(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】共ビーム走査型網膜結像システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020544628
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(85)【翻訳文提出日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 CN2019112521
(87)【国際公開番号】W WO2021046973
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】201910865740.4
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519324880
【氏名又は名称】中国科学院▲蘇▼州生物医学工程技▲術▼研究所
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU INSTITUTE OF BIOMEDICAL ENGINEERING AND TECHNOLOGY, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.88, Keling Road, New District Suzhou, Jiangsu 215163, CN
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】何益
(72)【発明者】
【氏名】史国▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】高峰
(72)【発明者】
【氏名】孔文
(72)【発明者】
【氏名】▲ケイ▼利娜
(72)【発明者】
【氏名】李婉越
(72)【発明者】
【氏名】王晶
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼欣
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB06
4C316AB09
4C316AB12
4C316AB16
4C316FA04
4C316FA06
4C316FA19
4C316FC14
4C316FY05
4C316FY07
4C316FY10
(57)【要約】
本発明は、光源モジュール(1)と、適応型光学モジュール(2)と、ビーム走査モジュール(3)と、小視野中継モジュール(5)と、大視野中継モジュール(6)と、視標モジュール(9)と、瞳監視モジュール(7)と、検出モジュール(8)と、制御モジュール(10)と、出力モジュール(11)と、を備える共ビーム走査型網膜結像システムを提供する。このシステムは、適応型光学技術を利用して人眼の収差をリアルタイムで補正し、ビームの同期走査の設定により、小視野と大視野の2セットの中継光路構造と合わせて、大視野範囲内の共ビーム走査結像機能と小視野範囲内の適応型光学高解像度結像機能を一緒に実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共ビーム走査型網膜結像システムであって、
光源モジュールと、適応型光学モジュールと、ビーム走査モジュールと、小視野中継モジュールと、大視野中継モジュールと、視標モジュールと、瞳監視モジュールと、検出モジュールと、制御モジュールと、出力モジュールと、を備え、
前記光源モジュールは、異なる波長の少なくとも2つの平行ビームを出射し、前記平行ビームは、順次、前記適応型光学モジュール、ビーム走査モジュール、小視野中継モジュールまたは大視野中継モジュールを通過して人眼に照射され、人眼から散乱された、人眼収差情報および光強度情報を含む結像光が元の経路に沿って戻り、前記適応型光学モジュールおよび検出モジュールに達し、
前記適応型光学モジュールは、人眼収差情報を含む結像光を受光し、波面収差の測定および補正をリアルタイムで実行し、
前記ビーム走査モジュールは、2軸走査ミラーを含み、前記2軸走査ミラーは、光路の入射方向に沿って第1の透過・反射型望遠鏡を介して前記適応型光学モジュールに接続されるとともに、光路の出射方向に沿って第2の透過・反射型望遠鏡を介して前記小視野中継モジュールまたは大視野中継モジュールに接続されることにより、小視野高解像度結像および大視野低解像度結像にそれぞれ用いられ
前記小視野中継モジュールは、ビーム拡大望遠鏡として配置され、前記大視野中継モジュールは、ビーム収縮望遠鏡として配置され、
前記視標モジュールは、人眼を視標へ誘導して固視させるためのものであり、
前記瞳監視モジュールは、人眼の瞳を位置合わせて監視するためのものであり、
前記検出モジュールは、人眼からの結像光の戻り光を取得して電気信号に変換して、前記制御モジュールに送信するためのものであり、
前記出力モジュールは、前記制御モジュールに接続され、人眼の結像画像を表示および記憶するためのものである、
ことを特徴とする共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項2】
入射光路に沿って順次に設けられた第1の2色性ビームスプリッター、第2の2色性ビームスプリッター、第3の2色性ビームスプリッター、第4の2色性ビームスプリッターを含む2色性ビームスプリッター群モジュールをさらに備え、
前記光源モジュールは、入射光路に沿って順次に配置された光源、コリメータおよび第1のビームスプリッターを含み、前記適応型光学モジュールへ平行ビームを出射し、前記光源から出射された光は、前記コリメータを介して、一部の光が前記第1のビームスプリッターを透過して前記適応型光学モジュールへ入射され、
前記適応型光学モジュールは、人眼からの結像光の戻り光の光路に沿って順次に設けられた波面補正器、第2のビームスプリッター、光学フィルターおよび波面センサーを含み、前記ビーム走査モジュールに接続され、
前記光源モジュールから出射された平行ビームは、前記波面補正器で反射され、前記ビーム走査モジュールに達し、
人眼収差情報および光強度情報を含む結像光の戻り光は、前記ビーム走査モジュールから出射されて、前記波面補正器で反射され前記第1のビームスプリッターに達し、前記第1のビームスプリッターで反射された光は、一部の光が前記第2のビームスプリッターで反射され、前記光学フィルターを通過し前記波面センサーに達し、波面収差の測定を実行され、他の部分の光が前記第2のビームスプリッターを透過し、前記検出モジュールに入射され、
前記波面センサーは、人眼収差情報を含む結像ビームを受光し、含まれた人眼収差情報を前記制御モジュールに送信し、前記制御モジュールは、波面演算を行い、波面収差の検出を実行して波面制御電圧を取得し、得られた波面制御電圧を前記波面補正器に出力し、前記波面補正器は、波面収差を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項3】
前記検出モジュールは、第5の2色性ビームスプリッターと、第1の検出光路と、第2の検出光路と、を含み、
前記第5の2色性ビームスプリッターは、受光した光を透過させ前記第1の検出光路へ出射するとともに前記第2の検出光路へ反射し、
前記第1の検出光路は、第1の集光レンズと、第1のピンホールと、第1の検出器と、を含み、
前記第2の検出光路は、第2の集光レンズと、第2のピンホールと、第2の検出器と、を含み、
人眼の光強度情報を含む結像ビームの戻り光は、前記第5の2色性ビームスプリッターを透過して前記第1の集光レンズに出射され、前記第1のピンホールを通過して前記第1の検出器に達して、網膜結像画像が得られ、
人眼の光強度情報を含む結像ビームの戻り光は、前記第5の2色性ビームスプリッターで反射されて前記第2の集光レンズに出射され、前記第2のピンホールを通過して前記第2の検出器に達して、網膜結像画像を得られ、
前記ビーム走査モジュールは、入射光路に沿って順次に設けられた第1の透過・反射型望遠鏡、2軸走査ミラーおよび第2の透過・反射型望遠鏡を含み、前記2軸走査ミラーは、前記制御モジュールから出力された周期的電圧により駆動され、網膜平面の横方向および縦方向の2次元走査を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項4】
前記視標モジュールは、LEDアレイと、視標レンズと、第1の平面ミラーと、を含み、
前記LEDアレイのいずれかのLEDランプビーズは、前記制御モジュールの制御により点灯され、発出した光は、前記レンズを通過して、前記第1の平面ミラーで反射され、前記第1の2色性ビームスプリッターで反射されて、順次、前記第2の2色性ビームスプリッター、第3の2色性ビームスプリッターおよび第4の2色性ビームスプリッターを通過して人眼に達し、人眼が発光したLEDランプビーズを注視することによって固視が実現され、
前記瞳監視モジュールは、環状LEDアレイと、結像レンズと、エリアアレイ検出器と、を含み、
前記環状LEDアレイから発出された光は、人眼の瞳を照明し、人眼の瞳で反射されて前記環状LEDアレイの中空部を通過し、前記第4の2色性ビームスプリッターを通過して前記第3の2色性ビームスプリッターで反射され、前記結像レンズにより集束されて前記エリアアレイ検出器に達し、瞳結像を実行し、
前記エリアアレイ検出器は、受信した光信号を電気信号に変換して前記制御モジュールに送信し、前記制御モジュールは、瞳結像画像を取得し前記出力モジュールに出力し、前記出力モジュールは、表示および記憶を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項5】
前記小視野中継モジュールは、第1のレンズと第2のレンズとからなる透過型望遠鏡、または第1の球面ミラーと第2の球面ミラーとからなる反射型望遠鏡を含み、拡大倍率が1よりも大きいであり、
前記小視野中継モジュールは、前記望遠鏡の2枚のレンズの間にまたは球面ミラーの間に設けられた第1の焦点調節機構をさらに含み、
前記第1の焦点調節機構は、互いに直交する2枚の平面ミラーを含むとともに、望遠鏡の光軸中心に沿って往復移動することによって人眼の屈折異常を補償することが可能であり、
前記大視野中継モジュールは、第3のレンズと第4のレンズとからなる透過型望遠鏡、または第3の球面ミラーと第4の球面ミラーとからなる反射型望遠鏡を含み、拡大倍率が1よりも小さいであり、
前記大視野中継モジュールは、前記望遠鏡の2枚のレンズの間にまたは球面ミラーの間に設けられた第2の焦点調節機構をさらに含み、
前記第2の焦点調節機構は、互いに直交する2枚の平面ミラーを含むとともに、望遠鏡の光軸中心に沿って往復移動することによって人眼の屈折異常を補償することが可能である、
ことを特徴とする請求項4に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項6】
以下のように、前記小視野高解像度結像を実行し、
前記光源モジュールから出射されたビームは、前記適応型光学モジュールの前記波面補正器、前記ビーム走査モジュールを通過し、前記第1の2色性ビームスプリッターで反射されて、前記小視野中継モジュールを通過し出射されて、前記第2の2色性ビームスプリッターで反射されて、前記第3の2色性ビームスプリッターおよび第4の2色性ビームスプリッターを通過し、前記環状LEDアレイの中空部を通過して、人眼に達し、人眼の光学システムにより眼底の網膜にける1点に集束され、眼底の網膜から散乱された、人眼収差情報および眼底の前記の1点の光強度情報を含む結像ビームは、元の経路に沿って戻り、前記ビーム走査モジュールから出射されて、前記波面補正器で反射されて、前記第1のビームスプリッターに達し、
前記第1のビームスプリッターで反射されたビームは、前記第2のビームスプリッターに達して、一部の光が反射され前記波面センサーに入射されて、前記波面センサーに受信された人眼収差情報が前記制御モジュールに送信され、
前記制御モジュールは、波面収差を復元して収差補正電圧を算出して、収差補正電圧を前記波面補正器に送信し、前記波面補正器は、人眼収差をリアルタイムで補正し、
且つ、他の部分の光が前記第2のビームスプリッターを透過して、全部、前記第5の2色性ビームスプリッターを通過して、前記第1の集光レンズおよび前記第1のピンホールを通過して前記第1の検出器に達し、
前記第1の検出器は、受光した眼底網膜の光信号を電気信号に変換して前記制御モジュールに送信し、
前記制御モジュールは、信号同期処理を行い、かつ前記電気信号をサンプリングして再現することによって網膜の小視野高解像度結像画像を取得し前記出力モジュールに送信して、前記出力モジュールは、表示および記憶を実行し、
以下のように、前記大視野低解像度結像を実行し、
前記光源モジュールから出射されたビームは、前記適応型光学モジュールの前記波面補正器、前記ビーム走査モジュール、前記第1の2色性ビームスプリッターおよび前記第2の2色性ビームスプリッターを通過して、前記第3の2色性ビームスプリッターで反射され、前記大視野中継モジュールに入射されて出射され、前記第4の2色性ビームスプリッターで反射され、前記環状LEDアレイの中空部を通過して、人眼に達し、人眼の光学システムにより眼底の網膜にける1点に集束され、眼底の網膜から散乱された、人眼の眼底の前記の1点の光強度情報を含む結像ビームは、元の経路に沿って戻り、前記ビーム走査モジュールから出射されて、前記波面補正器で反射され前記第1のビームスプリッターに達し、
前記第1のビームスプリッターで反射されたビームは、前記第2のビームスプリッターを通過して、全部、前記第5の2色性ビームスプリッターで反射され、前記第2の集光レンズおよび前記第2のピンホールを通過して、前記第2の検出器に達し、
前記第2の検出器は、受光した眼底網膜の光信号を電気信号に変換して前記制御モジュールに送信し、
前記制御モジュールは、信号同期処理を行い、かつ前記電気信号をサンプリングして再現することによって網膜の大視野低解像度結像画像を取得し前記出力モジュールに送信して、前記出力モジュールは、表示および記憶を実行する、
ことを特徴とする請求項5に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項7】
前記光源モジュールは、少なくとも2つの光源を含み、
複数の光源から出射された光は、光ファイバ結合器によって結合されてコリメータに入射し、平行ビームになり、または、複数の光源から出射された光は、各コリメータで平行ビームになり、2色性ビームスプリッターで重ね合わせて光路に入射され、
前記光源モジュールから出射された光は、波長λ
1および波長λ
2の光を含み、λ
1が600nm~850nmであり、波長λ
1の光が小視野高解像度結像を行うためのものであり、λ
2が900nm~1000nmであり、波長λ
2の光が大視野低解像度結像を行うためのものであり、
前記環状LEDアレイは、等間隔で環状に配列される少なくとも3個のLEDランプビーズを含み、中空部の透光口径が結像ビームの径以上であり、LEDランプビーズから発出された光の波長がλ
3であり、かつ、λ
3が1000nmよりも大きいであり、
前記視標モジュールの前記LEDアレイは、等間隔でアレイ状に配列されるLEDランプビーズであり、発出した光の波長がλ
4であり、波長λ
4の波長範囲が380nm~760nmの可視光スペクトルであり、かつ、λ
4は、λ
1、λ
2との差が少なくとも50nmである、
ことを特徴とする請求項6に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項8】
前記第1の2色性ビームスプリッターは、波長がλ
1およびλ
4の光を反射する特性を有し、波長がλ
2の光を透過する特性を有し、
前記第2の2色性ビームスプリッターは、波長がλ
1の光を反射する特性を有し、波長がλ
2およびλ
4の光を透過する特性を有し、
前記第3の2色性ビームスプリッターは、波長がλ
2およびλ
3の光を反射する特性を有し、波長がλ
1およびλ
4の光を透過する特性を有し、
前記第4の2色性ビームスプリッターは、波長がλ
2の光を反射する特性を有し、波長がλ
1、λ
3およびλ
4の光を透過する特性を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項9】
前記適応型光学モジュールにおける前記波面センサーとしては、マイクロプリズムアレイハルトマン波面センサー、マイクロレンズアレイハルトマン波面センサー、四角錐センサーおよび曲率センサーが挙げられ、
前記波面補正器としては、可変形ミラー、液晶空間光変調器、微細加工フィルム変形ミラー、微小電気機械式変形ミラー、バイモル圧電セラミックス変形ミラー、液体変形ミラーが挙げられ、
第1のビームスプリッターで反射された結像ビームは、前記第2のビームスプリッターにより分割され、5%の光が反射されて前記光学フィルターを通過して前記波面センサーに入射され、波面収差の測定が実行され、残りの95%の光が透過して前記第5の2色性ビームスプリッターに達し、
前記光学フィルターは、透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ
1を満足する広帯域フィルターであってもよく、または、透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ
1を満足する複数の狭帯域フィルターの組み合わせであってもよく、
大視野低解像度結像のため選択された波長λ
2の結像ビームは、全部、前記光学フィルターにより遮断され、波面センサーに入射しなく、
前記波面センサーにより検出された波面収差は、制御モジュールによって処理されて、波面制御電圧が得られ、波面補正器に出力され、波面収差の補正が行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【請求項10】
前記2軸走査ミラーは、1枚の2次元検流計スキャナーで構成され、横方向および縦方向におけるビームの走査を行うものであってもよく、または、2枚の1次元検流計スキャナーを組み合わせで構成され、2枚の検流計スキャナーの走査方向を互いに直交方向とし、横方向および縦方向のそれぞれにおけるビームの走査を行い、かつ、2枚の検流計スキャナーを透過・反射型望遠鏡に介して接続されて瞳整合を実行するものであってもよく、
前記第1の透過・反射型望遠鏡は、前記波面補正器と前記2軸走査ミラーとを接続して瞳整合を実行するためのものであり、拡大倍率が前記2軸走査ミラーと前記波面補正器のビーム透過口径との比であり、
前記第2の透過・反射型望遠鏡は、前記2軸走査ミラーの出射光を共役にして前記第1の2色性ビームスプリッターへ出射するためのものである、
ことを特徴とする請求項6に記載の共ビーム走査型網膜結像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学結像の技術分野に関し、特に、共ビーム走査型網膜結像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の共ビーム走査技術は、1987年から製品化されたレーザ共ビーム走査結像装置(Webb R,Hughes G,Delori F.Confocal scanning laser ophthalmoscope.Applied optics.1987 ;26(8) :1492-9)が発展し、網膜結像分野に広く応用され、大視野の眼底網膜生体結像手段を実現された。しかし、眼球は複雑な光学系であり、屈折異常がない眼でも光学収差が必然的に存在する。特に、大きな開口数で高解像度を求める場合に、光学理論に応じて、瞳孔が大きくなる際に回折限界の解像度が高くなるが、瞳孔が大きくなるにつれて人眼の収差を多く生じて実際の解像度が制限される。従来の共ビーム走査型レーザ検眼鏡は、10度以上の大視野で眼底に対する撮像が実行できるが、20μm以下の血管を識別しにくいので視細胞などの微細構造の観察が実行できない。
【0003】
90年代から、適応型光学技術が眼底網膜結像分野に導入されるにつれて、適応型光学的な波面補正器などの補正手段を利用して人眼の収差が良く補正されて、回折限界の高解像度が得られ、生体内の網膜微細血管及び視細胞の観察が初めて実現された。特許番号がZL201010197028.0の特許出願には、共ビーム走査結像を実現するために、2つの個別の検流計スキャナーにより網膜平面に対し2次元的に同期走査を行って、高解像度の結像機能を実現可能な適応型光学網膜結像装置が開示された。しかし、その装置は、人眼に対して、最大3度視野で高解像度結像しか実現できない。適応光学収差補正アイソプラナティック領域の制限により、適応型光学系は、高解像度結像を実現できるが、3度以内の小視野で結像されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の共ビーム走査型レーザ検眼鏡は、結像の視野が大きくなるが、解像度が網膜の微細構造の観察に不十分である。適応型光学系が適用された共ビーム走査型レーザ検眼鏡は、網膜の微細構造の観察が可能であるが、結像視野が小さいので大視野で病巣の観察が不可能である。
【0005】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであり、共ビーム走査型網膜結像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の技術手段を採用する。
【0007】
本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムは、光源モジュールと、適応型光学モジュールと、ビーム走査モジュールと、小視野中継モジュールと、大視野中継モジュールと、視標モジュールと、瞳監視モジュールと、検出モジュールと、制御モジュールと、出力モジュールと、を備える共ビーム走査型網膜結像システムであって、前記光源モジュールは、異なる波長の少なくとも2つの平行ビームを出射し、前記平行ビームは、順次、前記適応型光学モジュール、ビーム走査モジュール、小視野中継モジュールまたは大視野中継モジュールを通過して人眼に照射し、人眼から散乱された、人眼収差情報および光強度情報を含む結像光は、元の経路に沿って戻り、前記適応型光学モジュールおよび検出モジュールに達し、前記適応型光学モジュールは、人眼収差情報を含む結像光を受光して、波面収差の測定および補正をリアルタイムで実行し、前記ビーム走査モジュールは、2軸走査ミラーを含み、前記2軸走査ミラーは、光路の入射方向に第1の透過・反射型望遠鏡を介して前記適応型光学モジュールに接続されるとともに、光路の出射方向に第2の透過・反射型望遠鏡を介して前記小視野中継モジュールまたは大視野中継モジュールに接続されることにより、小視野高解像度結像および大視野低解像度結像にそれぞれ用いられる、前記小視野中継モジュールは、ビーム拡大望遠鏡として配置され、前記大視野中継モジュールは、ビーム収縮望遠鏡として配置され、前記視標モジュールは、人眼を視標へ誘導して固視させるためのものであり、前記瞳監視モジュールは、人眼の瞳を位置合わせて監視するためのものであり、前記検出モジュールは、人眼からの結像光の戻り光を取得して電気信号に変換し、前記制御モジュールに送信するためのものであり、前記出力モジュールは、前記制御モジュールに接続され、人眼の結像画像を表示および記憶するためのものである。
【0008】
また、好ましくは、前記のシステムは、入射光路に沿って順次に設けられた第1の2色性ビームスプリッター、第2の2色性ビームスプリッター、第3の2色性ビームスプリッターおよび第4の2色性ビームスプリッターを含む2色性ビームスプリッター群モジュールをさらに備え、前記光源モジュールは、入射光路に沿って順次に配置された光源、コリメータおよび第1のビームスプリッターを含み、前記適応型光学モジュールへ平行ビームを出射し、前記光源から出射された光は、前記コリメータを介して、一部光のが前記第1のビームスプリッターを透過して前記適応型光学モジュールへ入射され、前記適応型光学モジュールは、人眼からの結像光の戻り光の光路に沿って順次に設けられる波面補正器、第2のビームスプリッター、光学フィルターおよび波面センサーを含み、前記ビーム走査モジュールに接続される。前記光源モジュールから出射された平行ビームは、前記波面補正器で反射され、前記ビーム走査モジュールに達する。人眼収差情報および光強度情報を含む結像光の戻り光は、前記ビーム走査モジュールから出射されて、前記波面補正器で反射され、前記第1のビームスプリッターに達し、前記第1のビームスプリッターで反射された光は、一部の光が前記第2のビームスプリッターで反射され、前記光学フィルターを通過し、前記波面センサーに達し、波面収差の測定を実行され、他の部分の光が前記第2のビームスプリッターを通過して前記検出モジュールに入射され、前記波面センサーは、人眼収差情報を含む結像ビームを受光して、含まれた人眼収差情報を前記制御モジュールに送信し、前記制御モジュールは、波面演算を行い、波面収差の検出を実行して波面制御電圧を取得し、得られた波面制御電圧を前記波面補正器に出力し、前記波面補正器は、波面収差を補正する。
【0009】
また、好ましくは、前記検出モジュールは、第5の2色性ビームスプリッターと、第1の検出光路と、第2の検出光路を含み、前記第5の2色性ビームスプリッターは、受光した光を透過させ前記第1の検出光路へ出射するとともに前記第2の検出光路へ反射する。前記第1の検出光路は、第1の集光レンズと、第1のピンホールと、第1の検出器を含み、前記第2の検出光路は、第2の集光レンズと、第2のピンホールと、第2の検出器を含み、人眼の光強度情報を含む結像ビームの戻り光は、前記第5の2色性ビームスプリッターを透過して前記第1の集光レンズに出射され、前記第1のピンホールを通過して前記第1の検出器に達し、網膜結像画像が得られ、人眼の光強度情報を含む結像ビームの戻り光は、前記第5の2色性ビームスプリッターで反射され、前記第2の集光レンズに出射され、前記第2のピンホールを通過して前記第2の検出器に達して、網膜結像画像が得られる。前記ビーム走査モジュールは、入射光路に沿って順次に設けられる第1の透過・反射型望遠鏡、2軸走査ミラーおよび第2の透過・反射型望遠鏡を含み、前記2軸走査ミラーは、前記制御モジュールから出力された周期的電圧により駆動され、網膜平面の横方向および縦方向の2次元走査を行う。
【0010】
また、好ましくは、前記視標モジュールは、LEDアレイと、視標レンズと、第1の平面ミラーを含み、前記LEDアレイのいずれかのLEDランプビーズは、前記制御モジュールの制御により点灯され、発出した光は、前記レンズを通過して、前記第1の平面ミラーで反射され、前記第1の2色性ビームスプリッターで反射されて、順次、前記第2の2色性ビームスプリッター、第3の2色性ビームスプリッターおよび第4の2色性ビームスプリッターを通過して人眼に達し、人眼が発光したLEDランプビーズを注視することによって固視が実現され。前記瞳監視モジュールは、環状LEDアレイと、結像レンズと、エリアアレイ検出器を含み、前記環状LEDアレイから出射された光は、人眼の瞳を照明し、人眼の瞳で反射されて前記環状LEDアレイの中空部を通過し、前記第4の2色性ビームスプリッターを通過して前記第3の2色性ビームスプリッターで反射され、前記結像レンズにより集束されて前記エリアアレイ検出器に達し、瞳結像を実行し、前記エリアアレイ検出器は、受信した光信号を電気信号に変換して前記制御モジュールに送信し、前記制御モジュールは、瞳結像画像を取得し前記出力モジュールに出力し、前記出力モジュールは、表示および記憶を行う。
【0011】
また、好ましくは、前記小視野中継モジュールは、第1のレンズと第2のレンズとからなる透過型望遠鏡、または第1の球面ミラーと第2の球面ミラーとからなる反射型望遠鏡を含み、拡大倍率が1よりも大きいであり、前記小視野中継モジュールは、前記望遠鏡の2枚のレンズの間にまたは球面ミラーの間に設けられた第1の焦点調節機構をさらに含み、前記第1の焦点調節機構は、互いに直交する2枚の平面ミラーを含むとともに、望遠鏡の光軸中心に沿って往復移動することによって人眼の屈折異常を補償することが可能であり、前記大視野中継モジュールは、第3のレンズと第4のレンズとからなる透過型望遠鏡、または第3の球面ミラーと第4の球面ミラーとからなる反射型望遠鏡を含み、拡大倍率が1よりも小さいであり、前記大視野中継モジュールは、前記望遠鏡の2枚のレンズの間にまたは球面ミラーの間に設けられた第2の焦点調節機構をさらに含み、前記第2の焦点調節機構は、互いに直交する2枚の平面ミラーを含むとともに、望遠鏡の光軸中心に沿って往復移動することによって人眼の屈折異常を補償することが可能である。
【0012】
また、好ましくは、前記小視野高解像度結像の方法は、以下のように実行する。前記光源モジュールから出射されたビームは、前記適応型光学モジュールの前記波面補正器、前記ビーム走査モジュールを通過し、前記第1の2色性ビームスプリッターで反射されて、前記小視野中継モジュールを通過し出射されて、前記第2の2色性ビームスプリッターで反射されて、前記第3の2色性ビームスプリッターおよび第4の2色性ビームスプリッターを通過し、前記環状LEDアレイの中空部を通過して、人眼に達し、人眼の光学システムにより眼底の網膜における1点に集束される。眼底の網膜から散乱された、人眼収差情報および眼底の前記の1点の光強度情報を含む結像ビームは、元の経路に沿って戻り、前記ビーム走査モジュールから出射されて、前記波面補正器で反射され前記第1のビームスプリッターに達する。前記第1のビームスプリッターで反射されたビームは、前記第2のビームスプリッターに達して、一部の光が反射され前記波面センサーに入射されて、前記波面センサーに受信された人眼収差情報が前記制御モジュールに送信され、前記制御モジュールは、波面収差を復元して収差補正電圧を算出して、収差補正電圧を前記波面補正器に送信し、前記波面補正器は、人眼収差をリアルタイムで補正し、且つ、他の部分の光が前記第2のビームスプリッターを通過して、全部、前記第5の2色性ビームスプリッターを通過して、前記第1の集光レンズおよび前記第1のピンホールを通過して、前記第1の検出器に達し、前記第1の検出器は、受光した眼底網膜の光信号を電気信号に変換して前記制御モジュールに送信し、前記制御モジュールは、信号同期処理を行い、かつ前記電気信号をサンプリングして再現することによって網膜の小視野高解像度結像画像を取得し前記出力モジュールに送信して、前記出力モジュールは、表示および記憶を実行する。前記大視野低解像度結像の方法は、以下のように実行する。前記光源モジュールから出射されたビームは、前記適応型光学モジュールの前記波面補正器、前記ビーム走査モジュール、前記第1の2色性ビームスプリッターおよび前記第2の2色性ビームスプリッターを通過して、前記第3の2色性ビームスプリッターで反射され、前記大視野中継モジュールに入射されて出射され、前記第4の2色性ビームスプリッターで反射され、前記環状LEDアレイの中空部を通過して、人眼に達し、人眼の光学システムにより眼底の網膜にける1点に集束される。眼底の網膜から散乱された、人眼の眼底の前記の1点の光強度情報を含む結像ビームは、元の経路に沿って戻り、前記ビーム走査モジュールから出射されて、前記波面補正器で反射され前記第1のビームスプリッターに達し、前記第1のビームスプリッターで反射されたビームは、前記第2のビームスプリッターを通過して、全部、前記第5の2色性ビームスプリッターで反射され、前記第2の集光レンズおよび前記第2のピンホールを通過して、前記第2の検出器に達する。前記第2の検出器は、受光した眼底網膜の光信号を電気信号に変換して前記制御モジュールに送信し、前記制御モジュールは、信号同期処理を行い、かつ前記電気信号をサンプリングして再現することによって網膜の大視野低解像度結像画像を取得し前記出力モジュールに送信して、前記出力モジュールは、表示および記憶を実行する。
【0013】
また、好ましくは、前記光源モジュールは、少なくとも2つの光源を含む。複数の光源から出射された光は、光ファイバ結合器により結合されてコリメータに入射して平行ビームになり、または、複数の光源から出射された光は、各コリメータで平行ビームになり、2色性ビームスプリッターで重ね合わせて光路に入射してもよい。前記光源モジュールから出射された光は、波長λ1および波長λ2の光を含み、λ1が600nm~850nmであり、波長λ1の光が小視野高解像度結像を行うためのものであり、λ2が900nm~1000nmであり、波長λ2の光が大視野低解像度結像を行うためのものであり、前記環状LEDアレイは、等間隔で環状に配列される少なくとも3個のLEDランプビーズを含み、中空部の透光口径が結像ビームの径以上であり、LEDランプビーズから発出された光の波長がλ3であり、かつ、λ3が1000nmよりも大きいであり、前記視標モジュールの前記LEDアレイは、等間隔でアレイ状に配列されるLEDランプビーズであり、発出した光の波長がλ4であり、波長範囲が380nm~760nmの可視光スペクトルであり、かつ、λ4は、λ1、λ2との差が少なくとも50nmである。
【0014】
また、好ましくは、前記第1の2色性ビームスプリッターは、波長がλ1およびλ4の光を反射する特性を有し、波長がλ2の光を透過する特性を有し、前記第2の2色性ビームスプリッターは、波長がλ1の光を反射する特性を有し、波長がλ2およびλ4の光を透過する特性を有し、前記第3の2色性ビームスプリッターは、波長がλ2およびλ3の光を反射する特性を有し、波長がλ1およびλ4の光を透過する特性を有し、前記第4の2色性ビームスプリッターは、波長がλ2の光を反射する特性を有し、波長がλ1、λ3およびλ4の光を透過する特性を有する。
【0015】
また、好ましくは、前記適応型光学モジュールにおける前記波面センサーとしては、マイクロプリズムアレイハルトマン波面センサー、マイクロレンズアレイハルトマン波面センサー、四角錐センサーおよび曲率センサーが挙げられ、前記波面補正器としては、可変形ミラー、液晶空間光変調器、微細加工フィルム変形ミラー、微小電気機械式変形ミラー、バイモル圧電セラミックス変形ミラー、液体変形ミラーが挙げられる。第1のビームスプリッターで反射された結像ビームは、前記第2のビームスプリッターにより分割られ、5%の光が反射されて前記光学フィルターを通過して前記波面センサーに入射され、波面収差の測定が実行され、残りの95%の光が透過して前記第5の2色性ビームスプリッターに達する。前記光学フィルターは、透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ1を満足する広帯域フィルターであってもよく、または、透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ1を満足する複数の狭帯域フィルターの組み合わせであってもよく、大視野低解像度結像のため選択された波長λ2の結像ビームは、全部、前記光学フィルターにより遮断され、波面センサーに入射しない。前記波面センサーにより検出された波面収差は、制御モジュールにより処理されて波面制御電圧が得えられ、波面補正器に出力され、波面収差の補正が行われる。
【0016】
また、好ましくは、前記2軸走査ミラーは、1枚の2次元検流計スキャナーで構成され、横方向および縦方向におけるビームの走査を行うものであってもよく、または、2枚の1次元検流計スキャナーを組み合わせで構成され、2枚の検流計スキャナーの走査方向を互いに直交方向とし、横方向および縦方向のそれぞれにビームの走査を行うものであってもよく、かつ、2枚の検流計スキャナーが透過・反射型望遠鏡に介して接続されて瞳整合を実行する。前記第1の透過・反射型望遠鏡は、前記波面補正器と前記2軸走査ミラーとを接続して瞳整合を実行するためのものであり、拡大倍率が前記2軸走査ミラーと前記波面補正器のビーム透過口径との比であり、前記第2の透過・反射型望遠鏡は、前記2軸走査ミラーの出射光を共役にして前記第1の2色性ビームスプリッターへ出射するためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明が提供する共ビーム走査型網膜結像システムは、1セットの走査機構によって眼底の網膜の大視野低解像度結像画像と小視野高解像度結像画像を一緒に取得することができ、そして、2種類の結像画像は、共通の光路構造によって採集されるものであるため、中心位置及び結像速度が同じであり、画像特徴の整合性が良く、比較処理及び操作が実行しやすい。
【0018】
また、従来のレーザ共ビーム走査結像分野での技術成果と比べ、本発明は、適応型光学技術を利用して人眼の収差をリアルタイムで補正し、共ビームの同期走査の設定により、小視野と大視野のような2セットの中継光路構造を組み合わせて、大視野範囲内の共ビーム走査結像機能と小視野範囲内の適応型光学高解像度結像機能を両立することができ、かつ、1回の大視野結像の範囲が20度より大きく、1回の小視野の適応型光学高解像度結像の視野範囲が5度以下である。また、このシステムは、大視野結像で網膜の広範囲の病巣領域を観察することができるし、小視野高解像度結像で病巣の微細な構造を観察することもでき、複数種類の結像画像が共光路ビーム走査により取得され、異なる適応の要請を満足することでき、従来の共ビーム結像装置よりも適用範囲を大幅に拡大した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムの原理を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムの光路構造を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る光源モジュールの光路構造を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施例に係る光源モジュールの光路構造を示す図である。
【
図5】本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムによる結像のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、容易に了解されるように、添付図面を参照しながら実施例をさらに詳細に説明する。
【0021】
なお、本明細書で使用される「有する」、「備える」および「含む」などの用語は、一つ又は複数の他の要素またはそれらの組み合わせも含むように意図される。
【0022】
図1および
図2に示すように、本実施例に係る共ビーム走査型網膜結像システムは、光源モジュール1と、適応型光学モジュール2と、ビーム走査モジュール3と、小視野中継モジュール5と、大視野中継モジュール6と、視標モジュール9と、瞳監視モジュール7と、検出モジュール8と、制御モジュール10と、出力モジュール11と、を備える。
【0023】
光源モジュール1は、異なる波長の少なくとも2つの平行ビームを出射でき、前記の平行ビームは、順次、適応型光学モジュール2、ビーム走査モジュール3、小視野中継モジュール5、大視野中継モジュール6を通過して人眼12に照射し、人眼12から散乱された、人眼収差情報および光強度情報を含む結像光は、元の経路に沿って戻り、適応型光学モジュール2および検出モジュール8に伝送される。
【0024】
適応型光学モジュール2は、人眼収差情報を含む結像光を受光し、波面収差の測定および補正をリアルタイムで行うためのものである。
【0025】
ビーム走査モジュール3は、2軸走査ミラー302を含み、前記の2軸走査ミラー302は、光路の入射方向に沿って第1の透過・反射型望遠鏡301を介して適応型光学モジュール2に接続されるとともに、光路の出射端に沿って第2の透過・反射型望遠鏡303を介して小視野中継モジュール5または大視野中継モジュール6に接続されることにより、小視野高解像度結像および大視野低解像度結像をそれぞれ実現する。
【0026】
小視野中継モジュール5は、ビーム拡大望遠鏡となるように配置され、大視野中継モジュール6は、ビーム収縮望遠鏡となるように配置される。
【0027】
視標モジュール9は、人眼を視標へ誘導して固視するためのものである。
【0028】
瞳監視モジュール7は、人眼の瞳を位置合わせて監視するためのものである。
【0029】
検出モジュール8は、人眼からの結像光の戻り光を取得し電気信号に変換して、制御モジュール10に伝送するためのものである。
【0030】
出力モジュール11は、制御モジュール10に接続され、人眼の結像画像を表示および記憶するためのものである。
【0031】
そのうち、適応型光学モジュール2へ平行ビームを出力する光源モジュール1は、入射光路に沿って順次に配置された光源101、コリメータ102および第1のビームスプリッター103を含む。光源101から出射する光は、コリメータ102を通過して、一部が第1のビームスプリッター103を透過し適応型光学モジュール2へ入射される。また、光源モジュール1は、少なくとも2つの光源101を含み、複数の光源101から出射された光は、光ファイバ結合器に結合され、コリメータ102に入射し平行ビームになる。複数の光源101から出射された光は、各コリメータ102に入射し平行ビームになり、2色性ビームスプリッターで重ね合わせて光路に入射してもよい。
【0032】
また、好適な実施例において、光源モジュール1から出射された光は、波長λ1および波長λ2の光を含む。λ1は、600nm~850nmであり、典型的な選択可能な波長としては、670nm、730nm、795nm、830nmであり、さらに好ましくは、670nm、795nmである。また、波長λ1の光は、小視野高解像度結像を行うためのものである。λ2は、900nm~1000nmであり、波長λ2の光は、大視野高解像度結像を行うためのものである。
【0033】
また、好適な実施例において、光源101から出射されたビームを平行化して平行ビームを生成するコリメータ102は、単レンズ、色消レンズ、アポクロマティックレンズまたはレンズ群であってもよく、放物面ミラーであってもよい。本実施例において、thorlabs社の反射型コリメータRC12FC-P01を使用する。ビームスプリッターは、広帯域ビームスプリッターであり、透過反射比率が20:80である。
【0034】
また、瞳監視モジュール7は、環状LEDアレイ701と、結像レンズ702と、エリアアレイ検出器703とを含む。環状LEDアレイ701から発出された光は、人眼の瞳に照射され、人眼の瞳で反射されて環状LEDアレイ701の中空部を通過し、第4の2色性ビームスプリッター404を透過して第3の2色性ビームスプリッター403で反射され、結像レンズ702によってエリアアレイ検出器703に集束され、瞳結像に用いられる。領域アレイ検出器703は、受信した光信号を電気信号に変換して制御モジュール10に出力する。このようにして取得された瞳結像画像は、出力モジュール11に出力され、表示または記憶される。
【0035】
また、好適な実施例において、環状LEDアレイ701は、等間隔で環状に配列される少なくとも3個のLEDランプビーズを含み、中空部の透光口径透光口径が結像ビームの径以上である。LEDランプビーズから発出された光の波長が、1000nmよりも大きいλ3である。なお、典型的な選択可能な波長としては、1020nm、1310nmなどが挙げられる。ここで、本実施例において、1020nmの波長を選択することが好ましい。
【0036】
また、視標モジュール9は、LEDアレイ901と、視標レンズ902と、第1の平面ミラー903とを含む。LEDアレイ901のLEDランプビーズのいずれかは、制御モジュール10の制御により点灯する。LEDランプビーズから発出された光は、視標レンズ902を透過して、第1の平面ミラー903で反射され、さらに第1の2色性ビームスプリッター401で反射され、順次、第2の2色性ビームスプリッター402、第3の2色性ビームスプリッター403、第4の2色性ビームスプリッター404および環状LEDアレイ701の中空部を透過して、人眼12に達する。人眼は、発光しているLEDランプビーズを注視して、固視になる。
【0037】
また、LEDアレイ901は、等間隔でアレイ状に配列されるLEDランプビーズからなり、発出した光の波長がλ4である。λ4は、λ1及びλ2との差が、50nm以上である。
【0038】
また、適応型光学モジュール2は、人眼からの結像光の戻り光の光路に沿って順次に設けられた波面補正器201、第2のビームスプリッター202、光学フィルター203および波面センサー204を含むとともに、ビーム走査モジュール3に接続される。光源モジュール1から出力された平行ビームは、波面補正器201で反射され、ビーム走査モジュール3に入射される。人眼収差情報および光強度情報を含む結像光の戻り光は、ビーム走査モジュール3を通過して、波面補正器201で反射され、第1のビームスプリッター103に入射する。第1のビームスプリッター103で反射された光は、一部が、さらに第2のビームスプリッター202で反射され光学フィルター203を通過して波面収差が測定されるために波面センサー204に達し、他の部分が、第2のビームスプリッター202を透過して検出モジュール8に入射される。
【0039】
なお、好適な実施例において、適応型光学モジュール2における波面センサー204としては、マイクロプリズムアレイハルトマン波面センサー、マイクロレンズアレイハルトマン波面センサー、四角錐センサーおよび曲率センサーが挙げられる。波面補正器201としては、可変形ミラー、液晶空間光変調器、微細加工フィルム変形ミラー、微小電気機械式変形ミラー、バイモル圧電セラミックス変形ミラー、液体変形ミラーが挙げられる。
【0040】
また、好適な実施例において、第2のビームスプリッター202は、広帯域ビームスプリッターであり、透過光と反射光との比率が95:5である。また、第2のビームスプリッター202は、第1のビームスプリッター103で反射された結像ビームを分割させ、その光の5%が反射されて光学フィルター203を通過して、波面収差の測定のために波面センサー204に入射され、残りの95%が透過して第5の2色性ビームスプリッター800に入射される。光学フィルター203は、広帯域フィルター203であるとともに透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ1を満足してもよく、複数の狭帯域フィルターからなるものであるとともに透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ1を満足してもよい。また、大視野低解像度結像のため選択された波長λ2の結像ビームは、全て、光学フィルター203に遮断され、波面センサー204に入射されない。
【0041】
波面センサー204は、人眼収差情報を含む結像ビームを受光して、制御モジュール10に出射し、制御モジュール10は、波面演算を行い、且つ、波面センサー204は、波面収差の測定を実行して波面制御電圧を取得し波面補正器201に出力する。波面補正器201は、波面収差の補正を実行する。
【0042】
また、ビーム走査モジュール3は、入射光路に沿って順次に設けられた第1の透過・反射型望遠鏡301、2軸走査ミラー302および第2の透過・反射型望遠鏡303を含む。2軸走査ミラー302は、制御モジュール10から出力された周期的電圧により駆動され、網膜平面の横方向および縦方向の2次元走査を行う。
【0043】
なお、好適な実施例において、2軸走査ミラー302は、1枚の2次元検流計スキャナーで構成され、横方向および縦方向におけるビームの走査を行ってもよいし、2枚の1次元検流計スキャナーで構成され、2枚の検流計スキャナーの走査方向を互いに直交方向とし、横方向および縦方向のそれぞれにビームの走査を行い、かつ、2枚の検流計スキャナーを透過・反射型望遠鏡に介して接続して瞳整合を行ってもよい。また、本実施例において、2軸走査ミラー302は、Optotune社のクイックリターンミラーMR-30-15-G-25×25Dである。
【0044】
なお、好適な実施例において、第1の透過・反射型望遠鏡は、波面補正器201と2軸走査ミラー302とを接続して瞳整合を実行するためのものであり、拡大倍率が2軸走査ミラー302と波面補正器201のビーム透過口径との比である。
【0045】
また、第2の透過・反射型望遠鏡は、2軸走査ミラー302の出射光を第1の2色性ビームスプリッター401に共役に伝送するためのものであり、拡大倍率がN3である。
【0046】
また、小視野中継モジュール5は、第1のレンズおよび第2のレンズ(501、503)からなる透過型望遠鏡、または第1の球面ミラーおよび第2の球面ミラー(501、503)からなる反射型望遠鏡を含み、拡大倍率が1よりも大きいであり、N5と表記する。また、小視野中継モジュール5は、望遠鏡の2枚のレンズの間にまたは2枚の球面ミラーの間に設けられた第1の焦点調節機構502をさらに含む。第1の焦点調節機構502は、互いに直交する2枚の平面ミラーを含むとともに、望遠鏡の光軸中心に沿って往復移動することによって人眼の屈折異常を補償することが可能である。
【0047】
大視野中継モジュール6は、第3のレンズおよび第4のレンズ(601、603)からなる透過型望遠鏡、または第3の球面ミラーおよび第4の球面ミラー(601、603)からなる反射型望遠鏡を含み、拡大倍率が1よりも小さいであり、N6と表記する。また、大視野中継モジュール6は、望遠鏡の2枚のレンズの間にまたは2枚の球面ミラーの間に設けられた第2の焦点調節機構602をさらに含む。第2の焦点調節機構602は、互いに直交する2枚の平面ミラーを含むとともに、望遠鏡の光軸中心に沿って往復移動することによって人眼の屈折異常を補償することが可能である。
【0048】
また、このシステムは、入射光路に沿って順次に設けられた第1の2色性ビームスプリッター401と、第2の2色性ビームスプリッター402と、第3の2色性ビームスプリッター403と、第4の2色性ビームスプリッター404を含む2色性ビームスプリッター群モジュールをさらに備える。
【0049】
ただし、第1の2色性ビームスプリッター401は、波長がλ1およびλ4の光を反射する特性を有し、波長がλ2の光を透過する特性を有する。
【0050】
第2の2色性ビームスプリッター402は、波長がλ1の光を反射する特性を有し、波長がλ2およびλ4の光を透過する特性を有する。
【0051】
第3の2色性ビームスプリッター403は、波長がλ2およびλ3の光を反射する特性を有し、波長がλ1およびλ4の光を透過する特性を有する。
【0052】
第4の2色性ビームスプリッター404は、波長がλ2の光を反射する特性を有し、波長がλ1、λ3およびλ4の光を透過する特性を有する。
【0053】
また、検出モジュール8は、第5の2色性ビームスプリッター800と、第1の検出光路と、第2の検出光路を含む。第5の2色性ビームスプリッター800に達した光は、透過されて第1の検出光路に入射され、または反射されて第2の検出光路に入射される。第1の検出光路は、第1の集光レンズ801と、第1のピンホール802と、第1の検出器803を含む。第2の検出光路は、第2の集光レンズ811と、第2のピンホール812と、第2の検出器813を含む。人眼の光強度情報を含む結像ビームの戻り光は、網膜結像画像が得られるために、第5の2色性ビームスプリッター800を透過して第1の集光レンズ801に出力され、第1のピンホール802を通過して第1の検出器803に達する。また、人眼の光強度情報を含む結像ビームの戻り光は、網膜結像画像が得られるために、第5の2色性ビームスプリッター800で反射されて第2の集光レンズ811に出力され、第2のピンホール812を通過して第2の検出器813に達する。
【0054】
なお、好適な実施例において、第5の2色性ビームスプリッター800は、波長λ1を透過するとともに波長λ2を反射する特性を有するように設置してもよく、波長λ1を反射するとともに波長λ2を透過する特性を有するように設置してもよい。第5の2色性ビームスプリッター800は、この2種類の設置方式のいずれか1つを採用しても、システムの実際な効果に影響を与えない。第5の2色性ビームスプリッター800が波長λ1を透過する特性を有するように設けられる場合、ビームは集光レンズ801およびピンホール802を透過して検出器803に達する。一方、第5の2色性ビームスプリッター800が波長λ1を反射する特性を有するように設けられる場合、ビームは集光レンズ811およびピンホール812に反射して検出器813に達する。
【0055】
さらに好ましくは、本実施例において、第5のダイクロイックミラー800は、波長λ1を透過する特性を有するように設けられ、ビームは集光レンズ801およびピンホール802を透過して検出器803に達し、検出器803は、取得した眼底網膜の光信号を電気信号に変換して制御モジュール10に出力する。制御モジュール10は、信号同期処理を行い、かつ電気信号をサンプリングと再現によって網膜の小視野低解像度結像画像を生成し、出力モジュール11に出力して、表示、記憶、処理などを行う。
【0056】
また、好適な実施例において、集光レンズ801、811は、色消レンズ、アポクロマティックレンズまたはレンズの組み合わせであってもよく、焦点距離が100mm以上である。また、ピンホール802、812の大きさは、50μmにしているが、200μm以下にすれば、光エネルギー効率に応じて変換してもよく。検出器803、813としては、光電子増倍管、アバランシダイオードまたは高感度カメラが挙げられる。
【0057】
また、本発明に係る結像システムの実際の動作には、小視野高解像度結像工程、大視野低解像度結像工程、被験者に関する工程などの複数の工程が含まれる。以下、実施例を使用して本発明をさらに説明する。
【0058】
1.小視野高解像度結像工程
点光源101としての光源モジュール1から出射された、波長がλ1であるビームは、コリメータ102で平行ビームになる。平行ビームは、第1のビームスプリッター103により分割され、20%の光が透過して波面補正器201で反射され、第1の透過・反射型望遠鏡301により瞳孔径の整合が行われ、2軸走査ミラー302に達し、2軸走査ミラー302により横方向および縦方向の走査が行われ、第2の透過・反射型望遠鏡303を通過して、第1の2色性ビームスプリッター401に達する。第1の2色性ビームスプリッター401で反射されたビームは、小視野中継モジュール5を介して第2の2色性ビームスプリッター402に達する。ここで、小視野中継モジュール5を構成するレンズ・球面ミラー501と503との間に1組の平面ミラーからなるbadal型焦点調節機構502が設けられ、badal型焦点調節機構502は、光軸中心に沿って前後に往復移動することによって人眼の屈折異常を補償する。ビームは、第2の2色性ビームスプリッター402で反射されて第3の2色性ビームスプリッター403、第4の2色性ビームスプリッター404を透過した後、環状LEDアレイ701の中空部を通過して人眼に達し、人眼の光学システムによって眼底網膜上の1点に集束される。
【0059】
ビームは、眼底の網膜に入射する。網膜から散乱され、眼底の人眼収差情報および前記の1点における光強度情報を含む結像ビームは、元の経路に沿って戻り、ビーム走査モジュール3を介して出射されて、波面補正器201で反射され、第1のビームスプリッター103に達する。ビームは、第1のビームスプリッター103で分割され、80%の光が、第2のビームスプリッターへ反射される。第2のビームスプリッター202に達した光は、5%の光が反射され、光学フィルター203および波面センサー204に入射され、残りの95%の光が透過し、第5のダイクロイックミラー800に達する。
【0060】
波面センサー204により受信された人眼収差情報は、制御モジュール10に送信される。制御モジュール10は、波面収差を復元して収差補正電圧を算出する。算出された収差補正電圧は、波面補正器201に送信され、リアルタイムで人眼収差の補正に用いられる。
【0061】
また、本実施例において、第2のビームスプリッター202を透過した光は、全部、波長λ1を透過する特性を有するように設けられる第5のダイクロイックミラー800を透過して、第1の集光レンズ801および第1のピンホール802を通過して、第1の検出器803に達する。第1の検出器803に達した眼底網膜の光信号は、電気信号に変換され、制御モジュール10に出力される。制御モジュール10により信号同期処理された電気信号は、サンプリング及び再現によって網膜の小視野高解像度結像画像になり、出力モジュール11により表示および記憶される。
【0062】
光源101から出射された光は、波長がλ
1である。光源101は、1つ以上の、600nm~850nmのいずれかの波長をもつレーザを出射する光源を含む。各光源101(101a、101b、101c)から出射された光は、
図3に示すように、光ファイバ結合器104により結合されて、コリメータ102に入射し、コリメータ102で得られた平行ビームは、第1のビームスプリッター103に入射してもよい。または、各光源101(101a、101b、101c)から出射された光は、
図4に示すように、各コリメータ102(102a、102b、102c)を介して平行ビームになり、ビームスプリッター(103b、103c)を介して透過または反射され、結合された上、光路に入射し、さらに第1のビームスプリッター103により結合されてシステムの光路に入射してもよい。典型的な選択可能な波長としては、670nm、730nm、795nm、830nmなどが挙げられる。また、好ましくは、本実施例において、小視野高解像度結像波長として選択されたλ
1は、670nm、795nmである。
【0063】
また、光学フィルター203は、広帯域フィルター203であり、透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ1を満足してもよく、複数の狭帯域フィルターからなり、透過波長帯が小視野高解像度結像のため選択された波長λ1を満足してもよい。
【0064】
また、コリメータ102としては、単レンズ、色消レンズ、アポクロマティックレンズまたはレンズ群が挙げられるが、光源101から出射されたビームを平行ビームにする放物面ミラーであってもよい。本実施例において、thorlabs社の反射型コリメータRC12FC-P01を使用する。
【0065】
また、第1のビームスプリッター103は、広帯域ビームスプリッターであり、透過光と反射光との比率が20:80である。第2のビームスプリッター202は、広帯域ビームスプリッターであり、透過光と反射光との比率が95:5である。
【0066】
2軸走査ミラー302は、1枚の2次元検流計スキャナーで構成され、横方向および縦方向におけるビームの走査を行ってもよく、または、2枚の1次元検流計スキャナーを組み合わせて構成され、2枚の検流計スキャナーの走査方向を互いに直交方向とし、横方向および縦方向のそれぞれにビームの走査を行い、かつ、2枚の検流計スキャナーが透過・反射型望遠鏡を介して接続されて瞳整合を行ってもよい。また、好ましくは、本実施例において、2軸走査ミラー302は、Optotune社のクイックリターンミラーMR-30-15-G-25×25Dである。
【0067】
小視野中継モジュール5は、レンズ501、503からなる透過型望遠鏡、または球面ミラー501、503からなる反射型望遠鏡で構成され、望遠鏡の拡大倍率がN5であり、1より大きくなる。
【0068】
本実施例において、低視野高解像度結像機能を満足するために、波長λ1のビームは、人眼の瞳におけるビーム絞りは6~8mmである。また、レンズ・球面ミラー301、303及び透過・反射型望遠鏡とレンズ・球面ミラー501、503からなる2セットの透過・反射型望遠鏡は、拡大倍率の積が、1より大きく、波長λ1のビームが人眼の瞳におけるビーム絞りと2軸走査ミラー302のビーム透光口径との比に等しい。2軸走査ミラー302のビーム絞りが2mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN5との積が3~4となり、2軸走査ミラー302のビーム絞りが3mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN5との積が2~3となる。
【0069】
2.大視野低解像度結像工程
点光源101としての光源モジュール1から出射された、波長がλ2であるビームは、コリメータ102で平行ビームになる、第1のビームスプリッター103により分割され、20%の光が透過して波面補正器201で反射され、第1の透過・反射型望遠鏡301により瞳孔径の整合が行われ、2軸走査ミラー302に達し、2軸走査ミラー302により横方向および縦方向の走査が行われ、第2の透過・反射型望遠鏡303を通過して、第1の2色性ビームスプリッター401に達する。第1の2色性ビームスプリッター401および第2の2色性ビームスプリッター402を通過したビームは、第3の2色性ビームスプリッター403で反射され、大視野中継モジュール6を介して第4の2色性ビームスプリッター404に達する。ここで、大視野中継モジュール6を構成するレンズ・球面ミラー601と603の間に設けられ、平面ミラー群からなるbadal型焦点調節機構602は、光軸中心に沿って前後に往復移動することにより人眼の屈折異常を補償する。ビームは、第4の2色性ビームスプリッター404で反射され、環状LEDアレイ701の中空部を通過し、人眼に達し、人眼の光学システムにより眼底網膜上の1点に集束される。
【0070】
ビームは、眼底の網膜に入射される。網膜から散乱され、人眼の眼底の前記の1点における光強度情報を含む結像ビームは、元の経路に沿って戻り、ビーム走査モジュール3を介して出射されて、波面補正器201で反射され、第1のビームスプリッター103に達する。ビームは、第1のビームスプリッター103で分割され、80%の光が、第2のビームスプリッターへ反射される。第2のビームスプリッター202に達した光は、95%の光が、透過し、第5の2色性ビームスプリッター800に達する。
【0071】
また、本実施例において、第5のダイクロイックミラー800は、波長λ2を反射する特性を有するように設けられる。第2のビームスプリッター202を透過した光は、全部、第5のダイクロイックミラー800で反射され、第2の集光レンズ811および第2のピンホール812を通過して第2の検出器813に達する。第2の検出器813により受信された眼底網膜の光信号は、電気信号に変換され、制御モジュール10に送信される。制御モジュール10により信号同期処理された電気信号は、サンプリング及び再現によって網膜の大視野低解像度結像画像になり、出力モジュール11により表示および記憶される。
【0072】
光源101から出射された光の波長λ2は、900nm~1000nmの範囲内のいずれかの波長であり、典型的な選択可能な波長としては、904nm、950nmなどが挙げられる。好ましくは、本実施例において、大視野低解像度結像波長として選択されたλ2は、950nmである。
【0073】
大視野中継モジュール6は、レンズ601、603からなる透過型望遠鏡、または球面ミラー601、603からなる反射型望遠鏡で構成され、望遠鏡の拡大倍率が、N5であり、1より小さくなる。
【0074】
本実施例において、大視野低解像度結像機能を満足するために、人眼12の瞳における波長λ2のビーム絞りは、1~3mmである。また、透過・反射型望遠鏡303と、レンズ・球面ミラー601、603からなる2セットの透過・反射型望遠鏡は、拡大倍率の積が、波長λ2のビームが人眼の瞳におけるビーム絞りと2軸走査ミラー302のビーム透光口径との比に等しい。2軸走査ミラー302のビーム絞りが2mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN5との積が0.5~1.5となり、2軸走査ミラー302のビーム絞りが3mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN5との積が1/3~1となる。
【0075】
3.被験者に関する工程
被験者に関する工程は、主に、瞳の位置合わせ及び監視すること、視標への誘導及び固視することを含む。
【0076】
(1)瞳の位置合わせ及び監視
瞳監視モジュール7は、環状LEDアレイ701と、結像レンズ702と、エリアアレイ検出器703とを含む。環状LEDアレイ701は、等間隔で環状に配列される少なくとも3個のLEDランプビーズを含み、中空部の透光口径が結像ビームの径以上である。環状LEDアレイ701から発出された光は、人眼の瞳に達する。人眼の瞳で反射されたビームは、環状LEDアレイ701の中空部を通過し、第4の2色性ビームスプリッター404を透過して第3の2色性ビームスプリッター403で反射され、結像レンズ702によりエリアアレイ検出器703に集束される。エリアアレイ検出器703は、光信号を電気信号に変換して制御モジュール10に出力する。制御モジュール10により得られた瞳結像画像は、出力モジュール11に出力され、表示、記憶および処理などの機能に用いられる。
【0077】
本発明のシステムの動作際に、被験者の頭部は、ヘッドブラケットに位置する。ヘッドブラケットは、瞳の結像が視野の中間領域に位置するために、3次元移動調整機能を有するように設けられ、手動でガイドレールを調整してもよく、制御モジュール1010に駆動させられるモーターを利用して自動でガイドレールを調整してもよい。
【0078】
また、環状LEDアレイ701のLEDランプビーズは、1000nm以上の波長範囲における波長λ3を選択する。なお、典型的選択可能な波長としては、1020nm、1310nmなどが挙げられる。ここで、好ましくは、本実施例において、1020nmの波長を選択する。
【0079】
(2)指標への誘導及び固視
視標モジュール9は、LEDアレイ901と、視標レンズ902と、第1の平面ミラー903とを含む。LEDアレイ901内の1つのLEDランプビーズは、制御モジュール10の制御により点灯される。点灯したLEDランプビーズから発出された波長λ4の光は、視標レンズ902を透過し、第1の平面反射ミラー903で反射され、第1の2色性ビームスプリッター401で反射され、第2、第3および第4の2色性ビームスプリッター402、403、404を通過し、環状LEDアレイ701の中空部を通過し、人眼12に入射される。人眼は、点灯したLEDランプビーズを注視することによって固視される。
【0080】
LEDアレイ901における異なる位置にあるLEDランプビーズは、制御モジュール10の制御により点灯られて、眼底網膜における異なる領域が結像領域となるように、誘導を実行する。
【0081】
LEDアレイ901は、等間隔でアレイ状に配列されたLEDランプビーズからなるものである。典型的な配列方式としては、3×3、4×4などが挙げられる。選択された波長は、可視光帯域のある波長λ4であり、かつ、光源101による波長λ1及びλ2に対し、少なくとも50nmの帯域幅差を持つ。本実施例において、波長λ4は、550nmを選択した。
【0082】
本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムの結像方法は、
図5に示すように、具体的な操作は、以下のステップを含む。
【0083】
(1)電源を入れてシステムを始動させる。
(2)被験者は、頭部をヘッドブラケットに置きており、瞳監視モジュール7は、ンオンにする。手動調整または制御モジュール10による自動調整により、ヘッドブラケットを3次元に移動して、瞳の結像は、視野の中間領域に位置する。
(3)LEDアレイ901内の1つのLEDランプビーズは点灯して、被験者は、そのLEDランプビーズの光点を注視することによって固視する。
(4)小視野中継モジュール5および大視野中継モジュール6におけるbadal型焦点調節機構502、602をそれぞれ調節することによって、人眼の屈折異常を補償する。
(5)被験者は、眼部を安定して、制御モジュール10によって大視野低解像度結像画像を取得して出力する。
(6)被験者は、眼部を安定して、制御モジュール10によって適応型光学モジュール2を制御して収差の測定および補正を実行して、小視野高解像度結像画像を取得して出力する。
(7)LEDアレイ901における他の位置にあるLEDランプビーズは点灯して、ステップ(5)とステップ(6)を繰り返して、網膜の異なる領域の大視野低解像度画像および小視野高解像度画像を取得することができる。
【0084】
なお、ステップ(5)およびステップ(6)の操作の順番に制限はない、実際の必要に応じて自由に選択できる。
【0085】
本発明は、従来のレーザ共ビーム走査結像分野の技術課題を考慮して、共ビーム走査技術の基本原理に基づいて共ビーム走査型網膜結像システムを提供する。本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムは、適応型光学技術を利用して人眼の収差をリアルタイムで補正し、共ビームの同期走査の設定により、小視野と大視野の2つの中継光路構造と合わせて、大視野範囲内の共ビーム走査結像機能と小視野範囲内の適応型光学高解像度結像機能を両立することができ、かつ、1回の大視野結像の範囲が20度より大きく、1回の小視野の適応型光学高解像度結像の視野範囲が5度以下である。本発明に係るシステムは、大視野結像で網膜の広範囲の病巣領域を観察することができるし、小視野高解像度結像で病巣の微細な構造を観察することもでき、従来の共ビーム結像装置の適用範囲を大幅に拡大した。
【0086】
本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムは、1セットの走査ミラーのみを用いて、共通の光路構造を採用することにより、眼底網膜の大視野低解像度結像画像および小視野高解像度結像画像を一緒に取得することができ、2種類の結像画像が完全に同期しており、同じの中心位置や結像速度を有する。本発明に係るシステムは、分離された2セットの中継光路によって共通光路の異なる結像ビームの結合および分離を実現しつつ、眼底網膜の照明と結像検出を一緒に行うものである。これにより、システムの構成が簡単であり、制御が簡潔であるとともに機能が豊富である。また、このシステムは、視標モジュールをさらに備えるため、人眼が異なる位置にある視標を注視し、眼底網膜の異なる領域が順次に照明される場合、網膜の各領域の大視野低解像度結像画像および小視野高解像度結像画像を取得することができる。
【0087】
本発明に係る共ビーム走査型網膜結像システムは、眼底の網膜の大視野低解像度結像画像と小視野高解像度結像画像を一緒に取得することができ、そして、2つの結像画像は、共通の光路構造によって採集されるため、2つの結像画像は、同じの中心位置と結像速度を有し、画像特徴の整合性が良く、比較処理と操作が容易である。一方、本発明に係るシステムは、構成が簡単であり、共通の光路構成によって高解像度や低解像度の網膜結像画像を一緒に取得することができる。また、大視野低解像度結像画像は、網膜の広範囲内の構造や病巣などの特徴を観察することができ、小視野高解像度結像画像は、例えば細胞、毛細血管、神経線維などの、その領域の微細な構造を観察することができる。また、複数種類の結像画像は、共通光路のビームの走査により取得されるので、異なる適応の要請を満足することができ、網膜結像の適用範囲を大幅に拡大した。
【0088】
以上、本発明の実施形態について開示したが、本明細書及び実施形態に挙げられる適用のみに限定されるものではなく、本発明に適合する各種分野への適用が可能である。また、当業者であれば、その他の変更も可能であるため、特許請求の範囲およびその同等の範囲に限定される一般的な概念から背離しなければ、本発明は特定の詳細に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
1・・・光源モジュール、2・・・適応型光学モジュール、3・・・ビーム走査モジュール、5・・・小視野中継モジュール、6・・・大視野中継モジュール、7・・・瞳監視モジュール、8・・・検出モジュール、9・・・視標モジュール、10・・・制御モジュール、11・・・出力モジュール、12・・・人眼、101・・・光源、102・・・コリメータ、103・・・第1のビームスプリッター、201・・・波面補正器、202・・・第2のビームスプリッター、203・・・光学フィルター、204・・・波面センサー、301・・・第1の透過・反射型望遠鏡、302・・・2軸走査ミラー、303・・・第2の透過・反射型望遠鏡、401・・・第1の2色性ビームスプリッター、402・・・第2の2色性ビームスプリッター、403・・・第3の2色性ビームスプリッター、404・・・第4の2色性ビームスプリッター、501・・・第1のレンズまたは第1の球面ミラー、502・・・第1の焦点調節機構、503・・・第2のレンズまたは第2の球面ミラー、601・・・第3のレンズまたは第3の球面ミラー、602・・・第2の焦点調節機構、603・・・第4のレンズまたは第4の球面ミラー、701・・・環状LEDアレイ、702・・・結像レンズ、703・・・エリアアレイ検出器、800・・・第5の2色性ビームスプリッター、801・・・第1の集光レンズ、802・・・第1のピンホール、803・・・第1の検出器、811・・・第2の集光レンズ、812・・・第2のピンホール、813・・・第2の検出器、901・・・LEDアレイ、902・・・視標レンズ、903・・・第1の平面ミラー。
【手続補正書】
【提出日】2020-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
また、好適な実施例において、光源モジュール1から出射された光は、波長λ1および波長λ2の光を含む。λ1は、600nm~850nmであり、典型的な選択可能な波長としては、670nm、730nm、795nm、830nmであり、さらに好ましくは、670nm、795nmである。また、波長λ1の光は、小視野高解像度結像を行うためのものである。λ2は、900nm~1000nmであり、波長λ2の光は、大視野低解像度結像を行うためのものである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
本実施例において、低視野高解像度結像機能を満足するために、波長λ1のビームは、人眼の瞳におけるビーム絞りは6~8mmである。また、第2の透過・反射型望遠鏡303及び透過・反射型望遠鏡とレンズ・球面ミラー501、503からなる2セットの透過・反射型望遠鏡は、拡大倍率の積が、1より大きく、波長λ1のビームが人眼の瞳におけるビーム絞りと2軸走査ミラー302のビーム透光口径との比に等しい。2軸走査ミラー302のビーム絞りが2mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN5との積が3~4となり、2軸走査ミラー302のビーム絞りが3mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN5との積が2~3となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
大視野中継モジュール6は、レンズ601、603からなる透過型望遠鏡、または球面ミラー601、603からなる反射型望遠鏡で構成され、望遠鏡の拡大倍率が、N
6
であり、1より小さくなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
本実施例において、大視野低解像度結像機能を満足するために、人眼12の瞳における波長λ2のビーム絞りは、1~3mmである。また、第2の透過・反射型望遠鏡303と、レンズ・球面ミラー601、603からなる2セットの透過・反射型望遠鏡は、拡大倍率の積が、波長λ2のビームが人眼の瞳におけるビーム絞りと2軸走査ミラー302のビーム透光口径との比に等しい。2軸走査ミラー302のビーム絞りが2mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN
6
との積が0.5~1.5となり、2軸走査ミラー302のビーム絞りが3mmである場合、2セットの望遠鏡の拡大倍率N3とN
6
との積が1/3~1となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】