(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-04-07
(45)【発行日】2026-04-15
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/16 20060101AFI20260408BHJP
G01N 30/12 20060101ALI20260408BHJP
【FI】
G01N30/16 E
G01N30/12 L
(21)【出願番号】P 2023515896
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2021015891
(87)【国際公開番号】W WO2022224312
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中間 勇二
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-284345(JP,A)
【文献】特開2000-298126(JP,A)
【文献】特開2019-132622(JP,A)
【文献】マルチショット・パイロライザー <EGA/PY-3030D>,フロンティア・ラボ株式会社 カタログ,フロンティア・ラボ株式会社,2016年04月07日,P1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 31/00 -31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間
、前記内部空間を囲って前記内部空間を外部と熱的に遮断する断熱材
、及び前記断熱材の上面上に位置する天板を有するガスクロマトグラフ本体と、
前記ガスクロマトグラフ本体の
前記天板に搭載され、筐体を有し、前記筐体の内部にヒータによって囲われた加熱空間が形成され、前記加熱空間に対して注入された試料を前記ヒータからの熱によって気化させて前記ガスクロマトグラフ本体へ導入する
試料気化部と、
前記ガスクロマトグラフ本体の前記天板上の前記試料気化部が搭載されている位置とは別の位置に、前記断熱材とは別に設けられた断熱部材と、
前記断熱部材の上に搭載され、前記試料気化部に向かっ
て冷却風を送風する
冷却ファンと、を備え、
前記ガスクロマトグラフ本体と前記
冷却ファンとの間に
前記断熱部材が介在して前記
冷却ファンが前記ガスクロマトグラフ本体から熱的に分離されている、ガスクロマトグラフ。
【請求項2】
前記断熱部材の上に設けられた金属製の支持部材をさらに備え、
前記冷却ファンは前記支持部材の上に搭載されている、請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項3】
前記試料気化部は、前記冷却ファンによって送風される冷却風を前記筐体の内部に取り込むための取込口を備えているとともに、前記筐体の内部の空気を排気するするための排気口を前記取込口よりも高い位置に備えており、
前記冷却ファンは前記試料気化部の前記筐体の前記取込口に向かって冷却風を送風するように設けられている、請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項4】
前記試料気化部が2つ以上設けられており、
前記冷却ファンが前記試料気化部のそれぞれに対応するように2つ以上設けられており、
前記試料気化部のそれぞれは、前記冷却ファンによって送風される冷却風を前記筐体の内部に取り込むための取込口を互いに異なる高さに備え、
前記試料気化部のそれぞれに対応する前記冷却ファンがそれぞれ対応する前記試料気化部の前記取込口へ冷却風を送風するように互いに異なる高さに設けられている、請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項5】
前記試料気化部は、コールドオンカラムインジェクション用の試料気化部である、請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ(以下、GC)に関する。
【背景技術】
【0002】
GCの試料注入方式の1つとして、コールドオンカラムインジェクション(以下、OCI)がある。OCIは、試料をカラムへ直接的に注入した後で、試料気化部内を450℃程度にまで急速に昇温し、カラムの内部において試料を気化させる方式である。
【0003】
OCIは沸点の高い試料を分析する際に用いられる場合が多く、OCI以外の注入方式を用いた場合に比べて分析時間が長くなる傾向がある。そのため、OCIを用いて連続分析を行なう際の総分析時間を短縮するためには、試料がカラムから溶出した後でできる限り早く試料気化部の温度を低下させ、次の試料の分析を開始できる状態にすることが重要である。そのため、試料気化部の近傍に冷却ファンを設置し、冷却ファンによって試料気化部を冷却するといった対策が採られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OCI方式のGCでは、試料気化部の側方に冷却ファンを位置させるために、カラム等を内部に収容するガスクロマトグラフ本体(以下、GC本体)の天板に金属製の板金を取り付け、その板金上に冷却ファンを固定していることが一般的である。カラム等が収容されているGC本体の内部空間は断熱材によって囲われて外気と熱的に遮断されているため、分析時のGC本体の内部空間の熱がGC本体の外部へ漏れることはないと考えられていた。しかし、長時間にわたって連続分析を行なうと、GC本体の内部空間の熱が天板や板金を通じて冷却ファンに伝わり、その結果、冷却ファンの温度が耐熱温度を超えて冷却ファンの故障や劣化の原因になり得ることがわかった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、長時間にわたる連続分析に起因した冷却ファンの故障や劣化を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスクロマトグラフは、内部空間が外部と熱的に遮断されているガスクロマトグラフ本体と、前記ガスクロマトグラフ本体の上部に搭載され、筐体を有し、前記筐体の内部にヒータによって囲われた加熱空間が形成され、前記加熱空間に対して注入された試料を前記ヒータからの熱によって気化させて前記ガスクロマトグラフ本体へ導入する少なくとも1つの試料気化部と、前記少なくとも1つの試料気化部のそれぞれに対応するように前記ガスクロマトグラフ本体上に搭載され、前記少なくとも1つの試料気化部のそれぞれに向かってそれぞれが冷却風を送風する少なくとも1つの冷却ファンと、を備え、前記ガスクロマトグラフ本体と前記少なくとも1つの冷却ファンのそれぞれとの間に断熱部材が介在して前記少なくとも1つの冷却ファンのそれぞれが前記ガスクロマトグラフ本体から熱的に分離されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るガスクロマトグラフによれば、ガスクロマトグラフ本体と冷却ファンとの間に断熱部材が介在して前記冷却ファンが前記ガスクロマトグラフ本体から熱的に分離されているので、長時間にわたる連続分析に起因した冷却ファンの故障や劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ガスクロマトグラフの一実施例を示す部分断面構成図である。
【
図2】同実施例における冷却構造の他の例を示す図である。
【
図3】2つの試料気化部を搭載した場合の冷却ファンの配置の一例を示す上方から見たレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらガスクロマトグラフの一実施例について説明する。
【0011】
ガスクロマトグラフ1(以下、GC1)は、ガスクロマトグラフ本体2(以下、GC本体2)、試料気化部4、検出器6、インジェクタ8、及び冷却ファン10を備えている。試料気化部4、検出器6、インジェクタ8及び冷却ファン10はGC本体2の上部に搭載されている。
【0012】
GC本体2の内部空間12は断熱材14によって囲われており、GC本体2の外部と熱的に遮断されている。試料ガス中の成分を分離するためのカラム16は、GC本体2の内部空間12に収容されている。カラム16は、一端が試料気化部4に通じ、他端が検出器6に通じている。
【0013】
試料気化部4は筐体18を有し、筐体18の内部にヒータ20によって囲われた加熱空間22が形成されている。試料気化部4の筐体18内の加熱空間22に筒状のインサート24が配置されており、カラム16の一端が下方からインサート24の内側に挿入されている。試料気化部4の上部にセプタム26が設けられており、加熱空間22の上方はセプタム26によって封止されている。セプタム26を保持するキャップ27には、インジェクタ8のシリンジ34の針を加熱空間20へ導くための貫通孔である試料注入口28が設けられている。また、試料気化部4の筐体18の互いに反対に位置する側面に、冷却風を内部へ取り込むための取込口30と筐体18内の空気を外部へ排気するための排気口32とが設けられている。
【0014】
インジェクタ8は、シリンジ34を上下動させることによって、試料容器(図示は省略)から試料を吸入し、試料気化部4内の加熱空間22へ試料注入口28を通じて針を挿入し、試料をカラム16に対して注入するように構成されている。
【0015】
冷却ファン10は、試料気化部4の取込口30に向かって冷却風を送るように、試料気化部4の側方に設けられている。冷却ファン10は、GC本体2の天板15に取り付けられた金属製の支持部材36によって支持されている。この実施例では、支持部材36と冷却ファン10との間、及びGC本体2の天板15と支持部材36との間のそれぞれに、断熱部材38及び40が挟み込まれており、それによってGC本体2の熱が冷却ファン10に伝わることが抑制されている。断熱部材38及び40の材質としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、セラミック系材料、バイトン系材料、ニトリル系材料などが挙げられる。
【0016】
なお、GC本体2の熱が冷却ファン10に伝わることを抑制できる態様であればよく、断熱部材38及び40のうちの一方のみが設けられていてもよいし、支持部材36自体が断熱性の材料で構成された断熱部材となっていてもよい。要は、GC本体2と冷却ファン10との間に断熱部材が介在していればよい。また、この実施例では、試料気化部4と冷却ファン10との間に冷却ファン10により発生する冷却風を効率的に試料気化部4内へ導くためのダクト等の構造が設けられていないが、そのような構造を設けることもできる。
【0017】
図2は、冷却ファン10を支持する支持部材36の高さを
図1よりも低くして冷却ファン10をGC本体2の天板15に接近させた例を示している。このように、冷却ファン10をGC本体2の天板15に接近させても、GC本体2と冷却ファン10との間に断熱部材40が介在しているため、GC本体2の熱が冷却ファン10に伝わることが抑制され、冷却ファン10の温度が耐熱温度を超えることを防止できる。
図2のように
図1に比べて冷却ファン10を低い位置に設けることで、試料気化部4に対して低い位置から冷却風を送り込むことができる。そして、試料気化部4の排気口32を取込口30よりも高い位置に設けることで、試料気化部4内の熱を効率よく外部へ放出することができ、試料気化部4内の冷却効率が向上する。
【0018】
上記のように、GC本体2と冷却ファン10との間に断熱部材を介在させることによって冷却ファン10を設ける高さを自由に設計できるので、複数の冷却ファン10を設ける際に、それらの冷却ファン10の高さを互いに異ならせてGC本体2上における複数の冷却ファン10の専有面積を小さくすることができる。
【0019】
図3はGC本体2に2台の試料気化部4A、4Bを搭載する場合に各試料気化部4A、4Bに対応する2台の冷却ファン10A、10Bの配置の一例を示す、上方から見たレイアウト図である。この例では、冷却ファン10Aと10Bが互いに異なる位置に設けられることによって互いの一部が上下に重なるように配置されている。これにより、試料気化部4A及び4Bを互いに近接させて配置することが可能になり、その結果、GC本体2の小型化に寄与する。
【0020】
以上において説明した実施例は本発明に係るガスクロマトグラフの実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係るガスクロマトグラフの実施形態は以下のとおりである。
【0021】
本発明に係るガスクロマトグラフの一実施形態では、内部空間が外部と熱的に遮断されているガスクロマトグラフ本体と、前記ガスクロマトグラフ本体の上部に搭載され、筐体を有し、前記筐体の内部にヒータによって囲われた加熱空間が形成され、前記加熱空間に対して注入された試料を前記ヒータからの熱によって気化させて前記ガスクロマトグラフ本体へ導入する少なくとも1つの試料気化部と、前記少なくとも1つの試料気化部のそれぞれに対応するように前記ガスクロマトグラフ本体上に搭載され、前記少なくとも1つの試料気化部のそれぞれに向かってそれぞれが冷却風を送風する少なくとも1つの冷却ファンと、を備え、前記ガスクロマトグラフ本体と前記少なくとも1つの冷却ファンのそれぞれとの間に断熱部材が介在して前記少なくとも1つの冷却ファンのそれぞれが前記ガスクロマトグラフ本体から熱的に分離されている。
【0022】
上記一実施形態の第1態様では、前記少なくとも1つの冷却ファンのそれぞれを前記ガスクロマトグラフ本体上で支持するための支持部材のそれぞれの少なくとも一部分が前記断熱部材となっている。
【0023】
上記一実施形態の第2態様では、前記試料気化部が1つのみ設けられており、前記試料気化部は、前記冷却ファンによって送風される冷却風を前記筐体の内部に取り込むための取込口を備えているとともに、前記筐体の内部の空気を排気するするための排気口を前記取込口よりも高い位置に備えており、前記冷却ファンは前記試料気化部の前記筐体の前記取込口に向かって冷却風を送風するように設けられている。このような態様により、前記試料気化部内の冷却効率を向上させることができる。
【0024】
上記一実施形態の第3態様では、前記試料気化部が2つ以上設けられており、前記試料気化部のそれぞれは、前記冷却ファンによって送風される冷却風を前記筐体の内部に取り込むための取込口を互いに異なる高さに備え、前記試料気化部のそれぞれに対応する前記冷却ファンがそれぞれ対応する前記試料気化部の前記取込口へ冷却風を送風するように互いに異なる高さに設けられている。このような態様により、複数の冷却ファンを互いの一部が上下に重なるように配置することができるので、複数の冷却ファンの設置面積を小さくすることができ、その結果、ガスクロマトグラフの小型化を図ることができる。
【0025】
上記一実施形態の第4態様では、前記試料気化部は、コールドオンカラムインジェクション用の試料気化部である。
【符号の説明】
【0026】
1 GC
2 GC本体
4、4A、4B 試料気化部
6 検出器
8 インジェクタ
10、10A、10B 冷却ファン
12 内部空間
14 断熱材
15 GC本体の天板
16 カラム
18 試料気化部の筐体
20 ヒータ
22 加熱空間
24 インサート
26 セプタム
28 試料注入口
30 取込口
32 排気口
34 シリンジ
36 支持部材
38、40 断熱部材