(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-24
(45)【発行日】2026-04-01
(54)【発明の名称】炭化水素吸着剤及び炭化水素の吸着方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20260325BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20260325BHJP
C01B 39/48 20060101ALI20260325BHJP
【FI】
B01J20/18 D ZAB
B01J20/18 B
B01D53/92 280
C01B39/48
(21)【出願番号】P 2021172474
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2024-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2020177287
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 豊浩
(72)【発明者】
【氏名】中澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 真人
(72)【発明者】
【氏名】三橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090751(WO,A1)
【文献】特表2009-516578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0183277(US,A1)
【文献】国際公開第2005/092482(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188341(WO,A1)
【文献】特開2014-043371(JP,A)
【文献】特開2013-237613(JP,A)
【文献】特表2015-501276(JP,A)
【文献】特表2007-523742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 20/34
B01D 53/34 - 53/96
C01B 33/20 - 39/54
F01N 3/00 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MSE構
造を有するゼオライトを含み、ルビジウム及びセシウムの少なくともいずれかの金属を、1質量%以上20質量%以下を含む、炭化水素吸着剤。
【請求項2】
前記金属を、3質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項3】
ルビジウム及びセシウムの少なくともいずれかの金属[mol]/Al[mol]の比率が0.01以上10以下である、請求項1又は2に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項4】
前記金属が、セシウムである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項5】
133Cs MAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-300ppm以上-130ppm以下に位置する、請求項
4に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項6】
133Cs MAS NMRスペクトルにおけるメインピークが
-250ppm以上
-150ppm以下に位置する、請求項
5に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項7】
前記ゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比(SiO
2/Al
2O
3比)が2以上200以下のゼオライトである、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項8】
前記ゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比(SiO
2/Al
2O
3比)が2以上100以下のゼオライトである、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の炭化水素吸着剤。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の炭化水素吸着剤に、炭化水素含有流体を接触させることを特徴とする炭化水素の吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化水素吸着剤及び炭化水素の吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や船舶などの移動体に使用されている内燃機関から排出される排ガスは炭化水素を多く含む。内燃機関から排出される炭化水素は三元触媒により浄化される。三元触媒が機能するためには200℃以上の温度環境が必要である。そのため、いわゆるコールドスタート時など、三元触媒が機能しない温度域では炭化水素吸着剤に炭化水素を吸着し、三元触媒が機能し始める温度域で吸着剤から炭化水素を放出することで、炭化水素を三元触媒で分解及び浄化している。炭化水素吸着剤にはゼオライトを含む組成物が一般的に使用されているが、該組成物としては、炭化水素の脱離開始温度が高いほど三元触媒の活性が高い状態で炭化水素を放出することができる。炭化水素の浄化に対し有利に働くため、炭化水素の脱離開始温度が高い組成物が求められている。
【0003】
特許文献1では、炭化水素の脱離開始温度が高い組成物として、元素の電気陰性度が1.40以上のイオンが少なくとも一種含まれたゼオライトを含む組成物が提案されている。特許文献1では脱離開始温度の高い組成物が得られているものの、貴金属を触媒材として使用する必要があり、三元触媒よりも前段に位置する炭化水素吸着剤はより高温に晒される。そのため、特許文献1の組成物は、内燃機関から排出される炭化水素を浄化するための炭化水素吸着剤として、実用に耐え得る耐熱性を有しておらず、コストの面でも不利であった。
【0004】
特許文献2では、アルカリ金属を含有するゼオライトからなる炭化水素吸着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-005020号公報
【文献】特開2001-293368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の炭化水素吸着剤については、炭化水素の脱離開始温度が十分高くないという課題があった。本開示は、炭化水素の脱離開始温度の高い炭化水素吸着剤を提供すること、及び該炭化水素吸着剤を使用する炭化水素の吸着方法の少なくともいずれかを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ゼオライトを含む組成物の炭化水素吸着特性について検討した。その結果、下記の細孔構造を有するゼオライトを含む炭化水素吸着剤が、炭化水素の脱離開始温度が高いことを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は特許請求の範囲の記載のとおりであり、また、本開示の要旨は以下のとおりである。
[1] 10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトを含む炭化水素吸着剤。
[2] 前記三次元細孔が、10員環細孔、12員環細孔、及び14員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔である、上記[1]に記載の炭化水素吸着剤。
[3] 前記三次元細孔が、10員環細孔、及び12員環細孔からなる三次元細孔である、上記[1]に記載の炭化水素吸着剤。
[4] 金属を含む上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の炭化水素吸着剤。
[5] 前記金属が、ルビジウム及びセシウムの少なくともいずれかである、上記[4]に記載の炭化水素吸着剤。
[6] 前記金属についてのMAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-250ppm以上-130ppm以下に位置する、上記[4]又は[5]に記載の炭化水素吸着剤。
[7] 前記金属についてのMAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-250ppm以上-150ppm以下に位置する、上記[4]乃至[6]に記載の炭化水素吸着剤。
[8] 133Cs MAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-300ppm以上-130ppm以下に位置する、上記[4]乃至[7]に記載の炭化水素吸着剤。
[9] 133Cs MAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-300ppm以上-130ppm以下に位置する、上記[4]乃至[8]に記載の炭化水素吸着剤。
[10] 前記ゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比(SiO2/Al2O3比)が2以上200以下のゼオライトである、上記[1]乃至[9]のいずれかに記載の炭化水素吸着剤。
[11] 前記ゼオライトが、MSE構造及びCON構造から選ばれる少なくともいずれかの構造を有するゼオライトである、上記[1]乃至[10]のいずれかに記載の炭化水素吸着剤。
[12] 上記[1]乃至[11]のいずれかに記載の炭化水素吸着剤に、炭化水素含有流体を接触させること特徴とする炭化水素の吸着方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、SiO2/Al2O3比が同程度の場合における、炭化水素の脱離開始温度の高い炭化水素吸着剤を提供すること、及び該炭化水素吸着剤を使用する炭化水素の吸着方法を提供すること、の少なくとも1つの目的を達する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の
133Cs MAS NMRスペクトル及び波形分離結果を示す図である。
【
図2】比較例3の
133Cs MAS NMRスペクトル及び波形分離結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の炭化水素吸着剤について、実施形態の一例を示して説明する。
【0012】
本実施形態の炭化水素吸着剤は、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトを含むことを特徴とする。
【0013】
本実施形態において、ゼオライトは、骨格原子(以下、「T原子」ともいう。)が酸素(O)を介した規則的構造を有する化合物であり、T原子が金属原子、半金属原子及びそれ以外の原子の少なくともいずれかからなる化合物である。金属原子として、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)及びチタン(Ti)の群から選ばれる1以上やその他遷移金属元素が挙げられ、半金属原子として、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びテルル(Te)の群から選ばれる1以上が例示でき、それ以外の原子としてリン(P)が例示できる。具体的なゼオライトとして、アルミノシリケート、フェロシリケート及びガロシリケートの群から選ばれる1以上など、T原子が金属原子とケイ素からなるメタロシリケートや、アルミノフォスフェート(AlPO)及びシリコアルミノフォスフェート(SAPO)の少なくともいずれかなどの金属リン酸塩、が例示できるが、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトはT原子としてリンを含まないことが好ましい。
【0014】
本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、好ましくはメタロシリケートであり、より好ましくは結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートは、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とが酸素(O)を介したネットワークの繰り返しからなる結晶構造を有する化合物である。結晶性アルミノシリケートは、T原子のアルミニウム及びケイ素の少なくともいずれかの一部が、アルミニウム及びケイ素の金属原子及び半金属原子の少なくともいずれかで置換された構造を有していてもよい。
【0015】
ゼオライトの骨格構造(結晶構造と互換的に使用され、以下、「ゼオライト構造」ともいう。)は、国際ゼオライト学会(International ZeoliteAssociation)のStructure Commissionが定めている構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で特定される骨格構造であり、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載された各ゼオライト構造のXRDパターン(以下、「参照パターン」ともいう。)と、対象とするゼオライトのXRDパターンとの対比によって、同定できる。
【0016】
本実施形態において、XRDパターンは以下の条件のXRD測定より得られるものが挙げられる。
【0017】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
検出器 : 半導体検出器
本実施形態において、特定の構造コードで示されるゼオライト構造を有するゼオライトを「~型ゼオライト」とも表記する。例えば、CON構造(又はCON型)は構造コード「CON」として特定されるゼオライト構造を意味し、CON型ゼオライトは構造コード「CON」として特定されるゼオライト構造を有するゼオライトである。
【0018】
ゼオライトの細孔はT原子及びこれと結合した酸素原子(以下、「骨格酸素」ともいう。)からなる環状構造により形成される。ゼオライトの細孔径は、細孔を形成するT原子と結合した骨格酸素の数に基づいて細孔径の大きさが決まる。本実施形態においては、骨格酸素6個で囲まれた環を酸素6員環、骨格酸素8個で囲まれた環を酸素8員環、骨格酸素10個で囲まれた環を酸素10員環、骨格酸素12個で囲まれた環を酸素12員環、骨格酸素14個で囲まれた環を酸素14員環、骨格酸素18個で囲まれた環を酸素18員環等、骨格酸素n個で囲まれた環を「酸素n員環」又は単に「n員環」と呼び、また、酸素n員環により形成される細孔を「n員環細孔」と呼ぶ(nは3以上の整数)。n員環細孔における骨格酸素の数が多くなるほど、細孔径が大きくなる傾向がある。
【0019】
ゼオライトの細孔次元は、一般的に、一次元細孔(より詳しくは、トンネル型一次元細孔、又はケージ型一次元細孔)、二次元細孔、及び三次元細孔が知られている。本実施形態において、細孔次元はIZAで規定されているChannnel dimensionality(Sorption)により分類されたdimensionalと同様に分類すればよく、dimentinal 1が一次元細孔、dimentinal 2が二次元細孔及び、dimentinal 3が三次元細孔に相当する。細孔次元は、例えば、IZAのホームぺージ(https://asia.iza-structure.org/IZA-SC/search_cs.html)で確認することができる。具体的には、本実施形態における一次元細孔を有するゼオライトとは、一次元方向のみに細孔が形成されているゼオライトであり、当該細孔は他の細孔と交差した構造を有さないことを特徴とする。当該一次元細孔を有するゼオライトは、上記の細孔によって形成された細孔空間が直線状につながった構造を有することを特徴とする。このような種類のゼオライト構造としては、例えば、MOR構造、LTL構造、DON構造、CFI構造及びAFI構造の群から選ばれる1以上、等が挙げられる。二次元細孔とは、一次元細孔同士が、例えば横穴など、互いに異なる方向で連結した細孔構造を表し、細孔空間が平面状につながった構造を有することを特徴とする。二次元細孔を有するゼオライト構造としては、例えば、NES構造、MWW構造及びFER構造の群から選ばれる1以上、等が挙げられる。三次元細孔とは、二次元細孔がさらに別の穴(例えば、竪穴のように二次元細孔を形成する2つの細孔とは異なる方向にある細孔)でつながっている細孔構造を表し、細孔空間が上下左右前後の三次元につながった構造を有することを特徴とする。三次元細孔を有するゼオライト構造としては、FAU構造、*BEA構造、MFI構造、CON構造、MSE構造、IWR構造、BEC構造、BOG構造、BSV構造、DFO構造、EMT構造、IMF構造、IRR構造、ISV構造、ITG構造、ITT構造、IWS構造、JSR構造、JST構造、MEL構造、POS構造、SAO構造、SOV構造、UWY構造、*-ITN構造及び*SFV構造の群から選ばれる1以上、等が挙げられる。換言すると、一次元細孔を有するゼオライトは直線的な細孔を有するゼオライト、二次元細孔を有するゼオライトは平面的な細孔を有するゼオライト、及び、三次元細孔を有するゼオライトは立体的な細孔を有するゼオライト、である。
【0020】
なお、IZAにおける細孔次元の分類は6員環細孔超の細孔(Open Pore>6ring)を基準とするもの(Channel dimensionality(topological))もある。本実施形態における細孔次元は、topologicalによる当該細孔次元の分類とは相違していてもよい。
【0021】
三次元細孔を有するゼオライト(以下、「三次元細孔ゼオライト」ともいう。)としては、例えば、FAU型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、MSE型ゼオライト及びCON型ゼオライトの群から選ばれる1以上、等が挙げられる。本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトであることを特徴とする。即ち、本実施形態の炭化水素吸着剤におけるゼオライトは、10員環のみからなる三次元細孔ゼオライトや、12員環のみからなる三次元細孔ゼオライト等、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔又は18員環細孔のみからなる三次元細孔を有するゼオライトを含まない。例えば、FAU構造、*BEA構造、又はEMT構造等は、3つの12員環(12-12-12員環)からなる三次元細孔を有するゼオライト構造であり、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトのゼオライト構造とは異なる。一方、例えば、1つの12員環と2つの10員環(12-10-10員環)からなる三次元細孔を有するゼオライト構造(CON構造)、1つの12員環と2つの10員環(12-10-10員環)で形成される三次元細孔を有するゼオライト構造(IWR構造)等が、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトのゼオライト構造に該当する。このように、本実施形態の炭化水素吸着剤におけるゼオライトは、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる、員環数の異なる2以上の細孔を有する三次元細孔ゼオライトである。このようなゼオライトとしては、特に限定するものではないが、例えば、MSE型ゼオライト、CON型ゼオライト、IWR型ゼオライト、*SFV型ゼオライト、BOG型ゼオライト、IRR型ゼオライト、ITG型ゼオライト、ITT型ゼオライト、POS型ゼオライト、UWY型ゼオライト及び*-ITN型ゼオライトの群から選ばれる1以上、等を挙げることができ、MSE型ゼオライト及びCON型ゼオライトの少なくともいずれかであることが好ましい。別の実施形態において、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、MSE構造、CON構造、IWR構造、*SFV構造、BOG構造、IRR構造、ITG構造、ITT構造、POS構造、UWY構造及び*-ITN構造の群から選ばれる1以上のゼオライト構造を含むゼオライトであればよく、これらのゼオライト構造と他のゼオライト構造を含むゼオライト、いわゆる連晶体、であってもよい。連晶体として、例えば、一次元細孔及び二次元細孔の少なくともいずれかを有するゼオライト構造と、三次元細孔を有するゼオライト構造と、が積層した構造を有するゼオライト、が挙げられる。このような複雑な形状の細孔を有することで、水と炭化水素が異なる拡散パスで移動可能になり、小さい分子の水のみが狭い拡散パスからも脱離可能となり、炭化水素と水との競争吸着が炭化水素に有利になる結果、さらに炭化水素の脱離開始温度が高くなるものと考えられる。
【0022】
なお、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、炭化水素吸着性能に優れる点で、10員環細孔、12員環細孔、及び14員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトであることが好ましく、10員環細孔と12員環細孔とからなる三次元細孔を有するゼオライトであることがより好ましい。
【0023】
本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトの一例として、MSE型ゼオライト及びCON型ゼオライトの少なくともいずれかが挙げられる。MES型ゼオライト及びCON型ゼオライトは、それぞれ、12員環細孔及び10員環細孔からなる三次元細孔を有するゼオライト構造を有するゼオライトである。
【0024】
本実施形態の炭化水素吸着剤は、金属を含んでいてもよい(当該金属について、以下、「目的金属」とも記載する)。目的金属はT原子以外として含まれる金属であり、目的金属としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属の群から選ばれる1以上が挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくともいずれか、更にはアルカリ金属が好ましい。これらについては、単独で含有していてもよいし、複数を含有していてもよい。
【0025】
なお、目的金属とは、金属元素のことを指し、その元素状態については特に限定するものではなく、イオン及び酸化物の少なくともいずれかが例示できるが、目的金属は少なくともイオンとして含まれることが好ましい。また、イオン交換可能な状態の目的金属は、少なくともイオンの状態となっていると考えられる。
【0026】
前記のアルカリ金属としては、特に限定するものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、炭化水素の脱離開始温度の高い点で、ルビジウム及びセシウムの少なくともいずれかが好ましく、セシウムがより好ましい。当該アルカリ金属は2以上が共存した状態であってもよい。
【0027】
前記のアルカリ土類金属としては、特に限定するものではないが、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムの群から選ばれる1以上が挙げられ、炭化水素の脱離開始温度の高い点で、マグネシウム及びカルシウムの少なくともいずれかが好ましい。当該アルカリ土類金属は2以上が共存した状態であってもよい。
【0028】
前記の遷移金属としては、特に限定するものではないが、例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、銀及び亜鉛の群から選ばれる1以上、好ましくは鉄及び銅の少なくともいずれか、より好ましくは銅が挙げられる。当該遷移金属は2以上が共存した状態であってもよい。
【0029】
目的金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属の少なくとも2以上が共存した状態であってもよい。
【0030】
本実施形態の炭化水素吸着剤における目的金属の含有量としては、特に限定するものではないが、炭化水素の脱離開始温度の高い点で、本実施形態の炭化水素吸着剤を100質量%とした場合における目的金属の質量割合が1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上又は10質量%以上であり、また、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下又は15質量%以下であることが例示できる。なお、本実施形態の炭化水素吸着剤が後述の結合剤等を含有する場合、本実施形態の炭化水素吸着剤を100質量%とした場合における目的金属の質量割合は、60質量%以下又は50質量%以下であってもよい。
【0031】
なお、本実施形態の炭化水素吸着剤における目的金属の含有量については、炭化水素の脱離開始温度の高い点で、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトのAl量を基準として、目的金属[mol]/Al[mol]の比率が0.01以上10以下であることが好ましく、目的金属[mol]/Al[mol]の比率が0.02以上8以下であることがより好ましく、目的金属[mol]/Al[mol]の比率が0.05以上5以下であることがより好ましい。
【0032】
ゼオライトに含有される金属は、後述する水熱合成時(結晶化工程後)に得られるゼオライトそのものに含有されているもの、前記のゼオライトに追加で金属を担持処理したゼオライトに含有されているもの、又は一旦水素イオンやアンモニウムイオンにイオン交換したうえで金属を担持処理したゼオライトに含有されているもの等を挙げることができる。本実施形態の目的金属の状態は、特に限定するものではないが、イオン交換可能な状態の金属であることが好ましく、即ち、目的金属がイオン交換可能な状態の金属イオンであることが好ましい。イオン交換可能な状態の金属イオンは、例えば、T原子であるアルミニウムアニオン(AlO4
-)等のアニオンのカウンターカチオンとして存在していることが挙げられる。
【0033】
本実施形態において、イオン交換可能な状態とは、目的金属の少なくとも一部が別の金属にイオン交換し得る状態を意味する。このような状態は本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれた目的金属の少なくとも一部が別の金属でイオン交換されること、により確認することができる。金属イオンであって、イオン交換可能な状態ではないものとして、例えば、閉細孔の内部等のイオン交換サイトに存在する金属イオンであって、実質的にイオン交換できない状態の金属イオン、等が挙げられる。
【0034】
イオン交換可能な状態の目的金属の量は、以下の式から求められる値であり、炭化水素吸着剤に含まれた目的金属とは異なる金属(以下、「交換金属」ともいう。)で炭化水素吸着剤をイオン交換処理し、イオン交換前後の、炭化水素吸着剤の目的金属の含有量の差から定量できる。
【0035】
当該定量は、ICP等の分析機器を用いて行うことができる。
【0036】
【0037】
上述のイオン交換処理の方法は、交換金属を使用した一般的なイオン交換法であればよく、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれる目的金属を、イオン交換し得る金属(例えば、目的金属がCsである場合はNa、等)で交換すること、が挙げられる。イオン交換処理の条件として、室温下(20~35℃)、本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトのT原子であるアルミニウムアニオン(AlO4
-)等のアニオンの量に対して過剰量(例えば、5~10倍当量)の交換金属を流通させること、が挙げられる。交換金属の流通は、該交換金属を含む水溶液であることが好ましい。交換時間は1分以上1日以下であることが好ましい。
【0038】
本実施形態の炭化水素吸着剤に含有される目的金属全体のうち、それとは交換金属でイオン交換可能な目的金属の割合については、炭化水素の脱離開始温度の高い点で、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上95モル%以下であることがより好ましい。
【0039】
目的金属を含有する本実施形態の炭化水素吸着剤は、炭化水素の脱離開始温度が高い点で、目的金属についてのMAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-130ppm以下に位置することが好ましく、-150ppm以下に位置することがより好ましい。また、該メインピークは、-250ppm以上、又は-200ppm以上に位置することが例示できる。MAS NMRスペクトルにおけるメインピークとは、検出されたピークのうち、最も高い強度を示すピークを意味する。また、ピークの位置とは、各ピークにおけるピークトップの化学シフト位置[ppm]を意味する。
【0040】
該メインピークが-130ppm以下に位置することで、目的金属とゼオライトとの相互作用が小さく、目的金属が炭化水素と強く作用するため、炭化水素の脱離開始温度が高くなる傾向があると考えられる。また、本実施形態における10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトにおいては、複雑な形状の細孔に吸着した炭化水素を目的金属の作用によって保持することで、特に炭化水素の脱離開始温度が高くなる傾向があると考えられる。 例えば、目的金属としてセシウムを含有する場合、133Cs MAS NMRスペクトルにおけるメインピークが-130ppm以下に位置することが好ましく、-150ppm以下に位置することがより好ましい。また、-250ppm以上、又は-200ppm以上に位置することが例示できる。133Cs MAS NMRスペクトルは、以下の条件で測定することができる。
・前処理及び測定試料のサンプリング:
測定試料は、加熱脱水することで前処理とした後、窒素グローブボックス中でサンプリングすることで得られる。加熱脱水は、真空下、0.25℃/minで400℃まで昇温後、5h保持し、室温まで冷却して行う。
・測定装置
装置名 :Varian NMR System 400(Varian社製)
プローブ:4mmφ固体プローブ
解析ソフトウェア(NMR測定): VnmrJ version4.2
・NMR測定条件
共鳴周波数:52.4MHz (133Cs)
パルス幅:3.8μs(π/2)
回転周波数:15kHz
繰り返し時間:2s
取り込み時間:10ms
積算回数:2048回
観測中心:-150ppm
観測範囲:120kHz
基準(0ppm):1.0M CsCl水溶液
・フーリエ変換条件
ポイント数:4096points
ウィンドウ関数:指数関数(LB:25kHz) また、目的金属を含有する本実施形態の炭化水素吸着剤は、炭化水素の脱離開始温度が高い点で、目的金属についてのMAS NMRスペクトルにおける波形分離後の最も高磁場側に位置する(すなわち、最も小さい化学シフトを有する)ピークが、-171ppm以下に位置することが好ましい。また、該ピークが-300ppm以上、又は-250ppm以上に位置することが例示できる。例えば、目的金属としてセシウムを含有する場合、133Cs MAS NMRスペクトルにおける波形分離後の最も高磁場側に位置するピークが、-171ppm以下に位置することが好ましい。また、該ピークが-300ppm以上、又は-250ppm以上に位置することが例示できる。133Cs MAS NMRスペクトルは、以下の条件で波形分離することができる。
・波形分離条件
波形分離ソフト:GRAMS/AI version8.0(Thermo Fisher Scientific社製)
分離方法:ガウス関数でフィッティング
本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3比」ともいう。)が、2以上200以下、更には2以上100以下であることがあげられ、また、炭化水素の脱離開始温度の高い点で、5以上100以下、5以上75以下、5以上50以下、5以上25以下であることが特に好ましい。また、SiO2/Al2O3比は5以上、10以上又は15以上であり、なおかつ、65以下、55以下又は30以下であることが挙げられる。
【0041】
本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、炭化水素の脱離開始温度が高い点で、BET比表面積が200m2/g以上800m2/g以下であることが好ましく、300m2/g以上700m2/g以下であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれるゼオライトは、例えば、結晶粒子径が0.01μm以上又は0.1μm以上であり、また、50μm以下又は20μm以下であることが挙げられる。
【0043】
また、本実施形態の炭化水素吸着剤は、上記のゼオライト、及び目的金属以外に、さらに結合剤などのその他の成分を含んでいてもよく、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、カオリン、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロェン及びセピオライトの群から選ばれる1以上を挙げることができる。
【0044】
本実施形態の炭化水素吸着剤の脱離開始温度は、以下に示す方法で測定することができる。
【0045】
<測定試料>
形状 :凝集径20~30メッシュ、不定形成形体の炭化水素吸着剤
製法 :加圧成形及び粉砕
<前処理>
雰囲気:窒素流通雰囲気
温度 :500℃
時間 :1時間
<炭化水素の吸着及び脱離条件>
測定試料を常圧固定床流通式反応管充填し、以下の条件で炭化水素含有ガスを流通する。
【0046】
炭化水素含有ガス :トルエン 3000体積ppmC(メタン換算濃度)
水 3体積%
窒素 残部
ガス流量 :200mL/分
測定温度 :50~600℃
昇温速度 :10℃/分
<脱離開始温度の測定>
常圧固定床流通式反応管の入口側の炭化水素含有ガスの炭化水素濃度(メタン換算濃度;以下、「入口濃度」ともいう。)、及び、常圧固定床流通式反応管の出口側の炭化水素含有ガスの炭化水素濃度(メタン換算濃度;以下、「出口濃度」ともいう。)を、水素イオン化検出器(FID)を使用して測定する。
【0047】
入口濃度の積分値をもって炭化水素吸着剤を通過した炭化水素量とし、当該炭化水素量から、出口濃度(メタン換算濃度)の積分値を差し引いた値を求め、測定試料における炭化水素吸着量を炭化水素吸着剤の質量当たりの炭化水素脱離量(μmolC/g)とする。測定温度の上昇に伴い、最も早く炭化水素脱離量が0μmolC/gとなった温度を脱離開始温度とする。
【0048】
次に、本実施形態の炭化水素吸着剤の製造方法について説明する。
【0049】
本実施形態の炭化水素吸着剤については、上記の10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトのみからなるか、又は当該ゼオライトと上記のその他の成分を混合することによって製造することができる。
【0050】
本実施形態の炭化水素吸着剤に含まれる10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2種以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトは、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、及び、水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を水熱処理し、結晶化物を得る結晶化工程、を含む製造方法、によって製造することができる。当該製造方法は、結晶化工程の後に、金属を含有させる金属含有工程を含んでいてもよい。
【0051】
前記のシリカ源は、シリカ及びその前駆体の少なくともいずれかであり、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート及びアルミノシリケートゲルの群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0052】
前記のアルミナ源は、アルミナ及びその前駆体の少なくともいずれかであり、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル及び金属アルミニウムの群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0053】
前記のアルカリ源としては、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの水酸化物、ハロゲン化物及び炭酸塩などの各種の塩の群から選ばれる1以上が挙げられる。
【0054】
前記の原料組成物は必要に応じて構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)を含んでいてもよい。構造指向剤としては、例えば、N,N,N-トリメチル-(+)-シス-ミルタニルアンモニウム、ヘキサメトニウム、1,1-ジアルキル-4-アルキルシクロヘキシルピペラジン-1-イウム、1,1-ジアルキル-4-シクロヘキシルピペラジン-1-イウム、1,1’-((3as,6as)-オクタヒドロペンタレン-2,5-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)、1,1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)、1,1’-(ペンタン-1,5-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)、3-ヒドロキシ-1-(4-(1-メチルピペリジン-1-イウム-1-イル)ブチル)キヌキクジン-1-イウム、3-ヒドロキシ-1-(5-(1-メチルピペリジン-1-イウム-1-イル)ペンチル)キヌキクジン-1-イウム、N,N,N,N-テトラエチルビシクロ[2.2.2]-オクト-7-エン-ジピロリジニウム、N,N-ジメチル-N’-シクロヘキシルピペラジニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、1,6-ビス(N-シクロヘキシルピロリジニウム)ヘキサンジカチオン、1,4-ビス(N-シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオン、1,4-ビス(N-シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオン、1,4-ビス(N-シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオン、1,5-ビス(N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオン、N,N,N-トリメチルトリシクロ[5.2.1.0]-デカンアンモニウム、(6R,10S)-6,10-ジメチル-5-アゾニアスピロ[4.5]デカンカチオンの群から選ばれる1以上が挙げられる。SDAはしばしばカチオンであるためフルオライド、クロリド、ブロミド、ヨージド、ヒドロキシドの群から選ばれる1以上のアニオンと対を形成した塩として原料組成物に含まれていればよい(以下、SDAの塩を「SDAX」ともいう)。
【0055】
好ましくは、原料組成物は以下のモル組成を有する。以下の組成において、SDAXはSDAの塩、Xはフッ素以外のアニオンである。
【0056】
SiO2/Al2O3比 =2以上500以下
SDAX/SiO2比 =0.00以上0.80以下
Na/SiO2比 =0.00以上0.80以下
K/SiO2比 =0.00以上0.80以下
X/SiO2比 =0.00以上2.0以下
HF/SiO2比 =0.00以上1.0以下
H2O/SiO2比 =2以上100以下
上記の条件を、当業者常識の範囲で、種々調整することによって、目的とする10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトを作り分けることができる。より具体的な例については、特に限定するものではないが、以下、その一例を示す。
【0057】
例えば、MSE型ゼオライトの製造方法としては、以下のモル組成を有する原料組成物を結晶化することが挙げられる。なお、以下の組成におけるSDAはジメチルジプロピルアンモニウムカチオン、1,1-ジアルキル-4-アルキルシクロヘキシルピペラジン-1-イウムカチオン、1,1-ジアルキル-4-シクロヘキシルピペラジン-1-イウムカチオン、1,1’-((3as,6as)-オクタヒドロペンタレン-2,5-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)カチオン、1,1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)カチオン、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)カチオン、1,1’ -(ペンタン-1,5-ジイル)ビス(1-メチルピペリジン-1-イウム)カチオン、3-ヒドロキシ-1-(4-(1-メチルピペリジン-1-イウム-1-イル)ブチル)キヌキクジン-1-イウムカチオン、3-ヒドロキシ-1-(5-(1-メチルピペリジン-1-イウム-1-イル)ペンチル)キヌキクジン-1-イウムカチオン、N,N,N,N-テトラエチルビシクロ[2.2.2]-オクト-7-エン-ジピロリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-N’-シクロヘキシルピペラジニウムカチオン、及びテトラエチルアンモニウムカチオンの群から選ばれる1以上であり、ジメチルジプロピルアンモニウムカチオン(以下、「Me2Pr2N+」ともいう。)であることが好ましい。
【0058】
SiO2/Al2O3比 =2以上、15以上又は20以上、かつ、
500以下、100以下、又は50以下
SDA/SiO2比 =0.00以上、0.05以上又は0.10以上、かつ、
0.40以下、0.30以下又は0.20以下
Na/SiO2比 =0.00以上又は0.10以上、かつ、
0.80以下、0.40以下、又は0.20以下
K/SiO2比 =0.00以上又は0.10以上、かつ、
0.80以下、0.40以下、又は0.20以下
H2O/SiO2比 =2以上又は3以上、かつ、
100以下、50以下又は15以下
例えば、CON型ゼオライトの製造方法としては、以下のモル組成を有する原料組成物を結晶化することが挙げられる。なお、以下の組成におけるSDAXはトリメチル-(-)-シスミルタニルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMMAOH」ともいう。)、トリメチル-(-)-シスミルタニルアンモニウムヨージド及びトリメチル-(-)-シスミルタニルアンモニウムヒドロキシドブロミドの群から選ばれる1以上であり、TMMAOHであることが好ましい。
【0059】
SiO2/Al2O3比 =2以上、15以上又は20以上、かつ、
500以下、100以下、又は60以下
SDAX/SiO2比 =0.00以上、0.05以上又は0.10以上、かつ、
1.00以下、0.80以下又は0.60以下
HF/SiO2比 =0.00以上又は0.10以上、かつ、
1.0以下又は0.6以下
H2O/SiO2比 =2以上又は3以上、かつ、
100以下、50以下又は15以下
なお、原料組成物は種晶を含んでいてもよく、当該種晶は酸素8員環以上の環構造を有するゼオライトであることが好ましい。原料組成物に対する種晶の含有量(以下、「種晶含有量」ともいう。)は、原料組成物(種晶を除いた原料組成物)に含まれるケイ素(Si)をSiO2として換算した質量に対する、種晶に含まれるケイ素をSiO2として換算した質量の割合として、0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
結晶化工程では、例えば、水熱処理により原料組成物を結晶化することができる。水熱処理の条件として、特に限定するものではないが、例えば、以下の条件を挙げることができる。
【0061】
結晶化温度 : 120℃以上200℃以下
結晶化時間 : 1時間~20日
結晶化圧力 : 自生圧
以上の結晶化工程によって、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトが得られる。当該結晶化工程後、得られたゼオライトは、任意の方法で回収、洗浄、乾燥、及び焼成の各工程に供してもよく、更には、脱アルミニウム処理してSiO2/Al2O3比を任意の値としてもよい。
【0062】
炭化水素の脱離開始温度を高められる点で、結晶化工程後、焼成工程に供することが好ましい。
【0063】
焼成工程は10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライト中のSDAを除去する工程である。焼成条件は任意であるが、焼成条件として、酸化雰囲気中、焼成温度400℃以上800℃以下、焼成時間0.5時間以上12時間以下を挙げることができる。
【0064】
前記の金属含有工程では、前記の金属と10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトとを接触させる工程を表し、該ゼオライトに金属を含有させることを目的とする。本実施形態では、金属含有工程により、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライト骨格におけるイオン交換サイトに含まれる金属の少なくとも一部がイオン交換可能な状態となり、炭化水素の脱離開始温度を高められると考えられる。
【0065】
含有させる金属は、上記の通りである。
【0066】
含有させる金属源は特に限定するものではないが、例えば、本実施形態の10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2種以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトにナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上を含有させる場合、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上を含有する化合物を用いることが好ましく、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上を含有する無機酸塩、更にはナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる1以上を含有する硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、水酸化物及び塩化物の群から選ばれる1以上を用いることがより好ましい。
【0067】
金属含有工程は、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライトのイオン交換サイトに金属が含有される方法であればよい。具体的な方法として、イオン交換法、蒸発乾固法及び含浸担持法の群から選ばれる1以上を挙げることができ、含浸担持法、更には金属化合物を含む水溶液と前記のゼオライトとを混合する方法であることが好ましい。これにより、イオン交換サイトに金属が担持される。
【0068】
なお、金属含有工程では、10員環細孔、12員環細孔、14員環細孔、及び18員環細孔の群より選ばれる2以上の細孔からなる三次元細孔を有するゼオライト骨格におけるイオン交換サイト(金属配位サイト)の一部について金属が配位しない状態を意図的に生じさせるように金属を含有させること、即ち炭化水素吸着剤に含まれる金属の少なくとも一部をイオン交換可能な状態とすることが好ましい。その方法としては、特に限定するものではないが、ゼオライトを固定床とし、金属の溶液を固定床に流通させることによって金属を担持する方法を例示することができる。
【0069】
なお、本実施形態の製造方法については、金属含有工程の後、洗浄工程、乾燥工程、及び活性化工程のいずれか1以上の工程を含んでいてもよい。
【0070】
金属含有工程後の洗浄工程は、不純物等を除去することを目的とし、任意の洗浄方法を用いることができる。例えば、金属を担持処理後のゼオライトを十分量の純水で洗浄することが挙げられる。
【0071】
金属含有工程後の乾燥工程は、ゼオライトの表面や細孔等に残存した水分を除去することを目的とし、大気中で、100℃以上200℃以下、好ましくは110℃以上190℃以下で処理することが例示できる。
【0072】
活性化工程は、ゼオライトから有機物を除去することを目的とし、大気中、200℃を超え、600℃以下で処理することが例示でき、大気中、300℃を超え、600℃以下で処理することが好ましい。
【0073】
本実施形態の炭化水素吸着剤は用途に応じた任意の形状で使用することができ、特に限定するものではないが、例えば、粉末、成形体、又は吸着部材等の形状で使用することができる。具体的な成形体の形状として、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、多面体状、不定形状及び花弁状の群から選ばれる1以上を挙げることができる。
【0074】
本実施形態の炭化水素吸着剤を成形体とする場合、前記のゼオライトからなる炭化水素吸着剤を成型加工することもできるが、操作性や耐久性に優れる点で、前記のゼオライトに更に添加剤を含んだ炭化水素吸着剤を成型加工することが好ましい。成形方法は、例えば、転動造粒成形、プレス成形、押し出し成形、射出成形、鋳込み成形及びシート成形の群から選ばれる1以上を挙げることができる。
【0075】
本実施形態の炭化水素吸着剤を吸着部材として使用する場合、当該吸着部材については、上記の炭化水素吸着剤を、必要に応じて結合剤などの添加剤と共に、水やアルコール等の溶媒に混合してスラリーを製造し、当該スラリーを基材にコーティングすることによって製造することができる。
【0076】
本実施形態の炭化水素吸着剤は、炭化水素の吸着方法で使用することができる。
【0077】
本実施形態の炭化水素吸着剤は、炭化水素含有流体と本実施形態の炭化水素吸着剤とを接触させる工程を有する方法により、炭化水素を吸着することができる。
【0078】
炭化水素含有流体としては、例えば、炭化水素含有ガス及び炭化水素含有液体の少なくともいずれかを挙げることができる。
【0079】
炭化水素含有ガスは、少なくとも1種の炭化水素を含むガスであり、2種以上の炭化水素を含むガスであることが好ましい。該炭化水素含有ガスに含まれる炭化水素はパラフィン、オレフィン及び芳香族炭化水素の群の少なくともいずれかが挙げられる。該炭化水素の炭素数は1以上であればよく、1以上15以下であることが好ましい。好ましくは、炭化水素含有ガスに含まれる炭化水素は、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、ブタン、炭素数5以上の直鎖状パラフィン、炭素数5以上の直鎖状オレフィン、ベンゼン、トルエン及びキシレンの群の少なくとも1種又は2種以上であり、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、ブタン、ベンゼン、トルエン及びキシレンの群の少なくとも1種又は2種以上であることがより好ましく、メタン、エタン、エチレン及びプロピレンの群の少なくとも1種と、ベンゼン、トルエン及びキシレンの群の少なくとも1種とであることがより好ましい。炭化水素含有ガスは一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素、窒素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び水の群の少なくとも1種を含んでいてもよい。具体的な炭化水素含有ガスとして、内燃機関の排ガス等の燃焼ガスを挙げることができる。
【0080】
炭化水素の吸着方法における炭化水素含有ガスは、メタ-キシレン、オルト-キシレン及び分岐状のパラフィンの群から選ばれる1以上の炭化水素を含んでいることが好ましい。
【0081】
好ましくは、当該工程における接触温度は室温~200℃である。
【0082】
本実施形態の炭化水素吸着剤は、本実施形態とは異なる炭化水素吸着剤に比べて、炭化水素の脱離開始温度が高いという効果を奏する。なお、炭化水素の脱離開始温度については、SAR比率との相関性があることが一般的に知られているが、本実施形態の炭化水素吸着剤については、SARが同じ条件で、従来にない高い炭化水素脱離開始温度を示す。
即ち、本実施形態の炭化水素吸着剤は高SARの条件で高い炭化水素脱離開始温度を示すという効果を奏する。なお、SARが高いほどゼオライトの疎水性が高くなるため、耐久性が向上する点で、炭化水素吸着剤としてはSARが高いほど好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例において本開示の炭化水素吸着剤をさらに詳細に説明する。しかし、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:UltimaIV Protectus、リガク社製)を使用し、試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
【0085】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 40°/分
測定範囲 : 2θ=3°から43°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
得られたXRDパターンと参照パターンとを比較し、試料の結晶構造を同定した。
【0086】
(組成分析)
フッ酸と硝酸の混合水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:OPTIMA5300DV、PerkinElmer社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定した。得られたSi、Al及びアルカリ金属(Cs及びNa等)の測定値から、試料のSiO2/Al2O3モル比、及びアルカリ金属の質量%を求めた。
【0087】
(MAS NMRスペクトルの測定)
目的金属としてセシウムを含有する炭化水素吸着剤を加熱脱水して前処理とした後、窒素グローブボックス中でサンプリングして測定試料とした。加熱脱水は、真空下、0.25℃/minで400℃ まで昇温後、5hr保持し、室温まで冷却して行った。得られた測定試料について、
133Cs MAS NMRスペクトルを以下の条件で測定した。測定されたピークのうち、最も高い強度を示すピークをメインピークとした。さらに、測定されたピークについて波形分離を行った。実施例1及び比較例3の
133Cs MAS NMRスペクトル測定結果と波形分離結果を、それぞれ
図1及び
図2に示す。
図1において、実線が生データを、破線がフィッティング曲線を、点線、一点鎖線、二点鎖線、及び長破線が波形分離後の分離ピークを表す。
図4においては、実線が生データを、破線がフィッティング曲線を、点線及び一点鎖線が波形分離後の分離ピークを表す。<条件>
装置名 :Varian NMR System 400(Varian社製)
プローブ:4mmφ固体プローブ
解析ソフトウェア(NMR測定): VnmrJ version4.2
・NMR測定条件
共鳴周波数:52.4MHz (133Cs)
パルス幅:3.8μs(π/2)
回転周波数:15kHz
繰り返し時間:2s
取り込み時間:10ms
積算回数:2048回
観測中心:-150ppm
観測範囲:120kHz
基準(0ppm):1.0M CsCl水溶液
・フーリエ変換条件
ポイント数:4096points
ウィンドウ関数:指数関数(LB:25kHz)
・波形分離条件
波形分離ソフト:GRAMS/AI version8.0(Thermo Fisher Scientific社製)
分離方法:ガウス関数でフィッティング
実施例1、比較例1及び比較例2は、スピニングサイドバンド(以下、「SSB」ともいう。)を1つの波形、メインピークを4つの波形でフィッティングした。実施例2及び比較例5は、SSBを1つの波形、メインピークを3つの波形でフィッティングした。比較例3はメインピークを2つの波形でフィッティングした。
【0088】
(炭化水素吸着剤測定試料の作製及び前処理)
後述する実施例及び比較例等で得られた炭化水素吸着剤の炭化水素の脱離開始温度を測定した。得られた炭化水素吸着剤を、各々加圧成形及び粉砕し、凝集径20~30メッシュの不定形の成形体とし、得られた成形体をそれぞれ測定試料とした。各測定試料0.1gをそれぞれ常圧固定床流通式反応管に充填し、窒素流通下、500℃で1時間処理した後、50℃まで降温することで前処理とした。
【0089】
(炭化水素吸着剤の炭化水素吸着)
上記の前処理を施した各炭化水素吸着剤に炭化水素含有ガスを流通させ、50℃から200℃の間で吸着した炭化水素を測定し炭化水素の吸着量とした。炭化水素含有ガスの組成及び測定条件を以下に示す。
【0090】
炭化水素含有ガス :トルエン 3000体積ppmC(メタン換算濃度)
水 3体積%
窒素 残部
ガス流量 :200mL/分
測定温度 :50~600℃
昇温速度 :10℃/分
(炭化水素吸着剤の炭化水素の脱離開始温度の測定)
水素イオン化検出器(FID)を使用し、炭化水素吸着剤を通過した後のガス中の炭化水素を連続的に定量分析した。常圧固定床流通式反応管の入口側の炭化水素含有ガスの炭化水素濃度(メタン換算濃度;以下、「入口濃度」とする。)と、常圧固定床流通式反応管の出口側の炭化水素含有ガスの炭化水素濃度(メタン換算濃度;以下、「出口濃度」とする。)を測定した。
【0091】
入口濃度の積分値をもって炭化水素吸着剤を通過した炭化水素量とし、当該炭化水素量から、出口濃度(メタン換算濃度)の積分値を差し引いた値を求め、各吸着材における炭化水素吸着量を炭化水素吸着剤の重量当たりの炭化水素脱離量(μmolC/g)として求めた。そして、測定試料の温度の上昇に伴い、最も早く炭化水素脱離量が0μmolC/gとなった温度を脱離開始温度とした。
【0092】
実施例1 (12員環細孔及び10員環細孔からなる三次元細孔を有する、MSE型ゼオライトの合成)
Nipsil LP(東ソー・シリカ社製)、Y型ゼオライト(製品名:HSZ-350HUA、東ソー社製)、ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2:28.9wt%、Na2O:9.3wt%)、Me2Pr2NOH、KOH及びH2Oを混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0093】
SiO2/Al2O3/Me2Pr2NOH/NaOH/KOH/H2O=1/0.0278/0.17/0.15/0.15/5.0(モル比)
SiO2/Al2O3モル比 =36
Me2Pr2N+/SiO2モル比 =0.17
Na/SiO2モル比 =0.15
K/SiO2モル比 =0.15
H2O/SiO2モル比 =5.0
原料組成物のSiO2に対し5質量%の種晶を加えた。得られた原料組成物をオートクレーブに充填し、160℃、自生圧下、3日間、回転条件で結晶化した。結晶化後、大気中550℃で焼成した。次に10%塩化アンモニウム水溶液を用いた80℃、20時間の処理を3回繰り返し、大気中110℃で一晩乾燥した。これにより、SiO2/Al2O3が18であり、カチオンタイプがNH4型であるMSE型ゼオライトを得た。
【0094】
(Csの担持)
塩化セシウム(富士フィルム和光純薬製(特級))を用い、2質量%の塩化セシウム水溶液を調製した。塩化セシウム水溶液は、上記で得られたゼオライトのAl量(モル)に対し、2等量のCs量(モル)となる液量を用いた。担持は、MSEゼオライトを水と混合後、ろ過して得られたケーク上のゼオライトのゼオライトに対して行った。すなわち、該ケークに対し、上記の塩化セシウム水溶液を流し込んだ。次いで、前記のMSE型ゼオライトの10倍容量の60°の水を流し込んで洗浄した。洗浄後、110℃、大気中で乾燥することでCsの担持を行い、Cs含有量が15.8質量%である本実施例の炭化水素吸着剤を得た。
【0095】
実施例2 (12員環及び10員環からなる三次元細孔を有する、CON型ゼオライトの合成)
15.9%トリメチル-cis-ミルタニルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMMAOH)、アルミニウムイソプロポキシド(キシダ化学)、テトラエトキシシラン(TEOS、キシダ化学)を混合し、90℃で20時間加熱して水を蒸発させた。なお、TMAAOHは(-)-cis-ミルタニルアミン(Aldrich)をヨードメタン(キシダ化学)でメチル化後、イオン交換樹脂SA10AOH(三菱化学)でイオン交換して得た。得られた固体を乳鉢で粉砕後、48%フッ化水素酸(弘田化学工業)、種晶として5質量%のCIT-1を加えて混合し、原料組成物を得た。得られた原料組成物のモル組成を示す。
【0096】
SiO2/Al2O3/TMMAOH/HF/H2O=1/0.02/0.5/0.5/5.0(モル比)
SiO2/Al2O3比 = 50.0
TMMAOH/SiO2比 = 0.5
HF/SiO2比 = 0.5
H2O/SiO2比 = 5.0
得られた組成物をテフロン(登録商標)内筒付きオートクレーブに密閉し、当該オートクレーブを静置下で、170℃、自生圧下で7日間加熱して生成物を得た。生成物は濾過、洗浄し、大気中110℃で一晩乾燥させた。その後窒素下で450℃、1時間、続けて空気下で600℃、2時間加熱することで骨格中に取り込まれた有機物を除去した。これにより、SiO2/Al2O3が53であり、カチオンタイプがH型であるCON型ゼオライトを得た。得られたCON型ゼオライトを使用したこと以外は実施例1と同様な方法でCs含有量が4.6質量%である本実施例の炭化水素吸着剤を得た。
【0097】
比較例1
(*BEA型ゼオライトの合成)
35重量%TEAOH水溶液、48重量%水酸化カリウム水溶液、純水及び非晶質アルミノシリケート(SiO2/Al2O3=18.2)を混合した後、そこに種晶としてゼオライトβ(製品名:HSZ930NHA、東ソー社製)1.5質量%を添加し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0098】
SiO2/Al2O3比 =18.2
TEAOH/SiO2比 =0.12
K/SiO2比 =0.12
H2O/SiO2比 =12.0
種晶 =1.5質量%
原料組成物を密閉容器内に充填し、当該容器を55rpmで回転しながら150℃で48時間、原料組成物を反応させて結晶化物を得た。得られた結晶化物を固液分離し、純水で洗浄した後、大気中、110℃で乾燥して回収した。得られた結晶化物を、大気中、600℃、2時間で焼成及び20%塩化アンモニウム水溶液での処理の後、大気中110℃で一晩乾燥した。これにより、SiO2/Al2O3が18であり、カチオンタイプがNH4型である12員環細孔のみの三次元細孔構造を有するBEA型ゼオライト(ゼオライトβ)を得た。
【0099】
MSE型ゼオライトの代わりに、上記で得られた*BEA型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で本比較例の炭化水素吸着剤を得た。
【0100】
比較例2 (YFI型ゼオライトの合成)
コロイダルシリカAS-40(GRACE製)、ゼオライトY(製品名:HSZ-350HUA、東ソー社製)、Me2Pr2NOH、NaOH、KOH及びH2Oを混合し、以下のモル組成を有する原料組成物を得た。
【0101】
SiO2:0.025 Al2O3:0.17 Me2Pr2NOH:0.15 NaOH:0.17 KOH:7 H2O
SiO2/Al2O3比 =40
Me2Pr2NOH/SiO2比 =0.17
Na+K/SiO2比 =0.32
H2O/SiO2比 =7.0
得られた原料組成物をオートクレーブに充填し、160℃、6日間静置下で結晶化した。結晶化後、大気中550℃で焼成及び20%塩化アンモニウム水溶液で処理し、大気中110℃で一晩乾燥した。これにより、SiO2/Al2O3が18であり、カチオンタイプがNH4型である12員環細孔のみの三次元細孔構造を有するYFI型ゼオライトを得た。
【0102】
MSEゼオライトの代わりに、上記で得られたYFI型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で本比較例の炭化水素吸着剤を得た。
【0103】
比較例3
MSE型ゼオライトの代わりに、一次元細孔構造を有するMOR型ゼオライト(製品名:HSZ-640HOA、東ソー社製、SiO2/Al2O3=19)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で本比較例の炭化水素吸着剤を得た。
【0104】
比較例4
MSEゼオライトの代わりに、MFI型ゼオライト(製品名:HSZ-870NHA、東ソー社製;SiO2/Al2O3=70)を570℃2h空気雰囲気下で焼成して、カチオンタイプをH型とした10員環細孔のみの三次元細孔構造を有するMFI型ゼオライトを用いた以外は、実施例1と同様な方法で本比較例の炭化水素吸着剤を得た。
【0105】
比較例5
MSE型ゼオライトの代わりに、MFI型ゼオライト(製品名:HSZ-850NHA、東ソー社製;SiO2/Al2O3=51)を570℃2h空気雰囲気下で焼成してカチオンタイプをH型とした10員環細孔のみの三次元細孔構造を有するMFI型ゼオライトを用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で本比較例の炭化水素吸着剤を得た。
【0106】
比較例6
MSE型ゼオライトの代わりに、10員環細孔のみの三次元細孔構造を有するMFI型ゼオライト(製品名:HSZ-840NHA、東ソー社製;SiO2/Al2O3=39)を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法で本比較例の炭化水素吸着剤を得た。
【0107】
実施例1、比較例1乃至3の結果を下表に示す。
【0108】
【0109】
上表より、SiO2/Al2O3比及び目的金属の含有量が同程度であるゼオライトにおいては、細孔次元が高い三次元細孔を有するゼオライトは、一次元細孔を有するゼオライトより脱離開始温度が高いことが確認できる。さらに、実施例1と比較例1の対比から、10員環及び12員環からなる三次元細孔を有するゼオライトは、12員環のみからなる三次元細孔を有するゼオライトよりも高い脱離開始温度を示す炭化水素吸着剤であることが確認できる。
【0110】
次に、実施例2及び比較例4乃至6の結果を下表に示す。
【0111】
【0112】
上表において、「-」は数値が未測定であることを表す。実施例2、比較例4乃至6は、いずれも三次元細孔を有するゼオライトである。比較例4乃至6から、SiO2/Al2O3比の減少に伴い、脱離開始温度が低下する傾向が確認でき、また、SiO2/Al2O3比が70から39に減少するに伴い、脱離開始温度が143℃から165℃へと20℃程度増加することが確認できる。一方、実施例2は、SiO2/Al2O3比が53と比較例5と同程度であるにも関わらず、脱離開始温度は、比較例5よりもSiO2/Al2O3比が10以上低い比較例6の脱離開始温度と同程度であることが確認できる。これより、本実施形態の炭化水素吸着剤は、高いSiO2/Al2O3比で、従来の炭化水素吸着剤が低いSiO2/Al2O3比の領域でしか得られなかった高い脱離開始温度を示すことが確認できる。