(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-03
(45)【発行日】2026-03-11
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 23/08 20060101AFI20260304BHJP
F02B 23/10 20060101ALI20260304BHJP
F02F 3/26 20060101ALI20260304BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20260304BHJP
【FI】
F02B23/08 D
F02B23/08 P
F02B23/10 310A
F02F3/26 C
F02F1/24 D
(21)【出願番号】P 2022048523
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2025-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 千馬
(72)【発明者】
【氏名】椎名 義朗
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-083328(JP,U)
【文献】特開2003-322021(JP,A)
【文献】特開平09-079040(JP,A)
【文献】米国特許第4565181(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/08 ~ 23/10
F02F 3/26
F02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体を備えるエンジンであって、
前記シリンダ本体に取り付けられ、吸気ポートおよび排気ポートが形成されるシリンダヘッドと、
前記シリンダ本体のシリンダボアに収容され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を区画するピストンと、
を有し、
前記ピストンは、
ピストン冠面の外周縁部に形成され、前記ピストン冠面の外縁に近づくほどに前記シリンダヘッドに近づいて傾斜している第1ピストン傾斜面と、
前記ピストン冠面の前記外周縁部に形成され、前記ピストン冠面の前記外縁に近づくほどに前記シリンダヘッドから離れて傾斜している第2ピストン傾斜面と、
を備
え、
前記第1ピストン傾斜面は、前記ピストンの中央を対称点とする前記第2ピストン傾斜面の点対称の位置に形成される、
エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
前記シリンダヘッドは、
前記第1ピストン傾斜面に対向し、前記燃焼室の外縁に近づくほどに前記ピストン冠面から離れて傾斜している第1ヘッド傾斜面と、
前記第2ピストン傾斜面に対向し、前記燃焼室の前記外縁に近づくほどに前記ピストン冠面に近づいて傾斜している第2ヘッド傾斜面と、
を備えている、
エンジン。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンにおいて、
前記シリンダボアの中心線を含み、かつピストンピンの中心線に直交する仮想面を、基準面とした場合に、
前記第1ピストン傾斜面、前記第2ピストン傾斜面、前記第1ヘッド傾斜面および前記第2ヘッド傾斜面は、前記基準面に交差している、
エンジン。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のエンジンにおいて、
前記第1ピストン傾斜面は、ピストン中央よりも前記排気ポート側に位置しており、
前記第2ピストン傾斜面は、前記ピストン中央よりも前記吸気ポート側に位置している、
エンジン。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載のエンジンにおいて、
前記第1ピストン傾斜面は、ピストン中央よりも前記吸気ポート側に位置しており、
前記第2ピストン傾斜面は、前記ピストン中央よりも前記排気ポート側に位置している、
エンジン。
【請求項6】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
前記第1ピストン傾斜面の幅と、前記第2ピストン傾斜面の幅とは、互いに一致する、
エンジン。
【請求項7】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
前記第1ピストン傾斜面の傾斜角度と、前記第2ピストン傾斜面の傾斜角度とは、互いに一致する、
エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの熱効率を高めるためには、燃焼室内に縦渦状のタンブル流を生成することが重要となっている。また、ピストンとシリンダヘッドとの間にスキッシュクリアランスを設定し、燃焼室の外縁から中央に向かうスキッシュ流を生成することも多い(特許文献1~3参照)。このように、燃焼室内における混合気の流動を強めることにより、燃焼速度を高めて燃焼効率を上げることができ、エンジンの熱効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-190166号公報
【文献】特開2006-152825号公報
【文献】特開2004-19596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの熱効率については更なる向上が求められており、燃焼室内におけるタンブル流についても更なる強化が求められている。
【0005】
本発明の目的は、燃焼室内のタンブル流を強化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエンジンは、シリンダ本体を備えるエンジンであって、前記シリンダ本体に取り付けられ、吸気ポートおよび排気ポートが形成されるシリンダヘッドと、前記シリンダ本体のシリンダボアに収容され、前記シリンダヘッドとの間に燃焼室を区画するピストンと、を有する。前記ピストンは、ピストン冠面の外周縁部に形成され、前記ピストン冠面の外縁に近づくほどに前記シリンダヘッドに近づいて傾斜している第1ピストン傾斜面と、前記ピストン冠面の前記外周縁部に形成され、前記ピストン冠面の前記外縁に近づくほどに前記シリンダヘッドから離れて傾斜している第2ピストン傾斜面と、を備える。前記第1ピストン傾斜面は、前記ピストンの中央を対称点とする前記第2ピストン傾斜面の点対称の位置に形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ピストンは、ピストン冠面の外縁に近づくほどにシリンダヘッドに近づいて傾斜している第1ピストン傾斜面と、ピストン冠面の外縁に近づくほどにシリンダヘッドから離れて傾斜している第2ピストン傾斜面と、を備えている。これにより、燃焼室内のタンブル流を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態であるエンジンが搭載された車両の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるエンジンを示す図である。
【
図3】エンジンの燃焼室およびその近傍を簡単に示す図である。
【
図4】
図3の矢印α方向からピストンを示す図である。
【
図6】
図3の矢印β方向からシリンダヘッドを示す図である。
【
図8】シリンダヘッドおよびピストンを示す断面図である。
【
図9】燃焼室内における吸入空気の流れ方向を示す図である。
【
図10】燃焼室内における吸入空気の流れ方向を示す図である。
【
図11】本発明の他実施形態であるエンジンを示す断面図である。
【
図12】本発明の他実施形態であるエンジンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[車両]
図1は本発明の一実施形態であるエンジン10が搭載された車両11の一例を示す図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン10を備えたパワートレイン12が搭載されている。パワートレイン12の出力軸13には、プロペラ軸14およびデファレンシャル機構15を介して車輪16が連結されている。図示するパワートレイン12は、後輪駆動用のパワートレインであるが、これに限られることはなく、前輪駆動用や全輪駆動用のパワートレインであっても良い。また、後述するように、図示するエンジン10は、水平対向エンジンであるが、これに限られることはなく、例えば、直列エンジン、V型エンジン或いは単気筒エンジンであっても良い。
【0011】
[エンジン]
図2は本発明の一実施形態であるエンジン10を示す図である。
図2に示すように、エンジン10は、一方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック(シリンダ本体)20と、他方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック(シリンダ本体)21と、一対のシリンダブロック20,21に支持されるクランク軸22と、を有している。各シリンダブロック20,21には、動弁機構23等を備えたシリンダヘッド24が取り付けられている。これらのシリンダヘッド24には、燃焼室25に連通する吸気ポート26が形成されるとともに、吸気ポート26を開閉する吸気バルブ27が組み付けられている。また、シリンダヘッド24には、燃焼室25に連通する排気ポート28が形成されるとともに、排気ポート28を開閉する排気バルブ29が組み付けられている。なお、シリンダヘッド24には、燃焼室25内の混合気に点火する図示しない点火プラグが設けられており、吸入空気に向けて燃料を噴射する図示しないインジェクタが設けられている。
【0012】
各シリンダブロック20,21にはシリンダボア30が形成されており、各シリンダボア30にはピストン31が収容されている。ピストン31にはピストンピン32が組み付けられており、このピストンピン32にはコネクティングロッド33の小端部34が連結されている。また、クランク軸22にはクランクジャーナル35に対して偏心するクランクピン36が設けられており、クランクピン36にはコネクティングロッド33の大端部37が連結されている。このように、クランク軸22とピストン31とは、コネクティングロッド33を介して互いに連結されている。
【0013】
[ピストン]
図3はエンジン10の燃焼室25およびその近傍を簡単に示す図である。
図4は
図3の矢印α方向からピストン31を示す図であり、
図5はピストン31を示す断面図である。
図5には、
図4のA1-A1線に沿うピストン31の断面図が示されるとともに、
図4のA2-A2線に沿うピストン31の断面図が示されている。なお、以下の説明において、ピストン中央C1aとは、ピストン31の中心線C2aが通過するピストン冠面40の中央である。また、ピストン31の中心線C2aは、シリンダボア30の中心線C3に対して一致している。
【0014】
図3に示すように、シリンダボア30、ピストン31およびシリンダヘッド24によって、燃焼室25が区画されている。つまり、シリンダヘッド24とピストン31との間には、混合気を燃焼させる燃焼室25が区画されている。
図4および
図5に示すように、ピストン31は、燃焼室25に面するピストン冠面40を備えたヘッド部41と、ピストンリング42が取り付けられるランド部43と、を有している。また、ピストン31は、ピストンピン32が挿入されるピン穴44を備えたピンボス部45と、シリンダボア30の内周面に摺動自在に接触するスカート部46と、を有している。なお、図示するピストン冠面40は凹状に形成されているが、これに限られることはない。例えば、ピストン冠面40を凸状に形成していても良く、ピストン31の中心線C2aに対して直交する平面を用いてピストン冠面40を形成しても良い。
【0015】
ピストン冠面40の一部を構成する環状の外周縁部50には、ピストン中央C1aよりも排気ポート28側に配置される第1ピストン傾斜面51が形成されている。第1ピストン傾斜面51は、ピストン冠面40の外縁40oに近づくほどにシリンダヘッド24に近づいて傾斜する傾斜面である。また、ピストン冠面40の外周縁部50には、ピストン中央C1aよりも吸気ポート26側に配置される第2ピストン傾斜面52が形成されている。第2ピストン傾斜面52は、ピストン冠面40の外縁40oに近づくほどにシリンダヘッド24から離れて傾斜する傾斜面である。前述した第1および第2ピストン傾斜面51,52は、シリンダボア30の中心線C3に対して傾斜する傾斜面である。また、第1および第2ピストン傾斜面51,52は、シリンダボア30の中心線C3に直交する仮想面に対して傾斜する傾斜面となっている。
【0016】
[シリンダヘッド]
図6は
図3の矢印β方向からシリンダヘッド24を示す図であり、
図7はシリンダヘッド24を示す断面図である。
図7には、
図6のB1-B1線に沿うシリンダヘッド24の断面図が示されるとともに、
図6のB2-B2線に沿うシリンダヘッド24の断面図が示されている。なお、以下の説明において、燃焼室中央C1bとは、燃焼室25の中心線C2bが通過する燃焼室面59の中央である。また、燃焼室25の中心線C2bは、シリンダボア30の中心線C3に対して一致している。
【0017】
図3に示すように、シリンダヘッド24には、燃焼室25に面する燃焼室面59、つまりピストン冠面40に対向する燃焼室面59が形成されている。
図6および
図7に示すように、燃焼室面59の一部を構成する環状の外周縁部60には、燃焼室中央C1bよりも排気ポート28側に配置される第1ヘッド傾斜面61が形成されている。つまり、燃焼室面59の外周縁部60には、第1ピストン傾斜面51に対向する第1ヘッド傾斜面61が形成されている。この第1ヘッド傾斜面61は、燃焼室25の外縁25oつまり燃焼室面59の外縁59oに近づくほどにピストン冠面40から離れて傾斜する傾斜面である。また、燃焼室面59の外周縁部60には、燃焼室中央C1bよりも吸気ポート26側に配置される第2ヘッド傾斜面62が形成されている。つまり、燃焼室面59の外周縁部60には、第2ピストン傾斜面52に対向する第2ヘッド傾斜面62が形成されている。この第2ヘッド傾斜面62は、燃焼室25の外縁25oつまり燃焼室面59の外縁59oに近づくほどにピストン冠面40に近づいて傾斜する傾斜面である。前述した第1および第2ヘッド傾斜面61,62は、シリンダボア30の中心線C3に対して傾斜する傾斜面である。また、第1および第2ヘッド傾斜面61,62は、シリンダボア30の中心線C3に直交する仮想面に対して傾斜する傾斜面となっている。
【0018】
[スキッシュエリア]
続いて、シリンダヘッド24とピストン31との間に区画されるスキッシュエリアS1,S2について説明する。つまり、第1ヘッド傾斜面61と第1ピストン傾斜面51との間に区画されるスキッシュエリアS1と、第2ヘッド傾斜面62と第2ピストン傾斜面52との間に区画されるスキッシュエリアS2と、について説明する。
図8はシリンダヘッド24およびピストン31を示す断面図である。
図8には、
図6のB3-B3線に沿うシリンダヘッド24の断面図が示されるとともに、
図4のA3-A3線に沿うピストン31の断面図が示されている。また、
図9および
図10は、燃焼室25内における吸入空気の流れ方向を示す図である。なお、
図9および
図10においては、便宜上、ピストン31の往復方向を上下方向と定義している。以下の説明では、シリンダヘッド24側を上方として説明し、ピストン31側を下方として説明する。
【0019】
図3および
図8に示すように、シリンダヘッド24には第1および第2ヘッド傾斜面61,62が形成されており、ピストン31には第1および第2ピストン傾斜面51,52が形成されている。また、第1ヘッド傾斜面61と第1ピストン傾斜面51とは互いに対向しており、第2ヘッド傾斜面62と第2ピストン傾斜面52とは互いに対向している。さらに、第1ピストン傾斜面51と第2ピストン傾斜面52とは、シリンダボア30の中心線C3を介して互いに対向する位置に形成されており、第1ヘッド傾斜面61と第2ヘッド傾斜面62とは、シリンダボア30の中心線C3を介して互いに対向する位置に形成されている。つまり、
図4において、第1ピストン傾斜面51の形成位置と第2ピストン傾斜面52の形成位置とは、ピストン中央C1aを対称点とする点対称の位置である。また、
図6において、第1ヘッド傾斜面61の形成位置と第2ヘッド傾斜面62の形成位置とは、燃焼室中央C1bを対称点とする点対称の位置である。
【0020】
換言すれば、第1ピストン傾斜面51、第2ピストン傾斜面52、第1ヘッド傾斜面61および第2ヘッド傾斜面62の形成位置を、以下のように定義することも可能である。つまり、
図4および
図6に示すように、シリンダボア30の中心線C3を含み、かつピストンピン32の中心線C4に直交する仮想面を、基準面PL1として設定する。この場合に、第1ピストン傾斜面51、第2ピストン傾斜面52、第1ヘッド傾斜面61および第2ヘッド傾斜面62は、基準面PL1に交差する位置に形成されている。なお、ピストンピン32の中心線C4は、ピンボス部45に形成されるピン穴44の中心線に対して一致している。前述したように、ピストン傾斜面51,52およびヘッド傾斜面61,62を形成することにより、
図10に示すように、スキッシュエリアS1,S2からの噴射流Fs1,Fs2によってタンブル流Ftを強化することが可能となる。
【0021】
すなわち、
図9に矢印Faで示すように、エンジン10の吸気行程から圧縮行程にかけて、吸入空気の多くが吸気ポート26と吸気バルブ27との隙間Gに流れ込み、シリンダボア30内に縦渦状の空気流れであるタンブル流Ftが生成される。そして、
図10に示すように、圧縮行程の終盤においてピストン31が上死点近傍に到達すると、第1ヘッド傾斜面61と第1ピストン傾斜面51との間に区画されるスキッシュエリアS1からは、吸気ポート26に向かう噴射流Fs1が斜め下方に噴射される。同様に、圧縮行程の終盤においてピストン31が上死点近傍に到達すると、第2ヘッド傾斜面62と第2ピストン傾斜面52との間に区画されるスキッシュエリアS2からは、排気ポート28に向かう噴射流Fs2が斜め上方に噴射される。
【0022】
このとき、燃焼室25内においては、タンブル流Ftとして、吸気ポート26に向かう流れFt1が燃焼室25の下部に形成されており、排気ポート28に向かう流れFt2が燃焼室25の上部に形成されている。つまり、スキッシュエリアS1から斜め下方に向かう噴射流Fs1によって、吸気ポート26に向かうタンブル流Ftの流れ成分Ft1を強めることができる。また、スキッシュエリアS2から斜め上方に向かう噴射流Fs2によって、排気ポート28に向かうタンブル流Ftの流れ成分Ft2を強めることができる。これにより、圧縮行程の終盤において燃焼室25内に強いタンブル流Ftを発生させることができ、混合気の燃焼効率を高めてエンジン10の熱効率を向上させることができる。
【0023】
[他実施形態]
前述の説明では、第1ピストン傾斜面51が、ピストン中央C1aよりも排気ポート28側に位置しており、第2ピストン傾斜面52が、ピストン中央C1aよりも吸気ポート26側に位置しているが、これに限られることはない。つまり、第1ピストン傾斜面51が、ピストン中央C1aよりも吸気ポート26側に位置しても良く、第2ピストン傾斜面52が、ピストン中央C1aよりも排気ポート28側に位置しても良い。ここで、
図11および
図12は、本発明の他実施形態であるエンジン70を示す断面図である。
図11および
図12には、前述した
図3と同じ位置の断面が示されるとともに、燃焼室25内における吸入空気の流れ方向が示されている。なお、
図11および
図12において、
図9および
図10に示す部品や部位と同様の部品や部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】
図11に示すように、エンジン70には、ピストン71およびシリンダヘッド72が設けられている。また、エンジン70には、シリンダボア30、ピストン71およびシリンダヘッド72によって、燃焼室25が区画されている。さらに、ピストン71には、燃焼室25に面するピストン冠面73が形成されている。ピストン冠面73の一部を構成する環状の外周縁部80には、ピストン中央C1aよりも吸気ポート26側に配置される第1ピストン傾斜面81が形成されている。第1ピストン傾斜面81は、ピストン冠面73の外縁73oに近づくほどにシリンダヘッド72に近づいて傾斜する傾斜面である。また、ピストン冠面73の外周縁部80には、ピストン中央C1aよりも排気ポート28側に配置される第2ピストン傾斜面82が形成されている。第2ピストン傾斜面82は、ピストン冠面73の外縁73oに近づくほどにシリンダヘッド72から離れて傾斜する傾斜面である。
【0025】
シリンダヘッド72には、燃焼室25に面する燃焼室面74、つまりピストン冠面73に対向する燃焼室面74が形成されている。燃焼室面74の一部を構成する環状の外周縁部90には、燃焼室中央C1bよりも吸気ポート26側に配置される第1ヘッド傾斜面91が形成されている。つまり、燃焼室面74の外周縁部90には、第1ピストン傾斜面81に対向する第1ヘッド傾斜面91が形成されている。この第1ヘッド傾斜面91は、燃焼室25の外縁25oつまり燃焼室面74の外縁74oに近づくほどにピストン冠面73から離れて傾斜する傾斜面である。また、燃焼室面74の外周縁部90には、燃焼室中央C1bよりも排気ポート28側に配置される第2ヘッド傾斜面92が形成されている。つまり、燃焼室面74の外周縁部90には、第2ピストン傾斜面82に対向する第2ヘッド傾斜面92が形成されている。この第2ヘッド傾斜面92は、燃焼室25の外縁25oつまり燃焼室面74の外縁74oに近づくほどにピストン冠面73に近づいて傾斜する傾斜面である。
【0026】
このように、ピストン傾斜面81,82およびヘッド傾斜面91,92を形成することにより、
図12に示すように、第1ヘッド傾斜面91と第1ピストン傾斜面81との間にスキッシュエリアS1xが区画されるとともに、第2ヘッド傾斜面92と第2ピストン傾斜面82との間にスキッシュエリアS2xが区画される。これにより、スキッシュエリアS1x,S2xからの噴射流Fs1,Fs2によってタンブル流Ftを強化することができる。
【0027】
つまり、
図11に矢印Faで示すように、エンジン70の吸気行程から圧縮行程にかけて、吸入空気の多くが吸気ポート26と吸気バルブ27との隙間Gxに流れ込み、シリンダボア30内に縦渦状の空気流れであるタンブル流Ftが生成される。そして、
図12に示すように、圧縮行程の終盤においてピストン71が上死点近傍に到達すると、第1ヘッド傾斜面91と第1ピストン傾斜面81との間に区画されるスキッシュエリアS1xからは、排気ポート28に向かう噴射流Fs1が斜め下方に噴射される。同様に、圧縮行程の終盤においてピストン71が上死点近傍に到達すると、第2ヘッド傾斜面92と第2ピストン傾斜面82との間に区画されるスキッシュエリアS2xからは、吸気ポート26に向かう噴射流Fs2が斜め上方に噴射される。
【0028】
このとき、燃焼室25内においては、タンブル流Ftとして、排気ポート28に向かう流れFt1が燃焼室25の下部に形成されており、吸気ポート26に向かう流れFt2が燃焼室25の上部に形成されている。つまり、スキッシュエリアS1xから斜め下方に向かう噴射流Fs1によって、排気ポート28に向かうタンブル流Ftの流れ成分Ft1を強めることができる。また、スキッシュエリアS2xから斜め上方に向かう噴射流Fs2によって、吸気ポート26に向かうタンブル流Ftの流れ成分Ft2を強めることができる。これにより、圧縮行程の終盤において燃焼室25内に強いタンブル流Ftを発生させることができ、混合気の燃焼効率を高めてエンジン70の熱効率を向上させることができる。
【0029】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。図示する例では、第1ピストン傾斜面51と第1ヘッド傾斜面61とは互いに平行に形成されており、第2ピストン傾斜面52と第2ヘッド傾斜面62とは互いに平行に形成されているが、これに限られることはない。中心線C3に対する第1ピストン傾斜面51と第1ヘッド傾斜面61との傾斜角度を互いに相違させても良く、中心線C3に対する第2ピストン傾斜面52と第2ヘッド傾斜面62との傾斜角度を互いに相違させても良い。また、中心線C3に対する第1ピストン傾斜面51と第2ピストン傾斜面52との傾斜角度については、互いに一致させても良く、互いに相違させても良い。同様に、中心線C3に対する第1ヘッド傾斜面61と第2ヘッド傾斜面62との傾斜角度については、互いに一致させても良く、互いに相違させても良い。なお、
図11に示した例においても、第1ピストン傾斜面81と第1ヘッド傾斜面91とは互いに平行に形成されており、第2ピストン傾斜面82と第2ヘッド傾斜面92とは互いに平行に形成されているが、これに限られることはない。
【0030】
第1ピストン傾斜面51、第2ピストン傾斜面52、第1ヘッド傾斜面61および第2ヘッド傾斜面62の中心線C3に対する傾斜角度については、円形に形成されるピストン冠面40や燃焼室面59の周方向において一定であっても良く、ピストン冠面40や燃焼室面59の周方向において変化しても良い。また、
図4に示した例では、第1ピストン傾斜面51と第2ピストン傾斜面52との周方向における長さを互いに一致させているが、これに限られることはなく、第1ピストン傾斜面51と第2ピストン傾斜面52との周方向における長さを互いに相違させても良い。同様に、
図6に示した例では、第1ヘッド傾斜面61と第2ヘッド傾斜面62との周方向における長さを互いに一致させているが、これに限られることはなく、第1ヘッド傾斜面61と第2ヘッド傾斜面62との周方向における長さを互いに相違させても良い。なお、
図11に示した例においても、第1ピストン傾斜面81、第2ピストン傾斜面82、第1ヘッド傾斜面91および第2ヘッド傾斜面92の中心線C3に対する傾斜角度については、円形に形成されるピストン冠面73や燃焼室面74の周方向において一定であっても良く、ピストン冠面73や燃焼室面74の周方向において変化しても良い。また、第1ピストン傾斜面81と第2ピストン傾斜面82との周方向における長さについては、互いに一致させても良く、互いに相違させても良い。さらに、第1ヘッド傾斜面91と第2ヘッド傾斜面92との周方向における長さについても、互いに一致させても良く、互いに相違させても良い。
【0031】
図示するエンジン10,70は、車両11に搭載されるエンジンであるが、これに限られることはなく、他の装置等に動力源として用いられるエンジンに対して本発明を適用しても良い。また、図示するエンジン10,70は、燃料としてガソリンを用いたガソリンエンジンであるが、これに限られることなく、燃料として軽油や水素等を用いたエンジンに対して本発明を適用しても良い。また、燃焼室25内におけるタンブル流を更に強化するため、吸入空気の流れ方向を制御するTGV(Tumble Generation Valve)等のタンブルバルブをシリンダヘッド24,72に取り付けても良い。
【符号の説明】
【0032】
10 エンジン
20,21 シリンダブロック(シリンダ本体)
24 シリンダヘッド
25 燃焼室
25o 外縁
26 吸気ポート
28 排気ポート
30 シリンダボア
31 ピストン
32 ピストンピン
40 ピストン冠面
40o 外縁
50 外周縁部
51 第1ピストン傾斜面
52 第2ピストン傾斜面
59 燃焼室面
59o 外縁
60 外周縁部
61 第1ヘッド傾斜面
62 第2ヘッド傾斜面
70 エンジン
71 ピストン
72 シリンダヘッド
73 ピストン冠面
73o 外縁
74 燃焼室面
74o 外縁
80 外周縁部
81 第1ピストン傾斜面
82 第2ピストン傾斜面
90 外周縁部
91 第1ヘッド傾斜面
92 第2ヘッド傾斜面
C1a ピストン中央
C3 シリンダボアの中心線
C4 ピストンピンの中心線
PL1 基準面