(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-19
(45)【発行日】2026-03-30
(54)【発明の名称】樹脂成形体被覆用機能性フィルム、その製造方法、樹脂成形体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20260323BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20260323BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20260323BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20260323BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B29C45/14
B29C45/16
B32B27/00 B
(21)【出願番号】P 2022052456
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2025-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小山 治規
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 花子
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 幸展
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-078628(JP,A)
【文献】特開2019-119206(JP,A)
【文献】特開2009-184284(JP,A)
【文献】特開2021-181228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムと、前記熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に順番に積層されたハードコート層及び低屈折率層を含む樹脂成形体被覆用機能性フィルムであって、
前記熱可塑性樹脂フィルムは、メタクリル酸メチルからなる構造単位を50質量%以上含むアクリル系樹脂、及びゴム成分を含むグラフト共重合体を含み、
前記ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成され、
前記低屈折率層は、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成され、
前記低屈折率層において、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂成分及び屈折率調整剤を含み、前記屈折率調整剤は、平均粒子径100nm以下の中空シリカを含み、前記低屈折率層は光硬化性樹脂成分及び屈折率調整剤の合計100質量%に対し、平均粒子径100nm以下の中空シリカを30質量%以上含み、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化された際の低屈折率層の屈折率は、前記ハードコート層の屈折率より低く、
120℃における引張クラック伸度が50~190%である、樹脂成形体被覆用機能性フィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、光硬化性のウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項
1に記載の樹脂成形体被覆用機能性フィルム。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂成分は、分子量が3000以下の(メタ)アクリレート官能基を含む化合物を25質量%以上より多く含む、請求項
1又は2に記載の樹脂成形体被覆用機能性フィルム。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂成形体被覆用機能性フィルムの製造方法であって、
熱可塑性樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を活性エネルギー線で照射することで、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成する工程1、及び
前記ハードコート層上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して低屈折率層を形成する工程2を含み、
工程2及び工程2以降の工程において、低屈折率層を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は活性エネルギー線で照射されることがない、樹脂成形体被覆用機能性フィルムの製造方法。
【請求項5】
工程1で得られた熱可塑性樹脂フィルムとハードコート層の積層体は、120℃における引張クラック伸度が50~190%である、請求項
4に記載の樹脂成形体被覆用機能性フィルムの製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂基材と、請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂成形体被覆用機能性フィルムを含む樹脂成形体であって、前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムは、前記熱可塑性樹脂基材の少なくとも一部を被覆し、かつ前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムの少なくとも片面の低屈折率層が樹脂成形体の最表面に位置する、樹脂成形体。
【請求項7】
自動車内装材、自動車外装材、光学部材及び家電部材からなる群から選ばれる一つ以上
に用いる、請求項
6に記載の樹脂成形体。
【請求項8】
請求項
6又は7に記載の樹脂成形体の製造方法であって、
射出成形用金型内に請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂成形体被覆用機能性フィルムを少なくとも片面の低屈折率層が射出成形用金型側になるように設置した後、熱可塑性樹脂を射出成形する射出成形工程を含む、樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムを所定の形状になるように成形した後に、射出成形用金型内に設置する、請求項
8に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
射出成形工程で得られた樹脂成形体をさらに活性エネルギー線で照射して低屈折率層を硬化させる後硬化工程を含む、請求項
9に記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体に反射防止性能等の機能性を付与することができる樹脂成形体被覆用機能性フィルム、その製造方法、樹脂成形体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パーソナルコンピューター、及びスマートフォン等の電子機器のディスプレイ表示部に視認性や耐摩耗性を付与するために、コーティング等の手法によって、表面にハードコート層、反射防止層、及び防眩層等の機能性を有する層を形成することは従来広く行われている。さらに自動車用のメーターパネルやナビゲーション装置等においても同様に、情報表示部の表面にこのような機能性層を形成することは一般的となっている。
ところで近年、自動車のメーターパネル、ナビゲーション装置、各種コントロールパネル、表示部、及びその他の構成部品を、自動車内装部と一体化したデザインが提案されている。このようなデザインにおいては、メーターパネルやナビゲーション装置等の情報表示部分は、自動車内装部を構成する成形体に組み込まれているが、情報表示部分の表面は必ずしも平面的形状ではなく、立体的な形状を有していることがある。しかしながら、立体的な形状を有する場合、このようなデザインを損なうことなく従来のコーティングの手法により視認性や耐摩耗性等の機能性を付与するのは容易ではない。
このように立体的形状を持つ、自動車内装部位等の成形体の表面に加飾、保護、あるいは機能性を付与する手法の一つとしては、予め加飾層、保護層等の機能性層をフィルム状の基材上に形成した成型用フィルムを、射出成型時に成形体表面に積層する、いわゆるフィルムインサート射出成型の手法が用いられる。
【0003】
近年では、成形体表面に上記のような機能性を付与する目的で、ハードコート層及び反射防止層等の機能層を形成した積層フィルムを用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材フィルム上にクラック伸度が5%以上であるハードコート層及び屈折率が1.47以下である低屈折率層をこの順に有する成形用積層フィルムが記載されている。特許文献2には、アクリル系樹脂フィルム上にハードコート層及び低屈折率層を備えた積層フィルムが記載されている。
一方、熱可塑性樹脂シート多層化用の複合フィルムとして、特許文献3には、エネルギー線により硬化可能な半硬化樹脂層の一方の面が熱融着性樹脂フィルムに担持され、他方の面が離型性樹脂フィルムにより被覆されている複合フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-041244号公報
【文献】国際公開公報2019-010687号
【文献】特開2006-150949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2等に記載の従来の積層フィルムは、インサート射出成型により、立体的形状を有する樹脂成形体の表面を被覆して、反射防止性やハードコート性を付与するのに用いた場合、成形性と、耐摩耗性や反射防止性等の機能性の両立が十分ではないという問題があった。また、特許文献3では、複合フィルムの熱融着性樹脂フィルム側を熱可塑性樹脂シートに熱融着し一体化した熱可塑性樹脂シートを所定の形状に熱成形した後、半硬化樹脂層にエネルギー線を照射して硬化することで、いわゆるアフターキュアで成形品を製造しているが、立体的形状への成形性と、高い表面硬度、耐摩耗性が得られる可能性はあるものの、取り扱い時に未硬化のハードコート層が傷つきやすい、またインサート射出成型などの成型時には金型の傷などの形状の好ましくない転写や、金型表面へのハードコート層の貼り付き、ハードコート層と基材フィルム層の剥離などが生じやすく、必ずしも充分な実用性を有するものではなかった。さらに、このアフターキュア技術を、ハードコート層の上に薄層の屈折率調整層をもつ反射防止コーティングに適用した場合、未硬化のハードコート層と薄層の屈折率調整層が混合してしまい、所望の反射防止特性が得られない、あるいは、成形時に反射防止層の金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離などが生じる問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、樹脂成形体を被覆する際の成形性に優れるとともに、成形時に金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離等を生じることなく、樹脂成形体に良好な耐摩耗性及び反射防止性を付与することができる樹脂成形体被覆用機能性フィルム、その製造方法、樹脂成形体、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1以上の実施形態は、熱可塑性樹脂フィルムと、前記熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に順番に積層されたにハードコート層及び低屈折率層を含む樹脂成形体被覆用機能性フィルムであって、前記ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成され、前記低屈折率層は、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成され、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化された際の低屈折率層の屈折率は、前記ハードコート層の屈折率より低く、120℃における引張クラック伸度が50~190%である樹脂成形体被覆用機能性フィルムに関する。
【0008】
本発明の1以上の実施形態は、前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を活性エネルギー線で照射することで、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成する工程1、及び前記ハードコート層上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して低屈折率層を形成する工程2を含み、工程2及び工程2以降の工程において、低屈折率層を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は活性エネルギー線で照射されることがない樹脂成形体被覆用機能性フィルムの製造方法に関する。
【0009】
本発明の1以上の実施形態は、熱可塑性樹脂基材と、前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムを含む樹脂成形体であって、前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムは、前記熱可塑性樹脂基材の少なくとも一部を被覆し、かつ前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムの少なくとも片面の低屈折率層が樹脂成形体の最表面に位置する樹脂成形体に関する。
【0010】
本発明の1以上の実施形態は、前記樹脂成形体の製造方法であって、射出成形用金型内に前記樹脂成形体被覆用機能性フィルムを少なくとも片面の低屈折率層が射出成形用金型側になるように設置した後、熱可塑性樹脂を射出成形する射出成形工程を含む樹脂成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂成形体を被覆する際の成形性に優れるとともに、成形時に金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離等を生じることなく、樹脂成形体に良好な耐摩耗性及び反射防止性を付与することができる樹脂成形体被覆用機能性フィルム及びそれを含む樹脂成形体を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、成形時に金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離等を生じることなく、耐摩耗性及び反射防止性が良好である樹脂成形体被覆用機能性フィルムを成形性よく樹脂成形体に被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】樹脂成形体被覆用機能性フィルムの模式的断面図である。
【
図3】ゲートを有する金型における樹脂成形体被覆用機能性フィルムの配置を説明する模式的斜視図である。
【
図4A】立体的形状を付与された樹脂成形体被覆用機能性フィルムの模式的表面図である。
【
図5A】立体的形状を有する樹脂成形体の模式的表面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来、機能性フィルムの場合、一般的に、特許文献1及び2に記載のように、ハードコート層及び低屈折率層のいずれも硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されている、すなわち、プレキュア構成となっている。このようなプレキュア構成では、成形性と耐摩耗性や反射防止性等機能性の両立に限界があった。また、特許文献3に記載のように、ハードコート層となる半硬化樹脂層に、成形後に、エネルギー線を照射して硬化させる、いわゆるアフターキュア型もあるが、アフターキュア型をハードコート層の上に薄層の屈折率調整層をもつ反射防止コーティングに適用した場合、所望の反射防止性能が得られない、又は、成形時に金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離等を生じる問題があった。これに対し、本発明の発明者らは検討を重ねた結果、驚くことに、機能性フィルムにおいて、ハードコート層を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成し、低屈折率層を未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成することで、機能性フィルムは、樹脂成形体を被覆する際の成形性に優れるとともに、成形時に金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離等を生じることなく、耐摩耗性及び反射防止等の機能性を付与し得ることを見出した。
【0014】
具体的には、本発明の1以上の実施形態の樹脂成形体被覆用機能性フィルム(以下において、単に「機能性フィルム」とも記す)は、適度な伸びを有し、ハードコート層を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物で形成し、低屈折率層を未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成していることで、インサート射出成形等の成形によって、樹脂成形体被覆用機能性フィルムで樹脂成形体を被覆する際に、特に立体的形状を有する樹脂成形体を被覆する際にも、樹脂成形体の形状に追従しやすいことから、成形性が良好になる。また、インサート射出成形等の成形の際、低屈折率層が金型表面へ付着することが抑制され、金型に密着することもなく、表面の荒れ、白化、剥離などを生じることが抑制された。さらに、樹脂成形体被覆用機能性フィルムで樹脂成形体を被覆した後は、低屈折率層を後硬化することで、樹脂成形体に優れた耐摩耗性を付与することができる。本明細書において、立体的形状は、非平面的形状、例えば表面に凹凸や曲面部を有する形状を意味する。
【0015】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「X~Y」という数値範囲は、X及びYという両端値を含む範囲となる。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0016】
(熱可塑性樹脂フィルム)
熱可塑性樹脂フィルムは、特に限定されないが、透明材料であることが望ましく、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が挙げられるが、アクリル系樹脂フィルムであることが好ましく、アクリル系樹脂、及びゴム成分を含有するグラフト共重合体を含むアクリル系樹脂組成物で構成されたアクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。該アクリル系樹脂フィルムは、透明性、耐候性、表面硬度、及び二次成形性に優れ、種々の硬化性樹脂組成物等で構成された機能層に対する密着性が良好であり、さらに立体的形状を含む種々の樹脂成形体の表面形状に対する追従性に優れた樹脂成形体の被覆用の機能性フィルムを得やすい。
【0017】
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂としては、例えば、単量体成分としてメタクリル酸メチル50質量%以上含有するアクリル系樹脂を好適に使用できる。耐候性、成形性及び耐熱性の観点から、アクリル系樹脂が、メタクリル酸メチル由来の構成単位を50~100質量%、及び他の構成単位を0~50質量%含むことが好ましく、メタクリル酸メチル由来の構成単位を70~100質量%、及び他の構成単位を0~30質量%含むことがより好ましい。
【0018】
他の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸メチルを除く)、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、及びハロゲン化ビニリデン等に由来する構成単位等が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0019】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、及びアクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0020】
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸アダマンチル等が挙げられる。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及びα-メチルスチレン等が挙げられる。シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等が挙げられる。ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、及びフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0022】
アクリル系樹脂に含まれるその他の構成単位は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
アクリル系樹脂の耐熱性を向上させる観点から、アクリル系樹脂に対して特定の構造を有する構成単位を共重合、官能基修飾及び変性等により導入してもよい。このような耐熱性が良好なアクリル系樹脂としては、例えば、下記のようなものを挙げることができる。
1)共重合成分としてN-置換マレイミド化合物が共重合されているアクリル系樹脂、
2)無水グルタル酸アクリル系樹脂、
3)ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂、
4)グルタルイミドアクリル系樹脂、
5)ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂、
6)芳香族ビニル単量体及びそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られる芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体及びそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体)、
7)上記6)の芳香族環を部分的に又は全て水素添加して得られる水添芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体及びそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン含有アクリル系重合体)、及び
8)環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体。
【0024】
特に、耐熱性及び光学特性の観点から、メタクリル酸メチル由来の構成単位97~100質量%及びアクリル酸メチル由来の構成単位0~3質量%を含むアクリル系重合体、及びグルタルイミドアクリル系樹脂等が好ましい。グルタルイミドアクリル系樹脂は、特に限定されないが、例えば、国際公開公報2005/54311号及び国際公開公報2012/114718号に記載されている方法で製造したものを用いてもよい。
【0025】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、耐熱性の観点から、好ましくは115℃以上であり、より好ましくは118℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。
【0026】
アクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されず、例えば、公知の懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、分散重合法等の重合法を適用可能である。また、公知のラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法のいずれを適用することも可能である。
【0027】
<グラフト共重合体>
ゴム成分を含有するグラフト共重合体は、平均粒子径が20~200nmであるグラフト共重合体粒子(A)を含むことが好ましく、グラフト共重合体粒子(A)、及びグラフト共重合体粒子(A)より平均粒子径が大きいグラフト共重合体粒子(B)を含むことがより好ましい。具体的には、アクリル系樹脂フィルムにおいて、アクリル系樹脂、又は、アクリル系樹脂及びその他の成分を含むマトリックス中に、多層構造のグラフト共重合体粒子(A)が分散していることが好ましく、アクリル系樹脂、又は、アクリル系樹脂及びその他の成分を含むマトリックス中に、多層構造のグラフト共重合体粒子(A)及び多層構造のグラフト共重合体粒子(B)が分散していることがより好ましい。
【0028】
グラフト共重合体粒子(A)は、ゴム成分である架橋エラストマー(Ac)と、架橋エラストマー(Ac)よりも表層側に位置するグラフトポリマー層(As)とを備えるコアシェル構造を有することが好ましい。
【0029】
グラフト共重合体粒子(A)に含まれる架橋エラストマー(Ac)は、公知の架橋エラストマーであってよい。好ましくは、架橋エラストマー(Ac)は、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(アクリル酸エステルを主成分とした重合体からなる架橋エラストマー)である。ここで、主成分とは、重合体におけるアクリル酸エステル由来の構成単位の含有量が50質量%以上であることを意味する。
【0030】
アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)の粒子は、架橋エラストマー層の内部に硬質又は半硬質の架橋樹脂層を備える、同心球状の多層構造を有していてもよい。このような硬質又は半硬質の架橋樹脂層としては、例えば特公昭55-27576号公報等に示されるような硬質の架橋メタクリル樹脂粒子、特開平4-270751号公報に示されるようなメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-スチレンからなる半硬質の架橋粒子、さらには架橋度の高い架橋ゴム粒子等が挙げられる。このような硬質又は半硬質の架橋樹脂層を備えることにより透明性や色調等の改善が期待できる場合がある。
【0031】
グラフト共重合体粒子(A)は、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)の粒子の存在下に、グラフトポリマー層(As)をグラフト重合して形成した、コアシェル構造を有するのが好ましい。
【0032】
グラフト共重合体粒子(A)の平均粒子径は20~200nmであることが好ましく、50~150nmがより好ましく、50~120nmが特に好ましい。グラフト共重合体粒子(A)の平均粒子径が上述した範囲内であると、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性及び透明性が良好になる。
【0033】
アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)としては、アクリル酸エステルと、アクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体と、アクリル酸エステルと共重合可能であり、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体を含む単量体混合物(Mc)を重合して得られる架橋エラストマー粒子を好ましく使用できる。
【0034】
アクリル酸エステル、他のビニル系単量体、及び多官能性単量体は全部を混合して1段階で重合されてもよい。また、アクリル系樹脂フィルムの靱性、耐白化性等を調節する目的で、適宜、アクリル酸エステル、他のビニル系単量体、及び多官能性単量体の組成を変化させて、或いは同一の組成のまま、アクリル酸エステルと、他のビニル系単量体と、多官能性単量体とを、2段階以上の多段階に分けて重合してもよい。
【0035】
アクリル酸エステルとしては、重合性に優れ、安価である等の点から、アクリル酸の脂肪族エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素原子数が1~22のアクリル酸アルキルエステルを特に好ましい。
【0036】
好ましいアクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用されてもよく、2種以上を併用されてもよい。
【0037】
アクリル酸エステルの量は、単量体混合物(Mc)100質量%において50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。アクリル酸エステル量が50質量%以上であれば、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性や引張破断時の伸びが良好であり、二次成形時にクラックが発生しにくい。
【0038】
他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリル酸誘導体、マレイン酸誘導体等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等が挙げられる。ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル等が挙げられる。ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。アクリル酸の塩としては、例えば、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等が挙げられる。メタクリル酸の塩としては、例えば、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等が挙げられる。アクリル酸誘導体としては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N-メチロ-ルアクリルアミド等が挙げられる。マレイン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、N-アルキルマレイミド、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。これらは1種を単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物からなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0039】
他のビニル系単量体の量は、単量体混合物(Mc)100質量%において0~49.9質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~20質量%が特に好ましい。他のビニル系単量体の量が49.9質量%以下であると、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性や引張破断時の伸びが良好であり、二次成形時にクラックが発生しにくい。
【0040】
多官能性単量体としては、架橋剤及び/又はグラフト交叉剤として通常使用されるものでよい。多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、及びジプロピレングリコールジメタクリレート等を使用することができる。これらの多官能性単量体は、1種を単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
多官能性単量体の量は、単量体混合物(Mc)100質量%において0.1~10質量%が好ましく、1~4質量%がより好ましい。多官能性単量体の配合量がかかる範囲内であれば、アクリル系樹脂フィルムの耐折り曲げ割れ性、及び耐折り曲げ白化性や、成形時における樹脂の流動性の観点から好ましい。
【0042】
また、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)において、後述するグラフトポリマー層(As)のグラフト被覆効率を高める目的で、多官能性単量体の量を、架橋エラストマー(Ac)の内部と表面近傍で変更してもよい。具体的には、特許第1460364号公報や特許第1786959号公報等に示されているように、架橋エラストマー(Ac)の表面近傍において、グラフト交叉剤としての機能をもつ多官能性単量体の含有量を内部よりも多くすることにより、グラフト共重合体粒子(A)のグラフトポリマー層による被覆を改善し、アクリル系樹脂への分散性を良好にしたり、グラフト共重合体粒子(A)とアクリル系樹脂の界面の剥離による耐割れ性の低下を抑制したりすることができる。さらに、相対的に少量のグラフトポリマー層(As)で充分な被覆が得られることから、アクリル系樹脂組成物への所定量の架橋エラストマー(Ac)を導入するためのグラフト共重合体粒子(A)の配合量が削減でき、溶融粘度の低下によるアクリル系樹脂フィルムの溶融加工性、フィルム加工精度の向上、表面硬度の向上等が期待できる。
【0043】
また、単量体混合物(Mc)に、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)の分子量や架橋密度の制御、及び重合時の不均化停止反応に伴うポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤は、通常ラジカル重合に用いられるものの中から選択して用いられる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン化合物、メルカプト酸類、チオフェノール、及び四塩化炭素等が挙げられる。メルカプタン化合物は、炭素原子数2~20の単官能及び多官能のいずれでもよく、具体的には、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。連鎖移動剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、例えば、単量体混合物(Mc)の総量100質量部に対して、0~1.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0~0.2質量部である。
【0044】
架橋エラストマー(Ac)の粒子は、上記のアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)からなる単一層であってもよく、上記のアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)からなる層を2層以上含む多層構造であってもよく、硬質又は半硬質の架橋樹脂層を含む多層粒子の少なくとも1層にアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)を有するものでもよい。
【0045】
硬質又は半硬質の架橋樹脂層を構成する単量体としては、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)に用いるものとして記載したアクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイン酸誘導体、1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体等を適宜用いることができる。
【0046】
これらのなかでは、特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリル等からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、多官能性単量体としては、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)層の重合に使用するものと同様のものが使用できる。さらに硬質又は半硬質の架橋樹脂層の重合時には、これらの単量体に加えて、架橋密度の制御やポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤はアクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Ac)層の重合と同様の連鎖移動剤が使用できる。連鎖移動剤の使用量は、硬質又は半硬質の架橋樹脂層の総量100質量部に対して、0~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0~0.5質量部である。
【0047】
グラフト共重合体粒子(A)が、コア粒子である架橋エラストマー粒子(Ac)と、グラフトポリマー層(As)との2層構造である場合、グラフト共重合体粒子(A)は、典型的には、架橋エラストマー粒子(Ac)の存在下で、メタクリル酸エステル50~100質量%と、メタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体0~50質量%を含む単量体混合物(Ms)をグラフト共重合させてグラフトポリマー層(As)を形成することにより得ることができる。
【0048】
単量体混合物(Ms)中のメタクリル酸エステルの量は、マトリクスであるアクリル系樹脂との相溶性の確保及びアクリル系樹脂フィルムへのコーティング時の溶剤の含浸等によるコーティングフィルムの靱性低下や成形時の延伸による白化、割れの抑止の観点より、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0049】
グラフトポリマー層(As)において、メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、及びメタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素原子数が1~4のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0050】
グラフトポリマー層(As)において、他のビニル系単量体としては、アルキル基の炭素原子数が2以上のアクリル酸アルキルエステルを用いることができる。アルキル基の炭素原子数が2以上のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、及びアクリル酸ステアリル等からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、及びアクリル酸t-ブチルからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、アクリル酸n-ブチルが特に好ましい。
【0051】
グラフトポリマー層(As)は、好ましくは、架橋エラストマー粒子(Ac)5~90質量部の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル70~99質量%、アルキル基の炭素原子数が2以上のアクリル酸アルキルエステル0.5~30質量%、及び他のビニル系単量体0~19質量%を含む単量体混合物(Ms)10~95質量部を、少なくとも1段階以上でグラフト共重合させることにより得られるものである。ただし、架橋エラストマー粒子(Ac)と、単量体混合物(Ms)との合計量が100質量部を満たすものとする。
【0052】
単量体混合物(Ms)において、他のビニル系単量体としては、スチレン及びその核置換体等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、メタクリル酸及びその誘導体、アクリル酸及びその誘導体、N-置換マレイミド類、無水マレイン酸、メタクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。
【0053】
単量体混合物(Ms)は、他のビニル系単量体として反応性紫外線吸収剤を含んでもよい。つまり、グラフトポリマー層(As)が、反応性紫外線吸収剤に由来する構成単位を含んでもよい。単量体混合物(Ms)が反応性紫外線吸収剤を含む場合、耐候性、耐薬品性が良好であるアクリル系樹脂フィルムを得やすい。反応性紫外線吸収剤としては、公知の反応性紫外線吸収剤を使用することができ、特に限定されない。
【0054】
グラフトポリマー層(As)における、反応性紫外線吸収剤に由来する構成単位の比率は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。
【0055】
グラフト共重合体粒子(A)の製造に関して、架橋エラストマー粒子(Ac)、例えばアクリル酸エステル系の架橋エラストマー粒子(Ac)の存在下における単量体混合物(Ms)のグラフト共重合に際して、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー粒子(Ac)に対してグラフト結合していない重合体成分(フリーポリマー)が生じる場合がある。このようなフリーポリマーは、アクリル系樹脂フィルムのマトリクス相を構成するアクリル系樹脂の一部又は全部を構成するものとして使用できる。
【0056】
単量体混合物(Ms)には、重合体の分子量の制御、架橋エラストマー(Ac)へのグラフト率や架橋エラストマー(Ac)に結合していないフリーポリマーの生成量、及び重合時の不均化停止反応に伴うポリマーの二重結合末端の減少により熱安定性等を制御する目的で、連鎖移動剤を加えてもよい。このような連鎖移動剤は、架橋エラストマー(Ac)の重合に使用可能な連鎖移動剤と同様の連鎖移動剤が使用できる。連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物(Ms)の総量100質量部に対して、0~2質量部、好ましくは0~0.5質量部である。
【0057】
架橋エラストマー粒子(Ac)に対する単量体混合物(Ms)のグラフト率は、5~250%が好ましく、10~200%がより好ましく、20~150%がさらに好ましい。グラフト率が上述した範囲内であると、アクリル系樹脂フィルムの耐折曲げ白化性、透明性、引張破断時の伸び、及び成形性等が良好になる。
【0058】
グラフト共重合体粒子(B)は、典型的には、グラフト共重合体粒子(A)と同じく、架橋エラストマー(Bc)、及び架橋エラストマー(Bc)よりも表層側に位置するグラフトポリマー層(Bs)備えることが好ましい。
【0059】
グラフト共重合体粒子(B)について、その平均粒子径がグラフト共重合体粒子(A)よりも大きいことを除いて、グラフト共重合体粒子(A)と原料、製造方法等概ね同様である。特に好ましくは、アクリル酸エステル系の架橋エラストマー(Bc)の粒子は、架橋エラストマー層の内部に硬質或いは半硬質の架橋樹脂層を備える同心球状の多層構造を有する。このような硬質或いは半硬質の架橋樹脂層としては、例えば特公昭55-27576号公報等に示されるような硬質の架橋メタクリル樹脂粒子や、特開平4-270751号公報や国際公開公報2014/41803号等に示されるようなメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-スチレン共重合体等からなる半硬質層を有する架橋粒子等が挙げられる。このような硬質或いは半硬質の架橋樹脂層を導入することにより、グラフト共重合体粒子(A)よりも粒子径の大きいグラフト共重合体粒子(B)の透明性、耐折り曲げ白化性、耐折曲げ割れ性等を改善することができる。
【0060】
グラフト共重合体粒子(B)の平均粒子径は、150~400nmが好ましく、200~350nmがより好ましい。粒子径の大きなグラフト共重合体粒子(B)は、アクリル系樹脂材料に対する外力の作用に対して、グラフト共重合体粒子の周囲のアクリル系樹脂相に塑性変形(クレイズ)をより効果的に誘起する。このため、グラフト共重合体粒子(B)は、アクリル系樹脂材料に耐衝撃性と耐クラック性とを付与する効果に非常に優れている。
【0061】
本発明の1以上の実施形態において、グラフト共重合体粒子(A)、及びグラフト共重合体粒子(B)の平均粒子径は、日機装株式会社製のMicrotrac粒度分布測定装置MT3000等のレーザー回折式の粒度分布測定装置を使用し、ラテックス状態での光散乱法を用いて測定できる。
【0062】
グラフト共重合体粒子(A)、及びグラフト共重合体粒子(B)の製造方法は、特に限定されず、公知の乳化重合法、ミニエマルジョン重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、又は分散重合法が適用可能である。樹脂構造の調整幅が大きい点から、乳化重合法が特に好ましい。
【0063】
グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)の乳化重合において使用される開始剤としては、有機系過酸化物、無機系過酸化物、及びアゾ化合物等の公知の開始剤を使用することができる。具体的には、t-ブチルハイドロパ-オキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパ-オキサイド、スクシン酸パ-オキサイド、パ-オキシマレイン酸t-ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を使用できる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの開始剤は、熱分解型のラジカル重合開始剤として使用されてもよく、或いは、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせた、レドックス型重合開始剤系として使用されてもよい。なお、硫酸第一鉄はエチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム等の錯体と併用してもよい。
【0065】
これらの中でも、重合安定性、粒子径制御の点から、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等の無機系過酸化物を用いるか、或いは、t-ブチルハイドロパーオキサイドやクメンハイドロパーオキサイド等の有機経過酸化物を2価の鉄塩等の無機系還元剤及び/又はナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、還元糖、及びアスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス開始剤系を使用することがより好ましい。
【0066】
上記の無機系過酸化物又は有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法等の公知の方法で添加することができる。アクリル系樹脂フィルムの透明性の点から、単量体に混合して添加する方法、及び乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
【0067】
グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)の乳化重合に使用される界面活性剤(乳化剤とも称される)には特に限定はない。乳化重合には、公知の界面活性剤が広く使用できる。好ましい界面活性剤としては、例えば、アルキルスルフォン酸、アルキルベンゼンスルフォン酸、ジオクチルスルフォコハク酸、アルキル硫酸、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、アルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸、アルキルフェニルエーテルリン酸、サーファクチン等のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。アルキルエーテルリン酸及びその塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸及びそのナトリウム塩等を好適に用いることできる。これらの界面活性剤は単独で使用されても、2種以上併用されてもよい。
【0068】
乳化重合により得られるグラフト共重合体粒子(A)のラテックス、又はグラフト共重合体粒子(B)のラテックスから、公知の方法により、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)を分離、回収することができる。例えば、ラテックスに、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶性電解質を添加して凝固させた後、もしくは凍結により凝固させた後、固形分の濾別、洗浄及び乾燥等の操作により、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)を分離、回収できる。また、ラテックスに対する噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理により、グラフト共重合体粒子(A)、又はグラフト共重合体粒子(B)を分離、回収することができる。
【0069】
アクリル系樹脂組成物中、すなわちアクリル系樹脂フィルム中において、ゴム成分、すなわち架橋エラストマー(架橋エラストマーAc及び/又は架橋エラストマーBc)の含有量は35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることが特に好ましい。アクリル系樹脂フィルム中のゴム成分の含有量が上述した範囲内であると、機能性フィルムが高温高湿収縮率要件を満たしやすくなる。また、アクリル系樹脂フィルムの耐衝撃性を高める観点から、アクリル系樹脂組成物中、すなわちアクリル系樹脂フィルム中において、ゴム成分、すなわち架橋エラストマー(架橋エラストマーAc及び/又は架橋エラストマーBc)の含有量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0070】
アクリル系樹脂組成物中、すなわちアクリル系樹脂フィルム中において、ゴム成分の含有量が上述した範囲内であることが好ましく、アクリル系樹脂の含有量は、特に限定されないが、10~98.5質量%であってもよく、15~90質量%であってもよく、20~85質量%であってもよく、30~70質量%であってもよい。
【0071】
アクリル系樹脂組成物中、すなわちアクリル系樹脂フィルム中において、グラフト共重合体粒子(A)の含有量は特に限定されないが、例えば、10~90質量%であってもよく、15~80質量%であってもよく、20~70質量%であってもよい。また、アクリル系樹脂組成物中、すなわちアクリル系樹脂フィルム中において、グラフト共重合体粒子(B)の含有量は特に限定されないが、例えば、0.5~60質量%であってもよく、1~55質量%であってもよく、2~50質量%であってもよい。
【0072】
<他の成分>
アクリル系樹脂フィルム又はアクリル系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、アクリル系樹脂と少なくとも部分的に相溶性を有する熱可塑性樹脂を含んでもよい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶質の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、オレフィン-メタクリル酸誘導体樹脂、オレフィン-アクリル酸誘導体樹脂、セルロース誘導体(セルロースアシレート等)、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)樹脂等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-メタクリル酸樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、スチレン-N置換マレイミド樹脂、スチレン-非置換マレイミド樹脂、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、及びスチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂中では、スチレン系樹脂やポリカーボネート樹脂、セルロースアシレート樹脂が、アクリル系樹脂との相溶性に優れ、アクリル系樹脂フィルムの耐折り曲げ割れ性、耐溶剤性、低吸湿性等を向上できる可能性があることから好ましい。
【0073】
アクリル系樹脂フィルム又はアクリル系樹脂組成物は、また、本発明の目的を損なわない範囲で、アクリル系樹脂フィルムに使用される従来公知の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、光拡散剤、艶消し剤、滑剤、顔料及び染料等の着色料、繊維状充填材、有機粒子や無機粒子からなるアンチブロッキング剤、金属や金属酸化物からなる赤外線反射剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤は、これらに限定されない。これらの添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、もしくは本発明の効果を増強するため、添加剤の種類に応じた任意の量で用いることができる。
【0074】
アクリル系樹脂フィルムは、公知の加工方法により製造できる。公知の加工方法の具体例としては、溶融加工法、カレンダー成形法、プレス成形法、及び溶剤キャスト法等が挙げられる。溶融加工法としては、インフレーション法やTダイ押出法等が挙げられる。また、溶剤キャスト法では、アクリル系樹脂組成物を溶剤に溶解・分散させた後、得られた分散液を、ベルト状基材上にフィルム状に流涎する。次いで、流涎されたフィルム状の分散液から溶剤を揮発させることにより、アクリル系樹脂フィルムを得る。これらの方法の中では、溶剤を使用しない溶融加工法、特にTダイ押出法が好ましい。溶融加工法によれば、表面性に優れたフィルムを高い生産性で製造でき、且つ溶剤による自然環境や作業環境への負荷や、製造にかかるエネルギーやコストを低減することができる。
【0075】
アクリル系樹脂フィルムの製造において、必要に応じて、フィルムを成形加工する際に、溶融状態のフィルム両面を冷却ロール又は冷却ベルトに同時に接触させる(挟み込む)ことにより、表面性のより優れたフィルムを得ることができる。この場合、溶融状態のフィルムを、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度-5℃以下、好ましくはガラス転移温度-10℃以下の温度に維持したロール又は金属ベルトに同時に接触させることが好ましい。
【0076】
より好ましくは、このような挟み込みを行うためのロールの少なくとも一方として、例えば、特開2000-153547号公報や特開平11-235747号公報等に開示されたような弾性を有する金属スリーブを有するロールを使用し、低い挟み込み圧力を用いてロール鏡面の転写を行うことで、平滑性に優れかつ内部歪のより少ないフィルムを得ることができる。
【0077】
アクリル系樹脂フィルムは、耐熱性に優れる観点から、ガラス転移温度が115℃以上であることが好ましく、118℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
【0078】
アクリル系樹脂フィルムは、耐熱性に優れる観点から、ガラス転移温度が115℃以上であり、かつ、ゴム成分の含有量が15質量%以下であることが好ましく、ガラス転移温度が118℃以上であり、かつ、ゴム成分の含有量が15重量%以下であることがより好ましく、ガラス転移温度が118℃以上であり、かつ、ゴム成分の含有量が14.5質量%以下であることがさらに好ましく、ガラス転移温度が120℃以上であり、かつ、ゴム成分の含有量が14.5質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0079】
アクリル系樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、機能性フィルムの用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、20~500μmが好ましく、40~300μmがより好ましい。アクリル系樹脂フィルムの厚さがかかる範囲内であると、成形加工性が良好であり、アクリル系樹脂フィルムの巻取りが容易であり、且つアクリル系樹脂フィルムの巻取り時にシワが入りにくい。
【0080】
(ハードコート層)
アクリル系樹脂フィルムにはハードコート層が積層されている。ハードコート層は、アクリル系樹脂フィルムの少なくとも片面に積層すればよく、必要に応じて両面に積層してもよい。ハードコート層により、良好な耐薬品性や耐汚染性を付与することができる。
【0081】
ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物、すなわち完全硬化された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成される。ハードコート層が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことで、低屈折率層の未硬化の硬化性樹脂組成物の成分がハードコート層の成分と混合することが抑制され、それゆえ所望の反射防止機能が損なわれることを抑制される。また、インサート成形時の金型表面への低屈折率層の付着を抑制し、金型密着を防ぐことができる。
【0082】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、光硬化性樹脂成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物を適宜用いることができる。本明細書において、光硬化性樹脂成分は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により硬化(架橋)して硬化物を形成可能な化合物である。光硬化性樹脂成分としては、例えば、ハードコート層に汎用されているウレタン(メタ)アクリレート化合物等を好適に用いることができる。本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0083】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、多価アルコール、多価イソシアネート、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを混合して、イソシアネート基とヒドロキシ基との反応によりウレタン結合を生成させることにより得ることができる。
【0084】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の各種特性は、多価アルコールの構造と、多価イソシアネートの種類と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する、アクリロイル基又はメタクリロイル基(CH2=CH-CO-、又は、CH2=C(CH3)-CO-)の数によって適宜調整でき、特に制限されない。ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、紫外線硬化性ハードコート剤として市販されているウレタン(メタ)アクリレート樹脂(オリゴマーを含む)等も適宜用いることができる。
【0085】
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
多価イソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば2つ以上のイソシアネート基を含有する多価イソシアネート化合物を用いることができ、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタントリイソシアネート、3,3'-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、トリエチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリエチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネートのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、1個のヒドロキシル基を有する2-ヒドロキシエチルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレート等でもよく、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合を持つ化合物、例えば2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールアリルエーテル、グリセリン(モノ、ジ)アリルエーテル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等でもよい。また、これらのヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
多価イソシアネートのイソシアネート基との反応を促進するために、有機錫系ウレタン化触媒を好適に用いることができる。有機錫系ウレタン化触媒としては、ウレタン化反応に一般に使用されるものであればよく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアルキルマレート、ステアリン酸錫、オクチル酸錫等が挙げられる。これら有機錫系ウレタン化触媒の使用量は特に制限されるものではないが、反応性及び反応制御の観点から、0.005~3質量%の範囲内で用いることが望ましい。
【0089】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物に加えて、他の光硬化性樹脂成分を含んでもよい。他の光硬化性樹脂成分としては、ラジカル反応性官能基を有するモノマー及び樹脂等が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコンアクリレート、ポリカーボネートアクリレート、ポリアクリルアクリレート等が挙げられる。また、他の硬化性樹脂成分として、2~4官能のシラン化合物の加水分解縮合物、エポキシ基、及びオキセタン基等のカチオン硬化性、アニオン硬化性官能基を有するモノマー及び樹脂等を含む組成物を用いてもよい。
【0090】
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を少なくとも1個以上有すればよく、メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレートでもよく、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートでもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基及びアクリロイル基の総称である。
エポキシアクリレート系モノマーとしては特に制限がない。具体的には、グリシジル(
メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3、4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、及びビニルシクロヘキセンモノオキサイド(すなわち、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン)等が挙げられる。
【0091】
シラン化合物の加水分解縮合物からなる組成物は、好ましくは、下記一般式(1)で表される、加水分解性シリル基を有するシラン化合物(Z)を加水分解及び縮合させて得られる縮合物(、及び、必要に応じて反応性置換基を反応せしめる触媒或いは硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物である。
【0092】
R1-(SiR2
a(OR3)3-a)・・・(1)
上記一般式(1)中、R1は、少なくとも一部の末端が、エポキシ基、オキセタン基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、官能基保護されたアミノ基からなる群から選ばれる反応性置換基で置換されていてもよい、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~25のアリール基、及び炭素原子数7~12のアラルキル基からなる群より選ばれる1価の炭化水素基である。R2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~25のアリール基、及び炭素原子数7~12のアラルキル基からなる群より選ばれる1価の炭化水素基である。R3はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基である。aは0、1又は2である。
【0093】
前記縮合物(A)の重量平均分子量は30000以下であることが好ましい。また、反応性置換基を有するシラン化合物の使用割合が全体の10質量%以上であるのが好ましい。ハードコート層にこのようなシラン化合物の加水分解縮合物からなる組成物を併用する場合、ハードコート層としての硬化物が、硬度、耐薬品性、及び耐久性等に優れる可能性がある。
【0094】
前記一般式(1)のR1における反応性置換基は、ハードコート層形成時の硬化収縮が少ない点と、耐久性に優れカールが抑制された機能性フィルムを得やすい点から、エポキシ基又はオキセタン基であるのが好ましい。
【0095】
前記シラン化合物(Z)の加水分解縮合反応を行う際の触媒としては、中性塩触媒を用いることがより好ましい。反応性置換基がエポキシ基、オキセタン基である場合に、加水分解縮合時の反応性置換基の分解を抑制しやすいためである。
【0096】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物において、上述した他の硬化性樹脂成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。さらに紫外線硬化性ハードコート剤として市販されているもの等が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及びアクリレートを包含する意味である。
【0097】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物は、紫外線に代表される活性エネルギー線を照射することで硬化し、硬化物を形成する。活性エネルギー線の照射により硬化を行う場合には、光重合開始剤が使用される。さらに、上記のシラン化合物の加水分解縮合物、エポキシ基、及びオキセタン基等のカチオン硬化性、アニオン硬化性官能基を有するモノマー、樹脂、又はこれらの混合物を含む組成物を併用する場合には、適宜、光アニオン発生剤、又は光カチオン発生剤等を添加することができる。
【0098】
光重合開始剤の具体例としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイ
ルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン化合物等が挙げられる。これらの中では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物との相溶性に優れる1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが好ましい。
【0099】
光カチオン発生剤の具体例としては、例えば、サンアプロ社製のCPI-100P、C
PI-101A、CPI-200K、及びCPI-200S;和光純薬工業社製のWPI-124、WPI-113、WPI-116、WPI-169、WPI-170、及びWPI-124;ローディア社製のロードシル2074等が挙げられる。
【0100】
光アニオン発生剤の具体例としては、例えば、アセトフェノンo-ベンゾイルオキシウム、ニフェジピン、2-(9-オキソキサンテン2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ〔4.4.0〕デカ-5-エン、2-ニトロフェニルメチル4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシラート、1,2-ジイソプロピル-3-〔ビス
(ジメルアミノ)メチレン〕グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルピグアニジウム、及びn-ブチルトリフェニルバラート等が挙げられる。
【0101】
ハードコート層は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を熱可塑性樹脂フィルム、例えばアクリル系樹脂フィルム上に塗布して、塗膜を紫外線に代表される活性エネルギー線で照射して硬化させることで形成してもよい。この場合、ハードコート層用硬化性樹脂組成物は、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、消泡剤、酸化防止剤、光拡散剤、艶消し剤、防眩剤、防汚剤、滑剤、顔料及び染料等の着色料、有機粒子、無機粒子、金属粒子、及び帯電防止剤等の添加剤を、必要に応じて含んでもよい。添加剤は、これらに限定されない。
【0102】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物が防眩剤を含むと、ハードコート層に光拡散機能や防眩機能を付与することができる。防眩剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子等の無機粒子、(メタ)アクリル系樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、及びポリアセタール樹脂粒子等の熱可塑性樹脂粒子、架橋ポリオレフィン樹脂粒子、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子、架橋スチレン系樹脂粒子、及び架橋ウレタン樹脂粒子等の架橋熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子等が挙げられる。中でも、シリカ粒子、架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子が好適に用いられる。これらの防眩剤粒子は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物への分散性、凝集状態、及び親和性などを調整する目的で、適宜、公知の手法により表面処理を行ってもよい。これらの防眩剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。防眩剤の配合量は、防眩性、クリア感、マット感等の設計意図に応じて適宜調整され、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部に対し0.5~50質量部でもよい。
【0103】
前記防眩剤として用いる粒子は、平均粒子径が好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~10μmである。
【0104】
前記架橋(メタ)アクリル系樹脂粒子としては、例えば、綜研化学社製のMX-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500等の市販の架橋アクリル単分散粒子を用いてもよい。
【0105】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物がレベリング剤を含むと、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗布性、硬化物の耐擦り傷性や防汚性等を改善することができる。レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、及びそれらの付加物或いは混合物を使用することができる。レベリング剤の配合量は特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂組成物100質量部に対し0.03~3.0質量部でもよい。
【0106】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物が無機粒子を含むと、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物、すなわちハードコート層の硬度や耐摩耗性、帯電防止性等が向上する。無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、ジルコニア、グラフェン、ナノカーボン、カーボンブラック、ナノダイヤモンド、マイカ、チタン酸バリウム、窒化ホウ素、金属銀、及び金属銅等が挙げられる。これらの無機粒子は、表面処理を行わずに使用してもよく、また分散状態の制御のためにあらかじめ公知の方法で表面処理を実施し、硬化性樹脂成分との親和性を適宜制御してもよい。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に適切な塗布性を付与するためには、通常、有機溶剤が配合される。有機溶剤としては、硬化性樹脂組成物に所望する塗布性を付与でき、所望する膜厚及び性能のハードコート層を形成できる限り特に限定されない。有機溶剤の沸点は50~150℃が、塗布性と、形成される塗膜の乾燥性の点から好ましい。
【0108】
有機溶剤の具体例としては、ヘキサン等の飽和炭化水素;トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、及び塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びブタノール等のアルコール化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、及びエチルセロソルブ等のエーテル化合物;Nメチルピロリドン、及びジメチルホルムアミド等のアミド化合物等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗布方法としては任意の方法を特に制限なく採用することができる。塗布方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、キスコート法、ワイヤーバーコート法、及びカーテンコート法等が挙げられる。これらの塗布方法は、1種を単独で実施してもよく、2種以上を組み合わせて実施されてもよい。
【0110】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、熱可塑性樹脂フィルム、例えばアクリル系樹脂フィルム上に塗布した後、乾燥により塗膜から有機溶剤を除去した後、紫外線照射等の光による硬化を行うことにより、ハードコート層が形成される。
【0111】
乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、60~120℃であることが好ましく、70~100℃であることがより好ましい。乾燥温度が上述した範囲内である、塗膜中に有機溶剤が残留することがなく、熱可塑性樹脂フィルムの熱変形することなく、機能性フィルム(ハードコート層)の平坦性が良好になる。
【0112】
塗膜を硬化させる際に照射される紫外線の波長は200~400nmの範囲が好ましい。紫外線(UV)積算光量は、例えば、150~500mJ/cm2であることが好ましく、180~450mJ/cm2であることが好ましく、200~400mJ/cm2であることがさらに好ましい。UV積算光量が上述した範囲内であると、成形性を担保しながら、適度な硬度のハードコート層を得ることができる。積算光量が150mJ/cm2以上であるとハードコート層の架橋度が向上し、表面硬度や耐擦り傷性を良好にできる。積算光量が500mJ/cm2以下であると、後述する低屈折率用硬化性樹脂組成物の塗工時のハードコート層への含侵が適度になる。
【0113】
紫外線の露光光の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、及びエキシマランプ等のランプ光源や、アルゴンイオンレーザー及びヘリウムネオンレーザー等のパルス又は連続のレーザー光源等を備える照射装置を用いることができる。
【0114】
ハードコート層の膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.6~10.0μmであることが好ましく、0.7~7.0μmであることがより好ましく、0.8~5.0μmであることがさらに好ましい。ハードコート層の膜厚が0.6~10.0μmであると、耐摩耗性と成形性とを両立できる。
【0115】
熱可塑性樹脂フィルムとハードコート層の積層体は、120℃におけるクラック伸度が50~190%であることが好ましく、60~180%であることがより好ましく、70~170%であることがさらに好ましい。これにより、機能性フィルムの120℃におけるクラック伸度が50~190%の範囲になりやすく、成形性に優れる機能性フィルムを得やすくなる。本明細書において、120℃におけるクラック伸度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0116】
ハードコート層を構成する硬化性樹脂組成物においては、ハードコート層の表面硬度の向上とともに、成形体の形状への二次成形のもとでは延伸に伴って破断あるいは著しい白化を生じないように、高いクラック伸度を有すること、例えば上述したとおり、熱可塑性樹脂フィルムとハードコート層の積層体の120℃におけるクラック伸度が50~190%であることが好ましい。一般的に、硬化性樹脂組成物の硬化物は、高度に架橋されること、及び/又は、硬度の高い充填剤を含有することで、外部応力に対する硬化物表面の変形を抑制することで、表面硬度及び耐擦り傷性を発現している。従って、表面硬度及び耐擦り傷性と、変形性及び延伸性とは相反する性質であり、従来は、これらを両立することは容易ではなかったが、下記のような方法にて、硬度を維持しつつ二次成形時の高い延伸性を付与することができる。
【0117】
このようなハードコート用の硬化性樹脂に、硬度を維持しつつ二次成形時の高い延伸性を付与する方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
(1)硬化性樹脂のガラス転移温度を室温と二次成形温度との間に設計し、室温下では硬質としつつ、二次成形温度下では軟化して変形が可能な設計とする。このことにより、室温下では高い表面硬度を示しつつ、二次成形の際には高い延伸性を示す。
(2)複数の異なった構造の硬化性樹脂を組み合わせて用いることにより、硬化性樹脂の硬化後の架橋構造を、均一なものではなく、架橋密度の高い部分と、架橋密度の低い部分を持ち、ミクロ構造的には不均一なものとなるように設計する。このことにより、硬化物中の架橋密度の高い部分により、高い表面硬度を発現するとともに、二次成形の際には、架橋密度の低い部分が変形して、高い延伸性を示す。
(3)硬化性樹脂に、低架橋度あるいは非架橋の樹脂成分、及び/又は、低弾性率の樹脂成分を配合する。このことにより、硬化性樹脂の硬化後に、架橋密度の高い硬化性樹脂相に、低架橋度あるいは未架橋、及び/又は、低弾性率の微細領域(ドメイン)が分散した構造が形成される事で、硬化性樹脂のもつ表面硬度をある程度維持しつつ、変形性及び延伸性を付与する。このような低架橋度あるいは未架橋あるいは低弾性率の樹脂成分としては、例えば、(a)メタクリル樹脂、スチレンアクリロニトリル樹脂、脂肪族あるいは芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、セルロースアシレート樹脂などの熱可塑性樹脂、(b)必要に応じて反応性官能基を有してもよいアクリルゴム、シリコーンゴム、水素添加スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、オレフィンゴムなどの架橋または非架橋の軟質樹脂、(c)架橋されたゴム粒子表面に熱可塑性樹脂がグラフト重合したコア-シェル型ゴム粒子などが挙げられる。
ハードコート層に対して、例えば(1)ないし(3)などの手法の一つを単独で用いてもよく、あるいは2つ以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0118】
ハードコート層用硬化性樹脂組成物としては、光硬化性のウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む市販品、例えば、アイカ工業株式会社製の品名「Z-607-27L」、「Z-607-9L」、「Z-607-26HL」、DIC株式会社製の品名「ENS102」、荒川化学工業株式会社製の品名「ビームセット1200W」、大成ファインケミカル株式会社製の品名「アクリット8UX-116A」、日本化工塗料株式会社製の品名「NXD-004AP」、大同化成工業株式会社製の品名「P-5820TAH-1」、トーヨーケム株式会社製の品名「リオデュラスMOL7200」等の市販品を用いてもよい。これらのハードコート層用硬化性樹脂組成物は、硬化後にも伸度を有することから、機能性フィルムの120℃でのクラック伸度をより高めることができる。
【0119】
(低屈折率層)
低屈折率層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成されており、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は未硬化の状態である。低屈折率層は、反射防止層として機能し、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化された際の低屈折率層の屈折率は、前記ハードコート層の屈折率より低い。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、光硬化性樹脂成分及び屈折率調整剤を含む低屈折率層用硬化性樹脂組成物を適宜用いることができる。光硬化性樹脂成分及び屈折率調整剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて低屈折率層を形成することで、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化された際の低屈折率層の屈折率が前記ハードコート層の屈折率より低くなる。
【0120】
光硬化性樹脂成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、単官能の(メタ)アクリレート及び多官能の(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの光硬化性樹脂成分は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物、単官能の(メタ)アクリレート及び多官能の(メタ)アクリレートとしては、ハードコート層の説明の欄に記載のものを適宜用いることができる。
【0122】
多官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、大成ファインケミカル株式会社製の多官能の(メタ)アクリレート系樹脂(UV硬化型アクリルポリマー)「アクリット8KX-077」、「アクリット8KX-254B」、及び「アクリット8KX-212」等の市販品を適宜用いることができる。
【0123】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂成分として重量平均分子量が40000以上の高分子量の多官能の(メタ)アクリレート系樹脂を用いる場合、重量平均分子量が11000以下の低分子量の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を併用することが望ましい。低屈折率層用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分合計100質量%に対し、重量平均分子量が11000以下の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物の含有量が25質量%より大きいことが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。これにより、機能性フィルムを用いた樹脂成形体において、低屈折率層用硬化性樹脂組成物を硬化した後の樹脂成形体の摩耗性が向上しやすい。低屈折率層用硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂成分として重量平均分子量が11000以下の低分子量の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物のみを含んでもよい。低分子量の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物は、重量平均分子量が4000以下であってもよく、3000以下であってもよく、2000以下であってもよく、1000以下であってもよい。
【0124】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を含有する化合物以外に、光硬化性樹脂成分として、ハードコート層の説明の欄に記載した光硬化性樹脂成分を含んでもよい。また、光硬化性樹脂成分として、低屈折率層用コーティン剤又はハードコート層用コーティン剤の市販品、例えば、アイカ工業株式会社製の品名「Z-624-7L」等の市販品を用いてもよい。
【0125】
屈折率調整剤は、光硬化性樹脂成分中に低屈折率の物質を可視光の波長よりも小さい分散サイズで分散させることで、低屈折率層の硬化後の見かけの屈折率をハードコート層よりも低くするために用いられる。
【0126】
屈折率調整剤として、例えば、シリカ微粒子、シリコーン微粒子、中空シリカ微粒子、中空有機粒子、及びフッ化物微粒子等が使用できる。中空有機粒子としては、例えば、架橋構造を有するアクリル系樹脂、及びフッ素樹脂等から構成されるものが挙げられる。フッ化物微粒子を構成するフッ化物としては、フッ素樹脂、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、及びフッ化カルシウム等が挙げられる。中でも、ヘイズの上昇を抑制し、透明性を向上する観点から、屈折率調整剤は中空シリカ微粒子を含むことが好ましい。上述した屈折率調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
中空シリカ微粒子は、透明性の観点から、平均粒子径が100nm以下であることが好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましい。中空シリカ微粒子の粒子径が100nm未満であると、透明性が優れる。また、中空シリカ微粒子の平均粒子径の下限は特に限定されないが、反射防止性能の向上の観点から、例えば、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。具体的には、中空シリカ微粒子は、平均粒子径が10~100nmであることが好ましく、20~80nmであることがより好ましく、20~60nmであることがさらに好ましい。透明性及び反射防止性の観点から、屈折率調整剤は中空シリカ微粒子を30質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは40質量%以上含み、さらに好ましくは50質量%以上含む。本明細書において、中空シリカ微粒子の平均粒子径は、低屈折率層の断面を電子顕微鏡で観察し、10個の中空シリカ微粒子の粒子径を平均することで求めることができる。
【0128】
これらの屈折率調整剤は、光硬化性樹脂成分中に良好に分散させる目的で、粒子表面と光硬化性成分の親和性を高めるための表面処理を行ってもよい。このような表面処理の手法は公知のものが広く使用できるが、例えば中空シリカ微粒子等の無機材料からなる屈折率調整剤に対しては、シランカップリング剤等のカップリング剤により表面を有機化する手法が挙げられる。使用するカップリング剤は、光硬化性樹脂成分への親和性あるいは反応性を有する置換基を有していてもよい。
【0129】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物(低屈折率層)において、光硬化性樹脂成分及び中空シリカ微粒子の合計100質量%に対し、中空シリカ微粒子の含有量は30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。中空シリカ微粒子の含有量は30質量%以上であると、反射防止特性が向上する。また、中空シリカ微粒子の含有量の上限は特に限定されないが、表面硬度や耐摩耗性の向上の観点から、例えば、光硬化性樹脂成分及び中空シリカ微粒子の合計100質量%に対し、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。具体的には、中空シリカ微粒子の含有量は、光硬化性樹脂成分及び中空シリカ微粒子の合計100質量%に対し、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましく、50~70質量%であることがさらに好ましい。
【0130】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物(低屈折率層)は、機能性フィルムを積層して形成された樹脂成形体において、後述する様に、紫外線に代表される活性エネルギー線を照射することで硬化し、硬化物を形成するための光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、例えば、ハードコート層の説明の欄に記載の光重合開始剤の1種又は2種以上を適宜用いることができる。
【0131】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物において、低屈折率層に防汚性を付与するために、有機材料の一部を撥水性材料、又は撥油性材料に置き換えてもよい。撥水性材料、又は撥油性材料は一般にフッ素系、シリコーン系、脂肪族炭化水素系等のワックス系の材料等が挙げられる。これら撥水性材料又は撥油性材料は、光硬化性樹脂成分と反応できる反応性基を含有していてもよい。
【0132】
低屈折率層には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、光重合開始剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、防汚剤、防指紋剤等の添加剤が挙げられる。
【0133】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物に適切な塗布性を付与するためには、通常、有機溶剤が配合される。有機溶剤としては、ハードコート層の説明の欄に記載したものを1種又は2種以上適宜用いることができる。
【0134】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物の塗布方法としては任意の方法を特に制限なく採用することができ、ハードコート層の説明の欄に記載した方法を適宜使用することができる。
【0135】
低屈折率層用硬化性樹脂組成物をハードコート層上に塗布し、塗膜を適宜乾燥することで低屈折率層が形成される。乾燥により塗膜から有機溶剤が除去される。乾燥工程は、特に限定されないが、例えば、好ましくは40℃~120℃、より好ましくは50~110℃、さらに好ましくは60~100℃の温度条件下で、好ましくは10秒~5分、より好ましくは20秒~3分実施できる。
【0136】
低屈折率層の膜厚は、例えば、0.01~1μmであることが好ましく、0.05~0.5μmであることがより好ましい。低屈折率層の膜厚が上述した範囲であると、反射防止性能に優れ、均一な塗膜を形成しやすい上、ハードコート層との密着性も良好になる。
【0137】
本発明の1以上の実施形態の機能性フィルムにおいて、低屈折率層は、未硬化の低屈折率層用硬化性樹脂組成物で形成されていることを特徴としている。すなわち、機能性フィルムにおいて、低屈折率層は未硬化の状態である。そして、後述するように、機能性フィルムを熱可塑性樹脂基材の表面に積層して樹脂成形体を形成した後に、樹脂成形体の表面を活性エネルギー線で照射し、低屈折率層(低屈折率層用硬化性樹脂組成物)を硬化させることで、反射防止機能を有し、かつ優れた耐摩耗性、表面硬度、耐薬品性等を備えた樹脂成形体を得ることができる。
【0138】
(他の機能層)
機能性フィルムは、ハードコート層及び低屈折率層以外の他の機能層を含んでもよい。他の機能層としては、特に限定されないが、例えば、プライマー層、高屈折率層、防眩層、防汚層、耐指紋層、耐傷付き層、帯電防止層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層、表面凹凸層、光拡散層、艶消層、偏光層、着色層、意匠層、エンボス層、導電層、ガスバリア層、ガス吸収層等が挙げられる。機能性フィルムは、他の機能層を、2種以上組み合わせて備えてもよい。また一つの機能層が、二つ以上の複数の機能を兼ね備えてもよい。
【0139】
(機能性フィルム)
本発明の1以上の実施形態の機能性フィルムは、上述したとおりに、熱可塑性樹脂フィルムと、熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはアクリル系樹脂フィルム)上に順番に積層されたハードコート層及び低屈折率層を含む。本発明の1以上の実施形態において、例えば、
図1に示すとおりに、機能性フィルム1は、熱可塑性樹脂フィルム2と、熱可塑性樹脂フィルム1の片面に順番に積層されたハードコート層3及び低屈折率層4を含む。本発明の1以上の実施形態の機能性フィルムは、低屈折率層が最表面に配置されていればよく、本発明の効果を阻害しない範囲内にいて、必要に応じて、熱可塑性樹脂フィルムとハードコート層の間、及び/又は、ハードコート層と低屈折率層の間に上述した他の機能層を含んでもよい。また、ハードコート層及び低屈折率層側とは反対側には、プライマー層を有してもよい。
【0140】
機能性フィルムは、120℃におけるクラック伸度(以下において、単に「120℃クック伸度」とも記す)が50~190%である。120℃におけるクラック伸度が50%以上であると、機能性フィルムを熱可塑性樹脂基材上に積層成形し、機能性フィルムで熱可塑性樹脂基材を被覆する際に、特には真空成形、圧空成形又は射出成形(インサート成形を含む)する際に、機能性フィルムにクラックが発生することを抑制することができ、樹脂成形体を成形性よく得ることができる。機能性フィルムの120℃におけるクラック伸度がより好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、さらにより好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。機能性フィルムの120℃クラック伸度が190%以下であると、機能性フィルムを熱可塑性樹脂基材上に積層成形し、機能性フィルムで熱可塑性樹脂基材を被覆する際、機能性フィルムが金型に密着することなく、樹脂成形体を成形性よく得ることができる。機能性フィルムの120℃におけるクラック伸度がより好ましくは180%以下であり、さらに好ましくは170%以下である。本明細書において、120℃におけるクラック伸度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0141】
機能性フィルムは、成形時の白化を抑制する観点から、120℃における80%延伸時のΔヘイズは、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることがさらにより好ましく、0.8%以下であることがさらにより好ましく、0.4%以下であることが特に好ましい。本明細書において、120℃における80%延伸時のΔヘイズは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0142】
機能性フィルムは、機能性フィルムで被覆された樹脂成形体の透明性の観点から、低屈折率層を硬化させた後に測定したヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることがさらにより好ましく、0.8%以下であることがさらにより好ましく、0.4%以下であることが特に好ましい。本明細書において、ヘイズは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0143】
機能性フィルムは、機能性フィルムで被覆された樹脂成形体の反射防止性、防眩性及び視認性の観点から、低屈折率層を硬化させた後に測定した視感反射率が4.0%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることがさらにより好ましく、2.0%以下であることがさらにより好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。本明細書において、視感反射率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0144】
機能性フィルムは、機能性フィルムで被覆された樹脂成形体の耐擦傷性の観点から、低屈折率層を硬化させた後に測定した鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。本明細書において、鉛筆硬度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0145】
機能性フィルムは、機能性フィルムで被覆された樹脂成形体の耐摩耗性の観点から、低屈折率層を硬化させた後、低屈折率層側に対し、錘500g、かつ往復200回のカーゼ摩耗試験の行った際に、目視で観察される傷が10本以下であることが好ましく、目視で傷が観察されないことが特に好ましい。
【0146】
(機能性フィルムの製造方法)
機能性フィルムは、特に限定されないが、工程1において、熱可塑性樹脂フィルム(好ましくは、アクリル系樹脂フィルム)の少なくとも片面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜を活性エネルギー線で照射することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成し、工程2において、前記ハードコート層上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化の低屈折率層を形成することで作製することができる。工程2及び工程2以降の工程において、低屈折率層を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線で照射しないことで、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成された低屈折率層を含む機能性フィルムが得られる。
【0147】
機能性フィルムの両面にハードコート層及び低屈折率層を積層する場合は、工程1を2回行い、機能性フィルムの両面にハードコート層を形成した後、工程2を行うことができる。
【0148】
機能性フィルムが他の機能層を含み、他の機能層が光硬化性樹脂成分を含む場合、工程1の前、或いは工程1の後かつ工程2の前に、他の機能層を形成することができる。
【0149】
(樹脂成形体)
樹脂成形体は、熱可塑性樹脂基材と、前記機能性フィルムを含み、前記熱可塑性樹脂基材の少なくとも一部は、低屈折率層が樹脂成形体の最表面に位置するように配置された機能性フィルムで被覆されている。すなわち、少なくとも片面の低屈折率層は樹脂成形体の最表面に配置されている。機能性フィルムが120℃におけるクラック伸度が上述した範囲を満たすことにより、少なくとも一部に非平面の曲面的形状等の立体的形状を有する熱可塑性樹脂基材を機能性フィルムで被覆し、立体的形状を有する樹脂成形体を好適に得ることができる。機能性フィルムは、様々な形状を有する樹脂成形体の表面を保護しつつ反射防止性、耐摩耗性(傷付き防止性を含む)、防眩性等の種々の機能を付与する表面材として用いることができる。
【0150】
熱可塑性樹脂基材は、例えば、ビスフェノール系骨格、フルオレン系骨格又はイソソルバイド系骨格等を有するポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(AS樹脂、ABS樹脂、及びMAS樹脂、スチレンマレイミド系樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂等)、飽和ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、PPS系樹脂、POM系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、セルロースアシレート系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂等で構成してもよい。中でも、ディスプレイ表示部に必要となる優れた透明性を有することからポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、及び非晶性のポリオレフィン系樹脂等からなる群から選ばれる1以上が好ましく、機能性フィルムとの良好な密着性を有することからポリカーボネート樹脂、及び/又はアクリル系樹脂がより好ましく、ポリカーボネート樹脂が高剛性、高耐熱性、高耐衝撃性の観点からさらに好ましい。
【0151】
樹脂成形体は、例えば、自動車内装材、自動車外装材、光学部材、家電部材等として用いることができる。自動車内装材としては、特に限定されないが、例えば、インストルメントパネル、車載ディスプレイの前面板、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード、コンソールボックス等が挙げられる。自動車外装材としては、特に限定されないが、例えば、ドアミラー、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロンリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等が挙げられる。光学部材としては、特に限定されないが、例えば、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等が挙げられる。家電部材としては、特に限定されないが、例えば、スマートフォン、携帯電話、及びタブレット等の携帯電子機器の表示窓、ボタン、ハウジング;テレビ、DVDプレイヤー、ステレオ装置、炊飯器、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、加湿器、除湿機、扇風機、その他の家庭用電子電気機器;家具製品等の筐体、フロントパネル、ボタン、表面化粧材、外装材等が挙げられる。樹脂成形体は、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材として用いることもできる。
【0152】
本発明の1以上の実施形態の機能性フィルムを用いることで、複雑な立体的形状を有し、表面の耐擦り傷性、耐摩耗性、反射防止性、防眩性等の機能性が制御された、外観に優れる樹脂成形体を容易に製造できる。このため、樹脂成形体は、以上の用途の中でも、例えば、平面的形状、及び曲面的形状等の立体的形状等の様々な形状を有する車載ティスプレイ等の表示装置の前面板等の用途に好ましく用いられる。
【0153】
(樹脂成形体の製造方法)
樹脂成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂基材を機能性樹脂フィルムで被覆することができる成形方法であればよく、特に限定されない。例えば、インサート射出成形により、樹脂成形体を製造することができる。また、インサート射出成形の前に、必要に応じて、真空成形、圧空成形、圧縮成形等の方法による予備成形を行ってもよい。
【0154】
<予備成形>
機能性フィルムを、インサート射出成形に用いる金型の形状に賦形するための、真空成形、圧空成形、圧縮成形等の成形方法によって予備成形することができる。例えば、少なくとも一部に曲面部を有する立体的形状の樹脂成形体を製造する場合は、真空成形、圧空成形、圧縮成形等の方法による予備成形にて所定の立体的形状を有する曲面機能性フィルムを作製した後、インサート射出成形により、樹脂成形体を製造することができる。また最終的な樹脂成形体の形状によっては、予備成形を実施しなくてもよい。
【0155】
予備成形は、好ましくは、機能性フィルムの基材フィルムである熱可塑性樹脂フィルムの軟化温度以上に加熱して実施される。熱可塑性樹脂フィルムが、上述したアクリル系樹脂フィルムである場合は、予備成形時の機能性フィルムの温度は90~200℃であることが好ましく、より好ましくは100~170℃、さらに好ましくは110~140℃である。予備成形時の機能性フィルムの温度が90℃以上であると、可塑化が十分であり、延伸部のフィルムの破断、クラック、白化、成形後のソリ等が生じることがない。予備成形時の機能性フィルムの温度が200℃以下であると、過度の粘度低下によるフィルムのドローダウンや、樹脂の熱分解による発泡やガス成分の発生、それに伴う外観の悪化等が生じることがない。
【0156】
予備成形は、射出成形用金型と別の成形機を用いて実施してもよいし、例えば射出成形用金型の形状をそのまま利用して適宜公知の方法で賦形を行ってもよい。
【0157】
<インサート射出成形>
インサート射出成形(フィルムインサート成形、IML成形とも称される)は、射出成形用金型の少なくとも一面に、機能性フィルム、或いは必要に応じて所定の形状に成形させた機能性フィルムを、少なくとも片面の低屈折率層が射出成形用金型側になる、すなわち少なくとも片面の低屈折率層が射出成形用金型面に接するように設置し、型締めの後、熱可塑性樹脂を射出してインサート射出成形を行い、機能性フィルムが熱可塑性樹脂基材の表面に密着して積層された樹脂成形体を得る。
【0158】
インサート射出成形の条件は、特に限定されず、例えば、成形用の熱可塑性樹脂を正常に射出成形できるように、成形温度、射出圧、射出速度、保持圧、金型温度、冷却時間等を公知の範囲で適切に設定することができる。
【0159】
樹脂成形体の表面には、未硬化の低屈折率層が配置されているため、樹脂成形体の射出成形後の冷却において、金型温度は、成形体の過度の急冷による成形体の残留歪等が問題とならない範囲において、できるだけ低く設定することが好ましい。また、低屈折率層の軟化温度よりも低温とすることがより好ましい。金型温度を低く設定すると、低屈折率層の軟化による金型表面への貼り付けが発生しにくい。また、金型表面に貼り付いた低屈折率層を剥離する際に低屈折率層の剥離や表面の荒れ、白化等が生じやすいが、低屈折率層の軟化により金型表面への貼り付けが発生しないことで、このような問題もない。
【0160】
また、一般に、射出成形金型のゲート部の近傍は、射出樹脂が高いせん断応力を受け、せん断発熱も伴って流入する部位であるため、他の部位よりも高温となりやすく、低屈折率層の金型表面への貼り付きが特に発生しやすい。このため、ゲート部の形状や射出プロファイル等を工夫し、ゲート部近傍におけるせん断発熱を抑制する手法を用いることも好ましい。また、例えばゲート近傍部の金型の冷却温度を下げる、ゲート近傍部の金型の冷却容量を高める等の手法を採ってもよい。
【0161】
(活性エネルギー線照射による硬化)
上記のようにして得られた樹脂成形体は、少なくとも片面上に機能性フィルムが配置されており、最表面に未硬化の低屈折率層が形成されている。
該樹脂成形体に、活性エネルギー線を照射して低屈折率層を硬化させる(以下、「後硬化」とも称する)ことにより、硬化後の光硬化性樹脂成分による高い架橋密度に基づく、優れた表面硬度、耐傷付き性、耐薬品性を有し、さらにハードコート層より屈折率が低い低屈折率層の形成に基づく優れた反射防止能等の特長を有する樹脂成形体を得ることができる。
【0162】
樹脂成形体の後硬化の方法は、活性エネルギー線の照射により充分に低屈折率層の硬化反応が進む条件であれば、特に限定されない。例えば、インサート射出成形後に金型の片面を開いた状態で、樹脂成形体の表面、あるいは樹脂成形体が透明な場合は裏面から、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法でもよく、樹脂成形体を金型から取り出した後に活性エネルギー線を照射する方法でもよい。
【0163】
活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。使用する紫外線源としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、UV-LED等の公知の光源が使用できる。積算照射光量は、低屈折率層に用いる光硬化性樹脂成分の特性に応じて適宜設定できるが、例えば50~4000mJ/cm2、好ましくは100~3500mJ/cm2である。
【0164】
活性エネルギー線照射時の温度条件は特に限定されないが、架橋反応を円滑に進行させるという観点からは、常温、又は、成形体の軟化温度を超えない範囲での温度下で実施することが好ましい。
【0165】
また、後硬化に伴う過度の硬化収縮による成形体のソリや割れ等を防止することが望ましい場合には、常温以下の低温で実施してもよい。
【0166】
また、酸素による硬化阻害を受けやすいラジカル硬化系等の硬化系を用いている場合には、窒素雰囲気下や減圧等の低酸素濃度下で、活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。
【0167】
前記射出成形体において、機能性フィルムの成形時の機能性フィルムの金型への貼り付き、表面の荒れ、白化及び剥離を抑制する観点から、射出成形前の機能性フィルム(低屈折率層が未硬化)と取得した紫外線硬化後の樹脂成形体のフィルム部(低屈折率層が硬化)の色差(ΔE)は、1.5以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。本明細書において、色差は、実施例に記載のとおりに測定することができる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例のみに限定されない。下記において、特に指摘がない場合、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0169】
実施例及び比較例において用いた測定方法及び評価方法を説明する。
【0170】
(120℃クラック伸度)
120℃クラック伸度は、機能性フィルム又はアクリル系樹脂フィルムとハードコート層の積層体を用いて測定した。具体的には、機能性フィルム又はアクリル系樹脂フィルムとハードコート層の積層体を10mm(幅)×100mm(長さ)に切り出し、120℃に設定された高温槽が取り付けられたテンシロン引張試験機(株式会社島津製作所、AG-2000D)を用いて、余熱時間2分、チャック間距離40mm、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行った。ハードコート層にクラックが発生した時の伸度を測定し、3つの試料に対して測定を行って得られた試験結果の平均値を120℃クラック伸度とした。
(120℃での80%延伸後のΔヘイズ)
120℃での80%延伸後のヘイズ差(Δヘイズ)は、機能性フィルムを用いて測定した。具体的には、10mm(幅)×100mm(長さ)に切り出し、120℃に設定された高温槽が取り付けられたテンシロン引張試験機(株式会社島津製作所、AG-2000D)を用いて、余熱時間2分、チャック間距離40mm、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い、80%延伸した後の機能性フィルムのヘイズをISO14782に準じてヘイズメーターNDH4000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
(ヘイズ)
ヘイズは、紫外線照射後の機能性フィルムを用い、ISO14782に準じて、ヘイズメーターNDH4000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。紫外線照射は、アイグラフィックス株式会社製の高圧水銀ランプ(型番「H06-L41」)で積算光量230mJ/cm2で行った。
(視感反射率)
視感反射率は、紫外線照射後の機能性フィルムを用い、ハードコート層及び低屈折率層の反対面に黒のマジックインキで黒く塗り、その上に黒のビニールテープを貼り合わせ、JIS Z 8722:2009に準じて測色計SC-P(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。紫外線照射は、ヘイズ測定の場合と同様に行った。
(鉛筆硬度)
鉛筆硬度は、紫外線照射後の機能性フィルムを用い、JIS K 5600-5-4:1999に準じて鉛筆硬度を測定した。紫外線照射は、ヘイズ測定の場合と同様に行った。
(摩耗試験)
摩耗試験は、紫外線照射後の機能性フィルムを用い、表面性測定機HEIDON Type 14DR(新東科学株式会社製)にて行った。直径1mmの測定子にガーゼを装着し、500gの錘を載せた。機能性フィルムのハードコート面にガーゼを載せ、ストローク:100mm、スピード6000mm/minで200往復試験を実施し、下記の基準で摩耗性を評価した。B以上の評価であれば、耐摩耗性が良好であることを意味する。
A:目視で傷なし
B:目視で傷が1~10本
C:目視で傷が10本以上
(金型密着)
射出成形前の機能性フィルム(低屈折率層が未硬化)と取得した紫外線硬化後の樹脂成形体のフィルム部(低屈折率層が硬化)の色差(ΔE)を測定した。色差は分光色彩計SE7700を用いて以下の条件で測定した。ΔEの値に基づいて、下記に基準にて金型密着を評価した。
モード:反射
裏面処理:黒テープ
光源:D65
視野角:2°
測定径:28mm
金型密着なし:ΔEが1.5以下
金型密着あり:ΔEが1.5より大きい
【0171】
〔製造例1:グラフト共重合体粒子(A)〕
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
・脱イオン水 200部
・ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.24部
・ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレ-ト 0.15部
・エチレンジアミン四酢酸-2-ナトリウム 0.001部
・硫酸第一鉄 0.00025部
その後、重合装置内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、下記混合物(I)30部を10部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、架橋エラストマー(Ac)の粒子(平均粒子径80nm)のラテックスを得た。重合転化率は99.5%であった。
混合物(I)の配合割合:
・ビニル単量体混合物(アクリル酸n-ブチル(BA)90%及びメタクリル酸メチル(MMA)10%) 10部
・アリルメタクリレート(AlMA) 1部
・クメンハイドロパーオキサイド(CHP) 0.2部
【0172】
その後、重合装置にジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込んだ後、内温を60℃にし、グラフトポリマー層(As)形成のために、下記混合物(II)70部を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体粒子(A)のラテックスを得た。重合転化率は98.2%であった。得られたラテックスを目開き10μmのステンレス製メッシュで濾過した後、塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して、粉末状のグラフト共重合体粒子(A1)を得た。グラフト共重合体粒子(A1)は、平均粒子径が80nmであった。
混合物(II)の配合割合:
・ビニル単量体混合物(MMA99%、BA1%)70部、
・t-ドデシルメルカプタン(t-DM)0.5部
・CHP0.5部
【0173】
〔製造例2:グラフト共重合体粒子(B)〕
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
・脱イオン水 180部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸 0.002部
・ホウ酸 0.4725部
・炭酸ナトリウム 0.04725部
・水酸化ナトリウム 0.0098部
【0174】
その後、重合装置内を窒素ガスで充分に置換した後、内温を80℃にし、過硫酸カリウム0.027部を2%水溶液で入れ、次いでビニル単量体混合物(MMA97%、及びBA3%)27部と、メタクリル酸アリル0.036部とからなる混合物を81分かけて連続的に添加した。さらに60分重合を継続することにより、コア(架橋エラストマー(Bc))の1層目となる重合物の粒子を得た。重合転化率は99.0%であった。
その後、水酸化ナトリウム0.0267部を2%水溶液で添加し、過硫酸カリウム0.08部を2%水溶液で添加し、次いでビニル単量体混合物(BA83%、及びスチレン(St)17%)50部と、メタクリル酸アリル0.375部とからなる混合物を150分かけて連続的に添加した。添加終了後、過硫酸カリウム0.015部を2%水溶液で添加し、120分重合を継続し、1層目と2層目とからなるコア(架橋エラストマー粒子(Bc))を得た。重合転化率は99.0%であり、架橋エラストマー粒子Bcの平均粒子径は230nmであった。
【0175】
その後、過硫酸カリウム0.023部を2%水溶液で添加し、ビニル単量体混合物(MMA80%、及びBA20%)23部を45分かけて連続的に添加し、さらに30分重合を継続することにより、コアとなる2層構造を有する架橋エラストマー粒子(Bc)の表側にシェルとなるグラフトポリマー層(Bs)を形成して、グラフト共重合体粒子(B)のラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体粒子を得た。グラフト共重合体粒子(B)は、平均粒子径が230nmであった。
【0176】
実施例及び比較例で、ハードコート層に用いた光構成性成分の詳細を下記表1に示し、低屈折率層に用いた光硬化し成分の詳細を下記表2に示した。
【0177】
【0178】
【0179】
(実施例1)
<アクリル系樹脂フィルムの作製>
製造例1のグラフト共重合体粒子(A)30部と、製造例2のグラフト共重合体粒子(B)4部と、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、株式会社クラレ製、品名「パラペットHM」)66部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、シリンダ温度を200℃~260℃に調整した58mmΦ単軸押出機((株)日本精鋼所製)を使用し、スクリュー回転数90rpm、吐出量130kg/時間にて溶融混練を行い、ストランド状に引き取り、水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて切断して、アクリル系樹脂組成物のペレットを得た。
【0180】
得られたアクリル系樹脂組成物のペレットを、Tダイ付90mmΦ単軸押出機を用いて、シリンダ設定温度180℃~240℃にて吐出量130kg/hrにて溶融混練し、ダイス温度240℃にてTダイより吐出し、90℃に温調したキャストロールと60℃温調した冷却ロールで冷却固化させ、厚さ175μmのアクリル系樹脂フィルムを得た。
【0181】
<機能性フィルムの作製>
得られたアクリル系樹脂フィルム片面上に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を、♯10バーコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥した後、紫外線照射により硬化させてハードコート層(厚さ3μm)を形成した。紫外線照射は、アイグラフィックス株式会社製の高圧水銀ランプ(型番「H06-L41」)で積算光量230mJ/cm2で行った。
ハードコート層の表面上に、低屈折率層形成用組成物を、♯3バーコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥し、低屈折層(厚さ100nm)を形成し、機能性フィルムを得た。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物として、光硬化性のウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むコーティング剤(大同化成工業株式会社製、品名「P-5820TAH―1」)を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)により固形分濃度が30%になるように希釈した組成物を用いた。
低屈折率層形成用組成物として、ウレタンアクリレート系樹脂(三菱ケミカル株式会社製、品名「紫光UV-1700B」)10部、多官能アクリレート系樹脂(大成ファインケミカル株式会社製、品名「アクリット8KX254B」)30部、及び中空シリカ(日揮触媒化成株式会社製、品名「スルーリアA2SL-02KA」、平均粒子径50nm)60部からなる混合物100部に、フッ素系防汚添加剤(信越化学株式会社製、品名「KY―1203」)10部と光開始剤(IGM Resins B.V.社製、品名「Omnirad184」)3部を混合し、メチルエチルケトン(MEK)により固形分濃度が30%になるように希釈した組成物を用いた。
【0182】
<樹脂成形体Xの作製>
平板射出成形により、樹脂成形体Xを作製した。
具体的には、
図2のゲート12を有する金型11(L1:120mm、W1:120mm、厚み:2mm)を用い、
図3に示すように、機能性フィルム13(L2:60mm、W2:60mm)を低屈折率層側が金型面になるように、かつゲート12からの距離L3が5mmになるように配置し、上辺部をポリイミドテープ14で貼った。射出樹脂はPC(H2000:三菱エンジニアリングプラスチックス製)を用い、成形機は日精樹脂工業社製の80トン射出成形機「FN-1000」を用い、温度条件は下記のとおりとし、射出速度は10mm/sec、射出圧力は160MPa、冷却時間は20秒とし、成形サイクルは40秒とした。
温度条件:ノズルは300℃、H2は290℃、H3は280℃、H4は270℃、ホッパー下は50℃、金型は設定80℃(実測78℃)。
得られた樹脂成形体を金型から取り出し、常温で、アイグラフィックス株式会社製の高圧水銀ランプ(型番「H06-L41」)で積算光量230mJ/cm
2で紫外線照射し、低屈折率層を硬化させた。
【0183】
<樹脂成形体Yの作製>
立体的形状を有する樹脂成形体Yを作製した。
≪予備成形≫
機能性フィルムについて、真空圧空成形(フィルム温度120℃、金型90℃、圧力1MPa)で形状を付与し、
図4A及び4Bに示す立体的形状を有する曲面フィルム20を得た。
<インサート射出成形>
上記で得られた曲面フィルム20を射出成形機(日精樹脂工業株式会製「FNX180ECOJECT」)の金型内にセットし、シリンダ温度260~300℃、金型温度80℃の条件でポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック製「H2000」)を射出成形し、曲面フィルム20とポリカーボネート樹脂を一体化し、
図5A及び5Bに示すような立体的形状を有する樹脂成形体30を得た。
得られた樹脂成形体を金型から取り出し、常温で、アイグラフィックス株式会社製の高圧水銀ランプ(型番「H06-L41」)で積算光量230mJ/cm
2で紫外線照射し、低屈折率層を硬化させた。
【0184】
(実施例2~13)
低屈折層形成用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分として樹脂(又はコーティング剤)及びシリカの混合物の配合を下記表3~5に示す配合にした以外は、実施例1と同様の方法で機能性フィルム、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0185】
(実施例14~15)
ハードコート層用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分として下記表5に示すコーティング剤を用い、低屈折層形成用硬化性樹脂組成物における樹脂及びシリカの混合物の配合を下記表5に示す配合にした以外は、実施例1と同様の方法で機能性フィルム、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0186】
(実施例16)
ハードコート層用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分として表5に示すコーティング剤及び防眩剤として架橋アクリル系樹脂粒子(総研化学株式会社製、品名「MX-80H3wT」、平均粒子径0.8μm)を用い、低屈折層形成用硬化性樹脂組成物における樹脂及びシリカの混合物の配合、並びにハードコート層形成用硬化性樹脂組成物の配合を下記表5に示す配合にした以外は、実施例1と同様の方法で機能性フィルム、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0187】
(比較例1)
<機能性フィルムの作製>
実施例1と同様にしてアクリル系樹脂フィルムの片面上にハードコート層を形成した。
ハードコート層の表面上に、低屈折率層用硬化性樹脂組成物を、♯3バーコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥した後、紫外線照射により硬化させて低屈折率層(厚さ100nm)を形成した。紫外線照射は、アイグラフィックス株式会社製の高圧水銀ランプ(型番「H06-L41」)で積算光量230mJ/cm2で行った。
低屈折率層用硬化性樹脂組成物として光硬化性のウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むコーティング剤(アイカ工業株式会社製、品名「アイカトロンZ-824-2」)を2―プロパノール(IPA)により固形部濃度が2.5%になるように希釈した組成物を用いた。
<樹脂成形体X及びYの作製>
上記で得られた機能性フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0188】
(比較例2~3)
<機能性フィルムの作製>
低屈折率層用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分として表6に示すコーティング剤を用いた以外は、比較例1と同様の方法で機能性フィルムを作成した。
<樹脂成形体X及びYの作製>
上記で得られた機能性フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0189】
(比較例4)
<機能性フィルムの作製>
得られたアクリル系樹脂フィルムの片面上に、光硬化性の多官能アクリレート系樹脂(大成ファインケミカル株式会社製、品名「アクリット8KX―077」)を、メチルエチルケトン(MEK)により固形分濃度が30%になるように希釈した液を、♯10バーコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥し、ハードコート層(厚さ3μm)を形成した。
未硬化のハードコート層の表面上に、低屈折率層形成用組成物を、♯3バーコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥した後、未硬化の低屈折層(厚さ100nm)を形成した。
低屈折率層形成用組成物としては、実施例1と同様の組成物を用いた。
<樹脂成形体X及びYの作製>
上記で得られた機能性フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0190】
(比較例5~6)
ハードコート層用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分として表7に示す樹脂又はコーティング剤を用い、低屈折層形成用硬化性樹脂組成物における樹脂及びシリカの混合物の配合を下記表7に示す配合にした以外は、実施例1と同様の方法で機能性フィルム、樹脂成形体X及びYを作製した。
【0191】
(比較例7)
低屈折率層用硬化性樹脂組成物において、光硬化性樹脂成分として表7に示すコーティング剤を用いた以外は、比較例1と同様の方法で機能性フィルムを作成した。
【0192】
実施例及び比較例において、120℃クラック伸度、120℃での80%延伸後のΔヘイズ、ヘイズ、反射率、鉛筆硬度、及び金型密着を上述したとおりに測定し、その結果を下記表3~7に示した。また、実施例及び比較例において、摩耗試験を上述したとおりに測定し、その結果を下記表3~7に示した。表3~7において、配合量の単位は質量部である。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
上記表3~5から分かるように、実施例1~16の機能性フィルムは、120℃クラック伸度が50~190%であり、120℃80%延伸時のΔヘイズが10%以下であり、金型密着がなく、表面の荒れ、白化及び剥離がなく、成形性が良好であった。また、鉛筆硬度がH以上であり、摩耗試験における評価がB以上であり、耐摩耗性が良好であった。また、視感反射率が4.0%以下であり、反射防止性及び防眩性が良好であった。
【0199】
一方、ハードコート層及び低屈折率層のいずれも硬化物で構成されている比較例1及、3及び7は、120℃80%延伸時のΔヘイズが10%を超えており、成形時に白化が発生し、成形性が悪かった。また、比較例1~3は、摩耗試験における評価がCであり、耐摩耗性が劣っていた。また、ハードコート層及び低屈折率層のいずれも未硬化状態である比較例4は、120℃クラック伸度が200%以上である上、金型密着があり、成形性が劣っていた。120℃クラック伸度が200%である比較例5は、鉛筆硬度がFであり、耐摩耗性も劣っていた。比較例6は、120℃クラック伸度が20%であり、成形性が劣っていた。
【0200】
上記で説明した各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせることが可能である。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0201】
1 (樹脂成形体被覆用)機能性フィルム
2 熱可塑性樹脂フィルム
3 ハードコート層
4 低屈折率層
11 金型
12 ゲート
13 (樹脂成形体被覆用)機能性フィルム
14 ポリイミドテープ
20 立体的形状を有する曲面フィルム
30 立体的形状を有する樹脂成形体