IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-09
(45)【発行日】2026-03-17
(54)【発明の名称】フィルムおよび積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/88 20190101AFI20260310BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20260310BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20260310BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20260310BHJP
【FI】
B29C48/88
B32B27/36
B29C48/08
C08J5/18 CFD
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022008631
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2023107433
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 智文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康則
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/100732(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158736(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/106901(WO,A1)
【文献】米国特許第05534616(US,A)
【文献】特開2006-289672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02
5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルムを製造する方法であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂原料を押出機で溶融した後、フィルムに成形する工程、及び、
前記フィルムを、冷却ロールに接触させて冷却する工程を含み、
前記フィルムの表面の接触角(d1)と、少なくとも前記フィルムと接触する、前記冷却ロールの表面の接触角(d2)の差(d2-d1)の絶対値が、25°以上65°以下となる冷却ロールを用い
前記接触角(d1)と前記接触角(d2)は、JIS K6768に規定されている「プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法」に従って、ぬれ張力が30mN/m、40mN/m、及び、50mN/mのぬれ張力測定用混合液を使用して測定した接触角である、フィルム製造方法。
【請求項2】
前記接触角(d2)が前記接触角(d1)よりも高い、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記接触角の差(d2-d1)の絶対値が、40°以上65°未満である、請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記冷却ロールが、樹脂成分を含むコーティング材料を固着させてなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記コーティング材料が、フッ素樹脂系材料、シリコーン樹脂系材料の群から選ばれる少なくとも1種を含有している、請求項4に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂を最外層に有する積層体を製造する方法であって、
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂を押出機で溶融した後、フィルムに成形する工程、及び、
前記フィルムを、少なくともフィルムが冷却ロールに接触した状態で、基材表面上にラミネートする工程を含み、
前記フィルムの表面の接触角(d1)と、少なくとも前記フィルムと接触する、前記冷却ロールの表面の接触角(d2)の差(d2-d1)の絶対値が、25°以上65°以下となる冷却ロールを用い
前記接触角(d1)と前記接触角(d2)は、JIS K6768に規定されている「プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法」に従って、ぬれ張力が30mN/m、40mN/m、及び、50mN/mのぬれ張力測定用混合液を使用して測定した接触角である、積層体の製造方法。
【請求項7】
前記接触角(d2)が前記接触角(d1)よりも高い、請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記接触角の差(d2-d1)の絶対値が、40°以上65°未満である、請求項6または7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記冷却ロールが、樹脂成分を含むコーティング材料を固着させてなる、請求項6~8のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記コーティング材料が、フッ素樹脂系材料、シリコーン樹脂系材料の群から選ばれる少なくとも1種を含有している、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む、フィルムおよび積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂(以下、「P3HB系樹脂」と称することがある。)は、多くの微生物種の細胞内にエネルギー貯蔵物質として生産、蓄積される熱可塑性ポリエステルである。P3HB系樹脂は、土中や水中の微生物により完全に生分解され、自然界の炭素循環プロセスに取り込まれる。したがって、P3HB系樹脂は生態系への悪影響がほとんどない環境調和型のプラスチックであると言える。
【0003】
一般に、樹脂の押出フィルム、または、基材層上に樹脂の押出ラミネーションにより樹脂層(ラミネート層)を形成した積層体は、樹脂を溶融し、Tダイなどを用いて樹脂をフィルム状に成形し、冷却固化することにより製造される。
【0004】
しかし、P3HB系樹脂は、連続的にフィルムや積層体を製造する場合、樹脂の溶融押出後に、長い固化(結晶化)時間を要するため、溶融した樹脂が、フィルム成形後に最初に接する冷却ロールにP3HB系樹脂がブロッキング(貼り付き)やすく、連続的なフィルムや積層体の成形加工が難しい、あるいは、ロールから剥離する際に強制的に引きはがすことにより樹脂表面に微細な凹凸が形成され白濁を生じる等の外観が悪化する課題があった。
【0005】
特許文献1では、紙基材の両面に、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂層と外層が加工適性の良好な(貼り付き難い)ジカルボン酸とグリコールの重縮合ポリエステル樹脂層となるように共押出ラミネートする方法で積層体を製造することにより、冷却ロールへのブロッキングを防止することが記載されている。しかし、特許文献1で使用されている重縮合ポリエステルやポリ乳酸は、P3HB系樹脂に比較して自然環境で微生物により分解が進みにくいため積層体の生分解性の点で課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-6444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルムあるいは紙などの基材層の表面にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂をラミネートした積層体を製造する際に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の冷却ロールとの剥離性を改善し、フィルムまたは積層体を連続的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の表面特性を有する表面処理ロールを冷却ロールに用いることで、P3HB系樹脂を含む樹脂の冷却ロール等のロール表面からの剥離性を改善して、表面状態が良好なフィルムや積層体を連続的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルムを製造する方法であって、
前記ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂原料を押出機で溶融した後、フィルム状に成形する工程、及び、
前記成形したフィルムを、冷却ロールに接触させてで冷却する工程を含み、
前記フィルムの表面の接触角(d1)と、少なくとも前記フィルムと接触する、前記冷却ロールの表面の接触角(d2)の差(d2―d1)の絶対値が、25°以上65°以下となる冷却ロールを用いる、フィルムの製造方法に関する。
【0010】
また、本発明は、ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂層を最外層に有する積層体を製造する方法であって、
前記ポリ(3―ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂を押出機で溶融した後、フィルムに成形する工程、及び、
前記フィルムを、少なくともフィルムが冷却ロールに接触させた状態で、基材表面上にラミネートする工程を含み、
前記フィルムの表面の接触角(d1)と、少なくとも前記フィルムと接触する、前記冷却ロールの表面の接触角(d2)の差(d2―d1)の絶対値が、25°以上65°以下となる冷却ロールを用いる、積層体の製造方法にも関する。
【0011】
好ましくは、前記接触角(d2)が前記接触角(d1)よりも高い。
【0012】
好ましくは、前記接触角の差(d2-d1)の絶対値が、40°以上65°未満である。
【0013】
好ましくは、前記冷却ロールが、樹脂成分を含むコーティング材料を固着させてなる。
【0014】
好ましくは、前記コーティング材料が、フッ素樹脂系材料、シリコーン樹脂系材料の群から選ばれる少なくとも1種を含有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含むフィルムあるいは紙などの基材層の表面にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む樹脂をラミネートした積層体を製造する際に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の冷却ロールとの剥離性を改善し、フィルムまたは積層体を連続的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
〔(ポリ-3-ヒドロキシブチレート)系樹脂〕
本発明に係る、(ポリ-3-ヒドロキシブチレート)系樹脂(P3HB系樹脂)は、一般式:[-CH(CH)-CH-CO-O-]で示される3-ヒドロキシブチレートの繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステル樹脂である。
【0018】
P3HB系樹脂は、前記一般式で表される3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。後者の場合、共重合の形式としては特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等であってよいが、入手が容易であるためランダム共重合が好ましい。
【0019】
P3HB系樹脂の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)(P3HB3HO)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)(P3HB3HOD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)(P3HB3HD)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBが好ましい。
【0020】
P3HB系樹脂が、複数の種類の繰り返し単位を有する共重合体の場合は、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、ヤング率、耐熱性などの物性を変化させることができ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、また、上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、3-ヒドロキシブチレートと3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体であるP3HB3HHがより好ましい。またP3HB3HHは、融点を低くすることができ、低温での成形加工が可能となる観点からも特に好ましい。
【0021】
本発明のフィルム、または、積層体の製造方法においてP3HB系樹脂は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本発明の一実施形態において、P3HB系樹脂は、少なくとも1種類のP3HB3HHを含むことが好ましく、構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも2種類のP3HB3HHを含むことが特に好ましい。また、少なくとも1種類のP3HB3HHとP3HBとを含むことも好ましい。
【0023】
P3HB3HHの具体的な製造方法は、例えば、国際公開第2010/013483号に記載されている。また、P3HB3HHの市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet」(登録商標)などが挙げられる。
【0024】
P3HB3HH中の各構成モノマーの平均含有比率は、フィルムまたは積層体の製造時の冷却ロールに貼り付きにくい、本発明に係るフィルムまたは積層体を成形加工した成形品(以下、「二次加工品」と称することもある。)を製造し易いなどの観点から、3HB/3HH=97~80/3~20(モル%/モル%)であることが好ましく、3HB/3HH=95~75/5~15(モル%/モル%)であることがより好ましく、3HB/3HH=92~78/7~13(モル%/モル%)がさらに好ましい。
【0025】
なお、P3HB3HH中の各構成の平均含有比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号の段落[0047]に記載の方法やNMR測定することにより求めることができる。平均含有比率とはP3HB3HH中に含まれる3HBと3HHのモル比を意味し、P3HB3HHが2種のP3HB3HH、あるいはの少なくとも1種類のP3HB3HHと、P3HBを含む混合物である場合、混合物全体に含まれる各モノマーのモル比を意味する。
【0026】
3HHの平均含有比率が3~20モル%であるP3HB3HHは、上述の通り、構成モノマーの含有割合が互いに異なる少なくとも2種類のP3HB3HHを含むことが特に好ましく、また、少なくとも1種類のP3HB3HHとP3HBとを含むことも好ましい。
【0027】
2種類以上のP3HB3HHから構成する場合は、高結晶性P3HB3HHと低結晶性P3HB3HHを含んでいることが好ましい。また、高結晶性P3HB3HHの代わりにP3HBをブレンドしてもよく、高結晶性P3HB3HHとP3HBを併用してもよい。このような配合により、特に基材にラミネートして積層体を製造する際に、結晶化しやすい高結晶性P3HB3HHが冷却ロールへの貼りつきを抑制しつつ、低結晶性P3HB3HHによってホットタック性が発現し、基材との接着強度がより改善され得る。
【0028】
前記高結晶性P3HB3HH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合は、3モル%以下であることが好ましく、2モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。また、前記低結晶性P3HB3HH中の3HBと3HHの合計に対する3HHの割合は、10~40モル%であることが好ましく、15~30モル%であることがより好ましい。
【0029】
前記高結晶性P3HB3HH又はP3HBの配合量は、特に限定されないが、P3HB系樹脂(B)に対して1~60重量%であることが好ましく、2~50重量%がより好ましく、4~15重量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明において、2種以上のP3HB系樹脂のブレンド物を用いる場合、ブレンド物を得る方法は特に限定されず、微生物産生によりブレンド物を得る方法であってよいし、化学合成によりブレンド物を得る方法であってもよい。また、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて2種以上の樹脂を溶融混練してブレンド物を得てもよいし、2種以上の樹脂を溶媒に溶解して混合・乾燥してブレンド物を得ても良い。
【0031】
本発明で使用するP3HB系樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)は特に限定されないが、10万~250万が好ましく、15万~200万がより好ましく、20万~100万がさらに好ましく、30万~80万がとくにこのましい。重量平均分子量が10万未満では、機械物性等が劣る場合があり、250万を超えると、成形加工が困難となる場合がある。本願において、P3HB系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(例えば、昭和電工社製「Shodex GPC-101」)によって、カラムにポリスチレンゲル(例えば、昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。
【0032】
(その他樹脂成分)
本発明の製造方法において、P3HB系樹脂に、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂など、P3HB系樹脂以外の生分解性樹脂を1種または2種以上混合し用いてもよい。
【0033】
(添加剤)
本発明の製造方法において、P3HB系樹脂に、本発明の効果を阻害しない範囲で、滑剤、無機充填材などの添加剤を混合することもできる。
【0034】
滑剤としては、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の飽和または不飽和の脂肪酸アミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のアルキレン脂肪酸アミド等の脂肪族アミド化合物やペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0035】
無機充填材としては、例えば、平均粒子径が0.5μm以上の、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、クレイ、カオリン、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0036】
前記滑剤の配合量は、P3HB系樹脂とその他の樹脂成分の合計100重量部に対して0.1~2重量部であることが好ましく、0.2~1重量部がさらに好ましい。配合量を0.1重量部以上とすることにより、滑剤配合による剥離性改善効果を得ることができる。逆に配合量が2重量部を超えると、圧着時に滑剤がブリードして冷却ロールに付着し、長時間の連続加工が困難になる問題がある。
【0037】
前記無機充填剤の配合量は、P3HB系樹脂(B)100重量部に対して0.5~5重量部であることが好ましく、1~3重量部がさらに好ましい。配合量を0.5重量部以上とすることにより、無機充填剤配合による剥離性改善効果を得ることができる。逆に配合量が5重量部を超えると、フィルムまたは積層体におけるP3HB系樹脂層に割れが生じ易くなる場合がある。
【0038】
〔積層体における基材〕
本発明に用いることができる紙等の基材層としては、生分解性を有していれば特に限定されず、その片面または両面に樹脂層を形成できるものであればよい。
【0039】
具体例としては、クラフト紙、カップ原紙、上質紙、コート紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙、セロファン、セルロースエステル等が挙げられ、積層体の用途に応じて、基材層の種類を選択すればよい。また、基材の表面は、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、アンカーコート処理、酸素バリアコーティング、水蒸気バリアコーティング等の表面処理が施されたものであってもよく、これらの表面処理は、単独で行っても良いし、複数の表面処理を併用してもよい。基材の片面または両面に対して、予めP3HB系樹脂をプレコートした基材を用いることができ、そのプレコート層厚は0μmより厚ければよく、基材とP3HB系樹脂層の接着性を向上するために0.1μm以上100μm以下が好ましく、更に好ましくは0.9μm以上50μmであればよい。
【0040】
〔冷却ロール〕
本発明における冷却ロールとは、フィルム、または、積層体の製造時に溶融したP3HB系樹脂を含む樹脂原料が押出機から吐出されてから、最初に接触する温調可能なロールを指す。
【0041】
本発明において、フィルム表面の接触角(d1)と冷却ロール表面の接触角(d2)の差 (d2―d1)の絶対値が、25°以上65°以下となる冷却ロールを用いる。特に、生産速度(連続生産の場合は、ライン速度)を速くする場合やフィルム厚みを厚くする場合において、フィルムが冷却ロールに貼り付き難くなる点で、(d2―d1)の絶対値は、40°以上65°未満が好ましく、45°以上60°以下がより好ましい。
【0042】
尚、前記フィルムの接触角(d1)は、本発明に用いる樹脂原料で製造されたフィルムを用いて測定されたフィルム表面の接触角であり、冷却ロール表面の接触角(d2)は、ロールが温調されていない状態で測定された接触角である。 尚、本発明において、フィルム表面およびロール表面の接触角は、JIS K6768に規定されているプラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法に従い測定することができる。
【0043】
尚、本発明における接触角は、ぬれ張力が30mN/m、40mN/m、および、50mN/mのぬれ張力測定用混合液(富士フイルム和光純薬(株)製、ぬれ張力試験用混合液)を使用して測定した接触角を指す。
【0044】
本発明において、生産速度(連続生産の場合は、ライン速度)を速くする、フィルム厚み、または、積層体における樹脂層を厚くする場合において、フィルム(樹脂層)が冷却ロールに貼り付き難くなる点で、前記冷却ロール表面の接触角(d2)は、前記フィルム表面の接触角(d1)よりも高いことが好ましい。
【0045】
接触角(d1)と接触角(d2)の差の絶対値を、本発明の範囲とする方法としては、範囲内となるようにフィルム表面または冷却ロール表面の接触角を調整できれば特に限定されないが、例えば、フィルム表面の接触角(d1)に応じて冷却ロールの接触角(d2)を調整する方法が好ましい。
【0046】
冷却ロール表面の接触角(d2)を調整する方法としては、例えば、ロールの材質を選択する、ロール表面にコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理や、表面に微細な凹凸を形成する賦形処理、樹脂成分を含むコーティング材料の固着処理を施す方法等やが挙げられ、これらの方法は、単独で行ってもよいし、複数の方法を併用してもよい。特に、表面の接触角の値を調整しやすい、接触角の値を長期間持続しやすい等の点で、賦形処理や樹脂成分を含むコーティング材料の固着処理を施す方法を好ましく用いることができ、賦形処理と固着処理を併用することが特に好ましい。賦形処理と固着処理を併用する具体的な方法としては、例えば、特許公開平10-6444に記載の方法が挙げられる。
【0047】
本発明に係る冷却ロールは、賦形処理により、表面粗さ(Ra)が、0.1μm以上15umの凹凸が形成されていることが好ましく、0.3μm以上13.5μm以下がより好ましく、0.5μm以上12μm以下が特に好ましい。表面粗さを上記範囲とすることにより、P3HB系樹脂を含む樹脂のロールへの貼り付きを防止できる傾向がある。
【0048】
本発明に係る冷却ロールは、フッ素樹脂系材料、シリコーン樹脂系材料の少なくとも1種の材料が固着されていることが好ましい。上記材料を固着することによりP3HB系樹脂を含む樹脂のロールへの貼り付きを防止できる傾向がある。
【0049】
(フィルムの製造方法)
本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法は、前記P3HB系樹脂を含む樹脂原料を押出機で溶融した後、フィルム状に成形する工程、及び、成形したフィルムを冷却ロールで冷却する工程を含んでいる。
本発明の製造方法において、少なくともP3HB系樹脂を含むフィルムと接する冷却ロールは、本発明にかかる特徴となる表面の接触角(d2)の値を有している。尚、前記フィルム状への成形は、一般的なフィルム成形方法を用いることができるが、例えば、溶融した樹脂原料を2本以上の冷却ロールで挟み込むカレンダー法、溶融した樹脂原料を丸型ダイからチューブ状のフィルムとしてに押出し、内部に空気を入れて膨らませるインフレーション成形法、あるいは、溶融した樹脂原料をTダイから押出すこと、即ち押出成形法により実施してもよい。厚みが均一なフィルムを製造するためには、押出成形法が好ましい。
【0050】
尚、本発明の製造方法において、冷却ロールの温調は、P3HB系樹脂の結晶化をある程度進行させ、冷却ロールへの貼り付きを抑制するを回避する目的で、40~100℃であることが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法で製造されるフィルム厚さは、特に限定されないが、冷却ロールへの貼り付きを防止しやすい、フィルムの充分な柔軟性を確保する観点から、5~300μmが好ましく、より好ましくは10~200μmであり、特に好ましくは、25μm~60μmである。
【0052】
(積層体の製造方法)
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法について、押出ラミネート法により紙等の基材と、その片面に形成されたP3HB系樹脂を含む樹脂層(ラミネート層)から構成される積層体の製造方法を例にして説明するが、本発明はこれに限定されない。
押出ラミネート法による積層体の製造方法とは、T型ダイ等から溶融したP3HB系樹脂を含む樹脂原料を押出し、溶融押出した樹脂と基材繰り出しロールから別途繰り出した基材とを接触させて、基材と樹脂層とが層構造をなすように積層する。その後、形成された積層体を少なくとも1本が温調可能な一対の圧着ロールで挟み、積層体を構成する基材層と樹脂層を圧着する。
【0053】
本発明においては、冷却圧着(溶融した樹脂原料の温度よりも低い温度で圧着する)であり、樹脂層と接する少なくとも1本の圧着ロールは、本発明における冷却ロールで構成される。
【0054】
上記の 押出ラミネート法は、溶融した樹脂原料からなる樹脂層を基材に冷却圧着し、その直後に冷却ロールから樹脂層を剥離するものであり、連続的に実施される。そのため、従来法では、樹脂材料としてP3HB系樹脂を用いた場合、冷却ロールから樹脂層がスムーズに剥離しにくく、冷却ロールにラミネート層が一時的に付着したようになる現象が生じやすかった。その結果、その付着箇所がロールから剥離する際に力がかかって、当該箇所でラミネート層表面に白濁(微細な凹凸)が生じるという問題が特に顕著に発生していたが、本発明にかかる表面の接触角(d2)の値を有している冷却ロールを適用することで、冷却ロールからの剥離性を改善して、樹脂層の表面状態が良好な積層体を製造することができる。
【0055】
尚、押出ラミネート法による積層体の製造方法おいて、冷却ロールの温調は、P3HB系樹脂の結晶化をある程度進行させ、冷却ロールへの貼り付きを抑制する目的で、40~100℃であることが好ましい。
【0056】
その他のラミネート法としては、予め作製しておいた樹脂フィルムを加熱して紙基材に圧着する熱ラミネート法を挙げることができるが、この方法においても、P3HB系樹脂を含む樹脂面と接触する材料は、本発明の特徴となる接触角(d2)の値を有する圧着材料を選択すればよい
本発明の製造方法により製造される積層体においてP3HB系樹脂を含む樹脂層(積層体が2層以上の樹脂層を有する場合には各樹脂層)の厚さは、特に限定されないが、紙への吸水を防止しながら、充分な柔軟性を確保する観点から、5~300μmが好ましく、より好ましくは10~100μmである。
【0057】
〔成形体〕
本発明の製造方法により製造されるフィルムまたは積層体は、表面状態が良好なため、本発明により製造されるフィルムまたは積層体を用いて製造される成形体は特に限定されないが、例えば、紙コップ、紙袋、カートン、トレイ、内装用の壁紙等が挙げられる。
【実施例
【0058】
以下に実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
(使用した樹脂材料)
樹脂原料:ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)〔カネカ製、カネカ生分解性ポリマーGreenPlanetTM 、X136〕
【0060】
(冷却ロールからの剥離性)
冷却ロールへのP3HB系樹脂の貼り付きり具合を観測した。評価基準は下記の通りとした。
【0061】
<評価>
◎:4.0m/min以上で成形した場合、フィルム(樹脂層)がロール表面へ貼り付かず連続運転でき、かつ、フィルム(樹脂層)表面に凹凸が観察されない状態。
〇:4.0m/minで成形した場合、フィルム(樹脂層)が冷却ロールから剥がれにくく、フィルム(樹脂層)の一部に白濁したムラがあるが、2.0m/minで成形した場合はフィルム(樹脂層)がロール表面へ貼り付かず連続運転でき、かつ、フィルム(樹脂層)表面に凹凸が観察されない状態。
×:2.0m/min未満での成形した場合でも、フィルム(樹脂層)が冷却ロールに貼り付き、手で剥離の補助をしないと連続運転ができない状態。
【0062】
(接触角の測定)
接触角は、JIS K6768に規定されている"プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法"に準拠し、ぬれ張力試験用混合液No.30.0(30mN/m)、No.40.0(40mN/m)、No.50.0(50mN/m)〔いずれも富士フイルム和光純薬(株)製)〕を使用し測定した。
【0063】
(実施例1)
冷却ロールとして、UNA310X10(株式会社トシコ製)を用い、樹脂ペレット1(X136)を横幅:150mm、リップ開口幅:0.25mmのT型ダイスを装着した単軸押出機(東洋精機製作所製 20C200型ラボプラストミル)を用いて、シリンダー温度145~165℃、T型ダイ175℃に設定して、冷却ロールを60℃に温調したラミネーター(ロール径100mm)を用いて、坪量200g/mのカップ原紙の片面に樹脂層の厚さが30μmとなるようにラミネートして、積層体を得た。ライン速度が4.0m/minで積層体を製造した場合、樹脂層の冷却ロールへの貼り付きは観察されなかった。得られた積層体の樹脂層に白濁は観察されなかった。結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例2~8、比較例1、2〕
表1に示した冷却ロールを使用した以外は、実施例1と同様にして、冷却ロール剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
〔結果〕
表1より、実施例は、比較例に比して冷却ロールの剥離性が良好な結果となった。