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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】複合材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B32B23/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021502801
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(85)【翻訳文提出日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 GB2019052005
(87)【国際公開番号】W WO2020016583
(87)【国際公開日】2020-01-23
(31)【優先権主張番号】1811808.3
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501271413
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ・オヴ・リーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ハイン,ピーター・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リース,マイケル・エドワード
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AJ02A
4F100AJ04A
4F100AJ05A
4F100AJ05B
4F100AJ06A
4F100AJ06B
4F100AJ08A
4F100AP00B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA08
4F100DE01B
4F100DG12A
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK07
(57)【要約】
本発明は、セルロースを含む複合材料に関する。複合材料は、テキスタイルまたはファブリックであってもよい第1のセルロースベース材料、およびフィルムまたはセルロースベース材料もしくはセルロースベース粉末材料であってもよい第2のセルロースベース材料を含む。第2のセルロースベース材料は、紙または再生セルロースフィルムなどセルロースを含むシート材料であってもよい。一実施形態にて、材料は、一緒にまとめられている材料の両方がセルロースを含むまたはセルロースである異なる形態の材料である、いわゆる「全セルロース複合体」である。例えば、異なる材料は、セルロースベース供給原料に由来する。本発明はまた、イオン性液体を利用して、本発明に係る複合材料を調製する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセルロースベース材料および第2のセルロースベース材料で形成された複合材料であって、前記第1のセルロースベース材料および前記第2のセルロース材料が、前記第1または第2のセルロースベース材料が少なくとも2層および他方のセルロースベース材料が少なくとも1層存在するように、互いに交互積層されている、複合材料。
【請求項2】
前記第1のセルロースベース材料が、テキスタイルである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記第2のセルロースベース材料が、セルロースベースのシート、フィルムまたは粉末である、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
アロイ領域をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記第1のセルロースベース材料および前記第2のセルロースベース材料を合計で3~100層有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
セルロースを含み、前記セルロースが、
約40%~約60%のセルロース1型と、
約25%~約38%の非晶セルロースと、
約2%~約45%の再生セルロースおよび/またはセルロースIIと
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
少なくとも50N/mの剥離強さを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第1のセルロースベース材料が、綿、亜麻、黄麻、麻、カラムシ、サイザル、竹、レーヨン、テンセル、イオンセル、およびリヨセルから選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第2のセルロースベース材料が、セルロース粉末、木粉、濾紙および再生セルロースフィルムから選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
50N/m~750N/mの剥離強さを有する、セルロースベース複合材料。
【請求項11】
複合材料を調製する方法であって、
a)少なくとも3層を含む積層物品を用意するステップであって、前記少なくとも3層が第1のセルロースベース材料層と第2のセルロースベース材料層の交互層である、ステップと、
b)溶媒を前記積層物品に塗布するステップと、
c)前記積層物品を再生して、複合材料を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記溶媒が、水性溶媒、有機溶媒またはイオン性溶媒である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒がイオン性溶媒であり、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO);ジメチルスルホキシド(DMSO);ジメチルホルムアミド(DMF);N,N-ジメチルアセトアミド;N,N-ジメチルアセトアミド-塩化リチウム;NaOHの水性溶液;NaOHの水性溶液-尿素;ポリエチレングリコール(PEG);ポリエチレングリコール(PEG)およびNaOH、水性塩化亜鉛;溶融無機塩水和物;アンモニア/チオシアン酸アンモニウム(NH/NHSCN);エチレンジアミン(EDA)/KSCN;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアノアミド、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、および1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリドから任意で選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、1:0.5~1:10のセルロース系材料:溶媒の重量比で塗布される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記積層物品を100MPaまでの圧力に曝露するステップをさらに含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記積層物品を120℃までの温度に加熱するステップをさらに含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1項に記載の方法によって得られる複合材料。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材料を含むまたはそれからなる物品。
【請求項19】
造形品を調製する方法であって、
a.請求項1~10のいずれか1項に記載の複合材料を水に曝露するステップと、
b.前記複合材料を成形して、造形品を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記複合材料を水に曝露するステップが、前記水を加熱するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースを含む材料に関する。材料は複合材料でありうる。一実施形態にて、材料は、一緒にまとめられている材料の両方がセルロースを含むまたはセルロースである異なる形態の材料である、いわゆる「全セルロース複合体(all cellulose composite)」である。例えば、これら異なる材料は、セルロースベースの供給原料に由来する。複合体の第1の材料は、セルロースを含むテキスタイルであってもよく、複合体の第2の材料は、セルロースを含むシート材料であってもよい。本発明はまた、本発明に係る複合材料を調製する方法にも関する。本発明はまた、複合材料の使用も意図している。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、異なる2種の構成材料から作製される材料である。通常、2種の構成材料は異なる材料特性を有し、これによって複合材料は、両方の材料に由来する特性を共有する、または異なるもしくは改善された特性を有する。
【0003】
とりわけ建設、自動車、家具、および衣類などの様々な分野において使用されている複合材料の例がある。複合材料に組み込むことができる材料は、広範囲にわたる。例えば、コンクリートは、骨材およびセメントを含む複合材料である。また、合板は、チップボードのように、ベニヤ板のサンドイッチ層が接着剤で接着された複合材料である。
【0004】
セルロース複合材料は当技術分野において公知である。国際公開第2012/006720号には、セルロース複合材料の形成が開示されている。このような複合材料は、セルロースマトリックスおよびセルロースナノウィスカーを含むセルロースゲルで形成されている。国際公開第2012/006720号に開示されたセルロースゲルは、組織再生用の足場として使用されている。
【0005】
複合体の成分がセルロース由来の供給原料から選ばれた全セルロース複合体は、長年にわたり調査されてきた。しかし、全セルロース複合体は、Zhaoら(Cellulose(2009) 16:217-226, Novel all-cellulose ecocomposites prepared in ionic liquids)に論じられているように、セルロースベース材料の溶液または溶融加工が容易にできないという欠点をもつ。Zhaoらは、全セルロース複合体を溶媒加工するための媒体としてイオン性液体を使用することを提案する。Zhaoらは、籾殻を、セルロースマトリックスとして機能する溶解濾紙とともに使用している。
【0006】
Zhaoらは、濾紙をイオン性液体に完全に溶解し、次いでイオン性液体で前処理された籾殻と混合する必要がある。したがって、セルロースマトリックスは液体媒体であり、籾殻は、その液体マトリックス内に分布され、普通ならより弱いセルロースマトリックスの補強として機能する。このように、Zhaoにおいて開示された全セルロース複合体は、生成するのに多量のイオン性液体が必要とされる。本発明のある特定の実施形態の目的は、全セルロース複合体を生成する方法におけるイオン性液体の使用を低減することである。
【0007】
また、Zhaoらにより開示された複合体は、物品を提供するためにキャストされなければならない。Zhaoらの方法によって形成されたいかなる物品も、キャスト方法によって液体から固体に変化させなければならない。キャストするステップがなければ、Zhaoらにおいて記載されているセルロース複合体は、固体の物理構造をもたない。セルロースを含む液体溶液をキャストして、物品を生成することによって、物品の潜在的用途が低減されるおそれがある。例えば、三次元の物品をキャストするのは適していない。したがって、本発明のある特定の実施形態の目的は、キャストする必要性を回避することである。本発明のある特定の実施形態の関連した別の目的は、液体から固体の形への変換の使用を回避することである。特に、本発明のある特定の実施形態の目的は、例えば液体を鋳型または金型中で硬化させることによって画定される物理構造とは対照的に、複合材料の成分によって物理構造、形状または構成を画定できる物品を提供することである。また、本発明のある特定の実施形態の目的は、三次元の物品を提供することである。
【0008】
Zhaoらにより開示されたものなどのキャストセルロース複合体は、内部支持構造が不在のために望ましくない物理的特性を有する。強化用繊維の網目を有する複合体の成分を利用することによって、有益な物理的特性を得ることができる。このような網目は、セルロースベースの織テキスタイル中で見ることができる。
【0009】
したがって、Huberら(Composites:Part A 43(2012) 1738-1745;All-cellulose composite laminates)は、リネンおよびレーヨンテキスタイルを積層し、イオン性液体に曝露して、全セルロース物品を提供できることを示している。この方法は、マトリックス材料を直接導入するのではなく、セルロース表面の部分溶解、次にセルロースの再生に依拠して、マトリックス相を形成する。しかし、この方法によって生成された複合材料の機械的特性、特に中間層剥離強さは、所望より低いことがありうる。したがって、本発明のある特定の実施形態の目的は、改善された機械的特性を有するセルロースベースの物品を提供することである。改善された機械的特性は、モジュラスもしくは引張応力もしくは引張強さまたは中間層剥離強さとすることができる。
【0010】
Zhaoらにより開示されているものなどのキャスト複合材料は、複数の層の不在によって利益を得るものである。Huberらの複数の層は、キャストセルロース複合体と比べると引張強さおよび引張係数に対してプラス効果をもたらすが、複数の層が物品内に存在すると、層間剥離を生じるおそれがある。複数の層の層間剥離の容易さは、層状物品の剥離強さによって測定される。低剥離強さは、より強い層間剥離傾向を示す。したがって、本発明のある特定の実施形態の目的は、改善された剥離強さをもたらすことである。
【0011】
積層複合材料の剥離強さは、複合材料から形成された物品が成形されることになる場合に特に重要である。成形品を造形する。積層複合体を造形する際に、材料を隅などいずれかの変形点における歪み下に置く。成形構造の変形点において層にかかる張力が層間剥離を導く。成形品の変形点における層間剥離は、成形品の所期の目的のための外見および適合性に実質的に影響を及ぼす。したがって、本発明のある特定の実施形態の目的は、変形点における層間剥離または損傷をさらに回避できる成形に適している複合材料を提供することである。
【0012】
剥離強さは、最終構造を低レベルの繰り返し変形または応力にかける場合にも重要となりうる。剥離強さが低い場合、この繰り返し変形が層間の層間剥離を導き、機械的性能、特にモジュラスを下落させるおそれがある。このような変形を切り抜ける、損傷許容度と呼ばれることが多い能力は、中間層剥離強さを改善することによって大いに高められる。したがって、本発明のある特定の実施形態の目的は、本発明のものではないセルロース複合材料と比べて、セルロースベース複合材料の損傷許容度を改善することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明によれば、第1のセルロースベース材料および第2のセルロースベース材料で形成された複合材料であって、第1のセルロースベース材料および第2のセルロース材料が、第1または第2のセルロースベース材料が少なくとも2層および他方のセルロースベース材料が少なくとも1層存在するように互いに交互積層されている、複合材料が提供される。
【0014】
場合により、第1のセルロースベース材料は、テキスタイル(場合によって、セルロース連続繊維からなる織テキスタイル、または不織テキスタイル)であり、第2のセルロースベース材料は、セルロースベースのシート、フィルムまたは粉末である。第2のセルロースベース材料は、加工または再生セルロース(例えば、紙、再生セルロースフィルムまたは類似物)に場合によって由来する。第2のセルロースベース材料またはセルロースベースのシート材料は、インターリーフ層と呼ばれることもある。
【0015】
第1のセルロースベース材料は、未加工植物ベースの繊維からなることができ(例えば、織亜麻繊維(リネン)または織綿(デニム))、一方、第2のセルロースベース材料は、通常、再生セルロース源である(例えば、チョップドウッド繊維(紙)または完全再生セルロースフィルム(例えば、セロファン))。
【0016】
第2のセルロースベース材料またはセルロースベースのシート材料は、セルロースを含み、かつシートに形成される、任意選択的な材料とすることができる。好ましくは、シート材料は、主にセルロースである。セルロースベースのシート材料は、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含むことができる。好ましくは、セルロースベースのシート材料は、セルロースで形成される。しかし、セルロースベースのシート材料がセルロースで形成される場合には、少量の非セルロース不純物がシート材料内に存在しうる可能性がある。
【0017】
本発明の範囲内とみなされるいずれの「材料」も、セルロースベース材料であるとみなすことができる。本発明の材料または他の成分が「セルロースベース」であると表示されているいかなる文脈においても、それは、主にではあるが独占的にではなくセルロースである成分もしくは材料または独占的にセルロースである成分もしくは材料を指すことを目的としている。「セルロースベース」材料は、例えば、セルロースを含む成分とすることができる。さらに、いかなるセルロースベース材料も、場合により、材料内のセルロースが天然タイプのセルロースである天然セルロースベース材料でありうる。材料自体が天然のものでありうるが、それは必要条件ではない。例えば、セルロースベース材料は、繊維、次いでテキスタイルに加工され、または粉末もしくはフィルムに加工される天然セルロースの形とすることができる。しかし、セルロースベース材料内のセルロースの化学的性質は、改変されなかった。したがって、セルロースベース材料のセルロースは、場合によって、化学修飾セルロースでない。示されたように、本発明は、セルロースベース材料のセルロースが場合によって化学修飾セルロースでないものの、しかし、セルロースベース材料が製造されていたときセルロースが化学修飾を受けたかもしれないことを意図している。
【0018】
一実施形態にて、本発明に係る複合材料は、可塑化材料を含まない。特に、複合材料、またはセルロース材料内に含まれているいずれの成分も可塑剤を含まない。
【0019】
一実施形態にて、複合材料の成分のすべては天然のものである。成分を物理的に加工したが、化学修飾せずに材料にしたかもしれない。さらに、複合材料の成分は、以前に、加工するステップまたは加工手順時に化学修飾された。しかし、このときセルロースは、セルロースの天然の形に戻され、または再生された。
【0020】
一実施形態にて、第1のセルロースベース材料は、セルロースが化学修飾されていないセルロースを含むテキスタイル(場合によって、セルロース連続繊維からなる織テキスタイル、または不織テキスタイル)であり、第2のセルロースベース材料は、化学修飾されていないセルロースを含むセルロースベースのシート、フィルムまたは粉末である。第2のセルロースベース材料は、セルロースが化学修飾されていない加工または再生セルロース(例えば、紙、再生セルロースフィルムまたは類似物)に場合によって由来する。
【0021】
いくつかの実施形態にて、第2のセルロースベース材料またはセルロースベースのシート材料は、セルロースベースのテキスタイルの層間に配置された中間層である。
【0022】
全複合材料のような本発明に係る複合材料は、異なる2種の材料を組み合わせたものである。この場合、異なる2種の材料は、セルロースベースのシート材料およびセルロースベースのテキスタイルである。本発明に係る複合体を形成する異なる2種の材料は、複合材料を形成する前にシート材料およびテキスタイルの定義を満たすが、異なる2種の材料が複合材料中にあるときはその定義に従わない可能性がある。例えば、複合材料内のシート材料は、複合体内でセルロースベースのテキスタイル層を、場合によって2枚のセルロースベースのテキスタイル層(例えば、セルロースベースシートの両側のセルロースベースのテキスタイル層)と組み合わせているので、もはや単一シートではありえない。
【0023】
図2および図3に、本発明の例示的な複合体の断面の画像を示す。不連続な層が画像に表れており、セルロースベースのテキスタイルの織りが目に見え、セルロースベースのシート材料も目に見える。
【0024】
複合材料の層は、互いに結合できる。「層」という用語は、第1または第2のセルロースベース材料の層の全部または一部を総称する。具体的には、第1または第2のセルロースベース材料の一方の層が他方のセルロースベース材料に隣接している場合、2種のセルロースベース材料(第1および第2のセルロースベース材料)を互いに結合できる。層間の結合は、II型および/または非晶セルロースによる結合でありうる。層間の結合を容易にして、第2のセルロースベース材料を第1のセルロースベース材料に少なくとも部分拡散することができ、したがってアロイ領域、すなわち第1のセルロースベース材料と第2のセルロースベース材料の両方の材料を含む領域を提供する。アロイ領域は、II型および非晶セルロースを含むことができる。
【0025】
このように、本発明に係る複合材料は、第1のセルロースベース材料、第2のセルロースベース材料、およびアロイ領域を含むことができる。アロイ領域は、第1のセルロースベース材料と第2のセルロースベース材料の両方の材料を含む領域であるとみなすことができる。
【0026】
例えば、本発明に係る複合材料の最も単純な形態では、2層のセルロースベースのテキスタイルと、2枚のセルロースベースのテキスタイル層間にインターリーフした1層のセルロースベースのシート材料が存在する。このような1層のセルロースベースのシート材料は、両方のセルロースベースのテキスタイル層に結合している。2枚のセルロースベースのテキスタイル層は、それぞれ、1層のセルロースベースのシート材料にのみ結合している。このように、2枚のセルロースベースのテキスタイル層は、片側に結合が無い。したがって、一実施形態にて、複合体は上部表面を有する。いくつかの実施形態にて、複合体は底部表面を有する。いくつかの実施形態にて、複合体は上部表面および底部表面を両方有する。
【0027】
複合材料の上部表面は、セルロースベースのテキスタイルまたはセルロースベースのシート材料であってもよい。複合材料の底部面は、セルロースベースのテキスタイルまたはセルロースベースのシート材料であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態にて、複合材料の上部表面は、セルロースベースのテキスタイルであり、複合材料の底部表面は、セルロースベースのテキスタイルである。いくつかの実施形態にて、複合材料の上部表面は、セルロースベースのテキスタイルであり、複合材料の底部表面は、セルロースベースのシート材料である。いくつかの実施形態にて、複合材料の上部表面は、セルロースベースのシート材料であり、複合材料の底部表面は、セルロースベースのテキスタイルである。いくつかの実施形態にて、複合材料の上部表面は、セルロースベースのシート材料であり、複合材料の底部表面は、セルロースベースのシート材料である。
【0029】
本発明は、3層より多い層数を有する、より広範な複合材料を意図している。例えば、第1および第2のセルロースベース材料の層のすべてを計数すると、複合材料は3~100層を有することができる。いくつかの実施形態にて、複合材料は、3~50層、3~40層、3~25層、3~10層または3~5層を有することができる。好ましい実施形態にて、複合材料は3~20層を有する。本発明の実施形態内の層は、第1のセルロースベース材料と第2のセルロースベース材料の交互層である。
【0030】
本発明の実施形態にて、複合材料はセルロースを含み、セルロースが、
約10%~約90%のセルロース1型、
約10%~約50%の非晶セルロース、ならびに
約2%~約45%の再生セルロースおよび/またはセルロースII
を含む。
【0031】
本発明の実施形態にて、複合材料はセルロースを含み、セルロースが、
約40%~約60%のセルロース1型、
約25%~約38%の非晶セルロース、ならびに
約2%~約45%の再生セルロースおよび/またはセルロースII
を含む。
【0032】
本材料の複合材料は、補強部材、マトリックス材料およびフィルム材料で形成されているとみなすことができる。本発明における当初の定義に応じて、補強部材は、第1のセルロースベース材料であってもよく、フィルムは、第2のセルロースベース材料であってもよく、マトリックスは、第1または第2のセルロースベース材料に由来するセルロースであってもよい。いくつかの実施形態にて、強化材は、複合材料の40%~70%として存在し、マトリックス材料は、複合材料の10%~30%として存在し、フィルム材料は、複合材料の2%~45%として存在する。
【0033】
本発明の態様において、セルロースベースの補強部材、セルロースマトリックス材料、およびセルロースベースのフィルム材料を含む複合材料を提供する。強化材は、複合材料の40%~70%として存在でき、マトリックス材料は、複合材料の10%~30%として存在でき、フィルム材料は、複合材料の2%~45%として存在できる。
【0034】
強化材は、複合材料に内部構造を提供できる。この構造は、複合材料に強度を提供できる。マトリックス材料は、強化材内に散在させることができる。このように、強化材は、マトリックス材料が全体にわたって広がっているフレーム構造であるとみなすことができる。フィルム材料は、強化材の層の中間にある介在層とすることができる。したがって、複合材料は、強化材およびフィルム材料の交互層で形成でき、マトリックス材料が複合材料全体にわたって分散されている。
【0035】
強化材は、実質的にセルロースIとすることができ、フィルム材料は、実質的にセルロースI、セルロースIIまたは非晶セルロースとすることができ、マトリックス材料は、実質的にセルロースIIとすることができる。
【0036】
本発明のある特定の実施形態にて、複合材料は、少なくとも50N/mの剥離強さを有する。場合によって、剥離強さは、少なくとも200N/mとすることができる。
【0037】
本発明のある特定の実施形態にて、複合材料は、50~2000N/mの剥離強さを有する。先行技術の複合材料より高い剥離強さを有することが好ましい。より高い剥離強さは、セルロース複合材料に好ましい特性を示す。したがって、剥離強さは、50~750N/mまたは200N/m~500N/mとすることができる。複合材料の剥離強さは、150N/m~300N/m、200N/m~300N/m、300N/m~500N/m、400N/m~500N/m、200N/m~400N/m、または100N/m~450N/mとすることができる。本発明に係る複合材料の剥離強さは、ASTM D1876の指針に従うことによって、例えば幅10mmおよび長さ80mmの試料を試験速度80mm/分で試験することによって決定できる。試料の20mm~70mmで測定した剥離力を平均し、結果を幅1メートルについての平均力(N/m)で表示する。
【0038】
第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、天然繊維または人造繊維を含むまたはそれらで形成されたテキスタイルであってもよい。
【0039】
第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、例として、綿、亜麻、黄麻、麻、カラムシ、サイザル、竹、レーヨン、テンセル、イオンセル、およびリヨセルから選択されるセルロースベース繊維とするまたはそれを含むことができる。第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、綿、亜麻、黄麻、麻、カラムシ、サイザル、竹、レーヨン、テンセル、イオンセル、およびリヨセルから選択される繊維とするまたはそれを含むことができる。
【0040】
第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、綿、亜麻、黄麻、麻、カラムシ、サイザル、および竹から選択される天然繊維とするまたはそれを含むことができる。
【0041】
第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、レーヨン、テンセル、イオンセル、およびリヨセルから選択される人造繊維とするまたはそれを含むことができる。
【0042】
レーヨンは、再生セルロース繊維から作製される工業繊維である。セルロースは木材パルプに由来する。レーヨン繊維は、90%より高いセルロース、場合によって95%より高いセルロースを有することができるように、ほぼ純粋なセルロースである。テンセルは、木材から調達されるセルロース繊維であり、モダールレーヨン繊維と分類できる。モダールレーヨン繊維は、紡糸によって生成されるタイプの再構成セルロース繊維である。イオンセルは、衣類、テキスタイル、木材パルプ、新聞紙またはボール紙などのリサイクル材料から生成されるリサイクルセルロースベース繊維である。一般に、人造繊維は、セルロースベース繊維である。したがって、人造繊維は、主にセルロースである。
【0043】
好ましくは、第1のセルロースベース材料は、亜麻とすることができる。
【0044】
第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、60%より高いセルロース、70%より高いセルロース、または80%より高いセルロースを含む人造または天然の繊維とするまたはそれを含むことができる。例えば、第1のセルロースベース材料またはセルロースベースのテキスタイルは、90%のセルロース、場合によって95%より高いセルロースを含む人造または天然の繊維とするまたはそれを含むことができる。同様に、「セルロースベース(cellulose-based)」という用語は、この段落に定義されるセルロース含有量を有する繊維またはテキスタイルを指す。
【0045】
第2のセルロースベース材料またはセルロースベースのシート材料は、いかなる再生セルロース源から選択してもよい。例えば、再生セルロース源は、セルロース粉末、木粉、濾紙または再生セルロースフィルム(例えば、セロファン)などのフィルム、シートまたは粉末とすることができる。場合により、第2のセルロースベース材料、セルロースベースのシート材料、または再生セルロース源は、フィルムまたはシート材料、場合により、濾紙または再生セルロースフィルム(例えば、セロファン)から選択できる。
【0046】
セロファンは、再生セルロースで作製される材料である。木材、綿または麻などの原料は、ビスコースに加工され、次いでシートに押し出されて、セロファンが薄い透明材料として生成される。
【0047】
いくつかの実施形態にて、第2のセルロースベース材料またはセルロースベースのシート材料は、90%より高いセルロース、場合によって95%より高いセルロースを含む。
【0048】
本発明の態様において、50N/m~750N/mの剥離強さを有するセルロースベース複合材料を提供する。複合材料は、複合材料について本明細書の他の箇所で開示されている特徴のいずれかを有することができる。一実施形態にて、複合材料は、セルロースベース繊維を含む。セルロースベース繊維は、構造を形成することができる。セルロースベース繊維は、格子を形成することができる。いくつかの実施形態にて、セルロースベース繊維は、織りまたは編みを形成することができる。セルロースベース繊維は、テキスタイルまたは不織構造を形成するまたはそれに由来することができる。したがって、いくつかの実施形態にて、セルロース複合体は、セルロースベースのテキスタイルを含む。
【0049】
いくつかの実施形態にて、セルロースベース繊維は、セルロースを含むマトリックス内に分散されている。いくつかの実施形態にて、セルロースベース繊維は、セルロースを含むマトリックス内に分散されている格子として存在する。
【0050】
このように、いくつかの実施形態にて、セルロースを含むマトリックス内に分散されているセルロース繊維の格子を含む複合材料は、50N/m~750N/m(場合によって、200N/m~500N/m)の剥離強さを有する。
【0051】
セルロースベース繊維は、再構成セルロースとすることができる。
【0052】
本発明に係る複合材料は、異なるタイプのセルロースを含むことができる。セルロース1型、非晶セルロースおよび再生セルロースの3タイプのセルロースを、広角X線測定(WAXS)によって測定できる。WAXS測定は、Huberゴニオメーターを使用し、銅Kα線を用いて、加速電圧40kVおよび電流30mAで実施した。2θ走査を、5~30℃の値間で各位置において角増分0.2°および計数時間120秒で実施した。バックグラウンド走査は、同じ条件を使用し、位置についている試料なしで実施して、空気散乱等により検出器に入るいかなるx線も差し引いた。データ収集後に、得られた2θ走査を試験し、どの特徴的なピークが存在しているか(セルロースI、セルロースIIおよび非晶相)を評価して、次いで(Excelソルバーを使用して)データをこれらのピークの組合せと適合させて、異なるセルロースベース材料がこれらの成分のそれぞれの異なるプロファイルを有するように、どの相がどの画分に存在しているか確定する。異なるタイプのセルロースの組合せによって、好適な特性が得られる。例えば、セルロース1型は、衝撃強度および剛性をもたらすことができる。非晶および再生セルロースは、改善された剥離強さをもたらすことができる。各タイプのセルロース量のバランスを取ることにより、有益な特性の驚くべき組合せを導くことができる。
【0053】
比較例として、純リネン布中のセルロースは、約78%のセルロース1型および約22%の非晶セルロースから本質的になるものである。
【0054】
本発明に係る複合材料はセルロースを含む。複合材料中のセルロースは、約40%~約60%のセルロース1型、約25%~約38%の非晶セルロース、および約2%~約25%の再生セルロースとすることができる。
【0055】
複合材料中のセルロースは、約44%~約60%のセルロース1型、約30%~約36%の非晶セルロース、および約4%~約20%の再生セルロースとすることができる。
【0056】
複合材料は、他の不可避な不純物を含むことがある。複合材料は、他の痕跡材料に加えて、ヘミセルロース、リグニンおよび潜在的に水などの他の材料も含むことができる。これらの他の材料は、セルロースベース材料を生成するのに使用される原料に由来し、またはセルロースベース材料を生成する方法に由来することがある。
【0057】
本発明の態様において、セルロースを含む複合材料であって、セルロースが、
約40%~約60%のセルロース1型、
約25%~約38%の非晶セルロース、および
約2%~約25%の再生セルロース
を含む複合材料を提供する。
【0058】
一実施形態にて、複合材料は、セルロースベース複合材料である。
【0059】
一実施形態にて、
約40%~約60%のセルロース1型、
約25%~約38%の非晶セルロース、および
約2%~約25%の再生セルロース、
ならびに不可避不純物
を含む複合材料を提供する。
【0060】
本発明の態様において、複合材料を調製する方法であって、
a)少なくとも3層を含む積層物品を用意するステップであって、少なくとも3層が第1のセルロースベース材料層と第2のセルロースベース材料層の交互層である、ステップと、
b)溶媒を積層物品に塗布するステップと、
c)積層物品を再生して、複合材料を形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0061】
方法は、積層物品を乾燥するステップまたは複合材料を乾燥するステップを場合によって含む。乾燥は、当業者に公知のいかなる方法によっても完了できる。例えば、積層物品または複合材料を炉中で乾燥できる。乾燥するステップは、ホットプレスにおいて実施できる。
【0062】
乾燥は、0.1MPa~10MPaの圧力で場合によって実施できる。乾燥するステップは、1MPa~5MPaの圧力で実施できる。好ましくは、乾燥するステップは、2MPaで実施される。
【0063】
本発明の実施形態にて、乾燥は、周囲温度を超える温度で実施できる。周囲温度は、一般に約20℃であるとみなすことができる。乾燥するステップは、50℃を超える、または80℃を超える、または90℃を超える温度で実施できる。乾燥温度の上限は、複合材料が乾燥時に熱によって悪影響を受ける前の温度である。この温度は、乾燥するステップを実施する際に当業者に明らかである。しかし、乾燥するステップの温度の上限は、200℃または150℃とすることができる。好ましくは、乾燥するステップは、125℃で実施される。好ましくは、乾燥するステップは、2.5MPaの圧力で実施される。いくつかの実施形態にて、乾燥するステップは、125℃および2.5MPaで実施できる。いくつかの実施形態にて、乾燥するステップは、125℃および2MPaで実施できる。
【0064】
積層物品は、少なくとも2枚の第1のセルロースベース材料層および少なくとも1枚の第2のセルロースベース材料層のスタックを調製することによって提供することができ、少なくとも2枚の第1のセルロースベース材料層および少なくとも1枚の第2のセルロースベース材料層が互いの上に交互に積み重ねられる。このように、第1のセルロースベース材料層は、第1のセルロースベース材料層の別の層に隣接していない。同様に、第2のセルロースベース材料層は、別の第2のセルロースベース材料層に隣接していない。
【0065】
第2のセルロースベース材料層は、インターリーフ層と呼ぶこともできる。これは、第2のセルロースベース材料層/インターリーフ層が第1のセルロースベース材料層間に位置するからである。したがって、本発明の実施形態にて、複合材料を調製する方法は、
a)第1のセルロースベース材料の少なくとも2層および第1のセルロースベース材料層のそれぞれの間に配置された少なくとも1枚のインターリーフ層を含む積層物品を用意するステップと、
b)溶媒を積層物品に塗布するステップと、
c)積層物品を再生して、複合材料を形成するステップと
を含む。
【0066】
積層物品は少なくとも3層である。したがって、積層物品が少なくとも5層、少なくとも7層または少なくとも9層である可能性がある。好ましくは、積層物品は3~21層からなる。積層物品は奇数または偶数の層数で構成されている可能性がある。好ましくは、積層物品は、奇数の層数で構成されている。層数のこの定義は、同様に本発明に係る複合材料に適用される。
【0067】
ステップa)で用意される積層物品は、第1のセルロース材料および第2のセルロース材料の交互層のスタックであるとみなすことができる。スタック、したがって積層物品は、上部層および底部層を有する。
【0068】
奇数の層数を有すると、積層物品の上部層および底部層が同じ材料でなりうる。上部層および底部層は両方とも、第1のセルロースベース材料であってもよい。あるいは、上部層および底部層は、第2のセルロースベース材料であってもよい。好ましくは、積層物品の上部層および底部層は、セルロースベースのテキスタイルである。
【0069】
上部層および底部層が同じ場合、上部層および底部層を形成する材料は、他の層を形成する材料より1層多い。
【0070】
溶媒は、セルロースを溶解できればいかなる溶媒でもよい。溶媒は、水性溶媒、有機溶媒またはイオン性溶媒とすることができる。溶媒は、単一溶媒または2種以上の溶媒の組合せとすることができる。好ましくは、溶媒はイオン性溶媒である。
【0071】
イオン性溶媒は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩およびアンモニウム塩から選択できる。イミダゾリウム塩は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアノアミド、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、および1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリドから選択できる。ピリジニウム塩は、1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロリドまたはN-エチルピリジニウムクロリドとすることができる。アンモニウム塩は、ベンジルジメチル(テトラデシル)アンモニウムクロリドとすることができる。
【0072】
有機溶媒は、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN,N-ジメチルアセトアミドから選択できる。
【0073】
水性溶媒は、NaOHの水性溶液;NaOHの水性溶液-尿素;ポリエチレングリコール(PEG);ポリエチレングリコール(PEG)およびNaOH、水性塩化亜鉛;溶融無機塩水和物;アンモニア/チオシアン酸アンモニウム(NH/NHSCN);およびエチレンジアミン(EDA)/KSCNから選択できる。
【0074】
いくつかの実施形態にて、溶媒は、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO);ジメチルスルホキシド(DMSO);ジメチルホルムアミド(DMF);N,N-ジメチルアセトアミド;N,N-ジメチルアセトアミド-塩化リチウム;NaOHの水性溶液;NaOHの水性溶液-尿素;ポリエチレングリコール(PEG);ポリエチレングリコール(PEG)およびNaOH、水性塩化亜鉛;溶融無機塩水和物;アンモニア/チオシアン酸アンモニウム(NH/NHSCN);エチレンジアミン(EDA)/KSCN;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムホルメート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアノアミド、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、および1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリドから選択される。
【0075】
好ましくは、溶媒は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIMAc)である。
【0076】
溶媒は、積層物品が形成される前または形成された後に積層物品に塗布できる。本方法の実施形態にて、溶媒を積層物品に塗布するステップは、層をスタックに整列して、積層物品を形成するより前に、積層物品の各層に溶媒を塗布するステップを含む。あるいは、溶媒は、積層物品を形成した後に積層物品を塗布できる。溶媒は、刷毛塗り、流し込み、吹付け塗りまたはベイジング(bathing)によって、積層物品または積層物品を形成する層に塗布できる。スタックを形成する前に、溶媒を層に塗布する場合、溶媒を、層ごとに塗布することができ、または第1のセルロースベース材料にのみ塗布することができ、もしくは第2のセルロースベース層にのみ塗布することができる。溶媒を積層物品に塗布することによって、層の一枚が隣接層に少なくとも部分拡散されて、アロイ領域、すなわち一層と隣接層の両方の材料を含む領域が形成する。
【0077】
溶媒は、いかなる量でも積層物品に塗布できる。しかし驚くべきことに、積層物品に塗布される溶媒の量が複合材料の特性に効果を及ぼすことが見出された。溶媒を、場合によって以下で定義されるようにセルロース系材料の重量および溶媒の重量に基づく特定の重量比で積層物品に塗布してもよく、または場合によって積層物品の形成前もしくは後に、セルロース系材料を溶媒に完全に浸漬してもよい。溶媒は、セルロース系材料:溶媒の重量比1:0.5~1:10で積層物品に塗布できる。セルロース系材料は、積層物品において第1および第2のセルロースベース材料の組合せである。したがって、セルロース系材料と溶媒の重量比は、積層物品に塗布された溶媒全体の重量に対する、積層物品における第1および第2のセルロースベース材料の両方の全重量の比である。好ましくは、セルロース系材料:溶媒比は、1:1~1:5または1:1.5~1:5である。セルロース系材料:溶媒比は、1:2.5とすることができる。
【0078】
ステップc)は、積層物品内のセルロースを再生するプロセスを含む。セルロースを再生するプロセスは、水を積層物品に塗布することによって実施できる。積層物品を水で洗浄し、または水浴に入れることができる。ステップc)は、複合材料を洗浄する別のステップを場合によって含むことができる。しかし、好ましい実施形態にて、方法は、積層物品を再生するステップの後に追加の洗浄するステップを含まない。
【0079】
一実施形態にて、方法は、積層物品を100MPaまでの圧力に曝露するステップをさらに含む。したがって、本発明に係る方法は、
a)第1のセルロースベース材料の少なくとも2層および第1のセルロースベース材料層のそれぞれの間に配置された少なくとも1枚のインターリーフ層を含む積層物品を用意するステップと、
b1)溶媒を積層物品に塗布するステップと、
b2)積層物品を約100MPaまでの圧力に曝露するステップと、
c)積層物品を再生して、複合材料を形成するステップと
を含むことができる。
【0080】
積層物品を、約0.01MPa~約100MPa、場合によって約0.1MPa(約大気圧)~約100MPaの圧力に曝露できる。あるいは、積層物品を、約0.5MPa~約50MPa、約0.5MPa~約20MPa、約0.5MPa~約10MPa、約1MPa~約50MPa、約1MPa~約10MPa、または約1MPa~約5MPaの圧力に曝露できる。積層物品を約1.4MPaの圧力に曝露できる。積層物品を約2MPaの圧力に曝露できる。好ましくは、積層物品を約2.5MPaの圧力に曝露する。
【0081】
ステップb2)は、単一の圧力段階または2つの圧力段階で実施できる。より多くの圧力段階は、特許請求された方法で実施できる。しかし、追加の圧力段階により、本発明に係る複合材料を作製するために必要とされるエネルギー消費が増大する。いくつかの本発明の実施形態にて、本発明に係る方法のためのエネルギー入力を低減することが望ましい。これは、好適な圧力または好適な温度を使用することによって達成できる。本文脈内における好適な温度および圧力は、大気圧または周囲温度により近い可能性がある。
【0082】
例えば、本発明のある特定の実施形態にて、積層物品を圧力に曝露する単一のステップは、2MPaにおいて、場合によって100℃の温度で実施される。
【0083】
ステップb2)は、積層物品をプレス機に入れることによって実施できる。プレス機はホットプレスとすることができる。
【0084】
一実施形態にて、方法は、積層物品を約120℃までの温度に加熱するステップをさらに含む。したがって、本発明に係る方法は、
a)第1のセルロースベース材料の少なくとも2層および第1のセルロースベース材料層のそれぞれの間に配置された少なくとも1枚のインターリーフ層を含む積層物品を用意するステップと、
b1)溶媒を積層物品に塗布するステップと、
b3)積層物品を約120℃までの温度に加熱するステップと、
c)積層物品を再生して、複合材料を形成するステップと
を含むことができる。
【0085】
具体的に、ステップb2)は、積層物品を120℃までの温度に加熱するステップを場合によってさらに含むことができる。したがって、本発明に係る方法は、
a)第1のセルロースベース材料の少なくとも2層および第1のセルロースベース材料層のそれぞれの間に配置された少なくとも1枚のインターリーフ層を含む積層物品を用意するステップと、
b1)溶媒を積層物品に塗布するステップと、
b2)積層物品を約100MPaまでの圧力に曝露し、積層物品を120℃までの温度で加熱するステップと、
c)積層物品を再生して、複合材料を形成するステップと
を含むことができる。
【0086】
積層物品は、約15℃(約周囲温度)~約120℃の温度で加熱できる。いくつかの実施形態にて、温度は、約15℃~約100℃、約15℃~約50℃、約20℃~約50℃または約35℃~約50℃とすることができる。温度は約20℃とすることができる。一実施形態にて、積層物品は、125℃の温度で加熱される。
【0087】
ステップb2)は、1回以上実施できる。例えば、ステップb2)は、1回または2回実施できる。ステップb2)は、1回より多く実施される場合、異なる温度および異なる圧力で、同じ温度および異なる圧力で、異なる温度および同じ圧力で、または同じ温度および圧力で実施できる。
【0088】
ステップb2)は、好ましくは、125℃および2MPaで1回実施される。
【0089】
本発明の態様において、本明細書に記載の方法により得られる複合材料を提供する。
【0090】
本発明に係る方法を利用して、本発明に係る複合材料で形成される物品を生成できる。したがって、本発明の態様において、本発明に係る複合材料を含むまたはそれからなる物品を提供する。
【0091】
本発明に係る物品を生成するために、物品を調製する方法であって、複合材料を調製する方法を含み、積層物品または複合材料を成形するステップをさらに含む方法を提供する。したがって、複合材料を調製する方法に関する本明細書の他の箇所の開示内容は、本発明に係る物品を調製する方法に同様に適用される。
【0092】
本発明の実施形態にて、複合材料で形成される物品を調製する方法は、
(i)第1のセルロースベース材料の少なくとも2層および第1のセルロースベース材料層のそれぞれの間に配置された少なくとも1枚のインターリーフ層を含む積層物品を用意するステップと、
(ii)溶媒を積層物品に塗布するステップと、
(iii)積層物品を成形するステップと、
(iii)積層物品を再生して、物品を形成するステップと
を含む。
【0093】
本発明に係る複合材料は、水を場合によって使用して、複合材料のシート変形性(sheet deformability)を向上させて形成された後に、物品に形成することができる。水を使用して、材料の変形性を向上させる技法は、ハイドロホーミングと呼ばれる。図8に示されるように、水の存在により、複合シートのモジュラスが大いに低減され、シートの破壊歪みが大いに増加し、シートの強度も増加する。実験から、本方法は可逆的であること、乾燥後に複合材料特性は以前の「乾燥」状態に戻ることが明らかになった。実験から、複合材料は通常約6%の水を含有することが明らかになった。
【0094】
したがって、複合材料で形成される物品を調製する方法の代替的な実施形態にて、方法は、
(A)複合材料(場合によっては、シート)を水に曝露し、水を場合によって加熱するステップと、
(B)複合材料を成形して、物品を形成するステップと
を含む。
【0095】
ハイドロホーミングするための複合材料(場合によっては、シート)を水にしばらく浸漬しておくことができる。複合材料を48時間まで放置しておいてもよい。例えば、材料を24時間または12時間まで放置しておいてもよい。好ましくは、複合材料を6時間未満または4時間未満浸漬しておいてもよい。より好ましくは、1時間未満、例えば約5分間浸漬しておいてもよい。
【0096】
一実施形態にて、方法は、室温で実施される。あるいは、方法は、当業者に公知のいかなる温度でも、例えば10~80℃で実施してもよい。一実施形態にて、方法は、15~60℃、15~50℃、15~40℃、または15~30℃の温度で実施できる。
【0097】
一実施形態にて、方法は、方法において形成された物品を乾燥するステップをさらに含む。これは、室温で、またはより好ましくは約100℃~約150℃、例えば約120℃と設定した温度制御型炉で行うことができる。
【0098】
一実施形態にて、複合材料を成形するステップは、シート材料を金型に入れるステップを含み、場合によって金型が、互いにコンタクトまたはニアコンタクトして、複合材料を造形品に形成するように構成されている2つの相補的断片を含むまたはそれらからなる。したがって、成形するステップは、複合材料を金型に入れ、金型の2つの相補的断片を閉めて、物品を形成するステップを含む。2つの相補的断片を閉めるステップは、50~500mm/秒、50~250mm/秒、50~100mm/秒、好ましくは80mm/秒の閉め速度で実施できる。
【0099】
一実施形態にて、複合材料で形成される物品に対する負荷が5kNに達すると、方法を止める。
【0100】
本発明に係る物品は、自動車、音響、スポーツ、またはモデル産業内で使用することができる。例えば、本発明に係る物品を、拡声器コーン、自動車内装、すね当て用のインサート、繊維ガラス代替物、マネキン人形、ならびに軽量、剛性、および強力な材料が必要とされるさらに多くの応用品に作製することができる。
【0101】
「第1のセルロースベース材料」という用語は、全体にわたって「セルロースベースのテキスタイル(cellulose-based textile)」という用語と同義に使用できる。同様に、「第2のセルロースベース材料」、「セルロースベースのシート材料」または「インターリーフ層(interleaf layer)」という用語は、全体にわたって同義に使用できる。
【0102】
以降で添付図面を参照しながら、本発明の実施形態をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1A】インターリーフがない比較例1の材料と類似している材料の光学顕微鏡写真画像を示す図である。
図1B図1Aに示した材料の拡大図を示す図である。
図2A】濾紙インターリーフを含む本発明に係る複合材料を示す図である。
図2B】濾紙インターリーフを含む本発明に係る複合材料を示す図である。
図3A】2枚の再生セルロースフィルム(Natureflex)で構成されているインターリーフ層を含む本発明に係る複合材料を示す図である。
図3B】2枚の再生セルロースフィルム(Natureflex)で構成されているインターリーフ層を含む本発明に係る複合材料を示す図である。
図4】本発明およびインターリーフを含まない比較例の複合材料の応力歪みを示すグラフである。
図5】複合材料の細片の端部からの距離と定義される位置に対する剥離強さを示すグラフである。
図6】溶媒とセルロース系材料の量を指示された比で使用して作製された複合材料の平均剥離強さを示すグラフである。
図7】異なるインターリーフ層を用いて作製された複合材料の剥離強さを示すグラフである。
図8】吸着された水が0%、6%および28%の3つのレベルである本発明に係る複合材料の引張特性を示す図である。
【実施例
【0104】
[比較例1]
本発明の一部をなすものではない複合材料を、Huberら(Composites:Part A, 43 (2102) 1738-1421)における開示内容に従って調製した。Huberは、織ったセルロース材料の層を、各層の平均重量と等しい重量の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(BMIMAc)に含浸し、スタックに整列させる方法を説明している。次いで、含浸したスタックを(110℃に設定された)ホットプレスに1.5MPaの圧力で1時間、次に増加させた2.5MPaの圧力でさらに20分間入れる。次いで、アセンブリをホットプレスから取り出し、水中で24時間洗浄し(凝固/再生ステップ)、次いで沸騰水中で48時間さらに洗浄する。最後に、アセンブリを、0.5MPaの圧力下、75℃で24時間乾燥する。
【0105】
図1Aに、インターリーフがない比較例1の材料と類似している材料の光学顕微鏡写真画像を示し、図1Bに、近接画像を示す。光学顕微鏡写真は、溶媒、圧力および温度が加えられているために、再生セルロースの薄層が各繊維束の周りに形成されていることを示す。しかし、織構造中の間隙を埋めるには十分でない。織布の間隙において目に見える材料は、光学顕微鏡写真時において適切な位置に材料を保持するために使用されたスーパー接着剤である。
【0106】
[実施例1a]
本発明に係る複合材料を以下の方法によって調製した。亜麻、織ったセルロース材料、およびインターリーフ層の層を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート(EMIMAc)に溶媒の重量とセルロース系材料の重量の比2.5:1で含浸した。溶媒の量は、層のそれぞれで適度に平等に分けられる。亜麻は2/2ツイルおよび100g/mであった。含浸したセルロース織ファブリックを、織ったセルロース材料の各層間に置かれた含浸した濾紙のインターリーフ層と積み重ねた。次いで、含浸したスタックをプレス機に周囲温度(約20℃)、1.4MPaの圧力で1時間、次に同じ温度において、増加させた2.5MPaの圧力でさらに20分間入れた。次いで、アセンブリをホットプレスから取り出し、水中で20時間洗浄した(凝固/再生ステップ)。さらなる洗浄ステップは行わなかった。最後に、アセンブリを、2.5MPaの圧力下、125℃で1時間乾燥する。Huberらの方法のパラメータと本発明に係る方法のパラメータの比較を以下の表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
図2および図3に、本発明に係る複合材料の断面の光学顕微鏡写真画像を示す。図2Aおよび図2Bに、濾紙インターリーフを含む本発明に係る複合材料を示す。画像から、濾紙インターリーフ層が織布の構造中の間隙の大部分を埋め、再生セルロースがいかなる残りの間隙も埋めることがわかる。濾紙の構造が依然として目に見える。
【0109】
図3Aおよび図3Bに、2枚の再生セルロースフィルム(Natureflex)で構成されているインターリーフ層を含む本発明に係る複合材料を示す。インターリーフしたフィルムは、間隙のすべてを埋める。フィルムは、繊維束の周りで変形して、構造を結合させることができる。個々のフィルムが依然として目に見える。
【0110】
[実施例1b]
インターリーフがセロファンであった点以外は実施例1aに記載された含浸したスタックを形成することによって、本発明に係る複合材料を調製した。次いで、含浸したスタックをプレス機に周囲温度(約100℃)、2MPaの圧力で2時間入れた。次いで、アセンブリをホットプレスから取り出し、水中で20時間洗浄した(凝固/再生ステップ)。さらなる洗浄ステップは行わなかった。最後に、アセンブリを、2MPaの圧力下、125℃で1時間乾燥する。この方法は、実施例1aの圧力段階の1つを除き、圧力ステップの温度および長さを増大する。
【0111】
[実施例2]
本発明に係る複合材料の平面内引張特性を比較した。濾紙インターリーフを含む複合材料を実施例1aに記載された方法に従って調製し、セロファンをインターリーフ材料として使用した複合材料を実施例1bに提示したように調製した。インターリーフした層を含めないが、実施例1aと同じ手順で、比較材料も調製した。実施例1aおよび1bでは、ヤング率が有意に改善されたが、引張強さおよび破壊歪みは変わらないままであることが明らかになった。実施例1aおよび実施例1bに従って調製された材料の特性は、インターリーフを含まない比較例およびHuberらに記載されている複合材料に比べて改善された特性を示した。実施例1a、実施例1bおよび比較例の複合材料のデータを以下の表2に示す。図4に、実施例1aおよびインターリーフを含まない比較例の複合材料の応力歪みのグラフを示す。
【0112】
【表2】
【0113】
[実施例3]
本発明に係る複合材料の中間層強度を、インターリーフを含まない比較例と比べるために、さらなる実験を実施した。これは、ASTM D1876の指針に従って、T形剥離試験を用いて実施した。試料の幅は10mmであり、長さは80mmであり、試験速度は80mm/分であった。試料の20mm~70mmで測定した剥離力を平均し、結果を幅1メートルについての平均力(N/m)で表示する。以下の表3からわかるように、本発明に係る複合材料の剥離強さは、かなり高くなっていた。
【0114】
【表3】
【0115】
図5に、複合材料の細片の端部からの距離と定義される位置に対する剥離強さのグラフを示す。図5から明らかなように、すべての位置において、材料の複合体ははるかにより高い剥離強さを有している。
【0116】
このデータから、シートベースのセルロース材料のインターリーフが存在すると、セルロースベース織布に由来する材料の剥離強さに驚くべき有益な効果を及ぼすことが明らかである。
【0117】
[実施例4]
方法において使用される溶媒の量も、本発明に係る複合材料の特性に驚くべき効果を及ぼす。実施例1に従って、複合材料を調製した。しかし、溶媒とセルロース材料の比を改変した。適切な量の溶媒に含浸させた層のスタックに1.4MPaの圧力を加えて、溶媒とセルロースの比1.73:1、2.25:1、2.63:1、3.11:1および4.23:1を試験した。図6に、セルロース材料の量に対して溶媒量が増加すると、平均剥離強さの増加が導かれたことを示す。
【0118】
しかし、約4:1の溶媒とセルロースの比において溶媒レベルがより高いと、圧力および熱が加えられているときプレス機の端部で高いフラッシング量が観察された。フラッシングは、過剰のセルロースがプレス機から、したがって複合材料から絞り出されることである。したがって、4.5:1を超える比を回避することが好ましい。
【0119】
[実施例5]
テキスタイルのタイプも、複合材料の特性に対して役割を果たす。実施例1による複合材料は、亜麻およびリヨセル(人造セルロースベースのファブリック)を用いて、織ったセルロース材料として得られた。本発明に係る複合材料の有益な特性が達成された。しかし、亜麻ベースの複合材料は、リヨセルファブリックより有意に良好に機能した。結果を以下の表3に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
[実施例6]
テキスタイルのタイプが剥離強さに対して役割を果たすのと同様に、インターリーフ層として使用される材料も役割を果たす。濾紙、Natureflexおよびセルロース粉末をインターリーフとして用いて、実施例1による亜麻複合材料を調製した。異なるインターリーフ層の剥離試験の結果は、図7で確認できる。
【0122】
[実施例7]
様々な材料の広角X線測定(WAXS)を実施した。WAXS測定は、Huberゴニオメーターを使用して、銅Kα線を用い、加速電圧40kVおよび電流30mAで実施した。2θ走査を、5~30℃の値間で各位置において角増分0.2°および計数時間120秒で実施した。バックグラウンド走査は、同じ条件を使用して、位置についている試料なしで実施して、空気散乱などによって検出器に入るいかなるx線も差し引いた。データ収集後に、得られた2θ走査を試験して、どの特徴的なピークが存在しているか(セルロースI、セルロースIIおよび非晶相)を評価し、次いで(Excelソルバーを使用して)データをこれらのピークの組合せと適合させて、どの相がどの画分に存在しているか確定する。試験を行った材料は以下の通りである。
(1)純リネン布
(2)インターリーフを含まない亜麻布
(3)濾紙インターリーフを含む亜麻布
(4)再生セルロースインターリーフ(Natureflex 23 NPフィルム)を含む亜麻布
【0123】
X線測定により、異なる形のセルロースの量を決定することが可能になる。異なるタイプのセルロースの百分率量を以下の表4に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
表4から、濾紙インターリーフまたは再生セルロースフィルムインターリーフの組込みにより、中間層剥離強さが、元の亜麻繊維含有率のわずか23%希釈物で1桁増加することが明らかである(フィルムを使用しない繊維86%およびNature flex 23NPフィルムの場合66%)。したがって、図に示したように、亜麻繊維の材料特性は維持されている。
【0126】
[実施例8]
本発明に係る複合材料のシートを、ハイドロホーミング法によって造形品に形成した。ハイドロホーミング法で利用される装置は、1997年にHouによって提案されたもの(Hou, M., Composites Part A28A (1997) 695-702q1997 Elsevier Science Limited)に基づいており、半球形マッチド金型(または別の所望の形状)および押さえ(またはグリッパー)板からなる。グリッパー板は、複合材料シートが変形されているときしわになるのを止める。
【0127】
ハイドロホーミングするための複合材料シートを水に終夜、またはより好ましくは形成前5分間浸漬しておくことができる。次いで、形成の準備ができているマッチド金型間に入れる。形成は、室温で(次いで、形成されたシートを続いて乾燥する)、またはより好ましくは120℃に設定した温度制御型炉で実施することができ、同じプロセスでシートの形成と乾燥とが行われる。形成は、閉め速度80mm/秒で実施され、負荷が5kNに達すると形成プロセスを止める。次いで、金型を開け、形成された試料を取り出す。
【0128】
ハイドロホーミング法の理解を助けるために、引張試験を(ASTM試験規格D638の下)様々な水吸収レベルで実施した。平行な細片を平坦なACCシートから切り取り、様々な含水率で状態調節した後に室温で試験した。図8に、3つの条件の典型的な引張応力-歪み曲線を示す。乾燥ACCシート、(20℃および50%RHの標準室内状態での正常平衡水吸収である)水吸着6%のACCシート、および水28%を含む試料。
【0129】
結果は、引張特性について、含水率6%のACCシートにはほとんど影響がないが、含水率28%の場合には有意差があることを示している。この最高の含水率では、(応力-歪曲線の初期の勾配によって指定される)剛性が他の含水率の6分の1である。また、破壊前の最大歪みが、含水率28%で100%増加する。
【0130】
形成時に、シートは主に引張応力を受けると考えられる。その結果、高含水率は、(モジュラスによって決定される)耐変形性を6分の1に低減し、また(破壊歪みによって測定される)シートが破断前に伸びることができる量を2倍増加させる。これら2つの特徴により、ACCシートの成形性が大いに改善されることが明らかである。
【0131】
本願の明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という用語ならびにそれらの変形は「これらに限定されないものの、~を含む」という意味であり、他の部分、付加要素、成分、整数またはステップを排除することを意図するものではない(またそれらを排除しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、単数形は、文脈上、別の意味に解釈されない限り、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、本明細書では、文脈上、別の意味に解釈されない限り複数および単数を考慮するものと理解されたい。
【0132】
本発明に係る特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載された特徴、整数、特性、化合物、化学部分若しくは基は、本明細書に記載の他のいかなる態様、実施形態、または実施例と不適合でない限り、これらに適用可能であると理解されたい。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された特徴のすべて、ならびに/または同じように開示されたいずれかの方法もしくはプロセスのステップのすべては、このような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相容れない組合せを除いて、いずれの組合せで組み合わされてもよい。本発明は、前述した何れの実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)で開示した特徴のいずれか新規の1つまたはいずれか新規の組合せ、あるいは同様に開示したいずれかの方法またはプロセスのステップのいずれか新規の1つまたはいずれか新規の組合せにまで及ぶ。
【0133】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時にまたはそれより前に出願され、かつ本明細書とともに公衆の閲覧に付されたすべての文書および文献に向けられ、このような文書および文献のすべての内容は、引用することによりそのすべてが本明細書の一部をなすものとする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】