(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-04-14
(45)【発行日】2026-04-22
(54)【発明の名称】電圧変化検出装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20260415BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/12 M
(21)【出願番号】P 2022066371
(22)【出願日】2022-04-13
【審査請求日】2025-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 恭二
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 達也
(72)【発明者】
【氏名】森岡 享平
(72)【発明者】
【氏名】磯田 博孝
(72)【発明者】
【氏名】満田 和正
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220018(JP,A)
【文献】特開平10-004682(JP,A)
【文献】特開2005-261055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相の入力電圧の変化を検出する電圧変化検出装置であって、
前記三相の入力電圧をd軸電圧及びq軸電圧に変換する変換部と、
前記d軸電圧及び前記q軸電圧をそれぞれ前記入力電圧の実効値で除して規格化することにより、d軸換算値及びq軸換算値を得る換算値算出部と、
前記d軸換算値がd軸閾値以上の場合、または、前記q軸換算値がq軸閾値以上の場合に、前記三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する位相変化検出部と、
を有
し、
前記位相変化検出部は、前記d軸換算値がd軸閾値以上の場合に、前記三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出し、前記d軸換算値がd軸閾値以上に達するタイミングよりも前に前記q軸換算値がq軸閾値以上に達した場合に、前記三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する、
電圧変化検出装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の電圧変化検出装置と、
複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記複数のスイッチング素子をスイッチング駆動させることによって、三相の入力電圧を所定の直流電圧に変換するとともに、前記電圧変化検出装置によって三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出された場合に、前記複数のスイッチング素子の駆動を停止する駆動制御部と、
を有する、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相の入力電圧の位相変化を検出する電圧変化検出装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧の位相に対応したスイッチング動作を行うことにより、入力電源の力率を改善する電力変換装置が知られている。このような電力変換装置として、例えば特許文献1には、複数のダイオードによって構成されたブリッジ回路と、前記複数のダイオードに並列接続されたスイッチング素子と、前記ブリッジ回路の出力端に接続された平滑コンデンサとを有するPWMコンバータを備えた電力変換装置が開示されている。
【0003】
前記特許文献1に開示されている電力変換装置では、前記スイッチング素子が入力電圧の位相に対応したスイッチング動作を行うことにより、入力電流の波形を正弦波にする。これにより、波形の歪みが小さい電源電圧が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような電力変換装置では、入力電圧の位相が大きく変化しない状態であれば、前記入力電圧から位相角を算出して、スイッチング素子をスイッチング動作させるための駆動信号を生成することができる。
【0006】
しかしながら、例えば、航空機用電力変換装置などのように、電源の切り替えが発生する場合には、入力電圧の位相が急激に変化する場合がある。そうすると、前記入力電圧から位相角を正確に算出できない期間が生じる可能性がある。この期間中では、入力電圧の実際の位相と、前記入力電圧から求められる位相とに差が生じるため、前記駆動信号を精度よく生成できない場合がある。
【0007】
このような場合には、スイッチング素子にその定格電流を超えるような電流が流れて、前記スイッチング素子が故障する可能性がある。
【0008】
そのため、入力電圧の位相が急激に変化した際に、前記スイッチング素子の動作を停止できるように、前記入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であることを迅速に検出可能な装置が求められている。
【0009】
本発明の目的は、三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であることを検出可能な電圧変化検出装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電圧変化検出装置は、前記三相の入力電圧をd軸電圧及びq軸電圧に変換する変換部と、前記d軸電圧及び前記q軸電圧をそれぞれ前記入力電圧の実効値で除して規格化することにより、d軸換算値及びq軸換算値を得る換算値算出部と、前記d軸換算値がd軸閾値以上の場合、または、前記q軸換算値がq軸閾値以上の場合に、前記三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する位相変化検出部と、を有する(第1の構成)。
【0011】
これにより、d軸電圧から求められるd軸換算値の変化またはq軸電圧から求められるq軸換算値の変化に応じて、三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であるかどうかを精度良く検出することができる。よって、上述の構成により、前記入力電圧の急激な位相変化を、精度良く検出することができる。
【0012】
前記第1の構成において、前記位相変化検出部は、前記d軸換算値がd軸閾値以上の場合に、前記三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出し、前記d軸換算値がd軸閾値以上に達するタイミングよりも前に前記q軸換算値がq軸閾値以上に達した場合に、前記三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する(第2の構成)。
【0013】
入力電圧の位相を変化させた際に、前記入力電圧の位相が変化した直後の所定期間においてd軸換算値がほとんど変化しない位相角度が存在する。そのため、上述の構成のように、d軸換算値がd軸閾値以上に達するタイミングよりも前にq軸換算値がq軸閾値以上に達した場合に、前記入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出することにより、前記入力電圧の急激な位相変化を、より迅速に且つ精度良く検出することができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、前記第1または第2の構成の電圧変化検出装置と、複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路と、前記複数のスイッチング素子をスイッチング駆動させることによって、三相の入力電圧を所定の直流電圧に変換するとともに、前記電圧変化検出装置によって三相の入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出された場合に、前記スイッチング素子の駆動を停止する駆動制御部と、を有する(第3の構成)。
【0015】
これにより、電圧変化検出装置によって三相の入力電圧の急激な位相変化が検出された場合に、スイッチング回路の複数のスイッチング素子の駆動を停止することにより、前記複数のスイッチング素子に過大な電流が流れて故障することを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る電圧変化検出装置は、三相の入力電圧から得られるd軸換算値がd軸閾値以上の場合、または、前記入力電圧から得られるq軸換算値がq軸閾値以上の場合に、前記入力電圧の位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する。これにより、前記d軸換算値の変化または前記軸換算値の変化に基づいて、前記入力電圧の急激な位相変化を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、位相角算出部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、電力変換装置の入力電圧の位相が連続して変化する場合の前記入力電圧の一例と、位相角変換部によって求められた位相角の一例との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、電力変換装置の入力電圧の位相が急激に変化する場合の前記入力電圧の一例と、位相角変換部によって求められた位相角の一例との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、入力電圧の位相がずれている場合のd軸換算値の変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、入力電圧の位相がずれている場合のq軸換算値の変化の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、電力変換装置による入力電圧の位相変化の検出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電圧変化検出装置50(
図2参照)を備えた電力変換装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。電圧変化検出装置50は、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相の急激な変化を検出する。本実施形態では、電圧変化検出装置50は、電力変換装置1において、後述する位相角算出部23の一部の構成である。
【0020】
電力変換装置1は、交流電源2から供給される三相の入力電圧Vr,Vs,Vt及び入力電流に基づいて、スイッチング回路10を構成する複数のスイッチング素子SW1~SW6を駆動させることにより、直流電圧を出力する。
【0021】
電力変換装置1は、複数のスイッチング素子SW1~SW6を有するスイッチング回路10と、スイッチング回路10のスイッチング素子SW1~SW6に対してPWM信号を出力する制御部20とを有する。
【0022】
スイッチング回路10は、複数のスイッチング素子SW1~SW6と、スイッチング素子SW1~SW6にそれぞれ並列に接続されたダイオードD1~D6とを有する。本実施形態では、スイッチング回路10は、6個のスイッチング素子SW1~SW6と、6個のダイオードD1~D6とを有する。6個のスイッチング素子SW1~SW6は、ブリッジ回路を構成する。6個のスイッチング素子SW1~SW6は、交流電源2のR相、S相及びT相に電気的に接続されている。
【0023】
スイッチング回路10は、交流電源2及びコンデンサ3に電気的に接続されている。具体的には、スイッチング素子SW1,SW2は、交流電源2のR相に電気的に接続されている。スイッチング素子SW3,SW4は、交流電源2のS相に電気的に接続されている。スイッチング素子SW5,SW6は、交流電源2のT相に電気的に接続されている。スイッチング素子SW1~SW6は、コンデンサ3に電気的に接続されている。
【0024】
制御部20は、電圧制御部21と、電流制御部22と、位相角算出部23と、PWM信号生成部24とを有する。
【0025】
電圧制御部21は、コンデンサ3の直流電圧の検出値と、出力電圧指令とから、電流指令を生成して、電流制御部22に出力する。すなわち、電圧制御部21は、電力変換装置1の出力である直流電圧を、出力電圧指令に近づけるように、電流指令を生成する。
【0026】
電流制御部22は、電力変換装置1の入力電流の検出値と、電圧制御部21から入力される電流指令と、位相角算出部23から入力される位相角に関する信号とから、PWM信号生成部24に対する指令信号を生成する。電流制御部22の構成は、従来の電力変換装置における電流制御の構成と同様である。よって、電流制御部22の構成についての説明は省略する。
【0027】
PWM信号生成部24は、電流制御部22で生成された指令信号を用いて、スイッチング素子SW1~SW6を駆動させるためのPWM信号を生成する。生成されたPWM信号は、スイッチング素子SW1~SW6に入力される。PWM信号生成部24の構成も、従来の電力変換装置におけるPWM信号を生成する構成と同様である。よって、PWM信号生成部24の構成についての説明は省略する。
【0028】
なお、PWM信号生成部24は、位相変化検出部36からスイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止させる駆動停止信号が入力された場合に、スイッチング素子SW1~SW6の駆動を停止させるPWM信号を生成する。
【0029】
電流制御部22及びPWM信号生成部24は、複数のスイッチング素子SW1~SW6をスイッチング駆動させることによって、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtを所定の直流電圧に変換するとともに、後述する電圧変化検出装置50によって三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出された場合に、スイッチング素子SW1~SW6の駆動を停止する。よって、電流制御部22及びPWM信号生成部24が本発明の駆動制御部40を構成する。
【0030】
位相角算出部23は、電力変換装置1の入力電圧の検出値から、位相角θを算出する。位相角算出部23で算出された位相角θは、電流制御部22に入力される。また、位相角算出部23は、電力変換装置1の入力電圧Vr,Vs,Vtの検出値に基づいて、入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が急激に変化したかどうかを検出する。
図2は、位相角算出部23の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
図2に示すように、位相角算出部23は、3相2相変換部31と、実効値算出部32と、換算値算出部33と、PI制御部34と、位相角変換部35と、位相変化検出部36とを有する。3相2相変換部31、実効値算出部32、換算値算出部33及び位相変化検出部36が本発明の電圧変化検出装置50を構成する。すなわち、本実施形態の位相角算出部23は、電圧変化検出装置50を含む。
【0032】
3相2相変換部31は、電力変換装置1の3相の入力電圧Vr,Vs,Vtを、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換する。3相2相変換部31は、従来の構成と同様の構成を有する。よって、3相2相変換部31の詳しい説明は、省略する。
【0033】
実効値算出部32は、電力変換装置1の3相の入力電圧Vr,Vs,Vtを用いて実効値Vppを求める。具体的には、実効値算出部32は、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの2乗和平方根を算出することにより、実効値Vppを求める。
【0034】
換算値算出部33は、3相2相変換部31から出力されたd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqと、実効値算出部32から出力された実効値Vppとを用いて、d軸換算値Vd/Vpp及びq軸換算値Vq/Vppを求める。具体的には、換算値算出部33は、d軸電圧Vdを実効値Vppによって除することにより、d軸換算値Vd/Vppを算出する。換算値算出部33は、q軸電圧Vqを実効値Vppによって除することにより、q軸換算値Vq/Vppを算出する。換算値算出部33は、d軸換算値Vd/Vpp及びq軸換算値Vq/Vppを出力する。
【0035】
PI制御部34は、換算値算出部33から出力されたd軸換算値Vd/Vpp及びq軸換算値Vq/Vppを用いてPI制御を行う。PI制御部34は、d軸換算値Vd/Vppに対してPI処理を行うことにより、電流制御部22で指令信号を生成する際に用いられる入力電圧の周波数Freqを求める。詳しくは説明しないが、PI制御部34は、微分器及び積分器を有する。
【0036】
位相角変換部35は、PI制御部34で生成された周波数Freqを、電流制御部22で指令信号を生成する際に用いられる入力電圧の位相角θに変換する。位相角変換部35によって生成された位相角θは、3相2相変換部31による3相の入力電圧Vr,Vs,Vtからd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqへの変換に用いられる。
【0037】
図3は、電力変換装置1の入力電圧の位相が連続して変化する場合の前記入力電圧の一例と、位相角変換部35によって求められた位相角θの一例との関係を示す図である。
図3に示すように、電力変換装置1の入力電圧が変化することにより、該入力電圧に応じて、位相角変換部35によって得られる位相角θも徐々に変化する。
【0038】
ところで、電力変換装置1の入力電圧の位相が急激に変化した場合、位相角変換部35によって前記入力電圧から求められる位相角も急激に変化する。
図4は、電力変換装置1の入力電圧の位相が急激に変化する場合の前記入力電圧の一例と、位相角変換部35によって求められた位相角θの一例との関係を示す図である。
図4に示すように、電力変換装置1の入力電圧の位相が急激に変化することにより、位相角変換部35によって得られる位相角θも急激に変化する。
【0039】
図4に示すように位相角θが急激に変化する場合、位相角算出部23における演算の遅れにより、算出される位相角θは、
図4に太破線で示すように変化する。このように、算出される位相角θが、実際の位相角に対してずれていると、スイッチング素子SW1~SW6に対して入力されるPWM信号を正常に生成することができない。よって、スイッチング素子SW1~SW6にそれらの定格電流を超えるような電流が流れて、スイッチング素子SW1~SW6が破損する可能性がある。
【0040】
なお、
図4に示すような位相角θの急激な変化は、例えば、交流電源2を他の電源に切り替える際などに発生する。このように電源が切り替えられる電力変換装置としては、例えば、航空機用電力変換装置などが挙げられる。本実施形態の電力変換装置は、航空機用電力変換装置以外の電力変換装置に用いられてもよい。
【0041】
位相変化検出部36は、電力変換装置1の3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が急激に変化したことを検出する。具体的には、位相変化検出部36は、換算値算出部33によって求められたd軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合、または、q軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上の場合に、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上である、すなわち3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が急激に変化したと検出する。
【0042】
位相変化検出部36は、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が急激に変化したと検出した場合には、PWM信号生成部24に対して、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止させる駆動停止信号を生成して出力する。前記駆動停止信号は、PWM信号生成部24に、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止させるPWM信号を生成させる。
【0043】
前記d軸閾値は、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上となるようなd軸換算値Vd/Vppに設定されている。前記d軸閾値は、例えば、前記所定位相変化量が10度となるようなd軸換算値Vd/Vppに設定されている。なお、前記d軸閾値は、前記所定位相変化量が10度以外の値となるようなd軸換算値Vd/Vppに設定されていてもよい。
【0044】
前記q軸閾値は、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上となるようなq軸換算値Vq/Vppに設定されている。q軸換算値Vq/Vppは、d軸換算値Vd/Vppに比べて、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相に対する変化量が小さい。よって、前記q軸閾値は、前記所定位相変化量が前記d軸閾値の場合よりも大きい値(例えば30度)となるようなq軸換算値Vq/Vppに設定されている。なお、前記q軸閾値は、前記所定位相変化量が前記d軸閾値の場合の所定位相変化量と同じ値かそれよりも小さい値となるようなq軸換算値Vq/Vppに設定されていてもよい。
【0045】
ところで、d軸換算値Vd/Vppは、
図5に示すように、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が180度ずれている場合には、前記位相のずれが180度以外の場合に比べて、変化するタイミングが遅い。一方、
図6に示すように、q軸換算値Vq/Vppは、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が180度ずれている場合には、前記位相のずれが180度以外の場合に比べて、変化するタイミングが早く且つ変化量も大きい。
【0046】
そのため、位相変化検出部36は、前記位相のずれが180度の場合には、q軸換算値Vq/Vpp及び前記q軸閾値を用いて、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であるかどうかを検出する。
【0047】
すなわち、位相変化検出部36は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出し、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上に達するタイミングよりも前にq軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上に達した場合に、前記三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する。
【0048】
これにより、位相変化検出部36は、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であることを、迅速に且つ精度良く検出することができる。
【0049】
(入力電圧の位相変化の検出)
次に、上述の構成を有する電力変換装置1による入力電圧の位相変化の検出動作を、
図7を用いて説明する。
図7は、電力変換装置1による入力電圧の位相変化の検出動作を示すフローチャートである。
【0050】
図7に示すように、まずステップS1では、位相角算出部23は、交流電源2から入力される三相の入力電圧Vr,Vs,Vtを取得する。続くステップS2では、位相角算出部23の3相2相変換部31は、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtを、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換する。
【0051】
その後、ステップS3では、換算値算出部33は、3相2相変換部31によって得られたd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqを、それぞれ、実効値算出部32で得られた実効値Vppによって除して規格化する。これにより、換算値算出部33は、d軸換算値Vd/Vpp及びq軸換算値Vq/Vppを得る。
【0052】
ステップS4では、位相変化検出部36は、換算値算出部33によって得られたd軸換算値Vd/Vpp及びq軸換算値Vq/Vppを用いて、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であるかどうかを検出する。具体的には、位相変化検出部36は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合、または、q軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上の場合に、3相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると判定する。
【0053】
このとき、位相変化検出部36は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出し、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上に達するタイミングよりも前にq軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上に達した場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する。
【0054】
ステップS4でYESの判定の場合には、ステップS5に進んで、電力変換装置1は、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止させる。
【0055】
具体的には、位相変化検出部36は、ステップS4でYESの判定の場合には、PWM信号生成部24に対して、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止させる駆動停止信号を生成して出力する。PWM信号生成部24は、前記駆動停止信号が入力されると、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止させるPWM信号を生成する。これにより、電力変換装置1は、スイッチング素子SW1~SW6の駆動を停止させることができる。
【0056】
一方、ステップS4でNOの判定の場合には、このフローを終了する(END)。すなわち、ステップS4でNOの場合の場合には、電力変換装置1は、スイッチング素子SW1~SW6の駆動を継続する。
【0057】
以上より、本実施形態に係る電圧変化検出装置50は、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtをd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換する3相2相変換部31と、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqをそれぞれ入力電圧Vr,Vs,Vtの実効値Vppで除して規格化することにより、d軸換算値Vd/Vpp及びq軸換算値Vq/Vppを得る換算値算出部33と、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合、または、q軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する位相変化検出部36と、を有する。
【0058】
これにより、d軸電圧Vdから求められるd軸換算値Vd/Vppの変化またはq軸電圧Vqから求められるq軸換算値Vq/Vppの変化に応じて、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であるかどうかを精度良く検出することができる。よって、上述の構成により、入力電圧Vr,Vs,Vtの急激な位相変化を、精度良く検出することができる。
【0059】
また、本実施形態では、電圧変化検出装置50は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出し、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値に達するタイミングよりも前にq軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上に達した場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出する。
【0060】
入力電圧Vr,Vs,Vtの位相を変化させた際に、入力電圧Vr,Vs,Vtの位相が変化した直後の所定期間においてd軸換算値Vd/Vppがほとんど変化しないような位相角度が存在する。そのため、上述の構成のように、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値に達するタイミングよりも前にq軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上に達した場合に、入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出することにより、入力電圧Vr,Vs,Vtの急激な位相変化を、より迅速に且つ精度良く検出することができる。
【0061】
本実施形態に係る電力変換装置1は、電圧変化検出装置50と、複数のスイッチング素子SW1~SW6を有するスイッチング回路10と、複数のスイッチング素子SW1~SW6をスイッチング駆動させることによって、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtを所定の直流電圧に変換するとともに、電圧変化検出装置50によって三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの位相変化量が所定位相変化量以上であると検出された場合に、複数のスイッチング素子SW1~SW6の駆動を停止する駆動制御部40と、を有する。
【0062】
これにより、電圧変化検出装置50によって三相の入力電圧の急激な位相変化が検出された場合に、スイッチング回路10の複数のスイッチング素子SW1~SW6の駆動を停止することにより、複数のスイッチング素子SW1~SW6に過大な電流が流れて故障することを防止できる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0064】
前記実施形態では、電圧変化検出装置50は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合、または、q軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの急激な位相変化を検出する。しかしながら、電圧変化検出装置は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの急激な位相変化を検出してもよい。
【0065】
また、電圧変化検出装置は、d軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上の場合、または、q軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上の場合に、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの急激な周波数変化を検出してもよい。すなわち、三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの周波数が急激に変化した場合でも、前記実施形態で説明したようにd軸換算値Vd/Vppがd軸閾値以上またはq軸換算値Vq/Vppがq軸閾値以上になる。
【0066】
前記実施形態では、電力変換装置1は、電圧変化検出装置50によって三相の入力電圧Vr,Vs,Vtの急激な位相変化が検出された場合に、複数のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチング動作を停止する。しかしながら、電圧変化検出装置は、電力変換装置以外で且つ入力電圧の急激な位相変化に影響を受ける装置に対して、入力電圧の急激な位相変化の検出結果を出力してもよい。
【0067】
例えば、電圧変化検出装置によって三相の入力電圧の急激な位相変化が検出された場合に、制御系のゲイン(例えば比例ゲイン、積分ゲインなど)を前記位相変化に応じて補正してもよい。これにより、前記制御系において、前記入力電圧に急激な位相変化が生じた場合の制御応答を高速にすることができる。すなわち、
図5に示すVd/Vpp及び
図6に示すVq/Vppが収束する時間を短縮することができる。よって、入力電圧とPWM信号とがずれている状態の時間を短縮できる。ところで、前記入力電圧と前記PWM信号とがずれている際にスイッチング素子に流れる電流は、所定の勾配で増加する。そのため、前記スイッチング素子に流れる電流が、前記スイッチング素子が破損する電流になるまでに、Vd/Vpp及びVq/Vppを収束させることにより、前記スイッチング素子を停止させることなく、装置からの出力を継続することができる。
【0068】
また、例えば、電圧変化検出装置によって位相変化が検出された場合に、位相変化量を推定して、
図2における周波数Freqや位相角θを補正する(例えば、位相変化量に応じて周波数Freqや位相角θを所定値に決める)ことにより、入力電圧の変化に対して制御内の周波数Freqや位相角θを迅速に合わせることができる。これにより、スイッチング素子を停止させることなく、装置からの出力を継続することができる。
【0069】
前記実施形態では、電圧変化検出装置50は、電力変換装置1の位相角算出部23の一部によって構成されている。しかしながら、電圧変化検出装置は、電力変換装置とは別の装置として設けられていてもよい。また、電圧変化検出装置は、電力変換装置以外の装置に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、三相の入力電圧の変化を検出する電圧変化検出装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 電力変換装置
2 交流電源
3 コンデンサ
10 スイッチング回路
20 制御部
21 電圧制御部
22 電流制御部
23 位相角算出部
24 PWM信号生成部
31 3相2相変換部(変換部)
32 実効値算出部
33 換算値算出部
34 PI制御部
35 位相角変換部
36 位相変化検出部
40 駆動制御部
50 電圧変化検出装置
SW1~SW6 スイッチング素子
Vr、Vs、Vt 入力電圧