最大水素濃度から前記層深さに向かって減少し、
前記層深さが5μmを上回っている、ガラス系物品。
【0172】
実施形態23
前記ガラス系物品が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、実施形態22に記載のガラス系物品。
【0173】
実施形態24
前記ガラス系物品が実質的には相分離を示さない、実施形態22又は23に記載のガラス系物品。
【0174】
実施形態25
ガラス系基板を、0.1MPa以上の圧力と、0.05MPa以上の水分分圧と、85℃超の温度を有する処理環境に曝露することにより、ガラス系物品を形成するステップを含む方法であって、
前記ガラス系基板は、
SiOと、
Alと、
Oと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4以下のRO/Alと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、
2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、を含み、
前記ガラス系物品は、
前記ガラス系物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、25MPa以上の圧縮応力を有する圧縮応力層と、
前記ガラス系物品の前記表面から層深さまで延在する水素含有層であって、該水素含有層の水素濃度が最大水素濃度から前記層深さに向かって減少する、水素含有層と、を有しており、
前記層深さが5μmを上回っている、方法。
【0175】
実施形態26
前記処理環境が飽和蒸気環境である、実施形態25に記載の方法。
【0176】
実施形態27
前記処理環境が1MPa以上の圧力を有している、実施形態25又は26に記載の方法。
【0177】
実施形態28
前記処理環境が150℃以上の温度を有している、実施形態25~27のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
実施形態29
前記ガラス系基板をフュージョン成形プロセスにより製造するステップをさらに含む、実施形態25~28のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態30
前記ガラス系基板に対して、アルカリイオン源を用いたイオン交換処理を行わない、実施形態25~29のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
実施形態31
前記ガラス系基板が、Bをさらに含む、実施形態25~30のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
実施形態32
前記ガラス系基板が、NaOをさらに含む、実施形態25~31のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
実施形態33
前記ガラス系基板が、SnOをさらに含む、実施形態25~32のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
実施形態34
前記ガラス系基板が、0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、実施形態25~33のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
実施形態35
前記ガラス系基板が、
55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、
10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、
0モル%以上10.0モル%以下のBと、
6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、
を含む、実施形態25~34のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
実施形態36
前記ガラス系基板が、4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、実施形態25~35のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
実施形態37
前記ガラス系基板が、0モル%超3.0モル%以下のBを含む、実施形態25~36のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
実施形態38
前記ガラス系基板が融合線を有している、実施形態25~37のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
実施形態39
前記ガラス系基板が含む玉鎖状白金欠陥が、1ポンド(約0.45kg)当たり1個未満である、実施形態25~38のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
実施形態40
前記ガラス系基板のジルコン分解粘度が35kP以下である、実施形態25~39のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態41
前記ガラス系基板の液相粘度が100kP以上である、実施形態25~40のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態42
前記ガラス系物品が実質的にヘイズのない外観を有している、実施形態25~41のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態43
前記圧縮深さが5μmを上回っている、実施形態25~42のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態44
前記圧縮応力層が、200MPa以上の圧縮応力を有している、実施形態25~43のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態45
55.0モル%以上65.0モル%以下のSiOと、
10.0モル%以上15.0モル%以下のAlと、
0モル%以上10.0モル%以下のBと、
6.0モル%以上15.0モル%以下のKOと、
3.5モル%以上6.0モル%以下のPと、
2.0モル%以上5.0モル%以下のLiOと、
一価の金属酸化物の総量をROとした場合に、1.4<(RO+P)/Al<1.9の(RO+P)/Alと、
を含むガラス。
【0195】
実施形態46
0.18以下のアルカリ修飾物質の平均電界強度を有している、実施形態45に記載のガラス。
【0196】
実施形態47
4.5モル%以上5.5モル%以下のPを含む、実施形態45又は46に記載のガラス。
【0197】
実施形態48
をさらに含む、実施形態45~47のいずれか1つに記載のガラス。
【0198】
実施形態49
0モル%超3モル%以下のBをさらに含む、実施形態45~48のいずれか1つに記載のガラス。
【0199】
実施形態50
NaOをさらに含む、実施形態45~49のいずれか1つに記載のガラス。
【0200】
実施形態51
0モル%以上11モル%以下のNaOをさらに含む、実施形態45~50のいずれか1つに記載のガラス。
【0201】
実施形態52
SnOをさらに含む、実施形態45~51のいずれか1つに記載のガラス。
【0202】
実施形態53
ジルコン分解粘度が35kP以下である、実施形態45~52のいずれか1つに記載のガラス。
【0203】
実施形態54
液相粘度が100kP以上である、実施形態45~53のいずれか1つに記載のガラス。
【符号の説明】
【0204】
100 ガラス系物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮応力層
122 第2の圧縮応力層
130 引張応力領域
200 消費者向け電子デバイス
202 筐体
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバープレート
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B