(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】電気グリッドをブラックスタートするための方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220104BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220104BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H02J3/38 160
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020519359
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(85)【翻訳文提出日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2018081568
(87)【国際公開番号】W WO2019073088
(87)【国際公開日】2019-04-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン、トローオルス・スタイベ
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA08
5G066AB01
5G066AB02
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB02
5G066HB08
5G066HB11
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
電気グリッド(2)をブラックスタートするための方法であって、その方法は、第1の位置でグリッドからウインドファーム(1)を切断することであって、第1の位置が電気グリッド(2)と関連するコンバータ(17)を備えるエネルギーストレージ(16)との間に位置する、切断することと、エネルギーストレージ(16)と関連するコンバータ(17)を用いてエクスポートケーブル(12)を介してウインドファームの電気インフラストラクチャーの少なくとも一部分を通電することと、風力タービン発電機(3、4)によってウインドファームの電気インフラストラクチャーへのエネルギー供給を再確立することと、第1の位置で電気グリッド(2)にウインドファーム(1)を再接続することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気グリッドをブラックスタートするための方法であって、
電気インフラストラクチャーおよび第1の数の風力タービン発電機を有するウインドファームを提供することと、
前記ウインドファームを前記電気グリッドに接続するためのACエクスポートケーブルを提供することと、
関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージを提供することと、
第1の位置で前記ウインドファームを前記グリッドから切断することであって、前記第1の位置が、前記電気グリッドと前記関連付けられたコンバータを備える前記エネルギーストレージとの間に位置する、切断することと、
前記エネルギーストレージおよび前記関連付けられたコンバータを用いて前記ACエクスポートケーブルを通電することと、
前記エネルギーストレージおよび前記関連付けられたコンバータを用いて前記エクスポートケーブルを介して、前記ウインドファームの電気インフラストラクチャーの少なくとも一部分を通電することと、
前記風力タービン発電機によって前記ウインドファームの電気インフラストラクチャーへのエネルギー供給を再確立することと、
前記第1の位置で前記ウインドファームを前記電気グリッドに再接続することと、を含む方法。
【請求項2】
前記風力ファームが洋上にあり、前記関連付けられたコンバータを備える前記エネルギーストレージが陸上にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウインドファームの電気インフラストラクチャーが、共通バスバーシステムに接続可能な対応する数のアレイケーブル線に接続可能な2つ以上のグループの風力タービン発電機を含み、前記エネルギーストレージおよび前記関連付けられたコンバータを用いて前記エクスポートケーブルを介して前記ウインドファームの電気インフラストラクチャーの前記少なくとも一部分は、前記数のアレイケーブル線のうちの1つを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記コンバータがSTATCOMを含む、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記関連付けられたコンバータを備える前記エネルギーストレージが、前記第1の位置で前記ウインドファームを前記電気グリッドに再接続した後に、前記電気グリッドに電力を供給する、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上のダンプロードおよび前記ダンプロードを制御するための制御システムを提供することと、前記制御システムを使用し、前記ダンプロードにおけるエネルギー散逸を制御して、切断された前記ウインドファームのバランシングを助ける、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
同期情報がさらにコンバータに送信される、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
電気グリッドを再通電するための方法であって、
電気インフラストラクチャーおよび第1の数の風力タービン発電機を有するウインドファームを提供することと、
前記ウインドファームを前記電気グリッドに接続するためのACエクスポートケーブルを提供することと、
関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージを提供することと、
第1の位置で前記ウインドファームを前記グリッドから切断することであって、前記第1の位置が、前記電気グリッドと前記関連付けられたコンバータを備える前記エネルギーストレージとの間に位置する、切断することと、
前記エネルギーストレージおよび前記関連付けられたコンバータを用いて前記ACエクスポートケーブルの通電を維持することと、
前記エネルギーストレージおよび前記関連付けられたコンバータを用いて前記エクスポートケーブルを介して、前記ウインドファームの電気インフラストラクチャーの少なくとも一部分を通電することと、
前記第1の位置で前記ウインドファームを前記電気グリッドに再接続することと、を含む方法。
【請求項9】
前記ウインドファームの電気インフラストラクチャーの前記少なくとも一部分が、前記エクスポートケーブルを介して通電が維持され、前記ウインドファームの前記少なくとも一部分は、前記第1の位置で前記ウインドファームを前記電気グリッドに再接続する前にしばらくの間アイランドモードに維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前述の請求項のいずれか一項に記載の方法のための関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージの使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合されたウインドファーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドファーム、具体的には、電気グリッドをブラックスタートするためのウインドファームの方法および使用に関する。
【0002】
発電および送電の分野では、ブラックスタートは、電気グリッド、すなわち送電システムまたは配電システムを、ブラックアウト、すなわちグリッドにおける電力をすべて失った後に再通電する必要があるときに、送電システム運用者TSO、配電システム運用者DSO等の電気グリッドの運用者に提供されるサービスである。グリッドのサポートなしでグリッドシステムをそれ自体で再通電する機能は、ブラックスタート・サービスとして知られる。これは、グリッド運用者が維持および提供のために選択された発電機について支払うサービスである。
【0003】
グリッドのブラックアウトの場合、発電所などの発電機へのグリッド接続だけでなく消費者へのグリッド接続もオープンになり、グリッドはもはや通電していないより小さなサブシステムに分割される。次いで、システムの再開プロセスは、発電所がアイランドモード、すなわちグリッドへの接続なしで電源投入され、次いで、発電所がグリッドの個々の部分に接続し、それを再通電するために使用される段階的プロセスによって行われる。その後に、グリッドの個々の部分が同期され、再度相互接続される。送電システム運用者および配電システム運用者は、グリッド動作を再確立するための詳細な手順を有してはいるものの、停電がどの程度広範囲にわたるかに応じて、再確立プロセスは数時間かかる可能性がある。デット、すなわち非通電のグリッドに接続し、それを再通電することができる発電所は、ブラックスタート発電所と呼ばれ、上述したように、送電システム運用者および配電システム運用者がブラックスタートサービスを提供するために発電所のオーナーと契約する。ブラックアウトの場合、重要なインフラを含む多数の消費者には電力がないため、グリッドおよびそれへの供給が可能な限り迅速に再確立されることが最も重要である。したがって、ブラックスタートの発電所のためのスタートアップ時間を可能な限り短く保つことが重要である。しかしながら、すべての発電所がブラックスタートの機能を有しているわけではなく、例えば、風力タービン、ウインドファーム、および光起電プラントは通常有していない。例えば、風タービンで多くの場合に使用される非同期発電機は、その磁化のために外部の安定した電力供給に高く依存し、外部の電力システム、すなわちグリッドへの接続が失われるときに、停止されない場合、同期生を失い、手に負えない状態を経験することになる。2倍供給非同期発電機でも、停止されない場合、手に負えない状態を経験する前では、0.1~3秒の範囲の短時間にわたってグリッドの損失をライドスルーすることしかできず、グリッドが再度通電された後に煩雑な再開手順を実行する必要がある。永久磁石発電機を備える風力タービンなどの他のシステムは、AC/DC変換およびDC/AC変換に依存し、後者は、風力タービンを用いて電力の生成を開始する前に、AC/DCおよびDC/AC変換器に電力を投入することができるように外部電力システムからの電力も必要とする。光起電プラントのDC/AC変換も同様である。
【0004】
ライドスルー失敗、低電圧ライドスルー、および高電圧ライドスルーは、電力システムにおける短時間の異常電圧イベントを記述するためによく使用されるフェーズであり、ライドスルーとは風力タービン、ウインドファームなどのシステムおよび構成要素が接続されたままであることを意味する。明らかにこのような発電機は、ブラックスタートにはあまり適していない。
【0005】
したがって、従来、ブラックスタート・サービスは、同期発電機を備える中央火力発電所によって提供されてきたが、火力発電所の漸次的廃止に伴って、送電システム運用者および配電システム運用者はブラックスタート・サービスの新しい提供者についての増加する需要に直面している。したがって、特にウインドファームにおいて、電力を生成する風力タービンなどの再生可能エネルギー源が、電気グリッド、すなわち上述の送電および配電システムのブラックスタートのために使用され得る場合を対象とする。さらに、より大きなウインドファームを洋上にする傾向があり、それらはブラックスタートサービスのためにこれらを使用することを特に対象とする。
【0006】
この点、ブラックスタートのために風力タービンおよびウインドファームを使用する様々な方法が既に提案されている。例は、特にUS8000840、EP1909371、CN104836248、およびUS2012/0261917の開示で見出される。これらの開示の方法に共通することは、同期発電機を備える中央火力発電所からの従来のブラックスタートとほぼ同じ方法で、ブラックスタート問題にアプローチしていることである。すなわち、ディーゼルエンジン駆動発電機、発電機を駆動するガス燃焼タービンなどの小さな発電機を開始することである。次に、小さなディーゼル発電機が電力を提供してより大きな発電機、例えばガス燃焼タービン駆動発電機、おそらくはアイランドモードにあるより大きな蒸気駆動ターボ発電機を開始させて、最終的には、安定したアイランドモードに達するときに、グリッドに再接続してそれの電源を投入する、すなわちそれをブラックスタートし、次に、グリッドが、グリッドを必要とする他の発電所が開始および再接続することを可能にする。同様に、上述の開示では、単一の風力タービン発電機に近接するソースは、その1つの風力タービンをスタートアップするために使用され、単一の風力タービン発電機が安定しているときにのみ、同じアレイケーブル線またはバスバーに接続された他の風力タービン発電機を開始させることができる。したがって、ウインドファーム全体の電源が投入され、アイランドモードで十分に安定して動作するまでにかなりの時間をかけてから、電気グリッドをブラックスタートするために使用することができるようにしている。
【0007】
これを発端として、本発明の目的は、風力タービンのスタートアッププロセスを簡略化し、これのスタートアップ時間を低減して、ブラックスタート・サービスのためにウインドファームを使用することがより実現可能であり、魅力的なものとすることである。
【0008】
この課題に直面して、本発明の発明者は、ウインドファームのブラックスタートに必要な時間を低減し、ウインドファームのブラックスタートに対して全く新しいアプローチを適用することによって動作の複雑性を低減し、特に大きなウインドファームや海上ウインドファームのためのそのようなブラックスタートについての新しくかつより速い方法を実現した。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、この目的は電気グリッドをブラックスタートするための方法によって達成され、その方法は、電気グリッドを提供することと、電気インフラストラクチャーおよび第1の数の風力タービン発電機を有するウインドファームを提供することと、ウインドファームを電気グリッドに接続するためのACエクスポートを提供することと、関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージを提供することと、第1の位置でウインドファームをグリッドから切断することであって、第1の位置は、関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージと電気グリッドとの間に位置する、切断することと、エネルギーストレージおよび関連付けられたコンバータを用いてACエクスポートケーブルを通電すること、エネルギーストレージおよび関連付けられたコンバータを用いてエクスポートケーブルを介してウインドファームの電気インフラストラクチャーの少なくとも一部分を通電することと、風力タービン発電機によってウインドファームの電気インフラストラクチャーへのエネルギー供給を再確立することと、第1の位置でウインドファームを電気グリッドに再接続することと、を含む。
【0010】
エネルギー源がそれをするのに必要なエネルギーを提供するのに十分に大きい限り、ACエクスポートケーブルを介してアイランドモードのウインドファームの電気インフラストラクチャーを通電することで、上記の従来のアプローチと比較してかなり速いブラックスタートを可能にする。これは、多数の風力タービン発電機が同時に供給を受けることができ、グループで、または同時に開始するためにリリースされるためである。ただし、洋上ウインドファームのために陸上、すなわち地上にこの大きなストレージを提供することは、少なくとも洋上でそれを提供することに比べて問題とならず、STATCOMなどのコンバータ回路は、グリッドコードによって設定される反応性電力供給に関する要件を順守するために、ACエクスポートケーブルと電気グリッドとの間のインターフェースで多くの場合にすでに使用されている。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、ウインドファームは洋上にあり、関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージは陸上にある。
【0012】
本発明の第1の態様のさらなる好ましい実施形態によれば、ウインドファームの電気インフラストラクチャーは、バスバーシステムに接続可能な対応する数のアレイケーブル線に接続可能な2つ以上のグループの風力タービン発電機を含み、エネルギーストレージおよび関連付けられたコンバータを用いてエクスポートケーブルを介してウインドファームの電気インフラストラクチャーのうちの少なくとも一部分は、アレイケーブル線の数のうちの1つを含む。
【0013】
単一の配列ケーブル線のみが通電され、ウインドファーム全体が通電されない場合、必要なエネルギーストレージが少なくなり、依然として電気グリッドおよび/またはウインドファームの残りの部分を再開する能力がある安定したアイランドモードを確立するのに十分であり得る。いずれの場合でも、これは上記の開示された従来のアプローチよりも速くなるであろう。
【0014】
本発明の第2の態様の別の好ましい実施形態によれば、コンバータはSTATCOMを含む。STATCOMは、コンバータのSTATCOM機能を提供するコンバータに統合された部分またはそこから分離したものであり得る。STATCOMは、アイランド化したブラックスタートウインドファームを電気グリッドに再接続するときに電圧安定性および反応性電力バランスを維持するためだけではなく、ACラインおよびそれに関連付けられた高電圧構成要素を通電するときに電圧安定性および反応性電力バランスを維持するために使用することができる。
【0015】
本発明の第1の態様のさらなる好ましい実施形態によれば、関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージは、第1の位置で風力ファームを電気グリッドに再接続した後に電気グリッドに電力を供給する。このようにして、エネルギーストレージの任意の残りの容量は、電気グリッドの再通電およびこの間のその安定性をサポートするために使用することができる。
【0016】
本発明の第1の態様によるさらなる好ましい実施形態によれば、方法は、1つ以上のダンプロードおよびダンプロードを制御するための制御システムを提供することと、制御システムを使用して、ダンプロードにおけるエネルギー散逸を制御して、切断されたウインドファームのバランシングを助ける、すなわち、アイランド化したシステムを安定に保つのを助けることをさらに含む。切断された、すなわちアイランド化したウインドファームに接続される制御されたダンプロードを使用することは、特にいったん風力タービンがアイランド化したウインドファームに再接続されると、アイランド化したウインドファームのバランシングに貢献し得る。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、同期情報がさらにコンバータに送信される。これにより、他の類似したウインドファームが同時性においてブラックスタートすることを可能にし、次に、異なるブラックスタートウインドファームによって再通電されるセグメント化された部分が、互いに再接続する前に同期するための時間が少なくなるまたはなくなるため、より早く再統合することを可能にする。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、目的は、上記方法によるブラックスタート方法のための関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージの使用によって達成される。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、目的は、電気グリッドを再通電する方法の使用によって達成され、その方法は、電気インフラストラクチャーおよび第1の数の風力タービン発電機を有するウインドファームを提供することと、ウインドファームを電気グリッドに接続するためのACエクスポートケーブルを提供することと、関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージを提供することと、第1の位置でグリッドからウインドファームを切断することであって、第1の位置は、関連付けられたコンバータを備えるエネルギーストレージと電気グリッドとの間に位置する、切断することと、エネルギーストレージおよび関連付けられたコンバータを用いてACエクスポートケーブルの通電を維持することと、エネルギーストレージおよび関連付けられたコンバータを用いてエクスポートケーブルを介してウインドファームの電気インフラストラクチャーの少なくとも一部分を通電することと、第1の位置でウインドファームを電気グリッドに再接続することと、を含む。
【0020】
これにより、エネルギーストレージは無停電電力ストレージとして使用され、アイランドモードの切断されたウインドファームをサポートし、それによって、風力タービンはアイランドモードが確立されるまでライドスルーすることを可能にし、ウインドファームは、グリッドが再通電されるまでの拡張期間にわたってそのままでいることができる安定したアイランドモードに移行し、ウインドファームが制御された方式で再接続することができるか、明細書に説明するようにアイランドモードのウインドファームはグリッドを再通電するために使用され得る。
【0021】
したがって、本発明の第3の態様の好ましい実施形態によれば、風力ファームの電気インフラストラクチャーの少なくとも一部分が、エクスポートケーブルを介して通電に維持されるときに、ウインドファームの少なくとも一部分は、第1の位置でウインドファームを電気グリッドに再接続するまでしばらくの間アイランドモードに維持される。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、本発明の目的は、上述した方法を実行するように適合されたウインドファームを提供することによって達成される。
【0023】
ここで、本発明を非限定の例示の実施形態に基づいて、および図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による方法を行う能力があるウインドファームに電気グリッドを組み込むシステムを概略的に簡略化して示す。
【0025】
以下の説明では、風力タービン発電機が洋上にあると想定される。
図1のシステムのレイアウトまたはトポロジーの多くはかなり従来的なものであり、本発明の本質は、ウインドファームのブラックスタートおよびアイランドモード動作に対する全く新しいアプローチに存在するため、簡潔にのみ説明する。トポロジーは、
図1に示すものよりもずっと複雑であることがあるが、説明上の理由から簡略化している。類似のトポロジーは、先行技術文献のEP2573896に開示されている。
【0026】
通常の状況下で電気グリッド2に接続されるウインドファーム1は、ある数の風力タービン3および4を含む。
【0027】
本出願において電気グリッド2という用語は、配電システムおよび送電システムの両方を含むものとして理解されるべきである。送電システムは多くの場合、100kvより高い電圧で動作するシステムとして定義され、66kvなどの低電圧で動作するシステムは多くの場合、「配電システム」といわれる。これらのシステムを動作させる企業は多くの場合、それぞれ送電システム運用者(Transmission System Operator)および配電システム運用者(Distribution System Operator)と呼ばれる。したがって、ウインドファーム1は、送電システムまたは配電システムのいずれかに接続する。そのため、ブラックスタート・サービスは、送電システムに直接提供されるか、あるいは配電システムに/を介して提供されることができる。
【0028】
風力タービン3、4のグループは、通常の低電圧発電機出力を洋上MVバスバー9で使用される中電圧(MV)に変圧するある数の変圧器7、8を介して、共通アレイケーブル線5、6にそれぞれ接続されている。典型的には、低電圧(LV)は400~990Vであり、中電圧は典型的には約33~35kv、または約66kvである。一部の風力タービン発電機は中電圧で動作し、その場合変圧器7、8は必要ないことがあることに留意されたい。しかしながら、現在、典型的な風力タービン発電機は非同期発電機または永久磁石同期発電機であり、出力はAC/DC/ACコンバータを介して結合されている。好適な数の変圧器10が、洋上MVバスバーシステム9とACエクスポートケーブル12が接続されている洋上高電圧バスバーシステム11との間に接続されている。典型的には、ACエクスポートケーブルのために使用される高電圧(HV)は220kvである。陸上では、ACエクスポートケーブルが陸上HVバスバーシステム13に接続されている。次に、陸上HVバスバーシステム13は、典型的に400kvの電気グリッドのHVシステム電圧を供給するグリッド変圧器15を介して、送電側HVバスバーシステム14に接続されている。分かるように、システムはさらに、陸上HVバスバー13への変圧器18とコンバータ17を介して接続されたバッテリーなどのエネルギーストレージ16を含む。さらに、STATCOM21が、
図1に図示するように、例えば、別個の変圧器22を介して、陸上HVバスバー13に接続され得る。ダンプロード20も提供され得る。
【0029】
STATCOMについては、電圧制御、反応性電力制御、周波数制御等の様々な機能を提供するために、多種多様な電力電子装置およびサブシステムが電力システムで使用されていることに留意されたい。このような装置およびサブシステムは多くの場合、STATCOM(Static Synchronous Compensator)、SVC(Static Var Compensator)、FACT(Flexible AC Transmission System)等と呼ばれる。説明を簡略化するために、本説明全体を通してSTATCOMを使用するが、説明は任意の他の装置またはサブシステムにも適用されると理解されるものとする。
【0030】
図1で説明した設計は1つの実施形態であり、当業者であれば、複数の他の可能な設計があると理解することに留意されたい。特に、変圧器18は、コンバータ17をグリッド変圧器15上の三次巻線に接続するグリッド変圧器15と組み合わせられ得ることが明らかであるべきである。これは、しばしば見られるSTATCOM21を接続する方法である。同様に、変圧器18は、HVバスバーシステム14などの他の場所で接続することができ、大規模な構成要素を洋上に配置することに関連付けられた費用により興味のないものとなることがあるが、原理的には洋上バスバーシステム11または洋上MVバスバー9で接続することもできる。
【0031】
本発明の追加的な態様によれば、電気グリッド2を、その損失の場合に置換するためにコンバータ17の好適な制御を実施することが提案されている。すなわち、グリッド2の損失の場合、それへの接続が、例えば、グリッド変圧器15と陸上HVバスバーシステム13との間で直ちに中断される。このように確立されたアイランドモードが、個別の風力タービン3、4のライドスルー機能よりも実質的に長い時間にわたりエネルギーストレージ部16およびコンバータ17によって、安定に保つことができ、それによってウインドファーム1がグリッド2にブラックスタート・サービスを提供する準備が整ったか、またはグリッドが再通電されたときにグリッドとの同期および再接続の準備が整ったアイランドモードに直接的に向かわせることができる。1つ以上のダンプロード20が、アイランド化したシステムの異なる位置で使用されてもよく、それを安定にする、すなわち、周波数および電圧安定性を保つのを助ける。1つのそのような位置は、エネルギーストレージ16およびコンバータ17と接続して、または関連付けられた陸上サブステーションにある。
図1は、この点においては純粋に概略図であり、エネルギーストレージ16、コンバータ17、ダンプロード20、およびSTATCOM21を表すブロックは、実際には、既に上記に示したものとは異なる方法で結合されることができるか、またはそうなるであろうことに留意する。典型的には、ダンプロード20は、散逸した電力が例えば電気供給を電子的にチョッピングすることによって制御される空冷抵抗器バンクを含む。
【0032】
しかしながら、ライドスルーが失敗する場合でも、依然として、ウインドファーム1は、本発明の第1および第2の態様による方法を実施し、単一の風力タービン発電機3、4が、他の風力タービン発電機3、4を開始させるために使用することができるまでに、それ自体で最初にアイランドモードで安定化する順次開始よりも、風力タービン発電機3、4のグループが共通のエネルギーストレージ16を用いて同時に開始し得ることによる、新規かつ進歩性のあるアプローチによるブラックスタート・サービスを提供することができる。
【0033】
その場合、エクスポートケーブル12だけでなく、変圧器10、HVバスバーシステム11、MVバスバーシステム9、アレイケーブル線5、6等を含むウィンドファーム1のインフラストラクチャーの様々な部分が従来のスイッチ装置によって互いに隔離される。
【0034】
ここで、エネルギーストレージ16の大きなエネルギーストレージ容量を利用することで、本発明による新規な段階的プロセスにおいて、アイランド化したウィンドファーム1のインフラストラクチャーを通電することができる。
【0035】
そのため、コンバータは最初に変圧器18およびバスバーシステム13を通電する。これに関して、本明細書で説明したもののように、システムのサイズおよび容量の変圧器を通電するために必要なエネルギーの量はほとんど無視できないことに留意されたい。一部の場合、洋上ウインドファーム1まで100kmを超えることもある実質的な長さを有し得るACエクスポートケーブル2を通電するのに必要なエネルギーと同様である。
【0036】
HVバスバーシステム11とMVバスバーシステム9との間の変圧器10うちの少なくとも1つと、最終的にはそれぞれのアレイケーブル線5、6に接続されたグループの個々の風力タービン発電機3、4と関連付けられた変圧器7、8および/またはコンバータと共にアレイケーブル線5、6のうちの少なくとも1つを通電するためにさらなるエネルギーが必要とされる。
【0037】
いったん通電されると、この通電したシステムは、エネルギーストレージ16およびコンバータ17によって安定に保つことができ、アイランド化したシステムの電圧を安定化しまたは反応性電力をバランシングするためのSTATCOM21の支援を伴って、可能であればそれを伴わずに、風力タービン発電機3、4のグループ全体またはその複数の部分がアイランド化したシステムに再接続され得る。エネルギーストレージ16のストレージ容量に応じて、より多くのアレイケーブル線5、6およびより多くの変圧器10が同時に通電することができる。いずれの場合でも、単一のアレイケーブル線5、6上の風力タービン発電機3、4の1つのグループのみを同時に通電および接続すれば、単一の風力タービン発電機3、4を最初に開始する従来のアプローチよりも実質的に速く、より多くの風力タービン発電機をアイランド化したウィンドファームのインフラストラクチャーに追加することによってアイランド化したシステムの電力を増加させる。
【0038】
風力ファーム1の安定したアイランドモードを維持することは、風力タービン発電機3、4によって供給される電力の制御を伴うかなり複雑なタスクであり、例えば、周波数および電圧を安定に保つために、フル生産未満で風力タービン発電機3、4を保ち、おそらくは1つ以上のダンプロード20における過剰なエネルギー生産を散逸させる。
【0039】
新規で進歩性のある方法を用いて、風力ファーム1または少なくとも十分に大きな部分の安定したアイランドモードがいったん達成されると、風力ファーム1は無電力の電気グリッド2に再接続され得る。再接続は即座に必要ではない。むしろ、エネルギーストレージ16およびコンバータ17、ダンプロード20、STATCOM21等により、アイランド化したシステムは、制御され、所望の期間、原理的には任意の長さの時間安定した状態に保たれ得る。完全なブラックアウトの後にブラックスタートが必要な場合、電気グリッド2は通常小さなセクションに分割されており、ブラックスタートを提供するウインドファーム1に隣接するセクションのみがウインドファーム1によって通電されるようにする。その後にのみ、電気グリッド2の他の部分は、例えば、ブラックスタート機能を有さない他のウインドファームを開始させ、最終的にはすべての消費者へのエネルギーを伴う通常の動作に達するように、通電される。
【0040】
しかしながら、ブラックスタート機能を有する他の対応するまたは同一のウインドファームが存在し、電気グリッド2の他の部分に位置する場合、ブラックアウトの後にグリッド2を再確立するときに、アイランドモードにおいて電気グリッド2の様々な部分のより速い再同期および再接続につながりつつ、互いにブラックスタートするウインドファームをあらかじめ同期するように、好適なチャネル19上でそれらの間で信号を提供することができてもよい。ブラックスタート能力を備えるソーラーファームでも同じことが可能である。
【0041】
変圧器15を用いて電気グリッド2を再接続するときに、コンバータが特に安定性を高めるためにアクティブなままとしてもよい。安定性に関して、コンバータは、反応性電力の生産または吸収を可能にする関連付けられた、または統合されたSTATCOM21を有しうることに留意されたい。このように、通常、対応する電力定格を有するSTATCOM21は、反応性電力の生産および吸収に関するグリッドコード要件を順守するために、陸上サブステーションにおいてあらかじめ実装される必要があるため、ひどく高い方式で必要とされる設備および伴うコストを複雑にしない。
【0042】
さらに、コンバータの制御システム、およびタップチェンジャーを備える変圧器、スイッチ可能反応器、タップチェンジャーを備える反応器およびSTATCOM21等の他の制御可能な構成要素の制御システムは、個別にまたは協調して使用されて、例えば、通常の電圧より低い電圧で通電し、その後電圧をランプアップして、それにより通電中の過渡事象を制御することによって、ウインドファームの通電を容易にする。ウインドファーム制御システム、風力タービンシステム、およびいったん再接続された風力タービンも、アイランド化したシステムを制御することに含まれ得る。
【0043】
当業者であれば、本発明は特定のタイプの風力タービンまたはウインドファームのインフラストラクチャーに限定されないことを理解するであろう。電源全体が、例えば、上記のウインドファームについて説明されたのものと類似する方法で、グリッド接続ポイントとして生成された電力を収集し、集約するDC/AC変換ステップおよびAC/AC変換ステップを介してアレイで接続された複数の個別の電源を含む多数の場合に適用可能である。特に、例えば居住地域から離れた広大で晴れた場所、例えば砂漠にある光起電ソーラーファームは、ファームが電気グリッド2への接続のためのACエクスポート線を利用することができれば想定可能である。しかしながら、上述の風力タービンおよびソーラーパネルのほかに、一般的なアイデアとしては、中央グリッド接続ポイントでセットアップされた電気ビークルにおけるバッテリーのプールなどの分散したバッテリーストレージだけでなく、波力発電、水力発電、および熱発電を含む分散した生成またはストレージの任意のタイプまたはこれらのタイプの混合に関連する。
【国際調査報告】