(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-18
(45)【発行日】2026-03-27
(54)【発明の名称】中空粒子及びその製造方法、並びに、中空粒子の利用
(51)【国際特許分類】
B01J 13/14 20060101AFI20260319BHJP
C09K 23/54 20220101ALI20260319BHJP
C08G 77/04 20060101ALI20260319BHJP
C08K 7/26 20060101ALI20260319BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20260319BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20260319BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20260319BHJP
【FI】
B01J13/14
C09K23/54
C08G77/04
C08K7/26
C08L79/08 A
C08L63/00 A
C08L83/08
(21)【出願番号】P 2023502300
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2022005879
(87)【国際公開番号】W WO2022181387
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2021027715
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021027716
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】古田 武史
(72)【発明者】
【氏名】吉武 真理
(72)【発明者】
【氏名】藤井 真理
(72)【発明者】
【氏名】古川 誉士夫
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0199671(US,A1)
【文献】国際公開第2008/111393(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103252202(CN,A)
【文献】国際公開第2014/162311(WO,A1)
【文献】特表2012-505752(JP,A)
【文献】特開2017-001031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
C08G 77/00-77/62
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 9/00-9/42
C09K 23/00-23/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
1Si(OH)O
2/2単位、及びR
1Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で0.1~
15モル%と、
(b)R
2SiO
3/2単位(式中、R
2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
2Si(OH)O
2/2単位、及びR
2Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で
85~99.9モル%と、
を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子。
【請求項2】
以下の構成単位(1)~(4)を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子であって、
(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R
2)
3量が0.01mmol/g以上である、中空粒子:
(1)R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、
R
1Si(OH)O
2/2単位及び
R
1Si(OH)
2O
1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(2)R
1Si(OSi(R
2)
3)O
2/2単位(式中、R
2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及び
R
1Si(OSi(R
2)
3)
2O
1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(3)R
3SiO
3/2単位(式中、R
3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、
R
3Si(OH)O
2/2単位及び
R
3Si(OH)
2O
1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(4)R
3Si(OSi(R
2)
3)O
2/2単位及び
R
3Si(OSi(R
2)
3)
2O
1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位。
【請求項3】
残存Si-OH量が0.35mmol/g以下である、請求項2に記載の中空粒子。
【請求項4】
粒子径が10~1000nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の中空粒子。
【請求項5】
全体積に対する内部空間の体積比率が10~70%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の中空粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の中空粒子を溶媒に分散させてなる分散液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の中空粒子と、マトリクス樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項8】
マトリクス樹脂がエポキシ樹脂、または、ポリイミド樹脂である請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の樹脂組成物から得られる低誘電材。
【請求項10】
以下の工程を有する中空粒子の分散液の製造方法:
工程1.水性媒体中、カチオン性界面活性剤を含む界面活性剤の存在下、アクリル系モノマーを重合し、アクリル系重合体を含む粒子を作製する工程;
工程2.前記工程1で得られたアクリル系重合体を含む粒子の表面に、(a)R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
1Si(OH)O
2/2単位、及びR
1Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(b)R
2SiO
3/2単位(式中、R
2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
2Si(OH)O
2/2単位、及びR
2Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程であって、前記縮合物は、前記(a)に記載の単位の1種以上を合計で0.1~20モル%と、前記(b)に記載の単位の1種以上を合計で80~99.9モル%と、を含有するものである、工程;
工程3.前記工程2で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去することで、アクリル系重合体の代わりに、コアに有機溶剤を内包した中空粒子の分散液を得る工程。
【請求項11】
請求項10に記載の中空粒子の分散液の製造方法により得られた、前記中空粒子の分散液を乾燥することで中空粒子内部の有機溶剤を除去して中空粒子を得る工程を含む中空粒子の製造方法。
【請求項12】
以下の工程を有する中空粒子の製造方法:
工程1.カチオン性界面活性剤の存在下にて、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
1Si(OH)O
2/2単位、及びR
1Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R
3SiO
3/2単位(式中、R
3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
3Si(OH)O
2/2単位、及びR
3Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程;
工程2.前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程;
工程3.前記工程2で得られた中空粒子を構成するR
1Si(OH)O
2/2単位、R
1Si(OH)
2O
1/2単位、R
3Si(OH)O
2/2単位、及びR
3Si(OH)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位に対して、封止剤を反応させ、(2)R
1Si(OSi(R
2)
3)O
2/2単位(式中、R
2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR
1Si(OSi(R
2)
3)
2O
1/2単位、(4)R
3Si(OSi(R
2)
3)O
2/2単位及びR
3Si(OSi(R
2)
3)
2O
1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を生成する水酸基の封止工程であって、
前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R
2)
3量が0.01mmol/g以上である、工程。
【請求項13】
前記工程2は、前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去した後、乾燥させて中空粒子を得る工程である、請求項12に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項14】
(a)R
1
SiO
3/2
単位(式中、R
1
は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
1
Si(OH)O
2/2
単位、及びR
1
Si(OH)
2
O
1/2
単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で0.1~20モル%と、
(b)R
2
SiO
3/2
単位(式中、R
2
は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R
2
Si(OH)O
2/2
単位、及びR
2
Si(OH)
2
O
1/2
単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で80~99.9モル%と、
を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子と、マトリクス樹脂と、を含有する樹脂組成物から得られる低誘電材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその製造方法、並びに、中空粒子の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信業界の5G(高速回線)化に対応するため、伝送損失の低い樹脂材料、すなわち誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の低い樹脂材料の開発が行われている。
【0003】
樹脂材料の低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)の方法には、Dkが1である空気を利用した、樹脂材料の多孔質化、及び、樹脂材料への中空粒子の添加などが知られている。
【0004】
特許文献1に開示された技術では、粒子径10~1000nmの中空シリコーン系微粒子と、ポリイミドまたはポリテトラフルオロエチレンとを含有してなる樹脂組成物によって、層間絶縁膜の低誘電化を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術の低誘電化には、改善の余地がある。
【0007】
本発明の一態様は、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の低誘電化を実現できる中空粒子、及びその製造方法、並びに、当該中空粒子の利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、以下の態様を含む。
【0009】
[1](a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で0.1~20モル%と、
(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で80~99.9モル%と、
を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子。
【0010】
[2]以下の構成単位(1)~(4)を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子であって、
(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、中空粒子:
(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位。
【0011】
[3]以下の工程を有する中空粒子の分散液の製造方法:
工程1.水性媒体中、カチオン性界面活性剤を含む界面活性剤の存在下、アクリル系モノマーを重合し、アクリル系重合体を含む粒子を作製する工程;
工程2.前記工程1で得られたアクリル系重合体を含む粒子の表面に、(a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程であって、前記縮合物は、前記(a)に記載の単位の1種以上を合計で0.1~20モル%と、前記(b)に記載の単位の1種以上を合計で80~99.9モル%と、を含有するものである、工程;
工程3.前記工程2で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去することで、アクリル系重合体の代わりに、コアに有機溶剤を内包した中空粒子の分散液を得る工程。
【0012】
[4]以下の工程を有する中空粒子の製造方法:
工程1.カチオン性界面活性剤の存在下にて、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程;
工程2.前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程;
工程3.前記工程2で得られた中空粒子を構成するR1Si(OH)O2/2単位、R1Si(OH)2O1/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位に対して、封止剤を反応させ、(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を生成する水酸基の封止工程であって、
前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、工程。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る中空粒子によれば、マトリクス樹脂中に分散させ、回路基板などの層材として用いた場合に、当該層材のDkを低くすることができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の他の態様に係る中空粒子は、残存水酸基が封止されている、シリコーン系化合物からなる層を有する。したがって、本発明の一態様によれば、中空粒子とマトリクス樹脂とを含有する樹脂組成物から得られる電材は、非常に低いDk及びDfを獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例A2の中空粒子の内部へのマトリクス樹脂の侵入有無と中空粒子の分散性とを評価するためのTEM画像である。
【
図2】比較例A2の中空粒子の内部へのマトリクス樹脂の侵入有無と中空粒子の分散性とを評価するためのTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0017】
[実施形態A]
〔1.本発明の実施形態Aの技術的思想〕
特許文献1ではポリイミド系樹脂やフッ素系樹脂等の高分子量の樹脂を用いた絶縁膜が開示されている一方で、エポキシ樹脂のような熱硬化前は比較的低分子量のマトリクス樹脂を用いた場合にも低い誘電率を有する絶縁材料が得られるかどうかは示唆されていない。また、特許文献1の中空シリコーン系粒子は、一旦コアシェル型の粒子を作製した後、有機溶剤によりコアの有機高分子を除去することで中空化しており、シェルのシリコーン系化合物には有機高分子が粒子外に拡散通過できる程の空隙が存在していると考えられる。そのため、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂のような熱硬化前は比較的低分子量の樹脂を用いた場合、樹脂が中空シリコーン系粒子内に侵入し、中空部分が樹脂によって部分的あるいは完全に満たされることで、期待通りに低誘電化された絶縁材料が得られない懸念がある。
【0018】
本発明の実施形態Aは、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、エポキシ樹脂のような熱硬化前は比較的低分子量のマトリクス樹脂中に分散させ、回路基板などの層材として用いた場合に、当該層材の低誘電化、特に低誘電率化が可能な中空粒子を提供することである。
【0019】
本発明者等は、鋭意検討の結果、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を含むシリコーン系化合物からなる層を有する中空粒子をマトリクス樹脂中に分散させ、回路基板などの層材として用いた場合に、当該層材の誘電率を低くできることを見出し、本発明を完成するに至った。誘電率を低くできるのは、アミノ基とマトリクス樹脂とが反応して中空粒子の表面を覆う層の構造が緻密なものとなり、その結果、マトリクス樹脂が中空粒子のコア部分へ侵入することが抑制され、中空粒子の非中空化が抑制されたためであると考えられる。本発明の実施形態Aに係る中空粒子であれば、中空粒子のマトリクス樹脂への配合量を減じることができ、層材の低誘電化とともに、層材の強度及び密着性も確保することができる。なお、本発明の実施形態Aは、上述した推定メカニズムに限定されるものではないことを念のため付言しておく。
【0020】
一般的に、極性基を有する添加剤をマトリクス樹脂中に分散させ、回路基板などの層材として用いた場合には、当該層材は、極性基を有さない添加剤を添加した場合と比較し高誘電化すると考えられる。アミノ基は、極性基に分類される。それ故に、アミノ基を有する中空粒子をマトリクス樹脂中に分散させ、回路基板などの層材として用いた場合に、当該層材を低誘電化できたことは、驚くべきことである。
【0021】
〔2.中空粒子〕
本発明の実施形態Aに係る中空粒子は、(a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で0.1~20モル%と、
(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で80~99.9モル%と、
を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する。
【0022】
(a)のR1SiO3/2単位の原料としては、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、アミノブチルトリプロポキシシラン等が挙げられる。例えばアミノプロピルトリメトキシシランの場合、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0023】
(a)のR1Si(OH)O2/2単位及びR1Si(OH)2O1/2単位は、原料であるシラン類が加水分解後に縮合反応する際に、水酸基が一部未反応のまま残存しR1SiO3/2単位へと至らなかった場合の単位を表す。
【0024】
(b)のR2SiO3/2単位の原料としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0025】
(b)のR2Si(OH)O2/2単位及びR2Si(OH)2O1/2単位は、原料であるシラン類が加水分解後に縮合反応する際に、水酸基が一部未反応のまま残存し、R2SiO3/2単位へと至らなかった場合の単位を表す。
【0026】
前記構成によれば、(a)の単位が、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を有するので、中空粒子をマトリクス樹脂に分散させ、回路基板などの層材として用いた場合に、当該層材の誘電率を低くすることができる。
【0027】
中空粒子中の(a)の割合の下限は、0.1モル%であることが好ましく、1モル%であることがより好ましい。(a)の割合の上限は20モル%であることが好ましく、15モル%であることがより好ましい。(a)の割合が0.1モル%より少なくなるとアミノ基数が少なくマトリクス樹脂の粒子内部への侵入を防ぐことが困難となり、(a)の割合が20モル%を超えると極性基であるアミノ基数が多くなりすぎて逆に低誘電化を阻害してしまう恐れがある。
【0028】
中空粒子中の(b)の割合の下限は、80モル%であることが好ましく、85モル%であることがより好ましい。(b)の割合の上限は99.9モル%であることが好ましく、99.0モル%であることがより好ましい。
【0029】
前記中空粒子は、粒子径が10~1000nmであることが好ましい。10nmより小さい粒子や1000nmより大きい粒子は安定的に合成することが難しい傾向がある。なお、本発明における粒子径は、後述する実施例Aのように、まず粒子のTEM画像を取得し、当該TEM画像における粒子の外径として求めることができる。より具体的に、10個以上、より好ましくは100個以上、更に好ましくは1000個以上の粒子の各々について外径を測定し、当該測定値の平均値として、粒子径を求めることができる。
【0030】
この場合、層材の低誘電化を図れるとともに、層材の強度及び平坦性も良好である。粒子径の下限は20nmであることがより好ましく、30nmであることがさらに好ましい。粒子径の上限は800nmであることがより好ましく、500nmであることがさらに好ましい。粒子径が上記範囲であることで、層材の強度及び平坦性はさらに良好となり、粒子の安定的な合成も可能となる。
【0031】
前記中空粒子は、全体積に対する内部空間の体積比率が10~70%であることが好ましい。体積比率が10%より小さいと層材の低誘電化効果が十分でない場合がある。また、体積比率が70%を超えると中空粒子自体の強度が不足して加工中に壊れる場合がある。
【0032】
この場合、層材の低誘電化を図れるとともに、層材の強度及び密着性も良好である。体積比率の下限は15%であることがより好ましい。体積比率の上限は60%であることがより好ましい。
【0033】
〔2.中空粒子の分散液の製造方法及び中空粒子の製造方法〕
本発明の実施形態Aに係る中空粒子の製造方法は:
工程1.水性媒体中、カチオン性界面活性剤を含む界面活性剤の存在下、アクリル系モノマーを重合しアクリル系重合体を含む粒子を作製する工程;
工程2.前記工程1で得られたアクリル系重合体を含む粒子の表面に、(a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程であって、前記縮合物は、前記(a)に記載の単位の1種以上を合計で0.1~20モル%と、前記(b)に記載の単位の1種以上を合計で80~99.9モル%と、を含有するものである、工程;
工程3.前記工程2で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去することで、アクリル系重合体の代わりに、コアに有機溶剤を内包した中空粒子の分散液を得る工程;
工程4.前記工程3で得られた中空粒子の分散液を乾燥することで中空粒子内部の有機溶剤を除去して中空粒子を得る工程
を有する。
【0034】
本発明の実施形態Aに係る中空粒子の分散液の製造方法は、上述した工程1、工程2、及び工程3を有し得る。
【0035】
アクリル系重合体は、カチオン性界面活性剤及び有機硫黄化合物の存在下、アクリル酸エステル類及び/またはメタクリル酸エステル類を重合してなるものが好ましい。
【0036】
アクリル系重合体を含む粒子(以下、ベース粒子と称する)としては、重量平均分子量10000未満かつ体積平均粒子径500nm未満であることが好ましい。ベース粒子の組成については限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル-ブタジエン共重合体等に代表される軟質重合体でもよく、アクリル酸ブチル-スチレン共重合体、アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体等の硬質重合体でもよい。後の工程での除去性という観点から、軟質重合体が好ましい。
【0037】
さらには、ベース粒子の組成は、アクリル酸ブチルを50重量%以上用いた重合体が好ましく、アクリル酸ブチルを80重量%以上用いた重合体がさらに好ましい。
【0038】
ベース粒子の製造方法は、特に限定されず、乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法、水系分散重合法等公知の方法が使用できる。なかでも、粒子径の制御が容易であり、工業生産にも適する点から、乳化重合法により製造することが特に好ましい。
【0039】
例えば乳化重合の際に使用する界面活性剤(乳化剤)は、後述するシリコーン系化合物の合成時に用いるカチオン性界面活性剤と同様あるいは類似のものを用いることが好ましい。
【0040】
ベース粒子の重合にはラジカル重合開始剤が用いられうる。ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0041】
前記重合を、例えば、硫酸第一鉄-ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ-エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩、硫酸第一鉄-グルコース-ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄-ピロリン酸ナトリウム-リン酸ナトリウム等のレドックス系で行うと、低い重合温度でも効率的に重合を完了することができる。
【0042】
ベース粒子は、後の段階で行なわれる有機高分子(ベース粒子を構成する重合体成分)の除去を有機溶媒により行う場合を考慮すると非架橋高分子であることが好ましく、ベース粒子の重量平均分子量は低い方が好ましい。具体的には、重量平均分子量が10000未満であることが好ましく、さらには7000未満であることがより好ましい。ベース粒子の重量平均分子量を低くするためには、例えば、連鎖移動剤の使用、高い重合温度に設定、多量の開始剤を使用する等種々の手段を適宜組み合わせて選択することができる。連鎖移動剤としては有機硫黄化合物であるt-ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の使用量としては、単量体100重量部あたり1~30重量部が好ましい。
【0043】
ベース粒子の重量平均分子量の下限値は特に制限されるものではないが、合成の難易度の点から、概ね500程度である。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析(ポリスチレン換算)によって測定できる。
【0044】
中空粒子が均一な空隙率を有するという観点からは、ベース粒子の粒子径分布は狭い方が好ましい。粒子径分布を狭くするためにシード重合法を利用することもできる。シード重合法とは、シード(種)粒子を仕込んだ後、成長成分の単量体を追加して重合を行い、シード粒子を大きく成長させる重合法である。
【0045】
また、本実施形態Aでは、ベース粒子の粒子径は、最終的に得られる中空粒子の粒子径よりも小さくすることが好ましい。
【0046】
一般的に乳化重合の際に使用する界面活性剤(乳化剤)の使用量が多いほど、得られる重合体の平均粒子径を小さくすることができる。
【0047】
本実施形態Aに用いるベース粒子には、後の工程でのベース粒子の除去を容易にするため、本発明の効果を損なわない範囲で、トルエン、ベンゼン、キシレン、n-ヘキサン等の水に溶けない有機溶剤を含有させても良い。有機溶剤の使用量は、ベース粒子100重量%中0~99重量%が好ましく、0~50重量%がより好ましい。有機溶剤の使用量が多すぎると粒径分布の制御が困難になることがある。
【0048】
本実施形態Aでは、ベース粒子とシリコーン系化合物の使用量及び使用割合を制御することにより、中空粒子の粒径、粒径分布、シェル層の厚み、空洞の大きさ、空隙率等を制御することができる。ベース粒子と、シリコーン系化合物との重量比率(ベース粒子/シリコーン系化合物)は必ずしも制限されるものではないが、2/98~95/5であることが好ましく、さらには4/96~55/45がより好ましい。当該比率が2/98より小さいと最終の中空粒子の空隙率が低くなり過ぎる場合がある。また、逆に比率が95/5より大きいと中空粒子の強度が不足して加工中に壊れる場合がある。ベース粒子がシリコーン系化合物で被覆された粒子をコアシェル粒子と称する。
【0049】
本実施形態Aのコアシェル粒子及び最終的に得られる中空粒子の粒子径は1000nm未満であることが好ましい。透明性や薄膜形成性等を重視する光学用途や電子材料用途等では、粒子径を300nm未満にすることがより好ましい。粒子径の下限は通常は10nm以上である。
【0050】
中空粒子の空隙率分布を測定するには、少なくとも10個以上の粒子をTEM観察して粒子の外径と内径とを測り、空隙率(粒子の体積中に占める内部空洞部分の体積比率)の平均値を算出する。
【0051】
本実施形態Aでは、例えば、ベース粒子と、塩基触媒を含む5~120℃の水とに対し、カチオン性界面活性剤、必要に応じてその他の界面活性剤、(a)の原料、(b)の原料、及び水の混合物をラインミキサーやホモジナイザーで乳化させた乳化液を、一括あるいは連続的に追加することにより、シリコーン系化合物で被覆されたコアシェル粒子を得ることができる。なお、(a)の原料と(b)の原料を別々に乳化させて、別々に追加することもできる。乳化液の追加は一括でも連続でも構わない。時間的には長くなるがラテックス状粒子の安定性や粒子径分布を重視するなら連続追加を採用することが好ましい。乳化液の追加前に塩基触媒を添加して、直ちに加水分解と縮合反応が進む条件で連続追加を行うと、コアシェル粒子は時間とともに大きく成長し、通常のシード重合のように、狭い粒子径分布を示すものを得ることができる。1時間以内の比較的短い時間の連続追加を行うと、比較的良い生産性と狭い粒子径分布を両立することもできる。カチオン性界面活性剤としては、例えばアミン塩型、第4級アンモニウム塩型等の公知のカチオン性界面活性剤をいずれも用いることができる。当該カチオン性界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ヘキサデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等のアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ココイルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ジデシルジメチルアンモニウム、ジヤシアルキルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルクロライド等を挙げることができる。これらのカチオン性界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのカチオン性界面活性剤の中では、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0052】
前記シリコーン系化合物の縮合反応条件によっては、シリコーン系化合物がベース粒子の表面だけではなく一部は内部に生成する。内部で生成したシリコーン系化合物は最終的に中空粒子の空隙率を低下させるので、シリコーン系化合物の内部での生成は防止しなければならない。この内部での生成は、シリコーン系化合物のベース粒子への浸透・膨潤/縮合反応の速度に関係していると推定される。したがって浸透・膨潤が十分に進む前に縮合反応を進めることが好ましい。具体的には、次の条件(i)及び(ii)の少なくとも1つを満たすことが好ましい。(i)シリコーン系化合物の連続追加時間が20分以内、(ii)反応温度が60℃以上。反応温度を低くすると縮合反応が遅くなり、シリコーン系化合物がベース粒子内部で生成し易くなる傾向がある。シリコーン系化合物の追加時間を長くすると、シリコーン系化合物が十分に浸透・膨潤するためベース粒子表面で被覆層を形成できにくくなると推定している。本発明においては、このようにシリコーン系化合物の重合条件を最適化することにより、中空粒子の構造を制御することができる。
【0053】
本実施形態Aにおいては、カチオン性界面活性剤が好適に用いられるが、必要に応じてその他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤等が使用されうる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、脂肪酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型等公知のアニオン性界面活性剤をいずれも用いることができ、例えば、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石鹸、半硬化牛脂脂肪酸カリ石鹸、ステアリン酸ソーダ石鹸、等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩(ナトリウム塩)、ジオクチルスルホコハク酸塩(ナトリウム塩)等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルケニルコハク酸塩(ジカリウム塩);アルキルリン酸エステル塩;β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型等の公知のノニオン性界面活性剤をいずれも用いることができる。当該ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンβ-ナフチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、アルキレン基の炭素数が3以上であるポリオキシアルキレントリアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステル;オキシエチレン-オキシプロピレンブロック重合体等を挙げることができる。これらのノニオン性界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのノニオン性界面活性剤の中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0055】
本実施形態Aに用いることのできる塩基触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどの無機塩基;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中でも、生成物からの除去のしやすさやオルガノシロキサンの乳化安定性の観点から、無機塩基、特にリン酸水素二ナトリウムが好ましい。
【0056】
前記ベース粒子及びコアシェル粒子の転化率(重合反応により原料モノマーがポリマーへ転化した割合)は後述の実施例の箇所に記載の通り、各々のラテックスを乾燥して得られる固形分量を用いて算出できる。転化率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。転化率が60%を下回ると、ポリマーに転化していないモノマーの量が多いため、意図した組成のポリマーが得られず、本発明の効果を十分発揮できない虞がある。
【0057】
本実施形態Aでは、必要な場合にシリコーン系化合物中のアミノ基を利用して、コアシェル粒子の重合後、あるいは最終の中空粒子の単離後に、さらに別のポリマーをグラフト重合させることもできる。グラフト重合できるポリマーとして、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。シリコーン系化合物中のアミノ基と、ポリマーの一原料(例えば酸二無水物、ジカルボン酸やその活性化物、カルボキシル基含有酸無水物等)とが反応してアミド結合等が生成した後、一原料の分子構造に由来する末端の酸無水物基、カルボキシル基及びその活性化物の官能基等と、ポリマーの別の原料(ジアミン等)とがさらに反応して分子量が増加していく。あるいは、該ポリマーの分子量が液相中等で増加した後に、粒子表面のアミノ基と反応させることでグラフトすることもできる。上記のようにグラフトポリマーを中空粒子に付与することで、中空粒子の、グラフトポリマーと同様あるいは類似の分子構造をもつマトリクス樹脂への分散性が向上し、さらに中空粒子及びマトリクス樹脂の耐熱性、光学特性、電気特性等を改良できると期待される。
【0058】
本実施形態Aにおいて、コアシェル粒子中からベース粒子部分を除去する方法としては、例えば、有機溶剤を用いる方法、燃焼による方法等があげられる。コアシェル粒子中のベース粒子部分を除去するのに使用される有機溶剤としては、コアになるベース粒子部分を溶解し、シェルになるシリコーン系化合物を溶解しないものが好ましい。具体例としては、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、キシレン、n-ヘキサン、アセトン等が挙げられる。また、本実施形態Aにおいて、ベース粒子部分を除去した後にさらにベース粒子部分除去後のコアシェル粒子を有機溶剤で洗浄することもできる。洗浄に用いることのできる有機溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、n-ヘキサン、メタノール等が挙げられる。ベース粒子部分の有機溶剤による除去方法としては、例えば、コアシェル粒子と有機溶剤とを加温し、撹拌混合して凝固粒子を得、凝固液を静置した後、凝固粒子を濾別する。
【0059】
回収した凝固粒子を温度20~150℃で、1分~48時間、必要に応じて真空環境下で、乾燥させて中空粒子を得る。
【0060】
〔3.樹脂組成物〕
本実施形態Aに係る樹脂組成物は、前記中空粒子と、マトリクス樹脂とを含有する。
【0061】
前記構成によれば、樹脂組成物を回路基板の層材として用いた場合に、誘電率を低くすることができる。
【0062】
本実施形態Aの樹脂組成物を得るには、公知の方法で中空粒子とマトリクス樹脂とを配合すればよい。配合の方法は特に限定されない。中空粒子が微分散しやすく、マトリクス樹脂と相溶する溶剤又は滑剤に中空粒子を分散させ、この分散液とマトリクス樹脂とを混合してもよい。あるいは粉体状の中空粒子をマトリクス樹脂にそのまま添加し混合させてもよい。また、本実施形態Aにおいて、本発明の効果を奏する限り必要に応じて樹脂組成物に添加剤等を加えてもよい。使用する溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール等のヒドロキシエーテル類;フェノール類;芳香族炭化水素類;フロン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0063】
中空粒子の樹脂組成物全体に対する体積比率は、0.1~50vol%であることが好ましい。この場合、樹脂組成物の低誘電率性、層材の強度及び密着性が良好である。体積比率の下限は1vol%であることがより好ましく、5vol%であることがさらに好ましい。体積比率の上限は40vol%であることがより好ましく30vol%であることがさらに好ましい。
【0064】
マトリクス樹脂としては、回路基板の絶縁層の材料として好適な樹脂であれば使用できるが、熱硬化性樹脂であることが好ましい。例えば、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シアナート樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ジビニルベンゼン等の多官能スチレン化合物、変性ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。樹脂が液状のものが多く中空粒子を配合しやすい、また樹脂種が豊富で要求物性に応じて必要な分子構造を幅広く選択できるという観点で、上述したマトリクス樹脂の中では、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、水添型のエポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
前記マトリクス樹脂は、中空粒子のアミノ基と反応するものであることが好ましい。
【0066】
〔4.低誘電材〕
本実施形態Aに係る低誘電材は、前記樹脂組成物から得られる。低誘電材は、前記樹脂組成物を例えば熱硬化することにより得られる。
【0067】
前記構成によれば、低誘電材を回路基板の層材として用いた場合に、当該層材の誘電率が低い。従って、回路基板の伝搬速度が低下せず、伝送損失が小さい。
【0068】
〔5.他の用途〕
本発明の中空粒子は、回路基板用の絶縁層の他に、一般的な中空粒子が用いられている用途にも使用できる。中空構造に由来する特性(例えば低屈折率、低誘電率、低比重など)を有する材料として使用したり、内部に顔料、染料、香料、医薬品、磁性ナノ粒子などを内包して高機能性材料として使用したり、粒径が小さいことを利用してナノ粒子、透明材料などとして使用したり、粒径と空隙率が均一であることを利用して充填剤、担体などとして使用することができる。用途の具体例としては、ディスプレイなどの電気製品やレンズ等の光学製品、及び建材などで広く使用されている反射防止膜用途;一般塗料や電子ペーパー、重合トナー、ディスプレイなどに用いられるインク;プラスチック、ゴム、塗料用の充填剤;クロマトグラフ用充填剤;液晶ディスプレイやプロジェクターなどに用いられるワイヤグリッド偏光子用途;ディスプレイや照明として用いられる有機ELの拡散板用材料;半導体ナノ粒子、3次元フォトニック結晶、電子写真用感光体、転写ベルト、定着ベルトなどの電気用途;磁性ナノ粒子を用いた新ガン治療、ドラックデリバリーシステムや金コロイドとその修飾、経皮吸収製剤、放出制御剤などの医療用途;溶剤系顔料の改質剤、透湿コントロール布用材料、軽量コート紙及び板紙、抗菌性・通気性・徐放性多孔質フィルムなどの衛生材料への利用;ナノ濾過膜、高機能エアフィルター、内部緻密層を有する異方性膜などの分離膜用途;酸化チタンの環境浄化剤;化粧料、調光材料、吸着材料、遮音材料、断熱材、スペーサー、軽量化剤、研磨剤、軽量化材用途、衝撃緩衝用途、防振用途、制振用途などが挙げられる。
【0069】
本発明の実施形態Aは、以下の構成であってもよい。
【0070】
〔1〕(a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で0.1~20モル%と、
(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で80~99.9モル%と、
を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子。
【0071】
〔2〕粒子径が10~1000nmである、〔1〕に記載の中空粒子。
【0072】
〔3〕全体積に対する内部空間の体積比率が10~70%である、〔1〕または〔2〕に記載の中空粒子。
【0073】
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の中空粒子を溶媒に分散させてなる分散液。
【0074】
〔5〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の中空粒子と、少なくともマトリクス樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【0075】
〔6〕マトリクス樹脂がエポキシ樹脂である〔5〕に記載の樹脂組成物。
【0076】
〔7〕〔5〕又は〔6〕に記載の樹脂組成物から得られる低誘電材。
【0077】
〔8〕以下の工程を有する中空粒子の分散液の製造方法:
工程1.水性媒体中、カチオン性界面活性剤を含む界面活性剤の存在下、アクリル系モノマーを重合し、アクリル系重合体を含む粒子を作製する工程;
工程2.前記工程1で得られたアクリル系重合体を含む粒子の表面に、(a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程であって、前記縮合物は、前記(a)に記載の単位の1種以上を合計で0.1~20モル%と、前記(b)に記載の単位の1種以上を合計で80~99.9モル%と、を含有するものである、工程;
工程3.前記工程2で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去することで、アクリル系重合体の代わりに、コアに有機溶剤を内包した中空粒子の分散液を得る工程。
【0078】
〔9〕〔8〕に記載の中空粒子の分散液の製造方法により得られた、前記中空粒子の分散液を乾燥することで中空粒子内部の有機溶剤を除去して中空粒子を得る工程を含む中空粒子の製造方法。
【0079】
[実施形態B]
〔1.中空粒子の製造方法〕
本発明の実施形態Bの中空粒子の製造方法は、以下の工程1~3を有する:
工程1.カチオン性界面活性剤の存在下にて、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程;
工程2.前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程;
工程3.前記工程2で得られた中空粒子を構成するR1Si(OH)O2/2単位、R1Si(OH)2O1/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位に対して、封止剤を反応させ、(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を生成する水酸基の封止工程であって、前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、工程。
【0080】
本発明の実施形態Bの中空粒子の製造方法では、工程2は、工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去した後、乾燥させて中空粒子を得る工程であってもよい。
【0081】
以下では、各工程について説明する。
【0082】
〔1-1.工程1〕
工程1は、カチオン性界面活性剤の存在下にて、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程である。
【0083】
前記(1)及び(3)の構成単位のうち、R1Si(OH)O2/2単位、R1Si(OH)2O1/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及び、R3Si(OH)2O1/2単位は、シラノール基を含んでいる。本発明では、後述する工程3にて当該シラノール基を封止することによって、非常に低いDk及びDfを有する電材の材料となる中空粒子を実現することができる。
【0084】
前記アクリル重合体を含む粒子は、有機高分子粒子(A)によって形成されたもの、有機溶剤(B)によって形成されたもの、または、有機高分子粒子(A)及び有機溶剤(B)によって形成されたものである得る。
【0085】
前記アクリル重合体を含む粒子が有機高分子粒子(A)及び有機溶剤(B)によって形成されたものである場合、有機高分子粒子(A)及び有機溶剤(B)との重量比(有機高分子粒子(A)/有機溶剤(B))は、99/1~1/99の範囲が好ましい。
【0086】
前記有機高分子粒子(A)を構成する高分子としては、例えば、前記軟質重合体、及び、前記硬質重合体を挙げることができる。重合性及び/または溶剤溶解性等の観点から、これらのうち、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル-ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル-スチレン共重合体、アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体、及びアクリル酸ブチル-スチレン-アクリロニトリル共重合体が好ましく、ポリアクリル酸ブチルが特に好ましい。
【0087】
前記有機溶剤(B)としては、水に溶けず、乳化剤によって粒子を形成できるものであればよく、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、n-ヘキサンが挙げられる。勿論、前記有機溶剤は、これらに限定されるものではない。
【0088】
前記有機高分子粒子(A)の製造方法は、特に限定されず、乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法、及び水系分散重合法など公知の方法が使用できる。なかでも、粒子径の制御が容易であり、かつ、工業生産にも適する点から、乳化重合法によって有機高分子粒子(A)を製造することが好ましい。
【0089】
前記有機高分子粒子(A)を構成する有機高分子の重合には、ラジカル重合開始剤が用いられ得る。ラジカル重合開始剤としては、実施形態Aで例示したラジカル重合開始剤が挙げられる。前記重合を、例えば、硫酸第一鉄-ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ-エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩、硫酸第一鉄-グルコース-ピロリン酸ナトリウム、または硫酸第一鉄-ピロリン酸ナトリウム-リン酸ナトリウムを用いるレドックス系で行うと、低い重合温度でも効率的に重合を完了することができるので、好ましい。
【0090】
前記有機高分子粒子(A)を構成する有機高分子は、後に行なわれる工程2(工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体(例えば、有機高分子粒子(A)を構成する有機高分子)を、有機溶剤により抽出、除去する工程)を考慮すると、非架橋高分子であることが好ましく、及び/または、分子量が低い高分子であることが好ましい。前記有機高分子粒子(A)を構成する有機高分子の分子量は、重量平均分子量が30000未満であることが好ましく、10000未満であることがより好ましい。
【0091】
前記有機高分子粒子(A)を構成する有機高分子の重量平均分子量を低くするための方法としては、例えば、連鎖移動剤の使用、高い重合温度に設定、及び、多量の開始剤の使用からなる群から選択される少なくとも1つの方法を挙げることができる。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、及びn-ドデシルメルカプタンが挙げられる。有機高分子粒子(A)を構成する有機高分子の重量平均分子量の下限値は、特に制限されるものではないが、合成の難易度の点から、概ね2000程度である。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分析(ポリスチレン換算)によって測定できる。
【0092】
前記有機高分子粒子(A)の粒子径分布を狭くするために、シード重合法を利用して有機高分子粒子(A)を製造することもできる。なお、粒子(例えば、ラテックス状態の有機高分子粒子(A)、コアシェル粒子)の体積平均粒子径は、光散乱法から求められ得る。体積平均粒子径及び粒子径分布は、例えば、MIOCROTRAC社製のEX-150を用いることにより測定することができる。
【0093】
工程1では、例えば、アクリル系重合体を含む粒子の重量と、当該粒子の表面に配置される縮合物の重量との比を制御することによって、多層粒子の全体積に対するアクリル系重合体を含む粒子(コア)の体積比率を調節することができる。多層粒子の全体積に対するアクリル系重合体を含む粒子(コア)の体積比率は、10~70%であることが好ましく、15~50%であることがより好ましい。
【0094】
工程1では、例えば、アクリル系重合体を含む粒子の重量と、当該粒子の表面に配置される縮合物の重量とを制御(または、これらの重量の比を制御)することによって、多層粒子の体積平均粒子径を調節することができる。多層粒子の体積平均粒子径は、10nm~1000nmであることが好ましく、20nm~500nmであることがより好ましい。
【0095】
工程1では、カチオン性界面活性剤の存在下にて、多層粒子を製造する。カチオン性界面活性剤としては、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型等の公知のカチオン性界面活性剤をいずれも用いることができるが、当該カチオン性界面活性剤としては、実施形態Aで例示したカチオン性界面活性剤が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤の中では、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
【0096】
工程1では、ノニオン性界面活性剤の存在下にて、多層粒子を製造してもよい。つまり、工程1では、界面活性剤として、カチオン性界面活性剤を用いてもよく、ノニオン性界面活性剤を用いてもよく、カチオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤の両方を用いてもよい。ノニオン性界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型等の公知のノニオン性界面活性剤をいずれも用いることができるが、当該ノニオン性界面活性剤としては、実施形態Aで例示したノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤の中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0097】
工程1では、塩基性触媒の存在下にて、多層粒子を製造してもよい。当該塩基性触媒としては、例えば、無機塩基性触媒(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム)、アミン類(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン)、及び、第四級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、オルガノシロキサンの乳化安定性に優れる観点から、リン酸水素二ナトリウムが特に好ましい。
【0098】
工程1では、加熱しながら重合反応を進めてもよい。加熱温度は、限定されず、例えば、5~120℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。当該構成であれば、適度な重合速度を実現することができる。
【0099】
工程1では、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R1SiO3/2単位、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子(例えば、アクリル系重合体を含むコア粒子と、当該コア粒子の表面を覆う縮合物とを有する2層粒子)を製造する。
【0100】
前記(1)R1SiO3/2単位、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位中のR1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等を挙げることができる。
【0101】
R1SiO3/2単位の原料としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0102】
前記(3)R3SiO3/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位中のR3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等を挙げることができる。
【0103】
R3SiO3/2単位の原料としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びエチルトリプロポキシシランを挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0104】
より具体的に、工程1は、有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B)と、塩基性触媒とを含む5~120℃の水に対して、乳化剤(カチオン性界面活性剤及び/またはノニオン性界面活性剤)と、(1)R1SiO3/2単位、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、水との混合物をラインミキサーまたはホモジナイザーによって乳化した乳化剤を、一括または連続的に添加することにより、多層粒子を製造する工程であってもよい。
【0105】
乳化剤の添加は、一括で行われてもよく、連続で行われてもよい。乳化剤を連続で添加すれば、安定性の良い多層粒子を製造し易く、かつ、多層粒子の粒子径分布を調節し易くなるため、好ましい。
【0106】
有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B)に対して、乳化剤を添加する前に塩基性触媒を添加すれば、乳化剤添加後に直ちに加水分解と縮合反応が進む条件を整えることができる。当該条件の下、有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B)に対して、乳化剤を連続で添加すれば、多層粒子は時間とともに大きく成長し、通常のシード重合のように、狭い粒子径分布を示す多層粒子を得ることができる。短い時間(例えば、30分間~1時間)で乳化剤を連続で添加すれば、生産性良く多層粒子を製造できるとともに、狭い粒子径分布の多層粒子を製造することができる。
【0107】
〔1-2.工程2〕
工程2は、工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程である。工程1で得られた多層粒子の内部が有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B)によって形成されている場合には、工程2は、工程1で得られた多層粒子の内部の有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B)を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程であり得る。
【0108】
工程2の別の形態として、工程2は、工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体(または、有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B))を、燃焼により除去して中空粒子を得る工程であってもよい。
【0109】
前記有機溶剤としては、多層粒子の内部(コア)のアクリル系重合体(または、有機高分子粒子(A)及び/または有機溶剤(B))を溶解し、かつ、多層粒子の表面(シェル)のシリコーン系化合物を溶解しないものを用いることができる。当該有機溶剤としては、例えば、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、ベンゼン、キシレン、n-ヘキサンが挙げられる。比較的低沸点で除去しやすいという観点から、これらの有機溶剤の中では、アセトン、メチルエチルケトン、及びn-ヘキサンが好ましい。
【0110】
工程2は、工程2で得られた粒子を乾燥して、中空粒子を得る工程を包含してもよい。工程2は、工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、及び除去した後、乾燥させて中空粒子を得る工程であってもよい。より具体的に、工程2は、工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、及び除去することによって粒子を得た後、当該粒子を乾燥させて中空粒子を得る工程であってもよい。
【0111】
工程2で得られた粒子を乾燥させる方法は、限定されない。例えば、オーブンを用いて、工程2で得られた粒子を、100℃~150℃の温度にて、3時間~10時間、乾燥させればよい。勿論、当該温度及び/または時間は、粒子の量、及び大きさなどに基づいて、適宜、設定すればよい。
【0112】
〔1-3.工程3〕
工程3は、工程2で得られた中空粒子を構成するR1Si(OH)O2/2単位、R1Si(OH)2O1/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位に対して、封止剤を反応させ、(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を生成する水酸基の封止工程である。また、工程3では、前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である。
【0113】
つまり、工程3では、工程2で得られた中空粒子(未封止粒子)のシェルに含まれるシラノール基の少なくとも一部を封止剤によって封止することによって、最終産物である中空粒子を得る。この方法では、好ましい封止剤を選択すれば、シラノールのみを選択的に封止することが可能であり、他の官能基を壊す可能性は低い。
【0114】
前記封止剤は、限定されず、例えば、トリメチルシリルイミダゾール(N-トリメチルシリルイミダゾール)、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルクロロシラン、及び、N,O-トリメチルシリルアセトアミドが挙げられる。これらの封止材は、1種のみを用いてもよく、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
前記(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位、及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位、並びに、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位、及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位中のR2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等を挙げることができる。
【0116】
工程3では、前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であるが、好ましくは1~15モル%であり、より好ましくは1~10モル%である。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができ、アミノ基が樹脂と反応することで、樹脂組成物中における中空粒子の分散性にも寄与できる。
【0117】
工程3では、前記(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であるが、好ましくは85~99.0モル%であり、より好ましくは90~99.0モル%である。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができる。
【0118】
工程3では、前記Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上であるが、好ましくは0.15mmol/g以上であり、より好ましくは0.25mmol/g以上である。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができる。
【0119】
〔2.中空粒子〕
本発明の実施形態Bの中空粒子は、以下の構成単位(1)~(4)を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子であって、
(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、中空粒子である:
(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位。
【0120】
本発明の実施形態Bの中空粒子において、前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であるが、好ましくは1~15モル%であり、より好ましくは1~10モル%である。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができ、アミノ基が樹脂と反応することで、樹脂組成物中における中空粒子の分散性にも寄与できる。
【0121】
本発明の実施形態Bの中空粒子において、前記(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であるが、好ましくは85~99.0モル%であり、より好ましくは90~99.0モル%である。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができる。
【0122】
本発明の実施形態Bの中空粒子において、前記Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上であるが、好ましくは0.15mmol/g以上であり、より好ましくは0.25mmol/g以上である。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができる。
【0123】
前記(1)R1SiO3/2単位、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位中のR1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等を挙げることができる。
【0124】
R1SiO3/2単位の原料としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0125】
前記(3)R3SiO3/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位中のR3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等を挙げることができる。
【0126】
R3SiO3/2単位の原料としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びエチルトリプロポキシシランを挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0127】
前記(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位、及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位、並びに、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位、及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位中のR2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等を挙げることができる。
【0128】
本発明の実施形態Bの中空粒子は、残存するSi-OH(シラノール基)量が0.35mmol/g以下であることが好ましく、0.30mmol/g以下であることがより好ましく、0.27mmol/g以下であることがより好ましく、0.20mmol/g以下であることが最も好ましい。当該構成であれば、中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の更なる低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができる。
【0129】
本発明の実施形態Bの中空粒子は、粒子径が10nm~1000nmであることが好ましく、20nm~500nmであることがより好ましい。当該構成であれば、本発明の実施形態Bの中空粒子を容易に合成することができるのみならず、当該中空粒子とマトリクス樹脂とを含有する樹脂組成物から得られる電材の平坦性を高めることができる。なお、本発明における中空粒子の粒子径は、後述する実施例のように、まず粒子のTEM画像を取得し、当該TEM画像における粒子の外径として求めることができる。より具体的に、10個以上(例えば、15~20個)、より好ましくは100個以上、更に好ましくは1000個以上の粒子の各々について外径を測定し、当該測定値の平均値として、粒子径を求めることができる。
【0130】
本発明の実施形態Bの中空粒子は、全体積に対する内部空間の体積比率が10~70%であることが好ましく、15~50%であることがより好ましい。当該構成であれば、当該中空粒子を含有する樹脂組成物から得られる電材の低誘電化(低誘電率化及び低誘電正接化)を実現することができるのみならず、当該中空粒子の強度を高めることができる。
【0131】
〔3.樹脂組成物、及び、低誘電材〕
本発明の実施形態Bの樹脂組成物は、本発明の実施形態Bの中空粒子と、マトリクス樹脂とを含有するものである。
【0132】
前記マトリクス樹脂としては、限定されず、例えば、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂の前駆体、珪素系樹脂、及びフッ素系樹脂等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。平坦性及び生産性に優れた層間絶縁膜を提供できるという有利な効果を得ることができるという観点から、これらのマトリクス樹脂の中では、ポリイミド樹脂、及びポリイミド樹脂の前駆体が好ましい。
【0133】
ポリイミド樹脂とは、繰り返し単位内にイミド結合を含む高分子の総称であり、通常は芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドを指す。
【0134】
芳香族ポリイミドは、芳香族と芳香族とがイミド結合を介して共役構造を形成するため、剛直で強固な分子構造を持つ。イミド結合は強い分子間力を持つため、芳香族ポリイミドは、すべての高分子中で最高レベルの熱的性質、機械的性質、及び、化学的性質を持つ。
【0135】
芳香族ポリイミドの一般的な製法としては、以下のような2段法が知られている。つまり、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを等モルで重合させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を得る。この前駆体に対して、200℃以上の加熱処理、または、触媒を用いた脱水・環化(イミド化)処理を行って、ポリイミドを得る。前記触媒としては、例えば、アミン系化合物を用いることができる。イミド化によって発生した水を速やかに除去するための脱水剤として、触媒を用いた脱水・環化(イミド化)処理に、カルボン酸無水物を併用することもできる。
【0136】
ポリイミド樹脂として、ポリイミド樹脂の変性化合物も使用できる。例えば、主鎖を構成するベンゼン環とベンゼン環との間に、回転しやすい連結基(例えば、-O-、-S-、CO-)を導入することによって、ポリイミド樹脂の溶融流動性及び強靭性を改善することができる。また、ポリイミド樹脂の側鎖として安定かつかさ高い官能基(例えば、フェニル基、メチル基)を導入することによって、ポリイミド樹脂の溶融流動性を改善することができる。
【0137】
本発明の実施形態Bの樹脂組成物は、公知の方法によって得ることができる。本発明の実施形態Bの樹脂組成物を得るには、例えば、公知の方法で、本発明の実施形態Bの中空粒子と、マトリクス樹脂とを配合すればよい。配合の方法は、限定されず、例えば、本発明の実施形態Bの中空粒子が微分散し易い溶剤であって、マトリクス樹脂と相溶する溶剤の中に、本発明の実施形態Bの中空粒子を分散させた後、この分散液とマトリクス樹脂とを混合する方法が好ましい。
【0138】
前記溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類、フェノール類、芳香族炭化水素類、フロン類、N-メチルピロリドン、及び、ジメチルホルムアミドが挙げられる。マトリクス樹脂との相溶性の観点から、これらのうち、N-メチルピロリドン、及び、ジメチルホルムアミドが好ましい。本発明の実施形態Bの樹脂組成物には、必要に応じて添加剤などを加えてもよい。
【0139】
本発明の実施形態Bの中空粒子を分散させた分散液と、マトリクス樹脂との重量比率は、99/1~1/99の範囲であることが好ましく、5/95~80/20の範囲であることがより好ましい。当該構成であれば、本発明の実施形態Bの樹脂組成物から得られる誘電材(例えば、膜状の誘電材料)の強度を高めることができるとともに、当該誘電材を低誘電化させることができる。
【0140】
本発明の実施形態Bの樹脂組成物は、所望の形状(例えば、所望の厚さのシート状)に成形され得る。
【0141】
本発明の実施形態Bの低誘電材は、本発明の実施形態Bの樹脂組成物から得られるものである。例えば、本発明の実施形態Bの樹脂組成物を加熱及び硬化することによって、本発明の実施形態Bの低誘電材を得ることができる。なお、本発明の実施形態Bの低誘電材は、本発明の実施形態Bの樹脂組成物からなるものであってもよいし、本発明の実施形態Bの樹脂組成物と、本発明の実施形態Bの樹脂組成物以外の成分とを含むものであってもよい。
【0142】
本発明の実施形態Bの低誘電材は、所望の形状(例えば、所望の厚さのシート状)に成形され得る。
【0143】
本発明の実施形態Bの低誘電材は、例えば、誘電率(Dk)(10GHz/50%RH)が、3.00以下、2.90以下、2.80以下、2.70以下、2.60、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、または、2.00以下のものであり得る。誘電率(Dk)の下限値は、限定されず、例えば、0.01以上、0.05以上、または、0.10以上であり得る。
【0144】
本発明の実施形態Bの低誘電材は、例えば、誘電正接(Df)(10GHz/50%RH)が、0.0040以下、0.0039以下、0.0038以下、0.0037以下、0.0036以下、0.0035以下、0.0034以下、0.0033以下、0.0032以下、0.0031以下、0.0030以下、0.0029以下、0.0028以下、0.0027以下、0.0026以下、または、0.0025以下のものであり得る。誘電正接(Df)の下限値は、限定されず、例えば、0.0001以上、0.0005以上、または、0.0010以上であり得る。
【0145】
本発明の実施形態Bは、以下の構成であってもよい。
【0146】
[1]以下の構成単位(1)~(4)を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子であって、
(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、中空粒子:
(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位;
(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位。
【0147】
[2]残存Si-OH量が0.35mmol/g以下である、[1]に記載の中空粒子。
【0148】
[3]粒子径が10~1000nmである、[1]または[2]に記載の中空粒子。
【0149】
[4]全体積に対する内部空間の体積比率が10~70%である、[1]~[3]のいずれかに記載の中空粒子。
【0150】
[5][1]~[4]のいずれかに記載の中空粒子と、マトリクス樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【0151】
[6]マトリクス樹脂がポリイミド樹脂である[5]に記載の樹脂組成物。
【0152】
[7][5]または[6]に記載の樹脂組成物から得られる低誘電材。
【0153】
[8]以下の工程を有する中空粒子の製造方法:
工程1.カチオン性界面活性剤の存在下にて、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程;
工程2.前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程;
工程3.前記工程2で得られた中空粒子を構成するR1Si(OH)O2/2単位、R1Si(OH)2O1/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位に対して、封止剤を反応させ、(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を生成する水酸基の封止工程であって、
前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、工程。
【0154】
[9]前記工程2は、前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去した後、乾燥させて中空粒子を得る工程である、[8]に記載の中空粒子の製造方法。
【0155】
[その他]
本発明の一実施形態は、以下の構成であってもよい。
【0156】
[1](a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で0.1~20モル%と、
(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を合計で80~99.9モル%と、
を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子。
【0157】
[2]以下の構成単位(1)~(4)を含有するシリコーン系化合物からなる層を有する、中空粒子であって、
(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、中空粒子:
(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、
R1Si(OH)O2/2単位及び
R1Si(OH)2O1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及び
R1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、
R3Si(OH)O2/2単位及び
R3Si(OH)2O1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位;
(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及び
R3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位
からなる群より選択される1種以上の単位。
【0158】
[3]残存Si-OH量が0.35mmol/g以下である、[2]に記載の中空粒子。
【0159】
[4]粒子径が10~1000nmである、[1]~[3]のいずれかに記載の中空粒子。
【0160】
[5]全体積に対する内部空間の体積比率が10~70%である、[1]~[4]のいずれかに記載の中空粒子。
【0161】
[6][1]~[5]のいずれかに記載の中空粒子を溶媒に分散させてなる分散液。
【0162】
[7][1]~[6]のいずれかに記載の中空粒子と、マトリクス樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【0163】
[8]マトリクス樹脂がエポキシ樹脂、または、ポリイミド樹脂である[7]に記載の樹脂組成物。
【0164】
[9][7]または[8]に記載の樹脂組成物から得られる低誘電材。
【0165】
[10]以下の工程を有する中空粒子の分散液の製造方法:
工程1.水性媒体中、カチオン性界面活性剤を含む界面活性剤の存在下、アクリル系モノマーを重合し、アクリル系重合体を含む粒子を作製する工程;
工程2.前記工程1で得られたアクリル系重合体を含む粒子の表面に、(a)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(b)R2SiO3/2単位(式中、R2は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R2Si(OH)O2/2単位、及びR2Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程であって、前記縮合物は、前記(a)に記載の単位の1種以上を合計で0.1~20モル%と、前記(b)に記載の単位の1種以上を合計で80~99.9モル%と、を含有するものである、工程;
工程3.前記工程2で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去することで、アクリル系重合体の代わりに、コアに有機溶剤を内包した中空粒子の分散液を得る工程。
【0166】
[11][10]に記載の中空粒子の分散液の製造方法により得られた、前記中空粒子の分散液を乾燥することで中空粒子内部の有機溶剤を除去して中空粒子を得る工程を含む中空粒子の製造方法。
【0167】
[12]以下の工程を有する中空粒子の製造方法:
工程1.カチオン性界面活性剤の存在下にて、アクリル系重合体を含む粒子の表面に、(1)R1SiO3/2単位(式中、R1は、アミノ基を有する炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R1Si(OH)O2/2単位、及びR1Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、(3)R3SiO3/2単位(式中、R3は、アミノ基を有さない炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位の原料となるシラン類と、の縮合物を配置して、多層粒子を製造する工程;
工程2.前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去して中空粒子を得る工程;
工程3.前記工程2で得られた中空粒子を構成するR1Si(OH)O2/2単位、R1Si(OH)2O1/2単位、R3Si(OH)O2/2単位、及びR3Si(OH)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位に対して、封止剤を反応させ、(2)R1Si(OSi(R2)3)O2/2単位(式中、R2は、それぞれ同一または異なって、炭素数1~4のアルキル基を表す。以下同じ。)及びR1Si(OSi(R2)3)2O1/2単位、(4)R3Si(OSi(R2)3)O2/2単位及びR3Si(OSi(R2)3)2O1/2単位からなる群より選択される1種以上の単位を生成する水酸基の封止工程であって、
前記(1)と(2)の合計が0.1~20モル%であり、(3)と(4)の合計が80~99.9モル%であり、Si-OSi(R2)3量が0.01mmol/g以上である、工程。
【0168】
[13]前記工程2は、前記工程1で得られた多層粒子の内部のアクリル系重合体を、有機溶剤により抽出、除去した後、乾燥させて中空粒子を得る工程である、[12]に記載の中空粒子の製造方法。
【実施例】
【0169】
[実施例A]
以下、実施例A及び比較例Aによって本発明の実施形態Aをより詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明の実施形態Aは、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0170】
実施例A及び比較例Aにおける測定は以下のようにして実施した。
【0171】
〔転化率〕
ベース粒子、コアシェル粒子及びシリコーン中実粒子の転化率は、各々のラテックスを乾燥して得られる固形分量を用いて算出した。
【0172】
〔体積平均粒子径〕
コアシェル粒子の体積平均粒子径(nm)をラテックスの状態で測定した。測定装置としてMIOCROTRAC社製の「Nanotrac wave EX-150」を用いた。測定時間は120秒で実施した。
【0173】
〔有機高分子の重量平均分子量〕
有機高分子の重量平均分子量は、以下のGPC分析により測定した。システム:東ソー株式会社製「HLC?82201」、カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH4000」、「TSKgel SuperH3000」、「TSKgel SuperH2000」、溶媒:THFを用いて測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
【0174】
〔中空粒子の平均粒子径と内部空間の平均体積比率の測定〕
中空粒子の平均粒子径と、全体積に対する内部空間の体積比率とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めた。中空粒子を分散させた溶液を支持膜付グリッドメッシュ上に滴下し乾燥させて溶媒を除去したもの、あるいは中空粒子をTEM用包埋樹脂に分散させ光硬化した後ウルトラミクロトームで超薄切片を切り出したものを観察試料とした。観察写真上の粒子10個の外径の平均値を平均粒子径とした。また、外径及び内径(中空部径)を実測し、下式に従い算出した体積比率の平均値を求めた:
体積比率(%)=(内径/外径)3×100。
【0175】
〔中空粒子のエポキシ樹脂組成物中における添加量〕
中空粒子のエポキシ樹脂組成物中における添加量(vol%)について、エポキシ樹脂組成物中の各成分の重量、エポキシ樹脂の密度、中空粒子を構成するシリコーン系化合物の密度、空気の密度、及び上記で求めた中空粒子の内部空間の平均体積比率より、下式に従い計算した。各々の成分の密度は、それぞれ、エポキシ樹脂:1.17g/cm3、シリコーン系化合物:1.26g/cm3、空気の密度:0.001g/cm3とした。
・エポキシ樹脂の体積=エポキシ樹脂の重量/エポキシ樹脂の密度
・中空粒子の密度=空気の密度×(平均体積比率/100)+シリコーン系化合物の密度×(1-平均体積比率/100)
・中空粒子の体積=中空粒子の重量/中空粒子の密度
・中空粒子のエポキシ樹脂組成物中における添加量(vol%)=中空粒子の体積/(エポキシ樹脂の体積+中空粒子の体積)×100。
【0176】
〔エポキシ樹脂の中空粒子内部への侵入有無と中空粒子の分散性の確認〕
中空粒子内部へのエポキシ樹脂の侵入の有無と、エポキシ樹脂硬化物中における粒子の分散性について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認した。中空粒子を添加したエポキシ樹脂硬化物の小片をTEM用包埋樹脂に包埋した後ウルトラミクロトームで超薄切片を切り出したものを観察試料とした。試料の染色にはRuO4を用いた。中空粒子のコアと背景(エポキシ樹脂)のコントラストを比較することで、エポキシ樹脂の侵入有無を判断した。また、中空粒子の凝集体の有無から分散性について判断した。
【0177】
〔層材(硬化物)の誘電特性評価〕
中空粒子を添加したエポキシ樹脂硬化物について、22~24℃、45~55%相対湿度の環境下で一晩調温・調湿した後、ネットワークアナライザE5071C(キーサイトテクノロジー社製)に、空洞共振器法誘電率測定装置(EMラボ株式会社製)を接続した装置を使用して、周波数10GHz、22~24℃、45~55%相対湿度の環境下にて誘電率及び誘電正接を測定した。
【0178】
(実施例A1)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水60重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2.2重量部、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド2.2重量部を加えた後、窒素気流下、攪拌しながら50℃まで昇温した。30分経過後、次にエチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩/硫酸第一鉄七水和物キレート錯体0.00096重量部、及びホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.38重量部加え、さらにブチルアクリレート5.0重量部、t-ドデシルメルカプタン1.0重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.0080重量部の混合液を9分かけて一定速度で滴下した。滴下終了して10分経過後、クメンハイドロパーオキサイド0.0020重量部を添加し90分、後重合した。
【0179】
続いて、50℃に温めた純水240重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩/硫酸第一鉄七水和物キレート錯体0.019重量部を加え、10分攪拌した。その後、ブチルアクリレート95重量部、t-ドデシルメルカプタン19重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.15重量部の混合液を190分かけて一定速度で滴下した。前記混合液を滴下し始めてから40、80、120、及び160分後に、それぞれ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.15重量部及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド0.15重量部の混合液を添加した。190分の滴下が終了して10分経過後、クメンハイドロパーオキサイド0.048重量部を加え、90分の後重合を行い、ベース粒子となる有機高分子ラテックス(Lx-1)を得た。得られたLx-1の固形分量から算出した転化率は97%であった。この有機高分子の重量平均分子量は3900であった。
【0180】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、リン酸水素二ナトリウム2.0重量部、及び上述のLx-125重量部を添加した。65℃に昇温し、窒素置換を行った。30分経過後、予め純水72重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.1重量部、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド1.1重量部、及びメチルトリメトキシシラン(MTMS)72重量部をホモジナイザーにより均一混合した混合液を反応容器内に10分かけて滴下し、2時間重合反応させた。その後、予め純水3.0重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.046重量部、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド0.046重量部、及び3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-APTMS)3.0重量部を均一混合した混合液を反応容器内に10分かけて滴下し、2時間重合反応させてラテックス状のコアシェル粒子を得た。得られたラテックスの固形分量から算出した転化率は77%であった。このコアシェル粒子の体積平均粒子径は128nmであった。
【0181】
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えたセパラブルフラスコに、ラテックス状のコアシェル粒子100重量部を投入し、メチルエチルケトン150重量部を加えて室温で30分攪拌した後、室温で1時間静置した。続けて60℃で30分攪拌した後、60℃で1時間静置し、室温まで降温してさらに一晩静置した。その後、凝固粒子層と透明な溶媒層に分離したものを、濾紙を用いた自然濾過で濾別した。回収した凝固粒子をメタノール140重量部及びヘキサン60重量部の混合溶媒に分散させ、45℃で30分攪拌した。その後45℃で1時間静置し、室温まで降温して静置した。凝固粒子層と透明な溶媒層に分離したものを濾紙を用いた自然濾過で濾別し、回収した凝固粒子を再度同量のメタノール/ヘキサン混合溶媒に分散させ、同様の洗浄操作を実施した。その後、凝固粒子層と透明な溶媒層に分離したものを濾紙を用いた自然濾過で濾別し、回収した凝固粒子を、さらにメチルエチルケトン160重量部及びヘキサン40重量部の混合溶媒に分散させ、45℃で30分攪拌した。その後45℃で1時間静置し、室温まで降温して静置した。凝固粒子層と透明な溶媒層に分離したものを濾紙を用いた自然濾過で濾別した。回収した凝固粒子を乾燥させて、中空粒子(P-1)を得た。
【0182】
最終的に得られた中空粒子(P-1)は、(i)(a)の単位を3モル%と(b)の単位を97モル%とを含む組成であり、(ii)平均粒子径が124nmであり、(iii)全体積に対する内部空間の体積比率が15%であった。
【0183】
(比較例A1)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水300重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、リン酸三カリウム0.40重量部、β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.20重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12重量部を加えた後、窒素気流下、攪拌しながら50℃まで昇温した。30分経過後、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩/硫酸第一鉄七水和物キレート錯体0.019重量部、及びホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.18重量部を加え、さらにブチルアクリレート100重量部、t-ドデシルメルカプタン30重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.16重量部の混合液を180分かけて一定速度で滴下した。滴下終了して10分経過後、クメンハイドロパーオキサイド0.040重量部を添加し、90分、後重合してシードとなる有機高分子ラテックス(Lx-2)を得た。
【0184】
続いて、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水400重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、リン酸三カリウム0.32重量部、β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.16重量部、上記で得られたLx-2を20重量部加えた後、窒素気流下、攪拌しながら50℃まで昇温した。30分経過後、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩/硫酸第一鉄七水和物キレート錯体0.016重量部、及びホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.16重量部を加え、さらにブチルアクリレート80重量部、t-ドデシルメルカプタン24重量部、及びクメンハイドロパーオキサイド0.13重量部の混合液を160分かけて一定速度で滴下した。滴下終了して10分経過後、クメンハイドロパーオキサイド0.040重量部を添加し、90分、後重合してベース粒子となる有機高分子ラテックス(Lx-3)を得た。得られたLx-3の固形分量から算出した転化率は95%であった。
【0185】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、ドデシルベンゼンスルホン酸3.0重量部、上記で得られたLx-3を25重量部添加した。80℃に昇温し、窒素置換を行った。30分経過後、予め純水75重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.38重量部、メチルトリメトキシシラン(MTMS)71重量部、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-MPTMS)4重量部をホモジナイザーにより均一混合した混合液を反応容器内に10分かけて滴下し、4時間重合反応させて、ラテックス状のコアシェル粒子を得た。得られたラテックスの固形分量から算出した転化率は96%であった。このコアシェル粒子の体積平均粒子径は69nmであった。
【0186】
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えたセパラブルフラスコに、ラテックス状のコアシェル粒子100重量部を投入し、アセトン200重量部を加えて室温で30分攪拌した後、室温で1時間静置した。続けて50℃で30分攪拌した後、50℃で1時間静置した。凝固粒子層と透明な溶媒層に分離したものを、濾紙を用いた自然濾過で濾別した。回収した凝固粒子をメタノール210重量部及びヘキサン90重量部の混合溶媒に分散させ、50℃で30分攪拌した。その後50℃で1時間静置した。凝固粒子層と透明な溶媒層に分離したものを濾紙を用いた自然濾過で濾別し、回収した凝固粒子を2-プロパノール93重量部に分散させ、中空粒子(P-2)の溶液を得た。
【0187】
最終的に得られた中空粒子(P-2)は、(i)(a)の単位を0モル%と(b)の単位を97モル%(残り3モル%はRSiO3/2単位(式中、Rは、3-メタクリロキシプロピル基))とを含む組成であり、(ii)平均粒子径が54nmであり、(iii)全体積に対する内部空間の体積比率が27%であった。
【0188】
(実施例A2)
実施例A1の中空粒子(P-1)0.796gと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828US)5.904g、エポキシ樹脂硬化剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール0.178gとを自転公転ミキサーにより混合し、エポキシ樹脂組成物(エポキシ樹脂と中空粒子とからなる混合物中の中空粒子の添加量は13vol%)を得た。この組成物をシリコーンチューブ内に流し込み、オーブンにて60℃2時間、180℃2.5時間、200℃1時間加熱硬化させた。この硬化物の誘電率及び誘電正接を評価した結果を表1に示す。また、別途用意した硬化物のTEM観察からエポキシ樹脂の中空粒子内部への侵入有無と中空粒子の分散性を評価した結果を表1に、TEM画像(観察倍率40000倍)を
図1に示す。
【0189】
(比較例A2)
比較例A1の中空粒子(P-2)の溶液245.43g(中空粒子として13.65g)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828US)99.83g、及びメチルエチルケトン7.30gをナスフラスコ中に投入、混合し、80℃に加熱しながら減圧脱揮することで中空粒子が分散したエポキシ樹脂を得た。その中空粒子分散エポキシ樹脂2.59gにさらにエポキシ樹脂2.02gを入れ、次にエポキシ樹脂硬化剤として2-エチルー4-メチルイミダゾール0.129g及び溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド1.01gとを混合し、エポキシ樹脂溶液組成物(エポキシ樹脂と中空粒子とからなる混合物中の中空粒子の添加量は8vol%)を得た。この溶液組成物をアルミ基材上に流延塗布し薄膜化させた。その薄膜をアルミ基材ごとオーブンにて60℃で乾燥し、さらに180℃2時間加熱硬化させ、アルミ基材をエッチングして除去することで薄膜状のエポキシ樹脂硬化物を得た。この硬化物の誘電率及び誘電正接を評価した結果を表1に示す。また、別途用意した硬化物のTEM観察からエポキシ樹脂の中空粒子内部への侵入有無と中空粒子の分散性を評価した結果を表1に、TEM画像(観察倍率40000倍)を
図2に示す。
【0190】
(比較例A3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828US)7.009gとエポキシ樹脂硬化剤として2-エチルー4-メチルイミダゾール0.212gとを自転公転ミキサーにより混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。この組成物をシリコーンチューブ内に流し込み、オーブンにて60℃2時間、180℃2.5時間、200℃1時間加熱硬化させた。この硬化物の誘電率と誘電正接を評価した結果を表1に示す。
【0191】
(比較例A4)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、温度計を備えたセパラブルフラスコに、予め純水300重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9重量部、オクタメチルシクロテトラシロキサン100重量部、テトラエトキシシラン8重量部、及び3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン4重量部をホモジナイザーにより均一混合した混合液を投入し、さらにドデシルベンゼンスルホン酸4重量部と純水36重量部との混合液を添加して、80℃で5時間重合反応させた。得られたシリコーン中実粒子のラテックス(Lx-4)の固形分量から算出した転化率は13%であった。
【0192】
【表1】
表1の実施例A2及び比較例A2より、本実施形態の中空粒子を用いた場合、エポキシ樹脂が中空粒子内部に侵入せず、誘電率及び誘電正接が低い硬化物が得られたことが分かる。また、比較例A2は硬化物中で中空粒子の大きな凝集体が存在し、分散性は良くなかったが、実施例A2では中空粒子の大きな凝集体は見られず、分散性は良好であった。中空粒子のアミノ基が粒子分散性の向上にも寄与したものと推測される。実施例A2及び比較例A3より、本実施形態の中空粒子を用いた場合、粒子を含まないエポキシ樹脂硬化物単体よりも誘電率が低くなったことが分かる。さらに、比較例A2及び比較例A3より、アミノ基を含まない中空粒子を用いた場合、エポキシ樹脂が中空粒子内部に侵入したため空気による低誘電効果が見込めず、さらに粒子のシリコーン系化合物の誘電率(約3.2)がエポキシ樹脂単体よりも高いと推定されるために、比較例A2では粒子を含まないエポキシ樹脂硬化物単体よりも誘電率及び誘電正接が増加した(低誘電化しなかった)ことが分かる。また、実施例A1及び比較例A4より、本実施形態において必須であるカチオン性界面活性剤を使用しなかった比較例A4では、アミノ基を有するシリコーン系化合物の作製において転化率が13%と低く、重合が十分進行していないため、意図した組成の生成物が得られていないと考えられる。一方でカチオン性界面活性剤を用いた実施例A1では、アミノ基を有するシリコーン系化合物の作製における転化率が77%と高く重合が進行しており、意図した組成の生成物が実質的に得られたといえる。
【0193】
[実施例B]
本発明を実施例Bに基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例Bに限定されない。実施例B及び比較例Bにおける測定及び試験は、以下のように行った。
【0194】
[体積平均粒子径]
体積平均粒子径は、実施例Aと同様にして測定した。
【0195】
[中空粒子の確認]
粒子の中空化の確認は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって行った。イソプロピルアルコールに粒子を分散させた粒子溶液をTEMグリッド上に滴下し、イソプロピルアルコールを乾燥させた後、粒子を観察した。粒子のコントラストから、粒子が中空であることが確認できる。
【0196】
中空粒子の平均粒子径と、中空粒子の全体積に対する内部空間の体積比率とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めた。中空粒子をTEM用包埋樹脂に分散させ光硬化した後ウルトラミクロトームで超薄切片を切り出したものを観察試料とした。観察写真上の粒子15~20個の外径の平均値を平均粒子径とした。また、外径及び内径(中空部径)を実測し、下式に従い算出した体積比率の平均値を求めた:
体積比率(%)=(内径/外径)3×100 。
【0197】
[残存シラノール基の定量]
粉体状の中空粒子について、VNMRS 600 (アジレント・テクノロジー社 製、旧VARIAN社製 )を用い、29Si-固体NMR測定及び13C-固体NMR測定から、残存シラノール基の定量を実施した。実験条件の詳細を下記に示す。
【0198】
<29Si NMR>
・共鳴周波数:119.19MHz、
・測定モード:DP/MAS法(Direct Polarization法)、
・測定核 :29Si、
・試料回転数:8kHz、
・測定温度 :室温
・積算回数 :1024回。
【0199】
<13C NMR>
・共鳴周波数:150.85 MHz、
・測定モード:DP/MAS法(Direct Polarization法)、
・測定核 :13C、
・試料回転数:6kHz、
・測定温度 :室温、
・積算回数 :768回。
【0200】
また、残存シラノールは、以下の(1)~(3)の要領で定量した:
(1)29Si固体NMRより、T1、T2構造を定量(Si-OH基とSi-O-CH3基との合計値)、
(2)13C固体NMRより、Si-O-CH3基を定量、
(3)(1)の値から(2)の値を差し引いて、Si-OH基を定量。
【0201】
[Si-OSi(R2)3の定量]
工程2で得られた中空粒子(未封止粒子)の残存Si-OH基濃度から、封止後の中空粒子の残存Si-OH基を差し引きすることで、Si-OSi(R2)3の濃度を計算した。
【0202】
[粒子複合化フィルムの誘電特性評価]
測定装置として、空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置(関東電子応用開発)を用い、下記条件にしたがって、粒子複合化フィルムの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。
・測定周波数:10GHz、
・測定環境 :温度22℃~24℃、湿度45%~55%、
・測定用試料:得られた粒子複合化フィルムを前記測定環境下で24時間放置した試料を使用した。
【0203】
(実施例B1)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、及び温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水 60重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 2.150重量部、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 2.15重量部を加えた後、窒素気流下、50℃まで昇温し30分攪拌した。次に、当該5口セパラブルフラスコに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム/硫酸鉄(II)七水和物 0.001重量部、及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム 0.375重量部を加え、さらにブチルアクリレート 5重量部、t-ドデシルメルカプタン
1重量部、及びパラクメンハイドロパーオキサイド 0.008重量部の混合液を加えた。その後、当該5口セパラブルフラスコに、パラクメンハイドロパーオキサイド0.002重量部を加えて1時間攪拌し、さらに温純水240重量部、及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム/硫酸鉄(II)七水和物 0.019重量部を加えた。その後、当該5口セパラブルフラスコに、ブチルアクリレート 95重量部、t-ドデシルメルカプタン 19重量部、及びパラクメンハイドロパーオキサイド 0.152重量部の混合液を3時間10分かけて連続追加した。連続追加中、当該5口セパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.600重量部、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 0.600重量部を4回に分けて添加した。最後に、当該5口セパラブルフラスコにパラクメンハイドロパーオキサイド 0.048重量部を加え、1時間の後重合を行い、シードとなる有機高分子ラテックス(Lx-1)を得た。この有機高分子ラテックスの体積平均粒子径は83nmであった。
【0204】
続いて、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、及び温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水 60重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、及び上述の有機高分子ラテックス(Lx-1) 69.4重量部を加えた後、窒素気流下、50℃まで昇温し30分攪拌した。次に、当該5口セパラブルフラスコに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム/硫酸鉄(II)七水和物 0.006重量部、及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム 0.121重量部を加え、さらにブチルアクリレート 30.600重量部、t-ドデシルメルカプタン 6.100重量部、及びパラクメンハイドロパーオキサイド0.050重量部の混合液を1時間かけて連続追加した。連続追加中、当該5口セパラブルフラスコに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.600重量部、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 0.600重量部を3回に分けて添加した。最後に、当該5口セパラブルフラスコにパラクメンハイドロパーオキサイド 0.015重量部を加え、1時間30分の後重合を行い、有機高分子ラテックス(Lx-2)を得た。この有機高分子ラテックスの体積平均粒子径は95nmであった。
【0205】
続いて、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、及び温度計を備えた5口セパラブルフラスコに、純水 500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、リン酸水素二ナトリウム 2重量部、及び上述の有機高分子ラテックス(Lx-2) 57.600重量部を添加した。当該5口セパラブルフラスコを、65~75℃に昇温し、窒素置換を行った。別途、当該5口セパラブルフラスコに、純水 73.8重量部、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 1.110重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 1.110重量部、及びメチルトリメトキシシラン(MTMS) 73.800重量部の混合物を10分間かけて一定速度で追加した。追加終了後、2時間攪拌を続けた後、当該5口セパラブルフラスコに、純水 9.800重量部、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド 0.150重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.150重量部、及び3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-APTMS) 9.800重量部の混合溶液を10分間かけて一定速度で追加した。その後2時間攪拌を続け、ラテックス状のコアシェル粒子(Lx-3)を得た。このコアシェル粒子の体積平均粒子径は125nmであった。
【0206】
ラテックス状のコアシェル粒子(Lx-3) 100重量部に対して、メチルエチルケトンを100重量部加えて45℃で30分攪拌し、凝固粒子を得た。この凝固粒子を含む溶液を静置すると、凝固粒子層と透明な上澄層とに分離した。その後、濾紙を用いた自然濾過によって凝固粒子を濾別した。凝固粒子にアセトン 76重量%、及びn-ヘキサン 24重量%の混合溶媒を200重量部加えて45℃で30分攪拌した。この凝固粒子を含む溶液を静置すると、凝固粒子層と透明な上澄層とに分離した。その後、濾紙を用いた自然濾過によって凝固粒子層を濾別した。前記アセトン 76重量%、及びn-ヘキサン 24重量%の混合溶媒による凝固及び濾過を再度行い、凝固粒子層を回収した。その後、120℃のオーブンで5時間乾燥し、中空粒子(P-1)を得た。コアシェル粒子からの有機高分子の除去はTEMによって確認した。このとき、中空粒子(P-1)の全体積に対する内部空間の体積比率は、27%であった。
【0207】
続いて、中空粒子(P-1) 100重量部をピリジン 2366重量部に溶解し、シラノール封止剤であるトリメチルシリルイミダゾール(TMSI) 592重量部を添加した(TMSI:ピリジン=1:4)。75℃、15時間の条件で中空粒子(P-1)とシラノール封止剤とを反応させた後、残存シラノール基を封止した中空粒子(P-2)を得た。残存シラノール濃度は、1gの中空粒子(P-2)あたり、0.26mmol/gであった。これは、未封止粒子(比較例B1、P-1)に残存するシラノール基のうち、42%を封止したことに対応する。つまり、中空粒子(P-2)は、シリコーン系化合物からなる層に含まれる構成単位(1)~(4)100モル%のうち、構成単位(1)及び(2)の合計が6モル%であり、構成単位(3)及び(4)の合計が94モル%である。この中空粒子(P-2)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に分散させ、分散液(D-1)を得た。
【0208】
2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(m-TB) 100mol、ピロメリット酸二無水物(PMDA) 40mol、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA) 40mol、及び4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA) 20molをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で重合させ、重合中に分散液(D-1)を混合し、ポリアミド酸 90重量%と、中空粒子(P-2) 10重量%との混合液(M-1)を得た。
【0209】
この混合液(M-1) 100重量部に対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(20重量部/6重量部/24重量部)からなる硬化剤を50重量部添加して、0℃以下の温度で撹拌及び脱泡した。得られた溶液をアルミ箔上に流延し、オーブンで120℃×180秒で加熱した後、自己支持性を有するゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がした。当該ゲルフィルムを金属枠に固定し、250℃×60秒、続く300℃×200秒の加熱処理によって、乾燥及びイミド化し、膜厚20μmの、中空粒子(P-2)とポリイミドとの粒子複合化フィルム(PI-1)を得た。このとき、中空粒子(P-2)の全体積に対する内部空間の体積比率は、43%であった。この粒子複合化フィルム(PI-1)の誘電特性を評価したところ、誘電率(Dk)は2.62であった(表2)。この値は、ポリイミドフィルム(比較例B2、PI-4)、及び、シラノール未封止中空粒子とポリイミドとの粒子複合化フィルム(比較例B1、PI-3)の誘電率(Dk)よりも低い値であった。誘電正接(Df)の値についても、シラノール未封止中空粒子とポリイミドとの粒子複合化フィルム(比較例B1、PI-3)の誘電正接(Df)の値と比較して低い値であった。なお、誘電正接(Df)の値は、ポリイミドフィルム(比較例B2、PI-4)の誘電正接(Df)の値と比較して高い値であったが、通信業界の5G(高速回線)化などへの利用の観点からは、十分に低い値といえる。
【0210】
(実施例B2)
前記実施例B1の中空粒子(P-1) 100重量部をトルエン 1000重量部に溶解し、シラノール封止剤であるヘキサメチレンジシラザン(HMDS) 681重量部、及び触媒であるトリフルオロ酢酸 68重量部を添加した。60℃、10時間の条件で中空粒子(P-1)とシラノール封止剤とを反応させた後、残存シラノール基を封止した中空粒子(P-3)を得た。残存シラノール濃度は、1gの中空粒子(P-3)あたり、0.17 mmol/gであった。これは、未封止粒子(比較例B1、P-1)に残存するシラノール基のうち、62 %を封止したことに対応する。つまり、中空粒子(P-3)は、シリコーン系化合物からなる層に含まれる構成単位(1)~(4)100モル%のうち、構成単位(1)及び(2)の合計が6モル%であり、構成単位(3)及び(4)の合計が94モル%である。この中空粒子(P-3)をNMPに分散させ、分散液(D-2)を得た。
【0211】
m-TB 100mol、PMDA 40mol、BPDA 40mol、及びODPA 20molをDMF中で重合させ、重合中に分散液(D-2)を混合し、ポリアミド酸 90重量%と、中空粒子(P-3) 10重量%との混合液(M-2)を得た。
【0212】
この混合液(M-2) 100重量部に対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(20重量部/6重量部/24重量部)からなる硬化剤を50重量部添加して、0℃以下の温度で撹拌及び脱泡した。得られた溶液をアルミ箔上に流延し、オーブンで120℃×180秒で加熱した後、自己支持性を有するゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がした。当該ゲルフィルムを金属枠に固定し、250℃×60秒、続く300℃×200秒の加熱処理によって乾燥及びイミド化し、膜厚20μmの、中空粒子(P-3)とポリイミドとの粒子複合化フィルム(PI-2)を得た。このとき、中空粒子(P-3)の全体積に対する内部空間の体積比率は、44%であった。この粒子複合化フィルム(PI-2)の誘電特性を評価したところ、誘電率(Dk)は2.01、誘電正接(Df)は0.0026であった(表2)。この誘電率(Dk)の値は、ポリイミドフィルム(比較例B2、PI-4)、及びシラノール未封止中空粒子とポリイミドとの粒子複合化フィルム(比較例B1、PI-3)の誘電率(Dk)の値と比較して低い値であった。誘電正接(Df)の値についても、ポリイミドフィルム(比較例B2、PI-4)、及びシラノール未封止中空粒子とポリイミドとの粒子複合化フィルム(比較例B1、PI-3)の誘電正接(Df)の値と比較して低い値であった。
【0213】
(比較例B1)
前記実施例B1と同様の方法で中空粒子(P-1)を得た。中空粒子(P-1)の残存シラノール濃度を定量したところ、1gの中空粒子(P-1)あたり、0.45mmol/gであった。つまり、中空粒子(P-1)は、シリコーン系化合物からなる層に含まれる構成単位(1)~(4)100モル%のうち、構成単位(1)及び(2)の合計が7モル%であり、構成単位(3)及び(4)の合計が93モル%である。この中空粒子(P-1)をNMPに分散させ、分散液(D-3)を得た。
【0214】
m-TB 100mol、PMDA 40mol、BPDA 40mol、及びODPA 20molをDMF中で重合させ、重合中に分散液(D-3)を混合し、ポリアミド酸 90重量%と、中空粒子(P-1) 10重量%との混合液(M-3)を得た。
【0215】
この混合液(M-3) 100重量部に対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(20重量部/6重量部/24重量部)からなる硬化剤を50重量部添加して、0℃以下の温度で撹拌及び脱泡した。得られた溶液をアルミ箔上に流延し、オーブンで120℃×180秒で加熱した後、自己支持性を有するゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がした。当該ゲルフィルムを金属枠に固定し、250℃×60秒、続く300℃×200秒の加熱処理によって乾燥及びイミド化し、膜厚20μmの、シラノール未封止の中空粒子(P-1)とポリイミドとの粒子複合化フィルム(PI-3)を得た。このとき、中空粒子(P-1)の全体積に対する内部空間の体積比率は、36%であった。この粒子複合化フィルム(PI-3)の誘電特性を評価したところ、誘電率(Dk)は2.96、誘電正接(Df)は0.0046であった(表2)。誘電率(Dk)の値はポリイミドフィルム(比較例B2、PI-4)よりも低い値であった。
【0216】
(比較例B2)
m-TB 100mol、PMDA 40mol、BPDA 40mol、及びODPA 20molをDMF中で重合させ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0217】
このポリアミド酸溶液 100重量部に対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(20重量部/6重量部/24重量部)からなる硬化剤を50重量部添加して、0℃以下の温度で撹拌及び脱泡した。得られた溶液をアルミ箔上に流延し、オーブンで120℃×180秒で加熱した後、自己支持性を有するゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がした。当該ゲルフィルムを金属枠に固定し、250℃×60秒、続く300℃×200秒の加熱処理によって乾燥及びイミド化し、膜厚20μmのポリイミドフィルム(PI-4)を得た。このポリイミドフィルム(PI-4)の誘電特性を評価したところ、誘電率(Dk)が3.26、誘電正接(Df)が0.0028であった(表2)。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の実施形態によれば、低誘電率性に優れる中空粒子を提供することができる。そのため、本発明の実施形態は、優れた伝搬速度、及び低伝送損失性を有する回路基板を得るために、好適に利用できる。そのため、本発明の実施形態は、通信機器等電子機器の分野等において好適に利用できる。