(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-12
(45)【発行日】2026-03-23
(54)【発明の名称】偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20260313BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20260313BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20260313BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20260313BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20260313BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20260313BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20260313BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20260313BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20260313BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20260313BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20260313BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K59/10
H10K50/10
G09F9/30 349E
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G09F9/00 313
G09F9/00 324
C09J7/30
C09J4/00
C09J129/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2022010787
(22)【出願日】2022-01-27
【審査請求日】2024-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 慎也
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-315537(JP,A)
【文献】特開2017-054093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 59/10
H05B 33/02
H10K 50/10
G09F 9/30
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G09F 9/00
C09J 7/30
C09J 4/00
C09J 129/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させた偏光素子と、透明保護フィルムと、位相差層と、をこの順に有する偏光板であって、
前記偏光素子と前記透明保護フィルムとは、尿素系化合物を含有する第1接着剤から形成される第1接着剤層によって貼合されており、
前記透明保護フィルムと前記位相差層とは、活性エネルギー線硬化型である第2接着剤から形成される第2接着剤層によって貼合されており、
前記尿素系化合物は、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記位相差層は、重合性液晶化合物の硬化層を含
み、
前記偏光素子と前記第1接着剤層とは直接接しており、
前記第1接着剤は水系接着剤であり、
前記第2接着剤はカチオン重合性化合物を含む偏光板。
【請求項2】
前記尿素系化合物は尿素誘導体及びチオ尿素誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の尿素系化合物である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記第1接着剤はポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記位相差層は2層の重合性液晶化合物の硬化層が直接接している、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記位相差層はポジティブCプレート及びポジティブAプレートを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記カチオン重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、請求項
1~5のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記偏光素子の両面に前記透明保護フィルムを有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記偏光板の含水率は、温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の偏光板を備える画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光素子と位相差層とを含む円偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画像表示装置に広く用いられる。画像表示装置の薄型化に伴い、円偏光板にも薄型化の要望が高まっている。特許文献1には、薄型で製造工程も効率化された位相差板として、液晶化合物を含む組成物の硬化物からなるポジティブAプレート及びポジティブCプレートを含む光学フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、重合性液晶化合物の硬化層を含む位相差層を活性エネルギー線硬化型接着剤により貼合した偏光板は、高温環境下において著しい透過率の低下が見られることがある。本発明は、高温環境下において透過率の低下が抑制された偏光板、及び当該偏光板を用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に例示する項目に関する。
[1] ポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させた偏光素子と、透明保護フィルムと、位相差層と、をこの順に有する偏光板であって、
前記偏光素子と前記透明保護フィルムとは、尿素系化合物を含有する第1接着剤から形成される第1接着剤層によって貼合されており、
前記透明保護フィルムと前記位相差層とは、活性エネルギー線硬化型である第2接着剤から形成される第2接着剤層によって貼合されており、
前記尿素系化合物は、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記位相差層は、重合性液晶化合物の硬化層を含む偏光板。
[2] 前記尿素系化合物は尿素誘導体及びチオ尿素誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の尿素系化合物である、[1]に記載の偏光板。
[3] 前記第1接着剤はポリビニルアルコール系樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の偏光板。
[4] 前記位相差層は2層の重合性液晶化合物の硬化層が直接接している、[1]~[3]のいずれかに記載の偏光板。
[5] 前記位相差層はポジティブCプレート及びポジティブAプレートを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の偏光板。
[6] 前記第2接着剤はカチオン重合性化合物を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の偏光板。
[7] 前記カチオン重合性化合物は、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の偏光板。
[8] 前記偏光素子の両面に前記透明保護フィルムを有する、[1]~[7]のいずれかに記載の偏光板。
[9] 前記偏光板の含水率は、温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の偏光板。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の偏光板を備える画像表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高温環境下において透過率の低下が抑制された偏光板を提供することが可能となる。さらに、本発明に係る偏光板を用いることで、高温環境下での透過率の低下が抑制された画像表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[偏光板]
本発明に係る偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂層に二色性色素を吸着配向させた偏光素子と、透明保護フィルムと、位相差層と、をこの順に有する。偏光素子と透明保護フィルムとは、尿素系化合物を含有する第1接着剤から形成される第1接着剤層によって貼合されている。透明保護フィルムと位相差層とは、活性エネルギー線硬化型接着剤である第2接着剤から形成される第2接着剤層によって貼合されている。本発明に係る偏光板は円偏光板又は楕円偏光板であってよい。
【0008】
本発明に係る偏光板は、高温耐久性(高温環境下における特性変化の抑制)を向上させることができる。本発明に係る偏光板は、例えば温度105℃の高温環境下に長時間さらされても単体透過率の低下を抑制することができ、例えば温度105℃の高温環境下に200時間晒された場合でも単体透過率の低下を5%以下とすることができる。
【0009】
偏光板は画像表示パネルの視認側表面に配置され、画像表示装置に用いられ得る。画像表示装置の視認側には前面板、タッチパネルなどの透明部材が設けられ得る。視認性の向上のために、偏光板と透明部材との間の空間を、固体層(空気層以外の層。以下、「層間充填剤」と称する場合がある。)によって充填する構成(以下、「層間充填構成」と称する場合がある。)を採用する動きが広まっている。層間充填剤は、好ましくは偏光板又は透明部材と屈折率が近い材料である。層間充填剤としては、界面での反射による視認性の低下を抑止すると共に、各部材間を接着固定する目的で、粘着剤やUV硬化型接着剤が用いられる。しかしながら、層間充填構成を採用する画像表示装置は、高温環境下において単体透過率が低下しやすいことが知られている。本発明に係る偏光板は、層間充填構成の画像表示装置に組み込まれた場合であっても透過率の低下を抑制することができる。
【0010】
透過率が著しく低下した偏光板は、ラマン分光測定で1100cm-1付近(=C-C=結合に由来)及び1500cm-1付近(-C=C-結合に由来)にピークを有していることから、ポリエン構造(-C=C)n-を形成していると考えられる。ポリエン構造は、偏光素子を構成するポリビニルアルコールが脱水によりポリエン化されて生じたものであると推定される。
【0011】
<偏光素子>
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも称す。)系樹脂を含む層(以下、「PVA系樹脂層」とも称す。)に二色性色素を吸着配向させた偏光素子としては、周知の偏光素子を用いることができる。偏光素子としては、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、一軸延伸することによって得られる延伸フィルムや、基材フィルム上にPVA系樹脂を含む塗布液を塗布して形成した塗布層を有する積層フィルムを用いて、塗布層を二色性色素で染色し、積層フィルムを一軸延伸することによって得られる延伸層が挙げられる。延伸は二色性色素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、延伸してから染色してもよい。
【0012】
PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上100モル%以下である。
【0013】
PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えばアルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等でもよい。
【0014】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100以上10000以下であり、より好ましくは1500以上8000以下であり、さらに好ましくは2000以上5000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が上記範囲内である場合、偏光性能及びフィルム加工性に優れる傾向にある。
【0015】
ホウ素吸着率が5.70質量%以上であるPVA系樹脂からPVA系樹脂層を形成することが好ましい。すなわち、染色や延伸を施す前の原料の段階におけるPVA系樹脂のホウ素吸着率が5.70質量%以上である。このようなPVA系樹脂を用いることで、例えば温度105℃の高温環境下に晒したときであっても透過率が低下しにくくなる。ホウ素吸着率が、より好ましくは5.72質量%以上であり、さらに好ましくは5.75質量%であり、最も好ましくは5.80質量%以上であるPVA系樹脂を用いて、偏光素子を作製する。また、PVA系樹脂のホウ素吸着率は10質量%以下であることが好ましい。このようなPVA系樹脂を用いて、偏光素子を作製することで、ホウ酸処理槽中のホウ酸濃度を高濃度とすることなく、またホウ酸処理による処理時間も短縮することもでき、所望の偏光素子が得られやすくなり、偏光素子の生産性も高めることができる。PVA系樹脂のホウ素吸着率が10質量%以下とすると、PVA系樹脂層へホウ素が適量取り込まれ、偏光素子の収縮力を小さくしやすい。その結果、画像表示装置に組み込んだ際に、前面板等の他の部材と偏光板との間で剥離が生じるなどの不具合が生じにくくなる。また、PVA系樹脂のホウ素吸着率が5.70質量%以上であると、例えば温度105℃の高温環境下に晒したときであっても透過率が低下しにくくなり、さらに前述したように生産性を向上させることができる。PVA系樹脂のホウ素吸着率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
偏光素子の厚みは、好ましくは3μm以上35μm以下、より好ましくは4μm以上30μm以下、さらに好ましくは5μm以上25μm以下である。偏光素子の厚みが35μm以下であるとき、高温環境下でPVA系樹脂のポリエン化が光学特性の低下に与える影響をより抑制することができる。偏光素子の厚みが3μm以上であるとき、所望の光学特性を達成する構成とすることが容易となる。偏光素子の厚みは、例えばPVA系樹脂フィルムの選定、延伸倍率の調節等により制御することができる。
【0017】
偏光素子は、好ましくは尿素系化合物を含む。一実施形態において、偏光素子と透明保護フィルムとが尿素系化合物を含有する第1接着剤から形成される第1接着剤層によって貼合されていることから、第1接着剤層から移行した尿素系化合物の一部が偏光素子に含まれていると推測される。偏光素子には、偏光素子の製造過程で尿素系化合物が添加されてもよい。尿素系化合物を含む接着剤層を備えることにより、偏光板を高温環境下に晒しても透過率が低下しにくくなる。また、尿素系化合物を含む接着剤層を備えることにより、偏光板を高温環境下に晒しても偏光度の低下を抑制することができる。二つの偏光板をクロスニコルの関係となるように配置して用いた場合に、偏光板の偏光度が低下すると、光抜け(以下、「クロス抜け」とも称する)が生じやすくなるが、本発明によると高温環境下に晒しても偏光度が低下しにくくなるため、クロス抜けも抑制しやすくなる。偏光素子に含まれる尿素系化合物によりPVA系樹脂のポリエン化が抑制されるためと推定される。
【0018】
偏光素子に尿素系化合物を含有させる方法としては、尿素系化合物を含有する処理溶媒にPVA系樹脂層を浸漬する方法が好ましいが、尿素系化合物を含有する処理溶媒をPVA系樹脂層に噴霧、流下もしくは滴下してもよい。偏光素子に尿素系化合物を含有させるために、偏光素子の製造時における添加と接着剤への添加との両方を行ってもよい。
【0019】
尿素系化合物を含む処理溶媒にPVA系樹脂層を浸漬させる工程は、後述の偏光素子の製造方法における膨潤、延伸、染色、架橋、洗浄等の工程と同時に行ってもよいし、これらの工程とは別に設けてもよい。PVA系樹脂層に尿素系化合物を含有させる工程は、PVA系樹脂層をヨウ素で染色した後に行なうことが好ましく、染色後の架橋工程と同時に行うことがより好ましい。このような方法によれば、色相変化が小さく、偏光素子の光学特性への影響を小さくすることができる。
【0020】
(尿素系化合物)
尿素系化合物は、尿素、尿素誘導体、チオ尿素及びチオ尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である。尿素系化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尿素系化合物には水溶性の化合物と難水溶性の化合物とがあるが、どちらも使用することができる。難水溶性尿素系化合物を水溶性接着剤に用いる場合は、接着剤層を形成後、ヘイズ上昇などが起きないように分散方法を工夫することが好ましい。
【0021】
(尿素誘導体)
尿素誘導体は、尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物である。この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子及び酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
【0022】
尿素誘導体の具体例として、1置換尿素として、メチル尿素、エチル尿素、プロピル尿素、ブチル尿素、イソブチル尿素、N-オクタデシル尿素、2-ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシ尿素、アセチル尿素、アリル尿素、2-プロピニル尿素、シクロヘキシル尿素、フェニル尿素、3-ヒドロキシフェニル尿素、(4-メトキシフェニル)尿素、ベンジル尿素、ベンゾイル尿素、o-トリル尿素、p-トリル尿素が挙げられる。
【0023】
2置換尿素として、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジエチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,3-tert-ブチル尿素、1,3-ジシクロヘキシル尿素、1,3-ジフェニル尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)尿素、1-アセチル-3-メチル尿素、2-イミダゾリジノン(エチレン尿素)、テトラヒドロ-2-ピリミジノン(プロピレン尿素)が挙げられる。
【0024】
4置換尿素として、テトラメチル尿素、1,1,3,3-テトラエチル尿素、1,1,3,3-テトラブチル尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノンが挙げられる。
【0025】
(チオ尿素誘導体)
チオ尿素誘導体は、チオ尿素分子の4つの水素原子の少なくとも1つが、置換基に置換された化合物である。この場合、置換基に特に制限はないが、炭素原子、水素原子及び酸素原子よりなる置換基であることが好ましい。
【0026】
チオ尿素誘導体の具体例として、1置換チオ尿素として、N-メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、プロピルチオ尿素、イソプロピルチオ尿素、1-ブチルチオ尿素、シクロヘキシルチオ尿素、N-アセチルチオ尿素、N-アリルチオ尿素、(2-メトキシエチル)チオ尿素、N-フェニルチオ尿素、(4-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(2-メトキシフェニル)チオ尿素、N-(1-ナフチル)チオ尿素、(2-ピリジル)チオ尿素、o-トリルチオ尿素、p-トリルチオ尿素が挙げられる。
【0027】
2置換チオ尿素として、1,1-ジメチルチオ尿素、1,3-ジメチルチオ尿素、1,1-ジエチルチオ尿素、1,3-ジエチルチオ尿素、1,3-ジブチルチオ尿素、1,3-ジイソプロピルチオ尿素、1,3-ジシクロヘキシルチオ尿素、N,N-ジフェニルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1-ベンジル-3-フェニルチオ尿素、1-メチル-3-フェニルチオ尿素、N-アリル-N’-(2-ヒドロキシエチル)チオ尿素、エチレンチオ尿素が挙げられる。
【0028】
3置換チオ尿素として、トリメチルチオ尿素が挙げられ、4置換チオ尿素として、テトラメチルチオ尿素、1,1,3,3-テトラエチルチオ尿素が挙げられる。
【0029】
高温環境下での透過率の低下が抑制されて、かつ偏光度の低下が少ない点(クロス抜けが抑制される点)で、尿素系化合物としては、尿素誘導体又はチオ尿素誘導体が好ましく、尿素誘導体がより好ましい。尿素誘導体の中でも、1置換尿素又は2置換尿素であることが好ましく、1置換尿素であることがより好ましい。2置換尿素には1,1-置換尿素と1,3-置換尿素があるが、1,3-置換尿素がより好ましい。
【0030】
(含水率)
偏光素子の含水率は、例えば温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下であってよい。偏光素子の含水率は、好ましくは温度20℃相対湿度55%の平衡含水率以下であり、温度20℃相対湿度45%の平衡含水率以上である。偏光素子の含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上であるとき、偏光素子のハンドリング性が上昇し、割れにくくなる。偏光素子の含水率が、温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下であるとき、偏光素子の透過率が低下しにくくなる。偏光素子の含水率が高いと、PVA系樹脂のポリエン化が進みやすくなるためと推定される。偏光素子の含水率は、偏光板中における偏光素子の含水率である。
【0031】
偏光素子の含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下の範囲内であるかを確認する方法として、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境で偏光素子を保管し、一定時間質量の変化がなかった場合には環境と平衡に達しているとみなす方法、又は上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境の偏光素子の平衡含水率を予め計算し、偏光素子の含水率と予め計算した平衡含水率とを対比することにより確認する方法を挙げることができる。
【0032】
含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下である偏光素子を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に偏光素子を10分以上3時間以下保管する方法、又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法が挙げられる。
【0033】
上記含水率である偏光素子を製造する別の好ましい方法としては、偏光素子の少なくとも片面に保護フィルムを積層した積層体を、又は偏光素子を用いて構成した偏光板を、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に、10分以上120時間以下保管する方法、又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法が挙げられる。層間充填構成を採用する画像表示装置の作製時において、偏光板を画像表示装置に組み込み、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に偏光板を組み込んだ画像表示装置を10分以上3時間以下保管又は30℃以上90℃以下で加熱した後に、前面板を貼合してもよい。
【0034】
偏光素子の含水率は、偏光素子単独又は偏光素子と保護フィルムとを含む積層体であって偏光板を構成するために用いられる材料段階で含水率が上記数値範囲となるように調整されていることが好ましい。偏光板を構成した後に含水率を調整した場合には、カールが大きくなりすぎ、画像表示セルへの貼合時に不具合が生じやすくなることがある。偏光板を構成する前の材料段階で上記含水率となるように調整されている偏光素子を用いて偏光板を構成することにより、含水率が上記数値範囲を満たす偏光素子を備える偏光板を容易に構成することができる。偏光板を画像表示セルに貼合した状態で、偏光板中における偏光素子の含水率が上記数値範囲となるように調整してもよい。この場合、偏光板は、画像表示セルに貼合されているのでカールが生じにくい。
【0035】
偏光板の含水率は、例えば温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下であってよい。偏光板の含水率は、好ましくは温度20℃相対湿度55%の平衡含水率以下であり、温度20℃相対湿度45%の平衡含水率以上である。偏光板の含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上であるとき、偏光板のハンドリング性が上昇し、割れにくくなる。偏光板の含水率が温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下であるとき、偏光板の透過率が低下しにくくなる。偏光板の含水率が高いと、PVA系樹脂のポリエン化が進みやすくなるためと推定される。
【0036】
偏光板の含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下の範囲内であるかを確認する方法として、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境で偏光板を保管し、一定時間質量の変化がなかった場合には環境と平衡に達しているとみなす方法、又は上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境の偏光板の平衡含水率を予め計算し、偏光板の含水率と予め計算した平衡含水率とを対比することにより確認する方法を挙げることができる。
【0037】
含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下である偏光板を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に偏光板を10分以上3時間以下保管する方法、又は30℃以上90℃以下で加熱処理する方法が挙げられる。
【0038】
層間充填構成を採用する画像表示装置の作製時において、偏光板を画像表示装置に組み込み、上記温度と上記相対湿度の範囲に調整された環境に偏光板を組み込んだ画像表示装置を10分以上3時間以下保管又は30℃以上90℃以下で加熱した後に、前面板を貼合してもよい。
【0039】
偏光素子はカリウムイオン、及びカリウムイオン以外の金属イオンを含有してもよい。偏光素子におけるカリウムイオン以外の金属イオンの含有率は、好ましくは0.05質量%以上10.0質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上8.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上6.0質量%以下である。偏光素子の金属イオン含有率が10.0質量%以下であるとき、高温高湿環境での偏光度が低下しにくい。また、金属イオンの含有率が0.05質量%以上であるとき、高温環境での耐久性が向上しやすい。なお、偏光素子における金属イオンの含有率は、たとえば高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法により、偏光素子の質量に対する金属元素の質量分率(質量%)として算出することができる。金属元素は、偏光素子中に、金属イオンまたはそれがポリビニルアルコール系樹脂の構成要素と架橋構造を形成した状態で存在すると考えられるが、ここでいう金属イオンの含有率は、金属原子としての値である。
【0040】
金属イオンは、カリウムイオン以外の金属イオンであれば限定されることなく、好ましくはアルカリ金属以外の金属のイオンであり、特に色調調整や耐久性付与の点からコバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガン、鉄などの遷移金属の金属イオンの少なくとも1種を含むことが好ましい。これら金属イオンのなかでも、色調調整や耐熱性付与などの点から亜鉛イオンが好ましい。
【0041】
偏光素子は、ホウ素の含有率が、好ましくは4.0質量%以上8.0質量%以下、より好ましくは4.2質量%以上7.0質量%以下、さらに好ましくは4.4質量%以上6.0質量%以下である。偏光素子のホウ素含有率が8.0質量%以下であるとき、偏光素子の収縮力を小さくでき、画像表示装置に組み込んだ際に貼り合わされる前面板等の他の部材との間で剥離などの不具合が生じにくくなる。また、所望する光学特性を達成しやすい観点から、ホウ素の含有率が2.4質量%以上が好ましい。なお、偏光素子におけるホウ素の含有率は、たとえばICP発光分光分析法により、偏光素子の質量に対するホウ素の質量分率(質量%)として算出することができる。ホウ素は、偏光素子中に、ホウ酸またはそれがポリビニルアルコール系樹脂の構成要素と架橋構造を形成した状態で存在すると考えられるが、ここでいうホウ素の含有率は、ホウ素原子(B)としての値である。
【0042】
偏光素子は、ホウ素の含有率が上記範囲にあることで、層間充填構成の画像表示装置の構成要素として高温環境下に晒した場合でも透過率の低下が一層抑制される。これは、ホウ素の含有率が上記範囲にあると、高温環境下でもポリエン化が生じにくくなり透過率の低下が抑制されることによるものと推測される。
【0043】
(偏光素子の製造方法)
偏光素子の製造方法は特に限定されないが、予めロール状に巻かれたPVA系樹脂フィルムを搬送して延伸、染色、架橋等を行って作製する方法(以下、「製造方法1」とする。)やPVA系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布して塗布層であるPVA系樹脂層を形成し、得られた積層体を延伸する工程を含む方法(以下、「製造方法2」とする。)が典型的である。
【0044】
製造方法1は、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、PVA系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色して二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0045】
膨潤工程は、PVA系樹脂フィルムを膨潤浴中に浸漬する処理工程である。膨潤工程により、PVA系樹脂フィルムの表面の汚れやブロッキング剤等を除去できるほか、PVA系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラを抑制できる。膨潤浴には、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。膨潤浴は、常法に従って界面活性剤、アルコール等が適宜に添加されていてもよい。偏光素子のカリウムの含有率を制御する観点から、膨潤浴にヨウ化カリウムを使用してもよく、この場合、膨潤浴中のヨウ化カリウムの濃度は、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
膨潤浴の温度は、10℃以上60℃以下であることが好ましく、15℃以上45℃以下であることがより好ましく、18℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。膨潤浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの膨潤の程度が膨潤浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5秒以上300秒以下であることが好ましく、10秒以上200秒以下であることがより好ましく、20秒以上100秒以下であることがさらに好ましい。膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0047】
染色工程は、PVA系樹脂フィルムを染色浴(ヨウ素溶液)に浸漬する処理工程であり、PVA系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素を吸着及び配向させることができる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であることが好ましく、ヨウ素及び溶解助剤としてヨウ化物を含有する。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムが好適である。
【0048】
染色浴中のヨウ素の濃度は、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。染色浴中のヨウ化物の濃度は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
染色浴の温度は、10℃以上50℃以下であることが好ましく、15℃以上45℃以下であることがより好ましく、18℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。染色浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの染色の程度が染色浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10秒以上300秒以下であることが好ましく、20秒以上240秒以下であることがより好ましい。染色工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0050】
架橋工程は、染色工程にて染色されたPVA系樹脂フィルムを、ホウ素化合物を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬する処理工程であり、ホウ素化合物によりポリビニルアルコール系樹脂フィルムが架橋して、ヨウ素分子又は染料分子が当該架橋構造に吸着できる。ホウ素化合物としては、例えばホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂等が挙げられる。架橋浴は、水溶液が一般的であるが、水との混和性のある有機溶媒及び水の混合溶液であってもよい。架橋浴は、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。
【0051】
架橋浴中、ホウ素化合物の濃度は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。架橋浴にヨウ化カリウムを使用する場合、架橋浴中のヨウ化カリウムの濃度は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
架橋浴の温度は、20℃以上70℃以下であることが好ましく、30℃以上60℃以下であることがより好ましい。架橋浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの架橋の程度が架橋浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5秒以上300秒以下であることが好ましく、10秒以上200秒以下であることがより好ましい。架橋工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0053】
延伸工程は、PVA系樹脂フィルムを、少なくとも一方向に所定の倍率に延伸する処理工程である。一般には、PVA系樹脂フィルムを、搬送方向(長手方向)に1軸延伸する。延伸の方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。延伸工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。延伸工程は、偏光素子の製造において、いずれの段階で行われてもよい。
【0054】
湿潤延伸法における処理浴(延伸浴)は、通常、水又は水との混和性のある有機溶媒及び水の混合溶液等の溶媒を用いることができる。延伸浴は、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、ヨウ化カリウムを含むことが好ましい。延伸浴にヨウ化カリウムを使用する場合、延伸浴中のヨウ化カリウムの濃度は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。処理浴(延伸浴)は、延伸中のフィルム破断を抑制する観点から、ホウ素化合物を含むことができる。ホウ素化合物を含む場合、延伸浴中のホウ素化合物の濃度は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
延伸浴の温度は、25℃以上80℃以下であることが好ましく、40℃以上75℃以下であることがより好ましく、50℃以上70℃以下であることがさらに好ましい。延伸浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの延伸の程度が延伸浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10秒以上800秒以下であることが好ましく、30秒以上500秒以下であることがより好ましい。湿潤延伸法における延伸処理は、膨潤工程、染色工程、架橋工程及び洗浄工程のいずれか1つ以上の処理工程とともに施してもよい。
【0056】
乾式延伸法としては、例えば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等が挙げられる。なお、乾式延伸法は、乾燥工程とともに施してもよい。
【0057】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに施される総延伸倍率(累積の延伸倍率)は、目的に応じ適宜設定できるが、2倍以上7倍以下であることが好ましく、3倍以上6.8倍以下であることがより好ましく、3.5倍以上6.5倍以下であることがさらに好ましい。
【0058】
洗浄工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、洗浄浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面等に残存する異物を除去できる。洗浄浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。また、偏光素子中のカリウムの含有率を制御する観点から、洗浄浴にヨウ化カリウムを使用することが好ましく、この場合、洗浄浴中、ヨウ化カリウムの濃度は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1.8質量%以上3.8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
洗浄浴の温度は、5℃以上50℃以下であることが好ましく、10℃以上40℃以下であることがより好ましく、15℃以上30℃以下であることがさらに好ましい。洗浄浴への浸漬時間は、PVA系樹脂フィルムの洗浄の程度が洗浄浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、1秒以上100秒以下であることが好ましく、2秒以上50秒以下であることがより好ましく、3秒以上20秒以下であることがさらに好ましい。洗浄工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0060】
乾燥工程は、洗浄工程にて洗浄されたPVA系樹脂フィルムを、乾燥して偏光素子を得る工程である。乾燥は任意の適切な方法で行われ、例えば自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥が挙げられる。
【0061】
製造方法2は、PVA系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのPVA系樹脂層を二色性色素で染色することにより吸着させて偏光素子とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光素子を形成するために用いる基材フィルムは、偏光素子の保護層として用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光素子から剥離除去してもよい。
【0062】
<透明保護フィルム>
本実施形態において用いられる透明保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」とも称す。)は、偏光素子の少なくとも片面に接着剤層を介して貼り合わされる。この透明保護フィルムは偏光素子の片面に貼り合わされてよいが、両面に貼り合わされていることが好ましい。
【0063】
保護フィルムは、同時に他の光学的機能を有していてもよく、複数の層が積層された積層構造に形成されていてもよい。保護フィルムの膜厚は光学特性の観点から薄いものが好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣る。適切な膜厚としては、5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上80μm以下であり、より好ましくは15μm以上70μm以下である。
【0064】
保護フィルムは、セルロースアシレート系フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、ノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、(メタ)アクリル系重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂系フィルム等のフィルムを用いることができる。PVA接着剤等の水系接着剤を用いて偏光素子の両面に保護フィルム貼合する場合、透湿度の点で少なくとも片側の保護フィルムはセルロースアシレート系フィルム又は(メタ)アクリル系重合体フィルムのいずれかであることが好ましく、中でもセルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0065】
少なくとも一方の保護フィルムは、視野角補償等の目的で位相差機能を備えていてもよい。その場合、保護フィルム自身が位相差機能を有していてもよく、位相差層を別に有していてもよく、両者の組み合わせであってもよい。位相差機能を備えるフィルムは、接着剤を介して直接偏光素子に貼合されてもよいが、偏光素子に貼合された別の保護フィルムを介して粘着剤又は接着剤を介して貼合された構成であってもよい。
【0066】
<第1接着剤層>
偏光素子に保護フィルムを貼合するための第1接着剤層を構成する第1接着剤として、尿素系化合物を含有する接着剤を用いる。接着剤は、水系接着剤、溶剤系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等を用いることができるが、水系接着剤であることが好ましく、PVA系樹脂を含むことが好ましい。尿素系化合物を含有する接着剤を用いることにより、偏光板の高温環境下での透過率の低下を抑制することができる。
【0067】
接着剤の塗布時の厚みは、任意の値に設定され得、例えば硬化後又は加熱(乾燥)後に、所望の厚みを有する接着剤層が得られるように設定できる。接着剤から構成される接着剤層の厚みは、好ましくは0.01μm以上7μm以下であり、より好ましくは0.01μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上2μm以下であり、最も好ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0068】
下記の接着剤についての説明は、偏光素子の製造時に偏光素子に尿素系化合物を含有させない場合についての好ましい範囲の記載とする。偏光素子に尿素系化合物を含有させた場合には、下記の値を適宜調整すればよい。尿素系化合物の具体的な例については、上述の偏光素子に含有される尿素系化合物の例をそのまま適用することができる。偏光素子と保護フィルムとの接着時における乾燥工程を経て接着剤層を形成する過程で、尿素系化合物の一部が接着剤層から偏光素子等に移動していても構わない。
【0069】
接着剤がPVA系樹脂を含有する水系接着剤の場合、尿素系化合物の含有量は、PVA系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上400質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上200質量部以下であり、さらに好ましくは3質量部以上100質量部以下である。0.1質量部未満では、高温環境下での偏光素子のポリエン化の抑制効果が充分でない場合がある。一方、400質量部を超える場合には、偏光板作製後に尿素が析出して、ヘイズが上昇する場合がある。
【0070】
接着剤は、ジカルボン酸をさらに含んでよい。ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、グルタミン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、オキサロ酢酸、メチルフマル酸、2,6-ピリジンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸又は酒石酸を用いることが好ましい。これらジカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
接着剤がPVA系樹脂を含有する水系接着剤の場合、ジカルボン酸の含有量は、PVA系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上5質量部以下であり、1質量部以下であってもよい。0.01質量部以上とすることで、高温環境下での偏光素子のポリエン化の抑制効果を一層高めることができる。一方、50質量部以下とすることで、偏光板作製後にジカルボン酸が析出するのを防止しやすい。
【0072】
偏光素子の両面に接着剤層を介して透明保護フィルムが貼り合わされている構成において、第1接着剤層とは反対側に透明保護フィルムを貼合するための接着剤層は、尿素系化合物を含まない接着剤から形成されてもよいが、好ましくは尿素系化合物を含む接着剤から形成される。第1接着剤層とは反対側に透明保護フィルムを貼合するための接着剤層は、第1接着剤と同じ組成の接着剤から形成されてもよく、第1接着剤とは異なる組成の接着剤から形成されてもよい。偏光素子に尿素系化合物を含有させる処理をしていない場合、偏光素子両面の接着剤層のうち、片面の接着剤層のみが尿素系化合物を含有する層であってもよいが、両面の接着剤層が共に尿素系化合物を含有する層であることが好ましい。
【0073】
偏光板の薄型化の要請に応えるために、偏光素子の片面にのみ透明保護フィルムを有する偏光板が開発されている。このような偏光素子の片面にのみ透明保護フィルムを有する偏光板の作製方法として、最初に両面に接着剤層を介して透明保護フィルムを貼合した偏光板を作製した後に、一方の透明保護フィルムを剥離してもよい。
【0074】
(水系接着剤)
水系接着剤としては、任意の適切な水系接着剤が採用され得るが、好ましくはPVA系樹脂を含む水系接着剤(PVA系接着剤)が用いられる。水系接着剤に含まれるPVA系樹脂の平均重合度は、接着性の点から好ましくは100以上5500以下、さらに好ましくは1000以上4500以下である。平均鹸化度は、接着性の点から、好ましくは85モル%以上100モル%以下であり、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下である。
【0075】
水系接着剤に含まれるPVA系樹脂としては、アセトアセチル基を含有するものが好ましく、その理由は、PVA系樹脂層と保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れているからである。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えばPVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、好ましくは0.1モル%以上20モル%以下である。水系接着剤の樹脂濃度は、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0076】
水系接着剤には架橋剤を含有させることもできる。架橋剤としては公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤としては、例えば水溶性エポキシ化合物、ジアルデヒド、イソシアネート等が挙げられる。
【0077】
PVA系樹脂がアセトアセチル基含有PVA系樹脂である場合は、架橋剤としてグリオキサール、グリオキシル酸塩、メチロールメラミンのうちのいずれかであることが好ましく、グリオキサール、グリオキシル酸塩のいずれかであることがより好ましく、グリオキサールであることが特に好ましい。
【0078】
接着剤がPVA系樹脂を含有する水系接着剤の場合、架橋剤の含有量は、PVA系樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上45質量部以下である。1質量部以上とすることで、耐水性を向上させることができる。一方、60質量部以下とすることで、接着剤の調液安定性を保ちやすい。
【0079】
水系接着剤は有機溶剤を含有することもできる。有機溶剤は、水と混和性を有する点でアルコール類が好ましく、アルコール類の中でもメタノール又はエタノールであることがより好ましい。水系接着剤のメタノールの濃度は、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下である。メタノールの濃度が10質量%以上であることにより、高温環境下でのPVA系樹脂のポリエン化をより抑制しやすくなる。また、メタノールの含有率が70質量%以下であることにより、色相の悪化を抑制することができる。尿素誘導体の一部は水に対する溶解度が低い反面、アルコールに対する溶解度は十分なものがある。その場合は、尿素系化合物をアルコールに溶解し、尿素系化合物のアルコール溶液を調製した後、尿素系化合物のアルコール溶液をPVA水溶液に添加し、接着剤を調製することも好ましい態様の一つである。
【0080】
<位相差層>
位相差層は、1層であってもよく2層以上であってもよい。位相差層は、位相差層を支持する基材フィルム、複数の位相差層を貼合する粘着剤層等を有していてもよい。位相差層は、さらに配向膜を含んでもよい。位相差層は、好ましくは4分の1波長板、2分の1波長板、ポジティブCプレート、ポジティブAプレートからなる群より選択される少なくとも1つを含む。位相差層が2分の1波長板を含む場合、偏光素子側から順に2分の1波長板層及び4分の1波長板層を積層してよい。位相差層がポジティブCプレートを含む場合、偏光素子側から順に4分の1波長板もしくはポジティブAプレート及びポジティブCプレートを積層してもよく、偏光素子側から順にポジティブCプレート及び4分の1波長板もしくはポジティブAプレートを積層してもよい。IPSモードなどの液晶表示装置の斜め方向のコントラスト向上の観点からは、位相差層はポジティブAプレート及びポジティブCプレートを含むことが好ましい。
【0081】
位相差層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
【0082】
位相差層は、重合性液晶化合物の硬化層を含む。位相差層は、重合性液晶化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向膜を形成してもよい。位相差層は、配向膜及び基材フィルムを有する形態で偏光板に組み込まれてもよい。位相差層のうち、偏光子と対向する表面が、重合性液晶化合物の硬化物を含む層であることが好ましい。位相差層の偏光素子と対向する表面は、位相差を発現する層の表面であってもよく、配向膜であってもよい。
【0083】
位相差層は、2層以上の重合性液晶化合物の硬化層を含んでよく、好ましくは2層の重合性液晶化合物の硬化層が直接接している。位相差層は、好ましくはポジティブAプレートとポジティブCプレートとが直接接している。2層の重合性液晶化合物の硬化層が配向膜を介して接している態様も、2層の重合性液晶化合物の硬化層が直接接している態様に含まれる。
【0084】
基材フィルムとしては、例えばシクロポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂を含む酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂を含むポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム等、当分野において公知の熱可塑性樹脂フィルムを挙げることができる。基材フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常100μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、なおさらに好ましくは30μm以下であり、また、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。
【0085】
熱可塑性樹脂フィルム上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させた熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。
【0086】
位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物を含む層以外に、樹脂フィルムから形成した層を含んでもよい。樹脂フィルムとしては、上述の熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。
【0087】
位相差を発現する液晶層は、公知の液晶化合物を用いて形成することができる。重合性液晶化合物を含む組成物に含まれる液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物を含む組成物は、高分子液晶化合物を含んでもよい。液晶化合物としては、例えば特表平11-513019号公報、特開2005-289980号公報、特開2007-108732号公報、特開2010-244038号公報、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報、特開2011-207765号公報、特開2016-81035号公報、国際公開第2017/043438号及び特表2011-207765号公報に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0088】
重合性液晶化合物を含む組成物は、液晶化合物以外に、重合開始剤、重合性モノマー、界面活性剤、溶剤、密着改良剤、可塑剤、配向剤等が含まれていてもよい。重合性液晶化合物を含む組成物の塗布方法としては、ダイコーティング法等の公知の方法が挙げられる。重合性液晶化合物を含む組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射する等の公知の方法が挙げられる。
【0089】
偏光素子の吸収軸と位相差層の遅相軸とが所定の角度となるように偏光素子と位相差層とが配置された偏光板は、反射防止機能を有し、円偏光板として機能し得る。位相差層が4分の1波長板を含む場合、偏光素子の吸収軸と4分の1波長板層の遅相軸とのなす角度は、45°±10°であることができる。位相差層は正波長分散性を有していてもよく、逆波長分散性を有していてもよい。4分の1波長板は、好ましくは逆波長分散性を有する。
【0090】
配向膜は、これらの配向膜上に形成される位相差を発現する液晶層に含まれる重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有する。配向膜としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー膜、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー膜、膜表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向膜を挙げることができる。配向膜の厚みは、通常0.01μm以上10μm以下であり、0.01μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0091】
配向性ポリマー膜は、配向性ポリマーを溶剤に溶解した組成物を基材フィルムに塗布して溶剤を除去し、必要に応じてラビング処理をして形成することができる。配向規制力は、配向性ポリマーの表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能である。
【0092】
光配向性ポリマー膜は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物を基材フィルムに塗布し、偏光を照射することによって形成することができる。この場合、配向規制力は、光配向性ポリマーに対する偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0093】
グルブ配向膜は、例えば感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光、現像等を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の膜を形成し、この膜を基材フィルムに転写して硬化する方法、基材フィルムに活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層に、凹凸を有するロール状の原盤を押し当てる等により凹凸を形成して硬化させる方法等によって形成することができる。
【0094】
<第2接着剤層>
透明保護フィルムと位相差層とを貼合するための第2接着剤層は活性エネルギー線硬化型である第2接着剤から形成される。活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤である。
【0095】
活性エネルギー線は、紫外線、可視光、電子線、X線等であってよい。活性エネルギー線の照射条件は、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。紫外線硬化型において、活性エネルギー線硬化型接着剤への光照射強度は、例えば10~1000mJ/cm2であってよい。照射強度は、好ましくは波長400nm以下の波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量を、好ましくは10mJ/cm2以上、さらに好ましくは100~1000mJ/cm2となるように設定する。
【0096】
接着剤の重合硬化を行うために用いる光源は特に限定されないが、例えば低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。エネルギーの安定性や装置の簡便さという観点から、波長400nm以下に発光分布を有する紫外光源であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性組成物を用いる場合においても、活性エネルギー線の照射と同時に、又は活性エネルギー線の照射後に加熱処理を行ってもよい。
【0097】
接着剤の塗工層を形成する前に、貼合面の一方又は両方に対して、ケン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。
【0098】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、カチオン重合性化合物及びカチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物の両者を含有し、さらにカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型接着剤、開始剤を含まず、電子ビームを照射することで硬化させる電子線硬化型接着剤が挙げられる。偏光板のクロス抜けが抑制される観点からは、第2接着剤はカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。
【0099】
カチオン重合性化合物としては、分子内に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物、ビニル化合物のようなカチオン重合性基を有する化合物を含む。第2接着剤は、カチオン重合性化合物を1種又は2種以上含むことができる。
【0100】
第2接着剤に含まれるカチオン重合性化合物の含有量は、カチオン重合性組成物の総質量100質量部に対して、好ましくは80質量部以上100質量部以下、より好ましくは90質量部以上99.5質量部以下、さらに好ましくは95質量部以上99質量部以下である。
【0101】
エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を挙げることができる。耐候性、硬化速度及び接着性の観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、脂環式エポキシ化合物を含むことがより好ましい。
【0102】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物であり、好ましくは脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に2個以上有する。「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下記式(I)で示される構造における橋かけの酸素原子-O-を意味する。下記式(I)中、mは2~5の整数である。
【化1】
【0103】
上記式(I)における(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。(CH2)m中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
【0104】
硬化物のガラス転移温度が高くなる観点から、エポキシシクロペンタン構造〔上記式(I)においてm=3のもの〕や、エポキシシクロヘキサン構造〔上記式(I)においてm=4のもの〕を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0105】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば以下のA~Mの化合物が挙げられる。なお、後の段落に示す化学式A~Mは、それぞれ化合物A~Mに対応するものである。
A:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、
E:ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15-ジエポキシ-7,11,18,21-テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-8,9-エポキシ-1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイド。
【0106】
【0107】
【0108】
入手が容易であることから、脂環式エポキシ化合物は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。また、高温耐久性の観点から、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が好ましい。脂環式エポキシ化合物は、1種の脂環式エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
脂環式エポキシ化合物の含有量は、第2接着剤に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上80質量部以下、より好ましくは3質量部以上70質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上60質量部以下である。脂環式エポキシ化合物の含有量がこの範囲にあるとき、紫外線等の活性エネルギー線の照射による硬化が速やかに進行し、耐熱及び耐湿熱性に優れる硬化層を形成することができる。
【0110】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族炭素原子に結合するエポキシ環を分子内に少なくとも1個有する化合物であり、好ましくはエポキシ環を分子内に2個以上有する。脂肪族エポキシ化合物は、例えば脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有し、好ましくは2個以上有する。脂肪族エポキシ化合物としては、例えばブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等の単官能のエポキシ化合物;1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のエポキシ化合物;4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド等の、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環とを有するエポキシ化合物等がある。
【0111】
粘度が低く、塗布し易い第2接着剤を得ることができる観点からは、下記式(II)で表される、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する2官能のエポキシ化合物(「脂肪族ジエポキシ化合物」ともいう。)が好ましい。
【化4】
上記式(II)中のYは、炭素数2~9のアルキレン基、エーテル結合が介在している総炭素数4~9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6~18の2価の炭化水素基である。
【0112】
式(II)で示される化合物の具体例としては、アルカンジオールのジグリシジルエーテル;繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;脂環式ジオールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0113】
式(II)で示される脂肪族ジエポキシ化合物を形成し得るジオール(グリコール)としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等のアルカンジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のオリゴアルキレングリコール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等が挙げられる。
【0114】
粘度が低く、塗布しやすい第2接着剤を得る観点から、脂肪族エポキシ化合物としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含むことが好ましい。光学性能を維持できる点では、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルが好ましい。脂肪族エポキシ化合物としては、1種の脂肪族エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
脂肪族エポキシ化合物の含有量は、第2接着剤に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、例えば1質量部以上90質量部以下であってよく、好ましくは1質量部以上40質量部以下、より好ましくは3質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上20質量部以下、特に好ましくは7質量部以上15質量部以下である。脂肪族エポキシ化合物の含有量がこの範囲にあるとき、粘度が低く、塗布しやすい第2接着剤とすることができる。
【0116】
芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物である。その具体例は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物又はそのオリゴマー;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型のエポキシ樹脂;2,2’,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル等の多官能型のエポキシ化合物;エポキシ化ポリビニルフェノール等の多官能型のエポキシ樹脂を含む。
【0117】
第2接着剤の低粘度化の観点から、芳香族エポキシ化合物は、フェノール類のグリシジルエーテル、アルコール性水酸基を2つ以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物、多価フェノール類のグリシジルエーテル化物、安息香酸類のグリシジルエステル、多塩基酸類のグリシジルエステル、スチレンオキシド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物の群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。第2接着剤の硬化性を向上させることから、芳香族エポキシ化合物としては、エポキシ当量が80~500であるものが好ましい。芳香族エポキシ化合物として、1種の芳香族エポキシ化合物を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
芳香族エポキシ化合物の含有量は、第2接着剤に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上70質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上60質量部以下であり、さらに好ましくは7質量部以上55質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上50質量部以下である。芳香族エポキシ化合物の含有量がこの範囲にあるとき、硬化層の疎水性を向上でき、高温高湿条件での偏光子外への二色性色素の拡散をより効果的に抑制することができる。
【0119】
水素化エポキシ化合物は、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルであり、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールの具体例は、例えばビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物を含む。芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールにエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。水素化エポキシ化合物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0120】
オキセタン化合物は、分子内に1つ以上のオキセタニル基(オキセタン環)を有する化合物であり、脂肪族化合物、脂環式化合物又は芳香族化合物のいずれであってもよい。オキセタニル基を1つ有するオキセタン化合物としては、例えば3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-(シクロヘキシルオキシ)メチル-3-エチルオキセタン等が挙げられる。また、2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物としては、例えば1,4-ビス〔{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(「キシリレンビスオキセタン」ともいわれる。)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。これらのオキセタン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。オキセタン化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物と併用してもよい。
【0121】
オキセタン化合物は、分子内に2つ以上のオキセタニル基を有するオキセタン化合物を含むことが好ましい。このようなオキセタン化合物を含むことにより、架橋密度が高く緻密な硬化物を得ることができ、光学性能の変化を生じ難い偏光板を得ることができる。
【0122】
ビニル化合物としては、脂肪族又は脂環式のビニルエーテル化合物が挙げられる。ビニル化合物は、n-アミルビニルエーテル、i-アミルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、オレイルビニルエーテル等の炭素数5~20のアルキル又はアルケニルアルコールのビニルエーテル;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル、2-メチルシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等の脂肪族環又は芳香族環を有するモノアルコールのビニルエーテル;グリセロールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールジビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンモノビニルエーテル、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル等の多価アルコールのモノ~ポリビニルエーテル;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ~ジビニルエーテル;グリシジルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテルメタクリレート等のその他のビニルエーテルを含む。ビニル化合物は、カチオン重合性化合物の主成分として用いてもよいし、エポキシ化合物、又はエポキシ化合物及びオキセタン化合物と併用してもよい。ビニル化合物を併用することで、硬化速度や接着剤の低粘度化を向上できることがある。
【0123】
第2接着剤は、上記以外の他の硬化性化合物をさらに含むことができる。他の硬化性化合物は、その具体例は、ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物のような上記以外の他のカチオン重合性化合物である。
【0124】
第2接着剤は、重合を開始させるための重合開始剤を含有することが好ましい。第2接着剤がオキセタン化合物、エポキシ化合物等を重合性化合物として含む場合、重合開始剤に光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。
【0125】
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、重合性化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物として、例えば芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体等を挙げることができる。
【0126】
芳香族ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはジフェニルヨードニウムカチオンを挙げることができる。芳香族スルホニウム塩は、トリアリールスルホニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはトリフェニルスルホニウムカチオン、4,4’-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィドカチオン等を挙げることができる。芳香族ジアゾニウム塩は、ジアゾニウムカチオンを有する化合物であり、当該カチオンとして、典型的にはベンゼンジアゾニウムカチオンを挙げることができる。鉄-アレーン錯体は、典型的にはシクロペンタジエニル鉄(II)アレーンカチオン錯塩である。
【0127】
上記カチオンは、アニオン(陰イオン)と対になって光カチオン重合開始剤を構成する。光カチオン重合開始剤を構成するアニオンとしては、特殊リン系アニオン[(Rf)nPF6-n]-、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6-、ヘキサフルオロアンチモネートアニオンSbF6-、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネートアニオンSbF5(OH)-、ヘキサフルオロアーセネートアニオンAsF6-、テトラフルオロボレートアニオンBF4-、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンB(C6F5)4-等が挙げられる。中でも、重合性化合物の硬化性及び得られる硬化層の安全性の観点から、光カチオン重合開始剤が特殊リン系アニオン[(Rf)nPF6-n]-、ヘキサフルオロホスフェートアニオンPF6-であることが好ましい。
【0128】
光カチオン重合開始剤は、1種を単独で用いても、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物をもたらすことができるため好ましい。
【0129】
カチオン重合性組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、通常、0.5質量部以上10質量部以下であり、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。重合開始剤の含有量がこの範囲内であるとき、重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる硬化物から構成される硬化物層に高い機械的強度及び接着強度を与えることができる。
【0130】
カチオン重合性組成物は、必要に応じて硬化性組成物に一般的に用いられる添加剤を含むことができる。そのような添加剤としては、例えばイオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、重合促進剤(ポリオール等)、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、色素、帯電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0131】
ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。このような化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物の他、スチレン、スチレンスルホン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニル-2-ピロリドンのようなビニル化合物等が挙げられる。ラジカル重合性化合物は、好ましくは(メタ)アクリル系化合物である。第2接着剤は、ラジカル重合性化合物を1種又は2種以上含むことができる。
【0132】
(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。(メタ)アクリルオリゴマーは好ましくは、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーである。(メタ)アクリル系化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0133】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0134】
単官能(メタ)アクリレートモノマーの例として、アルキル(メタ)アクリレートがある。アルキル(メタ)アクリレートにおいて、そのアルキル基は炭素数3以上であれば直鎖でも分岐していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアラルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートのようなテルペンアルコールの(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなテトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートのようなアルキル基部位にシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノアルキル(メタ)アクリレート;2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのようなアルキル部位にエーテル結合を有する(メタ)アクリレートも単官能(メタ)アクリレートモノマーとして用いることができる。
【0135】
アルキル部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートや、アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。アルキル部位に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートを含む。アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能(メタ)アクリレートの具体例は、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸、4-[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット酸、N-(メタ)アクリロイルオキシ-N’,N’-ジカルボキシメチル-p-フェニレンジアミンを含む。
【0136】
(メタ)アクリルアミドモノマーは、好ましくはN-位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドであり、そのN-位の置換基の典型的な例はアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよい。この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。
【0137】
N-置換(メタ)アクリルアミドの具体例は、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミドのようなN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドのようなN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含む。また、N-置換基は水酸基を有するアルキル基であってもよく、その例として、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等がある。さらに、上記した5員環又は6員環を形成するN-置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例としては、N-アクリロイルピロリジン、3-アクリロイル-2-オキサゾリジノン、4-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン等がある。
【0138】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0139】
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等である。
【0140】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものであり、その他に、3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0141】
一方、(メタ)アクリルオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリルオリゴマー等がある。
【0142】
ウレタン(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(-NHCOO-)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオールをポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応生成物等であり得る。
【0143】
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、例えば水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーであることができ、その具体例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを含む。水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー以外の具体例は、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーを含む。
【0144】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ-又はトリ-イソシアネート、及び、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。
【0145】
ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオールとしては、芳香族、脂肪族又は脂環式のポリオールの他、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0146】
ポリエステルポリオールは、上記したポリオールと多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸等がある。
【0147】
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールの他、上記したポリオール又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオール等であり得る。
【0148】
ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基(典型的には(メタ)アクリロイルオキシ基)とを有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等がある。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0149】
エポキシ(メタ)アクリルオリゴマーは、例えば、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0150】
第2接着剤は、重合性化合物がラジカル重合性化合物のみから構成されていてもよいが、カチオン重合性化合物をさらに含むこともできる。
【0151】
第2接着剤がラジカル重合性化合物を含むとき、ラジカル重合開始剤をさらに含有することが好ましい。ラジカル重合開始剤は、好ましくは光ラジカル重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0152】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンが挙げられる。
【0153】
光ラジカル重合開始剤の配合量は、ラジカル重合性化合物100重量部に対して通常、0.5~20重量部であり、好ましくは1~6重量部である。光ラジカル重合開始剤を0.5重量部以上配合することにより、ラジカル重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械的強度と接着強度を与えることができる。一方で、その量が過度に多くなると、偏光板の耐久性が低下する可能性がある。
【0154】
<尿素系化合物含有層>
尿素系化合物は、上記のように接着剤層に含有される場合に限定されることはなく、偏光板の高温耐久性向上の観点から、接着剤層以外の他の層に含有されていてもよい。片面にのみ透明保護フィルムを有する偏光板において、物理強度の向上の観点から、偏光素子の透明保護フィルムとは反対の面に硬化層を積層してもよい。
【0155】
本実施形態では、このような硬化層に尿素系化合物を含有させ、尿素系化合物含有層とすることもできる。通常このような硬化層は有機溶剤を含む硬化性組成物から形成されるが、特開2017-075986号公報の段落[0020]~[0042]には活性エネルギー線硬化性高分子組成物の水性溶液から、このような硬化層を形成する方法が記載されている。水溶性の尿素系化合物をこのような組成物に含有させてもよい。
【0156】
尿素系化合物含有層は、尿素系化合物を少なくとも1種とバインダーとを有することが好ましい。バインダーとしてはポリマーバインダー、熱硬化型樹脂バインダー、活性エネルギー線硬化型樹脂バインダー等が挙げられるが、いずれのバインダーも好ましく用いることができる。
【0157】
尿素系化合物含有層の厚みは、好ましくは0.1μm以上20μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上15μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0158】
[偏光板の製造方法]
本実施形態の偏光板の製造方法は、含水率調整工程と積層工程とを有することができる。含水率調整工程では、偏光素子又は偏光板の含水率が温度20℃相対湿度40%の平衡含水率以上、かつ温度20℃相対湿度60%の平衡含水率以下となるように調整する。偏光素子又は偏光板の含水率は、上述の含水率の記載に従って調整することができる。積層工程では、偏光素子と透明保護フィルムとを第1接着剤層を介して積層する。積層工程では、また、透明保護フィルムと位相差層とを第2接着剤層を介して積層する。これらの積層の順番は限定されない。積層工程では、例えば位相差層と透明保護フィルムとを第2接着剤層を介して貼合し、得られた積層体の透明保護フィルム側と偏光素子とを第1接着剤層を介して貼合する。含水率調整工程及び積層工程の順番は限定されることはなく、含水率調整工程と積層工程とが並行して行われてもよい。
【0159】
[画像表示装置の構成]
本発明に係る偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種画像表示装置に用いられる。画像表示装置について、偏光板の両面が空気層以外の層、具体的には粘着剤層等の固体層が接するように構成されている層間充填構成である場合には、高温環境下で透過率が低下しやすい。本実施形態の偏光板を用いた画像表示装置においては、層間充填構成であっても、高温環境下での偏光板の透過率の低下を抑制することができる。画像表示装置としては、画像表示セルと、画像表示セルの視認側表面に積層された第1粘着剤層と、第1粘着剤層の視認側表面に積層された偏光板とを有する構成が例示される。かかる画像表示装置は、偏光板の視認側表面に積層された第2粘着剤層と、第2粘着剤層の視認側表面に積層された透明部材とをさらに有してもよい。本発明に係る偏光板は、画像表示装置の視認側に透明部材が配置され、偏光板と画像表示セルとが第1粘着剤層により貼り合わされ、偏光板と透明部材とが第2粘着剤層により貼り合わせられた層間充填構成を有する画像表示装置に好適に用いられる。本明細書においては、第1粘着剤層及び第2粘着剤層のいずれか一方又は両者を、単に「粘着剤層」と称する場合がある。なお、偏光板と画像表示セルとの貼り合わせに用いられる部材、及び偏光板と透明部材との貼り合わせに用いられる部材としては、粘着剤層に限定されることはなく接着剤層であってもよい。
【0160】
<画像表示セル>
画像表示セルとしては、液晶セルや有機ELセルが挙げられる。液晶セルとしては、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、画像表示装置(液晶表示装置)は、画像表示セル(液晶セル)の視認側と反対側にも偏光板が配置され、さらに光源が配置される。光源側の偏光板と液晶セルとは、適宜の粘着剤層を介して貼り合せられていることが好ましい。液晶セルの駆動方式としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用い得る。
【0161】
有機ELセルとしては、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層及び電子注入層の積層体等、種々の層構成が採用され得る。
【0162】
<画像表示セルと偏光板の貼り合せ>
画像表示セルと偏光板との貼り合せには、粘着剤層(粘着シート)が好適に用いられる。中でも、偏光板の一方の面に粘着剤層が付設された粘着剤層付き偏光板を画像表示セルと貼り合わせる方法が、作業性等の観点から好ましい。偏光板への粘着剤層の付設は、適宜な方式で行い得る。その例としては、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶剤にベースポリマー又はその組成物を溶解あるいは分散させた10質量%以上40質量%以下程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上に直接付設する方式、セパレータ上に粘着剤層を形成してそれを偏光板に移着する方式等が挙げられる。
【0163】
<粘着剤層>
粘着剤層は、1層又は2層以上からなってもよいが、好ましくは1層からなる。粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂を主成分とする粘着剤組成物から構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0164】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0165】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0166】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
【0167】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0168】
粘着剤層は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材フィルム、画像表示セル又は偏光板の表面上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。基材フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムであることが一般的であり、その典型的な例として、離型処理が施されたセパレートフィルムを挙げることができる。セパレートフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等の樹脂からなるフィルムの粘着剤層が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。
【0169】
セパレートフィルムの離型処理面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、このセパレートフィルム付粘着剤層を偏光体の表面に積層してもよい。偏光板の表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、粘着剤層の外面にセパレートフィルムを積層してもよい。
【0170】
粘着剤層を偏光板の表面に設ける際には、偏光板の貼合面及び/又は粘着剤層の貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理等の表面活性化処理を施すことが好ましく、コロナ処理を施すことがより好ましい。
【0171】
また、第2セパレートフィルム上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上にセパレートフィルムを積層した粘着剤シートを準備し、この粘着剤シートから第2セパレートフィルムを剥離した後のセパレートフィルム付粘着剤層を偏光板に積層してもよい。第2セパレートフィルムは、セパレートフィルムよりも粘着剤層との密着力が弱く、剥離し易いものが用いられる。
【0172】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。
【0173】
<透明部材>
画像表示装置の視認側に配置される透明部材としては、透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。透明板としては、適宜の機械強度及び厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が挙げられる。透明板の視認側には反射防止層などの機能層が積層されていても構わない。また、透明板が透明樹脂板の場合は、物理強度を上げるためにハードコート層や、透湿度を下げるために低透湿層が積層されていても構わない。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等の各種タッチパネルや、タッチセンサー機能を備えるガラス板や透明樹脂板等が用いられる。透明部材として静電容量方式のタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルよりもさらに視認側に、ガラス又は透明樹脂板からなる透明板が設けられることが好ましい。
【0174】
<偏光板と透明部材との貼り合せ>
偏光板と透明部材との貼り合せには、粘着剤又は活性エネルギー線硬化型接着剤が好適に用いられる。粘着剤が用いられる場合、粘着剤の付設は適宜な方式で行い得る。具体的な付設方法としては、例えば、前述の画像表示セルと偏光板の貼り合せで用いた粘着剤層の付設方法が挙げられる。
【0175】
活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、硬化前の接着剤溶液の広がりを防止する目的で、画像表示パネル上の周縁部を囲むようにダム材が設けられ、ダム材上に透明部材を載置して、接着剤溶液を注入する方法が好適に用いられる。接着剤溶液の注入後は、必要に応じて位置合わせ及び脱泡が行われた後、活性エネルギー線が照射されて硬化が行われる。
【実施例】
【0176】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に限定され制限されるものではない。
【0177】
(1)偏光素子の厚さの測定:
株式会社ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH-15M」を用いて測定した。
【0178】
(2)偏光板の視感度補正偏光度、視感度補正単体透過率、色相の測定:
積分球付き分光光度計〔日本分光株式会社製「V7100」、2度視野;C光源〕を用いて測定した。
【0179】
(3)ホウ素含有率の測定:
偏光素子0.2gを1.9質量%のマンニトール水溶液200gに溶解させた。次いで、得られた水溶液を1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、中和に要した水酸化ナトリウム水溶液の量と検量線との比較により、偏光素子のホウ素含有率を算出した。
【0180】
(4)亜鉛イオン含有率の測定:
精秤した偏光素子に硝酸を加え、マイクロ波試料前処理装置〔マイルストーンゼネラル株式会社製「ETHOS D」〕で酸分解して得られた溶液を測定液とした。亜鉛イオン含有率は、ICP発光分光分析装置〔アジレントテクノロジー製「5110 ICP-OES」〕で測定液の亜鉛濃度を定量し、偏光素子質量に対する亜鉛質量で算出した。
【0181】
(5)PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率の測定:
100mm四方に裁断したPVA系樹脂フィルムを、30℃の純水に60秒間浸漬し、その後、ホウ酸5部を含む60℃の水溶液に120秒浸漬させた。ホウ酸水溶液から取り出したPVA系樹脂フィルムを80℃オーブンで11分間乾燥した。23℃55%RHの環境で24時間調湿し、ホウ素含有PVAフィルムを得た。得られたホウ素含有PVA系樹脂フィルム0.2gを、1.9質量%のマンニトール水溶液200gに溶解させた。この水溶液を1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、中和に要した水酸化ナトリウム水溶液の量と検量線との比較により、PVA系樹脂フィルムのホウ素含有率を算出した。得られたPVA系樹脂フィルムのホウ素含有率を、PVA系樹脂フィルムのホウ素吸着率とした。
【0182】
[偏光素子の作製]
ホウ素吸着率が5.71質量%である厚さ30μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムを準備した。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを21.5℃の純水に79秒浸漬した(膨潤処理)。ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が2/2/100であり、ヨウ素を1.0mM含む水溶液に23℃で151秒浸漬した(染色工程)。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が2.5/4/100の水溶液に68.5℃で76秒浸漬した(第1架橋工程)。引き続き、ヨウ化カリウム/ホウ酸/塩化亜鉛/水の質量比が3/5.5/0.6/100の水溶液に45℃で11秒浸漬した(第2架橋工程、金属イオン処理工程)。その後、洗浄浴に浸漬させて洗浄し(洗浄工程)、38℃で乾燥した(乾燥工程)。以上により、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚み12μmの偏光素子を得た。延伸は、主に、染色工程および第1架橋工程の工程で行い、トータル延伸倍率は5.85倍であった。得られた偏光素子の亜鉛イオン含有率は0.17質量%、ホウ素含有率は4.62質量%であった。
【0183】
[位相差層を含む位相差フィルムの作製]
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)と溶媒としてのシクロペンタノン95部とを混合し、80℃で1時間撹拌して配向膜形成用組成物Aを得た。
【化5】
【0184】
以下に示す重合性液晶化合物A及び重合性液晶化合物Bを90:10の質量比で混合した。混合物に対して、レベリング剤〔DIC株式会社製「F-556」〕を1.0部及び重合開始剤である2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン〔BASFジャパン株式会社製「イルガキュア369(Irg369)」〕を6部添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌して液晶硬化膜形成用組成物Aを得た。
【0185】
重合性液晶化合物Aは特開2010-31223号公報に記載の方法で製造した。また、重合性液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載の方法に準じて製造した。以下にそれぞれの分子構造を示す。
(重合性液晶化合物A)
【化6】
(重合性液晶化合物B)
【化7】
【0186】
基材として縦300mm×横200mmのサイズに裁断した厚み50μmのシクロオレフィン系フィルム〔日本ゼオン株式会社製「ZF-14-50」、透湿度7g/m2・24hr〕を準備した。基材上にコロナ処理を実施した後、塗工幅180mm(両端部で共に10mmが未塗工部分となるようにした)となるように配向膜形成用組成物Aをバーコーターで塗布した。塗膜を80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置〔ウシオ電機株式会社製「SPOT CURE SP-9」〕を用いて、波長313nmにおける積算光量:100mJ/cm2で軸角度0°(長辺基準)にて偏光UV露光を実施した。形成された配向膜に、液晶硬化膜形成用組成物Aをバーコーターを用いて塗布した。塗膜を120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ〔ウシオ電機株式会社「ユニキュアVB-15201BY-A」〕を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、液晶化合物を硬化させて第1の液晶硬化層を形成した。第1の液晶硬化層はポジティブAプレートであった。以上より、基材、配向膜及び第1の液晶硬化層からなる積層体Aを得た。
【0187】
第1の液晶硬化層の位相差値及び波長分散特性を測定した。積層体Aの第1の液晶硬化層を粘着剤を介してガラスに貼合し、基材を剥離した。位相差値Re(550)=130nm、Rth(550)=65nm、Re(450)/Re(550)=0.86、Re(650)/Re(550)=1.04であった。
【0188】
市販の配向性ポリマー〔日産化学株式会社製「サンエバーSE-610」〕に2-ブトキシエタノールを加えて配向膜形成用組成物Bを得た。
【0189】
下記化学式で表される重合性液晶化合物〔BASF社製「LC242」〕を19.2%、重合開始剤〔BASFジャパン社製「イルガキュア(登録商標)907」〕を0.5%、レベリング剤〔ビックケミージャパン製「BYK361N」〕を0.1%、反応添加剤〔BASF社製「Laromer(登録商標)LR-9000」〕を1.1%、溶剤としてプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを79.1%の割合で混合した。混合物を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して液晶硬化膜形成用組成物Bを得た。
【化8】
【0190】
積層体Aの第1の液晶硬化層の表面を出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回コロナ処理した。コロナ処理を施した表面に配向膜形成用組成物Bをバーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。形成された配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、34nmであった。得られた配向膜上に液晶硬化膜形成用組成物Bをバーコーターを用いて塗布した。塗膜を90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、第2の液晶硬化層を形成した。第2の液晶硬化層はポジティブCプレートであった。以上により、基材上に2つの重合性液晶化合物の硬化層が積層された位相差フィルムが得られた。
【0191】
形成された位相差層(第1の液晶硬化層及び第2の液晶硬化層)の位相差値及び波長分散特性を測定した。位相差フィルムの第2の液晶硬化層側を粘着剤を介してガラスに貼合し、基材を剥離した。位相差値Re(550)=130nm、Rth(550)=-45nm、Re(450)/Re(550)が0.86、Re(650)/Re(550)が1.04であった。
【0192】
[第2接着剤]
下記の化合物を混合した後、脱泡して、紫外線硬化型である第2接着剤Aを調製した。
(光カチオン硬化性化合物)
・3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを70部、
・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを20部、
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテルを10部、
(光カチオン重合開始剤)
・トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを2.25部。
光カチオン重合開始剤は、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、上記配合量はその固形分量である。
【0193】
下記の化合物を50℃で1時間攪拌し、紫外線硬化型である第2接着剤Bを調製した。
(光ラジカル硬化性化合物)
・ヒドロキシエチルアクリルアミド〔株式会社興人製〕38.5重量部、
・トリプロピレングリコールジアクリレート〔東亞合成株式会社製「アロニックスM-220〕20.0重量部、
・アクリロイルモルホリン〔株式会社興人製〕38.5重量部、
(光ラジカル重合開始剤)
・ジエチルチオキサントン〔日本化薬株式会社製「KAYACURE DETX-S」〕1.5重量部、
2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン〔BASF社製「IRGACURE907」〕1.5重量部。
【0194】
[透明保護フィルム]
透明保護フィルムとしては、市販のセルロースアシレートフィルム〔富士フイルム株式会社製「フジタックZRD40」、膜厚40μm〕を準備した。
【0195】
[透明保護フィルム、第2接着剤層及び位相差層を含む積層体]
位相差フィルムの液晶硬化層側に第2接着剤A(厚み1.5μm)を介して透明保護フィルムを積層した。それぞれの貼合面には貼合前にコロナ処理を実施した。透明保護フィルム側からベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製「Dバルブ」を使用)を用いて、積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射し、第2接着剤Aを硬化させた。以上により透明保護フィルム、第2接着剤層A、位相差層及び基材をこの順で含む積層体1を作製した。
【0196】
位相差フィルムの液晶硬化層側に第2接着剤B(厚み1.0μm)を介して透明保護フィルムを積層した。それぞれの貼合面には貼合前にコロナ処理を実施した。透明保護フィルム側からベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプはフュージョンUVシステムズ社製「Vバルブ」を使用)を用いて、積算光量が1000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、第2接着剤Bを硬化させた。以上により透明保護フィルム、第2接着剤層B、位相差層及び基材をこの順で含む積層体2を作製した。
【0197】
積層体1及び積層体2を、55℃に保った1.5mol/L NaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬したのち、水洗した。続いて積層体を25℃の0.05mol/L 硫酸水溶液に30秒間浸漬したのち、30秒流水下(水洗浴)に通してフィルムを中性の状態にした。エアナイフによる水切りを3回繰り返した。積層体を70℃の乾燥炉に15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理した積層体1及び積層体2が得られた。
【0198】
[第1接着剤]
アセトアセチル基を含有する変性PVA系樹脂〔三菱ケミカル株式会社製「ゴーセネックスZ-410」〕50gを950gの純水に溶解した。90℃で2時間加熱後、常温まで冷却して接着剤用のPVA溶液を得た。
【0199】
PVA、尿素、グリオキサール及びマレイン酸の含有量が表1に示す含有量になるように、PVA溶液、尿素、市販のグリオキサール40質量%溶液、マレイン酸及び純水を配合し、第1接着剤A~Cを調製した。第1接着剤A及びBは尿素系化合物を含み、第1接着剤Cは尿素系化合物を含まない。
【0200】
【0201】
[偏光板の作製]
市販のセルロースアシレートフィルム(富士フイルム株式会社製「TJ40UL」、膜厚40μm)を、55℃に保った1.5mol/L NaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬したのち、フィルムを水洗した。続いてフィルムを25℃の0.05mol/L 硫酸水溶液に30秒間浸漬したのち、30秒流水下(水洗浴)に通してフィルムを中性の状態にした。エアナイフによる水切りを3回繰り返した。フィルムを70℃の乾燥炉に15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムAを準備した。鹸化処理したフィルムAは、偏光素子の位相差層とは反対側に積層される。
【0202】
第1接着剤Aを介して、偏光素子の片面に鹸化処理したフィルムAを、偏光素子のもう一方の面に鹸化処理した積層体1の透明保護フィルム側をロール貼合機を用いて貼合した。この積層体を80℃で5分間乾燥させて、偏光板1を得た。接着剤層は、乾燥後の厚みが両面共に50nmになるように調整した。偏光板1は、透明保護フィルム/第1接着剤A層/偏光素子/第1接着剤A層/透明保護フィルム/第2接着剤層/位相差層/基材の構成を有していた。
【0203】
偏光板1の作製工程において、第1接着剤Aを第1接着剤B又はCに変更し、偏光板2及び4を得た。偏光板1及び4の作製工程において、鹸化処理した積層体1を鹸化処理した積層体2に代えた以外は同様にして、偏光板3及び5を得た。偏光板に含まれる接着剤層の組み合わせを表2に示す。
【0204】
[偏光板(偏光素子)の含水率の調整]
偏光板1~5を温度20℃で相対湿度30%、35%、40%、45%、50%又は55%の条件で72時間保管した。保管66時間、69時間及び72時間でカールフィッシャー法を用いて含水率を測定した。いずれの湿度条件でも、保管66時間、69時間及び72時間で含水率の値が変わらなかった。したがって、偏光板1~5の含水率は、72時間後の平衡含水率と同じになっているとみなすことができる。偏光板の含水率がある保管環境で平衡に達したときは、偏光板中の偏光素子の含水率も同様にその保管環境で平衡に達したとみなすことができる。偏光板中の偏光素子の含水率がある保管環境で平衡に達したときは、偏光板の含水率も同様にその保管環境で平衡に達したとみなすことができる。
【0205】
偏光板1~5を温度20℃相対湿度55%の条件で72時間保管して、偏光板の含水率が温度20℃相対湿度55%の環境の平衡含水率となるように調整した。
【0206】
<高温耐久性評価>
[評価用サンプルの作製]
含水率を調整した偏光板1~5について、基材を剥離後、その両面にアクリル系粘着剤〔リンテック株式会社製「#7」〕を塗布した。吸収軸が長辺と平行になるように、50mm×100mmの大きさに偏光板を裁断して、それぞれの粘着剤表面に無アルカリガラス〔コーニング社製「EAGLE XG」〕を貼合した。この積層体を評価用サンプルとした。
【0207】
[単体透過率評価(105℃)]
評価用サンプルを、温度50℃、圧力5kgf/cm2(490.3kPa)で1時間オートクレーブ処理した後、温度23℃相対湿度55%の環境下で24時間放置した。その後、それぞれの評価用サンプルの透過率を測定し、これを初期値とした。温度105℃の加熱環境下に保管し、100~200時間まで50時間おきに評価用サンプルの透過率を測定した。初期値に対して透過率が5%以上低下するまでの時間を以下の基準で評価した。結果は表2に示す。
200時間経過した時点で透過率の低下が5%以下のもの :A
150~200時間で透過率の低下が5%以上に達したもの:B
100~150時間で透過率の低下が5%以上に達したもの:C
100時間経過した時点で透過率の低下が5%以上のもの :D
【0208】
[クロス抜けの評価]
上記した単体透過率の評価で200時間経過時の単体透過率測定を行った後の評価用サンプルを用いてクロス抜けを評価した。加熱環境下に投入していないクロスニコル評価用の偏光板と評価用サンプルとをクロスニコルの関係となるように配置して、バックライト上に載せた。周囲を遮光し、目視によってクロス抜けを以下の基準で評価した。結果は表2に示す。なお、単体透過率の評価がA以外であった評価用サンプルは、ポリエン化による着色があるため、クロス抜けを評価しなかった。
クロス抜けが全く見られないもの :A
クロス抜けが殆ど見られないもの :B
クロス抜けが僅かに見られるもの :C
クロス抜けがはっきり見られるもの :D
【0209】
【0210】
重合性液晶化合物の硬化層を含む位相差層を備える偏光板において、尿素性化合物を含む接着剤から第1接着剤層が形成されているとき、105℃の高温環境下に偏光板を晒しても透過率の低下が抑制されていた。また、偏光板が層間充填構成を有していても、透過率の低下は抑制された。第1接着剤が尿素系化合物を含む場合には、第2接着剤がカチオン重合性化合物を含むときに、ラジカル重合性化合物を含むときよりもクロス抜けが抑制される傾向にあった。本発明により、高温耐久性に優れた偏光板が得られた。なお、第1接着剤が尿素系化合物を含まない場合は、第2接着剤がカチオン重合性化合物を含むときに、ラジカル重合性化合物を含むときよりも偏光板の単体透過率は低下しやすくなった(偏光板4及び5)。