(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-04-14
(45)【発行日】2026-04-22
(54)【発明の名称】チューブ及びそれを用いたポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 5/00 20060101AFI20260415BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20260415BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20260415BHJP
【FI】
F04C5/00 341A
F04B43/12 J
B32B1/08 B
(21)【出願番号】P 2023538589
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2022028910
(87)【国際公開番号】W WO2023008473
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2021123759
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】野内 弘一
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094807(WO,A1)
【文献】特表2002-502735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 5/00
F04B 43/12
B32B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蠕動により流体を輸送するポンプに用いられるチューブであって、
前記チューブは、前記流体の輸送経路となり第1の方向に延在する流路と前記流路の周囲に形成された本体部とを備え、
前記本体部は、前記流路上に形成された第1の層と前記第1の層と異なる特性を有し前記第1の層上に形成された第2の層とを含み、
前記第1の層の弾性率比R1を、前記第1の層の前記第1の方向における引張弾性率/前記第1の層の周方向における引張弾性率としたとき、前記弾性率比R1が1よりも大きいチューブ。
【請求項2】
前記弾性率比R1が1.2よりも大きい請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記弾性率比R1が2よりも大きい請求項1又は2に記載のチューブ。
【請求項4】
前記第2の層の弾性率比R2を、前記第2の層の前記第1の方向における引張弾性率/前記第2の層の周方向における引張弾性率としたとき、前記弾性率比R2は前記第1の層の弾性率比R1よりも小さい請求項1
または2に記載のチューブ。
【請求項5】
前記第2の層の弾性率比R2が1より小さい請求項4に記載のチューブ。
【請求項6】
前記第2の層の弾性率比R2が0.9より小さい請求項5に記載のチューブ。
【請求項7】
前記第1の層は、複数の微孔を有する第1の多孔質基材と前記第1の多孔質基材の前記複数の微孔内に侵入した第1の樹脂とを含み、
前記第1の層は複数の前記第1の多孔質基材が積層された積層構造を含み、
前記複数の第1の多孔質基材は、前記第1の方向に垂直な断面において、前記本体部の周方向に延在している請求項
1または2に記載のチューブ。
【請求項8】
前記第2の層は、複数の微孔を有する第2の多孔質基材と前記第2の多孔質基材の前記複数の微孔内に侵入した第2の樹脂とを含み、
前記第2の層は複数の前記第2の多孔質基材が積層された積層構造を含み、
前記複数の第2の多孔質基材は、前記第1の方向に垂直な断面において、前記本体部の周方向に延在している請求項
1または2に記載のチューブ。
【請求項9】
前記第1の層は第1の樹脂を含み、前記第1の樹脂が熱硬化性樹脂である請求項
1または2に記載のチューブ。
【請求項10】
前記第2の層の径方向の曲げ弾性率は、前記第1の層の径方向の曲げ弾性率より小さい請求項
1または2に記載のチューブ。
【請求項11】
前記第1の層は、複数の微孔を有する第1の多孔質基材と前記第1の多孔質基材の前記複数の微孔内に侵入した第1の樹脂とを含み、
前記第2の層は、複数の微孔を有する第2の多孔質基材と前記第2の多孔質基材の前記複数の微孔内に侵入した第2の樹脂とを含み、
前記第1の多孔質基材及び前記第1の樹脂からなる領域は、前記第2の多孔質基材及び前記第2の樹脂からなる領域より径方向に小さい請求項
1または2に記載のチューブ。
【請求項12】
前記第2の多孔質基材と前記第2の樹脂とからなる領域の平均基材間距離は、前記第1の多孔質基材と前記第1の樹脂とからなる領域の平均基材間距離よりも大きい請求項11に記載のチューブ。
【請求項13】
蠕動により流体を輸送するポンプに用いられるチューブであって、
前記チューブは、前記流体の輸送経路となり第1の方向に延在する流路と前記流路の周囲に形成された本体部とを備え、
前記本体部は、前記流路上に形成された第1の層と前記第1の層と異なる特性を有し前記第1の層上に形成された第2の層とを含み、
前記第1の層は、複数の糸状の繊維状物を含み、前記第1の層の複数の糸状の繊維状物は
、前記第1の層の周方向に沿った方向と比較して、前記第1の方向に沿った方向に優先的に配向しているチューブ。
【請求項14】
請求項
1または2に記載のチューブと、前記チューブを圧し潰すことにより前記チューブの内部空間を閉塞可能なヘッドとケースとを備えることを特徴とした蠕動ポンプ。
【請求項15】
請求項1に記載のチューブにおいて、前記第1の層が、複数の第1基材層と複数の第1樹脂層とを含む積層体として構成され、前記第1基材層は、前記第1樹脂層を構成する第1樹脂より弾性率が大きな材料からなる基材により構成されるチューブ。
【請求項16】
請求項1に記載のチューブにおいて、
前記第1の層は、少なくとも第1基材層を含み、
前記第1基材層について、チューブの流路中心と当該第1基材層の起点とを結ぶ直線LN1、同中心と終点とを結ぶ直線LN2を定義し、重複領域と対向する位置にある前記直線LN1と前記直線LN2のなす角度を挟角θと定義したとき、前記挟角θが270度以下であるチューブ。
【請求項17】
請求項16に記載のチューブにおいて、前記挟角θは60度以下であるチューブ。
【請求項18】
請求項17に記載のチューブにおいて、前記挟角θは30度以下であるチューブ。
【請求項19】
弾性率比R1を、第1の方向における引張弾性率/前記第1の方向と主面に垂直な第2の方向における引張弾性率としたとき、前記弾性率比R1が1よりも大きいシート状基材を準備し、
前記シート状基材をマンドレル上に巻回することによりチューブ状の第1の層を形成し、
前記チューブ状の第1の層上に、前記第1の層と異なる特性を有する第2の層を形成し、
前記マンドレルを除去することを含む、
蠕動により流体を輸送するポンプに用いられるチューブを製造する方法であって、
前記シート状基材のマンドレル上への巻回は、前記シート状基材の前記第1の方向が前記マンドレルの軸方向が平行になるように巻回することを含むチューブの製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の製造方法において、樹脂層形成基材の厚みが10μmないし2mmであることを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の製造方法において、樹脂層形成基材の厚みが25μmないし1mmであることを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の製造方法において、樹脂層形成基材の厚みが50μmないし0.5mmであることを特徴とするチューブの製造方法。
【請求項23】
前記第2の層の形成は、第2のシート状基材を準備することを含み、
前記第2の層の形成は、前記チューブ状の第1の層上に、前記第2のシート状基材を巻回することを含む請求
項19に記載のチューブの製造方法。
【請求項24】
前
記シート状基材は複数の糸状の繊維状物を含み、前記複数の糸状の繊維状物は、前記第2の方向に沿った方向と比較して、前記第1の方向に沿った方向に優先的に配向している、請求項19に記載のチューブの製造方法。
【請求項25】
前記第2のシート状基材は複数の糸状の繊維状物を含む、請求項23に記載のチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体輸送に利用するチューブ及びポンプに関する。特に、蠕動ポンプのような蠕動装置に使用されるチューブのようにチューブの変形によりチューブ内の流体の流通を制御するのに有用なチューブ、及びそのようなチューブを備えたポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化学工業プラントや半導体製造装置に限らず製薬・飲食品工場でも益々耐久性に優れたチューブが求められている。従来のチューブは静置で使われのものがほとんどであったが、製造スペースを抑えて単位敷地内の生産性を上げるために製造装置が複雑に移動して、その結果としてチューブ自体がさまざまに変形して使用されるケースが増えている。このような場合は、チューブには屈曲、摺動、または捻回による繰り返し応力に対する機械的な耐性が要求される。
【0003】
また、別の態様として蠕動ポンプのような蠕動装置を例示できる。チューブは蠕動装置内のローラで径方向に押圧され変形された後、ローラの移動により変形位置が移動することにより、流体(例えば液体)を輸送する。この蠕動ポンプは、他のポンプに比べて流路の構造を簡素化でき、流体を汚染する虞が少ない。そのため、食品や医療機器などの分野で利用されることが多く、近年では半導体を製造する際のフォトレジストの送液にも使用されている。
【0004】
この種の蠕動ポンプに用いられるチューブとして、先行技術文献1(特表2002―502735)は、複数の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン層を備えた複合材料を開示している。そのポリテトラフルオロエチレン層は、少なくとも1種のエラストマーで含浸され、その含浸されたポリテトラフルオロエチレン層は、エラストマー層によって一緒に接着されている。
【0005】
先行技術文献2(国際公開番号WO2017/094807)は、フッ素系エラストマーが含浸された多孔質フッ素樹脂からなる内層と、この内層に積層されたフッ素系エラストマーからなる中間層と、この中間層に積層された外層とで構成されたチューブを開示している。高い耐有機溶剤性を有するフッ素系エラストマーを内層とし、優れた形状復元性を有するシリコーンゴムを外層とすることで、有機溶剤を送液しても形状復元性を長期間維持できるチューブを実現している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなチューブは、一般的な構成のチューブに比べて高い耐久性を発揮するものではあるが、さらなる耐久性向上の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、例えば以下の構成を有するチューブ等が提供される。第1のチューブは、蠕動により流体を輸送するポンプに用いられるチューブであって、前記チューブは、前記流体の輸送経路となり第1の方向に延在する流路と前記流路の周囲に形成された本体部とを備え、前記本体部は、前記流路上に形成された第1の層と前記第1の層と異なる特性を有し前記第1の層上に形成された第2の層とを含み、前記第1の層の弾性率比R1を、前記第1の層の前記第1の方向における引張弾性率/前記第1の層の周方向における引張弾性率としたとき、前記弾性率比R1が1よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
第2のチューブは、蠕動により流体を輸送するポンプに用いられるチューブであって、前記チューブは、前記流体の輸送経路となり第1の方向に延在する流路と前記流路の周囲に形成された本体部とを備え、前記本体部は、前記流路上に形成された第1の層と前記第1の層と異なる特性を有し前記第1の層上に形成された第2の層とを含み、前記第1の層は、複数の糸状の繊維状物を含み、前記第1の層の複数の糸状の繊維状物は、前記周方向に沿った方向と比較して、前記第1の方向に沿った方向に優先的に配向していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態のチューブの構造を説明する図である。
【
図2】第1の実施形態のチューブを備えた蠕動ポンプを示す図である。
【
図3】
図2に示された蠕動ポンプにおけるチューブの断面視における形状変化を説明する図である。
【
図4】ポンプの動作中にチューブに発生する微視的な現象を説明する図である。
【
図5】
図1に示された領域RG1及び領域RG2の拡大図である。
【
図6】第1の実施形態のチューブの基材の構成の例を示す概略図である。
【
図7】基材観察による配向確認の例を説明する図である。
【
図8】第1の実施形態のチューブの製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】チューブを構成する層の引張弾性率の測定方法の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るチューブの実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、それぞれの実施例における各々の実施形態は、本発明の技術的な意義を失わない範囲で自由に組み合わせても良い。
【0011】
図1(a)及び
図1(b)を用いて、第1の実施形態を説明する。
図1(a)は、第1の実施形態のチューブ20の長手方向に垂直な面におけるチューブの断面構造を説明する図であり、
図1(b)は、
図1(a)のX-X‘で示された位置におけるチューブ20の長手方向に平行な面におけるチューブの断面構造を説明する図である。
図1(a)に示されるように、チューブ20はその内部に流路CHを備え、流路CHを取り囲むようにチューブ20の本体部BDが形成される。本体部BDは、流路CHを定義する内周面20aと、内周面とは逆側の面である外周面20bとを備える。
図1(b)に示されるように、流路CHは、チューブ20の長手方向、すなわち
図1(b)の紙面左右方向に沿って連続的に形成されている。流路CHはチューブ20の一端から取り込まれた流体の該チューブの他端までの移動を可能とする流体の輸送経路となる。
本体部BDは、流路CH上に形成された内層(第1の層)BL1と内層BL1の外周を囲むように形成された外層(第2の層)BL2とを備える。
本実施形態において、内層BL1は内周面20aを含み、この面において内層BL1は輸送対象の流体と接触する。内層BL1の、内周面20aと逆側の面20c上には、外層BL2が内層BL1を取り囲むように形成されている。内層BL1と外層BL2とはチューブの径方向に積層され、例えば接着または溶着されることにより互いの相対的な位置が固定されている。
【0012】
ここで、
図1(a)を用いて、本明細書における方向について説明する。径方向は流路CHの延在方向(以下、流路CHの延在方向を第1の方向と記す)に垂直な面上において、流路CHの中心CGを通る仮想直線(図示せず)として表される方向である。流路の断面形状が円形でない場合は、流路の断面形状の重心位置を中心CGと見なしても良よい。径方向における大きさとはこの仮想直線上の2点間の距離である。例えば、チューブ内のある層の厚さとは、その層の一方の界面及び他方の界面のそれぞれと、前述の仮想直線とが交わる位置にある2つの交点間の距離として定義される。径方向の曲げは第1の方向に垂直な面上におけるチューブ形状の変化の一形態である。例えば、
図1(a)に示されたチューブの各層の曲率や、各層上にある任意の点から中心CGまでの距離が部分的に変化するような変形(典型的には円形のチューブ断面が楕円状に押し潰れる変形)は、内層BL1と外層BL2の径方向の曲げを含むものである。
【0013】
これに対して、例えば、第1の方向に垂直な面上において、内層BL1及び/又は外層BL2が延在する方向や、内周面20a及び/又は外周面20bに沿った方向を、周方向と呼ぶ。例えば内部流体の圧力増加によるチューブの膨張は、第1の方向に垂直な面上における流路CHの断面積の拡大を伴い、このような変形は、内層BL1及び外層BL2の周方向における伸張を伴うものと見なすことができる。
【0014】
本実施形態において、チューブ20の内層BL1及び外層BL2はそれぞれ異なる特性を有する。すなわち、内層BL1及び外層BL2は物理的特性及び/又は化学的特性が異なるように構成される。これらの特性としては、機械的特性、化学的特性、光学的特性、熱的特性などが例示される。構成材料及び/又は構造が、層間で差異を備え、内層及び外層の各層に求められる特性をそれぞれ発現させることにより、チューブに求められる性能や品質を実現できる。
例えば、内層を構成する材料を外層を構成する材料に比べ化学的、熱的に安定なものとすることにより、輸送対象となる流体による内層への攻撃によるチューブの劣化、あるいは内層の材料に由来する成分の溶出による輸送対象流体の汚染を抑制することができる。外層の材料を内層の材料に比べて弾性域が広いもので構成することにより、繰り返し変形が長期間繰り返されるような環境であっても、疲労やそれに伴う破壊が生じにくいチューブを得る事ができる。外層の材料に内層の材料に比べて耐摩耗性に優れるものを適用することで、ポンプ本体との機械的接触による摩耗劣化を抑制することも可能である。あるいは相対的に厚さが大きな層に可視光領域における光透過性が大きな材料を適用することで流体の輸送状態の視認性を向上させたり、紫外線透過性が大きな材料とすることでチューブ内の紫外線殺菌効果を向上させたりすることもできる。
このように、それぞれ特性の異なる2以上の層を適切に組み合わせることで、単層や、特定構造の繰り返しだけでは到達が難しい性能を備えたチューブの実現が可能となる。
【0015】
なお、上記の特性の違いは、本質的にそれぞれ異なる特性を有する材料の適用によって、あるいは、意図的に設けられた構造上の違い等によってもたらされる特性の違い等を指す。典型的には、内層と外層とのそれぞれで、ある特性値を取得したときに、内層における取得値と外層における取得値との間に有意な差がある状態を指す。
【0016】
本実施形態のチューブ20の内層BL1は、引張弾性率が特定の異方性を備える。すなわち、弾性率比Rを、以下の式(1)で表した時、内層の弾性率比R1が1より大きいことを特徴とする。
弾性率比R = 第1の方向における引張弾性率 / 周方向における引張弾性率 ・・・式(1)
すなわち、内層の弾性率比R1が1よりも大きいとは、内層BL1の第1の方向における引張弾性率が、内層BL1の周方向における引張弾性率の1倍より大きいと換言できる。
【0017】
このように本実施形態のチューブは、それぞれ特性の異なる内層と外層とを含み、該内層は、第1の方向における引張弾性率が、周方向における引張弾性率より大きいとの特徴的な構成を有する。これにより蠕動ポンプのような極めて過酷な使用環境下であっても大幅に改善された耐久性を備えたチューブが提供される。
【0018】
図2及び
図3を用いて、本実施形態のチューブ20を用いた蠕動ポンプ及びその動作について説明する。
図2は本実施形態のチューブ20を適用した蠕動ポンプの機構部の概略を示す。蠕動ポンプはケースCBを備え、チューブ20はケースCBの内面に沿って配置される。蠕動ポンプは、さらに回転軸RAの駆動により回転する回転部を備える。回転部は回転軸RAに固定され破線で示された支持部AMと支持部AMの端部に形成された1つまたは複数のヘッドHDとを備える。回転部が図中実線で示された矢印の向きに回転することにより、ヘッドHDはケースCBの内面に沿って移動する。ヘッドHDはチューブ表面のダメージ低減の観点から、回転自在なローラとして構成されていることが好ましい。ヘッドHDとケースCBの内面との間の隙間の大きさは、チューブ20の本体部の肉厚の2倍より小さくなるように設定される。ヘッドHDとケースCBとが対向する位置において、チューブ20はヘッドHDとケースCBに挟まれ圧し潰される。この結果、チューブ20の同位置には、流路CHの面積が実質的にゼロとなった閉塞領域が形成される。
【0019】
回転部の回転動作によりヘッドHDが移動し、これに伴い閉塞領域も移動することにより、チューブ内の流体が輸送される。本図に示した例においては、回転部は紙面上における反時計回りに回転し、これによりチューブの流路内にある流体は白抜き矢印で表した向きに輸送される。図示は省略するが、チューブの一方の端部は輸送対象流体の供給源(例えば貯液槽又はそれに接続された配管)に接続され、他方の端部は輸送対象流体の供給先(例えば処理槽又はそれに接続された配管)に接続される。
【0020】
図3(a)及び
図3(b)に蠕動ポンプ内のある位置におけるチューブ20の、第1の方向に垂直な面上における断面形状の変化を示す。
図3(a)に示すように、その位置にヘッドHDが到達する前、すなわちヘッドHDによる圧力がチューブ20に印加されない時点では、チューブ20は略円形の断面形状となっている。チューブ20は内層BL1と外層BL2とを含み、内層BL1の内側には、流路CHとなる大きな内部空間を備えている。その後、その位置にヘッドHDが到達すると
図3(b)に示されるようにチューブ20はケースCB及びヘッドHDに挟まれ、潰されることにより閉塞領域が形成される。さらにヘッドHDが移動し、この位置から去るとチューブ20は自身のもつ形状復元力により再び
図3(a)に示される形状に復帰する。稼働中の蠕動ポンプのケースCB内のチューブ20では、このような径方向における大きな変形が繰り返し発生している。このため、チューブ20には、これ程大きな変形下でも不可逆の変形が生じない柔軟さ(形状復元性)、外力が取り除かれたとき速やかに自身の元の形状に復帰させる形状復元力、及び潰れ形状と元形状との間を往復する動作が長時間にわたり繰り返されても破壊されない耐久性が求められる。
【0021】
ところで、これらの特性はトレードオフの関係にあるものを含み、例えば、柔軟な材料は耐久性を確保しやすいが形状復元力が得られにくいなど、単なる材料選択等ではチューブとして総合的に優れた性能を実現するのが難しいのが実情であった。本願発明者らは、所望の性能を実現した多層チューブの耐久性の向上に取り組むにあたり、ポンプ動作によりチューブに印加される外部応力、及びその結果としてチューブに生じる変形の検討を行った。その結果、チューブに生じる巨視的な繰り返し変形を、大きく以下の3種に分類した。
1つ目はチューブの径方向の曲げからなる変形であり、
図3(a)と
図3(b)の形状を往復するものとして認識されるものである。2つ目はヘッドHDの移動に伴って生じるチューブの長手方向(すなわち第1の方向)における、チューブの伸縮である。3つ目はチューブ内の流体の圧力による流路体積の膨張と、該圧力が抜けたあとの流路体積の収縮であり、チューブ長手方向の伸縮に加え、チューブを構成する各層の周方向における伸縮を含むものである。
上記に基づき、蠕動ポンプに適用されるチューブにおいては、以下が好ましいと考えた。まず、変形量が最大と考えられ、かつ流体輸送動作上不可欠なチューブ径方向の変形については一定以上の広さの弾性域を確保する必要がある。一方で、流体輸送の動作上必要とされないチューブの長手方向と周方向の伸縮については変形量を一定以下に抑制可能な弾性率を確保することが好ましい。
【0022】
これらの巨視的な変形の検討に加え、本願発明者らは微視的な変形の検討も行った。特に、局所的に大きな内部応力が生じていると考えられる閉塞面の端部に着目し、動作時の微視的な挙動の把握に努めた。ここで閉塞面の端部とはヘッドHDとケースCBとの間でチューブが圧し潰され閉塞されたときに対向する内周面同士が接触することで形成された接触面の端部を指す。断面視において閉塞面の端部は、例えば、
図3(b)に符号RGEで示された位置に相当する。微視的な変形検討は、ポンプ内でのチューブ変形を顕微鏡の観察ステージ上で再現するクランプジグの準備と、該ジグにより再現されたチューブ変形の顕微鏡観察等を含む。この検討の結果、チューブの耐久性や信頼性に影響し得る2つの現象が見出された。
【0023】
図4(a)及び
図4(b)は、ポンプの動作中にチューブに発生する微視的な変形を説明する図である。これらの図は、第1の方向に垂直な断面における閉塞面の端部近傍を拡大して示している。
本願発明者らは、
図4(a)に示されるように、蠕動ポンプにおいてチューブが押しつぶされるとき、閉塞面の端部において、内層の内周面に波うち形状WSが生じることを見出した。
図4(a)は図を見やすくするために完全閉塞の直前の状態を示したものだが、完全閉塞状態にある時もこの波うち形状は発生している。波うち形状のそれぞれの波の頂点付近では非常に小さな曲率を有する微小な湾曲が複数発生していることから、ここに局所的に大きなストレスが生じていることが推測される。寿命試験において破壊初期にあるチューブの故障解析からも閉塞面の端部付近において、内周面から外周面に向けて成長するクラックの発生を確認しており、このクラックの起点の形成に、この波うち形状が強く関係している可能性が推測された。
【0024】
波うち形状の詳細を調べる上で、内層及び外層が、それぞれ複数の基材が積層された多層構造体として構成されたチューブの観察は有益であった。
図4(a)において、チューブは内層BLaと外層BLbとを含む。各層内において周方向に延在する複数の実線は積層された個々の基材を示している。この基材の形状の微視的観察により、波うち形状WSは最内周の表面(流体と接する面)だけの現象でなく、外周に向かうに従い徐々に振幅を小さくしながら、チューブ本体部の厚さ方向に及ぶことが確認された。また、波うち形状は原則内層BLa中で収束し、外層BLbにまで明確な波うち形状が及ぶものは見出されなかった。
【0025】
本願発明者らは波うち形状は以下のようにして発生していると考えた。チューブがヘッドHDとケースCBに挟まれて圧し潰されるとき、外層BLbに囲まれた状態にある内層BLaでは周方向の長さが余ってしまう形となるため、周方向長さを小さくする変形、すなわち周方向の収縮によって、前述の余り長さが吸収される。チューブの圧し潰しが進むと、余り長さがさらに大きくなり、やがて周方向の収縮のみでは吸収しきれなくなる。この結果、内層BLa、中でも余り長さが最大となる内周面に近い層ほど顕著な波うち形状を形成することにより、余り長さを吸収する形となる。
【0026】
波うち形状の発生を抑制する上で、及び/又は波うち形状による内部応力や材料疲労を軽減する上で、内層を弾性率が小さく弾性域が広い材料又は構成とすることは有益であると考えられる。しかし、単にこのような材料に置き換えただけでは、上述の巨視的な変形が大きくなってしまう。チューブの弾性率が低下すると、例えばヘッドHDの動作によるチューブ長手方向におけるチューブの伸縮量が増大する。あるいは、輸送対象流体の圧力変動によるチューブの変形量が大きくなってしまう。波うち形状が軽減されたとしても、他の機序による変形量の増大がチューブ耐久性を悪化させる虞がある。
【0027】
これに対して、本実施形態のチューブ20は、内層と外層を含み、該内層は、第1の方向における引張弾性率が、周方向における引張弾性率より大きいとの特徴的な構成を有する。つまり波うち形状が顕著に発生する内層が引張弾性率の異方性を備えており、かつ、その異方性は、チューブの長手方向の伸縮抑制効果がある第1の方向の引張弾性率を確保しつつ、波うち形状の発生等の抑制効果が期待される周方向の引張弾性率を相対的に小さくしたものである。このような構成により、チューブの他の機械的特性への影響を抑制しつつ、効果的にチューブ内層の波うち形状を抑制できると考えられる。この結果、蠕動ポンプのような極めて過酷な使用環境下であっても大幅に改善された耐久性を備えたチューブが提供される。
【0028】
内層の弾性率比R1は1より大きければ良く、1.2より大であることがさらに好ましい。このようにすることで、製造時のバラツキ、使用環境の違い、あるいは使用中の経時変化などで、内層の引張弾性率の異方性に大きな変動が生じるような場合であっても、安定して上述の効果を得る事ができる。
内層の弾性率比R1は2より大であることが特に好ましい。チューブとして所望の性能を得るため、内層又は外層の材料や構成は耐久性上最も有利なものを選択できないことも多い。このような場合であっても、内層の弾性率比R1を2以上とすることで、十分に向上された耐久性を備えたチューブを得ることができる。
【0029】
本実施形態のチューブ20の外層の弾性率比R2、すなわち、外層の第1の方向における引張弾性率を外層の周方向における引張弾性率で除した値は、内層の弾性率比R1より小さくすることができる。波うち形状の対策だけであれば、外層の弾性率比R2も内層の弾性率比R1同様に大きくすることで効果が期待されるが、もともと外層までは波うち形状が及びにくいため内層の弾性率比R1ほど波うち形状に対する直接的な効果を得られない。その一方で、チューブ全体の周方向の引張弾性率が過度に低下すると内部流体の圧力変動によるチューブの周方向の伸縮が拡大する虞が生じる。これに対して、外層の弾性率比R2が内層の弾性率比R1より小さい構成とすることにより、このようなリスクの増大が抑制されたチューブを得る事ができる。
【0030】
ところで、外層BLbの周方向の引張弾性率が過度に小さいチューブでは、別の問題の発生も懸念される。
図4(b)に示されるように、微視的観察において、外層BLbの周方向の引張弾性率を一定以上小さくしたチューブはそうでないチューブに比べ、同じギャップでも閉塞面端部において隙間が発生しやすいとの傾向が確認された。ここでギャップとは、ヘッドHDとケースCBとの間の距離である。このように隙間が残り、閉塞が不完全な状態では流体輸送を適切に行うことが難しくなり、必要な輸送量を確保できなくなってしまう。ヘッドHDとケースCBとの間のギャップの大きさを小さくしてチューブに印加される圧力を大きくすることにより、再び閉塞状態を作ることは可能だが、この方法では使用時のチューブの変形量が大きくなり、また、隙間が生じる端部以外の領域を含めて元の状態より大きな圧力が印加されてしまうなど、耐久性を悪化させる虞がある。
この現象は、チューブが
図4(b)のように潰された状態にあるとき、チューブの外周側にある外層BL2が大きく伸張され、その領域の層厚さが小さくなってしまうことが原因と推定される。その結果、ヘッドHDやケースCBから印加された圧力が内側の層BL1にまで伝わりにくくなり、不十分な閉塞が生じやすくなってしまう。
【0031】
これに対して、外層の弾性率比R2は1より小さくすることができる。すなわち、外層BL2の周方向における引張弾性率は、外層BL2の第1の方向における引張弾性率の1倍より大きくても良い。もともと外層BL2の波うち形状の発生リスクは内層BL1より小さい。従って、外層に関しては内層とは逆に積極的に周方向の伸びを抑制することで、圧し潰した際の閉塞性を高めることが可能となる。この結果、性能と耐久性が両立されたチューブを実現できる。
【0032】
特に、内層の弾性率比R1が1より大きな場合に、外層の弾性率比R2を1より小さくすることが好ましい。内層の弾性率比R1が1より大きな構成においては、流体の圧力変動が大きな場合などに内層単独の機械的特性では周方向の伸縮を十分に抑制できなくなる虞がある。このような場合であっても弾性率比R2が1より小さな外層を備える場合には、外層がチューブ全体の周方向の伸縮を抑制することができる。
同様の理由から、内層の弾性率比R1が1.2より大きな場合に、外層の弾性率比R2を1より小さくすることがさらに好ましく、内層の弾性率比R1が2より大きな場合に、外層の弾性率比R2を1より小さくすることが特に好ましい。
また、上記それぞれの場合において、外層の弾性率比R2が0.9より小さいことがさらに好ましく、0.8より小さくすることが特に好ましい。このようにすることで、弾性率比R2が製造時のバラツキや使用環境下での変動などを含む場合であっても、安定した効果を得る事ができる。
【0033】
内層BL1及び/又は外層BL2に、第1の方向と周方向における引張弾性の異方性を備えさせる方法としては、層を構成する材料の配向を制御すること等が例示される。例えばシート状の部材の押出時の引き出し比を大きくし、さらに押し出されたシート状の部材を押出時と同じ方向に1回または複数回延伸することにより、異方性が強化された薄いシート状の部材を得ることができる。このようにして得られたシート状の部材をチューブの第1の方向に対して所定の方向となるように巻回しつつ積層することで、チューブの任意の層に所定の異方性を発現させることができる。
あるいは、内層BL1及び/又は外層BL2を、弾性率が異なる2種以上の材料の複合体として構成し、かつ、各材料の形状や配置を制御することにより異方性を発現させても良い。例えば層中に母相となる樹脂相より高弾性率の強化繊維を分散させても良い。このような強化繊維に所望の配向を持たせることで強く、安定した異方性を有する層を構成できる。詳細は後述するが、内層及び/又は外層が、それぞれの層と同じ方向に延在するシート状の基材を含み、この基材が異方性を有する形が特に好ましい。このようにして得られた層の異方性はさらに強く、安定している上に、均一性に優れたものとなる。
【0034】
図5を用いて、第1の実施形態のチューブ20の、より詳細な構造の例を説明する。第1領域RG1は内層BL1内の一部の領域である。ここでは
図1(a)において内層BL1内の矩形の破線で示した領域を図示する。本実施形態において第1領域RG1は第1基材層PMB1を含む。第1基材層PMB1は第1樹脂層IMR1を介して互いに固定される。第1基材層PMB1及び第1樹脂層IMR1はチューブ20の周方向に延在している。本実施形態において、第1領域RG1は、複数の第1基材層と複数の第1樹脂層とを含み、これらの基材層と樹脂層とが交互に積層された積層体として構成される。第1基材層は第1樹脂層を構成する第1樹脂より弾性率が大きな材料からなる基材により構成されることが好ましい。ポンプに適用されたチューブ本体には、輸送対象流体により流路から外周の向きに大きな圧力が印加されることがある。この圧力によりチューブ径が膨張すると輸送量の定量性の悪化や寿命の低下が発生する虞がある。内層が内部に周方向に延在する基材を有することによって大きな内圧の存在下でもチューブ径の膨張を抑制することができる。
【0035】
第2領域RG2は、外層BL2内の一部の領域である。ここでは
図1(a)において外層BL2内の矩形の破線で示された領域を図示する。本実施形態において第2領域RG2は第2基材層PMB2を含む。第2基材層PMB2は第2樹脂層IMR2を介して互いに固定される。第2基材層PMB2及び第2樹脂層IMR2はチューブ20の周方向に延在している。本実施形態において、第2領域RG2は、複数の第2基材層と複数の第2樹脂層とを含み、基材層と樹脂層とが交互に積層された積層体として構成される。第1領域RG1と同様な理由から、第2基材層は第2樹脂層を構成する第2樹脂より弾性率が大きな材料からなる基材により構成されることが好ましい。
【0036】
本実施形態において、第1基材層を構成する基材として、多数の微孔を備えた多孔質基材を適用できる。そしてこれらの微孔には、第1樹脂が侵入していることが好ましい。同様に第2基材層を構成する基材として、多数の微孔を備えた多孔質基材を適用できる。そしてこれらの微孔には、第2樹脂が侵入していることが好ましい。このような構成においては、多孔質基材と樹脂との接合界面の面積を大きくできるだけでなく、それらが複雑に絡み合った構造とできるため大きな層間接着強度を得ることができる。さらに、多孔質基材断面もしくは表面における平面視において、微孔の密度を5×104個/mm2以上とすることにより、変形により大きな内部応力が発生した状態においても、特定領域への応力集中を抑制することができる。
【0037】
図6は、第1の方向に垂直な断面における、内層BL1内の第1基材層PMB1を構成する基材の形成状態の例を模式的に示した図である。本図において、第1樹脂IMR1及び外層BL2の図示は省略されている。
このチューブの第1基材層PMB1を構成する基材は、図示されるように断面視において渦巻状の形状を有する。このような構成は1枚の基材を複数回巻回することにより容易に得る事ができる。基材は、その両端に、起点RSと終点REとを備える。基材を流路CH側から巻回する場合であれば、基材の巻回工程の巻き始めに対応するのが起点RSであり、巻き終わりに対応するものが終点REとなる。断面視において、基材は起点RSから終点REにかけて半径を徐々に拡大しながら中心CGの周りを周回する形となり、起点RSから終点REまで切れ目なく一体のものとして形成される。
【0038】
このような構成においては、重複領域OLRが発生する。重複領域とは、基材層数が他の領域より多い領域である。例えば
図6に示された内層は、5つの基材層数で構成された重複領域と4つの基材層数で構成されたその他の領域とを含む。
ここで、この断面視において、チューブの流路の中心CGと起点RSとを通る仮想直線を直線LN1、チューブの流路の中心CGと終点REとを通る仮想直線を直線LN2と定義する。さらに直線LN1と直線LN2とがなす角のうち、重複領域OLRと対向する位置にある角θの大きさを、挟角θ(度)と定義する。巻回数等を考慮するものではないため、この挟角θは0度以上、360度未満の範囲で規定される。この挟角θは、重複領域と流路の中心CGにより構成される扇形の中心角の大きさと定義しても良い。第1基材層の挟角θは270度以下であることが好ましく、60度以下であることがさらに好ましく、30度以下であることが特に好ましい。
【0039】
上記構成は、内層の第1基材層に基づいて説明したが、外層においても、同様の構成を適用できる。すなわち、チューブの第2基材層PMB2を構成する基材が、
図6に示された第1基材層同様に、断面視において渦巻状の形状を有し、その両端に、第2基材層の起点RSと終点REとを備える。基材は、これらの起点RSから終点REまで切れ目なく一体のものとして形成されており、外層は、基材数が他の領域より多い第2基材層の重複領域OLRを備える。第1基材層の重複領域と、第2基材層の重複領域とは、周方向において重ならない位置に配置されるとよい。これらいずれか1以上の構成により、チューブ本体部の肉厚や機械特性の均一性を向上できる。
【0040】
第1の実施形態として、層数が2のものを説明してきたが、これに限定されない。例えばさらに第3の層として、内層の内側の流体に接する位置に化学的に安定な接液層が形成されていてもよく、内層と外層との間に接着層が形成されていてもよく、あるいは外層のさらに外側表面に表面保護層が形成されていてもよい。これらの接液層、接着層、及び/又は表面保護層(以下これらを第3の層と記載し、また、第3の層の図示は省略する)は、多孔質基材層と樹脂層とからなる複合材として構成されていてもよいが、各補助層の形成目的に応じた特性さえ有していれば、多孔質基材層を含まないものであってもよい。例えば、第3の層自体の形状復元性、形状復元力、又は伸縮等の変形抑制特性は内層BL1や外層BL2に比べて乏しいものであってもよい。このような場合であっても、第3の層の厚さ(すなわち径方向の大きさ)を内層や外層に比べて小さくすることでチューブ全体としては所望の機械的特性を維持することができる。一例を挙げると内層BL1の内周面側に内層BL1の第1樹脂層IMR1と同等以上の化学的安定性を有し、内層BL1より薄く、かつ内部に多孔質基材を含まない接液層をさらに備えていてもよい。
【0041】
外層BL2の径方向の曲げ弾性率は、内層BL1の径方向の曲げ弾性率よりも小さくしても良い。このような構成とすることで、例えば内層BL1に化学的特性の要求等から弾性率が高い材料を適用した場合であってもチューブ全体としての形状復元性や耐久性を向上することができる。
第2基材層と第2樹脂層からなる領域の径方向の大きさは、第1基材層と第1樹脂層からなる領域の径方向の大きさより大きくしても良い。柔軟性に富む弾性率が小さな層は厚く形成した場合であっても、変形時の内部応力の上昇を相対的に抑制することができる。
第2基材層と第2樹脂層からなる領域の平均基材間距離は、第1基材層と第1樹脂層からなる領域の平均基材間距離よりも大きくしても良い。ここで基材間距離は、積層時で上下に隣接する基材間における、各基材の厚さ中心間の径方向における距離である。平均基材間距離は、4層以上の基材層を含む積層体における各基材間距離の平均値である。
【0042】
(基材)
第1基材層及び/又は第2基材層を構成する基材は、例えば樹脂からなり、高い可撓性を有する。表面及び/又は表面から内部にかけて、複数の微孔が形成されたものであることが好ましい。この微孔に基材層間に形成される樹脂層を構成する樹脂が侵入することにより、蠕動ポンプに適用されるチューブが晒されるような、厳しい変形時の大きな内部応力に耐える接着強度を確保できる。平面視における微孔の平均径は1mm以下であることが好ましく、1μm(マイクロメートル)以下であることがさらに好ましい。微孔は少なくとも基材表面に形成されていれば良いが、深さ方向に連通する構成を有することが好ましい。
このような基材の例としては、高分子材料の繊維からなる織布、不織布が挙げられる。シート状に形成した基材を発泡、延伸させることで多孔質構造としたものであっても良い。発泡や延伸による微孔の形成は極小径や高い空孔率を容易に得られる点で好ましい。
構成する樹脂は、特定のものに限定されないが、好ましくは、フッ素樹脂、具体例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフロオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(EPE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合樹脂(THV)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、エチレン-三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVdF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)が選択される。
また、機械的特性や耐薬品性の面から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)に代表されるポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に代表されるポリアリレート樹脂、高分子量ポリエチレンやポリアラミド、更にはポリイミド樹脂も好ましい態様である。
【0043】
内層BL1または外層BL2がこのような基材を内包するとき、これらの層の引張弾性率の異方性は、内包される基材の異方性をもって容易に制御することができる。例えば、基材が織布の場合は、縦糸と横糸との間で密度、本数、弾性率、強度の何れか1以上に差を設ける、あるいは伸縮性に異方性を備えた公知の織り方を適用すること等により、異方性を備えた基材層を得ることができる。これに低弾性の樹脂を含浸することで得られた樹脂層形成基材にも基材の有する異方性が反映される。このような樹脂層形成基材を用いてチューブを形成することで、第1の方向と周方向と間に引張弾性の異方性を備えたチューブを得ることができる。
基材が不織布の場合やシート状に形成した基材を発泡、延伸させることで多孔質構造にしたものである場合であっても、基材に配向を備えさせることにより基材に異方性を発現させることができる。織布同様に、このような異方性を備えた基材を用いることにより、この異方性が反映された樹脂層形成基材を得る事ができる。そしてこの樹脂層形成基材を用いてチューブを形成することで、第1の方向と周方向との間に引張弾性率の異方性を備えたチューブを得ることができる。
【0044】
本願明細書は、以下の発明も含む。すなわち、
蠕動により流体を輸送するポンプに用いられるチューブであって、前記チューブは、前記流体の輸送経路となり第1の方向に延在する流路と前記流路の周囲に形成された本体部とを備え、前記本体部は、前記流路上に形成された第1の層と前記第1の層と異なる特性を有し前記第1の層上に形成された第2の層とを含み、前記第1の層は、複数の糸状の繊維状物を含み、前記第1の層の複数の糸状の繊維状物は、前記周方向に沿った方向と比較して、前記第1の方向に沿った方向に優先的に配向している。
繊維状物がこのように配向したチューブにおいては、このような構成により、チューブの他の機械的特性への影響を抑制しつつ、効果的にチューブ内層の波うち形状を抑制できると考えられる。この結果、蠕動ポンプのような極めて過酷な使用環境下であっても大幅に改善された耐久性を備えたチューブが提供される。
【0045】
本実施形態において、基材は糸状の化合物からなる繊維状物を含む。繊維状物はそれ自体が可撓性を有することが好ましく、また、繊維状物間にある樹脂層にくらべ高弾性率の材料で構成されているとよい。繊維状物としては例えば織布や不織布を構成する繊維があげられる。あるいは、繊維状物はシート状に形成した基材を発泡、延伸させることで多孔質構造としたものの孔と孔との間に延在する高分子樹脂からなる繊維でもよい。あるいは、樹脂中に分散した高分子材料からなる樹脂糸等であっても良い。このような樹脂糸としては、5以上のアスペクト比を有するものが好ましく、10以上のアスペクト比を有するものがさらに好ましい。
各繊維状物は離間して配置されていても良いが、過半数の繊維が少なくとも一部領域で互いに絡まりあった状態で配置されていることが好ましく、過半数の繊維が少なくとも一部領域で互いに接続された状態で配置されていることがさらに好ましい。
【0046】
優先的な配向は、基材を構成する繊維の観察により知ることができる。一例を挙げると、チューブを構成する各層から観察試料を切り出し、基材の延在面に垂直な方向からレーザ顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)等を用いて観察を行うことで知ることができる。観察に先立ち、必要に応じて、基材へのアタックを最小にしつつ、基材上に形成された樹脂層を選択的にエッチング除去して観察表面に繊維状物を露出させてもよい。選択的エッチングが難しい場合は、ミクロトームや研磨などの物理的な方法で露出させてもよい。基材が樹脂層より高い耐熱性や耐酸化性を有する場合は、加熱処理または加熱処理と上記化学的/物理的手法の併用により樹脂層の選択除去性を高めることも可能である。一例を挙げるとシリコーン樹脂を含浸した延伸PTFEシートであれば濃硫酸により選択的にシリコーン樹脂を除去できる。
優先的な配向は、取得された顕微鏡像上に、XY二軸からなる仮想十字線を重ね合わせ、それぞれの軸と各繊維との交点の数を数えることで定量化して判定してもよい。
図7は基材観察による配向確認の一例を説明するものである。
図7(a)は基材が不織布のときの例であり、
図7(b)は基材がPTFEを延伸多孔質化したものであるときの例である。
図7(b)では簡略化のため繊維の1本1本を1つの実線として表している。これらの実線は例えばノード、フィブリルと呼ばれるものを含む。
図7(a)、
図7(b)において、繊維状物FBを含む顕微鏡像上に、無作為にX軸方向仮想線VCxとY軸方向仮想線VCyからなる仮想十字線が配置されている。X軸方向仮想線はY軸方向仮想線の垂直二等分線であり、この逆もなりたつ。軸方向仮想線とY軸方向仮想線は互いに直行する同じ長さの線分である。線分の長さは観察倍率と繊維の密度に応じて決めて良く、例えば10μm~1000μmとすることができる。
続けて繊維状物FBとX軸方向仮想線VCxとの交点、繊維状物FBとY軸方向仮想線VCyとの交点とをそれぞれ数える。例えば
図7(a)に示された例では、繊維状物FBとX軸方向仮想線との交点数は7であり、繊維状物FBとY軸方向仮想線との交点数は4となる。同様に
図7(b)に示された例では、繊維状物FBとX軸方向仮想線の交点数は7であり、繊維状物FBとY軸方向仮想線との交点数は5となる。
例えば、交点数比を繊維状物とX軸方向仮想線との交点数/繊維状物とY軸方向仮想線との交点数としたとき、交点数比が1.2以上のとき、X軸方向に比べY軸方向に優先的に配向していると判断できる。したがって、チューブ20の観察像上に、チューブの第1の方向と平行となるようにY軸方向仮想線を配置し、チューブの周方向と平行となるようにX軸方向仮想線を配置したとき、上記で表された交点数比が1.2以上のとき、繊維状物が、周方向に沿った方向と比較して、第1の方向に沿った方向に優先的に配向していると見なすことができる。
この交点数比は1.4以上であることが好ましく、1.6以上であることが特に好ましい。観察位置によるばらつきが大きな場合は、合計6視野以上、かつ両方向合計の交点数が120以上となるまで観察を行い、各視野において算出した交点数比の平均値をもって優先的な配向を判断してもよい。
【0047】
(樹脂)
基材層間に形成される第1樹脂層及び又は第2樹脂層を構成する樹脂材料は、機械的特性や化学的安定性の観点から熱硬化性樹脂が好ましい。本発明で言う熱硬化性樹脂は、ゴム弾性を示す天然または合成の樹脂であり、ゴムまたはエラストマーとも称されるものである。この熱硬化樹脂は熱処理或いは電子線処理等により架橋反応が起こることでゴム弾性を示すようになる。或いは、結晶性の部分と非晶性の部分を併せ持ったブロック共重合体とすることでこのゴム弾性を示す熱可塑性エラストマーもあるが、本発明ではこれも使用することが出来る。
硬化後の実用に供される熱硬化性樹脂は網目状構造を有し、分子鎖の自由運動が規制され、物性が安定しているという特性を有する。したがって、第1の樹脂および/または第2の樹脂として熱硬化性樹脂は好適である。
一般に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とは以下のようにして判別可能である。例えば、熱可塑性樹脂で見られる溶融現象は、熱硬化性樹脂においては認められない。これは示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)で測定した際に溶融現象に伴う吸熱・発熱ピークが認められないことによって判定できる。あるいは、動的弾性率を測定した際に、熱可塑性樹脂では貯蔵弾性率が温度上昇に対してガラス転移現象や溶融現象に伴う不連続な変化を伴い、漸次減少するに対して、熱硬化性樹脂では貯蔵弾性率は温度上昇に対しても溶融現象に伴う不連続な変化はなく、あまり変化を示さないことで区別することが出来る。なお、本実施形態のチューブにおいては、第1の樹脂および/または第2の樹脂は各種の添加成分を含んでいたり、複合材料として構成されていてもよい。この場合であっても熱的に安定であればよく、例えば以下の要件を満たすものを熱硬化性樹脂とみなしてもよい。具体的には、熱硬化性樹脂は、10を底とする使用温度0℃の貯蔵弾性率(以下、SM0)の対数を、10を底とする使用温度を200℃の貯蔵弾性率(以下、SM200)の対数で除した値が2以下(すなわち、Log10(SM0)/ Log10(SM200)≦2)であることを要件としてもよい。なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(DMA)などを用いて測定することができ、歪み1%~5%、周波数10kHz~1MHzの範囲で温度を一定速度で変化させながら測定することで再現性の良い結果が得られる。
このような熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等のジエン系やブチルゴム(イソブチレン・イソプレンゴム(IIR)),エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)、パーフロロフッ素ゴム(FFKM)を挙げることが出来る。耐薬品性の面からは、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)、パーフロロフッ素ゴム(FFKM)が好ましく、また、チューブ製造の際の作業性の面からは室温付近で液状であることが好ましく、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、フッ素元素を含むシリコーンゴム(フッ素化シリコーンゴム、ポリフルオロエーテルゴム)、フッ素ゴム(FKM)が特に好ましい態様である。
また、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系を挙げることが出来る。これらの樹脂は高温下で溶融し液状化することから、その際に上述したシート状基材に含浸させることが出来る。
熱硬化性樹脂の架橋系としては特に制約を受けるものではないが、架橋反応によって分子量の比較的大きい分子が生成して樹脂中から放出される場合にはチューブに空孔が残存したり、体積収縮が大きくなったりすることから避けられるべきである。好ましい態様としてはラジカル発生剤を用いる二重結合への付加反応、ハイドロシリレーション反応(hydrosilylation)による二重結合への付加反応、イソシアネートと水酸基或いはアミノ基との付加反応等を挙げることが出来る。また、架橋反応を促進するための架橋助剤や触媒を加えることも出来る。
本明細書において、エラストマーは例えばガラス転移温度Tgが25℃以下のものと定義することができる。
【0048】
チューブの機械的な特性を向上させる役割として本発明では上述したシート状基材を用いるが、熱硬化性樹脂にフィラーを添加することで機械的特性を向上させることも出来る。具体的には、天然シリカ、合成シリカ、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、球状ガラスビーズ、天然或いは合成マイカ、タルク等の粒状物を挙げることが出来る。これらのフィラーは目的によって樹脂に対して0.1~30重量%程度を添加することが出来る。また、各種の着色剤、顔料、染料や各種安定剤を添加することも出来る。具体的には酸化安定剤やUV吸収剤、難燃剤、抗菌剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、スコーチ防止剤、ゴム軟化剤、気泡防止剤、帯電防止剤、滑剤、粘着付与剤等を例示できる。フィラーの添加量は、内層と外層とで異なっていても良い。外層より流路に近い位置にある内層へのフィラーの添加量は第2の層へのフィラーの添加量より小さくすることで、輸送される流体の汚染を抑制できる。
【0049】
次に、
図8を用いて実施形態にかかるチューブの製造方法の例を説明する。以下では、好ましい実施形態として、内層及び外層が共に多孔質基材を有するチューブの製造方法を主に説明する。
(シート状基材準備工程:S1)
まず、シート状の基材を準備する。この工程においては、基材を構成する樹脂が熱可塑性樹脂であれば、予め溶融押出し等で繊維状物を製造しておき、これを各種の織機を用いて織布とすることが出来る。繊維の製造時には機械的特性を向上させる目的で延伸を行うことも出来、後述の熱硬化性樹脂との界面の相互作用を向上させるために円形ではない、所謂、異形断面糸を用いることも出来、更には2種類以上の異なる材料を用いた複合糸を用いることも出来る。織布の製造は無杼織機及び有杼織機のいずれも使用することが出来、無杼織機としてはグリッパー織機、レピア織機、ウォータージェット織機、エアジェット織機等を例示できる。糸径1μm~1000μmの素線を、目開き1μm~5000μmで各種の織込み法で織布とすることで、シート状のものが得られる。
また、シート状基材が不織布状のものであれば、ランダムに分散させた繊維をシート化することによって得られる。具体的には乾式法、メルトブローン法、スパンボンド法のような乾式法のほかにエアドレイ法やエレクトロスピニング法を用いることが出来る。このうちのエレクトロスピニング法は、後述するPTFEにも適用されて微細な孔を形成できる方法として有用である。
【0050】
PTFE及び一部のフッ素樹脂は実質、熱可塑性樹脂としての特徴を示さず溶融押出しで成形品を得ることが困難である。この場合、PTFE粉末に潤滑用溶媒(本実施形態ではソルベントナフサ)を混合し、この混合物により予備成形品を作成し、この予備成形品にペースト押出しを施すことでシート状に形成するとともに、加熱したオーブンの中で潤滑用溶媒を乾燥除去した後に延伸処理を施すことで微細孔を有するシート状基材を作成することが出来る。尚、得られたシート状基材をPTFEの融点以上で加熱することで高温下でも寸法変化をしないシート状基材を得ることが出来る。
上記の延伸処理においては、前述したペースト押し出しによって押し出される方向と、この方向に垂直なシートの幅方向のいずれか、または両方向に延伸処理が施される。尚、延伸処理について1方向のみに実施してその方向に平行にスリットすることでリボンを得、これに例えば撚糸処理した後に織布とすることで機械特性に優れたPTFE織布を得ることが出来る。
【0051】
上記の延伸処理が施された延伸多孔質シートの多孔質構造を定義するものに空孔率と空孔サイズがある。本発明において空孔率は50%以上95%以下が好ましく採用される。さらに好ましくは60%以上90%以下が好ましい。もっとも好ましい範囲は65%以上85%以下である。この理由は、空孔部に対する粘性のある架橋前の熱硬化性樹脂成分の含浸性にあり、空孔率50%以下では含浸に時間が掛かり含浸ムラの要因となるからである。また、空孔率が95%以上になると、加工時の形状保持において変形が起こりやすく工業的な品質保持が困難になる。上述した空孔率は、密度から算出される。
空孔サイズは、細孔直径分布測定装置パームポロメータ(IB-FT GmbH社製 POLROLUX 1000)により測定した。測定液はGALPORE125を使用する。このパームポロメータによる測定は、測定液に浸した打ち抜きサンプル(φ25mm、測定面積はφ16mm2程度)に空気圧を加えていき、湿潤状態の空気流量と乾燥状態の空気流量を測定し、平均孔径を確認した。上記では、延伸多孔質シートの空孔サイズの測定について説明を行ったが、他のシート状基材、すなわち、網目状、不織布状、織布状に構成されたものの空孔サイズについても、上述した測定方法で測定可能である。
このようにして、微孔を有するシート状の多孔質基材が準備される。
【0052】
好適な基材の1つとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を材料とした薄膜状のシートが例示される。このようなシートは、延伸されたものを含めて市販のものを購入できる。このような市販のシートとしては、(例えばX社Y製品型名)などを入手可能である。
あるいは、特公昭56-045773や、特公昭58-18991、特公昭56-45773等の公知技術に基づいて以下手順で作成しても良い。
まず、ポリエチレン容器に、PTFEファインパウダー(ダイキン工業社製 ポリフロンPTFE F-106)100質量部に対して、助剤(エクソンモービル社製 アイソパーH)19質量部を入れて混合し、予備成型機に投入し予備成型体を作成する。次に、予備成型体を押し出し成型機に投入し、シリンダ押出機にて押し出し、テープ状に成形する。このテープを金属ロールを用いて目的の厚さまで圧延し、次にテープを加熱しアイソパーHを十分に乾燥する。次に、乾燥されたテープを280℃に加熱した状態で長手方向に所望の倍率で延伸し、その後得られた延伸PTFEを350℃で熱処理することにより、膜厚50μmの2軸延伸PTFEテープを得る。
例えばこの延伸時の倍率にX方向とY方向で、N(N≠1):1などの差を設けることでこの差に応じた引張弾性率の異方性を付与することができる。
【0053】
(含浸工程:S2)
次に、準備した基材の表面に樹脂層を形成する。この樹脂層は、チューブとしたときに例えば
図5の第一樹脂層IMR1または第二樹脂層IMR2のように、基材を保持可能な状態で基材間に形成されるものである。樹脂層は、好ましくは熱硬化性樹脂であり、多孔質の基材の場合には、表面に熱硬化性樹脂層を形成すると同時に、多孔質基材の有する微孔に熱硬化性樹脂を侵入させることもできる。この工程では、微孔の充填性が高く、厚さが均一な樹脂層形成基材を得る事が重要となる。この工程で得られる含浸された基材の製造方法としては、硬化前の熱硬化性樹脂を流動可能な状態で基材に流動塗布しそれを2本ロールのような一定の隙間を通すことで熱硬化性樹脂を十分に孔の中に押し込み、且つ、均一な厚みとすることが出来る。或いは、熱硬化性樹脂を予めシート状にしておき、これとシート状基材を合わせてプレスすることも可能である。また、熱硬化性樹脂が100Pa・s程度かそれ以下の粘度であれば、通常の塗工機を用いてシート状基材に塗工することも出来る。塗工方法としてはカーテンコート、スプレーコート、ロールコート、ディッブコート、ブレードコート、バーコート等を例示できる。シート状基材の孔の中まで完全に充満させることにおいてブレードコートやバーコートが好ましい態様である。
第1の層を構成するための樹脂層形成基材と、第2の層を構成するための樹脂層形成基材を準備するにあたり、単一の基材に対し、含浸工程の途中で異なる熱硬化性樹脂に切り替えてもよく、あるいは、1種または2種の基材に対し、異なる熱硬化性樹脂をそれぞれ含ませて準備してもよい。
【0054】
また、樹脂層形成基材は、熱硬化性樹脂の厚みが基材より厚く、一部が径方向に熱硬化性樹脂単体として存在していても良いが、基材のみが径方向に単体として存在する場合は、のちのロール工程で十分な接着性を確保することが出来ないので避けるべきである。本発明にかかるチューブのような積層体では、製造方法にもよるが、その作業性からも樹脂層形成基材の厚みは10μm~2mm、好ましくは25μm~1mm、更には50μm~0.5mmが好ましい。また、上述の熱硬化性樹脂が単体として存在する厚みは層厚みの50%以下であることが好ましく、40%以下がさらに好ましい。
このようにして、微孔内及び基材表面に形成された樹脂層を有するシート状の基材を得ることができる。
【0055】
(ロール工程:S3)。
次に、上記含浸工程がなされた樹脂層形成基材を、流路形状に対応する断面形状を有するマンドレル(心棒)に巻きつける。例えば、心棒を送り出しながらその進行方向に斜めに連続的に含浸シート状部材を巻き付けてもよく、これにより連続生産が可能になる。
あるいは、心棒の長手方向に対する移動を伴わずに巻きつけても良い。この巻き方において、基材の巻回方向は、心棒の延在方向に垂直な面内に規定される。この巻回方法では、作成可能な最大チューブ長が心棒の長さ及び基材の幅により制限されてしまうが、径や特性のばらつきが小さく制御された巻回構造を得る事ができる。チューブの本体部の第1の層と第2の層の形成は、基材及び/又は含浸樹脂が異なる2種の樹脂層形成基材を予め準備しておき、第1の層となる樹脂層形成基材を巻回及び積層し、その上に、第2の層となる樹脂層形成基材を巻回及び積層することで達成できる。
【0056】
樹脂層形成基材が、ある方向における引張弾性率が他の方向における引張弾性より大きいとの異方性を有するとき、該ある方向とマンドレルの軸方向が垂直になるように配置する形でマンドレルに巻き付けて特定の層(内層または外層)を形成した場合は、周方向の引張弾性率が、第1の方向の引張弾性率より大きな層を備えたチューブとすることができる。同じ樹脂層形成基材に対して、前記ある方向(樹脂層形成基材の引張弾性率が相対的に大きな方向))とマンドレルの軸方向が平行になるように配置する形でマンドレルに巻き付けて特定の層(内層または外層)を形成した場合は、周方向の引張弾性率が、第1の方向の引張弾性率より小さな層を備えたチューブとすることができる。
【0057】
(加熱工程:S4)
次に、ロール工程にてマンドレル上に積層された樹脂層形成基材を硬化させる。例えば、チューブの外形を規定する金型内に入れて加熱することで硬化することができる。この加熱は熱硬化性樹脂の架橋反応を進行させて完結させるために行われる。
【0058】
(マンドレル引抜き工程:S5)
その後、マンドレルをチューブから引き抜く。以上の工程により、チューブが完成する。
【0059】
(測定方法)
次に、発明にかかるチューブの測定方法について説明する。
まず初めに、測定に用いる試験片の作製として、以下に後述する日本産業規格などでは再現性が高い測定が難しいような、微小試料や弾性率が小さな試料の場合であっても、弾性率の差を明確にでき、再現性が確保される測定方法の一例を記載する。
図9は、この試験片の作製方法を説明するための図であり、チューブを模式的に表す斜視図である。
同図に示すように、チューブの長手方向をLDとし、周方向をCDとして説明する。
まず、チューブから切断、剥離、あるいは切削などの方法により、チューブの周方向に沿って一様の厚さ(径方向における大きさ)を備えたシート状試料を切り出す。
具体的には、まず所望の試験片のサイズに合わせ、チューブを短くカットする。この場合、チューブの長手方向に垂直な断面になるようにカットを行い、チューブ片を作成する。
次に、このカットされたチューブ片の一端から他端にかけて、長手方向LDと平行にスリットを入れ、シート状にする。この場合、チューブの口径が小さい場合には、所望のサイズの試験片を得るためにチューブの1箇所にスリットを入れることで1つのシートに広げてもよく、チューブの口径が大きい場合には、チューブの中心CGLを通過するように長手方向LDに平行にスリットを入れるとで、チューブを2等分にしてもよい。
次に、このシート状のものから第1の層(上述した実施形態の内層に対応)と第2の層(上述した実施形態の外層に対応)を剥離する。チューブの長手方向または周方向のそれぞれの引張試験を行うために、剥離した第1の層および第2の層のそれぞれの層から、チューブの長手方向LDまたは周方向CDに対応する試験片を切り出す。この切り出された試験片において、引張試験の引張方向に延びる方向を試験片の長辺とし、試験片の長辺の長さは10mm以上とすることが好ましい。一方で試験片の短辺は、長辺よりも長くならない範囲で5mm以上15mm以下が例示されるが、試験片に残る曲率が相対的に大きくなりすぎないことが重要である。必要に応じて元チューブの径に応じて適宜調整しても良い。例えば、試験片の短辺の展開長(短辺に沿った長さ)が、最大でも、元の周長(チューブ状態にあったときの周方向の長さ)の50%を超えない範囲とする。すなわち、試験片を第1の方向から見て扇形に見立てた場合の頂点角が180度を超えない。
【0060】
次に、引張弾性率の測定方法について説明する。
第1の方向(
図9においては長手方向LD)および周方向(
図9においては周方向CD)の引張弾性率の測定は、試験片の形状および大きさ以外は、ASTM D412(JIS K 6251, ISO 37)に準拠して行う。代表的な条件としては、初期チャック間距離10mm±0.5mm、引張速度500±50mm/min、試験温度23℃±2℃となる。また、測定においては、本発明にかかるチューブから切り出した試験片を用いて測定することができる。試験片の数は6以上とし、測定結果は各試験片から得られた測定結果の平均値とする。また、引張試験機のチャック部において、後述する試験片をチャック・引張試験を行った際、チャックされた試験片がチャック部の押圧によって破損する場合には、チャック部と試験片との間にラバーシートをかませることにより、上記の破損を回避した上で試験を行う。また試験片は、同一層内に基材が複数層にわたり積層された多層構造の場合、基材層が5層以上含まれるようにシート状試料を作成することが好ましい。試験片の厚さ(径方向における大きさ)は0.3mm~1mm、長辺の大きさが20mm以上、短辺の大きさが5mm以上とすると良い。ここで試験片の長辺がチューブの周方向となるように試験片を切り出す。
この試験片をチャック間距離が10mmとなるよう設定した引張試験機に、できるだけ試験片の撓みがないようにチャックしたのち、所定の歪の状態における荷重を取得する。ここで歪とは、初期チャック間距離をチャック移動距離で徐したものを指す。また、引張強度と歪で作成した曲線の接線から弾性率が得られる。引張弾性率の比較には、得られた弾性率のうちそれぞれの歪が40%~60%の領域における弾性率を適用することが好ましい。
【0061】
次に、曲げ弾性率の測定方法について説明する。
曲げ弾性率は、チューブから一部を切り出した試験片を用いて測定できる。切り出した試験片は、例えば日本産業規格、JIS K 7106 片持ち梁によるプラスチックの曲げこわさ試験方法に定められた方法で曲げ弾性率を取得することができる。
なお、チューブ径や材料の弾性率によっては、上記日本産業規格に定められた方法では再現性の高い測定が難しい場合がある。このような場合は、例えば以下に示す形で弾性率に対応する特性値を取得の上で、その値を直接、または必要な演算を行った上で、曲げ弾性率として用いることができる。
この場合は、比較対象と測定方法や演算方法を揃えることが重要である。例えば、第1の層と第2の層の曲げ弾性率の大きさの比較が目的の場合には、曲げ弾性率の値の相対関係が、測定方法の違いにより逆転が生じないように注意する。
また、試験片の形状もできるだけ揃えることが望ましい。
【0062】
測定に用いる圧縮試験機は、互いに向かい合う平行な面をそれぞれ有する固定ステージ及び移動ステージを備える。移動ステージは、固定ステージに対して相対的に移動可能であり、少なくとも一方のステージはロードセルを有し、ステージに印加される微小な応力の変化を計測することができる。
短辺の垂直二等分線に沿って軽く二つ折りにされた状態の試験片を圧縮試験機のステージ間に配置したのちに、可動ステージを固定ステージに近づく向きに約5mm/分の速度で移動させ、ステージ間の隙間が試験片の厚さの2倍となるように調整する。この状態は蠕動ポンプのローラにより完全に潰されたときのチューブ形状に近く、試験片は平坦になるまで二つ折りされた状態となる。この状態での長時間保持は、不可逆な形状変化を発生させる虞があるため、3秒以内に次のステージ間の隙間の拡大動作を開始することが好ましい。
隙間の拡大動作では、可動ステージを固定ステージから遠ざかる向きに約5mm/分の速度で移動させる。この拡大に伴い、試験片は元の形状に近づく向きに変形する。拡大後のステージ間の隙間は、1例として試験片厚さの4倍が示される。ただし、試験片の湾曲が大きな場合など、このギャップでは長辺同士の当接状態が維持されていることがある。このような場合は、比較対象を含めて長辺同士が確実に離間する距離を見極め、この距離を拡大後のギャップとして設定する。但し、この距離が大きすぎると測定値が小さくなり、試験片によっては正確な測定が難しくなるため、確実に離間できる距離のなかで、できるだけ小さな値を設定値として適用することが好ましい。
所定のギャップまで拡大させた後、1分経過後のロードセル指示値を取得する。1分待つのは、チューブの反発力緩和のためである。取得された指示値を、試験片の断面積、すなわち試験片の厚さと長辺長さの積、により除すことにより歪が得られ、これを用いて弾性率を得ることができる。計測は温度管理された環境、好ましくは23℃±2℃の環境で行うことが好ましい。
【0063】
試験は、同一層内の異なる位置から複数の試験片を切り出し、それらの平均値をもって比較しても良い。水準あたりのn数は6以上が好ましいが、必要に応じ、相対的な大小関係を明確にできる程度に、さらに増やしても良い。複数の試験片の平均値をもって弾性率を取得すること、また、比較することの有効性は、以下の測定に関しても同様である。
試験片が無荷重状態でも曲率を有する場合は、蠕動ポンプの動作を再現する方向、すなわち、二つ折り時の山となる側が曲率の外周側となるようにすることが好ましい。複数の取得値を用いて平均値の比較で判定する場合であれば、試験片の一部を、上記とは逆の向きに曲げて測定することも可能である。このようにすることで、試験片が生来的に有する曲率に起因する測定結果への影響を緩和することができる。
【0064】
試料の大きさや弾性率のレンジに起因して、上記の方法においても周方向の曲げ弾性率の所望の比較精度が得られないときは、さらに別の測定方法を利用した比較も提案される。例えば、比較対象となる双方の水準において、層中の基材の延在方向が共に周方向であれば、基材延在方向に垂直な方向、すなわち、径方向の圧縮弾性率の比較結果も適用できることがある。このように、基材間の樹脂層の弾性率が強く反映される条件下においては、圧縮弾性の相対的な関係は、曲げ弾性の相対的な関係と一致するためである。
同様に、比較対象となる双方の水準において、層中の基材が、各層中において周方向にも第1の方向にも延在している場合は、第1の方向の曲げ弾性率を利用した比較も提案される。第1の方向の曲げ弾性率は、試験片の周方向に平行な辺を互いに当接させる向きに折り曲げることで取得することが可能となる。ただし、試験片がチューブ形状と同様の湾曲形状を有する場合には、試験片の湾曲形状と直行する向きに曲げる形で弾性率を取得する形となるため、試験片の形状効果による弾性率変化が支配的とならないように注意する。元の湾曲形状が近いサンプルで比較する、周方向に平行な辺の長さを小さくすること等により、形状効果の影響は小さくすることが可能である。
【0065】
径方向の圧縮弾性率は、以下のようにして測定できる。試験片は、上記同様、チューブから一部を切り出して準備する。試験片のチューブからの切り出しは、チューブ自体の曲率とは無関係に短冊状、すなわち直方体形状の試験片を切り出してもよく、周方向に沿って、すなわち切り出し直後の試験片がチューブ形状に由来した湾曲を有する形に切り出しても良い。あるいは、切り込みを起点に一部の層をはく離することで試験片を準備することも可能である。
再現性が高い測定を実現する上では、測定装置の感度や測定対象の弾性率にもよるが、試験片の厚さ(径方向の大きさ)は1mm以上であることが好ましい。径方向から見た場合の試験片の形状や大きさは限定されないが、一辺の長さが厚さの倍以上確保された矩形が例示される。例えば試験片の1辺の長さを約10mmとすることができる。試験片がチューブ形状に由来した湾曲を有する場合は、測定ステージ上に載置したときに、一部が浮いてしまい、再現性が低下する虞もあるため、特に周方向の長さは必要以上に大きくしないことが好ましい。
測定にあたり、試験片の湾曲によるプローブ浮き(または試験片浮き)によって圧縮試験機のプローブが圧縮領域の一部に離間領域が生じてしまう時は、この面積が最小となるようにプローブを選択し、試験片載置の向きなどを調整する。また、離間領域が残る場合も、離間距離が試験片厚さの10%を超えない程度に調整することが好ましい。圧縮試験においても、所定の歪状態における荷重を取得し、この値を圧縮領域の面積で除すなど所定の演算を行うことにより弾性率を得る事ができる。
【0066】
(実施例)
以下のチューブを作製し、耐久性向上の検証を行った。
まず、異方性の有無が異なる2種類の基材を準備した。これらの基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を材料とし、延伸により多孔質化された薄膜状のシートである。異方性を有する基材は、延伸倍率の違いにより引張弾性率の異方性が付与されている。
【0067】
内層の第1樹脂層を構成する第1樹脂として、ペルフルオロポリエーテルエラストマー(信越化学工業株式会社、グレード:SIFEL3590-N)を準備し、外層の第2樹脂層を構成する第2樹脂として、熱硬化性シリコーンエラストマーよりも弾性率の低い熱硬化性シリコーンエラストマー(信越化学工業株式会社、グレード:KE-1886を準備した。
前述の異方性の有無が異なる2種類の基材に対して、これら2種類の樹脂を含浸することで、全4種類の樹脂層形成基材を作製した。これらの樹脂層形成基材をチューブ形成と同じ条件で熱硬化後、引張弾性率を測定したところ、異方性を備えない基材を適用した樹脂層形成基材は共に顕著な異方性は確認されず、方向による引張弾性率の大きさの比は1:約1であった。異方性が付与された基材を適用した樹脂形成基材では、基材と同じ方向の引張弾性理の異方性が確認された。方向による引張弾性率の大きさの比は1:約5であった。
【0068】
マンドレルに第1樹脂を適用した樹脂層形成基材を積層数(巻回数)が13となるまで巻きつけた。次いで、巻きつけられた第1樹脂適用樹脂層形成基材の上に、第2樹脂を適用した樹脂層形成基材を積層数(巻回数)が13となるまで巻きつけた。
次に、第2樹脂の樹脂層形成基材まで巻き付けたマンドレルを190℃~200℃に設定された温風循環型のオーブンに4時間入れることで、第1樹脂と第2樹脂とを同時に硬化させた。硬化後、マンドレルを引き抜くことで、第1樹脂を含む内層と第2樹脂を含む外層とを含むチューブを得た。このチューブは、チューブ内径が6.4mm、チューブの本体部の厚みが2.4mm、チューブ外径が11.2mmであった。
【0069】
前述の4種の樹脂層形成基材を以下のように組み合わせることで、以下4種のチューブを作製した。
(サンプル1)
内層:異方性有(第1の方向の引張弾性率>周方向の引張弾性率)
外層:異方性有(第1の方向の引張弾性率>周方向の引張弾性率)
(サンプル2)
内層:異方性有(第1の方向の引張弾性率>周方向の引張弾性率)
外層:異方性無し
(サンプル3)
内層:異方性無し
外層:異方性有(第1の方向の引張弾性率>周方向の引張弾性率)
(サンプル4)
内層:異方性無し
外層:異方性無し
【0070】
上記4種のサンプルを用いて、耐久試験を行った。これらのチューブを、160rpmの速度でポンピングするワトソン-マーロウ社520型蠕動ポンプ(使用ヘッドは520REM)に適用し、25℃の水を輸送した。流量が初期の90%以下に低下するまでに要したローラの回転回数を計測したところ、サンプル1は約250万回、サンプル2は約400万回、サンプル3は約100万回、サンプル4は約100万回であった。いずれのサンプルも高い耐久性を有することが確認されたが、中でも内層の弾性率比R1が1より大きなチューブ、すなわち内層が第1の方向の引張弾性率>周方向の引張弾性率との異方性を備えたサンプル1及びサンプル2においては、他のチューブの2倍以上の長寿命が確認され、極めて高い耐久性を備えていることを確認した。
また、外層の弾性率比R2が内層の弾性率比R1より小さなサンプル2のチューブが特に高い耐久性を備えていることを確認した。
【符号の説明】
【0071】
20 チューブ、 BD 本体部、 BL1 内層(第1の層)、 BL2 外層(第2の層)、 CH 流路、 CG 中心、 20a 内周面、 20b 外周面、 CB ケース、 HD ヘッド、 PMB1 第1基材層、 IMR1 第1樹脂層、 FB 繊維状物