(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-03-30
(45)【発行日】2026-04-07
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20260331BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20260331BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20260331BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20260331BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20260331BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20260331BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20260331BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60W10/06 900
F02D45/00 345
F02D29/06 D
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2022182486
(22)【出願日】2022-11-15
【審査請求日】2025-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 達成
(72)【発明者】
【氏名】岡田 学
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117314(JP,A)
【文献】特開2008-279823(JP,A)
【文献】特開2003-193900(JP,A)
【文献】特開2009-167937(JP,A)
【文献】特開2017-53270(JP,A)
【文献】特開2015-143519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297421(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 20/50
B60K 6/20 - 6/547
F02D 45/00
F02D 29/06
B60L 50/16
F02M 26/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としての内燃機関およびモータと、
前記内燃機関と前記モータとの間に設けられたクラッチと、を備え、
前記内燃機関を停止し、かつ、前記クラッチを切断して、前記モータにより走行するEV走行が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
定速走行中に前記EV走行を行うように制御する駆動制御部と、
前記車両に搭載された車載装置の異常診断を実施する異常診断部と、
前記内燃機関の冷却水の水温を検出する水温検出部と、
前記内燃機関に供給される吸気の吸気温を検出する吸気温検出部と、を備え、
前記異常診断部が実施する異常診断は、
前記水温が所定水温未満または前記吸気温が所定吸気温未満であることを条件として、減速時燃料カット中に前記車載装置の異常診断を実施する第1異常診断と、
前記水温が所定水温以上でかつ前記吸気温が所定吸気温以上であることを条件として、減速時燃料カット中に前記車載装置の異常診断を実施する第2異常診断と、
前記ハイブリッド車両の始動後に一定時間が経過し、かつ、前記第1異常診断および前記第2異常診断が完了していないことを条件として、前記内燃機関への燃料供給を停止し、かつ、前記クラッチを接続して、前記モータにより前記内燃機関を連れ回して走行するモータリング状態にして、前記車載装置の異常診断を実施する第3異常診断と、を含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
車両の駆動源としての内燃機関およびモータと、
前記内燃機関と前記モータとの間に設けられたクラッチと、を備え、
前記内燃機関を停止し、かつ、前記クラッチを切断して、前記モータにより走行するEV走行が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
定速走行中に前記EV走行を行うように制御する駆動制御部と、
前記車両に搭載された車載装置の異常診断を実施する異常診断部と、
前記内燃機関の冷却水の水温を検出する水温検出部と、
前記内燃機関に供給される吸気の吸気温を検出する吸気温検出部と、を備え、
前記異常診断部が実施する異常診断は、
前記水温が所定水温未満または前記吸気温が所定吸気温未満であることを条件として、減速時燃料カット中に前記車載装置の異常診断を実施する第1異常診断と、
前記水温が所定水温以上でかつ前記吸気温が所定吸気温以上であることを条件として、減速時燃料カット中に前記車載装置の異常診断を実施する第2異常診断と、
前記ハイブリッド車両の始動後に所定車両速度以上での走行積算時間が所定時間を超え、かつ、前記第1異常診断および前記第2異常診断が完了していないことを条件として、前記内燃機関への燃料供給を停止し、かつ、前記クラッチを接続して前記モータにより前記内燃機関を連れ回して走行するモータリング状態にして、前記車載装置の異常診断を実施する第3異常診断と、を含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記異常診断部は、
前記第1異常診断を実施する場合、所定の診断基準を満足することを条件に正常と判断し、前記診断基準を満足しないことを条件に診断未完了と判断し、
前記第2異常診断を実施する場合、前記診断基準を満足することを条件に正常と判断し、前記診断基準を満足しないことを条件に異常と判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、EGR通路を開いた状態で、EGRバルブを開いた場合と閉じた場合との吸入空気量の変化量に基づいてEGR通路の詰り量を検出し、その検出結果からEGR通路の異常を判定する技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、EGR通路を開いた状態で、EGRバルブを開いた場合と閉じた場合との吸気マニホールド内の圧力変化量に基づいてEGR通路の詰り量を検出し、その検出結果からEGR通路の異常を判定する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術において、EGR通路の異常検出を実行する異常検出条件には、車両の減速時であること、または内燃機関の暖機後であることが含まれており、このような異常検出条件が成立した場合に異常検出が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、内燃機関の暖機完了まで異常診断を実施することができず、異常診断を早期に完了することができないという問題があった。一方、走行用のモータを備えるハイブリッド車両においては、モータにより内燃機関を連れ回すモータリング状態にすることにより、減速時燃料カットが実施される機会を待つことなく異常診断を実施することができるが、モータリング状態の頻度が増えると燃費が悪化してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができ、定速走行中におけるモータリング状態の頻度を減らして燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するハイブリッド車両の制御装置の発明の一態様は、車両の駆動源としての内燃機関およびモータと、前記内燃機関と前記モータとの間に設けられたクラッチと、を備え、前記内燃機関を停止し、かつ、前記クラッチを切断して、前記モータにより走行するEV走行が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、定速走行中に前記EV走行を行うように制御する駆動制御部と、前記車両に搭載された車載装置の異常診断を実施する異常診断部と、前記内燃機関の冷却水の水温を検出する水温検出部と、前記内燃機関に供給される吸気の吸気温を検出する吸気温検出部と、を備え、前記異常診断部が実施する異常診断は、前記水温が所定水温未満または前記吸気温が所定吸気温未満であることを条件として、減速時燃料カット中に前記車載装置の異常診断を実施する第1異常診断と、前記水温が所定水温以上でかつ前記吸気温が所定吸気温以上であることを条件として、減速時燃料カット中に前記車載装置の異常診断を実施する第2異常診断と、前記ハイブリッド車両の始動後に一定時間が経過し、かつ、前記第1異常診断および前記第2異常診断が完了していないことを条件として、前記内燃機関への燃料供給を停止し、かつ、前記クラッチを接続して、前記モータにより前記内燃機関を連れ回して走行するモータリング状態にして、前記車載装置の異常診断を実施する第3異常診断と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができ、定速走行中におけるモータリング状態の頻度を減らして燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載する車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置の構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置による異常診断動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、車両の駆動源としての内燃機関およびモータと、内燃機関とモータとの間に設けられたクラッチと、を備え、内燃機関を停止し、かつ、クラッチを切断して、モータにより走行するEV走行が可能なハイブリッド車両の制御装置であって、定速走行中にEV走行を行うように制御する駆動制御部と、車両に搭載された車載装置の異常診断を実施する異常診断部と、内燃機関の冷却水の水温を検出する水温検出部と、内燃機関に供給される吸気の吸気温を検出する吸気温検出部と、を備え、異常診断部が実施する異常診断は、水温が所定水温未満または吸気温が所定吸気温未満であることを条件として、減速時燃料カット中に車載装置の異常診断を実施する第1異常診断と、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上であることを条件として、減速時燃料カット中に車載装置の異常診断を実施する第2異常診断と、ハイブリッド車両の始動後に一定時間が経過し、かつ、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことを条件として、内燃機関への燃料供給を停止し、かつ、クラッチを接続して、モータにより内燃機関を連れ回して走行するモータリング状態にして、車載装置の異常診断を実施する第3異常診断と、を含むことを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができ、定速走行中におけるモータリング状態の頻度を減らして燃費を向上させることができる。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るハイブリッド車両の制御装置について詳細に説明する。
【0013】
図1において、本発明の一実施例に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両1は、車両の駆動源としての内燃機関10およびモータ13と、内燃機関10とモータ13との間に設けられたクラッチ11と、を備えている。
【0014】
ハイブリッド車両1は、トランスミッション(図中、T/Mと記す)12を備えており、このトランスミッション12は、クラッチ11を介して内燃機関10から伝達された回転を変速して図示しない駆動輪に伝達する。
【0015】
モータ13はトランスミッション12に連結されており、モータ13の動力はトランスミッション12を介して駆動輪に伝達される。
【0016】
このように構成されたハイブリッド車両1は、内燃機関10を停止し、かつ、クラッチ11を切断して、モータ13により走行するEV走行が可能である。つまり、ハイブリッド車両1は、停止させた内燃機関10がモータ13に連れ回らない状態でEV走行をすることができる。なお、モータ13の位置は、クラッチ11よりも内燃機関10側であってもよい。
【0017】
内燃機関10は、ピストンが気筒内を2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なう4サイクルのエンジンによって構成されている。各気筒に収納されたピストンは、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに連結されている。コネクティングロッドは、ピストンの往復動をクランクシャフトの回転運動に変換するようになっている。内燃機関10は、気筒内の燃焼室で燃料と空気との混合気を燃焼させることによりピストンを往復動させ、コネクティングロッドを介してクランクシャフトを回転させることにより駆動力を発生するようになっている。
【0018】
ハイブリッド車両1は、内燃機関10の冷却水の水温を検出する水温検出部21と、内燃機関10に供給される吸気の吸気温を検出する吸気温検出部22と、を備えている。
【0019】
ハイブリッド車両1は排気再循環装置(図中、EGRと記す)25を備えており、排気再循環装置25は内燃機関10の排気通路と吸気通路とを連通する図示しないEGR通路と、このEGR通路を開閉する図示しないEGRバルブと、を有しており、EGRバルブの開度に応じた量の排気ガスを吸気通路に還流する。
【0020】
ハイブリッド車両1はリヤO2センサ24を備えており、リヤO2センサ24は、排気通路における図示しない触媒の下流側に設けられており、排気ガス中の酸素濃度を検出する。排気再循環装置25およびリヤO2センサ24は、本発明における車載装置を構成している。なお、ハイブリッド車両1は図示しないフロントO2センサを備えており、フロントO2センサは、排気通路における触媒の上流側に設けられている。
【0021】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0022】
制御装置30のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置30として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御装置30として機能する。
【0023】
図2において、制御装置30の入力ポートには、上述の水温検出部21、吸気温検出部22に加え、車両速度検出部23が接続されている。車両速度検出部23は、駆動輪等の回転速度に基づく車両速度を検出し、検出信号を制御装置30に出力する。
【0024】
一方、制御装置30の出力ポートには、内燃機関10、モータ13、クラッチ11、リヤO2センサ24、排気再循環装置25が接続されている。
【0025】
排気再循環装置25には、EGR通路がデポジット等で詰まる異常や、EGRバルブの開閉の異常が発生することがある。また、リヤO2センサ24には、応答性の異常が発生することがある。
【0026】
このため、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24を対象とする異常診断を適切な頻度で実施し、異常の有無を判断する必要がある。本実施例では、ハイブリッド車両1のシステム起動から終了までのドライビングサイクルごとに異常診断が実施される。また、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断は、ドライバビリティーを損なわないようにするため、内燃機関10において燃料噴射が行われてない状態で実施する必要がある。
【0027】
排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断は、内燃機関10のエンジントルクにより走行するエンジン走行モードにおいては、内燃機関10の暖機完了後の減速時燃料カット中に実施することができる。減速時燃料カットとは、アクセルペダルの踏み込みがない場合に燃料噴射を中断し、エンジン回転数が所定の復帰回転数に低下した場合に燃料噴射を再開することである。減速時燃料カットは、降坂路の走行中等において実施され、これにより燃料消費量を低減することができる。
【0028】
または、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断は、モータリング状態において実施することができる。モータリング状態は、内燃機関10への燃料供給を停止し、かつ、クラッチ11を接続して、モータ13により内燃機関10を連れ回して走行する状態であり、EV走行の一態様である。通常のEV走行は、燃料供給が停止された内燃機関10がモータ13により連れ回ることを回避して燃費を向上させるため、クラッチ11を切断した状態で行われるが、モータリング状態では、クラッチ11を接続した状態で行われる。
【0029】
ここで、仮に、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断が実施される診断実施条件が、内燃機関10の暖機完了後であって減速時燃料カット中であるときにだけ成立する場合、暖機完了まで待ち、さらに減速時燃料カットが行われる機会を待ってから異常診断を実施する必要があるため、ハイブリッド車両1のシステム起動後に所定時間が経過しても診断実施条件が成立せず、異常診断が早期に完了しないことがある。
【0030】
そこで、本実施例のハイブリッド車両1は、内燃機関10の暖機完了前であっても異常診断の診断実施条件が成立するようになっている。また、本実施例のハイブリッド車両1は、所定の診断実施条件の成立時に、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24にとって減速時燃料カット中と同様の状態であるモータリング状態にして、異常診断を実施するようになっている。ただし、モータリング状態は、内燃機関10を連れ回す負荷がモータ13に作用してしまい、通常のEV走行よりも多くの電力をモータ10が消費してしまう。また、モータリング状態の頻度を増やすと内燃機関10が発電のために消費する燃料が増えてしまう。このため、モータリング状態の頻度を低く抑えることが望ましい。また、加速終了後の巡航状態のような定速走行中は燃料消費を抑えるためにクラッチ11を切り離して通常のEV走行を行うことが望ましい。
【0031】
制御装置30は駆動制御部31を備えており、駆動制御部31は、車両速度が一定の定速走行中にEV走行を行うように制御する。つまり、制御装置30は、加速終了後の巡航状態等において、内燃機関10の運転を停止してモータ13のモータトルクにより走行する。これにより、内燃機関10による燃料消費量が低減され、燃費を向上させることができる。
【0032】
制御装置30は異常診断部32を備えており、異常診断部32は、ハイブリッド車両1に搭載された排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施する。異常診断部32が実施する異常診断は、第1異常診断、第2異常診断、第3異常診断を含んでいる。
【0033】
第1異常診断は、水温が所定水温未満または吸気温が所定吸気温未満であることを条件として、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施することである。減速時燃料カットとは、降坂路の走行中等において、アクセルペダルの踏み込みがない場合に、内燃機関10での燃料噴射を一時的に中断することである。
【0034】
排気再循環装置25の異常診断は、EGRバルブを開弁および閉弁して吸気経路等(例えば、インテークマニホールド)の圧力差を検出し、この圧力差が規定値以下となった場合にEGR通路の詰まりによる異常が発生していると診断することである。リヤO2センサ24の異常診断は、リヤO2センサ24の応答性を診断し、応答性の異常の有無を診断することである。例えば、減速時燃料カット時におけるリヤO2センサ24の信号電圧のリッチからリーンへの変動時間が規定時間以上となった場合、リヤO2センサ24の応答性が異常であると判定される。
【0035】
異常診断部32は、第1異常診断を実施する場合、所定の診断基準を満足することを条件に正常と判断し、診断基準を満足しないことを条件に診断未完了と判断する。
【0036】
第1異常診断は、内燃機関10の始動後に水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上となる前の、暖機未完了の車両状態において実施される仮診断としての異常診断である。暖機未完了の車両状態で行われる第1異常診断においては、診断基準を満足しないことに基づいて異常であると確定的に診断することができない。
【0037】
例えば、排気再循環装置25は水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上となってから作動される。このため、このような車両状態では、診断基準を満足しないことに基づいて排気再循環装置25が異常であると確定的に診断することができない。
【0038】
そのため、異常診断部32は、診断基準を満足しない場合は診断未完了と判断する。なお、所定の診断基準は、診断対象であるリヤO2センサ24と排気再循環装置25とのそれぞれに対して定められている。なお、暖機未完了であるために第1異常診断が実施される車両状態においては、図示しないバッテリのバッテリ温度が低温であるためにEV走行の条件が成立しないと考えられる。よって、第1異常診断の実施によってEV走行が影響を受けることはない。
【0039】
第2異常診断は、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上であることを条件として、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施することである。
【0040】
第2異常診断は、第1異常診断と同様に減速時燃料カット中に実施されるが、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上となった後の、暖機完了状態で実施される点で第1異常診断と異なる。
【0041】
異常診断部32は、内燃機関10の始動後の暖機完了前に仮診断としての第1異常診断を早期に実施し、暖機完了後に第2異常診断を実施する。第2異常診断は、暖機完了後の減速時燃料カット中に実施される診断であり、一般的な車両において採用されている診断手法である。
【0042】
異常診断部32は、第2異常診断を実施する場合、診断基準を満足することを条件に正常と判断し、診断基準を満足しないことを条件に異常と判断する。このように、異常診断部32は、診断基準を満足しない場合、第1異常診断においては診断未完了と判断するが、第2異常診断においては異常と判断する。
【0043】
第3異常診断は、ハイブリッド車両1の始動後に一定時間が経過し、かつ、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことを条件として、内燃機関10への燃料供給を停止し、かつ、クラッチ11を接続して、モータ13により内燃機関10を連れ回して走行するモータリング状態にして、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施することである。
【0044】
第3異常診断の実施条件は、ハイブリッド車両1の始動後に一定時間が経過し、かつ、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことに代わって、ハイブリッド車両1の始動後に所定車両速度(例えば、40km/h)以上での走行積算時間が所定時間(例えば、150秒)を超え、かつ、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことであってもよい。
【0045】
なお、異常診断部32は、第3異常診断の実施条件が成立している場合であって、減速時燃料カットが行われたときは、モータリング状態での第3異常診断を実施する代わりに、第1異常診断および第2異常診断と同様に、その減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施してもよい。
【0046】
このように、異常診断部32は、第1異常診断の診断条件が成立した場合、または第2異常診断の診断条件が成立した場合は、減速時燃料カットが行われる機会を待ち、減速時燃料カットが行われたタイミングで異常診断を実施する。一方、異常診断部32は、第3異常診断の診断条件が成立した場合、ハイブリッド車両1を強制的にモータリング状態にして異常診断を実施する。
【0047】
以上のように構成された本実施例に係るハイブリッド車両1の制御装置による異常診断動作について、
図3のフローチャートを参照して説明する。この異常診断動作は、ハイブリッド車両1のシステム起動後からシステム終了後までの1回のドライビングサイクル中に、EGR診断およびリヤO2応答性診断の診断結果が得られるまで繰り返し実行される。なお、この異常診断動作のフローチャートにおいて、排気再循環装置25を対象とする異常診断をEGR診断といい、リヤO2センサ24を対象とする異常診断をリヤO2応答性診断という。
【0048】
図3において、制御装置30は、低水温または低吸気温であるか否かを判断する(ステップS1)。ここでは、制御装置30は、水温が所定水温未満である場合に低水温であると判断し、吸気温が所定吸気温未満である場合に低吸気温であると判断する。
【0049】
制御装置30は、ステップS1で低水温または低吸気温であると判断した場合(ステップS1でYES)、減速時燃料カット中に、EGR診断とリヤO2応答性診断を行い(ステップS2)、今回の動作を終了する。ステップS1の条件に基づいてステップS2で実施される診断は、第1異常診断である。
【0050】
制御装置30は、ステップS1で低水温または低吸気温ではないと判断した場合(ステップS1でNO)、内燃機関10の始動後一定時間以内であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0051】
制御装置30は、ステップS3で始動後一定時間以内であると判断した場合(ステップS3でYES)、減速時燃料カット中に、EGR診断とリヤO2応答性診断を行い(ステップS4)、今回の動作を終了する。ステップS3の条件に基づいてステップS4で実施される診断は、第2異常診断である。
【0052】
制御装置30は、ステップS3で始動後一定時間以内ではないと判断した場合(ステップS3でNO)、内燃機関10を停止してモータ13により走行するモータリング状態にして、EGR診断とリヤO2応答性診断を行い(ステップS5)、今回の動作を終了する。ステップS3の条件に基づいてステップS5で実施される診断は、ここで、ステップS5が実行される条件には、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことが含まれる。
【0053】
図3に示す異常診断動作によれば、エンジン走行モードにおける内燃機関10の暖機が未完了の状態であっても、暖機が未完了の早期の段階での仮診断として、減速時燃料カット中に第1異常診断が行われる。そして、内燃機関10の暖機が完了した状態では、減速時燃料カット中に第2異常診断が行われる。そして、第1異常診断および第2異常診断の実施機会の無いまま一定時間が経過した場合は、強制的にモータリング状態にされた上で第3異常診断が行われる。
【0054】
このように、本実施例のハイブリッド車両1は、定速走行中にEV走行を行うように制御する駆動制御部31と、ハイブリッド車両1に搭載された排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施する異常診断部32と、を備えている。また、ハイブリッド車両1は、内燃機関10の冷却水の水温を検出する水温検出部21と、内燃機関10に供給される吸気の吸気温を検出する吸気温検出部22と、を備えている。
【0055】
そして、異常診断部32が実施する異常診断は、水温が所定水温未満または吸気温が所定吸気温未満であることを条件として、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施する第1異常診断と、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上であることを条件として、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施する第2異常診断と、ハイブリッド車両1の始動後に一定時間が経過し、かつ、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことを条件として、内燃機関10への燃料供給を停止し、かつ、クラッチ11を接続して、モータ13により内燃機関10を連れ回して走行するモータリング状態にして、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施する第3異常診断と、を含む。
【0056】
これにより、水温が所定水温未満または吸気温が所定吸気温未満である場合、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24を対象として第1異常診断が実施されるので、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができる。
【0057】
また、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上である場合であって、ハイブリッド車両1の始動後に一定時間が経過していないときは、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24を対象として第2異常診断が実施されるので、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができる。
【0058】
また、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができることにより、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上となった後の定速走行中において、第3異常診断を実施するためにモータリング状態にする頻度を減らすことができ、EV走行状態の頻度を増やすことができるので、燃費を向上させることができる。
【0059】
この結果、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができ、定速走行中におけるモータリング状態の頻度を減らして燃費を向上させることができる。
【0060】
また、本実施例のハイブリッド車両1において、第3異常診断は、ハイブリッド車両1の始動後に所定車両速度以上での走行積算時間が所定時間を超え、かつ、第1異常診断および第2異常診断が完了していないことを条件として、内燃機関10への燃料供給を停止し、かつ、クラッチ11を接続してモータ13により内燃機関10を連れ回して走行するモータリング状態にして、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断を実施するものであってもよい。
【0061】
これにより、水温が所定水温未満または吸気温が所定吸気温未満である場合、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24を対象として第1異常診断が実施されるので、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができる。
【0062】
また、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上である場合であって、ハイブリッド車両1の始動後に所定車両速度以上での走行積算時間が所定時間を超えていないときは、減速時燃料カット中に排気再循環装置25およびリヤO2センサ24を対象として第2異常診断が実施されるので、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができる。
【0063】
また、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができることにより、水温が所定水温以上でかつ吸気温が所定吸気温以上となった後の定速走行中において、第3異常診断を実施するためにモータリング状態にする頻度を減らすことができ、EV走行状態の頻度を増やすことができるので、燃費を向上させることができる。さらに、排気再循環装置25およびリヤO2センサ24の異常診断が実施されない状況であるか否かを正確に判断でき、不必要であるにもかかわらずモータリング状態にして異常診断を実施することを回避することができる。
【0064】
この結果、異常診断を早期に完了する可能性を大きくすることができ、定速走行中におけるモータリング状態の頻度を減らして燃費を向上させることができる。
【0065】
また、本実施例のハイブリッド車両1において、異常診断部32は、第1異常診断を実施する場合、所定の診断基準を満足することを条件に正常と判断し、診断基準を満足しないことを条件に診断未完了と判断し、第2異常診断を実施する場合、診断基準を満足することを条件に正常と判断し、診断基準を満足しないことを条件に異常と判断する。
【0066】
これにより、暖機完了前の段階における仮診断として第1異常診断が実施される場合、診断基準を満足しない場合に診断未完了と判断されるため、異常と誤診断することを防止できる。
【0067】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0068】
1 ハイブリッド車両
10 内燃機関
11 クラッチ
13 モータ
21 水温検出部
22 吸気温検出部
24 リヤO2センサ(車載装置)
25 排気再循環装置(車載装置)
30 制御装置
31 駆動制御部
32 異常診断部