特許7920918IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

炭素膜に関するものである。

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

ここで近年、炭素膜の用途として、電磁波シールドが注目されている。しかしながら、従来の炭素膜の電磁波を遮断する性能、すなわち、電磁波シールド性能には、一層の向上の余地があった。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明者らは、目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者らは、カーボンナノチューブ集合体を用いて形成される炭素膜の微小性状について検討し、バブルポイント法に従って測定した空気透過性の値が0.00010以上である炭素膜が、電磁波を良好に遮蔽し得ることを新たに見出し、本発明を完成させた。

発明の効果[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明によれば、電磁波シールド性能に優れる炭素膜を提供することができる。

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】 一例にかかるCNT集合体のSEM画像を示す。
【図2】 一例にかかるCNT集合体について取得したFIR共鳴チャートを示す。
【図3】 一例にかかるCNT集合体の細孔分布曲線を示す。
【図4A】 一例にかかるCNT集合体のSEM画像である。
【図4B】 図4Aの画像の二次元空間周波数スペクトルである。
【図4C】 他の一例にかかるCNT集合体のSEM画像である。
【図4D】 図4Cの画像の二次元空間周波数スペクトルである。
【図5】 CNT製造装置の概略構成を示す。
【図6】 実施例4で使用したCNT製造装置の概略構成を示す。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明の炭素膜は、複数本のカーボンナノチューブの集合体(カーボンナノチューブ集合体)で構成される。なお、本発明の炭素膜は、例えば、CNT集合体及び炭素膜の製造過程において不可避に混入するCNT以外の成分を含んでいてもよいが、炭素膜中に占めるCNTの割合は、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、99.5質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であること(即ち、炭素膜がCNTのみからなること)が最も好ましい。 ここで、本発明の炭素膜は、カーボンナノチューブ集合体よりなる。本発明の炭素膜は、バブルポイント法に従って測定した空気透過性の値が0.00010以上であることを特徴とする。バブルポイント法に従って測定した空気透過性の値が0.00010以上である本発明の炭素膜は、電磁波シールド性能に優れる。そのため、本発明の炭素膜は、特に限定されないが、例えば電磁波遮蔽シートとして有利に使用することができる。 本発明の炭素膜は、バブルポイント法に従って測定した空気透過性の値が0.00010以上であるものである。かかる炭素膜においては、構成要素であるカーボンナノチューブ間に適度なサイズの間隙が一定程度以上存在しているため、かかる間隙にて、電磁波が乱反射されることにより炭素膜に侵入した電磁波のエネルギーが減衰し得ると推察される。従って、本発明の炭素膜によれば、優れた電磁波シールド性能を呈することができると考えられる。 さらに、本発明の炭素膜は自立膜であることが好ましい。炭素膜が自立膜であれば、かかる炭素膜はハンドリング性に優れ、例えば電磁波遮蔽シートとして用いるに際して、当該シートの配置の自由度が高い。 (バブルポイント法に従う空気透過性の値) バブルポイント法に従う炭素膜の空気透過性の測定は、本明細書の実施例に記載の方法に従って実施することができる。バブルポイント法に従う空気透過性の値は、0.00010以上である必要があり、0.00020以上であることが好ましく、0.00030以上であることが更に好ましく、0.00050以上であることが更により好ましい。炭素膜のバブルポイント法に従う空気透過性の値が下限値以上であれば、優れた電磁波シールドを発揮することができる。なお、バブルポイント法に従う空気透過性の値の上限は、例えば、10以下でありうる。 (炭素膜の製造方法) ここで、本発明の炭素膜は、カーボンナノチューブ集合体を膜化して炭素膜とするに際し、 CNT集合体として、後述する(1)~(3)の少なくとも何れかの条件を満たすCNT集合体を用いること、 CNT集合体の膜化に先んじて、当該CNT集合体に対して乾式粉砕処理を施すこと、 の少なくとも一方を満たすことで作製することができる。 <CNT集合体> ここで、炭素膜の調製に用いるCNT集合体としては、例えば、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)を用いて得られるCNT集合体などの既知のCNT集合体を用いることもできるが、(1)~(3)の条件のうち少なくとも1つを満たす新規のCNT集合体を用いることが好ましい。以下の(1)~(3)の条件のうち少なくとも1つを満たすCNT集合体よりなる炭素膜は、電磁波シールド性能に優れる。 (1)カーボンナノチューブ集合体を、バンドル長が10μm以上になるように分散させて得たカーボンナノチューブ分散体について、フーリエ変換赤外分光分析して得たスペクトルにおいて、カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づくピークが、波数300cm-1超2000cm-1以下の範囲に、少なくとも1つ存在する。 (2)カーボンナノチューブ集合体について、液体窒素の77Kでの吸着等温線から、Barrett-Joyner-Halenda法に基づいて得られる、細孔径とLog微分細孔容積との関係を示す細孔分布曲線における最大のピークが、細孔径100nm超400nm未満の範囲にある。 (3)カーボンナノチューブ集合体の電子顕微鏡画像の二次元空間周波数スペクトルのピークが、1μm-1以上100μm-1以下の範囲に少なくとも1つ存在する。 条件(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たすCNT集合体よりなる炭素膜が電磁波シールド性能に優れる理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。図1に、(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たすCNT集合体の一例の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図1に示すように、条件(1)~(3)のうちの少なくとも満たすCNT集合体を構成するCNTは、波状構造を有する。かかる「波状構造」に起因して、CNT集合体を構成する各CNT間において、電磁波が乱反射すると考えられる。かかる乱反射の過程で、電磁波のエネルギーが失われ、その結果が高い電磁波シールド性能に反映されると推察される。以下、本発明のCNT集合体が満たし得る条件(1)~(3)について、それぞれ詳述する。 <<条件(1)>> 条件(1)は、「カーボンナノチューブ集合体を、バンドル長が10μm以上になるように分散させて得たカーボンナノチューブ分散体について、フーリエ変換赤外分光分析して得たスペクトルにおいて、カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づくピークが、波数300cm-1超2000cm-1以下の範囲に、少なくとも1つ存在する。」ことを規定する。ここで、従来から、CNTの光学特性として、遠赤外領域における強い吸収特性が広く知られている。かかる遠赤外領域における強い吸収特性は、CNTの直径及び長さに起因ものであると考えられている。なお、遠赤外線領域における吸収特性、より具体的には、CNTのプラズモン共鳴に基づくピークと、CNTの長さとの関係については、非特許文献(T.Morimoto et.al., “Length-Dependent Plasmon Resonance in Single-Walled Carbon Nanotubes”, pp 9897-9904, Vol.8, No.10, ACS NANO, 2014)にて詳細に検討されている。本発明者らは、非特許文献に記載されたような検討内容、及び、独自の知見に基づいて、フーリエ変換赤外分光分析して得たスペクトルにおいて、CNTのプラズモン共鳴に基づくピークの検出される位置が、CNTにおける欠陥点の間の距離により何らかの影響を受け得ると推測し、検証を行った。そして、本発明者らは、CNTのプラズモン共鳴に基づくピークの検出される位置が、波状構造を有するCNTにおける屈曲点間の道のりに対応する指標としての役割を果たし得ることを見出し、の条件(1)を設定した。 条件(1)において、波数300cm-1超2000cm-1以下の範囲に、好ましくは波数500cm-1以上2000cm-1以下の範囲に、より好ましくは波数650cm-1以上2000cm-1以下の範囲に、CNTのプラズモン共鳴に基づくピークが存在していれば、かかるCNTは炭素膜を形成した場合に良好な電磁波シールド性能を呈し得る。 図2に、後述する実施例1~4、及び比較例1にて用いたCNT集合体をフーリエ変換赤外分光分析して得られたスペクトル(FIR共鳴チャート)を示す。図2より明らかなように、得られたスペクトルにおいて、CNT分散体のプラズモン共鳴に基づく比較的緩やかなピーク以外に、波数840cm-1付近、1300cm-1付近、及び1700cm-1付近に、鋭いピークが確認されることが分かる。これらの鋭いピークは、「カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づくピーク」には該当せず、それぞれが、官能基由来の赤外吸収に対応している。より具体的には、波数840cm-1付近の鋭いピークは、C-H面外変角振動に起因し;波数1300cm-1付近の鋭いピークは、エポキシ三員環伸縮振動に起因し;波数1700cm-1付近の鋭いピークは、C=O伸縮振動に起因する。なお、波数2000cm-1超の領域では、プラズモン共鳴とは別に、したT.Morimotoらによる非特許文献でも言及されているように、S1ピークに類するピークが検出されるため、本発明者らは、条件(1)におけるCNT分散体のプラズモン共鳴に基づくピークの有無の判定上限を2000-1cm以下とした。 ここで、条件(1)において、フーリエ変換赤外分光分析によるスペクトルを取得するにあたり、バンドル長が10μm以上になるように、CNT集合体を分散させることにより、CNT分散体を得る必要がある。ここで、例えば、CNT集合体、水、及び界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を適切な比率で配合して、超音波等により所定時間にわたり撹拌処理することで、水中に、バンドル長が10μm以上であるCNT分散体が分散されてなる分散液を得ることができる。 CNT分散体のバンドル長は、湿式画像解析型の粒度測定装置により解析することで、得ることができる。かかる測定装置は、CNT分散体を撮影して得られた画像から、各分散体の面積を算出して、算出した面積を有する円の直径(以下、ISO円径(ISO area diameter)とも称することがある)を得ることができる。そして、本明細書では、各分散体のバンドル長は、このようにして得られるISO円径の値であるものとして、定義した。 <<条件(2)>> 条件(2)は、「細孔分布曲線における最大のピークが、細孔径100nm超400nm未満の範囲にある。」ことを規定する。カーボンナノチューブ集合体の細孔分布は、液体窒素の77Kでの吸着等温線から、BJH法に基づいて求めることができる。そして、カーボンナノチューブ集合体について測定して得た細孔分布曲線におけるピークが100nm超の範囲にあるということは、カーボンナノチューブ集合体において、CNT間にある程度の大きさの空隙が存在し、CNTが過度に過密に凝集した状態となっていないことを意味する。なお、上限の400nmは、実施例で用いた測定装置(BELSORP-mini II)における測定限界である。 ここで、炭素膜の電磁波シールド性能を更に向上させる観点から、CNT集合体の細孔分布曲線の最大のピークにおけるLog微分細孔容積の値は、2.0cm3/g以上であることが好ましい。 <<条件(3)>> 条件(3)は、「カーボンナノチューブ集合体の電子顕微鏡画像の二次元空間周波数スペクトルのピークが、1μm-1以上100μm-1以下の範囲に少なくとも1つ存在する。」ことを規定する。かかる条件の充足性は、下記の要領で判定することができる。まず、判定対象であるCNT集合体を、電子顕微鏡(例えば、電解放射走査型電子顕微鏡)を用いて拡大観察(例えば、1万倍)して、1cm四方の視野で電子顕微鏡画像を複数枚(例えば、10枚)取得する。得られた複数枚の電子顕微鏡画像について、高速フーリエ変換(FFT)処理を行い、二次元空間周波数スペクトルを得る。複数枚の電子顕微鏡画像のそれぞれについて得られた二次元空間周波数スペクトルを二値化処理して、最も高周波数側に出るピーク位置の平均値を求める。得られたピーク位置の平均値が1μm-1以上100μm-1以下の範囲内である場合には、条件(3)を満たすとして判定した。ここで、の判定において用いる「ピーク」としては、孤立点の抽出処理(即ち、孤立点除去の逆操作)を実施して得られた明確なピークを用いるものとする。従って、孤立点の抽出処理を実施した際に1μm-1以上100μm-1以下の範囲内にて明確なピークが得られない場合には、条件(3)は満たさないものとして判定する。 ここで、炭素膜の電磁波シールド性能を更に向上させる観点から、二次元空間周波数スペクトルのピークが、2.6μm-1以上100μm-1以下の範囲に存在することが好ましい。 そして、炭素膜の電磁波シールド性能を更に向上させる観点から、CNT集合体は、(1)~(3)の条件のうちを少なくとも2つを満たすことが好ましく、(1)~(3)の条件全てを満たすことがより好ましい。 <<その他の性状>> なお、本発明の炭素膜の形成に使用し得るCNT集合体は、(1)~(3)の条件以外にも、以下の性状を有することが好ましい。 例えば、CNT集合体は、BET法による全比表面積が、好ましくは600m2/g以上、より好ましくは800m2/g以上であり、好ましくは2600m2/g以下、より好ましくは1400m2/g以下である。さらに開口処理したものにあっては、1300m2/g以上であることが好ましい。高い比表面積を有するCNT集合体によれば、炭素膜内部にて電磁波を一層良好に乱反射させることができ、その結果、炭素膜の電磁波シールド性能を更に向上させることができる。CNT集合体は、単層CNTを主として、機能を損なわない程度に、2層CNTと多層CNTを含んでもよい。CNTのBET法による全比表面積は、例えば、JIS Z8830に準拠した、BET比表面積測定装置を用いて測定できる。 また、CNT集合体を構成するCNTの平均高さは、10μm以上10cm以下であることが好ましく、100μm以上2cm以下であることがより好ましい。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが10μm以上あると、隣接するCNTバンドルとの凝集を防ぎ、容易に分散させることが可能になる。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが10μm以上であれば、CNT同士のネットワークを形成し易くなり、導電性または機械強度が必要とされる用途において好適に用いることができる。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき比表面積を向上できる。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが2cm以下であればより容易に分散させることが可能になる。なお、CNTの平均高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選択したCNT100本の高さを測定して求めることができる。 CNT集合体のタップかさ密度は、0.001g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。このような密度範囲にあるCNT集合体は、CNT同士の結びつきが過度に強まらないため、分散性に優れており、様々な形状に成形加工することが可能である。CNT集合体のタップかさ密度が0.2g/cm3以下であれば、CNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT集合体を溶媒などに撹拌した際に、均質に分散させることが容易になる。また、CNT集合体のタップかさ密度が0.001g/cm3以上であれば、CNT集合体の一体性が向上されハンドリングが容易になる。タップかさ密度とは、粉体状のCNT集合体を容器に充填した後、タッピングまたは振動等により粉体粒子間の空隙を減少させ、密充填させた状態での見かけかさ密度である。 さらに、CNT集合体を構成するCNTの平均外径は、0.5nm以上であることが好ましく、1.0nm以上であることが更に好ましく、15.0nm以下であることが好ましく、10.0nm以下であることがより好ましく、5.0nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均外径が0.5nm以上であれば、CNT同士のバンドル化が低減でき、高い比表面積を維持できる。CNTの平均外径が15.0nm以下であれば、多層CNT比率を低減でき、高い比表面積を維持することができる。ここで、CNTの平均外径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて無作為に選択したCNT100本の直径(外径)を測定して求めることができる。CNTの平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。 CNT集合体のG/D比は1以上50以下であることが好ましい。G/D比が1に満たないCNT集合体は、単層CNTの結晶性が低く、アモルファスカーボンなどの汚れが多い上、多層CNTの含有量が多いことが考えられる。反対にG/D比が50を超えるCNT集合体は直線性が高く、CNTが隙間の少ないバンドルを形成しやすく、比表面積が減少する可能性がある。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm-1付近)とDバンド(1350cm-1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性(直線性)の高いCNTと評価できる。 高い比表面積を得るため、CNT集合体の純度は極力高いことが望ましい。ここでいう純度とは、炭素純度であり、CNT集合体の質量の何パーセントが炭素で構成されているかを示す値である。高い比表面積を得る上での純度に上限はないが、製造上、99.9999質量%以上のCNT集合体を得ることは困難である。純度が95質量%に満たないと、開口処理されてない状態で、1000m2/gを超える比表面積を得ることが困難となる。さらに、金属不純物を含んで炭素純度が95質量%に満たないと、開口処理において金属不純物が酸素と反応などしてCNTの開口を妨げるため、結果として、比表面積の拡大が困難となる。これらの点から、単層CNTの純度は95質量%以上であることが好ましい。 上述した(1)~(3)の条件の少なくとも何れかを満たす所定のCNT集合体は、精製処理を行わなくても、その純度は、通常、98質量%以上、好ましくは99.9質量%以上とすることができる。当該CNT集合体には不純物が殆ど混入しておらず、CNT本来の諸特性を充分に発揮することができる。CNT集合体の炭素純度は、蛍光X線を用いた元素分析や熱重量測定分析(TGA)等から得ることができる。 <<CNT集合体の製造方法>> CNT集合体を製造する方法は特に限定されず、所望の性状に応じて製造条件を調整することができる。例えば、上述した(1)~(3)の条件の少なくとも何れかを満たすCNT集合体を製造するに際しては、CNT集合体の成長時の条件が、下記の(a)~(c)の全てを満たすことが必要である。 (a)CNT集合体の成長速度が5μm/分以上である。 (b)CNT集合体の成長雰囲気における触媒賦活物質濃度が4体積%以上である。 (c)CNT集合体の成長時に、CNT集合体を構成するCNTの成長方向に障害物が存在する。 そして、上述した(a)~(c)の全てを満たす製造方法により、上述した(1)~(3)の条件の少なくとも何れかを満たすCNT集合体を効率的に製造することができる。さらに、かかる製造方法では、CNT集合体の成長時に条件(a)~(c)が満たされる限りにおいて特に限定されることなく、流動層法、移動層法及び固定層法等の既知の方途に従うCNT合成工程を採用することができる。ここで、流動層法とは、CNTを合成するための触媒を担持した粒状の担体(以下、粒状触媒担持体とも称する)を流動化させながら、CNTを合成する合成方法を意味する。また、移動層法及び固定層法とは、触媒を担持した担体(粒子状担体或いは板状担体)を流動させることなく、CNTを合成する合成方法を意味する。 一例において、上述した(a)~(c)の全てを満たす製造方法は、触媒担持体を形成する触媒担持体形成工程と、かかる触媒担持体形成工程にて得られた触媒担持体を用いてCNTを合成するCNT合成工程と、かかるCNT合成工程で合成されたCNTを回収する回収工程と、を含む。そして、触媒担持体形成工程は、湿式又は乾式の既知の触媒担持法に従って、実施することができる。また、回収工程は分級装置などの既知の分離回収装置を用いて実施することができる。 [CNT合成工程] CNT合成工程では、CNTの成長時に、の条件(a)~(c)を全て満たすようにする。具体的には、CNT成長雰囲気における、炭素源となる原料ガスの濃度及び温度等を適宜調節すること「カーボンナノチューブ集合体の成長速度が5μm/分以上である。」という条件(a)を満たすことができる。ここで、炭素源となる原料ガスとしては、特に限定されることなく、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレン及びアセチレンなどの炭化水素のガス;メタノール、エタノールなどの低級アルコールのガス;並びに、これらの混合物も使用可能である。また、この原料ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。また、得られるCNT集合体の分散性を一層高めつつ炭素膜の電磁波シールド性能を更に向上させる観点から、CNT集合体の成長速度は、10μm/分以上であることが好ましい。なお、温度は、例えば、400℃以上1100℃以下の範囲で調節することができる。 CNT成長雰囲気下にて、炭素源となる原料ガスはエチレンを含むことが好ましい。エチレンを所定の温度範囲(700℃以上900℃以下)の範囲で加熱することで、エチレンの分解反応が促進され、その分解ガスが触媒と接触した際に、CNTの高速成長が可能になる。しかしながら、熱分解時間が長すぎると、エチレンの分解反応が進みすぎ、触媒の失活やCNT集合体への炭素不純物付着を引き起こす。本発明のCNT集合体製造においては、エチレン濃度0.1体積%以上40体積%以下の範囲に対して、熱分解時間0.5秒以上10秒以下の範囲が好ましい。0.5秒未満ではエチレンの熱分解が不足し、高比表面積なCNT集合体を高速に成長させることが困難になる。10秒より長いと、エチレンの分解が進み過ぎ、炭素不純物が多く発生し、触媒失活やCNT集合体の品質低下を引き起こしてしまう。熱分解時間は以下の式から計算する。 (熱分解時間)=(加熱流路体積)/{(原料ガス流量)×(273.15+T)/273.15} ここで加熱流路体積とは、原料ガスが触媒に接触する前に通過する、所定温度T℃に加熱された流路の体積であり、原料ガス流量は0℃、1atmにおける流量である。 また、CNT成長時に供給する触媒賦活物質の供給速度を適宜調節することで、「カーボンナノチューブ集合体の成長雰囲気における触媒賦活物質濃度が4体積%以上である。」という条件(b)を満たすことができる。炭素膜の電磁波シールド性能を更に向上させる観点から、CNT集合体の成長雰囲気における触媒賦活物質濃度は、5体積%以上であることが好ましい。触媒賦活物質としては、特に限定されることなく、水、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素及び二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物;エタノール、メタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;アルデヒド類;エステル類;並びにこれらの混合物が挙げられる。この中でも、二酸化炭素が好適である。なお、一酸化炭素やアルコール類など、炭素と酸素の両方を含む物質は、原料ガスと触媒賦活物質との両方の機能を有する場合がある。例えば一酸化炭素は、エチレンなどのより反応性の高い原料ガスと組み合わせれば触媒賦活物質として作用し、水などの微量でも大きな触媒賦活作用を示す触媒賦活物質と組み合わせれば原料ガスとして作用する。 さらにまた、CNT合成工程において流動層法を選択すること或いは、移動層法や固定層法において触媒担持体の配置間隔を調節することにより、「カーボンナノチューブ集合体の合成時に、カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの成長方向に障害物が存在する。」という条件(c)を満たすことができる。 ここで、前記流動層法にてCNTを合成する際には、CNT合成工程は、例えば、下方からガスを供給して粒子状の触媒担持体を流動させつつ、原料ガスを供給して実施してもよいし、粒子状の触媒担持体をスクリュー回転によって連続的に搬送しながら、原料ガスを供給して実施してもよい。 触媒担持体は担体と当該担体の表面に担持された触媒とを有し、担体は当該担体表面に触媒を付着、固定、成膜、または形成などして担持するための母体構造を成す部分である。担体の構造としては、当該担体のみでも良く、当該担体の表面上に触媒を良好に担持するための任意の下地層を設けた下地層付き担体でも良い。担体の形状は粒子状であることが好ましく、その粒子径は、体積平均粒子径で1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましく、0.4mm以下であることが更に好ましく、0.05mm以上であることが好ましい。粒子径が上限以下であれば、成長するCNTバンドルが細くなり、波状構造を形成するに有利になる。粒子密度は、見かけ密度で3.8g/cm3以上であることが好ましく、5.8g/cm3以上であることがより好ましく、8g/cm3以下であることが好ましい。粒子密度が下限以上であれば、成長中のCNTバンドルに加わる力が高まり、波状構造を形成するに有利になる。担体の材質は、Al及びZrの内の何れか1種以上の元素を含む金属酸化物であることが好ましい。中でも、大きな元素量をもったZrを含むジルコニアビーズが特に好ましい。 例えば、粒子状の担体を用いる場合において、粒子状の担体の表面に触媒を担持させる方法としては、例えば、略円筒状の回転ドラムを備える回転ドラム式塗工装置を用いる方法を挙げることができる。なお、粒子状の担体の表面に下地層を配置してから触媒を担持させる場合には、触媒溶液を噴霧し乾燥することに先立って、下地層を構成し得る成分を含む溶液を粒子状の担体表面に噴霧し乾燥して担体表面に下地層を配置する。このような方法によれば、触媒層や下地層を比較的簡単で、且つむらなく形成することができる。 そして、CNT合成工程では、条件(a)~(c)を満たすようにして実施される「成長工程」に先立って、触媒担持体に担持された触媒を還元する「フォーメーション工程」を実施するとともに、成長工程を終了させた後に、CNTが成長した触媒担持体を冷却する「冷却工程」を実施することができる。「フォーメーション工程」では、例えば、触媒担持体を含む雰囲気を還元ガス雰囲気として、かかる還元ガス雰囲気又は触媒担持体のうち少なくとも一方を加熱して、触媒担持体に担持された触媒を還元及び微粒子化する。フォーメーション工程における触媒担持体又は還元ガス雰囲気の温度は、好ましくは400℃以上1100℃以下である。また、フォーメーション工程の実施時間は、3分以上120分以下であり得る。なお、還元ガスとしては、例えば、水素ガス、アンモニアガス、水蒸気及びそれらの混合ガスを用いることができる。また、還元ガスは、これらのガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。一方、「冷却工程」では、CNTが成長した触媒担持体を不活性ガス環境下において冷却する。ここで、不活性ガスとしては、成長工程で使用し得る不活性ガスと同様の不活性ガスを使用し得る。また、冷却工程では、CNTが成長した触媒担持体の温度は、好ましくは400℃以下、さらに好ましくは200℃以下まで低下させる。 <乾式粉砕処理> 本発明の炭素膜を得るに際し、必要に応じて、膜化前のCNT集合体に対し乾式粉砕処理を施すことができる。なお、本発明において「乾式粉砕処理」とは、粉砕対象が実質的に溶媒を含有しない状態(例えば、固形分濃度が95%以上の状態)での粉砕処理を意味する。 乾式粉砕処理に使用し得る粉砕装置としては、微細な構造体からなる集合体に対し、撹拌などにより物理的負荷をかけ得る装置であれば特に限定されない。このような装置としては、回転羽を備えるミキサーを使用することができる。 また粉砕条件は特に限定されない。例えば、粉砕装置として回転羽を備えるミキサーを用いる場合、回転速度は、500rpm以上5000rpm以下であることが好ましく、粉砕時間は10秒以上20分以下であることが好ましい。 <膜化> CNT集合体を膜化することで、本発明の炭素膜を得ることができる。ここで、CNT集合体を膜化する方法は特に限定されないが、CNT集合体を水又は有機溶媒などの分散媒に分散させることでCNT分散液を調製し、当該CNT分散液から少なくとも分散媒の一部を除去する方法が好ましく挙げられる。 CNT分散液の調製方法は、特に限定されないが、CNT分散液は、CNT集合体を、撹拌羽を用いた分散方法、超音波を用いた分散方法、及びせん断力を用いた分散方法などの既知の方法で分散媒中に分散させることにより得ることができる。ここで、得られる炭素膜の電磁波シールド性能を一層高める観点から、CNT分散液中にて、CNTが適度に分散していることが好ましい。好ましくは、CNT分散液が分散剤を非含有であることが好ましい。言い換えると、CNT分散液が、実質的にCNT及び分散媒のみからなることが好ましい。なお、本明細書において、「CNT分散液が、実質的にCNT及び分散媒のみからなる」とは、CNT分散液の構成成分の99.9質量%以上が、CNTとCNTに付随する不可避的不純物、及び分散媒及び分散媒に付随する不可避的不純物からなることを意味する。 そして、CNT分散液から分散媒を除去する方法としては、濾過、乾燥等の既知の方法が挙げられる。 濾過の方法としては、特に限定されることなく、自然濾過、減圧濾過(吸引濾過)、加圧濾過、遠心濾過などの既知の濾過方法を用いることができる。 乾燥の方法としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等の既知の乾燥方法を用いることができる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、室温~200℃、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、1時間以上48時間以内である。また、乾燥は、特に限定されないが、既知の基材上で行うことができる。 これらの中でも、分散媒の除去には少なくとも乾燥を採用することが好ましい。 なお、濾過と乾燥を組み合わせて用いることもできる。例えば、CNT分散液を濾過して得られた膜状の濾物(一次シート)を、更に乾燥することにより、本発明の炭素膜を得ることができる。 (炭素膜の性状) ここで、本発明の炭素膜の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。厚みが5μm以上であれば、炭素膜は十分な機械的強度を有し得ると共に、一層優れた電磁波シールド性能を発揮することができる。一方、厚みが200μm以下であれば、炭素膜を軽量化することができる。 なお、炭素膜の「厚み」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。

代表図 図1本件の代表的な図

100 CNT製造装置 101 ヒーター 102 反応管 103 分散板 104 還元ガス/原料ガス導入口 105 排気口 106 ガス加熱促進部 107 触媒担持体 200 CNT集合体製造装置 201 入口パージ装置 202 フォーメーションユニット 202a フォーメーション炉 202b 還元ガス噴射装置 202c 加熱装置 202d 排気装置 203 ガス混入防止装置 203a 排気装置 203b パージガス噴射装置 204 成長ユニット 204a 成長炉 204b 原料ガス噴射装置 204c 加熱装置 204d 排気装置 205 出口パージ装置 206 冷却ユニット 206a 冷却容器 206b 水冷冷却装置 207 搬送ユニット 207a スクリュー羽根 207b 駆動装置 208~210 接続部 211 基材 212 ホッパー 214 加熱装置

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