(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-06
(45)【発行日】2026-03-16
(54)【発明の名称】焼却灰採取機器およびそれを含む焼却灰採取システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20260309BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20260309BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20260309BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20260309BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20260309BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20260309BHJP
【FI】
G01N1/04 C
F23G5/50 N ZAB
F23G7/00 104A
C02F11/06 Z
G01N1/00 101A
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2022121150
(22)【出願日】2022-07-29
【審査請求日】2024-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】塚原 純哉
(72)【発明者】
【氏名】村田 道拓
(72)【発明者】
【氏名】池田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】一色 充也
(72)【発明者】
【氏名】岸本 長
(72)【発明者】
【氏名】池田 恵一
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/172636(WO,A1)
【文献】特開平07-159309(JP,A)
【文献】特開2019-027688(JP,A)
【文献】実開昭56-169153(JP,U)
【文献】実開昭56-175743(JP,U)
【文献】特開2001-147183(JP,A)
【文献】特開平01-267423(JP,A)
【文献】中国実用新案第214277461(CN,U)
【文献】米国特許第05207176(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
F23G 5/50
F23G 7/00
C02F 11/06
G01N 1/00
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥の焼却炉における焼却灰による閉塞のリスクを評価するために前記焼却灰の採取および採取後の色の測定に用いる焼却灰採取機器であって、
前記焼却灰を保持する長尺状の内側筐体と、
前記焼却灰を採取する採取領域と、採取された前記焼却灰を撮影する撮影領域との間にわたり配置され、前記内側筐体の長さ方向の少なくとも一部を囲う長尺状でかつ長さ方向に前記内側筐体を移動可能な空洞を有する外側筐体と、
を含み、
前記内側筐体は、前記焼却灰を前記内側筐体内に保持するために開口した開口保持部を有し、
前記外側筐体は、前記採取領域および前記撮影領域のそれぞれに第1開口部および第2開口部を有し、
前記内側筐体を前記外側筐体の前記空洞内に挿入配置させて、前記開口保持部の第3開口部を、前記第1開口部と前記第2開口部との間において移動可能と
し、
前記焼却灰を収容する容器を、さらに備え、
前記内側筐体は、前記容器を保持可能であって、
前記容器は、前記焼却炉の焼却灰回収経路一部から落下する前記焼却灰を入れるための第4開口部を有し、
前記内側筐体は、前記開口保持部の前記第3開口部と前記第4開口部とを重なるように前記容器を保持し、
前記容器を保持した状態の前記内側筐体を前記外側筐体の前記空洞内に挿入配置させて、前記容器の前記第4開口部を、前記第1開口部と前記第2開口部との間を移動可能とすることを特徴とする焼却灰採取機器。
【請求項2】
前記内側筐体の前記開口保持部は、前記内側筐体の側面に、前記容器を入出させるための第5開口部を備えており、
前記外側筐体は、前記外側筐体の側面に、前記第5開口部の位置に重ねることのできる第6開口部を備え、
前記容器を前記開口保持部に保持する際に、前記外側筐体の前記第6開口部からこれに重なる前記第5開口部へと前記容器を前記内側筐体に入れることを可能とする請求項
1に記載の焼却灰採取機器。
【請求項3】
前記第1開口部の開口縁は、前記内側筐体の前記開口保持部を前記外側筐体の前記第2開口部に移動する際に、前記開口保持部の前記第3開口部から突出した焼却灰の一部または全部を擦り切り可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰採取機器。
【請求項4】
前記採取領域に位置する前記外側筐体の前記第1開口部以外の上面の一部または全部にエッジを備えて、前記焼却灰が前記上面に貯まるのを低減可能としていることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰採取機器。
【請求項5】
前記外側筐体において、前記焼却灰を前記撮影領域に移動する際に前記開口保持部の前記第3開口部より上方にあった余剰の前記焼却灰が前記外側筐体の内部に貯まることを低減する穴を、前記第1開口部の下方に備えることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰採取機器。
【請求項6】
前記開口保持部の前記第3開口部が前記第1開口部と重なる位置を超えないように、前記内側筐体を前記外側筐体に当てて停止させるストッパーを、前記内側筐体に備えることを特徴とする請求項1に記載の焼却灰採取機器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の焼却灰採取機器と、前記第2開口部を通じて前記焼却灰の色を測定するために前記焼却灰を撮影する撮影装置と、前記焼却灰を前記内側筐体に運ぶためのアーム機器と、前記焼却灰を収容する容器と、を少なくとも備え、
前記内側筐体は、前記容器を保持可能であって、
前記容器は、前記焼却炉の焼却灰回収経路の一部から落下する前記焼却灰を入れるための第4開口部を有し、
前記内側筐体は、前記開口保持部の前記第3開口部と前記第4開口部とを重なるように前記容器を保持し、
前記容器を保持した状態の前記内側筐体を前記外側筐体の前記空洞内に挿入配置させて、前記容器の前記第4開口部を、前記第1開口部と前記第2開口部との間を移動可能とし、
前記アーム機器のアーム先端に、前記容器を保持可能な1または2以上の突出部を備え、
前記容器に、前記突出部を挿入可能な穴を備え、
前記アーム機器は、前記突出部を前記穴に挿入して前記容器を把持することを特徴とす
る焼却灰採取システム。
【請求項8】
前記アーム機器の動作を制御するための制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、コンピュータプログラムに従い、前記アーム機器を駆動することを特徴とする請求項
7に記載の焼却灰採取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥の焼却灰を採取するための焼却灰採取機器、およびそれを含む焼却灰採取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場において下水を浄化する際に発生する下水汚泥は、脱水等された後、焼却炉で焼却されて処理される。しかし、近年、下水汚泥を焼却した焼却灰が煙道に付着し、煙道が閉塞する現象(焼却炉の閉塞)も多く報告されている。焼却炉の閉塞は、焼却炉に投入される下水汚泥のりんと金属類との存在量のバランスによっては焼却炉の燃焼温度よりも低い融点のりん化合物が形成され、かかる低融点のりん化合物を含む焼却灰が煙道に融着することが主な原因となって惹き起こされると推測されている。このような現象を防止するため、焼却炉の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な複数の高融点金属元素が結合可能なりんの結合可能量と、下水汚泥を焼却した焼却灰に含まれるりんの包含量と、の比からなる「閉塞抑制指標X[-]」という指標を導入し、下水汚泥及び焼却灰の成分分析の結果から閉塞抑制指標の値(閉塞抑制指標値)を求め、当該閉塞抑制指標値が所定の基準値を下回る場合には焼却炉の閉塞危険性が高いと判定して、焼却炉における灰付着を抑制するための薬剤(例えば、焼却炉の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な高融点金属元素を含む薬剤の一種であるポリ硫酸第二鉄)を添加する焼却炉閉塞防止方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記の焼却炉閉塞防止方法を用いるには、焼却灰の成分を化学分析により求める必要があり、測定に時間がかかる。このことから、焼却灰の色を画像センサで測定して閉塞抑制指標を推定する手法も既に提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5881260号公報
【文献】特許第6321866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、画像センサによる焼却灰の色測定には、これまで卓上試験装置が用いられており、色を測定するために作業員が焼却灰を採取し、卓上試験装置が設置されている試験室まで運搬する必要がある。このような作業には、作業員の危険性が伴うこと、および人手による採取であるため測定頻度に限界があることが課題となっている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、下水汚泥の焼却灰の色測定に際して、安全かつ測定回数に制約の少ない機器およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための実施形態に係る焼却灰採取機器は、下水汚泥の焼却炉における焼却灰による閉塞のリスクを評価するために前記焼却灰の採取および採取後の色の測定に用いる焼却灰採取機器であって、
前記焼却灰を保持する長尺状の内側筐体と、
前記焼却灰を採取する採取領域と、採取された前記焼却灰を撮影する撮影領域との間にわたり配置され、前記内側筐体の長さ方向の少なくとも一部を囲う長尺状でかつ長さ方向に前記内側筐体を移動可能な空洞を有する外側筐体と、
を含み、
前記内側筐体は、前記焼却灰を前記内側筐体内に保持するために開口した開口保持部を有し、
前記外側筐体は、前記採取領域および前記撮影領域のそれぞれに第1開口部および第2開口部を有し、
前記内側筐体を前記外側筐体の前記空洞内に挿入配置させて、前記開口保持部の第3開口部を、前記第1開口部と前記第2開口部との間において移動可能である。
(2)別の実施形態に係る焼却灰採取機器は、前記焼却灰採取機器において、好ましくは、前記焼却灰を収容する容器を、さらに備え、
前記内側筐体は、前記容器を保持可能であって、
前記容器は、前記焼却炉の焼却灰回収経路一部から落下する前記焼却灰を入れるための第4開口部を有し、
前記内側筐体は、前記開口保持部の前記第3開口部と前記第4開口部とを重なるように前記容器を保持し、
前記容器を保持した状態の前記内側筐体を前記外側筐体の前記空洞内に挿入配置させて、前記容器の前記第4開口部を、前記第1開口部と前記第2開口部との間を移動可能とすることができる。
(3)別の実施形態に係る焼却灰採取機器は、前記いずれかの焼却灰採取機器において、好ましくは、前記内側筐体の前記開口保持部は、前記内側筐体の側面に、前記容器を入出させるための第5開口部を備えており、
前記外側筐体は、前記外側筐体の側面に、前記第5開口部の位置に重ねることのできる第6開口部を備え、
前記容器を前記開口保持部に保持する際に、前記外側筐体の前記第6開口部からこれに重なる前記第5開口部へと前記容器を前記内側筐体に入れることを可能とする。
(4)別の実施形態に係る焼却灰採取機器は、前記いずれかの焼却灰採取機器において、好ましくは、前記第1開口部の開口縁は、前記内側筐体の前記開口保持部を前記外側筐体の前記第2開口部に移動する際に、前記開口保持部の前記第3開口部から突出した焼却灰の一部または全部を擦り切り可能に形成されるようにできる。
(5)別の実施形態に係る焼却灰採取機器は、前記いずれかの焼却灰採取機器において、好ましくは、前記採取領域に位置する前記外側筐体の前記第1開口部以外の上面の一部または全部にエッジを備えて、前記焼却灰が前記上面に貯まるのを低減可能としている。
(6)別の実施形態に係る焼却灰採取機器は、前記いずれかの焼却灰採取機器において、好ましくは、前記外側筐体において前記焼却灰を前記撮影領域に移動する際に前記開口保持部の前記第3開口部より上方にあった余剰の前記焼却灰が前記外側筐体の内部に貯まることを低減する穴を、前記第1開口部の下方に備えることができる。
(7)別の実施形態に係る焼却灰採取機器は、前記いずれかの焼却灰採取機器において、好ましくは、前記開口保持部の前記第3開口部が前記第1開口部と重なる位置を超えないように、前記内側筐体を前記外側筐体に当てて停止させるストッパーを、前記内側筐体に備えることができる。
(8)上記目的を達成するための実施形態に係る焼却灰採取システムは、前記いずれかの焼却灰採取機器と、前記第2開口部を通じて前記焼却灰の色を測定するために前記焼却灰を撮影する撮影装置と、を少なくとも備える。
(9)別の実施形態に係る焼却灰採取システムは、前記焼却灰採取システムにおいて、好ましくは、前記焼却灰を前記内側筐体に運ぶためのアーム機器を、さらに備えることができる。
(10)別の実施形態に係る焼却灰採取システムは、前記焼却灰採取システムにおいて、好ましくは、前記焼却灰を収容する容器を、さらに備え、
前記内側筐体は、前記容器を保持可能であって、
前記容器は、前記焼却炉の焼却灰回収経路の一部から落下する前記焼却灰を入れるための第4開口部を有し、
前記内側筐体は、前記開口保持部の前記第3開口部と前記第4開口部とを重なるように前記容器を保持し、
前記容器を保持した状態の前記内側筐体を前記外側筐体の前記空洞内に挿入配置させて、前記容器の前記第4開口部を、前記第1開口部と前記第2開口部との間を移動可能とし、
前記アーム機器のアーム先端に、前記容器を保持可能な1または2以上の突出部を備え、
前記容器に、前記突出部を挿入可能な穴を備え、
前記アーム機器は、前記突出部を前記穴に挿入して前記容器を把持することができる。
(11)別の実施形態に係る焼却灰採取システムは、前記焼却灰採取システムにおいて、好ましくは、前記アーム機器の動作を制御するための制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、コンピュータプログラムに従い、前記アーム機器を駆動することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下水汚泥の焼却灰の色測定に際して、安全かつ測定回数に制約の少ない機器およびシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る焼却灰採取システムを含めた例示的な下水処理システムの概略構成図を示す。
【
図2】
図2は、
図1中の焼却灰採取システムを含む構成の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、焼却灰採取システムの一部に含まれ得るアーム機器を示す。
【
図4】
図4は、
図3のアーム機器のアーム先端の構造を説明するための図を示す。
【
図5】
図5は、
図3のアーム機器の可動範囲を説明するための図を示す。
【
図6】
図6は、
図2の灰移送コンベアの途中に備えられているシュート部の6面図および焼却灰の移送ルートを示す。
【
図7】
図7は、
図2の焼却灰採取機器を用いて採取された焼却灰を撮影する状況を説明するための図、および撮影装置の3面図を示す。
【
図8】
図8は、
図7の撮影装置を構成するカメラおよび照明と、撮影対象の焼却灰と、焼却灰閉塞防止薬剤添加量算出ユニットと、を示す。
【
図9】
図9は、この実施形態に係る焼却灰採取機器を構成する外側筐体の平面図、正面図、背面図および左側面図を示す。
【
図11】
図11は、この実施形態に係る焼却灰採取機器を構成する内側筐体の正面図、平面図および平面図のA-A線断面図を示す。
【
図13】
図13は、焼却灰を入れる容器の平面図、正面図および斜視図を示す。
【
図14】
図14は、焼却灰を採取する際の焼却灰採取機器の動作を示す。
【
図15】
図15は、焼却灰の採取後に撮影の位置まで内側筐体を移動した際の焼却灰の状況を断面視にて示す。
【
図16】
図16は、焼却灰採取システムに備えることのできるサンプル保管棚の平面図、正面図および右側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る焼却灰採取機器およびそれを含む焼却灰採取システムの実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、以下の実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
1.下水処理システムの概略
図1は、本発明の実施形態に係る焼却灰採取システムを含めた例示的な下水処理システムの概略構成図を示す。
【0012】
図1に示すように、下水処理システム1は、沈砂池11と、分水槽12と、第1沈殿池13と、反応タンク14と、第2沈殿池15と、重力濃縮槽16と、機械濃縮機17と、汚泥貯留槽18と、汚泥脱水機20と、ケーキホッパ21と、焼却炉22と、空気予熱器23と、ろ過式集塵機24と、白煙防止器25と、排煙処理塔26と、煙突27と、灰移送コンベア28と、灰ホッパ29と、焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出ユニット30とを備える。
【0013】
沈砂池11は、下水に含まれる土砂類を沈殿させる場所であり、処理後の水を後段の分水槽12に流すことができる。分水槽12は、流入した流入水の一部を分水し、後段の第1沈殿池13に流すための槽である。第1沈殿池13は、流入した流入水に含まれる比重の大きい浮遊物質等を沈殿させる処理を行う場所であり、処理後の水を後段の反応タンク14に流すことができる。第1沈殿池13において沈殿した汚泥は、重力濃縮槽16に排出される。反応タンク14は、第1沈殿池13から流入した水に対して、微生物を用いて、有機物除去、りん除去、窒素除去等を行う場所であり、処理後の水を後段の第2沈殿池15に流すことができる。第2沈殿池15は、反応タンク14から流入した水に含まれる活性汚泥(微生物を含む汚泥)を沈殿させる処理を行う場所であり、処理後の水を当該下水処理システム1から排出することができる。第2沈殿池15において沈殿した活性汚泥のうち、反応タンク14に必要な量については、反応タンク14に返送され(図示を省略)、残りは、余剰汚泥として、機械濃縮機17に排出される。
【0014】
重力濃縮槽16は、第1沈殿池13で沈殿した汚泥を受け取って、汚泥を濃縮する処理を行う場所である。重力濃縮槽16で濃縮された汚泥は汚泥貯留槽18に送られる。一方、重力濃縮槽16で汚泥を濃縮させる際に発生した水分は、上流の沈砂池11に戻される。機械濃縮機17は、第2沈殿池15から排出された余剰汚泥を濃縮する処理を行うことができる。機械濃縮機17で濃縮された汚泥は、汚泥貯留槽18に送られる。一方、機械濃縮機17で汚泥を濃縮させる際に発生した水分は、上流の沈砂池11に戻される。
【0015】
汚泥貯留槽18は、重力濃縮槽16及び機械濃縮機17よりそれぞれ濃縮された汚泥を受け取って当該汚泥を貯留すると共に、当該汚泥を汚泥脱水機20に送ることができる。汚泥脱水機20は、汚泥貯留槽18から送られた下水汚泥に対して脱水処理を行う場所である。汚泥脱水機20で脱水処理された汚泥(脱水された汚泥、「ケーキ」ともいう。)はケーキホッパ21に送られる。一方、汚泥脱水機20で脱水処理において発生した水分は、上流の沈砂池11に戻される。焼却炉22は、ケーキホッパ21から送られてきた脱水された下水汚泥を焼却する場所である。焼却炉22による燃焼温度は、例えば、700度以上900度以下、好ましくは、850度以上900度以下である。
【0016】
空気予熱器23は、焼却炉22から排出される高温の排ガスを用いて空気を予熱することができる。予熱された空気は焼却炉22内の燃焼用に戻されるなどして活用される。ろ過式集塵機24は、排ガスを濾過し煙と灰(焼却灰)とに分離することができる。分離された焼却灰は灰移送コンベア28に送られる。一方、分離された煙は白煙防止器25に送られる。灰移送コンベア28は、ろ過式集塵機24から送られた焼却灰を移送して灰ホッパ29に送る。灰ホッパ29は、焼却灰の一時的な保管を行う場所である。白煙防止器25は、ろ過式集塵機24から送られた煙に対して白煙防止処理を行い、排煙処理塔26に送ることができる。排煙処理塔26は、白煙防止器25から送られた煙に対して、焼却時に発生したガスに含まれる有害物質等を除去することができる。排煙処理塔26から送られた煙は、煙突27を介して当該下水処理システム1から排出される。
【0017】
この実施形態に係る焼却灰採取システム200は、灰移送コンベア28の一部Aに備えられており、作業者が安全な位置で遠隔操作によって焼却灰を採取可能とすると共に、採取した焼却灰の色測定を可能とする。
【0018】
焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出ユニット30は、焼却灰の色データに基づき焼却炉閉塞危険度を算出すると共に、焼却炉閉塞防止薬剤添加量(薬剤の添加量)を算出する。そして、当該下水処理システム1の作業者は、焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出ユニット30により得られた薬剤の添加量に基づき、下水汚泥に添加する薬剤の添加量を調整して添加することができる。
【0019】
2.焼却灰採取システム
図2は、
図1中の焼却灰採取システムを含む構成の斜視図を示す。
【0020】
この実施形態に係る焼却灰採取システム200は、灰移送コンベア28に隣接配置されている。焼却灰採取システム200は、焼却灰採取機器70と、採取した焼却灰を撮影する撮影装置110と、を少なくとも備える。この実施形態では、焼却灰採取システム200は、好ましくは、焼却灰採取機器70および撮影装置110に加えて、アーム機器50と、焼却灰を保管するためのサンプル保管棚120と、を備える。アーム機器50とサンプル保管棚120は、例えば、台座40上に備えられていても良い。焼却灰採取機器70は、その一部が灰移送コンベア28のシュート部28a内に挿入されている。これについては、後程、詳述する。
【0021】
3.アーム機器
図3は、焼却灰採取システムの一部に含まれ得るアーム機器を示す。
図4は、
図3のアーム機器のアーム先端の構造を説明するための図を示す。
図5は、
図3のアーム機器の可動範囲を説明するための図を示す。
【0022】
アーム機器50は、焼却灰採取システム200にオプションとして含めることができる機器である。アーム機器50は、この実施形態では、焼却灰採取機器70とサンプル保管棚120との間で、焼却灰、容器、または焼却灰を入れた容器(移動対象物という。)を双方向に移動させることのできる機器である。ただし、アーム機器50は、焼却灰採取機器70からサンプル保管棚120の一方向に上記の移動対象物を移動させるだけの機器、またはサンプル保管棚120から焼却灰採取機器70の一方向に上記の移動対象物を移動させるだけの機器でも良い。
【0023】
アーム機器50は、焼却灰採取機器70の内側筐体(後述)に焼却灰を運ぶことを可能とする機器である。アーム機器50は、その長さ方向(高さ方向と称しても良い)に複数の関節51,52,53,54を備える多関節型の機器である。ただし、関節の数は4つに限定されない。また、
図4に示すように、アーム機器50は、好ましくは、その先端に、アーム部60を備える。アーム部60は、アーム機器50の先端56に着脱可能である。アーム部60は、アーム機器50の先端56に取り付ける着脱部61と、着脱部61から遠位に備えられる2本の爪65と、を備える。爪65は、突出部の一例であり、焼却灰を入れるための容器を把持可能に構成されている。なお、爪65の数は、2本に限定されず、1本または3本以上でも良い。
【0024】
アーム機器50は、この実施形態では、その動作を制御するための制御装置67を備える。制御装置67は、アーム機器50と別体でも良く、あるいは一体でも良い。制御装置67は、コンピュータプログラム68に従い、アーム機器50を駆動する。制御装置67は、例えば、CPUがコンピュータプログラム68を読み込みアーム機器50の制御を行うPCである。制御装置67は、CPU67a、メモリ67bおよび操作部67cに加え、オプションとしてディスプレイ67dを備える。CPU67aは、コンピュータプログラム68に従ってアーム機器50の動作を制御する中央演算処理手段である。メモリ67bは、コンピュータプログラム68を読み出しのみ、または読み書きを可能とする記憶手段である。
【0025】
図5(5A)は、アーム機器50を平面から見たときのアーム先端の可動範囲を示す。
図5(5B)は、アーム機器50を側面から見たときのアーム先端の可動範囲を示す。アーム機器50は、平面視および側面視にて、ともに360度の範囲でアーム65を可動できる。
【0026】
4.シュート部
図6は、
図2の灰移送コンベアの途中に備えられているシュート部の6面図および焼却灰の移送ルートを示す。
【0027】
シュート部28aは、傾斜する灰移送コンベア28の上方位置の直下に配置されている。シュート部28aは、焼却灰採取システム200の構成に含まれない。シュート部28aには、その外側から内部に貫通する開口部28bが形成されている(
図6(6A)のB部分を参照)。焼却灰採取機器70は、その先端の一部を開口部28bに挿入して固定されている。焼却灰は、灰移送コンベア28によってシュート部28aの上方に運ばれ、シュート部28aへと落下する(
図6(6B)の経路Cを参照)。落下した焼却灰の一部は、焼却灰採取機器70の先端にて受け入れられる。
【0028】
4.撮影装置
図7は、
図2の焼却灰採取機器を用いて採取された焼却灰を撮影する状況を説明するための図、および撮影装置の3面図を示す。
【0029】
焼却灰採取機器70は、焼却炉22における焼却灰による閉塞のリスクを評価するために焼却灰の採取および採取後の色の測定に用いる機器である。焼却灰採取機器70は、焼却灰Pを保持する長尺状の内側筐体90と、外側筐体80と、を含む。外側筐体80は、焼却灰Pを採取する採取領域Iと、採取された焼却灰Pを撮影する撮影領域IIとの間にわたり配置され、内側筐体90の長さ方向の少なくとも一部を囲う長尺状でかつ長さ方向に内側筐体90を移動可能な空洞を有する。内側筐体90は、焼却灰Pを内側筐体90内に保持するために開口した開口保持部93を有する。外側筐体80は、採取領域Iおよび撮影領域IIのそれぞれに第1開口部85および第2開口部86を有する。焼却灰採取機器70は、内側筐体90を外側筐体80の空洞内に挿入配置させて、開口保持部93の第3開口部93aを、第1開口部85と第2開口部86との間において移動可能とする。
【0030】
内側筐体90の開口保持部93は、好ましくは、内側筐体90の側面に、焼却灰Pを入れる容器を入出させるための第5開口部92を備えている。外側筐体80は、好ましくは、外側筐体80の側面に、第5開口部92の位置に重ねることのできる第6開口部84を備えている。容器を開口保持部93に保持する際に、外側筐体80の第6開口部84からこれに重なる第5開口部92へと容器を通過させ、内側筐体90に入れることができる。
【0031】
撮影装置110は、略直方体のボックス115と、ボックス115内に固定される照明111と、カメラ112と、を備える。ボックス115は、直方体の各辺を構成するフレームを備える。照明111は、カメラ112よりも焼却灰Pに近い側に配置されている。カメラ112は、照明111を構成するレンズを介して焼却灰Pを撮影できるように、照明111よりも焼却灰Pから遠い位置に配置されている。照明111およびカメラ112は、ボックス115内において、フレームに固定された状態で配置されている。
【0032】
5.撮影装置および焼却灰閉塞防止薬剤添加量算出ユニット
図8は、
図7の撮影装置を構成するカメラおよび照明と、撮影対象の焼却灰と、焼却灰閉塞防止薬剤添加量算出ユニットと、を示す。
【0033】
焼却灰閉塞防止薬剤添加量算出ユニット30は、画像コントローラ116と、焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出プログラムを格納したプログラム記憶部117と、焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出装置118と、を備える。画像コントローラ116とカメラ112は、画像センサ119を構成する。焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出装置118としては、例えば、PCを例示できる。プログラム記憶部117は、例えば、ハードディスク、ROMまたはRAMである。焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出装置118は、各種の演算を処理するCPUおよび各種データを格納するメモリを備える。プログラム記憶部117は、焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出装置118の内部に存在していても良い。
【0034】
画像センサ119は、分析対象の焼却灰Pの色データを取得する。焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出装置118は、かかる色データを閉塞抑制指標用重回帰式(式100)及び五酸化二りん用重回帰式(式200)に代入して推定上の閉塞抑制指標X(g)及び推定上の五酸化二りん質量分率P2O5(g)を算出する。そして、推定上の閉塞抑制指標X(g)及び推定上の五酸化二りん質量分率P2O5(g)の値を、式300に代入して焼却炉閉塞危険度及び焼却炉22における灰付着を抑制するための薬剤の添加量を算出する。式100のような閉塞抑制指標用重回帰式を用いれば、焼却灰を成分分析して閉塞抑制指標を算出せずとも、焼却灰の色から推定上の閉塞抑制指標X(g)を求めることができる。同様に、式200のような五酸化二りん用重回帰式を用いれば、焼却灰を成分分析して五酸化二りんの質量分率を算出せずとも、焼却灰の色から推定上の五酸化二りんの質量分率P2O5(g)を求めることができる。
【0035】
閉塞抑制指標用重回帰式は、式100で示す形式で表され、分析対象の焼却灰を画像センサ119にて撮像して取得される分析対象の焼却灰の色相H、彩度S及び明度Vを説明変数として、目的変数である閉塞抑制指標X(g)を導出するための重回帰式となっている。式100において、a、b及びcは係数を、dは切片を表す。
【0036】
【0037】
五酸化二りん用重回帰式は、式200で示す形式で表され、分析対象の焼却灰を画像センサにて撮像して取得される分析対象の焼却灰の色相H、彩度S及び明度Vを説明変数として、目的変数であるP2O5(g)を導出するための重回帰式となっている。式200において、e、f及びgは係数を、hは切片を、それぞれ表している。
【0038】
【0039】
薬剤添加量の算出式は、式300で示す形式で表される。
【0040】
【0041】
ここで、TMe[kg-Me/d]は、焼却炉22に対し追加的に添加(投入)する(1日当たりの)薬剤の添加量(質量)を示す。TASH[kg-ASH/d]は、当該焼却炉22における1日当たりの焼却灰発生量(質量)を示す。TASHとして、所定期間における焼却灰発生量の平均値を採用することができるが、運用条件によっては直近1日の焼却灰発生量を採用してもよい。X[-]は、推定上の閉塞抑制指標を示す。Meは、高融点金属元素を示す。高融点金属元素Meのより好ましい例としては、Al、Fe、Ca及びMgのうちいずれか1つの元素であり、特に好ましい例としては、Feである。nは、正の数であって、薬剤がFeあるいはAlの場合には2であり、薬剤がCaあるいはMgの場合には3である。なお、薬剤の種類によっては、nは上記以外の数値であっても良い。P2O5[-]は、推定上の五酸化二りんの質量分率を示す。M(Me)[g/mol]は、Meの原子量を示す。例えば、Meが鉄の場合にはM(Fe)=55.85[g/mol]である。M(P2O5)[g/mol]は、P2O5(五酸化二りん)の分子量を示し、具体的にはM(P2O5)=142[g/mol]である。
【0042】
薬剤添加量算出に当たっては、上記式300において、右辺のXに、推定上の閉塞抑制指標X(g)を代入し、右辺のP2O5に、推定上の五酸化二りんの質量分率P2O5(g)を代入し、右辺のTASHに下水処理場の当該焼却炉22の1日当たりの焼却灰発生量を代入し、その他M(Me)及びM(P2O5)に既知の値を代入する。このようにして薬剤添加量TMeを算出することができる。薬剤添加量の算出は、焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出装置118のCPUが焼却炉閉塞防止薬剤添加量算出プログラムを読み出しながら、行われる。なお、特許第6321866号に、すでに公知の手法となっている更なる詳細な方法が記載されているため、ここでは、更なる詳細な方法について割愛する。
【0043】
画像センサ119は、いわゆる「色センサ(赤、緑及び青の各色のLED(Light Emitting Diode)を光源とし、赤、緑及び青それぞれの基準色とセンシング対象の色との一致度を出力する類のもの)」によって構成してもよいが、好ましくは、色相、彩度及び明度を測定可能ないわゆる狭義の「画像センサ」によって構成する。赤色、緑色及び青色の色データは、「RGBデータ」を意味する。一方、色相、彩度及び明度の色データは、「HSVデータ」を意味する。「色センサ」を用いて、RGBデータから閉塞抑制指標値を推定した場合には、焼却灰Pの色が白から灰色の場合には、色センサの値の変化が乏しく、焼却炉22の閉塞の危険性の判断が必ずしも容易ではない場合があったのに対し、いわゆる「画像センサ」を用いて、HSVデータから閉塞抑制指標値を推定した場合には、色センサを用いた場合と比較して、ほぼ全ての値域において閉塞危険度との良好な相関関係を示す可能性が高いことが見出された。以下、「HSVデータ」を用いた例で説明するが、「RGBデータ」を用いることを否定するものではない。
【0044】
画像センサ119は、カメラ112及び画像コントローラ116を有する。画像センサ119は、焼却灰Pを含む画像を、カメラ112を介して撮像し、画像データを取得する。画像コントローラ116は、焼却灰Pを含む画像に関する画像データ(RGBデータ)を、色相H、彩度S及び明度Vからなる色データに変換し、色相H、彩度S及び明度Vからなる色データを画像コントローラ116の外部に出力する。
【0045】
6.焼却灰採取機器
図9は、この実施形態に係る焼却灰採取機器を構成する外側筐体の平面図、正面図、背面図および左側面図を示す。
図9では、各図は、上から下に向かって、背面図、平面図、正面図、左側面図の順に並んでいる。
図10は、
図9の外側筐体の斜視図を示す。
【0046】
外側筐体80は、内側筐体90を空洞87に挿脱でき、かつ内側筐体90を空洞87内にて移動可能な長尺状の筒である。外側筐体80は、四角形の開口部を有する筒体81と、筒体81の開口部の一辺を筒体81から延出させた形態を有する突出板82を備える。突出板82は、採取した焼却灰Pを撮影する領域(撮影領域という)IIを基準にして、焼却灰Pの採取を行う領域(採取領域という)Iとは反対側に設けられている。筒体81の長さ方向途中には、採取領域Iと、撮影領域IIとを分ける境界板88が設けられている。境界板88から採取領域I側の筒体81の上部には、好ましくは、エッジ83が設けられている。また、採取領域I側の筒体81の上面には、空洞87に通じる第1開口部85が形成されている。エッジ83は、第1開口部85に通じる開口部を有する。第1開口部85は、シュート部28aから落下する焼却灰Pを内側筐体90内に入れるための開口部である。
【0047】
第1開口部85の開口縁は、内側筐体90の開口保持部93を外側筐体80の第2開口部86に移動する際に、開口保持部93の第3開口部93aから突出した焼却灰の一部または全部を擦り切り可能に形成されている。内側筐体90は、外側筐体80の空洞87の内壁との間にほとんど隙間がない形態を有する。このため、内側筐体90の開口保持部93の開口上面より上方の余剰な焼却灰Pは、外側筐体80の第1開口部85の開口縁にて擦り切られる。この状況については、後程、詳述する。
【0048】
エッジ83は、採取領域Iに位置する第1開口部85以外の上面の一部または全部に備えられている。エッジ83は、焼却灰Pが外側筐体80の上面に貯まるのを低減可能とする。また、外側筐体80の第1開口部85に対向する面には、好ましくは、穴89を形成することができる。穴89は、内側筐体90を外側筐体80の撮影領域II側に移動させた際に、余剰の焼却灰Pが空洞87内に貯まるのを低減または防止する機能を有する。
【0049】
撮影領域IIの筒体81の上面には、空洞87に通じる第2開口部86が形成されている。第2開口部86は、内側筐体90内に採取した焼却灰Pを、カメラ112を用いて撮影するための開口部である。また、撮影領域の筒体81の側面には、空洞87に通じる第6開口部84が形成されている。第6開口部84は、後述の容器(焼却灰を保持)を挿脱自在とする開口部である。なお、容器は、必須の構成部材ではない。容器を用いない場合には、必ずしも、第6開口部84を外側筐体80に設けなくとも良い。
【0050】
図11は、この実施形態に係る焼却灰採取機器を構成する内側筐体の正面図、平面図および平面図のA-A線断面図を示す。
図11では、各図は、上から下に向かって、正面図、平面図、平面図のA-A線断面図の順に並んでいる。
図12は、
図11の内側筐体の斜視図を示す。
【0051】
内側筐体90は、長尺状の部材91を有する。長尺状の部材91の長さ方向一端は、後述する容器を入れる空間を備える。当該空間は、開口保持部93を備える。開口保持部93の上面には、第3開口部93aが形成されている。開口保持部93の側面には、第5開口部92が形成されている。第5開口部92は、容器または焼却灰Pを入出させるための開口部である。容器を開口保持部93に保持する際には、外側筐体80の第6開口部84からこれに重なる第5開口部92へと容器を入れることが可能である。この実施形態では、第3開口部93aと第5開口部92とは連通している。この結果、開口保持部93は、切り欠き状の空間を形成している。ただし、第3開口部93aと第5開口部92とは、連通しておらず、独立した開口であっても良い。
【0052】
開口保持部93は、焼却灰Pを内側筐体90内に保持するための部分である。内側筐体90を外側筐体80の空洞87内に挿入配置させた状態で、開口保持部93の第3開口部93aを、外側筐体80の第1開口部85と第2開口部86との間において移動可能である。内側筐体90は、開口保持部93の第3開口部93aと、後述する容器の第4開口部とを重なるように容器を保持可能である。また、容器を保持した状態の内側筐体90を外側筐体80の空洞87内に挿入配置させて、容器の第4開口部を、第1開口部85と第2開口部86との間で移動可能である。
【0053】
内側筐体90は、好ましくは、開口保持部93の第3開口部93aが第1開口部85と重なる位置を超えないように、内側筐体90を外側筐体80に当てて停止させるストッパー94を備える。ストッパー94は、この実施形態では、外側筐体80の空洞87内に入ることができない大きさの突出部位である。ストッパー94は、内側筐体90において、開口保持部93と反対側の端部に形成されているが、当該端部以外の位置に形成されていても良い。
【0054】
長尺状の部材91は、好ましくは、軽量化のために1または2以上の凹部95を備えても良い。ストッパー94にも同様の趣旨で凹部を備えても良い。長尺状の部材91の開口保持部93側には、開口保持部93から外に通じる排出口96を設けても良い。排出口96は、開口保持部93に存在する焼却灰Pを外に排出させることを可能とする。
【0055】
開口保持部93は、その内部と外部に通じる孔97を備えることができる。外部から孔97にエアーを吹き出すことにより、開口保持部93に存在する焼却灰Pを吹き飛ばすことができる。排出口96は、エアーにより吹き飛ばした焼却灰Pを排出可能な部分でもある。
【0056】
図13は、焼却灰を入れる容器の平面図、正面図および斜視図を示す。
図13では、上から下に向かって、平面図、正面図、斜視図の順に並んでいる。
【0057】
焼却灰採取機器70は、オプションとして、焼却灰を収容する容器100を備える。容器100は、略直方体の外形を有する。容器100は、長さ方向に、3分割されている。容器100は、焼却炉22の焼却灰回収経路の一部から落下する焼却灰Pを入れるための第4開口部101を有する。第4開口部101は、上記3分割された領域の真ん中の領域の上面に形成されている。容器100は、アーム機器50の爪65(突出部の一例)を挿入可能な穴102を備える。穴102は、上記3分割された領域の左右両端に形成されている。穴102は、容器100の正面から背面に貫通している。このため、アーム機器50は、爪65を穴102に挿入して容器100を把持することができる。ただし、穴102は、貫通しておらず、凹部の形態でも良い。
【0058】
穴102において、焼却灰Pを収納する領域の壁に近い側の内壁面は、穴102の中央に向かって突出する凸部103を備える。この実施形態では、凸部103は、穴102の表側開口面から裏側開口面に向かって細長い三角柱形状であり、その長さ方向両端面の形状を三角形とする。アーム機器50のアーム先端は、好ましくは2本の爪65を有する。爪65は、好ましくは、内側の面に凸部103を把持可能な凹部を有している。このため、アーム機器50は、2つの爪65の内側面の凹部を凸部103に合わせて容器100を把持して(一点鎖線の爪65を参照)、所望の場所に安定して移動させることができる。ただし、凸部103は、容器100にとって必須の構成ではない。
【0059】
図14は、焼却灰を採取する際の焼却灰採取機器の動作を示す。なお、
図14では、外側筐体80にエッジ83を備えていないが、エッジ83を備えても焼却灰採取機器70の動作は変わらない。
【0060】
(a)容器挿入前の状態
図14(a)は焼却灰Pを入れるための容器100を内側筐体90にセットする前の状態を示す。この状態では、内側筐体90の開口保持部93の第3開口部93aの上方に外側筐体80の第2開口部86が位置している。また、内部筐体90の第5開口部92と外側筐体80の第6開口部84とが重なり、連通状態となっている。
【0061】
(b)容器挿入後の状態
図14(b)は容器100を内側筐体90にセットした後の状態を示す。容器100は、第6開口部84から第5開口部92を通じて開口保持部93内にセットされる。
【0062】
(c)焼却灰の採取時の状態
図14(c)は、内側筐体90を外側筐体80の空洞87内を移動させ、焼却灰Pの採取領域Iに開口保持部93を配置する地点で停止させた状態を示す。このときには、ストッパー94が外側筐体80にあたるので、内側筐体90は、外側筐体80内のさらなる奥方向には移動できない。
【0063】
(d)焼却灰の撮影時の状態
図14(d)は、内側筐体90を外側筐体80の空洞87内から引き戻す方向に移動させ、焼却灰Pの撮影領域IIに開口保持部93を配置する地点で停止させた状態を示す。この状態は、容器100内に焼却灰Pが入っていることだけが相違しており、上述の(b)と同じ状態である。
【0064】
図15は、焼却灰の採取後に撮影の位置まで内側筐体を移動した際の焼却灰の状況を断面視にて示す。ただし、
図15では、容器100は、見やすさを考慮して断面視ではなく側面視で表されている。また、
図15では、外側筐体80にエッジ83を備えていないが、エッジ83を備えても焼却灰採取機器70の動作は変わらない。
【0065】
容器100を焼却灰Pの採取領域Iに配置した状況で焼却灰Pが落下すると、焼却灰Pは、容器100の内容量を超え、さらには外側筐体80の上方を超えることがある。この状態の焼却灰を「P1」で示す。その状況から、内側筐体90を撮影領域IIまで引き抜くと、焼却灰P1の内の一部P2が外側筐体80の内底部に落下する。内側筐体90と外側筐体80との隙間が小さいためである。すなわち、引き抜かれた内側筐体90の開口縁が第1開口部85を通過する際に、焼却灰P1の一部が擦り切られる。この結果、内側筐体90と共に移動する焼却灰Pは、内側筐体90の上面と同一面となる。擦り切られた余剰の焼却灰P2は、外側筐体80内に残る。
【0066】
内側筐体90から容器100を取り出すと、内側筐体90の上壁の厚さ分に相当する焼却灰P3は、開口保持部93の空間内に落下する。焼却灰P3は、例えば、エアーを使って吹き飛ばして除外することができる。なお、前述のように、外側筐体80に穴89を形成している場合には、焼却灰P2の一部または全部は、穴89を通じて外部に排出可能である。
【0067】
7.サンプル保管棚
図16は、焼却灰採取システムに備えることのできるサンプル保管棚の平面図、正面図および右側面図を示す。
【0068】
サンプル保管棚(単に「棚」ともいう。)120は、この実施形態では、合計24個のスペース121を備える。ただし、スペース121の数は、1または2以上であれば24個に限定されない。スペース121は、空の容器100または焼却灰P(サンプル)を入れた容器100を保管可能な領域である。棚120は、略直方体の外形を有する。スペース121は、棚120の正面から背面に向けて貫通する穴である。ただし、スペース121は、棚120を貫通せず、正面のみを開口した凹部でも良い。スペース121は、容器100を挿入および引き出し可能な直方体形状の空間である。スペース121は、アーム機器50の2本の爪65により容器100を把持したままスペース121に容器100を挿入し、またはスペース121内の容器100を爪65にて把持して容器100を引き出すことを可能とする大きさを有する。
【0069】
スペース121は、その内面の一部から底面の一部へと傾斜する傾斜部122を備える。傾斜部122は、スペース121を構成する2つの内面のそれぞれから1つの底面との成す2つの角部に形成されている。傾斜部122は、
図16では、棚120の1つのスペース121のみに形成されているが、2以上のあるいは全部のスペース121に形成することができる。容器100は、スペース121において、傾斜部122以外の底面に載置可能な大きさに設計されている。このため、アーム機器50の爪65にて把持された容器100をスペース121に挿入する際に、容器100が傾斜部122の上に載ったとしても、容器100が傾斜部122を滑り落ち、傾斜部122に接触しない水平な状態にてスペース121の底面に確実に保存できる。
【0070】
8.その他の実施形態
以上、本発明の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形実施も可能である。
【0071】
アーム機器50は、制御装置67により制御駆動可能な機器ではなく、作業者の操作によって駆動する機器でも良い。撮影装置110は、照明111を備えず、カメラ112のみを備えていても良い。第1開口部85および第2開口部86は、第3開口部93aより小さいが、第3開口部93aと同じ大きさでも良い。また、エッジ83は、必須の構成部分ではない。
【0072】
請求項1に係る焼却灰採取機器70は、請求項2以降の構成要素を任意の組み合わせにて備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、下水汚泥の焼却処理を行う産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
22・・・焼却炉、50・・・アーム機器、65・・・爪(突出部の一例)、67・・・制御装置、68・・・コンピュータプログラム、70・・・焼却灰採取機器、80・・・外側筐体、83・・・エッジ、84・・・第6開口部、85・・・第1開口部、86・・・第2開口部、87・・・空洞、89・・・穴、90・・・内側筐体、92・・・第5開口部、93・・・開口保持部、93a・・・第3開口部、94・・・ストッパー、100・・・容器、101・・・第4開口部、102・・・穴、110・・・撮影装置、200・・・焼却灰採取システム、I・・・採取領域、II・・・撮影領域、P・・・焼却灰。