IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -電池セル 図1
  • -電池セル 図2
  • -電池セル 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-04-14
(45)【発行日】2026-04-22
(54)【発明の名称】電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20260415BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20260415BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20260415BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20260415BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/38 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022026392
(22)【出願日】2022-02-24
(65)【公開番号】P2023122725
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2024-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】梅津 健太
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】野地 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮田 航成
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053204(JP,A)
【文献】特開昭56-054757(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106531961(CN,A)
【文献】特開2017-84609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/052、10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極層と、電解質層と、正極層と、を有する電池セルであって、
前記負極層における負極活物質層は、前記電解質層側の表面に、凹部及び平面部を有し、
前記凹部は、傾斜部を有する錐体状の凹部であり、
前記電解質層は、固体電解質を含む固体電解質層である、電池セル。
【請求項2】
前記負極活物質層には、リチウム金属が含まれる、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記凹部は、複数形成され、前記平面部は、複数の前記凹部の間にそれぞれ形成される、請求項1又は2に記載の電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高エネルギー密度を有する、リチウムイオン二次電池等の二次電池が幅広く普及している。近年、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの割合を拡大することによる地球環境の悪影響の軽減、及びCO削減の観点から、車載用等の様々な用途において二次電池の使用が検討されている。二次電池は、正極と負極との間に固体電解質(セパレータ)を存在させ、液体又は固体の電解質(電解液)が充填された構造を有する。
【0003】
二次電池の負極活物質には、リチウム金属等の金属が用いられる。しかし、負極活物質としてリチウム金属を用いる場合、デンドライトの析出による短絡発生が課題となる。特に、固体の電解質を有する固体電池においては、拘束荷重に偏りが生じた場合等において上記短絡発生が生じる恐れがある。
【0004】
デンドライト結晶の成長が抑制されるリチウム二次電池負極として、例えば、負極に結晶の成長点となる結晶核を多数形成することにより、多数の結晶を生成させ、大きなデンドライト結晶の生成を抑制する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-84512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は、基板表面に微細な凹凸を形成し、大きなデンドライト結晶の生成を抑制するものであるが、例えば固体電池に上記技術を適用する場合、電極に強い拘束荷重が加えられる結果、比較的小さなデンドライト結晶の生成であっても電池性能に影響する恐れがある。このため、電池セルの充放電に伴う好ましいサイクル特性が得られていないのが現状であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、デンドライトの析出を抑制し、サイクル特性を向上できる電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、負極層と、電解質層と、正極層と、を有する電池セルであって、前記負極層における負極活物質層は、前記電解質層側の表面に、凹部及び平面部を有し、前記凹部は、傾斜部を有する錐体状の凹部である、電池セルに関する。
【0009】
(1)の発明によれば、デンドライトの析出を抑制し、サイクル特性を向上できる電池セルを提供できる。
【0010】
(2) 前記負極活物質層には、リチウム金属が含まれる、(1)に記載の電池セル。
【0011】
(2)の発明によれば、負極活物質として、デンドライトが生成しやすいリチウム金属を用いた場合であっても、短絡の発生を抑制でき、好ましいサイクル特性を有する電池セルを提供できる。
【0012】
(3) 前記電解質層は、固体電解質を含む固体電解質層である、(1)又は(2)に記載の電池セル。
【0013】
(3)の発明によれば、電解質層として、固体電解質を含む固体電解質層を有する電池セルであっても、短絡の発生を抑制でき、好ましいサイクル特性を有する電池セルを提供できる。
【0014】
(4) 前記凹部は、複数形成され、前記平面部は、複数の前記凹部の間にそれぞれ形成される、(1)~(3)のいずれかに記載の電池セル。
【0015】
(4)の発明によれば、負極活物質に凹部が複数形成される場合であっても、電解質層側に凸部が形成されないため、デンドライトを凹部に優先的に生成させることができ、電池セルの短絡の発生をより好ましく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電池セルの構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る負極活物質層の一部を示す上面図である。
図3】実施例及び比較例の電池セルを用いたサイクル特性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<電池セル>
以下、本発明の実施形態に係る電池セル1について説明する。本実施形態に係る電池セル1は、図1に示すように、負極層20と、電解質層4と、正極層30と、がこの順に積層されてなる。電池セル1は、例えばリチウムイオンを電荷移動媒体として用いるリチウムイオン電池セルである。電池セル1は、液体の電解質層4を有する電池セルであってもよい。一方で、以下に示す本実施形態の構成は、デンドライトの析出の影響を好ましく低減できるため、本実施形態に係る電池セル1は、デンドライトの析出の影響を受けやすい、固体の電解質層4を有する電池セルであることが好ましい。
【0018】
(負極層)
負極層20は、例えば負極集電体21上に負極活物質層22が形成されてなる。
【0019】
負極集電体21は、特に限定されず、固体二次電池の負極集電体として公知の物質を適用することができる。負極集電体21としては、例えば、銅、ステンレス等が挙げられる。上記銅、ステンレス等は、例えば箔状に成型したものが用いられる。
【0020】
負極活物質層22は、負極活物質を必須として含む層である。負極活物質層22には、負極活物質以外に、バインダ、導電助剤、電解質等が含まれていてもよい。バインダ、導電助剤、電解質等は、特に限定されず、二次電池の電極材料として公知の物質を適用することができる。
【0021】
負極活物質は、特に限定されず、二次電池の負極活物質として公知の物質を適用することができる。一方で、以下に示す本実施形態の構成は、負極活物質としてリチウム金属を用いた場合に顕著である、デンドライトの析出の影響を好ましく低減できる。従って、負極活物質層22には、負極活物質としてリチウム金属が含まれることが好ましい。
【0022】
リチウム金属以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム(LiTi12)等のリチウム遷移金属酸化物、TiO、Nb及びWO等の遷移金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、グラファイト、ソフトカーボン及びハードカーボン等の炭素材料、並びに金属インジウム及びリチウム合金等が挙げられる。
【0023】
負極活物質層22は、図1及び図2に示すように、電解質層4側の表面に、複数の凹部22aと、平面部22bと、を有する。
【0024】
凹部22aは、図1及び図2に示すように、傾斜部Sを有する錐体状の凹部である。負極活物質層22に凹部22aが形成されることで、電流密度にバラつきが生じ、凹部22aの近傍では電流密度が高くなる。この結果、凹部22aでデンドライトが優先的に生成されることで、デンドライトが電解質層4を突き破り短絡が発生するリスクを低減できる。これによって、電池セル1のサイクル特性を向上できる。上記以外に、凹部22aにより、電池セル1の充電時の負極層20の膨張による圧力分布の不均一性を緩和できる。また、凹部22aにより、電解質層4と負極活物質層22との接触面積が増大することで、抵抗が低下し、電池セル1の出力が向上する。
【0025】
凹部22aが傾斜部Sを有する錐体状であることで、錐体の頂点を起点としてデンドライトが優先的に生成しやすくなる。図1及び図2において、凹部22aの形状を四角錘の凹部として図示しているが、凹部22aの形状は錐体状であればよく、四角錘以外の多角錐であってもよいし、円錐であってもよい。
【0026】
凹部22aの深さは、特に限定されず、負極活物質層22の厚みを上限とする深さである。
【0027】
図2は、負極活物質層22を単独で電解質層4側から視た図である。図2において、凹部22aは、方形状の開口部が列状に規則的に配置されているが、凹部22aの配置はこれに限定されない。凹部22aの開口部は互い違いに規則的に配置されていてもよく、ある程度の不規則性を有して配置されていてもよい。凹部22aは、負極活物質層22における電解質層4側の全面に形成されることが好ましい。
【0028】
平面部22bは、負極活物質層22の積層方向に対して略垂直な面である。平面部22bは、負極活物質層22の電解質層4側の表面において凹部22aが形成されない箇所である。負極活物質層22が凹部22aと共に平面部22bを有することで、電解質層4側に電流密度が高くなる凸部を形成せずに負極活物質層22を構成できる。このため、電解質層4に近い位置にデンドライトが形成されることを抑制できる。図2に示すように、平面部22bは、複数の凹部22aの間にそれぞれ配置されることが好ましい。換言すれば、複数の凹部22aの開口部同士は、密接していないことが好ましい。
【0029】
(正極層)
正極層30は、例えば正極集電体32上に正極活物質層31が形成されてなる。
【0030】
正極活物質層31は、正極活物質を必須として含む層である。正極活物質層31には、正極活物質以外に、バインダ、導電助剤、電解質等が含まれていてもよい。バインダ、導電助剤、電解質等は、特に限定されず、二次電池の電極材料として公知の物質を適用することができる。
【0031】
正極活物質は、特に限定されず、二次電池の正極活物質として公知の物質を適用することができる。正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO等の層状正極活物質粒子、LiMn、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiNiMn等のスピネル型正極活物質、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等のオリビン型正極活物質等を用いることができる。
【0032】
正極集電体32は、特に限定されず、二次電池の正極集電体として公知の物質を適用することができる。正極集電体32としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。上記アルミニウム、ステンレス等は、例えば箔状に成型したものが用いられる。上記以外に、導電性カーボンシート(例えば、グラファイトシートやCNTシート)等を用いてもよい。
【0033】
(電解質層)
電解質層4は、固体電解質を含む層であってもよく、電解質が非水溶媒に溶解された電解液を含む層であってもよい。電解質層4は、固体電解質を含む層であることが好ましい。
【0034】
電解質層4に含まれる固体電解質としては、二次電池に用いられる固体電解質として公知の物質を適用することができる。固体電解質としては、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、窒化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、等が挙げられる。
【0035】
電解質層4に含まれる、非水溶媒に溶解される電解質としては、二次電池に用いられる電解質として公知の物質を適用することができる。
【0036】
上記非水溶媒に溶解される電解質としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF)、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiF、LiCl、LiI、LiS、LiN、LiP、Li10GeP12(LGPS)、LiPS、LiPSCl、LiI、LiPO(x=2y+3z-5、LiPON)、LiLaZr12(LLZO)、Li3xLa2/3-xTiO(LLTO)、Li1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1、LATP)、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(LAGP)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12、Li1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12、Li4-2xZnGeO(LISICON)等を挙げることができる。上記は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
液体電解質を溶解する非水溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を挙げることができる。
【0038】
電解質層4が電解液を含む場合には、電池セル1は、セパレータを有していてもよい。セパレータは、正極層と負極層との間に位置する。その材料や厚み等は特に限定されるものではなく、ポリエチレンやポリプロピレンなど、二次電池セルに用いうる公知のセパレータを適用することができる。
【0039】
<電池セルの製造方法>
上記実施形態に係る電池セル1の製造方法は、電解質層側の表面に、凹部及び平面部を有する負極活物質層22を形成する方法以外は、公知の二次電池の製造方法を適用することができる。
【0040】
負極層20及び正極層30の形成方法は、湿式法、乾式法のいずれでもよい。例えば、湿式法で負極層20及び正極層30を形成する場合、電極活物質を含む電極合材スラリーを、ドクターブレード法等の公知の方法により集電体に塗工して乾燥する方法を適用できる。
【0041】
凹部及び平面部を有する負極活物質層22を形成する方法としては、例えば、上記製造された負極層20における負極集電体21上の負極活物質層22に対して、表面に凹凸が形成された一軸プレス装置やロールプレス装置等のプレス装置によってプレスを行う方法が挙げられる。
【0042】
電解質層4の形成方法は、電解質層4が固体電解質を有する固体電解質層である場合、固体電解質をプレスする等の工程を経て形成することができる。又は、溶媒に固体電解質等を分散して調整した固体電解質ペーストを基材あるいは電極の表面に塗布する過程を経て形成してもよい。
【0043】
上記形成された負極層20と、電解質層4と、正極層30と、をこの順に積層して積層体を形成することで、電池セル1が得られる。この際に、上記積層体をプレスする工程を経てもよい。プレスする手段としてはロールプレス等の公知の手段を用いることができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。本発明は上記実施形態の記載に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【実施例
【0045】
以下、実施例等に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0046】
[電池セルの作製]
<実施例>
負極集電体としての銅箔上に負極活物質としてのリチウム金属をクラッド材により接合した後、表面に凹凸を有する一軸プレス装置を用いてプレスを行うことにより、表面に図2に示すような四角錘体状の凹部及び平面部が規則的に配列された負極活物質層を作製した。その後、常法により作製した固体電解質層及び正極層と上記作製した負極活物質層とを積層させて一体化プレスを行うことにより、実施例に係る電池セルを作製した。
【0047】
<比較例>
負極活物質層の表面に錐体状の凹部を形成しなかったこと以外は、実施例と同様として、比較例に係る電池セルを作製した。
【0048】
上記作製した実施例及び比較例の電池セルを用いて、初期充放電効率(0.1c、25℃)、初期直流抵抗(DCR)(60℃)を測定したが、大きな差異はみられなかった。
【0049】
[サイクル特性試験]
上記作製した実施例及び比較例の電池セルを用いて、サイクル特性試験(0.3c、60℃)を行った。実施例及び比較例の電池セルに対する充放電をそれぞれ90サイクル繰り返し、サイクル数と放電容量(mAh)との関係を図3に示した。なお、比較例はN=2でサイクル特性試験を行った。図3に示すように、実施例の電池セルは比較例の電池セルと比較して、サイクル数を増大させた場合であっても放電容量が低下し難く、サイクル特性に優れる結果が明らかである。
【符号の説明】
【0050】
1 電池セル
20 負極層
22 負極活物質層
22a 凹部
22b 平面部
30 正極層
4 電解質層
S 傾斜部
図1
図2
図3