(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-03
(45)【発行日】2026-03-11
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 51/06 20060101AFI20260304BHJP
F02M 69/00 20060101ALI20260304BHJP
【FI】
F02M51/06 V
F02M69/00 310V
F02M51/06 L
F02M51/06 K
(21)【出願番号】P 2022089627
(22)【出願日】2022-06-01
【審査請求日】2025-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 弘亘
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-507127(JP,A)
【文献】米国特許第5725151(US,A)
【文献】特開平11-200997(JP,A)
【文献】特開2004-019582(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0138846(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第10219834(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0062804(KR,A)
【文献】特開2020-112155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00 ~ 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに設けられる燃料噴射装置であって、
燃料を噴射する噴射孔が形成されるノズル部と、前記噴射孔に燃料を供給する燃料流路が形成される本体部と、を備えるインジェクタと、
前記インジェクタに設けられ、前記燃料流路内の燃料である内部燃料を帯電させる第1電極と、
前記インジェクタに設けられ、前記ノズル部の先端に付着する燃料である外部燃料を帯電させる第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極に電気的に接続され、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加する電源回路部と、
互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記電源回路部を制御する制御システムと、
を有し、
前記インジェクタは、前記噴射孔を閉じるクローズ位置と、前記噴射孔を開くオープン位置と、に移動する弁体を備え、
前記制御システムは、前記弁体が前記クローズ位置に移動した状態のもとで、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加させ、前記内部燃料と前記外部燃料とを互いに逆極性に帯電させる、
燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記電源回路部は、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加する作動状態と、前記第1電極と前記第2電極とに対する電圧印加を解消する停止状態と、に制御され、
前記制御システムは、前記弁体が前記クローズ位置に移動した状態のもとで、前記電源回路部を前記作動状態に制御した後に、前記電源回路部を前記停止状態に制御する、
燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記電源回路部は、
前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加し、前記第1電極の電位を前記第2電極の電位よりも上げる第1作動状態と、
前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加し、前記第2電極の電位を前記第1電極の電位よりも上げる第2作動状態と、
前記第1電極と前記第2電極とに対する電圧印加を解消する停止状態と、
に制御され、
前記制御システムは、前記電源回路部を、前記第1作動状態、前記停止状態、前記第2作動状態の順に制御する、
燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記第1電極は、前記本体部または前記弁体に設けられており、
前記第2電極は、前記ノズル部に設けられている、
燃料噴射装置。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記第2電極は、メッシュ状に構成されている、
燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに設けられる燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼室や吸気ポートには、インジェクタからガソリン等の燃料が噴射されている(特許文献1-4参照)。また、エンジンの排気ガスには粒子状物質(PM:Particulate Matter)が含まれることから、排気ガス中の粒子状物質数(PN:Particulate Number)を低減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-25751号公報
【文献】特開2020-110746号公報
【文献】実開平4-62341号公報
【文献】特開2006-2629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気ガスに含まれる粒子状物質数の増加要因として、インジェクタから噴射される燃料濃度が局所的に高まることが挙げられる。このように、噴射された燃料濃度にバラツキが生じる要因として、インジェクタ先端に付着する燃料の存在がある。つまり、インジェクタ先端に多くの燃料が付着していた場合には、この付着した燃料がインジェクタから纏まって離れることにより、噴射された燃料濃度を局所的に高めてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、インジェクタに付着する燃料を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の燃料噴射装置は、エンジンに設けられる燃料噴射装置であって、燃料を噴射する噴射孔が形成されるノズル部と、前記噴射孔に燃料を供給する燃料流路が形成される本体部と、を備えるインジェクタと、前記インジェクタに設けられ、前記燃料流路内の燃料である内部燃料を帯電させる第1電極と、前記インジェクタに設けられ、前記ノズル部の先端に付着する燃料である外部燃料を帯電させる第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に電気的に接続され、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加する電源回路部と、互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記電源回路部を制御する制御システムと、を有し、前記インジェクタは、前記噴射孔を閉じるクローズ位置と、前記噴射孔を開くオープン位置と、に移動する弁体を備え、前記制御システムは、前記弁体が前記クローズ位置に移動した状態のもとで、前記第1電極と前記第2電極とに電圧を印加させ、前記内部燃料と前記外部燃料とを互いに逆極性に帯電させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、内部燃料と外部燃料とを互いに逆極性に帯電させることにより、インジェクタに付着する燃料を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エンジンが搭載される車両の一例を示す図である。
【
図3】燃料噴射装置を構成するインジェクタの一例を示す図である。
【
図5】燃料噴射装置を構成する制御システムの一例を示す図である。
【
図6】エンジン制御ユニットの基本構造の一例を示す図である。
【
図7】燃料帯電制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】燃料帯電制御の実行過程におけるノズル部およびその近傍を示す図である。
【
図9】燃料帯電制御の実行過程におけるノズル部およびその近傍を示す図である。
【
図10】燃料帯電制御の実行手順の他の例を示すフローチャートである。
【
図11】燃料帯電制御の実行過程におけるノズル部およびその近傍を示す図である。
【
図12】燃料噴射装置を構成するインジェクタの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[車両]
図1はエンジン10が搭載される車両11の一例を示す図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン10を備えたパワートレイン12が搭載されている。図示するエンジン10には、本発明の一実施形態である燃料噴射装置13が設けられている。また、車両11にはガソリン等の燃料を溜める燃料タンク14が設けられており、燃料タンク14とエンジン10とは燃料供給経路15を介して互いに接続されている。なお、後述するように、図示するエンジン10は、水平対向エンジンであるが、これに限られることはなく、直列エンジン、V型エンジン或いは単気筒エンジンであっても良い。
【0011】
[エンジン]
図2はエンジン10の一例を示す図である。
図2に示すように、エンジン10は、一方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック20と、他方のシリンダバンクを構成するシリンダブロック21と、一対のシリンダブロック20,21に支持されるクランク軸22と、を有している。各シリンダブロック20,21にはシリンダボア23が形成されており、各シリンダボア23にはピストン24が収容されている。クランク軸22とピストン24とは、コネクティングロッド25を介して互いに連結されている。
【0012】
各シリンダブロック20,21には、動弁機構30等を備えたシリンダヘッド31が取り付けられている。シリンダヘッド31には、燃焼室32に連通する吸気ポート33が形成されるとともに、吸気ポート33を開閉する吸気バルブ34が組み付けられている。また、シリンダヘッド31には、燃焼室32に連通する排気ポート35が形成されるとともに、排気ポート35を開閉する排気バルブ36が組み付けられている。さらに、シリンダヘッド31には、燃焼室32に燃料を噴射するインジェクタ37が設けられるとともに、燃焼室32内の混合気に点火する図示しない点火プラグが設けられている。
【0013】
[インジェクタ]
図3は燃料噴射装置13を構成するインジェクタ37の一例を示す図である。
図3に示すように、シリンダヘッド31に組み付けられるインジェクタ37には、燃料供給経路15を介して燃料タンク14が接続されている。つまり、エンジン10に燃料を供給する燃料噴射装置13には、ガソリン等の燃料を溜める燃料タンク14と、燃焼室32に燃料を噴射するインジェクタ37と、が設けられている。また、燃料噴射装置13は、燃料タンク14に設けられる低圧ポンプ40と、インジェクタ37の分配配管41に接続される高圧ポンプ42と、を有している。低圧ポンプ40と高圧ポンプ42とは燃料配管43を介して接続されており、高圧ポンプ42とインジェクタ37とは燃料配管44および分配配管41を介して接続されている。つまり、低圧ポンプ40、燃料配管43、高圧ポンプ42、燃料配管44および分配配管41によって燃料供給経路15が構成されており、この燃料供給経路15を介して燃料タンク14とインジェクタ37とは互いに接続されている。
【0014】
インジェクタ37は、エンジン10のシリンダヘッド31に組み付けられる本体部50と、本体部50の先端に設けられるノズル部51と、を有している。インジェクタ37の本体部50は、内側に燃料流路52が形成されるインナパイプ53を有している。インナパイプ53は、メインパイプ53a、中間パイプ53bおよび先端パイプ53cによって構成されている。中間パイプ53bの外側には電磁コイル54が設けられており、電磁コイル54はサブホルダ55によって保持されている。また、メインパイプ53aの外側にはメインホルダ56が設けられており、メインホルダ56によってサブホルダ55および電磁コイル54が覆われている。さらに、メインホルダ56にはコネクタ57が形成されており、コネクタ57には電磁コイル54に接続された端子58が設けられている。
【0015】
インジェクタ37に設けられたインナパイプ53の内側には、磁性材料からなる筒状の固定コア60が固定されるとともに、磁性材料からなる筒状の可動コア61が往復動可能に収容されている。固定コア60の内側にはアジャストパイプ62が設けられており、可動コア61の端部にはニードルバルブ(弁体)63が設けられている。アジャストパイプ62と可動コア61との間にはスプリング64が組み付けられており、このスプリング64によって可動コア61は固定コア60から離れる方向に付勢されている。また、インナパイプ53の先端には、絶縁材料からなるバルブシート65を備えたノズル部51が設けられている。バルブシート65には複数の噴射孔66が形成されており、バルブシート65の端面にはチップ電極(第2電極)72が取り付けられている。
図3に符号αで示すように、チップ電極72は多数の網目を備えたメッシュ状に構成されている。さらに、インナパイプ53を構成する先端パイプ53cの内周面には、絶縁体70を介して環状の流路電極(第1電極)71が設けられている。なお、コネクタ57には、流路電極71に通電ライン71aを介して接続される端子71bが設けられるとともに、チップ電極72に通電ライン72aを介して接続される端子72bが設けられている。
【0016】
インジェクタ37のインナパイプ53には、燃料供給経路15の分配配管41が接続されている。分配配管41からインナパイプ53に供給される燃料は、メインパイプ53a、アジャストパイプ62、固定コア60および可動コア61の内側を流れた後に、可動コア61に固定されたニードルバルブ63の内側に到達する。ニードルバルブ63には径方向に貫通する連通孔63aが形成されており、ニードルバルブ63の内側に流れた燃料は連通孔63aを経てニードルバルブ63の外側に到達する。このように、分配配管41からインナパイプ53に供給される燃料は、メインパイプ53a、アジャストパイプ62、固定コア60および可動コア61の内側に区画される燃料流路52を流れた後に、先端パイプ53c、可動コア61、ニードルバルブ63およびバルブシート65によって区画される燃料チャンバ(燃料流路)73に供給される。なお、燃料チャンバ73は、インジェクタ37に設けられる燃料流路52の一部を構成している。また、メインパイプ53a内の燃料流路52には、燃料から異物を除去するフィルタ74が組み付けられている。
【0017】
バルブシート65の噴射孔66は、ニードルバルブ63によって開閉されている。ここで、
図4はインジェクタ37の作動状態を示す図である。
図4には、ニードルバルブ63がオープン位置に移動する噴射状態と、ニードルバルブ63がクローズ位置に移動する停止状態と、が示されている。後述するエンジン制御ユニット83によって、電磁コイル54に通電が為されると、メインパイプ53a、固定コア60、可動コア61、サブホルダ55およびメインホルダ56に磁気回路が形成される。これにより、固定コア60と可動コア61との間に磁気吸引力が発生し、固定コア60に向けて可動コア61が引き寄せられる。つまり、ニードルバルブ63を備えた可動コア61が固定コア60に向けて移動するため、ニードルバルブ63が噴射孔66を開くオープン位置に移動する。一方、電磁コイル54に対する通電が遮断されると、固定コア60と可動コア61との間の磁気吸引力が無くなるため、スプリング64のバネ力によって可動コア61は固定コア60から離れる方向に移動する。つまり、ニードルバルブ63を備えた可動コア61が固定コア60から離れて移動するため、ニードルバルブ63が噴射孔66を閉じるクローズ位置に移動する。
【0018】
前述したように、電磁コイル54に対して通電が為されると、電磁吸引力によってニードルバルブ63がバルブシート65から離れるオープン位置に移動する。このインジェクタ37の噴射状態においては、燃料チャンバ73と噴射孔66とが互いに連通するため、燃料チャンバ73内の燃料が噴射孔66から噴射される。一方、電磁コイル54に対する通電が遮断されると、バネ力によってニードルバルブ63がバルブシート65に接触するクローズ位置に移動する。このインジェクタ37の停止状態においては、燃料チャンバ73と噴射孔66とがニードルバルブ63によって遮断されるため、燃料が噴射孔66から噴射されることなく燃料チャンバ73内に止められる。
【0019】
[制御システム]
図5は燃料噴射装置13を構成する制御システム80の一例を示す図である。
図5に示すように、燃料噴射装置13には、チップ電極72および流路電極71に対して電気的に接続される電源ユニット(電源回路部)81が設けられている。電源ユニット81には、バッテリ82が接続されるとともに、スイッチング回路81a、変圧器81b、整流回路81cおよび平滑回路81d等が組み込まれている。電源ユニット81は、バッテリ82より供給される電力から直流の高電圧電力を生成するとともに、チップ電極72および流路電極71に対してプラス電圧やマイナス電圧を印加する。つまり、電源ユニット81は、チップ電極72にプラス電圧を印加して流路電極71にマイナス電圧を印加する第1作動状態(作動状態)と、チップ電極72にマイナス電圧を印加して流路電極71にプラス電圧を印加する第2作動状態(作動状態)と、に作動可能である。
【0020】
インジェクタ37に接続される電源ユニット81の動作を制御するとともに、インジェクタ37に設けられる電磁コイル54の通電状態を制御するため、燃料噴射装置13には、エンジン制御ユニット83からなる制御システム80が設けられている。エンジン制御ユニット83に接続されるセンサとして、車速を検出する車速センサ84、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ85、およびブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ86がある。また、エンジン制御ユニット83に接続されるセンサとして、クランク軸の回転角度を検出するクランク回転センサ87、エンジン10の冷却水温を検出する水温センサ88、エンジン10の吸入空気量を検出するエアフローセンサ89、および排出ガスの酸素濃度から空燃比を検出する空燃比センサ90がある。さらに、エンジン制御ユニット83には、制御システム80の起動時や停止時に手動操作される起動スイッチ91が設けられている。
【0021】
図6はエンジン制御ユニット83の基本構造の一例を示す図である。
図6に示すように、電子制御ユニットであるエンジン制御ユニット83は、プロセッサ100およびメインメモリ(メモリ)101等が組み込まれたマイクロコントローラ102を有している。メインメモリ101には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ100によってプログラムが実行される。プロセッサ100とメインメモリ101とは、互いに通信可能に接続されている。なお、マイクロコントローラ102に複数のプロセッサ100を組み込んでも良く、マイクロコントローラ102に複数のメインメモリ101を組み込んでも良い。
【0022】
また、エンジン制御ユニット83には、入力回路103、駆動回路104、通信回路105、外部メモリ106および電源回路107等が設けられている。入力回路103は、各種センサから入力される信号を、マイクロコントローラ102に入力可能な信号に変換する。駆動回路104は、マイクロコントローラ102から出力される信号に基づき、前述したインジェクタ37等の各種デバイスに対する駆動信号を生成する。通信回路105は、マイクロコントローラ102から出力される信号を、他の電子制御ユニットに向けた通信信号に変換する。また、通信回路105は、他の電子制御ユニットから受信した通信信号を、マイクロコントローラ102に入力可能な信号に変換する。さらに、電源回路107は、マイクロコントローラ102、入力回路103、駆動回路104、通信回路105および外部メモリ106等に対し、安定した電源電圧を供給する。また、不揮発性メモリ等からなる外部メモリ106には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。
【0023】
[燃料帯電制御]
図7は燃料帯電制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートに示される各ステップには、制御システム80を構成するプロセッサ100によって実行される処理が示されている。なお、
図7に示される燃料帯電制御は、制御システム80が起動されてエンジン10が始動された後に、制御システム80によって所定周期毎に実行される制御である。また、
図8および
図9は燃料帯電制御の実行過程におけるノズル部51およびその近傍を示す図である。なお、以下の説明では、燃料チャンバ73内の燃料を内部燃料Fiと記載し、ノズル部51の先端に位置するチップ電極72に付着する燃料を外部燃料Foと記載する。
【0024】
図7に示すように、ステップS10において、ニードルバルブ63がクローズ位置に制御されると、ステップS11に進み、電源ユニット81が第1作動状態に制御され、流路電極71の電位がチップ電極72の電位よりも上げられる。つまり、流路電極71にはプラス電圧が印加される一方、チップ電極72にはマイナス電圧が印加される。これにより、
図8に時刻t1で示すように、燃料チャンバ73に収容される内部燃料Fiについては、内部燃料Fiから流路電極71に電子が移動するため、内部燃料Fiの電子が減少して内部燃料Fiは正電荷に帯電する。また、ノズル部51の先端に付着する外部燃料Foについては、チップ電極72から外部燃料Foに電子が移動するため、外部燃料Foの電子が増加して外部燃料Foは負電荷に帯電する。つまり、内部燃料Fiと外部燃料Foとは、互いに逆極性に帯電した状態となる。
【0025】
なお、内部燃料Fiと外部燃料Foとを互いに逆極性に帯電させるため、流路電極71とチップ電極72との間には電気抵抗の大きな絶縁体であるバルブシート65が設けられている。また、燃料電極と先端パイプ53cとの間には絶縁体が設けられるものの、燃料チャンバ73内の内部燃料Fiを効率良く帯電させるため、燃料チャンバ73を区画する先端パイプ53c、可動コア61およびニードルバルブ63の電気抵抗も高められている。例えば、先端パイプ53c、可動コア61およびニードルバルブ63に対し、絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜処理を施すことにより、先端パイプ53c等の電気抵抗を大きくすることができる。なお、先端パイプ53c、可動コア61およびニードルバルブ63を、絶縁材料を用いて形成しても良いことはいうまでもない。
【0026】
続いて、
図7のステップS12では、ニードルバルブ63がクローズ位置に移動した状態のもとで、電源ユニット81が停止状態に制御され、流路電極71およびチップ電極72に対する電圧印加が解消される。そして、ステップS13に進み、ニードルバルブ63が所定時間に亘ってオープン位置に制御され、ステップS14に進み、ニードルバルブ63がクローズ位置に制御される。これにより、
図8に時刻t1,t2で示すように、正電荷に帯電していた内部燃料Fiが、ノズル部51の噴射孔66から燃焼室32内に噴射される。このとき、ノズル部51の先端に付着していた外部燃料Foは負電荷に帯電しており、正電荷の内部燃料Fiと負電荷の外部燃料Foとは互いに引き合うことから、正電荷の内部燃料Fiは負電荷の外部燃料Foを取り込みながら燃焼室32内に噴射される。そして、時刻t3で示すように、ニードルバルブ63がクローズ位置に戻されたときには、燃料チャンバ73から流出した正電荷の燃料が、新たな外部燃料Foとしてノズル部51の先端に付着した状態となる。
【0027】
図7に示すように、続くステップS15では、電源ユニット81が第2作動状態に制御され、チップ電極72の電位が流路電極71の電位よりも上げられる。つまり、流路電極71にはマイナス電圧が印加される一方、チップ電極72にはプラス電圧が印加される。これにより、
図9に時刻t4で示すように、燃料チャンバ73に収容される内部燃料Fiについては、流路電極71から内部燃料Fiに電子が移動するため、内部燃料Fiの電子が増加して内部燃料Fiは負電荷に帯電する。また、ノズル部51の先端に付着する外部燃料Foについては、外部燃料Foからチップ電極72に電子が移動するため、外部燃料Foの電子が減少して外部燃料Foは正電荷に帯電する。つまり、内部燃料Fiと外部燃料Foとは、互いに逆極性に帯電した状態となる。
【0028】
続いて、
図7のステップS16では、ニードルバルブ63がクローズ位置に移動した状態のもとで、電源ユニット81が停止状態に制御され、流路電極71およびチップ電極72に対する電圧印加が解消される。そして、ステップS17に進み、ニードルバルブ63が所定時間に亘ってオープン位置に制御され、ステップS18に進み、ニードルバルブ63がクローズ位置に制御される。これにより、
図8に時刻t4,t5で示すように、負電荷に帯電していた内部燃料Fiが、ノズル部51の噴射孔66から燃焼室32内に噴射される。このとき、ノズル部51の先端に付着していた外部燃料Foは正電荷に帯電しており、負電荷の内部燃料Fiと正電荷の外部燃料Foとは互いに引き合うことから、負電荷の内部燃料Fiは正電荷の外部燃料Foを取り込みながら燃焼室32内に噴射される。そして、時刻t6で示すように、ニードルバルブ63がクローズ位置に戻されたときには、燃料チャンバ73から流出した負電荷の燃料が、新たな外部燃料Foとしてノズル部51の先端に付着した状態となる。
【0029】
これまで説明したように、制御システム80は、ニードルバルブ63がクローズ位置に移動した状態のもとで、電源ユニット81を用いて流路電極71およびチップ電極72に電圧を印加させることにより、内部燃料Fiと外部燃料Foとを互いに逆極性に帯電させている。これにより、ノズル部51の噴射孔66から燃料が噴射される度に、ノズル部51の先端に付着していた外部燃料Foを除去することができ、外部燃料Foの過度な増加を抑制することができる。このように、外部燃料Foの過度な増加を抑制することにより、インジェクタ37から噴射される燃料の濃度のバラツキを抑制することができ、排気ガス中の粒子状物質数(PN:Particulate Number)を低減することができる。また、ノズル部51の先端に付着していた外部燃料Foが除去されることから、ノズル部51におけるデポジットの堆積を抑制することができ、インジェクタ37による燃料の噴射性能を良好に維持することができる。
【0030】
[他実施形態1]
図7~
図9に示した例では、内部燃料Fiが正電荷と負電荷とに交互に帯電されるとともに、外部燃料Foが負電荷と正電荷とに交互に帯電されているが、これに限られることはない。つまり、
図7~
図9に示した例では、電源ユニット81を、第1作動状態、停止状態、第2作動状態の順に切り替えて制御しているが、これに限られることはない。例えば、電源ユニット81を、第1作動状態と停止状態とに切り替えて制御しても良く、電源ユニット81を、第2作動状態と停止状態とに切り替えて制御しても良い。ここで、
図10は燃料帯電制御の実行手順の他の例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートに示される各ステップには、制御システム80を構成するプロセッサ100によって実行される処理が示されている。なお、
図10に示される燃料帯電制御は、制御システム80が起動されてエンジン10が始動された後に、制御システム80によって所定周期毎に実行される制御である。また、
図11は燃料帯電制御の実行過程におけるノズル部51およびその近傍を示す図である。
【0031】
図10に示すように、ステップS20において、ニードルバルブ63がクローズ位置に制御されると、ステップS21に進み、電源ユニット81が第1作動状態に制御され、流路電極71の電位がチップ電極72の電位よりも上げられる。つまり、流路電極71にはプラス電圧が印加される一方、チップ電極72にはマイナス電圧が印加される。これにより、
図11に時刻t11で示すように、燃料チャンバ73に収容される内部燃料Fiについては、内部燃料Fiから流路電極71に電子が移動するため、内部燃料Fiの電子が減少して内部燃料Fiは正電荷に帯電する。また、ノズル部51の先端に付着する外部燃料Foについては、チップ電極72から外部燃料Foに電子が移動するため、外部燃料Foの電子が増加して外部燃料Foは負電荷に帯電する。つまり、内部燃料Fiと外部燃料Foとは、互いに逆極性に帯電した状態となる。
【0032】
続いて、
図10のステップS22では、ニードルバルブ63がクローズ位置に移動した状態のもとで、電源ユニット81が停止状態に制御され、流路電極71およびチップ電極72に対する電圧印加が解消される。そして、ステップS23に進み、ニードルバルブ63が所定時間に亘ってオープン位置に制御され、ステップS24に進み、ニードルバルブ63がクローズ位置に制御される。これにより、
図11に時刻t11,t12で示すように、正電荷に帯電していた内部燃料Fiが、ノズル部51の噴射孔66から燃焼室32内に噴射される。このとき、ノズル部51の先端に付着していた外部燃料Foは負電荷に帯電しており、正電荷の内部燃料Fiと負電荷の外部燃料Foとは互いに引き合うことから、正電荷の内部燃料Fiは負電荷の外部燃料Foを取り込みながら燃焼室32内に噴射される。そして、時刻t13で示すように、ニードルバルブ63がクローズ位置に戻されたときには、燃料チャンバ73から流出した正電荷の燃料が、新たな外部燃料Foとしてノズル部51の先端に付着した状態となる。
【0033】
そして、ノズル部51の噴射孔66から燃料が噴射されると、再び
図10のステップS21に戻り、電源ユニット81が第1作動状態に制御され、流路電極71に対してプラス電圧が印加される一方、チップ電極72に対してマイナス電圧が印加される。これにより、
図11に時刻t14で示すように、燃料チャンバ73に収容される内部燃料Fiについては、再び、内部燃料Fiから流路電極71に電子が移動するため、内部燃料Fiの電子が減少して内部燃料Fiは正電荷に帯電する。また、ノズル部51の先端に付着する外部燃料Foについては、再び、チップ電極72から外部燃料Foに電子が移動するため、外部燃料Foの電子が増加して外部燃料Foは負電荷に帯電する。つまり、内部燃料Fiと外部燃料Foとは、互いに逆極性に帯電した状態となる。
【0034】
このように、電源ユニット81を、第1作動状態と停止状態とに切り替えて制御した場合であっても、内部燃料Fiと外部燃料Foとを互いに逆極性に帯電させることが可能である。つまり、内部燃料Fiを正電荷に帯電させることができ、外部燃料Foを負電荷に帯電させることができる。これにより、ノズル部51の噴射孔66から燃料が噴射される度に、ノズル部51の先端に付着していた外部燃料Foを除去することができ、外部燃料Foの過度な増加を抑制することができる。そして、外部燃料Foの過度な増加を抑制することにより、インジェクタ37から噴射される燃料の濃度のバラツキを抑制することができ、排気ガス中の粒子状物質数を低減することができる。なお、電源ユニット81を、第2作動状態と停止状態とに切り替えて制御することにより、内部燃料Fiを負電荷に帯電させる一方、外部燃料Foを正電荷に帯電させても良いことはいうまでもない。
【0035】
[他実施形態2]
図5に示した例では、燃料チャンバ73に収容された内部燃料Fiを帯電させるため、流路電極71を先端パイプ53cに設けているが、これに限られることはなく、燃料チャンバ73に露出する他の部品に流路電極71を設けても良い。ここで、
図12は燃料噴射装置13を構成するインジェクタ37の他の例を示す図である。
【0036】
図12に示すように、インジェクタ110には、先端パイプ53c、可動コア61、ニードルバルブ63およびバルブシート65によって、燃料チャンバ(燃料流路)73が区画されている。また、ニードルバルブ63の外周面には、絶縁体112を介して環状の流路電極(第1電極)111が設けられている。このように、燃料チャンバ73に面するニードルバルブ63に流路電極111を設けた場合であっても、流路電極111にプラス電圧を印加することによって、内部燃料Fiを正電荷に帯電させることができ、流路電極111にマイナス電圧を印加することによって、内部燃料Fiを負電荷に帯電させることができる。
【0037】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。図示するエンジン10は、燃料としてガソリンを用いたガソリンエンジンであるが、これに限られることなく、燃料として軽油を用いたディーゼルエンジンに対し、本発明の実施形態である燃料噴射装置13を適用しても良い。また、図示するエンジン10は、燃焼室32に対して燃料が噴射されるエンジンであるが、これに限られることはなく、吸気ポート33に対して燃料が噴射されるエンジンに対し、本発明の実施形態である燃料噴射装置13を適用しても良い。
【0038】
また、図示するエンジン10は、車両11に搭載されるエンジンであるが、これに限られることはなく、他の装置等に動力源として用いられるエンジンに対し、本発明の実施形態である燃料噴射装置13を適用しても良い。また、本発明の実施形態である燃料噴射装置13が適用されるエンジンとしては、圧縮行程から燃焼行程にかけて燃料を複数回に分けて噴射するエンジンであっても良く、圧縮行程から燃焼行程にかけて燃料を1回だけ噴射するエンジンであっても良い。
【0039】
前述の説明では、絶縁材料を用いてバルブシート65を形成しているが、これに限られることはない。例えば、金属材料を用いてバルブシート65を形成するとともに、このバルブシート65に対して絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜処理を施しても良い。また、前述の説明では、金網等を用いて形成されるメッシュ状のチップ電極72を採用しているが、これに限られることはなく、他形状のチップ電極を採用しても良い。また、前述の説明では、環状の流路電極71,111を採用しているが、これに限られることはなく、他形状の流路電極を採用しても良い。
【符号の説明】
【0040】
10 エンジン
13 燃料噴射装置
37 インジェクタ
50 本体部
51 ノズル部
52 燃料流路
63 ニードルバルブ(弁体)
66 噴射孔
71 流路電極(第1電極)
72 チップ電極(第2電極)
73 燃料チャンバ(燃料流路)
80 制御システム
81 電源ユニット(電源回路部)
100 プロセッサ
101 メインメモリ(メモリ)
110 インジェクタ
111 流路電極(第1電極)
Fi 内部燃料
Fo 外部燃料