(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-06
(45)【発行日】2026-03-16
(54)【発明の名称】位相シフトマスク及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/29 20120101AFI20260309BHJP
【FI】
G03F1/29
(21)【出願番号】P 2024195072
(22)【出願日】2024-11-07
【審査請求日】2025-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2024003809
(32)【優先日】2024-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507066644
【氏名又は名称】韓国ホーヤ電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】HOYA ELECTRONICS KOREA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】55,Hyeongoksandan-ro,Cheongbuk-myeon,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】523117959
【氏名又は名称】台湾豪雅光電股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HOYA MICROELECTRONICS TAIWAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 36, Kedung 3rd Road, Science-Based industrial Park, Chunan, Miaoli County 350, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】523117960
【氏名又は名称】重慶邁特光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING MASTEK ELECTRONICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 200, Liang Jiang Avenue, Yuzui Town, Jiang Bei District, Chongqing, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】馬本 剛
(72)【発明者】
【氏名】金谷 健一
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-325468(JP,A)
【文献】特開2003-315979(JP,A)
【文献】特開2003-322952(JP,A)
【文献】特開2022-103021(JP,A)
【文献】特開2003-005344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、透光部、位相シフト部、及び遮光部を備える位相シフトマスクであって、
前記透光部は、ホール形状に透光性基板が露出してなり、
前記位相シフト部は、前記透光部の外周を囲うように設けられ、
前記遮光部は、前記位相シフト部の外周を囲うように設けられ、
前記透光部の外周は、少なくとも1つの隅部に曲率半径R
Tの曲線を有する四角形状であり、
前記位相シフト部の外周は、前記曲率半径R
Tの曲線を有する前記隅部と隣接する隅部に曲率半径R
Pの曲線を少なくとも有する四角形状であり、
前記曲率半径R
Tと前記曲率半径R
Pは、R
T≧R
Pの関係を満たす
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項2】
前記位相シフト部の幅は、前記透光部の大きさよりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスク。
【請求項3】
前記位相シフト部は、露光光に対する透過率が5%以上であり、
前記位相シフト部を透過する露光光と、前記透光部を透過する前記露光光との間に生じる位相差は、150度以上210度以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位相シフトマスク。
【請求項4】
前記遮光部は、露光光に対する光学濃度ODが2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の位相シフトマスク。
【請求項5】
前記位相シフト部の幅は、0.5μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項2記載の位相シフトマスク。
【請求項6】
前記透光部の大きさは、4μm以下であることを特徴とする請求項2記載の位相シフトマスク。
【請求項7】
前記透光部の曲率半径R
Tは、0.4μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の位相シフトマスク。
【請求項8】
前記位相シフト部は、位相シフト膜からなり、前記透光部は、前記位相シフト膜の一部をホール形状に除去されて透光性基板が露出した構成からなることを特徴とする請求項1または2に記載の位相シフトマスク。
【請求項9】
前記遮光部は、前記位相シフト膜と遮光膜が積層してなることを特徴とする請求項8記載の位相シフトマスク。
【請求項10】
請求項1または2に記載の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトマスク及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OLED(Organic Light Emitting Diode)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置では、大画面化、広視野角化、折りたたみなどのフレキシブル化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。この高精細化、高速表示化のために必要な要素の1つが、微細で寸法精度の高い素子および配線等の電子回路パターンを作製することである。この表示装置用電子回路のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられることが多い。このため、微細で高精度なパターンが形成された表示装置製造用の位相シフトマスクが必要である。この位相シフトマスクは、バイナリマスクの遮光部に相当する部分を、低い透過率と180度の位相シフト量をもつハーフトーン膜によって形成したものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、露光光に対して透明な基板により構成された透過部1と、露光光の波長λに対してd=kλ/(n-1)(nは位相シフタの露光波長λに対する屈折率、kは奇数の整数)で表される膜厚dを有し且つ露光光に対する透過率が5~20%である半透過位相シフタ層により、透過部1の周囲の基板上に形成された半透過部2と、半透過部2の領域の外側の半透過位相シフタ層上に、遮光層あるいは難透光層からなる外領域部3を積層して構成するハーフトーン型位相シフトマスクが記載されている。
また、特許文献2には、透明基板上に、下層膜、上層膜が積層して形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、前記上層膜の上に形成されたレジストパターンをマスクとして前記上層膜をエッチングする上層膜予備エッチング工程と、少なくともエッチングされた前記上層膜をマスクとして前記下層膜をエッチングし、下層膜パターンを形成する下層膜パターニング工程と、少なくとも前記レジストパターンをマスクとして前記上層膜をサイドエッチングし、上層膜パターンを形成する上層膜パターニング工程と、を有するフォトマスクの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-325468号公報
【文献】特許第5993386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、「TFT」)で言えば、TFTを構成する複数のパターンのうち、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールが、確実に上層及び下層のパターンを接続させる作用をもたなければ正しい動作が保証されない。その一方、表示装置の開口率を極力大きくして、明るく、省電力の表示装置とするためには、コンタクトホールの径が十分に小さいことが求められる。これに伴い、このようなコンタクトホールを形成するためのフォトマスクが備えるホールパターンの径も微細化(例えば3μm未満)が望まれている。例えば、径が2.5μm以下、更には、径が2.0μm以下のホールパターンが必要となり、近い将来、これを下回る1.5μm以下の径をもつパターンの形成も望まれると考えられる。こうした背景により、微小なコンタクトホールを確実に転写可能とする、表示装置の製造技術が必要とされている。
【0006】
しかしながら、従来においては、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンの転写解像性に優れた位相シフトマスク及び表示装置の製造方法を得ることは、容易でないことが分かった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンの転写解像性に優れた位相シフトマスク及び表示装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
【0009】
(構成1)透光性基板上に、透光部、位相シフト部、及び遮光部を備える位相シフトマスクであって、
前記透光部は、ホール形状に透光性基板が露出してなり、
前記位相シフト部は、前記透光部の外周を囲うように設けられ、
前記遮光部は、前記位相シフト部の外周を囲うように設けられ、
前記透光部の外周は、少なくとも1つの隅部に曲率半径RTの曲線を有する四角形状であり、
前記位相シフト部の外周は、前記曲率半径RTの曲線を有する前記隅部と隣接する隅部に曲率半径RPの曲線を少なくとも有する四角形状であり、
前記曲率半径RTと前記曲率半径RPは、RT≧RPの関係を満たす
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【0010】
(構成2)前記位相シフト部の幅は、前記透光部の大きさよりも小さい
ことを特徴とする構成1記載の位相シフトマスク。
【0011】
(構成3)前記位相シフト部は、露光光に対する透過率が5%以上であり、
前記位相シフト部を透過する露光光と、前記透光部を透過する前記露光光との間に生じる位相差は、150度以上210度以下である
ことを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスク。
【0012】
(構成4)前記遮光部は、露光光に対する光学濃度ODが2以上であることを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスク。
(構成5)前記位相シフト部の幅は、0.5μm以上2.0μm以下であることを特徴とする構成2記載の位相シフトマスク。
【0013】
(構成6)前記透光部の大きさは、4μm以下であることを特徴とする構成2記載の位相シフトマスク。
【0014】
(構成7)前記透光部の曲率半径RTは、0.4μm以上であることを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスク。
【0015】
(構成8)前記位相シフト部は、位相シフト膜からなり、前記透光部は、前記位相シフト膜の一部をホール形状に除去されて透光性基板が露出した構成からなることを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスク。
(構成9)前記遮光部は、前記位相シフト膜と遮光膜が積層してなることを特徴とする構成8に記載の位相シフトマスク。
【0016】
(構成10)構成1または2に記載の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンの転写解像性に優れた位相シフトマスクを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態における位相シフトマスクの平面模式図である。
【
図2】
図1に示す位相シフトマスクの一例を示す要部(
図1の領域A)の拡大図である。
【
図3】
図1に示す位相シフトマスクの他の例を示す要部の拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態における位相シフトマスクの一例を示す断面模式図である。
【
図5】本発明の実施形態における位相シフトマスクの他の例を示す断面模式図である。
【
図6】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図7】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図8】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図9】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図10】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図11】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図12】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図13】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【
図14】本発明を説明するための実験例の結果を示すもので、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の完成に至る経緯を述べる。本発明者は、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンの転写解像性に優れた位相シフトマスクの構成について、鋭意検討を行った。
位相シフトマスクにおいては、コンタクトホールを形成するための位相シフト部は、ホール形状に透光性基板が露出してなる透光部の外周を囲うように設けられている。微小なコンタクトホールの解像度を向上させるためには、CD(Critical Dimension)の均一性を設定された許容範囲内に収めるために、位相シフトマスクにおいて、充分な焦点深度(DOF:Depth Of Focus)を確保することが望ましい。ここで、焦点深度(DOF)とは、目標CDに対し、±10%の範囲内となるための焦点深度の大きさである。DOFの数値を大きくできれば、被転写体(例えば表示装置用のパネル基板)の平坦度の影響を受けにくく、確実に微細なパターンが形成でき、そのCDばらつきを小さくできる。
【0020】
また、位相シフト効果を十分に発揮するためには、位相シフトマスクにおける透光部の大きさや位相シフト部の領域(幅)を一定程度確保することが望まれる。しかしながら、透光部の大きさや位相シフト部の領域(幅)が同等の位相シフトマスクであっても、所望のDOFを確保することができない場合があることが判明した。
そこで、本発明者は、さらに検討を行い、透光部の外周と位相シフト部の外周の形状に着目した。透光部や位相シフト部をウェットエッチングによって形成する場合には、その形状の隅部がそれぞれ丸みを帯びた形状となる。本発明者は、透光部の外周の隅部の曲率半径と位相シフト部の外周の曲率半径との関係に着目し、透光部のサイズ、位相シフト部の幅、透光率を許容範囲内の条件に設計したうえで、位相シフト部の曲率半径と、透光部の曲率半径を変化させて光学シミュレーションを行った。その結果、位相シフト部の曲率半径と、透光部の曲率半径との間に一定の関係を満たすことで、DOFを向上することができ、転写解像性に優れた位相シフトマスクを構成できることを見出した。
本発明の位相シフトマスクは、以上の鋭意研究の結果、導き出されたものである。
【0021】
<本発明の実施形態の位相シフトマスク>
本発明の実施形態における位相シフトマスクの一例について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態における位相シフトマスクの平面模式図である。
図2は、
図1に示す位相シフトマスクの一例を示す要部拡大図である。
図1に示すように、位相シフトマスク10は、透光性基板1上に、透光部11、位相シフト部12、及び遮光部13を備える。透光部11は、ホール形状に透光性基板1が露出してなり、位相シフト部12は、透光部11の外周を囲うように設けられ、遮光部13は、位相シフト部12の外周を囲うように設けられている。そして、
図1、
図2に示すように、透光部11の外周は、隅部に曲率半径R
Tの曲線を有する四角形状であり、位相シフト部12の外周は、隅部に曲率半径R
Pの曲線を有する四角形状であり、曲率半径R
Tと曲率半径R
Pは、R
T≧R
Pの関係を満たす。曲率半径R
Tと曲率半径R
Pは、R
T>R
Pの関係を満たすとより好ましい。また、曲率半径R
Tと曲率半径R
Pは、R
T≧1.1×R
Pの関係を満たすとより好ましく、R
T≧1.2×R
Pの関係を満たすとより好ましい。
【0022】
位相シフトマスク10は、位相シフト部12の外周の4つの隅部のうちの少なくとも1つの隅部に曲率半径RPの曲線を有し、透光部11の外周の4つの隅部のうち、少なくとも位相シフト部12の上記曲率半径RPの曲線を有する隅部と隣接する隅部に曲率半径RTの曲線を有し、RTとRPが上記の関係(RT≧RP等)を満たすことが求められる。すなわち、位相シフト部12の外周における曲率半径RPの曲線を有する隅部に対しては、その隅部に隣接する透光部11の外周の隅部に曲率半径RTの曲線を有し、かつRTとRPが上記の関係(RT≧RP等)を満たすことが求められる。これにより、その隅部における位相シフト部12の面積が広くなり、本発明の効果を得ることができる。一方、位相シフト部12の外周における曲線を有さない隅部(例えば、直線のみで構成される隅部)に対しては、その隅部に隣接する透光部11の外周の隅部も曲線を有さない隅部としてもよいが、曲線を有する隅部とすることが好ましい。透光部11の外周の4つの隅部の全てが曲率半径RTの曲線を有し、位相シフト部12の外周の4つの隅部のうちの少なくとも1つの隅部に曲率半径RPの曲線を有し、上記の関係(RT≧RP等)を満たすことが好ましい。なお、透光部11の外周の4つの隅部のうち複数の隅部が曲率半径RTの曲線を有する場合、それぞれの隅部の曲率半径RTの値が同一であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、それぞれの隅部の曲率半径RTの値自体は異なっていてもよい(例えば、透光部11の外周の2つの隅部の曲率半径RTは、RT1、RT2という異なる値であってもよい)。位相シフト部12の外周の隅部の曲率半径RPについても同様である(例えば、位相シフト部12の外周の2つの隅部の曲率半径RPは、RP1、RP2という異なる値であってもよい)。また、透光部11の外周の4つの隅部のうち複数の隅部が曲率半径RTの曲線を有し、位相シフト部12の外周の4つの隅部のうち複数の隅部が曲率半径RPを有する場合、互いに隣接する隅部においてRTとRPが上記の関係(RT≧RP等)を満たしていればよく、互いに隣接しない隅部においては上記の関係を満たしていなくてもよい(例えば、位相シフト部12の外周のうち2つの隅部が異なる値RP1、RP2の曲率半径RPを有する隅部であり、透光部11の外周のうち2つの隅部が値RP1、RP2の曲率半径RPを有する隅部にそれぞれ隣接して異なる値RT1、RT2の曲率半径RTを有する隅部である場合、互いに隣接する隅部においてRT1≧RP1、RT2≧RP2を満たしていればよく、互いに隣接しない隅部においてはRT1<RP2、RT2<RP1であってもよい)。
【0023】
透光部11および位相シフト部12の外周は、4つの隅部に曲率半径RT、RPの曲線をそれぞれ有する四角形状(角丸四角形状)であり、四角形状としては、長方形または正方形の4つの隅部に曲率半径RTの曲線を有する角丸長方形または角丸正方形であることがより好ましい。なお、本発明における四角形状は、平面視の上下左右方向に4つの直線部を有しているものであればよく、隅部の曲線部分と、四角形状の直線部との割合について、特に限定されるものではない。例えば、隅部の曲線部分の方が四角形状の直線部よりも大きい略円形状や略楕円形状も、本発明における四角形状に含まれるものである。なお、これらの形状は、例えば、光学顕微鏡を用いて確認することができる。
【0024】
透光部11の大きさは、限定されるものではないが、平面視における透光部11の重心位置から縦横に十字の仮想線を引いたとき、縦方向の仮想線の上下で透光部11の外周(透光部11と位相シフト部12の境界)とそれぞれ交わる2つの点の間の距離(長さ)と、横方向の仮想線の左右で透光部11の外周(透光部11と位相シフト部12の境界)とそれぞれ交わる2つの点の間の距離(長さ)との平均値として算出することができる。
位相シフト部12の幅は、限定されるものではないが、平面視における透光部11の重心位置から縦横に十字の仮想線を引いたとき、位相シフト部の縦方向の上下の直線部間の距離と横方向の左右の直線部間の距離との平均値(上下左右における4つの幅の平均値)として算出することができる。
【0025】
曲率半径R
T、R
Pの大きさは、限定されるものではないが、平面視において、直線部から外れる部分同士で垂線を結び、その交点を基準とし、それぞれの距離の平均値を曲率半径として算出することができる。これについて
図3を用いて説明する。
図3は、
図1に示す位相シフトマスクの他の例を示す要部の拡大図である。
図3に示されるように、透光部11において、直線部から外れる上下方向の垂線の大きさはR
T2となり、直線部から外れる左右方向の垂線の大きさはR
T1となるため、透光部11の曲率半径R
Tは、(R
T1+R
T2)/2と算出することができる。同様に、位相シフト部12において、直線部から外れる上下方向の垂線の大きさはR
P2となり、直線部から外れる左右方向の垂線の大きさはR
P1となるため、位相シフト部12の曲率半径R
Pは、(R
P1+R
P2)/2と算出することができる。
【0026】
そして、
図1~
図3に示されるように、曲率半径R
Tと曲率半径R
Pが、R
T≧R
Pの関係を満たす場合、位相シフト部12の外周の隅部と透光部11の外周の隅部との間隔を、位相シフト部12の外周の直線部と透光部11の外周の直線部(位相シフト部12の内周の直線部)との間隔(位相シフト部12の幅)よりも大きくすることができる。これにより、位相シフト部12は、位相シフト部12の内周および外周の直線部間のみならず、隅部においても高い位相シフト効果を奏することが理解されるであろう。
【0027】
透光部11の大きさは、微細なコンタクトホールを形成する観点から、4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。また、透光部11の大きさは、0.8μm以上であることが好ましい。
また、透光部11の曲率半径RTは、位相シフト部12の隅部の曲率半径RPとの関係(RT≧RP)を考慮すると、0.4μm以上であることが好ましい。透光部11の曲率半径RTは、透光部11の大きさの半分未満であることが好ましい。
【0028】
位相シフト部12の幅は、透光部11の大きさよりも小さいことが好ましい。また、位相シフト部12の幅は、位相シフト効果を高める観点で、0.5μm以上であると好ましく、0.6μm以上であるとより好ましい。また、位相シフト部12の幅は、レジスト膜(位相シフトマスクを用いて表示装置用の基板上に転写パターンの露光転写を行ったときにおけるその基板上のレジスト膜)の膜減りを抑制する観点で、2.0μm以下であると好ましく、1.8μm以下であるとより好ましい。
【0029】
本実施形態における位相シフトマスク10の構成について、
図4、
図5を用いて説明する。
図4に示される位相シフトマスク10は、位相シフトパターンが形成された位相シフト膜2Aの上に、遮光パターンが形成された遮光膜3Aが形成されてなる位相シフト膜下置き(先付け)タイプ(位相シフト膜2Aが遮光膜3Aの下に先に形成されたタイプ)のものである。なお、先付けタイプの位相シフトマスク10において、位相シフト膜2Aと遮光膜3との間にエッチングストッパー膜を介在させてもよい。この場合、エッチングストッパー膜のパターンは、遮光パターンと同じパターンとすることが好ましい。
【0030】
一方、
図5に示される位相シフトマスク10は、遮光パターンが形成された遮光膜3Bの上および透光性基板1上に、位相シフトパターンが形成された位相シフト膜2Bが形成されてなる位相シフト膜上置き(後付け)タイプ(位相シフト膜2Bが遮光膜3Bの上に後に形成されたタイプ)のものである。なお、位相シフト膜2A、2B、遮光膜3A、3Bについて、特に区別する必要がない場合には、位相シフト膜2、遮光膜3のように記載する場合がある。
【0031】
位相シフト部12は、位相シフト膜2からなり、透光部11は、位相シフト膜2の一部をホール形状に除去されて透光性基板1が露出した構成からなることが好ましい。この位相シフト膜2は、透光部11を含む転写パターン(位相シフトパターン)が形成された位相シフト膜2(以下、単に「位相シフト膜2」という場合がある)である。
【0032】
透光性基板1は、露光光に対して透明である。透光性基板1は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透光性基板1は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、および低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透光性基板1の主表面(位相シフトパターン等が設けられる表面)は、一辺が300mm以上の矩形状である。このような主表面のサイズが大きい基板の場合、主表面の平坦度を高くすることが難しいため、DOFが大きい位相シフトマスクである方が好ましい。
【0033】
先付けタイプの位相シフト膜2Aは、遷移金属と、ケイ素(Si)を含有する材料からなることができる。遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などが好適であり、チタン、モリブデンがより好ましい。また、位相シフト膜2Aは、クロム(Cr)を含有する材料を用いてもよく、例えば、Crと、酸素(O)または窒素(N)の少なくとも一方を含むクロム系材料を用いることができる。具体的には、CrO、CrN、CrON等が例示される。位相シフト膜2Aは、ウェットエッチング可能なものが好ましい。一方、後付けタイプの位相シフト膜2Bは、遮光膜3Bと共通のウェットエッチング液を使用する観点から、上述したクロム系材料を用いることが好ましいが、これに限定されず、遷移金属と、ケイ素(Si)を含有する材料からなることもできる。
【0034】
また、上述の位相シフト膜2Aと遮光膜3との間にエッチングストッパー膜を介在させた構成の場合、位相シフト膜2Aと遮光膜3の材料に、同じウェットエッチング液でパターニング可能な材料を用い、エッチングストッパー膜の材料に、位相シフト膜2Aと遮光膜3の材料との間でエッチング選択性を有する材料を用いることが好ましい。たとえば、位相シフト膜2Aと遮光膜3にクロムを含有する材料を用い、エッチングストッパー膜に遷移金属とケイ素を含有する材料を用いるとよい。
【0035】
露光光としては、例えば、300~500nmの波長域をもつ光を使用することができる。表示装置製造用の露光装置の光源としては、例えば、i線、h線、g線のいずれかまたはその複数を含む光源(例えば、高圧水銀ランプ)が好適に利用できる。露光光の代表波長は、上記波長域に含まれるいずれかの波長とすることができる。
また、パターンの微細化が進み、露光光の波長域の重心を短波長側にずらすことが望まれる場合には、上記波長域より短波長側の波長域(例えば、250~400nm)をもつ光を露光光とすることもでき、例えば、313nm、334nm、365nmのうち2つ以上を含む短波長側の波長域の光を露光光に適用することができる。さらに、i線(365nm)の単一波長の光を露光光に適用することもできる。
このように、露光光は、波長365nmの光を少なくとも含むことが好ましい。
本明細書においては、特記しない限り、i線(365nm)を代表波長の一例として用いる。
【0036】
露光光の開口数NA(Numerical Aperture)は、0.08~0.20の範囲内とすることが好ましく、0.08~0.15の範囲内とすることがより好ましい。一般に、光学系のNAを大きくすれば、解像性は高くなる。しかしながら、表示装置製造の分野において用いられている露光装置をNAがより大きい装置に単純に置き換えることは、コスト的にも、技術的にも必ずしも有利とはいえない。例えば、保有する露光装置を、NAがより高いものに変更することは、表示パネルメーカにとって莫大な投資を意味する。また、NAの増大には、DOFの低下などのデメリットもある。LSI製造用のフォトマスクより面積が大きい表示装置用の位相シフトマスクにおいては、生産安定性の低下や歩留の低下にもつながる。開口数NAを上述の範囲とすることで、生産安定性の低下や歩留の低下を抑制しつつ、良好な解像性を確保することが可能となる。
【0037】
位相シフト膜2は、露光光の代表波長に対して位相シフト効果を有するものである。すなわち、位相シフト膜2を透過した露光光と、位相シフト膜2の膜厚と同じ距離だけ空気中を透過した露光光との間には、位相差ΦPが生じる。位相差ΦPは、略180度であることが好ましい。本明細書において、略180度とは、150度以上210度以下を意味し、好ましくは、160度以上200度以下、より好ましくは、170度以上190度以下である。また、位相シフト膜2は、露光光に含まれる主な波長(例えば、i線、h線、g線)のすべてに対して、略180度の位相差をもつことが好ましい。
【0038】
露光光に対する位相シフト膜2の透過率は、位相シフト膜2として必要な値を満たす。位相シフト膜2の透過率TPは、露光光に含まれる代表波長の光に対して、5%以上であることが好ましく、10%以上であることが好ましい。他方、位相シフト膜2の透過率TPは、露光光に含まれる代表波長の光に対して、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0039】
位相シフト膜2の膜厚は、光学的な性能を確保するために、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であるとより好ましく、150nm以下であるとさらに好ましい。また、位相シフト膜2の膜厚は、所望の透過率を確保するために、50nm以上であることが好ましく、60nm以上であるとより好ましい。
【0040】
位相シフト膜2は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。また、転写パターンは、ウェットエッチングなどを用いた公知の方法により形成することができる。
【0041】
図4に示されるように、先付けタイプの場合には、位相シフト膜2Aの上に遮光膜3Aが配置されている。一方、
図5に示されるように、後付けタイプの場合には、位相シフト膜2Bの下に遮光膜3Bが配置されている。いずれの場合においても、遮光部13は、位相シフト膜2と遮光膜3が積層してなる。
遮光膜3Aは、位相シフト膜2Aの上側に配置される。遮光膜3Aは、位相シフト膜2Aとはエッチング選択性が異なる材料からなることが好ましい。一方、後付けタイプの場合には、透光性基板1上に遮光パターンを有する遮光膜3Bを形成してから、位相シフト膜2Bの積層と位相シフトパターンの形成を行うことができるため、位相シフト膜2Bと遮光膜3Bとの間にエッチング選択性を有していなくてもよい。
【0042】
遮光膜3(3A、3B)は、クロム(Cr)を含有するクロム系材料から構成されることが好ましい。遮光膜3は、クロムを含有し、実質的にケイ素を含まない材料から構成されることがより好ましい。実質的にケイ素を含まないとは、ケイ素の含有量が2%未満であることを意味する。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)単体からなる材料、または、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。また、クロム系材料として、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、遮光膜3を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、およびCrCONFが挙げられる。一方、上述の位相シフト膜2Aと遮光膜3との間にエッチングストッパー膜を介在させた構成の場合であって、位相シフト膜2Aに遷移金属とケイ素を含有する材料を用いる場合、遮光膜3も遷移金属とケイ素を含有する材料を用いることが好ましい。この場合、エッチングストッパー膜には、クロムを含有する材料を用いるとよい。
【0043】
遮光膜3は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。
【0044】
遮光膜3が露光光の透過を遮る機能を有し、位相シフト膜2と遮光膜3とが積層する遮光部13において、露光光に対する光学濃度(OD)は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上、より一層好ましくは4以上である。
【0045】
本発明の実施形態における位相シフトマスク10は、上述した構成を有することにより、表示装置製造用マスクの露光環境に有利に適合し、微細なホールパターンを安定して転写できる優れた位相シフトマスクとすることができる。
【0046】
次に、本発明の位相シフトマスク10の製造方法について説明する。
図4に示される位相シフトマスク10を製造する場合には、透光性基板上に位相シフト膜、遮光膜が形成されているマスクブランクを用意する。マスクブランクに形成されている透光性基板、位相シフト膜、遮光膜の具体的な構成については、位相シフトパターン、遮光パターンが形成されていない点を除き、位相シフトマスク10に形成されている透光性基板1、位相シフト膜2A、遮光膜3Aと同様である。
【0047】
まず、位相シフト膜、遮光膜に、ホール形状の透光部からなるパターンを形成する。例えば、遮光膜の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成したホール部を含むレジスト膜パターンをマスクにして、位相シフト膜、遮光膜をウェットエッチングすることで、位相シフト膜、遮光膜に、ホール形状のパターンを形成することができる。このようにして、ホール形状に透光性基板1が露出してなる透光部11が形成される。
【0048】
そして、レジスト膜を一旦剥離して、遮光膜の上に新たにレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成した位相シフト部を含むレジスト膜パターンをマスクにして、遮光膜をウェットエッチングすることで、遮光パターンを有する遮光膜3Aが形成される。このように、透光部11の外周を囲うように位相シフト膜2Aを露出させて位相シフト部12を形成し、位相シフト部12の外周を囲うように遮光部13を形成することができる。
この製造方法において、それぞれのウェットエッチングの時間やレジスト膜に形成するパターンの形状を調整することで、曲率半径R
Tと曲率半径R
Pが、R
T≧R
Pの関係を満たすように、位相シフト部12の外周の隅部と透光部11の外周の隅部を形成することができる。
このようにして、
図4に示される位相シフトマスク10を製造することができる。
【0049】
図5に示される位相シフトマスク10を製造する場合には、透光性基板上に遮光膜が形成されているマスクブランクを用意する。マスクブランクに形成されている透光性基板、遮光膜の具体的な構成については、遮光パターンが形成されていない点を除き、位相シフトマスク10に形成されている透光性基板1、遮光膜3Bと同様である。
【0050】
まず、遮光膜に、遮光パターンを形成する。例えば、遮光膜の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成した遮光パターンを含むレジスト膜パターンをマスクにして、遮光膜をウェットエッチングすることで、遮光パターンを有する遮光膜3Bを形成することができる。
【0051】
そして、レジスト膜を一旦剥離して、遮光膜3Bの上および露出した透光性基板1上に位相シフト膜を形成する。位相シフト膜の上に新たにレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成した位相シフト部を含むレジスト膜パターンをマスクにして、位相シフト膜をウェットエッチングすることで、位相シフトパターンを有する位相シフト膜2Bが形成される。このように、透光部11の外周を囲うように位相シフト膜2Bを露出させて位相シフト部12を形成し、位相シフト部12の外周を囲うように遮光部13を形成することができる。
この製造方法においても、それぞれのウェットエッチングの時間やレジスト膜に形成するパターンの形状を調整することで、曲率半径R
Tと曲率半径R
Pが、R
T≧R
Pの関係を満たすように、位相シフト部12の外周の隅部と透光部11の外周の隅部を形成することができる。
このようにして、
図5に示される位相シフトマスク10を製造することができる。
【0052】
<表示装置の製造方法>
本実施形態の表示装置の製造方法について説明する。本実施形態の表示装置の製造方法は、上述の実施形態に記載の位相シフトマスクを、露光装置のマスクステージに載置する工程と、この位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、を有する。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0053】
載置工程では、上述した実施形態の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、位相シフトマスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
【0054】
パターン転写工程では、位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜にパターン形成用の薄膜パターンを含む転写パターンを転写する。露光光は、313nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光、または313nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光、または313nm~436nmの波長域を有する光源から発した単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光、またはi線の単色光である。露光光として複合光を用いることにより、露光光強度を高くしてスループットを向上することができる。そのため、表示装置の製造コストを下げることができる。なお、露光光の開口数NAは、0.08~0.20の範囲内とすることが好ましく、0.08~0.15の範囲内とすることがより好ましい。
【0055】
本実施形態の表示装置の製造方法によれば、高解像度、微細なコンタクトホールを有する、高精細の表示装置を製造することができる。
【0056】
<実験例>
本実施形態の位相シフトマスクについて、光学シミュレーションにより、その転写性能を比較し、評価した。すなわち、被転写体上(例えば、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜)に、径が1.9μmのホールパターンを形成するための転写用パターンを有する位相シフトマスクについて、露光条件を設定したときに、どのような転写性能を示すかについて、光学シミュレーションを行った。露光条件として、開口数NAを0.11とし、露光光の波長をi線(波長365nm)の単一波長とした。ここで、位相シフト部の位相差は180度とした。
本発明を説明するための実験例の結果について、
図6~12を用いて説明する。
図6~10は、位相シフトマスクにおける透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとの差及びDOFの変化率の関係を示すグラフである。
図6~12において、グラフの横軸がR
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を表し、グラフの縦軸がDOFの変化率[%]を表している。よって、
図6~12において、グラフの原点では、透光部の曲率半径R
Tと位相シフト部の曲率半径R
Pとが等しくなっており、このときのDOFの値[μm]を基準として縦軸の比率を算出している。
図6~12において、本発明で規定しているR
T≧R
Pの関係を満たす領域は、グラフの原点を含む右半分の領域となる。ここで、
図6~12におけるいずれのサンプルにおいても、グラフの原点に対応するDOFの値は、許容範囲内のものであった。なお、DOFの変化率[%]は、R
T=R
PのときのDOFを基準とするDOFの変化率である。すなわち、後述の同一サンプル(同じ曲率半径R
pの条件)のデータにおいて、差(R
T-R
P)が0(R
T=R
P)の場合におけるDOFをD
B、特定の差(RT-RP)(ただし、R
T≠R
P)の場合におけるDOFをD
TPとしたとき、その特定の差(RT-RP)におけるDOFの変化率D
Vは、(D
TP-D
B)/D
B×100[%]の数式で算出される。
【0057】
図6の実験例では、位相シフト部12の透過率を5%とし、位相シフト部12の幅を1.2μmとし、透光部11の大きさを2.0μmとした。
図6におけるサンプルa1、サンプルa2、サンプルa3、サンプルa4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルa1~a4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図6に示されるように、いずれのサンプルa1~a4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルa1~a4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0058】
図7の実験例では、位相シフト部12の透過率を10%とし、位相シフト部12の幅を1.2μmとし、透光部11の大きさを2.0μmとした。
図7におけるサンプルb1、サンプルb2、サンプルb3、サンプルb4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルb1~b4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図7に示されるように、いずれのサンプルb1~b4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルb1~b4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0059】
図8の実験例では、位相シフト部12の透過率を20%とし、位相シフト部12の幅を1.2μmとし、透光部11の大きさを2.0μmとした。
図8におけるサンプルc1、サンプルc2、サンプルc3、サンプルc4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルc1~c4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図8に示されるように、いずれのサンプルc1~c4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルc1~c4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0060】
図9の実験例では、位相シフト部12の透過率を10%とし、位相シフト部12の幅を1.2μmとし、透光部11の大きさを2.2μmとした。
図9におけるサンプルd1、サンプルd2、サンプルd3、サンプルd4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルd1~d4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図9に示されるように、いずれのサンプルd1~d4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルd1~d4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0061】
図10の実験例では、位相シフト部12の透過率を10%とし、位相シフト部12の幅を1.2μmとし、透光部11の大きさを2.4μmとした。
図10におけるサンプルe1、サンプルe2、サンプルe3、サンプルe4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルe1~e4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図10に示されるように、いずれのサンプルe1~e4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルe1~e4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0062】
図11の実験例では、位相シフト部12の透過率を10%とし、位相シフト部12の幅を0.8μmとし、透光部11の大きさを2.0μmとした。
図11におけるサンプルf1、サンプルf2、サンプルf3、サンプルf4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルf1~f4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図11に示されるように、いずれのサンプルf1~f4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルf1~f4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0063】
図12の実験例では、位相シフト部12の透過率を10%とし、位相シフト部12の幅を1.0μmとし、透光部11の大きさを2.0μmとした。
図12におけるサンプルg1、サンプルg2、サンプルg3、サンプルg4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルg1~g4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図12に示されるように、いずれのサンプルg1~g4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルg1~g4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0064】
一方、露光条件の開口数NAを0.11から変更した以外は上記と同じ条件で、光学シミュレーションを行った。
図13の実験例では、
図7の実験例とは、開口数NAを0.08に変更した以外は同じ条件(位相シフト部12の透過率は10%、位相シフト部12の幅は1.2μm、透光部11の大きさは2.0μm)で光学シミュレーションを行った結果である。
図13におけるサンプルh1、サンプルh2、サンプルh3、サンプルh4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルh1~h4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図13に示されるように、いずれのサンプルh1~h4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルh1~h4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0065】
図14の実験例では、
図7の実験例とは、開口数NAを0.12に変更した以外は同じ条件(位相シフト部12の透過率は10%、位相シフト部12の幅は1.2μm、透光部11の大きさは2.0μm)で光学シミュレーションを行った結果である。
図14におけるサンプルi1、サンプルi2、サンプルi3、サンプルi4は、位相シフト部12の曲率半径R
Pを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとしたものである。
そして、それぞれのサンプルi1~i4に対して、透光部11の曲率半径R
Tを、それぞれ0.4μm、0.6μm、0.8μm、1.0μmとして、R
TとR
Pの差(R
T-R
P)[μm]を算出するとともに、それぞれのDOFの変化率[%]を算出した。
図13に示されるように、いずれのサンプルi1~i4においても、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できることが判明した。一方、いずれのサンプルh1~h4においても、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0066】
また、
図6、
図8~
図12の実験例の場合においても、開口数NAを0.08と0.12に変更して光学シミュレーションをそれぞれ行った。いずれのシミュレーション結果も他の実験例と同様、R
TとR
Pの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できること、R
TとR
Pの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【0067】
さらに、露光光の波長をより短い波長(334nm)とより長い波長(405nm)とした場合についても、それぞれ光学シミュレーションを行った。いずれのシミュレーション結果も他の実験例と同様、RTとRPの差が0以上であるときに、DOF変化率が上昇しており、解像性を向上できること、RTとRPの差が0未満であるときに、DOF変化率が低下しており、解像性に支障をきたすおそれがあることが判明した。
【符号の説明】
【0068】
1 透光性基板
2(2A、2B) 位相シフト膜(位相シフトパターン)
3(3A、3B) 遮光膜(遮光パターン)
10 位相シフトマスク
11 透光部
12 位相シフト部
13 遮光部