(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】
(45)【発行日】
(54)【発明の名称】充満タイミング判定装置、充満タイミング判定方法及び充満タイミング判定プログラム
(51)【国際特許分類】
【FI】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
【審査請求日】
(73)【特許権者】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大石 萌絵
(72)【発明者】
【氏名】小名 国仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一広
【審査官】岡田 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-323307(JP,A)
【文献】特開2010-42540(JP,A)
【文献】特開昭64-67323(JP,A)
【文献】特許第6900184(JP,B2)
【文献】特開平8-197600(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第118484982(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
G06F 113/22
B21J 1/00 - 19/04
B29C 31/00 - 73/34
B22C 1/00 - 25/00
B22D 1/00 - 47/02
B21D 1/00 - 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項】
鍛造成形の各成形時間で金型モデルと成形物モデルの距離を算出し、前記距離に基づいて充満タイミングを判定する充満タイミング判定装置であって、
前記金型モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点と、前記成形物モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点との間で、対応する節点の前記距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部で算出した距離履歴データに基づいて近似線を算出する近似線算出部と、
前記近似線に基づいて前記成形物モデルが前記金型モデルに充満したタイミングを判定する判定部と
を備えたことを特徴とする充満タイミング判定装置。
【請求項】
第1の成形時間で算出された第1の距離と、前記第1の成形時間の1つ前の第2の成形時間で算出された第2の距離との距離差分を算出する距離差分算出部と、
前記距離差分に基づいて、前記距離の変化が正常か否かを判定する距離差分判定部とをさらに備え、
前記近似線算出部は、前記距離差分判定部の判定結果に基づいて前記近似線の算出に用いる前記距離履歴データを変える
ことを特徴とする請求項1に記載の充満タイミング判定装置。
【請求項】
前記近似線算出部は、
前記距離差分が所定の閾値以上である場合に、前記距離が0になった時間を起点として、所定の個数の前記距離履歴データを用いて前記近似線を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の充満タイミング判定装置。
【請求項】
前記近似線算出部は、
前記距離差分が所定の閾値より小さい場合に、前記距離差分が所定の閾値より小さくなった第1の時間の1つ前の第2の時間を起点として、所定の個数の前記距離履歴データを用いて前記近似線を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の充満タイミング判定装置。
【請求項】
前記判定部は、
前記近似線から求められる前記距離が0となった場合に、前記金型モデルに前記成形物モデルが充満した充満タイミングと判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の充満タイミング判定装置。
【請求項】
鍛造成形の各成形時間で金型モデルと成形物モデルの距離を算出し、前記距離に基づいて充満タイミングを判定する充満タイミング判定装置の充満タイミング判定方法であって、
前記金型モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点と、前記成形物モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点との前記距離を算出する距離算出ステップと、
前記距離算出ステップで算出した距離履歴データに基づいて近似線を算出する近似線算出ステップと、
前記近似線に基づいて前記成形物モデルが前記金型モデルに充満したタイミングを判定する判定ステップと
を含むことを特徴とする充満タイミング判定方法。
【請求項】
鍛造成形の各成形時間で金型モデルと成形物モデルの距離を算出し、前記距離に基づいて充満タイミングを判定する充満タイミング判定装置で実行される充満タイミング判定プログラムであって、
前記金型モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点と、前記成形物モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点との前記距離を算出する距離算出手順と、
前記距離算出手順で算出した距離履歴データに基づいて近似線を算出する近似線算出手順と、
前記近似線に基づいて前記成形物モデルが前記金型モデルに充満したタイミングを判定する判定手順と
をコンピュータで実行させることを特徴とする充満タイミング判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
本発明は、鍛造成形を行う場合に、適正かつ効率良く充満タイミングを判定することができる充満タイミング判定装置、充満タイミング判定方法及び充満タイミング判定プログラムに関する。
【背景技術】
【】
従来、インゴット状や円柱状の金属の塊をハンマーや型で叩いて大きな力を加え、塑性変形させて形を作る鍛造成形が行われることが多い。かかる鍛造成形中に生ずる金属の塊の塑性変形をシミュレーションする解析技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【文献】特開2017-006970号公報
【文献】特開2010-023103号公報
【文献】特開2008-188615号公報
【文献】特開2008-150427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
しかしながら、上記特許文献1のものは、鍛造成形の製造時におけるバリの量やバリの出方を設計時に定量的に評価可能にする技術であり、鍛造成形における製品形状内の欠肉の有無を確認するため、金型に成形物が充満するタイミングを判定できないという課題がある。
【】
このため、鍛造成形を行う場合に、いかに適正かつ効率良く金型と成形物の充満タイミングを判定するかが重要な課題となっている。
【】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、鍛造成形を行う場合に、適正かつ効率良く充満タイミングを判定することができる充満タイミング判定装置、充満タイミング判定方法及び充満タイミング判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、鍛造成形の各成形時間で金型モデルと成形物モデルの距離を算出し、前記距離に基づいて充満タイミングを判定する充満タイミング判定装置であって、前記金型モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点と、前記成形物モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点との間で、対応する節点の前記距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部で算出した距離履歴データに基づいて近似線を算出する近似線算出部と、前記近似線に基づいて前記成形物モデルが前記金型モデルに充満したタイミングを判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
【】
また、本発明は、上記発明において、第1の成形時間で算出された第1の距離と、前記第1の成形時間の1つ前の第2の成形時間で算出された第2の距離との距離差分を算出する距離差分算出部と、前記距離差分に基づいて、前記距離の変化が正常か否かを判定する距離差分判定部とをさらに備え、前記近似線算出部は、前記距離差分判定部の判定結果に基づいて前記近似線の算出に用いる前記距離履歴データを変えることを特徴とする。
【】
また、本発明は、上記発明において、前記近似線算出部は、前記距離差分が所定の閾値以上である場合に、前記距離が0になった時間を起点として、所定の個数の前記距離履歴データを用いて前記近似線を算出することを特徴とする。
【】
また、本発明は、上記発明において、前記近似線算出部は、前記距離差分が所定の閾値より小さい場合に、前記距離差分が所定の閾値より小さくなった第1の時間の1つ前の第2の時間を起点として、所定の個数の前記距離履歴データを用いて前記近似線を算出することを特徴とする。
【】
また、本発明は、上記発明において、前記判定部は、前記近似線から求められる前記距離が0となった場合に、前記金型モデルに前記成形物モデルが充満した充満タイミングと判定することを特徴とする。
【】
また、本発明は、鍛造成形の各成形時間で金型モデルと成形物モデルの距離を算出し、前記距離に基づいて充満タイミングを判定する充満タイミング判定装置の充満タイミング判定方法であって、前記金型モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点と、前記成形物モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点との前記距離を算出する距離算出ステップと、前記距離算出ステップで算出した距離履歴データに基づいて近似線を算出する近似線算出ステップと、前記近似線に基づいて前記成形物モデルが前記金型モデルに充満したタイミングを判定する判定ステップとを含むことを特徴とする。
【】
また、本発明は、鍛造成形の各成形時間で金型モデルと成形物モデルの距離を算出し、前記距離に基づいて充満タイミングを判定する充満タイミング判定装置で実行される充満タイミング判定プログラムであって、前記金型モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点と、前記成形物モデルを構成する複数の解析用メッシュの節点との前記距離を算出する距離算出手順と、前記距離算出手順で算出した距離履歴データに基づいて近似線を算出する近似線算出手順と、前記近似線に基づいて前記成形物モデルが前記金型モデルに充満したタイミングを判定する判定手順とをコンピュータで実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【】
本発明によれば、鍛造成形を行う場合に、適正かつ効率良く充満タイミングを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【】
【図
】
図1は、実施形態に係る充満タイミング判定装置の概要を示す図である。
【図
】
図2は、
図1に示した充満タイミング判定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図
】
図3は、解析用メッシュの生成の一例を示す図である。
【図
】
図4は、リメッシュが行われた場合の金型モデルの節点と成形物モデルの節点の距離の変化を説明するための説明図である。
【図
】
図5は、充満タイミングの判定を説明するための説明図(その1)である。
【図
】
図6は、充満タイミングの判定を説明するための説明図(その2)である。
【図
】
図7は、
図2に示した充満タイミング判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図
】
図8は、
図7に示した距離算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図
】
図9は、ハードウエア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【】
以下に、本発明に係る充満タイミング判定装置、充満タイミング判定方法及び充満タイミング判定プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【】
本実施形態に係る充満タイミング判定装置の概要について説明する。
図1は、実施形態に係る充満タイミング判定装置の概要を示す図である。
【】
<充満タイミング判定装置10の概要>
図1(a)に示すように、従来、鍛造技術を用いた製品の製造は、複数の成形工程を踏んで製品の成形を行う。
図1(a)は、ある成形工程における時間経過により成形が行われる状態を示している。具体的には、成形時間1において成形物の準備を行い、各成形時間で部位毎に成形を繰り返し、成形時間30を経て、成形時間100において成形が完了する状態を示している。鍛造成形中に、金型と成形物の距離が0以下になった時間を「充満タイミング」と称し、一般的には、解析を用いて充満タイミングの判定を行っている。
【】
解析では、解析中に解析対象領域の形状が大きく変化した場合に、解析の精度を向上するために変形した形状に合わせてメッシュを再構成するリメッシュが行われる。このリメッシュにより、金型モデルの解析用メッシュの節点と対応する成形物モデルの解析用メッシュの節点との距離が、リメッシュ前とリメッシュ後で不連続となってしまい、充満タイミングの判定を正確に行うことができない場合がある。
【】
本発明は、
図1(b)に示すように、鍛造の各成形工程において、成形物モデルに基づいて数値解析を行い、金型モデルと成形物モデルの節点の距離を算出し、該距離に基づいて充満タイミングを判定する。充満タイミング判定装置10は、成形物モデルを構成する複数の節点から成る解析用メッシュを生成する。充満タイミング判定装置10は、必要に応じてリメッシュを行いながら、数値解析を実行する。数値解析では、各成形時間における、金型モデルの内側表面に構築された解析用メッシュの節点から、対応する成形物モデルの解析用メッシュの節点までの距離が算出される。
【】
その後、充満タイミング判定装置10は、距離に基づき充満タイミングを判定する。具体的には、算出した金型モデルから成形物モデルの節点までの距離と、1つ前の成形時間について算出した金型モデルから成形物モデルの節点までの距離との差分を算出する。充満タイミング判定装置10は、差分が所定の閾値以上である成形時間が含まれる場合は、金型モデルと成形物モデルの節点の距離が0以下になった時間を起点に、所定の個数の距離履歴データから近似線を算出し、近似線から距離が0となる時間を算出して、該時間を充満タイミングと判定する。
【】
一方、充満タイミング判定装置10は、差分が所定の閾値より小さい成形時間が含まれる場合は、差分が所定の閾値より小さいと判定された時間の1つ前の時間を起点に、この時間より前に算出した所定の個数の距離履歴データから近似線を算出し、近似線から距離が0となる時間を算出し、その算出した時間を充満タイミングと判定する。なお、所定の閾値は、例えば、0.4mmである。
【】
このように、充満タイミング判定装置10は、成形時間が進むに連れて一様に距離が縮小してゆく途中で、距離或いは距離の変化が異常値を示す成形時間が発生した場合、充満タイミングを見直す処理を実行する。ある成形時間で縮小幅が急に小さくなった場合、充満タイミング判定装置10は、縮小幅が異常値を示した成形時間を含めず、該成形時間より前の複数成形時間の距離から近似線を求めて、該近似線から充満タイミングを判定することができる。充満タイミング判定装置10は、距離の縮小幅の異常を検知するための閾値を設定して、上述したように異常を検知して充満タイミングを判定する。
【】
<充満タイミング判定装置10の構成>
次に、
図1に示した充満タイミング判定装置10の構成について説明する。
図2は、
図1に示した充満タイミング判定装置10の構成を示す機能ブロック図である。充満タイミング判定装置10は、表示部11と、入力部12と、記憶部14と、制御部15とを有する。表示部11は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部12は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。
【】
記憶部14は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスであり、鍛造成形工程データ14aと、メッシュデータ14bと、距離履歴データ14cとを記憶する。鍛造成形工程データ14aは、鍛造技術を用いた各成形工程における成形物モデルのデータである。メッシュデータ14bは、解析を行うため、金型モデル及び成形物モデルの表面に対して生成した複数の節点から成る解析用メッシュのデータである。
【】
距離履歴データ14cは、成形物モデルの解析用メッシュの各節点と、これら各節点に対応する金型モデルの解析用メッシュの節点との距離を示すデータである。距離履歴データ14cには、成形時間1から各成形時間迄の経過時間(以降、「時間」と言う)と、各成形時間で算出した、成形物モデルと金型モデルの対応する各節点の距離とが、対応付けて記憶される。なお、リメッシュが実行された場合、リメッシュ後の成形物モデルの解析用メッシュにおける節点のうち、金型モデルの解析用メッシュの節点から距離が最も短い節点が、この金型モデルの節点に対応する節点とされる。
【】
制御部15は、充満タイミング判定装置10の全体を制御する制御部であり、メッシュ生成部15aと、数値解析部15bと、距離算出部15cと、距離差分算出部15dと、距離差分判定部15eと、近似線算出部15fと、判定部15gとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、メッシュ生成部15aと、数値解析部15bと、距離算出部15cと、距離差分算出部15dと、距離差分判定部15eと、近似線算出部15fと、判定部15gとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【】
メッシュ生成部15aは、解析のための複数の節点から成る解析用メッシュ40を金型モデル及び成形物モデル60に対して生成する処理部である。生成する解析用メッシュ40の大きさは、金型モデル及び成形物モデル60の形状に応じて粗密を変化させる。例えば、
図3に示すように、成形物モデル60の形状の変化を有する領域に細かい解析用メッシュ40が生成される。
【】
数値解析部15bは、生成された解析用メッシュの節点に基づいて数値解析を行う処理部である。数値解析としては、例えば、有限要素法等が用いられる。
【】
距離算出部15cは、金型モデルの節点と対応する成形物モデル60の節点との距離を算出する処理部である。具体的には、金型モデルの解析用メッシュ40の節点と成形物モデル60の解析用メッシュ40の節点との距離を、金型モデルの解析用メッシュ40の節点を起点に算出する。そして、距離算出部15cは、算出した距離を距離履歴データ14cとして記憶部14に記憶する。金型モデルは変形せず、成形時間が進んでも金型モデルの解析用メッシュ40のリメッシュは行われない。このため、距離を算出する際に、金型モデルの解析用メッシュ40の節点を起点とすることで、成形物モデル60の解析用メッシュ40のリメッシュが行われた場合においても、算出する距離の精度が維持される。
【】
距離差分算出部15dは、所定の成形時間で算出した第1の距離と、所定の成形時間の1つ前の成形時間で算出した第2の距離との差分を算出する処理部である。具体的には、記憶部14の距離履歴データ14cから該第1の距離と、該第2の距離を読み出し、該第2の距離から該第1の距離を差し引いて差分を算出する。
【】
距離差分判定部15eは、距離差分算出部15dで算出した距離差分が所定の閾値以上か否かを判定する処理部である。具体的には、該距離差分が所定の閾値以上である場合は、「正常」と判定し、該距離差分が所定の閾値より小さな場合は、「異常」と判定する。
【】
近似線算出部15fは、距離履歴データ14cの所定の時間から前の所定の個数の距離履歴データを用いて最小二乗法等により近似線の係数を算出する処理部である。例えば、近似線をy=ax+bとするならば、近似線算出部15fは、所定の個数の距離履歴データを用いて係数a、bを算出する。近似線算出部15fは、距離差分判定部15eの判定結果に基づいて、判定結果が「正常」である場合は、距離が0になった時間を起点に、所定の個数の距離履歴データから係数を算出する。判定結果が「異常」である場合、近似線算出部15fは、「異常」と判定された時間の1つ前の時間を起点に、これより前の所定の個数の距離履歴データから係数を算出する。所定の個数としては、例えば、10個である。
【】
判定部15gは、距離が0になる時間を算出し、該時間を成形物が金型に充満したタイミングであると判定する処理部である。具体的には、判定部15gは、近似線算出部15fで算出された近似線の式から距離が0になる時間を算出する。例えば、近似線がy=ax+bで表されたならば、判定部15gは、y=0になるxを求め、このxが充満タイミングであると判定される。
【】
<リメッシュが行われた場合の金型モデルと成形物モデルの距離の変化>
次に、リメッシュが行われた場合の金型モデルの節点と成形物モデルの節点の距離の変化について説明する。
図4は、リメッシュが行われた場合の金型モデルの節点と成形物モデルの節点の距離の変化を説明するための説明図である。
図4(a)に示すように、鍛造の成形時間が進み、ある成形時間Nにおける金型モデルの節点と成形物モデルの節点との距離分布を求める。そして、
図4(b)に示すように、成形時間N+1において、リメッシュが行われると、領域Aの部分に新しい節点を持つ解析用メッシュ40が生成される。
図4(b)は、領域Aに生成された新しい節点が、成形時間Nにおける距離よりも大きな値を持つ様子を示している。
【】
<充満タイミングの判定>
次に、金型と成形物の充満タイミングの判定について説明する。
図5及び
図6は、充満タイミングの判定を説明するための説明図である。
図5に示すように、金型モデルの節点と、対応する成形物モデルの節点との距離が、単純に減少した場合は、距離が0になった時間(ここでは、t
n+5)を起点に所定の個数の距離履歴データに基づいて近似線の式(y=ax+b)の係数a及びbを算出し、近似線の式からy=0となるxを求め、該xが充満タイミングと判定される。
【】
一方、
図6に示すように、金型モデルの節点と成形物モデルの節点の距離の減少に不連続な状況が存在する場合は、不連続が発生した時間t
n+4の1つ前の時間t
n+3を起点に所定の個数の距離履歴データに基づいて近似線の式(y=ax+b)の係数a及びbを算出し、近似線の式からy=0となるxを求め、該xが充満タイミングと判定される。なお、金型モデルと成形物モデルの距離の減少に不連続が発生した時間t
n+4は、距離差分判定部15eにおいて、「異常」と判定された時間である。
【】
<充満タイミング判定装置10の処理手順>
次に、充満タイミング判定装置10の処理手順について説明する。
図7は、
図2に示した充満タイミング判定装置10の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、充満タイミング判定装置10は、金型モデル及び成形物モデルの解析用メッシュを生成する(ステップS101)。
【】
そして、充満タイミング判定装置10は、距離算出処理を行う(ステップS102)。その後、充満タイミング判定装置10は、距離差分を算出する(ステップS103)。そして、充満タイミング判定装置10は、距離差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
【】
充満タイミング判定装置10は、距離差分が所定の閾値より小さい場合は(ステップS104:No)、距離差分が所定の閾値より小さい時間の1つ前の時間から所定の個数の距離履歴を用いて近似線を算出(ステップS105)し、ステップS108に移行する。一方、充満タイミング判定装置10は、距離差分が所定の閾値以上である場合は(ステップS104:Yes)、距離が0になったか否かを判定する(ステップS106)。
【】
充満タイミング判定装置10は、距離が0でない場合は(ステップS106:No)、ステップS104に移行する。充満タイミング判定装置10は、距離が0である場合は(ステップS106:Yes)、距離が0になる時間から所定の個数の距離履歴を用いて近似線を算出する(ステップS107)。
【】
そして、充満タイミング判定装置10は、近似線に基づいて距離が0になる時間を算出する(ステップS108)。その後、充満タイミング判定装置10は、距離が0になる時間を充満タイミングと判定する(ステップS109)。
【】
<距離算出処理の処理手順>
次に、
図7に示した距離算出処理の処理手順について説明する。
図8は、
図7に示した距離算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、距離算出処理は、有限要素法等を用いて数値解析を行う(ステップS201)。
【】
そして、距離算出処理は、金型モデルの解析用メッシュの節点と対応する成形物モデルの解析用メッシュの接点の距離を算出する(ステップS202)。その後、距離算出処理は、数値解析を行った成形時間が最終成形時間か否かを判定する(ステップS203)。距離算出処理は、数値解析を行った成形時間が最終成形時間でない場合は(ステップS203)、次の成形時間の成形物モデルのデータを読み出し(ステップS204)、ステップS201に移行する。
【】
一方、距離算出処理は、数値解析を行った成形時間が最終成形時間である場合は(ステップS203:Yes)、
図7に示したステップS103に移行する。
【】
上述してきたように、本実施形態では、充満タイミング判定装置10は、成形物モデルを構成する複数の節点から成る解析用メッシュを生成する。そして、充満タイミング判定装置10は、数値解析を行い、各解析用メッシュに基づいて各解析用メッシュの節点における金型モデルと成形物モデルの距離を算出する。その後、充満タイミング判定装置10は、算出した金型モデルと成形物の距離と、1つ前の成形時間での金型モデルと成形物の距離との差分を算出し、差分が所定の閾値以上である場合は、金型モデルと成形物の距離が0以下になった時間を起点に、所定の個数の距離履歴データから近似線を算出し、差分が所定の閾値より小さい場合は、差分が所定の閾値より小さいと判定された時間の1つ前の時間を起点に、算出した距離の履歴から近似線を算出し、近似線から距離が0となる時間を算出し、その算出した時間を充満タイミングと判定する。
【】
なお、上記実施形態では、距離差分が所定の閾値以上の場合にも近似線を算出し、該近似線から充満タイミングを判定する場合について説明したが、距離差分が所定の閾値以上の場合には、算出した距離が0になった時間を充満タイミングと判定してもよい。
【】
また、上記実施形態では、成形時間の間の距離の差分を閾値と比較して異常を検知する例を説明したが、成形時間が進むにつれて金型と成形物との間で徐々に縮小する距離が異常値を示したことを検知できれば、検知方法は特に限定されない。例えば、距離の差分同士を比較して異常を検知してもよいし、距離の変化の微分値を算出し異常を検知してもよい。
【】
また、上記実施形態では、解析において、距離が0になった場合に近似線を算出する場合を説明したが、距離が所定の距離閾値以下になった場合に近似線を算出するようにしてもよい。所定の距離閾値は、例えば、0.01mmである。
【】
<ハードウエアとの関係>
次に、本実施形態に係る充満タイミング判定装置10と、コンピュータの主たるハードウエア構成の対応について説明する。
図9は、ハードウエア構成の一例を示す図である。
【】
一般的に、コンピュータは、CPU81、ROM82、RAM83及び不揮発性メモリ84などがバス85により接続された構成となる。不揮発性メモリ84の代わりにハードディスク装置が設けられていてもよい。説明の便宜上、
図9には基本的なハードウエア構成のみを示している。
【】
ここで、ROM82又は不揮発性メモリ84には、オペレーティングシステム(以下、単に「OS」と言う)の起動に必要となるプログラム等が記憶されており、CPU81は、電源投入時にROM82又は不揮発性メモリ84からOSのプログラムをリードして実行する。
【】
一方、OS上で実行される各種のアプリケーションプログラムは、不揮発性メモリ84に記憶されており、CPU81がRAM83を主メモリとして利用しつつアプリケーションプログラムを実行することにより、アプリケーションに対応するプロセスが実行される。
【】
そして、本実施形態に係る充満タイミング判定装置10の充満タイミング判定プログラムについても、他のアプリケーションプログラムと同様に不揮発性メモリ84等に記憶され、CPU81が、かかる充満タイミング判定プログラムをロードして実行することになる。本実施形態に係る充満タイミング判定装置10の場合には、
図2に示したメッシュ生成部15aと、数値解析部15bと、距離算出部15cと、距離差分算出部15dと、距離差分判定部15eと、近似線算出部15fと、判定部15gとに対応するルーチンを含む充満タイミング判定プログラムが不揮発性メモリ84等に記憶される。CPU81により充満タイミング判定プログラムがロード実行されることにより、メッシュ生成部15aと、数値解析部15bと、距離算出部15cと、距離差分算出部15dと、距離差分判定部15eと、近似線算出部15fと、判定部15gとに対応する充満タイミング判定プロセスが生成される。
【】
上記の実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【】
本発明に係る充満タイミング判定装置、充満タイミング判定方法及び充満タイミング判定プログラムは、鍛造成形を行う場合に、適正かつ効率良く充満タイミングを判定する場合に適している。
【符号の説明】
【】
10 充満タイミング判定装置
11 表示部
12 入力部
14 記憶部
14a 鍛造成形工程データ
14b メッシュデータ
14c 距離履歴データ
15 制御部
15a メッシュ生成部
15b 数値解析部
15c 距離算出部
15d 距離差分算出部
15e 距離差分判定部
15f 近似線算出部
15g 判定部
40 解析用メッシュ
60 成形物モデル
81 CPU
82 ROM
83 RAM
84 不揮発性メモリ
85 バス
【図】
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