(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-09
(45)【発行日】2026-03-17
(54)【発明の名称】セラミックス基板の加工方法、及びセラミックス基板
(51)【国際特許分類】
C04B 35/18 20060101AFI20260310BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20260310BHJP
【FI】
C04B35/18
C03C3/089
(21)【出願番号】P 2021184981
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2024-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田鎖 光力
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-282147(JP,A)
【文献】特開2001-097786(JP,A)
【文献】特開2000-313681(JP,A)
【文献】特開2000-313653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
C04B 41/80-41/91
C03C 3/00-3/32
C03C 10/00-10/16
JSTPlus/JSTChina/JST7580 (JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al
2
O
3
を含有するセラミックス部を有するセラミックス基板の加工方法であって、
前記セラミックス部の主面の一部にレーザー光を照射する照射工程を備え、
前記照射工程により着色部を形成し、
前記セラミックス部は、ガラスを含有するガラスセラミックスであり、
前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al
2O
3:10~60%、及びZn
2SiO
4:20~70%を含有する
、セラミックス基板の加工方法。
【請求項2】
Al
2
O
3
を含有するセラミックス部を有するセラミックス基板の加工方法であって、
前記セラミックス部の主面の一部にレーザー光を照射する照射工程を備え、
前記照射工程により着色部を形成し、
前記セラミックス部は、ガラスを含有するガラスセラミックスであり、
前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl
2O
3:30~70%を含有する
、セラミックス基板の加工方法。
【請求項3】
前記照射工程では、前記主面の一部をAlに基づき着色させることで前記着色部を形成する、請求項1
又は請求項2に記載のセラミックス基板の加工方法。
【請求項4】
前記セラミックス部は、TiO
2をさらに含有し、
前記着色部は、前記照射工程により生成されたTi
3+を含有する、請求項1
又は請求項2に記載のセラミックス基板の加工方法。
【請求項5】
前記ガラスは、ガラス組成として質量%でSiO
2:50~80%、B
2O
3:10~30%、Li
2O+Na
2O+K
2O:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO
2:0~10%を含有する、請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載のセラミックス基板の加工方法。
【請求項6】
前記セラミックス基板は、前記セラミックス部に設けられたアライメントマーク部をさらに備え、
前記照射工程では、前記アライメントマーク部に隣接した前記セラミックス部に前記レーザー光を照射することで、前記アライメントマーク部に隣接した前記着色部を形成する、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のセラミックス基板の加工方法。
【請求項7】
前記レーザー光は、UVレーザー光であり、
前記照射工程では、凹凸を有する前記着色部を形成する、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載のセラミックス基板の加工方法。
【請求項8】
Al
2
O
3
を含有するセラミックス部と、
前記セラミックス部に設けられたアライメントマーク部と、
前記セラミックス部とは異なる色を呈する着色部と、を備え、
前記着色部は、前記アライメントマーク部に隣接する領域に形成され、
前記セラミックス部は、ガラスを含むガラスセラミックスであり、
前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al
2O
3:10~60%、及びZn
2SiO
4:20~70%を含有する
、セラミックス基板。
【請求項9】
Al
2
O
3
を含有するセラミックス部と、
前記セラミックス部に設けられたアライメントマーク部と、
前記セラミックス部とは異なる色を呈する着色部と、を備え、
前記着色部は、前記アライメントマーク部に隣接する領域に形成され、
前記セラミックス部は、ガラスを含むガラスセラミックスであり、
前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl
2O
3:30~70%を含有する
、セラミックス基板。
【請求項10】
前記着色部は、Alに起因する色を有する、
請求項8又は請求項9に記載のセラミックス基板。
【請求項11】
前記ガラスは、ガラス組成として質量%でSiO
2:50~80%、B
2O
3:10~30%、Li
2O+Na
2O+K
2O:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO
2:0~10%を含有する、請求項
8から請求項
10のいずれか一項に記載のセラミックス基板。
【請求項12】
前記着色部の算術平均粗さRaは、0.5μm以上、15μm以下の範囲内である、請求項
8から請求項
11のいずれか一項に記載のセラミックス基板。
【請求項13】
前記着色部の表面粗さの最大高さSzは、5μm以上、40μm以下の範囲内である、請求項
8から請求項
12のいずれか一項に記載のセラミックス基板。
【請求項14】
前記着色部が形成されていない前記セラミックス部の算術平均粗さRaは、5nm以上、35nm以下の範囲内である、請求項
8から請求項
13のいずれか一項に記載のセラミックス基板。
【請求項15】
Al
2O
3を含有するセラミックス部と、
前記セラミックス部とは異なる色を呈する着色部と、を備え、
前記着色部は、Alに基づき着色して
おり、
前記セラミックス部は、ガラスを含むガラスセラミックスであり、
前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al
2
O
3
:10~60%、及びZn
2
SiO
4
:20~70%を含有する、セラミックス基板。
【請求項16】
Al
2
O
3
を含有するセラミックス部と、
前記セラミックス部とは異なる色を呈する着色部と、を備え、
前記着色部は、Alに基づき着色しており、
前記セラミックス部は、ガラスを含むガラスセラミックスであり、
前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl
2
O
3
:30~70%を含有する、セラミックス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板の加工方法、及びセラミックス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、例えば、セラミックス配線基板等の用途において、ガラスを含有するセラミックス基板が知られている。また、特許文献2に開示されるように、基板には、位置決め用のアライメントマークが設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-092541号公報
【文献】特開2006-330192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セラミックス基板に着色部を容易に形成する方法を見出すことでなされたものである。本発明の目的は、セラミックス基板に着色部を容易に形成することのできるセラミックス基板の加工方法、及びセラミックス基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するセラミックス基板の加工方法は、Al2O3を含有するセラミックス部を有するセラミックス基板の加工方法であって、前記セラミックス部の主面の一部にレーザー光を照射する照射工程を備え、前記照射工程により着色部を形成する。この方法によれば、レーザー光を照射する照射工程によりAl2O3を含有するセラミックス部を利用して着色部を容易に形成することが可能である。これにより、例えば、セラミックス基板に着色部を利用した識別情報を容易に付与することができる。
【0006】
上記セラミックス基板の加工方法において、前記照射工程では、前記主面の一部をAlに基づき着色させることで前記着色部を形成してもよい。
上記セラミックス基板の加工方法において、前記セラミックス部は、TiO2をさらに含有し、前記着色部は、前記照射工程により生成されたTi3+を含有してもよい。この方法によれば、着色部の色調を変化させることが可能となる。
【0007】
上記セラミックス基板の加工方法において、前記セラミックス部は、ガラスを含有するガラスセラミックスであり、前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al2O3:10~60%、及びZn2SiO4:20~70%を含有してもよい。
【0008】
上記セラミックス基板の加工方法において、前記セラミックス部は、ガラスを含有するガラスセラミックスであり、前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl2O3:30~70%を含有してもよい。
【0009】
上記セラミックス基板の加工方法において、前記ガラスは、ガラス組成として質量%でSiO2:50~80%、B2O3:10~30%、Li2O+Na2O+K2O:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO2:0~10%を含有してもよい。
【0010】
上記セラミックス基板の加工方法において、前記セラミックス基板は、前記セラミックス部に設けられたアライメントマーク部をさらに備え、前記照射工程では、前記アライメントマーク部に隣接した前記セラミックス部に前記レーザー光を照射することで、前記アライメントマーク部に隣接した前記着色部を形成してもよい。この方法によれば、セラミックス部に隣接するアライメントマーク部の識別性が低い場合であっても、アライメントマーク部に隣接した着色部を形成することで、アライメントマーク部の識別性を容易に高めることができる。
【0011】
上記セラミックス基板の加工方法において、前記レーザー光は、UVレーザー光であり、前記照射工程では、凹凸を有する前記着色部を形成してもよい。この方法によれば、例えば、着色部の凹凸に基づく光の散乱により着色部の色調を変化させることが可能となる。
【0012】
セラミックス基板は、Al2O3を含有するセラミックス基板であって、セラミックス部と、前記セラミックス部に設けられたアライメントマーク部と、前記セラミックス部とは異なる色を呈する着色部と、を備え、前記着色部は、前記アライメントマーク部に隣接する領域に形成される。
【0013】
上記セラミックス基板において、前記着色部は、Alに起因する色を有してもよい。
上記セラミックス基板において、前記セラミックス部は、ガラスを含むガラスセラミックスであり、前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:20~70%、Al2O3:10~60%、及びZn2SiO4:20~70%を含有してもよい。
【0014】
上記セラミックス基板において、前記セラミックス部は、ガラスを含むガラスセラミックスであり、前記ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:30~70%、及びAl2O3:30~70%を含有してもよい。
【0015】
上記セラミックス基板において、前記ガラスは、ガラス組成として質量%でSiO2:50~80%、B2O3:10~30%、Li2O+Na2O+K2O:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO2:0~10%を含有してもよい。
【0016】
上記セラミックス基板において、前記着色部の算術平均粗さRaは、0.5μm以上、15μm以下の範囲内であってもよい。
上記セラミックス基板において、前記着色部の表面粗さの最大高さSzは、5μm以上、40μm以下の範囲内であってもよい。
【0017】
上記セラミックス基板において、前記着色部が形成されていない前記セラミックス部の算術平均粗さRaは、5nm以上、35nm以下の範囲内であってもよい。
セラミックス基板は、Al2O3を含有するセラミックス部と、前記セラミックス部とは異なる色を呈する着色部と、を備え、前記着色部は、Alに基づき着色している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、セラミックス基板に着色部を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態におけるセラミックス基板を示す平面図である。
【
図3】セラミックス基板の加工方法を説明する断面図である。
【
図4】照射工程前のセラミックス基板のESRスペクトルである。
【
図5】照射工程後のセラミックス基板のESRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、セラミックス基板の加工方法、及びセラミックス基板の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。まず、セラミックス基板の加工方法で加工されたセラミックス基板について説明する。
【0021】
<セラミックス基板>
図1及び
図2に示すように、セラミックス基板11は、Al
2O
3を含有するセラミックス部12と、セラミックス部12に設けられたアライメントマーク部13と、セラミックス部12とは異なる色を呈する着色部14とを備えている。着色部14は、アライメントマーク部13に隣接する領域に形成されている。
【0022】
<セラミックス部>
セラミックス基板11のセラミックス部12は、ガラスセラミックス又はセラミックスであることが好ましい。ガラスセラミックスは、ガラスとセラミックスとを含有する。ガラスセラミックスとしては、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)が例示される。
【0023】
ガラスは、ガラス組成として質量%で、好ましくは、SiO2:50~80%、B2O3:10~30%、Li2O+Na2O+K2O:1~10%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~30%、及びTiO2:0~10%を含有し、より好ましくは、SiO2:60~80%、B2O3:10~30%、Li2O+Na2O+K2O:1~5%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~20%、及びTiO2:0.1~3%を含有する。ガラスの組成は、その他の酸化物として、質量%でZrO2:0.1~3%を含有してもよい。
【0024】
セラミックスとしては、例えば、Zn2SiO4(ウィレマイト)、Al2O3(アルミナ)、コーディエライト、AlN(窒化アルミニウム)、リン酸ジルコニウム系化合物、ZrSiO4(ジルコン)、ZrO2(ジルコニア)、TiO2(酸化チタン)、酸化スズ(SnO2)、β-石英固溶体、β-ユークリプタイト、β-スポジュメン等が挙げられる。セラミックスは、一種又は二種以上を用いることができる。
【0025】
ガラスセラミックスの組成は、質量%で、好ましくは、ガラス:20~70%、Al2O3:10~60%、及びZn2SiO4:20~70%を含有し、より好ましくは、ガラス:30~60%、Al2O3:15~45%、及びZn2SiO4:25~55%を含有し、さらに好ましくは、ガラス:35~50%、Al2O3:20~35%、及びZn2SiO4:30~45%を含有する。
【0026】
ガラスセラミックスの組成は、Zn2SiO4を含有しない組成であってもよい。ガラスセラミックスの組成は、質量%で、好ましくは、ガラス:30~70%、及びAl2O3:30~70%を含有し、より好ましくは、ガラス:40~60%、及びAl2O3:40~60%を含有し、さらに好ましくは、ガラス:45~55%、及びAl2O3:45~55%を含有する。
【0027】
セラミックス部12は、例えば、セラミックスのグリーンシートを用いて回路パターンを形成する周知の方法によって得ることができる。セラミックス部12の主面は、研磨されていることが好ましい。セラミックス部12の主面は、研磨により鏡面とされていることがより好ましい。この場合、セラミックス部12上にめっき膜、ポリイミド膜等を含む多層膜を設ける際に、セラミックス部12上の傷、凹凸等が多層膜に転写することを抑えることができる。なお、多層膜にセラミックス部上の傷、凹凸等が転写すると、多層膜の外観不良を招くおそれがある。
【0028】
セラミックス部12の主面の研磨方法としては、例えば、固定砥粒又は遊離砥粒を用いた研磨が挙げられる。着色部14が形成されていないセラミックス部12の算術平均粗さRaは、5nm以上、35nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0029】
<アライメントマーク部>
セラミックス基板11のアライメントマーク部13は、例えば、金属から形成することができる。アライメントマーク部13を形成する金属材料としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cr等が挙げられる。アライメントマーク部13の形状は、特に限定されない。アライメントマーク部13の形状としては、例えば、円形状、四辺形状、十字形状等が挙げられる。アライメントマーク部13の形状は、円形や楕円形の環状、矩形の枠状等であってもよい。アライメントマーク部13は、複数の形状を組み合わせたものであってもよい。アライメントマーク部13は、例えば、めっき法、印刷法等を用いて形成することができる。
【0030】
<着色部>
セラミックス基板11の着色部14は、Alに起因する色を有することが好ましい。着色部14は、例えば、Alに基づく灰色を呈している。着色部14は、Ti3+を含有していてもよい。着色部14の算術平均粗さRaは、0.5μm以上、15μm以下の範囲内であることが好ましい。着色部14の表面粗さの最大高さSzは、5μm以上、40μm以下の範囲内であることが好ましい。着色部14は、セラミックス部12に積層されている。着色部14の厚さは、例えば、1μm以上、15μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0031】
<セラミックス基板の加工方法>
次に、セラミックス基板の加工方法について説明する。
図3には示すように、セラミックス基板111は、Al
2O
3を含有するセラミックス部112を有している。セラミックス基板111の加工方法は、セラミックス基板111のセラミックス部112の主面の一部にレーザー光LBを照射する照射工程を備えている。セラミックス基板111の加工方法では、照射工程によって
図1及び
図2に示す着色部14を形成する。
【0032】
照射工程では、セラミックス部112の主面の一部をAlに基づき着色させて着色部14を形成してもよい。すなわち、レーザー光LBによりセラミックス部112の主面の一部を変質させることで着色部14が形成される。セラミックス部112は、TiO2をさらに含有し、着色部14は、照射工程により生成されたTi3+を含有してもよい。なお、セラミックス部112に含有させるTiO2は、セラミックスの組成に含有されてもよいし、ガラスの組成に含有されてもよい。
【0033】
本実施形態の照射工程では、アライメントマーク部13に隣接したセラミックス部112にレーザー光LBを照射することで、アライメントマーク部13に隣接した着色部14を形成している。
【0034】
照射工程で用いるレーザー光LBとしては、例えば、UVレーザー光、グリーンレーザー光等が挙げられる。レーザー光LBは、UVレーザー光であることが好ましい。UVレーザー光としては、例えば、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
【0035】
照射工程で用いるレーザー光LBの平均出力は、例えば、0.5W以上、15W以下の範囲内であることが好ましい。レーザー光LBの周波数は、例えば、40kHz以上、300kHz以下の範囲内部あることが好ましい。レーザー光LBの集光径は、例えば、5μm以上、30μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0036】
レーザー光LBの走査方法は、特に限定されない。レーザー光LBの走査方法としては、例えば、直線状の第1の走査予定線に沿ってレーザー光LBを走査した後、第1の走査予定線と平行に延びる直線状の第2の走査予定線に沿ってレーザー光LBを走査する方法が挙げられる。このようなレーザー光LBの走査を繰り返すことで、セラミックス部112の表面の所定の範囲内にレーザー光LBを照射することができる。
【0037】
隣り合う走査予定線の間隔であるピッチ幅は、例えば、集光径の10%以上、150%以下の範囲内であることが好ましい。レーザー光LBの走査速度は、例えば、25mm/s以上、500mm/s以下の範囲内であることが好ましい。
【0038】
照射工程では、例えば、UVレーザー光を用いることで、凹凸を有する着色部14を形成してもよい。凹凸を有する着色部14は、例えば、上記の<着色部>欄で説明した算術平均粗さRa、又は表面粗さの最大高さSzを有する。
【0039】
<試作例>
次に、試作例について説明する。
まず、セラミックス基板111(LTCC基板:ガラスセラミックス基板)を準備した。ガラスセラミックスの組成は、質量%でガラス:50%、Al2O3:25%、及びZn2SiO4:25%を含有する。
【0040】
ガラスの組成は、質量%でSiO2:60%、B2O3:20%、Na2O:2%、K2O:2%、MgO:3%、CaO:10%、BaO:1%、TiO2:1%、ZrO2:1%を含有する。
【0041】
セラミックス基板111の主面は、研磨により鏡面とされている。このセラミックス基板111の主面にアライメントマーク部13(外形寸法:500μm)を設けた。アライメントマーク部13は、Auめっきにより形成した。
【0042】
次に、セラミックス基板111のセラミックス部112にレーザー光LBを照射する照射工程を行った。本試作例の照射工程では、
図3に示すアライメントマーク部13の内側の範囲と、アライメントマーク部13の外周に沿った範囲とにレーザー光LBを照射した。これにより、アライメントマーク部13に隣接する領域に着色部14を形成した。
【0043】
レーザー光LBの照射条件は、以下のとおりである。
レーザー光LBの種類:UVレーザー、波長355nm
平均出力:2W
周波数:90kHz
集光径:20μm
照射工程では、直線状の第1の走査予定線に沿ってレーザー光LBを走査した後、第1の走査予定線と平行に延びる直線状の第2の走査予定線に沿ってレーザー光LBを走査した。このようなレーザー光LBの走査をセラミックス部112の表面の所定の範囲内にレーザー光LBが照射されるまで繰り返した。隣り合う走査予定線の間隔であるピッチ幅は、10μmとした。レーザー光LBの走査速度は、100mm/sとした。
【0044】
<サンプルの顕微鏡による観察結果>
上記試作例で得られたサンプルのアライメントマーク部13、セラミックス部12、及び着色部14のそれぞれの表面を、白色落射光を照射した状態で顕微鏡により観察した。アライメントマーク部13の色は、ほぼ白色であった。セラミックス部12の色は、灰色であった。これに対して着色部14の色は、黒色であった。
【0045】
この結果から、アライメントマーク部13とセラミックス部12とが隣接する場合よりも、アライメントマーク部13と着色部14とが隣接する場合の方がアライメントマーク部13を識別し易いことが分かる。すなわち、アライメントマーク部13に隣接する領域に着色部14を形成することで、アライメントマーク部13の識別性を高めることができる。
【0046】
<電子スピン共鳴法(ESR)による着色部の分析>
まず、上記試作例で用いた照射工程前のセラミックス基板111のセラミックス部112の主面について、測定温度50KでESR測定を行い、ESRスペクトルを得た。その結果を
図4に示す。
【0047】
次に、上記試作例で得られた照射工程後のセラミックス基板11の着色部14の主面について、測定温度50KでESR測定を行い、ESRスペクトルを得た。その結果を
図5に示す。
【0048】
図4及び
図5に示す記号“◆”は、g=2.002を中心とする6本線(分裂間隔:約82G、Mn
2+)が出現した部分を示している。
図5に示すESRスペクトルにおいて、破線で示す領域A1内には、複数種の正孔に基づく信号(g=2.050,2.010,2.002)が出現している。また、
図5に示すESRスペクトルにおいて、破線で示す領域A2内には、g=2.018を中心とする6本線の信号が存在する。このように、
図5に示すESRスペクトルでは、
図4に示すESRスペクトルでは存在しなかったg=2.018を中心とする6本線の信号が出現していることが分かる。g=2.018を中心とする6本線の信号は、Alに基づく共鳴信号であり、詳しくは、
27Alの持つ核スピンによる信号と推測される。
【0049】
この結果から、照射工程後のセラミックス基板11における着色部14の着色は、照射工程前のセラミックス基板111のセラミックス部112に含有されるAlに基づくことが分かる。このような着色部14の着色は、Alを含む構造の変化に基づくものである。また、着色部14において観測されるg=2.018を中心とする信号は、自由電子の持つg=2.0023に比べて大きい位置での信号となっている。このことから、着色部14において観測されるg=2.018を中心とする信号は、Alが有する正孔を起因とする信号と推定される。従って、照射工程により着色部14を形成するためには、照射工程前のセラミックス基板111にAl源、すなわちAl2O3が含有されていることが必要であることが分かる。
【0050】
図5に示すESRスペクトルにおいて、信号Sは、g=1.946における共鳴信号であり、Tiに起因している。g=1.946における共鳴信号のピークは、酸素空
乏による格子欠陥が原因であるとされている。この結果から、Ti
3+も着色部14の着色に寄与していることが分かる。
【0051】
表1には、ESRスペクトルによる着色部14の観測結果をまとめて示す。
【0052】
【表1】
<表面状態の測定>
照射工程前のセラミックス基板111のセラミックス部112の算術平均粗さRa及び表面粗さの最大高さSzを表面粗さ測定機(株式会社東京精密製、商品名:サーフコム1400D)及びレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社、商品名:OLS5000)により測定した。
【0053】
照射工程後のセラミックス基板11の着色部14の算術平均粗さRa及び表面粗さの最大高さSzについても、上記と同様に測定した。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
ここで、アライメントマーク部13を、例えばめっきにより形成した場合、アライメントマーク部13の表面は、比較的平滑な面となっている。このようなアライメントマーク部13に、セラミックス部112よりも、上記Ra,Szの値が大きい着色部14が隣接することで、アライメントマーク部13の識別性を高めることが可能となる。
【0055】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)Al2O3を含有するセラミックス部112を有するセラミックス基板111の加工方法は、セラミックス部112の主面の一部にレーザー光LBを照射する照射工程を備えている。セラミックス基板111の加工方法では、照射工程により着色部14を形成している。この方法によれば、レーザー光LBを照射する照射工程によりAl2O3を含有するセラミックス部112を利用して着色部14を容易に形成することが可能である。
【0056】
(2)セラミックス基板111の加工方法において、セラミックス部112は、TiO2をさらに含有し、着色部14は、照射工程により生成されたTi3+を含有してもよい。この場合、着色部14の色調を変化させることが可能となる。
【0057】
(3)セラミックス基板111の加工方法におけるセラミックス基板111は、セラミックス部112に設けられたアライメントマーク部13をさらに備えている。上記照射工程では、アライメントマーク部13に隣接したセラミックス部112にレーザー光LBを照射することで、アライメントマーク部13に隣接した着色部14を形成している。この場合、例えば、セラミックス部112に隣接するアライメントマーク部13の識別性が低い場合であっても、アライメントマーク部13に隣接した着色部14を形成することで、アライメントマーク部13の識別性を容易に高めることができる。
【0058】
例えば、セラミックス部112の主面が研磨された鏡面であり、アライメントマーク部13を金属めっきから形成した場合、セラミックス部112の主面及びアライメントマーク部13の主面では、光が反射し易い。これにより、セラミックス部112に対するアライメントマーク部13の識別性が特に低下し易い。このような場合のアライメントマーク部13の識別性を高める点で着色部14は、特に有利となる。
【0059】
(4)照射工程で照射するレーザー光LBは、UVレーザー光であり、照射工程では、凹凸を有する着色部14を形成してもよい。この場合、例えば、着色部14の凹凸に基づく光の散乱により着色部14の色調を変化させることが可能となる。
【0060】
(5)セラミックス基板11は、例えば、セラミックス配線基板、特にはプローブカード等の半導体検査装置に用いられる基板等として用いることができる。また、セラミックス基板11は、電子部品を封入するパッケージ製品を複数同時に製造するためのマザー基板、いわゆる多面取りするためのマザー基板等としても用いることができる。これらの用途では精度の高い位置決めが要求されるため、例えば、上記のようにアライメントマーク部13の識別性を高めることが特に有効となる。
【0061】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・上記セラミックス基板111の加工方法は、アライメントマーク部13に隣接しない位置に着色部14を形成する加工方法に変更することもできる。また、上記セラミックス基板111の加工方法は、アライメントマーク部13を有しないセラミックス基板に着色部14を形成する加工方法に変更することもできる。この場合、着色部14は、例えば、文字、数字、記号等の識別情報を表示する表示部として構成することができる。すなわち、セラミックス基板111の加工方法によれば、セラミックス基板111に着色部14を利用した識別情報を容易に付与することができる。このようにして得られたセラミックス基板11は、Al2O3を含有するセラミックス部12と、セラミックス部12とは異なる色を呈する着色部14とを備え、着色部14は、Alに基づき着色している。
【0063】
・セラミックス基板111のアライメントマーク部13は、セラミックス部112の一箇所に設けられてもよいし、セラミックス部112の複数箇所に設けられてもよい。アライメントマーク部13がセラミックス部112の複数箇所に設けられている場合、セラミックス基板11の着色部14は、複数のアライメントマーク部13の少なくとも一つに隣接する領域に形成することができる。
【符号の説明】
【0064】
11…セラミックス基板(照射工程後)
12…セラミックス部(照射工程後)
13…アライメントマーク部
14…着色部
111…セラミックス基板(照射工程前)
112…セラミックス部(照射工程前)
LB…レーザー光