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特表2022-503392多環式オレフィンを用いたアルデヒドのアルファアルキル化によるシクロプロピル環の開環
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】多環式オレフィンを用いたアルデヒドのアルファアルキル化によるシクロプロピル環の開環
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/68 20060101AFI20220104BHJP
   C07C 47/225 20060101ALI20220104BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20220104BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220104BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20220104BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C07C45/68 CSP
C07C47/225
C11B9/00 K
C11D3/50
A61Q13/00 102
A61K8/33
D06M13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020567922
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2019077791
(87)【国際公開番号】W WO2020078909
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】18200658.5
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー カンテーヌ
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
4H006
4H059
4L033
【Fターム(参考)】
4C083AC211
4C083CC01
4C083KK03
4H003BA01
4H003BA09
4H003BA12
4H003DA01
4H003DA02
4H003DA05
4H003DA11
4H003DA17
4H003FA26
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB14
4H006AC45
4H006BA22
4H006BA47
4H006BA48
4H006BA95
4H059BA20
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA32
4H059EA35
4L033AC02
4L033AC10
4L033BA00
(57)【要約】
本発明は、有機合成の分野に関し、より具体的には、式(I)で示され、その式中、nは、1~4を表し、かつR~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;RおよびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する化合物を、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形で提供するための、多環式オレフィンを用いてアルデヒドをアルファアルキル化およびその後に行う開環工程に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式
【化1】
[式中、nは、1~4を表し、
は、水素原子またはC1~8直鎖状アルキル基を表し;
~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;
およびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物を、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形で製造する方法であって、
式R-CH-CHO[式中、Rは上記と同じ意味を有する]のアルデヒドを、シクロプロピル環連結部のα位にメチレン基を有する縮合もしくは架橋した二環式もしくは三環式化合物であるオレフィン化合物でアルファアルキル化する工程を含み;
前記工程を、光レドックス触媒、水素原子移動供与体、第二級アミンおよび光の存在下で実施する方法。
【請求項2】
前記アルデヒドが、プロパナールである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記オレフィンが、以下の式
【化2】
[式中、nは、1~4を表し、かつR~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;RおよびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物であって、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形の化合物である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記光レドックス触媒が、有機光触媒、またはイリジウム錯体もしくはルテニウム錯体、好ましくはイリジウム錯体である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記水素原子移動供与体が、以下の式
【化3】
[式中、各Rは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~2直鎖状アルキル基、C3~4直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基、1~5個のハロゲン原子によって任意に置換されるフェニル基および/またはC1~4アルキル基もしくはアリール基で三置換されたC1~4アルキル基もしくはアルコキシ基またはシリル基を表し;ただし、最大2個のR基は水素原子を表す]のチオフェノールである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物が、2-メチル-3-(2,3,4,4-テトラメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール、2-メチル-3-(3-メチル-2-ペンチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)プロパナール、3-(3-イソプロピル-3-メチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナール、好ましくは3-((R)-3-イソプロピル-3-メチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナールからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
以下の式
【化4】
[式中、nは、1~4を表し;Rは水素原子またはC1~8直鎖状アルキル基を表しかつR~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;RおよびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物であって、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形である、化合物。
【請求項8】
賦香用組成物または着香物品の匂い特性を付与、強化、改善または変更する方法であって、請求項7で規定された式(I)の化合物の有効量を前記組成物または物品に添加することを含む方法。
【請求項9】
請求項7で規定された式(I)の化合物の賦香成分としての使用。
【請求項10】
賦香用組成物であって、
i)請求項7で規定された少なくとも1種の式(I)の化合物;
ii)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む、賦香用組成物。
【請求項11】
請求項7で規定された少なくとも1種の式(I)の化合物または請求項10で規定された賦香用組成物を含む、着香消費者製品。
【請求項12】
前記製品が、香料、ファブリックケア製品、ボディケア製品、化粧品、スキンケア製品、エアケア製品または家庭ケア製品である、請求項11記載の着香消費者製品。
【請求項13】
前記香料消費者製品が、香水、スプラッシュまたはオードパルファム、コロン、髭剃りまたはアフターシェーブローション、液体または固体洗剤、柔軟剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品、シャンプー、着色剤、カラーケア製品、整髪製品、歯科用ケア製品、殺菌剤、インティメイトケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラントまたは制汗剤、除毛剤、日焼け剤または日焼け製品、ネイル製品、皮膚洗浄剤、メーキャップ、着香石鹸、シャワーまたはバスムース、オイルまたはジェル、またはフット/ハンドケア製品、衛生製品、エアフレッシュナー、「すぐに使用できる」粉末エアフレッシュナー、カビ除去剤、家具ケア用品、ワイプ、食器用洗剤または硬質表面洗剤、レザーケア製品またはカーケア製品である、請求項12記載の着香消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、有機合成の分野に関し、より具体的には、シクロプロピル環を含み、ひずみのある多環式オレフィンを用いてアルデヒドをアルファアルキル化した後に、シクロプロピル環を開環して、式(I)の化合物を提供することに関する。このような方法によって得られる化合物、上記化合物の使用、および上記化合物を含む賦香用組成物または賦香用消費者製品も本発明の一部である。
【0002】
従来技術
ラジカル化学、特にシクロプロピルを含む多環式オレフィンへのラジカルの付加は、ラジカルの付加に続いてフラグメント化;すなわちシクロプロピル環の開環を行うものとして文献で広く報告されている。上記の種類の反応は、複雑な化学構造を一段階で利用できることから非常に有用である。しかしながら、大部分の反応では、特に捕捉剤が水素ラジカルである場合には、位置異性体の混合物が得られるため、上記の変換は、それほど興味深いものではない。なぜなら、位置異性体が全く異なる特性を有しうる製薬産業用途またはフレーバーおよびフレグランス産業用途にとっては、純粋な化合物が特に好ましいからである。
【0003】
したがって、1つの位置異性体をもたらす選択的ラジカル反応、特にひずみのある多環式オレフィンを用いてアルデヒドをアルファアルキル化し、次いで開環工程を行う反応を開発する必要がある。
【0004】
本発明は、光レドックス触媒、水素原子移動供与体、第二級アミンおよび光の存在下でシクロプロピル環を含む多環式オレフィンを用いて直鎖状アルデヒドの上記アルファアルキル化を実施し、速度論的に不利な式(I)の化合物を生成させることにより上記の問題を解決する。第二級アミンおよび光レドックス触媒を用いるアルデヒドの一般的なアルキル化は、Nature Chemistry 2017, 9, 1073~1077頁で報告されている。しかしながら、アルデヒドのアルキル化工程の後に行う開環工程については記載されていない。
【0005】
本発明者らの知る限りでは、本発明による方法は、報告されていない。
【0006】
発明の概要
本発明は、シクロプロピル環を含む多環式オレフィンを用いてアルデヒドをアルファアルキル化し、続いてシクロプロピル環を開環させることにより、式(I)の化合物を提供する新規な方法であって、多段階プロセスを回避する一方で、考えられ得る他の位置異性体を形成することなく、主に式(I)の化合物の形成を促進させる方法に関する。
【0007】
本発明の第1の対象は、以下の式
【化1】
[式中、nは、1~4を表し、
は、水素原子またはC1~8直鎖状アルキル基を表し;
~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;
およびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物の、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形での製造方法であって、式R-CH-CHO[式中、Rは上記と同じ意味を有する]のアルデヒドを、シクロプロピル環連結部のα位にメチレン基を有する(すなわち、シクロプロピル環に対してα位の炭素の1つに結合している)縮合または架橋二環式もしくは三環式化合物であるオレフィン化合物でアルファアルキル化する工程を含み;
上記の工程を、光レドックス触媒、水素原子移動供与体、第二級アミンおよび光の存在下で実施する方法である。
【0008】
本発明の第2の対象は、以下の式
【化2】
[式中、nは、1~4を表し、
は、水素原子またはC1~8直鎖状アルキル基を表し;
~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;
およびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物であって、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形の化合物である。
【0009】
本発明の第3の対象は、賦香用組成物または着香物品の匂い特性を付与、強化、改善または変更する方法であって、上記組成物または物品に有効量の上記で定義された式(I)の化合物を添加することを含む方法である。
【0010】
本発明の別の対象は、上記で定義された式(I)の化合物の賦香成分としての使用である。
【0011】
本発明の別の対象は、
i)少なくとも1種の上記で定義された式(I)の化合物;
ii)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む、賦香用組成物である。
【0012】
本発明のさらに別の対象は、上記で定義された式(I)の化合物または上記で定義された賦香用組成物を少なくとも1種含有する着香消費者製品である。
【0013】
発明の詳細な説明
式(I)の化合物は、シクロプロピル環を含むひずみのある多環式オレフィンを用いてアルデヒドをアルファアルキル化し、続いてシクロプロピル環を開環させることにより、有利な方法で製造できることがここで発見された。上記の方法では、熱力学的に有利な化合物ではなく、速度論的に有利な化合物が得られる。
【0014】
本発明の第1の対象は、以下の式
【化3】
[式中、nは、1~4を表し、
は、水素原子またはC1~8直鎖状アルキル基を表し;
~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;
およびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物の、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形での製造方法であって、
式R-CH-CHO[式中、Rは上記と同じ意味を有する]のアルデヒドを、シクロプロピル環連結部のα位にメチレン基を有する縮合または架橋二環式もしくは三環式化合物であるオレフィン化合物でアルファアルキル化する工程を含み;
上記の工程を、光レドックス触媒、水素原子移動供与体、第二級アミンおよび光の存在下で実施する方法である。
【0015】
上記のアルキル化の後に開環が行われる。
【0016】
明確にするために、「その立体異性体またはその混合物のいずれか1つ」または類似の表現は、当業者によって理解される通常の意味、すなわち、式(I)の化合物が純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーであり得ることを意味する。換言すれば、式(I)の化合物は、いくつかの立体中心を有してもよく、上記の立体中心の各々は、2つの異なる立体化学(例えば、RまたはS)を有し得る。式(I)の化合物は、純粋なエナンチオマーの形であってもよく、またはエナンチオマーもしくはジアステレオマーの混合物の形であってもよい。式(I)の化合物は、ラセミ体またはスカレミックの形であり得る。したがって、式(I)の化合物は、1つの立体異性体であり得るか、または種々の立体異性体を含むか、またはそれらからなる組成物の形であり得る。
【0017】
「縮合または架橋された二環式または三環式化合物」または類似の用語は、当該技術分野における通常の意味を意味し、すなわち、縮合二環式化合物については、化合物は、2つの隣接する原子を共有する2つの環、例えばデカリンを含み、架橋二環式化合物については、化合物は、少なくとも3つの原子を共有する2つの環、例えばノルボルネンを含む。特定の実施形態によれば、縮合または架橋二環式または三環式化合物は、縮合シクロプロピル環を含む。
【0018】
「メチレン」または類似の用語は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、二重結合によって環の1つの炭素に連結されたCH基を意味する。換言すれば、オレフィン化合物は、末端エキソ二重結合を有する。
【0019】
「第二級アミン」という用語は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、窒素原子が、1つの水素原子および水素原子とは異なる2つの基によって置換されることを意味する。
【0020】
明確にするために、「光レドックス触媒」という用語は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、単一電子移動プロセスを介して有機基質を活性化することによって化学反応を促進するために光を吸収する触媒を意味する。
【0021】
明確にするために、「水素原子移動供与体」という表現は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、水素フリーラジカルを提供することができる化合物を意味する。水素原子移動は、HATとも呼ばれる。
【0022】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、nは1~4である。好ましくは、nは、1~3、より好ましくは1または2であってよく、典型的にはnは1である。
【0023】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rは、水素原子またはC1~8直鎖状アルキル基であり得る。好ましくは、Rは、C1~3直鎖状アルキル基であり得る、すなわち、アルデヒドは、プロパナール、ブタナールおよびペンタナールからなる群から選択され得る。好ましくは、Rは、メチル基またはエチル基であり得る、すなわち、アルデヒドは、プロパナールおよびブタナールからなる群から選択され得る。さらにより好ましくは、Rは、メチル基であり得る;すなわち、アルデヒドは、プロパナールであり得る。
【0024】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、Rは、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表す。好ましくは、Rは、水素原子、メチル基、エチル基またはペンチル基であり得る。さらにより好ましくは、Rは、水素原子またはメチル基またはペンチル基であり得る。
【0025】
上記のいずれかの実施形態のいずれか1つによれば、Rは、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表す。好ましくは、Rは、水素原子またはC1~2直鎖状アルキル基またはC直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基であり得る。さらにより好ましくは、Rは、水素原子またはイソプロピル基であり得る。
【0026】
上記の実施形態のいずれかによれば、Rは、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表す。好ましくは、Rは、水素原子またはC1~2直鎖状アルキル基であり得る。さらにより好ましくは、Rは、水素原子またはメチル基であり得る。
【0027】
上記の実施形態のいずれかによれば、Rは、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表す。好ましくは、Rは、水素原子またはC1~2直鎖状アルキル基であり得る。さらにより好ましくは、Rは、水素原子またはメチル基であり得る。
【0028】
上記の実施形態のいずれかによれば、RおよびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する。好ましくは、RおよびRまたはRは、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する。「飽和」および「不飽和」または類似の表現は、当業者に理解される通常の意味、すなわち、「飽和」については炭素環が二重結合を含まないことを意味し、「不飽和」については炭素環が二重結合を含むが芳香族環系ではないことを意味する。「任意に置換される」または類似の表現は、飽和または不飽和の5員または6員の炭素環が、C~C直鎖状アルキル基またはC分枝鎖状アルキル基で置換され得ることを意味する。
【0029】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の化合物は、2-メチル-3-(2,3,4,4-テトラメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール、2-メチル-3-(3-メチル-2-ペンチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)プロパナール、3-(3-イソプロピル-3-メチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナールからなる群から選択される。
【0030】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、オレフィンは、以下の式
【化4】
[式中、nは、1~4を表し、かつR~Rは、互いに独立して、水素原子またはC1~6直鎖状アルキル基またはC3~6分枝鎖状アルキル基を表し;RおよびRまたはR、あるいは代替的に、RおよびRは、一緒になって、任意に置換される飽和または不飽和の5員または6員の炭素環を形成する]の化合物であって、その立体異性体またはその混合物のいずれか1つの形の化合物であり得る。
【0031】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、nは1~4である。好ましくは、nは、1~3、より好ましくは1または2であってよく、典型的にはnは1である。
【0032】
本発明の任意の実施形態によれば、特定の態様とは無関係に、化合物(I)ならびに化合物(II)は、ラセミ体の形、またはその立体異性体もしくはその混合物のいずれか1つの形であり得る。明確にするために、立体異性体という用語は、任意のジアステレオマーまたはエナンチオマーを意味する。
【0033】
実際、化合物(I)または(II)は、異なる立体化学を有し得るいくつかの立体中心を有し得る(すなわち、2つの立体中心が存在する場合、化合物(I)または(II)は、(R,R)または(R,S)配置を有し得る)。上記の立体中心の各々は、相対的もしくは絶対的立体配置RもしくはSまたはそれらの混合物であり得るか、または換言すれば、式(I)または(II)の上記化合物は、純粋なエナンチオマーもしくはジアステレオマーの形、または立体異性体の混合物の形であり得る。
【0034】
オレフィンの非限定的な例としては、化合物サビネン、1,5,5-トリメチル-2-メチレンビシクロ[4.1.0]ヘプタンおよび2-メチレン-1-ペンチルビシクロ[3.1.0]ヘキサンが挙げられる。
【0035】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、オレフィンは、広い濃度範囲で本発明の方法の反応媒体中に添加され得る。非限定的な例として、オレフィン濃度値としては、アルデヒドの量に対して約1モル当量~約8モル当量、好ましくはアルデヒドの量に対して約1.2モル当量~約6モル当量、アルデヒドの量に対して1.8モル当量~約3.5モル当量の範囲の値を挙げることができる。オレフィンの最適濃度は、当業者が知っているように、オレフィンの性質、アルデヒド、水素原子移動供与体、光レドックス触媒および/または第二級アミンの性質、反応温度ならびに所望の反応時間に依存することになる。
【0036】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、光レドックス触媒は、有機光触媒、またはイリジウム、またはルテニウム錯体、好ましくはイリジウム錯体であり得る。
【0037】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、光レドックス触媒は、少なくとも0.8V対SCEの酸化還元電位を有し得る。
【0038】
特定の実施形態によれば、適切な光レドックス触媒の非限定的な例として、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-N1,N1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル-N]フェニル-C]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(Ir(dF(CF)ppy)(dtbbpy)PFに対応)、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(メチル)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(Ir(dF(Me)ppy)(dtbbpy)PFに対応)、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[2-ピリジニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(Ir(dFppy)(dtbbpy)PFに対応)または[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’]ビス[3-フルオロ-5-トリフルオロメチル-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(Ir(FCF(CF)ppy)(dtbbpy)PFに対応)が挙げられ得る。好ましくは、光レドックス触媒は、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェートであり得る。
【0039】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、光レドックス触媒は、広い濃度範囲で本発明の方法の反応媒体中に添加され得る。非限定的な例として、光レドックス触媒の濃度値としては、アルデヒドの量に対して約0.01モル%~約10モル%、好ましくはアルデヒドの量に対して約0.05モル%~約5モル%、さらにより好ましくはアルデヒドの量に対して約0.1モル%~約1モル%の範囲の値を挙げることができる。触媒の最適濃度は、当業者が知っているように、触媒の性質、アルデヒド、オレフィン、水素原子移動供与体および/または第二級アミンの性質、反応温度ならびに所望の反応時間に依存することになる。
【0040】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、水素原子移動供与体は、スズ、ケイ素、硫黄、セレン、ホウ素もしくはリン誘導体などの金属水素化物化合物、またはマロニトリルなどの有機化合物のようなラジカル化学において使用される任意の水素原子移動供与体であり得る。
【0041】
特定の実施形態によれば、水素原子移動供与体は、硫黄誘導体である。好ましくは、水素原子移動供与体は、以下の式
【化5】
[式中、各Rは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1~2直鎖状アルキル基、C3~4直鎖状または分枝鎖状アルキル基、1~5個のハロゲン原子によって任意に置換されるフェニル基および/またはC1~4アルキル基もしくはアリール基で三置換されたC1~4アルキル基もしくはアルコキシ基またはシリル基を表し;ただし、最大2個のR基は水素原子を表す]のチオフェノールである。好ましくは、チオフェノールは、2,4,6-トリメチルベンゼンチオール、2,4,6-トリ-イソ-プロピルベンゼンチオール、2,6-ジメチルベンゼンチオール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルベンゼンチオール、2,6-ジイソプロピルベンゼンチオール、2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオール、4-tert-ブチルベンゼンチオールおよび4-フルオロベンゼンチオールからなる群から選択され得る。好ましくは、チオフェノールは、2,4,6-トリメチルベンゼンチオール、2,4,6-トリ-イソ-プロピルベンゼンチオール、2,6-ジメチルベンゼンチオール、2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオール、4-tert-ブチルベンゼンチオールおよび4-フルオロベンゼンチオールからなる群から選択され得る。好ましくは、チオフェノールは、2,6-ジメチルベンゼンチオール、2,4,6-トリメチルベンゼンチオール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルベンゼンチオール、2,6-ジイソプロピルベンゼンチオール、2,4,6-トリ-イソ-プロピルベンゼンチオールおよび2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオールからなる群から選択され得る。さらにより好ましくは、チオフェノールは、2,4,6-トリ-イソ-プロピルベンゼンチオールまたは2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオールであり得る。
【0042】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、チオフェノールは、広い濃度範囲で本発明の方法の反応媒体中に添加され得る。非限定的な例として、チオフェノール濃度値としては、アルデヒドの量に対して約0.5モル%~約20モル%、好ましくはアルデヒドの量に対して約1モル%~約10モル%の範囲の値を挙げることができる。チオフェノールの最適濃度は、当業者が知っているように、チオフェノールの性質、アルデヒド、オレフィン、光レドックス触媒および/または第二級アミンの性質、反応温度ならびに所望の反応時間に依存する。
【0043】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、第二級アミンは、1~3個のハロゲン原子または酸もしくはエステル基によって任意に置換される環状もしくは非環状アミンであり得る。好ましくは、第二級アミンは、以下の式
【化6】
[式中、RおよびRは、別々に考える場合、互いに独立して、1~3個のハロゲン原子によって任意に置換されるC1~4アルキル基を表すか;またはRおよびRは、一緒に考える場合、エステルまたは酸基によって任意に置換されるC2~4直鎖状アルカンジイル基を表す]のものであり得る。上記の第二級アミンは、アンモニウム塩の形であり得る。好ましくは、第二級アミンは、2-(ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)((トリメチルシリル)オキシ)メチル)ピロリジン、2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタン-1-アミン、2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタン-1-アミニウムクロリド、2,2,2-トリフルオロ-N-エチルエタン-1-アミン、2,2,2-トリフルオロ-N-エチルエタン-1-アミニウムクロリド、ビス(2-クロロエチル)アミン、ビス(2-クロロエチル)アミニウムクロリド、ジメチルアミンおよびジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選択され得る。好ましくは、第二級アミンは、2-(ビス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)((トリメチルシリル)オキシ)メチル)ピロリジン、2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタン-1-アミン、2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタン-1-アミニウムクロリド、ビス(2-クロロエチル)アミン、ビス(2-クロロエチル)アミニウムクロリド、ジメチルアミンおよびジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選択され得る。さらにより好ましくは、第二級アミンは、2,2,2-トリフルオロ-N-エチルエタン-1-アミンまたは2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタン-1-アミンであり得る。さらにより好ましくは、第二級アミンは、2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタン-1-アミンであり得る。第二級アミンは、塩の形であってもよい。
【0044】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、第二級アミンは、広い濃度範囲で本発明の方法の反応媒体中に添加され得る。非限定的な例として、第二級アミンの濃度値としては、アルデヒドの量に対して約0.5モル%~約20モル%、好ましくはアルデヒドの量に対して約5モル%~約15モル%の範囲の値を挙げることができる。第二級アミンの最適濃度は、当業者が知っているように、第二級アミンの性質、アルデヒド、オレフィン、光レドックス触媒および/または水素原子移動供与体の性質、反応温度ならびに所望の反応時間に依存する。
【0045】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、光は、250nm~800nmの範囲に含まれる波長を有し得る。好ましくは、光は、UV可視光であり得る。上記の光は、LEDランプまたはLEDストリップによって発生させることができる。
【0046】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の方法は、任意に、塩酸、トリフルオロ酢酸またはパラトルエンスルホン酸などの無機酸または有機酸の存在下で実施され得る。
【0047】
反応は、溶媒の存在下または非存在下で行うことができる。溶媒が必要とされるか、または実用的な理由で使用される場合、このようなタイプの反応における任意の溶媒流を、本発明の目的のために使用することができる。高い誘電率を有する溶媒が好ましい。溶媒の非限定的な例としては、DMSO、DMPU、DMF、DMA、NMP、アセトニトリル、DME、メチルテトラヒドロフランまたはそれらの混合物が挙げられる。溶媒の選択は、基質および/または触媒の性質に依存し、当業者は、各場合において反応を最適化するのに最も適した溶媒を十分に選択することができる。
【0048】
本発明の方法は、0℃~50℃の範囲の温度、またはそれを上回る温度で実施され得る。好ましくは、本発明の方法は、周囲温度、すなわち、約25℃で実施され得る。当然ながら、当業者は、出発物質および最終生成物の融点および沸点ならびに所望の反応または転化の時間に従って好ましい温度を選択することもできる。
【0049】
本発明の方法は、バッチ条件または連続条件下で実施することができる。
【0050】
驚くべきことに、本発明の方法は、通常のラジカル法で形成されるカラッシュ(Kharasch)ケトンとしても知られるケトン副生成物の形成を回避する。換言すれば、本発明の方法は、カラッシュケトンを含まない化合物を提供することによって非常に選択的である。理論に束縛されるものではないが、式(I)の化合物を提供する本発明の方法は、複数の工程、すなわち、第二級アミンとアルデヒドとを反応させてエナミンを形成する工程、次にエナミニルラジカルを形成する工程、上記ラジカルをオレフィン化合物に付加する工程、ひずみのある環を開環する工程、および最後に水素原子移動供与体でラジカルを捕捉する工程に分割することができる。
【0051】
驚くべきことに、本発明による方法は、式(I)による化合物を選択的に得るための速度論的に有利なエキソ開環を提供し、環内開環を回避するものであり、以下の式
【化7】
[式中、nおよびR~Rの意味は上記と同じである]による化合物である熱力学的に有利な生成物をもたらす。
【0052】
これは、本発明による方法が、式(I)による化合物を選択的に提供し、式(III)による化合物を5.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、さらにより好ましくは1.0質量%以下で形成することを意味する。
【0053】
「質量%」とは、組成物中の化合物の質量パーセントとして理解されなければならない。本明細書に記載される組成物の質量パーセント組成面(例えば、組成物中に存在する1種以上の化合物の質量パーセント)は、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、ラマン分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法、または当業者に公知の他の適切な分析方法によって決定することができる。
【0054】
式(I)の化合物は新規である。したがって、本発明の別の対象は、上記で定義された式(I)の化合物である。本発明の化合物の非限定的な例として、その立体異性体のいずれか1つの形での、2-メチル-3-(2,3,4,4-テトラメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール、2-メチル-3-(3-メチル-2-ペンチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)プロパナール、3-(3-イソプロピル-3-メチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)-2-メチルプロパナールを挙げることができる。
【0055】
上記の式(I)の化合物は、賦香成分として使用することができる。
【0056】
したがって、本発明の別の対象は、式(I)の化合物の賦香成分としての使用である。換言すれば、本発明は、賦香用組成物または着香物品または表面の匂い特性を付与、強化、改善または改変する方法であって、少なくとも1種の式(I)の化合物の有効量を上記組成物または物品に添加して、例えば、その典型的なノートを付与することを含む方法に関する。
【0057】
「化合物の使用」または類似の表現は、本明細書では、化合物(I)を含有し、香料産業において有利に使用され得る任意の組成物の使用であることも理解されなければならない。
【0058】
実際に賦香成分として有利に使用され得る上記組成物もまた、本発明の対象である。
【0059】
したがって、本発明の別の対象は、賦香用組成物であって、
i)賦香成分として、上記で定義された少なくとも1種の本発明の化合物;
ii)香料担体および香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分;および
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む、賦香用組成物である。
【0060】
「香料担体」とは、香料の観点から実質的に中立的である、すなわち、賦香成分の感覚刺激特性を有意に変化させない材料を意味する。上記の担体は、液体または固体であり得る。
【0061】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち、溶媒および界面活性剤系、または香料で一般的に使用されている溶媒を挙げることができる。香料で一般的に使用されている溶媒の性質および種類の詳細な説明は網羅できるものではない。しかしながら、非限定的な例として、最も一般的に使用されている、ブチレンまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノ、トリ-エチルシトレートまたはそれらの混合物などの溶媒を挙げることができる。香料担体および香料基剤の双方を含む組成物については、先に特定したもの以外の他の適切な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)の商標で知られているものなどのイソパラフィン、またはDowanol(製造元:Dow Chemical Company)の商標で知られているものなどのグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、Cremophor(登録商標)RH40(製造元:BASF)の商標で知られているものなどの水素化ひまし油であってもよい。
【0062】
固体担体は、賦香用組成物または賦香用組成物のいくつかの要素が化学的または物理的に結合し得る材料を示すことを意味する。一般に、このような固体担体は、組成物を安定化するために、または組成物もしくはいくつかの成分の蒸発速度を制御するために使用される。固体担体の使用は、当該技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果を達成する方法を知っている。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木質系材料、有機または無機ゲル、粘土、石膏タルクまたはゼオライトなどの吸収性ガムまたはポリマーまたは無機材料を挙げることができる。
【0063】
固体担体の他の非限定的な例として、カプセル化材料を挙げることができる。かかる材料の例は、単糖類、二糖類または三糖類、天然または加工澱粉、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチンなどの壁形成および可塑化材料、またはさらにH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996年などの参考文献に引用された材料を含み得る。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集またはさらに押出などの技術を使用して実施することができるか;またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0064】
固体担体の他の非限定的な例として、重合、界面重合、コアセルベーション、または全体(上記の技術はすべて従来技術に記載されている)によって誘起される相分離プロセスのような技術を、任意に重合性安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で使用して、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレアまたはポリウレタンタイプの樹脂、またはそれらの混合物(上記の樹脂はすべて当業者によく知られている)を用いたコア-シェルカプセルを特に挙げることができる。
【0065】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)と、アミン、例えば、ウレア、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾール等、ならびにそれらの混合物との重縮合によって製造することができる。代替的に、Urac(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF)の商標の下で市販されているものなどの予め形成された樹脂アルキル化ポリアミンを使用することができる。
【0066】
他の樹脂は、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットまたはキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体(Takenate(登録商標)の商品名で知られる、製造元:三井化学)、中でもキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットのようなポリイソシアネートと、グリセロールのようなポリオールとの重縮合により製造されたものである。
【0067】
アミノ樹脂、すなわちメラミンベースの樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関連するいくつかの影響力のある文献には、K. DietrichらによってActa Polymerica, 1989年, 第40巻, 243頁, 325頁および683頁、ならびに1990年, 第41巻, 91頁に公開されたものなどの論文が含まれる。このような論文には、特許文献にさらに詳細に記載され、例示されている従来技術の方法に従って、このようなコア-シェルマイクロカプセルの調製に影響する種々のパラメータが既に記載されている。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4’396’670号明細書は、後者の適切な初期の例である。それ以来、多くの他の著者がこの分野の文献を充実させており、ここで公開されたすべての開発を網羅することは不可能であるが、カプセル化技術の一般的な知識は非常に重要である。このようなマイクロカプセルの好適な使用を開示する適切なより最近の刊行物は、例えば、H. Y. Leeらの論文Journal of Microencapsulation, 2002年, 第19巻, 559~569頁、国際特許公報の国際公開第01/41915号またはさらにS. Boneらの論文Chimia, 2011年, 第65巻, 177~181頁によって表されている。
【0068】
「香料基剤」とは、本明細書では、少なくとも1種の賦香補助成分を含む組成物を意味する。
【0069】
上記の賦香補助成分は、式(I)のものではない。さらに、「賦香補助成分」とは、本明細書では、心地よい効果を付与するために賦香調製物または組成物で使用される化合物を意味する。換言すれば、賦香するものであると見なされるべき、このような補助成分は、単に匂いを有するものとしてではなく、組成物の匂いを積極的にまたは心地よい方法で付与または改変することができるものとして当業者によって認識されなければならない。
【0070】
基剤中に存在する賦香補助成分の性質および種類は、本明細書でより詳細な説明を保証するものではなく、いずれの場合も網羅的なものではなく、当業者は、その一般的な知識に基づいて、意図される使用または用途および所望の感覚刺激効果に従って、それらを選択することができる。一般に、これらの賦香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄の複素環化合物および精油のように多様な化学的クラスに属し、上記の賦香補助成分は、天然由来または合成由来であってよい。
【0071】
特に、香料配合物で一般的に使用されている以下のような賦香補助成分を挙げることができる:
- アルデヒド成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナールおよび/またはノネナール;
- 芳香ハーブ成分:ユーカリ油、カンファー、ユーカリプトール、メントールおよび/またはα-ピネン;
- バルサミコ成分:クマリン、エチルバニリンおよび/またはバニリン;
- 柑橘類成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、酢酸リナリル、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-P-メンテン-8-イルアセテートおよび/またはl,4(8)-P-メンタジエン;
- フローラル成分:ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルサリチレート、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、βイオノン、メチル2-(メチルアミノ)ベンゾエート、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、ヘキシルサリチレート、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、ベルジルアセテート、ゲラニオール、P-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、アミルサリチレート、高シスジヒドロジャスモン酸メチル、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベルジルプロピオネート、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、シス-7-P-メンタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、4-フェニル-2-ブタノン、イソノニルアセテート、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、ベルジルイソブチレートおよび/またはメチルイオノン異性体の混合物;
- フルーツ成分:ガンマウンデカラクトン、4-デカノリド、エチル2-メチル-ペンタノエート、ヘキシルアセテート、エチル2-メチルブタノエート、ガンマノナラクトン、アリルヘプタノエート、2-フェノキシエチルイソブチレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテートおよび/またはジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
- グリーン成分:2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボアルデヒド、2-tert-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
- ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、ペンタデセノリド、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ-g-2-ベンゾピラン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、ペンタデカノリドおよび/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
- ウッディ成分:1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチョリ油、パチョリ油のテルペン画分、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンおよび/またはイソボルニルアセテート;
- 他の成分(例えば、アンバー、パウダリースパイシーまたはウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フランおよびその立体異性体のいずれか、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナミックアルデヒド、クローブ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナールおよび/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール。
【0072】
本発明による香料基剤は、上述の賦香補助成分に限定されるものではなく、これらの補助成分のその他の多くは、いずれの場合も、S. Arctanderによる書籍、Perfume and Flavor Chemicals, 1969年、米国、ニュージャージー州、モントクレアもしくはその最近の版、または類似の性質の他の論文、ならびに香料分野における豊富な特許文献などの参考テキストに列挙されている。また、上記の補助成分は、様々な種類の賦香化合物を制御された方法で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解されている。
【0073】
「香料補助剤」とは、本明細書では、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらなる追加の利益を与えることができる成分を意味する。賦香用組成物に一般的に使用されている補助剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅できるものではないが、上記の成分が当業者によく知られていることは言及されなければならない。特定の非限定的な例として、以下を挙げることができる:粘度調整剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤および/またはレオロジー改質剤)、安定化剤(例えば、保存剤、酸化防止剤、熱/光およびまたは緩衝剤またはBHTなどのキレート剤)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、保存剤(例えば、抗菌剤または抗菌薬または抗真菌剤または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、防虫剤、軟膏、ビタミンおよびそれらの混合物。
【0074】
当業者は、賦香用組成物の上記の成分を混合することにより、当該技術の標準的な知識を単純に適用することにより、ならびに試行錯誤の方法論により、所望の効果のための最適な配合物を完全に設計することができることが理解される。
【0075】
少なくとも1種の本発明の化合物および少なくとも1種の香料担体からなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施形態、ならびに少なくとも1種の本発明の化合物;すなわち、少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種の香料担体、少なくとも1種の香料基剤、および任意で少なくとも1種の香料補助剤を含む賦香用組成物からなる。
【0076】
特定の実施形態によれば、上述の組成物は、2種以上の式(I)の化合物を含み、調香師が、本発明の種々の化合物の匂いの調性を有するアコードまたは香料を調製し、したがって創出目的のための新規な構成ブロックを作り出すことを可能にする。
【0077】
明確にするために、化学合成から直接得られる混合物、例えば、本発明の化合物が出発生成物、中間生成物または最終生成物として含まれるであろう、適切な精製を行っていない反応媒体は、上記の混合物が本発明の化合物を香料に適した形で提供しない限り、本発明による賦香用組成物と見なすことができないことも理解される。したがって、精製されていない反応混合物は、特に明記しない限り、概して本発明から除外される。
【0078】
本発明の化合物はまた、上記の式(I)の化合物が添加される消費者製品の匂いを積極的に付与または改変するために、現代香料の分野のすべて、すなわち、香水または機能性香料において有利に使用することができる。したがって、本発明の別の対象は、賦香成分として、上記で定義された本発明の化合物を少なくとも1種含有する着香消費者製品からなる。
【0079】
本発明の化合物は、そのままで、または本発明の賦香用組成物の一部として添加することができる。
【0080】
明確にするために、「着香消費者製品」とは、適用される表面または空間(例えば、皮膚、毛髪、テキスタイル、または家庭表面)に少なくとも心地よい賦香効果を与える消費者製品を指すことを意味する。換言すれば、本発明による着香消費者製品は、機能性配合物、ならびに所望の消費者製品に対応する、任意の追加の利益剤、および嗅覚的有効量の少なくとも1種の本発明の化合物を含む着香消費者製品である。明確にするために、上記の着香消費者製品は、非食用製品である。
【0081】
着香消費者製品の成分の性質および種類は、本明細書でのより詳細な説明を保証するものではなく、いずれの場合も網羅的なものではなく、当業者は、その一般的な知識に基づいて、かつ上記の製品の性質および所望の効果に従ってそれらを選択することができる。
【0082】
適切な着香消費者製品の非限定的な例としては、香料、例えば、香水、スプラッシュまたはオードパルファム、コロンまたは髭剃りまたはアフターシェーブローション;ファブリックケア製品、例えば、液体または固体洗剤、柔軟剤、液体または固体の芳香増強剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えば、毛髪ケア製品(例えば、シャンプー、着色剤またはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪製品、歯科用ケア製品)、殺菌剤、インティメイトケア製品;化粧品(例えば、スキンクリームまたはローション、バニシングクリームまたはデオドラントまたは制汗剤(例えば、スプレーまたはロール)、除毛剤、日焼け剤または日焼け製品または日焼け後製品、ネイル製品、皮膚洗浄剤、メーキャップ);
またはスキンケア製品(例えば、石鹸、シャワーもしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または衛生製品またはフット/ハンドケア製品);エアケア製品、例えば、エアフレッシュナーまたは家庭空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または自動車)および/または公共空間(ホール、ホテル、モールなど)で使用され得る「すぐに使用できる」粉末エアフレッシュナー;または家庭ケア製品、例えば、カビ除去剤、家具ケア用品、ワイプ、食器用洗剤または硬質表面(例えば、床、浴室、生理用品または窓)洗剤;レザーケア製品;カーケア製品、例えば、ポリッシュ、ワックスまたはプラスチッククリーナーが挙げられる。
【0083】
上述の着香消費者製品のいくつかは、本発明の化合物にとって攻撃的媒体となり得るので、例えば、カプセル化によって、または酵素、光、熱もしくはpHの変化などの適切な外部刺激の際に本発明の成分を放出するのに適した別の化学物質に該化合物を化学的に結合させることによって、該化合物を早期分解から保護することが必要であり得る。
【0084】
本発明による化合物を種々の前述の生成物または組成物に組み込むことができる割合は、広範囲の値の範囲内で変化する。これらの値は、着香される物品の性質、所望の感覚刺激効果ならびに本発明による化合物が当該技術分野で一般的に使用されている賦香補助成分、溶媒または添加剤と混合される際の所与の基剤中の補助成分の性質に依存する。
【0085】
例えば、賦香用組成物の場合、本発明の化合物の典型的な濃度は、それらが組み込まれる組成物の質量を基準として、0.001質量%~10質量%、またはそれ以上のオーダーである。着香消費者製品の場合、本発明の化合物の典型的な濃度は、それらが組み込まれる消費者製品の質量を基準として、0.0001質量%~1質量%、またはそれ以上のオーダーである。
【0086】
実施例
本発明は、ここで以下の実施例によりさらに詳細に説明されることになるが、その際、略語は、当該技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏(℃)で示される。NMRスペクトルを、400MHz、(H)および100MHz(13C)で動作するBruker Avance II Ultrashield 400 plusまたは500MHz(H)および125MHz(13C)で動作するBruker Avance III 500または600MHz(H)および150MHz(13C)で動作するBruker Avance III 600 cryoprobeのいずれかを使用して取得した。スペクトルは、テトラメチルシラン0.0ppmに対して内部参照した。H NMRシグナルシフトは、σppmで表され、カップリング定数(J)は、以下の多重度:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;b、ブロード(未解明のカップリングを示す)によりHzで表され、Bruker Topspinソフトウェアを使用して解釈した。13C NMRデータは、化学シフトσppmならびにDEPT90およびDEPT135実験からのハイブリダイゼーション、C、第四級;CH、メチン;CH、メチレン;CH、メチルで表される。
【0087】
本発明の方法を用いる化合物の調製
実施例1
水ジャケットを有するガラス管に、2-メチレン-1-ペンチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン(3.28g、20ミリモル)、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-N1,N1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル-N]フェニル-C]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(0.011g、0.01ミリモル)、2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオール(0.070g、0.25ミリモル)、HCl(0.08ml、0.5ミリモル)、HO(0.54ml、30ミリモル)、DME(5mL)を装入した。最後に、プロピオンアルデヒド(0.58g、10ミリモル)および2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタンアミン(0.11g、1.0ミリモル)を加えた。
【0088】
混合物を、青色LEDランプで照射し、室温で24時間撹拌した。水層をデカントし、次いでジエチルエーテルで抽出し、次いで有機相を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空下で蒸発させた。粗生成物を、クーゲルローア(Kuegelrohr)バルブトゥバルブ蒸留(0.1ミリバール、120℃)によって精製して、無色油状物として2-メチル-3-(3-メチル-2-ペンチルシクロペンタ-1-エン-1-イル)プロパナール(1.51g、6.1ミリモル、収率58%)を得た。文献に記載されているすべての類似の方法と比較して、このアルデヒドは、2-メチレン-1-ペンチルビシクロ[3.1.0]ヘキサンの速度論的に有利なエキソ環シクロプロピル開環の結果として、驚くべき選択性(95%より高い選択性)で得られた。
【0089】
化合物の嗅覚的評価は、興味深いウォータリーな嗅覚的ノートを示した。
【表1】
【0090】
実施例2
水ジャケットを備えたガラス管に、(1S,5S)-1-イソプロピル-4-メチレンビシクロ[3.1.0]ヘキサン(20.44g、150ミリモル)、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-N1,N1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル-N]フェニル-C]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(0.056g、0.05ミリモル)、2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオール(0.35g、1.25ミリモル)、HCl(0.42ml、2.5ミリモル)、HO(2.7ml、150ミリモル)、DME(25mL)を装入した。最後に、プロピオンアルデヒド(2.90g、50ミリモル)および2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタンアミン(0.56g、5ミリモル)を加えた。
【0091】
混合物を室温で撹拌し、青色LEDランプ照射下に24時間置いた。水層をデカントし、ジエチルエーテルを加え、有機相を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物を、フィッシャー蒸留(0.5ミリバール、120℃)によって精製して、無色油状物として3-[(3S)-3-イソプロピル-3-メチル-1-シクロペンテン-1-イル]-2-メチルプロパナール(2.90g、14.6ミリモル、収率29%)を得た。エンド環のシクロプロピル開環から生じる化合物(すなわち、熱力学的に有利な化合物)は観察されなかった。
【0092】
得られた化合物を嗅覚的に評価し、アルデヒドノートおよびウォータリーノートを有するものとして記載した。
【表2】
【0093】
実施例3
水ジャケットを備えたガラス管に、1,5,5-トリメチル-2-メチレンビシクロ[4.1.0]ヘプタン(0.9g、6ミリモル)、[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,2’-ビピリジン-N1,N1’]ビス[3,5-ジフルオロ-2-[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジニル-N]フェニル-C]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスフェート(0.011g、0.01ミリモル)、2,4,6-トリ-tert-ブチルベンゼンチオール(0.070g、0.25ミリモル)、HCl(0.08ml、0.5ミリモル)、HO(0.54ml、30ミリモル)、DME(25mL)を装入した。最後に、プロピオンアルデヒド(0.58g、10ミリモル)および2,2,2-トリフルオロ-N-メチルエタンアミン(0.11g、1.0ミリモル)を加えた。
【0094】
混合物を、青色LED光で照射し、室温で24時間撹拌した。水層をデカントし、ジエチルエーテルを加え、有機相を水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空下で蒸発させた。粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc9/1)、次いでクーゲルローアバルブトゥバルブ蒸留(0.1ミリバール、120℃)によって精製して、無色油状物として2-メチル-3-(2,3,4,4-テトラメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)プロパナール(0.25g、1.2ミリモル、収率40%)を得た。エンド環のシクロプロピル開環から生じる化合物(すなわち、熱力学的に有利な化合物)は観察されなかった。
【0095】
化合物の嗅覚プロフィールは、興味深いウォータリーな嗅覚ノートを示すものとして評価された。
【表3】
【国際調査報告】