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  • -筋肉の柔軟性改善用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-02-26
(45)【発行日】2026-03-06
(54)【発明の名称】筋肉の柔軟性改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20260227BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20260227BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20260227BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20260227BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20260227BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K31/352
A61K31/7048
A61P21/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022569885
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044822
(87)【国際公開番号】W WO2022131063
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2020210461
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大塚 祐多
(72)【発明者】
【氏名】永井 研迅
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043862(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104664067(CN,A)
【文献】鎌田孝一,肩こりとつきあう,順天堂医学,2008年,Vol. 54,pp. 359-362
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00- 35/00
A61K 31/00- 31/80
A61P 21/00- 21/06
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケルセチン及び/又はその配糖体を含有する大腿部の筋肉の柔軟性改善用組成物であって、
前記ケルセチン配糖体が、下記一般式
【化1】
(上記一般式中、(X)nは、糖鎖を表す。Xはグルコース、ラムノース、ガラクトース及びグルクロン酸からなる群から選択される少なくとも1種の単糖を表し、nは1~16の整数である。nが2以上であるとき、(X)nは、1種類の糖からなる糖鎖であってもよく、複数種の糖からなる糖鎖であってもよい。)
で示される化合物であり、
前記大腿部の筋肉が、ヒトの大腿部の筋肉である組成物。
【請求項2】
筋肉の硬さを低下させる、筋肉の硬さの増加を抑制する、筋肉のしなやかさを改善する及び筋肉の弾力性を改善する、のうちの1以上のために使用される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
運動と組み合わせて使用される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
飲食品、化粧料又は医薬部外品である請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉の柔軟性改善用組成物に関する。また、本発明は、筋肉の柔軟性を改善するための、ケルセチン及び/又はその配糖体の使用等に関する。
【背景技術】
【0002】
超高齢社会である日本では、医療が進歩し、後期高齢者の割合が増加している一方で、健康寿命の延長や日常生活の質(QOL)の向上が課題となっている。この健康寿命の短縮の一つの要因として、運動器の障害による要介護になるリスクが高い状態になること、すなわちロコモティブシンドロームが挙げられる。加齢に伴う運動器疾患による痛みや、筋力低下、持久力低下、運動速度低下など運動機能の低下がおこり、これらが相まって負の連鎖に陥る。その結果、日常生活動作を行えなくなり、要介護状態になっていくと考えられており、その予防が重要となっている。
【0003】
運動機能は単に筋肉量に比例するのではなく、筋肉の柔軟性等も運動機能に関与していることが知られている。従って、筋肉量を増やすだけでなく、筋肉の柔軟性を改善することが運動機能の低下抑制又は改善に重要であると考えられる。
【0004】
ケルセチンは、フラボノイドの一種であり、そのままで、又は、配糖体として玉ねぎなど多くの植物に含有されている。ケルセチン又はその配糖体の生理活性として、PPARγ活性化作用等が報告されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-8117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、筋肉の柔軟性が低下すると、筋肉が伸び縮みしにくくなる。筋肉の柔軟性を改善することができる成分は、例えば、運動機能の低下抑制又は改善等において有効である。
【0007】
本発明は、筋肉の柔軟性改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フラボノールの一種であるケルセチン及び/又はその配糖体が、筋肉の柔軟性の改善に有効であることを見出した。
【0009】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下の筋肉の柔軟性改善用組成物等を包含する。
〔1〕ケルセチン及び/又はその配糖体を含有する筋肉の柔軟性改善用組成物。
〔2〕筋肉の硬さを低下させる、筋肉の硬さの増加を抑制する、筋肉のしなやかさを改善する及び筋肉の弾力性を改善する、のうちの1以上のために使用される上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕運動と組み合わせて使用される、上記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕筋肉が、大腿部の筋肉である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕飲食品、化粧料又は医薬部外品である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕筋肉の柔軟性を改善するための、ケルセチン及び/又はその配糖体の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筋肉の柔軟性改善用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、運動及び試験食品摂取の介入前と比較した、介入24週目の筋肉のせん断波速度の変化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の筋肉の柔軟性改善用組成物は、ケルセチン及び/又はその配糖体を含有する。本発明の筋肉の柔軟性改善用組成物を、以下では単に本発明の組成物ともいう。本発明の組成物は、通常、ケルセチン及び/又はその配糖体を有効成分として含有する。
【0013】
本明細書において、「ケルセチン」とは、ポリフェノールの一種であるフラボノールに属する化合物であるケルセチンを意味する。本発明において、「ケルセチン配糖体」とは、上記ケルセチンの配糖体を意味し、具体的にはケルセチンの3位の水酸基に1以上の糖がグリコシド結合した一連の化合物の総称である。ケルセチン配糖体は、下記一般式で示される化合物である。下記一般式中の(X)nは、糖鎖を表す。Xは糖(単糖)を表し、nは1以上の整数である。ケルセチン配糖体は、1種の化合物であってもよく、2種以上の化合物であってよい。
【0014】
【化1】
【0015】
ケルセチンにグリコシド結合するXで表される糖鎖を構成する糖は、例えば、グルコース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸等であり、好ましくはグルコース、ラムノースである。また、nは1以上であれば、特に制限されないが、好ましくは1~16、より好ましくは1~8である。nが2以上であるとき、X部分は1種類の糖からなっていてもよく、複数種の糖からなっていてもよい。換言すると、nが2以上であるとき、(X)nは、1種類の糖からなる糖鎖であってもよく、複数種の糖からなる糖鎖であってもよい。本発明におけるケルセチン配糖体は、既存のケルセチン配糖体を、酵素などで処理して糖転移させたものも含む。本発明でいうケルセチン配糖体は、具体的には、ルチン、酵素処理ルチン(ルチンの酵素処理物)、クエルシトリン、イソクエルシトリンなどを含む。本発明において、ケルセチン配糖体として、酵素処理ルチンを使用することが、特に好ましい。酵素処理ルチンの好ましい例として、ルチンを酵素処理してラムノース糖鎖部分を除去したイソクエルシトリン、イソクエルシトリンを糖転移酵素で処理して得られるイソクエルシトリンにグルコース1~7個からなる糖鎖が結合したもの、及びその混合物を主成分とするものが挙げられる。一態様において、ケルセチン配糖体として、ケルセチンの3位の水酸基に1~8個のグルコースがグリコシド結合した化合物(例えば、イソクエルシトリン、イソクエルシトリンに1~7個のグルコースが結合した配糖体)等が好ましい。
摂取されたケルセチン配糖体は、腸管内で糖が切断されてアグリコン(ケルセチン)になってから体内へ吸収される。
【0016】
本発明において、ケルセチン及び/又はその配糖体を得るための由来、製法については特に制限はない。例えば、ケルセチン及び/又はその配糖体を多く含む植物として、ソバ、エンジュ、ケッパー、リンゴ、茶、タマネギ、ブドウ、ブロッコリー、モロヘイヤ、ラズベリー、コケモモ、クランベリー、オプンティア、葉菜類、柑橘類などが知られており、これらの植物からケルセチン及び/又はその配糖体を得ることができる。
本発明に用いられるケルセチン及び/又はその配糖体には、本発明の効果を奏することになる限り、上記の植物等の天然物由来の抽出物を、濃縮、精製等の操作によってケルセチン及び/又はその配糖体の含量を高めたもの、例えば、ケルセチン及び/又はその配糖体を含有する抽出物の、濃縮物又は精製物を用いることができる。濃縮方法又は精製方法は、既知の方法を採用することができる。本発明においては、精製又は単離されたケルセチン及び/又はその配糖体を使用してもよい。ケルセチン及び/又はその配糖体は、化学合成品を使用することもできる。
【0017】
ケルセチン及び/又はその配糖体は、天然物や飲食品に含まれ、食経験がある化合物である。このため安全性の観点から、ケルセチン及び/又はその配糖体は、例えば毎日摂取することにも問題が少ないと考えられる。本発明によれば、安全性が高い物質を有効成分として含む筋肉の柔軟性改善用組成物を提供することができる。
【0018】
本発明において、筋肉の柔軟性とは、筋肉の伸び縮みのしやすさである。筋肉の柔軟性は、加齢とともに低下することが報告されている(例えば、Muscle Nerve. 2017 Mar 55(3) 305-315.)。
筋肉の柔軟性の改善は、筋肉の硬さ(筋硬度)の改善ということもできる。本発明において、筋肉の柔軟性の改善は、筋肉の柔軟性の低下抑制、筋肉の柔軟性維持、筋肉の柔軟性の向上(柔軟性の増加)等を含む。筋肉の硬さ(筋硬度)の改善は、筋肉の硬さの増加抑制、筋肉の硬さの維持、筋肉の硬さの低下等を含む。
筋肉の柔軟性は、シアウェーブエラストグラフィ法(shear wave elastography)で測定される、筋肉のせん断波速度を指標として評価することができる。シアウェーブエラストグラフィ法は、超音波エラストグラフィーの一つであり、音響放射インパルスによって生体内で加振を行い、それによって生じたせん断波の伝搬速度分布を計測し、組織の硬さを評価する方法である(山川誠、バイオメカニズム学会誌,Vol.40, No. 2(2016),73-78、特に74頁の右欄10-12行)。上記せん断波速度が小さいほど、筋肉の柔軟性が高く(筋肉が柔らかく)、せん断波速度が大きいほど、筋肉の柔軟性が低い(筋肉が硬い)といえる。例えば、被験物質を摂取した場合に、当該被験物質を摂取しない場合と比較して、筋肉のせん断波速度が低下する又は当該速度の増加が抑制されると、当該被験物質によって筋肉の柔軟性が向上した又は筋肉の柔軟性の低下が抑制されたと評価される。従って上記筋肉のせん断波速度を低下させる又は当該速度の増加を抑制することができる物質は、筋肉の柔軟性改善作用を有するといえる。本発明において、筋肉の柔軟性は、上記の筋肉のせん断波速度により確認することができ、好ましくは、力を入れた状態における筋肉のせん断波速度により確認することができる。
【0019】
例えば、完全屈曲状態(正座(屈膝座法)の状態)の大腿部の筋肉のせん断波速度は、加齢に伴い増加する。後述する実施例に示されるように、ケルセチン配糖体を摂取すると、摂取しない場合と比較して、完全屈曲状態の大腿部の筋肉のせん断波速度の増加が抑制された。従ってケルセチン及び/又はその配糖体は、筋肉の柔軟性を改善する作用を有する。ケルセチン及び/又はその配糖体は、筋肉の柔軟性を改善するために使用することができる。一態様において、ケルセチン及び/又はその配糖体は、筋肉のせん断波速度の増加を抑制又はせん断波速度を低下させるために使用することができる。
【0020】
筋肉の柔軟性を改善することにより、筋肉のしなやかさ、弾力性等を改善することができる。一態様において、本発明の組成物は、筋肉の硬さを低下させる、筋肉の硬さの増加を抑制する、筋肉のしなやかさを改善する及び筋肉の弾力性を改善する、のうちの1以上のために使用することができる。
筋肉の柔軟性を改善することによって、筋力の増加、歩行能力の増加、バランス能力の向上、俊敏性の向上等の効果が得られる(例えば、Ultrasound Med Biol. 2020 Nov;46(11):2891-2907.)。
また、筋肉の柔軟性を改善することによって、皮筋(例えば、表情筋等)の柔軟性が改善される。その結果、皮膚の弾力改善効果が期待できる。
【0021】
一態様において、本発明の組成物は、運動と組み合わせて使用されることが好ましい。本発明の組成物は、運動と組み合わせて筋肉の柔軟性を改善するために好適に使用することができる。本発明の組成物を運動と組み合わせて使用する場合は、本発明の組成物の摂取又は投与と、運動とを一定期間内で併用すればよく、運動量、本発明の組成物を摂取又は投与するタイミング等は特に制限されない。運動と組み合わせてケルセチン及び/又はその配糖体を摂取又は投与すると、筋肉の柔軟性改善効果をより得ることができる。本発明の組成物は、運動と組み合わせて使用されることにより、筋肉の柔軟性改善効果をより発揮することができる。
運動の種類は特に限定されず、例えば日常的な運動、有酸素運動、筋力トレーニング(例えば、レジスタンス運動など)、柔軟運動(ストレッチ)等が挙げられる。運動は、1種を行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。一態様において、上記の運動は、好ましくは、筋力トレーニングと柔軟運動の組合せ、又は、筋力トレーニングであり、より好ましくはレジスタンス運動と柔軟運動の組合せ、又は、レジスタンス運動であり、さらに好ましくはレジスタンス運動と柔軟運動の組合せである。この場合、柔軟運動は、レジスタンス運動の前若しくは後のいずれか、又は前後の両方で実施されればよい。
上記レジスタンス運動とは、筋肉に一定の負荷をかけて行われる運動のことである。負荷をかける方法としては特に限定されないが、例えば、バーベル、マシン、適当な重量物、水、エキスパンダー、ゴムチューブ等を利用することができる。レジスタンス運動として、例えば、レッグエクステンション、レッグプレス、レッグカール、チェストプレス、スクワット、ベンチプレス、サイドレイズ、ローイング、カーフレイズ、シットアップ等が挙げられる。レジスタンス運動は、1種又は2種以上を組合わせて行うことができる。上記有酸素運動としては、例えば、ジョギング、ウォーキング、体操、エアロビックス等が挙げられる。
ケルセチン及び/又はその配糖体は、運動による筋肉の柔軟性改善を促進又は増強するために使用することができる。一態様において、本発明の組成物は、運動による筋肉の柔軟性改善を促進又は増強するために使用することができる。
【0022】
上記運動の頻度及び運動時間は、例えば、1週間に1日以上、1日当たり1回5分以上(好ましくは30分以上)とすることができ、好ましくは、1週間に2日以上、1日当たり1回5分以上(好ましくは30分以上)であり、より好ましくは、1週間に3日以上、1日当たり1回5分以上(好ましくは30分以上)である。また、対象者、運動の種類及び/又は運動の組み合わせに応じて、上記運動の頻度及び/又は運動時間を決定することとしてもよい。例えば、有酸素運動の場合は、1週間に2~5日、1日当たり1回10~60分程度であってよい。また、レジスタンス運動の場合は、1週間に1~3日、1日当たり1回10~60分程度であってよく、柔軟運動の場合は、1週間に1~7日(例えば1~3日)、1日あたり1回5~30分程度であってよい。
【0023】
本発明の組成物と組み合わせられる運動の強度は、2.0METs(例えば、歩行/とてもゆっくり/コード17151)以上であることが好ましく、2.3METs(例えば、ストレッチ/ゆったり/コード02101)以上であることがより好ましく、3.5METs(例えば、レジスタンスウエイトトレーニング/コード02054)以上であることがさらに好ましい。また、レジスタンス運動の強度は、最大挙上重量(1RM)の80%以下(好ましくは30%以上)であることが好ましく、60%以下(好ましくは30%以上)であることがより好ましい。運動の負荷は対象者に応じて決定されることが好ましい。(運動の強度は、「改訂版身体活動のメッツ表((独)国立健康・栄養研究所2012)」およびMedSci Sports Exerc. 2009 Mar;41(3):687-708.を参照。上記の「コード」は、「改訂版身体活動のメッツ表((独)国立健康・栄養研究所2012)」に記載されているコード。)
【0024】
本発明において、筋肉の柔軟性の改善の対象となる筋肉として、骨格筋、皮筋が挙げられ、好ましくは骨格筋である。本発明において、筋肉の柔軟性の改善の対象となる部位は特に限定されないが、大腿部の筋肉が好ましい。一態様において、本発明の組成物は、大腿部の筋肉の柔軟性を改善するために好適に用いられる。
【0025】
本発明の組成物は、治療的用途又は非治療的用途のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
本発明の組成物は、飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明の組成物は、それ自体が筋肉の柔軟性改善のために用いられる飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明の筋肉の柔軟性改善用組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。一態様において、本発明の筋肉の柔軟性改善用組成物は、筋肉の柔軟性改善剤ということもできる。
本発明の組成物は、経口用組成物、非経口用組成物のいずれであってもよい。本発明の組成物を対象に経口で摂取させる又は投与することにより、又は、非経口投与することにより、対象において筋肉の柔軟性を改善することができる。経口用組成物としては、飲食品、経口用医薬品、経口用医薬部外品、飼料が挙げられ、好ましくは飲食品又は経口用医薬部外品である。非経口用組成物として、化粧料、非経口用医薬品、非経口用医薬部外品が挙げられる。好ましくは化粧料又は非経口用医薬部外品である。
【0026】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、ケルセチン及び/又はその配糖体に加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。本発明の組成物を、飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。
【0027】
例えば本発明の組成物を飲食品とする場合、ケルセチン及び/又はその配糖体に、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、健康補助食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、健康補助食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ドライシロップ剤、シロップ剤、液剤、飲料、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0028】
本発明の組成物を化粧料とする場合、ケルセチン及び/又はその配糖体に、化粧料に許容される担体、添加剤等を配合することができる。化粧料の製品形態は特に限定されない。
【0029】
本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、例えば、ケルセチン及び/又はその配糖体に、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬品又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬品又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬品又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)投与の形態が挙げられる。本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、経口用(経口投与用)医薬品又は医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤形としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。非経口投与のための剤形として、注射剤、点滴剤、皮膚外用剤(貼付剤、クリーム剤、軟膏等)等が挙げられる。医薬品は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0030】
本発明の組成物を飼料とする場合には、ケルセチン及び/又はその配糖体を飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0031】
本発明の組成物に含まれるケルセチン及び/又はその配糖体の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。本発明の組成物中のケルセチン及び/又はその配糖体の含有量は、例えば、ケルセチン換算値として、該組成物中に0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、また、80重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。一態様において、ケルセチン及び/又はその配糖体の含有量は、ケルセチン換算値として、本発明の組成物中に0.01~80重量%が好ましく、0.1~50重量%がより好ましい。
ケルセチン及び/又はその配糖体の含有量は、公知の方法に従って測定することができ、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法などを用いることができる。
【0032】
本発明の組成物は、通常、対象に摂取又は投与されるものである。本発明の組成物の投与経路は特に限定されず、その形態に応じた適当な方法で摂取又は投与することができる。一態様において、本発明の組成物は、経口で摂取(経口投与)されることが好ましい。本発明の組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されず、筋肉の柔軟性改善効果が得られるような量(有効量ともいう)であればよく、投与形態、投与方法等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
一態様において、本発明の組成物をヒト(成人)に摂取させる又は投与する場合、ケルセチン及び/又はその配糖体の投与量は、ケルセチン換算値として、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.3mg以上、より好ましくは1.0mg以上、さらに好ましくは10mg以上、また、好ましくは4000mg以下、より好ましくは2000mg以下、さらに好ましくは1000mg以下である。一態様において、ケルセチン及び/又はその配糖体の投与量は、ケルセチン換算値として、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.3~4000mg、より好ましくは1.0~2000mg、さらに好ましくは1.0~1000mg、特に好ましくは10~1000mgである。上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。一態様においては、上記量のケルセチン及び/又はその配糖体を、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。本発明の一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のケルセチン及び/又はその配糖体を摂取させる又は投与するために使用することができる。
【0034】
本発明の組成物は、継続して摂取又は投与されるものであることが好ましい。ケルセチン及び/又はその配糖体を継続的に摂取又は投与することによって、高い筋肉の柔軟性改善効果が得られることが期待される。一態様において、本発明の組成物を、好ましくは1週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上継続して摂取又は投与することが好ましい。
【0035】
本発明の組成物は、筋肉の柔軟性改善により予防又は改善が期待できる状態又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。このような状態又は疾患として、筋肉の柔軟性の低下に起因する状態又は疾患、筋肉の柔軟性が低下する状態又は疾患等が挙げられる。このような状態又は疾患として、例えば、サルコペニア、筋ジストロフィー等を含む筋原性疾患、脳性麻痺などを含む神経障害、パーキンソン病、脳卒中等が挙げられる(Ultrasound Med Biol. 2020 Nov;46(11):2891-2907.)。一態様において、本発明の組成物は、サルコペニア、筋ジストロフィー等を含む筋原性疾患、脳性麻痺などを含む神経障害、パーキンソン病、脳卒中等の状態又は疾患による筋肉の異常(例えば、筋肉の硬化)の予防又は改善のために使用することができる。本明細書において、状態又は疾患の予防は、状態又は疾患の発症を防止すること、発症を遅延させること、発症率を低下させること、発症のリスクを軽減すること等を包含する。状態又は疾患の改善は、対象を状態又は疾患から回復させること、状態又は疾患の症状を軽減すること、状態又は疾患の症状を好転させること、状態又は疾患の進行を遅延させること、防止すること等を包含する。
【0036】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、投与対象として、筋肉の柔軟性の改善を必要とする又は希望する対象、筋肉の柔軟性の低下に起因する状態又は疾患の予防又は改善を必要とする又は希望する対象等が挙げられる。筋肉の柔軟性の低下は、加齢による筋肉の柔軟性の低下であってよく、中高年者における加齢による筋肉の柔軟性の低下であってよい。
一態様において、本発明における投与対象として、中高年者が挙げられる。中高年者は、高齢者を含む。中高年者の中でも、対象として高齢者が好ましい。本発明において、中高年者は、例えば、40歳以上のヒトであってよい。高齢者は、例えば、60歳以上又は65歳以上のヒトであってよい。一態様において、本発明の組成物は、中高年者用の筋肉の柔軟性改善用組成物として好適に使用される。
本発明の組成物の投与対象は、健常者であってよく、例えば健常な中高年者であってよい。本発明の組成物は、例えば、筋肉の柔軟性改善により予防又は改善が期待できる状態又は疾患の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0037】
本発明の組成物には、筋肉の柔軟性改善により発揮される機能の表示が付されていてもよい。本発明の筋肉の柔軟性改善用組成物には、例えば、「筋肉を柔らかくする」、「筋肉をしなやかにする」、「筋肉の弾力性を改善する」、「体を柔らかくする」等の1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。
また、別の一態様においては、本発明の組成物には、「肌の弾力」、「肌のハリ」「弾む感じ」、「モチモチ感」、「プルプル感」等の1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。上記機能の表示には、上記機能が筋肉の柔軟性改善により得られる機能であることが記載されていてもよい。
一態様において、本発明の組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。当該表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0038】
本発明は、以下の方法及び使用も包含する。
ケルセチン及び/又はその配糖体を投与する、筋肉の柔軟性を改善する方法。
筋肉の柔軟性を改善するための、ケルセチン及び/又はその配糖体の使用。
上記方法及び使用は、治療的な方法又は使用であってもよく、非治療的な方法又は使用であってもよい。ケルセチン及び/又はその配糖体を投与する(摂取させる)と、筋肉の柔軟性を改善することができる。ケルセチン及び/又はその配糖体は、筋肉の柔軟性を改善することによって、筋肉のしなやかさ及び/又は筋肉の弾力性を改善することができる。一態様において、ケルセチン及び/又はその配糖体は、筋肉の硬さの低下、筋肉の硬さの増加抑制、筋肉のしなやかさ改善及び筋肉の弾力性改善からなる群より選択される1以上のために使用することができる。ケルセチン及び/又はその配糖体は、例えば、筋肉の柔軟性を改善することにより予防又は改善が期待できる状態又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。
【0039】
ケルセチン及び/又はその配糖体は、運動と組み合わせて筋肉の柔軟性を改善するために使用されることが好ましい。本発明においては、ケルセチン及び/又はその配糖体を、運動と組み合わせて摂取又は投与することが好ましい。筋肉は、上記と同じであり、大腿部の筋肉が好ましい。運動、その好ましい態様等は、上記と同じである。
【0040】
上記方法及び使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、ケルセチン及び/又はその配糖体を対象に投与する(摂取させる)ことが好ましい。ケルセチン及び/又はその配糖体は上記の通りである。
【0041】
上記方法及び使用においては、筋肉の柔軟性改善効果が得られる量(有効量)のケルセチン及び/又はその配糖体を使用すればよい。ケルセチン及び/又はその配糖体の好ましい投与量、投与対象、投与方法等は上述した本発明の筋肉の柔軟性改善用組成物と同じである。上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。ケルセチン及び/又はその配糖体は、そのまま投与してもよく、これを含む組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の組成物を使用してもよい。ケルセチン及び/又はその配糖体は、経口投与(摂取)されることが好ましい。
【0042】
ケルセチン及び/又はその配糖体は、筋肉の柔軟性を改善するために使用される飲食品、化粧料、医薬品、医薬部外品、飼料等の製造のために使用することができる。一態様において、本発明は、筋肉の柔軟性改善用組成物を製造するための、ケルセチン及び/又はその配糖体の使用も包含する。筋肉の柔軟性改善用組成物及びその好ましい態様等は、上記の本発明の組成物と同じである。
なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全ては、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
(実施例1、実施例2及び比較例1)
<試験食品の作製>
ケルセチン配糖体(サンエミックP30、三栄源エフ・エフ・アイ(株))及び賦形剤を用いてハードカプセルを製造し(1カプセルの大きさ:長径19.54mm×短径6.94mm)、6粒あたり200mg又は500mgのケルセチン配糖体を含有するケルセチン配糖体含有食品(それぞれ200mgケルセチン配糖体含有食品、500mgケルセチン配糖体含有食品という)を作製した。サンエミックP30は、ケルセチンに1~7個のグルコースが付加した2種以上のケルセチン配糖体の混合物である。臨床試験用の対照食品として、賦形剤のみを含有するハードカプセルを製造した。酸化等の劣化を防ぐため、ケルセチン配糖体含有食品と対照食品はそれぞれ6粒ずつアルミニウムパウチで個包装され、臨床試験に必要な数が用意された。
【0045】
<臨床試験>
試験参加同意の説明を行い、同意を得られた50-74歳の健康な中高年者(運動習慣のない)を対象にプラセボ対照単盲検並行群間比較試験を実施した。被験者は運動ありで対照食品を摂取する群(比較例1:対照食品群)、運動ありで200mgケルセチン配糖体含有食品を摂取する群(実施例1:200mgケルセチン配糖体群)、及び、運動ありで500mgケルセチン配糖体含有食品を摂取する群(実施例2:500mgケルセチン配糖体群)の3群に割り付けられた。それぞれの群で運動及び試験食品摂取の介入を24週間実施した。
運動は、トレーナーの管理下で、下肢を中心とした4種類のレジスタンス運動(レッグエクステンション、レッグプレス、レッグカール、チェストプレスをそれぞれ最大挙上重量(1RM)の40%の負荷で14回を1セットとして、1日3セット)を週3日間実施した。いずれの運動も主運動の前後にウォーミングアップとクールダウンの柔軟運動(ストレッチ)を実施した。また4週間に1回、1RMの測定を行い、被験者ごとに負荷重量を調整した。試験食品(対照食品又はケルセチン配糖体含有食品)は、1日6カプセルを、充分な量の水又はぬるま湯と共に摂取させた。
筋肉の柔軟性の評価には、Aixplorer(コニカミノルタ社製)のshear wave elastographyモードを用いて、せん断波速度の測定及び定量を行った。せん断波速度が小さいほど筋肉の柔軟性が高く(柔らかく)、せん断波速度が大きいほど、筋肉の柔軟性が低い(硬い)といえる。完全屈曲状態(正座(屈膝座法)の状態)における、右大腿部の外側広筋を解析部位とした。この完全屈曲状態では、右大腿部の外側広筋の状態は、力を入れた状態(筋肉が伸ばされている状態)である。
【0046】
<解析結果>
介入が完了した解析対象者はそれぞれ対照食品群:16名、200mgケルセチン配糖体群:16名、500mgケルセチン配糖体群:16名であった。500mgケルセチン配糖体群は、1名データ欠損のため、12週目のせん断波速度の解析対象者は15名であった。せん断波速度(m/s)の平均値(括弧内は標準誤差)の結果を表1に示す。表1中、*は、対照食品群と比較して有意差があることを示す(*p<0.05、Dunnett’s test)。表1に示す結果は、小数第三位を四捨五入した値である。
介入前のせん断波速度は、3群間に有意差はなかった。介入前後の変化に関しては、対照食品群との群間比較において、介入24週目のせん断波速度変化量は、200mgケルセチン配糖体群及び500mgケルセチン配糖体群において有意に低値を示した。図1に、運動及び試験食品摂取の介入前と比較した、介入24週目のせん断波速度の変化量のグラフを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
完全屈曲状態の筋肉のせん断波速度は加齢に伴い増加する、すなわち筋肉の柔軟性が低下する。ケルセチン配糖体を摂取した群のみ完全屈曲状態のせん断波速度の低下が認められたことから、筋柔軟性に対するケルセチン及び/又はその配糖体摂取の有用性が確認された。

図1