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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】電池システム内の静電容量の低減
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6551 20140101AFI20220104BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20220104BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220104BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220104BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220104BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20220104BHJP
【FI】
H01M10/6551
H01M50/211
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/658
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021507578
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(85)【翻訳文提出日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 US2018049375
(87)【国際公開番号】W WO2020036612
(87)【国際公開日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】16/102,315
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520504231
【氏名又は名称】ウィスク アエロ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メラック、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ムニズ、トーマス、ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ムルティー、ニハル
(72)【発明者】
【氏名】ラウ、サンプソン
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK01
5H031KK02
5H040AA28
5H040AT04
5H040AY05
5H040CC20
(57)【要約】
電池システムは、電池セルと、断熱層と、フィンを含む熱伝導層とを備える。フィンは、電池セル、断熱層、および熱伝導層を取り囲むケースの内面を押す。熱伝導層は不連続部を含み、不連続部は、熱伝導層が不連続部を含まない場合と比較して、熱伝導層に関連する静電容量を低減するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、
断熱層と、
フィンを有する熱伝導層と
を備え、
前記フィンは、前記電池セル、前記断熱層、および前記熱伝導層を取り囲むケースの内面を押すように構成され、
前記熱伝導層は不連続部を含み、前記不連続部は、前記熱伝導層が前記不連続部を含まない場合と比較して、前記熱伝導層に関連する静電容量を低減するように構成される、システム。
【請求項2】
前記熱伝導層は、前記フィンと、前記電池セルに接触している部分とを含む複数の平面部分を含み、
前記電池セルに接触している部分に、前記不連続部が含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱伝導層は、前記フィンと、前記電池セルと接触している部分とを含む複数の平面部分を含み、
前記フィンに、前記不連続部が含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記熱伝導層は、左フィンと、右フィンと、前記電池セルと接触している部分とを含む複数の平面部分を含み、
前記電池セルと接触している部分に、前記不連続部が含まれ、
前記不連続部は、前記左フィンの方を指す第1の遠位端と、前記右フィンの方を指す第2の遠位端とを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、熱伝導率の変化が20%以内になるように熱伝導率を実質的に減少させない絶縁体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、前記ケースの前記内面を陽極酸化することによって形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、前記フィンと前記ケースとの間に絶縁材料の層を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、少なくとも前記フィンの先端に堆積された絶縁材料の層を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、少なくとも前記フィンの先端を陽極酸化することによって形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記電池セルと、前記断熱層と、前記熱伝導層とを含む、第1の電池サブモジュールと、
第2の電池セルと、第2の断熱層と、第2の熱伝導層とを含む、第2の電池サブモジュールと、
前記第1の電池サブモジュールおよび前記第2の電池サブモジュールを保持するように構成されたフレームであって、前記フレームは、前記第1の電池サブモジュールと前記第2の電池サブモジュールとの間の電気的絶縁性を増加させるように構成された絶縁部分を含む、フレームとをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
電池セルを提供するステップと、
断熱層を提供するステップと、
フィンを含む熱伝導層を提供するステップと
を含み、
前記フィンは、前記電池セル、前記断熱層、および前記熱伝導層を取り囲むケースの内面を押すように構成され、
前記熱伝導層は不連続部を含み、前記不連続部は、前記熱伝導層が前記不連続部を含まない場合と比較して、前記熱伝導層に関連する静電容量を低減するように構成される、方法。
【請求項13】
前記熱伝導層は、前記フィンと、前記電池セルと接触している部分とを含む複数の平面部分を含み、
前記電池セルと接触している前記部分には、前記不連続部が含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熱伝導層は、前記フィンと、前記電池セルと接触している部分とを含む複数の平面部分を含み、
前記フィンには、前記不連続部が含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記熱伝導層は、左フィンと、右フィンと、前記電池セルと接触している部分とを含む複数の平面部分を含み、
前記電池セルと接触している部分に、前記不連続部が含まれ、
前記不連続部は、前記左フィンの方を指す第1の遠位端と、前記右フィンの方を指す第2の遠位端とを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、熱伝導率の変化が20%以内になるように熱伝導率を実質的に減少させない絶縁体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、前記ケースの前記内面を陽極酸化することによって形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、前記フィンと前記ケースとの間に絶縁材料の層を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、少なくとも前記フィンの先端に堆積された絶縁材料の層を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記フィンおよび前記ケースを含む経路は、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含み、
電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない前記絶縁体は、少なくとも前記フィンの先端を陽極酸化することによって形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記電池セルと、前記断熱層と、前記熱伝導層とを含む、第1の電池サブモジュールと、
第2の電池セルと、第2の断熱層と、第2の熱伝導層とを含む、第2の電池サブモジュールと、
前記第1の電池サブモジュールおよび前記第2の電池サブモジュールを保持するように構成されたフレームであって、前記フレームは、前記第1の電池サブモジュールと前記第2の電池サブモジュールとの間の電気的絶縁性を増加させるように構成された絶縁部分を含む、フレームとをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかのタイプの電池は、密閉された蓋を備えたケースに封入されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
この構成は、ケースの内側からの熱の除去を困難にする。一部のタイプの(電池)セルは、故障すると大量の熱を放出する可能性があり、この熱によって近くのセルが故障し、熱暴走が発生する可能性があるため、熱の除去は電池設計の重要な側面である。これに対処するために、セル間に散在する(例えば、熱を引き出すための)熱伝導体の層を含む新しいタイプの電池システムが開発されている。しかしながら、一部の構成要素および/またはそれらの構成要素の構成は新しいため、意図しない望ましくない副作用が存在する。そのような意図しない望ましくない副作用を軽減するための技術および/または構成要素が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の様々な実施形態は、以下の詳細な説明および添付の図面に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。
図1B】ケースの内容物を圧縮するケースを含む、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の斜視図である。
図2A】電池サブモジュールのフィンとタブ間の静電容量の一実施形態を示す図である。
図2B】より小さな静電容量を組み合わせることによって生成される総静電容量の一実施形態を示す図である。
図3A】円形の不連続部を有する熱伝導層の一実施形態を示す図である。
図3B】電池セルと接触する部分に長方形の不連続部を有する熱伝導層の一実施形態を示す図である。
図4】静電容量が低減された電池サブモジュールを提供するプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。
図5A】ケースの内面が電気的絶縁面を作成するために陽極酸化されている電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。
図5B】電気的絶縁層がケースとフィン間に配置されている電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。
図5C】フィンの先端が電気的に絶縁されるように処理されている電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。
図6】複数の電池サブモジュールを保持するために使用されるフレームの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、プロセス、装置、システム、物質の組成、コンピュータ可読記憶媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品、および/またはプロセッサに結合されたメモリに格納されたおよび/またはメモリによって提供された命
令を実行するように構成されたプロセッサなどのプロセッサとして多くの方法で具体化することができる。本明細書では、これらの具体例、または本発明がとり得る他の任意の形態は、技術と呼ばれ得る。一般的に、開示されたプロセスのステップの順序は、本発明の範囲内で変更することができる。特に明記しない限り、タスクを実行するように構成されていると説明されるプロセッサまたはメモリなどの構成要素は、所与の時間にタスクを実行するように一時的に構成される一般的な構成要素、またはタスクを実行するように製造される特定の構成要素として実施され得る。本明細書で使用される場合、「プロセッサ」という用語は、コンピュータプログラム命令などのデータを処理するように構成された1つまたは複数のデバイス、回路、および/または処理コアを指す。
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明が、本発明の原理を説明する添付の図と共に以下に提供される。本発明は、そのような実施形態に関連して説明されるが、本発明は、任意の実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は、多数の代替物、修正、および均等物を包含する。本発明の完全な理解を提供するために、以下の説明には多くの特定の詳細が記載されている。これらの詳細は、例示の目的で提供されており、本発明は、これらの特定の詳細の一部または全部がなくても、特許請求の範囲に従って実施することができる。明確にするために、本発明に関連する技術分野で知られている技術資料は、本発明が不必要に不明瞭にならないように、詳細には説明されていない。
【0006】
より良い(例えば、より低い)静電容量を有する電池サブモジュール(またはより一般的にはシステム)の様々な実施形態が本明細書に記載されている。例えば、このような静電容量は、電池サブモジュール内の層の特定の組み合わせまたは構成に起因する意図的なものではない可能性がある。これらの静電容量は、(例えば、負荷に電力が供給されているとき)電池サブモジュールの電気的性能に悪影響を及ぼす、および/または電荷を蓄える可能性があり、それがその後、電池を取り扱う誰かに放電されてその人を傷つける可能性があるため、望ましくない。
【0007】
いくつかの実施形態では、システム(例えば、電池サブモジュール)は、電池セル(例えば、ポーチセル)、断熱層(例えば、エアロゲルの層)、および(例えば、アルミニウム箔)フィンを含む(例えば、他のセルから熱を引き出して遠ざけるための)熱伝導層を含み、フィンは、電池セル、断熱層、および熱伝導層を取り囲むケースの内面を押すように構成され、熱伝導層は不連続部を含み、不連続部は、熱伝導層が不連続部を含まない場合と比較して、熱伝導層に関連する静電容量を低減するように構成される。以下でより詳細に説明するように、(例えば、近くの電池セルが過熱して故障するのを防ぐために故障した電池セルから熱を引き出すようにも設計されている)熱伝導層は、意図せずに静電容量を作成し、この静電容量を低減させるために、1つまたは複数の不連続部(例えば、穴、開口、開口部、切り欠きなど)が熱伝導層内に作成され、意図せずに作成された静電容量が減少する。
【0008】
まず、上記の構成要素を示すことが役立つ可能性がある。次の図は、電池セル、断熱層、および熱伝導層を含む、電池サブモジュールの積み重ねられた(例えば、層状の)内容物を示している。
【0009】
図1Aは、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。分かりやすく読みやすくするために、この図では、積み重ねられた内容物を取り囲んで圧縮するケースは示していない。この例では、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物は、両側にフィンを備えた熱伝導層(100)を含む繰り返しパターンを含む。ここに示すように、熱伝導層は、3つの平面部分:左フィン、右フィン、および電池セル(102)と接触している部分を含む。
【0010】
熱伝導層(100)の目的は、その熱伝導層と接触している電池セル(102)のためのヒートシンクとして機能することである。(例えば、通常の動作中および/または壊滅的な故障中に)電池セルによって生成された熱を、積み重ねられた層の内部から外部に取り除くことにより、これは近くの電池セルが過熱して故障する可能性を防ぐ。
【0011】
構造的に、フィンは曲げることができ、ばねのように機能し、圧力が加えられると押し戻される。これにより、フィンの周囲にいくらかの(例えば、空気の)ギャップおよび/またはこの距離の変動がある場合でも、熱伝導層が(例えば、フィンを介して)ケース(図示せず)の内面と接触することが可能になる。例えば、層の縁部が完全には揃っていない、および/または層が異なる幅を有する場合でも、熱伝導層は依然としてケースの内面と接触することができる。熱伝導層は、フィンがケースの壁に接触しているときに熱を伝導しやすくなる(例えば、介在する材料または物質を介しても可能である)ため、フィンをバネのように機能させることで、フィンが常にケースに接触し、図示の積み重ねられた内容物の内部から熱をより良く引き出すことができることが確実になる。いくつかの実施形態では、金属は良好な熱伝導体であり、フィンがばねのように機能することも可能にするため、熱伝導層は金属(例えば、1235シリーズのAl)でできている。
【0012】
この例のパターンの次の層は電池セル(102)である。この例では、電池セルはポーチセルである。ポーチセルは、圧力(例えば、約3~5PSI)が加えられると性能が向上する。より具体的には、ポーチセルのサイクル寿命は、ポーチセルに圧力を加えることによって延長することができる。このため、ここに示されている積み重ねられた層は、金属ケース(図示せず)を使用して圧縮されている。
【0013】
次の層は断熱層(104)であり、本明細書ではより簡単に断熱材と呼ばれることもある。この例では、(ここに示されるすべての層と同様の)断熱材が圧縮されるため、断熱材は、圧縮された缶からの予想される圧力に(例えば、崩壊することなく)耐えることができる材料で構成される。例えば、対象の測定量として材料のばね定数を使用する場合、断熱材のばね定数は無視できないものにする必要がある。いくつかの実施形態では、断熱材は、良好な断熱材であり、無視できないばね定数を有するエアロゲルでできている。
【0014】
熱的に、断熱材の層は、熱が1つのセルから別のセルに広がるのを防ぐ(または少なくとも減速および/または軽減する)。例えば、1つのセルが壊滅的に故障し、その過程で大量の熱を放出すると仮定する。断熱材がないと、その熱はすべて近くのセルに伝播し、それらのセルも壊滅的に故障する。最終的には、すべてのセルがドミノのような効果で壊滅的に故障する。(例えば、セルまたは電池レベルでの)この正のフィードバックサイクル、ドミノのような効果は、熱暴走と呼ばれることもある。断熱材の層は、熱暴走の(少なくともセルレベルでの)発生を防ぐ(または少なくとも減速および/または軽減する)。
【0015】
この層状パターンは繰り返される。いくつかの実施形態では、各電池サブモジュールは、12個の電池セルと、対応する数の断熱層および熱伝導層とを含む。積み重ねパターンの特定の開始および終了はここには図示されておらず、適切な開始層および終了層が使用され得る。いくつかの実施形態では、積み重ねられた層は、2層の断熱材で開始および終了する。
【0016】
次の図は、今回はケースと共に、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の斜視図を示している。
【0017】
図1Bは、ケースの内容物を圧縮するケースを含む、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の斜視図である。この図から、正のタブ(106)および負のタブ(108)がケース(150)から上方に延びているのを見ることができる。正のタブと負のタブはそれぞれ互いに電気的に接続されており(図示せず)、ケースの内容物が蓋で密閉されている場合、蓋は単一の正の接続またはポートと単一の負の接続またはポートを露出する。
【0018】
図1Aに戻ると、電池サブモジュールの初期のプロトタイプは、熱伝導層(100)と正のタブ(106)および/または負のタブ(108)との間に意図しないおよび/または予期しない静電容量があったことを明らかにした。これは、プロトタイプで熱伝導層を作成するために使用された材料(つまり、アルミニウム)によるものである。アルミニウムは導電性であるため、熱伝導性および電気伝導性の層(100)に電荷が蓄積する可能性がある。例えば、各電池セル(102)は、より一般的には正のコネクタと呼ばれる正のタブ(106)と、より一般的には負のコネクタと呼ばれる負のタブ(108)とを有する。単一のタブとフィンのペア(例えば、正のタブ(106)と右のフィン(110))間の(意図しない)静電容量が3nFであると仮定する。まとめると、これらの個々の静電容量は合計して無視できない値になる。次の図は、この例を示している。
【0019】
図2Aは、電池サブモジュールのフィンとタブ間の静電容量の一実施形態を示す図である。図示の例では、コンデンサ200、202、および204は、図1Aに示す構成に対応する各フィン-タブ対(電池セルのタブと熱伝導層のフィン間の静電容量を指すためのより短くより便利な名前)間の個々の静電容量を表し、フィンとタブの対はn個ある。例えば、Cフィン-タブ、1(200)は第1のフィン-タブ対間の静電容量、Cフィン-タブ、2(202)は第2のフィン-タブ対間の静電容量など、静電容量は、相互に並列に接続されている。一例では、各電池サブモジュールに12個のフィン-タブ対があるため、12個の静電容量が並列に接続される。
【0020】
電気的には、これらの個々の静電容量は、(例えば、相加的に)組み合わされて、大きな合計または全体の静電容量が形成される。次の図は、この一例を示している。
【0021】
図2Bは、より小さな静電容量を組み合わせることによって生成される総静電容量の一実施形態を示す図である。図示の例では、ここに示されている単一の総静電容量(250)は、図2Aに示されている回路に電気的に対応している。12個のフィン-タブ対があり、単一のフィン-タブ対間の各々の個々の静電容量が約3nFの場合、総静電容量(250)は約36nFになる。少なくとも一部の用途では、これは無視できない総静電容量である。
【0022】
一例の用途では、複数の電池サブモジュールが(さらに)一緒に組み合わされてより大きな電池ユニットまたはシステムになり、航空機などの全電気の乗り物に電力を供給するために使用される。これは、以前のプロトタイプが使用された方法である。航空機の用途例では、(例えば、複数の電池サブモジュールを組み合わせて製造された)より大きな電池ユニットまたはシステムは、600Vのオーダーの電圧を供給した(例えば、航空機の推進システムはそのような高電圧を必要とするため)。高電圧と(意図的ではないが)無視できない静電容量のこの組み合わせは、これらの意図しない静電容量に高電圧の電荷が蓄積され、その後作業者を介して放電すると、作業者は重傷を負うか、または死亡する可能性があるため、電池を取り扱う作業者にとって危険な場合がある。意図しない静電容量はまた、システムの電気的性能に影響を与える。このため、熱伝導層によって生じる意図しない静電容量を低減することが望ましい。
【0023】
以下の図は、その熱伝導層によって生成される意図しない静電容量を低減するための1つまたは複数の不連続部を有する熱伝導層のいくつかの例を示している。
【0024】
図3Aは、円形の不連続部を有する熱伝導層の一実施形態を示す図である。図示の例では、熱伝導層は、3つの平面部分:左フィン(300)、電池セル(302)と接触する部分、および右フィン(304)を有する。この特定の例では、電池セル(302)と同一平面にある熱伝導層の部分は、複数の円形の不連続部(306)を有する。セル表面(302)と接触しているフィンの部分の表面積を減少させることにより、静電容量は減少する。左フィン(300)および右フィン(304)の不連続部は、タブのフィンへの静電容量を有意に変化させないため、この例には図示されていない。なお、本明細書に記載の不連続部の形状、サイズ、数、および/または配置は単なる例示であり、限定することを意図するものではないことに留意されたい。
【0025】
不連続部(306)は、熱伝導層が不連続部を含まない場合と比較して、熱伝導層に関連する静電容量を減少させる。不連続部は、セルに近接した熱伝導層の表面積を減少させることによってこれを行い、これは、次に、(例えば、熱伝導層と電池セルとの間の)例示的な熱伝導層によって生成される静電容量を減少させる。例えば、これは、図2Aに示されている個々の静電容量(Cfin-tab、i)の各々の値がより小さく、それに応じて図2Bに示されている総静電容量(Ctotal)もより小さいことを意味する。不連続部の数および/または配置は、必要に応じて静電容量を調整するために調整することができる。一般的に言えば、不連続部が熱伝導層の表面積を減少させるほど、静電容量は減少する。
【0026】
熱的に、不連続部は、積み重ねられた層の中心から積み重ねられた層の縁部に熱を引き出し、続いてケース(図示せず)を介して熱を引き出す、図示される熱伝導層の能力に有意に影響を与えない。当然のことながら、不連続部の形状、数、および/または配置を調整して、熱伝導率と静電容量の減少との間の許容可能なトレードオフを見つけることができる。一例として、次の図は、熱伝導層の別の一実施形態を示している。
【0027】
図3Bは、電池セルと接触する部分に長方形の不連続部を有する熱伝導層の一実施形態を示す図である。この例では、電池セル(310)と同一平面にある熱伝導層の平面部分は、左フィンとの共有縁部の近くから右フィンとの共有縁部に向かって延びる長方形の不連続部(312)を有する。いくつかの実施形態では、これは、(例えば、水平の)熱チャネルまたは通路を作成し、これを介して積み重ねられた層の内部からフィンに向かって熱を引き出すことができるので魅力的である。この形状およびレイアウトを説明する別の方法は、その表面の不連続部が、左フィンを指す第1の遠位端と、右フィンを指す第2の遠位端とを有すると言うことである。
【0028】
不連続部を使用して、上縁部および下縁部に向かって延びる鉛直熱チャネルを作成することができるが、これは、上縁部および下縁部がケース(図示せず)の内面との接触を保証するフィンを有さないため、ここに示す水平熱チャネルほど効果的ではない可能性がある。左フィンおよび右フィンのバネのような性質により、ケースと左縁部および/またはフィンと右縁部および/またはフィンとの間の空間またはギャップに多少のばらつきがある場合でも、フィンがケースと接触することが保証される。
【0029】
次の図は、改善された(例えば、低減された)静電容量を備えた電池サブモジュールを提供するためのプロセスを示している。
【0030】
図4は、静電容量が低減された電池サブモジュールを提供するプロセスの一実施形態を示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、プロセスは、図1A図1Bおよび図3A図3Bに示されるデバイスによって、および/またはデバイスを使用して実行される。
【0031】
400において、電池セルが提供される。例えば、図1Aの電池セル102を参照されたい。
【0032】
402において、断熱層が提供される。例えば、図1Aの断熱層(104)を参照されたい。上記のように、これらの断熱層は、ある電池セルから別の電池セルへの熱の移動を防止する(または少なくとも軽減する)。上記のように、故障した電池セルは大量の熱を発生する可能性があり、断熱層は他の電池セルが過熱するのを防ぎ(または少なくとも軽減し)、過熱は、それらの電池を故障させる可能性があり、次いでさらに多くの電池セルを故障させ、カスケード故障シナリオ(つまり、熱暴走)もたらす可能性がある。
【0033】
404において、フィンを含む熱伝導層が提供され、フィンは、電池セル、断熱層、および熱伝導層を取り囲むケースの内面を押すように構成され、熱伝導層は不連続部を含み、不連続部は、熱伝導層が不連続部を含まない場合と比較して、熱伝導層に関連する静電容量を低減するように構成される。例えば、ケース(図1Bのケース150を参照)を押すフィン(100)を含む積み重ねられた層の上面図を示す図1Aを参照されたい。図3Aの不連続部306および図3Bの不連続部312も参照されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、他の構成および/または技術を使用して、(例えば、熱伝導層、サブモジュールレベル、電池システムまたはモジュールレベルなどの任意の範囲またはレベルなどで)静電容量を低減する。次の図は、他の静電容量低減技術および/または構成のいくつかの例を示している。当然、これらの技術および/または構成は、本明細書に具体的に記載されていない組み合わせを含む、任意の組み合わせで使用することができる。
【0035】
図5Aは、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図であり、ケースの内面が陽極酸化されて電気的絶縁面を作成している。この例では、ケースの内面(500)は、陽極酸化処理されている。この例では、陽極酸化プロセスはケースの内側にのみ施されているため、ケース(502)の外側を向く部分は陽極酸化されていない。他の実施形態では、アルミニウム全体を陽極酸化することができる。この例では、ケースはアルミニウム製であり、アルミニウムを陽極酸化すると電気的絶縁性が高まる。そのため、内面は陽極酸化が行われる前よりも良好な電気的絶縁性を備えている。
【0036】
ケースの電気的絶縁性の内面は、フィン(例えば、左側の第1のフィンと左側の第2のフィンとの)間の電気的絶縁性を高める。これには、図2Aに示すコンデンサの並列構成を「分割」する効果があり、その結果、少なくとも電気的には並列構成ではなくなる。新しい非並列電気構成の結果として、対応する結合または総静電容量は減少する。例えば、12×3pF=36pFの総静電容量を生成する代わりに、それはより小さな値になる。上記のように、静電容量を低減させることが望ましい。
【0037】
電池サブモジュールは、依然として、ケースの内側から(例えば、電池サブモジュールのコア内の積み重ねられた層から)熱を引き出す必要があることに留意されたい。そのため、陽極酸化された内面(またはこの目的に役立つ他の電気的絶縁体)は、電池サブモジュールからの熱の除去を実質的に妨害するべきではない。例えば、20%のオーダー(例えば、18%~22%の範囲)の熱伝導率の低下は許容される。
【0038】
この例では、電気的絶縁性は、ケースの内面を陽極酸化することによって達成される。しかしながら、電気的絶縁性は様々な手法を使用して追加できる。次の図は、他のいくつかの例を示している。
【0039】
図5Bは、電気的絶縁性の層がケースとフィンとの間に配置されている電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。この例では、電気的絶縁層(510)がケース(512)とフィン(514)との間に配置されている。これは、いくつかの方法で実行できる。電気的絶縁体が「柔軟」であり、それ自体で立つことができない場合(例えば、十分に剛性がない場合)、積み重ねられた内容物を最初に束ねてから、電気的絶縁層で包むことができる。次に、断熱材の「ラッパー」で包まれた内容物を缶に挿入できる。
【0040】
あるいはまた、電気的絶縁体がそれ自体で立つことができる場合、絶縁体の層をまずケースに配置し、次に積み重ねられた層をケースに挿入することができる。これらはいくつかの例であり、限定することを意図したものではない。すでに述べたように、電気的絶縁体(510)に使用される材料は、それが熱の除去を著しく妨害しないように選択される。
【0041】
図5Cは、フィンの先端が電気的に絶縁されるように処理されている、電池サブモジュールの積み重ねられた内容物の上面図である。この例では、ケース(552)の内面を電気的に絶縁する代わりに、フィン(554)の先端は、電気的絶縁層(556)を有するように処理、コーティング、またはその他の方法で処理される。いくつかの実施形態では、電気的絶縁化合物、(例えば、熱)グリース(例えば、ポリマーマトリックスおよび金属酸化物充填剤を含む)、樹脂、または接着剤が、フィンの先端に堆積される。あるいはまた、フィン(特に先端)は陽極酸化処理される。すでに述べたように、使用される堆積材料または処理技術は、断熱性を実質的に増加させない。
【0042】
上記の実施形態を説明するより一般的な方法は、フィンおよびケースのうちの一方を含む経路(例えば、電気的および/または熱的)が、電気的絶縁性を増加させ、断熱性を実質的に増加させない絶縁体を含むと言うことである。上に示したように、この(例えば、電気的であるが熱的ではない)絶縁材は、ケースの内面、フィンとケースの間の絶縁材料の層、少なくともフィンの先端に堆積された絶縁材料の層を陽極酸化することにより形成される、少なくともフィンの先端を陽極酸化することによって形成されるなどによるものを含む、様々な技術を使用して挿入または他の方法で実施できる。
【0043】
いくつかの実施形態では、電池組み立て技術は、どちらがより魅力的な実施形態であるかを決定することができる。例えば、積み重ねられた層がケースに挿入されている間にフィンを圧縮することを組み立て技術が含まない場合、図5Aまたは図5Cに示される実施形態は、より魅力的であり得る。これは、ケースとフィンの間の電気的絶縁性の別個の層が、それらが共に押されているときにケースおよび/またはフィンに引っかかる可能性があるためである。しかしながら、挿入時にフィンが圧縮されている場合は、これは問題にならない可能性がある。これをより一般的に言えば、適切な実施形態を選択する際に、様々な考慮事項(例えば、コスト、電池の組み立て技術、所与の材料または処理技術の電気絶縁性の改善/増加と断熱性の低下/減少の間のトレードオフなど)を考慮することができる。
【0044】
上記のように、いくつかの実施形態では、複数の電池サブモジュールが共に組み合わされて、より大きな高電圧電池システムを形成する。次の図は、これの一例と、関連する静電容量が低減され得る方法を示している。
【0045】
図6は、複数の電池サブモジュールを保持するために使用されるフレームの一実施形態を示す図である。上記のように、一例の用途では、複数の電池サブモジュール(例えば、それぞれが15Vのオーダーの電圧を出力する)が共に組み合わされて、リフトファンなどの電圧負荷に電力供給する(例えば、600Vのオーダーの)高電圧供給源を生成する。これを行うために、例示的なフレーム(600)が使用される。フレームは、2つのアクセス可能な側面であって、その中に電池サブモジュール(602)が取り外し可能に結合された方法で挿入および保持される側面:ここに示される側面と反対の側面を有する。
【0046】
電池サブモジュールの各々をフレームに固定するために、2つのネジ(604)がケース(606)の穴を通して挿入される:1つはケースの上部に、もう1つはケースの下部にある。次に、ネジをフレーム(608)の穴に通して、電池サブモジュールをフレームに固定する。
【0047】
図示の例では、電池サブモジュールには蓋が付いている。蓋には、電源(610)用の2つの出力コネクタまたはポートがあり、1つは正、もう1つは負である。これらの電源コネクタは、図示されている構成要素を妨害しないように、この図に示されていないケーブルおよび/または電子機器を使用して共に接続されている。例えば、これらのケーブルおよび/または電子機器は、蓋に結合されている、および/またはここに示されている開いた側に面している。
【0048】
この例では、フレームは、ケースと同様に導電性材料でできているので、これは、導電性サブモジュールの場合が、並列のセル-フィン間静電容量の望ましくない追加につながる可能性がある(図2Aおよび図2Bを参照)のと同様に、並列サブモジュールの静電容量の望ましくない追加につながる。電池サブモジュールがフレームにねじ込まれていると、望ましくない方法で結合される。上記の小規模な例と同様に、これにより静電容量が発生し、作業者に衝撃を与える、および/またはシステムの電気的性能に干渉する可能性がある。
【0049】
静電容量を低減するために、いくつかの実施形態では、フレームは、電池サブモジュールを互いによりよく(例えば、電気的に)隔離する電気的に独立した剪断パネルレール(612)を有する。これは、各々のレールの静電容量が加算されるのを防ぐ(または少なくともより小さな値を生成するようにそれらを結合する)ように機能する。
【0050】
これを説明するより一般的な方法は、第1の電池サブモジュールおよび第2の電池サブモジュールを保持するように構成されたフレームが、第1の電池サブモジュールと第2の電池サブモジュールとの間の電気的絶縁性を増加させるように構成された絶縁部分を含むと言うことである。この例では、これは、(電池サブモジュールのケースと接触する)剪断パネルを電気的絶縁性材料および/または非導電性材料で作ることによって行われる。いくつかの実施形態では、剪断パネルは、電気的絶縁性を生成するためにコーティングまたは処理される。
【0051】
前の例とは異なり、ここでは熱伝達はそれほど問題ではないので、電池サブモジュール間の絶縁は熱伝導率に影響を与える可能性がある。これは、フレームが電池サブモジュールからの熱を放散する主要な熱経路ではないためである。対照的に、上記の例のいくつかでは、主要な熱経路が影響を受ける可能性があるため、それに応じて(つまり、電池サブモジュールの内部からの熱の除去を実質的に妨げないように)材料および/または技術が選択される。
【0052】
前述の実施形態は、理解を明確にする目的でいくらか詳細に説明されてきたが、本発明は、提供された詳細に限定されない。本発明を実施する多くの代替方法が存在する。開示された実施形態は例示的なものであり、限定的なものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】