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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】旋削工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B23B27/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021505766
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(85)【翻訳文提出日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 AT2019060210
(87)【国際公開番号】W WO2020023985
(87)【国際公開日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】GM155/2018
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500005837
【氏名又は名称】セラティチット オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】センツェンベルガー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェントゥリーニ,レムス
(72)【発明者】
【氏名】ゲバール,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046BB07
(57)【要約】
加工機械の工具収容部に接続するクランプ部(2)と、交換可能な切刃インサート(20)を収容するための座部(4)を有する機械加工部(3)とを備えている旋削工具ホルダ(1)を提供する。旋削工具ホルダ(1)には、機械加工部(3)に冷却材を供給するための内部冷却材ガイドが形成されており、内部冷却材ガイドは、少なくとも1つの第1の冷却材入口(5)と、機械加工部(3)の座部(4)の側方に配置された少なくとも1つの第1の冷却材出口(7a)とを有する。第1の冷却材出口(7a)は、座部(4)の側方に配置され機械加工部(3)の表面(8)から延びる孔(10)を有し、この孔(10)には交換可能なノズル本体(30)が挿入され、ノズル本体は孔(10)に挿入されるシャフト領域(31)と、それに対して傾斜して形成され機械加工部(3)の表面(8)に配置されたノズル出口領域(32)とを有する。シャフト領域(31)とそれに対して傾斜したノズル出口領域(32)とを通って内部冷却材チャネル(36)が延びている。シャフト領域(31)は外周面に凹部(37)を有し、この凹部(37)内へ、旋削工具ホルダ(1)内に配置されシャフト領域(31)の長手方向軸(L)に対して横方向に配置されたクランプ要素(16)が係合し、クランプ要素(16)を用いてノズル本体(30)は旋回工具ホルダ(1)に固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機械の工具収容部に接続するためのクランプ部(2)と、
交換可能な切刃インサート(20)を収容するための座部(4)を備えた機械加工部(3)と、
を備えた旋削工具ホルダ(1)にして、
旋削工具ホルダ(1)に機械加工部(3)に冷却材を供給するための内部冷却材ガイドが形成されており、このガイドは、少なくとも1つの第1の冷却材入口(5)と、前記機械加工部(3)上の前記座部(4)の側方に配置された少なくとも1つの第1の冷却材出口(7a)とを有し、
前記第1の冷却材出口(7a)は、前記座部(4)の側方に配置され前記機械加工部(3)の表面(8)から延びる孔(10)を有し、この孔(10)には交換可能なノズル本体(30)が挿入されており、前記ノズル本体(30)は孔(10)に挿入されるシャフト領域(31)と、それに対して傾斜して形成され前記機械加工部(3)の前記表面(8)に配置されたノズル出口領域(32)とを有しており、
前記シャフト領域(31)およびそれに対して傾斜した前記ノズル出口領域(32)を通って、内部冷却材チャネル(36)が延びており、そして、
前記シャフト領域(31)は外周面に凹部(37)を有し、前記凹部(37)内へ前記旋削工具ホルダ(1)内に配置され前記シャフト領域(31)の長手方向軸(L)に対して横方向に配置されたクランプ要素(16)が係合し、前記クランプ要素(16)を用いて前記ノズル本体(30)が旋削工具ホルダ(1)に固定されている、
旋削工具ホルダ。
【請求項2】
前記クランプ要素(16)は前記孔(10)と連通して接続された横孔(14)内に配置されている、請求項1に記載の旋削工具ホルダ。
【請求項3】
前記横孔(14)は、前記クランプ要素(16)の雄ねじと協働する雌ねじを有するねじ付き孔である、請求項2に記載の旋削工具ホルダ。
【請求項4】
前記凹部(37)は前記シャフト領域(31)の周りに延びる環状溝である、請求項1から3のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項5】
前記凹部(37)は、前記シャフト領域(31)の前記長手方向軸(L)に対して斜めに延びるクランプ面(37a)を有し、前記クランプ面(37a)に対し前記クランプ要素(16)の保持面(16a)が楔形に作用することで、前記ノズル本体(30)が前記機械加工部(3)の前記表面(8)に対してクランプされている、請求項1から4のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項6】
前記機械加工部(3)の前記表面(8)に第1の回転防止要素(11)が配置されており、前記第1の回転防止要素(11)は、前記シャフト領域(31)の前記長手方向軸(L)を中心とする前記ノズル本体(30)の回転を防止するために、前記ノズル出口領域(32)の下側の第2の回転防止要素(33)と協働する、請求項1から5の1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項7】
前記第1の回転防止要素(11)は突起であり、前記第2の回転防止要素(33)は前記ノズル出口領域(32)の下側にある凹部である、請求項6に記載の旋削工具ホルダ。
【請求項8】
前記第1の冷却材出口(7a)は、前記ノズル本体(30)から出てくる冷却材噴流が前記座部(4)上に配置された前記切刃インサート(20)のすくい面へ向けられているように、配置されている、請求項1から7のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項9】
前記シャフト領域(31)の外周面と前記孔(10)の内周面との間に環状シール要素(40)が配置されている、請求項1から8のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項10】
前記シール要素(40)は前記凹部(37)の前記ノズル出口領域(32)とは反対側に配置されている、請求項9に記載の旋削工具ホルダ。
【請求項11】
前記表面(8)から延びる孔(10)を有する少なくとも1つの第2の冷却材出口(7b)が、前記機械加工部(3)にて前記座部(4)の側方に、形成されている、請求項1から10のいずれか1つ項に記載の旋削工具ホルダ。
【請求項12】
前記第1の冷却材出口(7a)および前記第2の冷却材出口(7b)は、前記ノズル本体(30)が選択的に前記第1の冷却材出口(7a)の前記孔(10)内または前記第2の冷却材出口(7b)の前記孔(10)内に挿入可能であるように、形成されている、請求項11に記載の旋削工具ホルダ。
【請求項13】
前記ノズル本体(30)に形成された前記冷却材チャネル(36)は急激な断面変化のないものである、請求項1から12のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項14】
前記冷却材チャネル(36)は前記ノズル本体(30)を通って空間的に湾曲して延びる、請求項1から13のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項15】
前記ノズル本体(30)は前記旋削工具ホルダ(1)の残りの部分とは異なる材料から形成されている、請求項1から14のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1つに記載の旋削工具ホルダ(1)と、前記孔を液密に閉鎖するために前記ノズル本体(30)の代わりに前記孔(10)内に挿入可能である少なくとも1つのブラインドプラグ(50)と、を備える、旋削工具システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は旋削工具ホルダ、およびこのような旋削工具ホルダを備えた旋削工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作物を切削機械加工する場合様々な方法が使用されるが、そのうち旋削による機械加工が最も商業的に重要なものである。特に金属材料を切削する場合、ますます複雑な機械加工作業およびより高い機械加工速度に向かう傾向が観察され、それに伴い使用される旋削工具の冷却に対する要求が増大している。さらに、切削加工がより困難な材料がますます増えており、これらも同様に旋削工具の冷却に対するより高い要求を課している。
【0003】
旋削機械加工では、切削される材料と係合する切刃が特に硬く耐摩耗性の材料、例えば特に硬質金属(超硬合金)、サーメット、または切削セラミックで作られた交換可能な切刃インサートで実現される旋削工具がしばしば使用され、この切刃インサートは鋼などのより強靭な材料で作られた旋削工具ホルダ上の座部に取り付けられる。冷却材が旋削工具とは別個に形成された冷却材ホースおよびノズルを介して切刃の領域に供給されるようにした長い間確立された技術に加えて、ここ数年は、旋削工具ホルダの内部を通って延びる少なくとも1つの冷却材チャネルを有する内部冷却材ガイドが実装される旋削工具がますます使用されてきている。この明細書においてノズルという用語は、方向付けられた噴射の噴出を可能とする構造を意味するものであるが、この構造は必ずしも集束させるまたは流速を増加させる構成を有する必要はない。
【0004】
旋削工具ホルダ内に内部冷却材ガイドを実現する場合、実際には、冷却材がそこから切刃の領域に向けて流出するノズルが、旋削機械加工中に発生する切屑により激しい摩耗にさらされるという問題がしばしば生じる。特に種々の旋削機械加工に使用されるかまたは種々の運転パラメータの下で使用される旋削工具ホルダの場合、ノズルが旋削機械加工中に生成される切屑の妨げのない排出を妨げるという問題がしばしば生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、製造が安価であり、切刃の領域へ狙いを定めた冷却材供給を可能にし、旋削機械加工時の条件に対して堅牢且つ敏感でない、また、好ましくはいわゆる最小量潤滑(MQL)をも可能にする、旋削工具ホルダおよび旋削工具システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の旋削工具ホルダによって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
旋削工具ホルダは、加工機械の工具収容部に接続するためのクランプ部と、交換可能な切刃インサートを受け入れるための座部を備える機械加工部と、を有する。旋削工具ホルダには、機械加工部に冷却材を供給するための内部冷却材ガイドが形成されており、この内部冷却材ガイドは、少なくとも1つの第1の冷却材入口と、座部の側部で機械加工部に配置された少なくとも1つの第1の冷却材出口とを有する。冷却材出口は座部の側部に配置され機械加工部の表面から延びる孔を有し、この孔には交換可能なノズル本体が挿入されており、このノズル本体は、孔内に挿入されたシャフト領域と、これに対して傾斜して形成され、機械加工部の表面上に配置されたノズル出口領域とを、有する。シャフト領域とそれに対して傾斜したノズル出口領域とを通って、内部冷却材チャネルが延びている。シャフト領域は外周面に凹部を有し、この凹部内には、旋削工具ホルダ内に配置されシャフト領域の長手方向軸に対して横方向に配置されたクランプ要素が係合し、このクランプ要素によりノズル本体が旋削工具ホルダに取り付けられている。
【0008】
ノズル本体は交換可能に構成されているので、このノズル本体は摩耗時に簡単かつ安価に交換され得る。ノズル本体が具体的に意図された旋削加工中に空間的に邪魔になるような場合には、ノズル本体はさらに取り外され、必要であればブラインドプラグによって置き換えることができる。内部冷却材チャネルは、好ましくは一体的もしくはモノリシックに形成され得るシャフト部およびこのシャフト部に対して角度を付けられたノズル出口領域を通って延びているので、特にコンパクトな形態が可能になる。さらにこのようにして流れ断面を大きく変化させることなく、内部冷却材チャネルを形成することができるので、冷却材の望ましくない圧力降下および望ましくない分離を回避することができる。ノズル本体は旋削工具ホルダ内に配置されシャフト部の長手方向軸線に対して横方向に延びるクランプ要素を介して機械加工部に取り付けられるので、固定機構は切屑に対しても使用される冷却材に対しても良好に保護されている。例えばシャフト部が孔内の雌ねじと直接相互作用する雄ねじを有する実施形態と比較すると、ノズル本体の固定は非常に迅速に行うことができ、ノズル本体の機械加工部の表面から突出する部分は、ねじ回し工具用の煩わしい係合面を設ける必要がない。
【0009】
一実施形態によれば、クランプ要素は孔と連通して接続された横孔内に配置されている。この場合、固定機構の特に良好に保護されておりまたコンパクトな配置が実現されている。横孔は、例えば特に孔に対して基本的に垂直に延びていてもよい。
【0010】
一実施形態によれば、横孔はクランプ要素上の雄ねじと相互作用する雌ねじを備えるねじ孔である。この場合には、ノズル本体を機械加工部に特に迅速かつ確実に固定することができる。締め付け要素がグラブねじ(すなわち横方向に突出するねじ頭部のないねじ)として形成される場合、固定機構は特にコンパクトに実現される。
【0011】
一実施形態によれば、凹部はシャフト領域の周りを環状に取り囲む溝である。この場合には、凹部はノズル本体の製造中に旋削機械加工することによって特に簡単にかつ費用効果の高い方法で製造され得る。
【0012】
一実施形態によれば、凹部はシャフト領域の長手方向軸に対して斜めに延びるクランプ面を有し、このクランプ面にクランプ要素の保持面が楔形に作用するので、ノズル本体が機械加工部の表面に対してクランプされている。この場合には、ノズル本体は、傾斜面の原理を使用して特に確実に機械加工部に固定され、取り付け機構は製造公差に非常に鈍感である。クランプ面は、特に好ましくはシャフト部の長手方向軸に対して20°~70°、好ましくは35°~55°の角度にすることができる。
【0013】
一実施態様によれば、第1の回転防止要素が機械加工部の表面上に配置され、これは、シャフト領域の長手方向軸の周りのノズル本体の回転を防止するために、ノズル出口領域の下側の第2の回転防止要素と協働する。この場合には、流出する冷却材噴流が切刃インサートの意図された領域に確実に向けられていることが、特に簡単にかつ安価な方法で、保証されている。
【0014】
第1の回転防止要素が突起であり又第2の回転防止要素がノズル出口領域の下側の凹部である場合、回転防止機構も特に簡単かつ安価な製造が可能になる。特に第2の回転防止要素は、機械加工部の表面から延びる別の孔に配置されているピンによって形成されていてもよい、これにより旋削工具ホルダの特に迅速かつ安価な製造が可能になる。ピンは、例えば単に別の孔に押し込まれていてもよいまたはこの別の孔の雌ねじと相互作用する雄ねじを備えつけられてもよい。
【0015】
一実施形態によれば、冷却材出口は、ノズル本体から出る冷却材噴流が座部に配置された切刃インサートのすくい面に向けられているように、配置されている。この場合には、旋削工具ホルダと、工作物の機械加工された表面の、特に効率的な冷却が得られる。
【0016】
一実施形態によれば、環状シール要素がシャフト領域の外周面と孔の内周面との間に配置されている。この場合には、冷却材の望ましくない横方向の漏れが確実に防止され、シール要素が損傷から確実に保護されている。シール要素は、例えば円周溝内に配置されたOリングによって形成されていてもよい。シール要素がノズル出口領域とは離背する凹部面に配置されている場合、ノズル本体のための固定機構はシール要素によっても汚染からおよび冷却材との接触から確実に保護されている。
【0017】
一実施形態によれば、機械加工部に座部の側方で、表面から延びる孔を有する少なくとも1つの第2の冷却材出口が、形成されている。第2の冷却材出口は好ましくは第1の冷却材出口とほぼ同一に形成されていてもよい。第2の冷却材出口を設けることによって、切刃の特に効率的な冷却が、2つの冷却材噴流が切屑面側に供給されることにより、行われ得る。さらに第2の冷却材出口は、例えば第1の冷却材出口の代わりに、第2の冷却材出口およびそこに配置されたノズル本体を介してのみ、冷却材噴流が切刃の領域に供給されることを可能にする。この場合には、例えば第1の冷却材出口の孔はブラインドプラグによって閉鎖され得る。これは、第1の冷却材出口の孔内のノズル本体の配置が切屑の排出を妨げるかもしれない場合、または、別の形で旋削機械加工を空間的に妨げるかもしれない場合に、特に有利であり得る。
【0018】
好ましくは第1の冷却材出口および第2の冷却材出口は、ノズル本体が選択的に第1の冷却材出口の孔内へまたは第2の冷却材出口の孔内へはめ込み可能であるように、形成されている。この場合には、第1の冷却材出口でも、また同様に第2の冷却材出口でも同様のノズル本体を使用することができ、場合によっては同一のブラインドプラグを第1の冷却材出口の孔または第2の冷却材出口の孔のいずれかを閉じるために使用することができる。
【0019】
一実施形態によれば、ノズル本体に形成された冷却材チャネルには、急激な断面変化がない。この場合には、ノズル本体にわたる冷却材の強い圧力降下が確実に防止されており、冷却材噴流を切刃の領域に高圧で供給することができる。さらに冷却材の望ましくない分離を防止することができ、これは特にいわゆる最小量潤滑(MQL)の場合に格別に有利である。
【0020】
一実施形態によれば、冷却材チャネルは空間的に湾曲した態様でノズル本体を通って延びる。この場合冷却材チャネルは、特には円弧状で、方向を急激に変化させることなく、ノズル本体を通って延びることができる。この場合には、望ましくない高い圧力降下および冷却材の分離の危険性が格別に確実に回避される。
【0021】
一実施形態によれば、ノズル本体は旋削工具ホルダの残りの部分とは異なる材料から作られている。好ましくは、ノズル本体は、硬質金属(超硬合金)などのより硬くより耐摩耗性の材料から形成されていてもよい。この場合には、ノズル本体は例えば流出する切屑と接触した場合であっても急速には摩耗しないことが達成される。
【0022】
本発明の課題は、請求項16に記載の旋削工具システムによっても解決される。
【0023】
旋削工具システムは、上述の旋削工具ホルダと、少なくとも1つのブラインドプラグとを有しており、当該ブラインドプラグは孔を液密に閉鎖するためにノズル本体の代わりに孔内に挿入可能である。追加のブラインドプラグを設けることによって第1の冷却材出口を確実に閉じることができ、追加のブラインドプラグが設けられているケースでは、第1の冷却材出口の孔内のノズル本体の配置が意図された旋削加工を妨げるかもしれない場合には、その代わりに異なる冷却材出口を使用することができる。
【0024】
本発明のさらなる利点および合目的的性は、添付の図面を参照した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】取り付けられたノズル本体および取り付けられたブラインドプラグを有する実施形態による旋削工具ホルダの概略的な斜視図を示す。
図2図1の旋削工具ホルダの機械加工部の概略的な側面図を示す。
図3】ノズル本体の概略的な斜視図を示す。
図4】ノズル本体の概略的な側面図を示す。
図5図1の旋削工具ホルダの機械加工部の概略的な平面図を示す。
図6図5のC-C線に沿った断面の拡大詳細図を示す。
図7】ブラインドプラグの概略的な斜視図を示す。
図8】シール要素のないブラインドプラグの概略的な側面図を示す。
図9図5のB-B線に沿った断面の拡大詳細図を示す。
図10図5のブラインドプラグを通るD-D線に沿った断面の拡大詳細図を示す。
図11】2つの取り付けられたノズル本体を有する旋削工具ホルダの概略的な斜視図を示す。
図12】ノズル本体もブラインドプラグも有さない旋削工具ホルダの概略的な平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図1から図12を参照して旋削工具ホルダ1の一実施形態について説明する。具体的に示された例では、旋削工具ホルダ1はいわゆるモノブロックホルダとして形成されているが、旋削工具ホルダ1は他の形態を取ることもできることに留意されたい。
【0027】
旋削工具ホルダ1は、加工機械の工具収容部にはめ込むためのクランプ部2と、このクランプ部2と一体にまたはモノリシックに形成された機械加工部3とを有し、この機械加工部には交換可能な切刃インサート20を収容するための座部4が形成されている。旋削工具ホルダ1は、例えば鋼又は比較的強靭な硬質金属から形成することができる。この具体例では、切刃インサート20が固定ねじ21を介して座部4に固定されているように、座部4が形成されている実施例を示すが、例えばクランプ等を介しての固定のような他の従来の構成も可能である。
【0028】
切削される材料と係合する切刃22は、それ自体は公知の方法で切刃インサート20に形成されている。切刃インサート20は硬質で耐摩耗性の材料から製造されており、特に硬質金属(超硬合金)、サーメットまたは切刃セラミックから形成さえていてもよい。切刃インサート20は、特に順次使用可能な複数の刃領域を有する付け刃プレートとして形成されていてもよい。
【0029】
旋削工具ホルダ1は内部冷却材ガイドを有しており、これは旋削工具ホルダ1の内部を通って機械加工部3に冷却材を供給するように構成されている。内部冷却材ガイドは少なくとも1つの第1の冷却材入口5を有し、これを介して冷却材を内部冷却材ガイドに供給することができる。図示の実施形態では、クランプ部2の端面に形成された1つの冷却材入口5のみが示されているが、旋削工具ホルダ1は好ましくは、複数の代替的に使用可能な冷却材入口5を有している、これらの冷却材入口5はそれぞれ内部冷却材ガイドに連通して接続されている。その都度実際には必要とされない冷却材入口は、第1の冷却材入口5について図1に例示されているように、閉鎖要素6で閉鎖され得る。
【0030】
特に図11および図12に見られるように、具体的に示された例においては、旋削工具ホルダ1は、第1の冷却材出口7aおよび第2の冷却材出口7bを有し、その各々は、機械加工部3の上面8にて座部4の側方に配置されている。この実施形態では、第1の冷却材出口7aも、また同様に第2の冷却材出口7bも、交換可能な切刃インサート20のすくい面に冷却材を供給するように、形成されている。
【0031】
特に図1図2及び図11に見られるように、この実施形態では更に第3の冷却材出口9も形成されており、この第3の冷却材出口9も同様に内部冷却材ガイドと流体接続状態にあり、また、この第3の冷却材出口9を介して冷却材は切刃インサート20の逃げ面に供給され得る。
【0032】
第1の冷却材出口7aおよび第2の冷却材出口7bは、それらの空間位置は別とし、互いにほぼ同一に形成されているので、以下には第1の冷却材出口7aのみを詳細に説明するが、この説明は第2の冷却材出口7bにも等しく適用される。
【0033】
第1の冷却材出口7aは孔10を有し、この孔10は機械加工部3の表面8から旋削工具ホルダ1の材料内に延びており、また、内部冷却材ガイドを介して第1の冷却材入口5および場合によっては第2の冷却材入口(存在する場合)と流体接続状態にある。この実施形態では、孔10は円筒形の孔として形成されており、その長手方向軸線は表面8に対して垂直に延びている。この実施形態では孔10は、特に、滑らかな内壁を備えている。
【0034】
特に図6図9および図11に見られるように、第1の冷却材出口7aの孔10には以下に詳細に説明する交換可能なノズル本体30が挿入されている。ノズル本体30は、好ましくは旋削工具ホルダの残りの部分とは異なる材料から形成されていてもよく、特にはより硬くより耐摩耗性のある材料から形成されていてもよい。例えばノズル本体30は硬質金属から形成されていてもよい。この場合には、このノズル本体は特に流出する切屑によって引き起こされる摩耗に対して耐久性がある。ノズル本体30は図3および図4にも個別に示されている。ノズル本体30は、一体的に又はモノリシックに形成されており、また、孔10内に挿入できるように形成されたシャフト領域31と、それに対して角度をつけて形成されたノズル出口領域32とを有している。シャフト領域31は、図4に概略的に示されている長手方向軸線Lに対して回転対称であるように形成されている。具体的に図示された実施形態では、シャフト領域の外周に環状円周凹部が形成されており、この環状円周凹部内に環状シール要素40が配置されている。図示の実施形態では、環状シール要素40はゴム製のOリングとして実施されている。シャフト領域31および環状シール要素40は、シャフト領域31が孔10内に挿入され得て又その場合に環状シール要素40がシャフト領域31の外周面と孔10の内周面との間を密閉するように配置されるように、寸法決めされる。このようにして環状シール要素40は、シャフト領域31の外周面と孔10の内周面との間の冷却材の望ましくない漏出を防止する。
【0035】
ノズル本体30の曲げられたノズル出口領域32は、シャフト領域31が孔10に挿入されている場合に、ノズル出口領域32の下側が機械加工部3の表面8上に当接するように位置合わせされている。ノズル本体30をその位置合わせ状態に固定するために、また、長手方向軸線Lの周りでのノズル本体30の回転を防止するために、第1の回転防止要素11が機械加工部3の表面8に配置されており、この要素は、ノズル出口領域32の下側に配置されている第2の回転防止要素33と、相互作用する。図面に示される実施形態では、特に図9に見られるように、第2の回転防止要素33は、ノズル出口領域32の下側の凹部として形成されており、第1の回転防止要素11はこれに係合する突起として形成されている。これは特に単純かつ安価な方法で実施することができる。しかしながら、第1の回転防止要素11が凹部として形成され、第2の回転防止要素33が突起として形成されている逆の構成も可能である。図示の例では第1の回転防止要素11は、機械加工部3の表面8から延びる孔13内に挿入されているピン12によって形成されており、これにより特に安価な実施が可能になる。ピン12は、例えば滑らかな内壁の孔13に押し込まれていてもよい、又は、ピン12は孔13内の対応する雌ねじと相互作用する雄ねじを備えていてもよい。
【0036】
ノズル本体30は、ノズル出口領域32に冷却材噴射流のための出口開口35を有しており、この出口開口35は、第1の回転防止要素11と第2の回転防止要素33との相互作用を介して、冷却材噴射流が座部4に配置された切刃インサート20のすくい面に向けられているように、位置合わせされている。特に図6および図9に見られるように、内部冷却材チャネル36はシャフト領域31およびそれに角度を付けられたノズル出口領域32を通って延び、内部冷却材チャネル36は内部冷却材ガイドから出口開口部35へ冷却材を導くように形成されている。内部冷却材チャネル36は空間的に湾曲した態様でノズル本体30を通って延び、断面の急激な変化がなく、その結果冷却材はノズル本体30内で穏やかに出口開口部35の方向へ導かれる。シャフト領域31において内部冷却材チャネル36は、長手方向軸線Lに対してほぼ平行かつ同軸に延びている。
【0037】
孔10内へのノズル本体30の固定は、図3図4及び図6を参照して以下により詳細に説明される。
【0038】
図3および図4から分かるように、ノズル本体30のシャフト領域31には凹部37が設けられている。この実施例では、凹部37は、シャフト領域31の周りに延びる環状溝として、形成されている。図示の例では、溝は、特に長手方向軸線Lと同軸に、環状に取り巻いており、これにより格別に簡単で安価な製造が可能になる。凹部37はまた、図4および図6に見られるように、ほぼ台形の断面輪郭を有する。特に図6から分かるように、旋削工具ホルダ1の機械加工部3には、孔10と連通して接続された横孔14が形成されている。横孔14は、孔10に対して横方向に、従ってシャフト領域31の長手方向軸線Lに対しても横方向に、延びている。特に横孔14は、長手方向軸線Lに対して垂直に延びることができる。この実施例では横孔14は雌ねじを有するねじ付き孔として形成され、機械加工部3の側面まで延びている。
【0039】
横孔14内にはクランプ要素16が配置されており、このクランプ要素16は、ノズル本体30を機械加工部3に固定するために、シャフト領域31の凹部37に係合するように形成されている。クランプ要素16には、横孔14内の雌ねじと相互作用する雄ねじが設けられている。孔10とは反対側のクランプ要素16の側部にはねじ込み工具用の係合構造が設けられており、この係合構造を介して、機械加工部3の側面から横孔内に挿入されるねじ込み工具を用いて、クランプ要素16を作動させることができる。係合構造は、例えばスリットねじ回しのためのスリットとして、交差スリットとして、六角形ソケット等として、形成されていてもよい。具体的に図示された実施形態では、クランプ要素16はグラブねじとして形成されている。
【0040】
図6に見られるように、ノズル本体30のシャフト領域31にある凹部37は、シャフト領域31の長手方向軸線Lに対して斜めに延びるクランプ面37aを有しており、このクランプ面37aは凹部37の台形断面プロファイルによってもたらされている。この場合クランプ面37aは、以下のように斜めに調整されている、すなわち、クランプ面37aがノズル出口領域32からの距離が増大するにつれて長手方向軸線Lから離れ、シャフト領域31の外周はノズル出口領域32からの距離が増大するにつれて広がるように、斜めに調整されている。孔10に面するクランプ要素16の端面は、側方で傾斜又は面取りされており、その結果、長手方向軸線Lに対して同様に斜めに延びる保持面16aが形成されている。このようにしてクランプ要素16の外周は、孔10の方向にテーパ状になっている。シャフト領域31上の凹部37の位置及び横孔14の位置は、互いに以下のように調整されている、すなわち、クランプ要素16の保持面16aが傾斜面の原理に従って、クランプ要素16が横孔14にねじ込まれた場合にノズル本体30が孔10内へ引き込まれるように、凹部37のクランプ面37aに楔形に作用するように調整されている。このようにして、ノズル本体30は機械加工部3の表面8に対してクランプされ、それによって第1の回転防止要素11および第2の回転防止要素33もまた形状固定的な係合状態に保持される。
【0041】
凹部37はノズル出口領域32と環状シール要素40との間のシャフト領域31上に配置されており、その結果クランプ要素16と凹部37とによって形成されるクランプ機構は、冷却材から保護されて配置されている。
【0042】
第2の冷却材出口7bは、第1の冷却材出口7aに対応して実施されている。すなわち同様に、孔10とクランプ要素16を備えた横孔14とが設けられ、機械加工部3の表面8には第1の回転防止要素11も設けられている。
【0043】
第1の冷却材出口7aおよび第2の冷却材出口7bの対応する設計により、ノズル本体30は、選択的に第1の冷却材出口7aの孔10内にまたは第2の冷却材出口7bの孔10内に、挿入され得る。更に、例えば図11に示すように、第1の冷却材出口7aの孔10内へもまた同様に第2の冷却材出口7bの孔10内へもそれぞれにノズル本体30を挿入することも可能である。1つのノズル本体30のみが使用される場合、これは例えば第1の冷却材出口7aの孔10内または第2の冷却材出口7bの孔10内のノズル本体30の配置が旋削機械加工中に空間的な障害として作用するかもしれないような場合であり得るが、第1の冷却材出口7aの孔10または第2の冷却材出口7bの孔10は、以下に説明するブラインドプラグ50で閉鎖され得る。図1図2図5および図10はそれぞれ、第2の冷却材出口7bがブラインドプラグ50によって液密に閉鎖されている状態を示している。
【0044】
第1の冷却材出口7aも第2の冷却材出口7bも使用しない場合には、両者をそれぞれのブラインドプラグ50で閉鎖することもできる。
【0045】
ブラインドプラグ50は、図8では環状シール要素40のない側面図で示され、図7では環状シール要素40が配置された斜視図で示されている。ブラインドプラグ50はシャフト領域51を有し、その外周面は、図7および図8に見られるように、ノズル本体30のシャフト領域31と基本的に同一である。図10では、簡略化のために、環状シール要素40は示されていない。ブラインドプラグのシャフト領域51はクランプ面37aを有する凹部37と環状シール要素40が収容される円周凹部とを有する。ノズル本体30のノズル出口領域32の代わりに、ブラインドプラグ50は平坦なカバー領域52を有し、このカバー領域52は孔10よりもわずかに大きい断面を有し、シャフト部分51が孔10内に受容されている場合に、このカバー領域52が機械加工部3の表面8からあまり突出しないように平坦に形成されている。
【0046】
ブラインドプラグ50のシャフト領域51がノズル本体30のシャフト領域31と基本的に同一の構成であるため、ブラインドプラグ50は、ノズル本体30について前述したように、第1の冷却材出口7aの孔10内および第2の冷却材出口7bの孔にクランプ要素16を用いて同じ方法で固定することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 旋削工具ホルダ
2 クランプ部
3 機械加工部
4 座部
5 冷却材入口
6 閉鎖要素
7 冷却材出口
8 機械加工部の表面
9 冷却材出口
10 孔
11 回転防止要素
12 ピン
13 孔
14 横孔
16 クランプ要素
20 切刃インサート
22 切刃
30 ノズル本体
31 シャフト領域
32 ノズル出口領域
36 冷却材チャネル
37 凹部
40 シール要素
50 ブラインドプラグ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】