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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】光ビーム導波器
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20220104BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20220104BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/08 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020570757
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(85)【翻訳文提出日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 AU2019050437
(87)【国際公開番号】W WO2019241825
(87)【国際公開日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】2018902217
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】PCT/AU2018/050901
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2018904943
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518090546
【氏名又は名称】バラハ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリッカセリル,シビー
(72)【発明者】
【氏名】コラルテ ボンディー,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ロディン,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】タバッキーニ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
2H141
2H249
5J084
【Fターム(参考)】
2H141MA12
2H141MB17
2H141MD12
2H141MD13
2H141MD23
2H141MD25
2H141MD35
2H141MD40
2H141ME09
2H141ME11
2H141ME23
2H141ME24
2H141ME25
2H141MG06
2H141MG10
2H249AA02
2H249AA12
2H249AA50
2H249AA59
2H249AA61
2H249AA64
2H249AA69
5J084AC02
5J084AC03
5J084BA04
5J084BA11
5J084BA22
5J084BB04
5J084BB11
5J084BB34
5J084DA01
(57)【要約】
本明細書では、光検出及び測距(LiDAR)系の技術に基づいて環境の空間プロファイルの推定を容易にするためのシステム及び方法が開示されている。一構成においては、本開示は、垂直方向等に沿って一次元にわたる光の方向づけに基づいて、空間プロファイルの推定を容易にする。別の構成においては、本開示は、一次元に方向づけられた光を更に水平方向等の別の次元に沿って方向づけることにより、二次元における光の方向づけに基づく空間プロファイル推定を容易にする。
【選択図】図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを、1以上の選択された前記光ビームの波長チャネルの各々に基づき、複数の方向のうちの1以上の方向に、第1次元にわたって方向づけるように配置された第1回折アセンブリと、
複数の回折素子を含む第2回折アセンブリと
を備え、
前記複数の回折素子の各々は、
1以上の別の回折素子の回折軸から角度的にオフセットした回折軸で方向づけられており、
前記第1次元に実質的に直交する第2次元にわたる光ビームの方向づけを容易にすべく、前記オフセットした回折軸に垂直な回転軸に対して回転可能である
光ビーム導波器。
【請求項2】
前記複数の回折素子は、共通の回転軸に対して同時に回転可能である
請求項1に記載の光ビーム導波器。
【請求項3】
前記複数の回折素子は、回折軸が最大角度にオフセットされて方向づけられる
請求項1又は2に記載の光ビーム導波器。
【請求項4】
前記複数の回折素子は、回折軸が相互に90度ずつ角度的にオフセットされた2つの回折素子を含む
請求項3に記載の光ビーム導波器。
【請求項5】
前記複数の回折素子は、回折軸が相互に60度ずつ角度的にオフセットされた3つの回折素子を含む
請求項3に記載の光ビーム導波器。
【請求項6】
前記複数の回折素子は、前記複数の回折素子の回転時に、前記第2次元に沿って回折閾値を超えて、前記光ビームを順次回折させるように配置される
請求項1~5のいずれか一項に記載の光ビーム導波器。
【請求項7】
前記複数の回折素子は、前記複数の回折素子の回転時に、前記第2次元に沿って前記回折閾値を超えて、前記光ビームの方向のデューティサイクルを最大化するように最適化された周期性を有する
請求項6に記載の光ビーム導波器。
【請求項8】
前記回折閾値は、非回折状態に対応する
請求項6又は7に記載の光ビーム導波器。
【請求項9】
前記回折閾値は、
(a)最小必要角度スパン、及び
(b)最小必要出力光パワー又は格子透過率
のうちの一方又は双方を含む、最小設定の尺度に対応する
請求項6又は7に記載の光ビーム導波器。
【請求項10】
前記周期性は、前記第1次元に沿った角度スパンの限界に対応する末端の波長チャネルでの回折効率を向上させるように更に設計される
請求項7から9のいずれか一項に記載の光ビーム導波器。
【請求項11】
前記第1回折アセンブリは、前記第1次元にわたる前記光ビームの方向づけを容易にすべく、光学軸に対して回転不能である1以上の更なる回折素子を含む
請求項1~10のいずれか一項に記載の光ビーム導波器。
【請求項12】
前記第1次元及び前記第2次元を横切る視野にわたって、前記第2回折アセンブリは、80%以上、又は90%以上、又は95%以上のデューティサイクルを有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の光ビーム導波器。
【請求項13】
第1次元と、前記第1次元に対して実質的に垂直な第2次元とにわたる深度次元を有する環境に、1以上の光ビームの複数の波長を含む光を方向づけるように配置され、
受光した前記光を波長に基づき前記第1次元にわたって方向づける構成に配置された分散素子、回折素子、及び反射素子から選択された複数の素子を含み、前記光を受光する第1光学サブシステムと、
前記第2次元にわたる前記光ビームの方向づけを容易にすべく、回折軸に垂直な回転軸に対して回転可能な1以上の回折素子を含み、前記第1次元にわたって方向づけた前記光を受光する第2光学サブシステムと
を有する光学部品と、
前記光学部品からの光に応じて環境から戻される光の受光器と
を備え、
戻された前記光は、前記第1次元及び前記第2次元にわたる前記深度次元を決定するための情報を含む
光学システム。
【請求項14】
前記第1光学サブシステムにおける前記複数の素子の各々は、相互に対する位置及び方向において実質的に固定される
請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
前記第1光学サブシステムは、角度依存性帯域通過フィルタを含み、一方の波長チャネルが反射され、他方の隣接する波長チャネルが通過され、前記波長チャネルの間に角度分解が生じる
請求項13又は14に記載の光学システム。
【請求項16】
前記第1光学サブシステムは、受光した前記光の少なくとも一部が、前記帯域通過フィルタの異なる通過帯域に対応する異なる角度で、前記帯域通過フィルタに、複数回方向づけられるように配置がなされる
請求項15に記載の光学システム。
【請求項17】
前記配置の前記第1光学サブシステムは、平行以外の方向で前記帯域通過フィルタに対向するミラーを含む
請求項16に記載の光学システム。
【請求項18】
前記第2光学サブシステムは、
前記第2次元にわたる前記光ビームの方向づけに関連付けた閾値を超える回折を行う第1設定の位置と、前記閾値を超える回折を行わない第2設定の位置とを介して回転可能な第1回折素子と、
少なくとも前記第1回折素子が前記第2設定の位置にあるときに、前記閾値を超える回折を行うべく、前記光学システムの内部で方向づけられた第2回折素子と
を有する複数の回折素子を含む
請求項13~17のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項19】
前記第1回折素子と前記第2回折素子とを同期的に回転させるように構成される
請求項18に記載の光学システム。
【請求項20】
前記第1回折素子と前記第2回折素子とを実質的に同一の回転軸に対して回転させるように構成される
請求項19に記載の光学システム。
【請求項21】
前記第2光学サブシステムは、透過性又は反射性の二次元プロファイルの格子を含む
請求項13から17のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項22】
双方向プロファイルの前記格子は、第1回折軸と、前記第1回折軸に対して実質的に横方向になるように前記第1回折軸から角度的にオフセットされた第2回折軸とを含む
請求項21に記載の光学システム。
【請求項23】
二次元プロファイルの前記格子は、前記第1回折軸と前記第2回折軸との双方の第1回折次数を最適化する特性を有する
請求項22に記載の光学システム。
【請求項24】
双方向プロファイルの前記格子は、前記格子を横切って分布する離散回折素子を有し、前記離散回折素子は、第1次元と、前記第1次元とは異なる第2次元とにわたって周期的に分布し、前記第1次元から角度的にオフセットされている
請求項21~23のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項25】
第1次元と、前記第1次元に実質的に垂直な第2次元とを含む2つの次元にわたる深度次元を有する環境に光を方向づける光学システムであって、
第1ポートから複数の第2ポートのうちの1つに、波長に基づいて光を転送し、前記複数の第2ポートが、前記環境の第1次元に関連付けられた自由空間における波長次元にわたり、転送された前記光を方向づけるように配置された波長ルータと
前記波長次元にわたって配置され、前記第2ポートからの光をそれぞれの光ビームに平行にするように配置されたコリメート素子と、
前記コリメート素子からの光を受光し、回転位置に基づいて、前記環境の前記第2次元にわたる受光した前記光の方向をもたらすように配置された回転回折素子と
前記環境から戻された光を受光する受光器と
を備え、
戻された前記光は、前記第1次元と前記第2次元とにわたる深度次元を決定するための情報を含む
光学システム。
【請求項26】
非隣接波長チャネルを選択するための波長選択器
を更に備え、
前記波長選択器及び前記波長ルータは、一群の前記非隣接波長チャネルを前記複数の第2ポートの各々に方向づけるように構成される
請求項25に記載の光学システム。
【請求項27】
前記波長選択器は、10GHz以下、又は5GHz以下、又は1GHz以下の自由スペクトル範囲を有する
請求項25又は26に記載の光学システム。
【請求項28】
前記回転回折素子の第1回折軸から角度的にオフセットされた第2回折軸を有する回転回折素子
を更に備え、
組み合わせにおいて、前記回転回折素子は、前記回折素子のうちの1つの回折素子のみのデューティサイクルと比較して、前記第2次元にわたって光を方向づけるデューティサイクルが増加している、
請求項25から27のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項29】
前記回転回折素子は、透過性又は反射性の二次元プロファイルの格子を含む
請求項25~27のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項30】
双方向プロファイルの前記格子は、第1回折軸と、前記第1回折軸に対して実質的に横方向になるように前記第1回折軸から角度的にオフセットされた第2回折軸とを含む
請求項29に記載の光学システム。
【請求項31】
前記二次元プロファイルの格子は、前記第1回折軸と前記第2回折軸との双方の第1回折次数を最適化する特性を有する
請求項30に記載の光学システム。
【請求項32】
双方向プロファイルの前記格子は、前記格子を横切って分布する離散回折素子を有し、前記離散回折素子は、第1次元と、前記第1次元とは異なる第2次元とにわたって周期的に分布し、前記第1次元から角度的にオフセットされている
請求項29~31のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項33】
基板上の二次元パターンにより特徴づけられる回折素子
を備え、
前記二次元パターンは、前記回折素子に角度的にオフセットされた複数の回折軸を提供し、
回折アセンブリの前記基板は、光ビームの方向づけを容易にすべく回転軸に対して回転可能である
光ビーム導波器。
【請求項34】
複数の光ビーム導波器と、
第1次元にわたって光ビームの方向づけを容易にし、基板上の二次元パターンにより特徴づけられる回折素子を含む第1光ビーム導波器と、
第1次元に実質的に直交する第2次元にわたって複数の方向のうちの1以上の方向に向けて前記光ビームを方向づけるように配置された第2光ビーム導波器と
を備えた
請求項33に記載の光ビーム導波器。
【請求項35】
前記回折軸は、最大角度にオフセットされる
請求項33又は請求項34に記載の光ビーム導波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2018年6月21日に出願された豪国特許出願公開第2018902217号に関するものであり、その内容全体が、引用により本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2018年9月6日に出願された国際特許出願PCT/AU2018/050961に関するものであり、その内容全体が、引用により本願明細書に組み込まれる。
【0003】
[本開示の技術分野]
本開示は、一般に、光を複数の方向に方向づけるシステムに関するものである。特に、本開示の実施形態は、波長に応じた光の方向制御を容易にすることに関する。
【背景技術】
【0004】
光ビームの方向づけは、マッピング目的のために環境に光が送信されるいくつかの用途を含んでおり、限定しないが、使途には、LiDAR(光検出及び測距:light detection and ranging)用途を含んでいる。二次元マッピング又は三次元マッピングにおいては、次元のうちの1つは、光ビームの原点からの点の範囲に関連し、他方の一次元又は二次元は、光ビームが導かれる一次元空間又は二次元空間(例えば、直交座標(x,y)又は極座標(r,θ))に関連する。
【0005】
本明細書中の任意の先行技術の参照は、当該先行技術が任意の範囲における一般的常識の一部を形成していること、又は当該先行技術が、当該技術分野の当業者によって、合理的な理解が期待されうること、関連性があるとみなされうること、及び/若しくは、他の先行技術の一部と組み合わされうることを認容するもの、又は任意の形態で示唆するものではなく、またそのように見なされるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/054036号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の光ビーム導波器は、光ビームを、1以上の選択された光ビームの波長チャネルの各々に基づき、複数の方向のうちの1以上の方向に、第1次元にわたって方向づけるように配置された第1回折アセンブリを備える。光ビーム導波器は、複数の回折素子を含む第2回折アセンブリを備える。複数の回折素子の各々は、1以上の別の回折素子の回折軸から角度的にオフセットした回折軸が状態で方向づけられており、第1次元に実質的に直交する第2次元にわたる光ビームの方向づけを容易にすべく、回折軸に垂直な回転軸について回転可能である。
【0008】
いくつかの実施形態においては、複数の回折素子は、共通の回転軸に対して同時に回転可能である。
【0009】
いくつかの実施形態においては、複数の回折素子は、回折軸が最大角度にオフセットされて方向づけられる。複数の回折素子は、回折軸が相互に90度ずつ角度的にオフセットされた2つの回折素子を含むことができる。複数の回折素子は、回折軸が相互に60度ずつ角度的にオフセットされた3つの回折素子を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態においては、複数の回折素子は、複数の回折素子の回転時に、第2次元に沿って回折閾値を超えて、光ビームを順次回折させるように配置される。複数の回折素子は、複数の回折素子の回転時に、第2次元に沿って回折閾値を超えて、光ビームの方向のデューティサイクルを最大化するように最適化された周期性を有することができる。回折閾値は、非回折状態に対応してもよいし、あるいは、回折閾値は、(a)最小必要角度スパン、及び(b)最小必要出力光パワー又は格子透過率の一方又は双方を含む最小設定の尺度に対応してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態においては、周期性は、第1次元に沿った角度スパンの限界に対応する末端の波長チャネルでの回折効率を高めるように更に設計される。
【0012】
いくつかの実施形態においては、第1回折アセンブリは、第1次元にわたる光ビームの方向づけを容易にすべく、光学軸に対して回転不能である1以上の更なる回折素子を含む。
【0013】
いくつかの実施形態においては、第1次元及び第2次元を横切る視野にわたって、第2回折アセンブリは、80%以上のデューティサイクルを有する。いくつかの実施形態においては、デューティサイクルは90%以上である。いくつかの実施形態においては、デューティサイクルは95%以上である。
【0014】
一実施形態の空間プロファイリングシステムは、上述の概要、及び/又は本明細書に記載された光ビーム導波器を含む。
【0015】
一実施形態の方法は、第1回折アセンブリを用いて、光ビームを、1以上の選択した波長チャネルの各々に基づき、複数の方向のうちの1以上の方向に、第1次元にわたって方向づける工程と、第2回折アセンブリにおける1以上の回折素子を回転させることによって、第1次元に実質的に直交する第2次元にわたる光ビームを方向づける工程とを含む。第2回折アセンブリにおける回折素子は、相互に角度的にオフセットした回折軸で方向づけることができる。第2回折アセンブリにおける回折素子は、回折軸に垂直な回転軸に対して回転可能とすることができる。
【0016】
一実施形態の光学システムは、第1次元と第2次元とにわたる深度次元を有する環境に、複数の波長を含む光を方向づけるように配置された光学部品を備え、第2次元は、第1次元に対して実質的に垂直である。光学部品は、光を受光する第1光学サブシステムを含み、第1光学サブシステムは、分散素子、回折素子、及び反射素子から選択された複数の素子を含み、複数の素子は、受光した光を波長に基づき第1次元にわたって方向づけるように配置されている。光学部品は、第1次元にわたって方向づけた光を受光する第2光学サブシステムを更に含み、第2光学サブシステムは、第2次元にわたる光ビームの方向づけを容易にすべく、回折軸に垂直な回転軸に対して回転可能な1以上の回折素子を含む。光学システムは、光学部品からの光に応じて環境から戻される光の受光器を含み、戻された光は、第1次元及び前記第2次元にわたる深度次元を決定するための情報を含む。
【0017】
いくつかの実施形態においては、第1光学サブシステムにおける複数の素子の各々は、相互に対する位置及び方向において実質的に固定されている。
【0018】
いくつかの実施形態においては、第1光学サブシステムは、角度依存性帯域通過フィルタを含み、一方の波長チャネルが反射され、他方の隣接する波長チャネルが通過され、チャネル間に角度分解が生じている。第1光学サブシステムは、受光した光の少なくとも一部が、帯域通過フィルタの異なる通過帯域に対応する異なる角度で、帯域通過フィルタに、複数回方向づけられるように配置がなされうる。当該配置の第1光学サブシステムは、平行以外の方向で帯域通過フィルタに対向するミラーを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2光学サブシステムは、第2次元にわたる光ビームの方向づけに関連付けた閾値を超える回折を行う第1設定の位置と、閾値を超える回折を行わない第2設定の位置とを介して回転可能な第1回折素子と、少なくとも第1回折素子が第2設定の位置にあるときに、閾値を超える回折を行うべく、光学システムの内部で方向づけられた第2回折素子とを有する複数の回折素子を含んでいる。光学システムは、第1回折素子と第2回折素子とを同期的に回転させるように構成できる。光学システムは、第1回折素子と第2回折素子とを実質的に同一の回転軸に対して回転させるように構成できる。
【0020】
一実施形態の光学システムは、第1次元と、前記第1次元に実質的に垂直な第2次元とを含む2つの次元にわたる深度次元を有する環境に光を方向づけるものであり、
第1ポートから複数の第2ポートのうちの1つに、波長に基づいて光を転送し、第2ポートは、環境の第1次元に関連付けられた自由空間における波長次元にわたり、転送された光を方向づけるように配置された波長ルータと、
波長次元にわたって配置され、第2ポートからの光をそれぞれの光ビームに平行にするように配置されたコリメート素子と、
コリメート素子からの光を受光し、回転位置に基づいて、環境の第2次元にわたる受光した光の方向をもたらすように配置された回転回折素子と、
環境から戻された光を受光する受信装置と
を備え、
戻された光は、第1次元と第2次元とにわたる深度次元を決定するための情報を含んでいる。
【0021】
いくつかの実施形態では、光学システムは、非隣接波長チャネルを選択するための波長選択器を更に備え、波長選択器及び波長ルータは、一群の非隣接波長を複数の第2ポートの各々に方向づけるように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、波長選択器は、10GHz以下、又は5GHz以下、又は1GHz以下の自由スペクトル範囲を有している。
【0023】
いくつかの実施形態では、回転回折素子は第1回折軸を有し、光学システムは、第1回折軸から角度的にオフセットした第2回折軸を有する回転回折素子を更に備え、組み合わせにおいて、回転回折素子は、回折素子のうちの1つの回折素子のみのデューティサイクルと比較して、第2次元にわたって光を方向づけるデューティサイクルが増加している。
【0024】
一実施形態の光ビーム導波器は、基板上の二次元パターンにより特徴づけられる回折素子を備え、二次元パターンは、回折素子に角度的にオフセットされた複数の回折軸を提供し、回折アセンブリの基板は、光ビームの方向づけを容易にすべく回転軸に対して回転可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、光ビーム導波器は、複数の光ビーム導波器と、第1次元にわたって光ビームの方向づけを容易にし、基板上の二次元パターンによって特徴づけられる回折素子を含む第1光ビーム導波器と、第1次元に実質的に直交する第2次元にわたって複数の方向のうちの1以上の方向に向けて光ビームを方向づけるように配置された第2光ビーム導波器とを備える。第2光ビーム導波器は、前記基板上の二次元パターンにより特徴づけられる回折素子の前にあってもよいし、後にあってもよい。
【0026】
更なる実施形態は、例示として与えられた以下の説明から、及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、空間プロファイリングシステムの一配置を示している。
図2図2は、図1の空間プロファイリングシステムで用いられる光源の一例を示している。
図3A図3Aは、図1の空間プロファイリングシステムの更に詳細な例を示している。
図3B図3Bは、図3Aのビーム拡大光学素子の一例を示している。
図4A図4Aは、複数の回折次数に回折された複数の波長チャネルの正規の入射光で照射された回折素子を示している。
図4B図4Bは、角度分離された複数の回折次数に回折された単一の波長チャネルの正規の入射光で照射された別の回折素子を示している。
図4C図4Cは、光を受光して、第1次元にわたって異なる波長チャネルに方向づける波長ステアリング素子の第1実施例を示している。
図4D図4Dは、光を受光して、第1次元にわたって異なる波長チャネルに方向づける波長ステアリング素子の第2実施例を示している。
図4E図4Eは、光を受光して、第1次元にわたって異なる波長チャネルに方向づける波長ステアリング素子の第3実施例を示している。
図4F図4Fは、光を受光して、第1次元及び第2次元にわたって異なる波長チャネルに方向づける波長ステアリング素子の第3実施例を示している。
図4G-1】図4G-1は、図3Bのビーム拡大光学素子と図4Fの波長ステア素子との組み合わせを示し、二次元回折素子の実施形態を示している。
図4G-2】図4G-2は、図3Bのビーム拡大光学素子と図4Fの波長ステア素子との組み合わせを示し、二次元回折素子の実施形態を示している。
図4G-3】図4G-3は、図3Bのビーム拡大光学素子と図4Fの波長ステア素子との組み合わせを示し、二次元回折素子の実施形態を示している。
図4G-4】図4G-4は、図3Bのビーム拡大光学素子と図4Fの波長ステア素子との組み合わせを示し、二次元回折素子の実施形態を示している。
図5A図5Aは、櫛形スペクトルフィルタの一例を示している。
図5B図5Bは、環境の空間プロファイルの推定を容易にするシステムの一部の別の構成を示している。
図5C図5Cは、ビーム導波器の一実施形態を示している。
図6A図6Aは、ビーム導波器の一実施形態を示している。
図6B図6Bは、一例の反射フィルタの特性を示すシミュレーション結果のグラフを示している。
図6C図6Cは、反射フィルタとミラーとの一実施形態の組み合わせを示している。
図7図7は、本開示による光ビーム導波器の構成から得られる視野のシミュレーションを示している。
図8図8は、波長ステアリング素子における回折素子の角度配置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
周辺環境の三次元画像を生成するためのLiDAR(Light Detection and ranging)用途に適した、光を複数の方向に方向づけるシステムについて説明する。以降、「光」とは、光学周波数を有する電磁放射を含み、遠赤外線、赤外線、可視光線、及び紫外線を含む。一般的に、LiDARは、環境に光を透過させ、次いで、環境で反射した光を検出する。光が視野内の反射面を往復するのにかかる時間、ひいては、視野内の反射面の距離を決定することにより、環境の空間プロファイルが推定され得る。本開示は、2つの実質的に直交する次元にわたって光を方向づけることによって、空間プロファイルの推定が容易となる。
【0029】
記載のシステムは、波長可変レーザから出射された光のような制御可能な波長の光を受光して、光の方向を制御することに関し、以降では、技術の種類を「波長ステアリング(wavelength-steering)」と称している。回折格子又は周期性構造体などの回折素子は、波長ステアリングが可能な光学素子の一例である。いくつかの実施形態では、実質的に直交する次元にわたって光ビームを方向づけるために、当該回折素子を2つ用いてもよい。例えば、回転しない第1回折素子により、1以上の選択された光ビームの波長チャネルに基づいて、2つの次元のうちの第1の次元(以下、「第1次元」という)にわたる角度スパンが容易となる。光学軸に平行な回転軸に対して回転する第2回折素子によって、回転に基づいた、2次元のうちの第2の次元(以下、「第2次元」という)の角度スパンが容易となる。しかしながら、回転回折素子の回転周期の一部が、回折軸が回転しない回折素子の回折軸と整列する(又は、ほぼ整列する)ことにより、第2次元にわたる角度スパンに寄与する回折効率が低下する。本発明者らは、回折軸が整列する(又は、ほぼ整列する)ことにより、第2次元にわたる光ビーム方向のデューティサイクルが減少することを認識している。いくつかの実施例では、回転回折素子は、第2次元における角度スパンを提供するのに有効であるが、回転サイクルの約60%のみであることが見いだされている。同様に、別の波長依存性ステアリング素子が第1次元にわたってステアリングを行うように配置され、回転回折素子が第2次元にわたってステアリングを行うように配置される他の実施形態では、依然として、回転サイクルの一部で、第2次元にわたる角度スパンに寄与する回折効率が低下する。これらの他の実施形態の例は、波長依存性ステアリング素子が、例えば光インターリーバ又はデマルチプレクサの形態の波長ルータである実施形態を含んでいる。
【0030】
本発明者らは、この認識に基づいて、光ビーム方向のデューティサイクルを増加させるためのビーム導波器の配置を創出した。単一の回転回折素子を用いるのではなく、回折軸が角度的にオフセットされた、複数の回転回折素子を用いて、回転サイクルの至る所に、あるいはデューティサイクルを少なくとも増加させて、第2次元にわたる回折、ひいては角度スパンを提供する。回折軸における角度のオフセットにより、回転回折素子のうちの1つ以上が、回転サイクルの任意の部分で、回転しない回折素子と整列していない(又は、ほぼ整列していない)ことが確保される。言い換えると、複数の回転回折素子は、順番に、第2次元に沿って主に光ビームを回折する。一実施例では、共に回転する2つの回折素子は、回折軸が90度オフセットされている。別の実施例では、共に回転する3つの回折素子は、回折軸が60度オフセットされている。
【0031】
[空間プロファイリングシステムの実施例]
開示された光ビーム導波器によって容易となる空間プロファイリングシステムは、環境における相対的な動き又は変化をモニタリングするのに有用となり得る。例えば、自律型車両(陸、空、水、又は宇宙)の分野では、空間プロファイリングシステムは、車両から視た、障害物又は前方の目標のような任意の物体の距離を含む、交通状況の空間プロファイルを推定することができる。車両が移動した場合、別の位置で車両から視た空間プロファイルは、変更又は再推定できる。別の実施例として、ドッキングの分野では、空間プロファイリングシステムは、ドックの特定の部分へのコンテナ船の近さなどのドックの空間プロファイルをコンテナ船から視て推定し、ドックの任意の部分と衝突することなく、ドッキングを成功させることを容易にできる。更に別の実施例として、自由空間光通信又はマイクロ波通信などの見通し内通信の分野では、空間プロファイリングシステムは、配列目的で用いることができる。送受信装置が移動した、又は移動中の場合、送受信装置を連続的に追跡して、光ビーム又はマイクロ波ビームを整列させることができる。更なる実施例として、適用可能な分野は、限定しないが、工業計測及び自動化、現場測量、軍事、安全モニタリング及び監視、ロボット工学及びマシンビジョン、印刷、プロジェクタ、照射、攻撃、並びに/又は他のレーザ及びIRビジョンシステムのフラッディング及び/若しくは妨害を含む。
【0032】
図1は、空間プロファイリングシステム100の配置を示す。空間プロファイリングシステムの更なる実施例及び詳細は、特許文献1に記載されており、当該文献の内容は本明細書に組み込まれる。システム100は、光源102と、ビーム導波器103と、光検出器104と、処理ユニット105とを備える。図1の構成では、光源102からの光は、ビーム導波器103によって、空間プロファイルを有する環境110において、一次元又は二2次元の方向に方向づけられる。出射光が物体又は反射面に当たった場合、出射光の少なくとも一部は、物体又は反射面によって反射(実線矢印で表される)され、例えば散乱され、ビーム導波器103に戻り、光検出器104で受光できる。処理ユニット105は、動作を制御するために、光源102に動作可能に接続されている。処理ユニット105は、反射光がビーム導波器103に戻るための往復時間を定量することにより、反射面までの距離を決定すべく、光検出器104に更に動作可能に接続されている。
【0033】
一変形例においては、光源102、ビーム導波器103、光検出器104、及び処理ユニット105は、実質的に並置されている。例えば、自律型車両アプリケーションでは、並置することにより、これらの構成要素を車両の範囲又は単一の筐体に小さくまとめることができる。別の変形例(図示せず)では、光源102、光検出器104、及び処理ユニット105は、「中央」ユニットの内部に実質的に並置されており、ビーム導波器103は中央ユニット101から離れている。この変形例では、中央ユニット101は、1以上の光ファイバ106を介して遠隔ビーム導波器103に光結合されている。この例では、熱、湿気、腐食、又は物理的損傷のような外部障害の影響を受けにくくなるため、受動的な構成要素(受動的な交差分散光学システムなど)のみを含みうる遠隔ビーム導波器103を、より過酷な環境に置くことができる。更なる別の変形例(図示せず)では、空間プロファイリングシステムは、単一の中央ユニットと複数のビーム導波器とを含みうる。複数のビーム導波器の各々は、それぞれの光ファイバを介して、中央ユニットに光結合してもよい。複数のビーム導波器は、異なる位置に配置してもよいし、及び/又は、異なる視野(例えば、車両の四隅)で方向づけてもよい。以下の説明では、他の特定がなければ、並置した変形例について説明するが、当業者は、少しの変更で、他の変形例にも適用可能であることを理解するであろう。
【0034】
一構成においては、光源102は、複数の波長チャネル(各々が中心波長λ、λ、 ... λによって表される)のうちの選択された1つの波長チャネルで、強度特性が時間変化する出射光を提供するように構成されている。図2は、上述のような光源102の一例を示す図である。当該例においては、光源102は、波長調整可能なレーザダイオードのような波長調整可能な光源を含むことができ、レーザダイオードに適用される1以上の電流(例えば、レーザキャビティにおいける1以上の波長調整素子への注入電流)に基づいて、調整可能な波長の光を提供できる。別の例では、光源102は、広帯域光源と、調整可能なスペクトルフィルタとを含み、選択された波長で実質的に連続波(CW)の光強度を提供できる。
【0035】
図2の例では、光源102は、時間変化する強度特性を出射光に付与すべく変調器204を含むことができる。一例では、変調器204は、半導体光増幅器(SOA)又はレーザダイオード上に集積されたマッハツェンダー変調器である。SOAに適用される電流は、経時変化させて、レーザによって生成されるCW光の増幅を経時変化させることができ、結果として、強度特性が経時変化する出射光を提供できる。別の例では、変調器204は、レーザダイオードに対する外部変調器(マッハツェンダー変調器又は外部SOA変調器など)である。更に別の例では、集積型変調器又は外部変調器を含む代わりに、光源102は、経時変化する強度特性を出射光に付与すべく制御可能に励起電流が注入される利得媒体を有するレーザを含む。
【0036】
別の配置(図示せず)では、波長調整可能なレーザ202の代わりに、光源206は、広帯域レーザに続く波長調整可能なフィルタを含む。更に別の配置(図示せず)では、光源206は、複数のレーザダイオードを含み、それぞれがそれぞれの範囲で波長調整可能であり、そのそれぞれの出力は、単一の出力を形成するために結合される。それぞれの出力は、光スプリッタ又はAWGのような波長結合器を用いて結合できる。
【0037】
光源102は、複数の波長チャネルのうちの選択した1以上の波長チャネルで光を提供するように構成される。一構成では、光源102は、波長調整可能なレーザのように、同時に選択した1の波長チャネルを提供する。当該構成において、記載のシステム100は、選択した1の波長チャネルに基づいて、特定の方向に同時に光をステアリングできる。別の構成では、光源102は、単一又は複数の選択された波長チャネル、例えば広帯域光源に続くチューナブルフィルタを提供し、チューナブルフィルタの調整可能な通過帯域は、単一又は複数の選択した波長チャネルを含む。選択した1の波長チャネルが同時に用いられる場合、光検出器104は、複数の波長チャネルの範囲の任意の波長を検出するアバランシェフォトダイオード(APD)を含むことができる。複数の選択した波長チャネルが同時に用いられる場合、光検出器104は、例えば、各々が特定の波長チャネルに専用の複数のAPDを用いる波長感応型検出器システムか、あるいは、複数の波長チャネルに対して単一のAPDを用い、各チャネルは、それぞれの経時変化する属性に基づいて(例えば、それぞれ、1550.01nm、1550.02nm、1550.03nm...のチャネルに対応する、21MHz、22MHz、23MHz...の変調周波数などの異なる正弦波変調に基づいて)、識別可能に検出される波長感応型検出器システムを含むことができる。以降の記載は、選択した単一の波長チャネルを同時に提供することによる光の方向づけに関するものであるが、当業者は、少しの修正で、当該記載内容は、複数の選択した波長チャネルを同時に提供することによる光の方向づけにも適用できることを理解するであろう。
【0038】
光源102、例えば、波長調整可能なレーザ202(例えば、その波長)と変調器204(例えば、変調波形)の双方の動作は、処理装置105によって制御できる。
【0039】
図3Aは、図1の空間プロファイリングシステムの一例のシステム300を示す。当該例では、システム300は、出射光301を光源102からビーム導波器103に伝播し、反射光303をビーム導波器103から光検出器104に伝播するように構成された光伝播アセンブリ302を含む。光伝播アセンブリ302は、二次元又は三次元の導波路形態において、光ファイバ又は光回路(例えば、フォトニック集積回路)などの光導波路を含む。光源102からの出射光は、環境に方向づけるべくビーム導波器103に提供される。いくつかの実施形態では、ビーム導波器103によって収集された任意の反射光は、追加的に光検出器104に方向づけることができる。一実施形態では、光混合の検出のために、光源102からの光は、光源102から光検出器104への直接光路(図示せず)を介して、光学処理の目的で光検出器104に更に提供される。例えば、光の大部分(例えば、90%)をビーム導波器103に供給し、光の残りのサンプル部分(例えば、10%)が直接光路を介して光検出器104に供給される場合、光源102からの光は、最初にサンプラ(例えば、90/10誘導光学結合器)に入射できる。別の例において、一方の出力ポートが光をビーム導波器103に方向づけ、他方の出力ポートが、処理ユニット105によって決定された時間に光検出器104に向けて光を再度方向づけする場合、光源102からの光は、最初に光スイッチの入力ポートに入射でき、2つの出力ポートのうちの1つの出力ポートから出射できる。
【0040】
光伝播アセンブリ302は、第1ポートから受光した出射光を第2ポートに結合し、第2ポートから受光した光を第3ポートに結合するための3ポート素子305を含む。3ポート素子は、光サーキュレータ又は2x2カプラ(第4ポートが使用されない場合)を含むことができる。一構成においては、光伝播アセンブリ302は、選択した第1波長チャネル及び第2波長チャネルで出射光301を伝播する、光源102とビーム導波器103との間にある出射導波光学経路と、(同時か、又は異なる時間のいずれかで)選択した第1波長チャネル及び第2波長チャネルで反射光303を伝播する、ビーム導波器102と光検出器104との間にある入射導波光学経路303とを含む。導波光学経路は、それぞれ、光ファイバ経路と光回路経路のうちの1つにできる。
【0041】
一構成では、図3Aに示されているように、ビーム導波器103は、ビーム拡張光学素子304を含む。図3Bに示されているように、ビーム拡張光学素子304の一例は、屈折率分布型(GRIN)レンズなどのピグテール型のコリメータ312を含み、波動誘導形態からの出射光301を自由空間形態314に提供する。自由空間形態314における光は、空間回折光学素子によって発散し続ける。自由空間形態314における光が、ガウス強度分布を呈する場合、光はガウス回折光学素子の後に続く。ビーム拡大光学素子304は、逆反射アセンブリ316を更に含み、自由空間形態314における光を受光し、集光素子318に向けて逆反射する。逆反射アセンブリ316は、発散ビーム306を波長ステアリング素子308に向かうコリメートされた拡大ビーム306に集光するために、集光素子318の焦点距離に基づき調整可能に配置される。逆反射アセンブリ316の使用は、光学的アライメントの要件を緩和しつつ、光路を折り畳むことによってフットプリントを低減する。更に、逆反射アセンブリ316を用いることにより、逆反射器が入射光ビームと出射光ビームとを平行にするように設計される場合に、わずかな位置ずれに対する角度公差が提供される。図3Aに戻って参照すると、実線及び破線は、選択した異なる波長チャネルにおける拡張ビームを示しており、例示目的のためにわずかにオフセットされるように示されている。実際には、それらは、空間において実質的に又は完全に重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。実線及び破線を示した図4D~4Gは、同様の方法で示されている。
【0042】
[一次元にわたるビーム方向]
ビーム導波器103は、波長に基づく光の角度分離を提供する波長ステアリング素子308を更に含む。波長ステアリング素子308は、波長に応じて、少なくとも第1方向310Aと第1次元に沿った第2方向310Bとに拡大ビーム306を方向づけるように構成される。波長ステアリング素子308は、単純化のためにブロックの形態で模式的に示されているが、実際の形態は異なっていてもよく、図4A図4Eのいずれかに示すような回折素子を少なくとも含むものであってもよいし、図5Aに示すように波長ルータを含むものであってもよい。波長ルータを含むビーム導波器の場合、自由空間への伝播の位置は、ルータの後にシフトしてもよく、その場合、拡張光学素子304は、ルータの後に対応して配置できる。第1方向310Aは、選択した第1波長チャネルλでの出射光に対応し、第2方向310Bは、同一次数の選択した第2波長チャネルλでの出射光に対応する。
【0043】
図4A及び図4Bによると、(例えば、図4Aに示すような格子線の方向によって定義される)y軸に沿った回折軸401及びx軸に沿った周期性d404を有し、かつz軸に沿った伝播成分を有する光によって入射される回折素子400は、x-z平面にわたって角度分散を呈する。この角度分散は、
mλ/d = sin(α)+sin(β) …(式1)
で規定される。ここで、αはz軸に対する入射角であり、βはz軸に対する回折角であり、λは光の波長であり、mは回折次数である。各波長チャネルは、中心波長(λ ... λ)に集中し、相対的に小さなスペクトル幅を占有しており、変調帯域幅又は光源の安定性などの多数の因子に依存している。任意の所定の次数mに対し、角度分散dβ/dλ=m sec(β)/dは、周期性dを変更することによって調整可能である。例えば、角度分散は、所望の波長ステアリングの角度スパンに対応するように、制御可能な光の波長範囲に一致するように調整できる。一般的に、周期性dが小さくなると、角度分散dβ/dλは大きくなり、所定の角度スパンに対してより小さな波長範囲が必要となる。この角度分散は、任意のゼロ以外の次数(すなわち、m≠0)について、次数内での異なる波長チャネルの光の角度分離として顕在化する。
【0044】
図4Aは、複数の回折次数m={+2,+1,0,-1,-2}に回折された複数の波長チャネル(λ ・・・ λ)を含む光306の法線入射(すなわち、α=0)のシナリオを示している。一方、図4Bは、角度分離された光ビーム410及び412に対応して、複数の回折次数m={0,-1}に回折された単一の波長チャネル(λ)を含む光408の非正常入射(すなわち、正常入射軸402を基準としてα≠0)のシナリオを示している。以降においては、1以上の回折素子は、回折格子の立場で記載されているが、当業者は、波長に依存した回折が可能な他の任意の光学素子が適用可能であることを理解するであろう。例えば、図4A及び図4Bでは、回折軸401は、各々がy軸に沿って延び、x軸に沿って回折格子周期dだけ間隔をあけて配置された回折格子線によって定義されており、回折格子表面に入射した光はx-y平面において延びている。簡略化のために、図4A及び図4Bの双方とも、各光ビームは、ビーム幅を示さずに線として示している。当業者は、光ビームは実際には特定のビーム幅を有することを理解するであろう。
【0045】
図4Cは、複数の回折素子400A、400B、及び400Cを含む波長ステアリング素子308Cの一例を示す。当該例は、3つの回折素子を含む例を示しているが、当業者は、より多くの(例えば4つの)又はより少ない(例えば2つの)回折素子を用いてもよいことを理解するであろう。各々の更なる回折素子は、更なる回折を提供でき、ひいては、別個に方向づけたビームの角度分離を更に大きくできる。別個の回折素子を用いることにより、(例えば、斜入射ではなく、法線入射に方向づけた角度を選択することによって、反射防止コーティングの要件を緩和することにより、)波長ステアリング素子308Cの設計における自由度を更に大きくすることが可能である。しかしながら、追加した回折素子の各々は、(例えば、格子の有限回折効率を介して)減衰を更に増加させうる。回折素子400A、400B、400Cは、波長に応じて、拡大ビーム406を、少なくとも第1方向412Aと、第1次元に沿った第2方向412Bとに方向づけるように構成される。第1方向412Aは、選択した第1波長チャネルλでの出射光に対応する。第2方向412Bは、選択した第1波長チャネルλでの出射光に対応する。図4Cは、各々の回折素子が1つの回折次数を生成することを示しているが、実際には、各々の回折素子は、1以上の更なる回折次数を生成してもよい。各々の回折素子において、ビームは、漸増的に角度分散される。複数の回折素子を用いることにより、例えば単一の回折素子を用いた場合と比較して、角度分離が大きくなる。更に、複数の回折素子は、光ビームを一方向のビーム経路に(例えば、回折格子400A、400Bを通って図4Cに図示されているように時計回りに、又は反時計回りに)回転させるべく、回折面が整列するように配置される。
【0046】
一方向のビーム経路により、光路の折返しが容易となり、波長ステアリング素子308の寸法、ひいてはシステム全体の実装面積が低減される。この経路の折返しは、逆反射器316による光路の折返しに付加又は協働する。逆反射器316及び波長ステアリング素子による協調的な経路の折返しにより、省スペースの利点が提供される。例えば、図4Gに示されているように、逆反射器316と波長ステアリング素子308Eとの組み合わせは、ビーム導波器103を通る入射光と出射光とが反対側にあるようなS字形状の光路を容易にする。
【0047】
図4D及び図4Eは、波長ステアリング素子の他の例(308D及び308E)を示す。当該他の例の波長ステアリング素子の各々は、複数の回折素子と複数の分散素子とを含む。波長ステアリング素子308Dは、3つの回折素子400A、400B、400Cと、2つの分散素子414A及び414Bとを含む。波長ステアリング素子308Eは、2つの回折素子412A、412Bと、2つの分散素子414A及び414Bとを含む。当該構成では、1以上の分散素子は、省スペース化のために、1以上の複数の回折素子に散在されている。
【0048】
図5Aは、波長ルータ、特に、入力(合成)ポートとM個の出力ポート(インターリーブポート)のうちの1つとの間で光をポート接続(porting)する光インターリーバ800の形態の櫛形スペクトルフィルタの一実施形態を示している。ここで、M=2であり、xは正の整数である。図5Aでは、Mは8である。別の構成では、Mは2であってもよいし、16であってもよい。光インターリーバ800は、複数の干渉区域(例えば、符号802)を含み、各々の光路差がΔLの2つの干渉経路によって分離された区域のそれぞれの端部でスプリッタ804を含んでいる。分岐における各々の区域802は、次の分岐において2つの区域に分割される。光路差は、1つの分岐から次の分岐へと倍増する(例えば、ΔL、Δ2L、Δ4L ... 等)。複合ポート806は、複数の波長チャネルのうち、M番目おきに連続する波長チャネル(例えば、λ、λM+1、λ2M+1 ... 等)のうち、任意の1つの波長チャネルで受光又は光を提供するように構成されている。M個のインターリーブポート808は、M個の波長チャネルのM個のグループのうちの1つの波長チャネルで対応する光をそれぞれ提供するか、又はそれぞれ受光するように構成されている。
【0049】
当業者は、光インターリーバを用いる代わりに、又は光インターリーバを用いるのに加えて、ファブリペロー共振器若しくはマッハツェンダー干渉計等の他の形態の櫛形スペクトルフィルタを用いてもよいこと、又は、1以上のアレイ化導波路格子(AWG)、エシェル格子型のデマルチプレクサ、若しくはこれらの部品のいずれかの組み合わせを用いるような他の形態の波長ルータを用いてもよいことを理解するであろう。
【0050】
別の構成では、光インターリーバ800を用いる代わりに、微小電気機械システム又はMEMS(microelectromechanical system)等の単体又はアレイの反射素子を、次元にわたる光の方向づけを提供すべく用いることができる。単体又はアレイの反射素子は、コリメーション及び拡張のために、光を拡張光学素子、例えば拡張光学素子304に向けて方向づけるように構成できる。当該構成は、光インターリーバ800の場合にあるように、離散的な角度ではなく、連続的な角度にわたる調整を容易にする。
【0051】
いくつかの実施形態では、波長ルータのM個のポートの波長チャネルは、例えば、組み込まれた関連出願である国際特許出願PCT/AU2018/050961に記載されているように、割込型の波長チャネルのM個のグループにできる。一例においては、N個の波長チャネルがその中心波長λ、λ、 ... λによって指定される場合、割込型の波長チャネルのM個のグループは、{λ、λM+1、 ... λN-M+1}、{λ、λM+2、 ... λN-M+2}、...及び{λ、λ2M、 ... λ}である。すなわち、上述の例では、各々のグループは、等間隔の波長チャネル(この例では、M個おきの波長チャネル)を含み、全てのM個のグループは、同じ間隔を有している。別の例では、隣接しない波長チャネルは、非割込型の波長チャネルにできるが、λからλまでの大部分に広がっている(例えば、{λ、 ... λ}、{λ、 ... λN-2}、 ... 及び{λ、 ... λN-M})。いずれの例においても、割込型の波長チャネルの各々のグループは、光源102の調整可能範囲であるλからλまでの大部分に広がっている。
【0052】
したがって、波長ルータは、波長チャネルのM個のグループに対応するM個の第2ポートを含み、各々の第2ポートは、M個/N個の隣接しないチャネルを保有する。一例では、M及びN/Mのうちの1つは、少なくとも8、16、又は32である。この場合は、光が少なくとも8、16又は32のピクセルにわたり、第1次元及び第2次元の1つの次元にわたって方向づけられた(例えば、図2Bにおけるx軸又はy軸にわたって8、16又は32のドットを生成する)ビーム導波器に対応する。例えば、本明細書に記載の構成では、Mは8である。別の例では、Mは16である。更に別の例では、Mは32である。
【0053】
自由スペクトル領域(FSR)が更に小さい光インターリーバは、第2ポートあたりの波長チャネル数が多くなる。ある使用例では、FSRは10GHz以下に設計される。別の使用例では、FSRは5GHz以下に設計される。更に別の使用例では、FSRは、1GHz以下に設計される。例えば、ある構成においては、FSRは1GHzである。
【0054】
[2次元にわたるビームの方向づけ]
図4C図4Eにおいて、すべての回折素子の回折軸は、同一方向に(例えば、y軸に沿って)整列しており、(例えば、x軸に沿った)第1次元での角度分散が生じる。回折素子の1つ以上を(例えば、その光学軸又はz軸に対して)回転させるか、又はそうでなければ角度調整し、ひいては(例えば、x-y平面において)回折軸を回転させることにより、光ビームは、第1次元(例えば、x軸に沿って)に対して実質的に垂直な第2次元(例えば、y軸に沿って)にわたって方向づけできる。更に、第2次元に沿った回折のデューティサイクルを向上すべく、回転可能な1以上の回折素子は、回折軸が角度的にオフセットされた回転可能な複数の回折素子を含む回折アセンブリ(以下、符号400X)に置き換えられる。残りの回転しない回折素子は、第1次元のための別の回折アセンブリを形成し、第2次元のための回折アセンブリ400Xに光結合される。当業者は、「回転(rotation)」又は「回転する(rotating)」との文言に関する本明細書中の記載は、任意の形態の角度調整を含み、例えば、絶えず又は連続的に回転している素子を必ずしも含むものではないことを理解するであろう。
【0055】
一構成においては、図4Fに示されているように、波長ステアリング素子308Fは、回折軸424及び426が角度的にオフセットされた2つの回折素子420及び422を含む回折アセンブリ400Xに、回折素子400Cが置き換えられていることを除いては、波長ステアリング素子308Dと同様に配置されている。2つの回折素子420及び422は、回折軸424及び426に垂直な共通の回転軸428に対して同時に(すなわち、同じ速度で、同じ回転方向で)回転するように構成されている。角度オフセットにより、回折素子420及び422は、第2次元にわたって光を順次回折させることができる。この配置では、回折軸424及び426は、相互に角度的に最大に(すなわち、示された2つの回折素子の場合には90度に)オフセットされている。回折軸間の角度オフセットを最大化することによって、第2次元にわたる回折のデューティサイクルを順次回折することで最大化して、回折アセンブリ400Xの回折素子の少なくとも1つに、回折閾値を超えるような十分な角度分散を提供し、他の回折素子にほとんど又は全く角度分散を提供しない。更に、周期性dは、第2次元に沿った回折閾値を超えた回折のデューティサイクルを最大化するように最適化できる。回折軸を最大角度にオフセットした複数の回折素子を用いることにより、方向づけた光が回折閾値未満に低下する回折を順次行うときの任意のギャップを低減すべく、第2次元の光ビームの方向付けのデューティサイクルを約60%から約100%に近くまで増加できることが見いだされている。回折閾値は、1以上の特定の回折条件に対応しうる。一構成では、回折閾値は、例えば、式1が解を持たず、ひいては回折が実現できない回転サイクルの1以上の部分といった、回折しない条件に対応する。別の構成では、回折閾値は、(a)必要とされる最小の角度スパン、及び/又は(b)必要とされる最小の出力光パワー又は格子透過率、のうちの1以上などの最小設定の尺度に対応する。例えば、回折閾値は、横軸に±60度、縦軸に±15度の視野内で200メートルを超える範囲を検出するための光強度出力で方向づけられる光に対応する。回折閾値は、デューティサイクルを、空間プロファイリングシステムが上記の仕様で行う動作時間の割合であると定義する。
【0056】
当業者は、回転サイクル中に十分な回折を維持すべく、回折軸は最大オフセット角度未満(例えば、示された2つの回折素子の場合には85度、80度又は75度)であってもよいことを理解するであろう。更に、複数の回折素子420及び422は、共通の回転軸428について同時に回転させる代わりに、その回転軸について相互に独立して回転できることは、当業者は理解するであろう。他の構成(図示せず)では、回折アセンブリ400Xは、2つ以上の回折素子、例えば3つの回折素子を含むことができ、この場合、相互の最大オフセット角度は60度である。
【0057】
別の構成においては、回折素子400C又は回折アセンブリ400Xは、2次元の単一回折素子400Y、例えば、図4G-1に図示されているような2次元回折格子で置き換えることができる。「線のような」パターンが一方向に沿って周期的に繰り返される従来の1次元回折格子とは異なり、周期性が2次元にわたって繰り返された場合、2次元回折格子400Yでは、設計された2次元プロファイルが作成される。
【0058】
二次元プロファイルは、1次元回折格子の単一の回折軸とは対照的に、単一の回折格子内に複数の回折軸を作成する。
【0059】
いくつかの実施形態においては、設計された二次元プロファイルは、デューティサイクルを増加又は最大化するように選択され、及び/又は、角度の範囲にわたって回折格子の効率を増加又は最大化するように選択される。最大化される効率は、第1回折次数に対するものとすることができ、単独であってもよいし、他の回折次数のうちの1以上の回折次数の最小化との組み合わせであってもよい。受動的なデューティサイクルの角度範囲は、空間プロファイリングシステムでの格子移動の角度範囲に対応させることができる。いくつかの実施形態においては、角度の範囲は、例えば、格子がその回転軸について時計回り又は反時計回りに回転(一方向に回転してから他の方向に回転することを含む)することによって回転する実施形態では、360度に近づく。他の実施形態では、角度の範囲は360度未満である。
【0060】
いくつかの実施形においては、回転軸は、格子の表面に直交させることができる。他の実施形態においては、回転軸は、格子の表面に直交する線からずらすことができ、その場合、格子は回転中にゆらぎが生じる。
【0061】
所望の回折次数が効率的に最適化される角度の範囲は、1以上のサブ範囲を省略できる。いくつかの実施形態においては、最適化は対角線を除外する。例えば、プロファイルは、-40度から+40度、及び+50度から+130度、ならびに+140度から+220度、及び+230度から+310度の角度範囲について、同時に最適化されてもよい。対角線を除外することにより、行及び列に形成された2次元アレイの形態の格子プロファイルに適用できる。除外される対角線又は他のサブ範囲は、設けられている場合、±10度よりも狭く又は広く例えば、±1度~±20度までとしてもよいし、その間の任意の値としてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態においては、設計された二次元プロファイルは、例えば回折アセンブリ400Xのように、相互に回転的にオフセットされた2つの従来の格子の回折を再現してもよいし、近似してもよい。一実施例においては、設計された二次元プロファイルは、図4G-1に示されているように、断面が正方形の柱の二次元周期の配列にできる。他の実施例においては、周期的な二次元パターンの異なる空間配列及び様々な断面形状は、例えば、図4G-2(断面が正方形の周期的な穴を有する2つの空間配列)、図4G-3(断面が円形の周期的な柱を有する2つの空間配列)、及び図4G-4(断面が円形の周期的な穴を有する)に示されているように実装できる。
【0063】
二次元回折格子の製造手順は、従来の回折格子と同様とすることができる。一例においては、溶融シリカ等の誘電体材料の基板上に、屈折率が異なることを特徴とする材料の複数の層を蒸着させて、表面界面に所望の屈折率の変化を生成することができる。層の数及び厚さの最適化は変化させ、波長範囲、入射角、及所望のび光の回折モードに関連づけることができる。
【0064】
設計されたパターンは、誘電体基板の一方の表面にエッチングできる。他の実施形態においては、パターンは、双方の表面上に蒸着(又は他の適切な技術)によって形成できる。
【0065】
当業者は、パターンの設計は、柱/穴の厚さ、位置、及び断面寸法によって最適化できることを理解するであろう。当該技術分野の当業者は、基板が透過性材料であっても、反射性材料であってもよく、それに応じて回折光ビームをそれぞれ透過又は反射させることも理解するであろう。
【0066】
透過型回折格子のいくつかの実施形態においては、反射防止(AR)コーティングが、2次元回折格子の一方の表面又は双方の表面上に提供される。例えば、設計されたパターンが、例えば蒸着及びエッチングによって、回折格子の一方の面上にある場合、ARコーティングは、基板表面の他方の面上にすることができる。いくつかの実施形態においては、ARコーティングは、パターンの蒸着及び/又はエッチングの前に、基板の一方の表面上に既に存在する。
【0067】
上述した図4G-1~4G-4に関する構成は、矩形アレイに関するものであるが、他の実施形態では、異なる2Dプロファイルが採用される。例えば、いくつかの実施形態においては、プロファイルは、極性アレイの形態である。更に、正方形又は矩形として例示された基板の幾何学的形状は、異なるものにできる。例えば、いくつかの実施形態においては、基板は円盤形状である。
【0068】
図5Bは、光インターリーバ800と、N個の波長ステアリング素子308と、拡張光学素子304とを含む例示的なビーム導波器103を示している。波長ステアリング素子308は、それぞれ、第1次元にわたって空間的にオフセットされたそれぞれのインターリーブポートから受光する。波長ステアリング素子308は、それぞれ、第2次元にわたって(例えば、ページの内外に)光を方向づける一方、拡張光学素子304は、ビーム導波器103から方向づけられた光を、第1次元にわたって(例えば、ページの上下に)更に方向づけるように角度をつける。波長ステアリング素子308は、それぞれ、例えば図4A~4Fのいずれかを引用して説明したように、1以上の回折素子を含むことができる。いくつかの実施形態においては、1以上の回折素子は、本明細書に記載されているような回転回折素子を含む。いくつかの実施形態においては、回転回折素子は、上述したように、角度的にオフセットされた回折軸424及び426を有する2つの回折素子420及び422を含む回折アセンブリ400Xである。
【0069】
図5Cは、図1のビーム導波器103の別の実施形態を示す。光源102からの光501は、例えば、N個の波長チャネルのうちの選択された1つの波長チャネルを含む。光源102は、電子制御信号を介して所望の波長チャネルの選択を可能にする波長調整可能なレーザにできる。
【0070】
図5Cに示されているように、ビーム導波器103は、波長ルータ502(例えば、光インターリーバ又はデマルチプレクサ)を含み、本明細書に記載の波長ルータの任意の実施形態と同様のものであってもよいし、同様に動作するものであってもよい。この実施形態においては、波長ルータ502は、自由空間に光を出射し、例えば、波長ルータ502の端部に沿って、又は波長ルータ502の表面に沿って配置された出力ポート502-1~502-Mから光を出射する。出力ポート502は、第1次元にわたって転送された光を方向づけるように物理的に配置されている。例えば、光は、例えば垂直方向にできる第1軸に沿って転送できる。
【0071】
出力ポートからの拡大光503は、波長次元にわたって配置されたコリメート素子によって受光される。例えば、波長次元が垂直軸である場合、コリメートレンズ504が垂直軸を横切って配置されてもよい。コリメートレンズ504は、拡大光を受光し、対応するコリメートされた光505を生成する。
【0072】
コリメートレンズ504からのコリメートされた光505は、回折素子、例えば回転格子506によって受光される。他の実施形態においては、複数の格子を含む光学サブシステムは、コリメートされた光505を受光でき、例えば、図4A~4Fを引用して説明したような構成のいずれかにできる。格子又は光学サブシステムは、受光したコリメートされた光505を第2次元にわたってステアリングするように構成されている。光学サブシステムの場合、第1次元にわたるステアリングは、光学サブシステムの1以上の構成要素によって更に増加できる。例えば、回転格子を有する図4Fの光学サブシステムは、第1次元と第2次元の双方にわたってステアリングする能力を有する。図5Cでは、方向Aにおける格子506の回転により、第2次元にわたって光をステアリングでき、波長ルータ502によって第1次元をわたって光がステアリングされる。いくつかの実施形態においては、更なるビーム拡張光学素子は、ビーム拡張光学素子304と同様、例えば、第1次元にわたるステアリング範囲を増加させるべく含まれている。
【0073】
図6Aは、図1のビーム導波器103の別の実施形態を示す。光源102からの光601は、例えば、N個の波長チャネルのうちの選択された1つの波長チャネルを含む。前述の例示的な実施形態と同様、光源102は、電子制御信号を介して所望の波長チャネルの選択を可能にする、波長調整可能なレーザにできる。
【0074】
光601は、ビーム導波器103に光学的に結合された、又はビーム導波器103の一部であるコリメートレンズ602によって受光されて、コリメートされた光603を生成する。コリメートされた光603は、フィルタ素子、例えば薄膜反射フィルタ604等の波長依存及び/又は角度依存性の光学フィルタによって受光される。
【0075】
反射フィルタ604からの反射光は、ミラー605によって受光され、反射フィルタ604に光を戻す。いくつかの実施形態においては、反射フィルタ604は角度依存性であり、戻る光606がコリメートされた光603とは異なる角度で反射フィルタ604によって受光されるように、ミラー605に対して相対配置される。一実施形態では、ミラー605は、反射フィルタ604から発散するように配置される。発散角度は、約5度、約10度、又は約20度、又はその間の任意の値にできる。反射フィルタ604によって通過される異なる波長は、異なる角度となっており、ソリッドステートの視野を生成する。出力の分解能は、フィルタの帯域通過範囲(図6Aについて述べた例では0.45nm)と、ミラーに対する帯域通過フィルタの角度との関数である。
【0076】
図6Bは、図6Aの反射フィルタ604として用いるのに適する可能性のある例示的な反射フィルタの特性を示すシミュレーション結果のグラフである。このグラフから分かるように、この情報からシミュレートされたCバンドにわたり、15度以上の視野が可能である。
【0077】
図6Cは、帯域通過型のウェッジフィルタ700における反射フィルタとミラーとの組み合わせの別の実施形態を示す。帯域通過型のウェッジフィルタ700は、光学的に透明又は実質的に光学的に透明な材料のウェッジ形状の本体701を含む。本体701は、入口領域702を含み、反射防止コーティングでコーティングできる。光源102からの光は、入口領域702で帯域通過型のウェッジフィルタ700に入る。帯域通過フィルタ703は、ウェッジの一方の側に沿って、例えば微細構造の蒸着によって、この例では入口領域702に対向して設けられる。帯域通過フィルタ703は、上述した反射フィルタ604と同一又は類似の特性を有し、フィルタへの光の入射角に依存して異なる波長を通過させる。ミラー704、例えばミラーコーティングは、帯域通過フィルタ703に対し、ウェッジの他方の側に設けられている。
【0078】
代替的な実施形態においては、反射フィルタ604又は帯域通過フィルタ703は、フィルタのアレイであることにより、隣接するフィルタが異なる波長を通過させる。これらの代替的な実施形態においては、入射角は、フィルタとミラーとの間の各々の反射によって変化してもよいし、変化しなくてもよい。
【0079】
第1次元にわたって光学フィルタによってステアリングされた光607は、別のステアリング素子によって受光し、第2次元をわたって光をステアリングすることができる。例えば、光607は、回転格子608によって受光できる。回転格子608は、図5Cを引用して説明した回転格子506と同様の方法で動作できる。
【0080】
いくつかの実施形態においては、回転格子の回転制御は、図1の処理ユニット105によって行われる。処理ユニット105は、モータ又はマイクロモータ、例えば直流マイクロモータ(図示せず)に制御信号を提供する。したがって、処理ユニット105は、モータコントローラとして動作する。いくつかの実施形態においては、制御は単にON又はOFFであり、すなわち、回転格子が回転を引き起こすか否かである。他の実施形態では、回転速度はまた、関連する回転速度が異なる2つ又は異なる選択可能なモードの間で制御される。処理装置105の機能は、処理装置に集中されているか、又は複数の処理装置に分散され、装置間の適切な通信が行われているコンピュータハードウェアによって実行できることは理解されるであろう。
【0081】
いくつかの実施形態においては、回転する格子の回転位置は、位置センサによって測定されるか、あるいは他の方法でモニタリングされる。一例では、符号化された光ディスクが回折格子と共に回転し、光センサであるセンサによって測定されて、格子の回転位置を示す信号が提供される。別の一例では、磁気素子又は電磁素子が格子と共に回転する。センサはホール効果センサであり、格子の回転位置を示す信号を生成する。別の一例では、センサは格子を通るゼロ次の光の強度を測定し、格子の回転位置と相関させている。例えば、図4Bを引用すると、光強度センサ450は、経路m=0に沿って配置できる。別の一例では、格子は、センサによって検出可能な1以上の基準マーカ(例えば、格子上のマーキング、格子パターン、格子上又は格子内に配置された磁性体など)を含む。信号は、次いで、処理ユニット105に送信され、処理ユニット105は、その処理の一部を信号に基づいて行う。例えば、処理ユニット105(又は他の計算システム)は、信号の値をシステムからの光の角度発散と相関させる情報で予めプログラムされていてもよいし、そうでなければ、信号の値をシステムからの光の角度発散と相関させる情報へのアクセス権を有していればよく、空間プロファイルは、処理ユニット105によって、又は、例えば処理ユニット105から関連データを受信する他の計算システムによって構築できる。
【0082】
一実施形態では、波長チャネルの選択に基づく第1次元に沿った角度スパンは、約30度である。一方、回折アセンブリ400Xの回転に基づく第2次元に沿った角度スパンは、約90度である。図7は、本開示による光ビーム導波器の構成による入力光ビームのステアリングの結果として生じるシミュレートした視野900を示す。図7における視野は、独立した点から生成され、それぞれが、入力光ビームがステアリングされる方向を表す。点は、図7において連続したパッチであるように見えるほど微細である。異なる点のグループ902、904、及び906は、格子回転角度の異なる範囲を表す。例えば、グループ902及び906は、それぞれ、水平視野のいずれかの限界付近の(すなわち第2次元にわたる)光ビーム方向に生じる格子回転角度を表す。一方、グループ904は、水平視野の中心付近の(すなわち第2次元にわたる)光ビーム方向に生じる格子回転角度を表す。各々のグループ内では、個々の点は、垂直視野を構成する(すなわち、第1次元にわたる)個々の波長チャネルを表す。実質的に矩形の輪郭912は、実質的に矩形の視野を示す。輪郭912は、回折閾値を満たす波長チャネル及び回折格子の回転角度を更にゆるやかに標識する。輪郭912の外側には、回折閾値を満たさないグループ908及び910がある。
【0083】
回折格子の最も効率的な回折(透過率で測定)は、入射角がリトロー角に等しいときに生じる。(例えば、第1次元を超えるビーム方向及び/又は回折アセンブリの回転に起因して)入射角がこの角度から逸脱すると、回折効率は低下する。図8は、第1次元に沿った角度スパンの±15度(リトロー角に対する)の間の様々な入射角に対する一構成の回折効率を示す。波長チャネルの「末端(edge)」(すなわち、約-15度から約+15度の間で、第1次元に沿った角度スパンの限界に対応する波長チャネル)は、回折効率、ひいては範囲の点で、末端ではない波長チャネルよりも悪化する傾向がある。波長チャネルの末端の回折効率を向上させるために、回折素子の周期性dを調整できる。周期性dは、回折効率、ひいては範囲を最大化するように最適化できる。例えば、図8は、周期性dを600ライン/mmから800ライン/mmに増加させた場合に、波長チャネルの末端での回折効率が約30~40%から約80~90%に改善されたことを示している。
【0084】
以上、本開示の構成を記載したが、記載の構成の1つ以上が、以下の利点の1以上を有することは、当技術分野の当業者には明確である。
・回折軸が角度的にオフセットした複数の回転分散素子を用いることで、回折のデューティサイクルを改善
・デューティサイクルの増加により視野の歪みを低減
・製造コストの削減
・取り付け及び位置合わせの工程が容易となり、格子の破損又は損傷のリスクを低減
【0085】
本明細書に開示及び規定された発明は、本文又は図面により述べられているか、あるいは明確となった2以上の個々の特徴の全ての代替的な組み合わせにも及ぶことは、理解されるであろう。これらの異なる組み合わせのすべては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G-1】
図4G-2】
図4G-3】
図4G-4】
図4H
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【国際調査報告】