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7833119トランスサイレチン四量体安定化剤、及び、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤
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  • -トランスサイレチン四量体安定化剤、及び、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-11
(45)【発行日】2026-03-19
(54)【発明の名称】トランスサイレチン四量体安定化剤、及び、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/484 20060101AFI20260312BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20260312BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20260312BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20260312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20260312BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20260312BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20260312BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20260312BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20260312BHJP
【FI】
A61K36/484
A61K31/352
A61K31/353
A61P25/02
A61P43/00 111
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K125:00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022555540
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2021037039
(87)【国際公開番号】W WO2022075375
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2024-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020169831
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】399015388
【氏名又は名称】学校法人九州文化学園
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤下 仁子
(72)【発明者】
【氏名】安東 由喜雄
(72)【発明者】
【氏名】松下 博昭
(72)【発明者】
【氏名】植田 光晴
(72)【発明者】
【氏名】増田 曜章
(72)【発明者】
【氏名】三隅 洋平
【審査官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096785(JP,A)
【文献】特開2020-007236(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104587161(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103989907(CN,A)
【文献】特開2007-063161(JP,A)
【文献】YOKOYAMA, Takeshi et al.,Inhibition of the Amyloidogenesis of Transthyretin by Natural Products and Synthetic Compounds,Biol. Pharm. Bull.,2018年,Vol. 41, No. 7,p. 979-984
【文献】YOKOYAMA, Takeshi et al.,Crystal Structures of Human Transthyretin Complexed with Glabridin,J. Med. Chem.,2014年,Vol. 57, Issue 3,p. 1090-1096
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草根茎部のエタノール抽出物を含有する、トランスサイレチン四量体安定化剤。
【請求項2】
前記甘草グラブラポリフェノールが、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを少なくとも含む、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記甘草根茎部のエタノール抽出物が、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度に対するグラブレンピーク強度の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度に対するグラブロールピーク強度の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度に対する4’-O-メチルグラブリジン強度の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上を示す、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
前記甘草根茎部のエタノール抽出物に加えて、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上を更に含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
グリチルリチン酸の含有量が0.005重量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草根茎部のエタノール抽出物を含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤。
【請求項7】
トランスサイレチンアミロイドーシスが、老人性全身性アミロイドーシス又は家族性アミロイドポリニューロパチーである、請求項6に記載の剤。
【請求項8】
前記甘草グラブラポリフェノールが、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを少なくとも含む、請求項6又は7に記載の剤。
【請求項9】
前記甘草根茎部のエタノール抽出物が、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度に対するグラブレンピーク強度の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度に対するグラブロールピーク強度の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度に対する4’-O-メチルグラブリジン強度の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上を示す、請求項6~8のいずれか一項に記載の剤。
【請求項10】
前記甘草根茎部のエタノール抽出物に加えて、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上を更に含有する、請求項6~9のいずれか一項に記載の剤。
【請求項11】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の剤。
【請求項12】
グラブリジンの含有量が1回の摂取又は投与単位あたり4mg~1200mgである、請求項1~11のいずれか一項に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第一に、トランスサイレチンの四量体を安定化するための、トランスサイレチン四量体安定化剤に関する。
【0002】
本発明は第二に、トランスサイレチンが異常凝集して生じるアミロイド線維が沈着するトランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行抑制するための、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤に関する。
【背景技術】
【0003】
トランスサイレチンは、βシートリッチなホモ四量体タンパク質であり、1つのサブユニットは127アミノ酸残基により構成される。トランスサイレチンは血液及び脳脊髄液中でレチノール(ビタミンA)やサイロキシン(T4)と結合し輸送する機能を有することが知られている。トランスサイレチンの四量体は、二量体と二量体との連結部に、2つのサイロキシン結合部位(T4結合部位)を有する(非特許文献1)。
【0004】
トランスサイレチン四量体は生理的条件において通常は安定であるが、遺伝子異常や老化等の要因が加わり不安定化し単量体に乖離すると、ミスフォールディングによってアミロイド生成性中間体の凝集物となり、その結果アミロイド化してアミロイド線維の沈着が生じ、アミロイドーシスの臨床症状を引き起こす。トランスサイレチンアミロイドーシスとしては、遺伝子変異による変異トランスサイレチン(例えばV30M変異トランスサイレチン)がアミロイド化し全身の諸臓器に沈着し臓器障害を引き起こす家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、ならびに、遺伝子変異が無い野生型トランスサイレチンが加齢によりアミロイド化し、心臓、腱等に沈着して機能傷害を引き起こす老人性全身性アミロイドーシス(SAA)が知られている。
【0005】
トランスサイレチン四量体の安定化及びアミロイド形成の阻害については、トランスサイレチンのT4結合部位に結合する低分子化合物により達成することができ、種々の医薬品も開発されてはいるものの、重篤な副作用が懸念される医薬品や、1回の投薬費が極めて高額なために難病指定によって患者本人の医療費負担は少ないものの国庫負担が極めて大きい医薬品である。また、トランスサイレチンアミロイドーシスは完治困難な疾患であるだけでなく、加齢に伴い高確率で発症することから、予防策の構築にも注目が集まりつつある。
【0006】
非特許文献1及び非特許文献2には、甘草グラブラポリフェノールの1つであるグラブリジンの2分子がトランスサイレチン四量体に結合して安定化し、アミロイド線維の形成を軽減する作用を有することが記載されている。
【0007】
甘草は、中国、ヨーロッパ、ロシア、アフガニスタン、イラン、パキスタン等に広く分布するマメ科カンゾウ属(Glycyrrhiza属)の植物であり、その根などを食品および生薬として利用してきた長い摂取経験がある植物である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Yokoyama, T. et al., Biol. Pharm. Bull. 41, 979-984 (2018)
【文献】Yokoyama, T. et al., J. Med. Chem. 57, 1090-1096 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行抑制には、トランスサイレチン四量体を安定化することが有効であることから、トランスサイレチン四量体の安定化製剤を開発し、発症前から摂取することができれば、トランスサイレチンアミロイドーシスを予防することが可能となる。そこで、本発明は、トランスサイレチン四量体安定化剤、及び、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防剤又は進行抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したように、非特許文献1及び非特許文献2には、グラブリジン単体が、トランスサイレチン四量体の安定化に寄与することについて記載されているが、グラブリジンに加えて他の成分を含む甘草疎水性抽出物の、トランスサイレチン四量体の安定化効果に対しては従来検討されていなかった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物が、トランスサイレチン四量体安定化剤、及び、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤の活性成分として特に有効であることを見出し、以下の発明を完成するに至った。
【0011】
(1)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を含有する、トランスサイレチン四量体安定化剤。
(2)前記甘草グラブラポリフェノールが、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを少なくとも含む、(1)に記載の剤。
(3)前記甘草疎水性抽出物が、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度に対するグラブレンピーク強度の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度に対するグラブロールピーク強度の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度に対する4’-O-メチルグラブリジン強度の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上を示す、(1)又は(2)に記載の剤。
(4)前記甘草疎水性抽出物に加えて、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上を更に含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の剤。
(5)グリチルリチン酸の含有量が0.005重量%以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の剤。
(6)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を含有する、トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤。
(7)トランスサイレチンアミロイドーシスが、老人性全身性アミロイドーシス又は家族性アミロイドポリニューロパチーである、(6)に記載の剤。
(8)前記甘草グラブラポリフェノールが、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを少なくとも含む、(6)又は(7)に記載の剤。
(9)前記甘草疎水性抽出物が、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度に対するグラブレンピーク強度の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度に対するグラブロールピーク強度の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度に対する4’-O-メチルグラブリジン強度の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上を示す、(6)~(8)のいずれかに記載の剤。
(10)前記甘草疎水性抽出物に加えて、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上を更に含有する、(6)~(9)のいずれかに記載の剤。
(11)錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤の形態である、(1)~(10)のいずれかに記載の剤。
(12)グラブリジンの含有量が1回の摂取又は投与単位あたり4mg~1200mgである、(1)~(11)のいずれかに記載の剤。
【0012】
(13)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物の、トランスサイレチン四量体を安定化するための組成物の製造のための使用。
ここで前記組成物は、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤の形態である。また前記組成物は、好ましくは、グラブリジンの含有量が1回の摂取又は投与単位あたり4mg~1200mgである。
(14)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物の、トランスサイレチン四量体を安定化するための医薬の製造のための使用。
ここで前記医薬は、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口投与用製剤の形態である。また前記医薬は、好ましくは、グラブリジンの含有量が1回の摂取又は投与単位あたり4mg~1200mgである。
(15)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を、生体外に存在するトランスサイレチン四量体に接触させること、及び、
前記トランスサイレチン四量体の単量体化及び/又は前記トランスサイレチン四量体からのアミロイド線維形成を抑制すること、
を含む、生体外でトランスサイレチン四量体を安定化する方法。
(16)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を、トランスサイレチン四量体の安定化を必要とする対象に投与すること、及び、
前記対象において、前記トランスサイレチン四量体の単量体化及び/又は前記トランスサイレチン四量体からのアミロイド線維形成を抑制すること、
を含む、前記対象においてトランスサイレチン四量体を安定化する方法。
ここで前記投与では、前記甘草疎水性抽出物を含有する錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口投与用製剤の形態の組成物を、前記対象に経口投与することが好ましい。また前記投与では、前記甘草疎水性抽出物を、甘草グラブラポリフェノールの総量として1日あたり0.01~100mg/kg体重、好ましくは0.1~30mg/kg体重となるように投与することが好ましい。
(17)生体外又は生体内でトランスサイレチン四量体を安定化するための、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物。
(18)前記甘草グラブラポリフェノールが、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを少なくとも含む、(13)に記載の使用、(14)に記載の使用、(15)に記載の方法、(16)に記載の方法、又は、(17)に記載の甘草疎水性抽出物。
(19)前記甘草疎水性抽出物が、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度に対するグラブレンピーク強度の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度に対するグラブロールピーク強度の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度に対する4’-O-メチルグラブリジン強度の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上を示す、(13)に記載の使用、(14)に記載の使用、(15)に記載の方法、(16)に記載の方法、又は、(17)に記載の甘草疎水性抽出物。
(20)前記甘草疎水性抽出物が、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上と組み合わされている、(13)に記載の使用、(14)に記載の使用、(15)に記載の方法、(16)に記載の方法、又は、(17)に記載の甘草疎水性抽出物。
(21)前記甘草疎水性抽出物におけるグリチルリチン酸の含有量が0.005重量%以下である、(13)に記載の使用、(14)に記載の使用、(15)に記載の方法、(16)に記載の方法、又は、(17)に記載の甘草疎水性抽出物。
【0013】
(22)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物の、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行抑制のための組成物の製造のための使用。
ここで前記組成物は、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤の形態である。また前記組成物は、好ましくは、グラブリジンの含有量が1回の摂取又は投与単位あたり4mg~1200mgである。
(23)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物の、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行抑制のための医薬の製造のための使用。
ここで前記医薬は、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口投与用製剤の形態である。また前記医薬は、好ましくは、グラブリジンの含有量が1回の摂取又は投与単位あたり4mg~1200mgである。
(24)甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行の抑制を必要とする対象に投与すること、及び、
前記対象において、トランスサイレチン四量体の単量体化及び/又はトランスサイレチン四量体からのアミロイド線維形成を抑制すること、
を含む、前記対象においてトランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は進行抑制する方法。
ここで前記投与では、前記甘草疎水性抽出物を含有する錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口投与用製剤の形態の組成物を、前記対象に経口投与することが好ましい。また前記投与では、前記甘草疎水性抽出物を、甘草グラブラポリフェノールの総量として1日あたり0.01~100mg/kg体重、好ましくは0.1~30mg/kg体重となるように投与することが好ましい。
(25)トランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は進行抑制するための、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物。
(26)トランスサイレチンアミロイドーシスが、老人性全身性アミロイドーシス又は家族性アミロイドポリニューロパチーである、(22)に記載の使用、(23)に記載の使用、(24)に記載の方法、又は、(25)に記載の甘草疎水性抽出物。
(27)前記甘草グラブラポリフェノールが、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを少なくとも含む、(22)に記載の使用、(23)に記載の使用、(24)に記載の方法、又は、(25)に記載の甘草疎水性抽出物。
(28)前記甘草疎水性抽出物が、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度に対するグラブレンピーク強度の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度に対するグラブロールピーク強度の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度に対する4’-O-メチルグラブリジン強度の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上を示す、(22)に記載の使用、(23)に記載の使用、(24)に記載の方法、又は、(25)に記載の甘草疎水性抽出物。
(29)前記甘草疎水性抽出物が、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上と組み合わされている、(22)に記載の使用、(23)に記載の使用、(24)に記載の方法、又は、(25)に記載の甘草疎水性抽出物。
(30)前記甘草疎水性抽出物におけるグリチルリチン酸の含有量が0.005重量%以下である、(22)に記載の使用、(23)に記載の使用、(24)に記載の方法、又は、(25)に記載の甘草疎水性抽出物。
【0014】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2020-169831号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るトランスサイレチン四量体安定化剤は、トランスサイレチンの四量体を安定に維持することができ、単量体化及びアミロイド線維形成を抑制することができる。
【0016】
本発明に係るトランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、老人性全身性アミロイドーシス(SAA)等のトランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例4試験例1において甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液及びグラブリジンを、各々グラブリジンとして0、10、50μMとなるように添加しインキュベートした血清中での、トランスサイレチンの単量体の、四量体に対する比(monomer/tetramer)を示す。白丸はグラブリジンを添加した血清での前記比を示す。黒丸は甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液を添加した血清での前記比を示す。前記比が低いことは、トランスサイレチン四量体の安定性が高いことを示す。
図2図2は、実施例4試験例2において甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液をヒトに12週間摂取(摂取量:300mg/day)させ経時的に得た血漿中での、トランスサイレチンの単量体の、四量体に対する比(monomer/tetramer)を示す。前記比が低いことは、トランスサイレチン四量体の安定性が高いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<甘草疎水性抽出物>
本発明において抽出物の原料となる甘草は、グリキルリーザ(Glycyrrhiza)属に属する植物であれば特に限定されない。甘草の具体例としては、グリキルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis(G.uralensis))、グリキルリーザ・インフラータ(G.inflata)、グリキルリーザ・グラブラ(G.glabra)、グリキルリーザ・エウリカーパ(G.eurycarpa)、グリキルリーザ・アスペラ(G.aspera)等が挙げられる。好ましくは、G.uralensis、G.inflata、G.glabra等であり、さらに好ましくは、G.glabraである。
【0019】
甘草グラブラポリフェノールは、上記のような甘草に含まれるポリフェノール成分であれば特に限定されない。甘草グラブラポリフェノールの具体例としては、グラブレン(glabrene)、グラブリジン(glabridin)、グラブロール(glabrol)、4’-O-メチルグラブリジン(4’-O-methylglabridin)、グリシクマリン(glycycoumarin)、グリシロール(glycyrol)、グリシリン(glycyrin)、リクイリチゲニン(liquiritigenin)、グリコリコン(glicoricone)、3’-ヒドロキシ-4’-O-メチルグラブリジン(3’-hydroxy-4’-O-methylglabridin)、グリウラリンB(glyurallin B)、リコクマロン(licocoumarone)、ガンカオニンI(gancaonin I)、デヒドログリアスペリンD(dehydroglyasperin D)、エチナチン(echinatin)、イソリコフラボノール(isolicoflavonol)、デヒドログリアスペリンC(dehydroglyasperin C)、グリアスペリンB(glyasperin B)、グリチルイソフラバノン(glycyrrhisoflavanone)、ルピワイテオン(lupiwighteone)、グリアスペリンD(glyasperin D)、セミリコイソフラボンB(semilicoisoflavone B)等が挙げられる。
【0020】
甘草グラブラポリフェノールの多くは、プレニルフラボノイドに分類される化合物群であり、ジフェニルプロパンに1つ以上のC5イソプレン単位が結合した構造を有する。
【0021】
本発明で用いる甘草疎水性抽出物は、甘草グラブラポリフェノールとして、好ましくは上述の化合物のうち1種以上を含有し、より好ましくはグラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群から選択される1種以上を含有し、より好ましくはグラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンを含有する。
【0022】
甘草疎水性抽出物中の甘草グラブラポリフェノールは、塩、エステル、配糖体等の形態で存在していてもよい。甘草グラブラポリフェノールの塩としては、医薬品、飲食品、飼料等の最終的な用途において許容される酸、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸との塩、或いは、最終的な用途において許容される塩基との塩、例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム、カリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩;および好適な有機配位子、例えば第四級アンモニウムとの塩が例示できる。甘草グラブラポリフェノールのエステルとしては脂肪酸エステルが例示でき、具体的には、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸などの長鎖脂肪酸、および酢酸、酪酸などの短または中鎖脂肪酸とのエステルが例示できる。甘草グラブラポリフェノールの配糖体としては、糖成分として単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、多糖等が結合した配糖体が例示できる。
【0023】
本発明で用いる甘草疎水性抽出物は、好ましい実施形態において、以下に示すa)の条件でのHPLC分析において、b)、c)及びd)の特性:
a)移動相:アセトニトリル:メタノール=1:1(移動相A)と20mMリン酸(移動相B)のグラジエント、カラム:ODSカラム、流速:1.0mL/分、温度:40℃、検出器:UV検出器、検出波長:282nm、
b)グラブリジンピーク強度(ピーク面積)に対するグラブレンピーク強度(ピーク面積)の割合が38%以上41%以下、
c)グラブリジンピーク強度(ピーク面積)に対するグラブロールピーク強度(ピーク面積)の割合が44%以上47%以下、
d)グラブリジンピーク強度(ピーク面積)に対する4’-O-メチルグラブリジン強度(ピーク面積)の割合が15%以上20%以下、
のうちいずれか1つ以上、より好ましくは2つ以上、特に好ましくは全て、を示すことが好ましい。
【0024】
前記a)において、移動相Aと移動相Bとのグラジエントは、好ましくは、移動相Aと移動相Bとの全量あたりの移動相Aの比率を、分析開始20分まで50%(v/v)で一定とし、20分以降75分後に80%(v/v)となるように一定比率で上昇させ、75分以降80分まで100%(v/v)で一定とし、80分以降100分まで50%(v/v)で一定とする条件である。
前記a)において、ODSカラムとしては例えばYMC J’sphere ODS-H80(株式会社ワイエムシィ)を用いることができる。ODSカラムのサイズは内径4.6mm×長さ250mmが例示できる。
【0025】
甘草グラブラポリフェノール量の測定法としては、ポリフェノール量の測定法として用いることができる方法が利用できる。例えば、酒石酸鉄法、プルシアンブルー法、フォリン-チオカルト法、フォリン-デニス法などの比色法やHPLC法による成分ごとの測定があり、どの測定法を用いてもよいが、ポリフェノール全体量の測定にはフォリン-デニス法またはフォリン-チオカルト法が使われることが多い。フォリン-デニス法またはフォリン-チオカルト法の場合、標準物質を用いることで標準物質による検量線を作成し、標準物質換算で求めることができる。甘草疎水性抽出物中の又は甘草疎水性抽出物を含む組成物中の甘草グラブラポリフェノール量を測定する場合は、例えばグリキルリーザ・グラブラ(G.glabra)抽出物であれば、グラブリジンを標準物質とすることができる。具体的には、例えば後述する実施例記載の方法により、甘草疎水性抽出物を含む組成物に含まれる甘草グラブラポリフェノール成分の含有量を、グラブリジン換算値として求めることができる。
【0026】
甘草疎水性抽出物を得るために用いる植物部位は、特に限定されず、甘草の全草、葉、茎、根(根茎)、花、種子等のいずれを用いてもよい。
【0027】
甘草グラブラポリフェノールは疎水性であるため、本発明において、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草抽出物としては甘草疎水性抽出物を使用することができる。
【0028】
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物は、甘草の疎水性成分を抽出して得た抽出物であればよく、甘草の抽出溶媒を含む抽出液や、前記抽出液から前記抽出溶媒を一部又は全部除去した前記抽出液の濃縮物又は乾燥物、或いは、前記抽出液、前記濃縮物又は前記乾燥物の処理物が例示できる。前記処理物としては、前記抽出液、前記濃縮物又は前記乾燥物の希釈物や、前記抽出液、前記濃縮物又は前記乾燥物から、甘草グラブラポリフェノールを濃縮又は精製(粗精製を含む)して、甘草グラブラポリフェノールの濃度を高めた処理物が例示できる。甘草疎水性抽出物を甘草から得る場合、その方法は特に限定されない。例えば甘草またはその粉末、あるいは甘草培養細胞などからその疎水性成分を、有機溶媒を用いた抽出等により得ることができる。あるいは、あらかじめ甘草の親水性成分を水又はアルカリ水溶液を用いて抽出・除去した後、その甘草残渣または残渣を乾燥させたものから、甘草中の疎水性成分を、有機溶媒を用いた抽出により得ることができる。あるいは、上記方法で一度抽出された疎水性抽出物を、さらに別種の有機溶媒で抽出することにより得ることができる。
【0029】
抽出溶媒として用いる有機溶媒は、医薬品や食品、食品添加物などの製造、加工に使用が許可されたものが好ましい。アルコール類(例えばエタノール)、エステル類(例えば酢酸エチル)、ケトン類(例えばアセトン)、炭化水素類(例えばヘキサン)等の有機溶媒や油脂類(例えば中鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。有機溶媒は好ましくはアルコール類、ケトン類又は油脂類であり、具体的にはエタノール、アセトン、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が好ましい。前記有機溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。抽出溶媒はより好ましくは、エタノール、アセトン及び中鎖脂肪酸トリグリセリドから選択される1種以上であり、特に好ましくは、エタノール及び中鎖脂肪酸トリグリセリドから選択される1種以上である。またこれら有機溶媒の含水溶媒を用いても良い。但し、後述するグリチルリチン酸(グリチルリチン)の含有量を低く抑えるためには、抽出溶媒の含水割合は低い方が好ましく、抽出溶媒は水を含まないことがより好ましい。
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物のより好ましい具体例としては、甘草エタノール抽出物が挙げられる。甘草エタノール抽出物は、中鎖脂肪酸トリグリセリドへの不溶成分を更に除去した甘草エタノール抽出物であってもよい。
【0030】
甘草疎水性抽出物は、有機溶媒を用いて抽出された抽出物をそのまま使用してもよいが、さらに精製工程、たとえばカラム処理、脱臭処理、脱色処理などにより粗精製または精製して使用してもよい。
【0031】
甘草疎水性抽出物中の甘草グラブラポリフェノールの含有量は特に限定されないが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0032】
<トランスサイレチン四量体安定化剤>
本発明に係るトランスサイレチン四量体安定化剤は、トランスサイレチン四量体を安定化し、トランスサイレチンの単量体化を抑制する作用を有する。トランスサイレチン四量体を安定化することで、トランスサイレチンのアミロイド化を抑制することができる。本発明者らは、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物が、従来からトランスサイレチン四量体を安定化する作用を奏することが知られていたグラブリジンと比較して、顕著にトランスサイレチン四量体安定化作用が高いことを見出した。
【0033】
安定化の対象となるトランスサイレチンの起源は特に限定されないが、通常は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。トランスサイレチンのアミノ酸配列は野生型であってもよいし、変異を有していてもよい。
【0034】
一実施形態において、本発明に係るトランスサイレチン四量体安定化剤は、医薬品、飲食品等として対象に投与されて又は対象が摂取して、対象の生体内、例えば血液又は脳脊髄液中、でトランスサイレチン四量体を安定化する用途で用いることができる。
【0035】
また、本発明の別の一実施形態は、
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を、トランスサイレチン四量体の安定化を必要とする対象に投与すること、及び、
前記対象において、前記トランスサイレチン四量体の単量体化及び/又は前記トランスサイレチン四量体からのアミロイド線維形成を抑制すること、
を含む、前記対象においてトランスサイレチン四量体を安定化する方法
に関する。
【0036】
本発明に係るトランスサイレチン四量体安定化剤並びに本発明に係るトランスサイレチン四量体を安定化する方法の対象は、トランスサイレチン四量体の安定化を必要とするヒト又は非ヒト動物であり、好ましくはヒトである。非ヒト動物としては、例えば、養殖動物、愛玩動物、競技動物などが挙げられる。養殖動物としては特に限定されないが、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマなどの家畜;マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの実験動物;ニワトリ、アヒル、七面鳥、駝鳥などの家禽が挙げられる。愛玩動物としては特に限定されないが、イヌ、ネコなどが挙げられる。競技動物としては特に限定されないが、競走馬などが挙げられる。非ヒト動物は哺乳動物であることが特に好ましい。
【0037】
前記実施形態に係るトランスサイレチン四量体安定化剤の対象への投与頻度や投与量は、対象の年齢、性別、状態などに応じて適宜調整すればよい。一日あたりの甘草疎水性抽出物の投与量は適宜調整すればよいが、例えば、甘草グラブラポリフェノールの総量として1日あたり0.01~100mg/kg体重、好ましくは0.1~30mg/kg体重、であることができる。一日あたりの投与回数も適宜調整すればよいが、例えば、1回以上、2回以上、5回以下とすることができる。上記の投与量及び投与頻度の例は対象が成人である場合に特に好ましい。投与経路は経口投与であってもよいし、非経口投与であってもよいが、好ましくは経口投与である。
【0038】
別の一実施形態において、本発明に係るトランスサイレチン四量体安定化剤は生体外のトランスサイレチン四量体を含む試料中に存在することで、前記試料中でトランスサイレチン四量体を安定化する用途で用いることもできる。前記試料としては、トランスサイレチン四量体を含む血液、脳脊髄液等の体液に由来する試料や、トランスサイレチン四量体を含む溶液が挙げられる。
【0039】
本発明の更に別の実施形態は、
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を、生体外に存在するトランスサイレチン四量体に接触させること、及び、
前記トランスサイレチン四量体の単量体化及び/又は前記トランスサイレチン四量体からのアミロイド線維形成を抑制すること、
を含む、生体外でトランスサイレチン四量体を安定化する方法
に関する。
【0040】
トランスサイレチン四量体安定化剤は、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を含有するものであればよく、更に1以上の他の成分を含む組成物(例えば、トランスサイレチン四量体を安定化するための組成物又は医薬)であってもよい。トランスサイレチン四量体安定化剤の好ましい形態については後述する。
【0041】
<トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤>
本発明に係るトランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤は、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行の抑制を必要とする対象に投与されると、トランスサイレチン四量体を安定化し、トランスサイレチンの単量体化を抑制する作用を通じて、トランスサイレチンのアミロイド化を予防又は進行抑制することができる。本発明者らは、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物が、従来からトランスサイレチン四量体を安定化する作用を奏することが知られていたグラブリジンと比較して、トランスサイレチン四量体安定化作用が顕著に高く、それに応じて、トランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は進行抑制する活性が顕著に高いことを見出した。
【0042】
また、本発明の別の一実施形態は、
甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行の抑制を必要とする対象に投与すること、及び、
前記対象において、トランスサイレチン四量体の単量体化及び/又はトランスサイレチン四量体からのアミロイド線維形成を抑制すること、
を含む、前記対象においてトランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は進行抑制する方法
に関する。
【0043】
一実施形態において、本発明に係るトランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤並びに本発明に係るトランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は進行抑制する方法の対象は、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行の抑制を必要とするヒト又は非ヒト動物であり、好ましくはヒトである。対象の具体例は、トランスサイレチン四量体安定化剤に関して上記した通りである。
【0044】
前記実施形態に係るトランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤の対象への投与頻度や投与量は、対象の年齢、性別、状態などに応じて適宜調整すればよい。一日あたりの甘草疎水性抽出物の投与量は適宜調整すればよいが、例えば、甘草グラブラポリフェノールの総量として1日あたり0.01~100mg/kg体重、好ましくは0.1~30mg/kg体重、であることができる。一日あたりの投与回数も適宜調整すればよいが、例えば、1回以上、2回以上、5回以下とすることができる。上記の投与量及び投与頻度の例は対象が成人である場合に特に好ましい。投与経路は経口投与であってもよいし、非経口投与であってもよいが、好ましくは経口投与である。
【0045】
トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤は、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を含有するものであればよく、更に1以上の他の成分を含む組成物(例えば、トランスサイレチンアミロイドーシスの予防又は進行抑制のための組成物又は医薬)であってもよい。トランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤の好ましい形態については後述する。
【0046】
予防又は進行抑制の対象とするトランスサイレチンアミロイドーシスとしては、老人性全身性アミロイドーシス、及び、家族性アミロイドポリニューロパチーが例示できる。
【0047】
<トランスサイレチン四量体安定化剤及びトランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤の好ましい実施形態>
以下の説明では、トランスサイレチン四量体安定化剤及びトランスサイレチンアミロイドーシス予防剤又は進行抑制剤を総称して「本発明に係る剤」とする。
【0048】
本発明に係る剤は、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物を含有するものであればよく、前記甘草疎水性抽出物のみからなるものであってもよいし、前記甘草疎水性抽出物と1以上の他の成分とを含む組成物であってもよい。
1以上の他の成分は、例えば、食品(通常の食品、特定保健用食品、機能性表示食品、ダイエタリーサプリメント等)、医薬品(ヒト用医薬品又は非ヒト動物用医薬品)、医薬部外品、化粧品、又は、飼料(家畜飼料又はペットフード)として許容される1以上の成分であることができる。食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、又は、飼料として許容される1以上の他の成分としては、以下に説明する、本発明に係る剤が含み得る、前記甘草疎水性抽出物以外の成分が例示できる。
【0049】
本発明に係る剤は、前記甘草疎水性抽出物に加えて、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上のポリフェノールを更に含有していてもよい。グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンからなる群のうちいずれか1つ以上のポリフェノールは、前記甘草疎水性抽出物とは別途調製され配合されたものである。別途調製された前記ポリフェノールは、化学的に合成されたものであってもよい。別途調製された前記ポリフェノールは、植物、微生物、動物等の生物試料から抽出され、必要に応じて精製されたものであってもよい。別途調製された前記ポリフェノールは、前記ポリフェノールを生産する能力を有する微生物を用いた発酵により生産されたものであってもよい。前記ポリフェノールを生産する能力を有する微生物は、遺伝子組み換えされた微生物であってもよいし、野生型の微生物であってもよい。
【0050】
本発明に係る剤はまた、前記甘草疎水性抽出物に加えて、グラブレン、グラブリジン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジン以外の他のポリフェノールを含んでも良い。前記他のポリフェノールとしては、例えば、ゲニステイン、ダイゼイン、ケルセチン、ルチン、カテキン、エピガロカテキンガレート、ヘスペリジン、ノビレチン、チロソール、ヒドロキシチロソール、オレウロペイン、ナリンゲニン、コーヒー酸、リンゴポリフェノール、茶ポリフェノール、没食子酸等が挙げられる。前記他のポリフェノールは、好ましくは、ゲニステイン、ダイゼイン、ケルセチン、ルチン、カテキン、エピガロカテキンガレート、ヘスペリジン、ノビレチン、ナリンゲニン、コーヒー酸、リンゴポリフェノール、茶ポリフェノールである。これらの他のポリフェノールは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
本発明に係る剤における前記甘草疎水性抽出物の含有量は特に限定されないが、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、3重量%以上が特に好ましい。また、本発明に係る剤における前記甘草疎水性抽出物の含有量は、甘草グラブラポリフェノールの含有量として、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。本発明に係る剤における前記甘草疎水性抽出物の含有量の上限は特に限定されず、甘草ポリフェノール成分を多く含む方が好ましいが、他の有効成分を必要量含有する観点からは、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0052】
本発明に係る剤が、対象が摂取する又は対象に投与される場合、本発明に係る剤は、グラブリジンを1回の摂取又は投与単位あたり好ましくは0.40~4000mg、より好ましくは4mg~1200mg含有する。本発明に係る剤が食品の場合、1回の摂取又は投与単位とは、1回に摂取される量である。例えば1回の摂取量が飲み切りの形態でビンや缶に包装されている場合や、個別に包装されている場合は、1回の摂取又は投与単位とは1包装単位を指す。本発明に係る剤が医薬品の場合、1回の摂取又は投与単位とは、推奨されている1回の投与量を指す。
【0053】
本発明に係る剤の好ましい実施形態では、グリチルリチン酸(グリチルリチンとも呼ばれる)の含有量が、重量基準で、組成物中の甘草グラブラポリフェノールの含有量以下であるのが好ましく、さらにはグラブリジンの含有量以下であるのが好ましい。甘草疎水性抽出物中には、その抽出条件によっては、甘草グラブラポリフェノール以外の成分、例えば親水性成分であるグリチルリチン酸が含まれることがある。本発明に係る剤では、長期間にわたり摂取又は投与するときの安全性の観点から、グリチルリチン酸の含有量は少ない方が好ましい。本発明に係る剤は、グリチルリチン酸を実質的に含まない、またはその含有量が低い甘草疎水性抽出物を使用するのが好ましく、例えば0.005重量%以下、好ましくは0.001重量%以下である。
【0054】
本発明に係る剤は、さらに中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有してもよい。甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物は、取り扱いの観点から中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解した形で使用するのが好ましい。その場合使用される中鎖脂肪酸トリグリセリドは、炭素数が6~12の脂肪酸から構成されるものであれば特に限定されないが、炭素数が8または10の飽和脂肪酸から構成されるトリグリセリドが好ましく、炭素数8の飽和脂肪酸から構成されるトリグリセリドを主成分とするものがより好ましい。中鎖脂肪酸トリグリセリドの構成脂肪酸の比率としては、特に限定されないが、炭素原子数8~10の脂肪酸の構成比率は50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。また、20℃での比重が0.94~0.96、20℃での粘度が23~28cPの中鎖脂肪酸トリグリセリドが特に好ましい。これら中鎖脂肪酸トリグリセリドは、天然由来のものであってもよいし、エステル交換等により調製されたものであってもよい。
【0055】
また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリドを50重量%以上含むグリセリン脂肪酸エステル、より好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリドを70重量%以上含むグリセリン脂肪酸エステルである。
【0056】
また本発明に係る剤においては、前記中鎖脂肪酸トリグリセリドとともに、部分グリセリドを更に含んでいてもよいし、中鎖脂肪酸トリグリセリドの代わりに、中鎖脂肪酸の部分グリセリドを用いることもできる。前記部分グリセリドは、部分グリセリドを含むグリセリン脂肪酸エステルであって、好ましくは部分グリセリドを50重量%以上含むグリセリン脂肪酸エステル、より好ましくは部分グリセリドを70重量%以上含むグリセリン脂肪酸エステルである。ここでの部分グリセリドとは、ジグリセリド(1,2-ジアシルグリセロール、1,3-ジアシルグリセロール)又はモノグリセリド(1-モノアシルグリセロール、2-モノアシルグリセロール)であり、いずれを用いてもよいし、2種以上が混合されたものを用いてもよい。加工性の観点からジグリセリドが好ましい。また、部分グリセリドは、天然由来のものであってもよいし、エステル交換等により調製されたものであってもよい。前記部分グリセリドを構成する脂肪酸残基は、炭素数4~24のものが例示され、特に炭素原子数8~10の中鎖脂肪酸残基が好ましく、用途に応じてそれらの飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等を選択することが可能である。例えば、流動性が必要とされる場合は不飽和脂肪酸であることが好ましく、可塑性が必要とされる場合は飽和脂肪酸であることが好ましい。また、イソステアリン酸等の分岐脂肪酸を用いることも可能である。
【0057】
本発明に係る剤は、甘草グラブラポリフェノールを含む甘草疎水性抽出物以外に、製剤化に用いられる他の成分を含むことができる。製剤化に用いられる他の成分としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、有効成分の溶解補助剤、安定化剤、油脂、粘度調整剤等が挙げられる。
【0058】
前記賦形剤としては特に制限されないが、例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0059】
前記崩壊剤としては特に制限されないが、例えば、でんぷん、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガント等を挙げることができる。
【0060】
前記滑沢剤としては特に制限されないが、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等を挙げることができる。
【0061】
前記結合剤としては特に制限されないが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトール等を挙げることができる。
【0062】
前記酸化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸等を挙げることができる。
前記着色剤としては特に制限されないが、例えば、医薬品、食品に添加することが許可されているもの等を挙げることができる。
前記凝集防止剤としては特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等を挙げることができる。
【0063】
前記吸収促進剤としては特に制限されないが、例えば、高級アルコール類、高級脂肪酸類、ショ糖脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
前記有効成分の溶解補助剤としては特に限定されないが、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸等が挙げられる。
前記安定化剤としては特に制限されないが、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、プロピレングルコール等が挙げられる。
【0064】
前記油脂成分としては特に限定されず、例えば、コーン油、ナタネ油、ハイエルシンナタネ油、大豆油、オリーブ油、紅花油、綿実油、ヒマワリ油、米糠油、シソ油、エゴマ油、アマニ油、月見草油、カカオ脂、落花生油、パーム油、パーム核油などの植物油、魚油、牛脂、豚脂、乳脂、卵黄油などの動物油、またはこれらを原料として分別、水添、エステル交換などを行った油脂、或いはこれらの混合油を使用することができる。
【0065】
前記粘度調整剤としては特に制限されないが、例えば、ミツロウ、モクロウ、ラノリン、微結晶性ワックス、流動パラフィン等が挙げられる。
【0066】
本発明に係る剤は、食品(通常の食品、特定保健用食品、機能性表示食品、ダイエタリーサプリメント等)、医薬品(ヒト用医薬品又は非ヒト動物用医薬品)、医薬部外品、化粧品、又は、飼料(家畜飼料又はペットフード)の形態であってもよく、好ましくは、食品又は医薬品の形態である。
【0067】
本発明に係る剤が、食品、医薬品、医薬部外品、飼料又は餌料の形態である場合、経口摂取用製剤の形態であってもよい。経口摂取用製剤としては、錠剤、カプセル剤(ハードカプセル、マイクロカプセル、ソフトカプセル)、顆粒剤、散剤、チュアブル製剤、シロップ、液剤などの、経口的に摂取出来る形態が挙げられる。カプセル剤とする場合のカプセル基材としては特に制限されず、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮等を由来とするゼラチンをはじめとして、他の基材、例えば、食品添加物として使用しうるカラギーナン、アルギン酸等の海藻由来品やローカストビーンガムやグアーガム等の植物種子由来品、プルラン、カードラン等の微生物由来品やセルロース類を含む製造用剤も使用しうる。
【0068】
また、本発明に係る剤は、一般的な食品の形態であってもよい。一般的な食品としては、例えば、乳飲料、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンク等の飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディー、ゼリー、ケーキ、ビスケット、クラッカー等の菓子類、アイスクリーム、氷菓等の冷菓類、うどん、中華麺、スパゲティー、即席麺等の麺類、蒲鉾、竹輪、半片等の練り製品、ドレッシング、マヨネーズ、ソース等の調味料、パン、ハム、雑炊、米飯、スープ、各種レトルト食品、各種冷凍食品等が挙げられるがこれらには限定されない。
【0069】
本発明に係る剤が特定保健用食品、機能性表示食品、ダイエタリーサプリメント等の、医薬品以外で健康維持のために摂取できる食品の形態である場合には、本発明に係る剤をパッケージに包み、当該パッケージに、トランスサイレチン四量体を安定化することや、トランスサイレチンアミロイドーシスを予防又は進行抑制することに関連する機能を表示してもよい。パッケージとしては、特に制限されないが、例えば、箱、容器、包装フィルム、包装紙等を挙げることができる。また、パッケージに表示する機能としては、これらに類する機能であれば、表現は異なっていても差し支えない。
【0070】
更に本発明に係る剤は、非経口剤の形態であってもよい。例えば皮膚に直接塗布する形態とすることもできる。この場合、剤型は、特に限定されるものではなく、例えば、適当な基剤中に前記各成分を溶解または混合分散させて、クリーム状、ペースト状、ゼリー状、ゲル状、乳液状、液状の形状になされたもの(軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤など)、基剤中に上記組成物を溶解または混合分散させたものを支持体上に展延したもの(パップ剤など)、粘着剤中に上記組成物を溶解または混合分散させたものを支持体上に展延したもの(プラスター剤、テープ剤など)が挙げられる。
【0071】
本発明に係る剤が医薬部外品の形態である場合の医薬部外品とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に定められた医薬部外品を指し、経口剤(エキス剤、エリキシル剤、シロップ剤、チンキ剤、リモナーデ剤等の液剤とカプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、錠剤等の固形剤)などが挙げられる。
【実施例
【0072】
実施例1
アフガン産甘草(G.glabra)の根茎部1.0Kgを用い、エタノール5.0Lによる抽出(45℃、2時間、2回)を行った後、減圧濃縮により濃縮液0.45Lを得た。次いで、この濃縮液0.3Lを活性炭処理した後、更に濃縮して、甘草疎水性抽出物含有エタノール溶液123.6g(甘草疎水性抽出物24.8g含有)を得た。さらに、この甘草疎水性抽出物含有エタノール溶液50.0gを減圧濃縮し、甘草疎水性抽出物10.0gを得た。
【0073】
実施例2
(サンプル調製)
実施例1の甘草疎水性抽出物含有エタノール溶液63.9gと中鎖脂肪酸トリグリセライド(アクターM2;理研ビタミン(株)、脂肪酸組成はC8:C10=99:1)18.8gを混合し、減圧濃縮によりエタノールを除去した。減圧濃縮により得られた28.7gを吸引濾過により不溶分を濾別した後、不溶分をヘキサンで洗浄し、得られた回収オイルは先の濾液に加えた。回収した濾液26.2gに中鎖脂肪酸トリグリセリド4.5gを添加して、甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液30.7g(うち、甘草疎水性抽出物8.9gを含有)を得た。
【0074】
(HPLC分析)
<HPLC分析サンプルの調整>
前記甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液1gをHPLC用メタノールに溶解し、全量を100mLに調整した。
【0075】
<ポリフェノール分析のHPLC条件>
カラム:YMC J’sphere ODS-H80、内径4.6mm×長さ250mm(株式会社ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相A:アセトニトリル:メタノール(1:1=v/v)
移動相B:20mMリン酸水溶液
グラジエント:移動相Aと移動相Bとの全量あたりの移動相Aの比率を、分析開始20分まで50%(v/v)で一定とし、20分以降75分後に80%(v/v)となるように一定比率で上昇させ、75分以降80分まで100%(v/v)で一定とし、80分以降100分まで50%(v/v)で一定とする条件
流速:1.0mL/min
波長:UV282nm
サンプル注入量:20μL
【0076】
<分析結果>
甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液を試料とした上記条件でのHPLC分析において、グラブリジンのピーク強度(ピーク面積)を100%とした場合、グラブレンのピーク強度は38.9%、グラブロールのピーク強度は45.9%、4’-O-メチルグラブリジンのピーク強度は18.7%であった。
甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液中の1gに含まれる各々の成分の含有量は、グラブレン(4.4mg)、グラブリジン(30.0mg)、グラブロール(6.0mg)、4’-O-メチルグラブリジン(5.2mg)であった。各成分の含有量は、既知濃度の各成分の市販の標準物質のHPLC分析結果から作製した検量線を用いて測定した。
【0077】
<ポリフェノール分析>
グラブリジン(市販の試薬)を標準物質に用いたフォリン-デニス法によるポリフェノール含量の測定を行った結果、甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液1g中のポリフェノールの総含有量は、239.1mgであった。
【0078】
<グリチルリチン酸分析のHPLC条件>
カラム:YMC J’sphere ODS-H80、内径4.6mm×長さ250mm(株式会社ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相A:アセトニトリル
移動相B:20mMリン酸水溶液
グラジエント:移動相Aと移動相Bとの全量あたりの移動相Aの比率を、分析開始10分まで36%で一定とし、10分以降50分後に45%となるように一定比率で上昇させ、50分以降55分まで100%で一定とし、55分以降75分まで36%で一定とする条件
流速:1mL/min
波長:UV254nm
サンプル注入量:20μL
【0079】
<グリチルリチン酸分析>
上記条件で実施例2の甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液のグリチルリチン酸含有量を測定したところ検出限界(0.001重量%)以下であった。
【0080】
実施例3
採取地域や時期の異なる甘草の根茎部を原料として使用した以外は、実施例1及び2と同様の方法により甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液1~8を取得した。取得した前記トリグリセリド溶液1~8中に含まれるグラブリジン、グラブレン、グラブロール及び4’-O-メチルグラブリジンのHPLCによるピーク強度は下記表の通りであった。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例4
(試験例1 トランスサイレチン四量体の安定化)
中高年齢者3名から血液を採取し血清を得た。実施例2で得た甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液及びグラブリジンを各血清に添加(各々グラブリジンとして、0、10、50μMとなるように添加)して25℃、30分間インキュベートした後に尿素で変性させた。このサンプルを用いて、電気泳動およびウエスタンブロット法により血液中のトランスサイレチン(四量体、単量体)を定量し、単量体と四量体の比(monomer/tetramer)で安定化効果を検討した。結果を図1に示す。
【0083】
図1のように、グラブリジンは添加濃度50μMまで単量体と四量体の割合に変化はなくトランスサイレチン安定化効果は認められなかった。一方、甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液は最大濃度で単量体と四量体の比が減少しており、具体的には単量体の割合を減少させ四量体を増加させる(トランスサイレチン安定化)効果が認められた。
【0084】
(試験例2 トランスサイレチン四量体の安定化)
中高年齢者7名に実施例2で得た甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液を12週間摂取(摂取量:300mg/day)させて経時的に採血し血漿を得た。各血漿を25℃、30分間インキュベートした後に尿素で変性させた。このサンプルを用いて、電気泳動及びウエスタンブロット法により血液中のトランスサイレチン(四量体、単量体)を定量し、単量体と四量体の比(monomer/tetramer)で安定化効果を検討した。結果を図2に示す。
【0085】
図2のように、甘草疎水性抽出物含有中鎖脂肪酸トリグリセリド溶液摂取の8週目には単量体と四量体との比が減少しており、具体的には単量体の割合を減少させ四量体を増加させる(トランスサイレチン安定化)効果が認められた。
【0086】
以上のことから、甘草疎水性抽出物は、トランスサイレチン四量体を安定化させ、生体内に含まれる単量体の割合を減少させ四量体を増加させることができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2