IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-13
(45)【発行日】2026-03-24
(54)【発明の名称】グラフト共重合体及び樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20260316BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20260316BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20260316BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20260316BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20260316BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20260316BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20260316BHJP
【FI】
C08F265/06
B32B27/30 A
C08J5/18 CEY
C08L51/06
G02B5/30
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022570076
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2021046730
(87)【国際公開番号】W WO2022131365
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2020209480
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北山 史延
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓也
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022704(WO,A1)
【文献】特開2002-155185(JP,A)
【文献】特開2007-254727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
B32B 27/30
C08J 5/18
C08L 51/06
G02B 5/30
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径150nm以下、ガラス転移温度が-10℃以下である架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と、
重量平均分子量が30万以上で、かつガラス転移温度が118℃以上である非架橋メタクリル系重合体成分(b)を含み、
非架橋メタクリル系重合体成分(b)の少なくとも一部は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)にグラフト結合しており、
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と非架橋メタクリル系重合体成分(b)の合計のうち架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の占める割合が1重量%以上50重量%未満であり、
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、メタクリル酸メチル単位を70重量%以上99重量%以下含み、N-置換マレイミド系モノマー単位、及び、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、のうち少なくとも1種を更に含む、グラフト共重合体。
【請求項2】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)の重量平均分子量が35万以上である、請求項1に記載のグラフト共重合体。
【請求項3】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、ガラス転移温度が120℃以上である、請求項1又は2に記載のグラフト共重合体。
【請求項4】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、多官能性単量体を除く単量体成分のうち、アルキル基の炭素数が1~8であるアクリル酸アルキルエステルを90重量%以上100重量%以下含む、請求項1~のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
【請求項5】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、多官能性単量体を除く単量体成分100重量部、及び、多官能性単量体0.1~2.0重量部から形成される、請求項1~のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のグラフト共重合体を含む、溶液流延法によるフィルム製造用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項に記載のフィルム製造用樹脂組成物、及び、溶剤を含む、ドープ。
【請求項8】
請求項に記載のドープを支持体表面に流延した後、溶剤を蒸発させる工程を含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項に記載のフィルム製造用樹脂組成物から溶液流延法により成形される樹脂フィルム。
【請求項10】
前記樹脂フィルムは厚みが1~500μmである、請求項に記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
前記樹脂フィルムは、他基材表面への積層保護用フィルムである、請求項又は10に記載の樹脂フィルム。
【請求項12】
前記樹脂フィルムは、光学用フィルムである、請求項11のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項13】
前記光学用フィルムは、偏光子保護フィルムである、請求項12に記載の樹脂フィルム。
【請求項14】
偏光子と、請求項13に記載の樹脂フィルムを積層してなる、偏光板。
【請求項15】
請求項14に記載の偏光板を含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムを形成することが可能なグラフト共重合体、該共重合体を含むフィルム製造用樹脂組成物、ドープ、及び、樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂は、優れた透明性、色調、外観、耐候性、光沢および加工性を有するため、産業上さまざまな分野で大量に使用されている優れたポリマーである。特に、メタクリル系樹脂から成形された樹脂フィルムは、優れた透明性、外観、耐候性を活かし、自動車内外装材、携帯電話やスマートフォンなどの電化製品の外装材や、床、窓、内外壁、採光部、道路標識などの土木建築用内外装材など各種用途に使用されている。近年、メタクリル系樹脂はその優れた光学特性を生かし、液晶表示装置や有機EL表示装置等の光学部材にも適用されている。
【0003】
しかし、一般的なメタクリル系樹脂から成形された樹脂フィルムは、耐衝撃性が低い欠点がある。そこで、耐衝撃性を改善することを目的に、メタクリル系樹脂に、ゴム成分を含むグラフト共重合体を配合する手法が広く使用されている。
【0004】
このようなゴム含有グラフト共重合体としては、ゴムからなるコア層と、メタクリル系樹脂との相溶性を改善するシェル層を有するコアシェル型グラフト共重合体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第99/055779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコアシェル型グラフト共重合体の配合によってメタクリル系樹脂の強度は改善され得るものの、含まれるゴム成分に起因してコアシェル型グラフト共重合体は凝集しやすく、貯蔵安定性が低いという問題があった。また、溶液流延法によって樹脂フィルムを製造するに際して、従来のコアシェル型グラフト共重合体をメタクリル系樹脂と共に溶剤に溶かしてドープを作製した後、特に時間が経過すると、ドープに濁りが生じやすく、該ドープから作製した樹脂フィルムはヘイズが低下するという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた耐熱性を有し、高強度かつ低ヘイズのフィルムを形成可能で、貯蔵安定性が良好なグラフト共重合体、及び、該グラフト共重合体から形成した樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子と特定の非架橋メタクリル系重合体成分を特定比率で含み、前記非架橋メタクリル系重合体成分が前記架橋(メタ)アクリル系重合体粒子にグラフト結合してなるグラフト共重合体によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、平均粒子径150nm以下、ガラス転移温度が-10℃以下である架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と、重量平均分子量が25万以上である非架橋メタクリル系重合体成分(b)を含み、非架橋メタクリル系重合体成分(b)の少なくとも一部は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)にグラフト結合しており、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と非架橋メタクリル系重合体成分(b)の合計のうち架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の占める割合が1重量%以上50重量%未満である、グラフト共重合体に関する。
好ましくは、非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、メタクリル酸メチル単位を70重量%以上99重量%以下含む。
好ましくは、非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、N-置換マレイミド系モノマー単位、エステル部位が炭素数2~20の第一級もしくは第二級炭化水素基または芳香族系炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、エステル部位がエーテル結合を含む直鎖状又は分岐状の基であるメタクリル酸エステル単位、及び、スチレン系モノマー単位からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む。
好ましくは、非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、N-置換マレイミド系モノマー単位、及び、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、のうち少なくとも1種を更に含む。
好ましくは、非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、ガラス転移温度が118℃以上である。
好ましくは、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、多官能性単量体を除く単量体成分のうち、アルキル基の炭素数が1~8であるアクリル酸アルキルエステルを90重量%以上100重量%以下含む。
好ましくは、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、多官能性単量体を除く単量体成分100重量部、及び、多官能性単量体0.1~2.0重量部から形成される。
また本発明は、前記グラフト共重合体を含む、溶液流延法によるフィルム製造用樹脂組成物;当該フィルム製造用樹脂組成物、及び、溶剤を含む、ドープ;当該ドープを支持体表面に流延した後、溶剤を蒸発させる工程を含む、樹脂フィルムの製造方法;又は、前記フィルム製造用樹脂組成物から溶液流延法により成形される樹脂フィルムにも関する。
好ましくは、前記樹脂フィルムは厚みが1~500μmである。
好ましくは、前記樹脂フィルムは、他基材表面への積層保護用フィルムである。
好ましくは、前記樹脂フィルムは、光学用フィルムである。
好ましくは、前記光学用フィルムは、偏光子保護フィルムである。
さらに本発明は、偏光子と、前記樹脂フィルムを積層してなる、偏光板;及び、当該
偏光板を含む、ディスプレイ装置にも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた耐熱性を有し、高強度かつ低ヘイズのフィルムを形成可能で、貯蔵安定性が良好なグラフト共重合体、及び、該重合体から形成した樹脂フィルムを提供することができる。
本発明に係るグラフト共重合体は、樹脂成分が当該共重合体のみであっても、高強度の樹脂フィルムを形成することができる。また、従来のようにメタクリル系樹脂にコアシェル型グラフト共重合体を配合して分散させる必要がないため、低ヘイズの樹脂フィルムを容易に形成することができる。更に、前記グラフト共重合体は、ゴム成分を含有しているにも関わらず、貯蔵安定性が良好であり、また、溶剤に溶かしてドープを作製した時に、該ドープに濁りが生じにくいという利点もある。結果、該ドープを使用して溶液流延法により製造される樹脂フィルムのヘイズを低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
(グラフト共重合体)
本実施形態に係るグラフト共重合体は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と、非架橋メタクリル系重合体成分(b)を含む。架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)はゴム成分であるため、強度の改善に寄与し得る。また、非架橋メタクリル系重合体成分(b)によって優れた耐熱性を達成することができる。メタクリル系樹脂にコアシェル型グラフト共重合体を配合してなる従来の系と対比すると、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、前記コアシェル型グラフト共重合体におけるコアのゴム成分に相当し、非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、マトリックスである前記メタクリル系樹脂に相当し得る。
【0012】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)の少なくとも一部は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)にグラフト結合している。当該グラフト結合は、後述するように乳化重合でグラフト共重合体を製造することによって実現できる。この製造方法に起因して、グラフト共重合体には、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)にグラフト結合していない非架橋メタクリル系重合体成分(b)も含まれ得る。
【0013】
本実施形態に係るグラフト共重合体は、粒子径の小さい架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)が高分子量の非架橋メタクリル系重合体成分(b)中に分散している構成を有することができ、そのため、グラフト共重合体中で架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の凝集が進行しにくい。その結果、本実施形態に係るグラフト共重合体をパウダー状で貯蔵する時、また、溶剤に溶かしたドープとして貯蔵する時いずれの場合でも安定性が良好となる。また、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)の凝集が抑制されていることから、本実施形態に係るグラフト共重合体は溶剤に溶解しやすいという利点もある。
【0014】
(架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a))
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、(メタ)アクリル系ゴム粒子である。本実施形態に係るグラフト共重合体は架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を含むことによって、例えばフィルム化した時に高い強度を達成することができる。
【0015】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、粒子径が比較的小さいものであり、具体的には平均粒子径が150nm以下のものである。このように粒子径が小さい架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用することによって、本実施形態に係るグラフト共重合体を例えばフィルム化した時に低いヘイズを達成することができる。また、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を小粒子化することで架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と非架橋メタクリル系重合体成分(b)の屈折率を合わせる必要がなくなる。その結果、屈折率を考慮することなく、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)のガラス転移温度が低くなるような単量体組成を採用でき、これにより、グラフト共重合体を例えばフィイム化した時に高い強度を達成することができる。
【0016】
前記平均粒子径は、低ヘイズの観点から、130nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましく、110nm以下がさらに好ましく、100nm以下がより更に好ましい。前記平均粒子径の下限は特に限定されないが、フィルムの強度、又は、粒子の製造の容易さの観点から、30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、60nm以上がさらに好ましい。尚、平均粒子径は体積平均粒子径であり、実施例の項で記載のように測定することができる。また、平均粒子径は、粒子作製時の条件(具体的には乳化剤の種類や量、乳化重合時の撹拌条件など)を調節することによって制御可能である。
【0017】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、ガラス転移温度が-10℃以下を示すものである。このようにガラス転移温度が低い架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用することによって、グラフト共重合体を例えばフィルム化した時に高い強度を達成することができる。ガラス転移温度は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を構成する単量体の種類や比率などを調節することによって制御できる。
【0018】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)のガラス転移温度は-20℃以下が好ましく、-30℃以下がより好ましく、-40℃以下がさらに好ましく、-45℃以下が特に好ましい。前記ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、例えば、-130℃以上が好ましく、-110℃以上がより好ましく、-100℃以上がさらに好ましく、-80℃以上がより更に好ましく、-70℃以上が特に好ましい。尚、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience 1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した値である(例えば、ポリアクリル酸n-ブチルは-54℃である)。
【0019】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分、及び、多官能性単量体を重合してなる架橋(メタ)アクリル系重合体から形成される粒子である。多官能性単量体を除く単量体成分は、アクリル系単量体及び/又はメタクリル系単量体を含むものであるが、少なくともアクリル系単量体を含むことが好ましい。
【0020】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)に含まれるアクリル系単量体としては、アルキル基の炭素数が1~8であるアクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。前記アクリル酸アルキルエステルとしては1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、アクリル酸n-ブチルが好ましい。
【0021】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)に含まれ得る任意のメタクリル系単量体としては、アルキル基の炭素数が1~8であるメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル等が挙げられる。前記メタクリル酸アルキルエステルとしては1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、アルキル基の炭素数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。特に、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0022】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)では、上述したアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル以外の単量体を使用してもよい。そのような単量体としては、前記アクリル酸アルキルエステル以外のアクリル酸エステル、前記メタクリル酸アルキルエステル以外のメタクリル酸エステル、芳香族ビニル系単量体、他の共重合性ビニル単量体が挙げられる。前記アクリル酸アルキルエステル以外のアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。前記メタクリル酸アルキルエステル以外のメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、その他のスチレン誘導体等が挙げられる。前記他の共重合性ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β-不飽和カルボン酸類、酢酸ビニル、エチレンやプロピレン等のオレフィン系単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられる。これらはいずれも単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を構成する単量体成分は、強度や耐熱性の観点から、多官能性単量体を除く単量体成分のうち、アクリル酸エステル(特にアルキル基の炭素数が1~8であるアクリル酸アルキルエステル)を70重量%以上100重量%以下含むことが好ましく、80重量%以上100重量%以下含むことがより好ましく、90重量%以上100重量%以下含むことがさらに好ましく、95重量%以上100重量%以下含むことが特に好ましい。
【0024】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は、前記単量体成分を、多官能性単量体の存在下で重合することにより形成される。当該多官能性単量体は、架橋剤または架橋性単量体としても知られており、(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な不飽和結合を1分子中に2個以上有する化合物である。具体的には、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、モノアリルマレエート、モノアリルフマレート、ブタジエン、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、アルキレングリコールジメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。好ましくは、アリルメタクリレートである。
【0025】
前記多官能性単量体の使用量は、強度の観点から適宜設定することができるが、具体的には、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を構成する単量体成分(但し、多官能性単量体を除く単量体成分)100重量部に対して0.1重量部以上5.0重量部以下程度であってよい。しかし、グラフト共重合体の強度の観点から、前記多官能性単量体の使用量は、0.2~3.5重量部が好ましく、0.2~3.0重量部がより好ましく、0.3~2.0重量部がさらに好ましく、0.4~1.5重量部が特に好ましい。
【0026】
(非架橋メタクリル系重合体成分(b))
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、主にメタクリル系単量体が重合して構成され、架橋構造を有しない(即ち、多官能性単量体を使用しない重合によって得られた)重合体である。非架橋メタクリル系重合体成分(b)の少なくとも一部は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)にグラフト結合しており、これによって、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)は凝集しにくくなり、本実施形態に係るグラフト共重合体は貯蔵安定性が良好になり、また、フィルム化した時に低ヘイズを達成することができる。
【0027】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、高分子量の重合体であり、具体的には重量平均分子量が25万以上を示すものである。非架橋メタクリル系重合体成分(b)が高分子量であることによって、本実施形態に係るグラフト共重合体は高い耐熱性を達成することができ、また、溶液流延法によるフィルム化が可能となる。前記重量平均分子量は、溶液流延法によるフィルム化を容易にする観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましく、45万以上が特に好ましい。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、溶液流延法によるフィルム化を容易にする観点から、100万以下が好ましく、90万以下がより好ましい。非架橋メタクリル系重合体成分(b)の重量平均分子量は実施例の項の記載に従って測定することができる。
【0028】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、グラフト共重合体の耐熱性の観点から、ガラス転移温度が115℃以上を示すことが好ましく、118℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、例えば、160℃以下であってもよく、150℃以下であってもよい。ガラス転移温度は、非架橋メタクリル系重合体成分(b)を構成する単量体の種類や比率などを調節することによって制御できる。尚、非架橋メタクリル系重合体成分(b)のガラス転移温度は、実施例の項で記載のように測定することができるが、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience 1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出することもできる(例えば、ポリメタクリル酸メチルは105℃である)。
【0029】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、主にメタクリル系単量体単位から構成される重合体である。グラフト共重合体の耐熱性及びフィルム化の観点から、メタクリル系単量体単位としては、メタクリル酸メチル単位が好ましい。特に、非架橋メタクリル系重合体成分(b)を構成する単量体成分のうち、メタクリル酸メチル単位を、70重量%以上99重量%以下含むことが好ましい。これにより、耐熱性を改善すると共に、溶液流延法によるフィルム化をより容易に実現することができる。メタクリル酸メチル単位の含有量は、75~98重量%がより好ましく、80~97重量%がさらに好ましく、85~96重量%がより更に好ましく、88~95重量%がよりさらに好ましく、90~95重量%が特に好ましい。
【0030】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、メタクリル酸メチル単位以外の単量体単位として、N-置換マレイミド系モノマー単位、エステル部位が炭素数2~20の第一級もしくは第二級炭化水素基または芳香族系炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、エステル部位がエーテル結合を含む直鎖状又は分岐状の基であるメタクリル酸エステル単位、及び、スチレン系モノマー単位からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような単量体単位を含むことによって、グラフト共重合体の耐熱性を大きく低下させることなく、溶液流延法でフィルムを製造するに際して、流延膜から溶剤を蒸発させる際に該溶剤の揮発速度を速くすることが可能となる。上述した単量体単位を、以下では「乾燥促進性コモノマー単位」ともいう。
【0031】
前記N-置換マレイミド系モノマーとしては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド等が挙げられる。このうち、N原子上に環状の置換基を有するマレイミド系モノマー単位が好ましく、すなわち、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0032】
前記エステル部位が炭素数2~20の第一級もしくは第二級炭化水素基または芳香族系炭化水素基であるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。このうち、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジルが好ましい。
【0033】
前記エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。前記飽和炭化水素基の炭素数は8~14が好ましく、9~12がより好ましい。また、縮合環構造とは、特に限定されないが、連続する3つの炭素原子によって2つの五員環が縮環した構造であることが好ましい。
【0034】
前記エステル部位がエーテル結合を含む直鎖状又は分岐状の基であるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
【0035】
前記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられる。このうちスチレンが好ましい。
【0036】
溶液流延法で流延膜からの溶剤の揮発速度を速くすることに加えて、グラフト共重合体の耐熱性をより高めることができるため、前記乾燥促進性コモノマー単位は、N-置換マレイミド系モノマー単位、及び、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
この時、前記乾燥促進性コモノマー単位として、N-置換マレイミド系モノマー単位、及び、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、のうち少なくとも1種のみを用いても良いが、N-置換マレイミド系モノマー単位、及び、エステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、のうち少なくとも1種と、これら以外の乾燥促進性コモノマー単位を組み合わせて用いても良い。このような併用により、グラフト共重合体の耐熱性と溶剤の揮発速度を調節して、両者をバランス良く高めることが可能となる。
【0038】
該N-置換マレイミド系モノマー単位及びエステル部位が縮合環構造を有する炭素数7~16の飽和炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位以外の乾燥促進性コモノマー単位は、上述したようなエステル部位が炭素数2~20の第一級もしくは第二級炭化水素基または芳香族系炭化水素基であるメタクリル酸エステル単位、エステル部位がエーテル結合を含む直鎖状又は分岐状の基であるメタクリル酸エステル単位、及び、スチレン系モノマー単位からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0039】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)を構成する単量体成分のうち、前記乾燥促進性コモノマー単位の割合は1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、2~25重量%がより好ましく、3~20重量%がさらに好ましく、4~18重量%がより更に好ましく、4~15重量%がより更に好ましく、4~12重量%がより更に好ましく、5~10重量%が特に好ましい。乾燥促進性コモノマー単位が2種類以上含まれる場合、乾燥促進性コモノマー単位の割合とは、含まれる全ての乾燥促進性コモノマー単位の合計量が全モノマー単位のうちに占める割合のことをいう。このような重量割合とすることで、グラフト共重合体が優れた耐熱性を有しながら、溶液流延法での溶剤の揮発速度を速めることができる。なお、これら各単位の重量割合は、プロトン核磁気共鳴分光法により求めることができる。
【0040】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)は、乾燥促進性コモノマー単位に該当しない他のコモノマー単位を含まない共重合体であってもよいし、乾燥促進性コモノマー単位に該当しない他のコモノマー単位を含む共重合体であってよい。そのような他のコモノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2-トリクロロエチルメタクリレート、メタクリルアミド、N-メチロ-ルメタクリルアミド等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸オクチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N-メチロ-ルアクリルアミド等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボン酸類およびその塩;アクリロニトニル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;マレイン酸、フマル酸およびそれらのエステル等;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソブチレンなどのアルケン類等が挙げられる。このような他のコモノマー単位が、非架橋メタクリル系重合体成分(b)を構成する単量体成分のうち占める割合は10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさら好ましい。
【0041】
本実施形態に係るグラフト共重合体において、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と非架橋メタクリル系重合体成分(b)の合計のうち架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)が占める割合は1重量%以上50重量%未満であり、非架橋メタクリル系重合体成分(b)の占める割合は99重量%以下50重量%超である。本実施形態に係るグラフト共重合体はこのように非架橋メタクリル系重合体成分(b)を高い割合で含有することによって、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)が凝集しにくく、高強度かつ低ヘイズのフィルムを形成可能となり、しかも、当該グラフト共重合体又はそのドープの貯蔵安定性が良好となり得る。架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)が占める前記割合は、3重量%以上45重量%以下が好ましく、4~40重量%がより好ましく、5~35重量%がさらに好ましく、6~30重量%が特に好ましい。
【0042】
更に、得られるフィルムの耐折り曲げ性の観点から、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)と非架橋メタクリル系重合体成分(b)の合計のうち架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)が占める割合は、5重量%以上であることが好ましく、6重量%以上がより好ましく、7重量%以上がさらに好ましい。透湿度と弾性率の観点から、前記割合の上限は25重量%以下であることが好ましく、20重量%以下がより好ましく、15重量%以下がさらに好ましく、12重量%以下がより更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。透湿度と弾性率、耐折り曲げ性のバランスの観点からは、6重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましく、また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、12重量%以下がさらに好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
【0043】
(グラフト共重合体の製造方法)
本実施形態に係るグラフト共重合体は、乳化剤と重合開始剤を用いた通常の乳化重合により製造することができる。具体的には、乳化重合により架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を形成した後、その重合系に、非架橋メタクリル系重合体成分(b)を構成する単量体成分を添加して引き続き乳化重合を行って非架橋メタクリル系重合体成分(b)を形成する。これにより、非架橋メタクリル系重合体成分(b)の少なくとも一部が、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)にグラフト結合したグラフト共重合体を製造することができる。以上の方法によってグラフト共重合体を製造することで、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)が非架橋メタクリル系重合体成分(b)中に十分に分散している構成とすることができる。
【0044】
前記乳化剤としては特に限定されないが、例えば、アルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム(スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム)、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤や、非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。前記グラフト共重合体から形成されるフィルムの熱安定性を向上させる観点から、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム(スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)を用いて重合することが好ましく、特にはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)を用いて重合することが好ましい。
【0045】
前記重合開始剤としては特に限定されないが、前記フィルムの熱安定性向上の観点から、10時間半減期温度が100℃以下の重合開始剤が好ましい。当該重合開始剤としては特に限定されないが、過硫酸塩が好ましい。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0046】
前記重合開始剤は、少なくとも架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を形成する段階で添加することが好ましく、非架橋メタクリル系重合体成分(b)を形成する段階で追加添加してもよい。
【0047】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)を形成する段階では、該重合体成分(b)の分子量を制御するために、連鎖移動剤の存在下で重合を行ってもよい。その際に使用可能な連鎖移動剤としては特に限定されないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタンなどの1級アルキルメルカプタン系連鎖移動剤、s-ブチルメルカプタン、s-ドデシルメルカプタンなどの2級アルキルメルカプタン系連鎖移動剤、t-ドデシルメルカプタン、t-テトラデシルメルカプタンなどの3級アルキルメルカプタン系連鎖移動剤、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)などのチオグリコール酸エステル、チオフェノール、テトラエチルチウラムジスルフィド、ペンタンフェニルエタン、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、四塩化炭素、臭化エチレン、α-メチルスチレンダイマーなどのスチレンオリゴマー、テルピノレンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
前記乳化重合によって得られたグラフト共重合体のラテックスを、加熱乾燥または噴霧乾燥に付すことにより、あるいは、塩または酸等の水溶性電解質を添加して凝固させ、更に熱処理を実施した後に水相から樹脂成分を分離して乾燥を行なう等の公知の方法に付すことにより、固体状または粉末状のグラフト共重合体を取得することができる。中でも、塩を用いて凝固を行う方法が好ましい。当該塩としては特に限定されないが、2価の塩が好ましく、具体的には、塩化カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩等が挙げられる。中でも、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩が好ましい。凝固時に、老化防止剤や紫外線吸収剤等の、一般的に添加される添加剤を加えてもよい。
【0049】
凝固操作前には、前記ラテックスを、フィルター、メッシュ等でろ過し、微細な重合スケールを取り除くことが好ましい。これにより、微細な重合スケールに起因するフィッシュアイや異物等を低減させることができ、また、ドープ中の粗大粒子を低減することもできる。
【0050】
(樹脂組成物)
本実施形態に係るグラフト共重合体は、溶液流延法によるフィルム製造用樹脂組成物を構成することができる。当該樹脂組成物は、樹脂成分として、本実施形態に係るグラフト共重合体のみを含むものであってもよいが、本実施形態に係るグラフト共重合体に加えて、他の樹脂を含有してもよい。そのような樹脂としては特に限定されず、例えば、メタクリル系樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリフッ化アルキル(メタ)アクリレート樹脂等のフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
前記他の樹脂の含有量としては特に限定されないが、例えば、本実施形態に係るグラフト共重合体100重量部に対して、0~50重量部程度であってもよい。さらに、0~30重量部であってもよく、0~10重量部であってもよく、0~5重量部であってもよく、0~1重量部であってもよい。
【0051】
また、前記フィルム製造用樹脂組成物は、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、艶消し剤、光拡散剤、着色剤、染料、顔料、帯電防止剤、熱線反射材、滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤、フィラー等の公知の添加剤をさらに含有してもよい。また、従来公知のコアシェル型グラフト共重合体をさらに含有してもよい。
【0052】
(ドープ)
前記フィルム製造用樹脂組成物は、これを溶剤に溶解または分散させることで、溶液流延法によって樹脂フィルムを製造する際に使用するドープを構成することができる。
【0053】
前記溶剤は、前記フィルム製造用樹脂組成物を溶解または分散することができる溶剤であり、特に限定されないが、ハンセン溶解度パラメーターにおける水素結合項δHが1以上12以下である溶剤(c-1)を含むことが好ましい。このような溶剤を用いてドープを構成することで、本実施形態に係るグラフト共重合体の溶剤への良好な溶解性または分散性を実現することができる。前記水素結合項δHが3以上10以下を示す溶剤が好ましく、5以上8以下を示す溶剤がより好ましい。
【0054】
従来から、物質の溶解性を示す指標として溶解度パラメーター(SP値)が知られており、当該SP値の凝集エネルギーの項が、分子間に働く相互作用エネルギーの種類(London分散力、双極子間力、水素結合力)によって分割され、それぞれをLondon分散力項、双極子間力項、水素結合力項として表したハンセン溶解度パラメーターが提案されている。グラフト共重合体が溶剤に溶解する際の溶解性を示す指標として、このハンセン溶解度パラメーターのうちの水素結合項δHを使用する。当該水素結合項δHの詳細は、例えば、山本秀樹著、「特集:ポリマー相溶化設計 1.Hansen溶解度パラメーター(HSP値)を用いた溶解性評価」、接着の技術、Vol.34 No.3 (2014) 通巻116号) 第1-8頁を参照することができる。
【0055】
前記水素結合項δHが1以上12以下である溶剤(c-1)としては、例えば、1,4-ジオキサン(9.0)、2-フェニルエタノール(11.2)、アセトン(7.0)、アセトニトリル(6.1)、クロロホルム(5.7)、二塩基酸エステル(8.4)、ジアセトンアルコール(10.8)、N,N-ジメチルホルムアミド(11.3)、ジメチルスルホキシド(10.2)、酢酸エチル(7.2)、γ-ブチロラクトン(7.4)、メチルエチルケトン(5.1)、メチルイソブチルケトン(4.1)、塩化メチレン(7.1)、酢酸n-ブチル(6.3)、N-メチル-2-ピロリドン(7.2)、炭酸プロピレン(4.1)、1,1,2,2-テトラクロロエタン(5.3)、テトラヒドロフラン(8.0)、トルエン(2.0)等が挙げられる。なお、カッコ内の数字は水素結合項δHを示す。これら溶剤は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0056】
これら溶剤のなかでも、本実施形態に係るグラフト共重合体の溶解性に優れると共に、揮発速度も速いため、メチルエチルケトン、クロロホルム、塩化メチレンが好ましく、塩化メチレンがより好ましい。
【0057】
前記ドープに含まれる溶剤は、前記水素結合項δHが1以上12以下である溶剤(c-1)のみから構成されるものであってもよい。しかし、溶液流延実施時の成膜性、フィルムの離型性、ハンドリング性の改善などを考慮して、前記水素結合項δHが1以上12以下である溶剤(c-1)、及び、δHが14以上24以下である溶剤(c-2)を含有することが好ましい。
【0058】
前記δHが14以上24以下である溶剤(c-2)としては、例えば、メタノール(22.3)、エタノール(19.4)、イソプロパノール(16.4)、ブタノール(15.8)、エチレングリコールモノエチルエーテル(14.3)等が挙げられる。これら溶剤は1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0059】
前記δHが14以上24以下である溶剤(c-2)と併用する場合、前記水素結合項δHが1以上12以下である溶剤(c-1)の含有量は、ドープに含まれる溶剤全体に対して55重量%以上95重量%以下が好ましく、60重量%以上90重量%以下がより好ましく、65重量%以上85重量%以下がさらに好ましく、70重量%以上85重量%以下がよりさらに好ましい。
【0060】
前記ドープ中における前記グラフト共重合体の割合は特に限定されず、用いた溶剤に対する前記グラフト共重合体の溶解性または分散性や、溶液流延法の実施条件などを考慮して適宜決定することが可能であるが、5~50重量%であることが好ましく、10~45重量%がより好ましく、15~40重量%がさらに好ましい。
【0061】
(溶液流延法)
前記ドープは、溶液流延法によって樹脂フィルムを製造するのに使用される。具体的には、前記ドープを支持体表面に流延した後、溶剤を蒸発させることにより樹脂フィルムを製造することができる。
【0062】
前記溶液流延法の実施態様を以下に説明するが、これに限定されるものではない。まず、本実施形態に係るグラフト共重合体、場合によって他の成分を含むペレットを作製した後、該ペレットを溶剤と混合して、各成分を溶剤に溶解又は分散させたドープを作製する。あるいは、ペレットを作製せずに、本実施形態に係るグラフト共重合体と他の成分を、同時に又は順次、溶剤に混合して、各成分を溶剤に溶解又は分散させたドープを作製する。溶解又は分散させる工程は、温度および圧力を適宜調節して実施することができる。以上の溶解又は分散工程の後、得られたドープをろ過したり、脱泡することもできる。
【0063】
次いで、前記ドープを送液ポンプにより加圧ダイに送液し、加圧ダイのスリットから、金属製または合成樹脂製の無端ベルトやドラム等の支持体の表面(鏡面)に前記ドープを流延して、ドープ膜を形成する。
【0064】
形成されたドープ膜を前記支持体上で加熱し、溶剤を蒸発させてフィルムを形成させる。溶剤を蒸発させる際の条件としては、使用する溶剤の沸点に応じて適宜決定することができる。
【0065】
このようにして得られたフィルムは支持体表面から剥離される。その後、得られたフィルムは、適宜、乾燥工程や加熱工程、延伸工程等に付してもよい。
【0066】
(樹脂フィルム)
本実施形態に係る樹脂フィルムは、前記フィルム製造用樹脂組成物から構成されるものであり、前述したドープの溶液流延法により形成することができる。該樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、500μm以下であることが好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。また、1μm以上であることが好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、30μm以上が特に好ましい。
【0067】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、膜厚80μmで測定した時に、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。全光線透過率が前記範囲内にあれば、樹脂フィルムを、光透過性が要求される光学部材、加飾用途、インテリア用途、真空成形用途に好適に使用できる。
【0068】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、耐熱性の観点から、ガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、105℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、115℃以上がより更に好ましく、120℃以上がより更に好ましく、124℃以上が特に好ましく、125℃以上が最も好ましい。
【0069】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、膜厚50μmで測定した時に、ヘイズが0.8%以下であることが好ましく、0.6%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.4%以下がより更に好ましく、0.3%以下が特に好ましい。さらに、樹脂フィルムの内部ヘイズが、膜厚50μmで測定した時に、0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下がより好ましく、0.3%以下がさらに好ましく、0.2%以下が特に好ましい。ヘイズ及び内部ヘイズが上述の範囲内にあれば、樹脂フィルムを、光透過性が要求される光学部材、加飾用途、インテリア用途、真空成形用途に好適に使用できる。なお、ヘイズはフィルム内部とフィルム表面(外部)のヘイズからなり、それぞれを内部ヘイズ、外部ヘイズと表現する。
【0070】
本実施形態に係る樹脂フィルムは光学フィルムとして使用することができる。特に偏光子保護フィルムとして使用する場合、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。つまり、面内位相差および厚み方向位相差の絶対値がともに小さいことが好ましい。より具体的には、面内位相差の絶対値は30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、13nm以下であることがより更に好ましく、12nm以下であることが特に好ましく、10nm以下であることが最も好ましい。また、厚み方向位相差の絶対値は50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることがより更に好ましく、8nm以下であることが特に好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。このように位相差が小さい樹脂フィルムは、液晶表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして好適に使用することができる。
【0071】
位相差は複屈折をベースに算出される指標値であり、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthがともに0となる。
【0072】
Re=(nx-ny)×d
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d
各式中、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内において伸張方向(ポリマー鎖の配向方向)をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さを表し、nx-nyは配向複屈折を表す。なお、フィルムのMD方向をX軸とするが、延伸フィルムの場合は延伸方向をX軸とする。
【0073】
(延伸)
本実施形態に係る樹脂フィルムは靭性が高く柔軟性に富むものであり、未延伸フィルムであってもよいが、延伸フィルムであってもよい。延伸することにより、樹脂フィルムの機械的強度の向上、膜厚精度の向上を図ることができる。
【0074】
本実施形態に係る樹脂フィルムを延伸する場合は、未延伸状態のフィルムを製造した後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、あるいは、フィルム成形中に、成膜及び溶剤の脱気の工程の進展と共に延伸操作を適宜加えることにより、延伸フィルム(一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム)を製造することができる。また、フィルム成形中の延伸と、フィルム成形後の延伸を適宜組み合わせても良い。
【0075】
延伸フィルムの延伸倍率は、特に限定されず、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍~5倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍~4倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍~3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。
【0076】
(用途)
本実施形態に係る樹脂フィルムは、必要に応じて、公知の方法によりフィルム表面の光沢を低減させることができる。そのような方法としては、例えば、無機充填剤または架橋性高分子粒子を添加する方法が挙げられる。また、得られるフィルムにエンボス加工を施すことにより、プリズム形状やパターン、意匠、ナーリングなどの表面凹凸層を形成したり、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
【0077】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、必要に応じて、粘着剤、接着剤等によるドライラミネート法及び/または熱ラミネート法などを用いて別のフィルムを積層したり、フィルムの表面あるいは裏面にハードコート層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、印刷加飾層、金属光沢層、表面凹凸層、艶消し層等の機能性層を形成して用いることができる。
【0078】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、耐熱性、透明性、柔軟性などの性質を利用して、各種用途に使用することができる。例えば、自動車内外装、パソコン内外装、携帯内外装、太陽電池内外装、太陽電池バックシート;カメラ、VTR、プロジェクター用の撮影レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、レンズカバーなどの映像分野、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、MDプレイヤーなどにおける光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CD、DVD、MDなどの光ディスク用の光記録分野、有機EL用フィルム、液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光子保護フィルム、偏光フィルム透明樹脂シート,位相差フィルム,光拡散フィルム、プリズムシートなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライト、テールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡、コンタクトレンズ、内視鏡用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路標識、浴室設備、床材、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓、カーポート、照明用レンズ、照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具などに使用することができる。また、転写箔シートを使用した成形品の代替用途としても使用できる。
【0079】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、金属、プラスチックなどの基材に積層して用いることができる。樹脂フィルムの積層方法としては、積層成形や、鋼板などの金属板に接着剤を塗布した後、金属板にフィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネートや、ドライラミネート、エキストルージョンラミネート、ホットメルトラミネートなどがあげられる。
【0080】
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
【0081】
本実施形態に係る樹脂フィルムの積層体は、自動車内装材、自動車外装材などの塗装代替用途、窓枠、浴室設備、壁紙、床材、採光・調光部材、防音壁、道路標識などの土木建築用部材、日用雑貨品、家具や電子電気機器のハウジング、ファクシミリ、ノートパソコン、コピー機などのOA機器のハウジング、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの端末の液晶画面の前面板や、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板などの光学部材、光学用素子、電気または電子装置の部品、滅菌処理の必要な医療用品、玩具またはレクリエーション品目、繊維強化樹脂複合材料などに使用することができる。
【0082】
特に、本実施形態に係る樹脂フィルムは、耐熱性および光学特性に優れる点では、光学用フィルムに好適であり、各種光学部材に用いられうる。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの端末の液晶画面の前面板、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光フィルム透明樹脂シート、位相差フィルム、光拡散フィルム、プリズムシート、表面保護フィルム、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺や、有機EL装置周辺、光通信分野等の公知の光学的用途に適用できる。
【実施例
【0083】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下で「部」および「%」は、特記ない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。
【0084】
(実施例1)
<グラフト共重合体(A1)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 133部
水酸化ナトリウム 0.004部
スルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム 0.2部
重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、過硫酸ナトリウム0.03部、ピロ亜硫酸ナトリウム0.001部を0.5%水溶液で入れ、次いで表1記載の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子用のモノマー(a)40部を0.523部/分の速度で連続的に添加した。さらに30分重合を継続することにより、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)を得た。重合転化率は99.5%であった。平均粒子径は表2に記載する。
その後、表1記載の非架橋メタクリル系重合体成分用のモノマー(b)60部を1.353部/分の速度で連続的に添加した。また、モノマー(b)追加開始と同時にスルホコハク酸ジ(2-エチルヘキシル)ナトリウム0.4部を5%水溶液で、モノマー(b)と同じ時間をかけて連続的に添加した。添加終了後、60分重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。平均粒子径は表2に記載する。
得られたラテックスを75℃で12時間乾燥させることにより、白色粉末状のグラフト共重合体(A1)を得た。
【0085】
(実施例2~8及び比較例1)
使用原料の種類と量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、グラフト共重合体(A2)~(A9)を製造した。
【0086】
【表1】
【0087】
(重合転化率)
重合により得られた重合体の重合転化率を以下の方法で求めた。重合系から重合体を含む約2gのラテックスを採取・精秤し、それを熱風乾燥機中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率を試料中の固形分比率として求めた。最後に、この固形分比率を用いて、以下の計算式により重合転化率を計算した。なお、この計算式において、多官能性単量体および連鎖移動剤は仕込み単量体として取り扱った。
重合転化率(%)={(仕込み原料総重量×固形分比率-水および単量体以外の原料総重量)/仕込み単量体重量}×100
【0088】
(非架橋メタクリル系重合体成分(b)の重量平均分子量)
重合により得られたグラフト共重合体のうち、非架橋メタクリル系重合体成分(b)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出し、表2に記載した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(型式:TSKgel Super HZM-H、東ソー株式会社製)を、GPC溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。試料溶液としては、グラフト共重合体の粉末20mgとTHF10mlからなる重合体溶液を43,000Gで30分間遠心分離して得た清澄な上澄み液を用いた。またGPCのカラム温度は40℃に設定した。
【0089】
(架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)およびグラフト共重合体(A1)~(A9)の平均粒子径)
平均粒子径は、前記の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)およびグラフト共重合体(A1)~(A9)の重合完了時点で得られたそれぞれのラテックスの状態で測定した体積平均粒子径である。測定装置として、日機装株式会社のMicrotrac UPA150を用い、測定した体積平均粒子径を平均粒子径として表2に記載した。尚、測定は室温で行い、測定粒子の屈折率は、重合に使用したモノマーからなるホモポリマーの屈折率の重量平均値を用いた。ホモポリマーの屈折率は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience 1989)]に記載されている値を使用した。
【0090】
(比較例3)
撹拌機を備えた8リットルガラス製反応器に脱イオン水200部、懸濁助剤であるリン酸水素2ナトリウム0.5部を仕込んだ。次に300rpmで撹拌しながら、反応器にラウロイルパーオキサイド0.3部を溶解させたMMA91部、BMA9部、連鎖移動剤であるチオグリコール酸2-エチルヘキシル(2-EHTG)0.018部からなる単量体混合液を加え、反応機内を窒素置換しながら60℃に昇温して重合を開始した。60℃到達後50分間経過時点で、懸濁安定剤としてノニオン系水溶性高分子であるアデカプルロニックF-68(株式会社ADEKA製、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体)を0.15部添加した。その後60℃でさらに200分間反応させたのち、80℃に昇温して3時間撹拌し、重合を完結させた。得られた重合体に対して、樹脂量の3倍量の脱イオン水を用いた水洗を4回実施し、乾燥させることで、ビーズ状の懸濁重合体(A10)(重量平均分子量97万)を得た。
【0091】
(懸濁重合体の重量平均分子量)
懸濁重合体の重量平均分子量は、懸濁重合体のビーズ20mgとTHF10mlからなる重合体溶液を試料溶液として用いたこと以外は前記の非架橋メタクリル系重合体成分(b)の重量平均分子量と同様にして算出した。
【0092】
(比較例4)
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 175部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.002部
炭酸ナトリウム 0.04725部
重合機内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、過硫酸カリウム0.03部を2%水溶液で入れ、次いで混合物(I)(MMA25.2部、BA1.6部、St0.2部、ALMA0.135部、n-OM0.3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.1部)を81分かけて連続的に添加した。さらに60分重合を継続することにより、(I)の重合物を得た。重合転化率は99.5%であった。
その後、過硫酸カリウム0.08部を2%水溶液で添加し、次いで混合物(II)(BA41部、St9部、ALMA0.75部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.2部)を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム純分0.015部を2%水溶液で添加し、120分重合を継続し、(II)の重合物を得た。重合転化率は99.7%であり、平均粒子径は220nmであった。
その後、過硫酸カリウム0.023部を2%水溶液で添加し、次いで混合物(III)(MMA18.4部、BA4.6部)を70分かけて連続的に添加し、60分重合を継続することにより、コアシェル型グラフト共重合体粒子ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを塩化マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のコアシェル型グラフト共重合体(A11)を得た。尚、(A11)は、従来のコアシェル型グラフト共重合体の代表例である。
【0093】
(グラフト共重合体(A11)のゴム中間層までの平均粒子径)
グラフト共重合体(A11)のゴム中間層までの平均粒子径は、前記重合段階(II)までの重合で得られたラテックスの状態で測定したこと以外は前記のグラフト共重合体(A1)~(A9)の平均粒子径と同様にして算出した。
【0094】
(グラフト共重合体(A11)の最外層の重量平均分子量)
グラフト共重合体(A11)の最外層の重量平均分子量は、グラフト共重合体(A11)を使用する以外は、前記の非架橋メタクリル系重合体成分(b)の重量平均分子量と同様にして算出した。
【0095】
(樹脂ドープの作製)
グラフト共重合体(A1)~(A9)単体および懸濁重合体(A10)単体の固形分濃度10%の樹脂ドープは、塩化メチレン92%とエタノール8%からなる混合溶媒41.5gに各重合体の粉末又はビーズ4.5gを加え、完全に溶解するまでマグネチックスターラーで攪拌して作製した。
【0096】
比較例2では、懸濁重合体(A10)およびグラフト共重合体(A11)を含む固形分濃度10%の樹脂ドープは、前記混合溶媒41.5gにグラフト共重合体(A11)の粉末0.68gを加えて均一になるまでマグネチックスターラーで撹拌し、得られた分散液を超音波バス(ヤマト科学社製 ブランソンニック1510J)でさらに15分間分散処理を行った後、分散液に懸濁重合体(A10)のビーズ3.82gを少しずつ添加し、完全に溶解するまで攪拌して作製した。
【0097】
(キャストフィルムの作製)
前記の樹脂ドープを、PETフィルム(東洋紡製 コスモシャインA4100)上に流延し、アプリケーターで均一な膜状に塗布した。乾燥後の厚みがおよそ70μmとなるようにクリアランスを調整した。塗膜を40℃の乾燥雰囲気下で1時間乾燥させた後、PETフィルムから剥離した。得られたフィルムをステンレス製の枠に固定し、140℃の乾燥雰囲気にて90分間乾燥させて残存溶剤を除去し、キャストフィルムを得た。
【0098】
(一軸延伸フィルムの作製)
未延伸のキャストフィルムから16cm四方の試験片を切り出し、135℃で幅固定一軸延伸を行った。延伸倍率は1.4倍、延伸速度は150mm/分で実施した。
【0099】
(膜厚)
フィルムの膜厚は、デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
【0100】
(MIT)
一軸延伸フィルムの繰り返し折り曲げ強度は、株式会社東洋精機製作所のMIT-DA型MIT試験機を用いて測定した。試験片は幅1.5cmで切り出し、屈曲半径0.4mm、屈曲角135°の条件で200gの荷重をかけ、延伸方向に対して垂直に折り目が付く向きに対し試験した。試験は3回ずつ行い、その平均値を表2に記載した。
【0101】
(トリミング試験)
一軸延伸フィルムを、定規を当てて延伸方向と平行の方向にカッター刃(NTカッター製クイックナイフQ-100P)で素早く切断し、その切断面の外観を下記基準により5段階評価で評価した。試験は一軸延伸フィルム1枚について5回ずつ行い、5回の評価点の平均を表2に記載した。5回の評価点の平均が3点以上をトリミング性良好と評価できる。
【0102】
1:半分以上の長さで切断面が平滑でなく、加えて、5mm以上のクラックまたは欠け、またはフィルムの破断が発生した。
2:半分以上の長さで切断面が平滑でなく、加えて、5mm未満のクラックまたは欠けが発生したが、フィルムの破断は発生しなかった。
3:半分以上の長さで切断面が平滑でなかったが、クラック、欠け、フィルムの破断のいずれも発生しなかった。
4:半分以上の長さで切断面が平滑であり、かつ、クラック、欠け、フィルムの破断のいずれも発生しなかった。
5:切断面が全て平滑であった。
【0103】
(ヘイズ)
未延伸フィルムの全体ヘイズは、ヘイズメーター(スガ試験機株式会社製 HZ-V3)を用い、JIS K7105に記載の方法にて測定した。一方、未延伸フィルムの両面をグリセリン、次いでガラスの順で挟んで同様の測定を行って得られた値を内部ヘイズとした。得られた結果を膜厚50μm相当に換算して表2に記載した。
【0104】
(一軸延伸フィルムの面内位相差および厚み方向位相差)
延伸フィルムの中央部から試験片を切り出した。この試験片の面内位相差を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA-WR)を用いて波長590nm、入射角0゜で測定した。併せて入射角40°の測定も行い、厚み方向位相差も算出した。測定は、試験片を動かして測定箇所を変えながら3回ずつ行い、その平均値を膜厚50μm相当に換算して表2に記載した。
【0105】
(ガラス転移温度)
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子(a)のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience 1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した。
【0106】
非架橋メタクリル系重合体成分(b)又は懸濁重合体のビーズのガラス転移温度は、株式会社 日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計DSC7000Xを用いて測定した。試料であるグラフト共重合体の粉末又は懸濁重合体のビーズを窒素気流下に置いて、10℃/分の昇温速度で190℃まで加熱したのち、3分間190℃で保持してから40℃まで急冷し、再度10℃/分の昇温速度で190℃まで加熱した。2度目の昇温中に観測されたガラス転移に対して、補外ガラス転移開始温度と補外ガラス転移終了温度の平均を求め、この数値をガラス転移温度とした。結果を表2に記載した。
【0107】
フィルムのガラス転移温度は、140℃乾燥後のキャストフィルムを更に175℃で1時間乾燥させたものを試料として測定したこと以外は、前記の非架橋メタクリル系重合体成分(b)又は懸濁重合体のビーズのガラス転移温度と同様にして求めた。結果を表2に記載した。
【0108】
(グラフト共重合体パウダーの貯蔵安定性)
パウダー状態におけるグラフト共重合体の貯蔵安定性は、レーザー回折式粒度分布計(マルバーン社製 マスターサイザー3000)を用いた粒度分布の経時変化によって評価した。粒度分布の測定における分散媒には、塩化メチレン92%とエタノール8%からなる混合溶媒を用いた。測定サンプルとなる固形分濃度10%の樹脂ドープは、測定直前にパウダーと前記混合溶媒から作製した。前記分散媒を装置内で循環させながら前記樹脂ドープを滴下して、レーザー散乱強度が0.5~2.0%になるようにして測定を行った。グラフト共重合体パウダーは50℃、95%RHの条件で貯蔵し、貯蔵開始0、3、又は14日目のパウダーそれぞれについて上記の測定を行った。粒子全体に対して1μm以上の粒子が占める体積%を表2に記載した。
【0109】
(グラフト共重合体を含有する樹脂ドープの貯蔵安定性)
グラフト共重合体を含有する樹脂ドープの貯蔵安定性は、前記のグラフト共重合体パウダーの貯蔵安定性と同様にして評価した。樹脂ドープ作製のための混合溶媒には、塩化メチレン82%とメタノール18%からなる混合溶媒、または塩化メチレン92%とエタノール8%からなる混合溶媒を用いた。固形分濃度10%で作製した樹脂ドープを室温で貯蔵し、貯蔵開始0、3、又は14日目の樹脂ドープそれぞれについて、該樹脂ドープと同じ組成の混合溶媒を分散媒として用いて測定を行った。粒子全体に対して1μm以上の粒子が占める体積%を表2に記載した。
【0110】
【表2】
【0111】
表2より次のことが分かる。実施例1~8では、グラフト共重合体単体から、耐折り曲げ性、耐トリミング性、及び耐熱性が高く、かつヘイズが低い樹脂フィルムを成形することができた。また、グラフト共重合体パウダー及びグラフト共重合体含有ドープの貯蔵安定性が良好であった。
【0112】
一方、非架橋メタクリル系重合体成分の重量平均分子量を25万未満と低く設定したグラフト共重合体を用いた比較例1では、製造された樹脂フィルムのガラス転移温度が低く、耐熱性が低かった。従来のようにメタクリル系樹脂にコアシェル型グラフト共重合体を配合して樹脂フィルムを作製した比較例2では、樹脂フィルムのヘイズが大きく、また、コアシェル型グラフト共重合体パウダー及びコアシェル型グラフト共重合体含有ドープの双方で、経時的に粗大粒子の含有量が増大し、貯蔵安定性が不良であった。一般的なメタクリル系樹脂のみから作製した比較例3の樹脂フィルムは、耐折り曲げ性及び耐トリミング性が不十分であった。また、比較例4で示す通り、従来のコアシェル型グラフト共重合体のみからは、樹脂フィルムを作製できなかった。
【0113】
実施例4、6-8で得たグラフト共重合体に関して、以下の方法に沿って弾性率と透湿度を測定した。結果を表3に示す。
【0114】
(弾性率)
測定に供する樹脂フィルムは、以下の手順で作製した。まず、塩化メチレン92%とエタノール8%からなる混合溶媒18gに、各グラフト共重合体2gを加えて溶解し、固形分濃度10%のドープを調製した。このドープをPETフィルム(製品名:コスモシャインA4100、東洋紡株式会社製)上にウェット膜厚0.6mmで塗工し、速やかにバットをかぶせ、室温で30分乾燥後、40℃の熱風乾燥機中で60分間乾燥して、生乾きフィルムを作製した。この生乾きフィルムをPETフィルムから剥離した後、金属枠に固定し、熱風乾燥機中で140℃、1時間乾燥して、厚さ40μmのフィルムを作製した。
得られたフィルムを幅10mm、長さ130mmの短冊状にカットし、チャック間距離100mm、引張速度13mm/分の条件で引張試験を行い、3から12mmの範囲において弾性率を計算した。計算結果はn=7の平均値として求めた。
【0115】
(透湿度)
測定に供する樹脂フィルムは、以下の手順で作製した。まず、塩化メチレン82%とメタノール18%からなる混合溶媒18gに、各グラフト共重合体2gを加えて溶解し、固形分濃度10%のドープを調製した。このドープをPETフィルム(製品名:コスモシャインA4100、東洋紡株式会社製)上にウェット膜厚0.5mmで塗工し、速やかに熱風乾燥機中で40℃、10分間乾燥して、生乾きフィルムを作製した。この生乾きフィルムをPETフィルムから剥離したのち適したサイズの金属枠に固定し、更に熱風乾燥機中で140℃、1時間乾燥して、厚さ50μmのフィルムを作製した。
透湿度は、カップ法を用いて、JIS Z 0208-1976に準拠して測定した。厚み50μmの円形フィルム、測定面積28.3cmのカップ(テスター産業株式会社製)、水分測定用塩化カルシウム(Wako)8gを用いて作製したサンプルを、恒温恒湿機(形式:LH33-13P、ナガノサイエンス株式会社製)に入れ、40℃、90%RHで測定した。
【0116】
【表3】
【0117】
表3より次のことが分かる。実施例4、6~8では、グラフト共重合体単体から、上述した耐折り曲げ性、耐トリミング性に加えて、透湿度と弾性率が良好な樹脂フィルムを成形することができた。中でも、実施例6及び7で得られた樹脂フィルムは、透湿度と弾性率のバランスが良好であった。