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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-04-06
(45)【発行日】2026-04-14
(54)【発明の名称】駆動モータ搭載車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/40 20190101AFI20260407BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20260407BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20260407BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20260407BHJP
   H02J 7/00 20260101ALI20260407BHJP
【FI】
B60L58/40
B60L50/75
B60L58/12
B60L50/61
H02J7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022181818
(22)【出願日】2022-11-14
(65)【公開番号】P2024071076
(43)【公開日】2024-05-24
【審査請求日】2025-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押切 律之
(72)【発明者】
【氏名】堀田 聖志
(72)【発明者】
【氏名】島田 喜久
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-36776(JP,A)
【文献】特開2011-223870(JP,A)
【文献】特開2012-16972(JP,A)
【文献】特開2018-134927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12,7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動モータに電力を供給する電力源と、
前記電力源により充電可能であり、前記駆動モータに前記電力源とともに電力を供給可能であるバッテリと、
前記バッテリの充電のために、前記電力源からの電力を前記バッテリに分配する電力分配器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記バッテリのSOCが予め定められた下限値より低くなった場合において、前記駆動モータの要求トルクが予め定められた閾値以上である条件が成立する時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避し、前記条件が成立しない時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電し、
前記条件の成立により前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避している時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電する、
ように前記電力分配器を制御する、
ことを特徴とする駆動モータ搭載車両。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動モータ搭載車両であって、
前記電力源は、燃料電池である、
ことを特徴とする駆動モータ搭載車両。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動モータ搭載車両であって、
前記電力源は、エンジンの回転により発電が行われる発電装置である、
ことを特徴とする駆動モータ搭載車両。
【請求項4】
車両の駆動モータに電力を供給する電力源と、
前記電力源により充電可能であり、前記駆動モータに前記電力源とともに電力を供給可能であるバッテリと、
前記バッテリの充電のために、前記電力源からの電力を前記バッテリに分配する電力分配器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記バッテリのSOCが予め定められた下限値より低くなった場合において、前記駆動モータの要求トルクが予め定められた閾値以上であり、かつ、前記車両の速度の上昇が検知されない条件が成立する時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避し、前記条件が成立しない時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電し、
前記条件の成立により前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避している時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電する、
ように前記電力分配器を制御する、
ことを特徴とする駆動モータ搭載車両。
【請求項5】
車両の駆動モータに電力を供給する電力源と、
前記電力源により充電可能であり、前記駆動モータに前記電力源とともに電力を供給可能であるバッテリと、
前記バッテリの充電のために、前記電力源からの電力を前記バッテリに分配する電力分配器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記バッテリのSOCが予め定められた下限値より低くなった場合において、アクセル開度が予め定められた閾値以上である条件が成立する時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避し、前記条件が成立しない時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電し、
前記条件の成立により前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避している時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電する、
ように前記電力分配器を制御する、
ことを特徴とする駆動モータ搭載車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動モータ搭載車両に関し、特に、駆動モータの電力源の電力を、駆動モータの出力をアシストするバッテリに分配してそれを充電する制御を行う車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池自動車が知られている。燃料電池自動車は、駆動モータに電力を供給する電力源としての燃料電池と、駆動モータに燃料電池とともに電力を供給して駆動モータの出力をアシストするバッテリを備える。バッテリは、燃料電池からの余剰電力、駆動モータからの回生電力等により充電される。
【0003】
駆動モータの電力源とアシスト用バッテリを備える形態は、エンジンを有するハイブリッド車両にも採用されている。例えば、シリーズハイブリッドと呼ばれるハイブリッド車両は、エンジンとそれに結合されたモータジェネレータにより構成される発電装置と、バッテリを備える。発電装置は、エンジンの回転により発電し、駆動モータの電力源として機能する。バッテリは、発電装置からの電力、駆動モータからの回生電力等により充電され、駆動モータに発電装置とともに電力を供給して駆動モータの出力をアシストする。特許文献1には、シリーズハイブリッドの一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-134927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動モータの出力をアシストするバッテリを備えた電動車(燃料電池自動車、ハイブリッド車両、プラグインハイブリッド車両等)では、バッテリの劣化を防止する観点からバッテリのSOC(充電状態)を一定範囲内に制御している。バッテリのSOCが予め定められた下限値になると、駆動モータの電力源(燃料電池、エンジンの発電装置等)の電力をバッテリに分配してバッテリの充電が行われる。この際、駆動モータに供給可能な電力が低下するため、駆動モータの要求出力が高い場合には、その要求出力を満たす出力を駆動モータから発生させることができない。それにより、車速の低下を生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、駆動モータの電力源の電力がバッテリに分配されることによる車速の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る駆動モータ搭載車両は、車両の駆動モータに電力を供給する電力源と、前記電力源により充電可能であり、前記駆動モータに前記電力源とともに電力を供給可能であるバッテリと、前記バッテリの充電のために、前記電力源からの電力を前記バッテリに分配する電力分配器と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記バッテリのSOCが予め定められた下限値より低くなった場合において、前記駆動モータの要求トルクが予め定められた閾値以上である条件が成立する時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避し、前記条件が成立しない時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電し、前記条件の成立により前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避している時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電する、ように前記電力分配器を制御する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る駆動モータ搭載車両において、前記電力源は、燃料電池である、としてもよい。
【0009】
本発明に係る駆動モータ搭載車両において、前記電力源は、エンジンの回転により発電が行われる発電装置である、としてもよい。
【0010】
また、本発明に係る駆動モータ搭載車両は、車両の駆動モータに電力を供給する電力源と、前記電力源により充電可能であり、前記駆動モータに前記電力源とともに電力を供給可能であるバッテリと、前記バッテリの充電のために、前記電力源からの電力を前記バッテリに分配する電力分配器と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記バッテリのSOCが予め定められた下限値より低くなった場合において、前記駆動モータの要求トルクが予め定められた閾値以上であり、かつ、前記車両の速度の上昇が検知されない条件が成立する時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避し、前記条件が成立しない時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電し、前記条件の成立により前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避している時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電する、ように前記電力分配器を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る駆動モータ搭載車両は、車両の駆動モータに電力を供給する電力源と、前記電力源により充電可能であり、前記駆動モータに前記電力源とともに電力を供給可能であるバッテリと、前記バッテリの充電のために、前記電力源からの電力を前記バッテリに分配する電力分配器と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記バッテリのSOCが予め定められた下限値より低くなった場合において、アクセル開度が予め定められた閾値以上である条件が成立する時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避し、前記条件が成立しない時には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電し、前記条件の成立により前記電力源の電力を前記バッテリに分配することを回避している時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、前記電力源の電力を前記バッテリに分配して前記バッテリを充電する、ように前記電力分配器を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動モータの要求出力が高い場合には、駆動モータの電力源の電力をバッテリに分配することを回避するので、駆動モータの要求出力に対する駆動モータへの電力の供給不足を抑制することができる。よって、車速の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】燃料電池自動車における駆動モータの電力システムの構成図である。
図2】制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
図3】バッテリの充電制御を説明するためのタイミングチャートである。
図4】制御装置が行う別の実施形態の処理を示すフローチャートである。
図5】走行負荷マップを例示する図であり、(A)は車両の傾斜角の走行負荷マップを示し、(B)は車両の積載量の走行負荷マップを示す。
図6】ハイブリッド車両の駆動モータの電力システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、燃料電池自動車における駆動モータ16の電力システムの構成図である。図1には、吹き出しにより、PCU20の制御装置26に電気的に接続される機器が示されている。車両10としての燃料電池自動車は、燃料電池としてのFCスタック11、IPM(インテリジェントパワーモジュール:Intelligent Power Module)12、PCU(パワーコントロールユニット:Power Control Unit)20、駆動モータ16、およびバッテリ18を備える。
【0016】
FCスタック11は、燃料電池セルを複数組み合わせて構成された組電池である。各燃料電池セルは、アノード側に燃料ガスとして水素を供給し、カソード側に酸化ガスとして空気を供給し、固体高分子膜である電解質膜を通しての電池化学反応により必要な電力を取り出す。FCスタック11は、車両10を走行させるための駆動モータ16に接続され、駆動モータ16に電力を供給する。すなわち、FCスタック11は、駆動モータ16の電力源である。FCスタック11から駆動モータ16への電力供給経路に、IPM12及びPCU20が接続される。
【0017】
IPM12は、昇圧コンバータ12a及びFCDC-ECU12bを備える。昇圧コンバータ12aは、直流の電圧変換器であり、FCスタック11からの直流電圧を昇圧して駆動モータ16側に出力する。FCDC-ECU12bは、昇圧コンバータ12aの制御回路(制御手段)である。なお、「FCDC」は、FCDC/DCコンバータ、すなわち昇圧コンバータ12aを略記したものであり、「FCDC-ECU」は、昇圧コンバータ12aを制御する電子制御ユニットを意味する。
【0018】
PCU20は、インバータ22、昇圧コンバータ24、および制御装置26を備える。インバータ22は、IPM12の昇圧コンバータ12aから駆動モータ16への電力供給経路に設けられ、直流電流を三相交流電流に変換して駆動モータ16に供給する。
【0019】
PCU20の昇圧コンバータ24は、直流の電圧変換器であり、IPM12の昇圧コンバータ12aからインバータ22への電力供給経路とバッテリ18との間に接続される。なお、バッテリ18はリチウムイオン電池等の二次電池である。昇圧コンバータ24は、バッテリ18からの直流電圧を昇圧して駆動モータ16側に出力する。また、昇圧コンバータ24は、FCスタック11からの直流電圧を調整してバッテリ18に出力することでバッテリ18を充電する。昇圧コンバータ24は、バッテリ18を充電する際に、FCスタック11からの電力を駆動モータ16とバッテリ18に分配する電力分配器として機能する。なお、昇圧コンバータ24は、駆動モータ16の回生動作時に、駆動モータ16からの直流電圧を調整してバッテリ18に出力することでバッテリ18を充電することもできる。
【0020】
制御装置26は、MG-ECUと呼ばれるコントローラである。制御装置26は、プロセッサ27とメモリ28を含む。プロセッサ27は、メモリ28に格納されたプログラムと制御データに従って動作し、インバータ22と昇圧コンバータ24(電力分配器)を制御する。
【0021】
制御装置26は、昇圧コンバータ24を介して、バッテリ18の充放電を制御する。制御装置26は、FCスタック11の電力とともにバッテリ18の電力を駆動モータ16に供給して、駆動モータ16の出力をアシストすることができる。また、制御装置26は、FCスタック11からの電力、駆動モータ16からの回生電力等によりバッテリ18を充電することができる。
【0022】
車両10は、アクセルセンサ30、車速センサ32、およびSOC検出部34を備える。アクセルセンサ30は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル開度を検出する検出器である。車速センサ32は、車両10の速度(車速)を検出する検出器である。SOC検出部34は、バッテリ18のSOCを検出する機器である。なお、SOCの検出方法は、例えばSOC-OCVマップ(バッテリのSOCと開放電圧の関係を示すマップ)を用いる手法、バッテリの充放電電流を積算する手法等の周知技術を採用することができる。
【0023】
制御装置26には、アクセルセンサ30、車速センサ32、およびSOC検出部34の検出値が入力される。制御装置26のメモリ28には、アクセル開度と、車速と、要求トルクの関係が予め定められた要求トルク設定マップが記憶されている。制御装置26は、要求トルク設定マップを用いて、入力されたアクセル開度と車速に対応する要求トルクTrを導出する。要求トルクTrは、図2のフローで使用される。また、SOC検出部34で検出されたバッテリ18のSOCも、図2のフローで使用される。
【0024】
なお、図1に示すように、車両10は、傾斜センサ36、重量センサ38、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機40、および地図データベース42をさらに備えてもよい。これらは、別の実施形態(図4、5)で使用するものであり、後述する。
【0025】
図2は、制御装置26が行う処理を示すフローチャートである。制御装置26は、図2のフローを所定周期で繰り返し実行し、バッテリ18のSOCと駆動モータ16の要求トルクTrに基づいて、バッテリ18の充放電を制御する。
【0026】
図3は、図2のフローが適用された、バッテリ18の充放電の一例を示すタイミングチャートである。図3には、車両10が平坦な道(勾配0%)、登坂(勾配がプラス)、降坂(勾配がマイナス)を順に走行した際に、車速vが一定(図3に示す目標車速)になるようにアクセルペダルが操作された例が示されている。この場合、車両10の要求トルクTrは、車両10が走行する道の勾配の増減と同じように変化することになる。
【0027】
なお、図3において、「車両トルク」は、車両10の実トルク(実線)を示しており、破線により要求トルクTrも合わせて示されている。また、同図において、「SOC」と「バッテリ出力」はそれぞれ、バッテリ18のSOCと出力を示す。「電力源出力」は、FCスタック11の出力を示す。
【0028】
図2のフローを、図3のタイミングチャートを参照しながら説明する。図3の時刻0(最も左端)では、バッテリ18のSOCは、予め定められた下限値SLよりも高くなっている(図2のS100:No)。下限値SLは、バッテリ18の劣化を防ぐ観点から定められた、バッテリ18のSOCの好ましい使用範囲の下限値である。下限値SLは、制御装置26のメモリ28に予め記憶されている。
【0029】
また、時刻0では、車両10は平坦な道(勾配0%)を走行しており、要求トルクTrは比較的低くなっている。この場合、図2において、S100がNo(SOC≧下限値SL)、かつ、S104がNo(要求トルク<閾値Th2)となるため、制御装置26は、バッテリ18の充放電を行わない(S116)。この時、駆動モータ16は、FCスタック11の電力のみで動作する。
【0030】
図3の時刻t1になると、車両10は登坂に入り、時刻t2まで登坂の勾配が増加していく。この時、要求トルクTrが高くなっていき、要求トルクTrが閾値Th2以上となる。そのため、図2のS104がYes(要求トルクTr≧閾値Th2)となり、S114で、制御装置26は、バッテリ18を放電させて駆動モータ16の出力をアシストする(以下、バッテリアシストと言う)。すなわち、制御装置26は、FCスタック11の電力とともにバッテリ18の電力を駆動モータ16に供給する。
【0031】
時刻t1~t2の間に、要求トルクTrの増加に合わせて、電力源出力(FCスタック11の出力)も増加していくが、時刻t2の手前で最大出力に達しており、それ以上増加させることができなくなっている。それにより、時刻t1~t2の間の中間付近の時刻から、時刻t6(登坂終了)付近の時刻まで、要求トルクTrと実トルクの間に乖離が生じ、車速vが目標車速よりも低くなっている。
【0032】
時刻t2を超えると、車両10は登坂を引き続き進むが、勾配は一定となる。時刻t2~t3の間に、バッテリアシストが継続されたことにより、バッテリ18のSOCが低下していき、時刻t3付近でSOCが下限値SLよりも低くなる。そのため、時刻t4で、バッテリアシストを終了している。
【0033】
ここで、バッテリ18のSOCが下限値SLよりも低くなったため、すぐにSOCを下限値SLよりも高い値に回復させるために、FCスタック11の電力をバッテリ18に分配してバッテリ18の充電を開始することが考えられる。図3には、この場合の動作が、比較技術として一点鎖線により示されている。この場合、FCスタック11の電力がバッテリ18に分配されるので、時刻t4以降、駆動モータ16に供給される電力が低下することになる。それにより、車両トルクの一点鎖線に示すように実トルクが低下するので、車速vが目標車速に対して大きく落ち込むことになる。
【0034】
一方、本実施形態では、制御装置26は、上記のような車速vの低下が生じないように、バッテリ18の充電を制御する。具体的には、制御装置26は、図2に示すように、S100で、バッテリ18のSOCが下限値SLよりも低くなった場合(SOC<下限値SL、S100:Yes)には、S102で、駆動モータ16の現在の要求トルクTrが予め定められた閾値Th1以上であるか否かを確認する。そして、制御装置26は、要求トルクTrが閾値Th1以上である時には(要求トルクTr≧閾値Th1、S102:Yes)、FCスタック11の電力を用いたバッテリ18の充電を延期する(S110)。すなわち、制御装置26は、FCスタック11の電力をバッテリ18に分配することを回避する。図3には、時刻t4~t6付近まで、バッテリ18の充電が延期された例が示されている。これにより、比較技術にくらべて、車速vの低下を抑制することができている。
【0035】
時刻t5になると、道路の勾配の減少が始まり、時刻t6で勾配が0%となる。そして、時刻t6より後の時間では、降坂が続く。ここで、時刻t5~t6の間で、駆動モータ16の要求トルクTrが閾値Th1未満となっている。制御装置26は、要求トルクTrが閾値Th1未満である時には(要求トルクTr<閾値Th1、S102:No)、FCスタック11の電力をバッテリ18に分配してバッテリ18の充電を行う(S112)。図3には、時刻t6の少し手前の時刻から、バッテリ18の充電が開始された例が示されている。これにより、バッテリ18のSOCは、下限値SLを超えた値にまで回復することができる。
【0036】
なお、本実施形態において、バッテリ18の充電中は、FCスタック11の電力がバッテリ18に分配されるため、駆動モータ16に供給可能な電力は低下するが、駆動モータ16の要求トルクTrが低くなっているため、要求トルクTrに対する駆動モータ16への電力供給不足が生じないか、または、生じ難くなっている。よって、バッテリ18の充電による車速の低下を抑制することができる。
【0037】
以上説明した実施形態によれば、制御装置26が、バッテリ18のSOCが下限値SLより低くなった場合において、駆動モータ16の要求トルクTrが高い時には、駆動モータ16の電力源(FCスタック11)の電力をバッテリ18に分配することを回避するので、駆動モータ16の要求トルクTrに対する駆動モータ16への電力の供給不足を抑制することができる。そのため、車速の低下を抑制することができる。
【0038】
なお、以上説明した実施形態では、制御装置26が、駆動モータ16の要求トルクに基づいて、バッテリ18の充電を行うか否かを判断した。しかし、制御装置26は、要求トルクに代えて、アクセル開度に基づいて、バッテリ18の充電を行うか否かを判断してもよい。具体的には、制御装置26は、バッテリ18のSOCが予め定められた下限値SLより低くなった場合において、アクセル開度が予め定められた閾値以上である時には、FCスタック11(電力源)の電力をバッテリ18に分配することを延期し、そうでない時には、FCスタック11の電力をバッテリ18に分配してバッテリ18を充電する。
【0039】
次に別の実施形態について説明する。図4は、別の実施形態の処理を示すフローチャートである。図4のフローは、図2のフローに対して、バッテリ18のSOCが下限値SLより低くなった場合における、バッテリ18の充電を行うか否かの判断の条件を追加したものである。具体的には、図4のフローには、図2のフローに対して、走行負荷レベルの条件(S201)と車速条件(S206)が追加されている。
【0040】
図4のフローにおいて、制御装置26は、バッテリ18のSOCが下限値SLよりも低い場合(S200:Yes)には、S201で、車両10の走行負荷レベルが予め定められた閾値Bth以上であるか否かを確認する。そして、制御装置26は、車両10の走行負荷レベルが予め定められた閾値Bth以上である場合には(S201:Yes)、S202(図2のS102に相当)の条件の確認に進み、そうでない場合には、FCスタック11の電力をバッテリ18に分配してバッテリ18を充電する(S212)。すなわち、制御装置26は、車両10の走行負荷レベルが閾値Bth未満である場合には(S201:No)、他の条件(S202、206)にかかわらず、バッテリ18の充電を行う(S212)。
【0041】
ここで、走行負荷レベルは、例えば、車両が進む登坂の勾配が大きいほど、高くなる数値であってよい。図1に示すように、車両10は、車両の傾きを検出する傾斜センサ36を備える。また、図5(A)に示すように、走行有無、車両の傾斜角θ、走行負荷レベルを紐付けたマップを、制御装置26のメモリ28に予め記憶しておく。図5(A)のマップにおいて、走行有無は、車両が前進しているか否かを示し、車両の傾斜角θは、車両後部に対する車両前部の上方向への傾斜角を示す。制御装置26は、車速センサ32から走行有無の情報を受け付けるとともに、傾斜センサ36から車両10の傾斜角を受け付ける。そして、制御装置26は、図5(A)のマップを用いて、受け付けた走行有無と傾斜角に対応する走行負荷レベルを導出する。そして、制御装置26は、導出された走行負荷レベルを閾値Bthと比較して(図4のS201)、バッテリ充電を行うか否かを判断する。
【0042】
また、走行負荷レベルは、例えば、車両の積載量が増加するほど、高くなる数値であってもよい。図1に示すように、車両10は、車両に乗っている人、荷物等の合計重量を検出する重量センサ38を備える。また、図5(B)に示すように、走行有無、積載量、走行負荷レベルを紐付けたマップを、制御装置26のメモリ28に予め記憶しておく。制御装置26は、車速センサ32から走行有無の情報を受け付けるとともに、重量センサ38から車両10の積載量を受け付ける。そして、制御装置26は、図5(B)のマップを用いて、受け付けた走行有無と積載量に対応する走行負荷レベルを導出する。そして、制御装置26は、導出された走行負荷レベルを閾値Bthと比較して(図4のS201)、バッテリ充電を行うか否かを判断する。なお、制御装置26は、図5(A)、(B)のそれぞれから走行負荷レベルを導出し、それらを乗算する等して得られた走行負荷レベルを、図4のS201で使用してもよい。
【0043】
次に、図4の車速条件(S206)について説明する。S206は、制御装置26が、車速の減速が検知されているか否かを確認する処理である。具体的には、S206で、制御装置26は、現在の車速vが、前回、図4のフローを実行した際の車速vp(前回車速vpと言う)からγ(予め定められた、0より大きい値)だけ差し引いた値以下であるかを確認する。そして、制御装置26は、S206がYesの場合(車速v≦(前回車速vp-γ)、車速の減速が検知されている場合)には、バッテリ充電を延期し(S210)、S206がNoの場合(車速v>(前回車速vp-γ)、車速の維持又は上昇が検知されている場合)には、バッテリ充電を行う(S212)。なお、上記では、γを0より大きい値としたが、γは0であってもよい。この場合には、制御装置26は、S206がYesの場合(車速v≦前回車速vp、車速の維持又は減速が検知されている場合、すなわち、車速の上昇が検知されていない場合)には、バッテリ充電を延期し(S210)、S206がNoの場合(車速v>前回車速vp、車速の上昇が検知されている場合)には、バッテリ充電を行う(S212)ことになる。
【0044】
以上説明した図4のフローにおいても、バッテリ充電による車速の低下を抑制することができる。
【0045】
なお、図4のフローでは、制御装置26が、バッテリ18のSOCが下限値SLよりも低い場合(S200:Yes)に、S201、S202、S206の3つの条件を確認することで、バッテリ18の充電を行うか否かを判断した。しかし、制御装置26は、3つの条件のうち、いずれか1つまたは2つにより、バッテリ18の充電を行うか否かを判断してもよい。なお、車速条件(S206)については、走行負荷条件(S201)とトルク条件(S202)の少なくとも1つと組み合わせて用いることが好ましい。
【0046】
また、図4において「オプション条件追加可」と記されているように、S206の後に、さらに条件を追加してもよい。例えば、制御装置26は、車両10の進む方向において、登坂の継続が所定距離以下、または、登坂の後に降坂があることを確認できた場合にはバッテリ充電を延期し(S210)、そうでない場合には、バッテリ充電を行う(S212)としてもよい。これにより、バッテリ充電の延期が継続して、バッテリ18のSOCが下限値SLよりも低い状態が長い時間続くことを抑制することができる。なお、車両10の進行方向における登坂の継続距離や登坂後の降坂の有無の検出については、例えば車両10の現在位置を検出するGNSS受信機40(図1参照)と、3次元の地図情報を記憶する地図データベース42(図1参照)を用いて実現することができる。
【0047】
また、制御装置26は、バッテリ充電の延期時間(図4のS210が最初に実行されてから経過した時間)を計測して、延期時間が予め定められた上限時間を超えた場合には、強制的にバッテリ充電を行う(S212)としてもよい。この場合でも、バッテリ18のSOCが下限値SLよりも低い状態が長い時間続くことを抑制することができる。
【0048】
なお、以上説明した実施形態の車両10は燃料電池自動車であった。しかし、車両は、ハイブリッド車両、プラグインハイブリッド車両等であってもよい。図6は、シリーズハイブリッド(ハイブリッド車両の一例)における駆動モータの電力システムの構成図である。
【0049】
図6に示すように、車両10Aは、発電装置80とインバータ82を備える。発電装置80は、エンジン86とそれに結合されたモータジェネレータ84を含む。発電装置80は、エンジン86によりモータジェネレータ84のロータを回転させて、三相交流電流を出力する。インバータ82は、発電装置80からの三相交流電流を、直流電流に変換してPCU20に供給する。このように、図6の車両10Aでは、発電装置80が駆動モータ16の電力源となる。その他のPCU20、駆動モータ16、およびバッテリ18の構成、制御については、上記した図1の車両10と同様である。図6の車両10Aにおいても、上記した図1の車両10と同様に、バッテリ充電による車速の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
10,10A 車両(駆動モータ搭載車両)、11 FCスタック(電力源)、12 IPM、12a 昇圧コンバータ、12b FCDC-ECU、16 駆動モータ、18 バッテリ、20 PCU、22 インバータ、24 昇圧コンバータ(電力分配器)、26 制御装置、27 プロセッサ、28 メモリ、30 アクセルセンサ、32 車速センサ、34 SOC検出部、36 傾斜センサ、38 重量センサ、40 GNSS受信機、42 地図データベース、80 発電装置(電力源)、82 インバータ、84 モータジェネレータ、86 エンジン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6