(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】油性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20220104BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20220104BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/00
A61K8/31
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021507856
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(85)【翻訳文提出日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 CN2018100788
(87)【国際公開番号】W WO2020034134
(87)【国際公開日】2020-02-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャン,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ユーウェン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB332
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC532
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD162
4C083CC12
4C083DD30
4C083EE06
(57)【要約】
本開示は、a)2~4個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第1の揮発性非環状シリコーン油、b)5~6個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第2の揮発性非環状シリコーン油、及び任意にc)揮発性炭化水素系油を含む油性組成物に関する。この油性組成物は揮発特性及び官能特性の点でD5に近似し、パーソナルケア製品及び化粧品におけるD5の代替品として、又はシロキサンポリマーのキャリア液体として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 2~4個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第1の揮発性非環状シリコーン油、
b) 5~6個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第2の揮発性非環状シリコーン油
を含む油性組成物。
【請求項2】
a) 2~4個のケイ素原子を有し、任意にC1~C2アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第1の揮発性非環状シリコーン油、
b) 5~6個のケイ素原子を有し、任意にC1~C2アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第2の揮発性非環状シリコーン油、
を含む、請求項1に記載の油性組成物。
【請求項3】
成分(a)と成分(b)との質量比が20:80~80:20の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の油性組成物。
【請求項4】
揮発性炭化水素系油である成分(c)をさらに含む、請求項1又は2に記載の油性組成物。
【請求項5】
成分(c)が、8~16個の炭素原子を含む分枝状アルカン、又はそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の油性組成物。
【請求項6】
成分(a)が、組成物の総重量に基づいて10%~40%の量で存在し、
成分(b)が、組成物の総重量に基づいて20%~40%の量が存在し、
成分(c)が、組成物の総重量に基づいて20~70%の量が存在する
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の油性組成物。
【請求項7】
成分(a)が25℃で0.65~1.5cStの動粘性率を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項8】
成分(b)が25℃で1.5cStより大きく、3cSt未満の動粘性率を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項9】
成分(a)が-6℃以上70℃未満の引火点を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項10】
成分(b)が70℃以上100℃未満の引火点を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項11】
成分(c)が40~70℃の引火点を有することを特徴とする、請求項4~10のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項12】
7個を超えるケイ素原子を有する非環状シリコーン油が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項13】
環状シリコーン油が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項14】
水が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項15】
粉末が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項16】
植物由来成分が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項17】
不揮発性油が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項18】
成分(a)及び成分(b)、並びにもしあれば成分(c)が、油性組成物の総重量に基づいて、99重量%より多い量で使用されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項19】
パーソナルケア製品及び化粧品における請求項1~18のいずれか一項に記載の油性組成物の使用。
【請求項20】
シロキサンポリマーのキャリア液体としての請求項1~18のいずれか一項に記載の油性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーソナルケア製品及び化粧品におけるデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)の代替物として、又はシロキサンポリマーのためのキャリア液体として使用することができる油性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
D5は、蒸発後に残留物を残さず、清涼感があり、べたつきの少ないコンディショニング効果を提供する一方、その低コスト、優れた適合性、良好な化学的安定性、比較的均一な蒸発速度、及び一定期間皮膚又は髪に留まる能力のために、様々なパーソナルケア製品及び化粧品に広く使用されている。しかし、生体蓄積性があり、環境に残り続けるため、D5は特に水生生物にマイナスの影響を与える。また、D5は製造の特殊性から、生殖毒性が証明されているオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を必然的に一定の割合で含んでいる。
【0003】
近年、D5に関する化粧品関連の規制がますます厳しくなっている。化学物質の登録、評価、認可及び制限(REACH)に関する規則(EC)に対し付属書XVIIを改正する2018年1月の委員会規則(EU)2018/35において、D4及びD5の両方が付属書XVIIの制限物質リストに追加された(エントリー70)。この規則によれば、2020年1月31日以降、両物質の重量で0.1%以上の濃度では、ウォッシュオフ化粧品の市場において、もはやそれらを発売することはできない。それらの著しい毒性持続性及び生体蓄積性のため、D4及びD5は、加盟国専門委員会(MSC)により承認されたように、2018年6月27日に超高懸念物質(SVHC)の候補リストに追加された。
【0004】
したがって、特に同等の官能特性を提供する、パーソナルケア製品及び化粧品配合物において、類似の揮発特性及び同等の挙動を示す、D5の満足できる代替品を求めることが非常に重要になってきた。この主題は、これまでいくつかの先行技術に関わってきた。US20040241200A号は、65%のネオペンチルグリコールジヘプタノエート及び35%のイソドデカンを含む、D5に代わる炭化水素組成物を開示する。WO2008155059A号は、65~70%のn-ウンデカン及び24~30%のn-トリデカンを含む、D5の代替物としての炭化水素組成を開示する。EP2417199A号は、90~99%ドデカン及び1~10%テトラデカンを含む、D5の置換物としての炭化水素組成を開示する。US8506974B号は、35%のC12~C14イソパラフィン、55%のC13~C16イソパラフィン及び10%のC13~C15アルカンを含む、D5の代わりとしての炭化水素組成物を開示する。
【0005】
上記の先行技術は揮発特性を有するこれらの炭化水素組成物を開示しているが、それらは特定の蒸発速度を開示しておらず、又は5時間のような長時間後の残留組成物の量のみを開示している。さらに、これらの炭化水素組成物の全ては、D5の場合と同様に、柔らかい絹のような感触を配合物に提供することがない。したがって、近似する揮発特性を有し、非常に類似した官能特性を提供するD5の代替物が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0241200号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/155059号
【特許文献3】欧州特許出願公開第2417199号明細書
【特許文献4】米国特許第8506974号明細書
【発明の概要】
【0007】
本開示は、揮発特性に関してD5に近似する油性組成物を提供する、すなわち、それは比較的均一な速度でゆっくり揮発することができ、DIN 53249に従って測定した、2時間後に65~95重量%を揮発し、又は80~95重量%も揮発する。また、それは同様の柔らかい絹のような、べたつきの少ない官能特性を伝える。
【0008】
本明細書で使用されるように、「油性組成物」という用語は、本質的に油から形成され、又は油からなることさえある物質を意味し、「本質的に」とは、油が、90重量%超、95重量%超、又は99重量%超でさえあるような、80重量%超の量で組成物中に存在することを意味する。
【0009】
本明細書における「揮発性」という用語は、室温及び大気圧において、少なくとも5重量%の液体物質が、皮膚又は毛髪に接触して2時間未満で、蒸気に変換されることができることを意味し、「液体物質」とは、室温において、5分未満で、自重で流れることができる物質を意味する。
【0010】
「シリコーン油」という用語は、室温で液体の状態のままであるシロキサン又はポリシロキサンを意味する。
【0011】
「非環状シリコーン油」という用語は、直鎖状シリコーン油及び分枝状シリコーン油をはじめとする、環状構造を有さないシリコーン油を意味する。
【0012】
本明細書中の用語「炭化水素系油」は、炭素及び水素原子、並びに場合により酸素原子、窒素原子及びフッ素原子から本質的に形成され、又はそれらからなることさえあり、ケイ素原子を含まない油を意味し、「本質的に」は、炭素及び水素が90重量%超、95重量%超、又は99重量%超などの、80重量%超の量で炭化水素系油中に存在することを意味する。
【0013】
本明細書で使用されるように、「室温」とは、特に記載のない限り23±2℃を意味する。
【0014】
本明細書中で使用されるように、「動粘性率」は、当該技術分野で従来使用されている方法、例えばDIN 51562に従って25℃で測定することができる。
【0015】
本明細書中で使用されるように、「引火点」は、当該技術分野で従来使用されている方法、例えばDIN 51755に従って測定することができる。
【0016】
本開示の第1の態様は、以下、すなわち、
a) 2~4個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6、好ましくはC1~C2アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第1の揮発性非環状シリコーン油、
b) 5~6個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6、好ましくはC1~C2アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第2の揮発性非環状シリコーン油
を含む油性組成物を提供する。
【0017】
<成分(a)>
成分(a)は、典型的には、次の一般式Iを有する揮発性直鎖状シリコーン油及び一般式IIを有する揮発性分枝状シリコーン油を含む。
【0018】
【化1】
[式中、nは0~4の任意の整数であり、
R
1は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル又はエチル、特に好ましくはメチルなどの、同じ又は異なるC1~C6アルキル基であることができる。]
【0019】
【化2】
[式中、R
2は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル又はエチル、特に好ましくはメチルなどの、同じ又は異なるC1~C6アルキル基であることができる。]
【0020】
成分(a)は、0.65cSt、1cSt又は1.5cStのような、0.65~1.5cStの適切な動粘性率を有する。
【0021】
成分(a)は引火点が-6℃以上70℃未満の非環状シリコーン油、好ましくは引火点が20~40℃の直鎖状シリコーン油又は引火点が50~70℃の分枝状シリコーン油の中から適宜選択される。
【0022】
特に言及することができる成分(a)の非限定的な例としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0023】
<成分(b)>
成分(b)は、1.8cSt又は2cStなどの1.5cSt超3cSt未満の適切な動粘性率を有する。
【0024】
成分(b)は、引火点が70℃以上100℃未満の非環状シリコーン油、好ましくは引火点が70~95℃の直鎖状シリコーン油の中から適宜選択される。
【0025】
特に言及することができる成分(b)の非限定的な例としては、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデシルヘキサシロキサン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本開示の第1の態様による油性組成物において、成分(a)は、油性組成物の総重量に基づいて、20%~80%、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%の量で存在することができ、成分(b)は、20%~80%、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%又は80%の量で存在することができる。
【0027】
成分(a)と成分(b)の適切な質量比は、20:80、30:70、40:60、70:30及び80:20などの20:80~80:20の範囲である。特定の実施形態では、成分(a)と成分(b)の質量比は70:30~80:20の範囲である。特定の実施形態において、成分(a)と成分(b)の質量比は、20:80~40:60の範囲である。
【0028】
好ましくは、成分(a)及び(b)は、油性組成物の総重量に基づいて、90%超又は95%超、又は99%超ですらある80%超の量で存在する。
【0029】
開示の第2の態様はまた、以下、すなわち、
本開示の第1の態様による成分(a)、
本開示の第1の態様による成分(b)、及び
(c)揮発性炭化水素系油
含む油性組成物を提供する。
【0030】
<成分(c)>
成分(c)は、引火点が40~110℃、好ましくは40~70℃、特に好ましくは40~55℃の炭化水素系油の中から適宜選択される。
【0031】
特に言及することができる成分(c)の非限定的な例としては、8~16個の炭素原子を含有する揮発性炭化水素系油及びそれらの混合物、特に8~16個の炭素原子を含有する分岐状アルカン又はそれらの混合物が挙げられ、C8~C16イソパラフィン、例えば異性体デカン、イソドデカン及びイソヘキサデカン、特に好ましくはイソドデカンが挙げられる。
【0032】
本開示の第2の態様によれば、油性組成物は、油性組成物の総重量に基づいて、10%~40%、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%又は40%の量で成分(a)を、20%~40%、例えば、20%、25%、30%、35%又は40%の量で成分(b)を、及び20%~70%、例えば、20%、30%、40%、50%、60%又は70%、好ましくは30~60%の量で成分(c)を含む。
【0033】
好ましくは、成分(a)、(b)及び(c)は、油性組成物の総重量に基づいて、90%超又は95%超、又は99%超ですらある、80%超の量で存在する。
【0034】
本開示の第2の態様によれば、成分(a)、(b)及び(c)の割合は、D5に極めて近い全体的な揮発性を得るために、それらの個々の揮発特性に基づいて調整することができる。
【0035】
特定の実施形態において、油性組成物は、オクタメチルトリシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びイソドデカンを含み、これらは含量に関して、以下の関係、すなわち、イソドデカン>ドデカメチルペンタシロキサン>オクタメチルトリシロキサン、を有する。
【0036】
特定の実施形態において、油性組成物は、ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びイソドデカンを含み、これらは、含量に関して、以下の関係、イソドデカン>ドデカメチルペンタシロキサン>ヘキサメチルジシロキサン、を有する。
【0037】
特定の実施形態において、油性組成物は、それらの含量に関して、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びイソドデカンを含み、これらは、含量に関して、以下の関係、デカメチルテトラシロキサン>イソドデカン≧ドデカメチルペンタシロキサン、を有する。
【0038】
本開示の第1の態様又は第2の態様によれば、油性組成物は、開示の目的全体の実現に影響を及ぼさない限り、必要に応じて、適量の添加剤、例えば安定剤、抗酸化剤及び保存剤などの他の任意成分をさらに含むことができる。
【0039】
好ましくは、油性組成物は、以下、すなわち、
i) 揮発性及び不揮発性の直鎖状又は分枝状シリコーン油をはじめとする、7個を超えるケイ素原子を含む非環状シリコーン油、
ii) 典型的にはD4、D5、D6又はそれらの誘導体をはじめとする、環状シリコーン油、
iii) 水、
iv) 顔料及び充填剤をはじめとする粉末(ここで典型的な顔料の非限定的な例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、コチニール及び真珠光沢粒子が挙げられ、充填剤の非限定的な例としては、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが挙げられる)、
v) 植物の花、葉、茎、根又は果実から抽出された成分をはじめとする、植物由来の成分、
vi) 不揮発性油
の中の1種以上の物質を実質的に含まない。
【0040】
「実質的に含まない」という表現は、上記物質i)~vi)のいずれかの含有率が、油性組成物の総重量に基づいて、0.9重量%未満、0.8重量%、0.7重量%、0.6重量%、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%又は0.1重量%、特に0.05重量%未満又は0.01重量%未満などの、1重量%未満であることを意味する。
【0041】
本開示の第3の態様は、クレンザー、ローション、クリーム、シャワーゲル、シャンプー、コンディショナー、カラー化粧品、発汗防止剤、デオドラント及びマニキュア液をはじめとする、スキンケア製品、ヘアケア製品、化粧品、日焼け止め製品、発汗防止製品、シェービングケア製品及びネイルケア製品をはじめとする、パーソナルケア製品及び化粧品における第1又は第2の態様の油性組成物の使用を提供する。
【0042】
本開示の第4の態様は、本開示の第1又は第2の態様の油性組成物を含むパーソナルケア組成物又は化粧品組成物を提供する。
【0043】
油性組成物の適切な量は、所望の感覚、及びローション、クリーム、スプレー又は軟膏などのパーソナルケア組成物又は化粧品組成物の剤形に従って、パーソナルケア組成物又は化粧品組成物の総重量に基づいて、一般に0.01~99%、好ましくは0.5~70%、特に1~60%から選択することができる。
【0044】
本開示の第5の態様はまた、シリコーンエラストマー及びポリシロキサノールのようなシロキサンポリマーのキャリア液体としての第1又は第2の態様の油性組成物の使用を提供する。
【0045】
油性組成物は、シロキサンポリマー及び油性組成物の総重量に基づき、0.5~90重量%又は5~80重量%などの、0.01~98重量%の量で一般に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、D5、BELSIL(R)DM 1 PLUS、BELSIL(R)DM 2及びIP 12を基準として使用して、実施例1~3及び比較例1~2の油性組成物の蒸発曲線を描いたグラフである。
【
図2】
図2は、D5、BELSIL(R)DM 1 PLUS、BELSIL(R)DM 2及びIP 12を基準として使用して、実施例4~8及び比較例3~4の油性組成物の蒸発曲線を描いたグラフである。
【
図3】
図3は、皮膚感触試験のために前腕に試料を塗布したことを示す図である。
【実施例】
【0047】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、それらの範囲に限定されない。以下の実施例に規定する条件のない試験方法は、いずれも従来の方法及び条件、あるいは製品仕様に従って選択される。
【0048】
実施例及び比較例で使用した成分は全て市販されており、詳細な情報は以下のとおりである。
ヘキサメチルジシロキサンであるWacker Chemicals社製BELSIL(R)DM 0.65は、DIN 53018に従って25℃で測定した動粘性率が約0.65cSt、及び引火点が-6℃の第1の揮発性非環状シリコーン油である。
ポリジメチルシロキサンであるWacker Chemicals社製BELSIL(R)DM 1 PLUSは、DIN 51562に従って20℃で測定した動粘性率が約1.23cSt、及び引火点が32℃の第1の揮発性非環状シリコーン油である。
ポリジメチルシロキサンであるWacker Chemicals社製BELSIL(R)DM 2は、DIN 51562に従って25℃で測定した動粘性率が約2cSt、及び引火点が89℃の第2の揮発性非環状シリコーン油である。
ポリジメチルシロキサンであるWacker Chemicals社製BELSIL(R)DM 5は、DIN 53019に従って25℃で測定した動粘性率が約5cSt、及び引火点が130℃である。
ポリジメチルシロキサンであるDow Corning社のXIAMETER(商標)PMX-200 Silicone Fluid 1.5 cStは、25℃での動粘性率が1.5cSt及び引火点が57℃の第1の揮発性非環式シリコーン油である。
カプリルメチコンであるMomentive Performance Materials社のSilsoft 034は、25℃での動粘性率が3cStの及び引火点が110℃である。
イソドデカンである出光興産のIP 12。
【0049】
別に規定されない限り、以下において重量%は、油性組成物の総重量に基づく。
【0050】
[実施例1~3及び比較例1~2:揮発性非環状シリコーン油及び揮発性炭化水素系油を含む油性組成物の調製]
【0051】
実施例1~3及び比較例1~2の油性組成物は、表1による全ての成分を均一に混合して得た。
【0052】
【0053】
[実施例4~8及び比較例3~4:揮発性非環状シリコーン油のみを含む油性組成物の調製]
【0054】
実施例4~8及び比較例3~4の油性組成物は、表3による全ての成分を均一に混合して得た。
【0055】
【0056】
[実施例9:蒸発速度試験]
【0057】
全ての実施例及び比較例の油性組成物の蒸発速度曲線を、D5、BELSIL(R)DM 1 PLUS、BELSIL(R)DM 2及びIP 12を基準として使用し、DIN 53249に従って25℃で試験した。具体的な試験結果を
図1~2に示し、図では、縦座標は初期試料の総重量に対する蒸発による試料の重量損失の割合を示す。
【0058】
図1から、BELSIL(R)DM 1 PLUS、BELSIL(R)DM 2及びIP 12の蒸発曲線は、D5の蒸発曲線から明らかに乖離していることが分かる。比較例1~2の油性組成物の蒸発曲線は、上記の単一物質よりもD5の蒸発曲線に近いが、依然としてD5の蒸発曲線から大きな乖離がある。しかし、実施例1~3の油性組成物の蒸発曲線は、D5の蒸発曲線に非常に近く、そのことはそれらが比較的均一な速度でゆっくりと揮発し、2時間後に80~95重量%が揮発することを示している。
【0059】
図1及び
図2を比較するとわかるように、実施例4~8の油性組成物の蒸発曲線は、BELSIL(R)DM 1 PLUS、BELSIL(R)DM 2及びIP 12よりもD5の蒸発曲線に近いが、実施例1~3よりもD5の曲線からわずかに離れ、2時間後には65~85重量%しか揮発しない。比較例3~4の蒸発曲線は、主にBELSIL(R)DM 2の含有率が多いか、又はBELSIL(R)DM 5を含むため、D5の蒸発曲線から乖離している。
【0060】
[実施例10:皮膚へのクリーム試験]
【0061】
D5、実施例1及び4の油性組成物及びカプリルメチコンから4種類の異なるスキンクリームA、B、C及びDをそれぞれ調製し、クリームを前腕に塗布した後の初期、中期及び後期の皮膚感触に関して35名のパネリストによって評価した。本明細書において塗布後の初期、中期及び後期における皮膚感触とは、直径4cmの円形領域内の清浄で乾燥した前腕に0.25μLの試験クリームをそれぞれ円形運動で5サイクル、30サイクル及び完全に吸収されるまで塗布した後の皮膚感触を意味する(
図3参照)。
【0062】
採点ルールは以下の通りである。スキンクリームAを基準とし、クリームB、C及びDをそれぞれAと比較する。皮膚感触がA及びB(又はC、又はD)で似ていれば、それぞれの得点は0.5となる。AがB(又はC、又はD)よりも良好な皮膚感触を有している場合、Aの得点は1、B(又はC、又はD)の得点は0となり、最終結果は得点の平均となる。A及びB(又はC、又はD)の得点が近ければ、それらは皮膚上で同様の感触を与え、一方、より大きな得点差がある場合は皮膚感触におけるより大きな隔たりを意味する。
【0063】
スキンクリームの配合物を以下の表3に示す(重量パーセントで)。
【0064】
【0065】
調製方法は以下のとおりであった。
1) 表3に従って、第I相及び第II相の全成分を別々によく混合した。
2) 第I相及び第II相を別々に55℃に加熱した後、撹拌しながら第I相を第II相に徐々に加え、その後3~5分間均質化させた。
3) 第III相を第I相と第II相との混合物に加えて、よく混ぜた。
【0066】
表4~6は、クリームAと比較したクリームB、C及びDの皮膚感触の得点をそれぞれ示す。表4及び5から分かるように、実施例1の油性組成物は、塗布後初期の塗り広がりやすさ及び中期の絹のような(silkiness)感触を除き、ほぼ全ての皮膚感触の点でD5と同じであり、実施例4の油性組成物は、D5の皮膚感触への近似性という点で、実施例1より劣っている。表6は、カプリルメチコンがD5とは全皮膚感触の指標の点でかなり異なることを示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
[実施例11:皮膚へのリキッドファンデーション試験]
【0071】
D5、実施例1の油性組成物及びカプリルメチコンから3種類のリキッドファンデーションE、F及びGをそれぞれ調製し、前腕にこれらのファンデーションを塗布した後の初期、中期及び後期の皮膚感触に関して35名のパネリストにより評価した。初期、中期及び後期における皮膚感触は、実施例10に定義されたとおりである。採点ルールは以下の通りである。リキッドファンデーションEを基準にして、F及びGをそれぞれEと比較する。E及びF(又はG)で皮膚感触が似ていれば、それぞれの得点は0.5となる。Eの方がF(又はG)よりも皮膚感触がよい場合は、Eの得点は1、F(又はG)の得点は0となり、最終結果は得点の平均となる。E及びF(又はG)の得点が近ければ、それらは皮膚に同様の感触を与え、一方、より大きな得点差は皮膚感触のより大きな隔たりを意味する。
【0072】
リキッドファンデーションの配合物を以下の表7に示す(重量部)。
【0073】
【0074】
調製方法は以下のとおりであった。
1) 表7に従って、第I相の成分を、揮発性のものを除いてよく混合して、均質なカラーペーストを形成し、次いで揮発性の成分を添加して、よく混合した。
2) 撹拌しながら、よく混合した第II相を第I相に徐々に加えて、続いて3~5分間均質化させた。
3) 第I相と第II相との混合物に第III相を加えてよく混合した。
【0075】
表8~9は、リキッドファンデーションEと比較したリキッドファンデーションF及びGの皮膚感触の得点をそれぞれ示す。表8~9は、実施例1の油性組成物がほぼ全ての皮膚感触の点でD5と類似しているが、カプリリルメチコンは、全ての皮膚感触の指標の点でD5とはかなり異なっていることを示す。
【0076】
【0077】
【手続補正書】
【提出日】2019-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 2~4個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第1の揮発性非環状シリコーン油、
b) 5~6個のケイ素原子を有し、任意にC1~C6アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第2の揮発性非環状シリコーン油
、並びに
c)揮発性炭化水素系油
を含む油性組成物
であって、
成分(a)が、組成物の総重量に基づいて10%~40%の量で存在し、
成分(b)が、組成物の総重量に基づいて20%~40%の量が存在し、
成分(c)が、組成物の総重量に基づいて20~70%の量が存在する、油性組成物。
【請求項2】
a) 2~4個のケイ素原子を有し、任意にC1~C2アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第1の揮発性非環状シリコーン油、
b) 5~6個のケイ素原子を有し、任意にC1~C2アルキル基を含む非環状シリコーン油及びそれらの混合物の中から選択される第2の揮発性非環状シリコーン油
、並びに
c)揮発性炭化水素系油
を含む油性組成物であって、
成分(a)が、組成物の総重量に基づいて10%~40%の量で存在し、
成分(b)が、組成物の総重量に基づいて20%~40%の量が存在し、
成分(c)が、組成物の総重量に基づいて20~70%の量が存在する、請求項1に記載の油性組成物。
【請求項3】
成分(c)が、8~16個の炭素原子を含む分枝状アルカン、又はそれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の油性組成物。
【請求項4】
成分(a)が25℃で0.65~1.5cStの動粘性率を有することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項5】
成分(b)が25℃で1.5cStより大きく、3cSt未満の動粘性率を有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項6】
成分(a)が-6℃以上70℃未満の引火点を有することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項7】
成分(b)が70℃以上100℃未満の引火点を有することを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項8】
成分(c)が40~70℃の引火点を有することを特徴とする、請求項
4~
7のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項9】
a)オクタメチルトリシロキサン、
b)ドデカメチルペンタシロキサン、及び
c)イソドデカンを含み、
オクタメチルトリシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びイソドデカンの含有量が、イソドデカン>ドデカメチルペンタシロキサン>オクタメチルトリシロキサンの関係を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項10】
a)ヘキサメチルジシロキサン、
b)ドデカメチルペンタシロキサン、及び
c)イソドデカンを含み、
ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びイソドデカンの含有量が、イソドデカン>ドデカメチルペンタシロキサン>ヘキサメチルジシロキサンの関係を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項11】
a)デカメチルテトラシロキサン、
b)ドデカメチルペンタシロキサン、及び
c)イソドデカンを含み、
デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びイソドデカンの含有量が、デカメチルテトラシロキサン>イソドデカン≧ドデカメチルペンタシロキサンの関係を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項12】
7個を超えるケイ素原子を有する非環状シリコーン油が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項13】
環状シリコーン油が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項14】
水が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項15】
粉末が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項16】
植物由来成分が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項17】
不揮発性油が、油性組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で油性組成物中に存在することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項18】
成分(a
)、成分(b
)、及び成分(c)が、油性組成物の総重量に基づいて、99重量%より多い量で使用されることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の油性組成物。
【請求項19】
パーソナルケア製品及び化粧品における請求項1~18のいずれか一項に記載の油性組成物の使用。
【請求項20】
シロキサンポリマーのキャリア液体としての請求項1~18のいずれか一項に記載の油性組成物の使用。
【国際調査報告】